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2 階建て木造住宅
津波により浸水の恐れがある地域における住宅の設計例2 2 階建て木造住宅 (浸水深さ2m、水深係数1.5) Ⅱ-387 目 次 §1. 一般事項 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-391 1.1 建物概要 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-391 1.2 構造計画概要 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-396 1.3 構造図 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-397 §2. 耐震設計概要 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-399 2.1 解析方針 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-399 2.2 設計荷重 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-399 2.3 建築基準法施行令第 46 条による壁量計算 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-400 2.4 柱頭柱脚接合金物 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-401 §3. 津波波圧、波力の算定 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-403 3.1 津波波圧の設定 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-403 3.2 津波波力の算定 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-404 §4. 浮力の算定 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-406 4.1 上部構造における浮力 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-406 4.2 浮力を考慮した建物重量 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-406 §5. 津波波力による耐圧部材の設計 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-407 5.1 設計方針 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-407 5.2 1 階柱・間柱の設計 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-407 5.3 側圧を受ける土台の応力、および側圧を受ける土台に直交する 土台部分に生じる応力に対する設計 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-409 5.4 側圧を受けるべた基礎立上り部分の面外耐力の検討 ・・・・・・・・・・Ⅱ-412 5.5 側圧を受けた時の底盤の検討 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-414 5.6 津波波力に対する 1 階外壁の面外耐力の検討 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-416 5.7 漂流物に対する検討 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-417 §6. 津波荷重時水平耐力の検討 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-419 6.1 設計方針 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-419 6.2 津波波力と水平耐力との比較 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-419 6.3 津波荷重時の鉛直構面柱頭柱脚接合金物の設計 ・・・・・・・・・・・・Ⅱ-420 §7. 基礎の設計 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-426 7.1 設計方針 ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-426 7.2 転倒に対する検討(梁間方向) ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-427 7.3 滑動に対する検討(梁間方向) ・・・・・・・・・・・・・Ⅱ-430 7.4 基礎アンカーボルト接合部の津波波力に対する検討(梁間方向)・・・・・Ⅱ-431 7.5 コンクリート躯体内のアンカーボルトせん断耐力の検討 ・・・・・・・・Ⅱ-433 Ⅱ-388 §1. 一般事項 1.1 建物概要 (1) 概要 本建物は、2 階建木造住宅の設計例をアレンジ※1 し、津波浸水のおそれがある地域にお ける住宅として成立するような補強をしたものである。建築概要は以下の通りとなって いる。 ・用途 一戸建ての住宅 ・階数 地上 2 階建て ・建築面積 78.66m2 ・延べ面積 140.35m2 ・軒高 6.434m ・標準階高 3.185m ・構造種別 木造(製材:ひのき) ・構造形式 桁行方向 木造軸組工法 梁間方向 木造軸組工法 ・主な耐震要素 筋かい (45×90) ・基礎形式 直接基礎(べた基礎) 長期許容支持力度 30 kN/m2(極限鉛直支持力度 90kN/m2) ・屋根 スレート葺 ・床 フローリング ・外壁 窯業系サイディング ・内壁 石こうボード下地クロス貼 ※1 )アレンジした主な内容は以下となっている。 ・土台寸法を 105×105 から 120×120 とした。 ・1 階の耐震壁を変更した。 ・基礎外周部に立上り部分を増設した。 ・材料をスギから、ベイマツ・ひのきに変更した。 ・基礎外周立上部タテ筋を D10@200(SD295A)から D13@150(SD295A) に変更した。 ・間柱を 27×105 から 45×120(2 丁合わせ)に変更した。 Ⅱ-389 (2) 建築図 次ページ以降に、平面図、立面図、断面図、矩計図を示す。 (3) 想定する津波 本設計例では、津波の設計用浸水深 h を 2m と想定する。また、敷地は海岸及び河川 から 500m 以上離れており、かつ、津波が生じる方向に津波を軽減する効果の見込まれ る施設又は他の建築物がある場合を想定し、水深係数 a は 1.5 を採用する。 Ⅱ-390 Ⅱ-391 図 1.1 平面図 Ⅱ-392 図 1.3 断面図 図 1.2 立面図 図 1.4 矩計図 Ⅱ-393 1.2 構造計画概要 (1) 設計方針 本設計は、建築基準法第 20 条第 4 号に掲げる建築物である。津波により浸水の恐れがあ る地域における住宅を計画した場合の検討を行う。設計用浸水深より津波波圧および波力 を算定し、柱や梁の耐圧部材を設計する。外周部は耐圧部材及び筋かいを水平抵抗要素と して津波荷重時の水平耐力を求め、内周部の水平抵抗要素の津波荷重時の水平耐力と合計 し、全体の水平耐力が津波荷重を上回ることを確認する。さらに、基礎の転倒、滑動およ びアンカーボルトに対する安全性を確認する。 (2) 使用材料 ・製材 ひのき ・柱(ひのき) 120×120 無等級 ・間柱(外壁) (ひのき) 45×120(2 丁合わせ) ・主要な梁(ベイマツ) 120×240 ・土台(ひのき) 120×120 ・コンクリート Fc21N/mm2 ・鉄筋 SD295A D10、D13 基準強度(N/mm2) Fc(圧縮) Ft(引張) Fb(曲げ) Fs(せん断) Fcv(めりこみ) ベイマツ 22.2 17.7 28.2 2.4 9.0 ひのき 20.7 16.2 26.7 2.1 7.8 すぎ 17.7 13.5 22.2 1.8 6.0 (3) 準拠規基準 ・ 「東日本大震災における津波による建築物被害を踏まえた津波避難ビル等の構造上の 要件に係わる暫定指針」 (2011.11) ・ 「2007 年版 建築物の構造関係技術基準解説書」 ・ 「木質構造設計規準・同解説 2006」 ・ 「木造軸組工法住宅の許容応力度設計 2008」 ・ 「建築基礎構造設計指針 2001」 ・ 「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 2010」 ・ 「小規模建築物基礎設計指針 2008」 Ⅱ-394 1.3 構造図 以降に、基礎伏図、基礎断面図、耐力壁配置図を示す。 図 1.5 基礎伏図 図 1.6 基礎断面図 Ⅱ-395 Ⅱ-396 図 1.7 耐力壁配置図 §2. 耐震設計概要 2.1 解析方針 建築基準法第 20 条第 4 号建物であるので、地震時の設計は建築基準法施行令第 46 条に よる壁量計算を行っている。 柱頭柱脚接合部の算定には、N 値計算を用いている。 水平構面は、構造用合板を根太レス構法で梁に直貼りされており、水平剛性は確保され ている。 2.2 設計荷重 建物重量の算定 表 2-1 上屋重量 W1 1 階床積載荷重 -0.600 74.115 Ⅱ-397 -44.469 2.3 建築基準法施行令第 46 条による壁量計算 表 2-2 壁量計算 Ⅱ-398 2.4 柱頭柱脚接合金物 平屋部分 2 階建ての 2 階部分 N=A∙B−L (A:壁の倍率) 2 階建ての 1 階部分 N = A2 ∙ B2 + A1 ∙ B1 − L (A2:2 階壁の倍率 A1:1 階壁の倍率) 図 2.1 柱頭柱脚接合金物伏図 Ⅱ-399 表 2-3 接合金物表(一部抜粋) Ⅱ-400 §3. 津波波圧、波力の算定 3.1 津波波圧の設定 津波波圧は、浸水深 h=2.0m、水深係数 a=1.5 として算定する。 以下に、波圧を示す。 津波波圧 q z = ρg(ah − z) ρg = 9.80 kN⁄m3とする。 図 3.1 津波波圧 Ⅱ-401 3.2 津波波力の算定 (1) 波力の算定方法 津波荷重時の水平耐力算定用の津波外力は、2 階の床位置に集中して働くものとする。こ の時の 2 階に働く外力は、1 階の階高の 1/2 の波力とする。 (2) 津波波力の計算 津波波力の計算は、受圧面の津波波圧と建物幅の積を高さ方向に積分したものに、開口 による低減係数を乗じたものとする。開口による低減係数は受圧面の面積と、受圧面積か ら全開口面積を減じた面積との比とする。この計算によって算出した低減係数が 0.7 未満の 場合は 0.7 とする。 但し、この設計例では、安全性を考慮して開口による低減係数を乗じないものとする。 ※ 基礎の設計および耐圧部材の設計のための津波波力は、各検討毎に改めて算定する。 図 3.2 津波波圧・波力 ①桁行方向(X 方向)の検討 受圧幅 B=8.645m 津波波圧の算定 qz = ρg(ah − z) = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 1.885)=10.93 kN/m2 津波波力の算定 Q z = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B (開口による低減を 1.0 とする) = {10.93 × (1.5 × 2.0 − 1.885)⁄2} × 8.645 = 52.68 kN Ⅱ-402 ②梁間方向(Y 方向)の検討 受圧幅 B=9.1m 津波波圧の算定 q z = ρg(ah − z) = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 1.885)=10.93 kN/m2 津波波力の算定 Q z = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B (開口による低減を 1.0 とする) = {10.93 × (1.5 × 2.0 − 1.885)⁄2} × 9.1 = 55.45 kN Ⅱ-403 §4. 浮力の算定 4.1 上部構造における浮力 建物の浸水深より下部では、建物内に水が流入して建物重量が水中重量となるため、 建物重量が小さくなる。建物重量としては、本設計例では以下のように考えた。 ・1 階の壁材は浮力が生じることを考慮して、上部階重量は地震力算定用の重量∑W1F を使用する。 ・1 階の積載荷重は考慮しないが、1 階床固定荷重は考慮する。 ・基礎重量については、鉄筋コンクリート比重を 24-10=14kN/m3 とする。 ・浸水する階より下の階では床下に空気溜りができて、これが浮力として働く。ただ し、本設計例では浸水深(2.0m)が開口の高さよりも低くなり、空気溜りができない ので浮力は発生しないこととなる。 4.2 浮力を考慮した建物重量 立上り部分 150 × 370 × 14⁄106 = 0.77 kN/m 外回り 150 × 370 × 14⁄106 = 0.77 kN/m 内回り 170 × 14⁄103 = 2.38 kN/m2 底盤 170 × 14⁄103 = 2.38 kN/m2 土間コンクリート べた基礎自重 外回り {(9.1 + 8.645) × 2 + 0.91 × 3 + 1.82 × 2} × 0.77 = 32.23 kN 内回り 0.91 × 82 × 0.77 底盤 土間 9.1 × 8.645 × 2.38 {(9.1 + 2.2) + (8.645 + 2.2)} × 2 × 2.2 × 2.38 合計 W2 浮力を考慮した建物全体重量 ∑Wf=W1※-1 階床積載荷重+W2 =(439.77 − 44.47) + 508.81=904.11 kN ※W1 は「§2 設計荷重」を参照 Ⅱ-404 = 57.45 kN = 187.23 kN = 231.90 kN 508.81 kN §5. 津波波力による耐圧部材の設計 5.1 設計方針 外部に面している構造部材は、津波による波力を直接受けるので、外部に配置されてい る構造耐力上主要な柱・間柱および筋かいについて、津波波力を受けた場合の検討を行う。 この場合、外壁サイディングに作用する波力が、サイディングを直接取り付けている柱・ 間柱に加力されるものとして算定する。又、外壁サイディングが破壊された後、波力が直 接筋かいに作用するものとして筋かいの断面算定をする。 津波波力及び漂流物の衝突により柱が損傷する恐れがある。ここでは、外部に面してい る柱・間柱が破壊されても建物全体が崩壊しないこと、すなわち、外周部の柱が鉛直支持 能力を失っても横架材によって隣接する柱へ軸力を伝達することができることを確認する。 なお、2 階まで浸水せず 2 階横架材等が健全であることや、水平剛性の高い床面が取付い ていることから 2 階横架材や床構面については検討対象外とした。 5.2 1 階柱・間柱の設計 1 階柱は、910mm 間隔に配置されており、中間に間柱が設置されていることから、柱・ 間柱は同じ大きさの波力を受けることとなる。ここでは、有効断面の小さい間柱(2×45× 120)の検討を行い、柱の(120×120)の検討を省略する。 図 5.1 津波波圧・波力 Ⅱ-405 P1 = q z = ρg(ah − z) 津波波圧の算定 = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 0.560) = 23.91 kN/m2 ∑P = Q z = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B 津波波力の算定 (開口による低減を 1.0 とする) = {23.91 × (1.5 × 2.0 − 0.560)⁄2} × 0.455 = 13.27 kN 反力 V1 = 13.27 × 2.136⁄2.949 = 9.61 kN V2 = 13.27 × 0.813⁄2.949 = 3.66 kN 応力 23.91×0.8132 ×0.455 M = 9.61 × 0.813 − � � − ��23.91 − 3 23.91×2 3 N = 0.45 × 0.455 × 2.949 = 0.60 kN Q = 13.27 × 2.136 ∕ 2.949 = 9.61 �× 0.813 �× 2 0.455×0.813 2 kN ひのき 無等級材 Fc=20.7N/mm2、Fb=26.7N/mm2、Fs=2.1N/mm2 断面 2×45×120 A =10.80×103 mm2 i=34.6 mm Z=0.216×106 mm3 I=12.96×106 mm4 λ =85.2 2 σb = 4.81⁄0.216 = 22.27 N/mm σb Fb + τ= τ Fs σc ηFc = 1.5×9.61 = 10.80 1.33 2.1 22.27 26.7 = 4.81 kNm + 0.06 0.448×20.7 = 1.33 N/mm2 = 0.63 < 1.0 Ⅱ-406 η=1.3-0.01λ=0.448 σc = 0.60⁄10.80 = 0.06 N/mm2 = 0.84 < OK 1.0 OK 5.3 側圧を受ける土台の応力、および側圧を受ける土台に直交する土台部分に生じる応力 に対する設計 側圧を受ける土台に生じる応力に対して、土台の水平耐力が上回ることを確認すると共 に、側圧を受ける土台の支点となる直交方向の土台の耐力が、側圧を受ける土台の直交反 力に対して上回ることを確認する。 図 5.2 津波波圧・波力 津波波圧算定 q z = ρg(ah − z) = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 0.42)=25.28 津波波力算定 (開口による低減を 1.0 とする) Q z = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B kN/m2 = {25.28 × (1.5 × 2.0 − 0.42)⁄2} × 9.1=296.76 kN Ⅱ-407 P = 296.76/9.10 = 32.61 kN/m M = 32.61 × 1.202 /12 = 3.91 kNm Q = 32.61 × 1.20/2=19.6 kN (1) 側圧を受ける土台の断面算定 Fb=26.7 N/mm2、Fs=2.1 N/mm2 ひのき 無等級材 A=14.4×103 mm 断面 120×120 σb = τ= 3.91 0.29 =13.48 N/mm2 1.5×19.6 14.4 = 2.04 N/mm2 Z=0.29×106 mm3 σb Fb = Fs = τ 20.2 26.7 = 0.76 < 1.0 2.1 = 0.97 < 1.0 OK 2.04 OK (2) 側圧を受ける直交方向の土台の設計 ひのき 無等級材 断面 120×120 Fc=20.7 N/mm2、Fcv=7.8 N/mm2 A=14.4×103 mm2 i=34.6 mm L=1200mm λ=34.7 η=1.00 ・側圧を受ける土台側面のめりこみ応力度 σcv=39.1/14.4=2.72 N/mm2 σcv/Fcv=2.72/7.8=0.35 ≦ 1.00 OK Ⅱ-408 ・控え土台の軸応力度 σc=39.1/14.4=2.72 N/mm2 σc/ηFc=2.72/(1.0×20.7)=0.13 ≦ 1.00 OK ・アンカーボルトの終局せん断耐力 Puo=9.8 kN/本 アンカーボルト M12 が 4 本程度配置されている。 アンカーボルト 1 本に生じるせん断力 Q=39.1/4=9.77 kN/本 Q/Puo=9.77/9.80=0.996 ≦ 1.00 OK ※アンカーボルトせん断耐力は§7.基礎の設計の詳細算定結果による値を採用している。 Ⅱ-409 5.4 側圧を受けるベタ基礎立上り部分の面外耐力の検討 底盤の上端より上方の波力が、ベタ基礎外周部立上り部分に作用する時の面外曲げモー メントとせん断力を求め、ベタ基礎外周部立上り部分の検討を行なっている。 図 5.3 側圧を受ける地中梁の検討 ・基礎立上り部天端より上方の津波による側圧 q z = ρg(ah − z) = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 0.42) = 25.28 kN/m2 ・基礎立上り部天端より上方の津波波力算定(1m 幅)(開口による低減を 1.0 とする) P = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B = {25.28 × (1.5 × 2.0 − 0.42)⁄2} × 1.0 = 32.61 kN/m ・基礎立上り部天端より下方の津波波力算定(1m 幅) W1=(3.0-0.42)×9.8×1.0=25.28 kN/m W2=(3.0-0.05)×9.8×1.0=28.91 kN/m ・波力による曲げモーメント、せん断力と立上り部分面外曲げ終局強度 M=32.61×0.37+(28.91-25.28)×0.372/6+25.28×0.372/2=13.88 kNm/m Q=32.61+(28.91+25.28)×0.37/2=42.64 kN/m Ⅱ-410 立上り部分 B×D=150×540mm 縦筋は D13@150 SD295A 検討用 d=150/2=75mm 耐力算定用縦筋は 6-D13 とする。 曲げ終局強度 Mu=0.9×127×6×295×1.1×75/106=16.69 kNm/m Mu/M=16.69/13.88=1.20 ≧ 1.00 OK Pt=127×6/(150×1000)×100=0.508 % Pw=0 とする。 M/Qd=13.88/(42.63×0.075)=4.34 → 0.068×0.5080.23 ×(21+18) + (3.0+0.12) Qu = � 3.00 とする。 0.85 × �(0 × 345)� × 150 × 1000 ∕ 1000=109.11 kN Qu/Q=109.11/42.63=2.56 ≧ 1.00 OK Ⅱ-411 5.5 側圧を受けた時の底盤の検討 側圧を受けた立上り部分から底盤に伝わる曲げモーメントと、長期荷重時の底盤の曲げ モーメントを合計した値を採用する。 10’通り、へ~と通り間について検討する。 ・波力による曲げモーメントと底盤の曲げ終局強度 側圧を受けた立上り部分から底盤に伝わる曲げモーメント M1 M1=13.88 kNm/m (5.4 参照) Ⅱ-412 長期荷重時の底盤の曲げモーメント w=904.11/(9.10×8.645)=1.15 kN/m2/m 固定端モーメント M2=w・L2/12=1.15×1.22/12=0.14 kNm/m 底盤の曲げモーメント M=M1+M2=13.88+0.14=14.02 kNm/m 底盤の曲げ終局強度 Mu(D13@150 SD295A) Mu=0.9×127×6×295×1.1×75/106=16.69 Mu/M=16.69/14.02=1.19 ≧ 1.00 Ⅱ-413 OK kNm/m 5.6 津波波力に対する 1 階外壁の面外耐力の検討 この建物の外壁は窯業系サイディング貼となっており構造部材ではないので、ここでは 窯業系サイディングの検討を省略する。 外壁窯業系サイディングが破損した場合、筋かいが面外方向に直接波力を受けるこにな ることから、筋かいの面外耐力の検討を行う。波力は筋かいに直接作用するものとし、受 圧幅は筋かい幅とする。波圧は 5.2 で算定した間柱算定用の値を用いる。筋かいは両端部柱 接合位置、中央部間柱接合位置で支持されているものとする。 計算を簡略に行う為、 荷重分布、応力の図を 右図とする。 津波波力の算定 w=23.91×0.09=2.15 kN/m 波力による曲げモーメント M=2.19×1.47552/8=0.60 kNm 波力によるせん断力 Q=2.19×1.4755/2=1.62 kN σb=0.60/0.03=20.0 N/mm2 σb/Fb=20.0/22.2=0.90 ≦ 1.0 τ=1.5×1.62/4.05=0.60 ≦ 1.0 OK OK 以上の結果より、1 階筋かいの面外曲げ耐力は、津波波力による曲げモーメント以上である ことを確認した。 Ⅱ-414 5.7 漂流物に対する検討 本設計例では、漂流物の衝突により、外部に面している柱材(特に上階を支持している 1 階柱)が損傷することを想定し、損傷した柱の軸力が横架材を介して隣接する柱に伝達で きるかの検討を行う。検討用の軸力については本設計時により得られた一次設計時の 1 階 軸力図をもとに、最も応力状態が不利になる条件にて横架材及び柱の検討を行うこととす る。 ここでは、A 柱(10’通り、と通り)が損傷した場合について検討する。 ・2階 10’通りへ~ぬ間大梁が A 柱軸力を受けたときの検討を行う。 ・A 柱の軸力を B 柱(10’通り、へ通り)が負担するものとして B 柱の算定を行う。 図 5.4 柱軸力図 Ⅱ-415 1) 10’通り、と通り柱が折損した場合の 10’通り、へ~ぬ間大梁の検討 P=16.49 kN(柱軸力) M=16.49×0.91×2.73/3.64=11.25 kNm Q=16.49×2.73/3.46=13.01 kN ベイマツ 無等級 120×240 断面 Fb=28.2 N/mm2 Fs=2.4 N/mm2 A=28.8×103 mm2 Z=1.152×106 mm3 σb=11.25/1.152=9.77 N/mm2 σb/Fb=9.77/28.2=0.35 < 1.00 τ = 1.5 × 13.01/28.8 = 0.68 OK N/mm2 τ⁄Fs = 0.68⁄2.4 = 0.28 < 1.00 OK 以上の結果より、A 柱が折損して鉛直支持力が失われたとしても、2 階大梁が A 柱負担 鉛直力を支持することができ、崩壊はしないと判断する。 2) 10’通り、と通り柱の軸力をへ通りの柱が負担した時の検討 軸力 ひのき 断面 無等級 120×240 N = 16.49 + 12.07 = 28.56 kN Fc=20.7 N/mm2 Fs=2.1 N/mm2 A=14.4×103 mm2 Z=0.29×106 mm3 i=34.6 mm L=2.949 mm λ=85.2 η=1.3-0.01λ=1.3-0.01×85.2=0.45 σc=28.56/14.4=1.98 kN/mm2 σc/ηFc=1.98/(0.45×20.7)=0.21 ≦ 1.00 OK 以上の結果より、A 柱が折損して鉛直支持能力が失われたとしても、隣接する B 柱が鉛 直力を支持することができ、崩壊はしないと判断する。 Ⅱ-416 §6. 津波荷重時水平耐力の検討 6.1 設計方針 津波荷重時の水平耐力は、耐力壁の許容せん断力を 1.5 倍して検討を行う。 また水平構面・接合部に対する検討等も原則、部材の短期許容耐力の 1.5 倍した耐力を終 局耐力として検討する。 なお、本設計例においては津波荷重の検討は終局耐力の検討であることから水平耐力を、 Qui = 各層の有効存在壁長 × 1.96 × 1.5 とする。 6.2 津波波力と水平耐力との比較 1) 桁行方向(X 方向)の検討 津波荷重時層せん断力 終局水平耐力算定 Qz = 52.68 kN(§3 津波波圧、波力の算定参照) Q ui = 1 階有効存在壁長 × 1.96 × 1.5 =42.77×1.96×1.5=125.74 kN 水平耐力/津波荷重時層せん断力=Qui/Qz=125.74/52.68=2.39 ≧ 1.00 OK 2) 梁間方向(Y 方向)の検討 津波荷重時層せん断力 終局水平耐力算定 Qz = 55.45 kN(§3 津波波圧、波力の算定参照) Q ui = 1 階必要壁長 × 1.96 × 1.5 =41.86×1.96×1.5=123.07 kN 水平耐力/津波荷重時層せん断力=Qui/Qz=123.07/55.45=2.22 ≧ 1.00 OK 以上の結果より、1 階の耐力壁の水平耐力は津波波力以上であることを確認した。 Ⅱ-417 6.3 津波荷重時の鉛直構面柱頭柱脚接合金物の設計 津波荷重時の柱頭柱脚接合部に生じる引抜力に対して、柱頭柱脚接合部耐力が上回るよ うに接合金物を設計する。検討条件は以下とする。 ・引抜力の算定は N 値計算法に準拠した方法を用いる。引抜力算定時の壁の倍率は、建 築基準法施行令第 46 条の数値の 1.5 倍とする。 ・接合金物の終局引抜耐力は短期許容引抜耐力の 1.5 倍とする。 ・津波荷重を負担している壁は 1 階のみなので、1 階のみの検討とする。 ここで、津波波力を受ける時の柱頭柱脚接合部の引抜力は、N’=1.5×A×B-L とする。 A:建築基準法施行令第 46 条による壁の倍率 B:当該柱の周辺部材による曲げ戻し効果を表す係数 0.5(出隅柱においては 0.8) L:2 階建ての 1 階の押え効果を表す係数 1.6(出隅柱においては 1.0) 平屋部分の押え効果を表す係数 0.6(出隅柱においては 0.4) 1) N 値計算手法を参考にして、柱頭柱脚接合金物を計算する。 N’=1.5×A×B-L 平屋部分 (A:壁の倍率) 2 階建ての 1 階部分 N’=1.5×A2×B2+1.5×A1×B1-L (A2:2 階壁の倍率 A1:1 階壁の倍率) 2) 2 階床に浮力が生じる場合は、浮力を考慮して計算する。 ただし、簡便法として L=0 として計算してもよいものとする。 本設計例では、2 階床に浮力が生じないので L を上記表の値とする。 3) 接合金物の耐力は以下のうち、いづれか小さい方の値とする。 ・終局耐力(荷重変形関係から算出した値、またはカタログなどに示された値) ・短期許容引張耐力の 1.5 倍 Ⅱ-418 4) 1 階柱頭柱脚接合金物の算定 ①通り、い通り柱(隅柱)の検討 2 階筋かい 45×90 A2=2.5 B2=0.8 1 階筋かい 45×90たすき A1=4.0 B1=0.8 L=1.0 N’= 1.5A2 ∙ B2 + 1.5A1 ∙ B1 − L = 1.5 × 2.5 × 0.8 + 1.5 × 4.0 × 0.8 − 1.0 = 6.8 接合金物耐力 N’=1.5×4.7=7.05 金物 り(N 値=4.7) (N’=6.8) ≦ (接合金物耐力 N’=7.05) OK ①通り、ろ通り柱(その他柱)の検討 2 階筋かい 45×90 A2=1.5 B2=0.5 1 階筋かい 45×90たすき A1=4.0 B1=0.5 L=1.6 N’= 1.5A2 ∙ B2 + 1.5A1 ∙ B1 − L = 1.5 × 1.5 × 0.5 + 1.5 × 4.0 × 0.5 − 1.6 = 2.53 接合金物耐力 N’=1.5×1.8=2.7 金物 へ(N 値=1.8) (N’=2.53) ≦ (接合金物耐力 N’=2.7) OK 全ての柱の計算結果を次頁以降の表 6.1.1~6.1.4 に示す。 Ⅱ-419 表 6.1 柱頭柱脚接合金物の算定 表 6.1.1 Ⅱ-420 表 6.1.2 Ⅱ-421 表 6.1.3 Ⅱ-422 表 6.1.4 Ⅱ-423 §7.基礎の設計 7.1 設計方針 べた基礎の終局強度設計を行い、津波荷重による転倒及び滑動に対して安全であること を確認する。 なお、ここでは建物外周の地表面は舗装されていることから、表層地盤が洗掘される恐 れがないとして、基礎の設計を行なっている。 (1) 転倒について 津波荷重による転倒モーメントに対して、浮力を考慮した建物自重による転倒抵抗モ ーメントが上回ること、同時に地盤極限支持力を考慮した転倒抵抗モーメントが上回る ことを確認する。 なお、ベタ基礎であり地中梁の剛性は十分高いとして、底盤は剛体と仮定する。 (2) 滑動について 建物全体に作用する津波波力に対して、建物の滑動限界耐力が上回ることを確認する。 なお、直接基礎であるので、滑動限界耐力は浮力を考慮した建物重量に摩擦係数 0.5 を乗 じた値とする。 (3) 基礎アンカーボルトの検討について 各方向時で所要するアンカーボルトの終局せん断耐力が、津波荷重時に生じる津波波 力を上回ることを確認する。また、アンカーボルト設置位置において、コーン破壊しない ことを確認する。 Ⅱ-424 7.2 転倒に対する検討(梁間方向) (1) 建物の浮き上がりによる転倒の検討 津波荷重による転倒モーメントは、地盤面上部の津波波力の作用心から地盤面までの 距離を考慮した転倒モーメントとする。本設計例では、転倒モーメントが大きく且つ、転 倒抵抗モーメントが小さくなる梁間方向について検討を行う。転倒抵抗モーメントは建物 重量に建物奥行寸法の 1/2 を乗じた値とする。この場合、土間コンクリートは考慮しない。 図 7.1 転倒に対する検討 図 7.2 転倒抵抗モーメント Ⅱ-425 ・転倒モーメント算定 q z = ρg(ah − z) 津波波圧算定 = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 0.0) = 29.40 kN/m2 津波波力算定 (開口による低減を 1.0 とする) 津波波力による転倒モーメント Q z = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B = {29.40 × (1.5 × 2.0 − 0.0)⁄2} × 9.1 = 401.3 kN Mo = Q z ∙ ah⁄3 = 401.3 × 1.5 × 2.0⁄3 = 401.30 ・転倒抵抗モーメント算定 建物重量による抵抗モーメント Mo≦Mr Mr = W ∙ D⁄2 OK = 904.11 × 8.645⁄2 = 3908.0 kNm kNm 以上より、津波荷重時転倒モーメントよりも、建物重量による転倒抵抗モーメントが上 回り、転倒しないことを確認した。 Ⅱ-426 (2) 転倒モーメントによる圧縮側接地圧の検討 1.30 0.051 e = M⁄P =401.3⁄904.11 = 0.443 m e⁄L = 0.443⁄8.645=0.051 図表より、α=1.30 となる。 圧縮側接地圧 w = α ∙ P⁄A = 1.30 × 904.11⁄(9.10 × 8.645)=14.9 kN/m2 長期許容支持力度 30kN/m2 なので極限支持力度を 30×3=90 kN/m2 とする。 14.9 kN/m2 ≦ 90 kN/m2 OK 以上より、津波荷重転倒モーメントによる圧縮接地圧が、極限支持力度以下であり地盤 の崩壊がおこらないことを確認した。 Ⅱ-427 7.3 滑動に対する検討(梁間方向) ここでは、津波波力の大きい梁間方向について検討を行なっている。 図 7.3 滑動に対する検討 (1) 基礎に生じる津波の水平荷重の算定 q z = ρg(ah − z) 津波波圧の算定 = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 0.0)=29.40 kN/m2 津波波力の算定 (開口による低減を 1.0 とする) 基礎に生じる津波の水平荷重 Qz = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B = {29.40 × (1.5 × 2.0 − 0.0)⁄2} × 9.1=401.3 kN ∑Q k = Q z=401.30 kN (2) 建築物の滑動抵抗力の算定 建築物の滑動抵抗力 μW μW=0.5×904.11=452.06 kN (すべり摩擦係数μを 0.50 とする) ∑Qk≦μW OK 以上より、津波荷重時水平荷重よりも滑動抵抗力が上回り、滑動しないことを確認した。 Ⅱ-428 7.4 基礎アンカーボルト接合部の津波波力に対する検討(梁間方向) アンカーボルトの終局せん断耐力が、津波荷重時に生じる津波波力を上回ることを確認 する。 (ここでは、津波波力の大きい梁間方向について検討を行なっている。 ) アンカーボルト 1 本あたりの終局せん断耐力:Puo=ru×Py =1.2×8.17=9.8 kN/本 アンカーボルト 1 本あたりの降伏耐力:Py=C×Fc×d×L =0.274×20.7×12×120=8.17 kN/本 接合型式係数:C = (d⁄L) × �(2 ×⋎∕ 3) =(12/120)×�2 × 11.3/3=0.27 アンカーボルトの径:d =12mm 土台の有効せい:L =120mm アンカーボルトの基準材料強度と土台の基準支圧強度の比:γ=sft/Fc =235/20.7=11.3 アンカーボルトの基準材料強度:sft=235N/mm2 土台の基準支圧強度:Fc=20.7N/mm2 ひのき無等級材 終局強度比:ru=1.2 降伏モードⅣ より アンカーボルトⅠ本あたりの終局せん断耐力 M12:Puo=9.8 kN/本 図 7.4 津波波圧・波力 Ⅱ-429 (1) 基礎アンカーボルトに生じる津波の水平荷重の算定 q z = ρg(ah − z) 津波波圧の算定 = 1.0 × 9.8 × (1.5 × 2.0 − 0.42)=25.28 kN/m2 津波波力の算定 (開口による低減を 1.0 とする) Q z = {q z ∙ (ah − z)⁄2}B = {25.28 × (1.5 × 2.0 − 0.42)⁄2} × 9.1=296.76 kN 基礎アンカーボルトに生じる津波の水平荷重 ∑Qa = Q z=296.76 kN (2) 基礎アンカーボルトの終局せん断耐力の算定 基礎アンカーボルトの終局せん断耐力 ∑(Puo・n)=9.8×144=1411.2 kN (n:ボルトの本数) ∑Qa≦∑(Puo・n) OK 以上より、津波荷重時の水平耐力よりも基礎アンカーボルトの終局せん断耐力が上回り、 基礎アンカーボルトが水平方向に降伏しないことを確認した。 Ⅱ-430 7.5 コンクリート躯体内のアンカーボルトせん断耐力の検討 コンクリート躯体中に定着されたアンカーボルト 1 本あたりのせん断耐力 qa は下式の値 の最小値を採用する。また、ここで算出された耐力がアンカーボルト接合部における終局 せん断耐力以上であることも確認する。 コンクリート躯体中アンカーボルトの終局せん断耐力:qa = min(qa1, qa2, qa3) アンカーボルトのせん断強度により決まる終局せん断耐力:qa1 = ϕ1 ∙s σqa ∙sc a 定着したコンクリート躯体の支圧強度により決まる終局せん断耐力:qa2 = ϕ2 ∙c σqa ∙sc a 定着したコンクリート躯体のコーン破壊により決まる終局せん断耐力:qa3 = ϕ2 ∙s σt ∙ Aqc 低減係数:φ1、φ2 ※終局耐力算定なのですべて 1.0 とする。 アンカーボルトのせん断強度:sσqa=0.7・sσy ※規格降伏点強度:sσy=295N/mm2 アンカーボルトの断面積:sca=84.3mm2 (M12 の有効断面積) ※公称断面積とネジ部有効断面積の小さい方を採用 コンクリート支圧強度:cσqa=0.5√Fc ∙ Ec コーン破壊に対するコンクリート引張強度:sσt=0.31√Fc コンクリートの設計基準強度:Fc=21N/mm2 コンクリートのヤング係数:Ec=21.5×103N/mm2 ※Fc21 としたときのヤング係数 せん断力に対するコーン破壊面の有効投影面積:Aqc=0.5πc2 ※ c:へりあき寸法を示し、c=75mm として検討 ・アンカーボルト M12 のせん断耐力算定 qa1 = 1.0 × 0.7 × 295 × 84.3⁄103 = 17.4 kN qa2 = 1.0 × 0.5√21 × 21500 × 84.3⁄103 = 28.3 kN qa3 = 1.0 × 0.31√21 × 0.5 × π × 752⁄103 = 12.5 kN qa = min(qa1, qa2, qa3) = 12.5 kN ∕ 本 > Puo=9.8 kN/本 上記の結果より、コンクリート躯体内のアンカーボルト終局せん断力は、土台とアンカ ーボルトとの接合部の耐力以上であり、アンカーボルトの設計用終局せん断耐力は土台と アンカーボルトとの接合部耐力を採用する。 Ⅱ-431 付録: 1. 混構造住宅の津波浸水のおそれがある地域における設計上の留意事項 津波荷重に対しては、下図のように各階が負担する外力に応じて、それぞれ各構造 部分毎の設計を行う。なお、各構造部分の設計については木造及びRC造の設計例を 参照のこと。 W 木造 木造部が 負担する 津波荷重 W 津波荷重 W W RC + 木造部が負担 した津波荷重 RC部が 負担する 津波荷重 Q RC RC RC造 図 1.1 混構造住宅の津波荷重時の外力分担 2. 混構造の設計は、上層の構造部分に生じた応力を下層の異種構造部分に円滑に伝達 することが重要となる。従って、異種構造間を接合しているアンカーボルトや金物な どの接合部耐力が津波荷重に対して安全であることを確認することが必要である。 引き寄せ金物 出隅柱 RC造 NL2 NE1 NE2 NL2 NL1 NE2 NE1 木造 Qt 引寄金物 埋め込み長さ 木造 中柱 NL1 アンカーボルト GL RC造 アンカーボルト 図 1.2 異種構造間荷重伝達要領 図 1.3 木造とRC造との接合例 Ⅱ-432 3. 全階を木造として設計した場合の建物重量と、1階及び1~2階をRC造とした混 構造の建物重量とを比較した場合、明らかに混構造の建物重量が大きいので、津波荷 重時に生じる転倒及び滑動については一般的には有利なると考えられる。 ただし、浸水深下の床下の空気溜りの設定や、直接基礎形式としてピットを有する ベタ基礎とした場合などはピット空間が空気溜りとなるので、空気溜り分の浮力が生 じることになり、鉄筋コンクリート分の重量を打ち消すことが考えられる。このこと は転倒及び滑動に対して大きく影響を与える場合がある。なお、浮力に対する対応の 一例が下図のように考えられる。 津波荷重 津波荷重 津波荷重 浸水深 浮力 浸水深 床下空間の空気溜り 分の浮力が生じる 浮力 浮力 浸水深 浮力 浮力 ピット空間が空気溜りと なり浮力が生じる ピットを中止して1階床下 は埋め戻し等をして、空気 溜りを無くす。 良好な地盤においても 転倒滑動防止用の杭を 計画する場合がある 図 1.4 浮力に対する対応の一例 Ⅱ-433 Ⅱ-434