Comments
Description
Transcript
B-9 「表面プラズモン共鳴法を利用した1細胞屈折率可視化技術の開発」
B 会場(白鳥) 15:35∼16:00 表面プラズモン共鳴法を利用した 1細胞屈折率可視化技術の開発 広島大学 大学院医歯薬学総合研究科 皮膚科学 助教 柳瀬 雄輝 ● プレゼン技術の概要 本技術では,従来の表面プラズモン共鳴(SPR)光学系に対物レンズ・CMOS カメ ラを組み合わせて,センサ表面上の屈折率分布を二次元的に観察することで,1細胞 毎の刺激応答(屈折率変化)を可視化することに成功した。 ● プレゼン技術の特徴 ・1細胞屈性率の可視化 ・マルチチャンネル細胞応答解析 ・サンプルの微量化 ● 想定される用途 ・アレルギー診断 ・細胞機能解析 ・腫瘍診断 103 バ イ オ ● 従来技術・競合技術との比較 本技術により,従来技術では不可能であった,1細胞レベルの屈折率分布を可視化で きるため,微量サンプルを使った生細胞刺激応答の解析,正常細胞中の異常細胞応答 の検出や,様々な刺激に対する細胞応答を同時に解析することが可能となった。 表面プラズモン共鳴法を利用した 生細胞応答可視化技術の開発 広島大学 広島大学 医歯薬学総合研究科皮膚科学 助教 柳瀬 雄輝 医歯薬学総合研究科皮膚科学 教授 秀 道広 研究背景 表面プ ズ 表面プラズモン共鳴(SPR;Surface 共鳴(SPR S f Plasmon Pl Resonance)は 生きた細胞の刺激応答を非標識 Resonance)は、生きた細胞の刺激応答を非標識、 リアルタイムかつ高感度に検出できることから、細 胞機能を解析するバイオ研究支援装置及び臨床 診断装置への応用が期待される。 研究の目的 ・個々の生細胞の刺激応答を非標識・ リアルタイムに検出できる技術の開発 ・超微量の血液から迅速・正確に原因 抗 を特定 き 次世代 抗原を特定できる、次世代アレルギー ギ 診断法の開発 表面プラズモン共鳴(SPR)センサの測定原理 エバネッセント波 波 波数の一致により共鳴 (入射角度・屈折率に依存) 金薄膜 プラズモン波 反射光 入射光 反射光が最も減衰する入射角度(共鳴角)変化からセンサ上の屈折率変化を検出できる (a) 結合前 (b) 結合後 屈折率変化の測定例 金薄膜 YY YY YY YY 検出範囲 数百nm 共鳴角 入射光 θ プリズム ⊿θ 入射光角度 反射光 フォトダイオード 屈折率変化量 (結合量) 時間 Living-Cell SPR (CSPR) (細胞応答測定用SPR) DNP-HSA 抗原 細胞高 数μm μ RBL 細胞 YY 抗DNP-HSA IgE抗体 抗原の結合より も大きな変化 検出範囲 数百nm θ 入射光 時間 反射光 特徴 (Hide M, et al. Anal Biochem 302: 28-37, 2002) 刺激による膜近傍屈折率変化を検出 1.生きた細胞の刺激応答を検出できる(生体に近い) 2.無標識でよい(細胞を痛めない・本来の状態を損わない) 3.迅速(リアルタイム)・高感度 4 従来の方法とは全く異なる細胞機能測定原理に基づく 4.従来の方法とは全く異なる細胞機能測定原理に基づく (細胞膜近傍の屈折率変化(ヒスタミン遊離とは無関係)) 従来のSPR技術の問題点 ・1細胞の変化を検出することはできない (細胞機能解析 試料の微量化に適さない) (細胞機能解析、試料の微量化に適さない) ・マルチチャンネル化が困難 マルチチャンネル化が困難 (スクリーニング装置に適さない) ・異なる細胞を個別に測定できない (シグナルが平均化され小さな反応が見逃されてしまう) 1細胞応答解析用SPRイメージング(SPRI)の開発 細胞応答解析 グ( ) 従来のSPR光学系に対物レンズ、CMOSカメラを組み合わ 従来のSPR光学系に対物レンズ CMOSカメラを組み合わ せてセンサ上の屈折率分布を二次元的に解析できる。 1細胞応答解析用SPRイメージング装置図・測定原理 フロー フ チャンバ 刺激物投与 金薄膜(50 nm) ) 蒸着ガラス基板 56° 生細胞 対物レンズ SPRイメージ 細胞 半導体レーザ (630nm) 偏光板 プリズム (RI=1.72) 生細胞屈折率可視化原理 (a) (b) (c) 共鳴曲線 (a) 緩衝液 (b) 生細胞(無刺激) (c) 生細胞(刺激) ⊿Intensity (反射光強度変化) 細胞と緩衝液の屈折率の 違いによる反射光強度差 入射光角度 恒温装置 (37℃) 56° CMOS カメラ RBL-2H3細胞のSPRイメージ RBL-2H3マスト細胞を刺激した時の1細胞屈折率変化 0 min i 10 min i 20 min i 50 1 2 3 4 5 average 無刺激 激 ⊿Intenssity 40 30 20 10 0 -10 0 600 1200 1800 Time (second) 1 2 3 4 5 average 50 ⊿Inntensity 40 30 20 10 0 DNP-HSA -10 0 反射光強度 600 1200 1800 Time (second) (Yanase Y, et al. Biosens Bioelectron 26: 674-681, 2010) 刺激後の1細胞レベルでの活性化(細胞膜近傍屈折率変化) をリアルタイムに検出できる。 刺激後の細胞内局所での屈折率変化 刺激前 M i Movie (Yanase Y, et al. Biosens Bioelectron 26: 674-681, 2010) 細胞中心付近 細胞辺縁 100 ⊿IIntensity 刺激(DNP HSA)20分後 刺激(DNP-HSA)20分後 ・細胞の中心付近に特に高屈折率の 領域が観察された 80 ・刺激後の屈折率変化パターンは細 胞中心付近と、細胞辺縁では異なる 60 40 20 DNP-HSA DNP HSA 0 0 600 1200 Time (second) 1800 これまで見えていなかったものを れまで見えていなかったものを 可視化することで、新しい細胞機 能の解明につながるかもしれない まとめ① ・細胞の活性化時の細胞膜近傍の屈折率変化を1細胞レベ ルでモニタリングできた グ き ・細胞局所における屈折率分布変化を観察できるため、屈 折率変 折率変化のメカニズムの解析が容易になった 解析 容易 ・1細胞毎の解析が可能なため 1細胞毎の解析が可能なため、1細胞、もしくは数個の細 1細胞 もしくは数個の細 胞を1スポットとした多チャンネル化が可能であり、多種類 の刺激物質に対する細胞(群)の反応性を効率的に検出 するハイスループットスクリーニングが可能 I型アレルギー診断法としての応用例 型 ギ 診 法 応 例 抗原に対する好塩基球の応答を利用したアレルギー診断 Ⅰ型アレルギー発症機構 抗原:食物、ダニ、花粉、汗等 原因細胞 好塩基球:血中に存在 好塩基球 中 存在 肥満細胞:組織中に存在 YY 細胞活性化 IgE抗体(各抗原に特異的) Anti-IgE ヒスタミン、脂質メディエータ 炎症性サイトカイン等放出 I型アレルギー症状の誘発 アナフィラキシーショック、食物アレルギー、気管支喘息、花粉症、 蕁麻疹等、アトピー性皮膚炎 原因細胞を活性化する抗原の種類を正確に特定できれば、抗原 から隔離することでアレルギー症状の発症を予防でき、減感作治療 も選択し得る。 SPRIを使ったアレルギー診断の利点 ・患者から採取した細胞自体の反応は生体内での反 応を良く反映するため、信頼性の高い結果が得られ る。 ・1細胞レベルの屈折率変化を感度良く検出できる ため 採取血液量の超微量化が期待できる ため、採取血液量の超微量化が期待できる。 ・1視野内で複数の細胞の反応を同時に検出できる 1視野内で複数の細胞の反応を同時に検出できる ため1チップでのアレイ化が可能である。 方法 分離前 10 ②好塩基球分離(磁気ビーズ法) Y Y Y 磁気ビーズ付抗体 (好塩基球以外の細胞を認識) 強力 マグネット Y Y 金属ビーズ 充填カラム (抗体が結合 た (抗体が結合した 細胞をトラップ) FL4-H: C CD203c 10 0.1 2.53 3 102 10 1 10 0 10 86.4 0 好塩基球 11 10 ③細胞固定 抗好塩基球抗体BA312(塩野義製薬)による固定 金薄膜(50 nm) 蒸着ガラス板 YYYYYYY ④SPRI測定 レーザ 10 4 10 3 10 2 10 1 1 2 10 10 FL2-H: CD123 3 10 4 0.067 4.1 100 0 10 92.3 3.53 10 1 2 10 10 FL2-H: CD123 3 10 純度90%以上の好塩基球を分離 (FACS解析) 抗好塩基球抗体 (BA312:塩野義製薬) 対物 レンズ 偏光板 分離後 4 FL4-H: C CD203c ①採血:EDTA入り真空採血管 CMOS カメラ センサチップ上に固定 センサチ プ上に固定 された好塩基球 AOI(測定領域) 1細胞毎の光強度変化を 観察・経時的にプロット 4 ヒト好塩基球をanti-IgE刺激したときの1細胞屈折率変化 無刺激 屈折率 25 1 2 3 4 5 Average 20 15 10 Buffer 5 0 -5 0 600 1200 時間(秒) 1800 1 2 3 4 5 Average 25 光強度(屈折 折率)変化 光強 強度(屈折 折率)変化 anti-IgE刺激 刺激 20 15 屈折率 10 5 0 -5 anti-hIgE 0 600 1200 時間(秒) 1800 ヒト好塩基球を抗原刺激したときの1細胞屈折率変化 (アトピー患者例) ヒスタミン遊離 SPRI解析 80 光強度 度変化 ヒスタミン遊 遊離(%) 100 60 40 20 0 汗 40 35 30 25 20 15 10 5 0 -5 anti-IgE ダ 抗 ダニ抗原 スギ抗原 汗抗原 0 600 1200 時間(秒) 1800 aIgE ダニ スギ 抗原 ダニ スギ 汗 抗原 ダニ スギ 汗 反応 陽性 陰性 陽性 反応 強 無 強 健常人、アトピー性皮膚炎患者の好塩基球を 汗抗原刺激したときの細胞屈折率変化 ** 抗原に対する反応(過敏性の有無)を感度良く診断することができる ダニ感作、非感作患者から採取した好塩基球の ダ 抗原 対する反 性を同チッ ダニ抗原に対する反応性を同チップ上で解析 解析 ヒスタミン遊離 SPRI解析 ヒスタミン遊離(%) 30 ドナー1 25 ドナー2 ダニ抗原刺激 20 15 10 5 0 無刺激 ダニ 無刺激 ダニ ドナー1 ドナー2 ダニ感作(+) ダニ感作(-) 各0.7μl細胞液 屈折率 同チップ上で抗原に対する好塩基球の反応性の違いを検出可能 まとめ② ・ヒト血液から分離した好塩基球の種々な抗原に対す る刺激応答を1細胞レベルで検出できた。 る刺激応答を1細胞レベルで検出できた →数個の好塩基球で診断可能(採血の超微量化) ・疾患、ヒスタミン遊離との高い相関性が認められた。 →再現性・信頼性の高い診断 ・複数の患者から採取した好塩基球の抗原刺激応 答を1センサチップ上で同時に解析することにも成功し た。 →多種類の抗原に対する反応をチップ上で網羅的に スクリ ニングが可能 スクリーニングが可能 想定される用途 • 1生細胞機能解析 非標識細胞の細胞内屈折率分布を観察 • アレルギ アレルギー診断 診断 好塩基球、T細胞、B細胞の刺激応答解析 • 腫瘍診断 正常細胞と腫瘍細胞の刺激応答の違いを利用 実用化に向けた課題 • リアルタイム1細胞応答解析法の確立 個々の細胞における光強度変化をリアルタイムに 解析する技術(画像解析法) • 1細胞応答解析用SPRイメージング装置の作製 装置の作製(現在の光学系は手作り) • 多チャンネル同時解析のための測定チップの開発 網羅的解析のためのマルチチャンネルチップ 企業への期待 業 期待 • ヒト末梢血からの迅速血球細胞(好塩基球等) 分離技術を探索中 • ガラス基板 ガラス基板への金薄膜の蒸着パターニング技 の金薄膜の蒸着パタ ング技 術を持つ企業との共同研究を希望 • 1細胞機能解析・臨床検査分野(アレルギー・ 細胞機能解析 臨床検査分野(ア ギ 腫瘍検出)への展開を考えている企業には、本 技術の導入が有効と思われる 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :細胞活性分析装置及び細胞 活性分析方法 • 出願番号 :特願 特願 2010-061710 2010 061710 • 出願人 :国立大学法人広島大学 • 発明者 :秀 道広、柳瀬 雄輝 お問い合わせ先 広島大学 産学・地域連携センター TEL 082-421-3631 FAX 082-421-3639 082 421 3639 e-mail techrd@hiroshima-u.ac.jp @ jp