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(57)【要約】 本発明は、脂質またはリポタンパク質代謝に関与し、かつ薬物

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(57)【要約】 本発明は、脂質またはリポタンパク質代謝に関与し、かつ薬物
JP 2006-520189 A 2006.9.7
(57)【 要 約 】
本発明は、脂質またはリポタンパク質代謝に関与し、かつ薬物標的として役立つであろう
遺伝子を同定するためのモデルとしての線虫の使用に関する。また、本発明は、心血管障
害および異脂肪血症などの、脂質(たとえば、コレステロール)もしくはリポタンパク質
( た と え ば 、 LDL) ( 例 え ば ) の 望 ま し く な い か 、 ま た は 異 常 な レ ベ ル と 関 係 す る 疾 患 の
治療または予防に有用な薬物をスクリーニングするための系を提供する。
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整する化合物を同定するための方法であ
って:
( a) 試 験 線 虫 と 化 合 物 を 接 触 さ せ る こ と と ;
( b) 前 記 試 験 線 虫 の 表 現 型 を 、 前 記 化 合 物 と 接 触 さ れ て い な い 線 虫 の 前 記 表 現 型 と 比
較することと、
を含み、前記表現型の修飾は、脂質またはリポタンパク質の調整されたレベルと相関し、
前 記 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列
発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 ; お よ び ( iv) 後 胚 発 生 の 速 度 か ら な る 群 よ り 選 択 さ
10
れ、
これにより、前記表現型の相違によって前記化合物を同定する方法。
【請求項2】
線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整する遺伝子を単離するための方法であ
って:
( a) clk-1遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 を 含 む 線 虫 を 突 然 変 異 生 成 に 供 し て 、 試
験線虫を製作することと;
( b) 突 然 変 異 生 成 に 供 し て い な い 線 虫 の 表 現 型 と 比 較 し て 、 修 飾 さ れ た 表 現 型 を 示 す
試験線虫を同定することであって、前記修飾された表現型は、脂質またはリポタンパク質
の 調 整 さ れ た レ ベ ル を 示 し 、 前 記 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発
20
達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 ; お よ び ( iv) 後 胚 発 生
の速度からなる群より選択されることと;並びに、
( c) 工 程 ( a) で 変 異 さ れ た 遺 伝 子 を 工 程 ( b) の 試 験 線 虫 か ら ク ロ ー ニ ン グ す る こ と
を含む方法。
【請求項3】
線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整する遺伝子を同定するための方法であ
って、
( a) clk-1遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 を 含 む 試 験 線 虫 を 、 線 虫 遺 伝 子 の 発 現 レ
ベルを特異的に減少させる核酸と接触させることと;および、
( b) 前 記 核 酸 と 接 触 し て い な い 線 虫 の 表 現 型 と 比 較 し て 、 修 飾 さ れ た 表 現 型 を 示 す 試
30
験線虫を同定することと、
を含み、前記試験線虫における前記表現型の修飾は、前記試験線虫の遺伝子線虫が脂質ま
た は リ ポ タ ン パ ク 質 の レ ベ ル を 調 整 す る こ と を 示 し 、 前 記 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル
の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度
; お よ び ( iv) 後 胚 発 生 の 速 度 か ら な る 群 よ り 選 択 さ れ る 方 法 。
【請求項4】
前 記 核 酸 が ア ン チ セ ン ス 核 酸 お よ び 二 重 鎖 RNA分 子 か ら な る 群 よ り 選 択 さ れ る 、 請 求 項
3に記載の方法。
【請求項5】
前 記 接 触 が 、 前 記 核 酸 を 含 む 細 菌 と 共 に 線 虫 を 与 え る こ と を 含 む 、 請 求 項 4に 記 載 の 方
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法。
【請求項6】
脂質またはリポタンパク質のレベルが調整された線虫を選択するための方法であって:
( a) 試 験 線 虫 を 処 理 し て 脂 質 ま た は リ ポ タ ン パ ク 質 の レ ベ ル を 調 整 す る こ と と ; お よ
び、
( b) 処 理 さ れ て い な い 線 虫 の 表 現 型 と 比 較 し て 、 修 飾 さ れ た 表 現 型 を 示 す 試 験 線 虫 を
同定することと、
を含み、前記試験線虫において脂質またはリポタンパク質が調整されたレベルは、修飾さ
れ た 表 現 型 に よ っ て 示 さ れ 、 前 記 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発
達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 ; お よ び ( iv) 後 胚 発 生
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の速度からなる群より選択される方法。
【請求項7】
請 求 項 1ま た は 6に 記 載 の 方 法 で あ っ て 、 前 記 試 験 線 虫 は 、 ( a) clk-1遺 伝 子 に 少 な く と
も 1 つ の 突 然 変 異 ; ( b) clk-1遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 お よ び dsc-3遺 伝 子 に
少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 ; ま た は ( c) clk-1遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 お よ び
dsc-4遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 を 含 む 方 法 。
【請求項8】
請 求 項 1、 2、 3、 4、 5、 ま た は 6に 記 載 の 方 法 で あ っ て 、 工 程 ( b) に お け る 前 記 試 験 線
虫 の 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ の 減 少 ; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生
殖 系 列 発 達 の 速 度 の 増 大 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 の 増 大 ; ま た は ( iv) 後 胚 発 生 の 速 度 の
10
増大によって修飾される方法。
【請求項9】
単離された核酸であって:
( a) SEQ ID NO: 1ま た は SEQ ID NO: 7の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 ;
( b) SEQ ID NO: 2ま た は SEQ ID NO: 8の ア ミ ノ 酸 配 列 を コ ー ド す る ヌ ク レ オ チ ド 配 列
:
( c) SEQ ID NO: 1ま た は SEQ ID NO: 7の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 と 少 な く と も 80%同 一 で あ る
ヌクレオチド配列;
( d) ( a) 、 ( b) 、 ま た は ( c) に 相 補 的 な ヌ ク レ オ チ ド 配 列 、
を 含 み 、 前 記 核 酸 は 、 SEQ ID NO: 1ま た は 7に 隣 接 す る か 、 ま た は SEQ ID NO: 1ま た は 7の
20
後に隣接するゲノム配列を含まないことを条件とする核酸。
【請求項10】
( a) SEQ ID NO: 1ま た は SEQ ID NO: 7の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 か ら な る 核 酸 プ ロ ー ブ ; ま
たは、
( b) ( a) の 相 補 物 ;
に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離された核酸であって、
前 記 単 離 さ れ た 核 酸 は 、 yk357a6、 K02D7、 H06H21、 ま た は Y17G9と 称 さ れ る ク ロ ー ン の
う ち の 1つ の 核 酸 で は な い こ と を 条 件 と す る 核 酸 。
【請求項11】
前 記 核 酸 が 二 重 鎖 RNA分 子 で あ る 、 請 求 項 10に 記 載 の 核 酸 。
30
【請求項12】
前 記 核 酸 が 、 ヌ ク レ オ チ ド 354の ヌ ク レ オ チ ド 残 基 が チ ミ ン 残 基 で あ り 、 か つ 位 置 605の
ヌ ク レ オ チ ド が ア デ ニ ン 残 基 で あ る こ と 以 外 は 、 SEQ ID NO: 1の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む
、 請 求 項 10に 記 載 の 核 酸 。
【請求項13】
請 求 項 10に 記 載 の 核 酸 で あ っ て 、 前 記 核 酸 は 、 SEQ ID NO: 2ま た は SEQ ID NO: 8の ア ミ
ノ酸配列の断片からなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、前記ポリペ
プ チ ド は 、 DSC-3ま た は DSC-4ポ リ ペ プ チ ド の 1つ ま た は 複 数 の 機 能 的 な 活 性 を 示 す 核 酸 。
【請求項14】
SEQ ID NO: 2ま た は SEQ ID NO: 8を 含 む 単 離 さ れ た ポ リ ペ プ チ ド 。
40
【請求項15】
SEQ ID NO: 2ま た は SEQ ID NO: 8の ア ミ ノ 酸 配 列 の 少 な く と も 8つ の 連 続 し た ア ミ ノ 酸
を含むポリペプチドの断片。
【請求項16】
SEQ ID NO: 2ま た は SEQ ID NO: 8の ア ミ ノ 酸 配 列 に 対 し て 少 な く と も 60%の 一 致 性 を 有
するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項17】
請 求 項 14に 記 載 の ポ リ ペ プ チ ド で あ っ て 、 前 記 ポ リ ペ プ チ ド は 、 位 置 62の ア ミ ノ 酸 残 基
が フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン 残 基 で あ り 、 位 置 146の ア ミ ノ 酸 残 基 が ス レ オ ニ ン 残 基 で あ る こ と 以
外 は 、 SEQ ID NO: 2の ア ミ ノ 酸 配 列 を 含 む ポ リ ペ プ チ ド 。
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【請求項18】
SEQ ID NO2も し く は SEQ ID NO: 8の ア ミ ノ 酸 配 列 を 含 む ポ リ ペ プ チ ド 、 ま た は こ れ ら の
断片と免疫特異的に結合する抗体。
【請求項19】
請 求 項 9に 記 載 の 核 酸 を 含 む 発 現 ベ ク タ ー 。
【請求項20】
請 求 項 9に 記 載 の 核 酸 を 含 む 組 換 え 核 酸 を 含 む 細 胞 。
【請求項21】
請 求 項 9ま た は 10に 記 載 の 核 酸 を 含 む 導 入 遺 伝 子 を 含 む ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク 非 ヒ ト 動 物
。
10
【請求項22】
線 虫 ( C. elegans) で あ る 、 請 求 項 21に 記 載 の ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク 非 ヒ ト 動 物 。
【請求項23】
以下の工程を含むポリペプチドを作製するための方法:
( a) 組 換 え MOLL核 酸 を 含 む 細 胞 を 、 前 記 細 胞 に よ っ て MOLLポ リ ペ プ チ ド を 発 現 さ せ る
ことができる条件下で培養することと;および、
( b) MOLLポ リ ペ プ チ ド を 単 離 す る こ と 。
【請求項24】
以 下 の 工 程 を 含 む MOLLポ リ ペ プ チ ド に 結 合 す る 化 合 物 を 同 定 す る た め の 方 法 :
( a) MOLLポ リ ペ プ チ ド を 、 前 記 MOLLポ リ ペ プ チ ド を 試 験 化 合 物 に 結 合 さ せ る こ と が で
20
きる条件下で、前記試験化合物と接触させることと;および、
( b) 前 記 試 験 化 合 物 に 対 す る 前 記 MOLLポ リ ペ プ チ ド の 結 合 を 検 出 す る こ と
【請求項25】
ヒトのアテローム性動脈硬化症または異脂肪血症障害を予防または治療するための方法
で あ っ て 、 前 記 方 法 は 、 こ れ ら の 必 要 な ヒ ト に 対 し て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド の ア ゴ ニ ス ト ま
たはアンタゴニストを含む薬学的組成物の量を投与することを含む方法。
【請求項26】
ヒトのアテローム性動脈硬化症を予防または治療するための方法であって、前記方法は
、 こ れ ら の 必 要 な ヒ ト に 対 し て clk-1ア ン タ ゴ ニ ス ト を 含 む 薬 学 的 組 成 物 の 量 を 投 与 す る
ことを含む方法。
30
【請求項27】
前 記 MOLL核 酸 が dsc-3ま た は dsc-4で あ る 、 請 求 項 23に 記 載 の 方 法 。
【請求項28】
前 記 MOLLポ リ ペ プ チ ド が DSC-3ま た は DSC-4で あ る 、 請 求 項 24ま た は 25の 方 法 。
【請求項29】
前 記 脂 質 が コ レ ス テ ロ ー ル で あ る 、 請 求 項 1、 2、 3、 ま た は 6に 記 載 の 方 法 。
【請求項30】
前 記 リ ポ タ ン パ ク 質 が LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 で あ る 、 請 求 項 1、 2、 3、 ま た は 6に 記 載 の
方法。
【請求項31】
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請 求 項 1、 2、 3、 ま た は 6に 記 載 の 方 法 で あ っ て 、 前 記 修 飾 さ れ た 表 現 型 は 、 ( i) 前 記
表 現 型 の 目 視 検 査 ; ( ii) 1つ ま た は 複 数 の 指 標 遺 伝 子 の 発 現 プ ロ フ ィ ー ル ; ( iii) 1つ
ま た は 複 数 の リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 の 発 現 ; ( iv) 前 記 試 験 線 虫 の 脂 質 ま た は リ ポ タ ン パ ク 質
のレベルおよび/または分布の変化によって検出される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本 出 願 は 、 2003年 3月 14日 に 出 願 さ れ た 米 国 仮 出 願 番 号 第 60/454,925号 の 利 益 を 主 張 し
、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
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1.発 明 の 分 野
本発明は、潜在的な薬物ターゲットの発見のためのモデルとしての線虫の使用に関する
。本発明は、心臓血管疾患および異脂肪血症などの一定の脂質代謝障害の治療および予防
に有用な薬物をスクリーニングするための系を提供する。
【背景技術】
【0003】
2.発 明 の 背 景 2.1 線 虫 ( C. elegans) の clk-1遺 伝 子 お よ び clk-1変 異 体 の 多 面 的 な 表 現 型 線 虫 ( Caenorhabditis elegans) の clk1遺 伝 子 の 変 異 体 は 、 非 常 に 多 面 的 で あ り 、 広 範
囲 に わ た る 時 間 尺 度 を 通 じ て 生 じ る 生 理 的 特 徴 の 速 度 に 影 響 を 及 ぼ す ( Wong et al., 199
10
5、 Genetics 139: 1247-1259) 。 こ れ ら は 、 初 期 胚 発 生 、 胚 発 生 、 お よ び 後 胚 発 生 の 細 胞
周期、並びに成体の排便、遊泳、および咽頭音ポンピングサイクルの平均の延長を生じる
。 ま た 、 clk-1突 然 変 異 は 、 卵 産 生 速 度 お よ び 自 己 血 の サ イ ズ 等 の 生 殖 の 特 徴 に 影 響 を 及
ぼし、これにより、寿命を減少し、および増大を引き起こす。
【0004】
多 く の 観 察 で は 、 clk-1変 異 体 の 表 現 型 が 適 切 に 生 理 的 プ ロ セ ス の 速 度 を セ ッ ト す る こ
と が で き な い こ と に よ る 結 果 で あ る こ と を 示 唆 す る ( Branicky et al., 2000、 Bioessays
22: 48-56て 、 お よ び Wong et al.( 1995) Genetics 139: 1247-1259) 。 一 例 に は 、 clk1突 然 変 異 に よ っ て 影 響 を 受 け る 特 徴 の 多 く が 、 平 均 し て よ り 緩 徐 で あ る こ と に 加 え て 、
変 化 し や す い 。 例 え ば 、 clk-1変 異 体 の 胚 形 成 の 平 均 の 長 さ は 、 野 生 型 の も の よ り も 緩 徐
20
で あ る が 、 い く つ か の clk-1胚 は 、 野 生 型 よ り も 急 速 に 胚 発 生 す る こ と が で き 、 一 方 で そ
の 他 で は 、 2回 以 上 長 く か か る こ と か ら 、 変 異 体 で は タ イ ミ ン グ が 調 節 解 除 さ れ て い る こ
と を 示 唆 す る ( Wong et al., 1995、 Genetics 139: 1247-1259) 。 ま た 、 clk-1変 異 体 の
胚は、温度変化に対する応答の発生速度を適切に調整することができない。野生型胚を特
定 の 温 度 で 2細 胞 期 に 培 養 し 、 次 い で 新 た な 温 度 に 移 す と 、 こ れ ら は 、 新 た な 温 度 に 対 応
す る 速 度 で 直 ち に 発 生 す る 。 対 照 的 に 、 clk-1変 異 体 胚 を 新 た な 温 度 へ 移 す と 、 新 た な 温
度 で の 発 生 速 度 は 、 移 動 前 に 経 験 し た 温 度 に よ っ て 強 い 影 響 を 受 け る ( Wong et al., 199
5、 Genetics 139: 1247-1259) 。 こ れ は 、 clk-1が 、 温 度 変 化 に 応 答 し て 生 理 的 速 度 を リ
セ ッ ト す る こ と を も 必 要 と す る で あ ろ う こ と を 示 唆 す る 。 最 後 に 、 clk-1変 異 体 で 影 響 を
受ける表現型の全てが、母系性にレスキューするとができ、すなわち、ヘテロ接合性の雌
30
雄同体に由来するホモ接合性の変異体の子孫は、表現型的に野生型である。この母系性の
レ ス キ ュ ー は 、 成 体 期 ま で 延 長 さ れ 、 そ の 結 果 全 て 成 体 の 挙 動 、 お よ び clk-1変 異 体 の 長
寿 命 さ え レ ス キ ュ ー さ れ る ( Hekimi et al., 1995、 Genetics 141: 1351-1364、 お よ び Wo
ng et al.( 1995) Genetics 139: 1247-1259) 。 従 っ て 、 clk-1は 、 虫 の 生 理 的 速 度 の セ
ッ ト に 関 与 す る 調 節 プ ロ セ ス に 影 響 を 及 ぼ す と 考 え ら れ て い る ( Branicky et al., 2000
、 Bioessays 22: 48-56; Felkai et al., 1999、 EMBO J 18: 1783-17
92; Wong et al., 1995、 Genetics 139: 1247-1259) 。 母 系 性 に 供 給 さ れ た clk-1産 物 の
存 在 下 で は 、 ホ モ 接 合 性 の clk-1変 異 体 が そ の 後 に 発 生 し て 、 野 生 型 の 様 な 挙 動 を す る こ
とができるように、タイミングを発生の早期に適切にセットすることができる。
【0005】
40
clk-1は 、 真 核 生 物 の 中 で 構 造 的 お よ び 機 能 的 に 非 常 に 保 存 さ れ て い る ミ ト コ ン ド リ ア
の タ ン パ ク 質 を コ ー ド し ( Ewbank et al., 1997, Science 275: 980-983; Jonassen et
al., 1996, Arch Biochem Biophys 330: 285-289; Proft et al.,1995, EMBO J 14:
6116-6126; Vajo et al., 1999, Mamm Genome 10: 1000-1004) 、 お よ び ユ ビ キ ノ ン ( U
Q、 補 酵 素 Q、 CoQと も 呼 ば れ る ) ( 呼 吸 鎖 複 合 体 IIお よ び IIIの 電 子 の 輸 送 体 と し て 機 能 す
るプレニル化ベンゾキノン脂質)の生合成に必要とされる推定上のヒドロキシラーゼをコ
ー ド す る ( Stenmark et al., 2001, J Biol Chem 276: 33297-300) 。 clk-1( coq-7) の
酵 母 相 同 体 の 変 異 体 は 、 UQを 産 生 し な い 、 し た が っ て 、 非 発 酵 性 の 炭 素 供 与 源 で は 成 長 す
る こ と が で き な い ( Marbois and Clarke, 1996, J Biol Chem 271: 2995-3004) 。 ま た
、 clk-1変 異 体 か ら 単 離 さ れ た ミ ト コ ン ド リ ア は 、 検 出 可 能 な レ ベ ル の ユ ビ キ ノ ン を 含 ま
50
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な い が 、 そ の 代 わ り に UQ生 合 成 の 中 間 体 デ メ ト キ シ ユ ビ キ ノ ン ( DMQ) を 蓄 積 す る ( Miyad
era et al., 2001, J Biol Chem 276: 7713-7716) 。 clk-1変 異 体 に お い て 、 こ の 化 合 物
は 、 電 子 伝 達 体 と し て 機 能 し 、 そ の 結 果 ミ ト コ ン ド リ ア は 、 UQが 完 全 に 存 在 し な い に も か
か わ ら ず 呼 吸 を 維 持 す る こ と が で き る ( Felkai et al., 1999, EMBO J 18: 1783-1792 a
nd Miyadera et al., 2001, J Biol Chem 276: 7713-7716) 。 し か し 、 clk-1変 異 体 は 、
こ れ ら に UQを 産 生 し な い 大 腸 菌 株 を 与 え る と 、 完 全 に 発 生 す る こ と が で き な い の で 、 DMQ
は 、 UQを 完 全 に 置 換 す る こ と が で き る と い う わ け で は な い ( Jonassen et al., 2001、 PNA
S 98: 421-426) 。
【0006】
しかし、この生化学的な表現型と全体の表現型の重篤さとの間には相関がないために、
10
UQの 非 存 在 が 、 ど の よ う に そ の 他 の 変 異 体 の 表 現 型 に 関 連 す る か は 明 ら か で は な い 。 実 際
に 、 キ ノ ン の 表 現 型 は 、 全 部 で 3つ の 既 知 の clk-1対 立 遺 伝 子 ( e2519、 qm30、 お よ び qm51
) と 同 一 で あ り : UQは 、 全 3つ の ケ ー ス に お い て ミ ト コ ン ド リ ア に は 全 く 無 く 、 3つ 全 て が
同 一 量 の DMQを 蓄 積 す る 。 そ れ で も 、 clk-1変 異 体 に お い て 影 響 を 受 け る 大 部 分 の 特 徴 は 、
推 定 上 の ヌ ル 対 立 遺 伝 子 qm30お よ び qm51に お い て 、 こ れ ら が 部 分 的 な 機 能 喪 失 対 立 遺 伝 子
e2519で 起 こ る よ り も 激 し く 減 速 さ れ る 。 ( Felkai et al., 1999、 EMBO J 18: 1783∼ 179
2、 お よ び Wong et al.( 1995) Genetics 139: 1247-1259) 。 ま た 、 無 処 理 の 虫 に お け る
エ ネ ル ギ ー 代 謝 の 種 々 の 測 定 に よ り 、 clk-1変 異 体 は 、 野 生 型 と 同 等 の 代 謝 能 お よ び ATP濃
度 を 有 す る こ と が 示 さ れ た ( Braeckman et al., 1999, Curr Biol 9: 493-496.) 。 あ わ
せ る と 、 こ れ ら の 観 察 は 、 clk-1変 異 体 の 表 現 型 の 多 く が ミ ト コ ン ド リ ア の UQの 非 存 在 ま
20
たはエネルギー産生レベルの減少の直接的な結果ではないことを示唆する。
【0007】
clk-1変 異 体 に お い て 影 響 を 受 け る 特 徴 の う ち の 1つ は 、 排 便 サ イ ク ル で あ る 。 線 虫 に お
い て 、 排 便 は 、 常 同 的 な 排 便 運 動 プ ロ グ ラ ム ( Defecation Motor Program: DMP) に よ っ
て 遂 行 さ れ る 。 DMPは 、 3つ の 異 な っ た 工 程 か ら な る : 後 方 の 体 筋 収 縮 ( pBoc) 、 前 方 の 体
筋 収 縮 ( aBoc) 、 お よ び 腸 内 の 筋 収 縮 ( EMC) か ら な る 放 出 ( Exp) ( Thomas et al., 199
0, Genetics 124: 855-872.) 。 十 分 な 食 物 の 存 在 下 に お い て 、 56秒 の 排 便 サ イ ク ル 周 期
は、一匹の動物において、全時間に渡り、かつ動物間で規則的であり、数秒だけの標準偏
差を有する。その厳密な周期現象に加えて、排便サイクルは、内因性の「時計」によって
制御されているかもしれないことを示唆するその他の性質を有する。たとえば、サイクル
30
の 段 階 は 、 軽 く 動 物 を 触 診 す る こ と に よ っ て リ セ ッ ト す る こ と が で き 、 リ ズ ム は 、 DMPの
発 現 の 非 存 在 下 で さ え も 維 持 さ れ る ( Liu and Thomas, 1994, J Neurosci 14: 1953-196
2) 。
【0008】
排 便 サ イ ク ル の 周 期 現 象 は 、 少 な く と も 13遺 伝 子 の 突 然 変 異 に よ っ て 変 更 す る こ と が で
き る ( Dec表 現 型 ) 。 こ れ ら の 突 然 変 異 は 、 2つ の 主 要 な 分 類 に 入 る : サ イ ク ル 長 を 減 少 さ
せ る 突 然 変 異 に 関 し て 短 Dec( short Dec: Dec-s) 、 お よ び サ イ ク ル 長 を 増 大 す る 突 然 変
異 に 関 し て 長 Dec( long Dec:Dec-L) ( Iwasaki et al., 1995, PNAS 92: 10317-10321)
。 細 胞 内 カ ル シ ウ ム 濃 度 の 調 節 に 関 与 す る タ ン パ ク 質 で あ る 、 Dec-L遺 伝 子 ( dec-4( lef1/itr-1) ) の イ ノ シ ト ー ル 三 リ ン 酸 受 容 体 ( IP3受 容 体 ) と し て の 分 子 同 定 に よ り 、 カ ル
40
シ ウ ム の 周 期 的 変 動 が リ ズ ム の 調 節 に 寄 与 し て い る こ と が 示 唆 さ れ る 。 実 際 に 、 Dal Sant
o et al. ( 1999, Cell 98: 757-767) は 、 DMPの 最 初 の 筋 収 縮 の 直 前 に 、 腸 に お い て カ
ル シ ウ ム レ ベ ル が ピ ー ク ま で 上 が り 、 腸 の IP3受 容 体 の 発 現 は 、 正 常 な リ ズ ム が 生 じ る た
め に 十 分 で あ っ た こ と を 示 し た 。 異 な る Dec遺 伝 子 が 、 ど の よ う に 相 互 作 用 し て 排 便 サ イ
ク ル を 調 節 す る の か い ま だ に 明 ら か で は な い が 、 2つ の そ の 他 の 遺 伝 子 、 flr-1お よ び unc43/dec-8の 分 子 の 特 徴 付 け が 、 リ ズ ム 調 節 に お け る カ ル シ ウ ム お よ び 腸 の 役 割 を 補 助 す る
か も し れ な い 。 flr-1変 異 体 は 、 元 来 は フ ッ 化 物 に 対 す る こ れ ら の 抵 抗 性 に 基 づ い て 同 定
さ れ ( Katsura et al., 1994, Genetics 136: 145-154) 、 そ の 他 の 排 便 表 現 型 の 中 で も
非 常 に 短 い 排 便 サ イ ク ル 長 を 有 す る ( Iwasaki et al., 1995, PNAS 92: 10317-10321)
。 flr-1は 、 degenerin/ 上 皮 ナ ト リ ウ ム チ ャ ネ ル ・ ス ー パ ー フ ァ ミ リ ー の イ オ ン チ ャ ネ ル
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を コ ー ド し 、 胚 か ら 成 体 の 腸 に お い て の み 発 現 す る ( Take-Uchi et al., 1998、 PNAS 95
: 11775-11780) 。 unc-43の 突 然 変 異 は 、 排 便 表 現 型 を 含 む 複 数 の 行 動 に 欠 陥 を 生 じ る ( L
iu and Thomas, 1994, J Neurosci 14: 1953-1962 and Reiner et al., 1999, Nature 4
02: 199-203) 。 機 能 喪 失 突 然 変 異 は 、 排 便 頻 度 の 増 大 を 生 じ 、 通 常 、 一 次 運 動 プ ロ グ ラ
ム の 開 始 後 ∼ 13秒 で DMP反 復 を 生 じ る が 、 機 能 獲 得 突 然 変 異 で は 、 排 便 頻 度 の 減 少 を 生 じ
る 。 unc-43は 、 ニ ュ ー ロ ン 、 筋 肉 、 お よ び 腸 に お い て 広 く 発 現 さ れ る 線 虫 の カ ル モ ジ ュ リ
ン キ ナ ー ゼ IIを コ ー ド す る ( Reiner et al., 1999, Nature 402: 199-203) 。
【0009】
2.2脂 質 代 謝 食餌中に存在する脂質は、吸収されて、血液に輸送されることになっている。脂質の代
10
謝は、脂質、アポタンパク質、リポタンパク質、胆汁酸、および酵素の相互作用を含む。
総 説 に つ い て は 、 Brown & Goldstein, In, The Pharmacological Basis Of Therapeutics
, 8 t h E d . , G o o d m a n & G i l m a n , P e r g a m o n P r e s s , N Y , 1 9 9 0 , C h . 3 6 , p p . 8 7 4 - 8 9 6; a n d
Fuchs, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 284: G551-557を 参 照 さ れ た い
。
【0010】
リポタンパク質は、種々のタイプの脂質およびアポタンパク質の様々な比率を含む血漿
において見いだされるミセル様の構築物である。血清リポタンパク質には、密度を増大す
る 順 に 、 カ イ ロ ミ ク ロ ン 、 超 低 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( VLDL) 、 中 間 型 リ ポ タ ン パ ク 質 ( ID
L) 、 低 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDL) 、 お よ び 高 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( HDL) の 5つ の 主 な ク
20
ラスがある。多くのタイプの脂質は、それぞれのリポタンパク質クラスと関係することが
見 い だ さ れ て い る が 、 そ れ ぞ れ の ク ラ ス は 、 主 に 1タ イ プ の 脂 質 を 輸 送 す る : 上 記 し た ト
リ ア シ ル グ リ セ ロ ー ル は 、 カ イ ロ ミ ク ロ ン 、 VLDL、 お よ び IDL中 に 輸 送 さ れ ; 一 方 、 リ ン
脂 質 お よ び コ レ ス テ ロ ー ル エ ス テ ル は 、 そ れ ぞ れ HDLお よ び LDL中 に 輸 送 さ れ る 。 ア ポ タ ン
パク質は、非共有結合的にリポタンパク質の表面に結合し、種々の粒子の代謝における結
合 部 位 お よ び 酵 素 補 因 子 と し て 作 用 す る 。 主 要 ア ポ リ ポ タ ン パ ク 質 は 、 apoA-I、 A-II、 AIV、 B-100、 B-48、 CI、 C-II、 C-III、 D、 お よ び で Eあ る 。 ApoB-100は 、 VLDL、 IDL、 お よ
び LDLに 存 在 す る が 、 apoEは 、 カ イ ロ ミ ク ロ ン 残 遺 物 、 VLDLお よ び IDLに 存 在 す る 。 高 レ ベ
ル の 循 環 LDLお よ び 血 中 の β -VLDLは 、 特 に 心 血 管 心 疾 患 の 危 険 度 の 増 大 と 関 連 し て い た 。
【0011】
30
カイロミクロンは、腸において、腸管上皮によって作製される吸収された脂質およびア
ポ タ ン パ ク 質 か ら 形 成 さ れ る 。 こ れ ら は 、 水 よ り も 高 密 度 で は な い 大 径 粒 子 ( 80∼ 500nm
)である。カイロミクロンは、腸の上皮細胞で形成され、次いで細胞を通過して組織液中
にでる。そこから、これらは、腸絨毛の中心乳糜管に集められる。リンパ系は、これらの
大きなリポタンパク質を全身循環へ運ぶ。カイロミクロンは、腸から脂肪組織および肝臓
へ食餌脂肪を輸送する。
【0012】
大 部 分 の VLDLは 、 肝 臓 に 由 来 し 、 肝 臓 か ら そ の 他 の 組 織 ま で ト リ ア シ ル グ リ セ ロ ー ル を
輸送する機構の代表例である。生成および放出の機構は、腸におけるカイロミクロンの粒
子の分泌と著しく似ている。乳腺を除き、肝臓および腸は、粒子性の脂質を分泌する唯一
40
の組織である。粒子性の脂質は、予め加水分解することなく毛管壁を通過することはでき
ず 、 従 っ て 、 リ ン パ 系 へ 退 け ら れ る 。 VLDLは 、 内 因 的 に 合 成 さ れ た 脂 肪 を 脂 肪 組 織 に 送 達
する。
【0013】
カ イ ロ ミ ク ロ ン お よ び VLDL( 30∼ 100nm) 粒 子 は 代 謝 さ れ て 、 迅 速 に 血 液 か ら 消 去 さ れ
る。脂肪組織、心臓、および筋肉は、大部分の代謝を行う。これは、血管および組織に存
在する酵素リポタンパク質リパーゼの作用を経て達成される。リポタンパク質複合体は、
血管壁に結合されることとなり、ここで酵素がトリアシルグリセロールを遊離脂肪酸およ
びグリセロールに加水分解する。いくらかの遊離脂肪酸が血液に放出されるが、ほとんど
は組織に輸送される。生じるカイロミクロン残遺物は、非常に小さく、コレステロールお
50
(8)
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よびコレステロールエステル中に濃縮される。これらの残遺物は、受容体を媒介したた機
構によって肝臓によって摂取される。
【0014】
LDL( 25∼ 30nm) は 、 VLDLか ら 、 お よ び お そ ら く カ イ ロ ミ ク ロ ン か ら 形 成 さ れ る 。 正 常
細 胞 に お い て 、 LDLは 内 在 化 さ れ 、 コ レ ス テ ロ ー ル エ ス テ ル は 加 水 分 解 さ れ 、 タ ン パ ク 質
は リ ソ ソ ー ム ( lysozomes) で 破 壊 さ れ 、 細 胞 コ レ ス テ ロ ー ル 合 成 が 抑 制 さ れ る 。 細 胞 膜
上 の LDL結 合 部 位 の 数 は 、 細 胞 の コ レ ス テ ロ ー ル に 対 す る 要 求 に よ っ て 調 節 さ れ る 。 LDLの
半 分 は 、 肝 臓 に お い て 代 謝 さ れ る 。 肝 臓 に よ る ト リ ア シ ル グ リ セ ロ ー ル の 合 成 お よ び VLDL
の分泌を増大する因子は、高炭水化物の食餌、エタノールの摂取、インスリンの高濃度、
お よ び グ ル カ ゴ ン の 低 濃 度 を 含 む 。 VLDLお よ び LDLは 、 ア テ ロ ー ム 生 成 的 リ ポ タ ン パ ク 質
10
で あ る 。 ApoB-100お よ び apoEは 、 LDL受 容 体 の リ ガ ン ド で あ る 。
【0015】
肝 臓 お よ び 腸 は 、 最 も 小 さ な ( 7.5∼ 10nm) 、 大 部 分 の 可 溶 性 、 か つ タ ン パ ク 質 リ ッ チ
な リ ポ タ ン パ ク 質 の HDLを 合 成 し 、 分 泌 す る が 、 腸 の 供 与 源 は 、 肝 臓 供 与 源 か ら 後 で 付 加
さ れ る タ ン パ ク 質 を 欠 い て い る 。 HDLは 、 そ の 核 に コ レ ス テ ロ ー ル エ ス テ ル を 含 み 、 リ ン
脂 質 お よ び タ ン パ ク 質 に よ っ て 囲 ま れ て い る 。 血 漿 HDL濃 度 は 、 冠 状 動 脈 疾 患 の 発 病 率 と
反 対 に 関 連 す る 。 HDLは 、 組 織 か ら 肝 臓 へ 余 剰 コ レ ス テ ロ ー ル を 運 ぶ コ レ ス テ ロ ー ル ・ ス
カ ベ ン ジ ャ ー と し て 作 用 す る と 考 え ら れ る 。 HDLは 、 末 梢 組 織 か ら コ レ ス テ ロ ー ル を 除 去
し、動脈壁における脂質の蓄積を防げる。
【0016】
20
コレステロールは、ステロイドホルモンおよび胆汁酸の代謝前駆体であり、並びに細胞
膜の必須な構成要素でもある。ヒトおよびその他の動物において、コレステロールは、食
餌の際に摂取されて、更に肝臓およびその他の組織によって合成される。食餌によるコレ
ステロール吸収、内因性のコレステロール合成、および胆汁のコレステロール分泌が、全
身のコレステロール・バランスを調節する。高血漿コレステロール・レベルは、アテロー
ム性動脈硬化症の危険因子であり、また体内の大部分のコレステロールは、胆のう組織を
経て配置されるので、腸肝循環および胆汁酸の合成および輸送の調節は、脂質代謝の非常
に 重 要 な 部 分 で あ る 。 肝 臓 で は 、 コ レ ス テ ロ ー ル が 7-ヒ ド ロ キ シ コ レ ス テ ロ ー ル に 変 換 さ
れ、次いでコール酸およびケノデオキシコール酸に変換される。これらの胆汁酸は、腸を
経て再吸収され、肝臓へ送達される。
30
【0017】
肝臓リパーゼおよびリポタンパク質リパーゼは、リポタンパク質およびリン脂質の結合
、取り込み、異化反応、および再造形を媒介する多機能タンパクである。リポタンパク質
リパーゼおよび肝臓リパーゼは、それぞれ末梢組織および肝臓内の内皮細胞の管腔の表面
に結合した間に機能する。両酵素は、体からの排出のために、またはリサイクルのために
、末梢組織から肝臓へコレステロールを移動する逆コレステロール輸送に関与する。肝臓
リパーゼおよびリポタンパク質リパーゼにおける遺伝子欠損は、リポタンパク質代謝の家
族性障害の原因であることが既知である。リポタンパク質の代謝の欠陥は、高コレステロ
ール血症、高脂血症、およびアテローム性動脈硬化症を含む深刻な代謝障害を生じる。
【0018】
40
アテローム性動脈硬化症は、組織学的な用語で、血管壁、特に大動脈(大動脈、冠動脈
、頸動脈)における脂質およびその他の血液誘導体の沈着(脂質または線維脂質プラーク
)によって定義される複雑な多遺伝子性疾患である。アテローム硬化型のプロセスの進行
の程度に応じて多少石灰化されたこれらのプラークは、病変と連関している可能性があり
、本質的にコレステロールエステルからなる脂肪質沈着の血管における蓄積と関係する。
これらのプラークは、血管壁の肥厚、平滑筋の肥大、泡沫細胞(動員されたマクロファー
ジによる抑制されていないコレステロールの取り込みによって生じる脂質でいっぱいの細
胞)の出現、および線維組織の蓄積を伴う。粥状斑は、壁から著しく突出し、アテローム
、血栓症、または塞栓症による血管閉塞を生じさせ、これらは、最も影響を受けている患
者に生じる。これらの病変は、梗塞、突然死、心不全、および脳卒中などの深刻な心血管
50
(9)
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病態に至る可能性がある。
【0019】
脂質恒常性における種々の酵素およびアポタンパク質の役割に関する発展した理解にも
かかわらず、脂質代謝に関与し、および/または調節するタンパク質をコードするさらな
る遺伝子を同定する必要がある。
【0020】
2.3脂 質 代 謝 に 関 連 し た 障 害 の た め の 現 在 の 治 療
標準的な治療様式は、食餌療法、身体運動、および薬物療法を含む。現在、血清コレス
テロールおよびトリグリセリドを下げるために推奨される薬物は、いくつかのクラスに分
類することができる。しかし、ぞれそれ、有効性、副作用、および認定する患者集団に関
10
して、それ自体が欠点および制限を有する。
【0021】
胆汁酸結合樹脂は、腸から肝臓への胆汁酸の再利用を中断する薬物クラスである;たと
え ば 、 コ レ ス チ ラ ミ ン ( Questran Light( 商 標 ) ., Bristol-Myers Squibb) お よ び 塩 酸
コ レ ス チ ポ ー ル ( Colestid( 商 標 ) ., The Upjohn company) 。 し か し 、 こ の よ う な 樹 脂
の 使 用 は 、 せ い ぜ い 約 20%ま で 血 清 コ レ ス テ ロ ー ル ・ レ ベ ル を 低 下 さ せ る だ け で あ り 、 便
秘および特定のビタミン欠乏症を含む胃腸の副作用と関係している。
【0022】
ス タ チ ン 類 ( statins) は 、 AMGCoAレ ダ ク タ ー ゼ を 阻 害 す る こ と に よ っ て コ レ ス テ ロ ー
ル合成をブロックするコレステロール低下薬であり−鍵となる酵素がコレステロール生合
20
成 経 路 に 関 与 す る 。 ス タ チ ン 類 、 た と え ば ロ バ ス タ チ ン ( Mevacor( 商 標 ) , Merck & Co.
, Inc.) お よ び プ ラ バ ス タ チ ン ( Pravachol( 商 標 ) , Bristol-Myers Squibb Co.) は 、
時に胆汁酸結合樹脂と結合して使用される。スタチン類は、有意に血清コレステロールお
よ び LDL血 清 レ ベ ル を 減 少 さ せ 、 冠 状 動 脈 硬 化 症 の 進 行 を 遅 く す る 。 し か し 、 血 清 HDLコ レ
ス テ ロ ー ル ・ レ ベ ル は 、 わ ず か に 増 大 さ れ る だ け で あ る 。 LDL低 下 効 果 の 機 構 は 、 VLDLレ
ベ ル の 減 少 お よ び LDL受 容 体 の 細 胞 発 現 の 誘 導 を 含 無 可 能 性 が あ り 、 LDL産 生 の 減 少 お よ び
/ ま た は LDLの 増 大 さ れ た 異 化 反 応 を 引 き 起 こ す 。 肝 臓 お よ び 腎 臓 の 機 能 障 害 を 含 む 副 作
用 は 、 こ れ ら の 薬 物 の 使 用 と 関 係 す る ( Physicians Desk Reference, Medical Economics
Co., Inc., Montvale, N.J. 1997) 。
【0023】
30
ナイアシンまたはニコチン酸は、栄養補助食品および抗高脂血症薬剤として使用される
水 溶 性 カ ル ニ チ ン 複 合 体 で あ る 。 ナ イ ア シ ン は 、 VLDLの 生 産 を 減 弱 さ せ 、 LDLを 下 げ る こ
とに有効である。これは、胆汁酸結合樹脂と結合して使用される。十分な用量で使用する
と き に 、 ナ イ ア シ ン は HDLを 増 大 す る こ と が で き る が 、 こ の よ う な 用 量 で 使 用 す る と き に
は、その有用性が重大な副作用によって制限される。
【0024】
フ ィ ブ ラ ー ト 類 ( Fibrates) は 、 高 コ レ ス テ ロ ー ル 血 症 と も 関 係 し て い る で あ ろ う 種 々
の形態の高脂血症(すなわち、高血清トリグリセリド)を治療するために使用される脂質
を 低 く す る 薬 物 の ク ラ ス で あ る 。 た と え ば 、 ク ロ フ ィ ブ ラ ー ト ( Atromid-S( 商 標 ) 、 Wye
th-Ayerest Laboratories) は 、 VLDL画 分 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て よ り 低 い 血 清 ト リ グ
40
リセリドに対して(未知の機構を経て)作用する抗脂質血症薬である。血清コレステロー
ルは、一定の患者の亜集団において減少されるであろうが、薬物に対する生化学的反応は
、変化しやすく、どの患者が良好な結果を得るかについて必ずしも予測できるわけではな
い。悪性腫瘍(特に胃腸癌)、胆嚢疾患、および非冠状動脈死の発病率の増大などの毒性
を含む深刻な副作用が、フィブラートの使用と関係している。
【0025】
従 っ て 、 血 清 コ レ ス テ ロ ー ル を 低 下 さ せ る こ と 、 LDL血 清 レ ベ ル を 低 下 さ せ る こ と 、 虚
血性心疾患を防止すること、および/または既存の障害を治療することに有効で、より安
全な薬物を開発する必要がある。
【発明の開示】
50
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【0026】
3.発 明 の 概 要 本発明は、脂質代謝、特に脂質および/またはリポタンパク質濃度の調整に関与する遺
伝子の発見のためのモデルとしての線虫の使用に関する。このような遺伝子は、(脂質お
よ び リ ポ タ ン パ ク 質 の 修 飾 因 子 ( Modulators Of Lipids and Lipoproteinsま た は MOLLs)
と も 呼 ば れ る ) は 、 創 薬 の た め の 標 的 と し て 役 立 つ こ と が で き 、 ま た は さ ら な る MOLLsを
同定するためにスクリーニングアッセイをする際に使用することができる。
【0027】
一つの態様において、本発明は、脂質またはリポタンパク質の調整されたレベルを有す
る線虫を選択するための方法であって:試験線虫を処理して脂質またはリポタンパク質の
10
レ ベ ル を 調 整 す る こ と と ; 処 理 さ れ て い な い 工 程 ( a) の 試 験 線 虫 の 表 現 型 と 比 較 し て 、
修飾された表現型を表し/示す試験線虫を同定することと、および試験線虫の脂質または
リポタンパク質の調整されたレベルと修飾された表現型を相関させることとを含む方法を
包 含 す る 。 使 用 す る こ と が で き る 表 現 型 の 例 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞
体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 ; ま た は ( iv) 後 胚
発生の速度を含む。
【0028】
もう一つの態様において、本発明は、線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整
す る 遺 伝 子 を 単 離 す る た め の 方 法 で あ っ て : clk-1遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 を
含む線虫を突然変異生成に供して、試験線虫を製作することと;突然変異生成に供してい
20
な い 工 程 ( a) の 線 虫 の 表 現 型 と 比 較 し て 、 修 飾 さ れ た 表 現 型 を 示 す 試 験 線 虫 を 同 定 す る
ことと、および試験線虫の脂質またはリポタンパク質の調整されたレベルと修飾された表
現型を相関させることと、ここで修飾された表現型は、脂質またはリポタンパク質が調整
さ れ た レ ベ ル を 示 し 、 前 記 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速
度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 ; お よ び / ま た は ( iv) 後 胚 発
生の速度であることができ、並びに当該技術分野において周知技術によって、試験線虫に
おいて変異した遺伝子をクローニングすることとを含む方法を包含する。
【0029】
もう一つの態様において、本発明は、線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整
す る 遺 伝 子 を 単 離 す る た め の 方 法 で あ っ て 、 clk-1遺 伝 子 に 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 を
30
含む試験線虫を、線虫遺伝子の発現レベルを特異的に減少させる核酸と接触させることと
;および修飾された表現型を試験線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルの変化と相関
させることとを含み、前記核酸と接触していない試験線虫の表現型と比較した表現型の修
飾は、線虫遺伝子が線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整することを示し、前
記 表 現 型 は 、 以 下 の ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖
系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度 ; お よ び / ま た は ( iv) 後 胚 発 生 の 速 度 の い ず れ
かである方法を包含する。
【0030】
もう一つの態様において、本発明は、線虫の脂質またはリポタンパク質のレベルを調整
する化合物をスクリーニングする方法であって:試験線虫と化合物を接触させることと;
40
試験線虫の表現型を、化合物と接触していない線虫の表現型と比較することとを含み、こ
れにより、表現型の相違によって化合物を同定する方法を包含する。表現型の修飾は、脂
質 ま た は リ ポ タ ン パ ク 質 の 調 整 さ れ た レ ベ ル と 相 関 し て お り 、 該 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ
イ ク ル の 長 さ ; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 ; ( iii) 胚 発 生
の 速 度 ; お よ び ( iv) 後 胚 発 生 の 速 度 か ら な る 群 よ り 選 択 さ れ る 。
【0031】
本 方 法 の 種 々 の 態 様 に お い て 、 修 飾 さ れ る 表 現 型 は 、 ( i) 排 便 サ イ ク ル の 長 さ の 減 少
; ( ii) 細 胞 体 発 達 の 速 度 と 比 較 し た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 の 増 大 ; ( iii) 胚 発 生 の 速 度
の 増 大 ; ま た は ( iv) 後 胚 発 生 の 速 度 の 増 大 で あ る 。
【0032】
50
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また、哺乳類にも存在するであろう線虫のこのような脂質の例は、コレステロール、脂
肪酸、ステロール、およびユビキノンを含むが、これらに限定されない。線虫のこのよう
な リ ポ タ ン パ ク 質 の 例 は 、 ApoBs、 ビ テ ロ ゲ ニ ン 、 お よ び ApoB様 の 配 列 の 断 片 を 含 む リ ポ
タ ン パ ク 質 を 含 む ヒ ト ・ ア ポ リ ポ タ ン パ ク 質 の 相 同 体 を 含 む LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 、 並 び
にこのようなタンパク質を含むその他の脂質含有粒子を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本 発 明 は MOLL遺 伝 子 、 特 に dsc-3お よ び dsc-4の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 、 お よ び こ れ ら で コ ー
ドされるタンパク質、並びに機能的に活性である断片、誘導体、および類似体(すなわち
、 こ れ ら は 全 長 野 生 型 MOLLタ ン パ ク 質 に 関 係 す る 1つ ま た は 複 数 の 既 知 の 機 能 的 活 性 を 示
すことができる)のアミノ酸配列にも関する。このような機能的活性は、抗原性、免疫原
10
性、および生物活性(たとえば、脂質およびアポリポタンパク質の結合、コレステロール
、 LDL、 お よ び / ま た は ROSレ ベ ル の 調 整 ) を 含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。 一 つ の 態 様
に お い て 、 本 発 明 は 、 単 離 さ れ た MOLL核 酸 分 子 で あ っ て : SEQ ID NO: 1ま た は 7の ヌ ク レ
オ チ ド 配 列 と 少 な く と も 90%同 一 で あ る ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む か ; SEQ ID NO1ま た は 7の
ヌクレオチド配列からなる核酸プローブまたはこれらの相補物とストリンジェントな条件
下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る か 、 ま た は SEQ ID NO: 2ま た は 8の ア ミ ノ 酸 配 列 を 含 む ポ リ ペ プ
チ ド を コ ー ド す る 核 酸 分 子 を 含 む 、 MOLL核 酸 分 子 を 包 含 す る 。 ま た 、 単 離 さ れ た MOLL核 酸
分子の相補物、断片、および変種も包含される。
【0034】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 単 離 さ れ た MOLLポ リ ペ プ チ ド 、 特 に DSC-3お よ び D
20
SC-4を 含 む 。 特 定 の 実 施 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 SEQ ID NO: 2ま た は 8の 一 部 の ア ミ ノ
酸 配 列 を 含 む ポ リ ペ プ チ ド ; SEQ ID NO: 2ま た は 8の 天 然 に 存 在 す る 対 立 遺 伝 子 変 異 体 、
お よ び SEQ ID NO: 2ま た は 8と 少 な く と も 90%同 一 の 変 種 を 包 含 す る 。
【0035】
ま た 、 MOLLタ ン パ ク 質 、 誘 導 体 、 お よ び 類 似 体 の 生 産 方 法 は 、 た と え ば 組 換 え 手 段 に よ
っ て 提 供 さ れ る 。 ま た 、 組 換 え MOLL核 酸 お よ び / ま た は 組 換 え MOLLポ リ ペ プ チ ド を 含 む 細
胞および線虫も包含される。
【0036】
ま た 、 本 発 明 は 、 脂 質 、 リ ポ タ ン パ ク 質 、 お よ び / ま た は ROSの 望 ま し く な い 、 ま た は
異常なレベルによって特徴づけられる障害の予防および治療的な治療を提供する。このよ
30
うな方法は、これらの必要な被検者に対して、病理学的表現型が改善されるように、脂質
( コ レ ス テ ロ ー ル な ど の ス テ ロ ー ル を 含 む ) 、 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDLな ど ) 、 お よ び / ま
た は ROSの レ ベ ル を 変 化 さ せ る 本 発 明 の 薬 剤 の 有 効 な 量 を 投 与 す る こ と を 含 む 。 本 発 明 の
薬 剤 は 、 clk-1お よ び / ま た は MOLLタ ン パ ク 質 お よ び 核 酸 、 並 び に MOLLタ ン パ ク 質 並 び に
こ れ ら の 類 似 体 お よ び 誘 導 体 ( 断 片 を 含 む ) ; こ れ に 対 す る 抗 体 ; MOLLタ ン パ ク 質 を コ ー
ド す る 核 酸 、 類 似 体 、 ま た は 誘 導 体 ; 並 び に MOLLア ン チ セ ン ス 核 酸 ; の 発 現 レ ベ ル ま た は
活性を調整することができる組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
5.発 明 の 詳 細 な 説 明 40
本発明は、脂質代謝に関与し、および薬物標的として役立ち得る遺伝子を同定するため
の モ デ ル と し て の 線 虫 の 使 用 に 関 す る 。 本 発 明 は 、 線 虫 の clk-1遺 伝 子 の 変 異 体 に お け る
生殖系列の発達が、身体の発達とは連関していないこと(すなわち、期外発生表現型)、
お よ び 脊 椎 動 物 の 低 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDL) の 線 虫 類 似 体 の 生 産 を 減 少 さ せ る か 、 ま
たは酸化を増大することにより、この表現型を抑制することの発見に基づく。これらの観
察 は 、 脂 質 代 謝 の 研 究 の た め に 遺 伝 子 の モ デ ル 系 を 提 供 し 、 細 胞 成 分 の 酸 化 が clk-1変 異
体において減少されること、および天然のリポタンパク質が阻害するが、酸化型のリポタ
ン パ ク 質 は 生 殖 系 列 発 達 を 促 進 す る こ と を 示 す 。 従 っ て 、 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 お よ び clk1変 異 体 の そ の 他 の 表 現 型 は 、 一 般 に リ ポ タ ン パ ク 質 代 謝 お よ び 脂 質 代 謝 の 側 面 を 研 究 す
るために使用することができる。また、線虫および遺伝子により、このような遺伝子の相
50
(12)
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互 作 用 、 活 性 酸 素 種 ( ROS) な ど の 環 境 要 因 、 お よ び / ま た は リ ポ タ ン パ ク 質 酸 化 の 状 況
にける薬物および多細胞動物モデルにおけるその生物学的効果を研究することができる。
【0038】
本 発 明 の 創 薬 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 利 点 の う ち の 1つ は 、 本 ア ッ セ イ 法 の エ レ メ ン ト を 組
み合わせて種々のアッセイ法を作製することができるということである。また、標的を同
定するために使用される線虫およびこれらの表現型の多くは、化合物をスクリーニングす
るためにも使用することができる。本発明の線虫変異体の遺伝子型および対応する表現型
に 基 づ い て 、 変 異 体 線 虫 の 1つ ま た は 複 数 の 特 徴 的 な 表 現 型 と 関 係 す る 望 ま し い 生 物 学 的
結 果 を 生 じ さ せ る 薬 物 の 標 的 遺 伝 子 / 遺 伝 子 産 物 の 1つ ま た は 複 数 に 対 し て 作 用 す る 化 合
物をスクリーニングするための、種々のアッセイ法が提供された。従って、本発明は、一
10
部において、感受性が高く、高スループットの遺伝子発現アッセイ法と組み合わせた、代
謝期または障害のインビボモデルを含む系統的なアプローチに基づいている。本発明は、
心臓血管疾患の病態および進行において役割を果たす新規の経路に関与する新規の遺伝子
および遺伝子産物(新規であるか既知であるかにかかわらず)の発見を可能にする確証さ
れたプラットフォームを提供する。従って、本発明により、診断、モニタリング、薬物の
スクリーニングおよび設計、および/またはその他の治療的な介入に有用なヒトの標的を
限定することができる。
【0039】
哺乳類では、腸での脂質吸収、または肝臓での脂質貯蔵の後のいずれにおいても、リポ
タンパク質は、組織に対して脂質を再分布する際の必須成分である。種々の生理的設定に
20
お い て 、 リ ポ タ ン パ ク 質 は 、 ROSに よ っ て 酸 化 型 に な り 、 こ れ ら の 性 質 が 変 化 す る 。 例 え
ば 、 天 然 の LDLは 、 LDL受 容 体 に よ っ て 認 識 さ れ 、 そ の 一 方 で 酸 化 型 の LDL( OxLDL) は 、 LD
L受 容 体 に 結 合 し な い が 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ 上 の ス カ ベ ン ジ ャ ー 受 容 体 を 含 む 種 々 の タ イ プ
の 受 容 体 に よ っ て 認 識 さ れ る 。 LDLお よ び OxLDLは 、 血 管 の 内 皮 細 胞 を 含 む 種 々 の 細 胞 型 に
対 し て 異 な っ た 生 物 学 的 効 果 を 有 す る 。 特 に 、 OxLDLは 、 こ れ が 血 管 壁 に 蓄 積 さ れ 、 こ こ
でマクロファージによって特異的に摂取され、こうして泡沫細胞になるであろうから、病
理生物学的な重要性を有する。このプロセスは、アテローム性動脈硬化症に至るイベント
のカスケードにおいて重要であり、従って、人の健康に関して中心的な重要性がある。
【0040】
clk-1は 、 ユ ビ キ ノ ン ( UQ、 補 酵 素 Q、 CoQと も 呼 ば れ る ) ( 呼 吸 鎖 の 複 合 体 IIお よ び III
30
の電子輸送体として機能するプレニル化ベンゾキノン脂質)の生合成に必要とされるミト
コ ン ド リ ア の ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 。 UQお よ び そ の 還 元 型 ユ ビ キ ノ ー ル は 、 活 性
酸 素 種 ( ROS) の 産 生 の 主 要 部 分 で あ る 。 電 子 伝 達 の 間 に 、 不 安 定 で あ り 、 ス ー パ ー オ キ
シドを産生するユビセミキノン種が形成される。さらにまた、ユビキノン/ユビキノール
は 、 ROSを 産 生 す る そ の 他 の 酵 素 系 、 た と え ば 原 形 質 膜 NAD( P) Hオ キ シ ド レ ダ ク タ ー ゼ 、
並びにリソソームおよびペルオキシソームの電子伝達鎖のレドックス活性な補因子である
。 こ れ ら の 部 位 の 全 て に お い て 、 ROSは 、 ユ ビ キ ノ ン / ユ ビ キ ノ ー ル を 含 む レ ド ッ ク ス 反
応の間に産生され得る。
【0041】
clk-1( coq-7) の 酵 母 相 同 体 の 変 異 体 は 、 UQを 産 生 せ ず 、 し た が っ て 、 非 発 酵 性 の 炭 素
40
源 で 成 長 す る こ と が で き な い 。 ま た 、 clk-1変 異 体 か ら 単 離 さ れ た ミ ト コ ン ド リ ア は 、 検
出 可 能 な UQレ ベ ル を 含 ま ず 、 そ の 代 わ り に UQ生 合 成 の 中 間 体 デ メ ト キ シ ユ ビ キ ノ ン ( DMQ
) を 蓄 積 す る ( Miyadera et al., 2001, J Biol Chem 276: 7713-7716) 。 clk-1変 異 体 に
お い て 、 こ の 化 合 物 は 、 電 子 伝 達 体 と し て 機 能 し 、 そ の 結 果 ミ ト コ ン ド リ ア は 、 UQが 完 全
に 存 在 し な い に も か か わ ら ず 呼 吸 を 維 持 す る こ と が で き る 。 し か し 、 clk-1変 異 体 は 、 こ
れ ら が UQを 産 生 し な い 大 腸 菌 株 を 与 え ら れ た と き に 完 全 に 発 達 す る こ と が で き な い の で 、
DMQは 、 UQを 完 全 に 置 換 す る こ と が で き な い ( Jonassen et al., 2001、 PNAS 98: 421-426
)。
【0042】
線 虫 に お い て 、 本 発 明 者 ら は 、 UQが DMQに よ っ て 置 換 さ れ て い る clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 生
50
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殖 系 列 発 達 が 、 ミ ク ロ ソ ー ム ・ ト リ グ リ セ リ ド 転 移 タ ン パ ク 質 ( MTP) の 大 サ ブ ユ ニ ッ ト
の 線 虫 相 同 体 の dsc-4( こ れ は 、 apoB依 存 的 な LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 に 必 要 と さ れ る
) の 突 然 変 異 に よ っ て 抑 制 さ れ る こ と を 見 い だ し た 。 同 一 の 効 果 が 、 ビ テ ロ ゲ ニ ン VIT-3
、 VIT-4、 お よ び VIT-5の 合 成 ( apoBの 虫 相 同 体 ) を 阻 害 す る こ と に よ っ て 、 お よ び SOD-1
の発現の破壊によって(細胞質のスーパーオキシドジスムターゼであって、その解毒機能
は 、 LDLの 酸 化 に 対 し て 多 大 な 影 響 を 有 す る と 考 え ら れ て い る ( Guo et al., 2001, Arter
ioscler Thromb Vasc Biol 21:1131-1138) も 得 ら れ る 。 こ れ ら の 知 見 に 基 づ い て 、 天 然
の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 と 酸 化 型 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 が 生 殖 系 列 に 対 し て 反 対 の 効 果 を
有 し 、 こ れ ら の リ ポ タ ン パ ク 質 の 酸 化 レ ベ ル が DMQの 存 在 下 で 減 少 さ れ る と い う モ デ ル が
提 供 さ れ る 。 UQは 、 ROSを 産 生 す る 多 く の 系 の た め の 補 因 子 、 並 び に 抗 酸 化 物 と し て 機 能
10
す る 。 従 っ て 、 DMQが UQの 代 わ り の 補 因 子 と し て に 使 用 さ れ る か 、 ま た は DMQが 良 好 な 抗 酸
化 物 で あ る と き は 、 DMQの 効 果 は 、 ROS生 産 の 減 少 に よ る 可 能 性 が あ る 。 い ず れ の 特 定 の 理
論 に よ っ て も 拘 束 さ れ な い が 、 clk-1突 然 変 異 の 様 に 、 過 剰 の ビ タ ミ ン Eに よ り 生 殖 系 列 発
達 を 遅 く す る こ と が 観 察 さ れ て お り ( Harrington and Harley, 1988) 、 し た が っ て 、 ビ
タ ミ ン Eの 再 生 を 促 進 す る 際 に お け る UQ以 上 の DMQの 増 大 さ れ た 能 力 は 、 生 殖 系 列 発 達 に 対
するその効果を説明することができる。
【0043】
い ず れ の 作 用 機 序 に よ っ て も 拘 束 さ れ る こ と は 企 図 し な い が 、 本 質 的 に は 、 clk-1変 異
体線虫によって示されるいくつかの表現型(たとえば、緩徐な生殖系列発達および排便サ
イ ク ル 長 の 増 大 ) は 、 一 部 に は 、 天 然 の ( 未 酸 化 状 態 の ) LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の プ ー ル
20
の 蓄 積 の た め で あ る 。 従 っ て 、 こ の よ う な clk-1変 異 体 の 表 現 型 は 、 天 然 の LDL様 リ ポ タ ン
パク質の濃度を減少させる一定のプロセスによって、線虫においてレスキューことができ
る 。 こ れ は 、 天 然 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 合 成 / 分 泌 を 減 少 す る こ と 、 ま た は 天 然 の も
の か ら 酸 化 型 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 へ の 転 換 を 増 大 す る こ と を 含 む 種 々 の プ ロ セ ス で 達 成
す る こ と が で き る 。 本 明 細 書 に お い て 以 下 に 提 供 さ れ る 実 施 例 で は 、 天 然 の LDL様 リ ポ タ
ン パ ク 質 レ ベ ル の 操 作 を 介 し て 、 clk-1変 異 体 線 虫 の 野 生 型 表 現 型 を 回 復 す る こ と に よ る
原 理 の 証 明 を 提 供 し た 。 1つ の ア プ ロ ー チ で は 、 主 に 食 餌 の 脂 質 ( す な わ ち コ レ ス テ ロ ー
ル ) ま た は LDLの タ ン パ ク 質 成 分 ( す な わ ち apoB相 同 体 vit-3、 vit-4、 お よ び vit-5) の 利
用 能 を 低 下 さ せ る こ と に よ っ て 、 線 虫 に お け る LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 合 成 / 分 泌 を 減 少
さ せ た 。 コ レ ス テ ロ ー ル の 枯 渇 ( 8.3節 を 参 照 さ れ た い ) お よ び vit-3、 vit-4、 vit-5 RNA
30
iの 投 与 ( 8.2節 を 参 照 さ れ た い ) は 、 本 質 的 に 野 生 型 で あ っ た 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 に 変 化
を 生 じ さ せ た 。 ま た は 、 LDLレ ベ ル は 、 天 然 の LDLか ら 酸 化 型 LDLへ の 転 換 を 増 大 す る こ と
に よ っ て 低 下 さ れ た 。 酸 化 型 の LDLの 産 生 は 、 天 然 の LDLと の 相 互 作 用 に 利 用 で き る 活 性 酸
素 種 ( ROS) を 増 大 す る こ と に よ っ て 増 大 さ れ た 。 ROSレ ベ ル は 、 SOD RNAiの 投 与 に よ っ て
抗 酸 化 物 酵 素 ス ー パ ー オ キ シ ド ジ ス ム タ ー ゼ ( SOD) の 機 能 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て 増
大 さ れ た ( 8.4節 ) 。 ま た 、 酸 化 型 LDLが 増 大 さ れ た こ と に よ る 天 然 の LDLレ ベ ル の 減 少 は
、本質的に野生型および生殖系列発達の割合に変化を生じさせた。
【0044】
clk-1の 抑 制 因 子 変 異 体 と し て の dsc-3変 異 体 の 同 定 、 お よ び clk-1変 異 体 に 対 す る コ レ
ス テ ロ ー ル 枯 渇 の 効 果 か ら 、 clk-1表 現 型 が コ レ ス テ ロ ー ル お よ び 関 連 し た 代 謝 産 物 な ど
40
の一定の脂質のレベルの変化に感受性であることをさらに示す。このような脂質レベルの
変 化 は 、 天 然 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 濃 度 の 変 化 に 関 与 し て お り 、 こ れ に よ り 線 虫 の 表 現
型に影響を及ぼすことができる。
【0045】
一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 脂 質 代 謝 、 特 に コ レ ス テ ロ ー ル ・ レ ベ ル 、 LDL分 泌 、
お よ び LDL酸 化 の 変 化 に 関 与 す る 新 規 遺 伝 子 を 同 定 す る た め の 、 線 虫 の clk-1変 異 体 の 使 用
を 提 供 す る 。 clk-1変 異 体 の 表 現 型 は 多 面 的 で あ り 、 胚 細 胞 周 期 、 全 胚 発 生 、 後 胚 発 生 、
排便、咽頭のポンピング、および遊泳などの種々の周期性の挙動、並びに産卵速度および
老 化 を 含 む 発 達 、 挙 動 、 お よ び 再 生 の 大 部 分 の 側 面 が 平 均 し て 遅 く な っ て い る 。 ( Wong e
t al., 1995、 Genetics、 139: 1247∼ 1259) 。 本 発 明 の 方 法 に 従 っ て 、 異 な る 環 境 条 件 下
50
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で 種 々 の clk-1変 異 体 の 表 現 型 を 抑 制 す る 変 異 体 を 作 製 し 、 単 離 す る こ と に よ り 、 clk-1機
能の特定の側面に影響を及ぼす新規の遺伝子クラスを同定することができる。抑制因子変
異体を同定し、特徴づける際に使用することができる表現型は、たとえば排便サイクルの
長さ、生殖系列発達の速度、並びに胚発生および後胚発生を含む。本発明の方法は、試験
線虫の脂質および/またはリポタンパク質のレベルの変化と、このような表現型との相互
関 係 に 依 拠 す る 。 機 能 解 析 に 基 づ く こ れ ら の ア ッ セ イ 法 の 詳 細 な 説 明 は 、 第 5.4節 に 提 供
してある。
【0046】
関連した側面において、本方法は、また、脂質代謝に関与する脊椎動物の遺伝子と構造
エレメントを共有し、および/または配列相同性をする線虫遺伝子の機能を調査し、確証
10
するために使用することができる。新規の遺伝子標的を同定し、特徴づけるための本発明
の 方 法 は 、 5.3.1節 お よ び 6節 に 詳 細 に 記 載 し て あ る 。
【0047】
も う 一 つ の 関 連 し た 側 面 に お い て 、 本 方 法 は 、 ま た 、 ROSに よ っ て 酸 化 さ れ 得 る 線 虫 の
タンパク質、特に酸化型が異なる生物学的性質を有し、その結果線虫の表現型に変化を生
じる分子を同定するために使用することができる。
【0048】
さ ら に も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 clk-1変 異 体 の 表 現 型 を 抑 制 す る 新 規 の 遺
伝子および遺伝子産物を提供する。これらの遺伝子は、本発明の方法によって同定され、
修 飾 さ れ た clk-1変 異 体 の 表 現 型 の 側 面 に 応 じ て 、 い く つ か の 分 類 に 分 け る こ と が で き る
20
。また、これらの遺伝子のいずれか一つに突然変異を含む線虫、および生物学的アッセイ
法および薬物スクリーニングアッセイ法におけるこれらの使用も提供される。関連した態
様において、本発明は、また、本発明の方法によって同定される線虫遺伝子のヒト相同体
が線虫にクローン化され、かつ発現されている「ヒト化」線虫を提供する。生物学的アッ
セイ法および薬物スクリーニングアッセイ法におけるこのような線虫の使用が想定される
。
【0049】
特 定 の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 脊 椎 動 物 の MTPの 線 虫 相 同 体 で あ る こ と が 見 い だ さ れ
て い る 、 線 虫 の dsc-4遺 伝 子 お よ び dsc-4遺 伝 子 産 物 を 提 供 す る 。 第 7節 に 記 載 さ れ て い る
実 験 結 果 は 、 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 産 生 お よ び 酸 化 に 関 与 す る 構 造 エ レ メ ン ト が 、 線 虫
30
に存在し、脊椎動物において観察されるものと同様の方法で機能的に関連していることを
示 す 。 脊 椎 動 物 と 同 様 に 、 コ レ ス テ ロ ー ル 摂 取 の 減 少 は LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 を 減
少 さ せ る こ と 、 お よ び ROSは こ れ ら の 酸 化 を 減 少 さ せ る こ と が 観 察 さ れ た 。 こ の 知 見 は 、
線 虫 生 殖 系 列 発 達 に お け る 酸 化 型 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 効 果 が 、 ア テ ロ ー ム 性 動 脈 硬
化 症 に 至 る 脊 椎 動 物 で の 酸 化 型 の LDLの 生 物 学 的 な 効 果 に 類 似 し て い る こ と を 示 す 。
【0050】
もう一つの特定の態様において、本明細書に記載されている遺伝子同定方法を使用して
、 本 発 明 者 ら は 、 線 虫 遺 伝 子 を 同 定 し 、 本 明 細 書 に お い て dsc-3と 命 名 し た 。 dsc-3の 突 然
変 異 は 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 排 便 表 現 型 を 抑 制 す る 。 dsc-3突 然 変 異 の 効 果 は 、 dsc-4突
然 変 異 の も の に 対 し て 相 加 的 で は な い こ と か ら 、 2つ の 突 然 変 異 が 同 じ 経 路 で 作 用 す る か
40
、 ま た は 同 じ プ ロ セ ス に 影 響 を 及 ぼ す こ と を 示 唆 す る 。 配 列 相 同 性 に 基 づ い て 、 dsc-3の
遺 伝 子 産 物 DSC-3は 、 IV型 P型 ATPaseの フ ァ ミ リ ー 、 特 に ATP感 受 性 の ア ミ ノ リ ン 脂 質 輸 送
体 の メ ン バ ー で あ る 。 ヒ ト の dsc-3相 同 体 の う ち の 1つ は 、 肝 内 胆 汁 う っ 滞 ( す な わ ち 解 剖
学的な閉塞のない正常な胆汁流の障害)によって特徴づけられる常染色体劣性の家族性肝
臓 障 害 を 被 っ て い る 患 者 に お い て 欠 損 し た 、 ヒ ト 遺 伝 子 ATP8B1で あ る 。 ヒ ト の ATP8B1の 非
存在または機能障害によって胆汁鬱帯に至る機構は、現在決定されていない。哺乳類のコ
レステロール・レベルは、腸管吸収、内因性合成、および胆汁の分泌の同調調節によって
調 節 さ れ て い る の で 、 本 発 明 の 方 法 に よ る dsc-3の 同 定 で は 、 胆 汁 酸 調 節 に 対 す る そ の 作
用を介して、それが線虫並びに哺乳類のコレステロール恒常性に役割を果たしていること
を示す。
50
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【0051】
種々の態様において、本発明は、脂質および/またはリポタンパク質、並びに対応する
遺伝子活性のレベルと線虫の表現型との相互関係を提供する。そして、このような遺伝子
の相同体の機能は、哺乳類において既知であるので、本発明は、本発明の方法によって同
定 さ れ る 線 虫 遺 伝 子 ( 例 え ば dsc-3、 dsc-4お よ び そ の 他 ) お よ び こ れ ら の 相 同 体 を 、 優 れ
た薬物スクリーニングのターゲット、並びに変異されるか、または脂質代謝に関連したヒ
ト障害において調節解除される遺伝子の候補として認識することができる。このクラスの
遺 伝 子 の そ の 他 の メ ン バ ー 、 dsc-1、 dsc-2、 dsc-5、 dsc-7、 お よ び dec-7、 並 び に 本 明 細
書に記載されている種々の方法におけるこれらの使用も、本発明に包含される。
【0052】
10
従って、本発明は、遺伝分析、突然変異生成、組換え発現、診断アッセイ法などのアッ
セイ法、遺伝子治療、およびトランスジェニック実験における、例示的なメンバーである
sc-3お よ び dsc-4を 含 む 遺 伝 子 の dscク ラ ス な ど の 核 酸 の 使 用 を 含 む 。 本 発 明 の 核 酸 の ヌ ク
レ オ チ ド 配 列 お よ び こ れ ら の 使 用 の 詳 細 は 、 第 5.1.1節 に 記 載 さ れ て い る 。
【0053】
また、本発明は、抗体生成、タンパク質工学(その他のタンパク質との融合を含む)、
療法、およびび生物学的アッセイ法および薬物スクリーニングアッセイ法を含む種々のア
ッ セ イ 法 に お け る 、 DSC-3お よ び DSC-4ポ リ ペ プ チ ド な ど の dsc遺 伝 子 産 物 の 使 用 を 含 む 。
本 発 明 の ポ リ ペ プ チ ド の ア ミ ノ 酸 配 列 お よ び こ れ ら の 使 用 の 詳 細 は 、 第 5.1.2節 に 記 載 さ
れている。
20
【0054】
ま た 、 本 発 明 の 1つ ま た は 複 数 の 遺 伝 子 の 突 然 変 異 お よ び clk-1を 含 む 既 知 の 線 虫 遺 伝 子
の 突 然 変 異 を 含 む 変 異 体 線 虫 も 包 含 さ れ る 。 特 定 の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 dsc-4お よ
び / ま た は dsc-3の 少 な く と も 1 つ の 突 然 変 異 を 含 む 線 虫 変 異 体 、 ま た は 正 常 レ ベ ル の dsc
-4お よ び / ま た は dsc-3発 現 が 減 少 さ れ た 線 虫 、 ま た は clk-1/dsc-3お よ び clk-1/dsc-4二
重 突 然 変 異 体 な ど の 少 な く と も 2つ の 遺 伝 子 の 突 然 変 異 を 含 む 変 異 体 を 提 供 す る 。 変 異 体
線 虫 を 製 作 し 使 用 す る 組 成 物 お よ び 方 法 の 詳 細 は 、 第 5.3.1節 に 提 供 し て あ る 。
【0055】
また、本発明は、遺伝的および生物学的な解析、並びにスクリーニングの種々の方法に
お け る 、 dsc-3核 酸 、 DSC-3ポ リ ペ プ チ ド 、 dsc-4核 酸 、 DSC-4ポ リ ペ プ チ ド 、 お よ び / ま た
30
は 上 述 し た 変 異 体 線 虫 の 使 用 を 含 む 。 薬 物 標 的 と し て の dsc-3遺 伝 子 、 DSC-3ポ リ ペ プ チ ド
、 dsc-4遺 伝 子 、 お よ び DSC-4ポ リ ペ プ チ ド の 使 用 は 、 特 に 提 供 さ れ る 。 関 連 し た 側 面 に お
いて、リポタンパク質代謝に関与するさらなる遺伝子を同定するための本発明のアッセイ
法 に お け る 、 dsc-3変 異 体 お よ び / ま た は dsc-4変 異 体 の 使 用 も 想 定 さ れ る 。
【0056】
本 発 明 の 主 な 目 的 の う ち の 1つ は 、 心 臓 血 管 疾 患 お よ び 異 脂 肪 血 症 障 害 を 含 む ( し か し
これらに限定されない)代謝障害の分野に使用される化合物を選択するために方法を提供
すことである。本発明は、ヒトにおけるこのような代謝障害の治療および予防に有用な薬
物 を ス ク リ ー ニ ン グ す る た め の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を 特 徴 と す る 。 試 験 線 虫 の 1つ ま た は 複
数の特徴的な表現型と関係する望ましい生物学的結果を生じる化合物をスクリーニングす
40
るために、種々のアッセイ法が提供される。胚細胞周期、全胚発生、後胚発生、および種
々の周期的挙動、たとえば、排便、咽頭ポンピング、および遊泳、並びに産卵速度および
老 化 な ど の 表 現 型 を 使 用 す る こ と が で き る 。 本 質 的 に 、 試 験 線 虫 の 表 現 型 は 、 1つ ま た は
複数の標的遺伝子/遺伝子産物の活性または一定の脂質および/またはリポタンパク質の
レベルについての本発明のアッセイ法における生物学的読み出しとして使用される。試験
化合物は、試験線虫において最初に未知の薬物標的遺伝子/遺伝子産物に対して作用して
も よ い 。 た と え ば 、 本 発 明 は 、 脊 椎 動 物 、 好 ま し く は ヒ ト に お い て LDL分 泌 の レ ベ ル お よ
び / ま た は LDL酸 化 を 減 少 さ せ る 化 合 物 を ス ク リ ー ニ ン グ す る た め の 、 試 験 線 虫 の 生 殖 系
列発達に基づいたアッセイ法を提供する。また、線虫の表現型は、標的遺伝子産物の活性
を反映する線虫の一定の脂質代謝産物のレベルを示すことができる。また、本発明の方法
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は 、 複 製 解 除 ( dereplication) 並 び に 薬 理 学 的 研 究 お よ び 毒 性 研 究 な ど ( し か し 、 限 定
されない)のその他の薬剤開発の要求のために使用してもよい。本発明の化合物をスクリ
ー ニ ン グ す る ア ッ セ イ 法 の 詳 細 は 、 第 5.3.2節 に 提 供 し て あ る 。
【0057】
関連した側面において、本発明は、脂肪酸、ステロール(たとえば、コレステロール)
、および一次および二次胆汁酸塩および酸の輸送を含む、脂質輸送および/またはリポタ
ンパク質輸送を調整することができる化合物をスクリーニングするためのアッセイ法を提
供 す る 。 線 虫 ゲ ノ ム は 、 VLDLお よ び LDLリ ポ タ ン パ ク 質 に お い て 見 い だ さ れ る apoBタ ン パ
ク 質 に 似 て い る い く つ か の vit遺 伝 子 を 含 む 。 ビ テ ロ ゲ ニ ン は 、 線 虫 を 含 む 種 々 の 生 物 体
の 卵 黄 の 主 要 成 分 で あ る 。 哺 乳 類 で は 、 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 形 成 お よ び 脂 質 化 は 、 DSC
10
-4に 相 同 的 な ミ ク ロ ソ ー ム ・ ト リ グ リ セ リ ド 転 移 タ ン パ ク 質 ( MTP) の 活 性 に 必 要 で あ る
。 線 虫 DSC-4の 合 成 お よ び 活 性 の 減 少 は 、 特 異 的 な 生 物 学 的 効 果 を 生 じ る が 、 卵 黄 の 合 成
に は 影 響 を 及 ぼ さ な い か 、 ま た は わ ず か だ け で あ る 。 こ れ ら の 結 果 は 、 小 胞 体 ( ER) に お
い て ア セ ン ブ ル さ れ る LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 が 、 線 虫 に お い て apoB含 有 リ ポ タ ン パ ク 質 の
小 サ ブ セ ッ ト を 表 す こ と を 示 す 。 い ず れ の 理 論 に よ っ て も 拘 束 さ れ な い が 、 apoB含 有 卵 黄
粒子は、一部のその他生物体の大多数のリポタンパク質と同様に、細胞外で構築すること
が で き る こ と が 分 か る 。 MTP依 存 的 に 、 ERで 構 築 さ れ た リ ポ タ ン パ ク 質 は 、 そ の 他 の apoB
含有リポタンパク質とは異なる構造を有する可能性が高い。線虫において、さらに卵母細
胞生産のための卵黄様リポタンパク質が優性に存在することから考えても、哺乳類と同様
に 、 高 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( HDL) 様 の 粒 子 、 超 低 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( VLDL) 様 の 粒 子
20
な ど ( し か し 、 限 定 さ れ な い ) の 、 脂 質 輸 送 に 関 与 す る 1つ ま た は 複 数 の リ ポ タ ン パ ク 質
を含む多様なその他の粒子が存在することが想定される。本発明のアッセイ法の標的とし
て 、 こ れ ら の 複 合 体 線 虫 リ ポ タ ン パ ク 質 粒 子 の 使 用 が 包 含 さ れ る 。 ま た 、 本 発 明 の dsc遺
伝子は、線虫におけるこのようなリポタンパク質粒子の合成、構築、および輸送に関与す
るこのような粒子または酵素の成分をコードすることができることが想定される。
【0058】
もう一つの特定の態様において、本発明は、細胞、細胞小器官、細胞構成要素、細胞表
面成分、細胞外材料、脂質、タンパク質、炭水化物、および核酸を含む(しかし、これら
に限定されない)、インビボで生物学的実態の酸化状態を調整することができる化合物を
ス ク リ ー ニ ン グ す る た め の ア ッ セ イ 法 を 提 供 す る 。 こ の よ う な 実 体 の 例 は 、 LDLで あ る 。
30
【0059】
関連した側面において、本発明は、線虫の形態学的、行動、および、発達の表現型が目
視によって評価されないアッセイ法を提供する。これらのアッセイ法は、表現型と関係す
る遺伝子発現プロフィールおよび/または活性が表現型と関係する線虫プロモーターを含
むリポーター遺伝子構築物の使用に基づく。もう一つの関連した側面において、本発明は
、 ま た 、 線 虫 の 脂 質 お よ び / ま た は リ ポ タ ン パ ク 質 の レ ベ ル が 定 方 向 に ( directed) 観 察
され、および/または測定されるアッセイ法を提供する。上記の視覚的および非視覚的な
アッセイ法は、本発明の線虫をスクリーニングし、解析するためのプラットフォームの不
可欠な部分を形成する。本発明のアッセイ法のいくつか、特に非視覚的アッセイ法は、多
くまたは全ての工程が自動化することができるように開発した。
40
【0060】
本発明のアッセイ法によって同定される活性化合物は、薬学的、獣医学的、または農芸
化学的/農薬の(たとえば殺虫性のおよび/または線虫撲滅性の)使用のためのものであ
る。活性化合物は、脊椎動物、好ましくは伴侶動物、家畜、および被保護野生動物などの
哺乳類、および最も好ましくはヒトに使用することができる。本システムのその他の態様
、使用、利益は、本明細書において以下に提供されるさらなる明細書から明らかになるで
あろう。
【0061】
5.1 脂 質 お よ び リ ポ タ ン パ ク 質 の レ ベ ル の モ ジ ュ レ ー タ ー 本発明は、脂質代謝に関与し、薬物標的として役立つことができる線虫遺伝子の同定に
50
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関する。このような遺伝子は、一般的に脂質およびリポタンパク質のモジュレーター(ま
た は MOLL) と 呼 ば れ 、 線 虫 に お け る 脂 質 お よ び リ ポ タ ン パ ク 質 の レ ベ ル を 調 整 す る こ と が
で き る 遺 伝 子 を 含 む 。 MOLL核 酸 お よ び / ま た は ポ リ ペ プ チ ド は 、 i) リ ポ タ ン パ ク 質 の 合
成 / 分 泌 、 ii) 胆 汁 酸 / 塩 の 合 成 、 吸 収 、 お よ び 排 出 ; ( iii) よ り 多 く の 、 お よ び 少 な
い脂質をリポタンパク質に組み入れるために、または胆汁酸/塩類に転換するために利用
で き る よ う に 、 一 般 に 脂 質 レ ベ ル を 調 整 す る こ と ; ( iv) ス テ ロ ー ル の 合 成 、 輸 送 、 お よ
び 利 用 、 v) LDL酸 化 、 vi) ROS産 生 、 お よ び / ま た は vii) ROSク リ ア ラ ン ス を 含 む ( し か
し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い ) 脂 質 代 謝 に お い て 役 割 を 有 す る 。 脂 質 代 謝 に お け る MOLLsの
関与は、直接的(たとえば、リポタンパク質またはリポタンパク質複合体の成分であるポ
リ ペ プ チ ド 、 LDLを 酸 化 す る 酵 素 、 体 内 ま た は 細 胞 内 の 1つ の 位 置 か ら 別 の 位 置 に 脂 質 を 輸
10
送するポリペプチド、その他)、または間接的(たとえば、脂質代謝、その他に直接関与
するポリペプチドの活性レベルに変化を生じさせるポリペプチド)であることができる。
従って、多くの異なる脂質、リポタンパク質、およびこれらの代謝産物のレベルが、本発
明 の 試 験 線 虫 お よ び 遺 伝 子 の モ デ ル に お い て 調 整 さ れ る と 思 わ れ る 。 Watts and Browse,
2002, PNAS 99:5854-5859, Watts et al., 2003, Genetics 163:581-589, Lesa et al.,
2 0 0 3 , J . C e l l S c i . 1 1 6 : 4 9 6 5 - 4 9 7 5 , K n i a z e v a e t a l . , 2 0 0 3 , G e n e t i c s 1 6 3 : 1 5 9 - 1 6 9を
参 照 さ れ た い 。 こ の よ う な 脂 質 の 例 は 、 C-12脂 肪 酸 ( た と え ば 、 ラ ウ リ ン 酸 ) 、 C-14脂 肪
酸 ( た と え ば 、 ミ リ ス チ ン 酸 ) 、 C-16脂 肪 酸 ( た と え ば 、 パ ル ミ チ ン 酸 ) 、 C-18脂 肪 酸 (
た と え ば 、 ス テ ア リ ン 酸 ) 、 C-20脂 肪 酸 ( た と え ば 、 ア ラ キ ド ン 酸 ) お よ び C-22脂 肪 酸 (
たとえば、セルボン酸);電子伝達に関与するユビキノンおよび関連した脂質;ステロー
20
ル ( た と え ば 、 コ レ ス テ ロ ー ル ) 、 オ キ シ ス テ ロ ー ル ( た と え ば 、 22( R) -ヒ ド ロ キ シ ル
・コレステロール)、フィトステロール(たとえば、カンペステロール、シトステロール
、 ス チ ガ ス テ ロ ー ル ( stigasterol) ) ; 並 び に ラ ノ ス テ ロ ー ル か ら 始 ま る コ レ ス テ ロ ー
ルコレステロール生合成の中間体および一次および二次胆汁酸/塩類を介したコレステロ
ー ル 、 7-ヒ ド ロ キ シ コ レ ス テ ロ ー ル の 利 用 の 中 間 体 を 含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。
【0062】
MOLLsの 例 は 、 dsc-1、 dsc-2、 dsc-3、 dsc-4、 dsc-5、 dsc-7、 ま た は dec-7を 含 む 。 好 ま
し い 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 例 示 的 な MOLL核 酸 と し て の dsc-3お よ び dsc-4を 提 供 す る 。
【0063】
変 異 体 MOLLsは 、 本 発 明 の 標 的 ス ク リ ー ニ ン グ に お い て 、 天 然 の LDLま た は ROSの 望 ま し
30
く な い レ ベ ル に よ っ て 生 じ る 線 虫 の clk-1変 異 体 表 現 型 ( た と え ば 、 排 便 サ イ ク ル 長 、 期
外発生の生殖系列発達、速度の未発達の、または後胚発生)の抑制因子として同定するこ
と が で き る 。 一 つ の 態 様 に お い て 、 変 異 体 MOLLsは 、 線 虫 並 び に そ の 他 の 種 ( た と え ば 、
ヒ ト ) の 野 生 型 MOLL相 同 体 を 単 離 す る た め に 使 用 す る こ と が で き る 。 も う 一 つ の 態 様 に お
い て 、 変 異 体 MOLLsは 、 線 虫 に 導 入 す る こ と が で き 、 さ ら な る MOLLsを 同 定 す る た め の さ ら
な る 標 的 ス ク リ ー ニ ン グ に 使 用 す る こ と が で き る ( 変 異 体 clk-1の 代 わ り に ) 、 ま た は 薬
物において、スクリーニングすることは本発明の薬剤を同定するためにアッセイする。一
部 の 態 様 に お い て 、 1つ の 変 異 体 MOLLを 有 す る 線 虫 は 、 本 発 明 の さ ら な る 標 的 ま た は 薬 剤
を ス ク リ ー ニ ン グ す る た め に 使 用 さ れ る 。 そ の 他 の 態 様 に お い て 、 複 数 の 変 異 体 MOLLを 有
する線虫は、本発明のさらなる標的または薬剤をスクリーニングするために使用される。
40
【0064】
5.1.1 MOLL核 酸 本 発 明 は 、 MOLL核 酸 ( そ れ ぞ れ SEQ ID NO: 1お よ び 7に 記 載 さ れ た dsc-4,dsc-3核 酸 な ど
) を 含 む 。 本 発 明 者 ら は 、 原 理 の 証 明 と し て 、 MOLLsを 同 定 す る た め に 本 発 明 の ス ク リ ー
ニ ン グ 行 い 、 MOLLの 第 1の 例 と し て dsc-4を 同 定 し た 。 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ 法 に お い て
同 定 し た 全 て の 変 異 体 MOLL核 酸 、 並 び に こ れ ら の 野 生 型 対 応 物 は 、 本 発 明 の 核 酸 で あ る 。
加 え て 、 本 発 明 の 核 酸 は 、 ま た 、 本 発 明 の MOLLヌ ク レ オ チ ド 配 列 の 変 種 ( 任 意 の 断 片 、 相
同体、天然に存在する対立遺伝子、またはこれらの変異体を含むが、これらに限定されな
い)を含むことはいうまでもない。また、本発明の核酸は、ストリンジェントな条件下で
MOLL核 酸 に ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン す る こ と が で き る 核 酸 を 含 む 。 ま た 、 本 発 明 の 核 酸 は
50
(18)
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、 MOLL核 酸 と 同 じ ポ リ ペ プ チ ド を コ ー ド す る こ と が で き る 核 酸 、 並 び に ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で MOLL核 酸 と 同 じ ポ リ ペ プ チ ド を コ ー ド す る こ と が で き る 核 酸 に ハ イ ブ リ ダ イ ズ
す る こ と が で き る 核 酸 を 含 む 。 本 発 明 の 核 酸 に よ っ て コ ー ド さ れ る ポ リ ペ プ チ ド の 1つ ま
た は 複 数 の 活 性 は 、 本 発 明 の 方 法 に よ っ て 同 定 さ れ る MOLL核 酸 に よ っ て コ ー ド さ れ る ポ リ
ペプチドの活性と比較して変化させることができる。
【0065】
一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド の ア ミ ノ 酸 配 列 を コ ー ド す る 核 酸 を
提 供 す る 。 ま た 、 本 発 明 は 、 SEQ ID NO: 2ま た は 8の ア ミ ノ 酸 配 列 ま た は こ れ ら の 断 片 な
ど の MOLLポ リ ペ プ チ ド の ア ミ ノ 酸 配 列 を コ ー ド す る ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む 核 酸 を 提 供 す
る 。 特 定 の 態 様 に お い て 、 核 酸 は 、 イ ン ト ロ ン 配 列 、 ま た は 線 虫 ゲ ノ ム の SEQ ID NO: 1ま
10
た は 7に 記 載 し た ヌ ク レ オ チ ド 配 列 に 隣 接 す る ゲ ノ ム 配 列 、 ま た は 線 虫 ゲ ノ ム の 個 々 の エ
キ ソ ン に 対 応 す る SEQ ID NO: 1ま た は 7の 後 に 隣 接 す る ゲ ノ ム 配 列 を 含 ま な い 。 も う 一 つ
の 特 定 の 態 様 に お い て 、 yk357a6、 K02D7、 H06H21、 ま た は Y17G9と 命 名 さ れ た 核 酸 ク ロ ー
ンの核酸は、本発明に包含されない。
【0066】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLLヌ ク レ オ チ ド 配 列 ( た と え ば 、 SEQ ID NO: 1、 ま た は 7
) ま た は こ れ ら の 変 種 と 少 な く と も 75%、 80%、 85%、 90%、 95%、 98%、 ま た は 99%同 一 で あ
る 核 酸 は 、 本 発 明 に 包 含 さ れ る 。 2つ の 核 酸 配 列 の パ ー セ ン ト 一 致 性 を 決 定 す る た め に 、
配列を最適な比較効果となるように整列させる(たとえば、第二のまたは核酸配列との最
適 な 配 列 の た め に 、 第 1の 核 酸 配 列 の 配 列 に ギ ャ ッ プ を 導 入 す る こ と が で き る ) 。 次 い で
20
、 対 応 す る ヌ ク レ オ チ ド 位 置 の ヌ ク レ オ チ ド を 比 較 す る 。 第 1の 配 列 の 位 置 が 第 2の 配 列 の
対応する位置と同じヌクレオチドによって占められるときには、分子は、その位置で同一
で あ る 。 2つ の 配 列 間 の パ ー セ ン ト 一 致 性 は 、 配 列 に よ っ て 共 有 さ れ る 同 一 の 位 置 の 数 の
関 数 で あ る ( す な わ ち 、 %一 致 性 =同 一 の 重 複 す る 位 置 の 数 / 位 置 の 総 数 × 100%) 。 一 つ の
態 様 に お い て 、 2つ の 配 列 は 、 同 じ 長 さ で あ る 。
【0067】
ま た 、 2つ の 配 列 間 の パ ー セ ン ト 一 致 性 の 決 定 は 、 数 学 的 ア ル ゴ リ ズ ム を 使 用 し て 達 成
す る こ と が で き る 。 2つ の 配 列 の 比 較 の た め に 利 用 さ れ る 数 学 的 ア ル ゴ リ ズ ム の 好 ま し い
、 非 限 定 の 例 は 、 Karlin and Altschul, 1990, PNAS 87:2264-2268, modified as in Kar
lin and Altschul, 1993, PNAS 90:5873-5877の ア ル ゴ リ ズ ム で あ る 。 こ の よ う な ア ル ゴ
30
リ ズ ム は 、 Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403の NBLASTお よ び XBLASTプ ロ グ
ラ ム に 組 み 入 れ ら れ る 。 BLASTヌ ク レ オ チ ド 検 索 は 、 本 発 明 の 核 酸 分 子 に 相 同 的 な ヌ ク レ
オ チ ド 配 列 を 得 る た め に 、 た と え ば ス コ ア =100、 wordlength=12に セ ッ ト し た NBLASTヌ ク
レオチド・プログラム・パラメータで行うことができる。比較のためにギャップを作った
配 列 を 得 る た め に は 、 Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に 記 載
さ れ る よ う に 、 Gapped BLASTを 利 用 す る こ と が で き る 。 あ る い は 、 PSI BLASTを 使 用 し て
、 分 子 の 距 離 関 係 を 検 出 す る 繰 り 返 さ れ た 検 索 を 行 う こ と が で き る ( 同 上 ) 。 BLAST、 Gap
ped BLAST、 お よ び PSI Blastプ ロ グ ラ ム を 利 用 す る と き に 、 そ れ ぞ れ の プ ロ グ ラ ム の ( た
と え ば 、 NBLASTの ) デ フ ォ ル ト ・ パ ラ メ ー タ を 使 用 す る こ と が で き る 。 配 列 の 比 較 に 利 用
さ れ る 数 学 的 ア ル ゴ リ ズ ム の も う 一 つ の 好 ま し い 非 限 定 の 例 は 、 Myers and Miller, 1988
40
, CABIOS 4:11-17の ア ル ゴ リ ズ ム で あ る 。 こ の よ う な ア ル ゴ リ ズ ム は 、 GCG配 列 配 列 ソ フ
ト ウ ェ ア ・ パ ッ ケ ー ジ の 一 部 で あ る ALIGNプ ロ グ ラ ム ( バ ー ジ ョ ン 2.0) に 組 み 込 ま れ て い
る 。 ア ミ ノ 酸 配 列 を 比 較 す る た め の ALIGNプ ロ グ ラ ム を 利 用 す る と き に 、 PAM120重 量 残 基
表 ( weight residue table) 、 12の ギ ャ ッ プ ・ レ ン グ ス ・ ペ ナ ル テ ィ ( gap length penal
ty) 、 お よ び 4の ギ ャ ッ プ ・ ペ ナ ル テ ィ ( gap penalty) を 使 用 す る こ と が で き る 。
【0068】
2つ の 配 列 間 の パ ー セ ン ト 一 致 性 は 、 ギ ャ ッ プ を 可 能 に し 、 ま た は せ ず に 、 上 記 し た も
のと同様の技術を使用して決定することができる。パーセント一致性を算出する際に、典
型的に、完全一致だけが計数される。好ましくは、配列比較は、核酸配列、通常核酸プロ
ー ブ 配 列 の 少 な く と も 1つ の 全 長 に 沿 っ て 行 わ れ る 。
50
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【0069】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLL核 酸 の 断 片 ま た は こ れ ら の 変 種 は 、 本 発 明 に よ っ て 包 含
さ れ る 。 本 発 明 は 、 本 発 明 の 方 法 に よ っ て 同 定 さ れ た MOLLヌ ク レ オ チ ド 配 列 ( た と え ば 、
SEQ ID NO: 1ま た は 7) ま た は こ れ ら の 変 種 も し く は 相 補 物 の 少 な く と も 100、 200、 300、
350、 400、 450、 500、 550、 600、 650、 700、 750、 800、 850、 900、 950、 1000、 1100、 120
0、 1300、 1400、 1500、 1600、 1700、 1800、 1900、 2000、 2100、 2200、 2300、 2400、 2500
、 2600、 2700、 2800、 2900、 3000、 3100、 3200、 3300、 3400、 3500、 3600、 3700、 3800、
3900、 4000、 ま た は 4100隣 接 す る ヌ ク レ オ チ ド の 断 片 を 含 む 核 酸 分 子 を 特 徴 と す る 。 好 ま
しい態様において、断片は、少なくとも一部のオープンリーディングフレームまたはコー
ド 配 列 を 含 む 。 も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 断 片 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド の 1つ ま た
10
は複数のエキソンおよび/またはドメイン(たとえば、機能的ドメイン)をコードする。
【0070】
あ ま り 好 ま し く な い 態 様 に お い て 、 本 発 明 の MOLL核 酸 は 、 MOLL核 酸 ま た は そ の 断 片 を 含
み 、 か つ 総 ゲ ノ ム DNAま た は 染 色 体 特 異 的 ゲ ノ ム DNAの ク ロ ー ニ ン グ に よ っ て 作 製 さ れ る ゲ
ノ ム DNAラ イ ブ ラ リ ー に 由 来 す る 、 ゲ ノ ム DNAの 単 離 さ れ た ク ロ ー ン ま た は 断 片 を 含 ま な い
。
【0071】
特 定 の 態 様 に お い て 、 MOLLは 、 dsc-4、 dsc-4の apoB結 合 ド メ イ ン 、 PDI結 合 ド メ イ ン 、
ま た は 脂 質 結 合 ド メ イ ン の 1つ ま た は 複 数 を コ ー ド す る 核 酸 断 片 で あ る ( た と え ば 、 図 3C
お よ び 4を 参 照 ) 。
20
【0072】
も う 一 つ の 特 定 実 施 例 に お い て 、 MOLLは 、 dsc-3、 Harris et al. ( 2003, Biochem Bio
phys Acta 1633:127-131そ れ は 、 そ の 全 体 が 参 照 と し て 本 明 細 書 に 組 み 入 れ ら れ る ) の 図
1で 定 義 さ れ る 8つ の 保 存 さ れ た ド メ イ ン と 共 に 整 列 さ れ る 1つ ま た は 複 数 の ド メ イ ン 、 ま
た は 膜 貫 通 領 域 の う ち の 1つ を コ ー ド す る 核 酸 断 片 で あ る 。 ( 図 11) 。 ま た 、 核 酸 断 片 は
、 大 き な 細 胞 質 ル ー プ の リ ン 酸 化 ド メ イ ン 、 ATP結 合 ド メ イ ン 、 ATP加 水 分 解 ド メ イ ン 、 お
よ び / ま た は ATP結 合 部 位 を 基 質 転 位 置 の た め の 膜 貫 通 領 域 の 保 存 さ れ た 残 基 に 接 続 す る
ヒ ン ジ ・ ド メ イ ン な ど の 、 DSC-3の 機 能 的 ド メ イ ン の 1つ ま た は 複 数 を 含 む ペ プ チ ド を コ ー
ド す る こ と が で き る 。 本 発 明 の 核 酸 断 片 の 例 は 、 7節 よ び 9節 に さ ら に 記 載 し て あ る 。
【0073】
30
当業者であれば、コードされるアミノ酸配列に変化を生じさせるであろう、または生じ
させないであろう核酸配列多型が、集団(たとえば、ヒト集団)内に存在するであろうこ
とを認識する。このような遺伝子多型は、天然の対立形質のバリエーションにより、集団
内の個体間に存在するであろう。対立遺伝子は、所与の遺伝子座にオルターナティブに生
じ る 一 群 の 遺 伝 子 の う ち の 1つ で あ る 。 本 明 細 書 に 使 用 さ れ る も の と し て 、 「 対 立 遺 伝 子
変異体」の句は、所与の場所に存在するヌクレオチド配列を、またはヌクレオチド配列に
よってコードされるポリペプチドをいう。本明細書に使用されるものとして、「天然に存
在する」核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド配列を有する(たとえば、天然のタン
パ ク 質 を コ ー ド す る ) RNAま た は DNA分 子 を い う 。 天 然 に 存 在 す る 対 立 形 質 の バ リ エ ー シ ョ
ン は 、 典 型 的 に は 、 所 与 の 遺 伝 子 の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 に の 1∼ 5%の 相 違 を 生 じ 得 る 。 通 常
40
、天然に存在するバリエーションは、コードされるポリペプチドの機能的活性を変更しな
いか、または実質的に変更しない。オルターナティブな対立遺伝子は、多くの異なる個体
で関心対象の遺伝子をシーケンスすることによって同定することができる。これは、種々
の個体の同じ遺伝子座を同定するためのハイブリダイゼーション・プローブを使用するこ
とによって容易に行うことができる。このようなヌクレオチド・バリエーションおよび生
じるアミノ酸の多型、または天然の対立形質のバリエーションの結果生じるバリエーショ
ンのいずれかおよび全てが、本発明の範囲内であることが企図される。一つの態様におい
て、特定の障害と関係する多型は、前記障害を診断するためのマーカーとして使用される
。
【0074】
50
(20)
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さらに、線虫および線虫タンパク質のものとは異なる(たとえば、ヒト)ヌクレオチド
配列を有するその他の種(相同体)に由来する本発明のタンパク質をコードする核酸分子
は、本発明の範囲内であることが企図される。本発明の核酸の天然の対立遺伝子変異体お
よび相同体に対応する核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で
の標準的なハイブリダイゼーション技法に従って、ハイブリダイゼーションプローブとし
て、線虫もしくはヒト核酸、またはこれらの一部を使用して、線虫またはヒト核酸分子に
対するこれらの一致性に基づいて単離することができる。
【0075】
従 っ て 、 も う 1つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 単 離 さ れ た 核 酸 分 子 は 、 少 な く と も 25、 50
、 100、 200、 300、 400、 500、 600、 700、 800、 900、 1000、 1100、 1200、 1300、 1400、 150
10
0、 1600、 1700、 1800、 1900、 2000、 2100、 2200、 2300、 2400、 2500、 2600、 2700、 2800
、 2900、 3000、 3100、 3200、 3300、 3400、 3500、 3600、 3700、 3800、 3900、 4000、 ま た は
4100の 長 さ の 隣 接 す る ヌ ク レ オ チ ド で あ り 、 ス ト リ ン ジ ェ ン ト な 条 件 下 で 、 MOLL核 酸 ま た
はこれらの相補物のヌクレオチド配列を含む核酸分子(好ましくはコード配列)に対して
ハイブリダイズする。
【0076】
本発明の核酸分子の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者であれば、タン
パク質の生物活性を変更し、または変更することなく、コードされるタンパク質のアミノ
酸配列に変化を生じさせるであろう、または生じさせないであろう、本発明の核酸のヌク
レオチド配列への突然変異によって変化を導入することができることをさらに認識する。
20
また、このような変異体核酸も本発明に包含される。
【0077】
従 っ て 、 も う 1つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 少 な く と も 1 つ の 活 性 に る 必 須 な ア ミ ノ
酸残基に変化を含む本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に属する。このようなポ
リ ペ プ チ ド は 、 MOLL核 酸 に よ っ て コ ー ド さ れ る ポ リ ペ プ チ ド と は ア ミ ノ 酸 配 列 が 異 な る が
、少なくとも1つの生物活性を保持する。
【0078】
本 発 明 の も う 一 つ の 態 様 は 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド の ア ミ ノ 酸 配 列 と 少 な く と も 約 30%、 35%
、 40%、 45%、 50%、 55%、 60%、 65%、 75%、 85%、 95%、 ま た は 98%同 一 の ア ミ ノ 酸 配 列 を 含 む
ポリペプチドをコードする核酸分子に属する。本明細書に使用されるものとして、「スト
30
リ ン ジ ェ ン ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る 」 の 用 語 は 、 少 な く と も 60%、 65%、 70%、 75%
、 80%、 85%、 90%が 互 い に 同 一 の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 が 、 典 型 的 に は ハ イ ブ リ ダ イ ズ し た ま
まの状態にあるハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記載することが企図さ
れ る 。 こ の よ う な ス ト リ ン ジ ェ ン ト な 条 件 は 、 当 業 者 に 既 知 で あ り 、 た と え ば 、 Ausubel,
F.M. et al., eds. 1989 Current Protocols in Molecular Biology, vol. 1, Green Pu
blishing Associates, Inc. and John Wiley and Sons, Inc., NY at pages 6.3.1 to 6.
3.6 and 2.10.3に お い て 見 出 さ れ る 。 ス ト リ ン ジ ェ ン ト な ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 条 件 の
好 ま し い 非 限 定 の 例 は 、 6× 塩 化 ナ ト リ ウ ム / ク エ ン 酸 ナ ト リ ウ ム ( SSC) 中 で 約 45℃ で の
ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 、 続 く 0.2× SSC、 0.1%の SDS中 で 50∼ 65℃ で の 1回 ま た は 複 数 回 の
洗 浄 で あ る 。 6× SSC中 で 約 45℃ で の フ ィ ル タ ー 結 合 DNAに 対 す る ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
40
、 続 く 0.1× SSC/ 0.2%の SDS中 で 約 60℃ で の 1回 ま た は 複 数 回 の 洗 浄 な ど と い う 、 高 度 に ス
トリンジェントな条件を本発明に使用することもできる。
【0079】
一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLL核 酸 は 、 MOLL遺 伝 子 の 発 現 レ ベ ル を モ ニ タ ー す る た め の プ ロ
ー ブ と し て 使 用 す る こ と が で き る 。 特 定 の 実 施 態 様 に お い て 、 MOLL核 酸 発 現 は 、 望 ま し く
な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩 / 酸 、 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDLを 含 む が 、 こ れ に 限 定 さ れ ず )
、 お よ び / ま た は ROSが 関 与 す る 障 害 を 診 断 す る た め に 使 用 さ れ る 。 も う 一 つ の 特 定 の 態
様 に お い て 、 MOLL核 酸 発 現 は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩 / 酸 、 リ ポ タ ン パ ク
質 ( LDL含 む が 、 こ れ に 限 定 さ れ ず ) 、 お よ び / ま た は ROSに 関 与 す る 障 害 の 治 療 ( MOLLに
基 づ い た 、 ま た は 非 MOLLに 基 づ い た 治 療 ) の 有 効 性 を モ ニ タ ー す る た め に 使 用 さ れ る 。 も
50
(21)
JP 2006-520189 A 2006.9.7
う 一 つ の 特 定 の 態 様 に お い て 、 MOLL核 酸 の 発 現 は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩
/ 酸 、 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDL含 む が 、 こ れ に 限 定 さ れ ず ) 、 お よ び / ま た は ROSに 関 与 す る
障害にかかりやすい、または罹患する可能性が高い個体を予測するために使用される。
【0080】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLL核 酸 は 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド を 組 換 え で 発 現 す る た め に 使
用 す る こ と が で き る 。 こ れ ら の 全 長 MOLLま た は い ず れ か の 部 分 ま た は ド メ イ ン を 発 現 さ せ
て、必要に応じて、従来の技術によって精製することができる。加えて、融合タンパク質
は 、 MOLL核 酸 が 異 種 ポ リ ペ プ チ ド ま た は こ れ ら の 部 分 を コ ー ド す る 核 酸 に 連 結 さ れ た 融 合
構築物を発現することによって作製することができる。
【0081】
10
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLL核 酸 は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩 / 酸 、 リ
ポ タ ン パ ク 質 ( LDL含 む が 、 こ れ に 限 定 さ れ ず ) 、 お よ び / ま た は ROSに 関 与 す る 障 害 の 治
療 方 法 に 使 用 す る 本 発 明 の 薬 剤 で あ る 。 た と え ば 、 MOLL核 酸 は 、 MOLL発 現 を 増 大 す る た め
に ( す な わ ち 、 遺 伝 子 治 療 ) 、 ま た は イ ン ビ ボ で MOLL発 現 を 減 少 さ せ る た め に ( す な わ ち
、 MOLLア ン チ セ ン ス ) 使 用 す る こ と が で き る 。
【0082】
5.1.2 MOLL・ ポ リ ペ プ チ ド 本 発 明 は 、 DSC-4お よ び DSC-3( そ の ア ミ ノ 酸 配 列 は 、 そ れ ぞ れ SEQ ID NO: 2お よ び SEQ
ID NO: 8に 記 載 さ れ て い る ) な ど の MOLLポ リ ペ プ チ ド を 含 む 。 変 異 体 MOLLポ リ ペ プ チ ド を
本発明のスクリーニング法で同定し、並びにこれらの野生型対応物は、本発明のポリペプ
20
チ ド で あ る 。 加 え て 、 加 え て 、 本 発 明 の ポ リ ペ プ チ ド は 、 ま た 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ
ドの変種(任意の断片、相同体、天然に存在する対立遺伝子、またはこれらの変異体を含
むが、これらに限定されない)を含むことはいうまでもない。また、本発明のポリペプチ
ド は 、 第 5.1.1節 に 記 載 さ れ て い る い ず れ の 核 酸 に よ っ て コ ー ド さ れ る ポ リ ペ プ チ ド も 含
む。
【0083】
本明細書に使用されるものとして、「誘導体」の用語は、アミノ酸残基の置換、欠失、
ま た は 付 加 の 導 入 に よ っ て 変 化 さ れ た 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド ( た と え ば 、 dsc-4) の
アミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。誘導体ポリペプチドは、すなわちポリペプチド
に対する分子の任意のタイプの共有結合によって修飾された残基を有してもよく、または
30
有していなくてもよい。たとえば(しかし、限定するためにではなく)、本発明の誘導体
ポ リ ペ プ チ ド は 、 た と え ば グ リ コ シ ル 化 、 ア セ チ ル 化 、 ペ グ 化 ( pegylation) 、 リ ン 酸 化
、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性の切断、細胞
リガンドまたはその他のタンパク質に対する結合などによって修飾されてもよい。本発明
のポリペプチドの誘導体は、特異的な化学開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシ
ンの代謝合成などを含む(しかし、これらに限定されない)当業者に既知の技術を使用し
て化学修飾によって修飾してもよい。さらにまた、本発明のポリペプチドの誘導体は、1
つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含んでいてもよい。
【0084】
一つの態様において、ポリペプチド誘導体は、機能的に活性な誘導体であり、少なくと
40
も 1 つ の 、 好 ま し く は よ り 多 く の 、 以 下 な ど の 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド と 同 様 の 、 ま た
は 同 一 の 機 能 を 有 す る : 野 生 型 MOLLポ リ ペ プ チ ド に 対 し て 生 じ る 抗 体 に 対 し て 結 合 す る こ
と 、 LDLレ ベ ル を 変 更 す る こ と 、 酸 化 型 の LDLレ ベ ル を 変 更 す る こ と 、 ROSレ ベ ル を 変 更 す
ること、コレステロール・レベルを変更すること、線虫の排便サイクル長を変更すること
、線虫生物体(たとえば、胚発生または後胚発生)またはこれらの組織の発達(たとえば
、生殖系列組織の発達)の速度を変更すること。もう一つの態様において、本発明のポリ
ペ プ チ ド の 誘 導 体 は 、 変 更 の な い ポ リ ペ プ チ ド と 比 較 し た と き に 、 前 述 の 機 能 の 1つ ま た
は複数が増大され、または減少された活性を有する。その他の変更される活性は、タンパ
ク質分解に対する抵抗性または細胞膜を横切る能力の増大を含むが、これらに限定されな
い。
50
(22)
JP 2006-520189 A 2006.9.7
【0085】
一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ 法 に よ っ て 同 定 さ れ た MOLLポ リ ペ プ チ ド
と 少 な く と も 75%、 80%、 85%、 90%、 95%、 98%、 ま た は 99%同 一 で あ る ポ リ ペ プ チ ド ま た は
こ れ ら の 変 種 も 本 発 明 に 包 含 さ れ る 。 類 似 性 ( ま た は パ ー セ ン ト 一 致 性 ) の 程 度 は 、 第 5.
1.1節 に 開 示 し た 方 法 に よ っ て 算 出 す る こ と が で き る ( NBLASTは 、 BLASTア ミ ノ 酸 検 索 に 使
用 さ れ な い と い う 警 告 に よ っ て 、 む し ろ XBLASTを 、 た と え ば プ ロ グ ラ ム ・ パ ラ メ ー タ ー を
ス コ ア -50、 wordlength=3に セ ッ ト し て 使 用 す る ) 。 特 定 の 態 様 に お い て 、 DSC-4の 変 種 は
、 図 11に 示 し た と お り の 共 通 配 列 ( SEQ ID NO: 13) を 含 み 、 コ ン セ ン サ ス 残 基 が 存 在 し
な い ア ミ ノ 酸 残 基 の 位 置 に つ い て は 、 前 記 位 置 は 、 図 11に 示 し た 整 列 さ せ た ヒ ト ま た は 線
虫の配列のいずれの残基位置にも整列されたことが見いだされるアミノ酸残基のうちの1
10
つ か ら な る 。 あ る 種 の 実 施 形 態 に お い て 、 DSC-4の 変 種 は 、 図 11に 示 し た と お り の 共 通 配
列 ( SEQ ID NO: 13) を 含 み 、 コ ン セ ン サ ス 残 基 が 存 在 し な い ア ミ ノ 酸 残 基 位 置 に つ い て
は 、 そ の 位 置 は 、 変 種 DSC-4配 列 が 図 11に 示 し た 整 列 さ れ た ヒ ト 配 列 を 含 ま な い こ と を 条
件 と し て 、 図 11に 示 し た 整 列 さ せ た ヒ ト ま た は 線 虫 配 列 の い ず れ の 残 基 位 置 に も 整 列 さ れ
た こ と が 見 い だ さ れ る ア ミ ノ 酸 残 基 の う ち の 1つ か ら な る 。
【0086】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド ま た は こ れ ら の 変 種 の 断 片 は 、 本
発 明 に 含 ま れ る 。 本 発 明 は 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド ま た は こ れ ら の 変 種 の ア ミ ノ 酸 配 列 の 少 な
く と も 5、 10、 15、 20、 25、 40、 50、 60、 70、 80、 90、 100、 125、 150、 175、 200、 250、 3
00、 350、 400、 450、 500、 550、 600、 650、 700、 750、 800、 850、 900、 950、 1000、 1050
20
、 1100、 1150、 1200、 1250、 1300、 1350、 ま た は 1400の 連 続 し た ア ミ ノ 酸 残 基 の 断 片 を 含
むポリペプチドを特徴とする。本発明のポリペプチドの断片は、免疫原性および/または
抗原性であっても、またはなくてもよい。好ましくは、本発明のポリペプチドの断片は、
全長ポリペプチドの少なくとも1つの活性のうちのいくらかのレベルの機能を保持する。
一 つ の 態 様 に お い て 、 断 片 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド の 1つ ま た は 複 数 の エ キ ソ ン お
よ び / ま た は ド メ イ ン ( た と え ば 、 機 能 的 な ド メ イ ン ) を 含 む 。 特 定 の 態 様 に お い て 、 MO
LLが dsc-4で あ る 場 合 、 断 片 は 、 apoB結 合 ド メ イ ン 、 PDI結 合 ド メ イ ン 、 ま た は 脂 質 結 合 ド
メ イ ン の 1つ ま た は 複 数 を 含 む ( た と え ば 、 図 3Cお よ び 4を 参 照 ) 。 も う 一 つ の 態 様 に お い
て 、 MOLLが dsc-3で あ る 場 合 、 断 片 は 、 大 き な 細 胞 質 ル ー プ の リ ン 酸 化 ド メ イ ン 、 ATP結 合
ド メ イ ン 、 ATP加 水 分 解 ド メ イ ン 、 お よ び / ま た は ATP結 合 部 位 を 基 質 転 位 置 の た め の 膜 貫
30
通 領 域 の 保 存 さ れ た 残 基 に 接 続 す る ヒ ン ジ ・ ド メ イ ン な ど の 1つ ま た は 複 数 の 機 能 的 ド メ
インを含む。
【0087】
従 っ て 、 も う 1つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 単 離 さ れ た ポ リ ペ プ チ ド は 、 少 な く と も 25
の 、 50、 100、 125、 150、 175、 200、 250、 300、 350、 400、 450、 500、 550、 600、 650、 70
0、 750、 800、 850、 900、 950、 1000、 1050、 1100、 1150、 1200、 1250、 1300、 1350、 ま た
は 1400の 長 さ の 隣 接 す る ア ミ ノ 酸 で あ り 、 本 発 明 の こ の よ う な ポ リ ペ プ チ ド を コ ー ド す る
核 酸 は 、 本 発 明 の 方 法 に よ っ て 単 離 さ れ た MOLLポ リ ペ プ チ ド ま た は こ れ ら の 変 種 を コ ー ド
する核酸に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0088】
40
本発明のポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者であれば、
タンパク質の生物活性を変更し、または変更することなく、コードされるタンパク質のア
ミノ酸配列に変化を生じさせるであろう、または生じさせないであろう、本発明の核酸の
ヌクレオチド配列への突然変異によって変化を導入することができることをさらに認識す
る。また、このような変異体核酸も本発明に包含される
従 っ て 、 も う 1つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 少 な く と も 1 つ の 活 性 に 必 須 で あ っ て も
よく、またはなくてもよいアミノ酸残基に変化を含むポリペプチドに属する。このような
ポ リ ペ プ チ ド は 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド と は ア ミ ノ 酸 配 列 が 異 な る が 、 そ の MOLLポ リ ペ プ チ ド
の少なくとも1つの生物活性を保持する。
【0089】
50
(23)
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本 発 明 の も う 一 つ の 側 面 は 、 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ 法 に よ っ て 同 定 さ れ た MOLLポ リ ペ
プ チ ド の い ず れ か 1つ と 免 疫 特 異 的 に 結 合 す る 抗 体 に よ っ て 、 免 疫 特 異 的 に 結 合 す る ポ リ
ペプチドに属する。
【0090】
一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 MOLL抗 体 、 好 ま し く は モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体
を 作 製 す る た め に 使 用 す る こ と が で き る 。 MOLL抗 体 は 、 MOLL遺 伝 子 産 物 ( ま た は ポ リ ペ プ
チド)の発現レベルをモニターするためのプローブとして使用することができる。特定の
態 様 に お い て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド 発 現 は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩 / 酸 、 リ
ポ タ ン パ ク 質 ( LDLを 含 む が 、 こ れ に 限 定 さ れ な い ) 、 お よ び / ま た は ROSに 関 与 す る 障 害
を 診 断 す る た め に 使 用 さ れ る 。 も う 一 つ の 特 定 実 施 例 に お い て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド 発 現 は
10
、 望 ま し く な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩 / 酸 、 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDLを 含 む が 、 こ れ に 限
定 さ れ な い ) 、 お よ び / ま た は ROSに 関 与 す る 障 害 の 治 療 ( MOLLに 基 づ い た 、 ま た は MOLL
に基づいていない治療)の有効性をモニターするために使用される。もう一つの特定実施
例 に お い て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド 発 現 は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の 脂 質 、 胆 汁 酸 塩 / 酸 、 リ ポ
タ ン パ ク 質 ( LDL含 む が 、 こ れ に 限 定 さ れ ず ) 、 お よ び / ま た は ROSに 関 与 す る 障 害 に 係 り
やすい、または罹患する可能性が高い個体を予測するために使用される。
【0091】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の LDLお よ び / ま
た は ROSま た は 異 常 な 脂 質 ま た は 胆 汁 代 謝 に 関 与 す る 障 害 の 治 療 方 法 に 使 用 さ れ る 本 発 明
の 薬 剤 で あ る 。 た と え ば 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 イ ン ビ ボ で MOLLレ ベ ル を 増 大 す る た め に
20
個体に投与することができる。
【0092】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド と 結 合 す る 本 発 明 の
薬剤を同定するための、薬物スクリーニングアッセイ法に使用することができる。
【0093】
5.1.2.1 抗 体 本 発 明 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド ( た と え ば 、 DSC-3、 ま た は DSC-4) と 免 疫 特 異 的
に結合する抗体、またはこれらの断片を含む。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体また
はモノクローナル抗体であることができる。「免疫特異的に」の用語は、本明細書におい
て 使 用 さ れ る も の と し て 、 本 発 明 の 抗 体 が 、 そ の 他 の 非 MOLLポ リ ペ プ チ ド と の 交 差 反 応 性
30
を 伴 わ ず に MOLLポ リ ペ プ チ ド に 結 合 す る 能 力 を い う 。
【0094】
一つの態様において、本発明は、ヒト、非ヒト、もしくはヒト化抗体、またはこれらの
断片を含む、実質的に精製された抗体またはこれらの断片の使用であって、該抗体または
断 片 は 、 免 疫 特 異 的 に SEQ ID NO: 2ま た は 8の ア ミ ノ 酸 配 列 お よ び SEQ ID NO: 1ま た は 7か
らなるポリヌクレオチドによってコードされるおよびアミノ酸配列を含む本発明のポリペ
プ チ ド ; ま た は SEQ ID NO: 2ま た は 8の ア ミ ノ 酸 配 列 の 少 な く と も 8つ の 隣 接 す る ア ミ ノ 酸
残基の断片に結合する使用を提供する。非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニ
ワトリ、ウサギ、またはラット抗体であることができる。
【0095】
40
その他の態様において、本発明は、ヒト、非ヒト、もしくはヒト化抗体、またはこれら
の断片を含む、実質的に精製した抗体またはこれらの断片であって、該抗体または断片は
、以下を含む本発明のポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体またはこれらの断片を提
供 す る : i) SEQ ID NO: 2ま た は 8の ア ミ ノ 酸 配 列 を 含 む ポ リ ペ プ チ ド の 天 然 に 存 在 す る 対
立 遺 伝 子 変 異 体 で あ っ て 、 該 ポ リ ペ プ チ ド は 、 SEQ ID NO: 1ま た は 7の ヌ ク レ オ チ ド 配 列
か ら な る MOLL核 酸 ま た は こ れ ら の 相 補 物 と ス ト リ ン ジ ェ ン ト 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る
MOLL核 酸 に よ っ て コ ー ド さ れ る 変 異 体 ; ii) SEQ ID NO: 1ま た は 7か ら な る 核 酸 と 少 な く
と も 90%同 一 で あ る ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む MOLL核 酸 ま た は こ れ ら の 相 補 物 に よ っ て コ ー
ド さ れ る ポ リ ペ プ チ ド ; お よ び iii) SEQ ID NO: 2ま た は 8の ア ミ ノ 酸 配 列 と 少 な く と も 90
%同 一 で あ る ポ リ ペ プ チ ド 。 非 ヒ ト 抗 体 は 、 ヤ ギ 、 マ ウ ス 、 ヒ ツ ジ 、 ウ マ 、 ニ ワ ト リ 、 ウ
50
(24)
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サギ、またはラット抗体であることができる。本発明の抗体は、本発明の方法に使用する
ことができる。
【0096】
特 定 の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 抗 体 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド の エ キ ソ ン ま た は ド
メイン(たとえば、機能的ドメイン)に結合し、内因性の結合パートナーに対するポリペ
プチドの結合を防げ、またはポリペプチドの分解を生じさせる。より特異的な態様におい
て 、 MOLLが DSC-4で あ る 場 合 、 ド メ イ ン は 、 apoB結 合 ド メ イ ン 、 PDI結 合 ド メ イ ン 、 ま た は
脂 質 結 合 ド メ イ ン で あ る ( た と え ば 、 図 3Cを 参 照 ) 。 も う 一 つ の 特 定 実 施 例 に お い て 、 MO
LLが DSC-3で あ る 場 合 、 ド メ イ ン は 、 そ の 膜 貫 通 領 域 の 1つ ま た は 複 数 を 含 む こ と が で き る
( 図 11を 参 照 ) 。
10
【0097】
種々の態様において、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドと免疫特異的に結合する
い ず れ か の 抗 体 と 同 じ エ ピ ト ー プ に 結 合 す る か 、 ま た は た と え ば ELISAま た は 何 ら か の そ
の他の適切な免疫アッセイによってアッセイすると、本発明のポリペプチドと免疫特異的
に結合する抗体と競合する。本明細書に使用されるものとして、「エピトープ」の用語は
、動物において、好ましくは哺乳類において、および最も好ましくはヒトにおいて抗原性
または免疫原性の活性を有する本発明の一部のポリペプチドをいう。免疫原性の活性を有
するエピトープは、動物において抗体反応を誘発する本発明の一部のポリペプチドである
。抗原性の活性を有するエピトープは、当該技術分野において周知の何らかの方法によっ
て、たとえば免疫アッセイ法によって決定すると、ポリペプチドに対する抗体が免疫特異
20
的に結合する本発明の一部のポリペプチドである。抗原エピトープは、免疫原性であるこ
とに必ずしも必要であるというわけではない。エピトープは、ポリペプチドに対して翻訳
後修飾された、たとえばグリコシル化およびリン酸化された残基を含むことができる。
【0098】
本明細書に使用されるものとして、「本発明のポリペプチドと免疫特異的に結合する抗
体 ま た は こ れ ら の 断 片 」 の 用 語 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド ( た と え ば 、 DSC-3ま た は D
SC-4) に 対 し て 特 異 的 に 結 合 し 、 か つ そ の 他 の ポ リ ペ プ チ ド と 特 異 的 に 結 合 し な い 抗 体 ま
たはこれらの断片をいう。好ましくは、本発明のポリペプチドまたはこれらの断片と免疫
特異的に結合する抗体または断片は、その他の抗原と交差反応しない。免疫特異的に本発
明のポリペプチドと結合する抗体または断片は、たとえば、当業者に既知の免疫アッセイ
30
またはその他の技術によって同定することができる。本発明の抗体は、合成の抗体、モノ
クローナル抗体、組換えで産生された抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメ
ラ 抗 体 、 単 鎖 Fvs( sFv) 、 単 鎖 抗 体 、 内 体 、 Fab断 片 、 F( ab') 断 片 、 ジ ス ル フ ィ ド 結 合
さ れ た Fvs( sdFv) 、 お よ び 抗 イ デ ィ オ タ イ プ ( 抗 Id) 抗 体 ) 、 並 び に 上 記 の い ず れ か の
エピトープ結合断片を含むが、これらに限定されない。特に、本発明の抗体は、免疫グロ
ブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち本発明のポリペ
プ チ ド の 抗 原 ( た と え ば 、 抗 体 の 1つ ま た は 複 数 の 相 補 性 決 定 領 域 ( CDR) ) と 免 疫 特 異 的
に結合する抗原結合部位を含む分子を含む。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブ
リ ン 分 子 の い ず れ の タ イ プ ( た と え ば 、 IgG、 IgE、 IgM、 IgD、 IgA、 お よ び IgY) 、 ク ラ ス
( た と え ば 、 IgG1、 IgG2、 IgG3、 IgG4、 IgA1、 お よ び IgA2) ま た は サ ブ ク ラ ス の も の で あ
40
ることもできる。
【0099】
種々の態様において、本発明の抗体またはこれらの断片は、キメラおよび/またはヒト
化抗体であることができる。本発明の方法に使用される抗体は、トリおよび哺乳類(たと
えば、ヒト、ネズミ、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、または
ニワトリ)を含むいずれの動物起源であってもよい。好ましくは、抗体は、ヒトまたはヒ
ト化モノクローナル抗体である。本明細書に使用されるものとして、「ヒト」抗体は、ヒ
ト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリン・ライブラリ
ーから、またはヒト遺伝子からの抗体を発現するマウスから単離された抗体を含む。
【0100】
50
(25)
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本 発 明 の 方 法 に 使 用 さ れ る 抗 体 は 、 一 特 異 的 、 二 特 異 的 ( bispecific) 、 三 特 異 的 ( tr
ispecific) 、 ま た は よ り 多 特 異 的 で あ っ て も よ い 。 多 特 異 的 抗 体 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ
ペ プ チ ド の 異 な る エ ピ ト ー プ と 免 疫 特 異 的 に 結 合 し て も よ く 、 ま た は 本 発 明 の MOLLポ リ ペ
プ チ ド と 同 様 に 、 Segalに よ っ て U.S. Patent NOs. 4,676,980号 に 記 載 さ れ て い る よ う に
異種ポリペプチドなどの異種のエピトープに免疫特異的に結合してもよい。たとえば、国
際 公 開 番 号 WO 93/17715、 WO 92/08802、 WO 91/00360、 お よ び WO 92/05793; Tutt、 et al.
, 1991、 J.Immunol.147: 60-69; U.S. Patent NOs. 4,474,893、 4,714,681、 4,925,648、
5,573,920、 お よ び 5,601,819; 並 び に Kostelny et al., 1992、 J. Immunol.148: 1547-15
53を 参 照 さ れ た い 。
【0101】
10
本発明の方法に使用される抗体は、すなわち抗体に対する分子の任意のタイプの共有結
合によって共有結合するように修飾された誘導体を含む。たとえば(しかし、限定するた
めにではなく)、本発明の抗体誘導体は、たとえばグリコシル化、アセチル化、ペグ化(
pegylation) 、 リ ン 酸 化 、 ア ミ ド 化 、 既 知 の 保 護 / ブ ロ ッ キ ン グ 基 に よ る 誘 導 体 化 、 タ ン
パク分解性の切断、細胞リガンドまたはその他のタンパク質に対する結合などによって修
飾されてもよい。本発明のポリペプチドの誘導体は、特異的な化学開裂、アセチル化、ホ
ルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む(しかし、これらに限定されない)当業
者に既知の技術を使用して化学修飾によって修飾してもよい。さらにまた、本発明のポリ
ペ プ チ ド の 誘 導 体 は 、 1つ ま た は 複 数 の 非 古 典 的 な ア ミ ノ 酸 を 含 ん で い て も よ い 。 特 異 的
な化学開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成、その他を含む(しか
20
し、これらに限定されない)既知の技術によって、何らかの多くの化学修飾を行ってもよ
い 。 加 え て 、 誘 導 体 は 、 1つ ま た は 複 数 の 非 古 典 的 な ア ミ ノ 酸 を 含 ん で い て も よ い 。
【0102】
また、本発明は、当業者に既知のフレームワーク領域を含む、本発明の抗体またはこれ
らの断片を提供する。好ましくは、本発明の抗体またはこれらの断片は、ヒトでまたはヒ
ト化されたものである。特定の態様において、本発明の抗体またはこれらの断片は、本発
明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド に 免 疫 特 異 的 に 結 合 す る い ず れ か の 抗 体 に 由 来 す る 1つ ま た は 複 数
の CDRを 含 む 。 よ り 特 異 的 な 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 抗 体 ま た は こ れ ら の 断 片 は 、 本 発 明
の MOLLポ リ ペ プ チ ド を 免 疫 特 異 的 に 認 識 す る い ず れ か の 抗 体 に 由 来 す る 1つ ま た は 複 数 の C
DRを 含 む 。
30
【0103】
本 発 明 は 、 カ メ ラ イ ズ さ れ た ( camelized) 単 一 ド メ イ ン の 抗 体 を 含 む 、 単 一 ド メ イ ン
の 抗 体 を 含 む ( た と え ば 、 Muyldermans et al., 2001, Trends Biochem. Sci. 26:230; N
uttall et al., 2000, Cur. Pharm. Biotech. 1:253; Reichmann and Muyldermans, 1999
, J. Immunol. Meth. 231:25; International Publication Nos. WO 94/04678 and WO 9
4/25591; U.S. Patent No. 6,005,079を 参 照 さ れ た い ) 。 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は
、 単 一 ド メ イ ン の 抗 体 が 形 成 さ れ て 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド に 免 疫 特 異 的 に 結 合 す る
い ず れ か の 抗 体 に 由 来 す る VHド メ イ ン の い ず れ か の ア ミ ノ 酸 配 列 を 有 す る よ う に 、 修 飾 を
有 す る 2つ の VHド メ イ ン を 含 む 単 一 ド メ イ ン の 抗 体 を 提 供 す る 。 も う 一 つ の 態 様 に お い て
、 本 発 明 は 、 ま た 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド に 免 疫 特 異 的 に 結 合 す る い ず れ か の 抗 体 に
40
由 来 す る VH CDRの 1つ ま た は 複 数 を 含 む 2つ の VHド メ イ ン を 含 む 単 一 ド メ イ ン の 抗 体 を 提 供
する。
【0104】
ま た 、 本 発 明 の 方 法 は 、 哺 乳 類 、 好 ま し く は ヒ ト に お い て 、 15日 を 超 え る 、 好 ま し く は
20日 を 超 え る 、 25日 を 超 え る 、 30日 を 超 え る 、 35日 を 超 え る 、 40日 を 超 え る 、 45日 を 超 え
る 、 2月 を 超 え る 、 3月 を 超 え る 、 4月 を 超 え る 、 ま た は 5月 を 超 え る 半 減 期 ( 例 え ば 血 清 半
減期)を有する抗体またはこれらの断片の使用を包含する。哺乳類、好ましくはヒトにお
いて、本発明の抗体またはこれらの断片の半減期が増大されると、哺乳類においてより高
い血清力価の前記抗体または抗体断片を生じ、したがって前記抗体または抗体断片の投与
の頻度を減少させ、および/または投与される前記抗体または抗体断片の濃度を減少させ
50
(26)
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る。インビボ半減期が増大された抗体またはこれらの断片は、当業者に既知の技術によっ
て作製されることができる。たとえば、インビボ半減期が増大された抗体またはこれらの
断 片 は 、 Fcド メ イ ン と FcRn受 容 体 の 間 の 相 互 作 用 に 関 与 す る こ と が 同 定 さ れ る ア ミ ノ 酸 残
基を修飾する(たとえば、置換する、欠失させる、または付加する)ことによって作製す
る こ と が で き る ( た と え ば 、 国 際 公 開 番 号 WO 97/34631を 参 照 さ れ た い ) 。 イ ン ビ ボ 半 減
期 が 増 大 さ れ た 抗 体 ま た は こ れ ら の 断 片 は 、 高 分 子 量 の ポ リ エ チ レ ン グ リ コ ー ル ( PEG)
などの重合体分子を前記抗体または抗体断片に付着することによって作製することができ
る 。 PEGは 、 前 記 抗 体 ま た は 抗 体 断 片 の Nま た は C末 端 に 対 す る PEGの 部 位 特 異 的 な 結 合 を 介
し て 、 ま た は リ ジ ン 残 基 に 存 在 す る ε -ア ミ ノ 基 を 経 て 、 い ず れ か に よ っ て 多 機 能 性 の リ
ンカーと共に、または伴わずに、前記抗体または抗体断片に付着させることができる。生
10
物活性の減少を最小減にする、直鎖状または分枝の重合体の誘導体化が使用される。抱合
の 程 度 は 、 抗 体 に 対 す る PEG分 子 の 適 当 な 抱 合 を 確 実 に す る た め に 、 SDS-PAGEお よ び 質 量
分 析 に よ っ て 詳 細 に モ ニ タ ー さ れ る 。 反 応 し て い な い PEGは 、 た と え ば 、 サ イ ズ 排 除 ま た
は イ オ ン 交 換 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ っ て 抗 体 -PEG抱 合 体 か ら 分 離 す る こ と が で き る 。
【0105】
ま た 、 本 発 明 は 、 フ レ ー ム ワ ー ク ま た は 可 変 領 域 に 突 然 変 異 ( た と え ば 、 1つ ま た は 複
数 の ア ミ ノ 酸 置 換 ) を 有 す る 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド に 免 疫 特 異 的 に 結 合 す る 抗 体 の ア
ミノ酸配列を含む抗体または抗体断片の使用を含む。好ましくは、これらの抗体の突然変
異は、これらが免疫特異的に結合する特定の抗原に対する抗体の結合活性および/または
親和性を維持し、または増強する。当業者に既知の標準的な技術(たとえば、免疫アッセ
20
イ法)を使用して、特定の抗原に対する抗体の親和性をアッセイすることができる。
【0106】
た と え ば 、 部 位 特 異 的 変 異 誘 発 お よ び PCRを 媒 介 し た 突 然 変 異 生 成 を 含 む 当 業 者 に 既 知
の標準的な技術を使用して、抗体またはこれらの断片をコードするヌクレオチド配列にア
ミノ酸置換を生じる突然変異を導入することができる。好ましくは、誘導体は、本来の抗
体 ま た は こ れ ら の 断 片 と 比 較 し て 、 15未 満 の ア ミ ノ 酸 置 換 、 10未 満 の ア ミ ノ 酸 置 換 、 5未
満 の ア ミ ノ 酸 置 換 、 4未 満 の ア ミ ノ 酸 置 換 、 3未 満 の ア ミ ノ 酸 置 換 、 ま た は 2つ 未 満 の ア ミ
ノ酸置換を含む。好ましい態様において、誘導体は、予測される非必須アミノ酸残基の1
つまたは複数に作製された保存的アミノ酸置換を有する。
【0107】
30
本発明の抗体またはこれらの断片は、抗体の合成のための当該技術分野において既知の
何らかの方法によって、特に化学合成によって、または好ましくは組換え発現技術によっ
て作製することができる。
【0108】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え技術、およびファージディスプレイ技
術の使用、またはこれらの組み合わせを含む、当該技術分野において既知の多種多様な技
術を使用して調製することができる。たとえば、モノクローナル抗体は、当該技術分野に
お い て 既 知 の も の を 含 む ハ イ ブ リ ド ー マ 技 術 を 使 用 し て 産 生 す る こ と が で き 、 た と え ば Ha
rlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, ( Cold Spring Harbor Laboratory Pr
ess, 2nd ed. 1988) ; Hammerling, et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hy
40
bridomas 563-681 ( Elsevier, N.Y., 1981) に 教 示 さ れ る 。 「 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 」 の
用語は、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一クローンに由来
する抗体をいい、これが産生される方法(たとえば、ハイブリドーマ技術)ではない。ま
た、本発明の方法は、発明の抗体をコードするポリヌクレオチドをコードするか、または
これに高いストリンジェンシー、中間またはより低いストリンジェンシーのハイブリダイ
ゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0109】
一旦抗体のヌクレオチド配列が決定されれば、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチ
ド 配 列 の 操 作 の た め の 当 該 技 術 分 野 に お い て 周 知 の 方 法 、 た と え ば 組 換 え DNA技 術 、 部 位
定 方 向 突 然 変 異 生 成 、 PCR、 そ の 他 ( た と え ば 、 Sambrook et al., supra and Ausubel et
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(27)
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al., eds., 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY
に記載されている技術を参照されたい)を使用して操作して、たとえばアミノ酸の置換、
欠失、および/または挿入を作製して、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作成する。ポ
リヌクレオチドに対するその他の変化は、本発明によって包含され、当該技術分野におけ
る技術の範囲内である。
【0110】
5.1.2.1.1 内 体 あ る 種 の 形 態 に お い て 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 細 胞 内 ポ リ ペ プ チ ド で あ る 。 従
っ て 、 抗 体 が 細 胞 内 に 抗 原 ( す な わ ち 、 内 体 ( intrabody) ) を 結 合 す る た め に 有 利 で あ
ろう。内体は、少なくとも、抗原に免疫特異的に結合することができる一部の抗体を含み
10
、その分泌のためにコードする配列を好ましくは含まない。このような内体は、これが結
合する本発明のポリペプチドの活性を調整するために使用することができる。一つの態様
において、拮抗する内体は、本発明のポリペプチドの活性を減少させるために投与される
。もう一つの態様において、作用薬の内体は、本発明のポリペプチドの活性を増大するた
めに投与される。もう一つの態様において、本発明の内体は、これが特定の細胞小器官コ
ンパートメントに局在化されて、したがってその位置においてのみ本発明のポリペプチド
を調整するように、投与される。
【0111】
一 つ の 態 様 に お い て 、 内 体 は 、 単 鎖 Fv( 「 sFv」 ) を 含 む 。 sFvsは 、 抗 体 の VHお よ び VL
ドメインを含む抗体断片であって、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在す
20
る 。 一 般 に 、 sFvポ リ ペ プ チ ド は 、 VHと VLド メ イ ン の 間 に ポ リ ペ プ チ ド ・ リ ン カ ー を さ ら
に 含 み 、 こ れ に よ り sFvが 抗 原 結 合 の た め の 所 望 の 構 造 を 形 成 す る こ と が で き る 。 sFvsの
総 説 に つ い て は 、 Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 11
3, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 ( 1994) .を
参照されたい。
【0112】
さらなる態様において、内体は、好ましくは動作可能な分泌性の配列をコードせず、し
た が っ て 細 胞 内 に 残 る ( 一 般 的 に は Marasco, WA, 1998, “ Intrabodies: Basic Research
and Clinical Gene Therapy Applications” Springer:New Yorkを 参 照 さ れ た い ) 。
【0113】
30
内 体 の 生 成 は 、 当 業 者 に 周 知 で あ り 、 た と え ば U.S. Patent NOs. 6,004,940; 6,072,03
6; 5,965,371に 記 載 さ れ て い る 。 さ ら に 、 内 体 の 構 築 は 、 Ohage and Steipe, 1999, J. M
ol. Biol. 291:1119-1128; Ohage et al., 1999, J. Mol. Biol. 291:1129-1134; お よ び
Wirtz and Steipe, 1999, Protein Science 8:2245-2250に お い て 論 議 さ れ て い る 。 ま た
、 組 換 え 抗 体 の 作 製 ( た と え ば 、 5.1.2.1節 お よ び 5.2節 ) の た め に 記 載 さ れ て い る も の な
どの組換え分子生物学的の技術は、内体の作製に使用してもよい。
【0114】
一つの態様において、組換えで発現された内体タンパク質は、患者に投与される。この
ような内体ポリペプチドは、予防的または治療的効果を媒介するように細胞内になければ
ならない。本発明のこの態様において、内体ポリペプチドは、「膜透過性配列」と結合さ
40
れる。膜透過性配列は、細胞の外側から細胞の内部に細胞膜を通って透過することができ
るポリペプチドである。また、もう一つのポリペプチドに連結されたときに、膜透過性配
列は、同様に細胞膜を横切ってそのポリペプチドの転位置を誘導することができる。膜透
過 性 配 列 の 例 は 、 シ グ ナ ル ペ プ チ ド の 疎 水 性 部 分 で あ る ( た と え ば 、 Hawiger, 1999, Cur
r. Opin. Chem. Biol. 3:89-94; Hawiger, 1997, Curr. Opin. Immunol. 9:189-94; U.S.
Patent Nos. 5,807,746 and 6,043,339, von Heijne, 1987, Prot. Seq. Data Anal. 1:
41-2; von Heijne and Abrahmsen, 1989, FEBS Lett. 224:439-46を 参 照 さ れ た い 。
【0115】
もう一つの態様において、内体をコードするポリヌクレオチドは、(たとえば、遺伝子
治 療 と し て ) 患 者 に 投 与 さ れ る 。 本 態 様 に お い て 、 第 5.6.2節 に 記 載 し た と お り の 本 方 法
50
(28)
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を、内体ポリヌクレオチドを投与するために使用することができる。
【0116】
5.2 組 み 換 え 発 現 本発明のもう一つの側面は、本発明の核酸またはこれらの変種を含むベクター、好まし
くは発現ベクターに属する。本明細書に使用されるものとして、「ベクター」の用語は、
これが連結されたもう一つの核酸を輸送することができるポリヌクレオチドをいう。ベク
タ ー の 1つ の タ イ プ は 、 「 プ ラ ス ミ ド 」 で あ り 、 こ れ は さ ら な る DNAセ グ メ ン ト を 導 入 す る
こ と が で き る 環 状 の 二 本 鎖 DNAル ー プ を い う 。 ベ ク タ ー の も う 一 つ の タ イ プ は 、 ウ ィ ル ス
・ ベ ク タ ー で あ っ て 、 さ ら な る DNAセ グ メ ン ト を ウ ィ ル ス ゲ ノ ム に 導 入 す る こ と が で き る
。
10
【0117】
一定のベクターは、これらが導入された宿主細胞中で自律的に増殖できる(たとえば、
細菌複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソームの哺乳類ベクター)。その他のベ
クター(たとえば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞内に導入することによっ
て宿主細胞のゲノムに組み込まれて、これにより宿主ゲノムとともに複製される。一般に
、 組 換 え DNA技 術 に お い て 有 用 な 発 現 ベ ク タ ー は 、 プ ラ ス ミ ド ( ベ ク タ ー ) の 形 態 で あ る
ことが多い。しかし、本発明は、ウィルス・ベクター(たとえば、複製欠損があるレトロ
ウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)などの発現ベクターのようなそ
の他の形態を含むことが企図される。
【0118】
20
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内に核酸の発現のために適した形態で本発明
の核酸を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づ
い て 選 択 さ れ 、 発 現 さ れ る ポ リ ヌ ク レ オ チ ド と 動 作 可 能 に 結 合 さ れ て い る 1つ ま た は 複 数
の制御配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターの中で、「動作可能に結合される
」とは、関心対象のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列を発現できる方法で制御配列
に連結されている(たとえば、インビトロでの転写/翻訳系において、またはベクターが
宿主細胞に導入される宿主細胞において)ことを意味することが企図される。「制御配列
」の用語は、プロモーター、エンハンサー、およびその他の発現調節エレメント(たとえ
ば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが企図される。このような制御配列は、たとえ
ば Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, ( 1990) Academic
30
Press, San Diego, CA, p. 185に 記 載 さ れ て い る 。 制 御 配 列 は 、 宿 主 細 胞 の 多 く の タ イ プ
でヌクレオチド配列の発現を構成的に誘導するもの、および一定の宿主細胞のみにおいて
ヌクレオチド配列の発現を誘導するもの(たとえば、組織特異的な制御配列)を含む。発
現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、要求されるタンパク質の発現
レベル、その他などの因子に依存するであろうことが当業者には認識されるであろう。本
発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入することにより、本明細書に記載したとおりの核
酸によって、融合タンパク質またはペプチドを含むコードされるタンパク質またはペプチ
ドを産生させることができる。
【0119】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物(たとえば、大腸菌)、または真核生物の細
40
胞(たとえば、昆虫細胞を使用するバキュロウイルス発現ベクター、酵母細胞、線虫細胞
、 ま た は 哺 乳 動 物 細 胞 ) で 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド を 発 現 す る よ う に デ ザ イ ン す る こ と
が で き る 。 適 切 な 宿 主 細 胞 は 、 上 記 Goeddelに お い て さ ら に 論 議 さ れ て い る 。 あ る い は 、
組 換 え 発 現 ベ ク タ ー は 、 た と え ば T7プ ロ モ ー タ ー 制 御 配 列 お よ び T7ポ リ メ ラ ー ゼ を 使 用 し
て、インビトロで転写し、翻訳することができる。
【0120】
原核生物におけるタンパク質の発現は、多くの場合、融合または非融合タンパク質の発
現を誘導する構成的または誘導性のプロモーターを含むベクターを有する大腸菌において
行われる。融合ベクターは、その中でコードされるタンパク質に対して、通常組換えタン
パク質のアミノ末端に対して、多くのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、
50
(29)
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典 型 的 に は 少 な く と も 3つ の 目 的 を 果 た す : 1) 組 換 え タ ン パ ク 質 の 発 現 を 増 大 す る こ と ;
2) 組 換 え タ ン パ ク 質 の 溶 解 度 を 増 大 す る こ と ; お よ び / ま た は 3) ア フ ィ ニ テ ィ ー 精 製 に
おいて、リガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を補助すること。
たいてい、融合発現ベクターには、タンパク分解性の切断部位が融合部分と組換えタンパ
ク質の結合部に導入されており、融合部分から組換えタンパク質を分離してその後の融合
タンパク質の精製することができる。このような酵素、およびこれらの同族の認識配列は
、 第 Xa 因 子 、 ト ロ ン ビ ン 、 お よ び エ ン テ ロ キ ナ ー ゼ を 含 む 。 典 型 的 な 融 合 発 現 ベ ク タ ー
は 、 pGEXを 含 む ( Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson, 1988, Gene 67:31-40)
、 pMAL( New England Biolabs, Beverly, MA) 、 お よ び pRIT5( Pharmacia、 Piscataway、
NJ) を 含 み 、 こ れ ら は 、 標 的 組 換 え タ ン パ ク 質 対 し て そ れ ぞ れ グ ル タ チ オ ン Sト ラ ン ス フ
10
ェ ラ ー ゼ ( GST) 、 マ ル ト ー ス E結 合 タ ン パ ク 質 、 ま た は プ ロ テ イ ン Aを 融 合 す る 。
【0121】
適 切 な 誘 導 性 の 非 融 合 大 腸 菌 の 発 現 ベ ク タ ー の 例 は 、 pTrc( Amann et al., 1988, Gene
69:301-315) お よ び pET 11d( Studier et al., Gene Expression Technology: Methods
in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California ( 1990) p. 60-89) を 含
む 。 pTrcベ ク タ ー か ら の 標 的 遺 伝 子 発 現 は 、 ハ イ ブ リ ッ ド trp-lac融 合 プ ロ モ ー タ ー か ら
の 宿 主 RNAポ リ メ ラ ー ゼ の 転 写 に 依 存 す る 。 pET 11dベ ク タ ー か ら の 標 的 遺 伝 子 発 現 は 、 同
時 発 現 さ れ た ウ イ ル ス RNAポ リ メ ラ ー ゼ ( T7 gn1) に よ っ て 媒 介 さ れ る T7 gn10-lac融 合 プ
ロ モ ー タ ー か ら の 転 写 に 依 存 す る 。 こ の ウ ィ ル ス ・ ポ リ メ ラ ー ゼ は 、 lacUV 5プ ロ モ ー タ
ー の 転 写 調 節 下 で 、 T7 gn1遺 伝 子 を 収 容 す る 常 在 性 の λ プ ロ フ ァ ー ジ か ら の 、 宿 主 株 BL21
20
( DE3) ま た は HMS174( DE3) に よ っ て 供 給 さ れ る 。
【0122】
大 腸 菌 に お け る 組 換 え タ ン パ ク 質 発 現 を 最 大 に す る 1つ の ス ト ラ テ ジ ー は 、 タ ン パ ク 分
解性に組換えタンパク質を切断するように、障害された能力を有する宿主菌のタンパク質
を 発 現 す る こ と に な っ て い る ( Gottesman, Gene Expression Technology: Methods in En
zymology 185, Academic Press, San Diego, California ( 1990) p. 119-128) 。 も う
一つのストラテジーは、それぞれのアミノ酸のための個体コドンが大腸菌において優先し
て利用したものであるために、発現ベクターに挿入される核酸の配列を変更することにな
っ て い る ( Wada et al., 1992, Nucleic Acids Res. 20:2111-2118) 。 本 発 明 の ポ リ ヌ ク
レ オ チ ド の こ の よ う な 改 変 は 、 標 準 的 な DNA合 成 技 術 に よ っ て 行 う こ と が で き る 。
30
【0123】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 発 現 ベ ク タ ー は 、 酵 母 発 現 ベ ク タ ー で あ る 。 酵 母 S.セ レ ビ ジ
ア S.cerevisiae) の 発 現 の た め の ベ ク タ ー の 例 は 、 pYepSec1( Baldari et al., 1987, E
MBO J. 6:229-234) 、 pMFa( Kurjan and Herskowitz, 1982, Cell 30:933-943) 、 pJRY88
( Schultz et al., 1987, Gene 54:113-123) 、 pYES2( Invitrogen Corp., San Diego, C
A) お よ び pPicZ( Invitrogen Corp., San Diego, CA) を 含 む 。
【0124】
もう一つの態様において、発現ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターである。培
養 昆 虫 細 胞 ( た と え ば 、 Sf9細 胞 ) に お け る タ ン パ ク 質 の 発 現 の た め に 利 用 で き る バ キ ュ
ロ ウ イ ル ス ベ ク タ ー は 、 pAcシ リ ー ズ ( Smith et al., 1983, Mol. Cell Biol. 3:2156-21
40
65) 、 お よ び pVL一 連 ( Lucklow and Summers, 1989, Virology 170:31-39) を 含 む 。
【0125】
もう一つの態様において、発現ベクターは、線虫発現ベクターである。線虫における発
現 の た め の ベ ク タ ー の 例 は 、 pPD49.78お よ び pPD49.83な ど の 熱 シ ョ ッ ク ・ プ ロ モ ー タ ー を
有するベクター、およびプロモーターのないベクター(その上流の制御領域を含む関心対
象の遺伝子の配列は、エピフロレッセンスによって発現をモニターするための遺伝子蛍光
タ ン パ ク 質 遺 伝 子 と 共 に イ ン フ レ ー ム で ク ロ ー ン 化 さ れ て い る ( 一 般 に 、 Mello and Fire
, 1995, DNA transformation in “ Methods in Cell Biology Caenorhabditis elegans:
Modern Biological Analysis of an organism” vol. 48, Shakes and Epstein eds., Ac
ademic Press:San Diegoを 参 照 さ れ た い ) ) を 含 む 、 フ ァ イ ヤ ー ・ ベ ク タ ー ・ コ レ ク シ ョ
50
(30)
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ン ( Fire vector collection ( http://ftp.ciwemb.edu/PNF:byName:/FireLabWeb/FireLa
bInfo/FireLabVectors/) ) か ら 公 的 に 利 用 で き る ベ ク タ ー の 全 セ ッ ト を 含 む 。 加 え て 、
遺 伝 子 発 現 は 、 そ の プ ロ モ ー タ ー 領 域 が い ず れ の ベ ク タ ー に も ク ロ ー ン 化 さ れ て な い cDNA
( た と え ば 、 PCR産 物 ま た は 制 限 酵 素 断 片 ) の 注 射 に よ っ て 線 虫 に お い て 誘 導 す る こ と が
できる。
【0126】
さらにもう一つの態様において、本発明の核酸は、哺乳類発現ベクターを使用して哺乳
動 物 細 胞 に お い て 発 現 さ れ る 。 哺 乳 動 物 発 現 ベ ク タ ー の 例 は 、 pCDM8( Seed, 1987, Natur
e 329:840-842) お よ び pMT2PC( Kaufman et al., 1987, EMBO J. 6:187-193) を 含 む 。 哺
乳動物細胞で使用したときに、発現ベクターの制御機能は、ウイルス調節エレメントによ
10
って提供されることが多い。たとえば、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ
、 ア デ ノ ウ イ ル ス 2、 サ イ ト メ ガ ロ ウ イ ル ス 、 お よ び シ ミ ア ン ウ イ ル ス 40に 由 来 す る 。
【0127】
原 核 生 物 お よ び 真 核 生 物 の 細 胞 の た め の そ の 他 の 適 切 な 発 現 系 に つ い て は 、 chapters 16
and 17 of Sambrook et al. 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed.,
Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを 参 照 さ れ た い 。
【0128】
もう一つの態様において、組換え哺乳類発現ベクターは、優先して特定の細胞型の核酸
の発現を誘導することができる(たとえば、核酸を発現するために組織特異的調節エレメ
ントが使用される)。組織特異的な調節エレメントは、当該技術分野において既知である
20
。適切な組織特異的なプロモーターの非限定の例は、アルブミン・プロモーター(肝臓特
異 的 ; Pinkert et al., 1987, Genes Dev. 1:268-277) 、 リ ン パ 系 特 異 的 な プ ロ モ ー タ ー
( Calame and Eaton, 1988, Adv. Immunol. 43:235-75) 、 特 に T細 胞 受 容 体 ( Winoto and
Baltimore, 1989, EMBO J. 8:729-733) お よ び 免 疫 グ ロ ブ リ ン ( Banerji et al., 1983,
Cell 33:729-740; Queen and Baltimore, 1983, Cell 33:741-748) の プ ロ モ ー タ ー 、 ニ
ュ ー ロ ン 特 異 的 な プ ロ モ ー タ ー ( た と え ば 、 神 経 フ ィ ラ メ ン ト ・ プ ロ モ ー タ ー ; Byrne an
d Ruddle, 1989, PNAS 86:5473-5477) 、 膵 臓 特 異 的 な プ ロ モ ー タ ー ( Edlund et al., 19
85, Science 230:912-916) 、 並 び に 乳 腺 特 異 的 な プ ロ モ ー タ ー ( た と え ば 、 ミ ル ク 乳 漿
プ ロ モ ー タ ー ; U.S. Patent No. 4,873,316お よ び European Application Publication No
. 264,166) を 含 む 。 ま た 、 発 生 的 に 調 節 さ れ た プ ロ モ ー タ ー 、 例 え ば マ ウ ス の hoxプ ロ モ
30
ー タ ー ( Kessel and Gruss, 1990, Science 249:374-379) を お よ び α フ ェ ト プ ロ テ イ ン
・ プ ロ モ ー タ ー ( Campes and Tilghman, 1989, Genes Dev. 3:537-546) も 包 含 さ れ る 。
【0129】
本発明は、アンチセンス配向で発現ベクターにクローン化された本発明のポリヌクレオ
チ ド を 含 む 組 換 え 発 現 ベ ク タ ー を さ ら に 提 供 す る 。 す な わ ち 、 DNA分 子 が 、 本 発 明 の ポ リ
ペ プ チ ド を コ ー ド す る mRNAに 対 し て ア ン チ セ ン ス で あ る RNA分 子 を 発 現 ( DNA分 子 の 転 写 に
よって)することができる様式で、制御配列と操作可能に結合されている。操作可能にア
ンチセンス配向でクローン化された核酸と結合された制御配列を選択して、種々の細胞型
の ア ン チ セ ン ス RNA分 子 の 連 続 的 な 発 現 を 誘 導 す る こ と が で き 、 た と え ば ウ ィ ル ス ・ プ ロ
モ ー タ ー お よ び / ま た は エ ン ハ ン サ ー ま た は 制 御 配 列 を 選 択 し て 、 ア ン チ セ ン ス RNAの 組
40
織特異的または細胞型特異的な発現を構成的に誘導することができる。アンチセンス発現
ベクターは、アンチセンス核酸が高効率の制御領域の制御下で産生される組換えプラスミ
ド、ファージミド、または弱毒ウイルスの形態であることができ、その活性は、ベクター
が導入される細胞型によって決定することができる。
【0130】
もう一つの態様において、細胞、株化細胞、または微生物内における本発明の核酸に対
応 す る 内 因 性 遺 伝 子 の 発 現 の 特 徴 は 、 関 心 対 象 の 内 因 性 遺 伝 子 に 対 し て 異 種 の DNA調 節 エ
レメントを、挿入された調節エレメントが内因性遺伝子によって有効に連結され、内因性
遺伝子を制御し、調整し、または活性化するように、細胞、安定な株化細胞、またはクロ
ーン化された微生物のゲノムに挿入することによって修飾してもよい。たとえば、通常「
50
(31)
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転写的にサイレントである」本発明の内因性遺伝子、すなわち通常は発現されないか、ま
たは株化細胞または微生物において非常に低レベルでのみ発現されている遺伝子は、その
株化細胞または微生物において通常発現される遺伝子産物の発現を促進することができる
調節エレメントを挿入することによって活性化してもよい。あるいは、本発明の転写的に
サイレントな内在性の遺伝子は、細胞型全体に作用する無差別の調節エレメントの挿入に
よって活性化してもよい。
【0131】
当業者に周知のターゲットされた相同的組換えなどの技術を用いて、異種の調節エレメ
ントを、本発明の核酸に対応する内因性遺伝子に機能的に連結して、発現を活性化するよ
う に 、 安 定 な 株 化 細 胞 ま た は ク ロ ー ン 化 し た 微 生 物 に 挿 入 し て も よ い ( た と え ば 、 U.S. P
10
atent NOs. 5,272,071号 お よ び 5,968,502国 際 公 開 番 号 WO 91/06667お よ び WO 94/12650を
参照されたい)。あるいは、当該技術分野において周知の非ターゲットされた技術(たと
え ば 、 非 相 同 的 組 換 え ) を 使 用 す る こ と も で き る ( た と え ば 、 国 際 公 開 番 号 WO 99/15650
を参照されたい)。
【0132】
本発明のもう一つの側面は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に属す
る。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」の用語は、本明細書において交換可能に使用
される。このような用語は、特定の被検者の細胞だけでなく、このような細胞の子孫また
は潜在的子孫をもいうことが理解される。突然変異または外界の影響によって、一定の修
飾が次の世代に生じてもよいので、このような子孫は、実際には親細胞と同一ではないが
20
、本明細書に使用されるものとして、なおも本用語の範囲内に含まれる。
【0133】
従って、本発明は、本発明の核酸またはこれらの変種を含む発現ベクターを有する宿主
細胞を提供する。宿主細胞は、いずれの原核生物(たとえば、大腸菌)または真核生物の
細胞(たとえば、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞)であることもできる。また、本
発 明 は 、 本 発 明 の 核 酸 を 発 現 し 、 し た が っ て コ ー ド さ れ た ポ リ ペ プ チ ド ( た と え ば 、 DSC3お よ び DSC-4な ど の MOLLポ リ ペ プ チ ド ) を 作 製 す る た め の 方 法 で あ っ て 、 ( a) 本 発 明 の
組換え核酸を含む細胞を、前記細胞によって前記ポリペプチドを発現することができる条
件下で培養することと;および発現されたポリペプチドを単離することとの工程を含む方
法を提供する。
30
【0134】
ベ ク タ ー DNAは 、 従 来 の 形 質 転 換 ま た は ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン 技 術 を 経 て 原 核 生 物 ま た
は真核生物の細胞に導入することができる。本明細書に使用されるものとして、「形質転
換」および「トランスフェクション」の用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム
共 沈 法 、 DEAE-デ キ ス ト ラ ン を 媒 介 し た ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン 法 、 リ ポ フ ェ ク シ ョ ン 法 、
または電気穿孔法を含む、外来核酸を宿主細胞に導入するための種々の当該技術分野にお
いて認識された技術をいうことが企図される。宿主細胞を形質転換し、またはトランスフ
ェ ク ト す る た め の 適 切 な 方 法 は 、 Sambrook、 et al.( 上 記 ) お よ び そ の 他 の 研 究 室 マ ニ ュ
アルにおいて見いだすことができる。
【0135】
40
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについては、使用する発現ベクターおよび
ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン 技 術 に 応 じ て 、 細 胞 の 小 数 だ け が そ れ ら の ゲ ノ ム に 外 来 性 DNAを 組
み 込 む で あ ろ う こ と が 既 知 で あ る 。 こ れ ら の イ ン テ グ ラ ン ト ( integrant) を 同 定 し 、 選
択するために、通常、選択可能なマーカーをコードする(たとえば、抗生物質耐性のため
の)遺伝子が関心対象の遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマー
カ ー は 、 G418、 ハ イ グ ロ マ イ シ ン 、 お よ び メ ト ト レ キ セ ー ト な ど の 薬 物 に 対 す る 抵 抗 を 与
えるものを含む。導入された核酸を安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によ
って同定することができる(たとえば、選択可能なマーカー遺伝子を組み入れた細胞は生
存するが、その他の細胞は死滅する)。
【0136】
50
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培養の原核生物または真核生物の宿主細胞などの、本発明の宿主細胞は、本発明のポリ
ペプチドを産生するために使用することができる。従って、本発明は、本発明の宿主細胞
を使用して本発明のポリペプチドを産生するための方法をさらに提供する。一つの態様に
おいて、本方法は、発明の宿主細胞(その中に、本発明のポリペプチドをコードする組換
え発現ベクターが導入されたもの)を、ポリペプチドが産生されるように適切な培地中で
培養することを含む。もう一つの態様において、本方法は、培地または宿主細胞から本発
明のポリペプチドを単離することをさらに含む。
【0137】
5.3 本 発 明 の ア ッ セ イ 法 の た め の 線 虫 の 調 製 一つの態様において、本発明のスクリーニングアッセイ法に使用される線虫は、少なく
10
と も 1 つ の 突 然 変 異 を 有 す る 。 突 然 変 異 は 、 コ レ ス テ ロ ー ル 、 LDL、 お よ び / ま た は ROSの
レ ベ ル に 影 響 を 及 ぼ し 、 そ の 結 果 線 虫 は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の LDLお よ び / ま た は ROSと
関 係 す る 1つ ま た は 複 数 の 表 現 型 ( た と え ば 、 排 便 サ イ ク ル の 長 さ の 増 減 、 期 外 発 生 の 生
殖系列発達、胚発生または後胚発生の速度の増減)を示す。突然変異は、天然に存在する
も の で あ っ て も 、 ラ ン ダ ム に 誘 導 さ れ て い て も 、 ま た は 部 位 定 方 向 突 然 変 異 生 成 ま た は RN
Aiな ど に よ っ て 導 入 さ れ て い て も よ い 。
【0138】
一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ イ 法 に 使 用 さ れ る 線 虫 は 、 clk-1
に 突 然 変 異 を 含 む 。 野 生 型 clk-1の 配 列 は 、 た と え ば Genbankア ク セ ッ シ ョ ン 番 号 NM_06572
7、 NM_009940、 お よ び NM_06138と し て 見 い だ す こ と が で き る 。 当 該 技 術 分 野 に お い て 既 知
20
の突然変異生成のいずれの方法(たとえば、下記の記載されているもの)を使用して本発
明 の ア ッ セ イ 法 に 使 用 さ れ る 変 異 体 clk-1を 作 製 す る こ と も で き る 。 特 定 の 態 様 に お い て
、 ス ク リ ー ニ ン グ に 使 用 さ れ る 線 虫 は 、 clk-1( qm30) 突 然 変 異 を 有 す る 。 も う 一 つ の 特
定 の 態 様 に お い て 、 ス ク リ ー ニ ン グ に 使 用 さ れ る 線 虫 は 、 clk-1( e2519) 突 然 変 異 を 有 す
る 。 も う 一 つ の 特 定 の 態 様 に お い て 、 ス ク リ ー ニ ン グ に 使 用 さ れ る 線 虫 は 、 clk-1( qm51
) 突 然 変 異 を 有 す る 。 ( 一 般 に 、 clk-1突 然 変 異 の た め に は 、 国 際 特 許 公 開 番 号 WO 98/178
23, Felkai et al., 1999, EMBO J 18: 1783-1792, Wong et al., 1995, Genetics 139:
1247-1259, Ewbank et al., 1997, Science 275:980-983, Branicky et al., 2001, Gene
tics 159:997-1006を 参 照 さ れ え た い 。 も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 そ の 他 の 種 の clk-1相 同
体で単離された突然変異を本発明のアッセイ法に使用することもできる。対応する突然変
30
異 は 、 定 方 向 突 然 変 異 生 成 に よ っ て 線 虫 clk-1に 作 製 す る こ と が で き る 。 た と え ば 、 Marbo
is and Clark ( 1996, J. Biol. Chem. 271:2995-3004) は 、 coq-7( 酵 母 clk-1の 相 同 体
)における突然変異を解説する。
【0139】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ イ 法 に 使 用 さ れ る 線 虫 は 、 MO
LLに 突 然 変 異 を 含 む 。 特 定 の 態 様 に お い て 、 MOLLは 、 dsc-1、 dsc-2、 dsc-3、 dsc-4、 dsc5、 お よ び dsc-7か ら な る 群 よ り 選 択 さ れ る 。 当 該 技 術 分 野 に お い て 既 知 の 突 然 変 異 生 成 の
いずれの方法(たとえば、下記の記載されているもの)を使用して本発明のアッセイ法に
使 用 さ れ る 変 異 体 MOLLを 作 製 す る こ と も で き る 。 よ り 特 異 的 な 態 様 に お い て 、 MOLLは 、 ds
c-4で あ る 。 も う 一 つ の 特 定 の 態 様 に お い て 、 MOLLは 、 dsc-3で あ る 。 dsc-4お よ び dsc-3の
40
野 生 型 配 列 は 、 そ れ ぞ れ SEQ ID NO: 1お よ び SEQ ID NO: 7で あ る 。 さ ら に よ り 特 異 的 な 態
様 に お い て 、 ス ク リ ー ニ ン グ に 使 用 さ れ る 線 虫 は 、 dsc-4( qm182) 突 然 変 異 を 有 す る 。
【0140】
5.3.1 タ ー ゲ ッ ト の 同 定 に つ い て 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 コ レ ス テ ロ ー ル お よ び LDLな ど の 脂 質 ま た は リ ポ タ ン
パ ク 質 、 並 び に ROSの レ ベ ル の 変 化 に 関 与 す る 標 的 遺 伝 子 を 同 定 す る た め の 線 虫 の 使 用 を
含 む 。 こ の よ う な 態 様 に お い て 、 変 異 体 clk-1ま た は 変 異 体 MOLLを 有 す る 線 虫 ( た と え ば
、 dsc-3、 ま た は dsc-4) は 、 望 ま し く な い レ ベ ル の LDLお よ び / ま た は ROSと 関 係 す る 1つ
または複数の表現型(たとえば、排便サイクルの長さの増減、期外発生の生殖系列発達、
胚 発 生 ま た は 後 胚 発 生 の 速 度 の 増 減 ; 第 5.4.2節 を 参 照 さ れ た い ) を 示 す よ う に 、 さ ら に
50
(33)
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変異誘発される。次いで、虫が、変異体表現型が少なくなること(すなわち、最初の変異
体表現型よりも野生型に類似する表現型)、または変異体表現型が悪化すること(すなわ
ち、最初の変異体表現型よりもあまり野生型に類似しない表現型)を記録する。
【0141】
当該技術分野において既知のいずれの方法も、本発明の標的スクリーニングアッセイ法
に 使 用 す る 変 異 体 を 作 製 す る た め に 使 用 す る こ と が で き る EMS化 学 的 欠 失 突 然 変 異 生 成 お
よ び Tc1ト ラ ン ス ポ ゾ ン 挿 入 突 然 変 異 生 成 を 含 む ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い ) 。 突
然変異生成の方法を使用して、線虫のゲノムに突然変異をランダムに作製することができ
る 。 あ る い は 、 RNAiお よ び 部 位 定 方 向 突 然 変 異 生 成 な ど の 分 子 進 化 技 術 ( し か し 、 こ れ ら
に 限 定 さ れ な い ) を 含 む 突 然 変 異 生 成 の 方 法 を 使 用 し て 、 特 定 の 遺 伝 子 ( た と え ば 、 MOLL
10
であると予想され、または予測される遺伝子)を誘導することができる。定方向突然変異
生 成 に お け る そ の 使 用 に 加 え て 、 RNAi突 然 変 異 生 成 は 、 こ れ ま で 未 知 の MOLLsを 同 定 す る
た め に 使 用 し て も よ い 。 線 虫 に お け る そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 の 発 現 は 、 RNAi高 ス ル ー プ ッ ト 技
術 ( た と え ば 、 Kamath et al., 2003, Nature 421:231-7, Ashrafi et al., 2003, Natur
e 421:268-72, Taschl, 2003, Nature 421:220-221、 お よ び 第 5.3.1.4節 を 参 照 さ れ た い
) を 使 用 し て 、 系 統 的 に 減 少 / 阻 害 す る こ と が で き る 。 こ の 技 術 は 、 事 前 に 候 補 MOLLsを
同 定 す る こ と な く 使 用 す る こ と が で き る の で 、 ラ ン ダ ム 突 然 変 異 生 成 法 、 RNAiも 同 様 に 使
用することができる。
【0142】
天 然 の LDLレ ベ ル を 減 少 す る こ と に よ っ て clk-1変 異 体 線 虫 を レ ス キ ュ ー す る 突 然 変 異 は
20
、 2つ の 主 な ク ラ ス − す な わ ち 、 天 然 の LDL合 成 / 分 泌 を 減 少 さ せ る 突 然 変 異 お よ び 天 然 の
LDLの 酸 化 型 の LDLへ の 転 換 を 促 進 す る 突 然 変 異 に 分 類 す る こ と が で き る 。 ス ク リ ー ニ ン グ
に お い て clk-1抑 制 因 子 の そ れ ぞ れ の カ テ ゴ リ ー に 同 定 さ れ た 遺 伝 子 は 、 こ れ ら の 正 常 な
機 能 が 不 均 一 で あ ろ う が 、 変 異 さ せ た と き に 、 全 て が 天 然 の LDLレ ベ ル を 減 少 す る 特 徴 を
共有する。突然変異生成が、異なる方法で(たとえば、完全もしくは部分的な機能喪失、
機能獲得、過剰発現、その他)遺伝子の機能に影響を及ぼすことができるという事実によ
り、さらなる不均一性の程度が導入される。従って、遺伝子の機能は、存在する突然変異
のタイプによって減少または増強のいずれを行うこともできる。
【0143】
変 異 さ れ た と き に 天 然 の LDL合 成 / 分 泌 を 減 少 さ せ る clk-1抑 制 因 子 と し て 同 定 さ れ た 遺
30
伝子のクラスのメンバーは、変異体でないときには種々の異なる機能を有していてもよい
。たとえば、これらの通常の機能が減少されるように変異されたこれらの遺伝子は、以下
に 関 与 す る 通 常 の 機 能 を 有 す る こ と が で き る : i) LDL合 成 / 分 泌 を 増 大 す る こ と 、 ii) LD
L合 成 / 分 泌 の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 iii) LDL合 成 / 分
泌 の 阻 害 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 iv) 一 般 に よ り 多 く が LDL
に 組 み 入 れ る た め に 利 用 で き る よ う に 脂 質 レ ベ ル を 増 大 す る こ と 、 ま た は v) 一 般 に 脂 質
レ ベ ル の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 ま た は vi) 一 般 に 脂 質 レ
ベルの低下に関与する分子の発現または活性を減少させること。あるいは、これらの通常
の機能が増強されるように変異されたこれらの遺伝子は、以下に含まれる通常の機能を有
す る こ と が で き る : i) LDL合 成 / 分 泌 を 減 少 す る こ と 、 ii) LDL合 成 / 分 泌 の 減 少 に 関 与
40
す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 iii) LDL合 成 / 分 泌 の 阻 害 に 関 与 す る 分 子 の
発 現 ま た は 活 性 を 増 大 す る こ と 、 iv) 一 般 に よ り 少 量 が LDLに 組 み 入 れ る た め に 利 用 で き
る よ う に 脂 質 レ ベ ル を 減 少 す る こ と 、 v) 一 般 に 脂 質 レ ベ ル の 減 少 に 関 与 す る 分 子 の 発 現
ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 ま た は vi) 一 般 に 脂 質 レ ベ ル の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま
たは活性を減少させること。
【0144】
同 様 に 、 変 異 さ れ た と き に 、 天 然 の LDLの 酸 化 型 の LDLへ の 転 換 を 促 進 す る clk-1抑 制 因
子として同定される遺伝子のクラスのメンバーは、変異されていないときに種々の異なる
機能を有していてもよい。たとえば、これらの通常の機能が減少するように変異されたこ
れ ら の 遺 伝 子 は 、 以 下 に 含 ま れ る 通 常 の 機 能 を 有 す る こ と が で き る : i) LDL酸 化 を 減 少 す
50
(34)
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る こ と 、 ii) LDL酸 化 の 減 少 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 iii) LDL
酸 化 の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 iv) ROS生 産 を 減 少 す る
こ と 、 v) ROS生 産 の 減 少 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 vi) ROS生 産
の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 vii) ROSク リ ア ラ ン ス を 増 大
す る こ と 、 viii) ROSク リ ア ラ ン ス の 減 少 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る
こ と 、 ま た は ix) ROSク リ ア ラ ン ス の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ
と。 あるいは、これらの通常の機能が増強されるように変異されたこれらの遺伝子は、
以 下 に 関 与 す る 通 常 の 機 能 を 有 す る こ と が で き る : i) LDL酸 化 を 増 大 す る こ と 、 ii) LDL
酸 化 の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 iii) LDL酸 化 の 減 少 に 関 与
す る る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 iv) ROS生 産 を 増 大 す る こ と 、 v) ROS生
10
産 の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 vi) ROS生 産 の 減 少 に 関 与 す
る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 vii) ROSク リ ア ラ ン ス を 減 少 さ せ る こ と 、 vi
ii) ROSク リ ア ラ ン ス の 増 大 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 ま た は i
x) ROSク リ ア ラ ン ス の 減 少 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 。
【0145】
clk-1抑 制 因 子 と し て 同 定 さ れ る 各 々 の こ れ ら の 遺 伝 子 は 、 互 い に 非 常 に 異 な っ た 機 能
を 有 す る こ と が で き る が 、 こ れ ら は 、 そ れ ぞ れ 天 然 の LDLレ ベ ル に 機 能 的 に 影 響 を 及 ぼ す
ことができる。この共通の特徴のために、それぞれを創薬のための標的として使用するこ
と が で き 、 そ の 結 果 天 然 の LDLレ ベ ル に 影 響 を 及 ぼ す 化 合 物 が 同 定 さ れ る ( 第 5.3.2節 を 参
照されたい)。
20
【0146】
好 ま し く は 、 変 異 体 MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 野 生 型 MOLLポ リ ペ プ チ ド に よ っ て 示 さ れ る 少
なくとも1つの機能において、改変された活性を示す。変異体ポリペプチドの改変された
活性は、減少(たとえば、機能喪失突然変異)であることができる、または活性において
増大することができる(たとえば、機能獲得突然変異)。本明細書に使用されるものとし
て、「機能喪失突然変異」の句は、変異体ポリペプチドが減少した活性を有するような突
然変異をいう。減少した活性は、ポリペプチドの各々の機能/活性に存在してもよく、ま
たはポリペプチドの機能/活性の全てよりも少数で存在してもよい。機能喪失突然変異は
、完全な(ヌル)または部分的な機能喪失であることもできる。本明細書に使用されるも
のとして、「機能獲得突然変異」の句は、ポリペプチドが有する変異体が活性を増大する
30
ような突然変異をいう。増大された活性は、ポリペプチドの各々の機能/活性に存在して
もよく、またはポリペプチドの機能/活性の全てよりも少数で存在してもよい。
【0147】
5.3.1.1 EMS化 学 的 欠 失 突 然 変 異 生 成 エ チ ル メ タ ン ス ル ホ ネ ー ト ( EMS) は 、 線 虫 に お い て 関 心 対 象 の 遺 伝 子 の 機 能 喪 失 突 然
変 異 を 作 製 す る た め に 一 般 的 に 使 用 さ れ る 化 学 的 突 然 変 異 原 で あ る 。 EMSに よ っ て 誘 導 さ
れ る 約 13%の 突 然 変 異 は 、 小 さ な 欠 失 で あ る 。 本 明 細 書 に お い て 記 載 さ れ て い る 方 法 で は
6
、 4× 10 の EMS変 異 誘 発 さ れ た ゲ ノ ム を ス ク リ ー ニ ン グ す る こ と に よ っ て 関 心 対 象 の 欠 失
を 同 定 す る 確 率 が ほ ぼ 95%で あ る 。 突 然 変 異 生 成 の 後 、 本 発 明 の ポ リ ペ プ チ ド を コ ー ド す
る遺伝子内のこれらの突然変異を同定するために、変異体線虫をさらにスクリーニングす
40
る 。 簡 潔 に は 、 こ の 手 順 は 、 96穴 プ レ ー ト に 小 さ な プ ー ル に 分 配 さ れ た 数 100万 の 変 異 が
誘 発 さ れ た 線 虫 の ラ イ ブ ラ リ ー で あ っ て 、 そ れ ぞ れ の プ ー ル が 約 400の 単 相 体 ゲ ノ ム で 構
成されるライブラリーを作製することを含む。それぞれのプールの一部を使用して、変異
誘 発 さ れ た 線 虫 に 由 来 す る ゲ ノ ム DNAの 対 応 す る ラ イ ブ ラ リ ー を 作 製 す る 。 関 心 対 象 の 欠
失 を 有 す る ゲ ノ ム を 有 す る プ ー ル を 同 定 す る た め に 、 DNAラ イ ブ ラ リ ー を PCRア ッ セ イ 法 に
よってスクリーニングして、所望の欠失を有する変異体虫を変異誘発された動物の対応す
る プ ー ル か ら 回 収 す る 。 EMSは 、 欠 失 を 作 製 す る た め の 好 ま し い 変 異 誘 発 物 質 で あ る が 、 X
線、γ線、ジエポキシブタン、ホルムアルデヒド、および紫外線と共にトリメチルプソラ
レ ン な ど の そ の 他 の 変 異 誘 発 物 質 を 使 用 し て 、 有 意 な 欠 失 を 得 る こ と が で き る 。 Sulston
お よ び Hodgkin ( 1988, pp. 587-606, in The Nematode Caenorhabditis elegans, Wood,
50
(35)
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Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York) に よ っ
て 記 載 さ れ て い る 方 法 な ど の 、 当 業 者 に 既 知 の 任 意 の 手 順 を 使 用 し て 、 EMSに よ っ て 線 虫
に 変 異 誘 発 し て も よ い 。 変 異 誘 発 物 質 に 対 す る 曝 露 に 続 い て 、 線 虫 を シ ャ ー レ ( 1∼ 2日 イ
ンキュベートされる)に分け、次亜塩素酸塩処理によって胚を単離する(同上)。胚を孵
化 さ せ て 、 L1幼 虫 を 一 晩 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン 後 に 収 集 す る 。 幼 虫 を プ レ ー ト に つ き 200匹
の 動 物 の 平 均 密 度 で ペ ト リ 皿 に 分 け て 、 ち ょ う ど 飢 え る ま で 5∼ 7日 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た
。線虫の試料を、蒸留水の溶液で洗浄することによってそれぞれのプレートから収集し、
そ れ ぞ れ の プ レ ー ト か ら 洗 浄 し た 線 虫 を 96穴 プ レ ー ト の 1つ の ウ ェ ル に 配 置 す る 。 虫 を 溶
解 し て 、 さ ら な る 解 析 ま で -80℃ で DNAを 貯 蔵 す る 。 そ れ ぞ れ の プ レ ー ト か ら の 生 き て い る
線 虫 を 、 生 き て い る 動 物 の チ ュ ー ブ の 物 理 的 配 置 は 、 96穴 プ レ ー ト の 対 応 す る DNA可 溶 化
10
液 の 配 置 と 同 様 で あ る よ う に 、 -80℃ で ス ト レ ー ジ す る た め の ラ ッ ク 内 の チ ュ ー ブ に 等 分
する。
【0148】
貯 蔵 ス ト ラ テ ジ ー を 使 用 し て 、 DNA可 溶 化 液 の 効 率 的 な PCRス ク リ ー ニ ン グ を 行 う こ と が
で き る 。 プ ー ル は 、 プ レ ー ト 内 の ウ ェ ル の そ れ ぞ れ の カ ラ ム を 含 む 8ウ ェ ル か ら 10μ lの 可
溶 化 液 を 混 合 す る こ と に よ っ て 、 そ れ ぞ れ の 96穴 プ レ ー ト か ら 作 製 さ れ る 。 そ れ ぞ れ の カ
ラ ム に つ い て プ ー ル し た 可 溶 化 液 を PCRで の ス ク リ ー ニ ン グ の た め に 使 用 す る 。 PCRプ ラ イ
マ ー は 、 座 位 の サ イ ズ に 応 じ て 、 関 心 対 象 の そ れ ぞ れ の 座 位 が 約 1.5∼ 12kb間 隔 で あ る よ
う に デ ザ イ ン し 、 そ の 結 果 、 本 発 明 の MOLL核 酸 の 全 て の コ ー ド 領 域 を 含 む 欠 失 を 、 先 に 述
べ た 手 順 に 従 っ て 検 出 す る こ と が で き る Plasterk, 1995, Methods in Cell Biology 48:5
20
9-80を 参 照 さ れ た い ) 。 そ れ ぞ れ の 領 域 に つ い て 、 ネ ス テ ィ ッ ド PCRス ト ラ テ ジ ー を 行 う
た め に 、 外 側 の セ ッ ト を 第 1ラ ウ ン ド の PCRの た め に 使 用 し 、 内 部 の セ ッ ト を 第 2ラ ウ ン ド
の PCRの た め に 使 用 す る よ う に 2セ ッ ト の プ ラ イ マ ー 対 を 選 択 す る 。 第 2ラ ウ ン ド の PCRを 行
って、反応におけるより優れた特異性を達成する。
【0149】
第 2ラ ウ ン ド の PCR産 物 を ア ガ ロ ー ス ま た は ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル で の 電 気 泳 動 法 に よ っ て
解 析 し て も よ い 。 欠 失 の 可 能 性 の あ る 産 物 が 2つ の 反 応 の う ち の 少 な く と も 1つ に お い て 観
察 さ れ る 場 合 、 2ラ ウ ン ド の PCRを 、 ポ ジ テ ィ ブ な プ ー ル に 対 応 す る カ ラ ム に 由 来 す る 個 々
のウェルからの可溶化液に対して上記の通りに行う。これにより、欠失変異体を含むポジ
ティブな「アドレス」(すなわち個々のプレート内の特定のウェルの同定がなされる。ポ
30
ジ テ ィ ブ な ア ド レ ス を 上 記 の 通 り に 2ラ ウ ン ド の PCRを 使 用 し て 、 四 回 再 テ ス ト し 、 産 物 を
ゲルで精製して、直接シーケンスし、所望の欠失の存在を確認した。
【0150】
一旦ポジティブなアドレスが同定され、配列分析によって確認されれば、関連したプレ
ー ト か ら の 約 300匹 の 個 々 の 虫 を 別 々 の 新 し い プ レ ー ト に ク ロ ー ン 化 す る 。 F1動 物 が プ レ
ートに存在するときには、上記の通りに親線虫を緩衝液に入れて、溶解する。欠失を同定
するために使用したものと同じプライマー対および循環条件を使用して、これらの動物に
対 し て PCRを 行 う 。 一 旦 欠 失 を 有 す る 単 一 の 動 物 が 同 定 さ れ れ ば 、 欠 失 動 物 の ホ モ 接 合 性
の集団が得られるまでその子孫をクローン化して、上記したものと同じ条件を使用して検
査する。
40
【0151】
5.3.1.2 Tc1ト ラ ン ス ポ ゾ ン 挿 入 突 然 変 異 生 成 関心対象の遺伝子内への転移因子の挿入により、遺伝子機能の不活性化を生じさせるこ
と が で き る の で 、 転 移 因 子 Tc1は 、 線 虫 に け る 変 異 誘 発 物 質 と し て 使 用 し て も よ い 。 突 然
変異生成の後、変異体線虫をさらにスクリーニングして、本発明のポリペプチドをコード
する遺伝子内の突然変異を同定する。突然変異生成遺伝子のバックグランドに高コピー数
の Tc1転 移 因 子 を 含 む 株 ( す な わ ち 、 転 移 因 子 が 高 度 に 可 動 性 で あ る 株 ) で 開 始 し て 、 約 3
,000個 体 の 培 養 を 含 む Tc1ラ イ ブ ラ リ ー を 前 述 し た よ う に 作 製 す る ( た と え ば 、 Zwaal et
al., 1993, PNAS 90:7431-7435; Plasterk, 1995, “ Reverse Genetics: From Gene Sequ
ence to Mutant Worm” , in Caenorhabditis elegans: Modern Biological Analysis of
50
(36)
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an Organism ( Epstein and Shakes, Eds.) pp. 59-80.を 参 照 さ れ た い ) 。 Tc1配 列 対 し
て 特 異 的 な 1セ ッ ト の プ ラ イ マ ー お よ び 1セ ッ ト の 遺 伝 子 特 異 的 な プ ラ イ マ ー ( た と え ば 、
clk-2の た め の プ ラ イ マ ー ) に よ る ポ リ メ ラ ー ゼ 連 鎖 反 応 法 を 使 用 し て 、 ラ イ ブ ラ リ ー を
関 心 領 域 の Tc1挿 入 に つ い て ス ク リ ー ニ ン グ し た 。 Tc1は 、 イ ン ト ロ ン 内 の 挿 入 に 対 す る 選
択 を 示 す の で 、 時 に 、 関 心 対 象 の 遺 伝 子 の 一 部 ま た は 全 体 の 欠 失 を 生 じ 得 る ( 通 常 、 1∼ 2
kbの ゲ ノ ム 配 列 が 欠 失 す る ) 転 移 因 子 の 不 正 確 な 切 除 に つ い て 、 挿 入 動 物 の 集 団 の 二 次 ス
ク リ ー ニ ン グ を 行 う こ と が 必 要 で あ る 。 Tc1欠 失 に つ い て の ス ク リ ー ン を 行 っ て 、 上 記 し
た EMSス ク リ ー ン と 同 様 の 方 法 で 欠 失 動 物 を 回 収 す る 。
【0152】
5.3.1.3 分 子 進 化 技 術 10
変 異 体 ポ リ ペ プ チ ド は 、 1つ ま た は 複 数 の ヌ ク レ オ チ ド の 置 換 、 付 加 、 ま た は 欠 失 を 本
発 明 の 核 酸 ( た と え ば 、 dsc-4) の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 に 導 入 す る こ と に よ っ て 作 製 す る こ
と が で き 、 そ の 結 果 、 1つ ま た は 複 数 の ア ミ ノ 酸 の 置 換 、 付 加 、 ま た は 欠 失 が コ ー ド さ れ
る タ ン パ ク 質 に 導 入 さ れ る 。 突 然 変 異 は 、 部 位 特 異 的 分 子 進 化 技 術 ( 一 般 に 、 Arnold, 19
93, Curr. Opinion Biotechnol. 4:450-455を 参 照 さ れ た い ) ; た と え ば 、 部 位 特 異 的 突
然 変 異 生 成 ( た と え ば 、 Kunkel, 1985, PNAS, 82:488-492; Oliphant et al., 1986, Gen
e 44:177-183を 参 照 さ れ た い ) ; オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド 定 方 向 突 然 変 異 生 成 ( た と え ば 、 Re
idhaar-Olson et al., 1988, Science 241:53-57を 参 照 さ れ た い ) ; 化 学 的 突 然 変 異 生 成
( た と え ば 、 Eckert et al., 1987, Mutat. Res. 178:1-10を 参 照 さ れ た い ) ; 誤 り が ち
な PCR( error prone PCR) ( た と え ば 、 Caldwell & Joyce, 1992, PCR Methods Applic.
20
2:28-33を 参 照 さ れ た い ) ; カ セ ッ ト 突 然 変 異 生 成 ( た と え ば 、 Arkin et al., PNAS, 199
2, 89:7871-7815を 参 照 さ れ た い ) ; DNAシ ャ ッ フ リ ン グ 法 ( DNA shuffling methods) (
た と え ば 、 Stemmer et al., 1994, PNAS, 91:10747-10751; United States Patents 5,60
5,793; 6,117,679; 6,132,970; 5,939,250; 5,965,408; 6,171,820を 参 照 さ れ た い ) な ど
の標準的な技術によって導入することができる。
【0153】
一つの態様において、特定のヌクレオチド配列または核酸の位置が突然変異のためにタ
ーゲットされる。このようなターゲットされた突然変異は、核酸のいずれかの位置に導入
することができる。たとえば、ヌクレオチド置換を行って、「非必須」または「必須」ア
ミノ酸残基にアミノ酸置換を生じさせることができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物
30
活性を変化させることなく野生型配列から変化させることができる残基であるが、「必須
」アミノ酸残基は、少なくとも1つのポリペプチドの生物活性に必要とされる。たとえば
、種々の種の相同体の間で保存されないか、または半保存のアミノ酸残基は、活性に非必
須であろう。あるいは、種々の種(たとえば、マウスおよびヒト)の相同体間で保存され
るアミノ酸残基は、活性に必須であろう。
【0154】
ま た 、 こ の よ う な タ ー ゲ ッ ト さ れ た 突 然 変 異 は 、 1つ ま た は 複 数 の 非 保 存 ア ミ ノ 酸 残 基
でも行うことができる。「非保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が異なる側鎖を有する
アミノ酸残基によって置換されたものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミ
リーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(た
40
とえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グ
ルタミン酸、アスパラギン、グルタミン)、無電荷の極性側鎖(たとえば、グリシン、セ
リン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性の側鎖(たとえば、アラニン、バリ
ン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファ
ン)、β枝分れ側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側
鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するア
ミノ酸を含む。
【0155】
非保存アミノ酸残基の置換の代わりに、または加えて、このようなターゲットされた突
然 変 異 は 、 1つ ま た は 複 数 の 保 存 さ れ た ア ミ ノ 酸 残 基 で も な さ れ る 。 「 保 存 さ れ た ア ミ ノ
50
(37)
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酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されたもので
ある。突然変異生成に続いて、コードされるタンパク質は、組換えで発現させることがで
き、タンパク質の活性を決定することができる。
【0156】
もう一つの態様において、突然変異は、コード配列の全部または一部に沿ってランダム
に導入することができる(たとえば、飽和突然変異生成によって)。ある形態では、同様
のドメイン、構造モチーフ、活性部位を有するか、またはミスマッチまたは不完全なマッ
チを有する本発明の酵素遺伝子の一部と共に整列するその他の関連したポリペプチドをコ
ードするヌクレオチド配列を配列の多様性を作製するための突然変異生成プロセスに使用
することができる。前述のいくつかの技術のそれぞれの突然変異生成工程に対して、工程
10
のいずれかまたは全ての数回の反復サイクルを、配列の多様性を最適化するために行って
もよいことが理解されるはずである。上記の方法は、いずれの所望の順位に組み合わせて
使用することもできる。多くの例において、方法は、変異体ヌクレオチド配列のプールま
たは変異体ヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞のプールを生じる。所望の特徴を有す
る修飾された酵素を発現するヌクレオチド配列または宿主細胞は、当該技術分野において
周 知 の 1つ ま た は 複 数 の ア ッ セ イ 法 で ス ク リ ー ニ ン グ す る こ と に よ っ て 同 定 す る こ と が で
きる。本アッセイ法は、所望の物理的または化学的特徴を有するポリペプチドを選択する
条件下で行ってもよい。ヌクレオチド配列の突然変異は、クローン内の変異体ポリペプチ
ドをコードする核酸をシーケンスすることによって決定することができる。
【0157】
20
5.3.1.4 RNA干 渉
あ る 態 様 に お い て 、 RNA干 渉 ( RNAi) 分 子 を 、 RNAiが 向 け ら れ て い る 核 酸 の 発 現 を 減 少
す る こ と 、 ま た は 阻 害 す る こ と に よ っ て 線 虫 を 変 異 誘 発 す る た め に 使 用 す る 。 RNAiは 、 関
連 し た ヌ ク レ オ チ ド 配 列 を 含 む 遺 伝 子 の 発 現 を 抑 制 す る た め の 、 二 重 鎖 RNA( dsRNA) ま た
は 小 さ な 干 渉 RNA( siRNA) の 使 用 を い う 。 ま た 、 RNAiは 、 転 写 後 遺 伝 子 サ イ レ ン シ ン グ (
ま た は PTGS) と 呼 ば れ て い る 。 通 常 細 胞 の 細 胞 質 に 見 い だ さ れ る 唯 一 の RNA分 子 は 、 一 本
鎖 mRNA分 子 で あ る の で 、 細 胞 は 、 二 本 鎖 RNAを 認 識 し 、 21∼ 25の 塩 基 対 ( 約 2つ の 二 重 ら せ
ん の タ ー ン で あ っ て 、 小 さ な 干 渉 RNAま た は siRNAと 称 さ れ る ) を 含 む 断 片 に 切 断 す る 酵 素
を 有 す る 。 断 片 の ア ン チ セ ン ス 鎖 は 、 こ れ が 内 因 性 細 胞 mRNAの 分 子 の 相 補 的 な セ ン ス 配 列
とハイブリダイズするように、センス鎖から十分に分れている。このハイブリダイゼーシ
30
ョ ン に よ り 、 二 本 鎖 領 域 の mRNAの 切 断 を ト リ ガ ー し 、 し た が っ て こ れ が ポ リ ペ プ チ ド に 翻
訳 さ れ る 能 力 を 破 壊 す る 。 し た が っ て 、 特 定 の 遺 伝 子 に 対 応 す る 二 本 鎖 RNAを 導 入 す る こ
とにより、特定の組織において、および/または選択された時間に、その遺伝子の細胞自
体の発現がノックアウトされる。
【0158】
二 本 鎖 ( ds) RNAは 、 線 虫 、 哺 乳 類 、 そ の 他 を 含 む ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い )
多 く の 生 物 体 の 遺 伝 子 発 現 を 妨 害 す る た め に 使 用 す る こ と が で き る 。 dsRNAは 、 本 発 明 の
核酸分子のヌル変異体のものと同様の表現型を生じるように、本発明の核酸分子の機能の
抑 制 性 RNAま た は RNAiと し て 使 用 さ れ る ( Wianny & Zernicka-Goetz, 2000, Nature Cell
Biology 2: 70-75) 。
40
【0159】
あ る い は 、 siRNAを 直 接 細 胞 に 導 入 し て RNA干 渉 を 媒 介 す る こ と が で き る ( Elbashir et
al., 2001、 Nature 411: 494-498) 。 siRNAを 作 製 す る た め に 多 く の 方 法 、 た と え ば 化 学
合 成 ま た は イ ン ビ ト ロ で の 転 写 が 開 発 さ れ た 。 一 旦 作 製 さ れ れ ば 、 siRNAsは 、 一 過 性 の ト
ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン を 経 て 細 胞 に 導 入 さ れ る 。 ま た 、 RNA 干 渉 の RNA配 列 特 異 的 な メ デ ィ
エ ー タ に 向 け ら れ た US Patent Applications 60/265232、 09/821832、 お よ び PCT/US01/10
188を 参 照 さ れ た い 。 ま た 、 一 過 性 に 、 か つ 安 定 に ト ラ ン ス フ ェ ク ト さ れ た 哺 乳 動 物 細 胞
に お い て siRNAsを 絶 え ず 発 現 さ せ る た め に 、 多 く の 発 現 ベ ク タ ー が 開 発 さ れ た ( Brummelk
amp et al., 2002 Science 296:550-553; Sui et al., 2002, PNAS 99( 6) :5515-5520;
Paul et al., 2002, Nature Biotechnol. 20:505-508) 。 こ れ ら の ベ ク タ ー の い く つ か は
50
(38)
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、 小 さ な ヘ ア ピ ン RNA( shRNAs) を 発 現 す る よ う に 設 計 さ れ て お り 、 こ れ が イ ン ビ ボ で 遺
伝 子 特 異 的 な サ イ レ ン シ ン グ を 行 う こ と が で き る siRNA様 の 分 子 に プ ロ セ ス さ れ る 。 siRNA
発 現 ベ ク タ ー の も う 一 つ の タ イ プ は 、 別 々 の pol IIIプ ロ モ ー タ ー の 抑 制 下 で セ ン ス お よ
び ア ン チ セ ン ス siRNA鎖 を コ ー ド す る ( Miyagishi and Taira, 2002, Nature Biotechnol.
20:497-500) 。 こ の ベ ク タ ー か ら の siRNA鎖 は 、 そ の 他 の ベ ク タ ー の shRNAsの 様 に 、 5'チ
ミジン終結シグナルを有する。両タイプの発現ベクターによるサイレンシングの有効性は
、 一 過 性 に siRNAを ト ラ ン ス フ ェ ク ト す る こ と に よ っ て 誘 導 さ れ る も の と 同 等 で あ っ た 。
【0160】
RNAi技 術 は 、 線 虫 に お け る 高 ス ル ー プ ッ ト 使 用 の た め に も 適 応 さ れ て き た ( た と え ば 、
Kamath et al., 2003, Nature 421:231-7, Ashrafi et al., 2003, Nature 421:268-72,
10
Taschl, 2003, Nature 421:220-221を 参 照 さ れ た い ) 。 簡 潔 に は 、 選 択 の 二 重 鎖 RNA( dsR
NA) を コ ー ド す る DNAプ ラ ス ミ ド を 大 腸 菌 に 挿 入 す る 。 dsRNAを コ ー ド す る 核 酸 は 、 大 腸 菌
で の 発 現 が 誘 導 分 子 ( た と え ば 、 IPTG) の 存 在 下 で の み 生 じ る よ う に 、 誘 導 性 プ ロ モ ー タ
ー の 制 御 下 に 配 置 す る こ と が で き る 。 最 後 の 幼 虫 段 階 の 線 虫 を 、 dsRNAを 発 現 す る 大 腸 菌
の ロ ー ン 上 に 配 置 し て 大 腸 菌 に 摂 取 さ せ る 。 摂 取 さ れ た 細 菌 は 、 線 虫 内 部 で dsRNAを 放 出
す る 。 そ の 結 果 、 dsRNAに 対 応 す る 配 列 の 遺 伝 子 は 、 あ た か も 遺 伝 子 が 機 能 喪 失 突 然 変 異
を有するかのようにふるまう。
【0161】
5.3.2 薬 剤 の 同 定 の た め 一つの態様において、本発明は、生物体の脂質またはリポタンパク質のレベルを変更す
20
る本発明の薬剤をアッセイし、スクリーニングし、または同定するための、線虫の使用を
包含する。このような態様において、望ましくないレベルの脂質またはリポタンパク質と
関連した表現型(たとえば、排便サイクル長の増減、期外発生の生殖系列発達、胚発生も
し く は 後 胚 発 生 の 速 度 の 増 減 ; 第 5.4節 を 参 照 さ れ た い ) を 示 す 、 変 異 体 clk-1お よ び / ま
た は 変 異 体 MOLL遺 伝 子 ( た と え ば 、 dsc-3、 ま た は dsc-4) を 含 む 線 虫 を 候 補 化 合 物 と イ ン
キュベートするか、または摂取させる。次いで、変異体表現型の減少(すなわち、最初の
変異体表現型よりも野生型に似た表現型)または変異体表現型の悪化(すなわち、最初の
変異体表現型よりもさらに野生型に似ていない表現型)について、虫を記録する。
【0162】
特定の作用機序によって拘束されることは企図しないが、本発明の薬剤または化合物は
30
、 た と え ば clk-1ま た は MOLL核 酸 / ポ リ ペ プ チ ド 発 現 を 増 強 し /妨 害 す る こ と 、 内 因 性 結 合
パートナー(たとえば、野生型生物体内のポリペプチドと相互作用するポリペプチド、脂
質 、 ま た は 核 酸 ) と clk-1ま た は MOLLポ リ ペ プ チ ド の 相 互 作 用 を 増 強 し 、 ま た は 妨 害 す る
こ と 、 clk-1も し く は MOLL活 性 を 増 強 し / 妨 害 す る こ と 、 そ の 他 に よ っ て clk-1ま た は MOLL
ポ リ ペ プ チ ド の 活 性 を 変 更 す る こ と が で き る 。 本 方 法 は 、 一 般 に clk-1ま た は MOLL核 酸 /
ポリペプチド分子(変異体または野生型)を発現する動物と共に薬剤をインキュベートす
ることと、次いで望ましくないレベルの脂質またはリポタンパク質と関係する表現型の変
化(たとえば、排便サイクル長、期外発生の生殖系列発達、胚発生もしくは後胚発生の速
度)についてアッセイすることとを含み、これにより本発明の薬剤を同定する。また、本
発 明 は 、 clk-1ま た は MOLLポ リ ペ プ チ ド 分 子 と 結 合 す る 試 験 化 合 物 を 同 定 す る た め の 、 生
40
化 学 ア ッ セ イ 法 の 使 用 を 含 む 。 次 い で 、 clk-1ま た は MOLLポ リ ペ プ チ ド と 結 合 す る こ と が
見いだされた化合物は、何らかの表現型を変更する性質を決定するために、線虫に基づい
たアッセイ法でアッセイすることができる。
【0163】
1つ の 特 異 的 な 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 野 生 型 表 現 型 を 部 分 的 も し く は 完 全 に 回 復 す
る こ と が で き る か 、 ま た は clk-1変 異 体 線 虫 に お い て dsc変 異 体 ( た と え ば 、 dsc-3、 ま た
は dsc-4) も し く は dsc遺 伝 子 の RNAiの 存 在 を 表 現 型 模 写 す る こ と が で き る 化 合 物 を ア ッ セ
イ す る た め の 、 線 虫 clk-1試 験 変 異 体 線 虫 の 使 用 を 提 供 す る 。 ま た 、 本 発 明 は 、 上 記 の 通
り に 、 clk-1変 異 体 ア ッ セ イ 法 に お い て 、 野 生 型 表 現 型 を 部 分 的 も し く は 完 全 に 回 復 す る
ポ ジ テ ィ ブ な 化 合 物 を 特 徴 づ け る た め に 、 複 数 の 遺 伝 子 ( 二 重 変 異 体 の clk-1/dsc-3お よ
50
(39)
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び clk-1/dsc-4な ど ) の 突 然 変 異 ま た は 1つ も し く は 複 数 の 遺 伝 子 の RNAiを 含 む 試 験 線 虫 の
使用を提供する。表現型の多くが定量的な特徴であるので、本方法により、表現型に対す
る効果が化合物との接触および変異体遺伝子型の存在に関して相加的であるかどうかを決
定 す る こ と が で き る 。 こ の よ う な 方 法 は 、 ポ ジ テ ィ ブ な 化 合 物 が 変 異 体 遺 伝 子 型 の 1つ と
同じプロセスに影響を及ぼするかどうかを決定するために使用することができる。
【0164】
特 に 、 天 然 の LDLレ ベ ル を 減 少 す る こ と に よ っ て 部 分 的 に 、 ま た は 完 全 に clk-1変 異 体 線
虫 を レ ス キ ュ ー す る 薬 剤 ま た は 化 合 物 は 3つ の 主 な カ テ ゴ リ ー に 、 す な わ ち コ レ ス テ ロ ー
ル 吸 収 を 減 少 さ せ る 化 合 物 、 天 然 の LDL合 成 / 分 泌 を 減 少 さ せ る 化 合 物 、 お よ び 天 然 の LDL
の 酸 化 型 LDLへ の 転 換 を 促 進 す る 化 合 物 に 分 類 す る こ と が で き る 。 そ れ ぞ れ の カ テ ゴ リ ー
10
の 化 合 物 は 、 事 実 上 不 均 一 で あ る こ と が で き る が 、 全 て が 天 然 の LDLレ ベ ル を 低 下 さ せ る
能力の特徴を共有する。たとえば、コレステロール吸収を減少させる化合物は、以下に関
与 す る 分 子 の レ ベ ル ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て 作 用 す る こ と が で き る : ( i)
コ レ ス テ ロ ー ル の 結 合 、 ( ii) 原 形 質 膜 お よ び / ま た は 細 胞 小 器 官 膜 を 越 え た コ レ ス テ ロ
ー ル の 輸 送 、 ま た は ( iii) 吸 収 お よ び 輸 送 す る こ と が で き る 関 連 し た ス テ ロ ー ル へ の コ
レ ス テ ロ ー ル の 転 換 。 天 然 の LDL合 成 / 分 泌 を 減 少 さ せ る 化 合 物 は 、 以 下 に よ っ て 作 用 す
る こ と が で き る : i) LDL合 成 / 分 泌 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、
ii) LDL合 成 / 分 泌 を 阻 害 す る こ と に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 iii
) 一 般 に 脂 質 レ ベ ル を 低 下 さ せ る こ と に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 、 こ れ ら を LDL
に 組 み 入 れ る た め に 利 用 で き な い よ う に 、 促 進 す る こ と 、 ま た は iv) 脂 質 レ ベ ル を 上 昇 す
20
る こ と に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 。 天 然 の LDLの 酸 化 型 LDLへ の 転
換 を 促 進 す る 化 合 物 は 、 以 下 に よ っ て 作 用 す る こ と が で き る : i) LDL酸 化 に 関 与 す る 分 子
の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 、 ii) LDL酸 化 を 阻 害 す る こ と に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま
た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 iii) ROS生 産 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ
と 、 iv) ROS産 生 を 阻 害 す る こ と に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 v)
ROSク リ ア ラ ン ス を 増 大 す る こ と に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 減 少 さ せ る こ と 、 ま
た は vi) ROSク リ ア ラ ン ス の 減 少 に 関 与 す る 分 子 の 発 現 ま た は 活 性 を 促 進 す る こ と 。
【0165】
5.3.2.1 候 補 薬 剤 本明細書に使用されるものとして、「薬剤」の用語は、所望の生物学的効果を有する分
30
子をいう。薬剤は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、翻訳後修飾されたタンパク質
、抗体、その他を含む(しかし、これらに限定されない)タンパク質性分子;または無機
または有機化合物を含む(しかし、これらに限定されない)大分子;または無機または有
機 化 合 物 を 含 む ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い ) 500ダ ル ト ン 未 満 の 小 分 子 ; ま た は 2本
鎖 DNA、 1本 鎖 DNA、 2本 鎖 RNA、 1本 鎖 RNA、 も し く は 三 重 ら せ ん 核 酸 分 子 を 含 む ( し か し 、
これらに限定されない)核酸分子を含む(しかし、これらに限定されない)。薬剤は、い
ずれの既知の生物体(動物、植物、細菌、真菌、原生生物、またはウイルスを含むが、こ
れらに限定されない)に由来する天然物、または合成分子のライブラリーからのものであ
ることができる。本明細書に使用されるものとして、「薬剤」および「化合物」の用語は
、交換可能に使用される。
40
【0166】
好 ま し い 態 様 で は 、 候 補 薬 剤 は 、 野 生 型 clk-1変 異 体 線 虫 の 表 現 型 の う ち の 1つ を 部 分 的
に 、 ま た は 完 全 に 回 復 す る こ と が で き る 。 関 連 し た 態 様 に お い て 、 候 補 薬 剤 は 、 clk-1変
異 体 線 虫 の dsc遺 伝 子 の 突 然 変 異 の 1つ ま た は 複 数 の 効 果 を 表 現 型 模 写 す る こ と が で き る 。
特 定 の 態 様 に お い て 、 候 補 薬 剤 は 、 DSC-3お よ び DSC-4な ど の ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ
な い ) dsc遺 伝 子 産 物 の ア ン タ ゴ ニ ス ト で あ る 。
【0167】
候 補 薬 剤 の 例 は 、 U.S. Patent NOs. 5,474,991、 5,929,091; 6,147,214、 6,197,798、 6
,417,367、 6,444,664に 開 示 さ れ て い る 。 候 補 薬 剤 の 例 は 、 DSC-3の 酵 素 機 能 を 調 整 す る バ
ナ ジ ン 酸 塩 な ど の 特 異 的 お よ び 非 特 異 的 な ATPase阻 害 剤 、 並 び に 一 般 的 な 代 謝 プ ロ セ ス に
50
(40)
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影 響 を 及 ぼ す エ ジ チ ミ ベ ( Ezetimibe) ( Zetia Schering Plough) な ど の 薬 物 を 含 む 。 本
発 明 の 方 法 の 一 定 の 態 様 に お い て 、 CYP7A1酵 素 の 活 性 を 増 大 す る タ ウ リ ン ( し か し 、 こ れ
らに限定されない)などの胆汁合成を増大することが既知のその他の薬剤を薬剤として使
用することができる。
【0168】
5.4 本 発 明 の ア ッ セ イ 法 本発明において、脂質代謝における種々の遺伝子の役割を調査するためのモデルとして
線虫が使用される。本発明者らは、本発明の遺伝子に突然変異を有する線虫が、種々の形
態 的 、 行 動 的 、 発 達 的 な 表 現 型 を 示 す こ と を 観 察 し た 。 RNA干 渉 ま た は 本 発 明 の 薬 剤 と の
インキュベーション、並びに温度などの環境要因により、このような表現型をさらに修飾
10
することができる。本モデルは、線虫の特異的な形態的、行動的、発達上の表現型が一定
の代謝イベントまたは状態と関係しており、これがヒトにおいても生じ、ヒト障害とも関
係するという発見に基づく。
【0169】
一つの態様において、線虫モデルは、異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、および心
臓血管疾患の発生に至る脂質代謝に関与する機構に関与する遺伝子を同定するために使用
することができる。これは、特異的な表現型を生じる線虫を使用すること、このような線
虫のゲノムに突然変異を生じさせること、修飾された表現型を示す変異体線虫をスクリー
ニングすること、および修飾された表現型を生じる変異した遺伝子を単離することによっ
て 達 成 す る こ と が で き る 。 た と え ば 、 本 発 明 は 、 コ レ ス テ ロ ー ル ・ レ ベ ル の 減 少 、 LDLの
20
産 生 も し く は 分 泌 、 ま た は LDLの 酸 化 が 、 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 を 増 大 す る こ と を 提 供 す る
。生殖系列発達に同様の変化を生じさせる変異体を同定することによって、生殖系列発達
のプロセスにおいて役割を果たす遺伝子を見いだすことができる。従って、本発明は、特
定の遺伝子型および表現型の線虫を突然変異生成に供し、表現型に変化を示す変異された
線虫を単離するアッセイ法を提供する。選択的に、さらに表現型の変化を区別し、特徴づ
けるために、変異された線虫は、温度の変化などの一定の環境に供することができる。
【0170】
もう一つの態様において、線虫ゲノムにランダムまたは非ランダムな突然変異を生じさ
せ る 代 わ り に 、 線 虫 の 多 く の 既 知 の ま た は 予 測 さ れ る 遺 伝 子 の mRNAレ ベ ル を 特 異 的 に 減 少
さ せ て 表 現 型 の 変 化 を 試 験 す る こ と が で き る 。 こ れ は 、 RNAを 媒 介 し た 干 渉 を 含 む 当 該 技
30
術分野において既知の多くの方法によって達成することができる。
【0171】
もう一つの態様において、線虫モデルは、障害に関連した代謝イベントまたは状態の変
化を反映するか、または既知の薬物標的の活性の変化と相関する候補化合物の効果を線虫
の表現型の変化を観察することによって評価することができることによる薬物スクリーニ
ングのために使用することができる。特異的な表現型を生じる線虫を使用することにより
、候補化合物との接触後に修飾された表現型を示すことから、化合物が動物において関連
した代謝イベントまたは状態に影響を及し(たとえば、一定の脂質および/またはリポタ
ンパク質のレベルの増加または減少)、並びにそれぞれの薬物ターゲットが既知であるな
ら ば ( た と え ば 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド ) 相 互 作 用 す る こ と が で き る こ と を 示 す 。 従 っ て 、 本
40
発明は、特異的な表現型の線虫を試験化合物と接触し、接触後に表現型に変化を示す線虫
を同定し、単離するアッセイ法を提供する。表現型の変化は、動物内の一定の位置での一
定 の 脂 質 ( た と え ば 、 コ レ ス テ ロ ー ル ) お よ び / ま た は リ ポ タ ン パ ク 質 ( た と え ば 、 LDL
様リポタンパク質)のレベルの増減などの、動物における関連した代謝イベントまたは状
態の変化に相関させることができる。次いで、変化を生じた試験化合物を、試験線虫にお
いてこれが相互作用した標的などの、その作用様式についてさらに解析し;さらに、候補
薬として開発される。選択的に、接触工程の前に、間に、または後に、線虫を温度の変化
などの一定の環境に供して、一定レベルの脂質またはリポタンパク質、または一定の活性
と相関について、さらに表現型の変化を区別し、特徴づけることができる。
【0172】
50
(41)
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さらにもう一つの態様において、線虫の特定の表現型を変更することができるその他の
生物体に由来する遺伝子を本発明のスクリーニングするアッセイ法に使用することができ
る 。 た と え ば 、 ヒ ト 遺 伝 子 ATP8B1、 ATP8B2、 ATP8B4、 ま た は MTPを 含 む ( し か し 、 こ れ ら
に 限 定 さ れ な い ) そ の 他 の 生 物 体 ( ま た は こ れ ら の 変 異 体 ) に 由 来 す る MOLL相 同 体 を 、 第
5.3節 に 開 示 し た も の な ど の 当 該 技 術 分 野 に お い て 一 般 的 な 技 術 に よ っ て 線 虫 に 導 入 し て
発 現 さ せ る こ と 、 お よ び 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ イ 法 に 使 用 す る こ と が で き る ( Ha
rris et al., 2003, Biochem. Biophy. Acta 1633:127-131) 。 た と え ば 、 MOLL相 同 体 (
た と え ば 、 ATP8B1、 ATP8B2、 ATP8B4、 ま た は MTP) を コ ー ド す る ヒ ト 遺 伝 子 の 発 現 可 能 な
形 態 を 変 異 体 dsc-3ま た は dsc-4遺 伝 子 型 を 含 み 、 お よ び / ま た は 変 異 体 dsc-3ま た は dsc-4
表現型を示す虫に発現させて、野生型表現型を回復する際のヒト遺伝子の効果を決定する
10
こ と が で き る 。 次 い で 、 試 験 化 合 物 を MOLL遺 伝 子 ( た と え ば 、 dsc-3ま た は dsc-4) の ヒ ト
相同体を含む虫に添加することができ、その結果ヒト遺伝子の機能を崩壊させる化合物を
同定することができる。
【0173】
関 連 し た 態 様 に お い て 、 薬 物 ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ イ 法 は 、 1つ ま た は 複 数 の 特 異 的 な
遺伝子(試験線虫において最初の表現型を生じるものに加えて)の発現が減少させる試験
線 虫 で 行 う こ と が で き る 。 こ れ は 、 RNAを 媒 介 し た 干 渉 な ど の 当 該 技 術 分 野 に お い て 既 知
の方法によって達成することができる。
【0174】
さらにもう一つの態様において、本発明は、また、表現型と関連した代謝状態またはイ
20
ベントの結果を直接測定する技術を使用するアッセイ法を提供する。典型的には、これら
のアッセイ法では、線虫の一部または全部にける、脂質およびリポタンパク質などの一定
の代謝産物の存在、濃度および分布を測定する。
【0175】
上記概説した本発明の標的スクリーニングアッセイ法および薬物スクリーニングアッセ
イ 法 は 、 共 通 の 基 本 要 素 を 共 有 す る 。 第 1に 、 本 ア ッ セ イ 法 は 、 1つ ま た は 複 数 の 特 徴 的 な
表現型を示す既知の線虫の遺伝子型の試験であって、表現型は、一定の代謝状態またはイ
ベ ン ト の 存 在 を 示 す 試 験 を 使 用 す る 。 第 2に 、 本 ア ッ セ イ 法 は 、 表 現 型 の 存 在 も し く は 表
現型の変化を検出するための手段、または表現型の変化を測定するための手段(これらの
多くは、性質上定量的である)が必要である。これらの共通の要素は、本発明の種々のア
30
ッセイ法を行うために組み合わせることができることが想定される。柔軟で、生産的で、
か つ 制 限 が な い こ と は 、 本 発 明 の 創 薬 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 利 点 の う ち の 1つ で あ る 。 た と
えば、特定の表現型の線虫を標的スクリーニングアッセイ法、並びに薬物スクリーニング
ア ッ セ イ 法 に 使 用 す る こ と が で き 、 線 虫 の 処 理 、 す な わ ち 突 然 変 異 生 成 、 特 異 的 な mRNA減
少、または試験化合物との接触のいずれかを受けることにより、相違が生じる。処理され
た線虫の表現型の変化は、同一セットの技術によって評価することができる。従って、試
験線虫の特異的な表現型を評価するために開発された特定の手段または方法を多くの異な
るアッセイ法に使用することができる。
【0176】
本発明の種々の線虫アッセイ法において、特異的な表現型を検出し、観察し、および/
40
または測定して、その他の実験線虫および対照線虫と比較する。多くの表現型の定量的性
質により、線虫の脂質/リポタンパク質レベルと相関させることができる。以下の節では
、関心対象の表現型によって構成される本発明の線虫アッセイ法を記載する。
【0177】
5.4.1 ア ッ セ イ 技 術 本 発 明 の ア ッ セ イ 法 は 、 顕 微 鏡 的 線 虫 の 種 、 線 形 動 物 ( Nematoda) 、 杆 線 虫 科 ( Rhabdi
tidae) 、 好 ま し く は 線 虫 ( C. elegans) お よ び 線 虫 ( C. briggsae) な ど の 線 虫 ( Caenor
habditis) 種 で 使 用 す る こ と が で き る 。 最 も 好 ま し く は 、 線 虫 ( C. elegans) が 使 用 さ れ
る 。 モ デ ル 生 物 体 と し て 線 虫 ( C. elegans) を 使 用 す る こ と に は 、 多 く の 利 点 が あ る 。 第
1に 、 線 虫 ( C. elegans) は 、 約 3日 の 短 い 生 活 環 を 有 し 、 こ れ ら の 線 虫 ( こ れ ら の 変 異 体
50
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、トランスジェニクス、および/または安定株を含む)を迅速かつ多数で、増殖させ、発
生させることができる。この短い寿命のため、線虫に基づいたアッセイ法では、化合物の
安 定 性 に 関 連 し た い ず れ の 問 題 も 伴 わ ず に 、 化 合 物 が 1つ ま た は 複 数 回 以 上 、 お よ び 本 質
的 に 全 て の 発 生 段 階 ま で 試 験 さ れ る で あ ろ う 。 第 2に 、 線 虫 は 、 透 明 で あ り 、 し た が っ て
内部臓器および内部プロセスの視覚的または非視覚的に検査すること、およびが更には線
虫がまだ生きている間でさえも、蛍光リポータータンパク質などのマーカーを使用するこ
とができる。従って、このような検査は、プレートリーダーなどの適切な設備を使用する
自 動 化 さ れ た 様 式 で 行 っ て も よ い 。 最 後 に 、 線 虫 ( C. elegans) の 遺 伝 学 は 、 周 知 で あ り
、 ま た ゲ ノ ム は シ ー ケ ン ス さ れ て お り 、 し た が っ て DNAお よ び タ ン パ ク 質 マ イ ク ロ ア レ イ
などの多くの技術および遺伝的解析のためのツールに線虫は向いている。
10
【0178】
線 虫 ( C. elegans) 形 質 転 換 す る 、 扱 う 、 育 る て 、 維 持 す る 、 貯 蔵 す る ( た と え ば 、 冷
凍 試 料 と し て ) た め の 技 術 は 、 当 該 技 術 分 野 に お い て 十 分 に 確 立 さ れ て お り 、 た と え ば W.
B. Wood et al., "The nematode Caenorhabditis elegans", Cold Spring Harbor Labora
tory Press ( 1988) お よ び Riddle et al.," C. elegans II", Cold Spring Harbor Labo
ratory Press ( 1997) ; C. elegans: A Practical Approach by I.A. Hope, Oxford Un
iversity Press, England 1999に を 記 載 さ れ て お り 、 こ れ ら の そ れ ぞ れ が 、 参 照 に よ り そ
の全体が本明細書に援用される。
【0179】
モ デ ル 生 物 体 と し て 線 虫 ( C. elegans) を 使 用 す る イ ン ビ ボ ・ ア ッ セ イ 法 を 行 う こ と の
20
た め の 一 般 的 な 技 術 お よ び 方 法 論 は 、 Rand and Johnson, Chapter 8, Vol. 84 “ Caenorh
abditis elegans: Modern Biological Analysis of An Organism” , Ed. Epstein and S
hakes, Academic Press, 1995、 WO 98/51351、 W099/37770、 WO 00/34438、 WO/00/01846、
WO 00/63427、 WO 00/63425、 WO 00/63426、 WO 01/88532、 お よ び WO 01/94627な ど の 当 該
技術分野において記載されているが(これらのそれぞれが、参照によりその全体が本明細
書に援用される)、これらに限定されない。これらの出願に記載されているように、線虫
の 使 用 を 含 む ア ッ セ イ 法 の 主 な 利 点 の う ち の 1つ は 、 こ の よ う な ア ッ セ イ 法 が 複 数 ウ エ ル
プ レ ー ト の 形 式 ( そ れ ぞ れ の ウ ェ ル で 、 通 常 1∼ 100の 間 の 線 虫 試 料 を 含 む ) で 行 う こ と が
できることである。
【0180】
30
通常、下記に記載されているアッセイ法では、線虫を複数ウェルのプレートなどの適切
な容器または区画で、適切な培地(これは、固体、半固体、粘着性、または液体培地であ
ってもよい)で、通常複数ウエルプレートの形式でのアッセイ法に好ましい液体および粘
着性培地と共にインキュベートする。また、培地は、線虫の食物として役立つ細菌と共に
ま か れ る 。 ア ッ セ イ で は 、 線 虫 が 1つ ま た は 複 数 の 試 験 化 合 物 と 接 触 さ せ る 場 合 に 、 化 合
物を線虫が増殖している培地上、または内に添加することができ、または線虫を種々の時
間間隔の間、化合物を含む溶液中に浸漬することができる。適切な(すなわち、あるとし
ても、化合物が線虫に対してその効果を有するのに十分な)インキュベーション時間の後
、 次 い で 、 線 虫 は 、 目 視 検 査 に よ る か 、 ま た は 関 心 対 象 の 表 現 型 に 適 し た 1つ ま た は 複 数
の技術による検出または測定に供される。線虫は、培地中で動き回ることができるので、
40
線虫は、選択的に解析の前に殺してもよく、または麻痺していてもよく;このさらなる工
程は、シグナル検出のために均一に区画またはウェル内の線虫の分布を保つために使用し
てもよい。試験化合物と接触させていない対照と比較した表現型の変化は、線虫に対する
化合物の影響の指標である。操作の多くは、当該技術分野において既知の適切なロボット
工学および高スループット・アッセイ法技術を使用するなどにより、自動化することがで
きる。好ましくは、自動化されたアッセイ法において、蛍光または核酸ハイブリダイゼー
ションの測定などの非視覚的検査法を含む技術を使用することができる。
【0181】
本 発 明 の 多 く の ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ イ 法 に お い て 、 表 現 型 に 対 す る 遺 伝 子 変 異 、 RNA
干渉分子、または試験化合物の効果を決定するために、検出および測定の非視覚的方法が
50
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使 用 さ れ る 。 種 々 の 態 様 に お い て 、 こ れ ら の 方 法 は 、 1つ ま た は 複 数 の 指 標 遺 伝 子 ( た と
えば、特定の組織タイプ、発生の時期または挙動、その他と関係する遺伝子)の発現また
は変化と、関心対象の表現型の発現の関連生に基づく。
【0182】
一つの態様において、本発明の方法は、指標遺伝子の発現レベルをモニターし、表現型
の 出 現 、 並 び に 表 現 型 の 定 量 的 側 面 を 決 定 す る た め の 1つ ま た は 複 数 の 指 標 遺 伝 子 の 遺 伝
子発現プロフィールを使用する。例示的な指標遺伝子のリストは、本発明のアッセイ法に
使用される各々の表現型について、下記の本明細書に提供してある。
【0183】
もう一つの態様において、本発明の方法は、表現型の出現と平行したシグナル生成の指
10
標遺伝子の、プロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列の活性を利用する。検出可
能なシグナルは、単独で、またはアクセサリー分子の使用によって、リポーター分子によ
って産生される。本明細書に使用されるものとして、リポーターは、指標遺伝子の制御配
列と動作可能に結合されているリポーター遺伝子の遺伝子産物である。リポーターは、非
線虫タンパク質またはたとえば、部分的または完全な指標遺伝子産物と非線虫タンパク質
の融合タンパク質であることができる。「動作可能に結合される」または「動作可能に連
結される」とは、プロモーターおよびリポーター遺伝子配列が、線虫内での転写を可能に
す る よ う な 方 法 で 接 続 さ れ 、 配 置 さ れ て い る 関 連 を い う 。 リ ポ ー タ ー 分 子 の 例 は 、 第 5.4.
1.2節 の 一 覧 表 に 記 載 し て あ る 。
【0184】
20
1つ ま た は 複 数 の 指 標 遺 伝 子 の 発 現 は 、 そ れ ぞ れ の 指 標 遺 伝 子 の メ ッ セ ン ジ ャ ー RNAの レ
ベルまたは指標遺伝子産物のレベルを検出および/または測定することによって直接評価
することができる。リポーター遺伝子が、試験線虫内の指標遺伝子制御領域と動作可能に
結 合 さ れ て い る 場 合 、 該 領 域 の 転 写 お よ び / ま た は 翻 訳 の 活 性 は 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 mRNA
のレベル、リポーターのレベル、またはリポーターによって生じるシグナルを測定するこ
とによって決定することができる。
【0185】
あるいは、指標遺伝子の発現は、その他の代謝産物の産生または処理が、指標遺伝子産
物の発現および機能的な活性を反映する場合には、産生または処理を検出し、測定するこ
とによって間接的に決定することができる。このアプローチは、特に、指標遺伝子産物が
30
酵素である場合に適用できる。このような代謝産物は、指標遺伝子産物が関与する経路の
下流にある生化学的反応の産物であることができる。指標遺伝子または機能的なヌクレオ
チド配列の発現を検出するこのような代替法は、本発明の範囲内に入ることが企図される
。
【0186】
試験線虫における指標遺伝子の発現またはリポーター遺伝子は、核酸に基づいた検出技
術 に よ っ て 検 出 ま た は 測 定 す る こ と が で き る 。 試 験 線 虫 に 由 来 す る リ ボ 核 酸 ( RNA) を こ
のようなアッセイ技術のための開始点として使用することができ、当業者にとって周知で
あ る 標 準 的 な 核 酸 調 製 手 順 に 従 っ て 単 離 す る こ と が で き る 。 RNAは 、 ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ
ョンまたは増幅アッセイ法に使用することができる。十分な量の試験線虫を得ることがで
40
き る 場 合 、 指 標 遺 伝 子 ま た は リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 の メ ッ セ ン ジ ャ ー RNA発 現 の レ ベ ル を 決 定
するために標準的なノーザン分析を行うことができる。
【0187】
ノーザンブロット解析、ドット・ブロット、またはスロット・ブロットハイブリダイゼ
ー シ ョ ン な ど の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ア ッ セ イ は 、 た と え ば 試 験 線 虫 に 由 来 す る RNAを 1
つまたは複数のラベルされた核酸プローブと共に、これらのプローブが指標遺伝子ないの
これらの相補配列に対して特異的にアニーリングするのに好ましい条件下で接触させ、イ
ンキュベートすることを含むことができる。好ましくは、核酸プローブの長さは、少なく
と も 15ヌ ク レ オ チ ド で あ る 。 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン 後 、 全 て の 非 ア ニ ー ル 核 酸 を プ ロ ー ブ :
指標転写物ハイブリッドから除去する。次いで、このような任意の分子が存在する場合に
50
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は、ハイブリダイズされた核酸の存在が検出される。種々の指標遺伝子に適した核酸プロ
ーブは、公共のおよび商業的な供与源から、または周知の化学法によって合成すること、
または増幅およびプラスミドベクターへのサブクローニングによって得ることができる。
指 標 遺 伝 子 の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 は 、 Harris et al., 2004, Nucleic Acids Research, 32,
Database issue D411-D417に 記 載 さ れ て い る よ う に 、 Wormbaseな ど の デ ー タ ベ ー ス か ら
得ることができる。
【0188】
このような検出スキームを使用して、指標遺伝子またはリポーター遺伝子の核酸は、た
とえばマイクロタイタープレート、ガラススライド、シリコンウエハ、またはポリスチレ
ンビーズに対してなど、膜、ガラス面、シリコン基板、またはプラスチック表面などの固
10
体担体に固定することができる。この場合、インキュベーション後に、非アニールされて
いない、ラベルされた核酸プローブは、固体担体を洗浄することによって除去することが
できる。残留する、アニールされた、ラベルされた指標核酸試薬の検出または測定は、使
用するラベルに応じて、オートラジオグラフィー、リンイメージング、蛍光測定、光散乱
、その他などの当該技術分野において周知の標準的な技術を使用して達成される。いずれ
のの適切な同位体および非同位体ラベルを使用することができる。核酸プローブがアニー
ル さ れ る 指 標 遺 伝 子 転 写 物 の 量 を 、 変 異 さ れ ず 、 ま た は RNAi分 子 ま た は 試 験 化 合 物 に 曝 露
されなかった対照線虫から得られた量と比較することができる。
【0189】
ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 解 析 の 変 形 例 は 、 転 写 物 の 複 合 混 合 物 を 含 む 試 験 線 虫 か ら 得 ら れ る RN
20
Aま た は こ の よ う な RNAか ら 調 製 さ れ る cDNAを 本 発 明 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ア ッ セ イ 法
のプローブとして使用することができる。標準的な技術によって同位体的に、または非同
位 体 的 に ラ ベ ル さ れ た RNAま た は cDNAプ ロ ー ブ を 表 現 型 と 関 連 す る 指 標 遺 伝 子 の 選 択 さ れ
たパネルと接触し、インキュベートすることができる。これらの遺伝子の配列またはこれ
らのサブシーケンスを含む核酸は、アレイの形態で固体担体上へ固定して、標識プローブ
に対して提示することができる。パネルの遺伝子内のこれらのそれぞれの相補配列に対す
るラベルされたプローブの特異的なアニーリングに好ましいインキュベーション条件が使
用される。パネルに含まれる指標遺伝子の転写物が試験線虫に存在する場合、ラベルされ
た転写物部分が指標遺伝子の固定された核酸にハイブリダイズされる。インキュベーショ
ン後、全てのアニールされていないプローブを除去し、次いで、パネルの遺伝子にハイブ
30
リダイズされたラベルされたプローブの存在および量を検出する。各々の遺伝子に対する
、残留する、アニールされた、ラベルされた核酸プローブの検出または測定は、オートラ
ジ オ グ ラ フ ィ ー 、 リ ン イ メ ー ジ ン グ ( phosphorimaging) 、 蛍 光 測 定 、 光 散 乱 、 そ の 他 な
ど の 当 該 技 術 分 野 に お い て 周 知 の 標 準 的 な 技 術 を 使 用 し て 達 成 さ れ る 。 た と え ば 、 Lockha
rt et al., 1996, Nature Biotechnol 14:1675-1680;お よ び Ferguson et al., 1996, Nat
ure Biotechnol, 14:1681-1684を 参 照 さ れ た い 。
【0190】
ハイブリダイゼーション結果の平行した高スループット解析を容易にするために、指標
遺伝子の核酸を空間的に識別可能な形式で固体担体上に高密度で固定して、アレイを形成
す る こ と が で き る 。 た と え ば 、 Reinke, 2002, Nat Genet 32 Suppl:541-6お よ び Hill et
40
al., 2000, Science 290:809-12( そ れ ぞ れ が 、 参 照 に よ り そ の 全 体 が 本 明 細 書 に 援 用 さ
れる)に記載されているアプローチを参照されたい。核酸のアレイまたはマイクロアレイ
を 作 製 す る た め の い ず れ の 方 法 を 使 用 す る こ と も で き る 。 た と え ば 、 DNAを 多 孔 性 膜 ま た
は ガ ラ ス な ど の 固 体 担 体 上 へ 直 接 ス ポ ッ ト し て も よ く ( Zhao et al., 1995, Gene 156:20
7-213; Shalon et al., 1996, Genome Research 6:639-645) 、 ま た は イ ン ク ジ ェ ッ ト 式
技 術 に よ っ て 表 面 へ 移 し て も よ い ( Blanchard et al., 1996, Biosens. Bioelectron. 11
:687-690) 。 あ る い は 、 フ ォ ト リ ソ グ ラ フ ィ ー お よ び オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド 化 学 の 組 み 合 わ
せを使用して、指標遺伝子のサブシーケンスを含むオリゴヌクレオチドを誘導体化された
ガ ラ ス ま た は シ リ コ ン 上 に 直 接 合 成 す る こ と が で き る ( Fodor et al., 1991, Science 25
1:767-773; Fodor et al., 1993, Science 364:555-556) 。 こ の 平 行 し た 、 高 ス ル ー プ ッ
50
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ト ・ ア プ ロ ー チ に 有 用 な DNAア レ イ は 、 商 業 的 に 利 用 で き る ( た と え ば 、 Affymetrix, Inc
. Santa Clara, CAか ら ) 。
【0191】
こ の ア プ ロ ー チ の 利 点 の う ち の 1つ は 、 試 験 線 虫 の 試 料 の 多 く の 指 標 遺 伝 子 の 発 現 が 1つ
の単純なハイブリダイゼーションアッセイ法で評価することができることである。従って
、本発明の方法は、同時に多数の指標遺伝子の発現に基づいて表現型の徴候を評価するた
めに使用することができる。
【0192】
指標またはリポーター遺伝子特異的な転写物の検出のための他の検査法、たとえばポリ
メ ラ ー ゼ 連 鎖 反 応 法 に よ っ て こ れ ら を 増 幅 す る こ と ( PCR; U.S. Patent NOs. 4,683,202
10
号)、続いて当業者にとって周知の技術を使用して増幅された分子を検出することを含む
こ と が で き る 。 生 じ る 増 幅 さ れ た 配 列 を 、 試 験 化 合 物 に 、 も し く は RNAi分 子 に 曝 露 さ れ て
いないか、または変異されていない試験線虫から得られるものと比較することができる。
ま た 、 定 量 的 PCR技 術 を 使 用 し て 指 標 / リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 転 写 物 の 絶 対 量 ま た は 標 準 と 関
連 し た 転 写 物 の 濃 度 を 決 定 す る こ と が で き る ( Wang et al., 1989, PNAS 86:9717-9721;
Gilliland et al., 1990, PNAS 87:2725-2729) 。 同 時 に 1つ の 試 料 か ら 、 1つ 以 上 の 指 標
遺 伝 子 転 写 物 、 ま た は を 指 標 遺 伝 子 転 写 物 の 1つ 以 上 部 分 を 増 幅 す る こ と が で き る 多 重 PCR
を行うことができる。
【0193】
こ の よ う な 検 出 ス キ ー ム の 一 つ の 態 様 に お い て 、 cDNAは 、 指 標 / リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 の RN
20
Aか ら ( た と え ば 、 RNA分 子 の cDNAへ の 逆 転 写 に よ っ て ) 合 成 さ れ る 。 次 い で 、 cDNA内 の 配
列 を PCR増 幅 反 応 、 等 の 核 酸 増 幅 反 応 の た め の テ ン プ レ ー ト と し て 使 用 す る 。 PCRプ ラ イ マ
ー の 好 ま し い 長 さ は 、 少 な く と も 9∼ 30ヌ ク レ オ チ ド で あ る 。 増 幅 産 物 の 検 出 の た め に 、
放射性または非放射性のラベルされたヌクレオチドを使用して核酸増幅を行うことができ
る。あるいは、十分に増幅された産物を、標準的な臭化エチジウム染色によって、または
他の何らかの適切な核酸染色法によって視覚化することができるように、利用することが
できる。
【0194】
増幅およびハイブリダイゼーションを含む技術は、全ての指標遺伝子転写物が完全には
特 徴 づ け ら れ る と い う わ け で は な い と き に 、 特 に 有 用 で あ る 。 た と え ば 、 PCRに よ る デ ィ
30
フ ァ レ ン シ ャ ル デ ィ ス プ レ イ ( Liang et al., 1992, Science 257:967-971; Pardee et a
l., U.S. Patent NOs. 5,262,311号 ) 、 お よ び 遺 伝 子 転 写 物 の 連 続 解 析 ( SAGE; Velcules
cu et al., 1995, Science 270:484-487) な ど の 技 術 を 使 用 し て も よ い が 、 こ れ ら に 限 定
されない。
【0195】
当業者であれば、ルーチン試験を使用することによって上記の技術の効果のある、最適
な条件を決定することができるであろう。
【0196】
また、本発明は、指標遺伝子産物、リポーター分子、融合タンパク質、または代謝産物
の物理的な、免疫学的な、または機能的な性質に基づくタンパク質に基づいたスクリーニ
40
ングアッセイ法を提供する。指標遺伝子産物、リポーター分子、または代謝産物は、たと
えば、イオン交換、親和性結合、サイズ除外、および疎水的相互作用に基づいたクロマト
グラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを含む標準的な方法によって単離し、精製
することができる。また、遠心分離、差次的な溶解度、および一次元および二次元のゲル
電気泳動などのその他の標準的な技術を使用することもできる。本明細書において使用さ
れ る タ ン パ ク 質 単 離 法 は 、 た と え ば Harlow and Lane ( Harlow and Lane, 1988, “ Antib
odies: A Laboratory Manual” , Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring
Harbor, New York) に 記 載 さ れ て い る も の な ど で あ っ て も よ い ( こ れ は 、 参 照 に よ り そ の
全体が本明細書に援用される)。
【0197】
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抗体または抗体断片を使用して、リポタンパク質および酸化型のリポタンパク質を含む
、指標遺伝子産物、リポーター分子、融合タンパク質、または代謝産物の存在を免疫特異
的な結合によって定量的に、または定性的に検出することができる。
【0198】
これは、たとえば蛍光ラベルされた抗体を、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、また
は蛍光定量的な検出と組み合わせて使用する免疫蛍光法によって達成することができる。
【0199】
種々の態様において、親油性の染料および染色を使用して、試験線虫によって産生され
る脂質、リポタンパク質、および代謝産物を定量的にまたは定性的に検出することができ
る。染料および染色により、培地中の、線虫の組織、卵、幼虫、および検出され、および
10
/または測定されるその他の生命段階の、脂質およびリポタンパク質の濃度および分布を
変化させることができる。このような染料および染色によって生じるシグナルは、比色お
よび好ましくは蛍光であり、顕微鏡観察によって観察することができる、または蛍光マイ
クロプレートリーダーなどの種々の手段によって測定することができる。種々の態様にお
い て 、 ア ッ セ イ 反 応 お よ び / ま た は 線 虫 を ラ ベ ル す る た め に 1つ ま た は 複 数 の 親 油 性 の 化
合物が使用され、特定のパターンまたはプロフィールのラベリングが検出される。好まし
くは、蛍光親油性の染料を使用するときは、特定の励起条件下での波長発光の特定の比率
などの特異的な蛍光プロフィールまたはサインを使用することができる。たとえば、デヒ
ドロエルゴステロールおよびコレステロール結合ポリエン抗生物質フィリピンなどの蛍光
コレステロール類似体を生細胞におけるコレステロール分布および輸送を研究するために
20
使 用 さ れ て き た ( Mukherjee et al., 1998, Biophysical J., 75:1915-1925) 。 ま た 、 ヨ
ウ 化 3,3'-ジ オ ク タ デ シ ル イ ン ド カ ル ボ シ ア ニ ン ( dil[3]) を 低 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDL
) と 混 合 し て 高 度 に 蛍 光 性 の LDL誘 導 体 dil[3]-LDLを 形 成 さ せ る な ど 、 染 料 を リ ポ タ ン パ
ク 質 に 組 み 入 れ て 、 ト レ ー サ ー と し て 使 用 す る こ と が で き る ( Barak and Webb, 1981, J
Cell Biol 903:595-604) 。 コ レ ス テ リ ル エ ス テ ル は 、 コ レ ス テ ロ ー ル の 3-ヒ ド ロ キ シ ル
群に対してエステル化された脂肪酸からなる。これらの無極性の種は、アテローム硬化型
の プ ラ ー ク お よ び 低 密 度 お よ び 高 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ( LDLお よ び HDL) コ ア の 主 な 脂 質 成
分 で あ る 。 蛍 光 色 素 の 商 業 的 な 供 給 元 は 、 Molecular Probes社 な ど の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 脂
肪 酸 の − BODIPY FL C12( C-3927) 、 BODIPY 542/563 C11( C-12680) 、 BODIPY 576/589 C
11( C-12681) 、 お よ び ジ フ ェ ニ ル ヘ キ サ ト リ エ ニ ル プ ロ ピ オ ン 酸 の コ レ ス テ リ ル エ ス テ
30
ルを提供し、アッセイ反応において、および/または線虫において、脂質およびリポタン
パク質のレベルの測定、並びに追跡に使用するために採用することができる。
【0200】
フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー お よ び 蛍 光 標 示 式 細 胞 分 取 ( FACS) は 、 こ れ ら の 蛍 光 性 質 お よ び
寸 法 に 基 づ い て 粒 子 を ア ッ セ イ し 、 分 離 す る た め の 周 知 の 方 法 で あ る ( Kamarch, 1987, M
ethods Enzymol, 151:150-165) 。 こ れ ら の 技 術 に 基 づ い た 高 ス ル ー プ ッ ト な 系 は 、 生 き
て い る / 死 ん だ 線 虫 、 線 虫 卵 、 永 続 幼 虫 ( dauer larvae) 、 お よ び 線 虫 の 異 な る 生 命 段 階
を 解 析 し 、 ソ ー ト す る た め に 利 用 で き る 利 用 で き る ( た と え ば Union Biometrica, Somerv
ille, Massachusetts, USに よ る COPAS BIOSORT) 。 本 技 術 で は 、 ソ ー ト す る パ ラ メ ー タ ー
として、長さの指標である飛行時間および/またはサイズおよび内部構造体の指標である
40
吸光を使用してもよい。さらに、線虫試験の混合種個体群を、異なる波長で放射する複数
の蛍光ラベルでラベルすることによってソートすることができる。この技術により、細菌
、糞便、およびその他の未使用の代謝産物を含むであろう増殖培地から試験線虫を分離す
ることができる。ソートされた線虫は、さらなる解析のために複数ウエルプレートの個々
の ウ ェ ル に 直 接 沈 殿 さ せ る こ と が で き る 。 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー お よ び FACSは 、 特 に 排 便
速度、産卵速度などを決定することが必要であるアッセイ法に有用であろう。
【0201】
5.4.1.1 指 標 遺 伝 子 本発明は、間接的に線虫の発生段階または挙動をモニターするための指標遺伝子を提供
する。指標遺伝子の使用によって、発生段階または挙動の実行を決定するために線虫の直
50
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接の目視検査は、高スループット技術に受け入れられる方を選択して迂回することができ
る。本発明のアッセイ法でモニターされる線虫表現型の側面は、指標遺伝子の発現に変換
することができる。
【0202】
本明細書に使用されるものとして、「指標遺伝子」の用語は、異なる状況下での発生の
間の、または特定の挙動の間の、異なる時期に、線虫の発現のレベル、位置、またはタイ
ミングを変化する線虫遺伝子をいう。タイミングおよび位置、並びに遺伝子産物の発現の
相対的な発現レベルは、線虫に関する種々の情報(たとえば、特定の組織タイプが発達す
るかどうか、特定の発生段階が達成されたかどうか、特定の挙動が行われているかどうか
など)を示すものと解釈することができる。指標遺伝子は、標的遺伝子およびアッセイ法
10
の一部として試験線虫において操作または変異された遺伝子を除外する。好ましくはない
が 、 指 標 遺 伝 子 は 、 も っ ぱ ら 1つ の 組 織 タ イ プ 、 発 生 の 時 期 、 ま た は 挙 動 の 側 面 の み と 関
連している必要はない。たとえば、指標遺伝子の発現は、時間とともに蓄積してもよいが
、発生の特定の時期に非常に濃縮される。本発明は、一定の態様において、それぞれの個
々の指標遺伝子の発現が特異的でない場合であっても、多くの指標遺伝子の発現のパター
ンまたはプロフィールを線虫に関する情報の特異的な断片を決定するために使用すること
ができる。
【0203】
一つの態様において、本発明のアッセイ法は、生殖系列発達の速度に基づく。特定の態
様 に お い て 、 生 殖 系 列 発 達 は 、 配 偶 子 に 特 異 的 に 発 現 さ れ る 1つ ま た は 複 数 の 指 標 遺 伝 子
20
の発現をモニターすることによってモニターされる。
【0204】
もう一つの態様において、本発明のアッセイ法は、後胚発生の速度に基づく。特定の態
様において、後胚発生の特定の段階と関係する指標遺伝子が発現されるときにモニタリン
グすることによって、後胚発生がモニターされる。もう一つの特定の態様において、後胚
発生は、互いに比較して種々の組織の相対的な寸法をモニターすることによってモニター
される。たとえば、後胚発生の間に、生殖系列および体細胞の生殖腺の相対的な寸法が増
大するが、残りの体に関する咽頭のサイズは減少する。相対的な寸法が発生の間に変化す
る 2つ 以 上 の 組 織 タ イ プ を ( た と え ば 、 そ れ ぞ れ の 組 織 タ イ プ に 排 他 的 ま た は 主 に 発 現 さ
れる指標遺伝子をモニターすることによって)モニターすることによって、発生の速度を
30
追跡することができる。
【0205】
もう一つの態様において、本発明のアッセイ法は、胚発生の速度に基づく。特定の態様
において、胚発生の特定の段階と関係する指標遺伝子が発現されるときの胚発生をモニタ
リ ン グ す る こ と に よ っ て モ ニ タ ー さ れ る 。 体 細 胞 の 指 標 遺 伝 子 の 例 は 、 myo3( 体 壁 筋 ) 、
elt-2( 腸 ) 、 myo2( 咽 頭 ) 、 dpy-7( 皮 下 組 織 ) を 含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。 組 織
および細胞特異的な指標遺伝子の例は、公的にアクセスできるデータベースに記載されて
い る ( た と え ば Wormbase, http://www.wormbase.org/; NEXTDB, http://nematode.lab.ni
g.ac.jp/;ホ ー プ 研 究 室 発 現 パ タ ー ン ・ デ ー タ ベ ー ス ( The Hope Laboratory Expression
Pattern Database) , http://129.11.204.86:591/default.htm) 。
40
【0206】
5.4.1.2 レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 本発明は、関心対象の分子(たとえば、核酸またはポリペプチド)の発現をモニターす
るためのリポーター遺伝子を提供する。一つの態様において、関心対象の分子は、指標遺
伝 子 ( 上 記 の 通 り ) で あ る 。 も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 関 心 対 象 の 分 子 は 、 MOLLsで あ る
。特定の態様において、本発明の薬剤の同定を補助するために、試験化合物の効果を確認
す る た め に MOLL核 酸 お よ び ポ リ ペ プ チ ド の 発 現 を モ ニ タ ー す る こ と が で き る 。
【0207】
一般に、関心対象の分子が示すリポーター遺伝子産物の量または局在の変化は、たとえ
ば発生を通じた進行または候補化合物とのインキュベーションによる変化を表す。一つの
50
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態 様 に お い て 、 関 心 対 象 の 分 子 の プ ロ モ ー タ ー ま た は エ ン ハ ン サ ー の 制 御 下 に 1つ ま た は
複数のリポーター遺伝子を発現するトランスジェニック動物が作製される。このような動
物は、本発明のスクリーニングアッセイ法に使用されてもよい。
【0208】
リポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、β‐ガラクトシダーゼ、
クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼを含
むが、これらに限定されない。このような方法は、当業者に周知である。好ましい態様に
おいて、リポーター遺伝子は、容易にアッセイされ、宿主細胞において通常見いだされな
い活性を有する。
【0209】
10
一つの態様において、ルシフェラーゼは、リポーター遺伝子である。ルシフェラーゼは
、酸素および基質(ルシフェリン)の存在下において光を放射し、リアルタイムの、細胞
培養、個々の細胞、生物体全部、およびトランスジェニック生物における遺伝子発現の低
照 度 イ メ ー ジ ン グ の た め に 使 用 さ れ る 酵 素 で あ る ( Greer & Szalay, 2002, Luminescence
17:43-74に よ っ て 概 説 ) 。
【0210】
本明細書に使用されるものとして、「ルシフェラーゼ」の用語は、全てのルシフェラー
ゼまたはルシフェラーゼ活性を有するルシフェラーゼに由来する組換え酵素を包含するこ
と が 企 図 さ れ る 。 ホ タ ル 由 来 の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 遺 伝 子 は 、 た と え ば 、 Photinusお よ び Luci
ola種 か ら よ く 特 徴 づ け ら れ て い る ( Photinus pyraliに つ い て は 、 sInternational Paten
20
t Publication No. WO 95/25798、 Luciola cruciata and Luciola lateralisに つ い て は
、 European Patent Application No. EP 0 524 448、 お よ び Luciola mingrelicaに つ い て
は 、 Devine et al., 1993, Biochim. Biophys. Acta 1173:121-132を 参 照 さ れ た い ) 。 そ
の 他 の 真 核 生 物 の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 遺 伝 子 は 、 シ ー ・ パ ン ジ ー ( sea panzy) ( Renilla ren
iformis、 た と え ば 、 Lorenz et al., 1991, PNAS 88:4438-4442を 参 照 さ れ た い ) お よ び
ツ チ ボ タ ル ( glow worm) ( Lampyris noctiluca、 た と え ば 、 Sula-Newby et al., 1996,
Biochem J. 313:761-767を 参 照 さ れ た い ) を 含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。 細 菌 ル シ フ
ェ リ ン ・ ル シ フ ェ ラ ー ゼ 系 は 、 陸 生 の フ ォ ロ ラ ブ ダ ス ・ ル ミ ネ セ ン ス の 細 菌 lux遺 伝 子 ( P
hotorhabdus luminescens) ( た と え ば Manukhov et al., 2000, Genetika 36:322-30を 参
照 さ れ た い ) 並 び に 海 洋 細 菌 ビ ブ リ オ ・ フ ィ シ ェ リ ( Vibrio fischeri) の 遺 伝 子 お よ び
30
ビ ブ リ オ ・ ハ ー ベ イ ( Vibrio harveyi) ( そ れ ぞ れ 、 Miyamoto et al., 1988, J. Biol.
Chem. 263:13393-9,お よ び Cohn et al., 1983, PNAS 80:120-3を 参 照 さ れ た い ) を 含 む
が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。 本 発 明 に よ っ て 本 願 さ れ る ル シ フ ェ ラ ー ゼ は 、 U.S. Patent
NOs. 6,265,177に 記 載 さ れ て い る 変 異 体 ル シ フ ェ ラ ー ゼ も 含 む 。
【0211】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 緑 色 蛍 光 タ ン パ ク 質 ( 「 GFP」 ) は 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 で あ
る 。 GFPは 、 発 色 団 の 形 成 に 関 与 す る 65∼ 67ア ミ ノ 酸 を 有 す る 238ア ミ ノ 酸 の タ ン パ ク 質 で
あ り 、 蛍 光 を 発 す る た め に さ ら な る 基 質 ま た は 補 因 子 を 必 要 と し な い ( た と え ば 、 Prashe
r et al., 1992, Gene 111:229-233; Yang et al., 1996, Nature Biotechnol. 14:12521256; and Cody et al., 1993, Biochemistry 32:1212-1218を 参 照 さ れ た い ) 。
40
【0212】
本 明 細 書 に 使 用 さ れ る も の と し て 、 「 緑 色 蛍 光 タ ン パ ク 質 」 ま た は 「 GFP」 の 用 語 は
全 て の GFP( 緑 以 外 の 色 を 示 す GFPの 種 々 の 形 態 を 含 む ) ま た は GFP活 性 を 有 す る GFPに 由 来
す る 組 換 え 酵 素 を 包 含 す る こ と が 企 図 さ れ る 。 GFPの 天 然 の 遺 伝 子 は 、 生 物 発 光 ク ラ ゲ の
エ ク オ リ ア ・ ビ ク ト リ ア ( Aequorea victoria) か ら ク ロ ー ン 化 さ れ た ( た と え ば Morin e
t al., 1972, J. Cell Physiol. 77:313-318を 参 照 さ れ た い ) 。 野 生 型 GFPは 、 395nmに 主
な 励 起 ピ ー ク を 、 お よ び 470nmに 微 量 の 励 起 ピ ー ク で 有 す る 。 470nmで 吸 収 ピ ー ク に よ り 、
標 準 的 な フ ル オ レ ッ セ イ ン イ ソ チ オ シ ア ネ ー ト ( FITC) フ ィ ル タ ー セ ッ ト を 使 用 し て 、 GF
Pレ ベ ル を モ ニ タ リ ン グ す る こ と が で き る 。 GFP遺 伝 子 の 変 異 体 は 、 発 現 を 増 強 し 、 励 起 お
よ び 蛍 光 を 修 飾 す る た め に 有 用 で あ る こ と が 見 い だ さ れ た 。 た と え ば 、 位 置 65の セ リ ン を
50
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ア ラ ニ ン 、 グ リ シ ン 、 イ ソ ロ イ シ ン ま た は ス レ オ ニ ン で 置 換 さ れ た 変 異 体 GFPは 、 488nmで
励起したときに、励起極大がシフトし、野生型タンパク質よりも強い蛍光を有する変異体
GFPを 生 じ る ( た と え ば 、 Heim et al., 1995, Nature 373:663-664; U.S. Patent No. 5
,625,048; Delagrave et al., 1995, Biotechnology 13:151-154; Cormack et al., 1996
, Gene 173:33-38; and Cramer et al., 1996, Nature Biotechnol. 14:315-319を 参 照 さ
れ た い ) 。 488nmで GFPを 励 起 す る 能 力 に よ り 、 標 準 的 な 蛍 光 標 示 式 細 胞 分 取 ( 「 FACS」 )
設 備 で の GFPの 使 用 が 可 能 に な る 。 も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 GFPは 、 シ ー ・ パ ン ジ ー ( se
a panzy) ( Renilla reniformis) な ど の ク ラ ゲ 以 外 の 生 物 体 か ら 単 離 さ れ る が 、 こ れ に
限定されない。
【0213】
10
一 般 に GFPで 細 胞 を ラ ベ リ ン グ す る た め の 技 術 は 、 U.S. Patent Nos. 5,491,084 お よ び
5,804,387; Chalfie et al., 1994, Science 263:802-805; Heim et al., 1994, PNAS 91
:12501-12504; Morise et al., 1974, Biochemistry 13:2656-2662; Ward et al., 1980,
Photochem. Photobiol. 31:611-615; Rizzuto et al., 1995, Curr. Biology 5:635-642
;並 び に Kaether & Gerdes, 1995, FEBS Lett. 369:267-271に 記 載 さ れ て い る 。 大 腸 菌 お
よ び 線 虫 に お け る GFPの 発 現 は 、 U.S. Patent NOs. 6,251,384に 記 載 さ れ て い る 。 植 物 細
胞 に お け る GFPの 発 現 は 、 Hu & Cheng, 1995, FEBS Lett. 369:331-33に 論 議 さ れ て お り 、
シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エ に お け る GFP発 現 は 、 Davis et al., 1995, Dev. Biology 170:726-729
に記載されている。
【0214】
20
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 、 β ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ ( 「 β -gal」 ) が 使
用 さ れ る 。 β -galは 、 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ ( た と え ば 、 ラ ク ト ー ス ) 並 び に ガ ラ ク ト シ
ド 類 似 体 ( た と え ば 、 o-ニ ト ロ フ ェ ニ ル -β -D-ガ ラ ク ト ピ ラ ノ シ ド ( 「 ONPG」 ) お よ び ク
ロ ロ フ ェ ノ ー ル レ ッ ド -β -D-ガ ラ ク ト ピ ラ ノ シ ド ( 「 CPRG」 ) ) の 加 水 分 解 を 触 媒 す る 酵
素 で あ る ( た と え ば Nielsen et al., 1983 PNAS 80:5198-5202; Eustice et al., 1991,
Biotechniques 11:739-742;よ び Henderson et al., 1986, Clin. Chem. 32:1637-1641を
参照されたい)。
【0215】
本 明 細 書 に 使 用 さ れ る も の と し て 、 「 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 」 ま た は 「 β -gal」 の 用 語
は 、 lacZ遺 伝 子 産 物 ま た は β -galな 活 性 を 有 す る β -galsに 由 来 す る 組 換 え 酵 素 を 含 む 、
30
全 て の β -galを 包 含 す る こ と が 企 図 さ れ る 。 β -gal遺 伝 子 は 、 タ ン パ ク 質 産 物 が 極 め て 安
定で、細胞可溶化液中でのタンパク分解性の分解に抵抗性であり、容易にアッセイされる
た め に 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 と し て 満 足 に 機 能 す る 。 ONPGが 基 質 で あ る 態 様 に お い て 、 β -g
al活 性 を 分 光 光 度 計 ま た は マ イ ク ロ プ レ ー ト リ ー ダ ー で 定 量 化 し て 、 420nmで の 変 換 ONPG
の 量 を 決 定 す る こ と が で き る 。 CPRGが 基 質 で あ る 態 様 に お い て 、 β -gal活 性 を 活 性 を 分 光
光 度 計 ま た は マ イ ク ロ プ レ ー ト リ ー ダ ー で 定 量 化 し て 、 570∼ 595nmで 変 換 さ れ る CPRGの 量
を 決 定 す る こ と が で き る 。 さ ら に も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 β -gal活 性 は 、 Xgalお よ び IP
TGを 含 む プ レ ー ト 上 へ β -gal構 築 物 で 形 質 転 換 さ れ た 細 菌 細 胞 を ま く こ と に よ っ て 視 覚 的
に 確 認 す る こ と が で き る 。 濃 青 色 で あ る 細 菌 コ ロ ニ ー は 、 高 い β -galな 活 性 の 存 在 を 示 し
、 ば ら つ い た 青 い 陰 の コ ロ ニ ー は 、 様 々 な レ ベ ル の β -galな 活 性 を 示 す 。
40
【0216】
一つの態様において、リポーター遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェ
ラ ー ゼ ( 「 CAT」 ) が 使 用 さ れ る 。 哺 乳 動 物 細 胞 は 、 検 出 可 能 な レ ベ ル の CAT活 性 を 有 さ な
い の で 、 CATは 、 哺 乳 類 細 胞 シ ス テ ム の リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 と し て 共 通 し て 使 用 さ れ る 。 CAT
のアッセイ法は、放射性ラベルしたクロラムフェニコールおよび適切な補因子と共に細胞
抽 出 物 を イ ン キ ュ ベ ー ト す る こ と 、 た と え ば 薄 層 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( 「 TLC」 ) に よ っ
て開始材料を生成物から分離すること、続いてシンチレーション計数することを含む(た
と え ば 、 U.S. Patent NOs. 5,726,041を 参 照 さ れ た い ) 。
【0217】
本明細書に使用されるものとして、「クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラ
50
(50)
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ー ゼ 」 ま た は 「 CAT」 の 用 語 は 、 全 て の CATま た は CAT活 性 を 有 す る CATに 由 来 す る 組 換 え 酵
素を包含することが企図される。細胞プロセシング、放射性同位元素、およびクロマトグ
ラフ分離を必要としないリポーター系は、高スループット・スクリーニングにより受け入
れ ら れ る で あ ろ う こ と が 好 ま し い が 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 と し て の CATは 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝
子 の 安 定 性 が 重 要 な 状 況 に お い て 好 ま し い で あ ろ う 。 た と え ば 、 CATリ ポ ー タ ー タ ン パ ク
質 は 、 約 50時 間 の イ ン ビ ボ で の 半 減 期 を 有 し 、 結 果 の 累 積 的 な 変 化 、 対 、 動 的 な 変 化 タ イ
プが要求されるときに有利である。
【0218】
もう一つの態様において、リポーター遺伝子として分泌型アルカリホスファターゼ(「
SEAP」 ) が 使 用 さ れ る 。 SEAP酵 素 は 、 ア ル カ リ ホ ス フ ァ タ ー ゼ の 切 断 型 で あ り 、 タ ン パ ク
10
質の膜貫通領域の切断により、周囲の培地に細胞から分泌することができる。好ましい態
様において、アルカリホスファターゼは、ヒト胎盤から単離される。
【0219】
本 明 細 書 に 使 用 さ れ る も の と し て 、 「 分 泌 型 ア ル カ リ ホ ス フ ァ タ ー ゼ 」 ま た は 「 SEAP」
の 用 語 は 、 全 て の SEAPま た は ア ル カ リ ホ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 を 有 す る SEAPに 由 来 す る 組 換 え
酵 素 を 包 含 す る こ と が 企 図 さ れ る 。 SEAP活 性 は 、 蛍 光 基 質 の 触 媒 作 用 の 測 定 、 免 疫 沈 降 、
HPLC、 お よ び 放 射 測 定 の 検 出 を 含 む ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い ) 種 々 の 方 法 に よ っ
て検出することができる。発光の方法は、熱量測定検査法以上にその増大された感受性の
た め に 好 ま し い 。 SEAPを 使 用 す る こ と の 利 点 は 、 SEAPタ ン パ ク 質 が 細 胞 か ら 分 泌 さ る の で
、細胞溶解工程が必要とされず、標本抽出およびアッセイ法の自動化が容易になることで
20
あ る 。 C型 肝 炎 ウ イ ル ス ・ プ ロ テ ア ー ゼ の 阻 害 剤 の 、 細 胞 に 基 づ い た 評 価 に 使 用 す る た め
の SEAPを 使 用 す る 、 細 胞 に 基 づ い た ア ッ セ イ 法 は 、 U.S. Patent NOs. 6,280,940号 に 記 載
されている。
【0220】
5.4.2 線 虫 に 基 づ い た ア ッ セ イ 法 5.4.2.1 排 便 速 度 に 基 づ い た ア ッ セ イ 法 本発明は、試験表現型として排便サイクルの長さを使用するアッセイ法を特徴とする。
線 虫 に お い て 、 排 便 は 、 常 同 的 な 排 便 運 動 プ ロ グ ラ ム ( Defecation Motor Program: DMP
) に よ っ て 遂 行 さ れ る 。 DMPは 、 3つ の 異 な っ た 工 程 か ら な る : 後 方 の 体 筋 収 縮 ( pBoc) 、
前 体 筋 収 縮 ( aBoc) 、 お よ び 腸 内 の 筋 収 縮 ( EMC) か ら な る 放 出 ( Exp) ( Thomas et al.,
30
1990, Genetics 124: 855-872.) 。 排 便 サ イ ク ル 長 は 、 2つ の 連 続 し た 排 便 の pBoc工 程 の
間の期間として定義される。野生型動物では(十分な食品の存在において)、排便サイク
ル 長 は 、 ∼ 56秒 で あ り 、 ± 3.4秒 ( 20℃ で ) の 標 準 偏 差 で あ る 。 排 便 サ イ ク ル ( た と え ば
、 clk-1突 然 変 異 ) の 長 さ お よ び / ま た は 周 期 現 象 に 影 響 を 及 ぼ す 突 然 変 異 は 、 こ の ア ッ
セイ法に使用することができる。
【0221】
一 つ の 態 様 に お い て 、 変 異 体 clk-1は 、 ア ッ セ イ 法 に 使 用 さ れ る 。 前 述 し た よ う に ( Fel
kai et al., 1999、 EMBO J 18: 1783∼ 1792、 お よ び Wong et al.( 1995) Genetics 139:
1247-1259) 、 clk-1変 異 体 で は 、 排 便 サ イ ク ル は 、 長 さ が 増 大 さ れ 、 よ り 不 規 則 で あ り :
clk-1( qm30) 動 物 で は 、 サ イ ク ル の 長 さ が 88秒 で あ り 、 ± 14秒 の 標 準 偏 差 を 有 し 、 お よ
40
び よ り 弱 い 対 立 遺 伝 子 clk-1( e2519) で は 、 77秒 で あ り 、 ± 7秒 の 標 準 偏 差 を 有 す る ( 20
℃で)。
【0222】
20℃ で の 排 便 サ イ ク ル 長 に 加 え て 、 新 た な 温 度 へ 移 さ れ た 後 に 変 異 体 線 虫 が こ れ ら の 排
便 サ イ ク ル の 長 さ を 再 調 整 す る 能 力 も 影 響 を 受 け る 。 野 生 型 虫 と は 対 照 的 に 、 clk-1変 異
体は、新たな温度へ移された後にこれらの排便サイクルの長さを再調整することができな
い 。 clk-1変 異 体 が 20℃ か ら 25℃ に 、 ま た は 20℃ か ら 15℃ に 移 さ れ た と き に 、 平 均 サ イ ク
ル長は、いずれも不変である。変異体表現型のこの側面のレスキューは、より低い温度(
た と え ば 、 15℃ ) サ イ ク ル 長 の 増 大 お よ び よ り 高 い 温 度 ( た と え ば 、 25℃ ) で の サ イ ク ル
長 の 減 少 を 回 復 す る 。 た と え ば 、 clk-1変 異 体 虫 に 添 加 さ れ た 試 験 化 合 物 ア ッ セ イ 法 に よ
50
(51)
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り 、 こ れ ら が clk-1/dsc-3二 重 突 然 変 異 体 虫 ま た は clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 を 表 現 型 模
写する能力に基づいて同定することができる。ある種の態様では、変異体虫および試験化
合物を有する虫の表現型がより高いおよびより低い温度下で測定される。
【0223】
さらにその他の関連した態様において、線虫の排便サイクルの変化によって特徴づけら
れ る 1つ も し く は 複 数 の 遺 伝 子 ま た は こ れ ら の 変 異 体 は 、 本 発 明 の ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ
イ法に使用することができる。
【0224】
もう一つの態様において、本方法は、発現レベルが排便と関係する指標遺伝子の制御配
列に動作可能に連結されたリポーター遺伝子によってコードされるリポーターの発現を検
10
出することを含む。加えて、指標遺伝子の発現プロフィールを使用してもよい。プロモー
ターを使用することができる例示的な指標遺伝子は、公的にアクセスできるデータベース
に 記 載 さ れ て い る も の を 含 む ( た と え ば Wormbase, http://www.wormbase.org/; NEXTDB,
http://nematode.lab.nig.ac.jp/;ホ ー プ 研 究 室 発 現 パ タ ー ン ・ デ ー タ ベ ー ス ( The Hope
Laboratory Expression Pattern Database) , http://129.11.204.86:591/default.htm)
。
【0225】
5.4.2.2 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 に 基 づ く ア ッ セ イ 法 本発明は、試験表現型として生殖系列発達の速度を使用するアッセイ法を特徴とする。
野生型線虫において、細胞体および生殖系列は、同じ速度で発達する。細胞体/生殖系列
20
の 発 達 の 同 時 発 生 に 影 響 を 及 ぼ す 突 然 変 異 ( た と え ば 、 clk-1突 然 変 異 ) は 、 こ の ア ッ セ
イ 法 に 使 用 す る こ と が で き る 。 一 つ の 態 様 に お い て 、 変 異 体 clk-1は 、 ア ッ セ イ 法 に 使 用
さ れ る 。 clk-1変 異 体 は 、 一 般 に 生 殖 系 列 の 発 達 が 細 胞 体 よ り も ゆ っ く り と な る よ う に 、
生殖系列と細胞体との間の発達の速度の同期の破壊によって特徴づけられる期外発生の表
現 型 を 示 す 。 第 7.2節 に 記 載 さ れ て い る 実 験 に よ っ て 証 明 さ れ る よ う に 、 こ の 表 現 型 の 抑
制 は 、 低 レ ベ ル の コ レ ス テ ロ ー ル 摂 取 、 LDL様 タ ン パ ク 質 の 産 生 お よ び / ま た は 分 泌 の レ
ベ ル の 減 少 、 ま た は 低 レ ベ ル の LDL様 タ ン パ ク 質 の 酸 化 と 関 係 し て い た 。 対 照 線 虫 と 比 較
した生殖系列発達の速度の促進または正常な速度への復活は、このアッセイ法においてポ
ジティブとスコアされる。生殖系列発達の速度は、ピークの産卵速度が達成される時期、
後方生殖系列の近端部の卵母細胞がある時期、および配偶子形成の開始がある時期を含む
30
(しかし、これらに限定されない)多くの方法で測定することができる。
【0226】
一 つ の 態 様 に お い て 、 ピ ー ク の 産 卵 速 度 は 、 clk-1突 然 変 異 の 抑 制 因 子 を ス ク リ ー ニ ン
グ す る た め に 使 用 さ れ る 。 clk-1変 異 体 線 虫 ( C. elegans) は 、 野 生 型 線 虫 ( C. elegans
) よ り も 3倍 ゆ っ く り と こ れ ら の 産 卵 速 度 の ピ ー ク に 達 す る ( 成 体 へ の 脱 皮 の 後 72時 間 に
対 し 24時 間 ) 。 変 異 誘 発 さ れ た 線 虫 clk-1つ の 変 異 体 を 、 成 体 に 脱 皮 し た 約 24時 間 後 に ピ
ークの産卵速度に達するものを検査することができる。
【0227】
も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 後 方 生 殖 系 列 の 近 端 部 の 卵 母 細 胞 は 、 clk-1突 然 変 異 の 抑 制
因 子 を ス ク リ ー ニ ン グ す る た め に 使 用 さ れ る 。 線 虫 成 体 の 雌 雄 同 体 生 殖 腺 は 、 2本 の U型 の
40
ア ー ム ( 前 方 お よ び 後 方 ) か ら な り 、 そ れ ぞ れ は 貯 精 嚢 に お い て 終 わ る 。 2つ の 貯 精 嚢 (
遠位端)は、生殖腺アームを、受精卵を貯臓する子宮に連結し、外陰部(近端部)で融合
する。生殖系列の発達段階では、遠位の基部軸に沿って分極化する。大部分の精子形成は
、近位の生殖腺で起こる。卵形成のためには、それぞれの生殖腺の遠位のアームが、有糸
分裂を受けている胚細胞核を含む合胞体を形成する。近位に移動して、胚細胞は、分裂周
期 を 出 て 、 減 数 分 裂 の 第 一 期 通 っ て 進 む 。 成 体 脱 皮 の 6時 間 後 に 、 野 生 型 線 虫 ( C. elegan
s) は 、 前 方 お よ び 後 方 の 生 殖 系 列 の 近 端 部 に 卵 母 細 胞 を 有 す る 。 比 較 す る と 、 卵 形 成 の
発 達 は 、 clk-1変 異 体 に お い て 劇 的 に 遅 延 性 で あ る 。 約 3%の clk-1線 虫 だ け が 、 成 体 脱 皮 の
6時 間 後 ま で に 卵 形 成 を 開 始 し た 。 変 異 誘 発 さ れ た clk-1線 虫 は 、 成 体 脱 皮 の 6時 間 後 ま で
に卵形成を開始したものについて検査することができる。
50
(52)
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【0228】
さ ら に も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 配 偶 子 形 成 の 開 始 は 、 clk-1の 抑 制 因 子 を ス ク リ ー ニ
ン グ す る た め に 使 用 さ れ る 。 野 生 型 線 虫 ( C. elegans) は 、 成 体 脱 皮 の 1.5時 間 後 に 第 一
精 母 細 胞 形 成 を 完 了 す る 。 対 照 的 に 、 clk-1変 異 体 線 虫 は 、 成 体 脱 皮 の 1.5時 間 後 に 第 一 精
母 細 胞 形 成 を 開 始 し な か っ た か 、 ま た は ち ょ う ど 開 始 し た 。 変 異 誘 発 さ れ た clk-1線 虫 は
、 成 体 脱 皮 の 1.5時 間 後 に 第 一 精 母 細 胞 形 成 を 完 了 す る も の に つ い て 検 査 す る こ と が で き
る。
【0229】
さらにもう一つの態様において、本方法は、発現レベルが生殖系列発達と関係する指標
遺伝子の制御配列に動作可能に連結されたリポーター遺伝子によってコードされるリポー
10
ターの発現を検出することを含む。加えて、指標遺伝子の発現プロフィールを使用しても
よ い 。 本 プ ロ モ ー タ ー を 使 用 す る こ と が で き る 例 示 的 な 指 標 遺 伝 子 は 、 ark-1、 itr-1、 お
よ び letを 60含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。 第 5.4.2節 に 記 載 さ れ て い る 実 験 は 、 発 現 レ
ベルが生殖系列発達と関係するこのような指標遺伝子の使用を証明する。本プロモーター
を 使 用 す る こ と が で き る 例 示 的 な 指 標 遺 伝 子 の そ の 他 の 例 は 、 Reinke et al., 2000, Mol
. Cell 6:605-16; Colaiacovo et al., Genetics 2002 Sep;162:113-28ま た は 公 的 に ア ク
セ ス で き る デ ー タ ベ ー ス ( た と え ば Wormbase, http://www.wormbase.org/; NEXTDB, http
://nematode.lab.nig.ac.jp/;ホ ー プ 研 究 室 発 現 パ タ ー ン ・ デ ー タ ベ ー ス ( The Hope Labo
ratory Expression Pattern Database) , http://129.11.204.86:591/default.htm) に 開
示したものを含む。
20
【0230】
5.4.2.3 胚 発 生 の 速 度 に 基 づ く ア ッ セ イ 法 本発明は、試験表現型として胚発生の速度を使用するアッセイ法を特徴とする。線虫の
同 調 的 な 集 団 は 、 母 か ら 2∼ 4細 胞 段 階 の 胚 を 解 剖 す る こ と 、 お よ び 新 た な プ レ ー ト 上 に こ
れ ら を 配 置 す る こ と に よ っ て 得 る こ と が で き る ( た と え ば 、 Wong et al., 1995、 Genetic
s 139: 1247-1259を 参 照 さ れ た い ) 。 野 生 型 線 虫 に お い て 、 胚 発 生 は 、 13時 間 要 す る 。 胚
発 生 の 速 度 に 影 響 を 及 ぼ す 突 然 変 異 ( た と え ば 、 clk-1) を 本 ア ッ セ イ 法 に 使 用 す る こ と
ができる。
【0231】
一 つ の 態 様 に お い て 、 変 異 体 clk-1は 、 ア ッ セ イ 法 に 使 用 さ れ る 。 clk-1変 異 体 線 虫 の 胚
30
発 生 は 、 17∼ 22時 間 の 間 を 要 す る 。
【0232】
もう一つの態様において、本方法は、発現レベルが胚発生と関係する指標遺伝子の制御
配列に動作可能に連結されたリポーター遺伝子によってコードされるリポーターの発現を
検出することを含む。加えて、指標遺伝子の発現プロフィールを使用してもよい。本プロ
モーターを使用することができる例示的な指標遺伝子は、公的にアクセスできるデータベ
ー ス に お い て 記 載 さ れ て い る も の を 含 む ( た と え ば Wormbase, http://www.wormbase.org/
; NEXTDB, http://nematode.lab.nig.ac.jp/;ホ ー プ 研 究 室 発 現 パ タ ー ン ・ デ ー タ ベ ー ス
( The Hope Laboratory Expression Pattern Database) , http://129.11.204.86:591/de
fault.htm) 。
40
【0233】
5.4.2.4 後 胚 発 生 の 速 度 に 基 づ く ア ッ セ イ 法 本発明は、試験表現型として後胚発生の速度を使用するアッセイ法を特徴とする。線虫
の 同 調 的 な 集 団 は 、 新 た な プ レ ー ト に 卵 を 拾 い 、 1時 間 後 に 検 査 す る こ と に よ っ て 得 る こ
と が で き る ( た と え ば 、 Wong et al., 1995、 Genetics 139: 1247-1259を 参 照 さ れ た い )
。 こ の 期 間 中 に 孵 化 す る 動 物 が ア ッ セ イ 法 に に 使 用 さ れ る 。 野 生 型 線 虫 は 、 孵 化 の 45∼ 51
時 間 後 の 間 に 成 体 期 に 達 す る 。 後 胚 発 生 の 速 度 に 影 響 を 及 ぼ す 突 然 変 異 ( た と え ば 、 clk1) を ア ッ セ イ 法 に 使 用 す る こ と が で き る 。
【0234】
一 つ の 態 様 に お い て 、 線 虫 clk-1つ の 変 異 体 は 、 ア ッ セ イ 法 に 使 用 さ れ る 。 こ れ ら の 変
50
(53)
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異 体 は 、 孵 化 の 63∼ 81時 間 後 の 間 に 成 体 期 に 達 す る 。
【0235】
もう一つの態様において、本方法は、発現レベルが後胚発生と関係する指標遺伝子の制
御配列に動作可能に連結されたリポーター遺伝子によってコードされるリポーターの発現
を検出することを含む。加えて、指標遺伝子の発現プロフィールを使用してもよい。本プ
ロモーターを使用することができる例示的な指標遺伝子は、公的にアクセスできるデータ
ベ ー ス に お い て 記 載 さ れ て い る も の を 含 む ( た と え ば Wormbase, http://www.wormbase.or
g/; NEXTDB, http://nematode.lab.nig.ac.jp/;ホ ー プ 研 究 室 発 現 パ タ ー ン ・ デ ー タ ベ ー
ス ( The Hope Laboratory Expression Pattern Database) , http://129.11.204.86:591/
default.htm) 。
10
【0236】
5.4.2.5 本 発 明 の 遺 伝 子 変 異 お よ び ア ッ セ イ 法 本 発 明 の 方 法 の 一 定 の 態 様 に お い て 、 本 方 法 は 、 1つ ま た は 複 数 の 遺 伝 子 に 突 然 変 異 を
含む線虫で行われる。このような変異体は、スクリーニングおよび/またはバリデーショ
ン実験のための、および複数の突然変異を有する虫を作製するための、望ましい遺伝的バ
ッ ク グ ラ ン ド を 提 供 す る 。 他 の 好 ま し い 態 様 で は 、 変 異 体 線 虫 ( C. elegans) は 、 clk-1
、 dsc-3、 ま た は dsc-4遺 伝 子 の 1つ ま た は 複 数 に 、 ノ ッ ク ア ウ ト ( 機 能 喪 失 ) ま た は 機 能
調 整 の 突 然 変 異 を 含 む 。 本 発 明 の 一 定 の 態 様 に 従 っ て 、 突 然 変 異 は 、 clk-1、 dsc-3、 ま た
は dsc-4の ド メ イ ン の 1つ ま た は 複 数 の 置 換 、 欠 失 、 ま た は 挿 入 変 異 で あ る 。
【0237】
20
関 連 し た 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 方 法 は 、 clk-1突 然 変 異 お よ び そ の 他 の 遺 伝 子 の 1つ ま
たは複数の突然変異を含む変異体線虫で行われる。関連した態様において、本発明の方法
は 、 clk-1突 然 変 異 お よ び dsc-3の 1つ ま た は 複 数 の 突 然 変 異 を 含 む 変 異 体 線 虫 で 行 わ れ る
。 関 連 し た 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 方 法 は 、 clk-1突 然 変 異 お よ び dsc-4の 1つ ま た は 複 数
の 突 然 変 異 を 含 む 変 異 体 線 虫 で 行 わ れ る 。 本 発 明 の 方 法 に 有 用 な 突 然 変 異 の 例 は 、 clk-1
( e2519) 、 dsc-3( qm180) 、 お よ び dsc-3( qm184) を 含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。
こ の よ う な 組 み 合 わ せ の 変 異 体 バ ッ ク グ ラ ン ド の 非 限 定 の 例 は 、 clk-1( qm30) / dsc-3(
qm184) を 含 む 。
【0238】
本 発 明 の 1つ の 側 面 よ れ ば 、 clk-1、 dsc-3、 ま た は dsc-4突 然 変 異 を 含 む 線 虫 は 、 以 下 の
30
1つ ま た は 複 数 の 発 現 を ブ ロ ッ ク す る た め の 1つ ま た は 複 数 の RNAi抑 制 構 築 物 を さ ら に 含 む
こ と が で き る : fat-2、 fat-3、 elo-1、 elo-2、 vit-2、 vit-3、 vit-4、 vit-5、 vit-6、 sod
-1、 sod-2、 sod-3、 sod-4、 ま た は let-60。 コ レ ス テ ロ ー ル お よ び / ま た は LDL代 謝 、 排 便
サ イ ク ル 、 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 、 ま た は ROSレ ベ ル に 関 与 す る そ の 他 の 遺 伝 子 の 発 現 は 、
また、本発明の方法に使用される望ましい生物学的バックグランドをもつ線虫を作製する
た め に RNAiを 使 用 し て ブ ロ ッ ク す る こ と が で き る 。 関 連 し た 態 様 に お い て 、 遺 伝 子 の 1つ
または複数を、周知のアンチセンス、遺伝子「ノックアウト」、リボザイム、および/ま
たは三重らせん体法などの共通に使用される当該技術分野のその他の技術を使用して抑制
することができる。
【0239】
40
関 連 し た 態 様 に お い て 、 変 異 体 線 虫 ( C. elegans) は 、 排 便 サ イ ク ル の 調 整 を 生 じ る 遺
伝子にノックアウト(機能喪失)または機能調整の突然変異を含む。このような突然変異
の 例 は 、 itr-1( sa73) お よ び isp-1( qm150) を 含 む が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い 。
【0240】
関 連 し た 態 様 に お い て 、 変 異 体 線 虫 ( C. elegans) は 、 vit-2、 vit-3、 vit-4、 vit-5、
ま た は vit-6遺 伝 子 の 1つ ま た は 複 数 に 、 ノ ッ ク ア ウ ト ( 機 能 喪 失 ) ま た は 機 能 調 整 の 突 然
変 異 を 含 む 。 こ れ ら の 遺 伝 子 は 、 線 虫 ( C. elegans) の 腸 細 胞 に よ っ て 分 泌 さ れ る apoB相
同体であるビテロゲニンをコードする。また、ビテロゲニンは、卵黄リポタンパク質のに
お い て 機 能 す る こ と が 既 知 で あ る 。 第 8.2節 に お い て 本 明 細 書 で 提 示 し た 結 果 は 、 apoB依
存 的 な LDL粒 子 に 似 て お り 、 か つ 卵 黄 リ ポ タ ン パ ク 質 粒 子 と は 異 な る で あ ろ う リ ポ タ ン パ
50
(54)
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ク 質 粒 子 に お け る ビ テ ロ ゲ ニ ン の 機 能 が 、 脊 椎 動 物 に お い て 見 い だ さ れ た こ と を 示 す 。 ap
oBは 、 哺 乳 類 の 腸 に お け る LDL粒 子 の 合 成 お よ び 分 泌 に 関 与 し て い る の で 、 vit遺 伝 子 の 変
異 体 も 、 LDL取 り 込 み ま た は コ レ ス テ ロ ー ル ・ レ ベ ル を 調 整 す る 化 合 物 を 同 定 す る た め の
本発明の方法に使用することができる。
【0241】
そ の 他 の 関 連 し た 態 様 に お い て 、 変 異 体 線 虫 は 、 活 性 酸 素 種 ( ROS) レ ベ ル の 変 化 を 生
じ る 1つ ま た は 複 数 の 遺 伝 子 に ノ ッ ク ア ウ ト ( 機 能 喪 失 ) ま た は 機 能 調 整 の 突 然 変 異 を 含
む 。 た と え ば 、 本 発 明 の 一 定 の 態 様 に お い て 、 変 異 体 バ ッ ク グ ラ ン ド は 、 clk-1、 sod-1、
sod-2、 sod-3、 ま た は sod-4に 突 然 変 異 を 含 む こ と が で き る 。 一 定 の 本 発 明 の 態 様 に 従 っ
て 、 本 発 明 の 方 法 は 、 動 物 モ デ ル で 実 施 し て も よ い 。 た と え ば 、 1つ ま た は 複 数 の 遺 伝 子
10
、遺伝子の変異形、または本明細書において記載された遺伝子を抑制するようにデザイン
された構築物により、線虫、マウス、またはラットなどの生物体に形質転換することがで
きる。次いで、このような形質転換された動物を本発明の方法において化合物を同定する
ために使用することができる。
【0242】
5.4.2.6 ATPaseア ッ セ イ 法 ATPase酵 素 は 、 必 須 膜 タ ン パ ク 質 で あ る 酵 素 の 大 き な フ ァ ミ リ ー で あ る 。 該 酵 素 は 、 金
属 、 イ オ ン 、 お よ び リ ン 脂 質 な ど の 薬 剤 を 、 ATPを 使 用 し て 膜 を 越 え て 輸 送 す る ( Harris
et al, 2003, Biochim. Biophys. 1633:127-131) 。 ヒ ト ATP8B1/ FIC1遺 伝 子 の 突 然 変 異
な ど の ATPaseの 突 然 変 異 は 、 バ イ ラ ー 病 に 特 徴 的 な 胆 汁 う っ 滞 性 の 表 現 型 を 生 じ る ( Trau
20
ner et al, 2002, Physiol. Rev. 83:633-671) 。 胆 汁 う っ 滞 性 の 疾 患 は 、 肝 臓 内 の 胆 汁
の 流 れ が 障 害 さ れ る 症 状 で あ り 、 ATP8B1/ FIC1な ど の ( し か し 、 こ れ に 限 定 さ れ な い ) AT
Pase酵 素 が 胆 汁 酸 輸 送 お よ び 分 泌 に お い て 役 割 を 果 た す こ と を 示 唆 す る 。 ま た 、 ATPase酵
素は、膜を越えた脂質輸送を容易にする血漿膜リン脂質の非対称を維持することに関与す
る ( Daleke、 2003、 J. Lip. Res. 44: 233-242) 。 ATP8B1/ FIC1は 、 CHOK1細 胞 に 発 現 さ
れ、次いで膜において脂質の分布の変化が観察された場合には、これらの細胞の膜におい
て 同 定 さ れ る ( Ujhazy et al., 2001、 Hepatology 34: 768-775) 。
【0243】
dsc-3は 、 下 記 の 実 施 例 切 片 に て 説 明 し た よ う に 、 ATPaseに 類 似 点 を 有 し て 、 ATPase酵
素活性を調整することによってその生物学的機能を調整する化合物のスクリーニングアッ
30
セ イ 法 に 使 用 す る こ と が で き る 。 DSC-3は 、 当 該 技 術 分 野 に お い て 既 知 の 技 術 に よ っ て 得
る こ と 、 ま た は 作 製 す る こ と が で き る 。 た と え ば 、 DSC-3は 、 dsc-3を 発 現 す る 組 換 え ま た
は 正 常 細 胞 の 膜 か ら 、 ま た は DSC-3を 組 換 え で 産 生 す る よ う に デ ザ イ ン さ れ た 細 胞 に お い
て 単 離 す る こ と が で き る 。 次 い で 、 DSC-3酵 素 は 、 試 験 化 合 物 の 存 在 下 お よ び 非 存 在 下 で A
TPお よ び 脂 質 の 量 と 接 触 さ せ る こ と が で き 、 試 験 化 合 物 の 存 在 下 お よ び 非 存 在 下 で 生 じ る
ATPの 量 は 、 試 験 化 合 物 が 酵 素 の 活 性 を 調 整 す る か ど う か を 示 す 。 関 連 し た 態 様 に お い て
、 ATPは 、 ラ ベ ル さ れ て い る 。
【0244】
ま た 、 dsc-3は 、 膜 を 越 え た 脂 質 輸 送 を 調 整 す る 化 合 物 の ス ク リ ー ニ ン グ ア ッ セ イ 法 に
使 用 す る こ と が で き る 。 こ の よ う な ア ッ セ イ 法 で は 、 単 離 さ れ た 膜 ま た は 膜 を 含 む DSC-3
40
を有する全細胞を、試験化合物の存在下および非存在下で脂質と接触させることができる
。 た と え ば 、 ラ ベ ル さ れ た 脂 質 を 、 試 験 化 合 物 の 存 在 下 お よ び 非 存 在 下 で 膜 を 含 む DSC-3
を有する細胞に接触して、ラベルされた脂質の細胞内および細胞外分布の変化を試験化合
物 の 存 在 下 お よ び 非 存 在 下 で 観 察 す る 場 合 に は 、 DSC-3脂 質 輸 送 を 調 整 す る 化 合 物 が 同 定
される。
【0245】
ま た 、 dsc-3は 、 胆 汁 う っ 滞 性 疾 患 の 治 療 お よ び 予 防 に 有 用 で あ ろ う 、 胆 汁 酸 の 輸 送 お
よび/または分泌を調製する、すなわち増強するか、または阻害する化合物のスクリーニ
ングアッセイ法に使用することができる。たとえば、マウスなどの胆汁酸の輸送および/
ま た は 分 泌 を 示 す 生 物 体 を 形 質 転 換 し て dsc-3を 発 現 さ せ る こ と が で き る 。 胆 汁 酸 分 泌 の
50
(55)
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レベルに対する効果は、形質転換されたマウスと形質転換されていないマウスの胆汁液を
サンプリングすることによって測定することができる。また、このようなトランスジェニ
ック・マウスは、胆汁酸の輸送および/または分泌を調整する化合物をスクリーニングす
るために使用することができる。たとえば、肝臓の胆汁酸のレベルを、試験化合物の存在
下 お よ び 非 存 在 下 で dsc-3を 発 現 す る マ ウ ス で 測 定 す る こ と が で き 、 そ の 結 果 、 胆 汁 の レ
ベルが試験化合物の存在下および非存在下で異なる場合、胆汁酸を調整する化合物が同定
される。
【0246】
本 発 明 の 一 定 の 態 様 に お い て 、 dsc-3ま た は dsc-4に 対 応 す る ヒ ト 遺 伝 子 を 形 質 転 換 さ れ
たマウスに発現させて、胆汁うっ滞性疾患の治療および予防に有用であろう、胆汁酸の輸
10
送および/または分泌を調整する化合物をスクリーニングすることができる。関連した態
様 に お い て 、 dsc-3ま た は dsc-4に 対 応 す る ヒ ト 遺 伝 子 は 、 dsc-3ま た は dsc-4に 対 し て 約 10
%、 20%、 30%、 40%、 50%、 60%、 70%、 80%、 90%、 ま た は よ り も 大 き な 類 似 性 を 有 す る 。
【0247】
5.4.3 線 虫 に 基 づ か な い ア ッ セ イ 法 ま た 、 本 発 明 は 、 線 虫 ( C. elegans) を 含 ま な い イ ン ビ ボ ・ ア ッ セ イ 法 を 含 む 。 一 つ の
態 様 に お い て 、 clk-1ま た は 本 発 明 の MOLLに 結 合 す る ポ リ ペ プ チ ド ま た は 薬 剤 は 、 酵 母 ツ
ー・ハイブリッド・スクリーンを使用して同定される。当該技術分野において既知のいず
れの方法も、このようなツー・ハイブリッド・スクリーンを行うために使用することがで
き る 。 ツ ー ハ イ ブ リ ッ ド 系 の 一 つ の バ ー ジ ョ ン が 記 載 さ れ て お り ( Chien et al., 1991,
20
PNAS 88:9578-9582) し 、 Clontech( Palo Alto, CA) か ら 商 業 的 に 入 手 可 能 で あ る 。 一 つ
の 態 様 に お い て 、 clk-1ま た は MOLLを 結 合 す る ポ リ ペ プ チ ド が 同 定 さ れ る 。 こ の よ う な 態
様 で は 、 同 定 さ れ た ポ リ ペ プ チ ド は 、 そ れ 自 体 が MOLLで あ る か ど う か を 調 べ る た め に 試 験
す る こ と が で き 、 し た が っ て 、 上 記 論 議 し た よ う に ( 第 5.3.1.1∼ 5.3.1.4節 を 参 照 さ れ た
い)、定方向突然変異生成技術を使用する標的として有用である。あるいは、同定された
ポリペプチドは、それと結合する薬剤を同定するために使用することができる。もう一つ
の 態 様 に お い て 、 clk-1ま た は MOLLに 結 合 す る 薬 剤 が 同 定 さ れ る 。 こ の よ う な 態 様 で は 、
同定された薬剤は、以前に記載されているスクリーニングでの活性によって証明されるよ
う に ( 第 5.3.2節 を 参 照 さ れ た い ) 、 そ れ が 本 発 明 の 薬 剤 で あ る か ど う か を 調 べ る た め 試
験することができるする。
30
【0248】
5.4.4 イ ン ビ ト ロ で の 生 化 学 的 ア ッ セ イ 法 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド ( た と え ば 、 dsc-4) と 結 合 す る 化 合 物 は 、 当 該 技 術 分 野 に
おいて既知のいずれの方法によっても同定することができる。たとえば、電気泳動法、サ
イズ排除クロマトグラフィー、および質量分析を含む(しかし、これらに限定されない)
、 本 発 明 の 結 合 し て い な い ポ リ ペ プ チ ド か ら 、 試 験 化 合 物 と 複 合 体 を 形 成 し た 本 発 明 の MO
LLポ リ ペ プ チ ド の 物 性 ( た と え ば 、 サ イ ズ 、 移 動 度 、 そ の 他 ) の 変 化 を 検 出 す る い ず れ の
方法も、本発明の方法に使用することができる。また、アフィニティークロマトグラフィ
ー、シンチレーション近接アッセイ法、核磁気共鳴分光法、および蛍光共鳴エネルギー転
移 を 含 む ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い ) 、 本 発 明 お よ び 試 験 化 合 物 の MOLLポ リ ペ プ チ
40
ド間の結合を検出するその他の方法を直接使用することができる。
【0249】
第 一 の 態 様 に お い て 、 電 気 泳 動 法 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド に 結 合 す る こ と が で き
る 試 験 化 合 物 を 同 定 す る た め に 使 用 さ れ る 。 一 般 に 、 試 験 化 合 物 に 結 合 し た 本 発 明 の MOLL
ポ リ ペ プ チ ド は 、 本 発 明 の 結 合 し て い な い MOLLポ リ ペ プ チ ド よ り も 大 き い 。 サ イ ズ に 基 づ
く電気泳動分離により、このようなサイズの変化を決定することができる。変性および非
変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、尿素ゲル電気泳動、ゲル濾過、パルスフィールド
ゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動、連続流電気泳動、ゾーン電気泳動、アガロースゲル
電気泳動、並びにキャピラリー電気泳動法を含む(しかし、これらに限定されない)、い
ずれの電気泳動分離法を使用することもできる。
50
(56)
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【0250】
好 ま し い 態 様 に お い て 、 キ ャ ピ ラ リ ー ・ カ ー ト リ ッ ジ ( た と え ば U.S. Patent Nos. 5,8
85,430; 5,916,428; 6,027,627; 5,916,428; 6,027,627; お よ び 6,063,251を 参 照 さ れ た
い ) ま た は チ ッ プ ( た と え ば 、 U.S. Patent Nos. 5,699,157; 5,842,787; 5,869,004; 5,
876,675; 5,942,443; 5,948,227; 6,042,709; 6,042,710; 6,046,056; 6,048,498; 6,086
,740; 6,132,685; 6,150,119; 6,150,180; 6,153,073; 6,167,910; 6,171,850; お よ び 6,
186,660を 参 照 さ れ た い ) を 含 む ( し か し 、 こ れ ら に 限 定 さ れ な い ) 、 自 動 化 さ れ た 電 気
泳動系を使用することができる。
【0251】
他の好ましい態様において、分離のゲル電気泳動法は、試験化合物に結合していない、
10
ま た は 結 合 し た 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド の 移 動 度 を 区 別 す る た め に 、 ポ リ ア ク リ ル ア ミ
ドゲル電気泳動、好ましくは非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を含む。もう一つの
態 様 に お い て 、 電 気 泳 動 法 に よ っ て 分 離 さ れ る 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 免 疫 ブ ロ ッ
トのために膜へ転写される。このような技術は、当業者に周知であろう。
【0252】
第 二 の 態 様 に お い て 、 サ イ ズ 排 除 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド を
結合できる試験化合物を同定するために使用される。サイズ排除クロマトグラフィーは、
これらのサイズに基づいて分子を分離し、特定の粒度分布を有するビーズから構成される
ゲルに基づいた媒体を使用する。カラムに適用したときは、この媒体は、きつく圧縮され
たマトリックスに定着し、孔の複雑なアレイを形成する。分離は、分子の大きさに基づい
20
てこれらの孔によって分子が含まれ、または排除されることによって達成される。小分子
は孔に含まれ、従ってマトリックスを通ってこれらが移動することにより、これらが溶出
前に進行しなければならない距離が加算されるために遅れる。大分子は、マトリックスに
適用されると、孔から締め出され、空隙容量とともに移動する。本発明において、試験化
合 物 に 結 合 し た 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 よ り 大 き く 、 し た が っ て 結 合 し て い な い MO
LLポ リ ペ プ チ ド よ り も サ イ ズ 除 外 カ ラ ム か ら よ り 迅 速 に 溶 出 さ れ る 。
【0253】
第三の態様において、質量分析は、本発明のポリペプチドに結合することができる試験
化合物を同定するために使用される。何千もの成分を含む複合混合物を解析することがで
き、かつバックグラウンド・ノイズを補正し、荷電したピークおよび原子同位体ピークを
30
増 加 さ せ る こ と が で き る 質 量 分 析 計 デ ー タ を 解 析 す る た め の 自 動 化 さ れ た 方 法 は 、 U.S. P
atent No. 6,147,344に 記 載 さ れ て い る 。 U.S. Patent No. 6,147,344に 開 示 さ れ る 系 は
、対照試料測定を行ってバックグラウンド・ノイズ検査を提供する質量分析計データを解
析 す る た め の 方 法 で あ る 。 時 間 の 関 数 と し て の そ れ ぞ れ の m/ z比 で ピ ー ク の 高 さ お よ び 幅
の値がメモリーに記憶される。解析される材料に対する質量分析計の操作を行い、時間に
対 す る そ れ ぞ れ の m/ z比 で の ピ ー ク の 高 さ お よ び 幅 の 値 を 2次 の メ モ リ ー ロ ケ ー シ ョ ン に
記憶させる。解析される材料に対する質量分析計の操作を繰り返して固定された回数行い
、 そ れ ぞ れ の 時 間 増 分 の そ れ ぞ れ の m/ z比 レ ベ ル で 記 憶 さ れ た 対 照 試 料 の 値 を 、 そ れ ぞ れ
の対応する最適な実行のものから減算し、したがってそれぞれの時間増分で複数の実行の
そ れ ぞ れ に つ い て 、 そ れ ぞ れ の 質 量 比 で 異 な る 値 を 生 じ る 。 MS値 引 く バ ッ ク グ ラ ウ ン ド ・
40
ノ イ ズ が 、 設 定 値 を 上 回 ら な い 場 合 、 m/ z比 の デ ー タ ポ イ ン ト は 記 録 さ れ ず 、 し た が っ て
、質量分析計データからバックグラウンド・ノイズ、化学的ノイズ、および偽陽性ピーク
が 除 去 さ れ る 。 次 い で 、 複 数 の 実 行 の そ れ ぞ れ に つ い て の 記 憶 デ ー タ を 、 そ れ ぞ れ の m/ z
比 で の 予 め 定 め ら れ た 値 と 比 較 し て 、 ピ ー ク が 有 意 で あ る m/ z位 置 で 生 じ る 一 連 の ピ ー ク
(これは、ここでバックグランド以上であることが決定される)を記憶する。
【0254】
第 四 の 態 様 に お い て 、 ア フ ィ ニ テ ィ ー ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ
ドに結合することができる試験化合物を同定するために使用される。これを達成するため
に 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド が 親 和 性 タ グ お よ び 固 体 支
持体との相互作用を介して固体担体に付着することができるように、親和性タグ(たとえ
50
(57)
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ば 、 GST、 HA、 真 菌 、 ス ト レ プ ト ア ビ ジ ン 、 ビ オ チ ン ) で ラ ベ ル さ れ る 。 本 発 明 の タ グ の
付 い た MOLLポ リ ペ プ チ ド を 、 溶 液 中 で 遊 離 し て い る か 間 、 ま た は 固 体 担 体 に 結 合 し た 間 に
試験化合物と接触させる。固体担体は、典型的には含まれる、親和性タグのためのリガン
ドと結合する架橋されたアガロースビーズで構成されるが、これに限定されない。あるい
は、固体担体は、ガラス、シリコン、金属、または炭素、プラスチック(ポリスチレン、
ポリプロピレン)であって、共有結合で付着された親和性タグのためのリガンドか、また
は 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド 上 の タ グ に 対 し て 固 有 の 親 和 性 を 有 す る 自 己 構 築 さ れ た 単 層
を 伴 っ て も 、 伴 わ な く て も よ い 。 一 旦 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド と 試 験 化 合 物 と の 間 の 複
合体が平衡に達して、捕獲されたならば、当業者であれば、結合した化合物の保持および
結合していない化合物の除去を大過剰の結合反応緩衝液で固体担体を洗浄することによっ
10
て容易に行うことができることを認識するであろう。さらにまた、高親和性化合物の保持
および低親和性化合物の除去は、洗浄のストリンジェンシーを増大する多くの手段によっ
て達成することができ;これらの手段には、洗浄の回数および期間を増大すること、洗浄
緩衝液の塩濃度を増大すること、洗浄緩衝液に洗浄剤または界面活性物質を添加すること
、および洗浄緩衝液に非特異的な競合者を添加することを含むが、これらに限定されない
。 結 合 し て い な い 化 合 物 の 除 去 に 続 い て 、 本 発 明 の 固 定 さ れ た MOLLポ リ ペ プ チ ド に 対 し て
高親和性を有する結合した化合物を溶出して解析することができる。試験化合物の溶出は
、本発明のポリペプチドと試験化合物との間の非共有結合性の相互作用を破壊するいずれ
の 手 段 に よ っ て も 達 成 す る こ と が で き る 。 溶 出 の た め の 手 段 は 、 pHを 変 え る こ と 、 塩 濃 度
を変えること、有機溶媒を適用すること、および結合したリガンドと競合する分子を適用
20
することを含むが、これらに限定されない。好ましくは、溶出のために使用される手段は
、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド か ら 化 合 物 を 放 出 す る が 、 親 和 性 タ グ と 固 体 担 体 と の 間 の 相
互作用はなされないことにより、試験化合物の選択的な溶出を達成する。
【0255】
第 5の 態 様 に お い て 、 シ ン チ レ ー シ ョ ン 近 接 ア ッ セ イ 法 ( 「 SPA」 ) は 、 本 発 明 の ポ リ ペ
プチドに結合することができる試験化合物を同定するために使用される。本態様において
、本発明のポリペプチドまたは試験化合物が、ラベルされなければならない(たとえば、
放 射 性 同 位 元 素 、 そ の 他 に よ っ て ) 。 ラ ベ ル さ れ て い な い 実 体 は 、 シ ン チ ラ ン ト ( scinti
llant) を 含 浸 さ せ た 表 面 に 付 着 さ れ る 。 次 い で 、 ラ ベ ル さ れ た 実 体 を 、 結 合 が 可 能 な 条
件下で、付着されたラベルされていない実体と共にインキュベートする。本発明のポリペ
30
プチドと試験化合物との間の結合の量は、シンチレーションカウンターによって定量化さ
れ る ( Cook, 1996, Drug Discov. Today 1:287-294; Mei et al., 1997, Bioorg. Med. C
hem. 5:1173-1184; Mei et al., 1998, Biochemistry 37:14204-14212) 。 高 ス ル ー プ ッ
ト ス ク リ ー ニ ン グ SPAで は 、 シ ン チ ラ ン ト を プ ラ ス チ ッ ク に 直 接 組 み 入 れ る か ( Nakayama
et al., 1998, J. Biomol. Screening 3:43-48) 、 ま た は プ ラ ス チ ッ ク に 被 覆 す る こ と の
いずれかのマイクロプレートを使用する。好ましい態様において、このようなマイクロタ
イ タ ー プ レ ー ト が 、 本 発 明 の 方 法 で あ っ て 、 ( a) 放 射 性 ラ ベ ル を 有 す る 本 発 明 の MOLLポ
リ ペ プ チ ド を ラ ベ ル す る こ と と ; ( b) シ ン チ ラ ン ト で 被 覆 さ れ た マ イ ク ロ タ イ タ ー ウ ェ
ル に 付 着 さ れ た 試 験 化 合 物 と ラ ベ ル さ れ た MOLLポ リ ペ プ チ ド を 接 触 さ せ る こ と と ; お よ び
( c) SPAで 試 験 化 合 物 に 結 合 し た 本 発 明 の ポ リ ペ プ チ ド の 量 を 同 定 し 、 定 量 化 す る こ と を
40
含む方法に使用される。
【0256】
第 6の 態 様 に お い て 、 核 磁 気 共 鳴 分 光 学 ( 「 NMR」 ) は 、 本 発 明 の ポ リ ペ プ チ ド に 結 合 す
る こ と が で き る 試 験 化 合 物 を 同 定 す る た め に 使 用 さ れ る 。 NMRは 、 緩 和 効 果 を 使 用 し て 特
異的に測定される距離から、化学シフトの中の変化を定性的に決定することによって試験
化 合 物 と 結 合 す る 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド を 同 定 す る た め に 使 用 さ れ る 。 NMRに 基 づ い
た ア プ ロ ー チ は 、 タ ン パ ク 質 薬 物 標 的 の 小 分 子 結 合 剤 の 同 定 に 使 用 さ れ て き た ( Xavier e
t al., 2000, Trends Biotechnol. 18:349-356) 。 小 分 子 の ラ イ ブ ラ リ ー を 用 い た NMRに
よ る リ ー ド 生 成 の た め の ス ト ラ テ ジ ー は 、 記 載 さ れ て い る ( Fejzo et al., 1999, Chem.
Biol. 6:755-769) 。
50
(58)
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【0257】
第 7の 態 様 に お い て 、 蛍 光 共 鳴 エ ネ ル ギ ー 転 移 ( 「 FRET」 ) は 、 本 発 明 の ポ リ ペ プ チ ド
に結合することができる試験化合物を同定するために使用される。本態様において、本発
明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド お よ び 試 験 化 合 物 は 、 異 な る 蛍 光 分 子 ( す な わ ち 、 フ ル オ ロ フ ォ ア
) で ラ ベ ル さ れ る 。 重 複 す る 発 光 お よ び 励 起 波 長 の バ ン ド を 有 す る 2つ の フ ル オ ロ フ ォ ア
が、結合イベントなどにより近くに近接して共に保持されると、蛍光の特性に変化が生じ
る。ラベルとして使用されるフルオロフォアのうちの一方は、ラベルとして使用される他
方のフルオロフォアと重複する励起および発光スペクトルを有し、その結果、一方のフル
オロフォア(ドナー)が他方のフルオロフォア(アクセプター)にその発光エネルギーを
転移して励起する。アクセプターは、好ましくは基底状態にリラックスすると、即座に異
10
な る 波 長 の 光 を 放 射 す る か 、 ま た は 非 放 射 性 に リ ラ ッ ク ス し て 蛍 光 を ク エ ン チ す る 。 FRET
は 、 2つ の フ ル オ ロ フ ォ ア の 間 の 距 離 に 非 常 に 感 受 性 で あ り 、 10nm未 満 の 分 子 距 離 を 測 定
す る こ と が で き る ( た と え ば 、 U.S. Patent 6,337,183 and Matsumoto et al., 2000, Bi
oorg. Med. Chem. Lett. 10:1857-1861) 。
【0258】
5.5 予 防 / 治 療 の 方 法 本 発 明 は 、 脂 質 ま た は リ ポ タ ン パ ク 質 の 望 ま し く な い / 異 常 な レ ベ ル 、 ま た は ROSと 関
係 す る 障 害 を 、 本 発 明 の 1つ ま た は 複 数 の 薬 剤 の 治 療 的 ま た は 予 防 的 に 有 効 な 量 を こ れ ら
が必要な被検者に投与することによって治療し、予防し、管理するための方法を提供する
。 本 発 明 の 薬 剤 は 、 単 独 で 、 ま た は MOLLに 基 づ い て い な い 障 害 の 治 療 、 予 防 、 も し く は 管
20
理 に 有 用 な 1つ ま た は 複 数 の そ の 他 の 予 防 的 / 治 療 的 薬 剤 と 組 み 合 わ せ て 投 与 す る こ と が
できる。被検者は、好ましくは、非霊長類(たとえば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、
ラット、その他)および霊長類(たとえば、カニクイザルなどのサルおよびヒト)を含む
哺乳類であるが、これらに限定されない。好ましい態様において、被検者は、ヒトである
。
【0259】
また、本明細書に記載されている方法および組成物は、望ましくない脂質プロフィール
などの、このような障害と関係する症状の改良のために適用してもよい。本発明の方法に
よって治療または予防することができる障害または症状の例は、心血管障害、心疾患、ア
テローム性動脈硬化症、血管疾患、脳血管障害、および肥満を含むが、これらに限定され
30
ない。説明のみの目的であって、本発明の方法および組成物によって治療される障害の範
囲を限定しないが、心血管障害を一例として本明細書において以下で論議してある。
【0260】
心血管障害の一定の側面は、少なくとも一つには、遺伝子産物の過剰なレベルによって
、または異常な、もしくは過剰な活性を示す遺伝子産物の存在によってもたらされる。従
って、このような遺伝子産物のレベルおよび/または活性の減少は、障害症状の改良をも
た ら す 。 上 記 の よ う に 、 高 レ ベ ル の 循 環 LDLお よ び LDLの 酸 化 は 、 心 血 管 障 害 の 発 生 に お い
て 主 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 一 つ の 態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 LDLの 形 成 お よ び 蓄 積 に
関 与 す る 標 的 遺 伝 子 産 物 、 た と え ば 、 LDLの 成 分 で あ る ア ポ タ ン パ ク 質 の 合 成 に 関 与 す る
標的遺伝子、並びにコレステロールなどの脂質のプロセスし、および輸送する酵素および
40
キャリアのレベルおよび/または活性を減少させる化合物の使用を提供する。もう一つの
態 様 に お い て 、 本 発 明 は 、 酸 化 型 の LDLの 形 成 お よ び 蓄 積 に 関 与 す る 標 的 遺 伝 子 産 物 の レ
ベルおよび/または活性を減少させる化合物の使用を提供する。
【0261】
その他の側面において、心血管障害は、少なくとも一つには、遺伝子発現レベルの非存
在または減少によって、または遺伝子産物の活性レベルの減少によってもたらされる、従
って、このような遺伝子産物の遺伝子発現レベルおよび/または活性の増加は、心血管障
害症状の改良がもたらされるであろう。
【0262】
場合によっては、障害における遺伝子のアップレギュレーションは、障害の症状に反応
50
(59)
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する遺伝子産物の保護の役割を反映する。このような標的遺伝子の発現、または標的遺伝
子産物の活性の増強は、これが及ぼす保護作用を補強すると考えられる。いくつかの心血
管障害は、このような保護遺伝子の異常に低い活性レベルによって生じるであろう。これ
らの場合も、遺伝子発現のレベルおよび/またはこのような遺伝子産物の活性の増大によ
り、心血管障害症状の改良がもたらされるであろう。
【0263】
一つの態様において、本発明の方法によって治療され、または予防される障害は、アテ
ローム性動脈硬化症である。ヒトにおいて、これは、少なくとも一部には、過剰な酸化型
LDLに よ っ て き 起 こ さ れ る 。 酸 化 型 LDLは 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ 上 の ス カ ベ ン ジ ャ ー 受 容 器 を 含
む 天 然 の LDLと は 異 な る 受 容 体 型 に よ っ て 認 識 さ れ る 。 次 い で 、 こ れ ら の マ ク ロ フ ァ ー ジ
10
は、アテローム性動脈硬化症の発症に関与する泡沫細胞を発生することができる。
【0264】
た と え ば 、 上 記 し た ( た と え ば 、 第 5.4節 ) ア ッ セ イ 法 で 同 定 さ れ る も の な ど の 、 阻 害
力を示す化合物は、心血管障害を治療または予防するために、または症状を改善するため
に、本発明に従って使用してもよい。このような分子は、小有機分子、ペプチド、抗体、
などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0265】
本発明の方法によって同定される薬剤または化合物は、疾患の治療または予防のために
使用することができる。ある種の態様において、本発明の方法によって同定される化合物
は、胆汁鬱帯を治療するために使用することができる。関連した態様において、胆汁うっ
20
滞性疾患は、遺伝性の遺伝子欠損の結果として生じる。その他の態様において、胆汁うっ
滞性疾患は、後天性である。胆汁うっ滞性疾患は、胆汁の流れの障害によって特徴づけら
れ る ( van Mil et al., 2001, Seminars in Liver Disease 21:4) 。
【0266】
ある種の態様において、本発明の方法によって同定される化合物は、また、これらの必
要な生物体に、または予防薬として、このような化合物を投与することによって活性酸素
種 ( ROS) レ ベ ル を 増 大 す る た め に 使 用 す る こ と が で き る 。
【0267】
ある種の態様において、本発明の方法によって同定される化合物は、循環していてコレ
ステロールのレベルの調整することを必要とする患者のコレステロール・レベルを調整す
30
るために使用することができる。その他の態様において、本発明の方法によって同定され
る化合物は、患者のコレステロール・レベルの増加を予防するために使用することができ
る。ある種の態様において、本発明の方法によって同定される化合物は、コレステロール
代謝を調整することができる。
【0268】
ある種の態様において、本発明の方法によって同定される化合物は、動脈硬化またはア
テローム性動脈硬化症などの、血管における脂質または脂肪の沈着の増大に関与する疾患
を治療または予防するために使用することができる。その他の態様において、本発明の方
法によって同定される化合物は、動脈硬化またはアテローム性動脈硬化症を予防するため
に使用することができる。
40
【0269】
5.5.1 治 療 的 / 予 防 的 な 有 用 性 の 測 定 本発明の方法および組成物は、好ましくは、ヒトでの使用の前に、所望の治療的または
予防的な活性について、インビトロで、次いでインビボで試験されされる。たとえば、特
定の治療方法での投与が示され定ルかどうかを下っていするために使用することができる
インビトロでのアッセイ法は、患者の組織試料を培養液中で増殖して、治療薬に曝露する
か、さもなければ投与して、組織試料に対するこのような薬剤の効果を観察するという、
インビトロでの細胞培養アッセイ法を含む。あるいは、患者から細胞を培養する代わりに
、関連した株化細胞(たとえば、内皮株化細胞)の細胞を使用して、薬剤および方法をス
クリーニングしてもよい。
50
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【0270】
治療に使用するための薬剤は、ヒトでの試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ
、サル、ウサギ、ハムスター、その他を含む(しかし、これらに限定されない)適切な動
物モデル系において試験することができる。次いで、薬剤はを適切な臨床試験で使用する
ことができる。
【0271】
本 発 明 の 予 防 お よ び / ま た は 治 療 方 法 の 毒 性 お よ び 有 効 性 は 、 た と え ば 、 LD50( 集 団 の
50%に と っ て 致 命 的 な 用 量 ) お よ び ED50( 集 団 の 50%に お い て 治 療 的 に 有 効 な 用 量 ) を 決 定
するための、細胞培養または実験動物での標準的な薬学的手法によって決定することがで
きる。
10
【0272】
中 毒 性 の 効 果 と 治 療 的 な 効 果 と の 間 の 用 量 比 は 、 治 療 係 数 で あ り 、 LD50/ ED50比 と し て 表
すことができる。大きな治療指標を示す、予防的および/または治療的な薬剤が好ましい
。中毒性の副作用を示す予防的および/または治療的な薬剤を使用してもよいが、非感染
細胞へのダメージの可能性を最小限にすることにより副作用を減少させるために、このよ
うな薬剤を患部組織の部位にターゲットするデリバリーシステムをデザインすることに注
意すべきである。
【0273】
細胞培養アッセイ法および動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための予防
的および/または治療的な薬剤の用量の範囲に処方する際に使用することができる。この
20
よ う な 薬 剤 の 用 量 は 、 毒 性 を ほ と ん ど 、 ま た は 全 く 有 さ な い ED50を 含 む 循 環 濃 度 の 範 囲 内
にあることが好ましい。用量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じてこの
範囲内で変更してもよい。本発明の方法に使用されるいずれの薬剤についても、治療的に
有効な用量は、まず最初に細胞培養アッセイ法から推定することができる。用量は、細胞
培 養 に お い て 決 定 し て 、 IC50( す な わ ち 、 症 状 の 最 大 半 減 の 阻 害 を 達 成 す る 試 験 化 合 物 の
濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで処方されてもよい。この
ような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
血漿中のレベルは、たとえば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0274】
5.5.2 そ の 他 の 予 防 的 / 治 療 的 な 薬 剤 と の 併 用 療 法 30
一部の態様において、本発明は、もう一つの予防的/治療的な薬剤と組み合わせて、本
発 明 の 1つ ま た は 複 数 の 薬 剤 を 投 与 す る こ と に よ っ て 障 害 を 治 療 す る た め の 方 法 を 提 供 す
る。いくつかの特定の態様において、本発明の薬剤との併用療法によって、予防的/治療
的な投与量を減少することができ、その結果、予防的/治療的な薬剤をあまり頻繁に投与
しなくてもよいであろうし、または不必要な/有害な効果が減少される。また、本発明は
、併用予防薬/治療薬の有効性が、層化鉄器以上である相乗的な組み合わせを含む。ある
種の態様において、本発明に含まれる併用予防薬/治療薬は、いずれの単独成分の投与と
比較しても全体に改善された治療を提供する。
【0275】
また、本発明は、予防的/治療的な方法に対する被検者の感受性を増大する方法であっ
40
て 、 本 発 明 の 薬 剤 ( た と え ば 、 MOLL核 酸 、 MOLLポ リ ペ プ チ ド 、 MOLLア ゴ ニ ス ト 、 MOLLア ン
タ ゴ ニ ス ト 、 MOLLア ゴ ニ ス ト 阻 害 剤 、 MOLLア ン タ ゴ ニ ス ト 阻 害 剤 ) を 、 予 防 的 / 治 療 的 な
方法を受けているか、受けたか、または受けるであろう患者に対して投与することを含む
。 特 定 の 態 様 に お い て 、 患 者 は 、 1つ ま た は 複 数 の そ の 他 の 非 MOLLに 基 づ い た 予 防 薬 / 治
療薬に耐性であった。
【0276】
併 用 し て 使 用 す る こ と が で き る 、 予 防 的 / 治 療 的 な 薬 剤 の 例 は 、 胆 汁 酸 -結 合 樹 脂 ( た
とえば、コレスチラミンおよび塩酸コレスチポール)、スタチン類(たとえば、ロバスタ
チンおよびプラバスタチン)、フィブラート類(たとえば、クロフィブラート)およびナ
イアシンである。予防的/治療的な薬剤、およびこれらの用量、投与の経路、並びに推奨
50
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さ れ る 使 用 は 、 当 該 技 術 分 野 に お い て 既 知 で あ り 、 Physician’ s Desk Reference ( 56
t h
ed., 2002) , and Goodman & Gilman’ s The Pharmacological Basis of Therapeutics,
Tenth Edition, Chapter 36. Drug Therapy for Hypercholesterolemia and Dyslipidem
ia等 ( こ れ ら は 、 参 照 に よ り そ の 全 体 が 本 明 細 書 に 援 用 さ れ る ) の 文 献 に 記 載 さ れ て い る
。
【0277】
本明細書に使用されるものとして、「併用」の用語は、複数の予防的および/または治
療的な薬剤の使用をいう。「併用」の用語の使用は、予防的および/または治療的な薬剤
が 障 害 を 有 す る 被 検 者 に 投 与 さ れ る 順 位 を 制 限 し な い 。 第 1の 予 防 的 お よ び / ま た は 治 療
的 な 薬 剤 は 、 第 2の 予 防 的 お よ び / ま た は 治 療 的 な 薬 剤 を 、 疾 患 を 有 し た か 、 有 す る か 、
10
ま た は 疾 患 に 対 し て 感 受 性 が あ る 患 者 に 投 与 す る 前 に ( た と え ば 、 1分 、 5分 、 15分 、 30分
、 45分 、 1時 間 、 2時 間 、 4時 間 、 6時 間 、 12時 間 、 24時 間 、 72時 間 、 96時 間 、 1週 間 、 2週 間
、 3週 間 、 4週 間 、 5週 間 、 6週 間 、 8週 間 、 ま た は 12週 間 前 ) 、 同 時 に 、 ま た は 後 に ( た と
え ば 、 1分 、 5分 、 15分 、 30分 、 45分 、 1時 間 、 2時 間 、 4時 間 、 6時 間 、 12時 間 、 24時 間 、 72
時 間 、 96時 間 、 1週 間 、 2週 間 、 3週 間 、 4週 間 、 5週 間 、 6週 間 、 8週 間 、 ま た は 12週 間 後 )
投与することができる。いずれのさらなる予防的または治療的な薬剤も、その他のさらな
る予防的または治療的な薬剤とともに、いずれの順序でも投与することができる。ある種
の態様において、本発明の薬剤は、投与される予防的および/または治療的な薬剤のうち
の 1つ で あ る 。 あ る 種 の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 薬 剤 は 、 本 発 明 の MOLLポ リ ペ プ チ ド に 基
づかない予防薬および/または治療薬と併用して投与される。
20
【0278】
5.6 薬 学 的 組 成 物 本発明の組成物は、薬学的組成物の製造に有用なバルク製剤組成物(たとえば、不潔な
、または非滅菌の組成物)および単位用量形態の調製に使用することができる非経口的薬
学的組成物(すなわち、被検者または患者に投与するために適した組成物)を含む。この
ような組成物は、本明細書に開示された予防的および/または治療的な薬剤の予防的に、
または治療的に有効な量、またはこれらの薬剤と薬学的に許容されるキャリアの組み合わ
せ を 含 む 。 好 ま し く は 、 本 発 明 の 組 成 物 は 、 本 発 明 の 1つ ま た は 複 数 の 薬 剤 の 予 防 的 に 、
または治療的に有効な量、および薬学的に許容されるキャリアを含む。さらなる態様にお
いて、本発明の組成物は、本発明の薬剤と同じ障害を治療し、管理し、または予防するた
30
めに有用さらなる予防薬または治療薬をさらに含む。
【0279】
特定の実施態様において、「薬学的に許容される」の用語は、連邦政府または州政府の
規制機関によって承認されたか、または動物、特にヒトに使用するための米国薬局方また
はその他の一般に認識された薬局方の一覧表に記載された意味である。「キャリア」の用
語は、希釈液、アジュバント(たとえば、完全および不完全フロイントアジュバント)、
賦形剤、または治療薬が共に投与される媒体をいう。このような薬学的キャリアは、水、
および石油、動物油、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油等の植物油、または合成起源
のものを含む油等の滅菌液であることができる。水は、薬学的組成物が静脈内に投与され
るときに、好ましいキャリアである。特に注射用溶液のためには、食塩水および水性デキ
40
ストロースおよびグリセリン溶液を液体キャリアとして使用することもできる。適切な薬
学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コ
メ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアリン
酸、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エ
タノールなどが含まれる。組成物は、必要に応じて、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、また
は pH緩 衝 剤 を 含 む こ と も で き る 。 こ れ ら の 組 成 物 は 、 溶 液 、 懸 濁 液 、 エ マ ル ジ ョ ン 、 タ ブ
レット、ピル、カプセル、粉、徐放性の製剤などの形態をとることができる。
【0280】
一般に、本発明の組成物の成分は、別々に、または混合されて共に単位用量形態で、た
とえば活性な薬剤の量を示すアンプルまたはサッシェなどの密封して封着された容器に、
50
(62)
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乾燥凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として供給される。組成物を注入によって投
与する場合は、薬品グレードの滅菌水または塩類溶液を含有する注入ボトルと共に分配さ
れる。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水のアンプルまたは塩類溶液が
、投与の前に成分が混合されるであろうように提供することができる。
【0281】
本発明の組成物は、中性または塩の形態として処方することができる。薬学的に許容さ
れる塩は、塩化水素、リン、酢、蓚酸の、酒石酸酸、その他に由来するものなどの陰イオ
ンで形成されるものおよび、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化
第 二 鉄 、 イ ソ プ ロ ピ ル ア ミ ン 、 ト リ エ チ ル ア ミ ン 、 2-エ チ ル ア ミ ノ ・ エ タ ノ ー ル 、 ヒ ス チ
ジン、プロカインなどに由来するものなどの陽イオンで形成されるものを含む
10
5.6.1 投 与 方 法 本 発 明 の に 従 っ て 使 用 す る た め の 薬 学 的 組 成 物 は 、 1つ ま た は 複 数 の 生 理 的 に 許 容 さ れ
るキャリアまたは賦形剤を使用する慣用法で処方してもよい。製剤は、投与様式に適して
いるべきである。種々のデリバリーシステムが既知であり、本発明の薬剤、または本発明
の薬剤と本発明の薬剤と同じ障害を治療し、管理し、または予防するために有用であるお
よび予防薬または治療薬の組み合わせを投与するために使用することができる。本発明の
薬学的組成物の投与は、経口、吸入、非経口的、静脈内、筋肉内、腹腔内、眼窩内、眼内
、 嚢 内 、 髄 腔 内 、 胸 骨 内 、 動 脈 内 、 皮 内 、 皮 下 、 局 所 的 、 デ ポ ー ( depo) 注 射 、 移 植 、 徐
放性の様式、腔内、鼻腔内、腫瘍内、および徐放、経粘膜、並びに直腸の投与を含むが、
これらに限定されない。当業者であれば、投与様式を選択する際に考えられる特異的な利
20
点および不利な点を認識することができる。
【0282】
複数の投与様式が本発明によって包含される。たとえば、本発明の薬剤は、皮下注射に
よって投与される、一方で併用治療薬は、静脈内注入によって投与される。
【0283】
また、全身投与は、経粘膜または経皮の手段によることができる。経粘膜または経皮の
投与には、浸透するバリアに適した透過剤を製剤中に使用する。経粘膜の投与のための浸
透剤は、通常、当該技術分野において既知であり、たとえば洗浄剤、胆汁酸塩、およびフ
シジン酸誘導体を含む。経粘膜の投与は、点鼻薬または坐薬の使用によって達成すること
ができる。経皮投与のためには、活性化合物が当該技術分野で一般に知られているような
30
軟膏、膏薬、またはクリームに処方される。経皮投与のために適応される薬学的組成物は
、長期間表皮と均質に接触したままになることを企図した分離したパッチとして提供する
ことができる。
【0284】
眼に対する局所的な投与に適応した薬学的組成物は、たとえば点眼または注射用の組成
物を含む。これらの組成物において、活性成分は、適切なキャリアに溶解または懸濁する
ことができ、これには、たとえばカルボキシメチルセルロースを含むまたは含まない水性
溶媒を含む。
【0285】
口への局所的な投与に適応される薬学的組成物は、たとえばロゼンジ、パステル、およ
40
び含嗽薬を含む。経口投与に適応される薬学的組成物は、たとえば、カプセル、タブレッ
ト、粉末、顆粒、溶液、シロップ、懸濁液(水性または非水性の液体中)、食用の形態、
ホイップ、またはエマルジョンとして提供してもよい。タブレットまたは固いゼラチンカ
プセルは、たとえばラクトース、澱粉またはこれらの誘導体、ステアリン酸マグネシウム
、ナトリウム・サッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム、ステアリン酸、またはこれ
らの塩を含んでもよい。軟ゼラチンカプセルは、たとえば植物油、ワックス、脂肪、半固
体、または液体ポリオールを含んでもよい。溶液およびシロップは、たとえば、水、ポリ
オール、および糖を含んでもよい。
【0286】
薬学的に互換性の結着剤および/または補助材を組成物の一部として含むことができる
50
(63)
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。タブレット、ピル、カプセル、およびトローチは、以下の成分または同様の性質の化合
物いずれを含むこともできる:微結晶性セルロース、トラガント、またはゼラチンなどの
結 合 剤 ; 澱 粉 ま た は ラ ク ト ー ス な ど の 賦 形 剤 、 ア ル ギ ン 酸 、 プ リ モ ゲ ル ( Primogel) 、 ま
た は コ ー ン ス タ ー チ な ど の 崩 壊 剤 ; ス テ ア リ ン 酸 マ グ ネ シ ウ ム ま た は ス テ ロ ー ト ( Sterot
es) な ど の 潤 滑 剤 ; コ ロ イ ド 性 二 酸 化 ケ イ 素 な ど の 滑 沢 剤 ( glidant) ; シ ョ 糖 ま た は サ
ッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ調味
料などの香料。
【0287】
経口投与のために企図される活性な薬剤は、消化管における活性な薬剤の崩壊を遅延さ
せるか、または吸収に影響を及ぼす材料(たとえば、モノステアリン酸グリセリンまたは
10
グリセリルジステアレート)で被覆され、または混合されていてもよい。従って、たとえ
ば、徐放性の活性薬剤が、長時間にわたって達成されるであろうし、必要に応じて、活性
薬 剤 を 消 化 管 内 で の 分 解 か ら 保 護 す る こ と が で き る 。 消 化 管 に 沿 っ た 種 々 の pHお よ び 酵 素
の条件を利用することにより、経口投与のための薬学的組成物を特定の胃腸の位置で活性
な薬剤を放出することが容易になるように処方してもよい。経口製剤は、好ましくは重量
の 10%∼ 95%の 活 性 成 分 を 含 む 。
【0288】
鼻 噴 投 与 に 適 応 さ れ る 薬 学 的 組 成 物 は 、 粉 末 ( 好 ま し く は 、 20∼ 500ミ ク ロ ン の 範 囲 の
粒径を有する)などの固体担体を含むことができる。粉末は、嗅ぎタバコでなされる方法
で、すなわち鼻部の近くに保持された粉末の容器から鼻部を介して迅速に吸入することに
20
よって投与することができる。あるいは、鼻噴投与のために採用される組成物は、たとえ
ば点鼻薬または点鼻薬などの液体キャリアを含んでいてもよい。これらの組成物は、活性
成分の水性溶液または油溶液を含んでいてもよい。吸入による投与のための組成物は、加
圧されたエアロゾル、噴霧器、または通気器を含む(しかし、これらに限定されない)特
別に適応された装置で出力してもよく、これを活性成分の予め定められた用量を提供する
ように構築することができる。
【0289】
直腸の投与に適応される薬学的組成物は、直腸のデリバリーのための坐薬(たとえば、
カカオ脂およびその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤によって)または保持浣腸の形
態で調製することができる。膣内投与に適応される薬学的組成物は、たとえば、膣座薬、
30
タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として提供しても
よい。
【0290】
一つの態様において、本発明の薬学的組成物は、徐放性の系によって送達される。徐放
性 の 系 は 、 Langer ( 1990, Science 249:1527-1533) に よ る 総 説 に お い て 論 議 さ れ て い る
。 当 業 者 に 既 知 の い ず れ の 技 術 も 、 本 発 明 の 1つ ま た は 複 数 の 治 療 薬 を 含 む 徐 放 性 製 剤 を
製 造 す る た め に 使 用 す る こ と が で き る 。 た と え ば 、 U.S. Patent No. 4,526,938; Interna
tional Publication Nos. WO 91/05548 and WO 96/20698; Ning et al., 1996, Radiothe
rapy & Oncology 39:179-189; Song et al., 1995, PDA Journal of Pharmaceutical Sci
ence & Technology 50:372-397; Cleek et al., 1997, Pro. Int’ l. Symp. Control. Re
40
l. Bioact. Mater. 24:853-854; and Lam et al., 1997, Proc. Int’ l. Symp. Control
Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を 参 照 さ れ た い 。 た と え ば 、 薬 学 的 組 成 物 は 、 静 脈 内 注
入、移植可能な浸透ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、またはその他の投与様式を使用し
て 投 与 し て も よ い 。 一 つ の 態 様 に お い て 、 ポ ン プ を 使 用 し て も よ い ( た と え ば 、 Langer,
1990, Science 249:1527-33; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201; Buc
hwald et al., 1980, Surgery 88:507; Saudek et al., 1989, N. Eng. J. Med. 321:574
を参照されたい)。もう一つの態様において、化合物は、小胞、特にリポソーム内で送達
す る こ と が で き る ( た と え ば 、 Langer, 1990, Science 249:1527− 1533; Treat et al.,
1989, in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berest
ein and Fidler ( eds.) Liss, New York, pp. 353− 65; Lopez-Berestein, ibid., pp.
50
(64)
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317-27; International Patent Publication No. WO 91/04014; U.S. Patent No. 4,70
4,355を 参 照 さ れ た い ) 。 も う 一 つ の 態 様 に お い て 、 重 合 物 質 を 使 用 す る こ と が で き る (
た と え ば 、 Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise ( eds.) C
RC Press: Boca Raton, Florida, 1974; Controlled Drug Bioavailability, Drug Produ
ct Design and Performance, Smolen and Ball ( eds.) Wiley: New York ( 1984) ; Ra
nger and Peppas, 1953, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61; Levy et al.
, 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann Neurol. 25:351; Howard et al.
, 1989, J. Neurosurg. 71:105を 参 照 さ れ た い ) 。
【0291】
一つの態様において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、またはその他
10
の薬剤を含む活性化合物は、体からの化合物の迅速な除去を防護するキャリアと共に調製
される。このようなキャリアは、徐放製剤であることができ、これは、移植組織およびマ
イクロカプセル科されたデリバリーシステムを含むが、これらに限定されない。エチレン
酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、および
ポリ乳酸等の、生物分解性の生物学的適合性を有するポリマーを使用することができる。
こ の よ う な 製 剤 の 調 製 の た め の 方 法 は 、 当 業 者 に は 明 ら か で あ ろ う 。 ま た 、 材 料 は 、 Alza
Corporationお よ び Nova Pharmaceuticals, Incか ら 商 業 的 に 得 る こ と も で き る 。 薬 学 的
に許容されるキャリア、リポソームの懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体
を有する感染細胞にターゲットされるリポソームを含む)を使用することもできる。これ
ら は 、 た と え ば 、 U.S. Patent No. 4,522,811に 記 載 さ れ て い る よ う に 周 知 の 方 法 に 従 っ
20
て調製することができる。
【0292】
特定の態様において、本発明のポリペプチドは、逆熱的ゼラチンの性質を有する生分解
性 高 分 子 を 使 用 し て 投 与 す る こ と が で き る ( U.S. Patent No. 5,702,717を 参 照 さ れ た い
)。
【0293】
さらにもう一つの態様において、徐放性の系は、標的の付近に配置することができる。
たとえば、癌を治療するために、マイクロポンプにより、直接腫瘍領域に制御された用量
に よ り 、 必 要 な 全 身 性 の 用 量 の 一 部 分 の み を デ リ バ リ ー し て も よ い ( た と え ば 、 Goodson,
1984, in Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp. 115− 138を 参
30
照されたい)。
【0294】
一つの態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の薬学的組成物を投与す
ることが望ましいであろう;これは、たとえば、血管形成術、手術、局所適用(たとえば
、手術後の創傷被覆材と組み合わせて)、注射の間の局部的な注入によって、カテーテル
によって、坐薬によって、または移植によって達成してもよい。移植組織は、シアラステ
ィ ッ ク ( sialastic) 膜 な ど の 膜 ま た は 繊 維 を 含 む 多 孔 性 、 非 多 孔 性 、 ま た は ゼ リ ー 状 の
材料であることができる。
【0295】
注射用の使用に適した薬学的組成物は、滅菌の水溶液(または分散液)または滅菌の粉
40
末(滅菌の注射用の溶液または分散液を即座に調製するためのもの)を含む。静脈内投与
の た め に は 、 適 切 な キ ャ リ ア は 、 生 理 食 塩 水 、 静 菌 性 の 水 、 Cremophor EL( 商 標 ) ( BASF
; Parsippany、 NJ) 、 ま た は リ ン 酸 緩 衝 食 塩 水 ( PBS) を 含 む 。 キ ャ リ ア は 、 た と え ば 、
水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および
液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散
媒であることができる。適当な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用に
よって、分散媒の場合には必要とされる粒径を維持することによって、または界面活性物
質の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、たとえばパラベン、ク
ロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなどの、種々の抗菌
薬および抗真菌薬によって達成することができる。たとえば、糖、多価アルコール(たと
50
(65)
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えば、マンニトール)、ソルビトール、および塩化ナトリウムなどの等張性の薬剤を組成
物中に含むことが好ましいであろう。注射用の組成物の遅延性吸収は、たとえばモノステ
アリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含むこと
によってもたらすことができる。
【0296】
吸入による投与のためには、化合物は、適切な噴霧剤、たとえば二酸化炭素などのガス
、または噴霧器を含む加圧された容器またはディスペンサーからエアゾールスプレーの形
態で送達される。
【0297】
経口または非経口的組成物は、投与の容易さおよび用量の均一性のために単位剤形に処
10
方することができる。単位剤形は、本明細書に使用されるものとして、それぞれの単位が
、所望の治療的な効果を生じるように算出された活性化合物の予め定められた量と薬学的
キャリアを含むように、治療される被検者に一体的用量として適した物理的に分離した単
位をいう。当業者であれば、単位剤形が活性化合物の独特な特徴、達成される特定の治療
効果、およびヒト投与のためにこのような活性化合物を合成する技術に固有の制限に依存
的であることを認識するであろう。
【0298】
当業者であれば、以前の治療処方計画、障害の重篤さ、一般的な健康、および/または
被検者の年齢、並びに同時発生の障害を含む(しかし、これらに限定されない)一定の因
子が、認識する効率的に、被検者を有効に治療するために必要な用量に影響を及ぼす可能
20
性があることを認識するであろう。さらに、本発明の薬剤の治療上有効な量での被検者の
治療は、単一の治療を含むことができ、または好ましくは、一連の治療を含むことができ
る。
【0299】
5.6.2 本 発 明 の 薬 剤 と し て の 核 酸 の 投 与 特 定 の 態 様 に お い て 、 本 発 明 の 核 酸 ( た と え ば 、 MOLLア ン チ セ ン ス 核 酸 、 MOLL二 本 鎖 RN
A、 ま た は MOLLポ リ ペ プ チ ド も し く は MOLL内 体 を コ ー ド す る 核 酸 ) は 、 遺 伝 子 治 療 と し て
障害を治療し、予防し、または管理するために投与される。遺伝子治療とは、発現された
か、または表現可能な核酸を被検者に対して投与することによって行われる治療をいう。
本発明のこの態様において、核酸は、予防的または治療的効果を媒介する。
30
【0300】
当該技術分野において利用できるいずれの遺伝子治療のための方法も、本発明に従って
使用することができる。例示的な方法を以下に記載してある。遺伝子治療の方法の一般的
な 総 説 に つ い て は 、 Goldspiel et al., 1993, Clinical Pharmacy 12:488; Wu and Wu, 1
991, Biotherapy 3:87; Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573; Mu
lligan, 1993, Science 260:926-932; and Morgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Bioc
hem. 62:191; May, 1993, TIBTECH 11:155を 参 照 さ れ た い 。 使 用 す る こ と が で き る 組 換 え
DNA技 術 の 当 該 技 術 分 野 に お い て 一 般 に 既 知 の 方 法 は 、 Ausubel et al. ( eds.) , Curren
t Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY ( 1993) ; and Kriegler,
Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY ( 1990) に
40
記載されている。
【0301】
好ましい側面において、本発明の組成物は、本発明の核酸(たとえば、アンチセンスま
たは内体分子をコードする)であって、適切な宿主中に核酸を発現する発現ベクターの部
分である核酸を含む。特に、このような核酸は、プロモーター(好ましくは、異種プロモ
ーター)であって、該プロモーターは、誘導性または構成的であり、および選択的に組織
特異的であるプロモーターを有する。もう一つの特定の態様において、使用される核酸分
子は、ゲノムの所望の部位での相同的組換えを促進する領域と隣接し、したがって、本発
明 の 核 酸 の 染 色 体 内 発 現 を 提 供 す る 本 発 明 の 核 酸 分 子 を 含 む ( Koller and Smithies, 198
9, PNAS 86:8932; Zijlstra et al., 1989, Nature 342:435) 。
50
(66)
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【0302】
被検者への核酸のデリバリーは、直接であってもよく、この場合は、被検者が核酸また
は核酸を有するベクターに直接さらされるか、または間接的であってもよく、この場合は
、最初に細胞をインビトロで核酸によって形質転換し、次いで被検者に移植される。これ
ら の 2つ の ア プ ロ ー チ は 、 そ れ ぞ れ イ ン ビ ボ ま た は エ キ ソ ビ ボ の 遺 伝 子 治 療 と し て 既 知 で
ある。特定の態様において、核酸配列は、インビボで直接投与される。これは、当該技術
分野において既知の多くのいずれの方法によっても、たとえば、適切な核酸発現ベクター
の一部としてこれらを構築し、これを、たとえば欠損があるか、もしくは弱毒化したレト
ロ ウ イ ル ス 、 ま た は そ の 他 の ウ ィ ル ス ・ ベ ク タ ー ( た と え ば 、 U.S. Patent No. 4,980,28
6を 参 照 さ れ た い ) を 使 用 し て 感 染 さ せ る こ と に よ り 、 細 胞 内 に 入 る よ う に 投 与 す る こ と
10
に よ っ て 、 ま た は 裸 の DNAの 直 接 注 射 に よ っ て 、 ま た は 微 小 粒 子 照 射 ( た と え ば 、 遺 伝 子
銃 ; Biolistic, Dupont) を 使 用 す る こ と に よ っ て 、 ま た は 脂 質 も し く は 細 胞 表 面 受 容 体
またはトランスフェクト薬を被覆するか、リポソーム、微小粒子、もしくはマイクロカプ
セルにカプセル化するか、またはこれらを、細胞(たとえば、膜浸透性配列)および/ま
たは核に入るために既知であるペプチドに対して、たとえばチオエステル結合を介して連
結して投与することによって、これを、受容体依存性のエンドサイトーシスを受けるリガ
ン ド に 連 結 し て 投 与 す る こ と に よ っ て ( た と え ば 、 Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 26
2:4429を 参 照 さ れ た い ) ( こ れ は 、 受 容 体 を 特 異 的 に 発 現 す る 標 的 細 胞 タ イ プ に 使 用 す る
ことができる)、その他によって達成することができる。もう一つの態様において、核酸
-リ ガ ン ド の 複 合 体 で あ っ て 、 リ ガ ン ド が fusogenicウ ィ ル ス ・ ペ プ チ ド 含 み 、 エ ン ド ソ ー
20
ムを崩壊させることができ、核酸をリソソームによる分解から回避することができる複合
体を形成させることができる。さらにもう一つの態様において、核酸は、特異的な受容体
をターゲットすることによって、細胞特異的な取り込みおよび発現をインビボでターゲッ
ト す る こ と が で き る 、 ( た と え ば 、 International Publication Nos. WO 92/06180; WO 9
2/22635; W092/203 16; W093/14188, WO 93/20221を 参 照 さ れ た い ) 。 あ る い は 、 核 酸 は
、 相 同 的 組 換 え に よ っ て 細 胞 内 に 導 入 す る こ と 、 お よ び 発 現 の た め に 宿 主 細 胞 DNA内 に 組
み 込 む こ と が で き る ( Koller and Smithies, 1989, PNAS 86:8932; and Zijlstra et al.
, 1989, Nature 342:435) 。
【0303】
特定の態様において、本発明の核酸配列を含むウィルス・ベクターが使用される。たと
30
え ば 、 レ ト ロ ウ イ ル ス の ベ ク タ ー を 使 用 す る こ と が で き る ( Miller et al., 1993, Meth.
Enzymol. 217:581を 参 照 さ れ た い ) 。 こ れ ら の レ ト ロ ウ イ ル ス ベ ク タ ー は 、 ウ ィ ル ス ゲ
ノ ム を 適 切 に パ ッ ケ ー ジ ン グ し 、 宿 主 細 胞 DNA内 に 組 込 む た め に 必 要 な 成 分 を 含 む 。 遺 伝
子 治 療 に 使 用 さ れ る 核 酸 配 列 は 、 1つ ま た は 複 数 の ベ ク タ ー に ク ロ ー ン 化 さ れ て お り 、 こ
れにより、被検者への核酸のデリバリーが容易になる。レトロウイルスベクターについて
の よ り 多 く の 詳 細 は 、 Boesen et al., 1994, Biotherapy 6:291-302, Clowes et al., 19
94, J. Clin. Invest. 93:644-651; Klein et al., 1994, Blood 83:1467-1473; Salmons
and Gunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4:129-141; and Grossman and Wilson, 1993
, Curr. Opin. in Genetics Devel. 3:110-114に お い て 見 出 さ れ る 。
【0304】
40
アデノウイルスは、遺伝子治療に使用することができるその他のウィルス・ベクターで
ある。アデノウイルスは、特に呼吸器の上皮に遺伝子を送達するための魅力的な媒体であ
る。アデノウイルスは、天然では呼吸器の上皮に感染し、ここでこれらが軽度の疾患を生
じさせる。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという利点を有する。
Kozarsky and Wilson, 1993, Current Opinion in Genetics Development 3:499は 、 ア デ
ノ ウ イ ル ス に 基 づ い た 遺 伝 子 治 療 の 総 説 を 示 す 。 Bout et al., 1994, Human Gene Therap
y 5:3-10 で は 、 ア カ ゲ ザ ル の 呼 吸 器 の 上 皮 に 遺 伝 子 を 導 入 す る た め の ア デ ノ ウ イ ル ス ベ
ク タ ー の 使 用 を 証 明 し た 。 遺 伝 子 治 療 に お け る ア デ ノ ウ イ ル ス の 使 用 の そ の 他 の 例 は 、 Ro
senfeld et al., 1991, Science 252:431; Rosenfeld et al., 1992, Cell 68:143; Mast
rangeli et al., 1993, J. Clin. Invest. 91:225; International Patent Publication
50
(67)
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No. W094/12649; and Wang et al., 1995, Gene Therapy 2:775に お い て 見 出 す こ と が で
きる。好ましい態様において、アデノウイルスベクターが使用される。また、アデノ随伴
ウ ィ ル ス ( AAV) も 、 遺 伝 子 治 療 に 使 用 す る た め に 提 案 さ れ た ( Walsh et al., 1993, Pro
c. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300; and U.S. Patent No. 5,436,146) 。
【0305】
細胞に外来遺伝子を導入のために、多くの技術が当該技術分野において既知であり(た
と え ば Loeffler and Behr, 1993, Meth. Enzymol. 217:599; Cohen et al., 1993, Meth.
Enzymol. 217:618を 参 照 さ れ た い ) 、 レ シ ピ エ ン ト 細 胞 の 必 要 な 発 達 上 お よ び 生 理 的 な
機能が崩壊しないことを条件として、本発明に従って使用してもよい。本技術は、細胞に
対する核酸の安定な導入を提供するはずであり、その結果、核酸は、細胞によって発現可
10
能であり、好ましくは遺伝性であり、その細胞子孫によって発現可能である。
【0306】
6.実 施 例 : Dsc変 異 体 の 同 定 6.1 材 料 お よ び 方 法 6.1.1 一 般 的 な 方 法 お よ び 株 ほ と ん ど の 株 は 、 野 生 型 線 虫 N2ブ リ ス ト ル 株 に 由 来 し て お り 、 記 載 さ れ て い る よ う に 培
養 し た ( Brenner, 1974, Genetics 77:71-94) 。 一 部 の 連 鎖 解 析 の た め に 、 配 列 に タ グ を
付 け た 部 位 ( STS) を 使 用 し て 、 野 生 型 RW7000株 を 使 用 し た 。 全 て の 動 物 は 、 特 に 明 記 し
な い 限 り 20℃ で 培 養 し た 。 使 用 し た 遺 伝 子 、 対 立 遺 伝 子 、 お よ び STSsは 、 以 下 の 通 り で あ
る:
20
LGI: bli-4( e937) 、 stP124; LGII: rol-6( e187) 、 rol-1( e91) 、 unc-52( su250ts
) 、 maP1; LGIII: daf-2( e1368) 、 dpy-17( e164) 、 clk-1( qm30) 、 unc-32( e189) 、
dec-7( sa296) 、 vab-7( e1562) ; LGIV: flr-3( ut9) 、 dpy-9( e12) 、 unc-33( e204)
、 unc-5( e53) 、 unc-31( e928) 、 dpy-4( e1166sd) 、 sP4; LGV: unc-34( e315) 、 dpy11( e224) 、 stP192; LGX: lin-15( n765) 、 flr-4( ut7) 、 unc-3( e151) 、 lon-2( e67
8) 、 unc-2( e55) 、 stP103。
【0307】
6.1.2 サ プ レ ッ サ ー 突 然 変 異 の 単 離 clk-1( qm30) 動 物 は 、 記 載 さ れ て い る と お り に 25mMの エ チ ル メ タ ン ス ル ホ ナ ー ト ( EMS
) に よ っ て 変 異 誘 発 し た ( Sulston and Hodgkin, 1988, Methods, pp. 587-606 in The N
30
ematode Caenorhabditis elegans, edited by W. B. Wood. Cold Spring Harbor Laborat
ory, Cold Spring Harbor, N.Y.) 。 5匹 の 変 異 誘 発 さ れ た 雌 雄 同 体 ( P0) の 群 を 60mmの ペ
ト リ 皿 に ま い て 、 自 己 受 精 さ せ た 。 25匹 の F1動 物 の 群 を 若 年 成 体 と し て 90mmの プ レ ー ト に
移 し て 、 ∼ 24時 間 の 卵 を 産 ま せ た 。 F2動 物 は 、 そ れ ぞ れ 20℃ で 1回 の 排 便 サ イ ク ル を 記 録
した。特定のサプレッサー突然変異が、形態学的またはその他の行動の欠陥を生じさせな
い と い う 仮 定 に 基 づ い て 、 野 生 型 に 見 え て い る 動 物 だ け を 記 録 し た 。 最 高 50匹 の F2動 物 を
それぞれのプレートから記録し、同じ突然変異を有する複数の虫を記録する確率を最小に
し た 。 65秒 未 満 の 排 便 サ イ ク ル 長 を 有 し た 動 物 を 60mmの プ レ ー ト に 拾 っ て 、 選 び 出 し 、 自
己 受 精 さ せ た 。 選 び 出 さ れ た 候 補 虫 の 子 孫 ( F3) を 排 便 に つ い て 記 録 し た ; F3世 代 の 中 で
有意な比率の速い排便の虫を有した株だけを、さらなる遺伝的および表現型の解析のため
40
に 維 持 し た 。 合 計 5421匹 の F2動 物 を ス ク リ ー ニ ン グ し た ( 2134の 単 相 体 の ゲ ノ ム に 相 当 す
る 数 ) ( Ellis and Horvitz, 1991, Development 112:591-603) 。
【0308】
6.1.3 サ プ レ ッ サ ー 突 然 変 異 の マ ッ ピ ン グ 突 然 変 異 は 、 3つ の 方 法 の う ち の 1つ の 染 色 体 に 連 鎖 し た 。 野 生 型 ( clk-1( +) ) バ ッ ク
グ ラ ン ド に マ ッ プ す る こ と が で き る 突 然 変 異 に つ い て 、 DA438株 ( qm133の た め に 、 qm141
) を 使 用 す る こ と に よ っ て ( Avery, 1993, Genetics 133: 897-917) 、 ま た は 記 載 さ れ て
い る よ う に ( Williams, 1995, Genetic Mapping with Polymorphic Sequence-Tagged Sit
es, pp. 81-95 in Caenorhabditis elegans: Modern Biological analysis of an Organ
ism, edited by H. F. Epstein and D. C. Shakes. Academic Press, San Diego) 野 生 型
50
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RW7000株 を 使 用 し て PCR解 析 ( qm142の た め に 、 qm183) に よ り STSに 対 す る 連 鎖 を 試 験 す る
ことによって、いずれかによって連鎖解析を行った。野生型バックグランドよりも明らか
で な い 表 現 型 を 有 す る か 、 ま た は STSに 連 鎖 す る こ と が で き な い 突 然 変 異 に つ い て は 、 そ
れ ぞ れ の 染 色 体 に 対 す る 連 鎖 を 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド ( qm178、 qm179、 qm180、
qm182、 お よ び qm184の た め の ) の 可 視 マ ー カ ー を 含 む 突 然 変 異 株 を 使 用 し て 別 々 に 試 験 し
た 。 qm166に つ い て は 、 こ れ が clk-1( qm30) に 密 接 に 連 鎖 す る こ と が 見 い だ さ れ た の で 、
正式な連鎖解析は必要ではなかった。一旦染色体に対する連鎖が確立されるたなら、突然
変 異 を 2お よ び 3点 の マ ッ ピ ン グ ・ ス ト ラ テ ジ ー を 使 用 し て よ り 正 確 に マ ッ プ し た 。
【0309】
マ ー カ ー 効 果 を 回 避 す る た め に 、 大 部 分 の 3点 マ ッ ピ ン グ 実 験 に つ い て は 、 ホ モ 接 合 性
10
の 組 換 え 子 孫 を F2組 換 え 動 物 か ら 単 離 し 、 ホ モ 接 合 性 の 変 異 体 の 雄 と 交 雑 さ せ た 。 排 便 は
、 F1交 雑 子 孫 で 記 録 し た 。 qm133は 、 排 便 サ イ ク ル 長 に 加 え て 、 乏 し い 、 飢 餓 し た 見 か け
を 含 む 記 録 す る こ と が で き る そ の 他 の 表 現 型 を 有 す る の で 、 qm133の 全 て の マ ッ ピ ン グ で
は 、 従 来 法 を ( 組 換 え F2動 物 を 選 び 出 し 、 F3世 代 の 1/4の qm133動 物 の 存 在 を ス コ ア す る こ
と に よ っ て ) 使 用 し た 。 qm133、 qm141、 お よ び qm183の 全 て の マ ッ ピ ン グ は 、 clk-1( +)
バ ッ ク グ ラ ン ド の 株 で 行 い 、 20℃ で 記 録 し ; qm179、 qm180、 qm182、 お よ び qm184の 全 て の
マ ッ ピ ン グ は 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド の 株 で 行 い 、 25℃ で 記 録 し た 。 ま た 、 qm142
の マ ッ ピ ン グ は 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド で 行 い 、 20℃ で 記 録 し た 。 qm142が 優 性 効
果 を 有 す る の で 、 clk-1( qm30) の 雄 と の ホ モ 接 合 性 の 組 換 え 子 孫 を 交 雑 さ せ て 、 こ こ れ
ら が 成 体 期 に 達 し た あ と に 48時 間 後 に 、 qm142の 優 性 効 果 が 最 も 強 い と き に 、 F1動 物 を 記
20
録 す る と に よ っ て マ ッ プ し た 。 マ ッ ピ ン グ ・ デ ー タ は 、 表 2に 要 約 し て あ る 。
【0310】
6.1.4 補 完 試 験 補完試験は、異なる突然変異が、同じ遺伝子領域にマップされるように見えるときに、
ま た は 突 然 変 異 が 、 以 前 に dec遺 伝 子 が マ ッ プ さ れ た 領 域 に 位 置 す る と き に 行 っ た 。 通 常
、 1つ の 突 然 変 異 に つ い て ホ モ 接 合 性 の 雄 を そ の 他 の 突 然 変 異 に つ い て ホ モ 接 合 性 の 雌 雄
同 体 に 交 配 し 、 ト ラ ン ス ヘ テ ロ 接 合 性 の F1動 物 に お い て 排 便 を 記 録 し た 。 こ の 方 法 で は :
qm166お よ び qm178は 、 互 い に 、 お よ び 以 前 に 同 定 さ れ た 変 異 体 dec-7( sa296) を 補 完 す る
こ と が で き 、 従 っ て こ れ ら は 全 て 対 立 形 質 で あ る 可 能 性 が 高 い 。 同 様 に 、 qm179、 qm184、
お よ び qm180は 、 全 て 互 い に 補 完 す る こ と が で き ず 、 従 っ て 全 て 対 立 形 質 で あ る 可 能 性 が
30
高 い 。 qm133は 、 flr-4領 域 に 位 置 す る が 、 flr-4( ut7) を 補 完 し 、 こ れ ら が 異 な っ た 遺 伝
子 を 定 義 す る こ と を 示 唆 す る 。 同 様 に 、 qm182は 、 flr-3領 域 に 位 置 す る が 、 flr-3( ut9)
を補完し、これらが異なった遺伝子を定義することを示唆する。
【0311】
6.1.5 行 動 解 析 排 便 は 、 特 に 明 記 し な い 限 り 、 こ れ ら の 成 体 期 の 1 日 目 の 雌 雄 同 体 に お い て 20℃ で 記 録
し た 。 排 便 サ イ ク ル 長 は 、 2回 の 連 続 す る 排 便 の pBoc工 程 間 の 期 間 と し て 定 義 し た 。 そ れ
ぞ れ の 動 物 で は 、 5回 の 連 続 し た サ イ ク ル ( 6回 の 連 続 し た pBocs) に つ い て 記 録 し 、 平 均
および標準偏差を算出した。記録期間の間に動物が顕微鏡灯によって加熱されることを防
止するために、プレートは、「吸熱器」(水で満たされるシャーレ)上に配置し、動物は
40
最 大 で 15分 間 ま で こ れ ら か ら 記 録 し た だ け で あ っ た 。
【0312】
6.1.6 温 度 シ フ ト 実 験 動 物 は 、 20℃ で 培 養 し 、 若 年 成 体 と 同 様 に 15℃ ま た は 25℃ へ 移 し た 。 次 い で 、 動 物 を そ
の 温 度 へ 移 し て か ら 2∼ 6時 間 後 に 15℃ ま た は 25℃ で 記 録 し た 。 プ レ ー ト の 温 度 を 15度 に 維
持 す る こ と が 困 難 で あ っ た の で 、 こ の 温 度 で 3回 の 連 続 し た サ イ ク ル に つ い て 動 物 を 記 録
し た だ け で あ り 、 1匹 の 動 物 を 記 録 す る た め に 必 要 と さ れ る 時 間 だ け プ レ ー ト を 顕 微 鏡 に
維持した。
【0313】
6.1.7 qm142の 時 間 経 過 研 究 50
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ヘ テ ロ 接 合 性 の dsc-2( qm142) / +動 物 を 作 製 す る た め に 、 dsc-2( qm142) dpy-11( e22
4) 動 物 を N2雄 と 交 配 し た 。 qm30; qm142/ +動 物 、 clk-1( qm30) を 作 製 す る た め に ; unc5( e53) 雌 雄 同 体 を clk-1( qm30) ; dsc-2( qm142) 雄 と 交 配 さ せ た 。 後 期 L4段 階 で 、 F1
世 代 動 物 を プ レ ー ト に 拾 い 、 3時 間 後 に 検 査 し た 。 こ の 期 間 中 に 成 体 に 脱 皮 し た 動 物 を 実
験 に 使 用 し 、 間 隔 の 終 わ り に 1.5時 間 齢 の 成 体 で あ る と み な し た 。 そ れ ぞ れ の 時 点 に つ い
て の そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 型 の 試 料 規 模 は 、 ∼ 10で あ る 。 同 一 セ ッ ト の 動 物 を 異 な る 時 点 で 記
録した。
【0314】
6.1.8 統 計 解 析 N2お よ び clk-1( qm30) 変 異 体 が 、 15℃ お よ び 25℃ で 記 録 し た と き に 、 20℃ で こ れ ら を
10
培養して記録されたときとは異なっているかどうかを決定するために、試料の不均等な分
散 を 考 慮 し て 2試 料 ス チ ュ ー デ ン ト t検 定 を 行 っ た 。 20℃ 対 15℃ で 、 N2お よ び clk-1( qm30
) の 両 方 に 関 し て 非 常 に 有 意 差 ( p<0.05) が 見 い だ さ れ た 。 有 意 差 は 、 20℃ 対 25℃ で の N2
に つ い て ( p=0.40) 、 ま た は 20℃ 対 25℃ で の clk-1( qm30) に つ い て ( p=0.27) は 、 検 出
さ れ な か っ た 。 ま た 、 N2お よ び clk-1( qm30) 変 異 体 で は 、 20℃ で 培 養 し て 、 15℃ お よ び 2
5℃ で 記 録 し た と き に 、 20度 で こ れ ら を 培 養 し て 記 録 さ れ た と き と は 異 な っ て い る か ど う
か を 決 定 す る た め に 、 2試 料 ス チ ュ ー デ ン ト t検 定 を 行 っ た 。 20℃ 対 15℃ ( p=0.29) で 、 お
よ び 20℃ 対 25℃ ( p=0.99) で 、 clk-1( qm30) を 除 く 全 て の 比 較 に お い て 非 常 に 有 意 差 ( p
<0.001) が 見 い だ さ れ た 。 ま た 、 そ れ ぞ れ の サ プ レ ッ サ ー 突 然 変 異 が 、 あ ら ゆ る 温 度 で 、
clk-1( qm30) を 有 す る そ れ ぞ れ の clk-1( qm30) 二 重 突 然 変 異 体 株 と clk-1( +) を 有 す る
20
あ ら ゆ る clk-1( +) 突 然 変 異 株 と を 比 較 す る こ と に よ っ て 排 便 サ イ ク ル に 対 し て 有 意 な 効
果 を 有 す る か ど う か を 決 定 す る た め に 、 2試 料 ス チ ュ ー デ ン ト t検 定 を 行 っ た 。 以 下 を 除 く
全 て の 比 較 に お い て 非 常 に 有 意 差 ( p<0.001) が 見 い だ さ れ た : 15℃ ( p=0.34) お よ び 25
℃ ( p=0.97) で の clk-1( qm30) dec-7( qm166) 対 clk-1( qm30) ; 15℃ ( p=0.83) お よ び
25℃ ( p=0.15) で の clk-1( qm30) dec-7( qm178) 対 clk-1( qm30) ; clk-1( qm30) ; 15
℃ ( p=0.80) で の dsc-3( qm184) 対 clk-1( qm30) ; clk-1( qm30) ; 20℃ ( p=0.12) お よ
び 25℃ ( p=0.31) で の 10( qm183) 対 clk-1( qm30) 。
【0315】
6.2 clk-1変 異 体 の 排 便 サ イ ク ル 表 現 型 線 虫 ( Caenorhabditis elegans) の 排 便 は 、 常 同 的 な 運 動 プ ロ グ ラ ム の 周 期 的 な 活 性 化
30
に よ っ て 達 成 さ れ る 。 野 生 型 動 物 に お い て 、 排 便 サ イ ク ル 長 は 56秒 で あ り 、 3.4秒 だ け の
標 準 偏 差 で あ る ( 20℃ で ) 。 前 述 し た よ う に ( Felkai et al., 1999、 EMBO J 18: 1783∼
1792、 お よ び Wong et al.( 1995) Genetics 139: 1247-1259) 、 clk-1変 異 体 で は 、 排 便
サ イ ク ル の 長 さ が 増 大 さ れ 、 よ り 不 規 則 に な り : clk-1( qm30) 動 物 で は 、 サ イ ク ル 長 は
、 88秒 で あ り 、 14秒 の 標 準 偏 差 で 、 よ り 弱 い 対 立 遺 伝 子 clk-1( e2519) で は 、 77秒 で あ り
7秒 の 標 準 偏 差 で あ る ( 20℃ で ) ( 表 1) 。
【0316】
野 生 型 お よ び clk-1変 異 体 虫 の 排 便 サ イ ク ル 長 に 対 す る 温 度 の 効 果 を 検 査 す る た め に 、 1
5℃ ま た は 25℃ で 2世 代 の 間 虫 を 発 生 さ せ て 、 こ れ ら が 発 生 さ れ た 温 度 で 記 録 し た 。 clk-1
変 異 体 は 、 全 て の 温 度 で 野 生 型 よ り も 緩 徐 で あ り 、 両 遺 伝 子 型 で は 、 15℃ で 培 養 し て 記 録
40
し た と き に は 、 20℃ 培 養 し て 記 録 し た と き よ り 有 意 に 長 い サ イ ク ル を 有 し た ( デ ー タ 示 さ
ず ) 。 対 照 的 に 、 野 生 型 ま た は 変 異 体 虫 を 25℃ で 培 養 し て 、 記 録 し た と き は 、 排 便 速 度 は
、 20℃ の も の と 有 意 な 相 違 は な か っ た ( デ ー タ 示 さ ず ) 。
【0317】
排 便 サ イ ク ル 長 に 対 す る 温 度 変 化 の 影 響 変 化 を 野 生 型 お よ び clk-1虫 に お い て 検 査 し た
。 20℃ か ら 25℃ に 移 し た 野 生 型 虫 は 、 13秒 ま で 平 均 サ イ ク ル 長 が 減 少 さ れ た が 、 20℃ か ら
15℃ に 移 し た 野 生 型 虫 は 、 平 均 サ イ ク ル 長 を 26秒 ま で 増 大 さ せ た 。 こ の 調 整 は 、 非 常 に 迅
速 に 起 こ り 、 た と え ば 、 野 生 型 虫 は 5分 を 記 録 し 、 ま た は こ れ ら が 25℃ に 移 さ れ た 2∼ 6時
間 後 に は 、 実 質 的 に 同 様 の サ イ ク ル 長 の 減 少 が あ っ た ( デ ー タ 示 さ ず ) 。 25℃ で 発 生 し て
、 記 録 し た 野 生 型 虫 の 排 便 サ イ ク ル は 、 虫 を 20℃ で 発 生 し 、 次 い で 記 録 の た め に 25℃ に 移
50
(70)
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したときよりも実際に緩徐である点に留意されたい。これは、虫が発症の間により高い温
度に適応されたか、または気候順化し、したがって、その温度で記録したときにあまり影
響 を 受 け な か っ た こ と を 示 唆 し た 。 し か し 、 虫 を 15℃ ま た は 20℃ で 発 生 し た が ど う か に よ
っ て は 、 15℃ で 記 録 し た と き に 排 便 サ イ ク ル の 長 さ に 影 響 を 及 ぼ さ な か っ た 。
【0318】
野 生 型 虫 で の 観 察 と は 対 照 的 に 、 clk-1変 異 体 は 、 新 た な 温 度 に 移 さ れ た 後 に こ れ ら の
排 便 サ イ ク ル の 長 さ を 再 調 整 す る こ と が で き な か っ た 。 clk-1変 異 体 が 20℃ か ら 25℃ に 、
ま た は 20℃ か ら 15℃ に 、 い ず れ か に 移 さ れ た と き に 、 平 均 サ イ ク ル 長 の 変 化 は な か っ た (
表 1) 。 こ れ は 、 20℃ に 適 応 さ れ た 変 異 体 が 、 温 度 シ フ ト に よ り 排 便 サ イ ク ル 長 を 再 調 整
す る こ と が で き ず 、 し た が っ て 、 野 生 型 clk-1の 活 性 が 調 整 を 生 じ さ せ る た め に 必 要 と さ
10
れることを示唆した。
【0319】
6.3 緩 徐 な 排 便 表 現 型 を 抑 制 ス ク リ ー ン clk-1と 相 互 作 用 し て 排 便 サ イ ク ル 長 を 調 節 す る 遺 伝 子 を 同 定 す る た め に 、 clk-1の 抑 制
因 子 の た め の ス ク リ ー ン を 行 っ た 。 単 離 さ れ る 突 然 変 異 は 、 clk-1を 抑 制 す る こ と が で き
、 排 便 サ イ ク ル の 長 さ を 野 生 型 虫 の も の ま で 回 復 す る こ と が で き る も の で あ っ た 。 clk-1
( qm30) の 虫 を EMSで 変 異 誘 発 し 、 第 二 世 代 の ( F2) 動 物 で は 、 そ れ ぞ れ の 20℃ で 1回 の 排
便 サ イ ク ル に つ い て 直 接 記 録 し た 。 65秒 未 満 の サ イ ク ル 長 を 有 し た 動 物 を さ ら な る 解 析 の
た め に 維 持 し た 。 こ の よ う に 、 5421匹 の F2動 物 ( ∼ 2134単 相 体 ゲ ノ ム の 同 等 物 ) を ス ク リ
ー ニ ン グ し て 、 8つ の サ プ レ ッ サ ー 突 然 変 異 を 同 定 し た 。 こ れ ら の 突 然 変 異 の う ち の 7つ は
20
、 劣 性 で あ り 、 1つ の 突 然 変 異 dsc( qm142) は 、 優 性 の 効 果 を 有 し た ( 以 下 に 詳 細 に 記 載
し て あ る ) 。 行 っ た マ ッ ピ ン グ お よ び 補 完 試 験 に 基 づ い て ( 表 2) 、 こ れ ら の 突 然 変 異 は
、 4つ の 新 た な 補 完 群 を 定 義 し 、 こ れ ら は clk-1の 排 便 抑 制 因 子 に 関 す る dscと 呼 ん だ 。 2つ
の 突 然 変 異 、 qm166お よ び qm178は 、 以 前 に 同 定 さ れ た Dec-s遺 伝 子 dec-7の 対 立 遺 伝 子 で あ
っ た 。 2つ の そ の 他 の 劣 性 突 然 変 異 は 、 ス ク リ ー ニ ン グ に よ っ て 単 離 さ れ 、 dsc( qm141)
お よ び dsc( qm183) は 、 排 便 に 影 響 を 及 ぼ し た が 、 clk-1( qm30) を 抑 制 し な か っ た 。
【0320】
6.4 Dsc抑 制 因 子 の 解 析 抑制因子変異体の表現型を多くの異なる方法で解析した。スクリーニングで同定された
突 然 変 異 の 全 て が 、 野 生 型 clk-1バ ッ ク グ ラ ン ド お よ び clk-1( e2519) ( 部 分 的 な clk-1活
30
性 を 有 す る 対 立 遺 伝 子 ) バ ッ ク グ ラ ン ド で も 単 離 さ れ た 。 排 便 サ イ ク ル の 長 さ を dscの 単
一 変 異 体 お よ び dsc/clk-1二 重 突 然 変 異 体 で 記 録 し た 。 こ の よ う な ス コ ア リ ン グ は 、 20℃
で 、 並 び に 15℃ お よ び 25℃ に 移 し た 後 に 行 っ た 。 結 果 は 、 表 1に 示 し て あ る 。
【0321】
6.4.1 clk-1( qm130) ま た は 野 生 型 バ ッ ク グ ラ ン ド で の 効 果 抑 制 因 子 を 、 温 度 シ フ ト ( 特 に 25℃ に ) 後 に こ れ ら が clk-1( qm30) を 抑 制 す る 能 力 差
に 基 づ い て 2つ の 異 な る ク ラ ス に 分 類 し た 。 ク ラ ス I変 異 体 は 、 20℃ で 、 並 び に 25℃ へ の 変
化 の 後 に 強 力 に clk-1( qm30) を 抑 制 す る 。 こ の ク ラ ス に 分 類 さ れ た 単 離 さ れ た 変 異 体 は
、 dsc-3( qm179、 qm180、 qm184) お よ び dsc-4( qm182) で あ っ た 。 25℃ で 、 dsc-3( qm179
) ( こ の 点 で 最 も 強 い 変 異 体 ) は 、 変 異 体 の 排 便 サ イ ク ル 長 を 野 生 型 長 よ り も 短 い clk-1
40
( qm30) 短 く し た 。 従 っ て 、 異 な る 温 度 で の ク ラ ス I dsc/clk-1( qm30) 二 重 突 然 変 異 体
の 排 便 プ ロ フ ィ ー ル は 、 実 質 的 に 野 生 型 の も の と 同 様 で あ る ( す な わ ち 、 15℃ で 最 も 緩 徐
で 、 25℃ で 最 も 急 速 ) 。 従 っ て 、 こ れ ら の 変 異 体 は 、 20℃ で 培 養 し て 記 録 し た と き の clk1( qm30) 変 異 体 の 長 い 排 便 サ イ ク ル を 抑 制 し 、 並 び に 20℃ で 培 養 し 、 次 い で 別 の 温 度 に
移したときの温度非感受性を抑制した。
【0322】
ク ラ ス I変 異 体 と は 対 照 的 に 、 ク ラ ス II変 異 体 は 、 温 度 シ フ ト 後 に 弱 く ( dsc-1( qm133
) お よ び dsc-2( qm142) ) 抑 制 さ れ る だ け か 、 ま た は 全 く ( dec-7( qm166、 qm178) ) 抑
制 さ れ な か っ た 。 こ れ は 、 こ れ ら の 変 異 体 が 20℃ で clk-1( qm30) 変 異 体 の 長 い 排 便 サ イ
ク ル を 抑 制 し た が 、 こ れ ら が 温 度 シ フ ト 後 に clk-1( qm30) 変 異 体 が こ れ ら の 排 便 サ イ ク
50
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ル長を再調整する能力がなくなるのを抑制することができないことを示唆した。
【0323】
ク ラ ス Iお よ び ク ラ ス II変 異 体 は 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド よ り も 表 現 型 野 生 型 バ
ッ ク グ ラ ン ド で よ く 似 て い る が 、 ク ラ ス I変 異 体 は 、 一 般 に 、 特 に 15℃ お よ び 20℃ で 、 ク
ラ ス II変 異 体 よ り も 野 生 型 で 弱 い 効 果 を 有 し た 。 全 て の 突 然 変 異 は 、 全 て の 温 度 で 有 意 に
排 便 サ イ ク ル の 長 さ を 減 少 さ せ 、 ク ラ ス Iお よ び ク ラ ス II変 異 体 は 両 方 と も 、 野 生 型 と 同
じ 温 度 の 変 化 に 反 応 し て 変 化 し た ( す な わ ち 、 排 便 は 、 25℃ で 最 も 急 速 で あ り 、 15℃ で 最
も 緩 徐 で あ っ た 。 ) 。 こ れ は 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド で の 25℃ の ク ラ ス II変 異 体
の 効 果 の 欠 如 は 、 dsc突 然 変 異 が 、 い ず れ も 本 質 的 に 温 度 感 受 性 で あ る こ と に 起 因 し な い
で あ ろ う こ と を 示 す 。 全 体 と し て 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド で の 観 察 で は 、 2つ の 異
10
な っ た 相 互 作 用 の ク ラ ス が あ り 、 異 な る ク ラ ス の 遺 伝 子 が 異 な る 様 式 で clk-1と 相 互 作 用
することを示唆する。
【0324】
6.4.2 clk-1( e2519) バ ッ ク グ ラ ン ド で の 効 果 dsc突 然 変 異 を clk-1( e2519) バ ッ ク グ ラ ン ド で 再 び 単 離 し 、 こ れ は 、 clk-1( qm30) よ
り も 弱 い 表 現 型 を 有 し た 。 clk-1( e2519) / dsc二 重 突 然 変 異 体 の 排 便 サ イ ク ル 長 は 、 clk
-1( qm30) / dsc二 重 突 然 変 異 体 の も の よ り も 短 か っ た が 、 相 違 は 、 通 常 非 常 に 小 さ か っ
た ( 表 1; dsc-5( qm141) の 特 別 な 場 合 の 記 述 に つ い て 下 記 を 参 照 さ れ た い ) 。
【0325】
抑 制 因 子 を ス ク リ ー ニ ン グ す る 一 方 で 、 強 力 に clk-1( qm30) を 抑 制 す る 突 然 変 異 を 単
20
離 す る こ と が で き な か っ た へ ん い た い か ら 、 多 く の 候 補 株 が 単 離 さ れ た 。 し か し 、 2つ の
ケースにおいて、候補株から、排便の速度に有意に影響を及ぼした突然変異を分離した。
こ れ ら の 突 然 変 異 の う ち の 1つ dsc-5( qm141) は 、 全 て の 温 度 で 、 野 生 型 虫 の 排 便 サ イ ク
ル に 対 し て 、 並 び に clk-1( e2519) 変 異 体 に 対 し て 強 力 な 効 果 を 有 し た が 、 全 て の 温 度 で
clk-1( qm30) 変 異 体 に 対 し て は 非 常 に 弱 い が 、 有 意 な 効 果 を 有 し た 。 こ れ は 、 dsc-5( qm
141) が ヌ ル 変 異 体 ( qm30) に 対 し て わ ず か な 影 響 を 及 ぼ す が 、 部 分 的 な 機 能 喪 失 突 然 変
異 clk-1( e2519) を 完 全 に 抑 制 し た の で 、 こ れ は 、 clk-1を 介 し て 主 に 作 用 し て い る か も
し れ な い こ と を 示 唆 す る 。 ま た 、 単 離 さ れ た そ の 他 の 突 然 変 異 qm183は 、 全 て の 温 度 で 野
生 型 虫 の 排 便 サ イ ク ル に 対 し て 有 意 な 効 果 を 有 し た が 、 clk-1( e2519) ま た は clk-1( qm3
0) 変 異 体 を 抑 制 す る こ と が で き な か っ た 。 従 っ て 、 clk-1( qm30) 変 異 体 の 緩 徐 な 排 便 は
30
、単に野生型の排便サイクル長を減少させるすべての突然変異によって抑制することがで
きるというわけでないことが明らかである。実際に、いくつかの突然変異は、排便サイク
ル に 影 響 を 及 ぼ す た め に は 、 完 全 な ( す な わ ち qm183) ま た は 最 も 少 な く 部 分 的 な ( す な
わ ち qm141) 野 生 型 clk-1の 活 性 を 必 要 と す る で あ ろ う 。
【0326】
6.4.3 dsc-2お よ び dec-7の さ ら な る 特 徴 付 け qm142変 異 体 表 現 型 の 強 度 は 、 非 常 に 異 な る 割 合 で あ る と は い え 、 ヘ テ ロ 接 合 体 お よ び
ホモ接合体のいずれの動物においても年齢と共に変化する。時間経過研究を行い、同じ動
物 に お い て 、 こ れ ら が 成 体 に 脱 皮 し た 後 の 異 な る 時 点 で 排 便 を 記 録 し た 。 clk-1( qm30)
バ ッ ク グ ラ ン ド で は 、 ホ モ 接 合 性 の dsc-2( qm142) 動 物 は 、 成 体 に 脱 皮 し た 2時 間 後 の clk
40
-1( qm30) 動 物 と ほ と ん ど 同 じ 程 度 に 緩 徐 で あ る が 、 8時 間 ま で 、 排 便 サ イ ク ル 長 は 、 野
生 型 の 長 さ に 回 復 し 、 18時 間 ま で 、 排 便 サ イ ク ル 長 は 、 野 生 型 の も の よ り 有 意 に 短 い 。 1
つ の dsc-2( qm142) 対 立 遺 伝 子 お よ び 1つ の 野 生 型 dsc-2対 立 遺 伝 子 を も つ clk-1( qm30)
虫 の 排 便 サ イ ク ル 長 は 、 約 40時 間 ま で clk-1( qm30) 動 物 の も の に 非 常 に 似 て い た 。 成 体
に 脱 皮 し た 約 48時 間 後 ま で 、 dsc-2( qm142) / +ヘ テ ロ 接 合 性 の 動 物 は 、 年 齢 が 一 致 す る
野 生 型 動 物 都 道 程 度 の 速 さ の 排 便 サ イ ク ル 長 を 有 し た 。 dsc-2( qm142) / +ヘ テ ロ 接 合 体
は、どの時点でもホモ接合体と同程度に速くなることはなく、有意に速くなるホモ接合体
よ り も 長 時 間 か か り 、 qm142突 然 変 異 の 効 果 は 、 野 生 型 対 立 遺 伝 子 以 上 に 不 完 全 に 優 性 で
あ る 。 ま た 、 こ れ は 、 qm142ヘ テ ロ 接 合 体 お よ び 野 生 型 バ ッ ク グ ラ ン ド で の ホ モ 接 合 体 の
観 察 に よ っ て も 確 認 さ れ た が 、 効 果 は 、 そ れ ほ ど 劇 的 で な か っ た 。 dsc-2( qm142) 対 立 遺
50
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伝子がこの半優性の時間依存効果を有することができる一つの方法は、突然変異により、
野 生 型 dsc-2タ ン パ ク 質 の 機 能 に 干 渉 す る こ と が で き る タ ン パ ク 質 を 生 じ る と い う こ と で
ある。時間とともに変異体産物が蓄積して、変異体表現型の発生度を増大することができ
る。
【0327】
全 て の 抑 制 因 子 変 異 体 は 、 そ れ ぞ れ 5回 の 排 便 サ イ ク ル を 記 録 し た 多 く の 動 物 の 平 均 排
便 サ イ ク ル 長 を 解 析 す る こ と に よ っ て 特 徴 づ け た ( 表 1) 。 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド
に お い て dec-7突 然 変 異 を 有 す る 動 物 は 、 15℃ お よ び 20℃ で 非 常 に 高 い 標 準 偏 差 を 有 し た
が 、 25℃ で は 有 さ な い 。 こ の 変 動 を 4つ の 異 な る 温 度 で clk-1/ dec-7動 物 の 一 回 の 排 便 サ
イ ク ル 長 の 頻 度 を プ ロ ッ ト す る こ と に よ っ て さ ら に 解 析 し た 。 clk-1( qm30) 変 異 体 に つ
10
い て は 、 全 て の 温 度 で 1回 の 頻 度 ピ ー ク だ け が あ っ た が 、 25℃ 以 下 ( た と え ば 、 22.5℃ 、 2
0℃ 、 お よ び 15℃ ) の 3つ の 温 度 で の clk-1/dec-7二 重 突 然 変 異 株 の 両 方 に つ い て は 、 2つ の
ピ ー ク が あ っ た 。 ピ ー ク の う ち の 1つ は 、 他 方 の ピ ー ク が 生 じ る 場 合 の 2倍 の サ イ ク ル 長 で
生 じ る 。 し か し 、 25℃ で は 、 clk-1( qm30) ピ ー ク と 同 時 の 1つ の ピ ー ク だ け が あ る 。
【0328】
こ の パ タ ー ン の 1つ の 解 釈 は 、 clk-1お よ び / ま た は dec-7が 、 排 便 運 動 プ ロ グ ラ ム ( DMP
) の 活 性 化 を サ イ ク ル に 連 関 さ せ る 役 割 を 有 し 、 そ の 結 果 、 clk-1/dec-7二 重 突 然 変 異 体
では、温度の増加と共にますます連関ができなくなる。これが二重のサイクル長を生じる
と 考 え ら れ 、 25℃ で 観 察 さ れ る あ ら ゆ る サ イ ク ル は 、 実 は 二 重 の サ イ ク ル で あ る こ と を 意
味 す る の で あ ろ う 。 複 数 の 分 離 し た サ イ ク ル 長 は 、 野 生 型 clk-1バ ッ ク グ ラ ン ド で の dec-7
変 異 体 に お い て 、 ま た は そ の 他 の ク ラ ス II変 異 体 に お い て 観 察 さ れ ず 、 し た が っ て 、 こ の
現 象 は 、 clk-1/dec-7変 異 体 に 特 異 的 な よ う で あ る 。
【0329】
も う 一 つ の 解 釈 は 、 温 度 の 増 加 と 共 に 、 dec-7に よ る clk-1の 抑 制 の 表 現 率 に 減 少 が あ る
と い う こ と で あ る 。 こ れ は 、 20℃ 、 22.5℃ 、 お よ び 25℃ で は 、 メ イ ン ピ ー ク が 非 抑 制 clk1ピ ー ク と 同 時 で あ る と い う 観 察 に よ っ て 示 唆 さ れ る 。 し か し 、 こ れ は 、 15℃ で 起 こ ら な
ず、この解釈によって説明するのは困難である。
20
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【表1】
10
20
30
40
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【表2】
10
20
30
a
四 角 括 弧 で 与 え ら れ る 遺 伝 子 型 は 、 子 孫 が 2お よ び 3因 子 マ ッ ピ ン グ ・ デ ー タ を 得 る こ
40
と が 記 録 さ れ た F1動 物 で あ る 。
【0330】
b
非 Dpy F2子 孫 は 、 qm182突 然 変 異 の 存 在 に つ い て 記 録 し た ; 分 母 は 、 単 離 さ れ た qm182
動 物 の 数 を 表 し 、 分 子 は 、 ま た 、 dpy-9突 然 変 異 に つ い て ヘ テ ロ 接 合 性 で も あ っ た qm182動
物の数を表す。
【0331】
7.実 施 例 : Dsc-4の 特 徴 付 け 7.1 材 料 お よ び 方 法 7.1.1 株 お よ び 培 養 方 法 動 物 は 、 20℃ で 記 載 さ れ て い る と お り に 培 養 し ( Brenner, 1974, Genetics 77:71-94)
50
(75)
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、 を 特 に 明 記 し な い 限 り 大 腸 菌 株 OP50を 与 え た 。 コ レ ス テ ロ ー ル 欠 枯 渇 実 験 は 、 い ず れ の
コ レ ス テ ロ ー ル ( NGM-C) も 添 加 し な か っ た こ と 以 外 、 OP50と 共 に 播 種 し た 標 準 的 な NGMプ
レ ー ト 上 で 行 わ れ た 。 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 を 検 査 す る 前 に 、 虫 を 二 世 代 以 上 の 間 NGM-Cプ
レートの上で培養した。
【0332】
RNAi実 験 の た め に は 、 虫 を 1mMの IPTGお よ び 50μ g/mL の ア ン ピ シ リ ン を 補 っ た NGMプ レ
ー ト 上 で 培 養 し 、 pPD129.36由 来 の プ ラ ス ミ ド で 形 質 転 換 し た 大 腸 菌 株 HT115を 与 え た 。 P0
sを L4幼 虫 と 同 様 に RNAiプ レ ー ト に 移 し 、 F1世 代 を 検 査 し た 。
【0333】
野 生 型 株 は 、 N2( ブ リ ス ト ル 株 ) で あ っ た 。 以 下 の 突 然 変 異 を 使 用 し た : clk-1( qm30
10
) III; dsc-4( qm182) 、 dpy-9( e12) 、 lin-1( e1026) 、 unc-33( e204) 、 lfe-1/itr-1
/dec-4( sy328) 、 unc-24( e138) 、 let-60( n1046) IV、 sid-1( qt) V。
【0334】
7.1.2 dsc-4の ク ロ ー ニ ン グ お よ び シ ー ケ ン シ ン グ dsc-4は 、 LG IV( -27.6) の 左 腕 に マ ッ プ さ れ た 。 unc-33 dpy-9で の 三 点 マ ッ ピ ン グ 実
験 で は 、 dsc-4が 左 に あ っ た か 、 ま た は dpy-9ま で 非 常 に 近 接 す る こ と が 示 唆 さ れ : clk-1
; dsc-4お よ び clk-1; unc-33 dpy-9の 間 の 交 雑 で は 、 14/14 Unc非 Dpy dsc-4の を 拾 い 、 一
方 で 0/20 Dpy非 Unc dsc-4を 拾 っ た 。 2点 マ ッ ピ ン グ 実 験 で は 組 換 え に よ っ て dpy-9か ら dsc
-4を 分 離 す る こ と が で き な か っ た こ と か ら 、 dsc-4が dpy-9に 非 常 に 近 い こ と を 示 唆 す る が
、 同 様 に dpy-9の 左 に マ ッ プ さ れ る そ の 他 の 遺 伝 子 に つ い て も 既 報 告 で あ り ( Katsura et
20
al., 1994, Genetics 136:145-154) 、 組 換 え は 、 こ の 領 域 に お い て 抑 制 さ れ る 可 能 性 が
高 い 。 こ の 遺 伝 子 領 域 に ざ っ と 対 応 す る 14の コ ス ミ ド を 活 性 の レ ス キ ュ ー に つ い て ア ッ セ
イ し た 。 こ れ ら は 、 3つ の プ ー ル に 分 け て ( プ ー ル 1; C15E6、 T05C7、 B0545、 B0312、 お よ
び F52F6、 プ ー ル 2; R02D3、 T21D12、 K02D7、 F18F11、 AH12、 F40D2、 お よ び T07A9、 プ ー ル
3; M04G7お よ び M02G12) そ れ ぞ れ の プ ー ル を clk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 に 注
射 し た 。 そ れ ぞ れ の プ ー ル に つ い て 、 コ ス ミ ド の 総 濃 度 は 、 15μ g/mLで あ り 、 同 時 注 入 マ
ー カ ー Pt t x - 3 : : gfp( Hobert et al., 1997、 Neuron 19: 345-357) の 濃 度 は 、 185μ g/m
lで あ っ た 。 プ ー ル 2は 、 clk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 ( セ ミ コ ロ ン は 、 別 々 の
染 色 体 状 の 突 然 変 異 を 示 す ) の 迅 速 な 排 便 を レ ス キ ュ ー し た 。 プ ー ル 2の そ れ ぞ れ の コ ス
ミ ド を 個 々 に 試 験 し て 、 コ ス ミ ド K02D7は 、 clk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 を レ ス
30
キ ュ ー す る こ と が 見 い だ さ れ た 。 K02D7上 の 予 測 さ れ る 遺 伝 子 に 対 応 す る PCR産 物 を 個 々 に
試 験 し て 、 Genefinderソ フ ト ウ ェ ア に よ っ て コ ス ミ ド 上 に 存 在 す る と 予 測 さ れ る 遺 伝 子 に
対 応 す る PCR産 物 で 、 か つ K02D7.4( K02D7の う ち の 26654か ら 34896ま で ) と 称 さ れ る も の
が 、 clk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 を レ ス キ ュ ー す る こ と が で き る こ と が 判 明 し
た ( 図 8Aお よ び 8B) 。 こ の PCR産 物 を ネ ス テ ィ ッ ド PCRに よ っ て N2ゲ ノ ム DNAか ら 増 幅 し 、 d
sc-4の 上 流 に 領 域 の 1.6kbを 含 む 。 PCR産 物 を 190μ g/mlの 濃 度 の 同 時 注 入 マ ー カ ー Pt t x - 3
: : gfpと 共 に 2μ g/mlの 濃 度 で 注 射 し た 。
【0335】
qm182突 然 変 異 の 性 質 を 決 定 す る た め に 、 K02D7.4の 予 測 さ れ る 配 列 を clk-1( qm30) 、 c
lk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 の ゲ ノ ム DNA試 料 か ら PCRに よ っ て 増 幅 し た 。 K02D7.
40
4の 予 測 さ れ る 配 列 に 対 応 す る 増 幅 さ れ た ゲ ノ ム DNAの セ ン ス お よ び ア ン チ セ ン ス 鎖 を シ ー
ケ ン ス し た 。 K02D7.4の 予 測 さ れ る ヌ ク レ オ チ ド 配 列 と の 比 較 に よ り 、 2つ の ミ ス セ ン ス 突
然 変 異 が clk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 に 見 い だ さ れ た ( C355Tお よ び G605A) 。 c
DNAの 位 置 354で の C→ T移 行 に よ り 、 タ ン パ ク 質 の 位 置 62で セ リ ン の フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン へ の
置 換 を 生 じ ; cDNAの 位 置 605で の G∼ A移 行 に よ り 、 タ ン パ ク 質 の 位 置 146で ア ラ ニ ン の ス レ
オ ニ ン へ の 置 換 を 生 じ た ( 図 4お よ び 3A) 。 こ れ ら の 突 然 変 異 は 、 clk-1( qm30) 変 異 体 か
ら 得 ら れ る PCR製 産 物 に は な か っ た 。
【0336】
図 4( SEQ ID NO: 1) に 示 し た dsc-4 DNA配 列 は 、 11の エ キ ソ ン を 含 み 、 5'非 翻 訳 の 領 域
に 続 い て ヌ ク レ オ チ ド 塩 基 1∼ 169で 見 い だ す る こ と が で き る 。 ヌ ク レ オ チ ド 塩 基 対 の 位 置
50
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は 、 以 下 の 通 り で あ る : SEQ ID NO: 1の う ち の エ キ ソ ン 1: 170∼ 215、 エ キ ソ ン 2: 216∼ 4
72、 エ キ ソ ン 3: 473∼ 819、 エ キ ソ ン 4: 820∼ 924、 エ キ ソ ン 5: 925∼ 1084、 エ キ ソ ン 6: 1
085∼ 1251、 エ キ ソ ン 7: 1252∼ 1543、 エ キ ソ ン 8: 1544∼ 1738、 エ キ ソ ン 9: 1739∼ 2182。
エ キ ソ ン 10: 2183∼ 252、 9お よ び エ キ ソ ン 11: 2530-2848。 dsc-4配 列 に お い て 、 エ キ ソ ン
・ コ ー ド 領 域 は 、 ヌ ク レ オ チ ド 塩 基 対 2849∼ 2922が 見 い だ さ れ る 3'非 翻 訳 領 域 に 続 い た 。
【0337】
clk-1、 dsc-4突 然 変 異 お よ び 野 生 型 の バ ッ ク グ ラ ン ド を も つ 虫 の 表 現 型 に 対 す る dsc-4
の 配 列 に 基 づ く RNAiの 効 果 を 調 査 し た 。 RNAiは 、 clk-1バ ッ ク グ ラ ン ド の qm182突 然 変 異 を
ほ と ん ど 正 確 に 表 現 型 模 写 す る dsc-4配 列 に 対 し て 向 け た 。 clk-1( qm30) ; dsc-4( RNAi
) 動 物 の 排 便 速 度 、 並 び に 産 卵 速 度 は 、 clk-1( qm30) ; dsc-4( qm182) 変 異 体 の も の と
10
同 様 で あ る 。 dsc-4( RNAi) の 効 果 は 、 clk-1バ ッ ク グ ラ ン ド で の 排 便 ま た は 産 卵 に 関 し て
、 dsc-4突 然 変 異 の も の に 相 加 的 で は な い こ と が 観 察 さ れ た 。 ま た 、 dsc-4( RNAi) は dsc4変 異 体 に お い て 、 い ず れ の 表 現 型 の 明 ら か な 増 強 も 生 じ さ せ な か っ た 。 共 に 、 こ れ ら の
結 果 は 、 そ れ を 証 明 す る 。 お よ び K02D7.4の 予 測 さ れ る 遺 伝 子 配 列 は dsc-4の も の に 対 応 す
る こ と 、 お よ び qm182対 立 遺 伝 子 は 、 強 力 な ま た は 完 全 な 機 能 喪 失 対 立 遺 伝 子 で あ る こ と
を証明する。
【0338】
7.1.3 dsc-4ア ミ ノ 酸 配 列 分 析 dsc-4遺 伝 子 は 、 892残 基 の タ ン パ ク 質 を コ ー ド し 、 ミ ク ロ ソ ー ム ・ ト リ グ リ セ リ ド 転 移
タ ン パ ク 質 ( MTP) の 大 サ ブ ユ ニ ッ ト に 類 似 す る 。 DSC-4は 、 ゲ ノ ム が シ ー ケ ン ス さ れ た あ
20
らゆる動物種において単一の明白な相同体を有するが、植物および単細胞生物には無いよ
うである。相同体間の一致性は、全ての配列全体に及び、特定の領域またはドメインに限
定 さ れ ず 、 脊 椎 動 物 の MTPの DSC-4の 整 列 で は 、 多 数 の ギ ャ ッ プ は 必 要 で な い ( 図 3A) 。 PS
I-blastを 使 用 し て DSC-4を NCBI非 重 複 性 タ ン パ ク 質 デ ー タ ベ ー ス と 比 較 す る と 、 最 高 の ス
コ ア を 有 す る 7つ の タ ン パ ク 質 は 、 真 の 脊 椎 動 物 の MTPで あ る 。 出 願 人 は 、 ア ミ ノ 酸 残 基 19
-295を apoB結 合 ド メ イ ン と し て 、 ア ミ ノ 酸 残 基 296-609を apoBお よ び PDI結 合 ド メ イ ン と し
て 、 お よ び ア ミ ノ 酸 残 基 610-890を 脂 質 結 合 ド メ イ ン と し て 定 義 し た 。 し か し 、 こ れ ら の
ドメインは、厳密ではなく機能的ドメインを定義し、特徴的なモチーフを有するタンパク
質ドメインではない。
【0339】
30
7.1.4 dsc-4 cDNAの シ ー ケ ン シ ン グ 予 測 さ れ る K02D7.4遺 伝 子 に 対 応 す る cDNAク ロ ー ン yk357a6が 同 定 さ れ た 。 cDNAク ロ ー ン
を シ ー ケ ン ス し た 。 ク ロ ー ン 配 列 と K02D7.4配 列 の 配 列 比 較 で は 、 cDNAク ロ ー ン 配 列 が 、 d
sc-4の 完 全 な 5'末 端 を 含 ま な い こ と を 示 し た 。 SL1特 異 的 な プ ラ イ マ ー お よ び dsc-4遺 伝 子
特 異 的 な プ ラ イ マ ー を 用 い て 、 dsc-4の 5'末 端 を 、 選 択 さ れ た RNAが ポ リ dTプ ラ イ マ ー を 使
用 し て 混 合 段 階 の 野 生 型 動 物 か ら 単 離 さ れ た ポ リ ( A) +の 逆 転 写 に よ っ て 作 製 し た 第 1鎖 c
DNAラ イ ブ ラ リ ー か ら 増 幅 し た 。 dsc-4の 5'末 端 に 対 応 す る 混 合 段 階 の 野 生 型 動 物 か ら の cD
NAの セ ン ス お よ び ア ン チ セ ン ス DNA鎖 を シ ー ケ ン ス し た ( 図 4) 。 混 合 段 階 の 野 生 型 動 物 か
ら の dsc-4 cDNAの 配 列 ( SEQ ID NO: 1) は 、 Genefinderに よ っ て K02D7.4で 予 測 さ れ た も
の と は 異 な り : 予 測 さ れ る 第 一 エ キ ソ ン は な く 、 第 2の エ キ ソ ン は 、 予 測 さ れ る よ り 、 5'
40
末端でわずかに長かった。
【0340】
7.1.5 RNA干 渉 RNAi実 験 は 、 記 載 さ れ て い る よ う に 行 っ た ( Kamath et al., 2001, Genome Biol 2:res
earch0002.1-research0002.10) 。 対 照 に は 、 pPD129.36ベ ク タ ー を 形 質 転 換 し た HT115細
菌 を 与 え た 。 生 殖 系 列 お よ び 外 陰 部 発 達 の 表 現 型 は 、 正 常 な NGMプ レ ー ト と 比 較 し て 、 RNA
iプ レ ー ト 上 で 異 な る こ と が 見 い だ さ れ た の で 、 遺 伝 子 作 用 に 対 す る RNA干 渉 の 効 果 を 試 験
し た 全 て の 実 験 に つ い て 、 比 較 の た め に 使 用 し た 対 照 も 、 RNAiプ レ ー ト 上 で 培 養 し た 。 ds
c-4 RNAiク ロ ー ン は 、 pPD129.36の HindIII XhoI部 位 に ク ロ ー ン 化 さ れ た yk357a6の HindII
I-XhoI断 片 で あ っ た 。
50
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【0341】
7.1.6 転 写 お よ び 翻 訳 で の dsc-4: gfp融 合 体 の 構 築 翻 訳 融 合 Pdsc-4: : dsc-4: : gfpは 、 2つ の 工 程 で 構 築 し た 。 工 程 1: dsc-4の 1.6kbの 上
流 の 領 域 ( K02D7の う ち の 30259か ら 34896ま で ) と 5'-末 端 を 含 む PCR産 物 を N2ゲ ノ ム DNAか
ら 増 幅 し ; PCR産 物 か ら 作 製 し た HindIII-XbaI断 片 を pPD95.75に ク ロ ー ン 化 し た 。 工 程 2:
dsc-4( 終 止 コ ド ン を 除 く ) の 3'末 端 を yk357a6( 498か ら 2845ま で ) か ら 増 幅 し ; PCR産 物
か ら 作 製 し た SalI-StuI断 片 を 第 1の ク ロ ー ン の SalIお よ び SmaI部 位 に ク ロ ー ン 化 し た 。 Pd
sc-4: : dsc-4: : gfpク ロ ー ン は 、 100μ g/mlの 同 時 注 入 マ ー カ ー Pttx-3: : gfpと 共 に 10
0μ g/mLで 注 射 し た 。
【0342】
10
転 写 融 合 Pdsc-4( 1.6kb) : : GFPは 、 以 下 の 通 り に 構 築 し た : K02D7.4の 1.6kb上 流 と 最
初 の 22ア ミ ノ 酸 残 基 を 含 む 領 域 ( K02D7の う ち の 32017か ら 34922ま で ) を 増 幅 し た 。 PCR産
物 を pPD95.75の HindIIIお よ び SmaI部 位 に ク ロ ー ン 化 し た 。 Pdsc-4: : GFPは 、 100μ g/mL
の 同 時 注 入 マ ー カ ー pRF4と 共 に 100μ g/mLで 注 射 し た ( こ れ は 、 優 性 突 然 変 異 rol-6( su10
06) を 含 む ) 。
【0343】
7.1.7 表 現 型 解 析 産 卵 速 度 の 時 間 経 過 解 析 : L4段 階 の 動 物 を プ レ ー ト に 拾 い 、 3時 間 後 に 検 査 し た 。 こ の
期 間 中 に 成 体 脱 皮 し た 動 物 を 実 験 に 使 用 し 、 間 隔 の 終 わ り に 1.5時 間 齢 の 成 体 で あ る と み
な し た 。 24時 間 の 間 隔 で 、 動 物 を 選 び 出 し 、 4時 間 の 間 産 卵 さ せ た 。 虫 あ た り に 時 間 に つ
20
き産まれた平均産卵数を算出した。
【0344】
一 腹 仔 数 : L4動 物 を 選 び 出 し 、 産 卵 期 間 の 間 に 毎 日 新 た な プ レ ー ト に 移 し た 。 虫 あ た り
の生まれた子孫の総数を決定した。
【0345】
後 胚 発 生 の 速 度 : 卵 を プ レ ー ト に 採 集 し 、 1時 間 後 に 検 査 し た 。 こ の 期 間 中 に 孵 化 し た
動物を実験に使用した。それぞれの時点までに成体に達した動物の割合を記録した。
【0346】
生殖系列の発生段階:虫は、産卵速度の時間経過解析に関して最終的な脱皮に同調させ
た 。 生 殖 系 列 の 近 位 部 分 を そ の 直 後 ( 1.5h齢 の 成 体 を 検 査 す る た め に ) 、 ま た は 4.5時 間
30
後 ( 6時 間 齢 の 成 体 を 検 査 す る た め に ) の ず れ か を DIC顕 微 鏡 観 察 を 使 用 し て 検 査 し た 。
【0347】
卵生産の時間経過解析:虫は、産卵速度の時間経過解析に関して最終的な脱皮に同調さ
せ た 。 虫 を 3時 間 の 間 隔 で 検 査 し 、 子 宮 内 に 受 精 卵 を 含 む 虫 の 割 合 を 決 定 し た 。
【0348】
外 陰 部 形 成 : 動 物 を 解 剖 顕 微 鏡 下 で 検 査 し 、 こ れ ら が 複 数 の 外 陰 部 を 有 す る 場 合 に Muv
であるとみなした。
【0349】
7.2 期 外 発 生 の 表 現 型 の 抑 制 clk-1変 異 体 は 、 胚 発 生 お よ び 後 胚 発 生 、 周 期 的 な 挙 動 、 再 生 、 お よ び 老 化 の 平 均 的 な
40
緩 徐 化 を 含 む 多 面 的 な 表 現 型 を 有 す る ( Wong et al., 1995, Genetics 139: 1247-1259)
。 緩 徐 な 再 生 表 現 型 は 、 虫 が 成 体 ( 図 1A) に 脱 皮 し た あ と の 異 な る 時 点 で 時 間 あ た り の 産
卵 数 を 計 数 す る こ と に よ っ て 詳 細 に 解 析 し た 。 野 生 型 動 物 は 、 成 体 に 脱 皮 の 約 24時 間 後 に
こ れ ら の ピ ー ク の 産 卵 速 度 に 達 し 、 72時 間 で ほ ぼ 受 精 卵 の 産 卵 を 終 え た 。 こ れ ら は 、 72時
間 程 度 で こ れ ら の ピ ー ク 速 度 に 達 す る の で 、 産 卵 の ピ ー ク は 、 clk-1( qm30) 変 異 体 に お
い て 遅 延 性 で あ る 。 遅 延 の 1つ の 原 因 は 、 卵 の 保 持 で あ る 可 能 性 が あ る が ( 産 卵 欠 損 ( Egl
-d) 表 現 型 ) ; clk-1変 異 体 は 、 Egl-dで な い 。 遅 延 の も う 一 つ の 可 能 性 は 、 過 剰 な 精 子 形
成 で あ る 可 能 性 が あ る ( Hodgkin and Barnes, 1991, Proc R Soc Lond B Biol Sci 246:1
9-24) 。 線 虫 の 雌 雄 同 体 は 、 最 初 に 精 子 を 産 生 し 、 次 い で 永 久 に 卵 母 細 胞 の 産 生 に ス イ ッ
チする。従って、精子形成が終わる前には卵母細胞も卵も産生することができなず、産生
50
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さ れ る 精 液 の 数 が 一 腹 仔 数 を 決 定 す る 。 野 生 型 と 比 較 し た clk-1変 異 体 の 減 少 し た 一 腹 仔
数 は 、 そ の 過 剰 な 精 子 形 成 が 遅 延 性 の 産 卵 の 原 因 で は な い こ と を 示 唆 す る ( 図 1B) ( Wong
et al., 1995、 Genetics 139: 1247-1259) 。 第 3の 可 能 性 ( こ れ を 詳 細 に 検 査 し た ) は
、 細 胞 体 と 比 較 し て 生 殖 系 列 の 発 生 が clk-1変 異 体 に お い て 遅 延 性 で あ る と い う こ と で あ
る。
【0350】
線 虫 の 成 体 雌 雄 同 体 の 生 殖 腺 は 、 2本 の U型 の ア ー ム ( 前 方 お よ び 後 方 ) か ら な り 、 そ れ
ぞ れ は 貯 精 嚢 に お い て 終 わ る 。 2つ の 貯 精 嚢 は 、 生 殖 腺 ア ー ム を 、 受 精 卵 を 貯 臓 す る 子 宮
に連結し、外陰部で融合する。遠位の基部軸に言及するときは、それは外陰部と比較して
おり、外部に対する生殖腺の基端側開口部である。生殖系列の発達段階では、遠位の基部
10
軸に沿って分極化する。大部分の精子形成は、近位の生殖腺で起こる。卵形成のためには
、それぞれの生殖腺の遠位のアームが、有糸分裂を受けている胚細胞核を含む合胞体を形
成する。近位に移動して、胚細胞は、分裂周期を出て、減数分裂の第一期通って進む。野
生 型 雌 雄 同 体 に お い て 、 第 一 精 母 細 胞 ( 分 化 す る 最 初 の 配 偶 子 ) は 、 後 期 の L4段 階 で 観 察
さ れ 、 雌 雄 同 体 が 成 体 に 脱 皮 し た 直 後 に 卵 形 成 た 始 ま る 。 生 殖 系 列 の 発 生 は 、 clk-1変 異
体 に お い て 緩 徐 で あ る と い う 可 能 性 を 探 索 す る た め に 、 本 発 明 者 ら は 、 DIC顕 微 鏡 観 察 を
使用して、虫が成体に脱皮した直後に、前方および後方の生殖腺の近端部での生殖系列の
発 生 段 階 を 検 査 し た 。 成 体 脱 皮 の 6時 間 後 に 、 検 査 し た 全 て の 野 生 型 の 虫 は 、 前 方 お よ び
後 方 の 生 殖 系 列 の 近 端 部 に 卵 母 細 胞 を 有 し 、 ま た 半 分 の 動 物 が 受 精 卵 を 有 し た ( 図 1C、 2B
) 。 比 較 と し て 、 卵 形 成 の 発 生 は 、 clk-1変 異 体 に お い て 劇 的 に 遅 延 性 で あ り 、 6時 間 齢 の
20
成 体 に お い て 検 査 し た 前 方 生 殖 腺 の 97%は 、 精 子 形 成 を ま だ 受 け て い お り 、 3%だ け が 卵 形
成 を 開 始 し た ( 図 1C、 2D) 。 面 白 い こ と に 、 clk-1変 異 体 の 後 方 生 殖 腺 の 生 殖 系 列 の 発 生
は、また、野生型のものと比較して遅延性であるが、それは意外なことに、前方生殖腺よ
り も 影 響 を 受 け ず : 28%が 卵 形 成 を 開 始 し 、 19%は す で に 卵 が 受 精 し て い た ( 図 1C) 。
【0351】
ま た 、 配 偶 子 分 化 の 開 始 ( す な わ ち 、 精 子 形 成 ) が clk-1変 異 体 に お い て 遅 延 性 で あ っ
たかどうかを決定するために、生殖系列の近位の前腕を成体脱皮の直後に検査した。野生
型 虫 を 、 こ れ ら が 成 体 に 脱 皮 し た 1.5時 間 後 に 検 査 し た と き に 、 大 多 数 ( 87%) は 、 第 一 精
母 細 胞 形 成 を 完 了 し て い た ( 図 1D) 。 対 照 的 に 、 大 多 数 の clk-1変 異 体 は 、 第 一 精 母 細 胞
形 成 の 前 か ( 42%) 、 ま た は プ ロ セ ス 中 ( 48%) の い ず れ か で あ っ た 。 共 に 、 こ れ ら の 結 果
30
は 、 clk-1変 異 体 が 期 外 発 生 の 表 現 型 を 示 す こ と を 示 し て お り : 身 体 発 達 の 所 与 の 段 階 で
の変異体の生殖系列の全体的な発達は、野生型動物と関連して遅延性であり、成体脱皮で
の clk-1変 異 体 の 生 殖 系 列 の 段 階 は 、 中 期 か ら 後 期 の L4段 階 で の 野 生 型 動 物 に 対 応 し て い
る。
【0352】
dsc-4( qm182) は 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 排 便 表 現 型 の 抑 制 因 子 と し て 単 離 さ れ た ( Bra
nicky et al., 2001、 Genetics 159: 997-1006) 。 dsc-4突 然 変 異 は 、 clk-1表 現 型 の 全 て
の 側 面 を 抑 制 す る と い う わ け で は な い が 、 ク ロ ー ザ ー 調 査 ( closer examination) で は 、
いくつかのその他の表現型を実際に抑制することを明らかにした。上記の通りで、野生型
虫 は 、 成 体 脱 皮 の 24∼ 48時 間 後 の 間 に こ れ ら の 産 卵 の ピ ー ク に 達 す る が 、 clk-1変 異 体 は
40
、 72時 間 で こ れ ら の 産 卵 の ピ ー ク に 達 す る だ け で あ る 。 clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 の ピ
ー ク 産 卵 速 度 は 、 約 48時 間 ま で に 到 達 す る の で ( 図 1A) 、 dsc-4突 然 変 異 は 、 こ の 遅 延 を
抑 制 し た 。 clk-1変 異 体 の 遅 延 性 の 産 卵 は 、 こ れ ら の 卵 母 細 胞 の 遅 延 性 の 生 産 に よ る こ と
を 考 え る と ( 上 記 の も の を 参 照 ) 、 こ れ ら の 結 果 は 、 dsc-4突 然 変 異 が clk-1変 異 体 の 遅 延
性の卵形成を抑制したことを示唆した。
【0353】
生 殖 系 列 の 発 生 に 対 す る dsc-4突 然 変 異 の 効 果 を 、 DIC顕 微 鏡 観 察 を 使 用 し て clk-1/dsc4二 重 突 然 変 異 体 の 生 殖 系 列 の 観 察 を 介 し て 直 接 検 査 し た 。 成 体 脱 皮 の 6時 間 後 に 、 clk-1
の 単 一 変 異 体 の 3%だ け と 比 較 し て 、 clk-1/ dsc-4二 重 突 然 変 異 体 の 50%は 、 前 方 生 殖 系 列
の 近 端 部 に 卵 母 細 胞 を 有 し た ( 41%は 子 宮 に 卵 が な く 、 9%は 、 卵 を 有 す る ; 図 1C、 2E) 。
50
(79)
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二 重 突 然 変 異 体 の 100%が 卵 形 成 ( 97%が 子 宮 に 卵 を 有 す る ) を 受 け て い た の で 、 後 方 生 殖
系 列 の 近 端 部 は 、 dsc-4( qm182) に よ っ て さ ら に 前 方 よ り も よ り 進 行 さ れ た 。 こ れ は 、 ds
c-4が clk-1変 異 体 の 全 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 劇 的 に 抑 制 す る こ と が で き る が 、 clk-1
変異体の前方生殖腺にさらなる欠陥があり、克服することができないことを示唆した。近
位 の 生 殖 系 列 は 、 よ り 初 期 の 時 点 で 検 査 し 、 dsc-4突 然 変 異 も 配 偶 子 形 成 の 開 始 の 遅 延 を
抑 制 す る こ と を 明 ら か に し た 。 成 体 脱 皮 の 1.5時 間 後 に 、 clk-1の 単 一 変 異 体 の 10%だ け と
比 較 し て 、 clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 で 検 査 し た 100%の 生 殖 系 列 が 、 第 一 精 母 細 胞 生 産
を 終 え て い た ( 図 1D) 。 clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 は 、 細 胞 体 の 発 達 と 比 較 し て 適 切 な
段 階 で 精 子 形 成 お よ び 卵 形 成 を 開 始 し た の で 、 こ れ は 、 clk-1変 異 体 に お い て 観 察 さ れ る
期外発生の欠陥の完全な抑制に対応した。
10
【0354】
dsc-4に よ る 抑 制 が 、 身 体 発 達 の 遅 滞 に よ る の で は な く 、 む し ろ 生 殖 系 列 発 達 の 加 速 に
よ っ て 生 じ た ど う か を 決 定 す る た め に 、 後 胚 発 生 の 速 度 に 対 す る dsc-4( qm182) 突 然 変 異
の 効 果 を 解 析 し た 。 野 生 型 虫 は 、 孵 化 の 45∼ 51時 間 後 の 間 に 成 体 期 に 達 し た ( 図 1E) 。 ds
c-4変 異 体 は 、 こ れ ら が 孵 化 の 57∼ 69時 間 後 の 間 に 成 体 期 に 達 す る だ け で あ っ た の で 、 野
生 型 よ り も 緩 徐 な 後 胚 発 生 を 有 す る 。 し か し 、 clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 の 後 胚 発 生 の
期 間 は 、 clk-1変 異 体 の も の と ほ ぼ 同 一 で あ る 。 clk-1と clk-1/ dsc-4変 異 体 は 両 者 と も 、
孵 化 の 63∼ 81時 間 後 の 間 に 成 体 期 に 達 し た 。 こ れ は 、 dsc-4突 然 変 異 が 身 体 発 達 を 減 速 す
る こ と の な く 、 細 胞 体 の も の と 共 に 生 殖 系 列 の 発 達 を 再 度 同 調 さ せ る こ と に よ っ て clk-1
変異体の期外発生の欠陥を抑制することを示した。
20
【0355】
変 異 体 は 、 コ ス ミ ド K02D7に よ っ て 、 お よ び 予 測 さ れ る 配 列 K02D7.4を 含 む PCR産 物 に よ
っ て レ ス キ ュ ー さ れ た 。 PCR産 物 は 、 clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 の 速 い 排 便 、 並 び に 急 速
な 産 卵 速 度 を レ ス キ ュ ー し た 。 K02D7.4の 発 現 は 、 clk-1/dsc-4お よ び 野 生 型 バ ッ ク グ ラ ン
ド の RNAiに よ っ て 阻 害 さ れ た 。 K02D7.4 RNAiは 、 clk-1バ ッ ク グ ラ ン ド に お い て dsc-4( qm
182) 突 然 変 異 を 表 現 型 模 写 す る こ と が 見 い だ さ れ た 。 clk-1( qm30) / K02D7.4 RNAi動 物
の 排 便 速 度 、 並 び に 産 卵 速 度 は 、 clk-1( qm30) / dsc-4( qm182) 二 重 突 然 変 異 体 の も の
と 同 様 で あ っ た 。 ( デ ー タ 示 さ ず ) 。 し か し 、 K02D7.4 RNAiの 効 果 は 、 clk-1バ ッ ク グ ラ
ン ド に お け る 排 便 ま た は 産 卵 に 関 し て 、 dsc-4突 然 変 異 の も の に 相 加 的 で は な か っ た 。 ま
た 、 K02D7.4 RNAiは dsc-4変 異 体 に お い て 、 い ず れ の 表 現 型 に も 明 ら か な 増 強 を 生 じ さ せ
30
な か っ た 。 共 に 、 こ れ ら の 結 果 は 、 ゲ ノ ム の コ ス ミ ド ク ロ ー ン K02D7.4の 遺 伝 子 が dsc-4で
あ り 、 dsc-4( qm182) 対 立 遺 伝 子 が 、 お そ ら く ヌ ル で あ る こ と を 証 明 し た 。
【0356】
dsc-4は 、 dsc-4遺 伝 子 は 、 892残 基 の タ ン パ ク 質 を コ ー ド し 、 ミ ク ロ ソ ー ム ・ ト リ グ リ
セ リ ド 転 移 タ ン パ ク 質 ( MTP; 図 3A、 C、 お よ び 4) の 大 サ ブ ユ ニ ッ ト に 類 似 す る 。 MTPは 、
小 胞 体 ( ER) タ ン パ ク 質 で あ り 、 ア ポ リ ポ タ ン パ ク 質 B( apoB) 含 有 リ ポ タ ン パ ク 質 特 に L
DLの 分 泌 に 必 要 で あ る ( Berriot-Varoqueaux et al., 2000, Ann, Rev. Nutr. 20:663)
。リポタンパク質は、トリグリセリド、コレステリルエステル、コレステロール、および
リン脂質を含む種々の脂質と複合体を形成する高分子量のタンパク質からなる。
【0357】
40
ヒ ト に お い て 、 MTPの 大 サ ブ ユ ニ ッ ト の 突 然 変 異 は 、 無 β リ ポ タ ン パ ク 質 血 症 ( ABL) 、
LDL分 泌 の 切 断 欠 損 を 生 じ さ せ る ( Nakamuta et al., 1996, Genomics 33:313-316 and Sh
arp et al., 1993, Nature 365:65-69) 。 DSC-4ポ リ ペ プ チ ド は 、 分 泌 の た め の 推 定 上 の N
末 端 の シ グ ナ ル 配 列 を 有 し 、 予 測 さ れ る 切 断 部 位 は 、 残 基 18と 19の 間 で あ る ( 図 4) 。 DSC
-4は 、 ゲ ノ ム が シ ー ケ ン ス さ れ た あ ら ゆ る 動 物 種 に お い て 単 一 の 明 白 な 相 同 体 を 有 す る が
、植物および単細胞生物には無いようである。相同体間の一致性は、全ての配列全体に及
び 、 特 定 の 領 域 ま た は ド メ イ ン に 限 定 さ れ ず 、 脊 椎 動 物 の MTPの DSC-4の 整 列 で は 、 多 数 の
ギ ャ ッ プ は 必 要 で な い ( 図 3A) 。 PSI-blastを 使 用 し て DSC-4を NCBI非 重 複 性 タ ン パ ク 質 デ
ー タ ベ ー ス と 比 較 す る と 、 最 高 の ス コ ア を 有 す る 7つ の タ ン パ ク 質 は 、 ヒ ト 、 ラ ッ ト 、 マ
ウ ス 、 ウ シ 、 ブ タ 、 お よ び ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ MTP、 並 び に ア ノ フ ェ レ ス お よ び シ ョ ウ ジ ョ
50
(80)
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ウ バ エ の MTPを 含 む 新 の 脊 椎 動 物 の MTPで あ っ た 。 dsc-4( qm182) 対 立 遺 伝 子 は 、 ア ミ ノ 酸
置 換 を 生 じ る 2つ の 点 突 然 変 異 を 有 す る こ と が 見 い だ さ れ 、 そ の 一 つ は 、 種 の 間 で 高 度 に
保 存 さ れ て い る ( 図 3A) 。 MTPは 、 apoB結 合 ド メ イ ン 、 apoBお よ び PDI結 合 ド メ イ ン 、 並 び
に 脂 質 結 合 お よ び 転 移 ド メ イ ン を 有 す る ( 図 3Cお よ び 4) ( Mann et al.,1999, J Mol Bio
l 285:391-408) 。 dsc-4( qm182) の 突 然 変 異 点 は 、 apoB-結 合 ド メ イ ン に あ り 、 無 β リ ポ
タンパク質血症患者において見いだされるものとは異なっていた。
【0358】
dsc-4: : GFP融 合 タ ン パ ク 質 ( 転 写 ま た は 翻 訳 の リ ポ ー タ ー ) を 使 用 し て dsc-4発 現 を
解 析 し た 。 2つ の タ イ プ の リ ポ ー タ ー は 、 ほ ぼ 同 一 の 発 現 パ タ ー ン を 示 し た 。 翻 訳 リ ポ ー
タ ー に 由 来 す る 融 合 タ ン パ ク 質 は 、 全 長 dsc-4配 列 を コ ー ド し 、 変 異 体 の 表 現 型 を レ ス キ
10
ュ ー す る こ と が で き た こ と か ら 、 観 察 さ れ る 発 現 の パ タ ー ン は 、 内 因 性 dsc-4の も の を 反
映 し た こ と を 示 唆 す る 。 し か し 、 GFP蛍 光 は 、 小 胞 体 ( ER) に 限 ら れ ず に む し ろ 細 胞 質 を
満 た し た 。 お そ ら く 、 ERに お け る こ の タ ン パ ク 質 の 過 剰 発 現 は 、 困 難 で あ り 、 異 常 な 局 在
化 は 、 過 剰 発 現 に よ る も の で あ っ た 。 GFP蛍 光 は 、 幼 虫 の 段 階 ( 図 2G) か ら 成 体 期 の 全 体
に わ た っ て 伸 長 ( 図 2F) を 介 し し た 直 後 の 、 初 期 発 生 か ら 腸 に お い て 観 察 さ れ 、 ま た 、 雄
の腸においても観察された。虫において、非常に大きな腸は、消化器であり、主要な分泌
器 官 で あ る 。 特 に 、 腸 は 、 apoB相 同 体 で あ る ビ テ ロ ゲ ニ ン を 分 泌 す る 。 従 っ て 、 dsc-4の
発 現 は 、 脊 椎 動 物 に お け る MTPの 発 現 の パ タ ー ン と 整 合 し て お り 、 主 に 腸 お よ び 肝 臓 に お
いて見いだされる。
【0359】
20
8.実 施 例 : dsc-4の バ リ デ ー シ ョ ン dsc-4は 、 分 泌 さ れ た LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て clk-1変 異 体 線 虫
を レ ス キ ュ ー す る ( MTPに 対 す る そ の 相 同 性 に よ っ て 証 明 さ れ る と お り ) 。 LDL様 リ ポ タ ン
パ ク 質 の レ ベ ル は 、 clk-1の 単 一 変 異 体 の 線 虫 に お い て 、 、 そ の 他 の 検 査 方 法 で ( た と え
ば 、 コ レ ス テ ロ ー ル 欠 損 、 vit RNAiま た は SOD RNAiに よ っ て ) こ れ ら が clk-1/ dsc-4二 重
突然変異体を表現型模写することができた場合に操作された。
【0360】
8.1 材 料 お よ び 方 法 8.1.1 株 お よ び 培 養 方 法 動 物 は 、 20℃ で 記 載 さ れ て い る と お り に 培 養 し ( Brenner, 1974, Genetics 77:71-94
30
) 、 を 特 に 明 記 し な い 限 り 大 腸 菌 株 OP50を 与 え た 。 コ レ ス テ ロ ー ル 欠 枯 渇 実 験 は 、 い ず れ
の コ レ ス テ ロ ー ル ( NGM-C) も 添 加 し な か っ た こ と 以 外 、 OP50と 共 に 播 種 し た 標 準 的 な NGM
プ レ ー ト 上 で 行 わ れ た 。 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 を 検 査 す る 前 に 、 虫 を 二 世 代 以 上 の 間 NGM-C
プレートの上で培養した。
【0361】
RNAi実 験 の た め に は 、 虫 を 1mMの IPTGお よ び 50μ g/mL の ア ン ピ シ リ ン を 補 っ た NGMプ レ
ー ト 上 で 培 養 し 、 pPD129.36由 来 の プ ラ ス ミ ド で 形 質 転 換 し た 大 腸 菌 株 HT115を 与 え た 。 P0
sを L4幼 虫 と 同 様 に RNAiプ レ ー ト に 移 し 、 F1世 代 を 検 査 し た 。
【0362】
野 生 型 株 は 、 N2( ブ リ ス ト ル 株 ) で あ っ た 。 以 下 の 突 然 変 異 を 使 用 し た : clk-1( qm30
40
) III; unc-33( e204) 、 dpy-9( e12) 、 dsc-4( qm182) IV。
【0363】
8.1.2 RNA干 渉 SOD RNAiク ロ ー ン の た め に 、 PCR産 物 を 第 1鎖 cDNAラ イ ブ ラ リ ー ( ラ ン ダ ム ・ プ ラ イ マ ー
を 使 用 し て 混 合 段 階 N2虫 か ら 単 離 し た 総 RNAの 逆 転 写 に よ っ て 作 製 さ れ る ) か ら 増 幅 し た
。 PCR産 物 を pPD129.36の SmaI部 位 に ク ロ ー ン 化 し た 。 以 下 の 領 域 を 使 用 し た : SOD-1の た
め に 、 C15F1の 17287-18262; SOD-2の た め に 、 F10D11の う ち の 1216-2354; SOD-3の た め に
、 C08A9の 14358-15759; SOD-4の た め に 、 F55H2の う ち の 1253-2977。
【0364】
vit RNAiク ロ ー ン の た め に 、 PCR産 物 を N2ゲ ノ ム DNAか ら 増 幅 し 、 消 化 し て 、 pPD129.36
50
(81)
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に ク ロ ー ン 化 し た 。 vit-2の た め に は 、 内 部 EcoRI-SalI断 片 を ク ロ ー ン 化 し た ( C42D8の 24
381-25252) 。 vit-5の た め に は 、 C04F6の 9271-10130に 対 応 す る PCR産 物 を PstIお よ び XbaI
部 位 に ク ロ ー ン 化 し た 。 vit-6の た め に は 、 K07H8の 5787-6851に 対 応 す る PCR産 物 を XhoIお
よ び HindIII部 位 に ク ロ ー ン 化 し た 。 全 て の 挿 入 断 片 を シ ー ケ ン ス し て 、 ク ロ ー ン 化 さ れ
た vit遺 伝 子 の 一 致 性 を 確 認 し た 。
【0365】
RNAi実 験 は 、 記 載 さ れ て い る よ う に 行 っ た ( Kamath et al., 2001, Genome Biol. 2:re
search0002.1-research0002.10) 。 対 照 に は 、 pPD129.36ベ ク タ ー を 形 質 転 換 し た HT115細
菌を与えた。
【0366】
10
8.1.3 表 現 型 解 析 産 卵 速 度 の 時 間 経 過 解 析 : L4段 階 の 動 物 を プ レ ー ト に 拾 い 、 3時 間 後 に 検 査 し た 。 こ の
期 間 中 に 成 体 脱 皮 し た 動 物 を 実 験 に 使 用 し 、 間 隔 の 終 わ り に 1.5時 間 齢 の 成 体 で あ る と み
な し た 。 24時 間 の 間 隔 で 、 動 物 を 選 び 出 し 、 4時 間 の 間 産 卵 さ せ た 。 虫 あ た り に 時 間 に つ
き産まれた平均産卵数を算出した。
【0367】
一 腹 仔 数 : L4動 物 を 選 び 出 し 、 産 卵 期 間 の 間 に 毎 日 新 た な プ レ ー ト に 移 し た 。 虫 あ た り
の生まれた子孫の総数を決定した。
【0368】
後 胚 発 生 の 速 度 : 卵 を プ レ ー ト に 採 集 し 、 1時 間 後 に 検 査 し た 。 こ の 期 間 中 に 孵 化 し た
20
動物を実験に使用した。それぞれの時点までに成体に達した動物の割合を記録した。
【0369】
生殖系列の発生段階:虫は、産卵速度の時間経過解析に関して最終的な脱皮に同調させ
た 。 生 殖 系 列 の 近 位 部 分 を そ の 直 後 ( 1.5h齢 の 成 体 を 検 査 す る た め に ) 、 ま た は 4.5時 間
後 ( 6時 間 齢 の 成 体 を 検 査 す る た め に ) の ず れ か を DIC顕 微 鏡 観 察 を 使 用 し て 検 査 し た 。
【0370】
卵生産の時間経過解析:虫は、産卵速度の時間経過解析に関して最終的な脱皮に同調さ
せ た 。 虫 を 3時 間 の 間 隔 で 検 査 し 、 子 宮 内 に 受 精 卵 を 含 む 虫 の 割 合 を 決 定 し た 。
【0371】
8.2 VITの ノ ッ ク ダ ウ ン / 突 然 変 異 30
哺 乳 類 に お い て 、 MTPは 、 apoB含 有 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 の た め に 必 要 と さ れ る 。 線 虫
の ゲ ノ ム は 、 5つ の apoB様 遺 伝 子 ( vit-2、 -3、 -4、 -5、 お よ び -6) お よ び 1つ の apoB様 偽
遺 伝 子 ( vit-1) を 含 む ( ( Blumenthal et al., 1984, J Mol Biol 174:1-18; Spieth an
d Blumenthal, 1985, Mol Cell Biol 5:2495-2501; Spieth et al., 1985, Nucleic Acid
s Res 13:7129-7138) 。 線 虫 ( C.elegans) の apoB様 の 遺 伝 子 の 分 泌 の 変 更 に よ り 、 生 殖
系 列 発 達 に 対 す る dsc-4の 効 果 を 表 現 型 模 写 す る こ と が で き る か ど う か を 決 定 す る た め に
、 vit遺 伝 子 ( vit-2、 -5お よ び -6) を RNAiに よ っ て 壊 し た 。 vit-5の RNAiク ロ ー ン の コ ー
ド 領 域 は 、 vit-3お よ び -4の 両 者 と 98%同 一 で あ る の で 、 vit-5 RNAi処 理 は 、 vit-3お よ び 4の 機 能 も 破 壊 す る も の と 思 わ れ る ( 図 5A) 。
【0372】
40
clk-1変 異 体 の 産 卵 速 度 に 対 す る vit RNAiの 効 果 を 解 析 し た 。 動 物 が 成 体 脱 皮 の 24時 間
後 に 、 最 も 有 意 な 効 果 が 観 察 さ れ た ( 図 5C) 。 そ の 時 に 、 clk-1/ vit-5 RNAi動 物 は 、 卵
を 産 み 始 め た が 、 clk-1対 照 で は 産 ま な か っ た ( 図 5B、 C) 。 clk-1/ vit-5 RNAi動 物 の 産
卵 速 度 の ピ ー ク は 、 clk-1対 照 の 約 12時 間 前 に 到 達 し た ( 図 5C) 。 vit-5 RNAiの 効 果 は 、 d
sc-4突 然 変 異 の 効 果 が VITタ ン パ ク 質 分 泌 の 減 少 に よ る 場 合 に 予 想 さ れ る と お り 、 dsc-4の
効 果 に 対 し て 相 加 的 で は な か っ た 。 そ の 他 の vit遺 伝 子 に 対 す る RNAiの 効 果 は 、 そ の 計 測
で は 極 め て 弱 か っ た ( 図 5B) 。 排 便 時 の 効 果 は 、 い ず れ の 遺 伝 子 に つ い て も 見 ら れ な か っ
た。
【0373】
産まれる産卵速度の増大は、生殖系列発達の速度の増大によって生じたかどうかを決定
50
(82)
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す る た め に 、 時 間 経 過 実 験 を 行 っ て 、 vit-5 RNAi動 物 の 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 を 検 査 し た 。
こ れ ら の 子 宮 の 中 に 受 精 卵 を 含 む 動 物 の 割 合 を clk-1の 単 一 変 異 体 お よ び clk-1/vit-5 RNA
i二 重 突 然 変 異 体 に つ い て 決 定 し た 。 clk-1変 異 体 動 物 は 、 こ れ ら が 成 体 脱 皮 し た 15∼ 18時
間 後 の 間 に 受 精 卵 を 有 し 始 め 、 全 て の 虫 が 受 精 卵 を 含 む た め に は 、 36時 間 か か る 。 対 照 的
に 、 clk-1/ vit-5 RNAi二 重 突 然 変 異 体 は 、 6∼ 9時 間 の 間 に 受 精 卵 を 有 し 始 め 、 21時 間 ま
で に 全 て が 受 精 卵 を 含 む ( 図 5D) 。 vit-5 RNAiは 、 24時 間 に お い て 産 卵 の に 対 し て 最 も 有
意 な 効 果 を 有 す る よ う に 見 え た の で ( 図 5C) 、 子 宮 内 の 平 均 産 卵 数 を そ の 時 に 記 録 し た 。
そ の 時 に 、 clk-1/vit-5 RNAi二 重 突 然 変 異 体 は 、 こ れ ら の 子 宮 の 中 に clk-1動 物 よ り も 10
媒 以 上 多 く の 卵 を 含 ん だ ( 図 5Eお よ び F) 。 従 っ て 、 vit-5発 現 の ノ ッ ク ダ ウ ン は 、 clk-1
変異体の緩徐な生殖系列発達を抑制した。
10
【0374】
時 間 経 過 解 析 は 、 子 宮 内 の 卵 の 存 在 を 記 録 す る と 、 vit-5 RNAiの 効 果 の 非 常 に 感 受 性 の
あ る 基 準 と な る こ と を 示 し た 。 ま た 、 vit-2 RNAiお よ び vit-6 RNAiを 成 体 脱 皮 の 18時 間 後
にこのような方法で記録し、これらの遺伝子のわずかな効果を明らかにすることに成功し
た ( 子 宮 内 に 卵 を も つ 動 物 の パ ー セ ン ト : clk-1=5.2%、 clk-1/ vit-2 RNAi=30.4%、 clk-1
/vit-6 RNAi=25.0%、 clk-1/vit-5 RNAi=87%; n>44) 。
【0375】
要 約 す る と 、 apoB相 同 体 vit-3、 -4、 お よ び -5の 産 生 の 減 少 、 並 び に よ り わ ず か な 程 度
に vit-2お よ び -6は 、 生 殖 系 列 発 達 に 対 す る dsc-4の 効 果 を 媒 介 す る よ う に 見 え た 。 vitsで
観 察 さ れ る 効 果 が 、 dsc-4で 観 察 さ れ る も の よ り も 激 し く な か っ た 理 由 の 1つ の 可 能 性 は (
20
排 便 に 対 し て の 効 果 が な い こ と を 含 む ) 、 vit遺 伝 子 に 対 す る RNAiが 、 こ れ ら が 高 レ ベ ル
で 発 現 し た た め に 効 率 的 で は な か っ た こ と で あ る ( Kimble and Sharrock, 1983 Dev Biol
96:189-196; Sharrock, 1983, Dev Biol 96:182-188) 。 も う 一 つ の 可 能 性 は 、 全 て の vi
t遺 伝 子 が 最 大 効 果 の た め に は 直 ち に タ ー ゲ ッ ト さ れ な け れ ば な ら な い で あ ろ う と い う こ
と で あ る 。 ま た 、 こ の 可 能 性 は 、 vitsが 必 須 な 卵 黄 タ ン パ ク 質 と し て 機 能 す る が 、 RNAiは
卵 を 産 生 す る 能 力 に 対 し て 有 意 な 効 果 を 有 し な い と い う 観 察 に よ っ て 支 持 さ れ る ( 図 5)
。
【0376】
vit遺 伝 子 は 、 元 来 は 、 卵 黄 タ ン パ ク 質 を コ ー ド す る 遺 伝 子 と し て 単 離 さ れ た 。 vit-2お
よ び -6は 、 主 に 雌 雄 同 体 の 腸 で 合 成 さ れ 、 腸 か ら 生 殖 系 列 ま で 運 搬 さ れ る ( Kimble and S
30
harrock, 1983, Dev Biol 96:189-196) 。 vit-5は 、 ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 法 ( Blumenthal et
al., 1984, J Mol Biol 174:1-18) に よ っ て 強 力 な 雌 雄 同 体 特 異 的 な シ グ ナ ル を 示 す こ
と が 報 告 さ れ て お り 、 vit-5お よ び / ま た は vit-3、 -4( こ れ は 、 vit-5と 97%同 一 で あ る )
も 卵 黄 タ ン パ ク 質 を コ ー ド す る こ と を 示 唆 す る 。 し か し 、 本 発 明 者 ら の 結 果 は 、 vitsも リ
ポ タ ン パ ク 質 粒 子 中 で 機 能 し 、 脊 椎 動 物 に 見 い だ さ れ る apoB依 存 的 な LDL様 粒 子 に 似 て い
る こ と 、 お よ び 卵 黄 リ ポ タ ン パ ク 質 と は 異 な っ て い る か も し れ な い こ と を 示 し た 。 2つ の
証 拠 が 、 こ れ を 示 唆 す る 。 第 1に 、 dsc-4の 破 壊 は 、 一 腹 仔 数 に 影 響 を 及 ぼ さ な い 。 dsc-4
が 卵 黄 生 産 必 要 に さ れ る な ら ば 、 dsc-4の 突 然 変 異 は 、 卵 黄 タ ン パ ク 質 の 受 容 体 を コ ー ド
す る rme-2の 一 腹 仔 数 様 の 突 然 変 異 を 大 幅 に 減 少 さ せ る は ず で あ る ( Grant and Hirsh, 19
99, Mol Biol Cell 10:4311-4326) 。 第 2に 、 卵 黄 タ ン パ ク 質 生 産 は 、 雌 雄 同 体 に お い て
40
の み 必 要 と さ れ る は ず で あ る が 、 dsc-4は ま た 、 雄 の 腸 に お い て も 発 現 さ れ て い る 。
【0377】
8.3 コ レ ス テ ロ ー ル 枯 渇 dsc-4は 、 分 泌 型 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 減 少 を 生 じ た の で 、 dsc-4が コ レ ス テ ロ ー ル の
枯渇によって表現型模写される突然変異であるかどうかを決定するための実験を行われっ
た。哺乳類において、コレステロールは、リポタンパク質の主要構成分であり、その摂取
ま た は 合 成 を 減 少 さ せ る と 、 LDLレ ベ ル の 現 象 を 引 き 起 こ す 。 線 虫 は 、 コ レ ス テ ロ ー ル を
合成することができないので、食餌コレステロールの量を減少させることにより、内部コ
レ ス テ ロ ー ル レ ベ ル の 減 少 を 生 じ る ( Crowder et al., 2001, J Biol Chem 276:44369-44
372) 。 生 殖 系 列 の 発 達 に 対 す る コ レ ス テ ロ ー ル 欠 損 の 効 果 を 野 生 型 、 clk-1、 dsc-4、 お
50
(83)
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よ び clk-1/dsc-4バ ッ ク グ ラ ン ド で 検 査 し た ( 図 1D) 。 コ レ ス テ ロ ー ル 欠 損 は 、 完 全 に clk
-1変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 消 滅 さ せ た が 、 そ の 他 の 遺 伝 子 型 に 対 し て は 、 穏 や か な
効 果 だ け を 有 し た 。 clk-1生 殖 系 列 に 対 す る 低 コ レ ス テ ロ ー ル の 効 果 は 、 コ レ ス テ ロ ー ル
の 存 在 下 に お け る dsc-4の も の と 見 分 け が つ か な か っ た こ と か ら 、 哺 乳 類 と 同 様 に 、 食 餌
コ レ ス テ ロ ー ル の 減 少 が LDL様 の 粒 子 の 分 泌 を 減 少 さ せ る こ と を 示 唆 し た 。
【0378】
一 般 に 、 コ レ ス テ ロ ー ル 欠 損 は 、 生 殖 系 列 発 達 に 対 す る dsc-4突 然 変 異 の 効 果 を 模 倣 し
た が 、 コ レ ス テ ロ ー ル 欠 損 の 効 果 は 、 よ り 激 し く 、 dsc-4変 異 体 で は 見 ら れ な い 多 く の 欠
陥 を 含 ん だ ( Crowder et al., 2001, J Biol Chem 276:44369-44372; Gerisch et al., 2
001, Dev Cell 1:841-851; Merris et al., 2003, J Lipid Res 44:172-181; Shim et al
10
., 2002, Mol Reprod Dev 61:358-366; Yokoyama, 2000, Ann N Y Acad Sci 902:241-247
) 。 こ の 相 違 は 、 種 々 の 方 法 で 説 明 す る こ と が で き る 。 1つ の 可 能 性 は 、 dsc-4ポ リ ペ プ チ
ド は 、 虫 で の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 の た め に 哺 乳 類 の MTPほ ど 厳 密 に 必 要 と さ れ な い
ということである。もう一つの可能性は、虫の腸から末梢組織へのコレステロール再分布
の そ の 他 の 経 路 が あ り 、 こ れ に よ り 1本 の 経 路 の 破 壊 が コ レ ス テ ロ ー ル 摂 取 の 全 体 の 欠 損
ほ ど 重 症 で は な く な る 。 哺 乳 類 で は 、 た と え ば 、 HDLな ど の リ ポ タ ン パ ク 質 の 形 態 が あ り
、 分 泌 の た め に MTPを 必 要 と し な い 。 最 後 に 、 コ レ ス テ ロ ー ル 枯 渇 し た 虫 で 観 察 さ れ る い
くつかの欠陥は、腸自体においてコレステロールを必要とする種々のプロセスの結果であ
るかもしれず、腸からの再分布だけが影響を受けるときは、それ自体が現れないと考えら
れる。
20
【0379】
8.4SOD-1ノ ッ ク ダ ウ ン / 突 然 変 異 clk-1は 、 UQの 生 合 成 に 必 要 と さ れ る 推 定 上 の ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 。 ( Stenm
ark et al., 2001, J Biol Chem 276:33297-33300) 。 clk-1変 異 体 に は 、 UQが な く 、 そ の
代 わ り に 生 合 成 の 中 間 体 で あ る デ メ ト キ シ ユ ビ キ ノ ン ( DMQ) が 蓄 積 す る ( Miyadera et a
l., 2001, J Biol Chem 276: 7713-7716) 。 UQの 重 要 な 役 割 の う ち の 1つ は 、 ミ ト コ ン ド
リ ア の 呼 吸 鎖 に お け る 電 子 伝 達 体 と し て の も の で あ る 。 こ の 役 割 に お い て 、 UQは 、 活 性 酸
素 種 ( ROS) 生 産 の 主 要 部 位 の う ち の 1つ で あ る ( Raha and Robinson, 2000, Trends Bioc
hem Sci 25:502-508) 。 し か し 、 UQは 、 い く つ か の そ の 他 の 細 胞 役 割 も 有 し 、 や や 逆 説 的
で あ る が 、 抗 酸 化 物 と し て の 役 割 を 含 む 。 DMQの レ ド ッ ク ス 特 性 は 、 UQの も の と は 定 量 的
30
に 異 な っ て お り 、 特 に DMQは 、 ROS生 産 を あ ま り 起 し や す く な い か も し れ な い ( Miyadera e
t al., 2002, FEBS Lett 512:33-37) 。 抗 酸 化 物 、 ビ タ ミ ン Eで の 処 理 が 、 線 虫 の 生 殖 系
列 発 達 を 遅 く す る と い う 観 察 と 合 わ せ る と ( Harrington and Harley, 1988, Mechanisms
of Aging and Development 43:71-78.) 、 こ れ は 、 生 殖 系 列 の 発 達 に 対 す る clk-1の 効 果
が 、 ROSの 代 謝 の 変 化 介 し て 媒 介 さ れ る で あ ろ う 可 能 性 が 高 く な る 。 生 殖 系 列 の 発 達 の タ
イ ミ ン グ が レ ド ッ ク ス 制 御 さ れ て お り 、 DMQの レ ド ッ ク ス 特 性 が 、 UQよ り も 酸 化 的 ス ト レ
ス を 生 じ さ せ な い 場 合 、 ス ー パ ー オ キ シ ド ジ ス ム タ ー ゼ ( SOD) な ど の 抗 酸 化 物 酵 素 の 機
能 を 減 少 さ せ る こ と に よ り 、 ROSの 量 を 増 大 す る こ と に よ る 生 殖 系 列 発 達 の 異 常 な タ イ ミ
ングを抑制することができる。
【0380】
40
ROSレ ベ ル が 生 殖 系 列 の 発 達 の 速 度 に 影 響 を 及 ぼ す か ど う か を 試 験 す る た め に 、 RNAiに
よ る SOD活 性 の 減 少 の 効 果 を 検 査 し た 。 SOD-1、 -2、 -3、 お よ び -4の レ ベ ル が RNAiに よ っ て
減少されたときは、効果は、野生型動物の産卵速度に対して何の効果も見られなかった(
図 6A) 。 し か し 、 clk-1変 異 体 で は 、 SOD-1 RNAiに よ り 、 遅 延 性 の 卵 産 生 を 抑 制 し た 。 (
図 6B) こ の 効 果 は 、 そ の 他 の 遺 伝 子 の い ず れ に 対 す る RNAiが 投 与 さ れ た と き に も 、 見 ら れ
な か っ た 。 clk-1変 異 体 は 、 72時 間 で こ れ ら の 産 卵 ピ ー ク に 達 し た が 、 clk-1/SOD-1 RNAi
二 重 突 然 変 異 体 は 、 48時 間 ま で に こ れ ら の 産 卵 ピ ー ク に 達 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 clk-1
変異体の生殖系列の緩徐な発達が、細胞質で産生されるスーパーオキシドの量を増大する
こ と に よ っ て 軽 減 す る こ と が で き る こ と を 示 唆 す る ( SOD-1は 、 細 胞 質 の Cu/ Znス ー パ ー
オ キ シ ド ジ ス ム タ ー ゼ で あ る の で ) 。 clk-1変 異 体 の 中 心 的 な 欠 陥 は 、 UQの 代 わ り に DMQが
50
(84)
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蓄 積 す る こ と で あ る の で 、 こ れ は 、 DMQが 、 UQの 存 在 す る 時 よ り も 低 レ ベ ル の ス ー パ ー オ
キシドを生じさせることを示唆する。
【0381】
SOD-1 RNAiは 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 抑 制 し た が 、 こ れ は clk-1/dsc-4二
重 突 然 変 異 体 に 対 し て は 何 の 効 果 も 有 さ な か っ た ( 図 6C) 。 こ れ は 、 od-1お よ び dsc-4が
、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 抑 制 す る た め に 同 じ プ ロ セ ス ま た は シ グ ナ リ ン グ
経 路 で 機 能 す る こ と を 示 唆 す る 。 上 記 の よ う に 、 clk-1変 異 体 の 生 殖 系 列 発 達 に 対 す る dsc
-4突 然 変 異 の 効 果 は 、 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 に 影 響 を 及 ぼ す 際 に そ の 役 割 を 介 す る
可 能 性 が 非 常 に 高 い 。 sod-1 RNAiは 、 dsc-4突 然 変 異 と 同 一 の 効 力 を 有 し た と い う 観 察 は
、 脂 質 酸 化 が clk-1変 異 体 で 減 少 さ れ ( Braeckman et al., 2002, Mech Aging Devel 123:
10
1447-56) お よ び 細 胞 質 の Cu/ Zn-SODが 強 く そ の 他 の 系 の LDL酸 化 の レ ベ ル を 調 節 す る ( Gu
o et al., 2001, Arterioscler Thromb Vasc Biol 21:1131-1138) と い う 以 前 の 知 見 と 共
に 、 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 酸 化 が 線 虫 の 生 殖 系 列 の 発 達 を 制 御 す る 際 の 重 要 な 因 子 で あ
ることを示唆する。
【0382】
結 論 と し て 、 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 酸 化 を 減 少 さ せ る こ と に よ り 、 細 胞 体 と 比 較 し て
生 殖 系 列 発 達 の 速 度 を 減 速 す る が ( clk-1変 異 体 と 同 様 に ) 、 細 胞 体 と 生 殖 系 列 の 適 当 な
調 整 は 、 SOD-1の 機 能 に 干 渉 す る こ と に よ っ て 、 ま た は 天 然 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 産 生
お よ び 分 泌 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て ( clk-1/ dsc-4二 重 突 然 変 異 体 と 同 様 に ) 、 い ず れ
かにより回復することができる。従って、酸化型リポタンパク質は、生殖系列発達を刺激
20
し 、 天 然 の リ ポ タ ン パ ク 質 は 、 阻 害 す る ( 図 7A) 。
【0383】
9. 実 施 例 : Dsc-3 9.1 同 定 お よ び 特 性 付 け dsc-3遺 伝 子 は 、 線 虫 の 第 4染 色 体 の 0.5cMの 遺 伝 子 領 域 に マ ッ プ さ れ た 。 し か し dsc-3遺
伝 子 は 、 、 こ の 遺 伝 子 間 隔 に 対 応 す る コ ス ミ ド に 由 来 す る DNAの 注 射 に よ り dsc-3変 異 体 を
レスキューすることができなかったので、標準的な形質転換レスキュー技術によってクロ
ーン化されることができなかった。
【0384】
dsc-3を 同 定 す る た め に 候 補 ア プ ロ ー チ を と っ た 。 dsc-3突 然 変 異 が マ ッ プ さ れ た ゲ ノ ム
30
領 域 の 遺 伝 子 が 調 査 し て 、 1つ の 潜 在 的 候 補 の 予 測 さ れ る ヌ ク レ オ チ ド 配 列 H06H21.10が イ
ン タ ー ネ ッ ト ・ ウ ェ ブ サ イ ト wormbase.orgか ら 入 手 可 能 な 配 列 デ ー タ ベ ー ス か ら 同 定 さ れ
た 。 予 測 さ れ る ヌ ク レ オ チ ド 配 列 H06H21.10に は 、 ヒ ト 遺 伝 子 を コ ー ド す る DNAと 類 似 性 を
有 す る 胸 の 注 釈 が つ い て い た 。 予 測 さ れ る H06H21.10遺 伝 子 が あ ま り 大 き く ( > 13kb) 、
利用できるいずれのコスミドにも完全には含まれていなかったので、レスキュー実験を容
易に行うことができなかった。
【0385】
予 測 さ れ る H06H21.10遺 伝 子 を さ ら に 検 査 す る た め に 、 ゲ ノ ム 配 列 を ヒ ト 遺 伝 子 の ヌ ク
レオチド配列と比較した。配列のアラインメントのさらなる解析および洗練により、さら
に 2つ の エ キ ソ ン が 本 領 域 に 存 在 す る が 、 虫 配 列 デ ー タ ベ ー ス で は 、 予 測 さ れ る H06H21.10
40
遺伝子の配列をコードするものと同定されなかったことが明らかになった。本発明によれ
ば 、 こ の 遺 伝 子 の 適 切 な コ ー ド 配 列 ( 本 明 細 書 に お い て 、 dsc-3と 称 さ れ る ) は 、 3945bp
を 含 み 、 1314ア ミ ノ 酸 を 有 す る タ ン パ ク 質 を コ ー ド し 、 図 9お よ び SEQ ID NO: 7を 参 照 さ
れ た い 。 dsc-3の コ ー ド 配 列 は 、 予 測 さ れ る H06H21.10遺 伝 子 の エ キ ソ ン 4と エ キ ソ ン 5の 間
の 1つ の エ キ ソ ン の 付 加 ( ヌ ク レ オ チ ド 459-613) に 対 応 す る さ ら な る 276bps( ヌ ク レ オ チ
ド 459-734) 、 お よ び 予 測 さ れ る エ キ ソ ン 5( ヌ ク レ オ チ ド 614-734) に 対 す る 第 2の 付 加 の
121ヌ ク レ オ チ ド 5'を 含 む 。 デ ー タ ベ ー ス に お い て 報 告 さ れ る H06H21.10遺 伝 子 の 予 測 さ れ
る 配 列 は 、 誤 っ て い る 。 本 発 明 に よ れ ば 。 dsc-3の 22エ キ ソ ン は 、 以 下 の ヌ ク レ オ チ ド 塩
基 対 で 同 定 さ れ た : エ キ ソ ン 1: 1∼ 110、 エ キ ソ ン 2: 111∼ 224、 エ キ ソ ン 3: 225∼ 323、
エ キ ソ ン 4: 324∼ 458、 エ キ ソ ン 5: 459∼ 613、 エ キ ソ ン 6: 614∼ 991、 エ キ ソ ン 7: 992∼ 1
50
(85)
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272、 エ キ ソ ン 8: 1273∼ 1341、 エ キ ソ ン 9: 1342∼ 1764、 エ キ ソ ン 10: 1765∼ 1890、 エ キ
ソ ン 11: 1891∼ 2088、 エ キ ソ ン 12: 2089∼ 2232、 エ キ ソ ン 13: 2233∼ 2320、 エ キ ソ ン 14:
2321∼ 2469、 エ キ ソ ン 15: 2470∼ 2620、 エ キ ソ ン 16: 2621∼ 3014、 エ キ ソ ン 17: 3015∼ 31
47、 エ キ ソ ン 18: 3148∼ 3476、 エ キ ソ ン 19: 3477∼ 3693、 エ キ ソ ン 20: 3694∼ 3791、 エ キ
ソ ン 21: 3792∼ 3909お よ び エ キ ソ ン 22: SEQ ID NO: 7の 3910-3945。
【0386】
dsc-3に よ っ て コ ー ド さ れ る 予 想 ア ミ ノ 酸 配 列 は 、 図 10に 示 し て あ り ( SEQ ID NO: 8)
、 以 後 DSC-3と 称 す る 。 DSC-3と ヒ ト 由 来 の 4相 同 的 な IV型 P型 ATPaseの ア ミ ノ 酸 配 列 の ア
ラ イ ン メ ン ト ( SEQ ID NO: 9、 10、 11、 お よ び 12) を 図 11に 示 し て あ る 。 ATP8B1は 、 ATP8
B2お よ び ATP8B4と 最 高 の ア ミ ノ 酸 一 致 性 を 共 有 す る 。 DSC-3と ATP8B4配 列 の 間 の ア ミ ノ 酸
10
一 致 性 の 程 度 は 、 ア ミ ノ 酸 を DSC-3: 137∼ 1115と ATP8B4: 2∼ 946を 整 列 さ せ た と き に 54%
である。
【0387】
9.2 RNA干 渉
Rdsc-3の 発 現 を 減 少 さ せ る た め に NA干 渉 ( RNAi) を 使 用 し た 。 エ キ ソ ン 18お よ び 19を 第
1の 鎖 cDNAラ イ ブ ラ リ ー ( ラ ン ダ ム ・ プ ラ イ マ ー を 使 用 し て 混 合 段 階 N2虫 か ら 単 離 さ れ た
総 RNAの 逆 転 写 に よ っ て 作 製 さ れ る ) か ら 、 PCRに よ っ て 増 幅 し た 。 PCR産 物 ( dsc-3転 写 物
の ヌ ク レ オ チ ド 3182-3666に 対 応 す る ) を pPD129.36の T7プ ロ モ ー タ ー に 隣 接 す る PstIお よ
び NheI部 位 に ク ロ ー ン 化 し た 。 T7プ ロ モ ー タ ー に 対 し て 相 補 的 な プ ラ イ マ ー を 使 用 し て 、
ク ロ ー ン か ら dsc-3断 片 を 増 幅 し た 。 こ の PCR産 物 を イ ン ビ ト ロ で の 転 写 反 応 の テ ン プ レ ー
20
ト と し て 使 用 し 、 二 重 鎖 RNA( dsRNA) を 産 生 し た 。 こ の dsRNAは 、 Fire et al., 1998 ( N
ature. 391( 6669) :806-11.) に 記 載 し た よ う に 、 ∼ 1μ g/mLの 濃 度 で clk-1( qm30) 変 異
体に注射した。
【0388】
dsc-3の 発 現 の 減 少 を 示 す る 虫 は 、 完 全 に dsc-3変 異 体 を 表 現 型 模 写 す る ( 同 じ 表 現 型 を
生 じ る ) こ と が で き る 。 こ の RNAi実 験 の 結 果 か ら 、 予 測 さ れ る dsc-3は 、 上 記 第 9.1節 に 記
載 の 通 り 、 そ の 機 能 を 減 少 さ せ る と Dsc表 現 型 を 生 じ る の で 、 dsc遺 伝 子 で あ る こ と が 明 ら
かである。
【0389】
9.3 DSC-3お よ び 脂 質 代 謝
30
3つ の dsc-3つ の 変 異 体 、 dsc-3( qm179) 、 dsc-3( qm180) 、 お よ び dsc-3( qm184) が 、
clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 排 便 表 現 型 の 抑 制 因 子 と し て 単 離 さ れ た 。 dsc-3変 異 体 は 、 dsc-4変
異 体 と 同 じ 表 現 型 を 有 し 、 す な わ ち 、 こ れ ら は 20℃ で 、 並 び に 25℃ に 変 化 し た 後 で clk-1
変 異 体 の 緩 徐 な 排 便 を 抑 制 す る 。 ま た 、 dsc-3変 異 体 も 、 dsc-4変 異 体 に お い て 観 察 さ れ る
生 殖 系 列 発 達 の 促 進 を 示 す 。 そ の ほ か に 、 dsc-3( qm179) 突 然 変 異 の 効 果 は 、 dsc-4( qm1
82) 突 然 変 異 の も の に 対 し て 相 加 的 で は な い こ と か ら 、 こ れ ら の 2つ の 突 然 変 異 が 同 じ 経
路において作用するか、または同じプロセスに影響を及ぼすことを示唆する。
【0390】
dsc-3は 、 IV型 P型 ATPase、 よ り 詳 細 に は 、 ATP依 存 性 ア ミ ノ リ ン 脂 質 輸 送 体 を コ ー ド す
る 。 dsc-3は 、 ヒ ト 遺 伝 子 ATP8B1に よ っ て コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 と 50%同 一 で あ り 、 こ
40
れ は 、 FIC1/ BRIC/ PFIC1の ヒ ト 疾 患 座 位 に 対 応 す る 。 ATPase酵 素 は 、 金 属 、 、 イ オ ン 、
お よ び リ ン 脂 質 な ど の 因 子 を 、 ATPを 使 用 し て 膜 を 越 え て 輸 送 す る 必 須 膜 タ ン パ ク 質 で あ
る 酵 素 の 大 フ ァ ミ リ ー で あ る ( Harris et al, 2003, Biochim. Biophys. 1633:127-131)
。 こ の よ う な 酵 素 は 、 膜 の 2枚 の 小 葉 間 に 非 対 称 の 脂 質 組 成 を 生 じ て 、 こ の よ う な 膜 に 特
定 の 性 質 を 与 え る ( Daleke, 2003, Journal of Lipid Research 44:233-42) 。 こ の よ う
な ATPaseの 突 然 変 異 の ヒ ト ATP8B1/ FIC1で は 、 バ イ ラ ー 病 の 胆 汁 う っ 滞 性 の 表 現 型 の 特 徴
を 生 じ る ( Bull et al., 1998, Nature Genetics 18:219-24; Trauner et al, 2002, Phy
siol. Rev. 83:633-671) 。 ATP8B1/ FIC1( し か し 、 限 定 さ れ な い ) な ど の ATPase酵 素 は
、 胆 汁 酸 の 輸 送 お よ び 分 泌 に お い て 役 割 を 果 た す 。 ATP8B1/ FIC1は 、 CHOK1細 胞 で 発 現 さ
れ、次いでこれらの細胞の膜で同定され、ここで膜における脂質の分布の変更が観察され
50
(86)
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た ( Ujhazy et al., 2001, Hepatology 34:768-775) 。
【0391】
胆汁うっ滞性疾患は、肝臓内の胆汁の流れが障害される症状である。哺乳類において、
コレステロール恒常性は、その腸管吸収、内因性合成、および胆汁排泄の同調調節で達成
さ れ る 。 胆 汁 代 謝 を 変 更 す る こ と は 、 コ レ ス テ ロ ー ル お よ び LDLレ ベ ル を 制 御 す る た め の
方 法 の う ち の 1つ で あ る ( Lu et al., 2001, Trends in Endocrinology and Metabolism 1
2 : 3 1 4 - 2 0 ; F u c h s , 2 0 0 3 , A m J P h y s i o l G a s t r o i n t e s t L i v e r P h y s i o l . 2 8 4 : G 5 5 1 - 7) 。 ア
ミ ノ リ ン 脂 質 輸 送 の 欠 損 と 胆 汁 鬱 帯 と の 間 の 関 係 は 、 正 確 に 理 解 さ れ て い な い が 、 ATP8B1
は、胆汁塩排出において、例えば肝臓小管の膜における脂質非対称を維持することによっ
て 胆 汁 酸 輸 送 体 の 活 性 の 調 節 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る ( Bull et al., 1998, Nature
10
Genetics 18:219-24) 。 加 え て 、 こ の 遺 伝 子 は 、 肝 臓 に 発 現 さ れ る が 、 腸 に お い て よ り 優
勢であるので、膜を越えた脂質非対称は、腸のステロール吸収および分泌に関与する膜輸
送 体 の 活 性 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が で き る ( Ujhazy et al., 2001、 Hepatology 34: 768-75
)。
【0392】
dsc-4が LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 に 必 要 な 活 性 を コ ー ド す る こ と 、 お よ び LDL様 リ ポ
タ ン パ ク 質 分 泌 の 低 下 ま た は コ レ ス テ ロ ー ル の 低 下 が dsc-3と 同 じ 生 殖 系 列 発 達 の 速 度 に
対 す る 効 果 を 有 す る こ と を 考 え る と 、 本 発 明 者 ら は 、 dsc-3が 、 ヒ ト に お い て そ の 相 同 体
が行うように、虫においても実際にコレステロールホメオスタシスに影響を及ぼすと結論
す る 。 dsc-3の 配 列 解 析 で は 、 ヒ ト の ア テ ロ ー ム 性 動 脈 硬 化 症 、 コ レ ス テ ロ ー ル 代 謝 に 関
20
連した肝臓および腸の問題の治療および/または予防のための化合物をスクリーニングす
る た め の 標 的 と し て dsc-3( お よ び ヒ ト 相 同 体 を 含 む そ の 相 同 体 ) を 使 用 す る 本 発 明 を サ
ポートする。
【0393】
当業者であれば、ルーチン試験だけを使用して、本明細書に記載された本発明の特異的
な態様に対する多くの均等物を認識し、または確認することができるであろう。このよう
な均等物は、請求の範囲に含まれることが企図される。
【0394】
この明細書において言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの個々
の刊行物、特許、または特許出願が参照により本明細書に援用され得ことを具体的かつ個
30
々に示されたのと同じ範囲で、本明細書において参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0395】
【 図 1 A 】 図 1A-1E: dsc-4( qm182) 突 然 変 異 お よ び コ レ ス テ ロ ー ル 摂 取 の 減 少 は 、 clk-1
変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 抑 制 す る 。 ( A) 産 卵 速 度 の 時 間 経 過 解 析 。 虫 を 成 体 脱 皮
( 時 間 0) 状 態 に 同 調 さ せ て 、 産 卵 速 度 ( 時 間 あ た り に 産 ま れ る 産 卵 数 ) は 、 24h間 隔 で 測
定 し た ( n≧ 30) 。 遺 伝 子 型 は 、 以 下 の 通 り で あ っ た : 野 生 型 ( N2) ; dsc-4( qm182) ; c
lk-1( qm30) ; お よ び clk-1( qm30) / dsc-4( qm182) 。 野 生 型 動 物 で は 、 24∼ 48時 間 の
間 に 産 卵 ピ ー ク に 達 し た が 、 clk-1変 異 体 で は 、 72時 間 で 産 卵 ピ ー ク に 達 し た 。 dsc-4( qm
182) 突 然 変 異 で は 、 clk-1/dsc-4二 重 突 然 変 異 体 に よ っ て 証 明 さ れ る よ う に 抑 制 さ れ 、 48
40
時 間 ま で に 産 卵 ピ ー ク に 達 し た 。 dsc-4の 単 一 変 異 体 で は 、 24時 間 ま で に 産 卵 ピ ー ク 達 し
、野生型におけるよりもわずかに早かった。
【 図 1 B 】 ( B) 一 腹 仔 数 。 そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 型 の 10匹 以 上 の 動 物 に よ っ て 産 ま れ る 子 孫
の 平 均 数 を 示 し て あ る 。 エ ラ ー ・ バ ー は 、 標 準 偏 差 ( SD) を 表 す 。 平 均 一 腹 仔 数 ± 野 生 型
の SD=315.0± 30.4、 dsc-4( qm182) =210.9± 31.8、 clk-1( qm30) =206.8± 52.4、 お よ び c
lk-1( qm30) / dsc-4( qm182) = 233.8± 33.7。
【 図 1 C 】 ( C) 成 体 脱 皮 の 6時 間 後 の 生 殖 系 列 の 発 達 。 4つ の 異 な る 発 育 段 階 の 各 々 に お
け る 生 殖 系 列 の 割 合 を そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 型 に つ い て 示 し て あ る ( n≧ 30) 。 前 方 ( A) お よ
び 後 方 ( P) 生 殖 腺 ア ー ム の 発 達 段 階 を 別 々 に 示 し て あ る 。 全 て の 野 生 型 動 物 は 、 卵 形 成
が 進 行 中 で あ り 、 こ れ ら の 約 半 分 が 受 精 卵 を 有 し た 。 対 照 的 に 、 clk-1( qm30) 変 異 体 の
50
(87)
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半分未満では、卵形成が進行中であった。後方の生殖系列の発達は、前方のものよりも進
行 し た 。 dsc-4( qm182) 突 然 変 異 は 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 抑 制 し た が 、
それは前方および後方の生殖腺の違いを克服することができない。
【 図 1 D 】 ( D) 成 体 脱 皮 の 1.5時 間 後 の 生 殖 系 列 発 達 。 コ レ ス テ ロ ー ル の 補 充 を 伴 っ た お
よ び 伴 っ て い な い プ レ ー ト で の そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 型 に つ い て 、 4つ の 異 な る 発 育 段 階 の 各
々 に お け る 生 殖 系 列 の 割 合 を 示 し て あ る ( そ れ ぞ れ 、 n≧ 30お よ び n≧ 19) 。 大 部 分 の 野 生
型 動 物 は 、 後 期 の L4段 階 で 一 次 精 母 細 胞 形 成 を 開 始 し 、 一 次 精 母 細 胞 形 成 を 終 え た 。 対 照
的 に 、 clk-1( qm30) 変 異 体 の 半 分 は 、 第 一 精 母 細 胞 形 成 を 未 だ に 開 始 し て い な か っ た 。
大 部 分 の clk-1( qm30) / dsc-4( qm182) 二 重 突 然 変 異 体 は 、 第 一 精 母 細 胞 形 成 を 終 え た
の で 、 dsc-4( qm182) 突 然 変 異 は 、 clk-1( qm30) 変 異 体 よ り も 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 抑
10
制した。
【 図 1 E 】 ( E) 後 胚 発 生 の 期 間 。 そ れ ぞ れ の 時 間 間 隔 の 間 に 成 体 期 に 達 し た 虫 の 割 合 を
示 し て あ る ( n≧ 50) 。 野 生 型 動 物 は 、 孵 化 の 51時 間 後 に ま で に 全 て が 成 体 期 に 達 っ し た
。 clk-1( qm30) 変 異 体 は 、 clk-1( qm30) / dsc-4( qm182) 二 重 突 然 変 異 体 と 同 様 に 、 孵
化 の 81時 間 後 ま で に 全 て が 成 体 期 に 達 し た こ と か ら 、 dsc-4は 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 後 胚
発生を抑制しないことを示している。
【 図 2 】 図 2A-2G: dsc-4の 発 現 の 生 殖 系 列 の 発 達 お よ び パ タ ー ン に 対 す る clk-1お よ び dsc
-4の 効 果 。 ( A) 後 期 お よ び 若 年 成 体 雌 雄 同 体 の L4の 生 殖 系 列 の 近 位 部 分 の 概 略 図 。 生 殖
腺 は 、 通 常 、 中 央 に 位 置 す る 子 宮 に 連 結 し 、 外 陰 部 に 対 し て 融 合 さ れ た 2本 の U型 の ア ー ム
( 前 お よ び 後 方 ) か ら な る 。 遠 位 -近 位 の 軸 は 、 外 陰 部 ( 外 部 に 対 す る 生 殖 腺 の 基 端 側 開
20
口 部 ) に 対 し て 相 関 す る 。 ( B) -( D) 成 体 脱 皮 の 6時 間 後 の 後 方 生 殖 系 列 の 近 端 部 。 左 が
前であり、上部は背面である。星印は、最も近位の卵母細胞の核を示す。矢印は、生殖系
列 の 近 端 部 を 示 す 。 文 字 「 e」 は 、 受 精 卵 を 示 す 。 ( B) 野 生 型 は 、 生 殖 系 列 の 近 端 部 に 卵
母 細 胞 を 有 し た 。 ( D) clk-1( qm30) 変 異 体 は 、 な お も 精 子 形 成 を 受 け て い た ( 点 線 ) 。
ま た 、 第 一 精 母 細 胞 は 、 生 殖 系 列 の 近 端 部 の 近 く で 観 察 さ れ た ( 実 線 ) 。 ( C) dsc-4( qm
182) シ ン グ ル の 変 異 体 お よ び ( E) clk-1( qm30) / dsc-4( qm182) 二 重 突 然 変 異 体 は 、
子 宮 の 生 殖 系 列 、 並 び に 受 精 卵 の 近 端 部 に 卵 母 細 胞 を 有 し た 。 ( F) -( G) dsc-4: : GFP
転 写 融 合 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子 に 由 来 す る GFP蛍 光 。 動 物 の 輪 郭 お よ び 胚 は 、 点 線 に よ っ て 示
し て あ る 。 バ ー は 、 10マ イ ク ロ メ ー ト ル を 示 す 。 ( F) コ ン マ 段 階 ( comma stage) 胚 の 腸
で 観 察 さ れ る GFP蛍 光 。 ( G) 後 期 の 幼 虫 の 後 側 末 端 。 GFP蛍 光 は 、 成 体 期 ま で 、 お よ び そ
30
の間に腸で観察された。
【 図 3 A − 1 】 図 3A-3C: dsc-4遺 伝 子 お よ び タ ン パ ク 質 産 物 の 構 造 お よ び 相 同 性 。 ( A) D
SC-4ポ リ ペ プ チ ド の 一 次 構 造 を ( SEQ ID NO: 2) ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ 、 マ ウ ス 、 お よ び ヒ ト
MTPと 共 に 整 列 し た 。 同 一 の 残 基 は 、 掛 け し て あ り 、 > 75%お よ び > 50%の 類 似 性 を 有 す る
残 基 を そ れ ぞ れ 黒 お よ び 光 灰 色 に し て あ る 。 星 印 は 、 dsc-4( qm182) で 突 然 変 異 が 見 い だ
さ れ た 突 然 変 異 点 を 示 す 。 遺 伝 子 の 位 置 354に C→ T移 行 が あ り 、 タ ン パ ク 質 の 位 置 62で セ
リ ン か ら フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン へ の 置 換 を 生 じ 、 遺 伝 子 の 位 置 605の G→ A移 行 に よ り 、 タ ン パ
ク 質 の 位 置 146で ア ラ ニ ン か ら ス レ オ ニ ン へ の 置 換 を 生 じ た 。 シ グ ナ ル 配 列 は 、 示 さ れ て
い な い 。 DSC-4の ド メ イ ン は : apoB結 合 ド メ イ ン ( ア ミ ノ 酸 残 基 19∼ 295) 、 apoBお よ び PD
I結 合 ド メ イ ン ( ア ミ ノ 酸 残 基 296∼ 609) 、 並 び に 脂 質 結 合 ド メ イ ン ( ア ミ ノ 酸 残 基 610∼
40
890) を 含 む 。
【 図 3 A − 2 】 図 3 A-1の 続 き 。
【 図 3 A − 3 】 図 3 A-2の 続 き 。
【 図 3 B 】 ( B) dsc-4遺 伝 子 の ゲ ノ ム の 構 造 。 黒 四 角 お よ び 白 四 角 は 、 そ れ ぞ れ 非 コ ー ド
お よ び コ ー ド 領 域 に 対 応 す る 。 cDNA並 び に 第 1鎖 cDNAラ イ ブ ラ リ ー か ら 増 幅 さ れ た PCR産 物
の シ ー ケ ン シ ン グ に よ り 、 dsc-4メ ッ セ ー ジ は SL1ト ラ ン ス ス プ ラ イ ス さ れ て お り 、 11の エ
キソンを含むことが明らかになった。
【 図 3 C 】 ( C) dsc-4タ ン パ ク 質 の 概 略 図 。 掛 け さ れ た 四 角 は 、 シ グ ナ ル 配 列 、 apoB結 合
ド メ イ ン 、 apoBお よ び PDI結 合 ド メ イ ン 、 並 び に 脂 質 結 合 お よ び 輸 送 ド メ イ ン を 表 す 。
【 図 4 A 】 dsc-4 cDNA( SEQ ID NO: 1) お よ び タ ン パ ク 質 ( SEQ ID NO: 2) の 配 列 。 ^は
50
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、 予 測 さ れ る シ グ ナ ル 配 列 に よ る 切 断 部 位 を 示 す 。 #は 、 抑 制 因 子 ス ク リ ー ニ ン グ で 同 定
さ れ た dsc-4( qm182) 変 異 体 で 変 異 さ れ た 部 位 を 示 す 。 ヌ ク レ オ チ ド 位 置 354の Cか ら Tへ
の 突 然 変 異 に よ り 、 ア ミ ノ 酸 の 位 置 62で セ リ ン か ら フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン へ の 置 換 を 生 じ 、 ヌ
ク レ オ チ ド 位 置 605の Gか ら Aへ の 移 行 に よ り 、 ア ミ ノ 酸 の 位 置 146で ア ラ ニ ン か ら ス レ オ ニ
ン へ の 置 換 を 生 じ た 。 下 線 を 引 い た 残 基 は 、 apoB結 合 ド メ イ ン に 対 応 し て お り 、 点 線 の 下
線 を 引 い た 残 基 は 、 apoBお よ び PDI結 合 ド メ イ ン に 対 応 し て お り 、 二 重 下 線 を 引 い た 残 基
は 、 脂 質 結 合 ド メ イ ン に 対 応 す る 。 ま た 、 5'-お よ び 3'-UTRの 配 列 も 含 め た 。 示 し た dsc-4
DNA配 列 は 11の エ キ ソ ン を 含 み 、 ヌ ク レ オ チ ド 塩 基 1∼ 169に 5'非 翻 訳 の 領 域 に 続 い て 見 い
だ す こ と が で き る 。 dsc-4コ ー ド 配 列 内 の エ キ ソ ン の ヌ ク レ オ チ ド 位 置 は 、 以 下 の 通 り で
あ る : エ キ ソ ン 1: 170∼ 215、 エ キ ソ ン 2: 216∼ 472、 エ キ ソ ン 3: 473∼ 819、 エ キ ソ ン 4:
10
820∼ 924、 エ キ ソ ン 5: 925∼ 1084、 エ キ ソ ン 6: 1085∼ 1251、 エ キ ソ ン 7: 1252∼ 1543、 エ
キ ソ ン 8: 1544∼ 1738、 エ キ ソ ン 9: 1739∼ 2182。 エ キ ソ ン 10: 2183∼ 2529、 お よ び エ キ ソ
ン 11: 2530∼ 2848。
【 図 4 B 】 図 4Aの 続 き 。
【 図 4 C 】 図 4Bの 続 き 。
【 図 4 D 】 図 4Cの 続 き 。
【 図 5 A 】 図 5A-5F: vit-3、 -4、 お よ び -5に 対 す る RNA干 渉 は 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖
系 列 発 達 を 抑 制 し た 。 ( A) vit遺 伝 子 間 の 一 致 性 の 比 較 。 vit遺 伝 子 配 列 間 の 同 一 の ヌ ク
レ オ チ ド の 割 合 を 示 し て あ る 。 vit-3、 -4、 お よ び -5は 、 互 い に 実 質 的 に 同 一 で あ り 、 そ
れ ぞ れ vit-2お よ び -6と 約 66%お よ び 40%の 相 同 性 を 示 す 。 vit-2は 、 vit-6と 42%の 一 致 性 を
20
有する。
【 図 5 B 】 ( B) ∼ ( E) に つ い て は 、 成 体 脱 皮 ( 時 間 0) 状 態 に あ る 虫 を 同 調 さ せ て 、 産
卵 速 度 ( 時 間 あ た り の 産 卵 数 ) を 24時 間 間 隔 で 測 定 し た ( n≧ 20) 。 ( B) 産 卵 速 度 に 対 す
る vit RNAiの 効 果 。 脱 皮 か ら 成 体 期 へ の 24時 間 後 の clk-1変 異 体 の 産 卵 速 度 を 示 し て あ る
( n≧ 20) 。 エ ラ ー ・ バ ー は 、 SDを 示 す 。 vit-5 RNAiは 、 dsc-4 RNAiよ り も 弱 い 抑 制 を 生
じ 、 一 方 vit-2 RNAiお よ び vit-6 RNAiは 、 こ の 計 測 に よ っ て は 実 質 的 に 効 果 が な か っ た 。
【 図 5 C 】 ( C) 産 卵 速 度 に 対 す る vit-5 RNAiの 効 果 。 野 生 型 、 clk-1( qm30) お よ び clk1( qm30) / dsc-4( qm182) 変 異 体 を vit-5 RNAiで 処 理 し て 時 間 経 過 実 験 を 行 っ た ( n≧ 27
) 。 vit-5 RNAiは 、 clk-1( qm30) バ ッ ク グ ラ ン ド に お い て の み 産 卵 速 度 に 影 響 を 及 ぼ し
た 。 vit-5 RNAiの 効 果 は 、 dsc-4突 然 変 異 の も の に 対 し て 付 加 的 な も の で は な か っ た 。
30
【 図 5 D 】 ( D) 生 殖 系 列 発 達 に 対 す る vit-5 RNAiの 効 果 。 そ れ ぞ れ の 時 点 で そ の 子 宮 内
に 卵 を も つ 動 物 の 割 合 を 示 し て あ る ( n≧ 30) 。 clk-1( qm30) の 生 殖 系 列 発 達 は 、 vit-5
RNAiに よ っ て 促 進 さ れ 、 対 照 の 9時 間 前 に 、 受 精 し た 卵 を も つ 最 初 の 動 物 が 出 現 し た 。 さ
ら に ま た 、 全 て の vit-5 RNAi処 理 し た 動 物 は 、 全 て の 対 照 の 15時 間 前 に 卵 を 有 し た 。
【 図 5 E 】 成 体 脱 皮 の 24時 間 後 の clk-1単 一 変 異 体 ( E) お よ び clk-1/vit-5 RNAi二 重 突 然
変 異 体 ( F) 動 物 。 バ ー は 、 10μ mを 示 す 。 対 照 プ レ ー ト 上 の clk-1( qm30) 変 異 体 は 、 こ
れ ら の 子 宮 に 平 均 0.9± 1.6の 受 精 卵 を 有 し ( n=28) 、 そ の 一 方 で clk-1/vit-5 RNAi動 物 は
、 10.3± 1.9の 卵 を 有 し た ( n=20) 。 子 宮 の 3× 拡 大 像 を 右 下 に 示 し て あ る 。 鏃 は 、 受 精 卵
を示す。
【 図 5 F 】 成 体 脱 皮 の 24時 間 後 の clk-1単 一 変 異 体 ( E) お よ び clk-1/vit-5 RNAi二 重 突 然
40
変 異 体 ( F) 動 物 。 バ ー は 、 10μ mを 示 す 。 対 照 プ レ ー ト 上 の clk-1( qm30) 変 異 体 は 、 こ
れ ら の 子 宮 に 平 均 0.9± 1.6の 受 精 卵 を 有 し ( n=28) 、 そ の 一 方 で clk-1/vit-5 RNAi動 物 は
、 10.3± 1.9の 卵 を 有 し た ( n=20) 。 子 宮 の 3× 拡 大 像 を 右 下 に 示 し て あ る 。 鏃 は 、 受 精 卵
を示す。
【 図 6 】 図 6A-6C: SOD-1 RNAiは 、 clk-1変 異 体 の 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 を 抑 制 し た 。 虫 を 成
体 脱 皮 ( 時 間 0) に 同 調 さ せ て 、 産 卵 速 度 ( 時 間 あ た り の 産 卵 数 ) を 24時 間 間 隔 で 測 定 し
た 。 13∼ 23匹 の 動 物 の 平 均 産 卵 速 度 は 、 そ れ ぞ れ の 遺 伝 子 型 に つ い て 示 し て あ る 。 ( A)
野 生 型 の 産 卵 速 度 に 対 す る 、 SOD-1、 -2、 -3、 -4に 対 す る RNAiの 効 果 。 22匹 以 上 の 動 物 を
そ れ ぞ れ の RNAi処 理 に つ い て 検 査 し た 。 SOD-1、 -2、 -3、 お よ び -4に 対 す る RNAiは 、 野 生
型 動 物 の 産 卵 速 度 に 対 し て 効 果 を 有 さ な か っ た 。 ( B) clk-1変 異 体 の 産 卵 速 度 に 対 す る 、
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SOD-1、 -2、 -3、 -4に 対 す る RNAiの 効 果 。 19匹 以 上 の 動 物 を そ れ ぞ れ の RNAi処 理 に つ い て
検 査 し た 。 SOD-1 RNAiは 、 clk-1変 異 体 の 遅 延 性 の 産 卵 を 抑 制 し た 。 clk-1( qm30) 変 異 体
は 、 対 照 プ レ ー ト 上 で 成 体 脱 皮 の 72時 間 後 に 産 卵 の ピ ー ク に 達 し た が 、 clk-1( qm30) / S
OD-1 RNAi二 重 突 然 変 異 体 で は 、 48時 間 で 産 卵 の ピ ー ク に 達 し た 。 SOD-2お よ び -3に 対 す る
RNAiは 、 数 時 間 あ た り の 産 卵 数 を 減 少 し た が 、 産 卵 の 時 間 経 過 に 有 意 な 影 響 を 及 ぼ さ ず 、
一 方 で 、 SOD-4に 対 す る RNAiは 、 clk-1変 異 体 に 対 し て 効 果 を 有 さ な か っ た 。 ( C) clk-1(
qm30) の 産 卵 速 度 に 対 す る 、 SOD-1/ dsc-4( qm182) 二 重 突 然 変 異 体 に 対 す る RNAiの 効 果
。 23匹 以 上 の 動 物 を そ れ ぞ れ の 条 件 に つ い て 検 査 し た 。 SOD-1に 対 す る RNAiは 、 dsc-4( qm
182) ま た は clk-1( qm30) / dsc-4( qm182) 変 異 体 バ ッ ク グ ラ ン ド の い ず れ に お い て も 効
果を有さなかった。
10
【 図 7 】 図 7A-7B: 虫 お よ び 脊 椎 動 物 の リ ポ タ ン パ ク 質 酸 化 に 関 与 す る 遺 伝 子 産 物 よ プ ロ
セ ス の 間 の 機 能 的 な 関 係 の モ デ ル 。 ( A) リ ポ タ ン パ ク 質 に よ る 線 虫 生 殖 系 列 発 達 の 調 節
の た め の モ デ ル 。 7節 お よ び 8節 に 記 載 さ れ て い る 結 果 は 、 生 殖 系 列 発 達 が 酸 化 型 の LDL様
リ ポ タ ン パ ク 質 に よ っ て 促 進 さ れ 、 天 然 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 に よ っ て 阻 害 さ れ る こ と
を示す。天然のリポタンパク質の産生に有利な活性およびプロセスは、明るい灰色であり
、 酸 化 に 有 利 な も の は 、 濃 い 灰 色 で あ る 。 DSC-4ポ リ ペ プ チ ド ( MTPの 虫 相 同 体 ) は 、 LDL
様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 に 必 要 と さ れ る 。 clk-1ポ リ ペ プ チ ド は 、 ユ ビ キ ノ ン ( UQ) ( ROS
の主要供与源であるが、抗酸化物でもあるレドックス活性脂質)の生合成に必要であった
。 clk-1変 異 体 に は 、 UQは 作 製 さ れ な い が 、 生 合 成 の 前 駆 体 ( デ メ ト キ シ ユ ビ キ ノ ン ( DMQ
) ) が 蓄 積 す る 。 DMQは 、 ROS産 生 を 生 じ に く い が 、 よ り 良 好 な 抗 酸 化 物 で も あ ろ う 。 従 っ
20
て 、 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 は 、 clk-1変 異 体 に お い て よ り 酸 化 型 で は な い 。 一 方 で 、 サ イ ト
ゾ ル の ス ー パ ー オ キ シ ド ジ ス ム タ ー ゼ を コ ー ド す る SOD-1に 対 す る RNAiは 、 細 胞 質 の ROSの
増 加 に 至 る 。 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 は 、 ROSに よ っ て 酸 化 さ れ る の で 、 こ れ が DMQの 存 在 下
に よ っ て 生 じ る 酸 化 の 還 元 に 反 対 に 作 用 し て 、 酸 化 型 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 に 対 す る 天
然 の 野 生 型 の 比 率 を 回 復 す る こ と に よ り 、 生 殖 系 列 の 発 達 を 促 進 す る 。 LDL様 リ ポ タ ン パ
ク 質 の 分 泌 は 、 dsc-4の 突 然 変 異 に よ っ て 、 コ レ ス テ ロ ー ル 摂 取 の 減 少 性 に よ っ て 、 お よ
び VITタ ン パ ク 質 ( apoBの 虫 相 同 体 ) の 生 産 を 減 少 さ せ る こ と に よ っ て 減 少 さ れ る 。 こ れ
ら の 条 件 で は 、 天 然 お よ び 酸 化 型 の LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 に 重 大 な 影 響 を 及 ぼ し 、 し た が
って、抑制性および刺激性の入力の両方を除去することによって細胞体および生殖系列の
同 調 を 回 復 す る と 思 わ れ る 。 ( B) 脊 椎 動 物 お よ び 虫 に お け る リ ポ タ ン パ ク 質 の 分 泌 お よ
30
び 酸 化 に 関 与 す る エ レ メ ン ト の 比 較 。 LDL様 リ ポ タ ン パ ク 質 の 産 生 お よ び 酸 化 に 関 与 す る
構造的エレメントが虫に存在し、脊椎動物で観察されるものと同様の方法で機能的に関連
す る 。 DSC-4は 、 MTPの 虫 相 同 体 で あ り 、 一 方 vit-3、 vit-4、 お よ び vit-5は 、 apoBの 虫 相
同 体 で あ る 。 虫 で は 、 脊 椎 動 物 と 同 様 に 、 コ レ ス テ ロ ー ル 摂 取 の 減 少 に よ り 、 LDL様 リ ポ
タ ン パ ク 質 分 泌 が 減 少 し 、 そ の ROSが こ れ ら の 酸 化 を 引 き 起 こ す 。 酸 化 型 の リ ポ タ ン パ ク
質は、特異的な生物学的効果を有する。脊椎動物において、最も特徴づけられた効果のう
ち の 1つ は 、 ア テ ロ ー ム 性 動 脈 硬 化 症 に 至 る プ ロ セ ス の 開 始 で あ る 。 虫 で は 、 生 殖 系 列 の
発 達 に 対 す る 効 果 が 同 定 さ れ た 。 MTP=ミ ク ロ ソ ー ム の ト リ グ リ セ リ ド 転 移 タ ン パ ク 質 ; ap
oB=ア ポ リ ポ タ ン パ ク 質 B; LDL=低 密 度 リ ポ タ ン パ ク 質 ; VIT=ビ テ ロ ゲ ニ ン ; ROS=活 性 酸
素種。
40
【 図 8 】 図 8A-8B: K02D7.4は 、 dsc-4( qm182) に よ っ て 与 え ら れ る clk-1( qm30) 変 異 体
の 緩 徐 な 排 便 の 抑 制 お よ び 緩 徐 な 生 殖 系 列 発 達 の 両 方 を レ ス キ ュ ー し た 。 qmEx254お よ び q
mEx251は 、 K02D7.4遺 伝 子 を 含 む 2つ の 異 な る 染 色 体 外 ア レ イ で あ る 。 ( A) 排 便 。 dsc-4(
qm182) 突 然 変 異 は 、 20お よ び 25℃ で clk-1( qm30) 変 異 体 の 緩 徐 な 排 便 を 抑 制 す る 。 両 方
の 染 色 体 外 ア レ イ が 、 こ の 抑 制 効 果 を レ ス キ ュ ー し た 。 そ れ ぞ れ の バ ー は 、 20ま た は 25℃
の い ず れ か で の 5連 続 の 排 便 サ イ ク ル を 記 録 し た > 15匹 の 動 物 の 平 均 排 便 サ イ ク ル 長 を 表
す ; エ ラ ー ・ バ ー は 、 平 均 標 準 偏 差 を 表 す 。 ( B) 生 殖 系 列 発 達 。 dsc-4( qm182) 突 然 変
異 は 、 clk-1変 異 体 の 遅 延 性 の 生 殖 系 列 発 達 を 抑 制 し 、 成 体 脱 皮 の 直 後 の 産 卵 速 度 の 増 大
を 生 じ た 。 両 方 の 染 色 体 外 ア レ イ が こ の 効 果 を レ ス キ ュ ー し た 。 そ れ ぞ れ の バ ー は 、 12の
成 体 脱 皮 の 24時 間 後 に お け る > 30匹 の 動 物 の 産 卵 速 度 ( 時 間 あ た り の 産 卵 数 ) の 平 均 を 表
50
(90)
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す ; エ ラ ー ・ バ ー は 、 標 準 偏 差 を 表 す 。 K02D7.4の 野 生 型 コ ピ ー は 、 dsc-4( qm182) 突 然
変 異 に よ っ て 生 じ る 表 現 型 を レ ス キ ュ ー し た こ と か ら 、 dsc-4が K02D7.4に 対 応 す る こ と を
示す。
【 図 9 A 】 dsc-3転 写 物 の ヌ ク レ オ チ ド 配 列 ( SEQ ID NO: 7) 。 dsc-3の 22エ キ ソ ン は 、 以
下 の ヌ ク レ オ チ ド 塩 基 対 で 同 定 さ れ た : エ キ ソ ン 1: 1∼ 110、 エ キ ソ ン 2: 111∼ 224、 エ キ
ソ ン 3: 225∼ 323、 エ キ ソ ン 4: 324∼ 458、 エ キ ソ ン 5: 459∼ 613、 エ キ ソ ン 6: 614∼ 991、
エ キ ソ ン 7: 992∼ 1272、 エ キ ソ ン 8: 1273∼ 1341、 エ キ ソ ン 9: 1342∼ 1764、 エ キ ソ ン 10:
1765∼ 1890、 エ キ ソ ン 11: 1891∼ 2088、 エ キ ソ ン 12: 2089∼ 2232、 エ キ ソ ン 13: 2233∼ 23
20、 エ キ ソ ン 14: 2321∼ 2469、 エ キ ソ ン 15: 2470∼ 2620、 エ キ ソ ン 16: 2621∼ 3014、 エ キ
ソ ン 17: 3015∼ 3147、 エ キ ソ ン 18: 3148∼ 3476、 エ キ ソ ン 19: 3477∼ 3693、 エ キ ソ ン 20:
10
3694∼ 3791、 エ キ ソ ン 21: 3792∼ 3909、 お よ び エ キ ソ ン 22: 3910∼ 3945。 太 字 体 の ヌ ク レ
オ チ ド ( ヌ ク レ オ チ ド 3182∼ 3666) は 、 予 測 さ れ た 転 写 物 の エ キ ソ ン 18お よ び 19に 対 応 し
て い な い 。 DNAの こ の 部 分 を cDNAラ イ ブ ラ リ ー か ら 増 幅 し て 、 二 重 鎖 RNAdsRNAを 作 製 す る
た め の テ ン プ レ ー ト と し て 使 用 し 、 H06H21.10遺 伝 子 に 対 す る RNA干 渉 ( RNAi) を 行 う た め
に 使 用 し た 。 dsc-3遺 伝 子 に 対 す る RNAiは 、 変 異 体 dsc-3を 表 現 型 模 写 し た 。
【 図 9 B 】 図 9 Aの 続 き 。
【 図 1 0 】 DSC-3の ア ミ ノ 酸 配 列 。 ア ミ ノ 酸 配 列 は 、 wormbase( www.wormbase.org) 由 来
の H06H21.10の 予 想 ア ミ ノ 酸 配 列 お よ び 92の さ ら な る ア ミ ノ 酸 ( ア ミ ノ 酸 154∼ 245) を 含
む 。 こ れ ら の 92の ア ミ ノ 酸 は 、 ク エ リ ー と し て ヒ ト ATP8B4タ ン パ ク 質 の 配 列 を 使 用 す る ワ
ー ム ゲ ノ ム 配 列 の tBlastn検 索 に よ っ て 同 定 し た 。
20
【 図 1 1 A 】 遺 伝 子 dsc-3、 ヒ ト 由 来 の 4つ の 相 同 的 な タ イ プ IV P-タ イ プ ATPaseの ア ミ ノ
酸 配 列 の 整 列 、 お よ び 共 通 配 列 。 FIC1/ PFIC1/ BRICは 、 ATP8B1に 対 応 し て お り 、 ATP8B2
お よ び ATP8B4と 最 高 の ア ミ ノ 酸 一 致 性 を 共 有 す る 。 dsc-3( ア ミ ノ 酸 位 35∼ 1127) と AT8B1
( ア ミ ノ 酸 位 91∼ 1163) の パ ー セ ン ト 一 致 性 は 、 50%で あ る 。 dsc-3( ア ミ ノ 酸 位 20∼ 1172
) と ATP8B2( ア ミ ノ 酸 位 46∼ 1161) の パ ー セ ン ト 一 致 性 は 、 56%で あ る 。 dsc-3( ア ミ ノ 酸
位 25∼ 812) と ATP8B3( ア ミ ノ 酸 位 194∼ 1034) の パ ー セ ン ト 一 致 性 は 、 38%で あ る 。 dsc-3
( ア ミ ノ 酸 位 137∼ 1115) と ATP8B4( 2∼ 946) の パ ー セ ン ト 一 致 性 は 、 54%で あ る 。
【 図 1 1 B 】 図 11Aの 続 き 。
【 図 1 1 C 】 図 11Bの 続 き 。
【 図 1 1 D 】 図 11Cの 続 き 。
【 図 1 1 E 】 図 11Dの 続 き 。
【 図 1 1 F 】 図 11Eの 続 き 。
30
(91)
【図1A】
【図1C】
【図1B】
【図1D】
【図1E】
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(92)
【図2】
【図3A−1】
【図3A−2】
【図3A−3】
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(93)
【図3B】
【図4A】
【図3C】
【図4B】
【図4C】
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(94)
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
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(95)
【図5D】
【図5F】
【図5E】
【図6】
【図7】
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(96)
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
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(97)
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
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(98)
【図11E】
【配列表】
2006520189000001.app
【図11F】
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(99)
【国際調査報告】
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(100)
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(51)Int.Cl.
FI
C12N
C12N
1/19
1/21
C12N 5/10
A01K 67/027
G01N 33/50
G01N 33/15
A61K 45/00
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テーマコード(参考)
(2006.01)
(2006.01)
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(2006.01)
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3/06
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CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,
DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW
(74)代理人 100109830
弁理士 福原 淑弘
(74)代理人 100095441
弁理士 白根 俊郎
(74)代理人 100084618
弁理士 村松 貞男
(74)代理人 100103034
弁理士 野河 信久
(74)代理人 100092196
弁理士 橋本 良郎
(74)代理人 100100952
弁理士 風間 鉄也
(72)発明者 ヘキミ、シーグフリード
カナダ国、ケベック州 エイチ4ピー・1イー5、モントリオール、アベニュー・ポウェル 43
35
(72)発明者 柴田 幸政
兵庫県神戸市灘区記田町4−2−26−603
(72)発明者 ブラニッキー、ロビン
カナダ国、ケベック州 エイチ2エックス・2エル5、モントリオール、ナンバー11、サント−
ファミーユ 3639
Fターム(参考) 2G045 AA40 DA12 DA13 DA14 DA36 FB12
4B024 AA01 AA11 AA20 BA80 CA01 DA02 GA11 HA20
4B063 QA08 QA19 QQ02 QQ53 QQ79 QQ91 QR32 QR48 QR55 QR72
QS24 QS25 QS32 QX01
4B065 AA90X AB01 AC17 BA24 BB14 CA24 CA44 CA46
4C084 AA17 NA14 ZA45 ZC33
4H045 AA10 BA10 CA20 EA23 EA27 FA74
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