...

PDF 185KB - 日本電子株式会社

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

PDF 185KB - 日本電子株式会社
JEJEOL
OL MSMS
Data
Data
Sheet
Sheet
MS
MSTips
Tips
日本電子株式会社
日本電子株式会社
応用研究センタ分析機器
ー 第2ARC
応用研究グループ
第2グループ
〒 196-8558 東お
京都昭島市武蔵野
問い合わせ:分析機器販促グループ
3-1-2
Tel : (042) 542-2242,
32 .jp
Fax
: (042) www.je
542-31ol.co
Tel : (042)
528-3340
NNo.
o. 006
006
臭素化ダイオキシン類の分析法検討―その1
―高分解能GCMS分析においてー
昨今、塩素化ダイオキシン類の測定・分析に関しては、日本工業規格等に則って、精密な定量分
析及び解析が行われている。一方、塩素化ダイオキシン類と同等の毒性を有している事が懸念され
る臭素化ダイオキシン類に関しては、2000年3月に「ポリブロモジベンゾーpージオキシン(以
後、PBDDs と略す)及びポリブロモジベンゾフラン(以後、PBDFs と略す)の暫定調査方法(案)」
が作成され、一部ではまれに測定されてはいるものの、実際には具体的な測定・分析方法の詳細検
討が十分ではないのが現状である。そこで今回、高分解能GC-MS装置を用いた臭素化ダイオキ
シン類の測定において、スプリットレス注入時の注入口温度に対する臭素化ダイオキシン化合物の
熱分解による脱臭素化挙動を考察した。
[検討方法]
臭素化ダイオキシン類化合物は、光による分解性が高いことが報告されており (1) 、スプリットレ
ス注入法における試料の瞬間加熱においても、熱分解を引き起こすことが懸念された。そこで 210℃
から 340℃の間のいくつかの異なるGC注入口温度で測定を行い、温度に対する目的対象化合物の検
出感度の比較、脱臭素化化合物ピークとの強度比等の結果から、GC注入口における熱分解挙動を確
認し、GCの注入方法について検討した。
測定に使用した装置は、JMS-700D 高分解能二重収束型質量分析計で、分離カラムには J&W 社
製の DB-5HT を使用し、質量分解能 12,000、加速電圧 10kV にて SIM 測定を行った。分析対象化
合物は、2,3,7,8-TeBDF/TeBDD である。また、異なる2台のシステム A 及び B を用いてまったく
同様の測定条件で測定することによって、脱臭素化挙動の比較検討を行った。
[結果と考察]
A 及び B それぞれのシステムによる SIM クロマトグラム結果を図1及び2に示した。また各図の上段に
は、各注入口温度に対する 2,3,7,8-TeBDF 2 チャンネルの平均 SIM クロマトグラムを、そして下段には、注入
口における熱分解を想定し、その脱臭素化体である TrBDF の平均 SIM クロマトグラムを示した。両シス
テム共に、2,3,7,8-TeBDF はおよそ 18 分、そして TrBDF は 13 分の保持時間でそれぞれ溶出した。
まずシステムAでは、図1上段の結果から、2,3,7,8-TeBDF のピーク強度は注入口温度が 260℃で
最も感度が良く、高温及び低温になるにつれて感度の低下傾向が観測された。また下段の結果から
は、TrBDF のピークが、全ての注入口温度範囲において高濃度で検出されており、280℃で最もピ
ークが高いことが確認された。本試料には、TrBDF が含まれていないことから、この TrBDF は、
2,3,7,8-TeBDF の 熱分解 によ って生 成さ れた脱 臭素 化体化 合物 と考え られ る。ま た検 出され た
TrBDF は、非常にシャープなピーク波形をしていることから、その熱分解反応は注入口内で起きて
いると推測される。熱分解の傾向としては、注入口が 260℃以上では熱分解反応が増大し、低温側
では気化効率の低下と僅かな熱分解反応が起きていることが推測される。
Injection View
Injection View
Injection View
Injection View
Injection View
DqData : C:¥Diok¥MethodData¥PBDD_F-InjDqData : C:\Diok\MethodData\PBDDDqData
_
: C:\Diok\MethodData\PBDD_
DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_
Compound : TeBDF
Compound : TeBDF
Compound : TeBDF
Compound : TeBDF
Compound : TeBDF
Channel : Average
Channel : Average
Channel : Average
Channel : Average
Channel : Average
TeBDF-300C
2800000
2800000
2400000
2400000
2000000
TeBDF-220C
2800000
2800000
2800000
2400000
2400000
2400000
2000000
2000000
2000000
2000000
1600000
Inte
nsit 1600000
y
1200000
1200000
1200000
1200000
800000
800000
800000
800000
800000
400000
400000
400000
400000
400000
1200000
0
0
0
Injection View
1600000
1600000
0
16
16
18
Retention Time (min)
16
18
Retention Time (min)
Injection View
Intensity
1600000
TeBDF-280C
Intensity
TeBDF-260C
Intensity
Intensity
TeB DF-320C
0
18
16
18
Retention Time (min)
Retention Time (min)
Injection View
Injection View
16
18
Retention Time (min)
Injection View
DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_ DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_ DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_ DqData : C:\Diok\MethodData\PBDD_
Compound : TrBDF
Compound : TrBDF
Compound : TrBDF
Compound : TrBDF
Compound : TrBDF
Channel : Average
Channel : Average
Channel : Average
Channel : Average
Channel : Average
1200000
1200000
1200000
1200000
1200000
1000000
1000000
1000000
1000000
1000000
800000
800000
800000
800000
800000
600000
600000
600000
Intensity
TeBDF-220C
Intensity
TeBDF-260C
Intensity
TeBDF-280C
Intensity
TeBDF-300C
In tensity
TeBDF-320C
600000
600000
400000
400000
400000
400000
400000
200000
200000
200000
200000
200000
0
0
0
12
14
Retention Time (min)
320
12
14
Retention Time (min)
300
0
12
14
Retention Time (min)
280
0
12
14
Retention Time (min)
260
12
14
Retention Time (min)
220(℃)
340
310
280
260
240
210(℃)
図1 システムAによる各注入口温度における
図2 システムBによる各注入口温度における
2,3,7,8-TeBDF(上段 )と TrBDF(下段 )の
2,3,7,8-TeBDF(上段)と TrBDF(下段)の
平均 SIM クロマトグラム
平均 SIM クロマトグラム
一方、システム B では、図1の上段の結果から、2,3,7,8-TeBDF のピーク強度は注入口温度にか
かわらずほぼ一定で、温度の上昇に応じてわずかにピークが高くなる傾向が見られた。また下段の
TrBDF ピークの結果でも、そのピーク強度は注入口温度に依存せず、ほぼ同レベルを示している。
さらにシステムAの結果と大きく異なる点は、TrBDF ピークの S/N が極めて低いことであり、すな
はちこれは、システム B の注入口では熱分解反応が非常に起き難いことを示唆している。
以上の結果、システム A と B の間で顕著に異なる熱分解傾向が観測された。仮にシステム A のよ
うな装置を使用した場合、スプリットレス注入法では熱分解による脱臭素化体が生成されるため、
定量精度の低下を招く恐れがあり、オンカラム注入法等他の注入方法の検討が必要となるが、一方
のシステム B の場合では、スプリットレス注入法は十分使用に堪えるものと考えられる。残念なが
ら現状では、この両システム間の相違の原因は不明であるため、今後の課題としてさらに検討を行
うことにする。従ってもし臭素化ダイオキシンの分析を行う場合は、まず初めに使用システムの熱
分解傾向を確認することをお勧めする。
[参考文献]
(1) W. Chatkittikunwong, C. S. Creaser, Chemosphere Vol. 29, No. 3, 547-557 (1994)
Fly UP