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COSMOtherm 改訂版C21-0110 の新機能紹介
新製品情報 熱力学物性推算ソフトウェア ウェア COSMOlogic社製品COSMOthermは、COSMO-RS法により溶液中の化合物の化学ポテンシャルを算出 し、平衡熱力学物性を予測する物性推算ソフトウェアです。昨年12月に改訂版C21-0110がリリースさ れ、平衡定数予測などの新しい物性推算機能の追加やグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の改 良が行われました。本稿では、新しい推算機能および新GUIについてご紹介します。 ギブス自由 エネルギーおよ および平衡定数 衡定数 ギブス自由エネルギー ここでは、一例としてトルエン溶媒中のアルデ ヒ ド還元反 応の ∆GR 計算 の結果を 紹介しま す。 予測 図1のような化学反応における平衡定数Kは、反 応ギブス自由エネルギー∆GR(式1)を用いて式2 のように表されます。本機能では、任意の溶液中 における各化学種のギブス自由エネルギーを算出 し、∆GRおよび平衡定数Kを推算することが可能で す。 Petersら [1] により、アルデヒド還元反応の∆GR が COSMOtherm を用いて計算され、実測値との比 較が行われました。図2より、計算値は実測値の傾 向を再現し、誤差は約7.5kcal/molであることが示 されました。さらに、Petersらは、還元反応の化 学平衡に対する溶媒効果を検討し、計算で得られ る∆GR や平衡定数を用いて、還元反応に最適な溶 Energy 遷移状態 媒を予測できることを示しています。 液相抽出計算 液相抽出 算 本機能では、任意の混合溶液に対して、抽出操 A + B 図 1 作を行った際に得られる2相分離組成を推算するこ ∆GR 反応物 K 生成物 とができます。本機能を用いて、溶媒の抽出能や C + D 抽出温度の影響を評価することができます。ま ∆G R = GC + G D − G A − G B ( た、本機能は3成分系や多成分系の相図を計算する 化学反応と平衡 K = exp − ∆G R RT ) (1) (2) ことに比べて、計算量が少なく、スクリーニング にも適しています。 本機能の使用例として、オクタン・ベンゼン混 本機能を用いて、平衡定数の溶媒依存性、およ 合溶液に対して溶媒スルホランで抽出操作を行っ び温度依存性を考慮することができます。すで た場合を示します。原液と抽出溶媒の組成、およ に、COSMOthermから得られるギブス自由エネル び温度を指定し、計算を実行することで、抽出操 ギーや平衡定数を用いた研究結果が報告されてお 作で得られる各相の組成が算出されます。計算結 り、その有効性が示されています。 果(図3)より、抽出溶媒スルホランにて原液中の ベンゼンを約50%抽出できることが期待されま す。 原液 抽出溶媒 オクタン: 0.8 ベンゼン: 0.2 スルホラン:1.0 抽出操作 図 2 8 反応ギブス自由エネルギーの計算値と実測値の比較 | 菱化システム ニュースレター | 第17巻 第2号 25℃ オクタン相 スルホラン相 オクタン: 0.89 ベンゼン: 0.10 スルホラン:0.01 オクタン: 0.04 ベンゼン: 0.10 スルホラン:0.86 図 3 抽出計算の例 新製品情報 情報 熱力学物性推算ソフトウェア ト ェ 新しいGUI:COSMOtherm X COSMOファイルの検索ス スタート イル ート COSMOtherm の改訂にあわせて GUI が全面改 化合物名 物 訂され、名称もCOSMOthermXとなりました。こ こ で は、GUI の 新 機 能 Compound 分子構造を 分子構造 構 を特定 ? する情報は? Wizard と 分子構造 Solvent Screeningを紹介します。 ◆Compound Wizard CAS番号 分子構造を2 次元 構 元 スケッチし、 索 スケッチ 、検索 化合物名・ 慣用名で 合 名で 検索 検索 CAS番号で 番号 号で検索 索 本機能は、化合物検索と構造構築・量子化学計 算実行/制御を組み合わせたCOSMOファイル選択 該当するフ ファイルなし し 該当するファイルあり 当 ナビゲーションツールです(図4)。 検索結果は 検索結果 結 は? 情報あり 分子構造を2 次元 構 元 スケッチし、 3次元 次元構造へ変換 図 5 Compound Wizardのパネル COSMOtherm の物性推算では、化合物の表面 電 荷 情 報 を 収 録 し た COSMO フ ァ イ ル が 必 要 で す。通常、物性推算の操作は、既存のファイル中 から目的の COSMO ファイルを検索することから 始まります。Compound Wizardでは、化合物名・ CAS 番号・構造による検索が行えますので、容易 情報なし 報 ChemSpiderから ら 構造情報を取得し 情 3次元構造を構築 造 量子化学計算で 学 COSMOファイルを ファイル イルを 作成 作成 該当するCOSMO で物性計算 ファイルで 計 図 4 構造情報は? 情 Compound Wizardのナビゲーションフロー 溶媒種が増えるに従って計算時間が大幅に増加す るなどの問題がありました。本機能では、溶媒指 定を一括で行え、また、最小限の計算時間で溶解 度を計算できるようになります。 例えば、溶媒 28種に対するアスピリンの溶解度 計算を行った場合、従来は計算設定に 30回以上の に目的の化合物を見つけることができます。目的 マウス操作が必要で、計算時間も約 15分掛かりま のファイルが存在しない場合には、量子化学計算 した。本機能を用いることで、僅か4回のマウス操 のための構造構築機能(2次元構造の描画と3次元 構造への立ち上げ機能)を利用して、簡単に初期 構造構築、量子化学計算の入力作成・計算の実行 が行えます(図5)。 作で計算設定が済むようになり、計算も約1分で終 了します。 本機能を用いて、溶質に最適な溶媒を簡単かつ 高速にスクリーニングできます。 また、Compound Wizardには化合物検索サイト ChemSpider(http://www.chemspider.com/)に ク エ リ を 送 信 す る 機 能 が 用 意 さ れ て い ま す。 ChemSpider では、化合物名や CAS 番号などに対 応する化合物情報を提供しており、その情報には 分子構造情報も含まれています。ChemSpider と Compound Wizardを組み合わせることで、化合物 名やCAS番号から分子構造の構築が簡単に行えま す。 ◆Solvent Screening 本機能は、特定の溶質の各種溶媒に対する溶解 図 6 度および相対溶解度を計算するための機能です (図 6)。これまで、複数の溶媒に対する溶解度を 計算する場合、溶媒の設定が煩雑であることや、 [1] Solvent Screening設定パネル M. Peters, L. Greiner, K. Leonhard, AIChE Journal, 2008, 54, 2729–2734. 第17巻 第2号 | 菱化システム ニュースレター | 9