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小網代におけるアカテガニの放仔活動の時間特性矢部・岸慶応義塾大学

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小網代におけるアカテガニの放仔活動の時間特性矢部・岸慶応義塾大学
Hiyoshi
Keio
Review
of
University
Natural
Science
No.30,75-82(2001)
小 網 代 にお け るア カ テガ ニ の放 仔活 動 の時 間特 性
矢 部 和 弘*・ 岸
Temporal
Characters
of Zoea-Releasing
由 二**
Activity of Sesarma
haematocheir
at Koajiro
Kazuhiro
YALE
and Yuji Klsxl
1.は
じめ に
三 浦 半 島 先 端 部 に あ っ て, 相 模 湾 に面 す る 小 網 代 の 谷 は , 全 長1.2kmほ
どの浦 の川 の流域
で あ る。 谷 は , 関 東 ・東 海 地 方 で 唯 一 , 源 流 か ら河 口 ま で ひ と ま と ま りの 集 水 域 が 自然 の状 態
に あ る “完 結 し た 集 水 域 生 態 系 ” と し て 知 られ ,1,892種 の 生 物 の 生 息 が 確 認 さ れ て い る
(2001年 まで の調 査 報 告 に よ る)。
こ の谷 に ア カ テ ガ ニSesarma
haematocheir(DE
HAAN)が
生 息 して い る。 陸 上 生 活 に適 応
した 本 種 は , 尾 根 か ら水 辺 ま で 谷 の 全 陸 域 に分 布 し, 夏 の 夕 刻 , 湾 奥 の 海 岸 線 で放 仔 を行 うこ
とが 知 られ て い る。 近 年 , そ の 光 景 が 報 道 な どに よ り有 名 とな り, 近 隣 各 地 か ら観 察 者 が訪 れ
る よ うに な った 。 放 仔 の 観 察 は 夜 間 とな るた め , 各 種 の 危 険 が あ る こ とや , 観 察 者 に よ る ア カ
テ ガニやそ の生息場 所 の攪乱, さらに地元市 民 への迷 惑 等 が心配 され,保 全活 動 に係 わ るナ
チ ュ ラ リス トた ち を 中 心 に,1990年 以 来 , 毎 年7月
活 動(カ
ニ バ ト :カ ニパ トロー ル の 略 称)が
か ら8月 に か け て, パ トロー ル と ガ イ ドの
行 わ れ て きた 。 当 地 は, 行 政 に よ る保 全 方 針 が公
表 され た もの の , ま だ 保 全 地 域 で は な く, 「カ ニ バ ト」 の 努 力 は, 保 全 へ の 歩 み を 支xる
大き
な要 素 とな って い る。 本 研 究 は 小 網 代 に お け る ア カ テ ガ ニ の放 仔 の 期 間 , 潮 や 日没 時 刻 との 関
係 を 分 析 し, カ ニパ トロ ール の活 動 や 今 後 の 保 全 活 動 の た め の基 礎 資 料 とす る も の で あ る。
*東
京 農 業 大 学 大 学 院 農 学 研 究 科(〒156-8502東
Agriculture,
Tokyo
Univ.
of Agriculture,
**慶 應 義 塾 大 学 生 物 学 教 室(〒223-0061横
Hiyoshi,
Kohoku-ku,
Yokohama,
京 都 世 田 谷 区 桜 丘1-1-1):Graduate
Sakuragaoka,
Setagaya-ku,
浜 市 港 北 区 日 吉4-H)=Dept
Tokyo,
.
of
School
of
Japan.
Bio1.,
Keio
Univ.,
Japan.
75
No.30(2001)
慶 應義 塾大 学 日吉紀 要 ・自然 科学
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図1
ア カ テ ガ ニ の 放 仔(絵
2.ア
ア カ テ ガ ニSesarma
・・ 二'.一
鍵4徳 ∫
:江 良 弘 光 氏)
カ テ ガ ニ の放 仔 行 動
haematocheir(図1)は
, 秋 田 ・岩 手 県 か ら沖 縄 諸 島 に か け て広 く分 布
す る 中型 の カ ニ で あ る。 海 岸 か ら河 川 沿 い の流 域 の 陸 域 に 分 布 を広 げ , 崖 地 や 樹 上 な ど, 高 所
に 登 る習 性 も強 い 。 抱 卵 盛 期 は7月
∼8月 。 海 ま た は川 に 下 っ て 放 仔 を 行 う(三 宅
1983)。
放 仔 行 動 は月 齢 周 期 と強 い 関連 が あ り, 満 月 ・新 月 と, そ の 前 後 の夜 に多 く見 られ る。 海 か ら
か な り離 れ た 場 所 で は潮 汐 に 関 係 の な い 河 川 の 本 支 流 に お い て も放 仔 は行 わ れ , これ も満 月 ・
新 月 の夜 に集 中 し て い る とい う(橋 本
1965)。 室 内 に お い て 人 工 的 に 月 齢 周 期 を作 り出 し,
ア カ テ ガ ニの 放 仔 の リズ ム を観 察 した 結 果 で も, 放 仔 活 動 は 満 月 と新 月 に ピ ー ク が 見 られ た
(三 枝
1980)。 潮 汐 との 関 係 につ い て も研 究 が あ る。 下 泉 ・稲 村(1951)の
の 調 査 に よれ ぽ, 放 仔 は,8月
伊 豆 下 田 の海 岸 で
下 旬 か ら9月 上 旬 で は18時 か ら19時 に 集 中 して お り, そ の 全 盛
期 は満 潮 時 の 移 行 と ほぼ 平 行 し て移 行 す るが ,18時 以 前 あ る い は20時 以 降 の満 潮 に は ほ とん ど
影 響 され な い傾 向 が あ る。 三 枝(1983)は
, 伊 豆 半 島 と瀬 戸 内海 の 河 川 に お い て 放 仔 行 動 の 観
察 を行 った 結 果 , 伊 豆 半 島 の ア カ テ ガ ニの 放 仔 は 潮 汐 に は 余 り影 響 され ず , 日周 成 分 の影 響 が
大 き い の に 対 し, 瀬 戸 内海 の ア カ テ ガ ニの 放 仔 は 潮 汐 に支 配 され る と い う結 果 を 得 て い る。 小
網 代 で は, 今 回 の 調 査 対 象 とは 別 の地 域(図1,B地
査 報 告 が な さ れ て い る(矢 部
点)に
お い て, 大 潮 の 日に つ い て の み 調
1995)。 これ に よれ ば , 放 仔 活 動 は 日没 時 刻 と関 係 が 深 く, 日
没5分 前 こ ろ か ら開 始 され ,25分 後 に ピ ー ク を迎 え, 日没 後 約1時
間 で ほ ぼ終 了 す る とい う結
果 が 得 られ て い る。 今 日ま で の パ トロ ール 活 動 は こ の記 録 を も とに ス ケ ジ ュー ル が 組 ま れ て い
る。
3.調
放 仔 活 動 の 観 察 は , 図2に 示 す 幅4mの
査地 お よび調 査 方 法
76
岩 盤 の 小 さ な 入 り江(A地
点)に
お い て,2000年
小 網代 に おけ る アカテ ガ ニの放仔 活動 の時 間特 性
”
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(矢 部 ・岸)
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図2
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調 査地
6月30日 か ら10月29日 まで の 大 潮 と小 潮 の 前 後 数 日間 にわ た り, 天 候 に 係 わ らず , 実 施 さ れ た 。
同 地 は, 両 側 に岩 場 が 突 出 して 前 面 が湾 に 開 き, 背 後 は ア ズ マ ネザ サ を 主 体 と した 植 生 に覆 わ
れ て い て , 放 仔 活 動 の 把 握 が 容 易 な場 所 で あ る。 同 地 は ま た , カ ニ パ ト ロー ル の 際 に一 般 訪 問
者 を誘 導 す る岸 辺 に 隣 接 して い るた め , 調 査 結 果 を 今 後 の パ トロー ル 活 動 に直 に 活 かす こ とが
で き る と, 期 待 さ れ る。
調 査 は , 記 帳 者1名
, 観 測 老2,3名
の 体 制 で 行 った 。 観 測 者 は 入 江 の 両 側 の 岩 場 に定 位 し,
入 江 の範 囲 に お い て , 海 に進 入 し, 体 を 震 わ せ る放 仔 行 動 を 行 っ た個 体 を 全 て カ ウ ン トして 記
録 者 に伝 え, 記 録 者 は ,10分 毎 に総 数 を 集 計 した 。 調 査 時 間 は夕 暮 れ か ら約2時
時 刻 は,6月
か ら8月 は18:00,9月
以 降 は17:30と し た。
4.結
4-1:
間。調査 開始
果 お よび考 察
放仔期 間
調 査 日別 の 放 仔 個 体 数 の 推 移 を 図3に
示 し た 。 横 軸 は 調 査 日 と 潮 ま わ り(大
:大 潮 , 中 :中
潮 , 小 :小 潮 , 長 :長 潮), 縦 軸 は 日 別 の 放 仔 個 体 数 で あ る 。 ア カ テ ガ ニ の 放 仔 行 動 は , 最 初
の 観 測 日 で あ っ た6月30日
ピ ー ク を 迎xた
放 仔 の 期 間 は6月
の ち , 徐hに
に は す で に 始 ま っ て お り,7か
減 少 し ,10月
ら8月
に か け て 増 加 し ,8月
中旬 に
下 旬 に は終 了 して い る。 当 地 に お け る ア カ テ ガ ニの
下 旬 か ら10月 中 旬 ま で 見 る こ と が で き る 。
77
No.30(200!)
慶應 義塾 大学 日吉紀要 ・自然 科学
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図3
4-2:
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く 略1く
調査 日別 の放 仔個 体数 の推 移
月 齢 周 期 との 関 係
月 齢 周 期 と ア カテ ガ ニ の放 仔 の 関 係 を 見 る と(図3),
潮 の 日(上 弦 , 下 弦)に
大 潮 の 日(満 月 , 新 月)に 多 く, 小
は 少 な い とい う規 則 性 が は っ き りし て お り, 既 往 の 諸 研 究 と も一 致 す
る。 この 特 性 は , 潮 の干 満 の 差 を利 用 し て幼 生 を 効 率 的 に 拡 散 す るの に有 効 で あ り, ま た , 潮
位 が 高 い タ イ ミソ グ で の放 仔 は移 動 距 離 が短 くて す み , 外 敵 か らの 防 衛 に も有 効 で あ る と考x
られ る。
4-3:8月
中旬 の ピーク
調 査 日別 の放 仔 個 体 数 の 推 移 に お い て,8月
と も, 注 目 され る事 実 で あ る(図3)。
中 旬 の大 潮 時 に突 出 的 な ピー クが 認 め られ た こ
ア カ テ ガ ニの 抱 卵 期 間 は約1ヶ
月 で , い くつ か の 同 期
的 な グル ー プに 分 かれ て , 繁 殖 期 間 中 に2度 か ら3度 の 抱 卵 ・放 仔 を行 うこ とが 知 られ て い る
(三 枝
1983)。 こ の知 見 に 従 え ば, 同 地 に お け る8月 中 旬 の突 出 的 な ピー クは , 早 期 に 放 仔 を
は じめ た 同期 的 な グ ル ー プ と, 遅 れ て放 仔 を 始 め た グ ル ー プ が, この 時 期 に 合 流 した た め と判
断 され る。
4-4:
放 仔活動 の時間特性
次 に , 放 仔 の 集 中す る大 潮 の 日(満 月 , 新 月 の 当 日を 含 む1∼3日)に
関 し て, 日没 時 刻 と
放 仔 頻 度 の 関 係 をみ た 。
図4は , 横 軸 に 日没 時 刻 を基 準 と し て10分 刻 み に 時 刻 を と り, 縦 軸 に は10分 ご との 放 仔 個 体
数 を , 日 ご との 放 仔 個 体 総 数 に しめ る割 合(%)で
78
と り, 調 査 日 ご との放 仔 数 の時 間 推 移 を 図
01 00 57 57 56 52 52 48 47 46 41 40 32 31 20 13 02 50 42 30 19 09 08 59 5019191818!81818181818181818181818181717171717171616
日
日
日
日
10
日
日
+8月14日
刻
時
日
+7月29日
暇
37 10 20 53 23 50 23 38 24 04 09 40 30 57 51 37 13 47 09 24 29 05 28 27 2416221717182021161718212117172217211720172117172217
日
40
刻
時
潮
満
日
日
日
日
日
日
日
日
日308151617232429303167141524296142028613142129
月月
月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月677777777788888899991010101010
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日
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大潮 の 日におけ る 日没 時刻 と放 仔頻 度 の関 係
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一 暑一・7月16日
30
調 査 日 の 日没 時 , 満 潮 時 一 覧
表1
「
40
(矢 部 ・岸)
小 網代 に おけ る アカテ ガ ニの放仔 活動 の時 間特 性
0
日 没 か らの 時 間(分)
79
No.30(2001)
慶應 義塾 大学 日吉 紀要 ・自然科 学
30%
1
25%
一・
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80
日没 か らの 時 間(分)
図5
放仔個体 の頻度分布
示 した もの で あ る。 図 か ら判 断 す る と,7月 ,8月
始 ま り, 日没 後25分 付 近 で ピ ー ク を迎x,
徐hに
の大 潮 の 日の放 仔 は, 日没 の ほ ぼ20分 前 に
減 少 す るパ タ ー ンを しめ し,9月
,10月 の 大
潮 の 日の 放 仔 は , 開 始 そ の も の が 日没 後 にず れ こむ パ タ ー ン とな って い る。 調 査 日 ご との 日没
時 と満 潮 時 の一 覧(表1)を
参 照 す る と,7,8月
か な り過 ぎ て い るの に対 し,9,10月
の大 潮 の 調 査 日は 日没 時 に す で に満 潮 時 を
の 大 潮 の 調 査 日は 日没 時 が満 潮 時 刻 に ほ ぼ 重 な るか , ま
だ 満 潮 に いた って い な い とい う相 違 が あ る。 この 相 違 の も と で, 前 者 で は放 仔 の ピー クは 日没
に左 右 され , 後 者 で は潮 汐 の 影 響 を うけ る と い う事 態 が 生 じ て い る の で は な い か。 な お, 「カ
ニバ ト」 の 実 施 され る7月
と8月 の放 仔 数 の デ ー タ を一 括 し て, 日没 を 基 準 と した10分 刻 み の
枠 で ま と め な お し, 放 仔 個 体 の 頻 度 割 合 と し て 図 示 す る と, 平 均 μ=24.7分
14.5分 の 正 規 分 布 曲 線 と, よ い一 致 を示 す パ タ ー ン と な っ た(図5)。
, 標 準 偏 差5=
正 規 分 布 に 関 す る基 本
的 な特 性 を 援 用 す る と, これ ら の ケ ー スで は, 日没 後 ほ ぼ25分 で放 仔 個 体 数 は 最 大 とな り, そ
の 前 後29分(計58分
。 平 均 ±26)ほ
どの 間 に, 放 仔 個 体 の95%以
上 が放 仔 を終 え るパ タ ー ン
に な っ て い る と表 現 す る こ とが で き る。
この結 果 を, 小 網 代 の別 地 点 に お け る矢 部(1995)の
結 果 と比 較 す る と, 日没 と ピー クの 関
係 は ほ ぼ 一 致 して い るが , 放 仔 開 始 時 刻 に関 して , 矢 部 の結 果 は 日没 前5分 で あ る の に 対 して,
今 回 の結 果 は 日没 前20分 と, か な りの相 違 が で た 。 こ の相 違 は, 矢 部(1995)の
調 査 地 点Bは
日射 を遮 る も の が な く, 日没 直 前 ま で直 達 日射 が 届 く場 所 で あ る の に 対 し,A地
点 は岬 に よ り
日射 が遮 断 され て い る こ とに 関 連 す るの で は な い か と, 推 定 され る。 これ に 関連 して 注 目 され
80
(矢 部 ・岸)
小網代 にお け るア カテ ガニの放 仔活 動 の時 間特性
る の は ,7月15日
の ピ ー ク が 他 よ り も10分 早 く出 現 し て い る こ と で あ る 。 当 日 は 雨 で , 照 度 の
低 下 が 早 か っ た こ とが影 響 し て い る と考 え られ る。
5.お
わ りに
小 網 代 に お け る 「カ ニパ トロー ル 」 は, 以 下 の 指 針 に沿 っ て実 施 され て きた。1)夕
刻,観
察 地 付 近 で 訪 問 者 に 呼 び か け, カ ニ パ ト ロー ル の 誘 導 に 従 った 観 察 を 要 請 す る。2)日
15∼20分 前 に, 放 仔 の行 わ れ る海 岸 線 の 海 側 ・浅 瀬 に観 察 者 を誘 導 す る。3)待
没
機 と観 察 の 時
間 は誘 導 後 ,40∼45分 ほ ど と し, 放 仔 の 状 況 を み な が ら引 き上 げ時 間 を 判 断 す る。
一 方 , 今 回 の 調 査 で 得 られ た , 小 網 代 に お け る ア カ テ ガ ニの 放 仔 の 特 性 は 以 下 の5点
で き る。1)小
網 代 の ア カ テ ガ ニ の放 仔 期 間 は ,6月 下 旬 か ら10月 上 旬 にわ た る。2)放
体 は大 潮 時 に多 く, 小 潮 時 に はす くな い 。3)8月
る。4)7,8月
に要約
仔個
中 旬 に放 仔 個 体 数 の 突 出 的 な ピ ー クが 現 れ
の 大 潮 時 の 放 仔 活 動 は, 日没 前20分 ごろ に 開 始 され , 日没 後25分 ご ろ に ピ ー
ク に達 し, ピー ク時 の 前 後 そ れ ぞ れ29分(計58分)の
るパ タ ー ン とな って い る。5)放
間 に全 体 の95%ほ
ど の個 体 が 放 仔 を 終 え
仔 開 始 時 刻 は地 点 に よ って ぼ らつ きが 大 き い 可 能 性 が あ る。
これ ら の結 果 は , 小 網 代 に お け る カ ニパ トロ ール の , 現 行 マ ニ ュア ル の 適 切 さを 基 本 的 に 支
持 す る 内容 で あ る。 た だ し, 現 行 の 指 針 は,9月
,10月 に は 適 用 で きな い可 能 性 が 高 い こ と,
ま た観 察 場 所 へ の 移 動 時 刻 の 設 定 に あ た っ て は場 所 の(恐
ら くは 日照 に 係 わ る)特 性 を十 分 に
配 慮 す る必 要 が あ る こ と も また , 示 唆 す る も の で あ る。 な お , 盛 夏 の 大 潮 の時 期 に放 仔 個 体 が
突 出 的 な ピー クを 示 す 状 況 に対 応 す るた め に, ピ ー ク時 の パ トロー ル を 強 化 し, 同時 に一 般 訪
問 者 の た め の観 察 は大 潮 の ピ ー ク 日を 避 け る工 夫 も あ っ て よ い か も しれ な い。 な お, 本稿 の よ
うな デ ー タ が公 表 され る こ と に よ り, 平 日で も大 潮 に あわ せ て観 察 に 来 る観 察 者 が 増 加 す る可
能 性 も あ る と判 断 し な け れ ば な らな い 。 保 全 へ の 歩 み の 中 で これ に 適 切 に対 処 し て ゆ くに は,
通 常 の ボ ラ ン テ ィ ア活 動 を越xた
パ トロ ー ル活 動 の 工 夫 も, 進 め て ゆ く必 要 が あ る と思 わ れ る。
6.謝
辞
今 回 の 調 査 に あ た っ て は , 平 日の夜 間 の作 業 に も か かわ らず , 小 網 代 の森 を 守 る会 の ナ チ ュ
ラ リス トた ち, 宮 本 美 織 , 仲 沢 イ ネ 子 , 佐 藤 京 子 , 高 橋 淳 , 竹 内 晶 子 , 小 倉 雅 實 , 高 橋 伸 和 ,
亀 田佳 子 , 神 田元 , 簗 瀬 公 成 , 松 原 あ か ね , 刈 田 悟 史 , 木 皿 直 規 , 森 真 紀 子 , 須 藤 伸 三 , 祖 父
川 精 治 , 橋 ち ひ ろ , 浪 本 梓 の 各 氏 に ご支 援 を い た だ いた 。 ア カ テ ガ ニの 挿 絵 は江 良 弘 光 氏 の 作
品 で あ る。 皆 様 に お 礼 を 申 し上 げ る。 なお 本 調 査 は , か な が わ トラス トみ ど り財 団 に よ る委 託
業 務 の一 部 で あ る。 調 査 を委 託 し て くだ さ り, 研 究 内容 の一 部 の公 表 を 認 め て 下 さ っ た , か な
が わ トラ ス トみ ど り財 団 に, 深 く感 謝 の 意 を表 す る。
81
No.30(2001)
慶應 義塾 大学 日吉 紀要 ・自然科 学
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Fly UP