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東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した

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東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した
、
109:407(異常乾燥強風)
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した
1983年4月27日の異常乾燥強風(3)*
近藤純正・桑形恒男**
要 旨
上空が強風で地面が乾燥しているとき下層大気が熱的原因で不安定化し,強い鉛直混合によって上空の強
風が一様化され地上風がより一層強くなる異常強風(熱対流混合風)を調べ,つぎの結果を得た.(1)地上の
強風は接地逆転層の破壊後におこるが,その開始時刻は日射量と朝の接地逆転層の強さに関係する.(2)地上
の風速は下層大気の不安定度と共に増すのであるから,1時間日照率の増加と風の加速が対応し,逆に日照
率の減少は風の減速とよく対応する.(3)接地逆転層は平地や盆地で強く,山の上などでは弱いので,山の上
では上空の強風が接地逆転層に阻まれて夜間に微風になるようなことが少ない.それゆえ,山の気象資料は
熱対流混合風の早期予知に利用できる可能性がある.
過去の東北地方大規模山林火災時と今回の気象を比較してみると,次の共通点がある.(1)強風である,(2〉
太平洋側が乾燥,(3)強い低気圧が日本海から北海道またはそれ以北を通過,(4)太平洋側では雨はないか,あ
っても1∼2mm以下のパラパラ程度である.
1.はしがき
東北地方で山林火災が続発した1983年4月27日は,地
表面は数日前からよく乾燥し,風で砂塵が舞い上がるほ
象であり,山の風上側で降水量が20∼30mmあるとき,
山の風下側の気温は5。C上昇する(第1報参照).火災
臼の気温水平分布(第2報)の出来かたは,このフェー
どであった.そのため,蒸発量は少なく地表面顕熱輸送
ン現象と本質的に違う.以下,火災時に至る状況を前日
量が多く,昇温し下層大気は不安定化し,鉛直混合を強
から時間を追って見ておこう.第1図(b)は4月26日
め,上空の強風が地上付近まで一様化されたと考えられ
日中の状況である.図の左側は日本海で山の西側は新潟
る.第1報では異常乾燥強風(熱対流混合風)発生の条
あるいは酒田や秋田に,そして中央盆地部は福島あるい
件を明らかにし,第2報では強風時の乱流強度や最大瞬
間風速を不安定時の理論ふら説明することができた(近
は山形または盛岡に,右側は太平洋そ沿岸部は仙台平野
藤,1983;近藤・桑形,1984).
半島や三陸リアス式海岸の半島状地形に見たててある.
または三陸沿岸に,沿岸先端部は仙台湾に突出する牡鹿
この第3報の研究目的を理解するために,模式図によ
日本海や太平洋の海面水温は春で比較的低いのに対し,
って説明しておこう.第1図(a)は典型的フェーン現
内陸部地表面は数日前から晴天・乾燥のため,日中は日
射で昇温し280C,所によっては30。C以上(福島)の
*On the unusual dryness and strong wind wea−
ther which caused a large number of fbrest
:6res over the Tohoku district on27Apri11983
(Part3).
**Junsei Kondo and Tsuneo Kuwagata,東北大
学理学部地球物理学教室.
一1983年10月11目受領一
一1983年12月23目受理一
1984年2月
気温を示した.太平洋岸も晴天であったが,海上からの
冷気(やませ)の浸入で昇温は少なかった.それが翌朝
の接地逆転層を異常に強くし,強風開始時刻を特別にお
くらせる原因になる(注目点1).
第1図(c)は4月26日の夜から27日朝にかけての状
況である.大気は乾燥し夜間の下向き大気放射量が少な
いうえに,地表層は乾燥し熱物理定数が小さく夜間冷却・
55
128
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
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㌧オ%!”‘》海上冷気
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2
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140C イーゴー
0(d)地面加熱,糞麹堕で鉛直邊盒盛ん,
2
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1こよる上空風の遮へい,,→
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上空から地上まで臓塑1)
→ h’
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鷺ノ(
鴨’ ノ
0 10 ”
第1図
東北地方東西断面による模式図.(a)フェーン現象,(b)火災前日の4
月26日の状況,(c)火災前夜から朝にかけての状況で接地気層に逆転層
が形成され,上空の強風を遮へい,(d)火災時4月27日午後の状況で接
地気層は日射で加熱,上空には寒気移流して対流混合盛んとなり上空の強
風が地上付近まで一様化された,雲で日照率が下がる地域は地表面温度が
一時下がり,地上強風は一一時的に弱まる.
は大きい(近藤・山沢,1983a,参照).それゆえ,前
空の強風が接地気層まで一様化された.この日は前日ま
日の日中から気温は20。C以上も下降し8。Cより低温に
でとは違って快晴ではなく,雲はあった.ある地点で雲
なった所もある.特に太平洋側では前日の海上冷気侵入
群が通過すると太陽光は遮ぎられ地面温度は下降し,下
も手伝って接地逆転層は厚く発達した(第1報第1図).
層大気の不安定度は弱められる.すると,少しおくれて
26日午後から上空はしだいに強風になったにもかかわら
鉛直混合弱化で地上付近の風は減速するはずである.つ
ず,接地気層内の風速は安定な接地逆転層に阻まれて極
まり日照率の増減と風速の増減は統計的によく対応する
端に微風であった(注目点2).接地逆転層は平地で強
ことになる(注目点6).
く,山の上や半島部では弱いのが普通である.したがっ
これら注目点を以下で詳細に調べてみよう.その結果
て,山の上や半島部では夜間に微風になるようなことは
は,将来の強風の発生時刻と強風域の変動模様について
少ないはずである(注目点3).
のきめこまかな予知に役立つであろう.最後に,過去に
平地では接地逆転層が強かったことと,朝がたの日射
東北地方で発生した大規模山林火災日の気象と今回を比
量が平常より弱かったことのために,27日は太陽が昇っ
較する.
てから接地逆転層が破壊されるまでには長時間を要し
た.それゆえ,強風開始時刻はおくれる(注目点4).
2.接地逆転層強度の定義
第1図(d)は27日正午過ぎの火災発生・延焼時の状
接地逆転層の強さを次式で定義する
況である.接地逆転層が解消したのち,さらに地表面は
日射で加熱され下層大気の不安定化・鉛直混合強化,上
∫〉ρ∠θ 象∫1画
空での気温低下(注目点5)がそれに拍車をかけて,上
54
、天気”13L2.
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
15
一…26×・・4〔J虹2K1〕∫㍉θ∠ρ
P1
『ただし∠θ=θ1一θ,ρ1=・900mb,最後の式の気圧力は
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さ方向は気圧座標で表す)と900mb気圧面気温から乾
ヂ
に囲まれた面積に等しい熱エネルギーである.
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れば,等温位分布の大気は不安定で,上向きに顕熱が流
章
Sendαi
ま…2
『
立」と呼ばれる事もあるが,最近の大気境界層研究によ]
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i 厩
3
燥断熱線(近似的に直線とする)で地上へ降ろした線と
E=0である.この状態はr温位分布だけからすれば中
。。。 堕00mわ
ε “一一二、㌔一説.糀一2_一・一義㌔55臨よ
mb単位,ρ気圧面温位θとρ1気圧面温位θ1との差
.∠θはK単位ではかる.ZEは気温の鉛直分布曲線(高
もし,気温が地上から900mb気圧面まで等温位なら
129
E
r1
5
0 3 6 9 12 15 18 21 JSτ
19Apri l1982
第2図 1982年6月15目,仙台における10分毎の地
上風速(白丸印)の変化と毎時日射量Sの
時間変化.黒丸印は900mb気圧面の風速.
れている状態である.気温の高度減率が約5。Ckm−1
(接地気層)または1.3。C km−1(エクマン層)である
の寒気がきて,下層大気の不安定化はより増強され,15
時はr温位分布だけからすれば安定」であるが,実は顕
時前後の地上風速は上空の風速’VgoOmbにほぼ等しく
熱輸送量は0である(近藤・萩野谷,1982).
12∼13m s−1である.つまり熱対流で上下混合されて地
それゆえ,朝がた存在した接地逆転層が日中の地表面
上はより一層強風になった.この様に強風が上下混合に
顕熱輸送量で昇温し,大気がちょうど等温位となった時
よって一層強化される現象を,ここでは熱対流混合風と
は弱不安定状態と考えてよい.この等温位状態を過ぎ,
呼んでいる.
さらに地表面顕熱輸送が続くとき,大気は一層不安定化
第3図下半分は仙台の東方60kmの牡鹿半島女川の
し鉛直混合が強化される.上で述べた顕熱輸送量=0の
状態を,以下では中立状態と呼ぶことにする.
海抜104mの山頂にある,地上高71mの塔ではかった
風速(近藤・山沢,1983,参照)と日射量Sと正味放射
量R聯の記録である.注目すべきは,ここは半島で,
3.接地逆転層の破壊と強風開始時刻
しかも風速計海抜は175mと高く,さらに接地逆転層が
第1報によれば,仙台管区気象台(地表面粗度る=
平坦地のように強くないので,火災前夜から当日午前中
1.2卑,風速計の有効地上高度Zニ45m)では,中立状
にかけて仙台その他の平地において生’じた夜間の微風化
1態の時の地上風速と上空風速の比は7,fc/ygoOmb=0.43
現象は起こらなかった.さらに,よくみると,前夜の風速
である.また,日中の弱不安定状態では’V,f,/’VgoOmbニ
().54である.
は当日日中の午前中より強くなっていることに気づく.
これは夜間の接地逆転層に伴って接地気層の上で起こ
そこでこの比が0.55を過ぎる時刻を強風の開始時刻と
る,よく知られたある種の夜間ジェットによる強風化現
定める.すぐあとで分かるように,この時刻は接地逆転
象の影響も多少受けているとみなされる.なお,この地
層が完全に解消される時刻とほぽ一致する.
点での風速が当日の14時以後に強くなったのは前線通過
第2図は仙台における地上風速と毎時日射量の変化で
後の強い西風が,大気不安定化でより一層強化されたた
1982年4月19日の例である.参考のために入れた黒丸印
めであると考える.
は上空の風速γgoomb,破線はO.55’Vg。ombである.こ
第4図は850mb気圧面における10。C等温線の12時
の日のラジオゾンデ飛揚時刻8時30分の接地逆転層強風
間ごとの動きである.注目すべきは,東北地方の陸上気
はE=0.2MJ m−2で弱く,強風はすでに8時すぎに開
温が25。Cを越す状態になった4月27日の午後に,ちょ,
始している.
うどこの寒域が東北地方上空に来たのである.高度1500
第3図上半分は火災前日と当日1983年4月27日の仙台
mと地上の気温差が15。C以上になり,強い不安定状態
の記録である.当日の8時30分の逆転層強風は特別に強
の(つまり強風がより一層強化される)兆しが数日前か
くE=5・9MJ m−2であった.そのため強風開始時刻
ら見えていたのである.
(前記定義)は普段なら9時前後のところ,この日は遅
逆転層強度Eと地上の強風が吹き始める時刻(前記
れている.12時30分前後,上空には前線に伴って西から
定義による時刻)との関係を調べるために,地上の異常
1984年2月
55
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
130
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26Aprit 1983 27
第3図
第2図と同じ,ただし1983年4月26∼27日.上段は仙台,下段は仙台
湾に突出した牡鹿半島の海抜104mの地上高71mで観測したもの,
正味放射量1肋8云の観測値は点線で示す.
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1983
第4図
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等温線の12時間ごとの移動.
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強風(第1報の定義による)が発生した日(3∼10月期
の無降水日で,12∼15時積算日射量が多い日)の中か
ら,14日分を選び以下の解析を行う.
ラジオゾンデ飛揚時刻8時30分から強風開始時刻(前
記定義,以後同様),までの時間を渉,云時間の積算日射
量をS(第3図斜線部分の面積),正味赤外大気放射量
O
第5図
2 3 4
1ε (MJ m−2)
5 6
仙台における8時30分の接地逆転
層の強さ1E(横軸)と強風開始
までの積算正味放射量1肋切(縦
軸)との関係.斜め破線は1∼彫オ
積算値をLn6∫,正味放射量積算値を1∼n6!,地表面アル
の80%が顕熱に変換され接地逆転
層を加熱・解消するとした場合の
ビードを7とすれば
関係.黒丸印は本文参照.
R㌶α=(1−7)S−Lnθ∫
ここで,7=0.15,単位時間当たりの正味赤外大気放射
潜熱と顕熱に変換される.ここで解析しているのは地表
量を0.25MJ m−1hビ1と仮定して1∼πε云を推定する.
面が比較的乾燥した日であるから,1∼n6渉の大部分は顕
.Rη扉の一部分は地中伝導熱に,他の大部分は蒸発の
熱に等しいと仮定でぎる.
56
嚥天気”31.2.
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
第5図の横軸は8時30分のIE,縦軸は日の出から強
131
くる.
風開始時刻までの1肋8∫である.破線は正味放射量1肋ε参
第6図は風の基準をきめる関係で,横軸は平常時の日
の80%が顕熱πとなり接地逆転層を加熱・解消するとし
平均風速を示す.風速(縦軸)が上側の折れ線以上の場
た場合の関係である.図中に4/27印を付けた白丸印は
合を強風,下側の折れ線以下の場合を微風,それらの中
火災日である.これは破線よりかなり右へ離れている.
間を並風とする.
しかし,この日の上空は寒気接近で,12時30分の気温は
将来,本研究の延長や局地風の研究にも利用するため
に,第1表に各観測所め平常時の日平均風速と強風・微
8時30分より1.7。C低温になったと推定できる(第1報
参照,850mb気圧面の9時から21時までの気温下降量
は5・1。C).この事を考慮すればZEは1.3MJ m幽2
風の基準を示した.・ただし,この値は1983年現在のもの
(横棒の幅)だけ小さく,横軸で4.6MJ m嬬2の黒丸印
は違ってくる.
で,風速計高度や観測所周辺状況が著しく変化した場合
の位置と考えられる.
同様に,図中に白丸4/16印で示す1983年4月16日は
5.東北地方全域での強風の通過模様
E=3.3MJ m幡2で,強風開始は11時ごろであるが,こ
前章で述べた152地点の風向・風速・日照率を1時間
の日も寒気接近でEは横棒の幅だけ左に寄った黒丸印
ごとに地図にプロットして,各要素の時間変化の模様を
の位置とみなされる.他の日も同様な計算をして黒丸印
調べた.
で示した.第5図のプロットが必ずしも実線上に完全に
のらないのは逆転層高度が時間的に変動する事,正味放
射量1勉初の顕熱Hへの変換率が日によって異なる事,
その他さまざまの原因による.しかし,逆転層強度と強
風開始時刻との間には明らかな相関関係がみられる.
第7図はそれぞれ(a)7時,(b)9時,(c)11時,
(d)13時,(e)15時,(f)19時における強風・並風・
弱風の分布である.これを見ると,強風は一部の地点で
は7時の時点ですでに吹き始めており,強風域は時間の
経過と共に拡大し,13∼15時ではほぼ全域に広がってい
る.その後,強風域は徐々に縮少し,19時にはかなりま
4.各観測所における強風・微風の定義
第2報と同様,アメダス観測所152地点について解析
する.各観測所の風速は風速計地上高度,地表面粗度,
地形開放度によって変化する(近藤・山沢,1983b).
火災日4月27目は東北地方全域は西よりの強風であった
ので,西よりの風の時の日平均風速の値(第2報)を参
考にして,各観測所ごとに強風・並風・微風の基準をつ
だらになっている.
5.1.強風の開始時刻
当日6時以降で,風速が強風基準を初めて超えた時刻
を強風開始時刻とした.ただし,東北全域の強風がピー
クを迎えた14時以前に瞬間的に強風基準を少し超え,そ
の後微風となり,しぽらくして連続的な強風が吹くよう
な場合は連続強風の最初の時刻を強風開始時刻とした.
第8図は強風開始時刻の分布図である.
第9図は当日4∼6時の平均気温分布図である.内陸
盆地や太平洋側を中心に冷え込みが厳しくなっている.
10
レ
逆に日本海側や北上山地などではあまり冷えていない.
Strong wind
第8図と第9図を見比べると,冷え込んだ地域では強風
(m/s)
の開始が遅く,逆に冷え込まなかった地域では強風の開
始が早い傾向にある.総観規模で見れぽ,上空の強風域
5
Medium wind
は西から移動して来たが,当日朝には東北地方全域の上
空は,すでにこの強風域の中に入っていた(第2報第8
図).にもかかわらず,地上の強風開始時刻は場所によ
っ七違っている.
Weαk wind
0
0
5 7(m冶)
10
また福島県中通り地方で強風開始時刻が早くなってい
るが,これは前日から吹いていた南南西の風で,この地
第6図 強風・並風・微風の基準.
域は地形からして,この方向の強風が吹き易いと考えら
詳細は本文参照.
れる.それゆえ,今考えている西風強風とは分けて考え
1984年2月
57
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Nagai
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Takahata
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Takamine
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Yuzawa
3. 5
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2. 8
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Taneichi
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Karumai
4. l
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4. 5
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4. O
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Nihonmatsu
2. 4
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Koriyama
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Sawauchi
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4. 2
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Tono
2. 4
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3367 l
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2. 6
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154
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
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鱒’i・起滋フq,r鋏・二
第8図
強風開始時刻の分布.実線はそれぞれ強風
開始時刻10時,12時の等値線を示す.白丸
は強風開始時刻7時以前の地点,黒丸は13
時以降の地点を示し,その他の地点は無印.
’“!12.50C
第9図
1983年4月27日4∼6時,地上の平均気温
分布図.各地点とも6.5。C/kmで海面更
正してある.記号区分は図中に示す.ただ
し平均気温が16。C未満で11。Cを超える
地点は無印.12.5。Cの等温線を引く際,
青森県酸ヶ湯観測所(海抜920m)は除い
での定義は,δ≧20(%/hr):日照率増加,一10≦δ≦
てある.
10(%/hr):日照率変化少,δ≦一20(%/hr):日照率
減少とした.それぞれの組において,4閣V>0:風速増
夜半に北海道に達した.そのため風害も東北地方と北海
加,4’V=0:風速変化なし,47く0:風速減少,の占
道で発生している.日本海側の秋田県や山形県などの山
める割合をパーセソトで示している.これによると日照
間部では10∼30mmの雨が降った.しかし,太平洋側
率の増加が風の加速に,日照率減少が風の減速になる頻
の岩手県や青森県では西の強風で大火が発生した.
度が高い.
後者は今回の気象状態と非常によく似ている.10日間
午前中早くから強風が吹いていた東北北部(40。N∼
くらい前から好天で乾燥状態が続き気温も上昇する日が
41。N)の31地点について,それぞれ9∼12時の間と,
多かった.5月5日,朝鮮半島にあった強い低気圧が日
12∼15時の間の31×3データについても同様な解析を行
本海を北東進し,5月6日9時に北海道の北を通過して
い,第11図に示したが,やはり同じ結果が得られた.
いる.これに伴う寒冷前線が東北地方を通過したが,朝
日照率と日射量とは一一対一に結び付かないが,以上の
がたほんの一部でパラパラ程度の小雨で天気の崩れは弱
統計的解析から日射量が増えると下層大気はより不安定
く,前線通過後は西の乾燥強風が吹いた.100ha以上の
になり,対流混合を強め地上風が加速され,逆の場合は
山林火災はこの日にかぎらず,4月28日から5月13日ま
安定化し地上風は減速されたと解釈できる.
での16日間に90件も続発している.
第2表に,今回も含めた気象その他の比較を示した.
6.過去の大規模山林火災時気象と今回の比較
なお,焼失面積は評価の仕方によって非常に大きく違
近年,東北地方で特に大規模火災となった1961年(昭
い,2倍くらい差が生ずる事もめずらしくない点に注意
和36年)5月29日と1969年(昭和44年)5月6日につい
すること.1961年の場合は上空風速が非常に強かった割
て,気象状況を調べてみた.前者はr三陸大火」として
に,地上風速は出なかった事と日本海側で雨が10∼30
知られているが,気象庁気象要覧によれば5月28日から
mm降った事,広範囲で日照が少ない,さらに異常乾燥
29日は全国的に強風であった.それは台風4号が台湾か
ではなかった事の4点から熱対流混合風でないと思われ
ら北上し,朝鮮半島南部に上陸し,衰弱し低気圧となっ
る.1969年の場合は今回と同じ熱対流混合風だと考えら
たが,日本海に入るや急に発達し,秋田沖を通って29日
れる.しかし,いずれも次の点が共通している.(1)太
60
、天気”31.2.
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
155
第2表 東北地方の大きな山林火災日の気象.
年 月 日
焼失面積
ヘクタール
昭和36年(1961)
昭和44年(1969)
昭和58年(1983)
5月29日
5月6日
4月27日
山火事続発
山火事続発
6千
9千
38.9m/s
28。8m/s
33.5m/s
(田名部)
(青 森)
三陸大火
(風害も多し)
2万5干
最大瞬間風速
異常乾燥ではない,
晴天乾燥続き,数日
晴天乾燥続き,数日
50∼60%,
来最小湿度30%以下,
来最小湿度30%以下,
仙台40%
宮古9%
深浦と福島22%
低気圧経路
台風くずれの低気圧
が日本海で発達し北
海道へ
強い低気圧が日本海
から北海道の北へ
強い低気圧が北海道
の北を通過
一部でパラパラの雨
東北北部の一部で少
降 水 量
m m
はなし
ではなし
度
湿
8≦一20
28。。
(熱対流混合風)
}櫛ま:
49。ノ。
60。1。
(1mm以下),他で 雨(1−y2mm),他
8≧20
eノ.1h∂
54。ノ。
鷺21る晦
・細乙1
30.1◎
24。1。
司0≦5≦10
碧乏2る恋
17。ノ。
72.1●
’1ゴ’:・1.」ブツ6.
5≦一20
o/o
dV<0
dVくO dV=O dV>0
第10図
熱対流混合風
一了
司0≦苫≦10
日本海側で10∼30
象
現
5≧20
e劉.㈲
(盛 岡)
1時間毎の日照率の増・減が地上
46。ノ。
‘二て⑳。1。i:
42。.●
dV>0
dV=0
(a)
風の加速・減速に対応することを
示す図.東北地方とその周辺152
地点に対する4月27日13∼15時の
統計値.詳細は本文参照.
平洋側で乾燥,(2)強風,(3)強い低気圧が日本海から
8≧20
22。1。//
Y20るノ鵡
58。ノ。
eん爾
鱒10≦ε510
3
二:1●’
67。1.
ε≦。20
・二1=し桑
’㌦:β6%.
oノ●
2601●
270た
dVくO dV=O dV>0
北海道またはその北を通過,(4)太平洋側で雨はほとん
(b)
どない.
第11図
第10図と同じ,ただし東北北部域
(40。N∼41。N)の31地点に対す
7.あとがき
るもので,(a)9∼12時,(b)12
今回の山林火災が大規模化した原因は,異常乾燥強風
∼15時.
が吹いた事ではあるが,火災発生の原因をつくったのは
人びとである.上空の強風が前日から始まっていたにも
識を一般に普及させる必要がある.
かかわらず,接地気層は夜間冷却で安定層となり,午前
強風のきめこまかな予知については,6時間ないし12
中の異常な地上の微風に油断して,火気に注意をしなか
時間前にそれを出すことが望ましいと考える.それには
った事が第一の原因であろう.r晴天で乾燥する日が続
数百mの適当な山頂に観測所を設け,その風資料を利用
く時は,朝がた地上は微風でも上空が強風であれば,地
する事も一つの方法であろう.
上もやがて突風状の強風が吹き始める」という気象学知
なお,本研究は文部省科学研究費自然災害特別研究に
1984年2月
61
東北地方多地点一斉大規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(3)
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よった.資料の一部は東北電力株式会社のご好意による
規模山林火災を誘発した1983年4月27日の異常乾
ものである.
燥強風(2),天気,31,37−44(52).
・萩野谷成徳,1982:日本気象学会1982年
春季大会講演予稿集,P.109.
文献
・山沢弘実,1983a:夜間の地表面放射冷
却と積雪および日本各地の最低気温の極値にっい
近藤純正,1983:東北地方多地点一斉大規模山林火
災を誘発した1983年4月27日の異常乾燥強風(1),
て,天気,30,295−302.
天気,30,545−552.
・ ,1983b:局地風速と現実複雑
・桑形恒男,1983:東北地方多地点一斉大
地表面の粗度,天気,30,553−561.
月平均500mb天気図.1984年1月.
NEWS一
最近,農業・産業界等各方面で異常気象についての関心が高まっています.そこで
「天気」編集委員会では,昭和59年の新企画第2弾として,500mbの月平均高度とそ
の偏差を昭和59年の1月分から,お届けすることにいたしました.学会員の皆さんの
何かのお役にたてばと思います.なお,これは気象庁長期予報課の御協力をいただい
ています.
(破線は偏差,単位m)
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樺太に低気圧.極うずはバフィン島付近.太平洋から中国大陸にかけて負偏差広がる.日本は北海道を除い
て厳しい低温北米西岸,大西洋中部,tシベリアに強い正偏差.シベリアからヨーロッパに及ぶ広い地域で高温
62 、天気”31.2.
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