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進行卵巣癌の長期予後
進行卵巣癌の長期予後 倉敷中央病院産婦人科 長谷川雅明 卵巣は肝臓と同様に沈黙の臓器と呼ばれ、卵巣癌は進行した状態で 発見されることが多い 卵巣癌は女性のがん死亡の3.4%を占めるにすぎない 卵巣癌は、40−50歳台ではがん死亡の約10%を占める 卵巣悪性腫瘍の分類 90% 上皮性腫瘍:漿液性、粘液性など 胚細胞腫瘍:卵黄嚢腫瘍、Dysgerminoma, 未熟奇形腫など 性索間質性腫瘍:セルトリー間質細胞腫瘍など 転移性 卵巣癌は、進行した状態で見つかることが多い 倉敷中央病院 1984-2005 (n=286) 組織型(上皮性) 抗がん剤感受性高い 漿液性腺癌(36 %) III期以上がほとんど 類内膜腺癌 (17 %) 抗がん剤感受性低い 粘液性腺癌 (13%) 明細胞癌 (23%) I期で見つかることが多い チョコレート嚢胞から 発生することが多い Type 2の卵巣癌(漿液性腺癌など) Type I 高分化型の漿液性 高分化型の類内膜 明細胞 粘液性 Type II 低分化型の漿液性 低分化型の類内膜 未分化癌 癌肉腫 境界悪性腫瘍やチョコレート嚢胞 から発生 I期で発見されることが多い 化学療法が効きにくい ほとんどを占める漿液性のものは、 卵管上皮由来と考えられる 多くはp53変異を伴う はじめから腹腔内播種 化学療法は効きやすい Type 1 Type 2 卵巣癌の手術療法 Ia 期:妊孕性温存手術が可能 それ以外:子宮全摘+両側付属器摘除+大網切除 +進行期決定のための生検 可及的にすべての病変を切除 →腸管や尿路系の合併切除もしばしば必要 卵巣癌の化学療法 高分化型の Ia 期症例以外では、術後にdose dense TC (Paclitaxel + Carboplatin)を6コース 再発症例では、再発までの期間6ヶ月以上では プラチナ感受性、6ヶ月未満ではプラチナ非感受性 と分類し、追加治療 III 期漿液性腺がんの典型的な経過 死亡 手術 化学療法 化学療法 化学療法 1y 2y 3y 4y 卵巣癌5年生存率 100 (倉敷中央病院 1995-2004年) 96% ただ、経過が長いので5年以上経過して なくなることも多い 79% 80 60 43% 40 19% 20 0 1期 2期 3期 4期 進行した卵巣癌では、手術での残存病変が 少ないほど予後がよいとされている IIIC期生存率 microscopic <0.5cm 0.5-1cm 1-2cm >2cm 当院での進行卵巣癌で、完全治癒に至ったと考えられる 症例について、その特徴を調べた。 卵巣癌は女性のがん死亡の3.4%を占めるにすぎない 10年以上フォロー可能な1986-2001年の症例 115例(III期以上)のうち 10年生存症例は 13例(11%)あった 漿液性腺癌 11例 類内膜腺癌 1例 明細胞腺癌 1例 その10年生存症例(13例)の検討 1例をのぞき、5年以内に再発を認めた症例は なかった その1例は、孤発病変で摘出できた 逆に、5年後まで再発なく経過した14例のうち 13例が10年後も生存していた 5年間再発のない症例をほぼ完治し得た症例 と考え、さらに検討を行った 5年まで再発なく経過した(≒完全治癒) 症例につき検討 1986-2005年の(23症例) Optimal 手術 11例 Sub-optimal手術 6例 試験回復 5例 術前化学療法(NAC) 1例 完全治癒に影響を及ぼす決定的な因子は 抗がん剤の感受性であると考えられる 5年まで再発なく経過した初回 Optimal手術でなかった12例 CA125 化学療法開始後のCA125の変化を検討 6.8+/−3.1日で半減 6.8+/−3.1日で半減 (days) まとめ • 10年生存のためには、5年間再発なく経過することがほ ぼ必要かつ十分と考えられた。 • 5年以上再発を認めなかったIII-IV期症例では約半数が 初回suboptimalもしくは試験開腹であった。 • 進行卵巣癌において長期生存に関わる決定的因子は 抗がん剤の感受性にあると考えられる。 おわりに • • 卵巣癌は多くは進行した状態で発見されますが、 化学療法が奏効することが多く、一旦は完全緩解に 持ち込むこともしばしば可能です。 進行した状態でも1割程度は完全治癒も可能であり、 積極的に治療を行う意義は高いと考えられます。