肺癌の診断と治療 喫煙による健康被害

2014/1/10
部位別の癌死亡数の推移
死亡者数（人）
肺癌の診断と治療
肺癌
胃癌
肝臓癌
結腸癌
直腸癌
平成25年9月8日
愛媛県立中央病院 呼吸器内科
森高 智典
死亡年
国立がん研究センターがん対策情報センター
http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html
肺がんの確立した原因
要因
ヒトにおいてリスクが示された曝露環境
たばこ喫煙
環境たばこ煙
アスベスト
シリカ
ディーゼル排ガス
多環芳香族炭化水素
Ｘ腺、γ線
ラドン222およびその崩壊産物
プルトニウム
砒素およびその化合物
カドミウムおよびその化合物
六価クロムおよびその化合物
ベリリウムおよびその化合物
ニッケル化合物
生活習慣
生活環境（家庭、職場など）
職業（断熱材、鉱山など)、生活環境(周辺住民、職業曝露者の家族など)
職業（石工、採鉱、鋳造など)
職業（非金属鉱山、鉄道、トラック輸送など)
職業（コークス製造、アルミ精錬など)
原爆被爆、医療被曝
職業（ウラン鉱山など)、屋内環境(米国の地下室など)
職業（旧ソ連のプルトニウム生成）
職業（ガラス、金属、農薬など）、井戸水(台湾、チリ、バングラデシュなど）
職業（染料・色素製造など）
職業（鍍金、染料・顔料製造など）
職業（航空宇宙産業、金属など）
職業（冶金、合金、触媒など）
喫煙による健康被害
【IARC:IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans
(http://monographs.iarc.fr/index.pｈｐ)より引用、改変】
喫煙による肺癌発生の危険性
禁煙による肺癌リスクの低下
（倍）
（倍）
5
*
*
*
4
3
*
2
1
0
非喫煙
現在喫煙
9年以内
10～19年
20年以上
禁煙後の年数
Sobue T, et al: Int J Cancer 99; 245-251, 2002.
Sobue T, et al; JPHC Study Group. Int J Cancer. 99:245, 2002.
日本内科学会旧認定内科専門医会タバコ対策推進委員会制作／喫煙と健康に関するスライド集より
1
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タバコは癌の最大の原因
喫煙による臓器別癌発生のリスク
タバコに比べると、紫外線、大気汚染は微々たるものです
（倍）
食生活
10～30％
その他25％
タバコ60％
肥満4％
食生活
4～12％
感染
飲酒
紫外線
大気汚染
職業暴露
運動不足
その他
50％～
男性（現喫煙）
女性（現喫煙）
肥満10％
非喫煙者
喫煙者
Peto J. Nature. 411: 390, 2001.
日本内科学会旧認定内科専門医会タバコ対策推進委員会制作／喫煙と健康に関するスライド集より
Katanoda K, et al: J Epidemiol 18; 251-264, 2008.
喫煙者は10年短命
イギリスにおける大規模研究
喫煙者は短命
生存している割合（％）
タバコを吸わない
タバコを吸う
10年間
（歳）
Doll R, et al. BMJ. 328:1519, 2004.
日本内科学会旧認定内科専門医会タバコ対策推進委員会制作／喫煙と健康に関するスライド集より
喫煙は虚血性心疾患の危険因子
（日本人男性データ）
（倍）
2007年日本禁煙学会健康警告デザイン
脳卒中死亡リスク
（倍）
*
心筋梗塞
虚血性心疾患
*
→
→
女性
男性
1日の喫煙本数
現在喫煙
Baba S, et al: Eur J Cardiovasc Prev Rehabil 13; 207-213, 2006.
Ueshima H, et al: Stroke 35; 1836-1841, 2004.
2
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喫煙と骨
－股関節骨折の発生－
（倍）
喫煙と認知症
（倍）
*
*
*
喫煙
喫煙
喫煙
喫煙
*
非喫煙
非喫煙
非喫煙
非喫煙
Høidrup S, et al: Int J Epidemiol 29; 253-259, 2000.
Ott A, et al: Lancet 351(9119): 1840-1843, 1998.
喫煙と消化性潰瘍
（倍）
“喫煙は皮ふの老化を促進する”
（倍）
*
*
飲酒
喫煙は、ピロリ菌感染に
次いで重要な危険因子
喫煙
精神安定剤内服
*
危険因子のない対象者
*
喫煙
ピロリ菌感染
危険因子のない対象者
*
喫煙はピロリ菌抗体陽性者
の中では最大の危険因子
© European Union
Pictorial health warnings
United Kingdom
Rosenstock S, et al: Gut 52; 186-193, 2003.
喫煙と非喫煙
双子の皮膚の老化
受動喫煙
2007年日本禁煙学会健康警告デザイン
BBC NEWS http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/1566191.stm
日本内科学会旧認定内科専門医会タバコ対策推進委員会制作／喫煙と健康に関するスライド集より
3
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間違いだらけの分煙
副流煙と主流煙
タバコ煙はドアを閉めてい
ても換気が施されていても、
喫煙場所から拡散する
一酸化炭素
4.7倍
アンモニア
46倍
ジメチル
ニトロソアミン
19～129倍
タール
3.4倍
カドミウム
3.6倍
ホルムアルデヒド
6～121倍
分離または換気した喫煙場
所を作っても、非喫煙者は
保護されない
受動喫煙に安全量という
ものはなく、タバコ煙は
うすまっても危険である
ニコチン
2.8倍
“ 100％完全禁煙の環境だけが、受動喫煙の防止に有効である”
World Health Organization（WHO）. 10 facts on second-hand smoke.
http://www.who.int/features/factfiles/tobacco/tobacco_facts/en/index.html
非喫煙女性の肺腺癌と夫の喫煙状態
受動喫煙を避ければ、
防ぐことができた肺腺癌
女性の肺癌の37％に相当
2.03*
小児の受動喫煙と知的低下
知能指数
数学
100
読む力
1.50
96
１
94
86
厚生労働省多目的コホートJPHC研究（10年間にわたる約9万人の追跡調査）
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/309.htmlより作図
Inoue M, et al; JPHC Study Group. Prev Med 38; 516-522, 2004.
受動喫煙と乳幼児突然死症候群
（倍）
9
<0.1ng/ml
0.1-1ng/ml
1-3ng/ml
読解力
88
数学
吸う49％
夫の喫煙状況
読解力
やめた25％
数学
吸わない26％
読解力
90
数学
数学
92
読解力
夫が吸わない女性と
比較した肺癌リスク（倍）
98
3-15ng/ml
コチニン濃度
Yolton K, et al. Environmental Health Perspectives. 113:98, 2005.
日本内科学会旧認定内科専門医会タバコ対策推進委員会制作／喫煙と健康に関するスライド集より
“子ども達を守ろう”
“あなたの煙を吸わせないで”
8
7
6
5
4
3
2
1
0
喫煙なし
母喫煙
同室母喫煙
父喫煙
同室父喫煙
Klonoff-Cohen HS, et al. JAMA. 273:795, 1995.
日本内科学会旧認定内科専門医会タバコ対策推進委員会制作／喫煙と健康に関するスライド集より
© European Union
Pictorial health warnings
United Kingdom
4
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受動喫煙による死亡者数
少なくとも年間6800人
“喫煙はそばにいる人を殺してしまう”
Cigarette Smoke Kills Those Nearby
日本における受動喫煙による肺癌と虚血性心疾患の
死亡者数は年間6800人
検討した疾患は、肺癌と虚血性心疾患のみ
少なくとも年間6800人
（過少評価でも6800人が死亡）
国立がんセンター・「喫煙と健康」WHO指定研究協力センター
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/20101021_tobacco.pdf
肺癌の診断
© Southeast Asia Tobacco Control Alliance（SEATCA）
Thailand
気管支鏡検査
胸部レントゲン、ＣＴ
痰の細胞診や腫瘍マーカー(血液検査)
ＰＥＴ－ＣＴ
脳ＣＴ、ＭＲＩ
気管支鏡検査
ＣＴガイド下針生検
CTガイド下肺生検
CTガイド下肺生検
5
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肺癌の治療方法
肺癌の組織型
（100名の患者さんがいたら）
手術
30名（治癒15名）
放射線
放射線＋化学療法
化学療法
緩和医療
CT検診
70名（治癒5～10名程度）
肺癌の薬物治療
抗がん剤
分子標的治療薬
分子標的治療薬
進行非小細胞肺癌に対する治療方針チャート
非小細胞肺癌
1. 抗がん剤は細胞のDNA合成に必要な代謝物やDNA合成を
直接阻害するのに対し、がんの増殖や悪性化の原因と考え
られているがん遺伝子やがん関連タンパク質を標的として
開発された薬剤による治療。
2. 従来の抗がん剤と比較して正常細胞への副作用が少ない
ことが期待される。
3. EGFR（上皮成長因子受容体）のチロシンキナーゼ阻害剤
イレッサ・タルセバ
EML4-ALK融合遺伝子のチロシンキナーゼ阻害剤
ザーコリ
VEGF（血管内皮細胞増殖因子）に対するモノクローナル抗体
アバスチン
EGFR遺伝子変異陽性
EML4-ALK陽性
その他
（Non-molecularly
specified population）
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤
（ゲフィチニブ、エルロチニブ）
ALKチロシンキナーゼ阻害剤
（crizotinib）
or
or
化学療法
化学療法
化学療法
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日本人の肺腺癌患者におけるドライバー変異
遺伝子情報→個人別（テーラーメイド）治療法へ
EGFR遺伝子
ＥＭＬ4－ＡＬＫ遺伝子
分子標的治療薬の奏効率の予測
UGT1A1遺伝子
CPT-11の解毒能の予測
Mitsudomi, T. ; Jpn J Clin Oncol 40(2) : 101, 2010より改変
本日お伝えしたい事
1．肺癌は日本人のがん死亡の１位
2．早期発見のため、検診を受けましょう！
3．何よりも禁煙
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