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危ないよ!「脱法ドラッグ」 受動喫煙の実態と対策

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危ないよ!「脱法ドラッグ」 受動喫煙の実態と対策
東京都健康安全研究センター
第9号
2005年9月
● 危ないよ!「脱法ドラッグ」
● 受動喫煙の実態と対策
古紙配合率100%
再生紙を使用しています
危ないよ!
「脱法ドラッグ」
最近、脱法ドラッグ乱用問題は急速な広がりを見せています。これは様々なストレスから逃
避したい、簡単にやせたい、刺激が欲しい、などの欲求を脱法ドラッグで満たそうとする人が
増えているからと考えられます。さらに、その販売状況や健康被害などの実態がわかりにくい
のも脱法ドラッグ乱用問題のひとつです。また、インターネット上で気軽に入手できることも
乱用拡大の原因となっています。
Ⅰ 脱法ドラッグについての疑問
Q 脱法ドラッグってどんなもの?
A
服用すると多幸感や快感を高めたり、幻
Q どんな物質が入っているの?
A
見ただけではどのような物質が入っている
のか分かりません。びんのラベルに書いてある
成分と、実際に分析した結果とが異なっている
覚や催眠作用があるとされる精神作用物質で、
ことがあります。また、同じラベルが貼ってあ
合法ドラッグと呼ばれることもあります。麻
る容器でも、別の精神作用物質が入っているこ
薬や覚せい剤などを規制する法律に直接触れ
ともあります。さらに成分の含有量にも注意が
ないため、合法あるいは脱法と呼ばれるよう
必要です。例えば医薬品の成分が、薬としての
になりました。犯罪に悪用されたり、乱用に
適切な使用量より多く入っていると、重篤な健
よる死亡事故を招くこともある危険なもので、
康被害を起こす恐れがあります。
その原料のほとんどが麻薬に類似した化学物
質や幻覚植物です。赤、青、黄色などに着色
された液体を小瓶に詰めたり、ハートや星形
の錠剤にしたり、カプセルに詰めたり様々な
形状のものがあります。
Q 規制する法律はないの?
ドラッグを規制する法律として「大麻取
A
締法」
「覚せい剤取締法」
「麻薬及び向精神薬
取締法」
「あへん法」などがあり、これらに
触れれば違法ドラッグとなります。
また、飲食用の脱法ドラッグに医薬品成分
が含まれていると、薬事法に触れます。しか
し、芳香剤、研究用試薬、観賞用植物、ビデ
オヘッドクリーナー、レザークリーナーなど
(図2)と表示し、飲食用途でないことを主張
して薬事法の規制を逃れているものがあります。
LEATHER CLEANER
図1 いろいろな形の脱法ドラッグ
1
図2 レザークリーナーと
表示された脱法ドラッグ
Q 脱法ドラッグの種類は?
A
当センターでは成分検査をするうえで便
Q デザイナーズドラッグ?
A
図4のように麻薬と化学構造の一部が異
宜上、図3のように3つに分類しています。
なる薬物は、
「麻薬及び向精神薬取締法」で
ケミカル系ドラッグは麻薬・覚せい剤に類似
規制される薬物に該当しません。しかし、精
した化学物質を中心に検査します。植物系ド
神や身体には同じような影響があると考えら
ラッグ(ナチュラル系ドラッグともいう)は
れています。化学構造を一部変えて法規制か
幻覚植物を中心に調べ、吸引系ドラッグは揮
ら逃れるようにしたものは、デザイナーズド
発性物質を特殊な方法で分析します。
ラッグと呼ばれています。
Q ゲートウェイドラッグ?
脱法ドラッグは、値段も1個あたり1,000
A
円∼5,000円と覚せい剤などに比較して安く、
簡単に手に入ります。使用法も、注射器など
を使わず、ジュースやコーヒーに混ぜて飲ん
だり、吸引したりするので、抵抗感はあまり
ありません。仲間とゲーム感覚で使っている
うちにだんだん慣れて、薬物に対して危険性
を感じなくなります。そして、より強い刺激
を求めて、麻薬や覚せい剤を使い始めること
図4 デザイナーズドラッグ
Q カクテルドラッグ?
A
脱法ドラッグをカクテルのように数種類
混ぜて摂取することです。これはその作用を
もあります。
このように脱法ドラッグの使用は、違法
高めたり、持続時間を長くする目的で行われ
ドラッグに手を染めるきっかけ(gateway=
ます。そのために思わぬ症状が出て、救急病
入口)になりやすいので、ゲートウェイド
院へ搬送された事故も報告されています。
ラッグとも呼ばれています。
(a)ケミカル系ドラッグ
(b)植物系ドラッグ
(c)吸引系ドラッグ
例) 5-MeO-MIPT
例)ベニテングダケ
例) シンナー
図3 脱法ドラッグの種類
2
Ⅱ 脱法ドラッグの危険性
一口メモ フラッシュバック(再燃)現象
薬物の乱用などでひとたび幻覚・被害妄想な
○急性中毒
どの精神病の症状が生じると、治療によって表
1回の服用で生理的、心理的な急性障害を起こ
面上は回復しているかに見えても、精神異常が
し、異常行動をとったり、社会的事件を起こした
再び起こりやすい下地が残っています。乱用を
りすることがあります。また服用し過ぎて、自ら
やめ、普通の生活に戻ったようでも、何かの刺
命を落とすこともあります。
激によって幻覚・妄想などの精神異常が再燃す
最近の事例としては表1のようなものがありま
ることがあります。これをフラッシュバック
す。
(再燃)現象といい、心的なストレスなど小さな
表1 脱法ドラッグによる最近の事件
☆脱法ドラッグによる中毒死(H.17.1 茨城)
5
MeO
DIPTを多量に摂取し、
男性死亡
きっかけで起こるといわれています。
し ばい
Ⅲ 脱法ドラッグの試買調査
☆殺人事件の発生(H.16.7 東京)
当センターでは、平成8年から平成17年6月ま
複数の脱法ドラッグを飲用した男性が精
でに約500品目を検査し、成分を明らかにしていま
神異常を起こし、同居女性を刺殺
す。検体は、アダルトショップ、雑貨品店及びイン
☆健康被害の発生(H.15.4 東京)
ターネット販売等から買い上げたものです。
20歳代の男性が脱法ドラッグを使用し、
成分分析の結果に基づいて、健康安全室薬事監
意識不明
視課が事業者の指導に当たっています。また、福
祉保健局のホームページにも試験結果を掲載し、
都民の健康被害を未然に防ぐための情報として活
○薬物依存
用しています。
脱法ドラッグの危険性で最も恐ろしいのは、薬
物依存性です。
少なくとも1か月以上継続して使用した結果、
Ⅳ 麻薬に指定された脱法ドラッグ
①ドラッグを飲みたいという欲求がなくならない。
当センターで成分分析した脱法ドラッグから、
②体に悪いとは知りながらドラッグを使用する。
約30成分の化学合成品を検出し、報告しています。
③飲まなくてはいけないという脅迫感を持つよう
このうち7件が、後日厚生労働省により麻薬に指
になる。
定されました(表2)
。
④効き目が乏しくなり飲む量を増やす。
「麻薬及び向精神薬取締法」により、麻薬に指
⑤ドラッグのことで頭がいっぱいになり、他の楽
定されると、輸入、輸出、製造、製剤、小分け、
しみや興味がなくなる。
などの依存症が現れ、現在の医学でも完治するの
が難しいとされています。
また、躁病やうつ病といった精神病の症状が現
れたり、最近の記憶が乏しくなる健忘症が出たり
することもあります。
この他薬物をやめても、精神に異常を来たすフ
ラッシュバック現象などの覚せい剤に似た精神的
症状を示すものもあります。
3
表2 最近の麻薬指定物質
通 称
2C-B
GHB
マジックマッシュルーム*
BZP
TFMPP
5
MeO
DIPT
AMT
*麻薬原料植物
東京都で検出
H.10年3月
H.11年3月
H.11年2月
H.14年10月
H.14年10月
H.15年10月
H.12年5月
麻薬に指定
H.10年7月
H.13年11月
H.14年6月
H.15年10月
H.15年9月
H.17年4月
H.17年4月
譲り受け、譲り渡し、所持、使用がすべて禁止
され、罰則規定もあります。
Ⅴ 都の脱法ドラッグ対策
国が麻薬に指定するためには、当該薬物が「乱
用の恐れがあること」や
「最新の科学的資料」の他
図5 2CI含有の脱法ドラッグ製品
に「精神への毒性や依存性が確認された薬物であ
ること」
などを調べ、そのデータに基づく審査が
必要です。そのため、薬物の報告を受けてから、
指定までに数年かかることがあります。その間に
健康被害が拡大しては困ります。
東京都では「東京都薬物の濫用防止に関する条
例」を平成17年3月に全国に先がけて制定しまし
た。この条例により、東京都は、東京都薬物情報評
図6 MBDB含有の脱法ドラッグ製品
価委員会の意見を聴いて、独自に知事指定薬物を
指定し、規制することができるようになりました。
指定に当って当センターは、科学的根拠に基づい
た化学試験や動物試験のデータを同委員会に提出
しています。この薬物指定には、国が麻薬を指定
するときに必要な薬物の依存性に関わるデータな
どを審査対象としていません。したがって乱用に
より健康被害が出る恐れがあれば、比較的短時間
図7 5MeOMIPT含有の脱法ドラッグ製品
で知事指定薬物として規制することができます。
これらの知事指定薬物は、平成17年6月1日
(条
第一回の知事指定薬物として表3の3成分が指
例施行は4月1日)以降、都内で製造したり、販
定されました。通称2CI(図5)、MBDB (図
売したりする行為が禁止され、違反した者に対し
6)及び5
MeOMIPT(図7)と呼ばれている
ては、懲役又は罰金が科せられます。特に製造や
ものです。
販売などについては、警察が直接取り締まること
表3.知事指定薬物とその有害作用
通 称〈化学名〉
2C−I(図5)
有 害 作 用
不快感、強烈な吐き気、頭
〈2,5ージメトキシ
4
痛などを生じる可能性があ
ヨードフェネチルア
る。
ミン〉
麻薬に指定されているMD
〈Nメチルαエチル MA やMDEAと類似した化
3,4メチレンジオキシ 学構造を有するため、依存
フェネチルアミン〉
性を有する恐れがある。
MBDB(図6)
5MeOMIPT(図7) 麻薬に指定されているDMT
〈3
[2
(イソプロピルメ や 5 MeO-DIPT と 類 似 し
チルアミノ)エチル]5 た化学構造を有するため、
メトキシインドール〉
依存性を有する恐れがある。
(東京都福祉保健局ホームページより)
が可能となりました。
表4 条例に違反した場合の罰則
○ 警察で直接取り締まる場合
第22条第1号(1年以下の懲役又は50万円
以下の罰金)
(製造、栽培、販売、授与、販売・
授与の目的所持)
第23条(20万円以下の罰金)
(東京都の立入
り調査拒否等)
○ 東京都からの告発を受けて警察で取り締まる場合
第21条
(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
(製造、
栽培、
販売、
授与、
販売・授与の目的所持)
第22条第2号(1年以下の懲役又は50万円
以下の罰金)
(販売・授与目的の広告)
4
お わりに
都民への情報提供ホームページ
脱法ドラッグとはどういうものなのか、なぜ危
東京都福祉保健局
険なのかについて述べました。使用実態や依存性
脱法ドラッグ対策
についての情報は十分ではありませんが、健康被
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/index.html
害や事件例をみると麻薬・覚せい剤と大きな違い
はありません。
インターネット販売などで安易に入手できるこ
とや「デザイナーズドラッグ」「カクテルドラッ
グ」という若者向けの呼び方で取り扱われている
ことを見ても、今後、青少年に浸透し肉体や精神
をむしばみ、社会的に悪い影響を及ぼす可能性が
小・中学生と薬物乱用に関するサイト
日本学校保健会
薬物乱用防止情報コーナー
考えられます。このような脱法ドラッグの乱用に
薬物乱用防止教育
よる深刻な健康被害を未然に防ぐために、都は啓
・児童生徒向け
発活動(図8)や監視指導などの対策を行ってい
・指導者・一般生徒向け
ます。すべての人が脱法ドラッグの危険性を十分
http://www.hokenkai.or.jp/3/3-1/3-1.html
に認識し、拡散を阻止しなければなりません。
図8 薬物濫用防止ポスター
5
受動喫煙の実態と対策
たばこの害は喫煙者だけでなく周囲の非喫煙者にも及ぶことが明らかにされてきました。最近
では受動喫煙による害を受けることのないように、病院、役所、銀行、公共交通機関、路上等に
おいて禁煙の場所が増えていますが、たばこ煙の影響はどうでしょうか。当センターで行った成
人、乳幼児、妊婦を対象にした受動喫煙実態調査の結果を紹介します。
といわれています。図2は紙巻たばこ一本に含ま
たばこ煙中の有害物質
れる三大有害物質の濃度です。ニコチンは依存性
のある薬物で、たばこに含まれ副流煙に多いこと
から受動喫煙の指標になります。一酸化炭素は酸
「たばこ煙」には約4,000種類の化学物質が含
素の運搬を妨害し、体を酸欠状態にします。また、
まれ、そのうち約200種類が有害物質であり、さ
タールは様々な発がん物質を含んでいます。
らにこのうち60種類が発がん物質です。図1に
示すように喫煙者が直接吸うのが主流煙で、吐
き出した煙が呼出煙です。また、たばこから立
ち上がる紫色の煙が副流煙です。つまり、周囲
に喫煙者がいる場合、自らはたばこを吸わなく
ても副流煙や呼出煙を吸い込んでいることにな
ります。このようなことを「受動喫煙」といい
ます。主流煙は酸性ですが、副流煙は多くのア
ンモニアを含み、強いアルカリ性です。そのた
め副流煙を浴びた非喫煙者では目の痛みや咳な
どの症状が見られます。
図2 紙巻きたばこの三大有害物質(1本あたりの量)
出典:US Department of Health, Education and Werlfare:
The Health Consequences of Smoking,1975より改編
受動喫煙の害
受動喫煙の慢性的な影響については、平山 雄
氏(元国立がんセンター研究所疫学部長)により
大規模調査が行われています。これは、40歳以上
の 成 人265,118人(男 性122,261人、女 性142,857
人)を対象にして、昭和41年から57年までの17年
図1たばこ煙と受動喫煙
間に6府県にまたがる長期追跡調査(コホート研
副流煙は不完全燃焼によって生じるため、高
究)を行ったものです。図3と図4に示すように、
温燃焼になる主流煙に比べて発がん物質を含む
非喫煙者夫婦の妻の死亡リスクを1とすると、夫
各種燃焼産物が多くなっています。
が喫煙する場合の非喫煙妻の死亡リスクは肺がん、
ニコチン、タール、一酸化炭素は三大有害物質
乳がんとも高くなっています。
6
喫煙本数とコチニン濃度
喫煙者の尿中コチニン濃度は1日あたりの喫煙
本数が増加すると、高くなる傾向がありました。
血清中コチニン濃度も尿と同様の結果でした。
喫煙習慣と尿中・血清中のコチニン濃度
図3 非喫煙妻の肺がん死亡リスク
今回の調査によると喫煙者の尿中コチニン濃度
は全ての検査試料で80ng/mgCr
(図6)
以上で、血
清中コチニン濃度も20ng/ml以上でした
(図7)
。
(紫色の点線より右側)
非喫煙者のコチニン濃度は尿が0∼7,539 ng/mgCr 、
図4 非喫煙妻の乳がん死亡リスク
血液が0∼389.3ng/mlと広範囲に及びました。非
喫煙者であっても図6の紫色の点線より右側が64人
(33.2%)
、
図7の紫色の点線より右側が55人
(28.5%)
受動喫煙の調査結果から
でコチニンが検出されました。
1 受動喫煙の指標コチニン
たばこに含まれるニコチンは体内で代謝される
とコチニンとなって血液中に入り、尿から排泄さ
≧
れます(図5)。非喫煙者の尿や血液からコチニ
ンが検出されると、たばこ煙の影響を受けている
図6 尿中コチニン濃度別の人数
≧
ことになります。
図7 血清中コチニン濃度別の人数
一口メモ 尿中コチニン濃度
図5 受動喫煙の指標コチニン
尿の濃度は、水分補給や発汗等により大きく
変動します。そのため、尿中コチニン濃度は、
2 成人の受動喫煙〈職場と家庭〉
尿中のクレアチニン(老廃物の一種)により標
当センターでは、多摩小平保健所において平成
準化した値【ng/mgCr】を使用しました。
12年度及び13年度に小規模企業検診を受診した人
のうち、調査の趣旨に同意が得られた成人363人
(男性201人、女性162人)に対して、尿中及び血
清中コチニン濃度を測定しました。
7
強・弱受動喫煙者の割合
非喫煙者を、
「強受動喫煙者」
(尿中又は血清中
コチニン濃度図6.7の紫の点線より右の人)と、
「弱受動喫煙者」
(図6.7の紫の点線より左の人)
喫煙室は有効
に分けると、非喫煙者のうち強受動喫煙と判定さ
アンケートで有意な差があった職場の喫煙室の
れた割合は44.0%に達し、男性は50.0%、女性で
有効性をみる目的で、喫煙室の有無別に強・弱受
は39.8%でした。(図8)
動喫煙者の割合を比較しました。強受動喫煙者の
割合は、喫煙室がある場合に33.3%、ない場合に
総数
(193)
男性 (80)
女性
(113)
44.0
50.0
39.8
50.0%となっており、職場における喫煙室の設置
56.0
は受動喫煙の防止に有効であると考えられました
50.0
(図9)
。
60.2
図8 強・弱受動喫煙者の割合
生活のどこがちがう!?
強・弱受動喫煙者を分けて、アンケートから職
場や家庭におけるたばこ煙影響の受けやすさを比
図9 職場の喫煙室の有無と受動喫煙者
較しました(表1)。
(193人中159人が回答)
表の左側が強受動喫煙者、右側が弱受動喫煙者
の回答です。黄色の網掛け項目が弱受動喫煙者を
3 乳幼児と妊婦の受動喫煙
強受動喫煙者と比較して、統計的に差が認められ
平成15年度に当センターでは、多摩立川保健所
る項目です。弱受動喫煙者は「職場に喫煙室がな
及び旧村山大和保健所との共同研究で、乳幼児、
い」割合が低く、「家庭でたばこの煙がよく気に
妊婦、その家族を対象に受動喫煙の実態を調査し
なる」ことと「家族は寝室で喫煙しない」割合が
ました。この調査は、市が実施する乳児健診(3
高くなっています。このことは、職場の環境が整
∼4か月児)と3歳児健診を受診した乳幼児及び
い、たばこ煙に対する関心が高く、そのことが煙
母親学級を受講した妊婦を対象に、管轄する保健
を避けるなどの受動喫煙を防止する行動につな
所が行ったものです。調査項目は、家庭内の喫煙
がっていると推察できました。
状況を知るために家族の喫煙習慣の有無、喫煙本
数、喫煙場所等とし、妊婦の場合は職場における
表1 強・弱受動喫煙者の回答の割合
調 査 項 目
〈職 場〉
喫煙者がいる
たばこの煙がよく気になる
喫煙室がない
換気されている
分煙である
分煙はよく守られている
仕事をする場所は室内
〈家 庭〉
喫煙者がいる
たばこの煙がよく気になる
喫煙場所が決まっている
家族の喫煙場所は室内
家族は寝室で喫煙しない
強受動
喫煙
85名
弱受動
喫煙
108名
(%) (%)
77.1
72.9
11.8
10.2
67.1
52.7
32.9
33.3
52.9
55.6
41.2
38.9
68.2
65.7
(%) (%)
38.8
46.6
5.9
15.7
24.7
19.4
27.1
34.3
29.4
56.5
各調査項目も加えました。検査試料は尿を用いま
した。
乳幼児と妊婦の受動喫煙の評価
調査対象者の尿からコチニンが20ng/mgCr以上
検出された場合には、
「たばこ煙の影響を受けた」
と、評価しました。
乳 児
乳児11人のうち家族に喫煙者がいたのは8人で
した(表2)
。たばこ煙の影響を受けた乳児は1
人であり、母親は妊娠前からの喫煙者で、調査時
も喫煙し母乳を与えていました。コチニン濃度は
乳児が168ng/mgCr、母親が1,200ng/mgCrでした。
父親も一日20本、うち自宅では5本を換気扇の下
で喫煙していました。
8
幼 児
幼児では、家族に喫煙者がいるのは7人中6人
で、うち5人にたばこ煙の影響がありました。コ
チニン濃度が71ng/mgCrであった幼児の場合は、
母 親(非 喫 煙 者)が145ng/mgCrで、父 親(喫 煙
者)は5,180 ng/mgCrであり、母子ともに父親の
喫煙の影響を受けていました。両親とも非喫煙者
の幼児からはコチニンが検出されませんでした。
表2 家族の喫煙習慣と乳幼児へのたばこ煙の影響
喫煙習慣
母
父,家族
喫煙
喫煙
非喫煙
喫煙
非喫煙 非喫煙
合 計
乳児
人数
2
6
3
11
コチニン
検 出
1
0
0
1
幼児
人数
1
5
1
7
コチニン
検 出
1
4
0
5
妊 婦
母親学級に参加した妊婦で家庭に喫煙者がいる
のは47人中26人でした(表3)
。たばこ煙の影響
を受けた妊婦は47人中12人でした。妊娠を機に禁
煙したという妊婦6人では半数がたばこ煙の影響
を受けていました。夫婦とも非喫煙であるのにコ
図10 分煙方法の考え方
多摩立川保健所「禁煙・受動喫煙防止支援マニュアル」より改編
チニンが検出された妊婦4人は、
「職場が分煙で
ない」と回答しました。夫や家族の喫煙場所は、
換気扇の下12人、ベランダ4人、別室4人、同室
2 禁煙サポート
2人、分煙しない3人、不明1人でした。
受動喫煙の予防には禁煙が有効です。ニコチ
表3 喫煙習慣と妊婦へのたばこ煙の影響
ン依存症の治療の方法として病院の禁煙外来も
喫 煙 の 習 慣
あります。また、都保健所では受動喫煙防止や
妊婦人数
コチニン検出
妊婦
夫,家族
非喫煙(*禁煙)
喫煙
26
(6)
(3)
8
非喫煙
非喫煙
21
4
47
12
合 計
*:妊娠を機に禁煙したと回答した妊婦
禁煙をサポートするための各種資料を配布して
います。
禁煙・受動喫煙防止サポート資料
・お店の分煙・禁煙を考えてみませんか
(福祉保健局 平成17年3月発行)
・母子保健従事者のための禁煙・受動喫煙防止
分煙と 禁煙
支援マニュアル
(多摩立川保健所 平成16年7月発行)
・受動喫煙防止のために
1 効果的な分煙方法
多摩立川保健所で作成した「効果的な分煙の方
(健康局 平成16年3月発行)
・大切な新しい家族のためにみんなで始める禁
法」を図10に示します。1から4に向かって、分
煙講座
煙効果は低くなります。4の方法で分煙するとき
(多摩立川・旧村山大和保健所 平成15年7月発行)
は、室内空気の流れに注意が必要となります。
9
こと、十分な対応を行うことが困難な場合には全
健康増進法による受動喫煙防止対策
面禁煙による対策を勧奨するなど、受動喫煙を防
止するための対策を進めていくとしています。
表5 職場における喫煙対策の取り組み状況
平成15年5月に施行された健康増進法では、多数
の者が利用する施設の管理者は、利用者に対して、
受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう
求めています。職場における喫煙対策のための新ガ
イドラインも同年5月に策定されました(表4)
。
表4 職場における喫煙対策のためのガイドライン
(平成15年5月9日厚生労働省)
1 非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙
室の設置を推奨
2 たばこの煙が拡散する前に吸引し屋外に
排出する方式の喫煙対策を推奨
3 喫煙室等に向かう風速を0.2m/秒以上とす
るように必要な措置を講じること
さらに、平成17年2月には「たばこ規制枠組み
条約」(WHOの下で作成された多数国間条約)
(平成17年5月30日厚生労働省)
1 喫煙対策に取り組んでいる事業場
82.8%
○ 喫煙場所を設け、それ以外の場所を禁煙としている (92.2%)
○ 換気扇のある喫煙室で喫煙する
(62.6%)
○ 事業場全体を禁煙としている
(10.2%)
○ 食堂を禁煙としている
(39.6%)
○ 休憩室を禁煙としている
(34.8%)
○ 喫煙のルールを設定している
(80.5%)
○ 喫煙のルールに従わないものに適切な指導を行う (85.6%)
○ 屋外排気方式を取らず空気清浄装置を単独使用 (40.9%)
職場の空気環境の測定を実施する
○ 浮遊粉じん濃度を測定していない
(71.4%)
○ 一酸化炭素濃度を測定していない
(72.2%)
○ 非喫煙場所から喫煙場所に向かう風速の測定をしていない (87.0%)
2 喫煙対策に取り組んでいない事業場
17.2%
● 喫煙場所を設けるスペースがない
(38.7%)
● 社内の合意が得られない
(27.7%)
● 喫煙者への配慮
(20.6%)
● 取り組む必要を感じない
(19.7%)
○の設問は喫煙対策に取り組んでいる事業場を、
●の設問は取り組んでいない事業場を100%とした(複数回答)
が発効され、「職場等の公共の場所におけるたば
こ煙からの保護を定め効果的な措置をとること」
や、「たばこのパッケージに有害性を明記するこ
と」といった広告の禁止規定が盛り込まれ、受動
まと め
喫煙防止にむけて対策が進んできました。
その後、喫煙対策の取り組み状況の調査結果が
平成12年度に当センターが保健所と共同で受動
発表されました(表5)。
喫煙の調査を行ったころは、分煙していない職場
喫煙対策を実施している事業場は82.8%に達し、
が多く見受けられました。当時は、
「職場や家庭
そのうち92.2%が喫煙場所以外を禁煙としていま
において、大きな声で分煙してくださいといえま
した。調査結果によると、食堂や休憩室を設置し
せん。
」という意見が寄せられていました。
ている事業場においては、6∼7割の食堂や休憩
しかしながら、当センターで測定したコチニン
室で喫煙している実態が明らかになりました。
の検査結果とたばこに関する情報を得てから、
調査の結果について、厚生労働省は「喫煙対策
「職場で分煙を求めたところ、快く認められた」、
に何らかの取組みを行っている事業場は約8割に
「家族で分煙について話し合った」、「外出時には
のぼるが、受動喫煙を確実に防止する対策として
煙を避けるようになった」など家族や職場で喫煙
まだ不十分」
、「喫煙スペースがない、社内の合意
対策や受動喫煙を考える契機になったとの意見を
が得られないといった理由で、対策の取組みが遅
いただきました。
れている事業場が多い」と評価しています。また、
当センターでは、今後も尿及び血液等の検査を
都道府県労働局を通じ、企業に対し受動喫煙防止
通じて受動喫煙について調査研究を続け、受動喫
対策の重要性を周知し、喫煙室の設置を促進する
煙防止対策の推進に努めてまいります。
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平成17年度東京都健康安全研究センター
公開セミナーのお知らせ
本公開セミナーは、当センターで行っている研究等に関する情報を都民のみなさまに分
かりやすくお伝えすることを目的に実施しており、今回で通算23回目となります。毎年、
生活に身近な話題を取り上げております。
テ ー マ 知っておきたい暮らしの中の健康と安全
1 だめダメ駄目薬物乱用
 薬物乱用の現状と防止対策
―小・中・高校生を対象とした啓発活動を中心として―
 こんなにある乱用薬物予備軍「脱法ドラッグ」
―化学分析からのアプローチ―
 脱法ドラッグ条例の「知事指定薬物」
―脱法ドラッグの生体影響を探る―
2 井戸水を安心して飲むためには
―科学の目で見た水質の現状と評価―
3 魚が語る東京湾の汚染
―水銀及びスズ化合物のモニタリング調査―
4 鳥インフルエンザから新型インフルエンザへ
―新型インフルエンザが流行する可能性―
入 場 料 無料 予約不要(先着280名)
日 時 平成17年10月12日(水)
午後1時30分∼午後4時50分
会 場 都民ホール
(東京都庁・都議会議事堂1階)
新宿区西新宿二丁目8番1号
問合せ先 健康安全研究センター
計画調整課調査係
〈表紙の写真〉 コガネバナ(シソ科)
コガネバナは中国北部∼東シベリア、朝鮮半
島原産の多年草です。7∼8月に枝の先に紫色
の唇形花を多数着けます。コガネバナ(黄金
花)の名前は花の色ではなく、根が黄色いこと
によります。根を黄 といい、漢方では健胃消
化、止瀉整腸などを目的とした処方(黄 湯、
黄連解毒湯など)に配剤されます。
おう ごん
し
おう れん
しゃ
おう ごん とう
げ どく とう
電話 03-3363-3231
(撮影 東京都薬用植物園)
本誌
「くらしの健康」
の郵送をご希望の方は、A4版の入る封筒に140円切手(1部の場合)
を貼って、
宛先を明記のうえ当センター調査係までお送りください。
健康安全研究センターの事業内容をホームページに掲載しています。
URL http://www.tokyoeiken.go.jp/
登録番号(17)2
平成17年9月発行
● 本誌の内容を転写する場合は、下記までご連絡ください。
● 本誌に対するご意見、お問い合わせがございましたら、下記までご連絡ください。
発行 東京都健康安全研究センター 企画管理部 計画調整課 調査係
〒1690073 東京都新宿区百人町三丁目24
1 電話 0333633231 ファクシミリ 033368
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印刷 正和商事株式会社
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