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ブラジル:第13 次ライセンスラウンドと最近の Petrobras をめぐる状況

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ブラジル:第13 次ライセンスラウンドと最近の Petrobras をめぐる状況
更新日:2015/12/14
調査部:舩木弥和子
ブラジル:第 13 次ライセンスラウンドと最近の Petrobras をめぐる状況
(Platt’s Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas 他)
●2015 年 10 月 7 日、ブラジル国家石油庁(ANP)は、10 堆積盆地の 266 鉱区を対象に第 13 次ライセン
スラウンドを実施したが、Petrobrasやメジャーは入札に参加せず、ブラジル国内企業を中心に 17社が
4 堆積盆地の 37 鉱区に応札、サインボーナス合計額は 1 億 2,110 万レアルと、低調な結果に終わっ
た。原油価格の下落や環境許可取得に時間を要すること、ローカルコンテンツについての変更が少な
かったこと等が、その原因と考えられる。
●2 月に BendineCEO 等新役員就任後、2014 年の決算報告や 5 カ年計画BMP2015-2019 を発表、汚職
問題を乗り越えて再建に向かっていると思われた Petrobras だが、レアル安で業績は回復せず、資産
売却もあまり進展がみられない。11 月には、資産売却や投資額削減に反対する大規模なストライキが
起きる等、問題が多い。
●ブラジルの石油生産量は、2014 年 12 月に 249.7 万 b/d と過去最高に達した後、減退、横ばいの状態
となっていたが、2015 年 7 月から増加、8 月には 254.7 万 b/d と初めて 250 万 b/d を上回る水準とな
った。しかし、9 月、10 月は 240 万 b/d 程度で推移している。6 月に 90 万 boe/d、7 月に 100 万 boe/d
を超え増加の一途をたどっていたプレソルトの生産量は、9 月は減少、10 月は微増した。Iracema
North 油田の FPSO Cidade de Itaguai の生産開始、Libra 油田での掘削計画等プレソルトの油田開発
に進展が見られる一方で、リグ数減少や船舶のチャーター契約キャンセル等の情報も伝わっており、
原油価格下落や汚職問題の影響が現れている。
1.低調な結果に終わった第 13 次ライセンスラウンド
2015 年 10 月 7 日、ブラジル国家石油庁(ANP)は、Amazonas、Camamu-Almada、Campos、Espírito
Santo、Jacuípe、Parnaíba、Pelotas、Potiguar、Recôncavo、Sergipe-Alagoas の 10 堆積盆地の 266 鉱区(陸
上 182、沖合 84)を対象に第 13 次ライセンスラウンド第 1 フェーズを実施した。
札が入ったのは Parnaíba、Potiguar、Sergipe-Alagoas、Recôncavo の 4 堆積盆地の 37 鉱区のみで、こ
れらの鉱区は全て落札された。落札鉱区数で見ると、2002 年の第4 次ライセンスラウンドの 21 鉱区以来
最も少ない鉱区数となり、落札鉱区の割合で見ても 14%と、2003 年の第5 次ライセンスラウンドの 11%に
次ぐ低い結果となった。2 件以上の札が入った鉱区もわずか 8鉱区で、沖合鉱区で入札があった鉱区も
2鉱区のみであった。ANPが多くの企業が関心を示すと考えていたCampos、Espirito Santo盆地には応
札がなかった。
サインボーナス合計額は 1 億 2,110 万レアル (3,140 万ドル)で、政府が期待していた 5 億ドルをはる
かに下回った。
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
入札には 39 社が参加を希望し、37 社が入札を認められたが、実際に札を入れたのは 17 社であった。
その多くがブラジル企業で、Potiguar、Recôncavo、Parnaiba 盆地にすでに権益を保有するブラジル企
業が、低い価格で落札、保有鉱区を増やすことに成功している。Petrobras や Royal Dutch Shell、Exxon
Mobil、BP、Total、Statoil 等メジャーは入札に参加しなかった。Petrobras がブラジル国内のライセンスラ
ウンドに参加しなかったのは、今回が初めてとなる。メジャー等がライセンスラウンドに参加しなかった
背景には、原油価格の下落があると考えられる。また、第 11 次ライセンスラウンドで鉱区を取得した企
業が、環境監督機関IBAMA より環境面での許可を取得するのに時間を要し、そのため探鉱が進展して
いないことも、これらの企業が入札に参加することに躊躇した理由と考えられる。さらに、石油業界が変
更を求めていたローカルコンテンツについての変更が少なかったことも、原因と思われる。ブラジル以
外の企業で目立った動きとしては、Geopark が Potiguar、Recôncavo 盆地の鉱区をオペレーターとして
落札、GDF Suez が Parnaíba、Recôncavo 盆地にパートナーとして参加することが挙げられる。
堆積盆地別で見ると、Parnaiba 盆地については公開された 22 鉱区のうち 11 鉱区に応札があった。
同盆地の Gaviao Real ガス田で生産中の Parnaiba Gas Natural が 6 鉱区を落札した。同社は同地域の
生産量を 4.2MMm3/d から 2016 年 7 月までに 8.4 MMm3/d に増加させる計画である。Sergipe-Alagoas
盆地では Queiroz Galvão Exploração e Produção S.A.(QGEP)が 2 鉱区を落札したが、他 8 鉱区には応
札がなかった。
表 1.第 13 次ライセンスラウンド第 1 フェーズの結果
堆積盆地
鉱区数
サインボーナス
最小作業量
主な落札企業
(レアル)
(レアル)
対象鉱区 落札鉱区
Sergipe-Alagoas
10
2
100,003,699.98 36,600,000.00 QGEP
Parnaíba
22
11
14,990,176.75 118,404,000.00 Parnaíba Gás Natural、
OP Energia
Recôncavo
82
18
4,352,720.00 45,283,500.00 Alvopetro、Tarmar
Potiguar
71
6
1,763,000.00 15,754,500.00 Geopark、Phoenix
Camamu
9
0
0
0
-
Pelotas
51
0
0
0
-
Jacuípe
4
0
0
0
-
Espírito Santo
7
0
0
0
-
Amazonas
7
0
0
0
-
Campos
3
0
0
0
-
合計
266
37
121,109,596.73 216,042,000.00
-
(ANP ホームページを基に作成)
なお、12 月 10 日には、Barreirinhas、Tucano Sul、Parana、Potiguar、Reconcavo、Espirito Santo の 6
-2Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
堆積盆地の 10 鉱区を対象に第 13 次ライセンスラウンドの第 2 フェーズが実施された。第 1 フェーズが
探鉱鉱区を中心としていたのに対し、第 2 フェーズは成熟油田を含んでいる。国内の比較的小規模な
企業を中心に 23 社が PQ を取得、21 社が9鉱区に入札を行ない、9 鉱区が落札された。落札した企業
は、カナダの Alvopetro を除き、小規模なブラジル企業となっている。第1フェーズと同様に Petrobras
やメジャーは入札には参加しなかった。サインボーナスは 420 万レアル(110 万ドル)であった。
表 2.ブラジルライセンスラウンド結果一覧
ライセンスラウンド
第 1 次ライセンスラウンド
第 2 次ライセンスラウンド
第 3 次ライセンスラウンド
第 4 次ライセンスラウンド
第 5 次ライセンスラウンド
第 6 次ライセンスラウンド
第 7 次ライセンスラウンド
第 9 次ライセンスラウンド
第 10 次ライセンスラウンド
第 11 次ライセンスラウンド
第 12 次ライセンスラウンド
第 13 次ライセ 第1フェーズ
ンスラウンド 第2フェーズ
年月
1999/6
2000/6
2001/6
2002/6
2003/8
2004/8
2005/10
2007/11
2008/12
2013/5
2013/11
2015/10
2015/12
落札鉱区数
12
21
34
21
101*
154
251
117
54
142
72
37
9
(サインボーナスの単位:百万ドル)
入札企業数
14
27
26
17
6
21
32
42
23
39
12
17
21
サインボーナス
181
260
243
34
9
221
472
1,200
38
1,408
71
31
1.1
(ANP ホームページ他を基に作成)
* 第5次ラウンドより小ブロック制を導入(各堆積盆地をセクターと呼ばれる大ブロックに区分し、さらにセクターを
小ブロックに分ける入札制度で入札鉱区数が数倍に増大)
注 第 8 次ライセンスラウンドは、石油会社がオペレーターとして入札できる数を制限したところ、Petrobras や国家
の利益を害するとして、裁判所の命令で中止になった。
2.苦境に陥る Petrobras
2015 年 2 月に新たな経営陣を迎え、4 月 22 日に発表できていなかった監査済みの決算を発表、6
月 29 日には例年に比べ遅い時期ではあったものの 5 ヵ年計画を公表し、建て直しに向けて動き出した
ように見えた Petrobras であるが、再び厳しい状況に直面している。
ブラジルの財政や景気の悪化、経常赤字拡大に Petrobras を巡る汚職問題に伴う政治的混乱が加わ
ったことによる急激なレアル安1を受けて Petrobras の業績が悪化することが予想されたことから、同社は
1
月間平均で見ると、2014 年中ごろは Real2.2/$程度で推移していたが、2015 年 9~11 月は Real3.8 /$程度とな
っている。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
9 月 29 日に、30 日からガソリンとディーゼルの卸売価格をそれぞれ 6%、4%値上げすると発表した。
Petrobras は過去数年間、国際価格で輸入した原油や石油製品を国内では低い価格で販売し、その逆
ザヤを負担することで、負債が増加していた。しかし、2014 年後半以降の原油価格下落と大統領選挙
直後の 2014 年 11 月にガソリンを 3%、ディーゼルを 5%値上げしたことで、一時期逆ザヤが解消し、利
益をあげていた。ところがその後、国内需要が減退するとともに、国内の精製能力が上昇したことで、石
油輸入量が減少し、輸入により得られていた順ザヤ利益も減少した。また、レアル安が石油製品値上げ
率を大幅に上回るようになり、同社の負債が増加することになった。同様の理由から、今回の石油製品
価格値上げも、負債軽減にはあまり寄与しないとされた。
数日後の 10 月 5 日には、Petrobras が、2015 年の投資総額を 6 月に発表した 2015~2019 年の 5 カ
年計画の 280 億ドルから 11.0%削減し 250 億ドルに、2016 年の投資総額を 6 月発表の 270 億ドルから
30%削減し 190 億ドルに下方修正すると発表した。2008 年以降で年間投資が 200 億ドルを下回るのは
初めてのこととなる。Petrobras はまた、2015~2019 年の 5 カ年計画で 2015 年$60/bbl、2016 年$70/bbl
としていた Brent の価格見通しを、それぞれ$54/bbl、$55/bbl に引き下げた。さらに、2015 年は Real
3.10/$、2016 年は Real 3.26/$とみていた為替レートを Real 3.28/$、Real 3.80/$に変更した。石油製品
価格を引き上げたにもかかわらず、急激なレアル安で、Petrobras は Brent の価格見通しや為替レート
の変更、投資計画の見直しを余儀なくされたということになる。
また、Petrobras は 6 月発表の 5 カ年計画で、2015~2016 年の 2 年間に 151 億ドルの資産売却を行
い、資金を調達するとしていたが、2015 年は 7 億ドル、2016 年に 144 億ドルの資産を売却するとした。
7 月には、Petrobras が Campos 盆地、Bijupirá/Salema 油田の権益の 20% を 2,500 万ドルで PetroRio
に売却することで協議を行なっていることが明らかになった。PetroRio は Rosneft に Solimoes 盆地 の資
産を売却することで 2015 年、2016 年に 5,500 万ドルを取得する予定で、この資金を今回の買収に充て
る計画と考えられる。同油田は API 比重 28~31 度の石油 22,000 b/d とガス 325,000m3/d を生産してい
る。この買収により PetroRio の生産量は倍増させることを計画している。
また、10 月 23 日に Petrobras は、傘下の Gaspetro の株式の 49%を約 19 億レアル(5.5 億ドル)で売
却する契約を三井物産と締結した。三井物産の発表によると、同社は、関連許認可取得等の条件を充
足後、三井物産子会社の三井ガスを通じて株式を取得する。三井物産は2006年以降、ブラジル国内の
8 州でガス配給事業に参画しているが、今回の株式取得により、19 州でガス配給事業を展開、取扱ガス
配給量は約 30MMm3/d となる。
Petrobras の資産売却については、この他にも、次のような報道があった。
●6 月、Petrobras が海運子会社 TransPetro の保有するタンカー53 隻のうち 23 隻を 2 億 7,000 万ドル
で売却する方針と複数のブラジル地元紙が報道した。TransPetro は 23 隻を売却後、再用船して運航す
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る。自社船を売却し、再用船する方法は、Vale が超大型鉱石専用船で実施しており、Petrobras の経営
評議会議長に Vale の CEO Murilo Ferreira 氏が就任したことで、Vale と同様の手法で財務を補填すると
みられた2。
●7 月、Petrobras は YPF とアルゼンチンの資産売却について協議を実施。Petrobras はアルゼンチン
で現在 6.2 万 boe/d を生産しており、Neuquén、San Jorge 盆地等の資産売却を検討している。下流資産
としては Bahía Blanca 製油所(精製能力 30,500b/d、シェア 100%)と Refinor 製油所(同 20,400b/d、29%)、
SS260 ヵ所を保有している。石油化学部門でも市場シェアは 80%強となっており、発電部門では Genelba
ガス火力発電所、Pichi Picun Leufu 水力発電所のシェアを保有している。
●Petrobras はチリに SS300 ヵ所、貯蔵施設 11 ヵ所他を保有しているが、7 月には、Southern Cross、
Puma Energy、Grupo Romero が Petrobras のこの資産に関心を示していると報道された。Petrobras のチ
リ資産の売却額は 5~10 億ドルに上る模様。
●8 月には、Petrobras 経営評議会は子会社 Petrobras Distribuidora の株式の 25%を売却することを 8
対 2 で承認した。Petrobras Distribuidora はブラジル最大の燃料の小売販売企業で 7000 カ所以上の SS
を保有している。
しかし、10 月に入ると、アルゼンチン資産に関して、YPF が Petrobras Argentina の株式の 67%を 9
億ドルで買収するという提案を行なったが、Petrobras がこれを拒否したと報じられ、他の資産売却につ
いても成立したとの情報はない。
なお、12 月に入り、Petrobras が Santos 盆地プレソルトの Carcará 油田の権益の一部を売却すること
を検討していると報じられた。Petrobras は 2015 年初めに同油田の権益売却を計画したが、追加の掘削
結果を待つこととし、同油田を売却リストから外していた。
また、Petrobras が同じく Santos 盆地プレソルトの Libra 油田の権益の 10%を売却する計画であると
の報道もあった3が、Petrobrasは現時点では Libra油田の権益売却は検討していないとのコメントを発表
した。同油田は、2013 年に実施された最初のプレソルト入札で、Petrobras、Total、Shell、CNPC、
CNOOC のコンソーシアムに付与された。可採埋蔵量は 80~120 億 bbl とされており、2017 年第 1 四半
期に生産を開始する予定となっている。プレソルト開発法により、プレソルトの新規鉱区については
Petrobras が最低でも権益の 30%を保有しなくてはならないと定められているが、Petrobras は同油田の
権益の 40%を保有していることから、権益 10%の売却であれば法律上問題が生じることはない。入札
時のサインボーナスが 150 億ドルであったが、当時に比べ原油価格が下落していることから、売却額は
最大で 15 億ドルとなると見られていた。
日本海事新聞 2015/6/30
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Reuters2015/12/9
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Bendine CEOは議会で、資産売却目標を達成できなければ、2016年に190 億ドルの投資を行ないな
がら、1,300 億ドル以上の負債を返済していくことはできないと述べている。他の資産の売却が進んで
いないことから、同社は、人気が高いと考えられるプレソルトの油田権益を売却せざるを得なくなってい
るのではないだろうか。
Petrobrasは、投資額削減を行なうもののブラジル国内の石油生産目標については変更を行なわず、
2015 年 212.5 万 b/d、2016 年 218.5 万 b/d、2017 年 230 万 b/d、2020 年 280 万 b/d とするとした。
このように Petrobras が、投資額を削減し、資産売却で資金調達を行ない、立て直しを図ろうとしてい
ることに対し、同社の労働組合が反対している。
7 月 24 日、Petrobras の労働組合 FUP が、Campos 盆地 の 14 基の生産プラットフォームを含む 13
州で 24 時間のストライキを実施した。Petrobras のストライキは 5~10 日以上続かなければ、生産に影響
を与えることはないとされており、このストライキによる生産への影響はなかった。
しかし、このストライキで同社の資産売却の動きを止められない場合には、ストライキを再実施すると
していた労働組合側は、11 月 1 日より再びストライキを開始した。FUP、FNP 二つの労働組合の 8 万人
が参加し、40 以上の沖合プラットフォームや製油所の操業に影響が生じた。20 日に Petrobras からの賃
金引上げと投資額削減や資産売却について協議するという提案を受け入れるか否かの最終的な投票
が行なわれ、ストライキが終了、22 日からは通常の操業が行われている。Petrobras によると、ストライキ
により同社の生産量は当初 273,000 b/d 減少していたが、11 月 9 日以降は 100,000 b/d の減少となっ
ていた。20日間合計では、石油生産量は229万bbl(120,526 b/d)、天然ガス生産量は48.4 MMm3(2.55
MMm3/d)減少した。1995 年の 32 日間続いたストライキ以来の過去 20 年間で最悪のストライキとなった
が、通年では同社の 2015 年の生産目標 212.5 万 b/d を達成できる見通しであるという。
ストライキが終了し、操業が通常に戻った直後の 11 月末、Ferreira 氏が Petrobras の経営評議会議長
を辞任し、Vale の CEO に専念することが明らかにされた。同氏は 4 月に Petrobras の経営評議会議長
に就任したが、9 月 14 日から 11 月 30 日の間、個人的な理由により同職を休職していた。9 月 14 日以
降、同氏に代わり暫定的に議長を務めてきた Luiz Nelson Guedes de Carvalho 氏が、新議長が任命され
るまでの間、引き続き同職を務める。Petrobras は同氏の辞任の理由について明らかにしていないが、
Ferreira 氏と BendineCEO との間の緊張した関係や経営評議会での意見の対立(8 月に Petrobras
Distribuidora の株式売却に Ferreira 氏は反対)が原因ではないかとの見方がある。
なお、ストライキの最中の 11 月 12 日、Petrobras は 2015 年 7~9 月期の決算を発表した。売上高は
前年同期比7%減の 822 億3,900 万レアルとなった。レアル安や国内景気の低迷による需要の減少、石
油製品の輸出減が影響したと考えられる。最終損益は 37 億5,900 万レアル(10.1 億ドル)の赤字となった
が、前年同期の 53 億 3,900 万レアル(21.5 億ドル)の赤字よりは、赤字幅が減少した。Petrobras は売上
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高の大半を国内で稼いでいるが、同社の債務の大部分がドル建てであるため、レアルが下落すると借
り入れコストが上昇してしまう。その結果、9 月末時点の負債総額は 5,065 億レアル(1,360.9 億ドル)と、
2014 年末から 44%増加した。同社は、コスト削減、業務効率改善に努め、再建に向けた改革を継続す
るとした。
このような状況を受けて、2 月の Moody’s に続き、9 月には Standard & Poor’s が、Petrobras の信用
格付けをジャンク級に引き下げた。
また、上記の通り、資産売却による資金調達が進まない中、Petrobras は 9 月に Banco do Brasil から
10.3 億ドル(40.8 億レアル)の借入枠を確保、11 月には英国輸出ファイナンス Ukef から 5 億ドルの信用
供与枠を確保している。
表 3.Petrobras をめぐる主な動向(2015 年 1~11 月)
月日
1 月 27 日
2月4日
2月6日
2 月 24 日
3月
3 月 27 日
4月9日
4 月 22 日
6 月 26 日
7 月 24 日
8月
9 月 10 日
9 月 14 日
9 月 30 日
10 月 5 日
10 月 23 日
11 月 1 日
11 月 30 日
出来事
外部監査もなく、連邦警察による捜査で判明した汚職による損失計上もない 2014 年第 3
四半期の財務結果を発表
Foster CEO が、資産の過剰評価の可能性を指摘し、辞表を提出。Barbassa CFO と 4 名
の Executive Director もこれに倣い、辞任
経営評議会で Bendine 新 CEO らを選任
Moody‘s は、汚職問題の影響と約 1,350 億ドルの債務を抱える Petrobras の返済能力に
対する懸念から、同社優先債の格付けを Baa3 から Ba2(投資不適格級)に 2 段階落とした
連邦検察庁が贈収賄に関与した政治家 54 人のリストを連邦最高裁判所に提出、捜査を
行うことについて許可を求め、最高裁がこれを承認
経営評議会議長に Vale の Murilo Ferreira CEO を指名
ルセフ大統領は、Petrobras を舞台とした汚職事件が、事件に関与した幹部らの追放によ
って終結したとの見解を表明
監査済みの 2014 年決算を発表
経営評議会が新 5 カ年計画「Business and Management Plan2015-19」を承認
労働組合が 24 時間ストライキを実施
経営評議会は子会社 Petrobras Distribuidora の株式の 25%を売却することを承認
Standard & Poor’s は、原油価格が下落したことを受け、Petrobras の信用格付けを BBBから BB(ジャンク級)に引き下げた
Ferreira 経営評議会議長が 11 月 30 日まで休職
ガソリンとディーゼルの卸売価格をそれぞれ 6%、4%値上げ
2015 年の投資総額を 6 月に発表の 5 カ年計画からさらに削減すると発表
傘下の Gaspetro の株式の 49%を売却する契約を三井物産と締結
労働組合が大規模なストライキを実施
Ferreira 議長が辞職
(各種資料より作成)
-7Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
3.探鉱・開発・生産状況
ANP によると、ブラジルの石油生産量は、2014 年12 月に 249.7 万b/d と過去最高に達した後、減退、
横ばいの状態となっていたが、2015 年 7 月から増加に転じ、8 月には 254.7 万 b/d と初めて 250 万 b/d
を上回る水準となった。しかし、9 月の生産量は、Roncador 油田 P-52 プラットフォームがメインテナンス
のため生産を行なっていなかったことから、239.5 万 b/d に減退した。10 月はメインテナンスが終了した
ことで、石油生産量は 9 月から 0.5%増加し 240.6 万 b/d となったが、11 月はストライキの影響で生産減
が予想される。
(ANP ホームページを基に作成)
プレソルトの生産量は、6 月に初めて 90 万 boe/d を超え 926,100boe/d、7 月に 100 万 boe/d を超え
100.4 万 boe/d、8 月には 106. 4 万 boe/d と増加を続けた。9 月は 100.6 万 boe/d に減少したが、7 月
31 日に生産を開始した Iracema Norte 油田の FPSO、Cidade de Itaguai(生産能力:石油 15 万 b/d、ガス
8MMm3/d)の生産増が図られていることもあって、10 月は、52 坑より石油 809,787 b/d 、ガス 31.2
MMm3/d の合計 105.7 万 boe/d を生産した。
特に、Lula 油田は、石油 331,300 b/d、ガス 15.7MMm3/d を生産し、ブラジル最大の油田となってい
る。プレソルトの石油生産量がブラジルの石油生産量の 1/3 以上を占めるようになったことで、ブラジル
で生産される原油に占める中質原油(API 比重 22~31 度)の割合が 60%を上回るようになり、API 比重
の平均は 25 度となった。
-8Global Disclaimer(免責事項)
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(ANP ホームページを基に作成)
プレソルトの新規油田開発も進められている。
先述した通り、Petrobras は、Rio de Janeiro 州沖合 240km、水深 2200m の海域に位置する BM-S-11
鉱区 Iracema North 油田の FPSO Cidade de Itaguai の生産を 7 月 31 日に開始した。2017 年には 15 万
b/d のピーク生産に達する見通しである。
Petrobras は、また、2015 年中に Santos 盆地の Libra 油田で 2 坑を掘削する計画である。Libra 油田
開発に関しては、用いる FPSO の生産能力を石油 22.5 万 b/d、ガス 18MMm3/dまで引き上げることを
検討していると伝えられている。なお、PPSA(Pre-Sal Petroleo S.A)のオズワルド・ペドローザ総裁による
と、Libra 油田の開発は 55 ドル/bbl で商業的な採算が取れるという。現在のように原油価格が 50 ドル
/bbl 前後で推移していれば Libra 油田の開発は採算が取れないが、本格的な開発、操業開始は 2019
年からとなるため、技術向上や操業コスト削減、原油価格の回復などの要因で操業開始ができると予想
されている4。
Petrobras はさらに、ANP に Santos 盆地、BM-S-24 鉱区、Jupiter 油田の北東に位置する Sepia East
油田の商業開発を開始すると伝えた。同油田の可採埋蔵量は 1.3 億 bbl とされている。
プレソルトの油田開発については、Pre-Sal Petroleo SA がユニタイゼーションについて協議を行なっ
ている。すでに Petrobras が Tartaruga Mestica 油田と Lula-Sul de Lula 油田についてユニタイゼーショ
ンを行なっており、2015 年末までに Sapinhoa、Nautilus、Carapeba についても合意が成立する予定とさ
れている。これらのユニタイゼーションが成立すれば、ブラジルの確認埋蔵量が18~23億bbl増加する
可能性があるとされている5。
4
ブラジル日本商工会議所 2015/10/21
5
Platt’s Oilgram News 2015/9/2
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
プレソルトの天然ガス生産は、2011 年に稼動を開始した Rota 1 パイプライン(全長 225km、送ガス能
力 350MMcf/d)で Mexilhão ガス田を経由して Caraguatatuba のガス処理プラントに送られている。
Petrobras は Route 2 パイプライン(Lula Nordeste 油田~Macaé の Tecab 処理プラント間全長 403km、
送ガス能力 16MMm3/d) を 2016 年第 1 四半期に、Route 3 パイプライン(Lula Norte 油田~Rio de
Janiero の Comperj 製油所間全長 232km、送ガス能力 18MMm3/d)を 2018 年第 2 四半期に稼動する計
画だ。ただし、Comperj 製油所は完成の遅延が予想され、Route3 パイプライン敷設も遅延する可能性が
ある6。
一方で、Petrobrasが原油価格下落と汚職問題からリグ数を削減しており、リグ数は 1年前の 57基から
48 基に減少しているという7。また、予算削減の一環として、Odebrecht との長期リグチャーター契約や、
Ultrapetrol との platform supply vessels 3 隻のチャーター契約、World Wide Supply との platform supply
vessels 2 隻の契約をキャンセルしたという。原油価格下落や汚職問題により、5 カ年計画の投資額を削
減するにあたって、探鉱・開発部門の投資削減幅は他分野に比べ少なくするとされていたが、それでも、
影響が生じ始めている。
また、Petrobras の汚職事件に関与したことで同社とのビジネスを禁じられているエンジニアリング会
社、建設会社等は 2015 年 12 月時点で 32 社あるという。そのために、探鉱・開発が進まないことや入札
が実施できないことを懸念して、政府が、汚職関与企業が Petrobras との事業を再開できるよう方策を検
討しているという。地元紙 Folha de Sao Paulo が、財務省からの情報として伝えたところによると、罰金支
払いに合意することで、再び Petrobras と事業を行なえるようにすることが検討されている。
もちろん、原油価格下落に苦しんでいるのは、Petrobras だけではない。Andes Energia は、10 月に
アルゼンチンやコロンビアでの活動に集中したいと、2013 年の第 11 次ライセンスラウンドで取得した
Potiguar、Sergipe - Alagoas、Recôncavo 盆地の鉱区から撤退することを決定した。Statoil は油価下落を
受けてのコスト削減で Campos 盆地の BM-C-7 鉱区 Peregrino 油田の第 2 生産フェーズを遅延させる
可能性があるとしている。Rosneft が PetroRio より Solimoes 盆地の 16 鉱区の権益を 5500 万ドルで取得
したり、三井物産が BG Group より Barreirinhas 盆地沖合 4 鉱区の権益の 10%を取得したり、とブラジル
に参入する動きもあるものの、ブラジルでは 2015 年上半期に 30,400 人(うち、22,600 人は探鉱・生産部
門)の石油・ガス産業の従業員が一時解雇され、石油・ガス産業の従業員数は前年同期比 19.4%減少し
たとされている8。
ANP も、原油価格下落により石油会社の投資額が減少したことから、ブラジルの石油生産見通しを、
6
7
8
Business MonitorInternational2015/10/29
Business News Americas2015/9/7
Business News Americas2015/10/19
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以前発表した 2022 年に 450 万 b/d から、3 年先送りし 2025 年に 450 万 b/d とするとした。
終わりに
2015 年 4 月、Rousseff 大統領は、Petrobras を舞台とした汚職事件が、関与した幹部らの追放によっ
て終結したとの見解を表明した。しかし、その後も捜査は続き、11 月末にはついにデウシジオ上院議員
が、現行憲法の施行以来初めて、現職議員として逮捕されるという事態に発展した。デウシジオ議員は
上院で経済問題委員会の委員長を務めていたことから、議会運営にも影響を与えている。さらに、12 月
初めには、議会で Rousseff 大統領の弾劾手続きが開始されることが決まった。弾劾に関する審議は長
期化する可能性があり、ブラジルの政治がますます混迷することが見込まれる。
Petrobras は汚職問題や原油価格下落、レアル安等に苦しみながら、石油製品価格引き上げ、資産
売却、投資額削減を進め、立て直しを図ろうしている。しかし、石油製品価格引き上げはインフレやレア
ル安により相殺されてしまっている。資産売却は原油価格下落に加え、ストライキが実施されたことによ
り実現が難しくなっている。投資額削減は将来の生産減少につながると考えられる。Petrobras に何かあ
れば、ブラジル政府が救いの手を差し伸べると言われた時期もあったが、現在のブラジル政府にその
余裕があるようには思えない。原油価格下落と汚職問題により、議会で懸案となっているプレソルト開発
法やローカルコンテンツに関する議論が活発化し、2016 年は石油産業改革の年になるのではないかと
期待する向きもあったが、政治の混乱の中でその行方は図りがたい。Petrobras の苦境や第 13 次ライセ
ンスラウンドの不調とあわせて、ブラジルの探鉱停滞を招く可能性があり、引き続き、動向を注視してい
く必要があろう。
以 上
- 11 Global Disclaimer(免責事項)
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