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投資額 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

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投資額 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
更新日:2015/7/21
調査部:舩木弥和子
岐路に立つブラジルの探鉱・開発
~Petrobras、投資額、生産目標を大幅に削減~
(Platt’s Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas 他)
●6 月 26 日、Petrobras 役員会が新 5 カ年計画「Business and Management Plan2015-19」を承認した。
汚職問題、油価下落、レアル安により同社をめぐる財務状況が悪化したことから、投資額は前 5 カ年計
画の 2,206 億ドルから 41%減の 1,303 億ドルに、2020 年の生産目標は前 5 ヵ年計画の 420 万 b/d か
ら 33%減の 280 万 b/d に、いずれも大幅に削減された。
●ブラジル上流、特にプレソルトの開発を優先するとして、探鉱・生産部門への投資額を全体の 83%
にあたる 1,086 億ドルとし、このうち 54%、586 億ドルをプレソルトの油田の探鉱・開発に向けるとしてい
る。一方、下流やその他の部門は、投資額を抑え、操業の維持、メインテナンスを中心に行うとしてい
る。
●2015~16 年に 137 億ドルの資産売却をするとしていたが、今回の 5 カ年計画では、これを 151 億ド
ルに引き上げるとした。そして、2017~18 年にも追加で 426 億ドルの資産売却、事業の解体、再編を
実施するとしている。
●これまでの Petrobras の生産目標は、同社の能力を上回るものであるとの指摘がなされていたが、
Bendine 新 CEO の下で策定された今回の 5 カ年計画に対しては実現可能な生産計画が立てられたと
見る向きが多い。一方、資産売却については、油価低迷化で、目標を達成するのは難しいのではない
かとの見方がなされている。
2015 年6 月26 日、Petrobras 役員会が新5 カ年計画「Business and Management Plan(BMP)2015-19」
(以下、「新 5 カ年計画」という)を承認し、29 日にこれを発表した。汚職問題、油価低迷、レアル安により
財務状況が悪化したことを受け、投資額を抑え、利益の上がるプロジェクトに集中、資産売却を進めるこ
とで、負債を減らすことを目指す内容となっている。
1.投資額
Petrobras は、2015~2019 年の 5 年間に 1,303 億ドルを投じる計画である。2014 年に策定した前 5 カ
年計画「BMP2014-2018」(以下、「前 5 カ年計画」という)では、2014~18 年の 5 年間に 2,206 億ドルを投
じるとしていたので、5 年間の投資額は 40.9%削減されたことになる。
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Petrobras5 ヵ年計画投資額推移
出所:Petrobras ホームページを基に作成
Petrobras は、2014 年 12 月に、2015 年の投資額を前 5 カ年計画から 30%削減し 310~330 億ドルと
する方針を表明していた。また、2015 年 4 月中旬には、同社の関係者が、新 5 カ年計画の投資額は前
5 カ年計画に比べ約 2 割削減される見通しと語ったとされていた。これらの発言に比べても、削減額は
大きなものとなった。
投資額は削減されたものの、同社はブラジルでの探鉱・開発は優先するとし、探鉱・生産部門へは
1,086 億ドルを投じるとしている。前 5 カ年計画では 1,539 億ドルが探鉱・生産部門に充てられる計画で
あったので、これに比べると同部門への投資額は 29%削減されたこととなる。しかし、総投資額に占め
る探鉱・生産部門の割合は前 5 カ年計画の 70%から 83%に引き上げられた。
BMP2014-2018(2,206 億ドル)投資額内訳
BMP2015-2019(1,303 億ドル)投資額内訳
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan、2014-2018 Business and Management Plan
を基に作成
-2Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ブラジル上流の中でも、特にプレソルトの油田開発は優先するとされており、探鉱・生産部門への投
資額 1,086 億ドルのうち、644 億ドルが新規プロジェクトに充てられ、このうちの 91%、586 億ドルがプレ
ソルトの油田開発に向けられるという。プレソルトの油田開発への投資額は、5 年間の総投資額の 45%
にあたることになる。
また、探鉱・生産部門への投資額のうち 82%にあたる 894 億ドルを生産・開発に、10%にあたる 113
億ドルを探鉱に、5%にあたる 49 億ドルを国外事業にあてるとしている。前 5 カ年計画では、国外への
投資額を 97 億ドル、そのうちの 92%にあたる 89 億ドルを探鉱・生産に投じるとしていたので、国外の探
鉱・生産投資額は 45%削減されることになる。
探鉱・生産部門への投資額(1086 億ドル)の内訳
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan を基に作成
一方、下流やその他の部門は、操業を維持すること、メインテナンスを中心に行うとしている。
下流部門への投資額は総投資額の 10%にあたる 128 億ドルとされている。前 5 カ年計画では総投資
額の 18%、387 億ドルが下流部門に投じられる計画となっており、投資額は 67%減額されたことになる。
Maranhão 州に計画されていた Premium I 製油所と Ceará 州に計画されていた PremiumII 製油所の建設
が中止されたことや、下流部門が同社をめぐる汚職の中心となっていたことが、下流部門投資額の大幅
な削減の理由と考えられる。下流部門への投資額
の 69%がメインテナンス・インフラストラクチャー、
11%が Refinaria do Nordeste(Rnest、Abreu e Lima)
製油所建設に充てられる。同製油所には、精製能
力 115,000 b/d の精製設備 2 基が建設される計画
だったが、一方は未完成、もう一方は機材の一部が
未納入のため、精製能力の 64%で稼動していると
いう。
下流部門への投資額(128 億ドル)の内訳
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan を基に作成
-3-
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2.生産計画
2020 年の Petrobras の国内石油生産量の目標は、前5 カ年計画の 420 万 b/d から 33%削減され 280
万b/d となった。2020 年のブラジル国外や天然ガス生産量を含めたPetrobras の総生産量の目標も 370
万 boe/d と、530 万 boe/d から 30%削減された。なお、2020 年にはプレソルトの生産量が Petrobras の
生産量の 50%以上を占める見通しとされている。
前 5 カ年計画で 2016 年、2017 年に生産開始が計画されていた生産ユニット 13 基のうち、約半分は
そのまま生産を開始する予定とされたものの、残りの半分は生産開始時期が 1~3 年先送りされている。
また、2018~2020 年に生産開始が計画されていた生産ユニット 16 基のうち、そのまま生産を開始する
予定とされているものは 3 基、1 年延期されるものが 3 基となっており、残り 10 基は 2020 年までに生産
が開始されるプロジェクトのリストから外された。2021 年以降に生産開始が先送り、あるいは、生産計画
が中止されるようだ。このうち、Carcara や Jupiter は、後述するとおり、資産売却の対象とすることを
Petrobras が計画していると報道された。2016 年から 2020 年の間に生産を開始する生産ユニットの数は、
前 5 カ年計画の 29 基から 20 基に削減された。プレソルトとポストソルトの別で見てみると、プレソルトの
油田は Lula(Tupi)、Buzios(Franco)、Atapu/Berbigao/Sururu(Iara)、Libra、Sepia(NE de Tupi)、Lapa
(Carioca)と多くあるが、ポストソルトの油田は Tartaruga Verde/Tartaruga Mestica と Marlim のわずか 2 生
産ユニットとなっている。ブラジル北東部沖合深海での探鉱ブームに火をつけた Sergipe-Alagoas Basin
の深海油田(Farfan、Moita Bonita、Poco Verde)も、「前 5 カ年計画」では、2018 年までに生産能力 10
万 b/d の生産ユニットが 1 基、2020 年までにさらに 1 基が生産を開始する予定とされていたが、いずれ
も新 5 カ年計画の生産計画からは姿を消している。
Petrobras 国内石油生産計画(左)と生産計画(右)
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Petrobras の生産ユニットの生産開始計画
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan
「BMP2014-2018」と「BMP2015-2019」の生産ユニット毎の生産開始時期の比較
「BMP2014-18」で計画されていた生産ユニットは、前に・がついているもの。
□→は延期、―は 2021 年以降に延期もしくは中止。
出所:Petrobras 2014-2018 Business and Management Plan に加筆
-5Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
なお、ブラジルで 30 以上の石油・ガスプロジェクトに携わる Galp Energia の Manuel Ferreira de
Oliveira CEO が、2015 年 3 月に、汚職捜査の拡大により Petrobras は同社と開発中のプレソルトの Lula
Sul、Lula Norte、Lula Extrerno Sul、Lula Oeste の 4 油田の開発を少なくとも 1 年遅らせるであろうとのコ
メントを発表していた。前 5 カ年計画では、Lula Sul 油田の生産設備 P-66 及び Lula Norte 油田の生産
設備P-67 は 2016 年に、Lula Extremo Sul 油田の生産設備P-68 及び Lula Oeste 油田の生産設備P-69
は 2017 年に生産開始が予定されていた。新 5 カ年計画では、Lula Sul 油田及び Lula Extremo Sul 油田
が 2017 年、Lula Norte 油田が 2018 年、Lula Oeste 油田が 2020 年に生産を開始する予定となっており、
Lula Extremo Sul 油田以外は 1~3 年、生産開始が先送りされることとなっている。
ブラジル主要鉱区図
出所:各種資料より作成
3.資産売却
Petrobras は、2015~2016 年に 151 億ドルの資産売却を行う計画で、2017~2018 年にも追加で 426
億ドルの資産売却、事業の解体、再編を実施するとしている。
同社は、2014 年 2 月に、2018 年までに 50 億~100 億ドルの資産売却を計画していると発表した。そ
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の後、2015 年 3 月 2 日には、2015~16 年の 2 年間に 137 億ドル相当の資産を売却すると発表してい
た。そして、低油価の環境下でも資産を投売りすることはせず、油価が回復するのを待って、2015 年に
30 億ドル、2016 年に100億ドル相当の資産を売却する計画であるとしていた。新5カ年計画では、2015
~2016 年に 151 億ドル、2017~2018 年に 426 億ドルの資産を売却するとされており、資産売却の規模
が次第に拡大されていることが見て取れる。
売却される資産の内訳は、国内外の探鉱・生産部門 30%、流通部門 30%、ガス・エネルギー部門
40%を計画しているとされている。この内訳については、2015 年 3 月から変更がなかった。
当初、ポストソルトの鉱区権益、発電所、ブラジル国外の下流資産等ノン・コア資産を売却するのでは
ないかとの見方がなされていた。Petrobras も、資産売却の一環としてプレソルトの鉱区権益を売却する
のではないかとの地元紙の報道を否定していた。
しかし、4 月末には、資本支出を削減すると共に、早期に生産を開始するため、既存のプレソルトの
プロジェクトのジョイントベンチャー化を検討しているとの報道がなされた。さらに、5 月には、Santos 及
び Campos basin のプレソルト 5 鉱区(Pão de Açucar、Jupiter、Carcará、Sagitário 他)を含む沖合 6 鉱区
の権益を売却する計画であるとの報道がなされた。プレソルト 5 鉱区の権益売却額は 40 億ドル以上に
上るとの見方もある。
下表の通り、資産売却に関しては、Petrobras や ANP から発表が行われたり、報道機関から情報が伝
えられたりしているが、低油価の状況が続いており、2 年間で 151 億ドル、4 年間で 577 億ドルもの資産
を売却するには、難しい時期であるとの見方がなされている。
また、2015 年 10 月 7 日に、ANP(ブラジル国家石油庁)が第 13 次ライセンスラウンドの入札を実施す
る予定で、10 の堆積盆地の 266 鉱区が公開されることになっている。ANP の Magda Chambriard 長官
によると、7 月中ごろの時点でデータパッケージを購入した企業は 17 社であるという。Chambriard 長官
は企業名を明らかにしなかったが、これまでブラジルでの活動が少なかった BHP Billiton、Premier、
Anadarko やブラジル企業 Petra Energia、PetroRio 等が興味を示していると伝えられている。この中には、
メジャー等これまでブラジルで探鉱・開発を行ってきた石油会社の名前が含まれていない。このライセ
ンスラウンドに対してこれらの企業の関心が薄いのには、油価低迷やPetrobrasの汚職問題、メキシコ等
他の国での入札への関心の高まり等の理由があるとされているが、Petrobras が資産売却を行う可能性
があることが、影響を与えているのではないかと考えられる。そして、石油会社が、第 13 次ライセンスラ
ウンドで公開される新規鉱区よりも、Petrobras の資産売却の対象とされるプレソルトをはじめとする既発
見鉱区に関心を寄せることで、ブラジルの探鉱が停滞する可能性も懸念される。
-7Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Petrobras 資産売却の状況(2015 年)
2015 年 3 月
2015 年 4 月
2015 年 4 月
2015 年 4 月
2015 年 5 月
2015 年 6 月
2015 年 7 月
2015 年 7 月
2015 年 7 月
南西石油の沖縄県の製油所閉鎖を決定。石油製品の受け入れ基地を建設し、これを
売却する計画。
アルゼンチン資産(探鉱・開発権益、輸送インフラストラクチャー)をアルゼンチン企業
CGC に 1 億 100 万ドルで売却すると発表。探鉱・開発権益は Austral basin の Santa
Cruz I、Santa Cruz I Oeste、Glencross、Estancia Chiripá、Santa Cruz II 鉱区(総面積
11,500km2)で、15,000boe/d を生産中。CGC は Santa Cruz I (29%)及び Santa Cruz I
Oeste (50%)鉱区の権益を保有。
石油化学企業 Braskem の株式 36.1%を約 9 億ドルで売却する計画とブラジル紙が報
道。売却先等詳細は不明。
Potiguar basin の BM-POT-16 鉱区の権益の 30%を BP に、Pelotas basin の BM-P-2
鉱区の権益の 50%を Total に売却することを ANP が承認。
Santos および Campos Basin のプレソルト 5 鉱区(Pão de Açucar、Jupiter、Carcará、
Sagitário 他)を含む沖合 6 鉱区の権益を売却する計画との報道。
海運子会社 TransPetro の保有するタンカー23 隻を売却する方針と複数のブラジル地
元紙が報道。23 隻の売却額は 2 億 7000 万ドル。スエズマックス 2 隻のほか、LPG 船な
ども含まれる。TransPetro は 23 隻を売却後、再用船して運航する模様。
Campos Basin、Bijupirá/Salema 油田の権益 20%を 2,500 万ドルで PetroRio に売却。生
産量は石油 22,000 b/d、ガス 325,000m3/d。
子会社 Petrobras Distribuidora の売却を検討している。Petrobras Distribuidora は 7000
カ所以上の SS を保有、ブラジル国内のシェアは 40%。
YPF とアルゼンチン資産売却について協議中。Petrobras はアルゼンチンで現在 6.2
万 boe/d を生産しており、Neuquén、San Jorge Basin 等の資産売却を検討している。下
流資産としては Bahía Blanca 製油所(精製能力 30,500b/d、シェア 100%)と Refinor 製油
所(同 20,400b/d、29%)、SS260 ヵ所を保有。石油化学部門でも市場シェアは 80%強。発
電部門では Genelba ガス火力発電所、Pichi Picun Leufu 水力発電所のシェアを保有。
出所:各種資料より作成
4.国内石油製品価格、油価及び為替レートの見通し
Petrobras は、「新 5 カ年計画」で、ブラジル国内の石油製品価格を輸入価格と同等の価格とするとし
ている。インフレ抑制を目的に、政府が国内製品価格を低く抑えたため生じた逆ザヤを同社が負担し、
その結果、経営状況が悪化したことから、このような状況を改善しようとの考えによるものと思われる。
また、Petrobras は、2014 年後半からの油価下落、レアル安を反映し、原油価格、為替レートの見通し
を以下の通り修正している。
-8Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
原油価格及び為替レートの見通し
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan
5.評価
これまでの Petrobras の生産計画は、同社の生産能力を上回るもので、目標達成は難しいとの指摘が
なされてきた。しかし、今回は、実現可能性が高い生産目標が設定されたとの見方がなされている。
ANP によると、Petrobras の 2015 年 1~5 月の国内石油生産量は 223.5 万 b/d で、新 5 カ年計画で
の 2015 年の生産目標値 210 万 b/d を大きく上回っている。
2015年中に生産開始が予定されている2生産ユニットのうち、Campos Basin、Papa Terra油田のP-61
プラットフォームは 3 月に生産が開始された。生産能力は石油が 14 万 b/d、ガスが 100 万 m3/d で 13
の生産井がつなぎこまれる計画となっており、生産増が見込まれる。
もう 1 基の生産ユニット、Santos basin、BM-S-11 block、Iracema Norte 油田の Cidade de Itaguaí(生産
能力 15 万 b/d、8MMm3/d)も、すでに Rio de Janeiro 沖合 240km、水深 2240mの海域に停泊しており、
第 3 四半期中に生産を開始できる見通しとなっている。
2015 年後半に大きな事故等がなければ、メインテナンス等で多少生産量が減退しても、2015 年につ
いては生産目標を上回ることが可能なのではないだろうか。
Petrobras は、毎年、5 カ年計画を更新している。2005 年から 2012 年まで CEO を務めた Gabrielli 氏
の下では、2006 年以降次々と発見されるプレソルトの油田を積極的に開発し、それとともにブラジル経
済も発展させようとする Lula 政権の意向に後押しされ、積極的な生産目標が設定されていた。2012 年
に Gabrielli 氏の後を引き継いだ Foster 氏は、Gabrielli 氏が立てた能力以上の生産目標を達成できない
ことの責任を問われ、生産目標の引き下げを行った。しかし、Petrobras がプレソルト新規鉱区のオペレ
ーターを務めなくてはならない等負担が重過ぎることや、ローカルコンテンツ等の問題に加え、汚職や
油価下落から、計画通りに生産量を増やすことが難しくなってしまった。このような状況を受けて、2015
年 2 月に CEO に就任した Bendine 氏は、2020 年の国内石油生産目標を 280 万 b/d と大幅に削減して
おり、生産目標達成の可能性は格段に高まったと考えられる。
-9Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Petrobras の 2020 年における国内石油生産目標量
出所:Petrobras 2015-2019 Business and Management Plan
一方、現在のように油価が低迷している中で計画されている資産売却を実行するのは、非常に難し
いと考えられる。
同社は「BMP2013-2017」で 99 億ドルの資産売却を計画し、2013 年中に金額が判明している分だけ
で 70 億ドル超の資産売却を決定している。2015 年になってからの資産売却額(判明分)は計画中のもの
を含めても 10 億ドル超である。2013 年の資産売却で、売却額が大きかったのは主に上流権益であり、
今回もプレソルトを含む上流の権益をどの程度売却できるかが、鍵を握ることになると思われる。ただし、
当時と比べ、油価が下落しているために、売却額が抑えられることが予想される。
なお、2010 年に成立したプレソルト開発法には、プレソルトの新規鉱区については Petrobras が権益
の少なくとも 30%以上を保有し、オペレーターとならなくてはならないと規定されている。3 月に、野党、
ブラジル社会民主党(PSDB)の José Serra 氏が、プレソルトの新規鉱区でも民間企業が自由にオペレー
ターを務めることができるようにする法案を議会に提出し、現在、審議が行われている。9 月にはこの法
案が議会を通過するのではないかとの見方があるが、Rouseff 大統領はこの法案に反対しているとされ
ており、たとえ議会を通過しても、法律として成立するかいなかは不明である。しかし、Rouseff 大統領が
選出した Petrobras の役員や、同社のアドバイザー等からもプレソルト開発法の変更を求める声が上が
っており、同社内や大統領周辺にもプレソルト開発法は変更の必要性があることについて共通の認識
が広がってきていることがうかがわれる。そして、Shell 等のメジャーは、規則が変わればプレソルトの油
田開発でオペレーターを務めたいとしている。
また、政府がブラジル国内の産業を発展させたいとローカルコンテンツ規制を設けていることで、
Petrobras をはじめとするブラジルで活動する石油会社はコストの高い資機材を用いなくてはならなくな
っている。そのため、ローカルコンテンツ規制についても、石油会社等から変更の要請がなされるよう
- 10 Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
になっている。
Petrobras は新5 カ年計画で、投資額の削減や生産目標の引き下げとともに、大規模な資産売却計画
を発表した。この資産売却とともに、プレソルト開発法の改正やローカルコンテンツ規制の変更が行わ
れれば、外資参入が進み、Petrobras の生産量は従来考えられていたほどには増加しないものの、ブラ
ジル全体としては生産量が増加することも考えられ、今後の動向が注目される。
以 上
- 11 Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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