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CM1カードの準備

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CM1カードの準備
第1章 研究報告書
0
総合的な学習の時間
持続可能な社会に向けて環境保全に取り組む児童の育成
千葉大学教育学部
市川市立百合台小学校
Ⅰ
太田
美穂子
研究主題について
平成 16 年に施行された「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」
(環境保全
活動・環境教育推進法)を推進していくにあたり,環境省・文部科学省では「国際的な視点での取組」と
いう観点から「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」を踏まえた長期的な推進計画等を作ったり,国
際機関と協力したりすることを指摘している。そこでは,優先的に取り組むべき課題として「環境保全を
中心とした課題を入り口として,環境,経済,社会の統合的な発展について取り組みつつ,開発途上国を
含む世界規模の持続可能な開発につながる諸課題を視野に入れた取組を進める」とある。
「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」はヨハネスブルグサミットや国連総会において日本の政府
のリーダーシップにより提案され,採択された。文部科学省では環境省・外務省と共に実施計画を作成し
(平成 18 年 3 月),普及のためにキャッチコピーを募集するなどしてこれを推進しているが,教育現場で
の認知は遅れているように思われる。
私自身,総合的な学習の時間においては,これまでも身近な環境問題を取り上げて環境教育を行ってき
た。しかし,児童は環境問題について学習するとその時はわかった気にはなるが,それが実際の行動に結
びついていないということが見られた。そこで,「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」が推進して
いるように,環境問題を児童にとって身近なものと世界的な視野のものとで考えさせることにより,児童
の環境保全に取り組むことへの動機付けを強くもたせ,それを行動につなげることはできないかと考えた。
本研究では「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」を教育現場で取り組んでいく上で必要なことは
何かを明らかにし,それを推進していく総合的な学習の時間の単元を作成する。そしてその学習を通して,
児童の「持続可能な社会」に向けて自分たちができることから取り組んでいく「参画」の態度を育てるこ
とができると考え,本主題を設定した。
Ⅱ
研究目標
「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」を推進するための総合的な学習の時間の単元を開発し,そ
れが「持続可能な社会」に向けて参画する態度の育成に有効であることを明らかにする。
Ⅲ
研究の実際
1
研究仮説
児童にとって身近な環境問題と開発途上国の抱える問題を扱い,限られた資源を守るために活動してい
る人々がいること,また現在の生活を見直していかなければいけないことに気付かせれば,持続可能な社
会を児童なりにとらえ,それに向けて参画する態度が育つであろう。
2
研究方法・内容
(1)主題に関する基礎的理論研究
(2)検証授業の立案と実践
ア
対象
市川市立百合台小学校第6学年1組2組3組(79 名)
イ 期間 平成 18 年9月4日(月)∼平成 18 年 11 月9日(木)
ウ
単元名「わたしたちの水」
(3)検証授業の分析と考察
1
3 研究の具体的内容
(1) 主題に関する基礎的理論研究
ア 持続可能な開発のための教育の経緯
「 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 教 育 (Education for
Sustainable Development,以下ESDと略す)の 10 年」
は,2002 年に南アフリカ共和国で開催されたヨハネスブ
ルグ・サミットで当時の小泉首相が提案し,その後国連総
会において採択された。そして,2005 年からの 10 年間を
「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」とし,その
実施を促進することになった。
環境教育をはじめとする地球的課題の解決を意図する
図1 ESD のエッセンス
教育活動には,他に開発教育,国際理解教育,平和教育,人
権教育などがある。当初は個別に行われていたこれらの教育活動は,80 年代に入り,課題の広がりや
地球問題の顕在化,グローバリゼーションの進展などと共に,相互に関係していることが認識される
こととなり,その重なり部分は「持続可能な未来のための教育」
「持続可能な社会のための教育」
「持
続可能な開発のための教育」などと呼ばれるようになった(図1 ESD-J のホームページより)。
テサロニキ宣言(1997 年 UNESCO とギリシャ政府によって開催された国際会議で採択)では「持続
可能性は環境のみならず,開発や貧困,人口,人権,平和などを包含した概念である」ことや「環境
教育を環境と持続可能性に関する教育と呼んでもかまわない」ということが採択された。このことは,
従来の狭義の環境教育から広義の環境教育への質的変換が国際的に宣言されたことを意味している。
イ ESDが求めるもの
「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」関係省庁連絡会議が平成 18 年 3 月 30 日に示した「わ
が国における国連持続可能な開発のための教育の 10 年実施計画」
(以下実施計画と略す)では「世界
規模で持続可能な開発を図る上で不可欠な開発途上国の直面する諸問題に対する理解の強化・開発途
上国の諸主体との連携及び協力の強化が求められる」としている。また,内容として
・「関心の喚起→理解の深化→参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促
すという一連の流れの中に位置づける。
・参加体験型の学習方法や合意形成の手法を活用する。
・自ら調べたり,考えをまとめ発表したりする。
・大学や教育委員会その他の教育関係組織,社会福祉協議会や地域のNPO,企業等が連携・協働す
る。
等を掲げている。そこで,これらを単元の中に組み込んでいく。
(2) 検証授業の立案と実践
表1 持続可能な社会実現の必須要素
実施計画に基づき「持続可能な社会実現の必須要素」を
考えてみた(表1)。「持続可能な社会」という言葉そのも
①環境への負荷を最小にする
のは小学生には難しいであろう。しかし,学習を通して児
②地球全体の生態系を維持する
童がこの概念を理解すれば,環境保全のために現在の生活
③一人一人の市民が自立・連携する
様式を変えていかなければならないことに気付き,自分た
④次世代のことを考えながら生活している
ちのできることから取り組んでいく「参画」の態度(環境 わが国における「国連持続可能な開発のための
教育の 10 年実施計画」に基づき立案
保全の行動を含む)が育つのではないかと考えた。そこで,
この概念に気付くことができるような学習活動を組み立て
た(次ページ単元計画参照)。
ア 単元の構想
水をテーマとし,ESDが求める開発途上国の問題としてきれいな飲み水を得ることができないア
フリカの現状,そして身近な問題として学区に流れる春木川の汚れが日本でワースト1になったこと
を取り上げる。学習前の調査から児童はアフリカや春木川の現状についての認識が低いということが
わかった。そこで,この事実を知らせ児童の関心を喚起させ,次に学区の川の汚れの原因やその川を
とりまく環境についてウェビングすることによって,身近な環境問題を自己の問題として認識させる。
2
日本の現状
その後,水と共生している街の映像を見せることにより,行動化への動機付けとする。
一方,遠く離れた開発途上国の水不足の問題を自己の問題として認識させるのは難しい。そこで,
日本(市川)では蛇口をひねればすぐに出てくる水が実は限りある資源であるということを知らせ,
JICAの調査員がアフリカの水不足の現状を撮影した映像を見せる。自分たちと同年代の子どもた
ちが片道 2 時間もかけて水くみする様子,衛生的でない水を飲むことにより起こる病気の様子,また
栄養失調の子どもたちの様子(干ばつも影響している)等の現状を見せることにより,途上国が抱え
る問題について理解し,関心をもつことができるようにする。
また,千葉県の「上総掘り」という井戸掘りの技術を発展途上国に伝えている団体や学区にある春
木川をきれいにするために活動している人々を学習の中で取り上げ,実際に話を聞く機会を設定する。
これは,ESDが求めるNPOとの連携でもあり,社会科において「世界の中の日本の役割」や「国
際協力」についての学習とも関連するであろう。
さらにESDが求める参加体験型学習も単元に入れる。アフリカの水事情について学習した後,K
J法を用いて「自分ならどんな援助をするか」という話し合いを行う。その後,児童の考えたことに
対してゲストティーチャーからコメントをもらい,児童の考えと現実との摺り合わせをすることで,
遠い国の問題を自己の問題としてとらえやすくする。また,「春木川をきれいにする会連絡協議会」
の方々の話を聞いた後,ランキングの手法によりグループで話し合いをすることを通して,環境問題
を多角的にとらえることができるようにする。
イ 持続可能な社会に向けて参画する態度の評価
「持続可能な社会に向けて参画する態度」として,児童が持続可能な社会実現の必須要素(表1参
照)に基づき自分の行動を振り返ったり,行動する前にどうすればよいか考えたりできるということ
をあげたい。それらについては,学習後の児童の感想や学習履歴図から評価していく。また,単元の
最終段階で各自が立てた行動目標を一週間実行し,各自に振り返らせる。その振り返りを通して児童
が考えたこと,また担任や保護者から見た児童の変容,他者への働きかけの様子などから参画する態
度について評価する。
ウ 単元のねらい
・持続可能な社会に向けて自分たちができることから取り組んでいかなければならないことに気付
き,自己の生き方について振り返ることができる。
(気付き,思考・判断)
・地球環境を良くするために貢献している人々の活動について話を聞いたり,地球環境について意
欲的に調べたりすることができる。
(問題追究への意欲)
・持続可能な社会のためにできることについて自分なりに計画を立て,実行することができる。
(実践力,自己の生き方)
エ 単元計画 「わたしたちの水」
(20時間扱い)
学習活動(時数)
持続可能な社会に気付かせ参画の態度を養う支援
○春木川が日本で一番汚い(H16 年度) ・ウェビングにより,一人一人の行動が現在の春木川の汚れに
つながり,それが生態系を崩していることに気付かせる。
ことを知らせ,汚れの原因と環境負荷
(必須要素②③)
について話し合う。(1)
○岐阜県郡上八幡の映像を見て,水と共 ・昔から,きれいな湧き水を汚さない努力を街ぐるみでしてい
生している街があることを知る。
(1) ることに気付かせる。(必須要素①③)
○地球上の水,私たちが使える水には限 ・地球上の水を 100 本のペットボトルに見立て考えさせること
で,限られた資源である水について気付かせる。
(必須要素①)
りがあることを知る。(1)
・同年代の子が水くみをする様子,泥水しかない場所,それに
○水が豊富ではない国の現状について
より起こる病気の映像を見せることで,途上国への援助につ
知り,どんな援助をすることができる
いて考えることができるようにする。
(必須要素③)
か考える。(2)
世界の現状
・KJ法を用いることにより,より多くの考えや疑問を出し合
い,クラス全体で話し合うことができるようにする。
3
水のために活動する団体
・水をあげたり井戸を掘ってあげたりするのではなく,地元に
○ケニアの人々に井戸の掘り方を教え
あるものを利用して井戸の掘り方を教えているという話をし
ているIWP(インターナショナルウ
てもらうことで,人々の自立を願うIWPの姿勢に気付かせ
ォータープロジェクト)の方の話を聞
る。(必須要素③④)
く。(2)
・昔は魚がたくさんいた→生活排水の影響でワースト1になっ
○春木川をきれいにする連絡協議会の
た→様々な取組により状況がよくなっている,という話をし
方の話を聞く。(2)
てもらうことで,人々の過去の取組(行為)が現在につなが
っていることに気付かせ,自分の行動を振り返ることができ
るようにする。(必須要素②④)
自分たちができること
○水を守るために自分たちができるこ
とについて考え,話し合う。(1)
○友達や地域の方に知らせたいことに
ついて調べ,発表する。
(8)
・
「ランキング」を通し友達の考えを聞き合うことで,自分が気
付かなかった視点について考えることができるようにする。
・学校での発表会,地域の大学の学園祭での発表,市のメディ
アパークでの展示と発信する機会を多く設定することで参画
の態度を養う。
・各自が立てた行動目標を生活の中で実行しそれを振り返るこ
○各自ができることについて目標を立
とを通し,環境保全への参画の態度を養う。
て,実行する。(1)
○各自の取組についての報告をし合い,
学習のまとめをする。(1)
(3) 検証授業の分析と考察
検証授業の結果について,持続可能な社会について考え 表2 春木川が汚れるとよくないと思う理由
(N=79 自由記述,複数回答)
ることができるようになっているか,参画の態度が育って
いるか分析考察した。
前
後
ア 春木川の汚れに対するとらえ方の比較
環境によくない
7
8
表2は「春木川が汚れるとなぜよくないのか」という問い
生物(魚・鳥)が住めない
34
46
に対する学習前と学習後の理由(自由記述)の比較である。
くさい,まわりの住民に迷惑
11
50
学習前には「汚れてもいい」と書いた児童が5人いたが,学
他の川・海に影響が出る
24
33
習後にはその記述はなくなった。そして,汚れるとよくない
自分たちに影響が出る
4
16
という記述の合計が学習前 86 から学習後 170 と約2倍に増え
市川のイメージが悪くなる
2
9
た。理由の内訳を見ると生物が住めない(必須要素②),まわ
自分たちの子孫のため
0
3
りの住民に迷惑(必須要素③),他の川・海に対する影響(必
4
5
須要素②)についての記述が増えている。また,学習前には その他
合計
86 170
なかった自分たちの子孫のため(必須要素④)という記述が
5
0
少数ではあるが学習後になって見られた。これらのことから, 別によごれてもいい
この学習を通して児童は持続可能な社会についてとらえ,考えることができるようになったと言える。
イ 環境保全に取り組む態度とその理由より
学習後に「これから節水,水を汚さない生活をしていきたいか」とアンケートをとったところ,79
名中,57 名が「ぜひ行っていきたい」,21 名が「やってもよい」と答えた。1名の児童が「やりたく
ない」と答えたが,その児童については学習後,保護者に記入してもらった児童の変容に「食後,食
器を片付けるときに食器についた汚れをどこに捨てるのか聞くようになった。」とあったので,本人
が意識していなくても環境保全の行動をとることができるようになったとも考えられる。
表3は,今後そのような行動をとっていきたいと考えた理由(自由記述)を持続可能な社会実現の
必須要素(表1参照)の観点から分類したものである。左側は児童の記述,右側はその記述を導いた
と考えられる学習内容である。理由欄には,持続可能な社会実現の必須要素①∼④,また持続可能な
社会に向けて参画する態度につながる記述が見られた。このことから学習を通して,児童が持続可能
な社会の概念に気付き,それが環境保全に取り組む意識を育てることにつながったと考える。また「水
の大切さを知ったから(3人)」「水不足の国のことを知ったから(3人)」「川で遊びたいから(4人)」
4
など,持続可能な社会実現の必須要素には直接つながらないが,この単元において学習した内容に
かかわる記述もあった。
表3 節水,水を汚さない生活を行っていきたい理由(自由記述)
理由欄の記述(人数)
N=79 自由記述
その記述を導いたと考えられる学習内容
・今まで水の無駄遣いをしてきた(1)
班ごとの調べ学習・発表会(水不足の国の数・原因),
・水不足になると困る(2)
限りある地球の水
・春木川の汚れを悪化させたくない(5)
春木川についてのウェビング,
持続可能な社会実現の必須要素①
春木川をきれいにする連絡協議会の方の話
班ごとの調べ学習・発表会(川を汚す原因)
・他の生き物のことを考えて(4)
班ごとの調べ学習・発表会(川が汚れている箇所で死んでいる生物
・生き物に戻ってきてほしい(6)
をビデオに撮り発表)
・自分が川を汚さないようにしていればみんな
班ごとの調べ学習・発表会
持続可能な社会実現の必須要素②
もやってくれる(5)
持続可能な社会
・他の人に迷惑をかけたくない(3)
春木川をきれいにする連絡協議会の方の話
・水不足の国のために少しでも節約したい(4)
アフリカの現状のビデオ
実現の必須要素③
IWPの方の話,班ごとの調べ学習・発表会
・将来のことを考えて取り組みたい(2)
班ごとの調べ学習・発表会(世界の水不足の現状・原因・今後)
持続可能な社会実現の必須要素④
・未来の子どもたちのためにきれいな川を見
せたい(1)
・やってみたら簡単(5)
春木川をきれいにする連絡協議会の方の話(昔の春木川の話)
行動目標を立て実行
・行動するとうれしい・気持ちがいい(5)
持続可能な社会に向けて参画する態度
・汚い春木川をきれいにしていきたい(11)
・昔の春木川にもどしたい(3)
春木川をきれいにする連絡協議会の方の話
ウ
各自の行動目標実行後の振り返りより
単元の最後に「できることから始めよう」と児童に
投げかけ,各自で行動目標を立て,それを一週間実行
するという学習を行った。表4はある児童の振り返り
の表である。この児童は,川を汚さないという観点か
ら①食べ物を残さない(残すことによって落とさなく
てはならない汚れが増える)②米のとぎ汁は植木にあ
げるという目標を,また節水という観点から③水をた
めて歯みがき・洗顔をするという目標を立てた。
「食べ
物を残さないと水を汚さなくていいということを一週
間やってみて改めて感じた。」という記述から,学習し
知識としてわかっていたことを行動することによって
実感できたことがわかる。また行動を通して,他にも
水のためにできることがあると自分の生活を振り返る
ことができている。さらに家族もまきこんで環境保全
の行動をとるようになったことも記述よりわかる。こ
れらのことから行動目標を立て実行するという学習は,
児童の参画する態度を育てることに有効であったと言
える。
5
表4 できることから始めようの振り返り
<目標>
①食べ物を残さない。
②米のとぎ汁は植木にあげる。
③歯みがきや顔を洗うとき,水をためて行う。
日
11/1
2
3
4
5
6
7
①
○
○
○
○
○
○
○
②
○
○
○
○
○
○
○
③
○
○
○
○
○
○
○
<反省> 食べ物を残さないと水を汚さなくてい
いということを一週間やってみて改めて感じた。
水のためにできることは他にもたくさんあるんだな
あと思った。 お母さんは前からアクリルたわしを
使っていたが,この一週間でお母さんもいろいろ
協力してくれた。私もお母さんももっと水の大切さ
を意識するようになった。
エ
保護者・担任から見た児童の変容
学習後,保護者と教職員にこの学習を通して児童に見られた変容についてアンケートを行った。
表5に見られるように,児童は各家庭や学校生活の中で自分たちができることから取り組んだり,
その環境保全の行動を家族やまわりの人にも広めたりしていることがわかった。また,発表会や児
童の環境保全への取組を通して保護者も今までの生活様式を見直すようになり,環境保全の行動が
各家庭にも広がっている。このことから,児童に環境保全に向けて参画する態度を養うことができ
たと考える。
表5 保護者・教師から見た児童の変容
【保護者より】
・身近にある春木川が日本一汚いということや「春木川をきれいにする連絡協議会」の方のお話を細かく教えてくれた。
川の水を汚さないためにどんなことをしているのかたくさん質問された。
・油汚れのついたものをぼろ布でふいていたら,子どもたちから「ママすごい!」と言われうれしくなった。自然環境
を守るという強い意識が芽生え,有意義な取組だったと思う。また,今の子どもは与えられたことは何となくやる傾
向にある中,自分たちで進んで調べたり意見を言い合ったり今までになかった姿勢が見られ,大変すばらしいと感じ
た。(この家庭は双子の児童がいる)
・調べ学習で,ビデオカメラを持って 2 回にわたり春木川を調べに行っていた。撮影してくる度に家のテレビに映して,
おばあちゃんや家族みんなにここはどうだったとか上流の方では生きている魚もいるんだけど下流に行くと汚くなっ
て魚が死んでいたと説明してくれた。生活排水による川の汚れや怖さを自分の目で見て,また改めて映像で見て実感
していたようだ。
・IWPのことを調べてから,使っていない腕時計を集めようといろいろな人に聞いてまわったり,自分で電話をして
詳しい事を聞いてみようとしたりしている。私もあの日の発表会を聞いた時,思い当たるはっとすることをたくさん
していてショックだった。あれから毎日,米のとぎ汁を草木に与えたり,歯みがきの時,水を流しっぱなしにするの
をやめたり,お風呂でのシャワーの節約を家族にも頼んだりしている。
【教師より】
・アクリルたわしを児童が自ら教室の流しに置きクラスで使っている。家庭科で洗濯の学習の時,泡だらけの水をその
まま流さず,ほこりがたたないように校庭にまいていた。
・国語の「人類よ,宇宙人になれ」の学習で地球を大切にすることと関連させて,水を大切にすることを書いている児
童がいた。
・代表委員会で,回収したアルミ缶を現金に換えた後の使い道を話し合っている時,「春木川をきれいにするために使
う」という意見が 6 年生からたくさん出された。
Ⅳ 研究のまとめ(成果・課題)
1 成果
(1)児童にとって身近な環境問題と開発途上国の抱える問題を取り上げることにより,児童は持続
可能な社会について考えることができるようになり,現在の生活を見直さなければならないこと
に気付くことができた。
(2)持続可能な社会について考えさせる手だてや,各自の行動目標の実行を単元に入れることによ
り,児童の環境保全に取り組もうとする態度や参画の態度を育成することができた。
2 課題
(1)児童の環境保全への取組が各家庭や各学級という限られた範囲にとどまっている。今後,学校
全体や地域の活動まで広めていきたい。
(2)今回の学習では,NPO・大学との連携だけであったが,その他の教育関係組織・企業等との
連携を考えた単元も考え,ESDを推進していきたい。
【主な参考文献】
○ESD-J2003 活動報告書『国連持続可能な開発のための教育の 10 年への助走』持続可能な開発のた
めの教育の 10 年推進会議 2003 年
6
第2章 基礎的理論研究
上総堀り:袖ヶ浦市郷土博物館
1
持続可能な開発・持続可能な社会とは
現在の社会は,環境破壊や貧困,経済格差,人権侵害,異文化衝突など,多くの問題を抱え
ている。そして,これらの社会問題の多くは互いに密接につながっている。これらの問題解決
のためには,様々な課題を総合的に捉え,環境・経済・社会のバランスが取れた「持続可能な
開発」に取り組む必要があると言われている。
「持続可能な開発」は,1987 年の国連ブルントラント委員会報告(われら共有の未来)に
おいて,「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく,現在の世代のニーズを満たす
ような社会づくり」と定義されている。
持続可能な開発の内容については,国際的な議論等の中で深められているが,その理念や考
え方として,4つの共通的理解がある。
1,将来世代に配慮した長期的な視点をもつ(環境のもたらす恵みの継承)
2,地球の営みときずなを深める社会・文化を目指す(環境を維持し,環境との共存共栄)
3,持続可能性を高める新しい発展の道を探る(人間としての基礎的なニーズの充足,浪
費の排除)
4,参加・協力,役割分担を図る(多様な立場の人々の連携)
2
持続可能な開発のための教育(ESD)とは
持続可能な社会を実現するためには「Think Globally Act Locally(地球規模で考え,足元
から行動する)」が大切であると言われている。持続可能な社会づくりの担い手を育む教育,
それが ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)であ
る。ESD には,子どもから大人まですべての人々に「社会に参画する力」を育むことが求め
られる。
「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」
(2005∼2014 年)は,ESD による人づくり,社
会づくりを全世界的に推進するための国連の 10 年キャンペーンである。
ESD において取り組むべき分野
3
ESD は,環境や開発のみならず,平和,人権,貧困,ジェンダー,保健など幅広い概念を
含み,総合的に取り組んでいくことが必要である。そして ESD の入り口は,その地域の人々
の暮らしの中で解決が必要をされているあらゆるテーマが対象となる。例えば環境保全などか
ら始めた取組が,その課題に関連する地域経済や人権や福祉などの他課題の解決へつながるよ
うに取り組むことが望まれる。
とりわけ先進国においては,そのライフスタイルや経済活動が環境に多大な負荷をかけてい
ることから,社会経済システムに環境配慮の視点を織り込んでいくことを外すことはできない。
7
また,先進国における社会経済活動と途上国の開発問題・貧困問題は相互に密接につながって
いることから,途上国の問題解決には,途上国への理解や協力の強化に加え,社会経済活動を
総合的な視点から見直していくことが求められている。
4
ESD の主体者
持続可能な社会の実現には,多様な立場の人々の社会参画が不可欠となる。したがって,ESD
の対象も,子どもから大人まで広範であることが重要となる。そのためには,それを支える仕
組みが必要である。
5
ESD で育みたい力
・
・
・
・
・
・
・
・
自分で感じ,考える力
問題の本質を見抜く力
気持ちや考えを表現する力
多様な価値観をみとめ,尊重する力
他者と協力してものごとを進める力
自分が望む社会を思い描く力
地域や国の環境容量を理解する力
自ら実践する力
8
ESDの重 要な視点と して
「社会に参画する力を育む」こ
とがあげられる。また,ESD
で重視すべき点と小中高等学校
の総合的な学習の時間が目指す
力や技能は重なっている。
ESD に求められる学習方法
6
自ら感じ,考え,行動し,また考える,そういった「参加体験型の学習方法」が大切である。
またその体験には,身近にある具体的な課題(地域が抱えている諸課題)の解決を目的とし
た活動が効果的である。
Ⅱ
持続可能な開発のための教育(ESD)における単元開発
1
水をテーマに
地球は「水の惑星」といわれている。生命にとって「水」は不可欠である。
そこで,「水」をテーマとし,ESDが求める開発途上国の問題としてきれいな飲み水を必
要なだけ得ることができないアフリカの現状(『量』が主な問題),一方で身近な問題として,
学区に流れる春木川の汚れが日本でワースト1になったことを取り上げる(『質』が問題)。
2
学習の進め方
環境省・文部科学省は,「『関心の喚起→理解の深化→参加する態度や問題解決能力の育成』
を通じて『具体的な行動』を促すことが環境教育を進める上で大切である」と言っている。
(『
「つ
ながり」に気づき,あなたから始めよう。』平成 17 年 1 月環境省・文部科学省
P6)
そこで本単元では,児童が知らない「日本の現状」と「世界の現状」を提示することで,ま
ず児童の関心を喚起する。次に,ESDが推進する「多様な主体の連携」を取り入れ,
N
POの方をゲストティーチャーとして学校に招き,児童が直接話を聞く機会を設定する。ここ
で,問題への理解の深化と社会に参画する態度を養う。また,ESDが求める参加体験型学習
も導入する。最後に,児童に環境保全についての行動目標を立てさせ,一週間実行させた後振
り返りをすることで,さらなる環境保全への参画の態度を養う。
3
参加体験型学習の導入
この単元で行う参加体験型学習は以下のものである。
(1) KJ 法
川喜田二郎がデータをまとめる際に考案した手法。参加型の環境教育や開発教育で多く用い
られる。
第 1 段階では、考えなければならないテーマについて思いついた事をカードに(1 枚に一つ)
書き出す。第 2 段階では、集まったカードを分類する。この時、分類作業にあたっては先入感
を持たず、同じグループに入れたくなったカードごとにグループを形成するのがよい。グルー
プが形成されたら、そのグループ全体を表わす 1 文を書いたラベルカードを作る。第 3 段階で
は、グループ化されたカードを 1 枚の大きな紙の上に配置して図解を作成する。この時、近い
と感じられたカードを近くに置く。第 4 段階は、出来上ったカード配置の中から出発点のカー
9
ドを 1 枚選び、隣のカードづたいに 全てのカードに書かれた内容を、一筆書きのように書き
つらねて行く。この作業で、カードに書かれた内容全体が文章で表現される。
(2)ランキング
ある課題とそれに対するいくつかの複数の解決策を設定し、より重要だと思われる順番に並
べていくアクティビティ。開発教育の手法としてよく用いられる。
たとえば、「森林伐採による環境破壊をなくすには」という課題を設けるなら、あらかじめ
「先進国が木材の輸入をやめる」
「どんどん木を植える」
「現地の人が木を売らなくても生活で
きるよう別の産業を起こす」などといった解決策を用意する。これを最初に参加者全員に見せ、
時間を与えて個人で、またはグループで重要だと思う順に並べ替える。その過程で参加者同士
で意見をまとめ、個人でやってみた後で、他の参加者の順位と比べながら議論を交わす。
解決策に正しい答えはない。自分の基準や価値観に照らしてランクづけさせ,どうしてその
順位にしたのか説明させる。そのうえで、他人のランクとその理由を知ることにより、見えな
かった新しい視点に気づいたり考え方が変わったりして、自然と多様な価値観を理解し、議論
を深めることをねらっている。
Ⅲ
持続可能な社会に向けて参画する態度の評価
児童に感じ取ってほしい「持続可能な社会実現の必須要素」を「わが国における『国連持続
可能な開発のための教育の 10 年実施計画』」に基づき4つ考えた。学習の中で,この4つの要
素に気付くことができるような手だてをそれぞれ取り入れ,児童がこれらを感じ取ることがで
きたか,児童の感想等から評価していく。また,単元の最終段階で各自が立てた行動目標を一
週間実行し,各自に振り返らせる。その振り返りを通して,児童が考えたこと,また担任や保
護者から見た児童の変容,他者への働きかけの様子などから「社会に向けて参画する態度」に
ついて評価する。
持続可能な社会実現の必須要素
【参考文献】
特定非営利活動法人
持続可能な開発のため
の教育の 10 年推進会議
『「国連持続可能な開発のための教育の 10 年」ガ
イドライン』
①環境への負荷を最小にする
②地球全体の生態系を維持する
③一人一人の市民が自立・連携する
④次世代のことを考えながら生活している
わが国における「国連持続可能な開発のための
教育の 10 年実施計画」に基づき立案
『持続可能な社会をつくるために,行動する「人」を育てる
10
ESDってなに?』
第3章 研究の実際
Ⅰ
学習の流れと振り返り
Ⅱ
資料
1
2
3
「できることから始めよう」のカード
学習履歴図
児童が作成した新聞
本時の指導(1/20)
(1)目標
①春木川の水が汚れた原因,汚れたことによる環境負荷について4学年で学習したことを
もとに意欲的に話し合い,一人一人の行動が汚れにつながっていることを理解すること
ができる。
②春木川を通して、川に住む生き物のことや他の地域に住む人々のことを考えることがで
きる。
(2)展開
時配
5
学習活動と内容
支援(○)と評価(☆)
準備等
春木川が日本で一番汚いこと ○2552 ある川の中で一番汚いというデー 全国の川
1
を知る。
平成16年度のデータ1)より
タを目の当たりにすることで,できるこ の BOD
とから何かしていかなくてはいけない 値データ
という気持ちを持つことができるよう
にする。
15
2
春木川が汚れた原因について
○ ウェビングを通し,一人一人の行動が ウェビン
4学年で学習したことを思い
春木川の汚れにつながっていることを グ用模造
出しながら,ウェビング2)す
児童がつかむことができるようにす 紙
る。
る。
・ 生活排水が原因だ
○ ウェビングは初めてなので,ペアにな
・ 油を流してはいけない
り話し合いしながら書かせる。各自書
・ 米のとぎ汁は植木にあげ
いたものをもとに,クラス全体で話し
たほうがいい
・ みそ汁は残さない
合い,つながりに気付くことができる
ようにする。
☆ 一人一人の行動が春木川の汚れにつな
がっていることを理解することができ
たか。
(持続可能な社会実現の必須要素③)
15
○ 真間川水系の地図を見せることによ 真間川水
3
春木川を汚すとなぜいけない
り,春木川周辺や春木川だけの生態系 系の地図
のかについて話し合う。
に迷惑をかけるだけでなく,下流への
影響について考えることができるよう
にする。
☆ 川に住む生き物や他の地域に住む人々
のことを考えることができたか。
(持続可能な社会実現の必須要素②)
11
10
学習履歴
4
本時のふりかえりをする。
図
(学習履歴図に自己評価を記入
する。)
5
次時の予告
(3)資料
1)
春木川のデータ
環境省のHP
http://www.env.go.jp/water/suiiki/h16/ap_tab1.pdf
より
本時の振り返りより <児童の疑問・感想>
持続可能な社会実現の必須要素に関わる感想が見られた(
)内の数字は,関連する持続
可能な社会実現の必須要素の番号
・春木川が日本で一番汚い、国分川は三番目に汚い。市川は川が汚い市だ。
・市川の川はかなり汚い。市川の評判が悪くなる。
・自分に影響を与えている。まさに自業自得だ。
・人間は後で自分が困るようなことをたくさんや
っている。
・人間はいくら悪気がなくても、多くの生き物を
死なせている。(②)
・全ては人間のせいで自然が破壊される。(②)
・春木川が汚れる原因として、ほとんどが人間に
関係ある。(③)
・人間はなんて悪いことをしているんだ。その報い
2)
がかえってきた。(③)
春木川を中心としたウェビング
・人間の自業自得。全てを大切にすればいいことが
おきるんだと思う。(③,参画の態度)
・結局は、人間が汚くしているから、きれいにしなくてはいけない。授業をきっかけに知るこ
とができてよかった。(③,参画の態度)
・こうならないために何ができるのだろうか。
(参画の態度)
・人間が汚しているんだから困ってもしょうがない。困らないようにするには、食べ残しをし
ない。洗剤は少なめに使う。(参画の態度)
本時の指導(2/20)
(1)目標
①郡上八幡のビデオを見ることにより,日本にもきれいな湧き水をそのまま生活に使って
いる人々がいることがわかる。
12
②昔からのきれいな湧き水を汚さないようにしている努力を知らせることにより,持続可
能な社会に向けて町ぐるみで取り組んでいることに気付くことができる。
(2)展開
時配
5
学習活動と内容
準備等
日本にも名水百選の一選めと ○環境省が選定している名水百選とい 地図
1
5
支援(○)と評価(☆)
2
言われている郡上八幡の水,
うものが全国各地にあり,そこでは名
またその水を上手に利用して
水の保全状況が良好であることを知
生活している町があることを
らせ,児童の環境保全への興味をひ
知る。
く。
ダイワハウ
郡上八幡のCMを見る。
スのCM1)
20
3
郡上八幡のビデオを見る。
○水船2)ついて説明することで,郡上八
幡の人々が昔から行っている水を守 郡上八幡で
る工夫に気付くことができるように 撮ったビデ
する。
10
4
感想を話し合う。
オ3)(教材
○湧き水や子どもたちがきれいな川で 用に編集し
・もともときれい。
遊ぶ様子,川の水を生活に利用し,汚 たもの)
・なんで汚れないのか。
さないように努力している様子を映
・川が二本ある。一つは用水路。
像を見せながら解説する。
・わざと水が見えるようにどぶ板 ☆水路を開渠にし,目に見えるようにす
をはずしている。
・CMになるくらいだから,それ
を観光のメインにしている。→
ることで,水の汚れに気をつけている
ことに気付くことができたか。
(持続可能な社会実現の必須要素①)
だから,水はきれいなままにし ☆きれいな湧き水を守るために住民が
ておかないといけない。
5
協力し合っていることに気付くこと
・
「水船」→水を上手に使っている。
ができたか。
・なんで春木川と違うんだろう。
(持続可能な社会実現の必須要素③)
5
本時の振り返りをする。
(学習履歴図に自己評価を記入す
る。)
6
○前回の振り返りに教師から問いかけ
があれば,それに答えるよう指導する
ことで,児童のメタ認知力を育てる。 学習履歴図
次時の予告
(3)資料
1)
ダイワハウスのCM
「この町で400年前に生まれた水舟は、山の湧き水をまず飲み水に、次に野菜や食器洗いに、
水を上手に使い分けます。その知恵と心。私たちのお手本です。」
大竹しのぶさんのやさしい語り口が印象的なダイワハウスグループのコマーシャル。登場する
水舟の風景や川での洗濯シーンなど,日常的な水と共生する町の様子が映っている。
13
ダイワハウスの広報に問い合わせをし,授業で使用する許可をいただき,ビデオを借りた。
2)
水船
水船には段差が付けら
れた何層かの水槽が連な
っており、上から飲用、
すすぎや物を冷やす、下
洗いと使い分ける。その
下に野良仕事で泥汚れの
付いた靴や雑巾を洗うた
めの浅い層が作られるこ
ともある。水船の設けら
れた下には池があって、
排水は池に流される。米
粒や食べ物のカスを池の
鯉が食べて浄化するとい
う理想的な循環が行われている。
本時の振り返りより <児童の疑問・感想>
・流れていた水が汚かったらどうなるか。
・ごみを捨てたり、洗剤を無駄に使ったりしなければ春木川もきれいになるのか。(①)
・春木川にろ過装置を作ったり浄水器を並べたりしたらどうか。(①)
・郡上八幡の人が使った水はどこに流れるのか。
・郡上八幡の人は、油を使ってないのか?
・郡上八幡と春木川の水は大違い。
・郡上八幡の人は水を大切にしているけど、千葉の人は水を大切にしていないから汚い。
(③)
・春木川もきれいにして遊べたり、飲んだりできるくらいになればいい。
・春木川をどうやってきれいにするのか。(参画の態度)
・春木川をきれいにするには、ポイ捨てや食べ残しをなくして壁などについているコケなどを
とればいいと思う。(参画の態度)
・市川市と人口が違うから汚れかたも違うと思う。
14
本時の指導(3/20)
(1)目標
① 地球上にある水のうち,私達が使える水には限りがあることを知る。
② 限りある資源である水を大切に使っていかなければいけないことに気づくことができ
る。
(2)展開
時配
10
学習活動と内容
支援(○)と評価(☆)
準備等
地 球 上 の ど こ に 水 が あ る か ○4 年の理科の学習を想起すること 水の循環につ
1
「水の循環」の絵を見て考える。
より「水蒸気」,6 年の理科の学習 いての絵
・ 海
から「地下水」について考えるこ 100 本のペッ
・ 氷河
とができるようにする。
トボトル
・ 川,沼,湖
・ 地下水
・ 水蒸気
15
100 本のペットボトルを地球 ○実際にペットボトルを 100 本並べ パワーポイン
2
上にある水に見立て,その中
ることで,水には限りがあること ト1)
(地球上の
で私達が使える水はどのくら
を理解することができるようにす 水について)
いであるか考える。
る。
・私達が使える水は 100 本中,
1 本にも満たない
15
3
感想を話し合う。
○限りある水を人間(65 億人以上)
だけでなく,動物や植物も使うこ
とを考えさせることにより,資源
を大切に使わなければいけないこ
とに気づくことができるようにす
る。
☆限りある水を大切に使っていかな
ければいけないことに気付くこと
ができたか。
(持続可能な社会実現
の必須要素①)
5
4
学習履歴図
本時の振り返りをする。
(学習履歴図に自己評価を記入す
る。)
5
次時の予告
○次時は,
「限りある水」を世界中の
人が十分に使うことができている
のかについて学習することを伝
え,児童の意欲を促す。
15
1)
学習で使用したパワーポイント(千葉大学教育学部濱田助教授作成のものを編集)
地球の水
使える水はどれかな?
海
氷河
私たちが使える水は
地下水
どれくらいあるの?
川・湖・沼
水蒸気
海
そのままでは使えません
氷河
氷を溶かさないと使えません
地下水
深いところの水は使えません
川・湖・沼
使えます
水蒸気
そのままでは使えません
1
地球全体の水を 100 とすると
海
2
地球全体の水を100とすると・・・
3
97.5
氷河
1.75
地下水
0.73
川・湖・沼
0.02
水蒸気
0.00
海
氷河
地下水
川・湖・沼
水蒸気
4
3
16
本時の指導(4/20)
(1)目標
①水が豊富ではない国の現状について知る。
②自分たちにどんな援助をすることができるか考える。
(2)展開
時配
5
学習活動と内容
1
支援(○)と評価(☆)
準備等
世界の中で水不足の国はある
のか考える。
5
2
水不足の危険度マップを見て ○人口一人あたりで考えると,日本は水が 水不足の
水不足の国について読み取
豊富とはいえないことを解説すること 危険度マ
る。
で,水不足の問題を身近に考えることが ップ1)
できるようにする。
30
3
アフリカのビデオを見る。
(コートジボワール,ブルキナフ
ァソ)
○ビデオを見せながら以下のことについ
て解説する。
・首都にはビルが建ち並び,車が走り,水
も豊富にある一方で,地方に行くと水や
食料が不足している。
・片道数キロの道を,水汲みのために頭に
バケツをのせて暑い日も雨の日も女性
や子供たちが一日何回も往復しなけれ
ばならない。
・不衛生な水を飲むことにより病気になっ
てしまう。
・子どもたちのお腹が出ているのは栄養失
調のためである
・水汲みをするため学校へ行く時間さえも
ない状態である。
・日本の援助で,現地に井戸を掘っている
5
4
本時の振り返りをする。
☆水が豊富ではない国の現状について理
(学習履歴図に自己評価を記入
解し,途上国への援助について考えるこ
する。)
とができたか。(持続可能な社会実現の
必須要素③)
5
次時の予告
(3)資料
1)
水不足の危険度マップ
17
アフリカ
のビデオ
2)
国土交通省
土地・水資源局水資源部
HPより
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/j_international/international01.html
2)
アフリカのビデオ(千葉大学教育学部濱田助教授が撮影したもの)
コートジボワール,ブルキナファソで撮影したも
のである。首都にはビルが建ち並び,水が豊富に
ある。その一方で,地方に行くと,子どもたちが
頭の上に水がめをのせて長い距離を歩いていたり,
衛生的ではない水を飲んでいたりする現実が映っ
ている。また,衛生的ではない水を飲むため皮膚
病にかかっている様子,日本の援助によりできた
井戸のまわりで現地の人々が喜んでいる様子など
も映っている。
本時の振り返り
<教師の振り返り>
「募金をしたい。」「水を送りたい。」という援助の気持ちが表れた意見や,「水が足りない国
があることを知り,理解することが大切だ。」という意見の他に「水がなくてかわいそう。」と
いう意見が出た。予想していた児童の反応であったが,発展途上国を上から見たような意見が
腑に落ちず,千葉大の教授や「開発教育」の勉強会で知り合った方に相談した。
「これが現実。かわいそうでも彼らはそこで生活している。」「彼らは自分たちをかわいそう
とは思っていない。」と教えられ TOTO 出版の「地球家族」という写真集を紹介された。世界
各国で,家の前に家族と全ての持ち物を陳列して撮った写真が載っている本である。日本のこ
の消費社会こそが世界の標準と理想であると思いがちであるが,そうではないということに気
付けるよう,その本を子どもたちに紹介した。
本時の指導(5/20)
(1)目標
①水が豊富ではない国にどういった援助ができるか自分なりに考えることができる。
②話し合いを通して、よりよい援助の仕方について考えることができる。
18
(2)展開
時配
5
学習活動と内容
1
支援(○)と評価(☆)
準備等
学習問題をつかむ。
水が足りない国のために、私たちにどんなことができるのだろう。
7
2
アフリカで起こっていたこと ○ウェビングをすることで,水不足の原因 ウェビン
についてウェビングすること
や起こっていることの関係がつかめる グ用模造
で,関係を把握する。
ようにする。
紙
(水不足,温暖化,地下水,泥水,病気,
日本からの支援,井戸が使えなくな
る,持続可能にするには)
10
3
自分の考えを付箋紙に書く。
○机間指導を通して,児童の様々な考えを
引き出す。
☆援助について自分なりの考えをもつこ
とができたか。
18
4
そ れ ぞ れ の 考 え を 発 表 し 合 ○少数の意見を大切にすることで,多様な
い,それをKJ法にてカテゴ
考えを児童が理解できるようにする。
リー分けする。
5
4
本時の振り返りをする。
☆よりよい援助の仕方について考えるこ
(学習履歴図に自己評価を記入
とができたか。
する。)
5
学習履歴
次時の予告
図
本時の振り返りより <児童の疑問・感想>
○募金する。
(参画の態度)
・コートジボワールの都会に住めるようにお金をあげる。
・洋服・サンダルなどを寄付する。
・学校で集めた空き缶をお金にかえて寄付する。
○水を送る。
(参画の態度)
・水を送ることはできるのか。
・水をあげても飲んでしまったら終わりではないか。→持続可能について考える意見
○募金して井戸を作ってあげる。
・家の近くに井戸を作る。
・学校に水道は作れるのか?→学校は子どもがくるところである。実際に IWP がやって
19
いることが意見として出された。
○浄水機を寄付する。
・浄水機を設置できるのか。
・ろ過する方法を教えてもやらないのでどうしたらいいだろう。
・浄化装置などをあげても使わなかったら意味がないのではないか。
○自分たちの使う水を節約する。
○自分が水を汚さない。
○食べ物を送る。→現地の子供たちの栄養失調の様子がこの意見につながったと思われる。
・水と同じように食べ物も寄付したい。そうすれば病気にもならない。
・水分が多い食べ物を届けることはできないのか。
○自分が現地に行き,水くみを手伝う,将来自分がODAで働く,水に困っている国に行って
ボランティアをする→参画の態度
○衛生
・お風呂に入れて体をきれいにしてあげる。
・足の病気を治せるのか。
○雨
・雨が降るように願う。
・人工の雨を降らせることはできないか。
○首都には水があるのになぜいかないのか。
○川から水をひけないのか。
20
本時の指導(6,7/20)
(1) 目標
① 水が足りない国のために活動しているIWP1)という団体があることを知り,その活
動に興味を持ちながらゲストティーチャーの話を聞くことができる。
② ゲストティーチャーの話から,子ども達なりに「持続可能な社会」に向けての取組を
感じ取ることができる。
(2)展開
時配
5
3クラス合同(90 分)
学習活動と内容
1
ゲストティーチャーの紹介
支援(○)と評価(☆)
準備等
○ゲストティーチャーの紹介を行う。児童 世 界 地
が興味を持って聞くことができるよう 図,実物
に,地図・写真等を用意する。
2
投影機,
学習問題をつかむ。
ケニアの
IWPの大野さんの話を自分たちの考えたことと比べながら聞き,大野
写真
さんの考え方から学ぼう。
15
3
前時に考えた「自分たちがで
きること」について振り返る。
4
大野さんのコメントを聞く。
・水を送っても使ってしまった
ら終わり。
・募金や何かをあげるというの
○児童の考えたことついて,大野さんにコ
メントをいただくことで,「持続可能な
社会」に向けてどう援助していったらい
いのか気付くことができるようにする。
は一方的ではないか。
25
5
大野さんの活動について話を ○マサイ族の話を聞くことで,児童が見た
聞く。
ビデオ(コートジボワール,ブルキナフ
<水不足・ケニアの現状について>
ァソ)と同じアフリカであっても,国に
・21 世紀は水不足だと言われて
よって状況が違ったり,水不足のよる問
いる。
・世界では,水不足・水による
題は同じようにあったりすることに気
づくことができるようにする。
病気等で 1 分半に一人死んで
マサイ族
いる。
の写真
・水くみは重労働である。
○同年代の子どもたち学校に行くことが
・子どもは水くみの仕事があり,
できないという話から,遠い国のことで
学校に行けない(識字率の低
も身近な問題として考えることができ
下)。
るようにする。
<上総堀りについて>
・千葉県の伝統技術→国の重要
無形民俗文化財に指定
○千葉県の技術が世界で活躍しているこ
とを知ることで,郷土に誇りを持つこと
ができるようにする。
※質問があればする。
21
∼5 分休憩∼
5
<大野さんのこれまでの活動>
35
・おじいさんが上総堀りの職人
であった。
○「妻と一緒に活動する」「これがライフ
ワークである」という大野さんの話を聞
き,またその活動を一緒に行っている若 上総堀り
・活動を始めたきっかけ
者がいるということを知ることで,世界 の写真
・活動を支える仲間ややりがい
の問題のために積極的に活動している
(濁った水しか飲めなかった
人々がいることに気付くことができる
人たちが透明な水を手に喜ぶ
ようにする。(持続可能な社会実現の必
姿)
(同じ活動をしている仲間
須要素③,参画への態度)
の中には学生がいる)
<持続可能な社会に向けて>
○現地の人が現地にあるもので,また自分
・現地にあった道具を使う
たちで井戸掘りができるようにすると
・現地の人と話し合い,現地の
いう考えを聞くことで,「持続可能な社
人に技術移転をする。
・井戸を掘った後,母親を集め
て衛生指導をする。
会」に向けての考えに気づくことができ
るようにする。
○井戸を掘った後も,母親への衛生指導や
・現地の言葉で「木を植える」
教員への水循環の教育をしていること
ことを教える紙しばいを作
から現地の人が自立できることを大野
り,現地の学校の先生に教え
さんが願っていることを感じ取ること
ている。
ができるようにする。
※質問があればする。
5
4
ゲストティーチャーにお礼を
言う。
5
5
本時の振り返りをする。
☆興味を持って大野さんの話を聞くこと 学習履歴
ができたか。
図
(学習履歴図に自己評価を記入 ☆大野さんの話から「持続可能な社会」に
する。)
向けての取組を自分なりに感じ取るこ
とができたか。(持続可能な社会実現の
必須要素③④)
○「春木川をきれいにする連絡協議会」の
6
次時の予告
方のお話を聞くことを知らせ,春木川に
ついて関心をもたせる。
(3)資料
1)
IWP:インターナショナル・ウォーター・プロジェクト(代表:大野篤志さん)
千葉県習志野市にあるNPO。2005 年,JICAより草の根技術協力支援(ODA)を
受けた。「飢えている人に魚を与えるのではなく,魚の捕り方を教えてあげる」ことを理念
とし,ケニアのマサイ族の村の3つの小学校に,住民と一緒に新方式上総堀りで井戸を掘っ
た。
22
現地の人達だけで掘削可能なように「伝統的上総堀り」の原理はそのままに残し,現地で
調達可能な道具や機材を使用し(鉄筋棒やタイヤチューブ等)技術移転をしている。
本時の振り返りより <児童の疑問・感想>
・水をあげるのではなく,井戸の堀り方を教えるのはとてもいいと思った。(③④)
・魚をとってあげるのではなく,魚のとり方を教えるのはとてもいいと思った。なぜなら魚の
とり方を知っていれば,食べていけるから。(③④)
・人を育てることは水不足をなくすことだと思った。(③④)
・大野さんから技術を伝えることは大切ということを知った。(③④)
・大野さんの話を聞いて,こんなにすごい人がいるんだなあと思った。
・
水
が
ど
ん
な
に
大
切
かわかった。
・二人の話を聞いて,私は今まで水をムダに使ってきたと思った。(①)
・学校に井戸を作ることを考えた大野さんはとてもやさしいと思った。
・大野さんの話を聞いて,自分ができることをいっぱいやりたいと思った。(参画の態度)
・私にできる限りのことをしたいと思えた。(参画の態度)
・いろいろな話があったけど,一番すごいと思ったのは上総掘り。
・千葉県の上総掘りが世界で使われるようになったら,水が足りない人たちの生活が少し楽に
なるのではないだろうか。
・今年,自分たちで井戸を掘ったとケニアの人から連絡があったと大野さんがうれしそうに話
23
していて,本当にうれしかったんだなあと思った。
・大野さんが,ケニアの人が「透明な水がおいしいと言ってくれたときはうれしかった」と言
っていた。自分が大野さんだったら,とびきりうれしいしやったかいがあるだろうなあと思
った。
本時の指導(8,9/20)
(1)目標
①春木川をきれいにするために活動している方の話を聞いたり,質問をしたりすることを通
して春木川をとりまく環境について考えることができる。
②環境保全に主体的に関わっている方のお話を聞くことで,自分もできることから何かをし
ようという気持ちをもつことができる。
(2)展開
時配
5
3,4校時
10:40∼11:05 学年合同
学習活動と内容
1
ゲストティーチャーの紹介
(春木川をきれいにする連絡協
議会1)の方 3 人)
11:15∼ 12:15
各クラス
支援(○)と評価(☆)
○ゲストティーチャーの紹介を行う。児童 実物投影
が興味を持って聞くことができるよう 機,春木
に,地図・写真等を用意する。
春木川をきれいにする活動をしている方のお話を聞き,春木川のまわり
の環境について考えたり,その方々の思いについて考えたりしよう。
5
2
春木川について復習する。
・日本で一番汚い川だった。
○第一時で行ったウェビングをもとに復
習する。
・汚れる原因は,生活排水
・洗剤や油,ごみのポイ捨ても
あった。
・汚れると臭い。
・春木川に住む生物が死んでし
まう。
・海につながっているから海の
生物にも影響がある。
20
3
箕輪さんの話を聞く。
(春木川の汚れの原因,汚れる ○春木川は一部江戸川にも流れ込んでい
となぜいけないか)
るため,潮が満ちると栗山浄水場に自分
たちが出した生活排水が行くことがあ
る。その話をしていただくことで,児童
の,春木川のために何かしようという気
持ちがより高まるようにする。
10
準備等
∼各クラスへ移動,準備∼
クラスごとに話を聞く。
24
川流域の
地図
15
4
パックテストの実験
ビーカー
・春木川の水,水道水,食べ物
35
5
各クラス
を入れた水の三種類をそれぞ
3 個,
れパックテストし,BOD値
パックテ
を比べる。
スト試験
ゲストティーチャーの話を聞
薬
く。
○児童の意見の中に「春木川にろ過装置を
・汚れる原因は生活排水が80
作ればいい」というのがあったが,実は
∼90%
すでにそのような装置が設置されてい
・昔の春木川の様子
る。それにも関わらず汚れていることを
・一度,水を汚すともとに戻す
話していただくことで,それぞれの家庭
のは大変
での排水を考えなくてはいけないこと
・活動を始めたきっかけ
に気付くことができるようにする。
・一時期よりは,数値が良くな ○昔は魚がいた→生活排水の影響でワー
っている。
スト1になった→様々な取組により状
況がよくなっている,という話をしても
らうことで,児童が未来に希望をもてる
ようにしていただくとともに,児童が自
分の行動を振り返ることができるよう
5
4
ゲストティーチャーにお礼を
にする。
言う。
5
5
本時の振り返りをする。
(学習履歴図に自己評価を記入 ☆興味を持って話を聞いたり質問したり
する。)
し,春木川をとりまく環境について考え
ることができたか。(持続可能な社会実
現の必須要素②)
☆ゲストティーチャーの話を聞いた後,自
分も何かできることから行動にうつそ
うという気持ちを持つことができたか。
6
次時の予告
(持続可能な社会実現の必須要素④,参画
の態度)
(3)資料
1)
春木川をきれいにする連絡協議会
市川市曽谷にあるNPO,地元に住む方々が集まり曽谷を流れる春木川をきれいにする活動
を行っている。公民館,各学校でアクリルたわしの作り方を教えたり,台所に置く,ろ紙袋を
配ったりしている。
本時の振り返りより <児童の疑問・感想>
25
・川がきれいになれば,魚も住めるし,泳げるし楽しいことが増えると思った。
(②)
・話を聞いて,お金もかからず誰でもできることがあるとわかった。そこが上総堀りに似
ていると思った。
・願いを持って活動している人々のためにも協力してあげないといけないと思った。
(参画の態度)
・できることがいっぱいあるのに,私達はやらずに川が汚れているのをただ見ているだけ
だったと感じた。これからはできることを続けていきたい。(参画の態度)
・家に帰ったら早速ろ紙袋を使いたい。親に
アクリルたわしを勧めよう。
(参画の態度)
・自分にできることから始めよう。
・次は私たちが,みんなに春木川のことを伝
えたい。(④,参画の態度)
26
本時の指導(10/20)
(1)目標
・「水のために大切だと思うこと」について「ランキング1)」の手法で話し合い,新しい視
点に気づいたり、考え方が変わったりすることを通して水について考えを深める。
(2)展開
時配
5
学習活動と内容
1
支援(○)と評価(☆)
学習問題をつかむ。
ランキン
「水のために大切だと思うこと」の話し合いを通して,私達ができ
ることについて考えよう。
2
グのシー
ト
ランキングによる話し合いの ○ランキングには正解がないことを事前
仕方を学ぶ。
15
準備等
・まず,自分のランキングを決め
る。
・グループで各自の順位の理由を
発表し合い,グループとしての
に話すことで,各自の考えに自信が持て
るようにする。
○友達の意見を否定しないで聞くことを
約束することで多様な考えが出るよう
にする。
順位をつける。
・最後に各グループの順位と理由
を発表し合う。
3
ランキングによる話し合いを ○話し合いが進まないグループには,優先
する。
度の一番高いものから選んでいくよう
助言する。
4
各グループの順位と理由を発 ○順位より理由が大切なので,なぜそう考
表する。
5
5
本時の振り返りをする。
(学習履歴図に自己評価を記入
する。)
6
えたかがよくわかるように発表させる。
☆ランキングによる話し合いを通して、水 学習履歴
についてより深く考えることができる 図
ようになったか。
次時の予告
(3)資料
1)
ランキング
ランキングの手法については,10 ページを参照。次ページの表は,本時で使用したランキ
ングである。5 つの項目は,児童の考えたものの中から教師が選んだ。
水のために大切だと思うこと
27
メンバーの名前
グループの順位
アクリルたわしを使う
水不足の国のために募金する
水のむだづかいを
しない
家族や近所の人に川を汚してしまう
ことや水不足の国のことを教える
川を汚してしまう原因や水不足の国
について知り,水を汚さない・大切
にするという思いをもつ
本時の振り返りより <児童の疑問・感想>
・自分の意見と違うとちょっといやだなあと思ったけど,他の人の意見を聞いて,自分が
考えなかったことが出ると少し勉強になったなあと思った。
・やっぱり「行動」は「思い」から発展していくから、自分の考えを持つことはとても大切だ
と思った。
・ほとんどの班が「水を汚さないという思いを持つ」だった。自分が思っていないと相手にも
伝わらないと思う。
・自分だけ思ってもほかの人には伝わらないから、自分が川を汚さないと思ったらまず行動に
うつすことがいい,とみんなの考えでわかった。(参画の態度)
・あらためて自分とは違う人がいるんだなあと思った。その人のこともわかってあげるように
なりたいと思った。
28
本時の指導(11~16/20)
(1)目標
・学習してきたことをもとに,「友達や地域の方に知らせたい,水に関すること」について
調べ,効果的な発表の仕方を考える。
(2)調べ学習のテーマ
6-1
調べ学習テーマ
1,水を汚さない方法・・・模造紙
2,水不足の国について・・・壁新聞
3,水の循環・・・模造紙
4,郡上八幡と春木川を比べる・・・壁新聞
5,水は人間や生物にとってどのぐらい大切か・・・模造紙
6,水は人間や生物にとってどのぐらい大切か・水は世界の中でどれぐらいの命を救うのだろ
うか・・・壁新聞
7,水を汚さない方法・・・壁新聞
8,韓国の川・・・パワーポイント
9,上総掘り・水のために活動している団体・・・壁新聞
6-2
調べ学習テーマ
1,水不足の国、水が豊富な国について・・・パワーポイント
2,春木川の上流はどうなっているのか・・・ビデオ、写真
3,水はどのぐらい生物に必要なのか、水の大切さを人々はどのように思っているのか・・・
パワーポイント、ビデオ
4,名水百選・・・ビデオ、壁新聞
5,名水百選・・・壁新聞
6,家で水を節約するには・・・新聞
7,日本のきれいな川・汚い川・・・壁新聞
8,川や海にはどんなごみが流れてくるのか、水を汚さないようにするには・・・模造紙
9,水のために活動している団体(IWP,ODA)水を守るために私たちができること・・・クイ
ズ、模造紙
6-3
調べ学習のテーマ
1, なぜ世界の水の量は平等ではないのか、水不足がおこるのか・・・模造紙
2,水不足の原因、それについて人々はどう思っているのか・・・壁新聞
3,水不足の国の現状)
・・・壁新聞
4,水不足の国は何カ国あってどの辺に多いか・・・パワーポイント
5,水不足の国のために私たちができること・・・壁新聞
6,春木川の上流について)・・・写真とビデオ、模造紙にまとめる
7,昔の水はきれいだったのか,なぜこんなに汚い水になったのか・・・パワーポイント
8,春木川の汚れの原因、春木川の周りに住んでいる人は春木川をきれいにしようと思って
いるのか・・・ビデオ・壁新聞
9,微生物以外の細菌では水をきれいにできないのか、水のためにできること・・・パワー
ポイント
29
※ 児童の興味関心に基づき,調べ学習のグループを決めた。グループの大きさは,一人∼四
人までとした。子どもエコクラブの壁新聞展があり,そこに出展すると,より多くの人に学
習したことを知らせることができると児童に話したところ,壁新聞を希望するグループが
多くなった。
本時の指導(17,18/20)
<クラスごとの発表会>
※ 壁新聞(子どもエコクラブ壁新聞展用)に
よる発表は,全体に良く見えるように,ビ
デオで壁新聞を撮り,プロジェクターでス
クリーンに映した。
30
本時の振り返り <保護者の感想>
・水に関する様々な問題について,子どもたちがとても良く調べていたので本当に驚き,その
レベルの高さに感動しました。今回,この発表を見せていただき,改めて水につながる環境
問題について深く考えさせられました。
・大人たちは子どもたちの手本となるように努力しなければならないと思います。子どもたち
もできることから始めていけばいいと思います。水を無駄にしない,川を汚さないといった
意識をもつことから少しずつ環境は変わっていくと思います。
・みんなでいろいろと工夫して調べてあり,感心しました。とてもわかりやすく,真剣に聞き
入ってしまいました。自分なりに反省しなければならないところもあり,今後はもっと水を
大切にしなければならないと実感しました。
・マヨネーズを流した水をきれいにするために,お風呂 800 杯もの水が必要だということ。
前に聞いたことはあってわかっていたつもりでも,毎日の忙しさにかまけて,ついそのま
ま流していました。子どもたちに教えられました。まず,自分たちが見本を見せないとい
けませんね。がんばります。
本時の指導(19/20)
(1)目標
・水のために自分ができることは何か考え,実行可能な目標を立てることができる。
○行動目標を立てることができない児童には,
「IWP」
「春木川をきれいにする連絡協議会」
の方々が話していたこと,前時の発表会の内容からどんなことをしていったらいいのか等
を思い出させ,すぐに取り組めそうな行動目標を立てることができるようにする。
∼各自が立てた行動目標に基づき,一週間実行∼
本時の指導(20/20)
(1)目標
・各自の取組について報告をし合い,自分の行動を振り返る。
各自の振り返りの表は 34,35 ページ参照
本時の振り返りより<児童の感想>
・前の自分と今の自分を比べると変わったなあと思う。前は川のことなんか知らんぷりして
いたけど,今はすごく川のことを意識するようになった。
・前は水不足の国や汚い川なんてどうでもよかったし,自分はまだ子どもだから何もできな
いと思い,水を無駄使いしていた。でもみんなの意見を聞いた後,自分の考えを改め,も
っと自分にできることはないかと考えたくなった。
・前までは,どうでもいいとは思っていなかったけれど,水を出しっぱなしだった。今は時々
出しっぱなしにしちゃうけど,水を大事にするようになった。
31
千葉商科大学瑞穂祭で発表(課外)
地域にある大学の「環境ISO学生会議」
と
連携し,学園祭で代表の児童が「友達や地域
の
方に知らせたい,水に関すること」を発表し
た。
(これはESDが求めている,大学との連携
に
あたる。)たくさんの方々の前で,また,大
学
の大きな階段教室で発表することができ,児
童
にとってとてもいい経験となった。
IWPの活動について発表したグループ
は,
IWPへの募金をこの場でも呼びかけた。
韓国の清渓川(チョンゲチョン)の復元について発表した児童が,発表後,偶然同じテーマ
で研究を進めていた千葉商科大学の院生から,声をかけられ報告書をもらうという場面もあっ
た。
子どもエコクラブ壁新聞展
市川市のメディアパークで行われた子どもエコクラブ主催の壁新聞展に児童が作成した作
品を出展した。たくさんの方々に向けて調べたことを発信することができた。
右側の作品は,代表として,県,次に全国の壁新聞展
出展された。
32
に
音楽発表会
創立 30 周年記念の音楽発表会において,6
年生は水不足のアフリカの様子をプロジェク
ターで映しながら,
「未来へ」を合奏した。
(右
の写真は曲紹介のポスターである。
)
栄養失調のためおなかが出ている子どもの
映像が映し出されたが,
低学年の児童にはそれ
を理解することができなかった。6 年生の児童
は,改めて世界の現状をみんなに伝えていく必
要性を感じたようであった。
IWPへの募金
百合台小,また千葉商科大学瑞穂祭でIWP
の活動について紹介し,
募金の呼びかけをした
ところ 9,159 円集まった。それをIWPに募金
した。
読み聞かせ(課外)
朝の読み聞かせの時間に,次の本の読み聞かせをした。
○「ぼくのじしんえにっき」八起正道
作/伊東寛
絵
水の大切さ,人と助け合うことの大切さ,現代の大量生産・大
量
消費などについて考えさせられる作品である。
○ 「 世 界 が も し 100 人 の 村 だ っ た ら 」 ③ た べ も の 編
田香代子+マガジンハウス編
たべものをつくるにはたくさんの水がいります。
村でつかわれる水の70%は,農業につかわれています。
1キロの米をつくるには4トンちかい水がいります。
1キロの牛肉をつくるには20トンの水がいります。
牛丼1杯には,2トン以上の水がいります。
いっぽうで,16人の村びとは料理につかうきれいな
水がありません。
40人の台所には下水施設がありません。
(本文より抜粋)
33
池
できることから始めよう
Aさん
Bさん
<目標>
①洗顔の時,洗面器に水をためて洗う。
②風呂の時浴槽の水を使う。
<目標>
歯みがきの時,コップに水をためて行う。
日
11/1 2
3
4
5
6
7
①
○
○
○
○
○
○
○
②
○
○
○
○
○
○
○
<反省>
思ったよりも続けられた。これからも一週間に○回
と決めてやってみようと思う。
でも,一週間みっちりやると少しストレスがたまっ
た。この一週間の自分は水のことを意識して行動し
ていたと思う。やはり,もっと水のことを知らなけれ
ばと思った。
日
11/1 2
3
4
5
6
7
評価 ○
○
○
△
○
○
○
<反省>
意外と簡単だった。歯みがきの時だけでも節水す
れば,地球が水を使えなくなる日まで遠くなったか
なと思った。
前の自分は何気なく生活して何気なく水を使って
むだづかいをしていたなと思った。みんなの言うと
おり,意識してやらないと忘れちゃうようなことだけ
ど,でもその忘れちゃうようなことでもちゃんとやって
いれば水を守れるかなと思った。
これからも節水を続けていこうと思う。
Cさん
Dさん
<目標>
①雨が降ったら雨水をためて,植物にあげる。
②米のとぎ汁を植物にあげる。
③洗剤は少なめに使う。
④洗い物を増やさない。
<目標>
①歯みがきの時は,コップに水をためる。
②残さず食べる。
日
日
評価
11/1 2
3
4
5
6
7
○
○
△
×
×
○
○
<反省>
できなかった日もあったけど,川の汚れの原因は
私たちにかかっているみたいに思えた。
今までは,川なんて私には関係ないと思っていた
けど,この学習をやって,今からでも間に合うと思っ
た。
評価
34
11/1 2
3
4
5
6
7
○
○
○
○
○
○
△
<反省>
水を大切にすることは,けっこう難しいこともあっ
た。でも,身近なことからやれば川は少しずつきれ
いになることがわかった。
ぼくは,川をきれいにする活動をもっともっと続け
ていきたいと思った。中学生になっても高校生に
なっても続けていきたいと思った。
Eさん
Fさん
<目標>
夜,食器を洗う時に洗剤をなるべく使わない。
<目標>
①歯みがきの時は,コップに水をためる。
②残さず食べる。
③洗面器に水をためて顔を洗う。
日
11/1 2
3
4
5
6
7
評価 △
○
△
○
△
○
○
<反省>
1日・・・途中からお母さんとかわって食器を洗っ
た。
2日・・・夜ご飯は焼きそばで油だらけだった。
3日・・・今日は無意識にやっていた。洗剤を出し過
ぎ たかも?
4日・・・野菜いためがあって油だらけだった。
5日・・・テレビを見ていて忘れたけど途中でお母さ
んと食器洗いをかわった。
6日・・・広告で油をとった。
7日・・・弟が油を固める粉をもってきたからそれで
やってみた。
私の家は,あまり洗剤を使わないが油はそのまま
流し,水をジャージャー流していた。でも,今は広
告で油をふきとって水を少し入れてゴミ箱に捨てる
ようにした。また,ゴムべらで汚れをとってゴミ箱に
捨てた
日
11/1 2
3
4
5
6
7
評価 ○
○
○
○
○
×
△
<反省>
簡単だったけど,やろうという気持ちがなければ
やっぱりできないと思う。(意識してやらないとかえら
れない)
4年生の時にクリーンクリーン作戦でやったのに,6
年生になったら忘れていて無意識に水を汚してし
まっていたと思う。
これからも,川や生き物のためにも続けていきたい
と思った。
Gさん
Hさん
<目標>
顔を洗うときに洗面器に水をためて洗う。
<目標>
皿洗いをするとき,あまり洗剤を使わない。
日
日
11/1 2
3
4
5
6
7
評価 ○
○
○
○
○
○
○
<反省>
簡単そうだったけど,忘れそうな時もあった。
これから毎日「顔を洗うときに洗面器に水をため
て洗う」を心がけるのは難しいと思うけど,この他に
「皿洗いの時に水を出しっぱなしにしない」や「頭を
洗うときに出しっぱなしにしないでこまめにとめる」
こともやっていきたいと思った。
11/1 2
3
4
5
6
7
評価 ○
○
○
○
×
△
△
<反省>
最初は洗剤を使う具合が良かったんだけど,最後
の二日間は洗剤が少なすぎて汚れがちゃんとおち
てなかったから△にした。
前は川が汚れても気にしなかったけど,今は洗剤
の量とか節水を気にするようになった。
みんながこうやって気をつけてくれれば,川もだん
だんきれいになっていくと思う。これからも洗剤をあ
まり使わずになるべくアクリルたわしを使いたい。
35
36
37
【引用・参考文献】
著者・編者
書名
出版社・発行者
「つながり」に気づき,あなたか 環境省・文部科学省
発行年
2005 年
ら始めよう。
わが国における「国連持続可能な 「国連持続可能な開 2006 年
開発のための教育の 10 年」実施計 発のための教育の 10
画
年」関係省庁連絡会
議
山田かおり
学校におけるこれからの環境教育
千葉県総合教育セン 2006 年
千葉県型環境教育のすすめ
ター
持続可能な開発のための学び
開発教育協会
開 発 教 育 推 進 新しい開発教育のすすめ方
地球 古今書院
2003 年
1995 年
市民を育てる現場から
セミナー
小池俊雄,井上 環境教育と心理プロセス
山海堂
2005 年
JICA
2006 年
雅也
monthly Jica
9 月号
千 葉 県 立 上 総 上総堀り
千葉県立上総博物館 2000 年
博物館
友の会
−伝統的井戸掘り工法−
市川洋子著/上 総合的な学習で自己評価力をつけ 明治図書
杉賢士
監修
左巻健男
る
水と空気の 100 不思議
東京書籍
ン /
1997 年
ワールドウォッチジ 2006 年
ク リ ス ト フ ァ こども地球白書
ー・フレイヴィ
2004 年
2005−2006
ャパン
林 良 博
監修
高橋
裕
中村靖彦
地球の水が危ない
岩波新書
2003 年
ウォーター・ビジネス
岩波新書
2004 年
TOTO出版
1994 年
小学館
1997 年
マ テ リ ア ル ワ 地球家族
ールドプロジ
ェクト
雁屋哲
作/花咲
アキラ
画
美味しんぼ
60
八起正道
ぼくの地震絵日記
岩崎書店
1989 年
池田香代子
世界がもし 100 人の村だったら③
マガジンハウス
2004 年
たべもの編
38
Fly UP