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日本における新教員評価システムの取組に関する考察

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日本における新教員評価システムの取組に関する考察
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
頼 羿 廷
本研究の目的は,日本における教員評価システムの取り組み状況について明らかにすることであ
る。国の政策に先行して東京都が 2000 年に率先し新たな人事制度を導入し,2002 年日本政府も教
員の資質向上と学校の活性化を図ることを重要課題と位置づけ,公務員制度改革の目的も視野にい
れながら新しい教員評価システムを導入する方針を決定した。新しい教員評価システムや公務員制
度改革とも落ち着いてきたことをふまえ,全国における教員評価システムの実施状況を精査・考察
する必要があると考える。そのため,
本稿では文部科学省が全国66の教育委員会を対象に行った「教
員評価システムの取り組み状況について」
の調査資料に基づき,新しい教員評価制度の実施方法,評
価方法,評価に関する面談,評価結果の開示,評価への異議処理,評価結果の活用等について検討す
る。
キーワード:教員評価,自己目標管理制度,評価結果の活用
はじめに―本研究の目的―
本研究のテーマは,日本全国における教員評価システムの取り組み状況について明らかにするこ
とである。
2000(平成 12)年,教育改革国民会議が「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」と
提案し,2001(平成 13)年,公務員制度改革大綱においては,新たな能力等級制度を導入し,任用・
給与・評価等の諸制度を再構築することにより能力や業績を適正に評価した上で,能力本位で適材
適所の人事配置を推進するとともに,能力・職責・業績を適切に反映した給与処遇を実現するとい
う考え方を示した。それに伴い,教員である教育公務員の在り方もこのような一般職の公務員制度
改革の動きと連動して,2006(平成 18)年 4 月に新公務員制度の施行に合わせて見直しを行うことが
求められた 1。
日本政府は,教員の資質向上を図ることを重要課題と位置づけ,学校の活性化と公務員制度改革
の目的も視野にいれながら形骸化している勤務評定の代わりに,新しい教員評価システムを導入す
る方針を決定した 2。国の政策に先行して東京都が 2000(平成 12)年に率先し新たな人事制度を導入
教育学研究科 博士課程後期
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日本における新教員評価システムの取組に関する考察
した。その後,2002(平成 14)年埼玉県,2003(同 15)年神奈川県,2004(同 16)年京都府などの都府
県は教員評価制度の試行に取り組んだ。
文部科学省の資料によると 3,2006(平成 18)年 10 月の時点で新しい評価システムの実施について
は,62 の都道府県と指定都市のうち,27 の都府県は法令に基づく勤務評定として実施し,33 の都府
県は新しい評価システムと従来の勤務評定を併用,2 つの県は新しい評価システムを実施していな
いという状況であった。この数値から半分以上の自治体は従来の勤務評定と併用あるいは実施して
いないことがわかり,大半の自治体は新しい教員評価システムに戸惑いつつ新制度を導入していた
ことが覗える。
上記の経緯を経て実施された新しい教員評価システムや公務員制度改革とも落ち着いてきたこと
をふまえ,
日本全国における教員評価システムの実施状況を精査し課題を探る必要があると考える。
そのため,本研究では,文部科学省が 2010(平成 22)年 4 月 1 日時点に 47 都道府県教育委員会及び 19
指定都市教育委員会を対象(主に公立小中高校教諭を対象)に行った「教員評価システムの取り組み
状況について」の調査結果資料および 2011(平成 23)年の追加調査資料を基づき,各地の教員評価資
料と照らし合せながら分析・検討を行う。これによって現在進行中の各都道府県における教員評価
制度の実際の取り組みと教員評価システムの課題を整理することができる。
本稿では,合わせて 66 の自治体における教員評価制度について,文科省の調査結果に基づき,1)
実施状況,勤務評定としての位置づけ,2)実施方法,3)評価方法,4)評価に関する面談,5)評価結
果の開示,
6)
評価結果の活用分野等,
7)
苦情への対応,8)全体的な考察という項目に分けて説明する。
1 実施状況,勤務評定としての位置づけ
教員評価システムは,1950 年半ばに導入され今日まで実施されている「勤務評定」,1999 年以降東
京都などで導入された「教員人事考課制度」
,
そして 2006 年度から本格実施された「新しい教員評価」
という変化を遂げてきた。本研究では,
「勤務評定」を除き,人事考課を主眼とする「教員人事考課
制度」
と,教員の資質向上かつ学校の活性化を志向し,あるいは自治体によっては評価結果を処遇に
反映する「新しい教員評価」を考察の対象とする。以下,「教員人事考査制度」と「新しい教員評価」
を総体として「新教員評価システム」
と称することにする。
ここでは,新教員評価システムは地方公務員法に定める勤務評定として実施されているか,ある
いは勤務評定とは別に実施されているか,つまり各自治体において新教員評価システムが教職員と
学校にいかなる位置づけで実施されているかについて各自治体の実情を考察する。
まず,新しい教員評価システムの実施状況については,2011(平成 23)年度の時点では,文部科学
省の公開資料によると 4,
66の都道府県と指定都市のうち,
「すべての教育職員,すべての学校で実施」
とする自治体は 65 団体であり,
「一部の教育職員,一部の学校で実施」している自治体は唯一愛媛県
だけである。
この実施状況から新しい教員評価システムは一応全国的に展開されていると言えるが,
新教員評価システムは勤務評定として導入されているかどうかによって新教員評価システムの機能
や役割が大きく違ってくる。したがって,この点に注目して新教員評価システムの位置づけに関す
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る全国の実施状況を見てみる必要がある。
地方公務員法の 40 条において,勤務成績の評定に関しては「任命権者は,職員の職務について定
期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応じた措置を講じなければならない」と定められ
ている。この第 40 条の勤務成績の評定は人事管理の側面が重く,旧来の勤務評定がその役割を担っ
ていた。それにもかかわらず,旧勤務評定は日本教職員組合による反対闘争があって,必ずしも有
効には機能していない実情にあった。旧勤務評定が形骸化し,勤務成績の評定は旧勤務評定で適切
に遂行することができなくなっていたのである 5。とすれば,別途の方法で果たせざるを得ないが,
もしも新しい教員評価システムが地方公務員法に定めている勤務評定として実施するならば,新し
い教員評価システムは旧勤評の代わりに主に人事管理の役割として期待されるはずである。だが,
上記の教職員組合による反対闘争の経緯をふまえるならば,それを実施することは容易ではなかっ
た。しかし,学校及び教員に対する社会的不満と批判が大きく,政治的に見て,教員評価を学校に
導入することが不可避の時代状況が背景にあり,かつ,反対する教員組合との妥協策も考慮しなけ
ればならないという課題があった。
そこで打ち出されたのが新しい教員評価システムである。当時発足した答申から考えると 6,表
明された中心軸は教職員の資質向上であり,かつ学校の活性化である。いわば,職員の職務に対し
て単なる人事的な勤務成績の評定より,教職員をメインとして教員が抱える課題や自主的な能力向
上が期待されていると言え,新教員評価システムは人事管理の部分に引き込まれずに,教員の資質
向上と学校組織の活性化を更に取り入れようという姿勢と解される。しかし,勤務評定の形骸化に
つれて,組織に必然の存在である人事に関わる勤務パフォーマンスの評定はいかなる新しい教員評
価システムと関わっていることが,新しい教員評価制度の性格,学校現場へもたらす影響を大きく
左右すると考えられるので注目しなければいけない。
さて,その観点から文部科学省が公表した資料によると 7,新教員評価システムの位置づけに関し
ては,地方公務員法に定める勤務評定として実施している自治体が 45 団体であり,地公法に定める
勤務評定とは別途に実施している自治体は 21 団体である(表 1)。
表 1 地方公務員法に定める勤務評定として実施している都道府県
地公法に定める勤務評定として実施
地公法に定める勤務評定とは別途実施
北海道,青森県,岩手県,宮城県,秋田県,栃木県,群馬県,
埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,石川県,岐阜県,静
岡県,大阪府,兵庫県,奈良県,鳥取県,島根県,岡山県,
広島県,山口県,香川県,高知県,福岡県,長崎県,熊本県,
大分県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県,札幌市,仙台市,さ
いたま市,川崎市,横浜市,相模原市,浜松市,大阪市,
堺市,神戸市,岡山市,広島市,北九州市,福岡市(計 45)
山形県,福島県,茨城県,新潟県,富山県,福井県,山梨県,
長野県,愛知県,三重県,滋賀県,京都府,和歌山県,徳
島県,愛媛県,佐賀県,千葉市,新潟市,静岡市,名古屋市,
京都市(計 21)
公務員改革制度の発足に伴い,
適正な評価かつ評価結果が実質的に活用される制度が求められた。
新しい教員評価システムで,
「勤務評定として実施」というのは,新しい教員評価システムが旧勤務
評価に代わって人事管理の役割として期待されたと言える。旧勤務評定では管理職による不透明な
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日本における新教員評価システムの取組に関する考察
評価に陥りがちな問題を改善し,管理職が教員とのコミュニケーションを取りながら評価を付け,
教員の資質向上と学校の活性化へつなげようという狙いがある。しかし,「勤務評定としての評価」
において一番大きい問題は評価結果を処遇に反映する部分にある。教職の特性から見て,そもそも
その成果を数量化して評価することが困難であると思われ,いわゆる鍋蓋型の管理システムになっ
ている学校現場に評価者の評価能力まだ保証できない段階で評価結果を処遇に反映させるようにな
ると,評価の公正性や信憑性などから教員評価制度への不信感を増幅し,
「報われる評価制度」が同
僚性の崩壊,モラルハザードを引き起こしかねないという意見もあった 8。このような新しい教員
評価制度への危惧が蔓延している中,
「勤務評定として新教員評価システムを実施」のグループにお
ける各自治体がいかなる新しい教員評価システムを扱っているかを確認すると,以下のような対処
方策をとっていると見られた。
東京都や岩手県のように教員評価システムの名称自体を,「教職員人事評価制度」,「新昇給制度」
にし,はっきり評価結果を給与と連動させると明言した自治体がある一方で,宮城県の「新しい教
職員評価制度」のように,導入当初,県教育委員会は教育支援・教員の資質向上という趣旨を前面に
出し,教員の昇給・昇進させることに使うものではない明言する自治体があった 9。青森県の「教職
員の人材育成・評価制度」では,評価結果報告書を教育員会に提出するが,評価結果の活用について
は人材育成・能力開発にとどまって,人事配置や表彰制度への連動及び給与上には反映しないとさ
れている 10。また,秋田県の「教員評価制度」では,校内の人材配置には評価結果が反映されるが,
給与への反映については反映する予定はないという 11。その評価結果の活用分野について更に検討
する必要があるので後に論じるが,実際に「勤務評定として実施する」自治体の大半は新しい教員
評価システムの遂行に支障を来さないように,各地域の事情に合わせ,システムの導入や処遇に反
映する度合いなどにそれぞれ配慮と工夫を入れていることが分かった。
他方,もう一種教員評価システムの扱いが見られる。それは,「地公法に定める勤務評定とは別
途実施」というパターンである。このグループの自治体は国の方針に従いつつも,教職員の反感を
ひきおこさない方策を講じている。旧来の教員の人事評価を担っていた旧勤務評定が批判されてき
たが,それでも一定の機能を果たしているので新教員評価システムと並行に実施するという仕組み
である。そうすると,新しい教員評価システムが「人事」との関係から独立でき,評価結果の活用が
「人材育成・能力開発・資質向上」の活用分野に集中することになった。したがって,学校現場から
新制度の導入が教員の加担になったと言われつつも,比較的に激しい反対意見が少なくて済み,新
制度が教員の支援体制や学校組織の円滑に役に立つと考えられる。
詳しく「地公法に定める勤務評定とは別途実施」
(以下「別途実施」という)のグループにおける自
治体の評価結果の活用を見てみると,21 の自治体のうち,2 つの自治体(京都府,京都市)は管理職
に限り給与と連動する,2 つの自治体(長野県,愛媛県)は評価結果の部分的に(管理職に限り)給与
へ反映する,1 つの自治体(佐賀県)
は校内の人事配置に活用する,1 つの自治体(新潟市)は研修と表
彰で活用する,それ以外の 15 の自治体は評価結果をすべて「人材育成・能力開発・資質向上」
(以下
は「人材育成」という)に活用している(新潟県は+研修,静岡市は+表彰)という動向である。別途
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
実施の自治体においては,新しい教員評価システムの運用が人材育成にとどまり,最小限の活用で
新制度を導入する仕方で,教職員の反発を抑える傾向が読み取れる。したがって,勤評闘争の激し
い愛媛県が「一部の教育職員,学校で実施」
としている理由も納得できる。
ただし,
「別途実施」というような「折衷案」の背景には,評価者側の評価能力,評価結果の運用な
どによるトラブルの発生等を想定し,かつ,教職員組合との交渉もあるので,
「実質的な影響」をも
たらさないような配慮もあった。福島県の教育委員会関係者の話によると,
「本当は『目標管理』
(福
島県の新しい教員評価システムは『教職員の目標管理制度』という)1 本で,教職員評価は行うとい
うふうなものがベースにあったですけども,解決しなければいけない問題はやっぱり組合との兼ね
合いとかもありますし,評価者としての管理職の資質向上なんかも時間がかかるというようなこと
もあって,結局勤評を残したまま目標管理を併用して導入するというふうな経緯に至った」という
。各自治体はそれぞれの事情があるかもしれないが,この話から,目下「別途実施」という方策を
12
当面は選んだが,裏側に解決すべき諸課題が山積していることが分る。
現在は,全自治体の 68%は地方公務員法に定める勤務評定として実施し,32%は勤務評定とは「別
途実施」
としているが,千葉県が 2010(平成 22)年度の「別途実施」から,平成 23 年度に勤務評定とし
て実施に変更したことに見られるように,全国的には,公務員制度・評価制度の改革の定着過程を
慎重に観察しながら,資質向上に留まらないで,「人事管理」と一本化して進められる傾向にあると
思われる。
2 実施方法
日本全国における新しい教員評価の実施方法を概ねまとめると,目標管理手法に基づき,教職員
は年度当初に自己目標(教育目標)を設定し,各自治体の規定に沿いながら,目標達成過程に当たる
取り組み状況(能力評価)や目標の達成度(業績評価)またはその他の評価に当たる意欲について自
己申告する。その自己申告を踏まえながら評価者である教頭,校長が自らの観察と見解で評価を行
うという仕組みである。
文部科学省は新しい教員評価システムの実施方法について,
「能力評価」
,
「業績評価」
,
「その他
の評価」
(以下「評価領域」と総称する)というふうに分け,日本全国の実施状況を調べた。ここで注
意しなければならないのは,文部科学省の公開資料で使われた「能力評価」
,
「業績評価」
,
「その他
の評価」という表現の意義である。実際に目標管理手法を用いる教員評価システムには,教職員が
設定した目標に対する評価領域や項目の名称はそれぞれ違いがあり,一般的に「能力」
・
「実績」また
は「意欲」
という用語がよく見られが,宮崎県のように「役割達成度評価」
・
「職務行動評価」という表
現もある。そのため,文部科学省の公開資料で使われた「能力評価」と「業績評価」の表現は簡単に
識別するための通称に過ぎない。
平成23年度の時点では,
「55教育委員会が『能力評価』を実施しており,59教育委員会が『業績評価』
を実施しており,37 教育委員会が『その他の評価』を実施している」とまとめた 13。だが,全国の新
しい教員評価システムは目標管理手法を基盤に築いた制度であるので多種多様である。単純な合計
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日本における新教員評価システムの取組に関する考察
数値だけでは,実際の実施状況,ないし各自治体における新評価システムの「姿」を捉えることはで
きない。ここでは,文科省資料を踏まえ,各自治体がいかに目標管理手法と異なる評価項目を組み
合わせ,新しい評価制度を遂行してきたかを整理する。
表 2 能力評価・業績評価・その他の評価
【能力評価】
【業績評価】
【その他の評価】
岩手県,山形県,佐賀県,沖縄県(計 4)
北海道,福島県,茨城県,栃木県,群馬県,長野県,三重県,兵庫県,和歌山県, 秋田県,埼玉県,さいたま,東京都,
島根県,岡山県,徳島県,香川県,福岡県,長崎県,熊本県,宮崎県,鹿児島県, 愛媛県,千葉市,大分県(計 7)
札幌市,横浜市,浜松市,神戸市,岡山市,北九州市,福岡市(計 25)
【能力評価,業績評価,その他の評価】
【意欲】青森県,神奈川県,新潟県,富山県,石川県,福井県,山梨県,静岡県,滋賀県,京都府,奈良県,鳥取県,山
口県,仙台市,川崎市,相模原市,新潟市,名古屋市,京都市,静岡市。
【勤務実績を給与へ反映させるため,勤務評定に準じて,勤務成績の証明(管理職)】広島県,広島市。
【業績評価,能力評価に基づく総合評価】大阪府,大阪市,堺市,千葉県。
【昇給に係る勤務状況報告】宮城県。 【職務の状況評価】愛知県。 【意欲や態度の評価】高知県。
【意欲,態度の評価,総合評価】岐阜県。
※【 】は「その他の評価」の中身である(計 30)
実施方法について一番多く占めているタイプは「能力評価」
,
「業績評価」
,
「その他の評価」とい
う 3 つの評価領域をすべて取り入れるパターンである。「その他の評価」の内実に関しては,最も多
いのは意欲を評価することである。神奈川県をこのパターンの事例として取り上げて見ると,当県
の「教職員の新たな人事評価システムについて」によって,
「能力」とは職務を遂行するために必要
な専門的な知識や技能の保有,判断力等,職務を遂行する上で発揮された能力を指す。
「実績」とは
職務遂行の状況やその結果である。
「意欲」とは職務遂行の過程における取組姿勢を指し,職務を最
後までやり遂げようとする責任感,積極性,連携・協力姿勢,更には,学校目標等の達成に向けての
自己の役割や職責を踏まえた取組の姿勢を指すというものである 14。この定義から文科省の表現と
照らし合わせると,
「能力」
は能力評価に,
「実績」は業績評価に,「意欲」はその他の評価に当てはま
る。
他方,
「その他の評価」が「意欲」ではない自治体に関しては,能力評価と業績評価の枠を超え,職
務全体的にまとめて総合的に評価するという仕方である。ただし,文面上は「意欲」の評価と異なる
に見えるが,実は,トータル的に評価していくと,評価対象である教員の職務遂行の過程における
取組姿勢は必ず入ってくる。それは正に意欲として定義された部分である。そのため,その他の評
価の中身は名目が違うとは言え,実質上には同質性の高いものと見なすことができる。
第 18 次公務能率研究部会の調査報告によると,「より継続的に達成することが可能となることと
高次の課題への挑戦を尊重する観点から,
『意欲』も評価対象として勘案していくことが必要な場合
もあるものと考えられるが,意欲を評価するに当たっては,
『能力評価』の中で実際の行動過程を評
価するのが妥当であり,意欲を別項目として取り立てることが控えるべき」というふうに意欲態度
評価は位置づけられている 15。つまり,意欲を評価する際に,単に「意欲」を評価するのではなく,
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
実際に取った行動の適切さとその行動過程という観点から評価するものである。実際に意欲を評価
する神奈川県を見ると,
「意欲」は職務遂行の根幹となるため,職務分類を超え,共通評価項目とし
て評価することとなる 16。実績と能力評価の他に教員の積極的な取り組み姿勢を評価してあげたい
という考え方が潜んでいるのであろうが,
「意欲」というものは,部活だけに熱心であるとか,教科
教育には研究意欲がないとか,
実際は共通なものとして判断できないとも考えられる。そうすると,
共通として設定されている意欲はむしろ態度という言い方の方が適切であり,積極性・向上心・責
任感などの評価基準もあいまいのため,どちらかというとトータルな評価に近くて主観的な判断に
陥りがちではないだろうか。このことは評価の客観性と公正性を確保する際に不安定の要素となっ
た。いかに意欲の評価をより正確に評価者が理解できるかは評価の客観性と公正性に重要なポイン
トとなる。
表 3 3 つの評価領域による教員評価制度の事例―青森県の「評価シート」
(抜粋)17
評価項目 (職務分類)
評 価 要 素
職務の具体例
○知識・技能 ○分析力・理解力
○情報収集・活用力 ○判断力
○企画・計画力 ○折衝力・調整力
実績
○責任感 ○協調性 ○積極性
○向上心(課題意識)
○服務規律
○忍耐力・継続性
能力
学習
指導
○教科指導
○道徳教育
○総合的な学習の時間
意欲
共 通
着 眼 点
第 1 次評価
第 2 次評価
○自己目標への取組結果(質・量)
次,
2番目に多いタイプは能力評価と業績評価を用いるパターンである。このクループにおいては,
評価シートの構成には教職員の自己目標に対する達成度評価(業績評価)と目標達成に向かうプロ
セスの評価(能力評価)という 2 つ部分があるのが一般的である。各自治体の評価シートを詳しく見
ると意欲の評価項目が能力評価の枠に入っている例がよく見られる。この仕組は前述した公務能率
研究部会の調査意見と一致し,正確に捉えにくい意欲の評価と総合的な評価を切り捨て,自己目標
の達成プロセスにおける発揮された能力と業績だけに注目するというものである。これは評価対象
を自己目標に限定することによって目標達成過程にある具体的な行動に着目する方式で評価の客観
性をもたせるような考え方が窺える。
― ―
213
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
表 4 能力評価と業績評価併用の事例―北海道の「評価シート」
(抜粋)18
着眼点
能力
第 1 次 評 価
第 2 次 評 価
A B C
A B C
意欲
A B C
責任感,積極性,規律性,協
(特記事項)
調性
実績
学 習 指 導
知識・技能,判断力,計画力,
(特記事項)
情報収集力,活用力
A B C
達成度(進捗度),正確性,効
(特記事項)
率性,迅速性
(特記事項)
A B C
(特記事項)
A B C
(特記事項)
続いて,目標管理手法を前提とする 7 つの自治体が用いている「その他の評価」のみのパターンで
ある。事例を見てみると,東京都の場合は教員が設定した自己目標に対して取り組み姿勢,目標の
達成または残された課題は何かについて,自己評価を行い評価シートに記入し,評価者が自己評価
の結果を踏まえながら,自己目標ごとに,能力・情意・実績に分けて評価を行う。さらに各評価項目・
要素の重要度の順位を踏まえた上で,学校の課題や経営方針等を考慮しながら総合評価を行う 19。
埼玉県の場合は,教員が自己目標についての達成状況(実績)及び職務遂行の過程で発揮された能力
や執務姿勢(行動プロセス)を,総合的に自己評価し,評価者はそれを踏まえ,実績及び行動プロセ
スについて総合評価をする。秋田県は教員と評価者とも教員による自己目標に対してその達成状況
を記述した上で 5 段階の総合評価を行う 20。
文部科学省はこの種の評価実施方法について以下のようにまとめている 21。
東京都(能力評価,業績評価などを基にした総合評価)
埼玉県,さいたま市(業績と行動プロセス(能力と意欲)を総合的に評価)
秋田県(自己目標設定による管理手法と 5 段階絶対評価を併せた総合評価システム)
愛媛県(能力評価と業績評価を一体とした総合評)
千葉市(
「目標による管理」
の手法を活用した教員評価システム)
大分県(人事評価 - 能力,実績,姿勢・意欲の評価)
要するに,「その他の評価」のみという実施方法は全く能力や実績を評価しないというよりも,目
標管理手法を中心に教員の目標の遂行状況,課題をしっかりフォローすることで教員評価制度の趣
旨である教員の資質向上と学校の活性化を果たすことができると考えられ,行動(プロセス)に着目
して評価を行う仕組みであるとも言える。
― ―
214
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
表 5 その他の評価のみの事例―埼玉県「自己評価シート」22
学校名( ) 職名( ) 氏名( ) 職員番号( )
「目指す学
校像」
目 標 及 び 実 績
目標の達
成状況・
次年度へ
の課題
修正内容
所見・特記事項 ※修正評価
(評価の理由を
記するととも
に,特筆すべき
修正
実践がある場合
理由
はその事実を記
入する)
評 価
進行状況
の整理・
目標の修
正等
※修正申告
達成度
達成状況申告
評 価
方 策
今年度の (目標達成に向
目標
けた具体的な手
順や時期等)
自 己 評 価
中間申告
達成度
困難度
評価領域
当 初 申 告
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
研修
(目標・計画)
(成果・課題)
表 6 その他の評価の事例―埼玉県の「総合評価シート」
(抜粋)23
総合評価シート
評価領域別評価
Ⅰ( )
Ⅱ( )
Ⅲ( )
総合評価
第 1 次評価者
職名(教頭・事務長)
氏名
最終評価者
職名(校 長)
氏名
最後に 4 つの自治体だけが用いる「業績評価のみ」の評価パターンを見てみよう。能力 / 実績主義
に基づいた新人事管理システムの目的の一つは,組織のパフォーマンス(成果・業績)の向上を図る
ことであることから,業績評価は,原則的には目標管理の手法を用い,仕事の結果としての「成果」
のみで評価することとなる 24。具体的な実施方法は教員の自己目標に沿い,目標の達成度だけ評価
するということである。実際の評価シートを見たらわかるが,山形県の場合は,自己目標を評価す
る際に,職務遂行の取り組みと結果とを合わせた「実績」のみを評価する。岩手県の場合は,年 3 回
自己目標に対する職務取り組み・達成状況を「確認する」ということである。
― ―
215
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
表 7 業績評価のみの事例①―山形県の「評価シート」
(抜粋)25
【自己目標及び評価】
評 価 項 目
職務分類
実 績
自 己 目 標
自己目標
中間
最終
第 1 次評価者
第 2 次評価者
学習指導
表 8 業績評価のみの事例②―岩手県の「評価シート」
(抜粋)26
【勤務状況確認シート】
職務内容
職務課題
職務取組・達成状況
確 認 ①
確認日:
確 認 ②
確認日:
確 認 ③
確認日:
ア学級経営
イ学習指導
ウ生徒指導
その業績評価のみの実施方法に対する考え方について,山形県の教育委員会の関係者へ聞いたと
ころ,「本県でやっているこの教員評価システムがその人をすべて評価しているものではないし,
能力評価でもないので,被評価者である教員が抱えているすべてを評価するのではなく,あくまで
もその教員の目標に対する限定の評価システムだけでしかない。それが実績のみの評価というとこ
ろとつながる考え方であると思う」と説明した 27。この話から,極力で評価できるもの(実績)だけ
を評価するという慎重さが窺える。
ちなみに,文部科学省の公開資料によると,沖縄県もこの業績のみの評価パターンに入れられて
はいるが,詳細に検討すると,実は,教員による自己申告の部分では取り組み内容に対する記述と
目標達成度に対する 5 段階評価が求められた。また,管理職による業績評価の部分では,各自己目
標に能力・実績・意欲に分けて評価し,別に取り立てる総合評価もする。実施的には,沖縄県の教員
評価制度は「能力評価」
,
「業績評価」
,
「その他の評価」とも併用するタイプに入れるべきであると
考えられる。
― ―
216
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
表 9 業績評価のみの事例③―沖縄県の「評価シート」28
項目
評価要素
学習指導
学級経営・校務分掌
1 次評価者絶対評価
最終評価者絶対評価
①能 力
S A B C D
S A B C D
②実績(プロセス)
S A B C D
S A B C D
③意欲・態度
S A B C D
S A B C D
①能 力
S A B C D
S A B C D
②実績(プロセス)
S A B C D
S A B C D
③意欲・態度
S A B C D
S A B C D
総合評価
S A B C D
記 述 評 価
総合所見
備考
3 評価方法
次に,評価方法について,どのような基準(絶対評価,相対評価)で,誰が評価するのか(単数評価
者,複数評価者)
という点を検討する。
新しい教員評価システムには,
「教師の職務の特殊性等に留意しつつ,教師にやる気と自信をも
たせ,教師を育てる評価である事が重要である」と指摘された 29。つまり,教職員一人一人の能力開
発と人材育成のことが取り上げられ,教職員の間で優劣を競う性質の評価ではないと強調された。
絶対評価は,評価基準との関係だけを視野に置き,他の被評価者の評価結果に依存,左右しない評
価方法である 30 ことから,教員評価システムの目標管理手法に取り入れられたと考えられる。具体
的に絶対評価を行う際に,評価者が教員の自己目標の取り組み姿勢や達成度に対して,一定の評価
基準,標準となる行動例に基づき,他の被評価者に対する評価と比較することなく,被評価者に対
して評価が行われる。この絶対評価方式によると,学校現場に大事な同僚関係においても,相互の
優劣比較が回避できることで,同僚性の崩壊などマイナスの影響を最小限に守られると見込まれて
いる。また,他の被評価者らを含めた全体的な評価分布を勘案して評価する必要がないため,学校
の状況によっては,すべての被評価者に高い評価を与えることができるというメリットがあると考
えられている。
文部科学省が公表した「教員評価システムの取組状況」によると 31,平成 22 年度の時点では,岩手
県,宮城県,東京都,広島県,愛媛県,大分県,鹿児島県,横浜市,広島市,福岡市,計 10 の自治体を
除けば,他の 56 の自治体は絶対評価を用いて評価を行っていると報告されている。
それでは,なぜ 10 の自治体は絶対評価を行った上で,あえて相対評価を併用しているのであろう
か。それは,一言でいえば,業績評価の結果を昇給等に適切に反映させるためである。以下の整理
― ―
217
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
表から関係性が見えてくる。
表 10 絶対評価と相対評価を併用している自治体
評価
評価方法
岩手県
業績評価
絶対評価+相対評価(併用)
昇給・降給,勤勉手当
宮城県
その他の評価
絶対評価+相対評価(併用)
昇給・降給
東京都
その他の評価
絶対評価+相対評価(併用)
昇任,昇給・降給,条件附採用期間の勤務状況判定
能力評価
絶対評価+相対評価(併用)
人材育成,配置転換,昇任,表彰,条件附採用期間の勤務
状況判定,指導改善研修認定
その他の評価
(管理職)
絶対評価+相対評価(併用)
昇給・降給,勤勉手当
愛媛県
その他の評価
絶対評価+相対評価(併用)
研修,人材育成,配置転換,昇任,降任・免職,昇給・降給,
勤勉手当,表彰,条件附採用期間の勤務状況判定
大分県
能力評価
相対評価
研修,人材育成,配置転換,昇任,降任・免職,昇給・降給,
勤勉手当
鹿児島県
能力評価
絶対評価+相対評価(併用)
研修,人材育成,昇任,表彰,条件附採用期間の勤務状況
判定,指導改善研修の認定
広島県
横浜市
能力評価
相対評価
(高校管理職)
能力評価
広島市
福岡市
評価結果の活用分野
昇任,昇給・降給,条件附採用期間の勤務状況判定,
絶対評価+相対評価(併用)
その他の評価
絶対評価+相対評価(併用)
(高校管理職)
能力評価
絶対評価+相対評価(併用)
業績評価
絶対評価+相対評価(併用)
研修,人材育成,配置転換,昇任,表彰,条件附採用期間
の勤務状況判定,指導改善研修の認定
昇給・降給,勤勉手当
研修,昇給・降給,条件附採用期間の勤務状況判定,
上記の表で相対評価が用いられた場合に,その評価結果の活用分野では必ず人事配置や給与と関
連する。人事配置であろうと給与であろうと,絶対評価をそのまま処遇に反映させると組織全体の
バランスを崩れる。定員のある人事配置と限られる財源の中,評価の結果を適切に反映させるため
には,被評価者全体の評価結果分布を勘案して一定の割合で相対評価の結果を出す必要があると考
えられる。人事と給与を分配するためには,相対評価が必要不可欠ということである 32。
ここで注目したいのは,神奈川県,石川県,岐阜県,兵庫県,鳥取県,香川県,相模原市,堺市,岡
山市の評価方法である。これらの県は評価結果を人事配置や給与に反映させるように活用している
が,相対評価を用いることがなかった。絶対評価による評価結果をいかにそのまま処遇へ反映させ
ることができたのか,をさらなる調査研究によって今後明らかにしていきたい。
さて,教諭に対する評価者については,東京都,長野県,大分県,静岡市,名古屋市,愛知県(小・中),
大阪市(小・中)
,堺市(小・中)
の自治体のみ 33,評価者は校長 1 人となっている。その他の自治体(商
同自治体の高校,特別支援学校)はいずれ教頭(副校長)が第 1 評価者とし,校長は第 2 評価者という
ように複数評価者の体制を整えている。ただし,単一評価者である長野県の場合,「校長の判断に
より,教頭を面談に同席させるなど,評価の補助者として活動することができる」と補足され 34,場
― ―
218
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
合によって,実質上完全に単一評価者による評価ではないと言える。
評価の公正性と客観性を確保するため,複数の評価者による評価を行う必要があると指摘された
。ところが,岩手県が複数評価者による評価体制を取り入れながらも,「副校長が配置されていな
35
い場合にあっては,校長による一次評価のみで勤務状況確認を行う」という説明が実施要領で見ら
れた 36。つまり,岩手県では小規模の学校で実質上に単一評価者による評価が行われていると考え
られる。評価の公正性と客観性の観点から岩手県教育委員会関係者に聞いたところ,
「小規模の学
校では,校長先生が兼務で副校長先生が基本的にやっている。その場合だけはやむを得ず 1 人でや
るしかない。評価の公正性という部分のご意見は確かにそのとおりだと思いますが,本制度では特
に複数評価者という点にはそこは大前提としているが,優先事項としてではない」と説明された 37。
この話から,評価制度の客観性や公正性をこだわるような姿勢は強くなくて,学校の実情に合わせ
て制度を運用させる利便性への意識のほうが強意であると言えるであろう。
4 評価に関する面談
ここでは,各自治体の新教員評価システムにおける面談の実施方法と面談の目的について整理す
る。
「面談は,組織における目標等の共通認識を共有し,目標達成への動機付けを行うため,十分に行
う必要がある」と指摘された 38。教員の資質向上,学校の活性化を図ることが重要課題と位置づけ
られた新教員評価システムでは,
「面談」は評価者と被評価者との意思疎通の場になり,実施の時期
によって違う役割を果たすことになる。
年度当初に教員が目標を設定する際に,1 回目の面談が入り,当年度の目標について教員が自分
の捉え方を説明し,管理職員がその目標の難易度や学校目標との連結性などを踏まえアドバイスを
する場となる。年度途中に教員の目標遂行具合によって目標の変更や調整することが生じた時にも
面談が入り,管理職との相談をした上で目標の調整をする。この段階での面談は教員の目標遂行状
況の中間確認にもなる。最後に年度末には,最終評価をする前の面談であれば,評価者である管理
職員が面談を通じて,通常の観察によっては得にくい評価のための情報が得ることができるし,被
評価者の教員は面談によって評価者に弁明あるいは自己 PR の機会を与えることにもなる。最終評
価後の面談であれば,管理職員が教員に今年度のフィートバックや評価の開示を行う場になる。
― ―
219
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
表 11 面談の実施状況
面談の実施
定期的に実施
年1回
兵庫県(校長以外の教職員),神戸市(校長以外の教職員)
年2回
北海道,青森県,宮城県,山梨県,滋賀県 ,京都府 ,大阪府,和歌山県,鳥取県,広島県,
山口県,長崎県,熊本県,大分県,仙台市,千葉市,相模原市,大阪市,堺市,広島市,北九
州市
年2 ~ 3回
(2 回以上を含
む)
岩手県,栃木県 ,群馬県 ,埼玉県,富山県,福井県,徳島県,高知県,佐賀県,札幌市(2 回
以上),静岡市(2 回以上),浜松市(2 回以上),三重県(2 回以上),名古屋市。
年3回
秋田県,山形県 ,福島県 ,茨城県,千葉県,東京都,新潟県,石川県,長野県,静岡県,兵
庫県(校長),奈良県,島根県,岡山県,福岡県,宮崎県 ,鹿児島県,沖縄県,さいたま市,
新潟市,京都市,神戸市(校長),岡山市(県費負担教職員),福岡市
実施時期や回数を定め
ず必要に応じて実施
岐阜県,愛知県,香川県,愛媛県,岡山市(市費負担教職員),
その他
神奈川県,川崎市,横浜市(目標設定時は全員。中間面談,評価時面談など必要に応じて実
施)
文科省が公表した資料から見ると ,面談は定期的に実施するのが一般的である。2 回面談は年度
当初自己目標の設定段階と年末の自己評価実施前後に面談が入るというパターンである。2 回面談
は基本形としつつ,2 ~ 3 回面談のパターンは,その 2 回面談の間に,自己目標の調整や目標遂行状
況の確認などのため,必要に応じて年度途中に面談を行うという設定である。3 回面談というのは,
その中間面談は必ず行うというパターンである。その他の欄にある 3 つの自治体の面談方法に関し
ては,目標設定時の面談だけ確保され,その以外の面談は必要に応じて実施するという方法である。
同資料には面談の目的を示す「実施の理由」が示されている。66 の自治体とも「人材育成・能力開
発等についての相互の意思疎通を図るため」
,
「助言及び指導のため」という理由で面談を導入した。
そのうち更に 37 の自治体は「通常の観察によって得にくい評価のための情報を得るため」
,32 の自
治体は「異動希望,執務意欲,問題点等意見を聴取するため」
,28 の自治体は「被評価者に弁明又は
自己PRの機会を与えることなどにより,公平性を確保するため」といった理由もあげられている。
面談を通して,管理職員と教員一人一人が話をきちんと学校教育目標に向かって話し合う場がで
きてきたということは間違いなく高く評価されて良い。新教員評価システムにおいて面談は絶対に
不可欠な存在であるといってもいいはずであるが,表 11 から見れば,面談回数が年 1 回,あるいは
面談の時期や回数を定めず,必要に応じて実施する自治体もしばしばあるという実情がわかる。実
は,面談は管理職員と教員の意思疎通と目標管理の強化といったメリットがあるとはいえ,面談が
多ければ多いほど良いとは限らない。多忙の学校現場では時間を作って全教職員と話す場を設ける
ことは実に難しい。100 人も超えた大規模の学校とすれば,面談のために物理的な時間を膨大に使
うことが考えられ,いかに面談による意志疎通のメリットを保留しながら,多忙の学校現場では時
間を捻出できるかが目下喫緊の課題であると考えられる。
― ―
220
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
5 評価結果の開示
新しい教員評価システムでは,目標管理手法による PDCA サイクル,つまり Plan(目標設定)-
Do(実行)-Check(評価)-Action(改善)という循環で教員の資質保証と学校教育の改善を目指
すという狙いがある。前述したように,
「面談」を通じて Plan の目標設定と Do の実行段階では,管
理職員が教職員にサポートすることができ,Check の評価段階では,面談や複数評価者体制などの
工夫が評価結果に公正性と客観性を持たせる事ができることがわかった。最後 Action の改善段階
に関しては,一連の評価のステップ踏まえてきてまとめた評価の結果を教員に開示するとすれば,
被評価者に本年度の努力をフィードバックしながら来年度の課題を示すことができ,被評価者自身
の資質向上と学校の活性化にもつながることになる。宮城県の「教員評価制度に関する最終報告書」
でも,「教職員の資質向上と学校の活性化との観点と評価の客観性や公平性を確保するためにも評
価の結果を本人に提供することは意義が大きいものと考えられる」と位置付けられた 39。
以下,評価結果の開示に関する全国の取り組み状況について⑴評価結果の被評価者への開示と,
⑵開示内容の観点から整理してみよう 40。
⑴評価結果の被評価者への開示に関しては,福井県,香川県,愛媛県の 3 自治体は被評価者へ開示
しないことを原則としている。北海道,岩手県,宮城県,栃木県,岐阜県,奈良県,和歌山県,高知県,
福岡県,札幌市,北九州市の 11 自治体は希望に応じて開示するとしている。
次の 5 自治体は評価項目によって開示の仕方を決めている。例えば,長野県,熊本県,広島市の場
合,業績評価は開示するが能力評価は開示しない。石川県の場合,自己評価を行う項目についての
評価者評価だけを開示する。広島県の場合,管理職員に限り,昇給・勤勉手当に関わる勤務成績の
証明のみ希望に応じて開示する,というように評価項目によって開示の仕方を決めている。
また,5 自治体は被評価者の職務によって開示の仕方を決めている。例えば,兵庫県,神戸市は校
長に限り評価結果を開示し,校長以外の教職員は希望に応じて開示する。長崎県の場合は校長に限
り評価結果を開示し,校長以外の教職員には業績評価のみ開示する。岡山市の場合は県費負担教職
員には評価結果を開示するが,市費負担教職員には希望に応じて開示する。滋賀県の場合は管理職
員に限り評価結果を希望に応じて開示するが,管理職以外の教職員には開示しないことを原則とし
ている。
上述以外の 41 の自治体は評価結果を被評価者へ開示することを原則としている。
⑵開示内容に関しては,38 の自治体は評価結果をすべて開示するとし,28 の自治体は評価結果の
一部を開示するとしている。⑴被評価者への開示状況と比較すると,
「評価結果を被評価者へ開示
する」という 41 の自治体のうちでも,13 の自治体が評価結果の一部だけを開示するということであ
る。
以上の整理結果から,たとえ評価結果の開示は教職員の資質向上と繋がれ,PDCA サイクルの不
可欠の一環であるとはいえ,すべての被評価者にすべての評価結果を開示することを実現するには
まだまだ難しいのようである。また,
「希望に応じて評価結果を開示する」という開示方法に関して
は,実質的に評価結果が開示されてない可能性が高い。
― ―
221
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
宮城県の例を見てみよう。宮城県の某小学校校長へインタビュー調査した話 41 によれば,教員か
ら開示の要望は極めて例外的な実情にあることが分かり,恐らく開示要望イコール異議申し立ての
ような意味になっていることが推測された。結局,評価結果の開示は気軽に問い合わせられるよう
な開放的な雰囲気にはなっていないし,教員側も開示の要望を出すことに遠慮しているため,実質
的に評価結果が開示されてないとわかった。
6 評価結果の活用分野等
本文のはじめに,
「日本政府は教員の資質向上を図ることを重要課題と位置づけ,学校の活性化
と公務員制度改革の目的も視野にいれながら形骸化している勤務評定の代わりに,新教員評価シス
テムを導入する方針を決定した」
と指摘した。
「教員の資質向上」を図るには評価結果の開示や研修,
表彰制度の活かすによって,人材育成・能力開発・資質向上を果たす事ができる期待できる。「学校
の活性化」
を図るには,教員を昇任・降任を含む適材適所の配置転換が必要と考えられる。公務員制
度改革の主旨と一致する「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」には,確実の評価結
果を踏まえた上で昇給・勤勉手当といった給与への反映が有効である 42。言い換えれば,新教員評
価システムが教員の資質向上,学校の活性化,成果主義に基づく賃金体系という 3 つのミッション
をクリアするために,表彰制度の活用,適材適所の配置転換,昇給・勤勉手当の支給等の手段が有効
であると認められ,それらの諸手段を働かせるには根拠となる新しい評価システムによる評価結果
を欠かすことができない。
故に,教員評価制度の評価結果はいかに活用されているかによって,本評価システムの最終到達
点が違ってくるし,各自治体の評価結果の活用状況を見れば,当該自治体が教員評価に対する位置
付けや目的性が見えてくると考えられる。文科省の公開資料に基づいて,2011(平成 23)年 4 月の時
点での評価結果の活用分野について整理すると 43,表 12 のようにまとめられる。
表 12 を見ると,評価結果が一番活用された分野はやはりもっとも無難な教員の資質向上の分野に
あることがわかる。56 の自治体は「人材育成・能力開発・資質向上」に,23 の自治体は「研修」に,19
の自治体は「表彰」に活用している。それに対して,人事に関連する「配置転換」
,「昇任」
,「降任・
免職」の項目,あるいは給与に関する「昇給・降給」,「勤勉手当」の項目については全自治体の 30%
を超えない程度である。
表 12 評価結果の活用分野
評価結果の活用分野
教員の資質向上
学校の活性化
メリハリのある教員給与
人材育成・能力開発・
資質向上
研修
表彰
配置転換
昇任
降任・免職
昇給・降給
勤勉手当
56
23
19
19
23
6
25
20
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
7 苦情への対応
1966 年の ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」には,
「教員は不当と考える評価に対して
不服を申し立てる権利を有するものとする」と明記された 44。総務省人事院の「人事マニュアル」で
も,
「人事評価の公正性・透明性,信頼性の確保の観点から,人事評価のプロセス,評価結果,制度
全般において想定される苦情等に対し,適切に対応し効果的な解決を図ることとしている」と書か
れている 45。また,内閣府令第 4 条と政令第二十条第一項 46 によると,職員に開示された評価結果,
あるいはその他人事評価に関する職員の苦情への対応は,「苦情相談」及び「苦情処理」により行う
ものである。具体的には,苦情相談は被評価者により身近なところで,人事評価に係る苦情全般を
対象に,簡易・迅速な処理を行うことを目的とし,苦情処理は開示された評価結果に関する苦情,苦
情相談では解決されなかった苦情のみを対象にして,所定の手続に則り処理を行うと位置づけられ
ている 47。
新教員評価システムにおける苦情への対応状況に関しては,文部科学省が前述した政令を踏まえ
ながら「苦情相談の導入状況」
と「苦情処理の導入状況」に分け,さらに「これまで寄せられた苦情の
内容」について調査を行った。文科省が公表した実施状況の合計数から単純に見ると,苦情相談を
導入している教育委員会は 38 あり,今後導入する予定の教育委員会は 3,導入する予定のない教育
委員会は 16 であった。苦情処理を導入している教育委員会は 38 あり,今後導入する予定の教育委
員会は 4,導入する予定のない教育委員会は 15 であった。また,15 の教育委員会がその他の方法で
苦情に対応している。苦情内容に関しては,
「評価結果に関する苦情」は22件,
「評価者に対する苦情」
は10件,
「評価制度に対する苦情」
は4件であった。
「これまで苦情が寄せられていない」は19件であっ
た。つまり 19 の教育委員会はこれまで苦情が生じなかったということである 48。
これらの数値から,苦情内容については,47 の教育委員会 49 における合計 36 件の苦情のうち,
61%は評価結果に関する苦情,約 28%は評価者に対する苦情,11%は評価制度に対する苦情であっ
た。ただし,苦情対応状況に関する数値の中には,苦情相談と苦情処理両方とも取り入れている教
育委員会と片方しか取り入れていない教育委員会とがある。従って,新教員評価システムにおける
苦情対応の実際を明らかにするためには,さらに以下のタイプ分けが必要である。
苦情相談と苦情処理とも取り入れている教育委員会は青森県,宮城県,秋田県,福島県,茨城県,
千葉県,神奈川県,長野県,岐阜県,静岡県,鳥取県,島根県,高知県,福岡県,大分県,宮崎県,鹿
児島県,沖縄県,札幌市,仙台市,さいたま市,川崎市,相模原市,浜松市,京都市,北九州市,福岡市,
長崎県,横浜市(県費負担教職員)
,三重県 50,広島県 51,山口県,東京都,兵庫県,神戸市 52 である。
文科省の公開調査資料の補足によると,
「苦情相談」とは手続き面を含め評価に関する全般的な苦情
について相談できる体制を意味し,
「苦情処理」とは,苦情相談に続く第二段階として,本人の申し
出に基づき,任免権者側で改めて評価結果の当否等を点検,調査,審査する体制を意味する 53。そ
のため,上述の地域では評価結果のみではなく,評価制度に対する全般的な苦情も受け付け,さら
に事情に応じて再審の手続きによる評価結果の変更も認められる。ちなみに,埼玉県,大阪府,大
阪市,堺市では,苦情相談と苦情処理とも行っているが,評価の結果に関する苦情のみに対応する。
― ―
223
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
次に,苦情相談のみ取り入れている教育委員会は岩手県,横浜市(市費負担教員)
,広島市,岡山
県 54,奈良県,京都府 55 であり,苦情処理のみの教育委員会は北海道,栃木県,群馬県(処理は試行
的に導入)
である。その中で,苦情相談のみの地域はいずれも評価結果が処遇と関わり,苦情処理の
みの地域はすべて評価結果を人事配置や処遇に反映することがないという傾向が見られる。つまり,
評価結果と処遇とを結びつける地域は任免権者による評価結果への点検,再審が認められない一方,
人材育成に評価結果が活かされた地域ではあえて真剣に評価結果への再審が認められているという
興味深い構成となっている。
最後に,両方とも未実施となっている教育委員会は新潟県,富山県,香川県,新潟市,愛媛県,佐
賀県,熊本県,山梨県,岡山県である。苦情への対応体制を導入することを検討中である教育委員
会は山形県,石川県,福井県,滋賀県,和歌山県,徳島県である。千葉市,愛知県,名古屋市,静岡県
では,苦情相談と苦情処理とを今後導入する予定である。これらの地域では,香川県と石川県を除
けば,いずれも新教員評価システムと勤務評定と別途実施している地域である。つまり,新しい教
員評価による評価結果を主に人材育成に活かし,給与へ反映させていない自治体である。
山梨県と岡山県では評価結果が人事と給与に反映されるようになった場合には,苦情処理を導入
する予定である。一方,香川県と石川県に関しては,すでに評価結果を処遇に反映させているにも
かかわらず,苦情への対応体制を設けていない。この点については,さらに追及する必要がある。
8 全体的な考察
新しい教員評価システムの実施状況とその位置づけに関して,2011(平成 23)年度の時点では,45
の自治体は「地方公務員に定める勤務評定として実施」とし,21 の自治体は「地方公務員に定める勤
務評定とは別途実施」とすることが分かった。勤務評定として教員評価を実施した各自治体が評価
結果と処遇面とが繋がることによるとトラブルや反発を想定しているため,評価制度の導入と実施
にあたりいろいろな制度上の配慮や工夫が見られた。さらに,別途実施する自治体の場合,教職員
の反発を抑えるために評価結果を最小限に活かすことで新制度を導入したが,実はその裏側に評価
者側の評価能力,評価結果の運用など解決すべき諸課題があると分かった。
新しい教員評価システムの実施方法に関しては,「能力評価,業績評価,その他の評価」という 3
つの評価項目で評価実施する自治体は 30 あり,教職の特性を配慮しつつ,能力と実績の他に評価し
がたい取組姿勢も評価に取り入れられた。
「能力評価と業績評価」を併用し実施する自治体は25あり,
目標の達成と目標達成するために発揮された能力だけに注目するという点は主観的な判断を抑制
し,評価になる対象を限定することによって評価の客観性を担保しようという考え方が窺える。総
合的に評価するという「その他の評価」
の実施方法は 7 つの自治体がある。目標管理手法を中心に教
員の目標の遂行状況,課題をしっかりフォローすることで教員評価制度の趣旨である教員の資質向
上と学校の活性化を果たすことができると考えられる。また,
「業績評価のみ」の実施方法は 4 の自
4
4
4
4
4
治体が用いる。評価できるもの(実績)
だけ評価するという教育委員会の慎重さが見られた。
評価方法に関しては,56 の自治体は絶対評価を用いて評価を行い,それ以外の 10 の自治体は絶対
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
評価と相対評価を併用して評価を行う。その絶対評価と相対評価と併用する 10 の自治体はいずれ
も評価結果を人事配置や給与の反映に活用されるという関連が分かり,定員のある人事配置と限ら
れる財源の中,評価の結果を適切に反映させるためには,相対評価が必要不可欠ということである。
評価者については,8 の自治体だけは校長一人だけという単一評価者の評価方法であり,その他の
58 の自治体はいずれ教頭が第 1 評価者とし,校長は第 2 評価者という複数評価者の評価方法とする。
評価結果の開示に関する全国の取り組み状況については,41 の自治体は「評価結果を被評価者へ
開示すること」
を原則としている。3 自治体は「被評価者へ開示しない」とし,11 自治体は「希望に応
じて開示する」
としている。また,5 自治体は「評価項目によって開示の仕方」を決め,5 自治体は「被
評価者の職務によって開示の仕方を決める」という開示の仕方をとっている。そもそも新しい教員
評価システムは,評価結果に関する相互理解を十分に図り,PDCA という「向上の循環」を確立し
ていくことが重要であると考えられていたはずである。もし評価結果が開示されていないならば,
教員が管理職員による最終評価からのフィートバックが得られないため,教員の資質向上に影響を
与え,教員と管理職との信頼関係が損なわれる可能性があり,学校運営面にマイナスの影響をもた
らすともいえるであろう。したがって評価結果の開示ができない理由を見付け,それを解決してい
くことは今後の課題であると考えられる。
最後,評価結果の活用分野に関しては,一番活用された分野はやはりもっとも無難な教員の資質
向上の分野にあり,
全自治体の84%を占める。それに対して人事に関連する「配置転換」,
「昇任」,
「降
任・免職」
の項目,あるいは給与に関する「昇給・降給」,「勤勉手当」の項目に評価結果の活用状況つ
いては全自治体の 30%を超えない程度であるとわかった。このデータから,新しい教員評価システ
ムを通して公務員制度改革の主旨である「能力・職責・業績を反映した新給与制度の確立」56,
「評
価結果について適切な処遇への反映を図ること」には,まだまだ改善し努力する余地があることが
指摘できる。
【注】
1 公務員制度改革大綱,内閣官房行政改革推進事務局,2001 年 12 月 25 日
http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/koumuin/taikou/honbun.html より
2 「今後の教員免許制度のあり方について」,中央教育審議会答申,2002 年 2 月 21 日。
3 新しい教員評価システムの取り組み状況(平成 18 年 10 月現在),中教審初等中等教育分科会教職員給与の在り方
に関するワーキンググループ第 8 回―資料 6 ,文部科学省ホームページより
4 文部科学省「教員評価システムの取組状況について」
(2011(平成 23)年度の報道発表),「実施状況,勤務評定とし
ての位置付け,実施方法(その 1)」,文部科学省ホームページより。
5 東京都教育職員人事研究会編著(2000)
,『東京都の教育職員人事考課制度』,6-11 頁。八尾坂修編集(2005a),『新
たな教員評価の導入と展開』教育開発研究所,3-14 頁。
6 中央教育審議会答申「今後の教員免許制度のあり方について」と中央教育審議会答申「新しい時代における教養教
育のあり方について」,2002 年 2 月 21 日,文部科学省ホームページより。
7 「教員評価システムの取組状況(平成 23 年 4 月 1 日現在)
(その 1)」,文部科学省ホームページより
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225
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
8 2005 年 3 月 23 日,義務教育特別部会(第 3 回)議事 より
9 宮城県教育委員会関係者へのインタビュー調査より(2010 年 6 月)
10 青森県弘前市教育委員会関係者へのインタビュー調査より(2009 年 10 月)
11 秋田県教育委員会関係者へのインタビュー調査より(2010 年 8 月)
12 福島県教育委員会関係者へのインタビュー調査より(2010 年 7 月)
13 「教員評価システムの取組状況(平成 23 年 4 月 1 日現在)
(その 1)」,文部科学省ホームページより
14 神奈川県教育委員会(2003)
「教職員の新たな人事評価システムについて」,13 頁
15 第 18 次公務能率研究部会「地方公共団体における人事評価システムのあり方に関する調査研究―新たな評価シス
テムの導入に向けて」,2004 年 3 月,24 頁
16 神奈川県教育委員会(2003)
「教職員の新たな人事評価システムについて」,14 頁
17 青森県教育委員会(2008),「教員評価シート【教諭】
(小学校,中学校,高等学校)第 3 表の 1
18 (北海道)教員の評価に関する検討委員会(2005),「北海道の教員の評価制度について」
(報告),資料集―評価者
評価シート《教諭》
19 (東京都)教員等人事考課制度導入に関する検討委員会(1999),「教育職員の人事考課制度について」
(最終まと
め),第 3 章~第 4 章(ページ数を掲載なし)
20 埼玉県教育委員会(2010)
「『目指す学校像』の実現に向けて教職員評価システムの手引き」,20-28 ページ
21 「教員評価システムの取組状況(平成 23 年 4 月 1 日現在)
(その 1)」,文部科学省ホームページより
22 埼玉県教育委員会,自己評価シート(教諭)様式 1-4
23 (埼玉県)自己評価シート(様式 1-4 教諭),埼玉県教育委員会ホームページより
24 第 18 次公務能率研究部会「地方公共団体における人事評価システムのあり方に関する調査研究 新たな評価シス
テムの導入に向けて」,2004 年 3 月,24 頁
25 山形県教育委員会,「平成 23 年度県費負担教職員の評価に関する試行のための手引き」,教員評価シート(主幹教
諭・教諭等用)
〈第 2 号様式〉
26 岩手県教育委員会,新昇給制度実施要領(資料 2―勤務状況確認シート【教諭用】)
27 山形県教育委員会関係者へのインタビュー調査より(2010 年 8 月)
28 沖縄県教育委員会,業績評価書様式 2-6(教諭用),沖縄県教育委員会ホームページより
29 中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」,2005 年 10 月 26 日。
30 前掲「地方公共団体における人事評価システムのあり方に関する調査研究 新たな評価システムの導入に向け
て」,2004 年 3 月,10 頁
31 文部科学省(2010)
「教員評価システムの取組状況について」その 2(平成 22 年度の報道発表),文部科学省ホーム
ページより
32 価値総合研究所(2009)
「公務員の人事評価の活用について~民間企業との比較をもとに」
『Best Value』Vol.21
33 前掲「教員評価システムの取組状況について」その 2 の調査資料によれば,大阪府小中学校も単一評価者であった
が,2011 年 4 月大阪府教育委員会が公表した「教職員の評価・育成システム―手引き」
(改定)により,大阪府小中学
校における教諭の評価者はすでに複数者による評価となったことが確認できた。
34 長野県教育委員会(2012)
「教職員評価制度の概要について」,2 頁
35 前掲「地方公共団体における人事評価システムのあり方に関する調査研究 新たな評価システムの導入に向け
て」,2004 年 3 月,16 頁と 36 頁
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226
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 61 集・第 1 号(2012 年)
36 岩手県教育委員会(2010),「新昇給制度実施要領(市町村立学校・県立学校)」,2 頁
37 岩手県教育委員会関係者へのインタビュー調査より(2010 年 8 月)
38 前掲,「地方公共団体における人事評価システムのあり方に関する調査研究 新たな評価システムの導入に向け
て」,72 頁
39 宮城県教育委員会(2005)
「新しい評価システムに関する提言(最終提言)」,11 頁
40 「教員評価システムの取組状況(平成 22 年 4 月 1 日現在)
(その 5)」,文部科学省ホームページより
41 宮城県某小学校校長へのインタビュー調査より(2010 年 3 月)
42 中央教育審議会(2004)
「学校の組織運営のあり方について(作業部会の審議のまとめ)
〈要旨〉」,(3)教職員の評
価と処遇,文部科学省ホームページより
43 文部科学省(2011)
「教員評価システムの取組状況(平成 23 年 4 月 1 日現在)」
(その 2),文部科学省ホームページよ
り
44 ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」
(1966)
,第 64 項(2)
45 総務省・人事院(2009),「人事マニュアル」,47 頁
46 人事評価の基準,方法等に関する政令(平成二十一年三月六日政令第三十一号),第 20 条第 1 項
47 同上「人事マニュアル」,48 頁。
48 文部科学省(2010)
「教員評価システムの取組状況について」その 6(平成 22 年度の報道発表),文部科学省ホーム
ページより
49 調査対象となる全 66 の教育委員会は苦情が寄せられていない 19 の教育委員会を引いた数となる。
50 三重県が苦情処理を導入する予定である。
51 管理職のみ苦情相談と苦情処理の対象となる。現在一般教職員の評価結果はまだ給与に反映されていないため,
苦情対応の対象に当たらない。
52 山口県,東京都,兵庫県,神戸市とも一般教職員のみ苦情相談と苦情処理の対象となる。
53 前掲「教員評価システムの取組状況について」その 6(平成 22 年度の報道発表)の注
54 岡山市では苦情処理が評価結果を人事給与への反映することに合わせて導入する予定である。
55 奈良県と京都府では苦情相談が制度的に導入されていないが,担当課に相談等あれば個別に対応するという方法
となる。
56 中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会学校の組織運営に関する作業部会(2004)第一回目配布資料 6
―「学校の組織運営に関する資料の公務員制度改革について」,文部科学省ホームページより
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227
日本における新教員評価システムの取組に関する考察
A Study of Implementation of the New Evaluation System for
Teachers in Japan
Yi Ting Lai
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
This study is aimed to explore the purpose, the significance and the status of a nationwide
implementation of the new evaluation system for Japanese teachers. The study is based on the
report from "The status of efforts to teacher evaluation system" by the Ministry of Education,
Culture, Sports, Science, and Technology (MEXT) conducted the Board of Education among the
47 prefectures and 19 designated cities.
In 2000, the local Tokyo government took the initiative to introduce a new personnel
evaluation system prior to the requirement from the national Japanese government. In order to
enhance teachers’ qualification, in 2002, the Japanese Government prioritized the personnel
evaluation and school activation organization as an important issue, and matched it with the
system reform of the Civil Service., As a result, the Japanese Government decided to implement
the policy of the new teacher evaluation system.
Based on the MEXT survey data published in 2006, the survey mention that more than half
of the local governments still retain the duty assessment system (the old personnel evaluation
system) in addition to the implementation of the new teacher evaluation system. Furthermore,
there were two local governments which still did not implement the new teacher evaluation
system. This showed that the majority of local governments held a wait-and-see attitude and
uncertainty for the new teacher evaluation system.
It has been one decade since the new teacher evaluation system was proposed in 2002 by
MEXT. The system and the implementation of the Civil Service Reform have gradually entered
into a stabilized stage. Thus, it is necessary to confirm and examine the status of the nationwide
implementation of the teacher evaluation system.
In order to organize and analyze the new teacher evaluation system, the following aspects
are considered: the implementation methods, the evaluation modes, the evaluation interviews,
disclosure of the evaluation results, the responses to complaints about the evaluation results from
teachers, and the evaluation results that will be applied to personnel changes.
Keywords:new evaluation system for teacher, management by objective
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