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社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE.
同期 CDMA マルチユーザ受信方式における分割 BBD 法
高野
友佑†
関屋
大雄†
呂 建明†
谷萩 隆嗣†
† 千葉大学大学院自然科学研究科 〒 263–8522 千葉県千葉市稲毛区弥生町 1-33
E-mail: †[email protected], ††{sekiya,jmlu,yahagi}@faculty.chiba-u.jp
あらまし
マルチユーザ受信方式のための分枝限定 (BBD) 法に基づく検出器は, 最尤検出器 (MLD) に近い誤り率を
持つが, その最大計算量はユーザ数の増加に伴い, 指数関数的に増加するため実際のシステムへ適用することは困難で
あるとされている. 本論文では, マルチユーザ受信方式における分割 BBD 法を提案する. 提案方式では, ユーザをグ
ループに分けることで, BBD 法の最大計算量を大幅に削減する. また, 各グループが複数個の解候補を導出し, 各グ
ループの複数個の解候補の全組合せの中から最良の解を選択することで, 提案方式の誤り率を改善する. 計算機シミュ
レーションにより, 提案方式の性能を評価する.
キーワード
直接拡散符号分割多元接続, 多元接続干渉, 分枝限定法
Multiuser Detection with Branch-and-Bound-Based Algorithm
Using User Grouping for Synchronous CDMA
Yusuke TAKANO† , Hiroo SEKIYA† , Jianming LU† , and Takashi YAHAGI†
† Graduate School of Science and Technology ,Chiba University 1–33, Yayoi-cho, Inage-ku, Chiba, 263-8522
E-mail: †[email protected], ††{sekiya,jmlu,yahagi}@faculty.chiba-u.jp
Abstract Branch-and-Bound method for multiuser detection (MUD) achieves close to the performance of the
Maximum Likelihood Detector (MLD). However, it is unlikely to be implemented in a practical system since the
worst case computational cost of the BBD method grows exponentially in the number of users. In this paper, we
propose a novel method for MUD based on the branch-and-bound (BBD) method using user grouping. The worst
case computational cost of the proposed method is much less than that of the BBD method by partitioning all users
into some disjoint groups. Moreover, some candidate solutions are derived in each group. For the improvement of
the performance, finally, the best solution is determined from all combinations of the candidate solutions in the
proposed method. The performance of the proposed method is evaluated by computer simulation.
Key words DS-CDMA, Multiple Access Interference, Branch-and-Bound method
1. は じ め に
列が特別な形を持たなければ, 一般的に MLD は NP 困難と
なる [2]- [4]. このため MLD を実際のシステムへ適用するこ
直接拡散符号分割多元接続 (DS-CDMA: Direct Sequence-
とは困難であるとされている [2]. そこで, MLD より少ない計
Code Division Multiple Access) 方式では, 複数のユーザが同
算量を持つ準最適 MUD の研究が行われている. 広く知られ
時に同一の周波数帯域を使用して通信を行う. そのため, 他
ている準最適 MUD に, デコリレータ [2], 最小平均 2 乗誤差
のユーザの信号が干渉となる, 多元接続干渉 (MAI: Multiple
(MMSE:Minimun Mean-Square Error) に基づく検出器 [5], マ
Access Interference) がシステム容量を制限する要因となって
ルチステージ検出器 [6], [7] や判定帰還型検出器 (DFD:Decision-
いる. MAI の問題を解決する技術として, マルチユーザ検出
Feedback detector) [8]- [10] が挙げられる. MUD では, 計算量
(MUD:Multiuser Detection) がある. ここで, MUD の性能を
と GDE 率の間にトレードオフの関係がある. 文献 [11] におい
比較する指標の 1 つにグループ検出誤り (GDE:Group Detec-
て, 様々な MUD におけるこのトレードオフに関しての比較が
tion Error) 率がある. MUD の中で最も小さい GDE 率を持
行われた. [11] では, 分枝限定 (BBD:Branch and Bound) 法に
つ最適 MUD は最尤検出器 (MLD:Maximum Likelihood De-
基づく検出器 [12] が良いトレードオフを持つ準最適 MUD の 1
tector) である. しかし, 各ユーザの拡散符号間の相互相関行
つとして挙げている.
—1—
MUD 問題は 2 値 2 次計画問題として扱うことができる. そ
ここで, y は i 番目のユーザの逆拡散後の受信ビット yi を要
のため, BBD 法のような 2 値 2 次計画問題を効率良く解く探
素とする列ベクトルである. また, b は i 番目のユーザの送
索方法を MUD に用いることは有効となる. BBD 法を用いた
信ビット bi を i 列目の要素とする列ベクトルである. そして,
解の探索は, “Search” ステージと “Confirm” ステージに分け
H = WRW と表現される. ここで, R は i 番目と j 番目のユー
ることができる [12]. “Search” ステージの探索では, 初期暫定
ザの拡散符号間の相互相関値 rij を i 行 j 列目の要素とする相
解が導出される. そして, “Confirm” ステージの探索では不必
互相関行列である, W は i 番目のユーザの受信電力 wii を i 行
要な探索を省略することにより, 効率良く探索を行う. これに
i 列目の要素とする対角行列である. また, n は i 番目のユーザ
より, BBD 法は, その平均計算量を MLD より削減し [12], さ
の逆拡散後の信号出力中の雑音成分 ni を i 行目の要素とする
らに, MLD に近い GDE 率を達成する [11]. しかし, BBD 法の
列ベクトルである. MUD は y から b を復元することを目的と
最大計算量は MLD と同様に, K の増加に伴い, 指数関数的に
する. 式 (1) の最適解は, MLD により得られる解である. MLD
増加する [12]. 従って, BBD 法は平均計算量においては, 実用
の目的関数は次式で与えられる [2].
範囲内の計算量であるが, その最大計算量のため MLD と同様
ΦML : b̂ = arg
に実際のシステムへ適用されることは難しい [13].
本論文では, マルチユーザ受信方式のための分割 BBD 法を
提案する. 提案方式では, BBD 法の “Search” ステージの探索
の代わりに Decorrelating DFD(DDFD) [10] を用いて, 初期暫
定解を導出する. そして, 各ユーザは必ずいずれかの 1 つのグ
ループに属するように, 全ユーザを複数個のグループに平均的
に分割する. ユーザ分割後, 分割されたグループに対して BBD
法の “Confirm” ステージの探索を全グループ同時に行う. こ
こで, 各グループの “Confirm” ステージの探索では, 他グルー
プのユーザの信号は雑音とみなせる. そこで, 提案方式では各
グループにおいて “Confirm” ステージの探索を行う前に, 他グ
ループのユーザの信号を, 初期暫定解より生成した送信信号の
レプリカを用いて除去する. しかし, 他グループのユーザの信
号を完全に除去することはできないため, 各グループにおける
BBD 法の “Confirm” ステージの探索により得られる解は精度
が高いとはいえない. そこで, BBD 法は “Confirm” ステージの
探索において複数個の解候補を導出する. そして, 最終的な解と
して, 各グループの複数個の解候補の全組合せの中から最良の
解を選択する. 提案方式は, “Confirm” ステージにおいてユー
ザ分割を行うことにより, その最大計算量は MLD 及び BBD
法の最大計算量より大幅に削減できる. 本論文では O(K 3.5 ) の
計算量を上限 [14], [15] としたとき, 提案方式の最大計算量が実
際のシステムへ適用可能な大きさであることを示す. また, 計算
機シミュレーションにより, 提案方式の平均計算量も BBD 法
の平均計算量より削減でき, この時, 提案方式と BBD 法が同じ
GDE 率を達成する時の SNR の差が 1dB 以内であることを示
す. さらに, 文献 [11] で示された MUD の GDE 率と最大計算
min
b∈{−1,+1}K
(bT Hb − 2yT b)
(2)
MLD では, まず, 全ユーザの送信ビット b の 2K 個の組合せ
送信された信号を推定する. MLD の計算量は O(2K ) であり,
ユーザ数の増加に伴い, 指数関数的に増加するという問題点が
ある. この計算量のため, MLD を実際のシステムへ適用するこ
とは困難とされている [2]. ここで, K ユーザの送信ビット b の
2K 個の組合せは深さが K である完全 2 分木を用いて表現でき
る. bk がとり得る値である {−1, +1} にそれぞれ枝を割り当て,
さらに, bk に割り当てられたそれぞれの枝に対して, bk+1 がと
り得る値である {−1, +1} に割り当てられる枝を接続する. こ
れを全ての bk (k = 1, . . . , K) に対して行うと, 深さが K であ
る完全 2 分木となる. この完全 2 分木において, 根ノードから
葉ノードまでの 2K 個のパスは全ユーザの送信ビットの 2K 個
の組合せに対応する. すなわち, MLD は, 木全体の 2K 個のパ
ス中から根ノードから葉ノードまでの 1 つのパスを選び, その
パスを構成するそれぞれの枝が持つ値を解としていると考えら
れる. そのため, 木を効率的に探索する手法を MUD に用いる
ことは有効となる.
3. BBD 法を用いた MUD [12]
BBD 法は木を効率的に探索する手法として知られている.
近年, BBD 法を用いた MUD が提案された [12]. BBD 法の目
的関数は以下のようにして導かれる. H のコレスキー分解を
H = LT L とする. L は下三角行列であり, T は転置を示す.
H−1 = L−1 L−T より, (2) は
ΦML : b̂ = arg
量の関係図において提案方式を評価することにより, 提案方式
min
b∈{−1,+1}K
kLb − ỹk2
(3)
は GDE 率と計算量の関係の視点から優れた MUD であること
と書き換えることができる. ここで, A−1 は A の逆行列を示
を明らかにする.
す. (3) において, D = Lb とすると
2. システムモデルと最適 MUD [2]
ΦML : b̂ = arg
min
kD − ỹk2
min
K
X
(Dk − ỹk )2 b∈{−1,+1}K
本論文では, AWGN チャネル上において到着信号のタイミ
ングが全て同期している同期 CDMA(S-CDMA:Synchronous
CDMA) を考える. S-CDMA システムにおいて, ユーザ数を
K とする時, 受信信号の逆拡散後の信号出力 y は次式で与えら
れる.
y = Hb + n (1)
= arg
b∈{−1,+1}K
(4)
k=1
と な る. (4) よ り, BBD 法 の 目 的 は 最 小 の kD − ỹk2 =
PK
2
k=1 (Dk − ỹk ) を与える b を見つけることである. また, Dk
の値は最初の k 番目までのユーザの送信データ (b1 , b2 , . . . , bk )
—2—
(b1 , b2 , b3 ) = (1, 1, 1) を最終的な解とする.
ξ0 = 0
k = 0, level 0 (Root node)
BBD 法は, 2 分木の探索を効率良く行い, その平均計算量を
MLD より削減し [12], さらに, 最も MLD に近い GDE 率を達
ξ1 = 0.3
1 b1 = 1
ξ1 = 8.5
k = 1, level 1 b1 = -1 6
成する [11]. ここで, 本論文では平均計算量と最大計算量の 2 つ
の計算量を扱う. 平均計算量は, 1 回の検出に必要な計算量の平
均値を示し, 最大計算量は, 検出器が実行し得る最大の計算量で
k = 2, level 2
ξ2 = 0.4
b2 = -1 2
ξ2 = 1.7
ある. BBD 法の平均計算量は実際のシステムに適用できる範
4 b2 = 1
囲の大きさである [11]. しかし, BBD 法の最大計算量はユーザ
数の増加に伴い指数関数的に増加する. BBD 法の最大計算量
ξ3 = 7.5
k = 3, level 3 (Bottom) b3 = -1 3
UPPER = 7.5
ξ3 = 1.9
5 b3 = 1
UPPER = 1.9
図 1 ユーザ数 K = 3 の BBD 法の探索の一例
を与えることにより一意に定まる. そこで,
k
X
ξk =
(Di − ỹi )2
は次式で与えられる [12].
K(K + 3)
+ 3 · 2K−1 − K − 2
2
(K + 3)(K + 4)
Additions = K(K + 1) + 5 · 2K −
2
(6)
Multiplications =
(6) において, 両式の右辺第 1 項は “Search” ステージの探索に
(5)
i=1
を 与 え る と, BBD 法 は, 2K 個 の 葉 ノ ー ド の 中 か ら 最 小 の
ξK = kD − ỹk2 を見つける問題と等価である. ここで, BBD 法
の探索は, “Search” ステージと “Confirm” ステージの 2 つの
必要な計算量である. そして, 第 2 項以降が “Confirm” ステー
ジの探索に必要な計算量である. つまり, (6) より BBD 法の最
大計算量は, “Confirm” ステージのための計算量が支配的であ
り, その計算量は K の増加に伴い, 指数関数的に増加すること
が分かる. そのため, BBD 法を実際のシステムへ適用すること
は困難となる [13].
ステージに分けることができる. 第 1 ステージである “Search”
ステージにおいて初期暫定解が導出される. ここで, 暫定解とは
探索中のある時点で最適と考えられる解である. また, “Search”
ステージの動作は DDFD と同一であり, 得られる初期暫定解は
DDFD の出力と等しい [12]. ところで, (5) より, ξk <
= ξk+1 と
なる. “Confirm” ステージでは, この関係より, 探索中に暫定
解の与える ξK より大きい ξk を持つノードがあれば, そのノー
ドを根とする部分木の葉ノードは暫定解の与える ξK より小さ
い ξK を持たないため, この部分木の探索を省略する. もし, 葉
ノードに到達したとき, その葉ノードが与える ξK が暫定解の
与える ξK より小さければ, 暫定解を更新し, “Confirm” ステー
ジの探索を続ける. 図 1 にユーザ数 K = 3 である時の 2 分木
の探索の一例を示す. 図 1 の 2 分木は以下のように探索され
る. “Search” ステージでは, BBD 法はノード 1, ノード 2, ノー
ド 3 の順で探索する. ノード 3 は葉ノードであるので, 根ノー
ドからノード 3 までのパス (b1 , b2 , b3 ) = (1, −1, 1) を初期暫定
4. 提 案 方 式
本論文では, MUD のための分割 BBD 法を提案する. 図 2
に提案する受信機の構成を示す. 図 2 において, r(t) は時刻 t
における受信信号, b̂i は時刻 t における i 番目のユーザの判定
ビットを表す. ここで, 提案方式の処理を以下に示す. 提案方
式では, まず整合フィルタ (MF:Matched Filter) により受信信
号を逆拡散する. 次に, 逆拡散後の受信信号に対して DDFD を
適用し, 初期暫定解 d ∈ RK を導出する. この初期暫定解は,
BBD 法の “Search” ステージを適用して導出される初期暫定
解と等しい. 初期暫定解 d を獲得後, 各ユーザは必ずいずれ
か 1 つのグループに属するように K ユーザを M 個のグルー
プ G1 , G2 , . . . , GM に平均的に分割する. すなわち, NGm をグ
P
ループ Gm のユーザ数とすると M
m=1 NGm = K となる. ユー
ザ分割を考慮すると, (1) は次式のように表すことができる.
5 へ到着する. ノード 5 では ξ3 = 1.9 <UPPER となっており,
[yG1 , yG2 , · · · , yGM ]T
3
3 2
32
2
nG1
bG1
HG1 G1 HG1 G2 · · · HG1 GM
7
7 6
76
6
6 HG2 G1 HG2 G2 · · · HG2 GM 7 6 bG2 7 6 nG2 7
7
7 6
76
6
=6
76 . 7 + 6 . 7
..
..
..
..
7 6 .. 7 6 .. 7
6
.
.
.
.
5
5 4
54
4
nGM
bGM
HGM G1 HGM G2 · · · HGM GM
ノード 5 は初期暫定解より良い解を持つことが分かる. よって,
(7)
解として獲得する. また, UPPER= ξ3 = 7.5 を得る. そして,
“Confirm” ステージに入り, UPPER= ξ3 = 7.5 が 8 個の ξK
の中で最小であるかを確認する. この確認作業は, 2 分木の深い
レベルから行われる. つまり, 図 1 では, ノード 4 から開始され
る. ノード 4 において, ξ2 = 1.7 <UPPER であるので, ノード
根ノードから葉ノードまでのパス (b1 , b2 , b3 ) = (1, 1, 1) を暫定
ここで, yGm はグループ Gm の i 番目のユーザの逆拡散後
解, UPPER= ξ3 = 1.9 として, ノード 6 から再び探索を開始
の 受 信 ビット yiGm を i 行 目 の 要 素 と す る 列 ベ ク ト ル で あ
する. ノード 6 において, ξ1 = 8.5 >UPPER であることが分
る. また, bGm はグループ Gm の i 番目のユーザの送信ビッ
かるので, ノード 6 を根とする部分木の探索を省略する. そし
て, BBD 法は探索を終了し, 根ノードからノード 5 までのパス
m
ト bG
を i 行目の要素とする列ベクトルである. そして,
i
HGl Gm = WGl RGl Gm WGm と表現される. ここで, グルー
—3—
r(t)
‘‘Search’’
stage
Group G1
MF bank
for group G1
Spreader
b1(t)
Group G2
Decision algorithm
User grouping
Decorrelating DFD
MF bank for all user
‘‘Confirm’’
stage
MF bank
for group G2
Spreader
‘‘Confirm’’
stage
Group GM
MF bank
for group GM
Spreader
‘‘Confirm’’
stage
b2(t)
bK(t)
図 2 提案方式の受信機の構成
プ Gl の i 番目のユーザとグループ Gm の j 番目のユーザの拡
Gm
rij
中から最も小さい ξK を持つ解を提案方式の最終的な解として
を i 行 j 列目の要素とする相互相
選択する. Decision algorithm では, P 個の解候補の組合せで
関行列である. また, WGm はグループ Gm の i 番目のユーザ
Gm
の受信電力 wii
を i 行 j 列目の要素とする対角行列である.
与えられる P M 個の解の ξK を計算するが, ξk <
= ξk+1 より, ξk
が既知である最小の ξK より大きくなれば, それ以降の計算は
nGm はグループ Gm の i 番目のユーザの逆拡散後の信号出力
行わない.
散符号間の相互相関値
中の雑音成分
m
nG
i
を i 行目の要素とする列ベクトルである.
提案方式では, 各グループ Gm に対して BBD 法の “Confirm”
提案方式において BBD 法に必要な最大計算量は次式で与え
られる.
ステージの探索を同時に行う. ここで, グループ Gm に対する
“Confirm” ステージの探索において, 他グループのユーザの信
P
号 IG m = M
l=1 HGm Gl bGl は雑音としてみなすことができ,
Multiplications =
M “
”
X
K (K + 3)
3 · 2NGm −1 − NGm − 2
+
2
m=1
l6=m
グループ Gm の “Confirm” ステージの探索に影響を及ぼす. そ
Additions = K (K + 1) +
5 · 2NGm
m=1
のため, 提案方式では, 各グループにおいて “Confirm” ステー
(NGm + 3) (NGm + 4)
−
2
ジの探索前に他グループのユーザの信号 IGm を d を用いて除去
する. まず, グループ Gm は Spreader を用いて dGm ∈ R
M „
X
NGm
«
(9)
に対応する送信信号のレプリカを生成する. そして, 受信信号
(9) の両式の右辺第 2 項以降より, BBD 法の “Confirm” ステー
r(t) から生成した他グループのユーザの送信信号のレプリカを
ジの探索に必要な O(2K ) の最大計算量を提案方式は, ユーザ分
差し引き, 他グループのユーザの信号が除去された信号を生成
割により NGm ≈ K/M とすることで約 O(2K/M ) の最大計算
する. つまり, グループ Gm の “Confirm” ステージの探索は,
量へと削減していることが分かる. つまり, 提案方式のように
次式で示される ŷGm に対して行われる.
ユーザを平均的に分割することにより, 提案方式における BBD
[ŷG1 , ŷG2 , · · · , ŷGM ]T
3 2
2
0
HG1 G2
yG1
7 6
6
6 yG2 7 6 HG2 G1
0
7 6
6
=6 . 7−6
..
..
6 .. 7 6
.
.
5 4
4
HGM G1 HGM G2
yGM
法のための最大計算量を小さくすることができる. また, (8) の
· · · HG1 GM
32
76
6
· · · HG2 GM 7
7 6 d G1
6
7
.
..
7 6 ...
..
.
54
···
0
3
d G1
dGM
7
7
7
7
7
5
(8)
ための計算量は常に
Multiplications = K(K − 1)
Additions = K(K − 1)
と与えられる. そして, Decision algorithm のための最大計算量
は次式で与えられる.
また, グループ Gm の “Confirm” ステージの探索の初期暫定
解には dGm が用いられる. ここで, ŷGm は完全に他グループ
Multiplications =
M
X
いものと比較して精度は低くなると考えられる. そこで, 提案
方式は, 各グループにおいて, P 個の解候補を導出する. P 個
NGm · P m
m=1
のユーザの信号を除去した信号ではなく, また, 各グループの
“Confirm” ステージの探索により得られる解も分割していな
(10)
Additions = 2
M
X
NG m · P m
(11)
m=1
提案方式の最大計算量は (9)-(11) の和となる. 提案方式の最大
の解候補には, 各グループにおいて最小から P 番目に小さい
計算量は, (9) の両式の右辺第 2 項以降で示される BBD 法の
ξK を与える P 個の解が導出される. そして, 図 2 の Decision
“Confirm” ステージの探索のために必要な最大計算量が支配的
algorithm において, 各グループの P 個の解候補の全組合せの
である. 図 3 にユーザ数 K に対する DDFD, BBD 法, 提案方
—4—
10 0
K3.5
DDFD [12]
Depth-first BBD method [14]
Proposed Method for M = 2, P = 3
Proposed Method for M = 3, P = 3
Proposed Method for M = 4, P = 3
1012
Probability of Group Detection Error
# of Multiplications + # of Additions
1014
1010
10 8
10 6
10 4
10 2
10
20
30
40
The number of users K
10-1
10-2
50
DDFD [10]
Depth-first BBD Method [12]
Proposed Method for M = 4, P = 3
0
2
図 3 ユーザ数 K に対する DDFD, BBD 法, 提案方式の最大計算量
Processing gain N
63
The number of users K
40
Spreading code
Random sequence
Data modulation
BPSK
Spreading modulation
BPSK
Channel noise
AWGN
式の最大計算量を示す. 図 3 より, グループ数 M の増加に伴
い, 提案方式の最大計算量が減少することが分かる. この最大
10 6
10 5
10 4
10 3
0
り得られる. また, 適切にグループ数 M と解候補数 P の値を
なることが分かる. 例えば, ユーザ数 K = 40, 解候補数 P = 3
である時, グループ数 M >
= 3 であれば, 提案方式の最大計算量
3.5
はK
より小さくなる.
10
K3.5
DDFD [10]
Depth-first BBD Method [12]
Proposed Method for M = 4, P = 3
10 7
計算量の削減は “Confirm” ステージにおけるユーザ分割によ
選択することにより, 提案方式の最大計算量が K 3.5 より小さく
8
10 8
# of Multiplications + # of Additions
表 1 シミュレーション諸元
4
6
SNR [dB]
(a)
2
4
6
SNR [dB]
(b)
8
10
図 4 DDFD [10], BBD 法 [12] 及び提案方式の SNR に対する GDE
率と平均計算量 (a) SNR に対する GDE 率 (b) SNR に対する
平均計算量
い範囲に渡って探索することができる. このように 2 分木の探
5. シミュレーション
索範囲を広げることで, 提案方式は, ユーザ分割のために生じる
提案方式の GDE 率と平均計算量を評価するため計算機シ
GDE 率の劣化を軽減し, 図 4 (a) が示す GDE 率を達成する.
ミュレーションを行う. GDE 率は全ユーザの中で 1 人以上の
図 4 (b) は,SNR に対する平均計算量を示す. 図 4 (b) より,
ユーザの判定が誤る確率であり, 計算量は乗算と加算の和で与
提案方式の平均計算量が BBD 法の平均計算量よりも小さいこ
える [12]. 表 1 にシミュレーション諸元を示す.
とが分かる. また, 図 4 (b) より低 SNR 領域において, BBD 法
図 4 に DDFD [10], BBD 法 [12] 及び提案方式の SNR に対す
は平均計算量でさえ K 3.5 を越えているが, 全ての SNR におい
る GDE 率と平均計算量を示す. 図 4 (a) から, 同じ GDE 率を
て提案方式の平均計算量は一定であり, その大きさは K 3.5 より
達成するための BBD 法と提案方式の SNR の差は全ての SNR
小さくなることが分かる. 提案方式は “Confirm” ステージにお
において 1 dB 以内となっていることが分かる. 提案方式がこ
けるユーザ分割のため, 各グループが探索する 2 分木の深さが
の GDE 率を達成できるのは, 各グループにおいて “Confirm”
NGm ≈ K/M であり, BBD 法の K と比較して小さくなる. つ
ステージの探索前に初期暫定解を用いて他グループのユーザ
まり, 提案方式は探索する 2 分木が BBD 法のように大きくな
の信号を除去するためである. 他グループのユーザの信号を除
いため, 低 SNR 領域において平均計算量が BBD 法のように急
去することにより, 他グループのユーザの信号が各グループの
激に大きくならない. また, DDFD と提案方式の平均計算量の
“Confirm” ステージの探索に及ぼす影響を軽減する. また, 各
オーダは同じである. この平均計算量の削減は, “Confirm” ス
グループが複数個の解を導出することも提案方式の GDE 率を
テージにおけるユーザ分割により得られる.
改善する要因の 1 つである. “Confirm” ステージにおけるユー
次に, [11] で示された MUD の計算量と GDE 率の関係図にお
ザ分割のため, 提案方式は, 暫定解の妥当性の確認をするため
いて, 提案方式を評価する. 図 5 に DDFD, 確率的データ連結
に木全体を探索することができない. これは, 提案方式におい
(PDA:Probabilistic Data Association) 法に基づく検出器 [16],
て, GDE 率を劣化させる要因となる. しかし, 提案方式は, 各グ
ループに複数個の解を導出させることにより, 2 分木をより広
BBD 法及び提案方式の SNR= 10 dB における平均 · 最大計算
量に対する GDE 率を示す. ここで, MUD では, 計算量と GDE
率の間にトレードオフの関係がある. DDFD, PDA, BBD 法は
—5—
で, GDE 率が改善されることを示した. さらに, 計算量に対す
Group Detection Error
10 0
DDFD [10]
PDA [16]
Depth-first BBD Method [12]
Proposed Method for M = 4, P = 1
Proposed Method for M = 4, P = 5
謝
辞
「本研究は, 千葉大学大学院自然科学研究科奨励研究」に
10 -1
よって行われたものである. ここに深謝の意を表する.
文
10 -2
102
104
106
108
1010 1012 1014
The Number of Multiplications and Additions
for Worst case
(a)
10 0
Group Detection Error
る GDE 率において, 提案方式は優れたトレードオフを持つこ
とを示した.
DDFD [10]
PDA [16]
Depth-first BBD Method [12]
Proposed Method for M = 4, P = 1
Proposed Method for M = 4, P = 5
10-1
10-2
10 3
10 4
10 5
The Number of Multiplications and Additions
for Average case
(b)
図 5 SNR= 10dB における DDFD [10], PDA [16], BBD 法 [12] 及
び提案方式平均 · 最大計算量に対する GDE 率 (a) 最大計算量
に対する GDE 率 (b) 平均計算量に対する GDE 率
文献 [11] において, 優れたトレードオフを持つ MUD として挙
げられている. 図 5 (a) より, 提案方式の性能が DDFD, PDA
及び BBD 法によりつくられる境界線より外側の領域に存在し
ていることが分かる. これは, 最大計算量に対する GDE 率に
おいて, 提案方式は優れたトレードオフを持つことを示す. ま
た, 解候補数 P の増加は, P 個の解候補を生成するために 2 分
木のより広い範囲を探索するため, 提案方式の最大計算量をわ
ずかに増加させるが, GDE 率を低下させていることが分かる.
図 5 (b) より, 提案方式の性能が, O(K 3.5 ) 以下の最大計算量を
持つ DDFD 及び PDA によりつくられる境界線より外側の領
域に存在していることが分かる. これは, O(K 3.5 ) 以下の最大
計算量を持つ MUD の中で, 平均計算量に対する GDE 率にお
いて, 提案方式は優れたトレードオフを持つことを示す.
6. ま と め
本論文では, MUD のための分割 BBD 法を提案した. 提案方
式では, BBD 法の “Confirm” ステージにおいてユーザ分割を
用いることで, BBD 法の最大計算量を大幅に削減することを示
した. また, 各グループが複数個の解候補を導出し, 各グループ
の複数個の解候補の全組合せの中から最良の解を選択すること
献
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—6—
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