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東京大学 素粒子物理国際研究センター
Case Study Dell Report 大学研究機関向けHPCCシステム事例 東京大学 素粒子物理国際研究センター 東京大学 素粒子物理国際研究センター 世界をリードする素粒子研究の成果を導くため 650台の最新ブレード・サーバからなる 大規模な計算機システム(HPCC) を導入 1970年代より素粒子物理学の実験・研究に携わっ てきた世界最高レベルの研究機関。現在は主に、 欧州原子核研究機構(CERN)の世界最高エネル ギーの陽子・陽子衝突型加速器で新しい物理現象 の発見・解明を目指す「アトラス実験」やスイス・ ポールシェラー研究所 (PSI) で超対称性大統一理 世界最先端の粒子加速器を用いて素粒子の研究を行い、 宇宙に存在するさまざまな謎を日々探求している東京大学素粒子 物理国際研究センター。IAサーバで構築される大規模な計算機システムを導入した同研究センターの真下哲郎准教授に、 そ の背景や目的、 デル選定のポイントなどをうかがった。 論やニュートリノ質量の謎に迫る国際共同実験 「MEG実験」 などを行っている。 http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/ 宇宙の基本構成要素を探る 「アトラス実験」 膨大な実験データの解析に高性能な計算機が必要だった 背 景 ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏が 前身となる施設を創設以来、 名称・組織を変え 進化を続けている東京大学素粒子物理国際研 究センター (以下、 ICEPP) 。 主に素粒子物理学の 実験を行う研究機関だが、 「簡単に言うと、 宇宙 の基本構成要素を探る世界最先端の実験を 行っている研究センターです」 とICEPPの理学 博士である真下哲郎准教授は語る。 同研究センターで行われる幾多の研究の中 でも、 特に重要とされるのが、 宇宙の基本構成 要素を探る 「アトラス実験」 である。 同実験には、 30を超える国から1,800名以上の 研究者が参加しており、 欧州原子核研究機構 (CERN:セルン) において、 2007年末から稼働予 定の世界最高エネルギーの陽子・陽子コライ ダー (向かい合わせに加速した粒子を正面衝 突させる加速器) である 「LHC加速器」 を利用し 導入 ソリューション て、 新しい物理現象の発見・解明を目指してい る。 この大規模な国際共同実験には、 日本でも いくつもの研究機関が参加しているが、 LHC加 速器から大量に発生するデータを解析する “日 本の拠点” が不可欠だった。 「世界中の研究機関から参加している多数 の研究者グループにより繰り広げられる熾烈 な競争の中で、我々も少しでも早く成果を挙 げ、 重要な役割を果たしていく必要がありまし た。 そこで、 HPCC (High Performance Computing Clusters) の導入に至ったのです」 (真下氏) このHPCCシステムとは、 数十台から数千台 程度のサーバをクラスタ接続することで、 低コ ストでありながらもスーパー・コンピュータ並 みの大規模な並列計算を実現するシステムで ある。 これまで使用していたデル製サーバの安定性と 懸念を解消する密接なコミュニケーションが決め手に ICEPPでは、 CERNでの実験が本格始動する少 なくとも1年前には、 新しい計算機システムを 導入しなければならないことを何年も前から 把握していた。 実際には、 2001年から、 どのよう な計算機システムを構築するかを研究するプ ロジェクトを始動させ、 できるだけ最新かつ強 力 で 、コスト・パ フォー マ ン ス の 良 い コン ピューティング環境の設計に努めた。 システムの主要な計算処理能力を供給する 計算サーバについては、設置面積の節約や管 理の利便性を考慮して、 新システムではブレー ド・サーバの導入を視野に入れていた。 しかし 同時に、 数百台規模のブレード・サーバを導入 した際の電源や熱の問題、新製品特有の予測 不能のトラブルなどは発生しないかといった 懸念もあったという。 そこでデルは、 従来からICEPPに導入実績が あったデル製の1U/2Uサーバと新たに検討され たブレード・サーバのハードウェア・コンポー ネントの相違を説明し、 ICEPPの懸念を1つひと つクリアにしていく。 「これまで利用していたデルの1U/2Uサーバ は非常に安定感がありました。その上で、ブ レード・サーバは 1U / 2 U サーバと同 様 の パ フォーマンスが得られ、 共通箇所も多いことを 知り、 導入に自信が持てました」 (真下氏) ●東京大学 素粒子物理国際研究センターが構築したシステム構成図 計算サーバ (650ブレード) HPCC (High Performance Computing Cluster) Internet SINET ファイバー・チャネル・スイッチ 管理用サブシステム ネットワーク (高速イーサネットスイッチ) PowerEdge 1950×2台 大容量ストレージ (約1PB [ペタバイト]) ファイル・サーバ AFSサーバ DBサーバ (Oracle RAC 10g Enterprise Edition) PowerEdge 2950×30台 PowerEdge 2900×2台 Dell|EMC CX3-20×1台 その他のサーバ テープ・サーバ Dell 1U Rack Monitor×12台 PowerEdge 1955×650台 PowerEdge 1950×7台 PowerEdge 1950×33台 テープ・ライブラリ (3PB [ペタバイト]) Dell Report 選定の ポイント 総合評価方式で入札業社を決定 ポイントは導入実績とインテル社とのパートナーシップ 今回のHPCCシステムの構築は、 総合評価方 式による入札で業者を決定した。デルでは選 定された要因の1つは実績だったと考えてお り、 デル 営業技術支援本部 アドバンスト・シス テムズ・グループ システムコンサルタントの 小野 誠は次のように振り返る。 「某主要研究機関への大規模HPCC導入事例 をはじめ、何例かの素粒子研究に関する計算 機システム構築の実績があったことから、 短期 間での設置、 システムの安定性などに確信が ありました。 これまでの導入経験に基づいてご 説明したことで、信頼感や安心感を得ていた だけたと思います」 その言葉に、 真下准教授も同調する。 「デルのこれまでの実績は、 とても強い信頼 へとつながりました。 研究分野を含めて、 我々 のようなシステム環境を手がけたことがない と、 細かな点まで気づいてもらえません」 デル アドバンスト・システムズ・グループの 稲垣 聡は、 「システム・インテグレータである 新日鉄ソリューションズ社との協力体制もあ り、 最適かつ最高のご提案ができたと自負して います」 と話す。 導入効果 もう1つの大きなポイントは、 インテル社と デルの緊密なパートナーシップだった。 真下准 教授も 「発表されたばかりの最新CPU情報を提 供できたのは、 デルだけだった」 と話す。 実際、 デル 公共営業本部 アカウント エクゼクティ ブの塙 暢彦は、 「一番肝を冷やしたのは出荷の タイミングでした。 入札直前まで、 実際に提供 していたブレード・サーバは、 一世代前のCPU を搭載していたモデルだったのです」 と振り返 る。 デルは、 ICEPPのHPCCシステムに対するニー ズを知るにつれ、最新かつ非常に強力なコン ピューティング・パワーが必要であることを強 く認識する。 そこで、 インテル社とのグローバルなアライ アンスに基づき、当時、最新のCPUであった デュアルコア インテル®Xeon®プロセッサーを 搭載した強力なパフォーマンスを実現する HPCCソリューションを、 入札ギリギリのタイミ ングで提案することができた。 これは、デルとインテル社の強力なパート ナーシップによる密な情報の共有化が生きた 典型的な例と言えるだろう。 今回の大規模な計算機システムの導入で “可能性” が大きく広がっていきます 「物理学のこれまでの研究では、 クォーク、 レ プトンと呼ばれるものがこれ以上分割できな い、 いわゆる 『素粒子』 とされています。 しかし、 より詳しく調べていくと、 これらにも内部構造 が存在することが近い将来、 明らかにできるか もしれません。そういった実験や研究と平行 し、 構成要素である素粒子同士にどのような力 が働いているのかを細かく調べ、今まで見つ かっていない物理を発見するべく、 日々努力を 重ねています」 (真下氏) 素粒子物理学の実験では、 まだ実際にデー タ収集が始まっていない時点でも、理論的な 予測に基づいて計算機シミュレーションを行 い、事前にデータ解析の方法を研究するとい う。 シミュレーションには、膨大な計算能力が 必要で、今回の大規模な計算機システムの導 入により、 「これまでに比べて結果を出すまで の時間が大幅に短縮され、 また、 より多くのシ ミュレーションを行い、 統計的に信頼度の高い 成果が得られる」 と真下准教授は展望する。 「今回のHPCCシステムは、 2006年末に導入し たばかりで、 現段階ではまだフル稼働には至っ ていません。 アトラス実験において、 我々の計 算機は今や世界で最大級の能力を有していま すが、 この先、 他の計算機システムも進化して いきます。 競争力のあるこのタイミングで有効 的に利用し、世界的な物理解析の分野で主導 権を握る立場になっていきたいですね」 (真下 氏) こうした真下准教授の考えを実現するべく、 650台という大量のブレード・サーバをサーバ・ ルームに搬入する際にも、 各ブレードをあらか じめ別の場所で開梱し、 ラックに組み込んだ状 態で搬入するといった最大限の配慮で納入が 進められた。 「コミュニケーションの中で、 デルにはさま ざまな問題をクリアにしてもらい、 非常に感謝 しています」 (真下氏) デルの提案したHPCCソリューションと、 そ れに基づき整えられたインフラが支える世界 レベルの素粒子研究が、 いつの日か人類のさ らなる進歩をもたらすことを期待したい。 東京大学素粒子物理国際研究センター (ICEPP) の大規模計算機システムを 支えるデルのHPCCソリューション (650台のPowerEdge 1955で構成) 東京大学 素粒子物理国際研究センター 准教授 理学博士 真下 哲郎氏 デル株式会社 公共営業本部 アカウント・エグゼクティブ 塙 暢彦 デル株式会社 営業技術支援本部 アドバンスト・システムズ・グループ システムコンサルタント 小野 誠 デル株式会社 アドバンスト・システムズ・グループ 官公庁/研究所/文教/医療機関担当 サーバ/ストレージ/エンタープライズセールス 稲垣 聡 (前列左から) 塙 暢彦、 小野 誠 (後列左から) 稲垣 聡、 公共営業部 官公庁営業部リーダー 永井信行 取材年月日:2007年2月9日 ●PowerEdge、PowerVault、 DELLロゴは、 米国Dell inc.の登録商標です。 ●その他の社名および製品名は商標または登録商標です。 www.dell.com/jp/ デル株式会社 〒212-8589 川崎市幸区堀川町580番地ソリッドスクエア東館20F 2OTICEPP CS0301 1.0 2007.05IDG