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2 不登校傾向及び不登校の解消に向けた取組について
不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ 2 不登校傾向及び不登校の解消に向けた取組について (1) 学校での取組 ア 学校の組織づくり 日頃から、校長を中心とした学校総体としての組織的な対応ができるように 「不登校対策検討委員会」等を設置しておく必要があります。 不登校対策検討委員会の組織(例) 校 校 ・スクールカウン セラー ・ 相談員 等 長 参加 不登校対策検討委員会 連携 教 ・スクールソーシ ャルワーカー ・いじめ・不登校 アドバイザー 協力 依頼 学年 代表 養護 教諭 生徒指 導主事 頭 コーディネ− ター(注1) 地 域 ・ 関 係 機 関 学 専門性の高い人材 サポートチーム (注2) 必要な人材 担任 学年主任 関係教職員 が参加 必要な機関 が参加 子ども・保護者 主 ○学校全体での正確な情報収集 不登校対策 な ○情報の整理・分析と適切な管理 検討委員会 機 ○効果的な対策の検討と全職員への周知・共通理解 能 ○職員の役割分担と家庭・地域・関係機関との適切な連携 など (注1) コーディネーター的な役割を果たす教員は、校内における不登校児童生徒の学級担任や養護 教諭、生徒指導主事等との連絡調整及び児童生徒の状況に関する情報収集、児童生徒の状況に 合わせた学習支援等の指導のための計画づくりに関する学級担任等との連携、不登校児童生徒 の個別指導記録等の管理、学校外の人材や関係機関との連携協力のためのコーディネート等を 行うことが求められます。 (注2) サポートチームの編成は、p.45参照 - 24 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ 学校組織で対応する不登校の未然防止と解消に向けた主な取組 心の居場所等としての学校、学級づくりの取組(p.5∼9参照) 「愛の1・2・3運動」の実践 1 2 欠席1日目に電話連絡、2日目に家庭訪問、3日目以降は学校組織で対応 3 個別指導記録の作成と活用(p.27、28参照) 不登校児童生徒が在籍する学校では・・・ 4 スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門家が 参加した不登校対策検討委員会等の実施 5 定期的に不登校児童生徒の保護者の会を開催 不登校児童生徒の保護者の会の取組例 不登校児童生徒の保護者の会については、各学校、市町村教育委員会、教育事務所等が 主催して、以下のような内容で行われています。 1 趣旨 不登校傾向及び不登校の児童生徒の保護者を対象に、 「語り合う場 (情報交換等の場)」を設け、互いの悩みや不安を出し合うことによ り、悩みや不安の軽減を図るための支援を行う。 2 内容 ●スクールカウンセラー、いじめ・不登校アドバイザーの話 ●子どもの不登校を経験した先輩の保護者の話 ●情報交換(フリートーキング) など 3 参加者 ●不登校傾向又は不登校の児童生徒を持つ保護者等 ●校長、コーディネーター(主として不登校対策 を担当する教員)、養護教諭等 ●スクールカウンセラー、いじめ・不登校アドバ イザー、相談員等 ※内容、参加者等については、不登校傾向及び不登校の 児童生徒の保護者が自由に語り合う(情報交換)こと ができるように、児童生徒及び保護者の状況に十分配 慮することが大切です。 - 25 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ イ (ア) ケース検討会議について ケース検討会議の目的 ケース検討会議は、指導にあたる関係者が、対象となる子どもの現在進 行中の事例や過去の課題や問題状況について理解を深めるとともに、今後 の対応に生かすことを目的として、よりよい指導・支援の在り方を見い出 すための教育活動です。 定期的にあるいは対応に行き詰まったときなどに、開催していくことが 必要で、指導にあたる関係者の積極的な対応の姿勢や連携が必要です。 (イ) ケース検討会議の持ち方 a 開催回数 子どもの実態に応じて、定期的に開催することが望ましい。 b 時間及び検討事例数 1回につき1∼2事例、1事例に1時間程度。 c 参加者 校長(教頭)、担任、養護教諭、学年主任等、学校の現状に応じて関 係者等が参加する。 d 資料の準備 課題を A 4判1枚程度にまとめる。 「個別指導記録」や養護教諭の「健 康相談活動記録」等参考資料を準備する。 e 検討会の内容 事例提供者にとって有益であり、何らかの示唆を得られるようにする ことが重要である。 (ウ) ケース検討会議の内容 子どもの性格 行動の特徴 事実と判断の 区別 家族構成 家族間の人間関係 親の養育態度 友人関係 問題場面や 問題状況の理解 子どもの興味 関心事 好きなこと 得意なこと 支援方針と対応策の吟味、検討 問題状況(困っていること)の改善や克服、時には現状維持に向けた方 針や対応策の検討を行い、問題状況に陥ったきっかけやその問題状況を維 持させているものは何かを見立てていきます。 (エ) ケース検討会議の留意点 a 支援的な態度での参加を心がけ、自由に発言できる雰囲気をつくる。 b 単なる自分の経験談の披露やケース担当者への批判を避ける。 c 「この子はこういう子だ」と決めつけない。 d 専門外の内容は、医師やカウンセラーなどのアドバイスをもらう。 - 26 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ ウ 個別指導記録の作成と活用 個別指導記録は、不登校児童生徒が今どのような状態にあり、どのような支 援を必要としているのかを、保護者や教職員、関係機関の関係者が共通理解し、 連携して的確な支援を行っていくために作成します。 個別指導記録の形式や内容は特別に決まったものはなく、学校の実態に応じ て作成していくことが望まれます。 ケース検討会議、 不登校対策検討委 記録を残すことで 員会等や引継の際 子どもの成長の様子 の資料になるぞ。 が分かり、指導の振 り返りができて、今 後の支援のヒントに なるわ。 (ア) 保護者に子どもの様子を 伝えるときに役立つわ。 記録するうえでのポイント ・ 記録者が直接見聞きしたことと、保護者等からの伝聞は区別して書く。 ・ 本人や保護者の言葉は、できるだけそのままの言葉で書く。 ・ 行動は、どういう状況でどのような行動をしたかを具体的に書く。 ・ 行動に対し、対応したことも具体的に書く。 (イ) 具体的な活用例 ・ 対象の子どもへの理解を深める。 ・ 担任自身の指導や支援を振り返る。 ・ 校内における、チームで支援を行うための子どもの現状把握や情報交換。 ・ 校内や関係機関とのケース検討会や支援会議の資料。 ・ 進級、進学、転校の際の引継。 ・ 保護者との連携。 (ウ) 活用するうえでの配慮 ・ 保管場所も含めて、個人情報の取り扱いに十分配慮する。 ・ 関係機関への開示を想定し、保護者の理解を得ておく。 - 27 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ (エ) 個別指導記録例 不登校等個人記録表(記入例) ○△市立 ○△ ・学級担任氏名 中学校 ●● 1年 3組 ■■ 氏名 □□ ○○ ・担当者氏名 男・女 △△ ▲▲ ・出欠状況 欠席等日付 4月 欠 席日 数 合 計 保 健室 登 校等合計 14(月)、17(木)、21(月)、22(火)、23(水)遅刻 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月 記入者名 対応日時・対応者・対応の内容 生徒・保護者の反応 ●● 4/17 保護者に電話した後、記録表作成開始 体の調子が悪いので休 ませた。(母親) △△ 4/18 登校してきた生徒の様子を教室で観察 本人が身体の具合が悪 いと訴えた。土日は特 に変わった様子はなか った。(母親) △△ 4/21 保護者に電話で様子を確認 △△ 欠席累計4日。他の欠席生徒とともに、学年 会で対応を検討。校長、スク−ルカウンセラ− にも参加してもらう。以下のことを決定。 ・教科担任全員が、登校時には生徒の様子を把握し、 △△が集約する。 ・△△が保護者との電話連絡を続ける。 △△ 4/23 4/22 遅刻して登校。●●、△△で生徒と面談。授 業が難しい。学級になじめない。(本人) 授業が難しい。学級に なじめない。(本人) 不登校相当:欠席日数+保健室等登校日数+(遅刻早退日数÷2)=30日以上 準不登校:欠席日数+保健室等登校日数+(遅刻早退日数÷2)=15日以上 30日未満 - 28 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ エ 不登校状態のプロセスと支援 子どもへの対応 保護者への対応 原因とな るものを 一 緒に解決 していき た いという 気持ちを 伝 えながら 子どもの 思 いを聞き取っていく。 最近の様子について、 学 校、家庭で の情報 を伝え合う。 子どもの状況(例) 不 初期段階 初期段階 教 室に入 教室 に入りたがらない りたがらない 登 校 ・体調不良を訴える。 ・保健室によく行く。 ・一人でいることが多くなる。 ・登校を渋り、遅刻が多くなる。 ※ここは見開きになっています。 担任に起 因する場 合 は養護教 諭や学年 主 学 校及び家庭 ででき る ことを話し 合い、 心 の教室相談 員やS C 等の紹介を する。 状 況に応じて 校内サ ポ ートチーム での対 しいとい う姿勢で 共 応 を考えてい ること 感的に対応していく。 を知らせる。 個に応じ たスモー ル ステップ を示し、 で きたこと を認め、 ほ めていく。 教 職員や学級 等に原 状 任が話を 聞かせて ほ 況 中期段階 中期段階 休み始める 休み始める の 主 な ・週初めの休みが多くなる。 ・特定の教科や行事等の日の休 みが多くなる。 ・週に2∼3日程度の休みが断 続的に始まる。 ・学校に行きたくないと言う。 ・友だちや担任に会うのを避け る。 学習の遅 れに不安 を 持ってい る場合は 、 負担加重 にならな い 程度の学 習支援を 行 う。 因 がある場合 は、速 や かに謝罪し 、改善 に 向けた具体 的な取 組を説明したうえで、 協力を依頼する。 子 どもや家庭 に原因 の 一部がある と考え ら れる場合は 、保護 者 の気持ちを 共感的 に 理解し、支 援して い くという姿 勢で話 し合う。 段 ・保護者に暴言を浴びせる。 家庭訪問 では、子 ど 階 長期段階 長期段階 もが会お うとしな い 場合は、 無理に会 わ 登校できない 登校できない ずに、心 配してい る ・学校に行けない、行く意思がな い。 ・昼夜が逆転し自分の部屋から出 ない。 ・暴力や自傷行為をする。 学級集団 の声かけや 受け入れ の準備が常 になされ ていること を伝えておく。 ことを保 護者から 伝 えてもら ったり手 紙 を置いたりする。 職場体験 ・運動会 ・ S SW、関係 医療機 関 、相談施設 、適応 指 導教室、不 登校の 保 護者の会等 を紹介 する。 遠足等や 始業式等 の 節目の行 事を適度 に 家庭との相談のうえ、 伝えていく。 定期的、 計画的な 訪 問を行う。 定期的な連絡をとる。 - 29 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ 学級等への対応 子 どもが特 定できな い ように配 慮して、 最 近の様子 を聞き取 る。 関係機関との対応 教職員の共通認識 そ の 他 子ど もの状況 と聞き 幼保小中 関係校と の 子どもの 作品等サイ 取り を伝え、 お互い 連携の必 要がある か ンとなっ ているもの に最 近の様子 や過去 検討する。 はないか、点検する。 SCや心 の教室相 談 学 級 へ のア ン ケ ー ト 員等によ るカウン セ な ど を 実施 し 、 実 態 リングな どを実施 す 把握に努める。 の情 報を共有 する。 子 どもの思 いに配慮 し つつ、い じめの有 無 や人間関 係の変化 などを聞き取る。 学 級等の関 わり方で 解 決できる 場合は、 支 援の仕方 を話し合 い 、指導し ていく。 担 任や学級 の児童生 徒 からの家 庭への働 き かけの程 度を、家 庭 と相談の うえ、慎 重に決める。 校内 の不登校 対策検 討委 員会等で 検討す る。 る。 個 別 指 導 記録 に 取 組 の記録を始める。 校内 サポート チーム い じめ・不 登校アド 子ど も 、 学 級 等 と の 関わ り 方 を 見 直 す 。 をつ くり、担 任一人 バ イザーや SSWな でな く、学校 組織と ど 、関係機 関等との して対応する。 連 携の必要 があるか 子どもの 事例に応じ 校内で検討する。 た支援計画を立てる。 子どもの思いを聞き、 必要 に応じて 、保健 室、 別室等の 居場所 の用意をする。 必要に応 じ、いじ め ・不登校 アドバイ ザ ーやSSWと連携し、 登 校してき た際の自 然 な声かけ や受け入 れを確認する。 担任 あるいは 心の許 関係機関 とのケー ス せる 教師が対 応する 検討会を 開催する 。 子 どもの思 いに配慮 し つつ、得 た情報の 中 から頑張 りが見え るものを伝えていく。 校内 サポート チーム で、 保護者の 願いを 確認 し、具体 的な対 応策を検討する。 関係行政機関及び 医療機関、適応指 導教室等への相談 と連携を行う。 子 どもの机 、ロッカ ー等整理整頓を行い、 存 在を意識 させてお く。 登校に 備えた受け入 れ環境(教職員体制、 内容、 時間割等)の 準備をしておく。 子どもを 理解して も 時間を確保する。 進級 時の学級 編成、 個別指導記録を次年 度担任、学年主任に 引き継ぐ。 らうため 、卒業時 に 中高関係 校へ個別 指 導記録等 をもとに 、 状況説明をする。 担任決定で配慮する。 (注) SC:スクールカウンセラーの略 SSW:スクールソーシャルワーカーの略 - 30 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ オ 保健室における支援 保健室には、保健室登校の子ども、学級集団から離れやすい子ども、感情 をコントロールすることが苦手な子どもなど、教師の支援を必要とする子ど もたちがやってきます。また、そのような子どもの中には「人とうまくやっ ていけない自分はだめな人間だ」と自信を失っている子どももいます。 養護教諭は、そのような子どもたち一人一人が保健室を安心できる居場所 と感じ、元気を取り戻し、教室に復帰することを目指して支援していきます。 保健室では担任 子どものしぐさ 子どものよい点 等と連携をとりながら、 や態度・話の内容に関 に目を向け、その子 子どもの訴えや養護教 心を持ち、子どもの気 どもの意欲・活力が 諭が感じたことをもと 持ちを共感的に理解す 出るよう社会的自立 る姿勢で臨みます。 を目指して支援しま に、相談・支援を 始めます。 (ア) す。 保健室における不登校傾向の早期発見、早期対応 a 出欠状況と心身の状態の把握 ・身体症状:頭痛、腹痛、下痢、夜眠れない など ・精神症状:不安、緊張、攻撃、怒り、無気力 など b 保健室来室状況の把握 ・来室回数の増加、朝から教室に入れない、遅刻、不 定愁訴(特定の病気としてまとめられない漠然とし た体の不調の訴え) など c 不登校のきっかけとなっている理由、原因の把握 ・友人関係、親子関係、教職員との関係、部活動、環境の変化(クラス替 え、転校等)、病気 など d 担任等との情報交換、コミュニケーション (イ) 保健室における心身の支援 a 健康相談活動の充実 健康相談活動とは 養護教諭の新たな役割として「養護教諭の職務の特質や保健室の機能 を十分に生かし、児童生徒の様々な訴えに対して、常に心的な要因や背 景を念頭に置いて、心身の観察、問題の背景の分析、解決のための支援、 関係者との連携など、心と体の両面への対応を行う活動」があります。 (平成9年、保健体育審議会答申より) - 31 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ b 身体面の問題から心のケアへ ○養護教諭のカウンセリング的対応(保健室の空間を生かす) ・応急処置をしながら心理的・情緒的問題の有無を把握し判断する。 ・その場で話を聴く必要がある場合は、時間をかけて話を聴く。 カウンセリング的対応とは 熊本大学カウンセリング講座より ア)相手の存在に目を向ける カ)すでにできている成果を認める イ)全体を肯定的にとらえる ウ)よさや長所を認める エ)課題に取り組む能力を認める オ)関心や興味に関心を向ける キ)努力や過程を評価する ク)適切な自己評価を尊重する ケ)選択を勧める コ)意見には私メッセージを使う ○ピアサポート活動 研修を受けた大学生や子ども同士(教師介在のもと)による会話や相談 を通して心身の安定と心の成長を図る。 ○スクールカウンセラーの有効活用 c 担任、担任外の職員、管理職との連携 ・クラス、授業、部活動、家庭環境の状況把握 ・学習支援計画の立案 d 保護者への支援 ・家庭や親子関係の安定を図るための医療機関 専門機関等の紹介 【ピアサポートを受ける中学生】 ・基本的生活習慣の定着などを図るための保護者相談の実施 ・保護者の会の開催 (ウ) 保健室登校の子どもへの支援目標と対応 - 32 - ※月刊誌「健康教室」より 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ (エ) a 校内支援体制づくりと養護教諭の役割 不登校対策検討委員会、生徒 指導部会、特別支援教育推進委 員会等への養護教諭の参画 ・保健室からの情報提供 b 自立支援のための授業づくり、 集団づくりへの協力 ・人間関係づくりカリキュラムの 開発(p.7、8参照) ・支援に関する意見、アドバイ ・構成的グループエンカウンター の計画的実施 ス c ※各種の題材(エクササイズ) を実施しながら、グループ体 スクールカウンセラー、いじ 験を通して心と心のふれあい め・不登校アドバイザー、スク ールソーシャルワーカー、市町 村の教育相談員、適応指導教室 指導員、特別支援教育支援員等 を深め、自己成長を図る。 d 不登校傾向又は不登校児童生徒で 特別支援教育の視点を持つことが必 要な場合 との連携 ・特別支援教育コーディネーター との連携 ・特別に支援を要する子どもへの 関わり ・クールダウンの場としての保健 室の活用 ・医療機関や専門相談機関等の紹 介、保護者相談 ・特別支援教育研修への参加 【 保健室から教室へ】 子どもたちが心理的に不安定になるのは、何かをきっかけに生きる勇気 がくじかれ、自尊感情が低下し、人を信じられず孤独感を感じているとき です。したがって、教師は子どものよさや可能性に光を当て、子どもたち が自尊感情や存在感を持つように接する必要があります。 そして、子どもたちが教室の級友 と望ましい人間関係を保ち、クラス に居場所を感じることができるよう に援助する必要があります。 - 33 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ カ 成功事例に学ぶ (ア) 保健室から教室復帰した事例 【家庭の状況】 A 子さんは、小学校6年生。4年生の9 祖父母、両親と本人、姉の6人家族。物 月から教室に入りづらくなり、何とかして 静かな子どもで地域の方からもかわいがら 教室へと誘う担任を避けるようになりまし れて育った。 た。朝からトイレに閉じこもり出てこない こともありました。そこで、担任と相談のうえ、時折保健室に来室していた A 子さんに養護教諭が関わることになりました。 保健室で時間をかけゆっくりと関わることを全職員で共通理解を図り、養護 教諭は、A 子さんの好きなことや活動的に過ごせたことを小さなことでも丁寧 に認めながら一緒に過ごしていきました。A 子さんは少しずつ心を開き始め、 2年生のときのいじめについて話し始めました。保健室で取組を進めながら、 担任は、民主的でわがままを許さないクラスづくりに努め、部活動担当教諭は、 好きな部活動だけの参加も認め、6年生大会へ向けて厳しく、また励ましなが ら役割を与え、校長は保護者のよき相談相手となりました。 このように、学校総体としてチームで対応していきました。そして A 子さ んは、調理クラブや部活動を楽しみに徐々に回復していきました。 保健室を拠点にして少しずつ活力を取り戻した A 子さんは、 4年生の12月ごろから教室へ行けるようになり、今では教室の 仲間と元気に過ごしています。 (イ) 適応指導教室から教室復帰した事例 B男くんは、中学校3年生。1年生の頃はほ 【家庭の状況】 とんど登校できなかったB男くんですが、2年 両親と本人、姉の4人家族。家 生では相談室(校内適応指導教室)まで、来る 庭は教育熱心である。 ことができるようになりました。相談室の雰囲 気になじんできた頃、指導員の先生が、B男くんは、数学の計算がとても速い ことに気づき、数学を中心に学習計画を立てて実行したところ、相談室の中で も「すごい」と言われる存在になりました。2学期に入ると、周りの生徒から 「教えて」と言われ、笑顔で周りに教える姿が見られるようになりました。ま た、部活動にも入り身体の大きさを生かして活躍するようになり、定期的に受 けていたスクールカウンセラーのカウンセリングでは自分の意思も伝えること ができるようになりました。3学期には、相談室の学習の中で高校進学への夢 を話すようになり「3年生になったら教室に行くんだ」と言い出すまでになり ました。現在、3年生として受験を前に教室で過ごす 日々ですが、時々相談室にやってきては他の生徒に声 をかけてクラスに戻っていくB男くんです。 - 34 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ (ウ) 複数の教職員と関係機関で関わり、学校復帰した事例 C男くんは小学校5年生。4月の 授業中、指名されずに泣き出してし まいました。その翌日から登校を渋 るようになり、いじめ・不登校アド 【家庭の状況】 両親と本人の3人家族。父親は、子育て に協力的。母親は仕事を辞めて子どもに関 わる時間をつくった。 バイザーに相談がありました。 学校では、担任は放課後の家庭訪問を行い、子どもとの信頼関係づくりを行 いました。C男くんが少しずつ心を開いている様子を見て、母親も大変喜びま した。また、いじめ・不登校アドバイザーは母親の要望等を聞き、担任へ伝え るようにしました。母親の送迎時の励ましで登校できたときは、校長や教頭が 対応し、子どもができることや興味のあることに一緒に取り組みました。クラ スの子どもたちは声をかけたり、仲のよい子どもは休日一緒に遊んだりしまし た。 学校外では、巡回相談や子ども家庭支援センターの相談員、スクールカウン セラーが関わりました。母親は、自分の接し方がこれでいいのか、周りの大人 が本気で接する大切さなど確認しながら関わっていきました。 欠席がちだったC男くんは、別室への登校ができるようになり 笑顔が見えるようになりました。母親は登校するという当たり 前のことが新鮮に思え感動したと話してくれました。 (エ) 校内サポートチームで関わり、教室復帰した事例 D子さんは、中学校3年生。部 活動での人間関係がきっかけで不 【家庭の状況】 叔母夫婦、兄、祖父母。話し合いには祖 父母も参加し、家族で支えている。 登校になり、だんだん、朝起きる ことができなくなりました。また、登校できるときとできないときの状況の差 が大きいことが心配でした。 学校では、本人が登校できそうな時間帯をみて家庭訪問を行うなど、担任、 養護教諭、学年主任等が連携して対応しました。保健室まで登校できたときは プリント学習を行い、友だちは休み時間になると保健室へ様子を見に来ていま した。また、ケース検討会議を定期的に行い、家庭でのD子さんの様子を聞き、 学校と家庭が協力して支援することを共通理解しました。叔母も協力的で学校 にしばしば足を運びました。学校外では、病院でカウンセリングを受けていま した。カウンセリングは楽しみにしていたようです。3年生の後半から朝起き ることが少しずつできるようになり、登校したときは 教室に入りみんなと一緒に給食を食べることができる ようになりました。進路も、叔母とともに決めて、高 校を受験して合格することができました。 - 35 - 不 登校 傾 向及 び 不登 校 の解 消 ∼学 校 での 取 組 ∼ (オ) 早期対応により学級復帰した事例 E子さんは、小学校3年生。家庭環 境の変化と、転校がきっかけとなり学 校へ行くのを渋り始めました。朝起き はできますが、登校時間が近づくと泣 き出します。妹は「お姉ちゃんは、学 校に行かんでいいね」と、言い始めま 【家庭の状況】 した。母親はどう対応すればよいか学 母親、妹の3人家族。家庭の事情で転 校に相談しました。 居し転校した。 学校では、母親の学校へ行かせたい という思いを受けて、学校へ行ったら、シールを貼っていく取組を実施しまし た。しかし、しばらくするとそれも興味を示さなくなりました。そこで、1週 間登校できたら、おいしいものを食べに行こう、実家への小旅行を計画するな ど母親がいろいろ工夫して関わっていきました。さらに先生や友だちの誘いも あり、1日1日登校を増やしていきました。 学校外では、相談員が母親に電話で様子を聞いたり、家庭訪問をしてE子さ んとおしゃべりしたりしました。 このような取組を継続していたある日、先生の家庭訪問の際に「2階の自分 の部屋から、階段を下へ下へ降りていったのが、ポーンと上に上がったような 感じがした」とE子さんが話しました。これをきっかけにE子さんは学校へ行 けるようになりました。このように、早期対応の効果で現在もE子さんは登校 を続けています。 保護者への対応において配慮したいこと ×用件のみ伝えて電話を切る。 子どものことは心配していないのではないかと受け取られることがある。 ○まず、子どもの様子を尋ねる。 ×「何日の何時に行きます」と約束していて守らない。 保護者は、都合をつけて待っておられる。 ○約束は必ず守る。もし、やむを得ず都合がつかなくなった場 合は必ず連絡をしてお詫びをする。 ×保護者の要望に対して「私に言われても・・・。」 学校に対する不信感が強まる。 ○「お聞きしたことは教頭に伝えておきます。また、後ほど担 任に連絡させます。」 など丁寧な対応を心がける。 ×日付が過ぎたプリントを渡す。 自分の存在を忘れられていると思われる。 ○配布した日に届けるようにする。 - 36 -