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Web2.0がもたらすオープンイノベーション - Nomura Research Institute

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Web2.0がもたらすオープンイノベーション - Nomura Research Institute
視 点
Web2.0がもたらすオープンイノベーション
Web2.0という言葉が、インターネット第二
ターネットの利用形態がWeb1.0からWeb2.0
世代を表すものとして2004年頃から使われる
へ変化するにつれて主役交代が進んでいると
ようになっている。第一世代のWeb1.0は、情
言えよう。
報提供の経路が 1:Nであり、流れるコンテ
ンツもテキストや静止画が中心である。これ
に対し、Web2.0ではN:Nの情報経路の上を、
コミュニティのなかでも、とくに注目される
動画などのリッチなコンテンツが流れる。
のが“知識コミュニティ”(不特定多数が参
Web1.0の時代には、サイトに集約された
加するコミュニティが知識を生み出す現象)
情報のなかから必要な情報が効率的に取得で
とでも呼ぶべき世界である。インターネット
きる、いわゆるポータルサイトと呼ばれるサ
上に構築された百科事典「Wikipedia(ウィ
ービスが重宝されたが、Web2.0の時代には、
キペディア)」はその代表的なものである。
自分に必要な情報を探し出すための検索サー
Wikipediaは、2001年に米国の非営利組織で
ビスが必須となる。
あるWikimedia財団が英語版を開始したのを
N:Nの情報交換の場を提供するSNS(ソ
皮切りに、いまでは日本語、ドイツ語、フラ
ーシャルネットワーキングサービス)の台頭
ンス語、スペイン語、中国語など多数の言語
も著しい。日本におけるSNSの最大手である
の事典がアップされている。項目数も英語版
mixi(ミクシィ)は660万人の会員(2006年
は153万に達し、日本語版も30万を超えてい
11月12日現在)と100万以上のコミュニティ
る(http://wikipedia.org)。
をもち、2006年 9 月には東証マザーズに上場
した。
Wikipediaは不特定多数のボランティアが
執筆し、誤りがあれば別のボランティアが修
最近、米国のGoogle(グーグル)社に買収
正や追加の編集を行う。これが繰り返される
されたことで話題になったYouTube(ユー
ことにより、内容の信頼性が担保されること
チューブ)も、Web2.0時代の産物と言える。
になる。それで正確な事典が作れるのかと思
YouTubeは一般から投稿されたビデオ映像
われる方も多いだろうが、米国の科学専門誌
を閲覧できるサービスで、投稿は毎日 6 万 5
『Nature』によれば、著名な百科事典『エン
千本以上に達し、1 日に約 1 億本の映像が閲
サイクロペディアブリタニカ』とWikipedia
覧されるという(http://www.youtube.com/t/
から幅広い科学分野の項目を選んで専門家が
fact_sheet)。著作権問題が指摘される一方、
検討したところ、深刻な誤りはどちらもわず
メディアとの連携の動きも進みつつある。
か 4 件、誤記の類もそれぞれ123箇所と162箇
このようにビジネスモデルの上でも、イン
4
Web2.0時代におけるインターネット上の
所で、正確さにおいてブリタニカの優位性は
2007年2月号
レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
Copyright © 2007 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
野村総合研究所
執行役員
コンサルティング事業本部
副本部長
此本臣吾(このもとしんご)
それほど大きくないと結論している(http://
科学者が契約。http://jp.innocentive.com/)な
www.nature.com/news/2005/051212/full/43
どがある。
8900a.html。ただしブリタニカ社ではこの調
査結果に反論している)。不特定多数のボラ
プロクターアンドギャンブル(P&G)社
ンティアによる百科事典が、4 千名以上の専
は、積極的に知識コミュニティを活用して研
門家によるものと、正確さの上でそれほどの
究開発の効率化を進めている企業のひとつで
差がないというのであれば、インターネット
ある。同社によれば、これまでにNineSigma
の向こう側にできているオープンな知識コミ
社を通じて研究委託リクエストを出し、技術
ュニティは相当な創造力をもっていると考え
的な解決策の提案を受けた研究開発者の数は
てよい。
70万人を超えるという。たとえば、食用イン
クでキャラクターが印刷されたポテトチップ
知識コミュニティをビジネスに活用するケ
スや、置き型の消臭剤などでもNineSigma社
ースも現れている。米国で2000年に設立され
で調達した技術が活用されている。P&G社
たNineSigma(ナインシグマ)社は、研究開
は7,500人の社内研究開発スタッフを擁する
発者を集めたコミュニティの仲介・斡旋サー
が、このような社外の研究開発者が150万人
ビスを行っている(http://www.ninesigma.
もいる。同社は顧客ニーズに対応する商品を
net/)。同社は、企業から研究開発課題を提
スピーディーに市場投入することを優先する
示されると、世界に約100万人いる契約研究
ため、自前開発至上主義から社外開発の奨励
者に課題解決策のリクエストを出す。技術的
へと戦略を転換したという(L・ヒュースト
に解決可能と返答した研究者のなかから、同
ン、N・サッカブ「P&G:コネクト・アン
社が選考して委託元の企業に紹介する。委託
ド・ディベロップ戦略」(『DIAMONDハー
元企業とその研究者は委託契約を結び、研究
バード・ビジネス・レビュー』2006/08)
)。
開発プロジェクトがスタートする。そして
そのような戦略が採用できるのは、ネット
NineSigma社にはプロジェクトの金額に応じ
を通じてアクセスできる知識コミュニティが
た手数料が支払われるという仕組みである。
形成され、そのコミュニティを企業に紹介・
同社は世界の大手企業約60社と契約を結んで
斡旋するサービスが現れたことが大きい。
おり、年間で200本程度のプロジェクトが成
Web2.0の普及により、企業が外部リソース
約している。このような研究開発の知識コミ
を積極的に活用しながらさまざまな経営改革
ュニティを仲介するサービスは同社以外にも
を進める“オープンイノベーション”の動き
InnoCentive(イノセンティブ)社( 8 万人の
は今後さらに加速していくと思われる。
■
2007年2月号
レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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