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資料4 委員提出資料 (PDF:3090KB)

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資料4 委員提出資料 (PDF:3090KB)
資料4
Collective Impact
(集合的インパクト)
とは何か
中央教育審議会 教育振興基本計画部会
2016.7.25
(独)大学改革支援・学位授与機構
教授 田中弥生
©YayoiTanaka 無断転用禁
1
全体の構成
1. 問題提起
・3つの悩み(エビデンス、効果のスケール、大学)
・ひとつの解としてのコレクティブ(集合的)・インパクト
2. コレクティブ・インパクトとは何か
・その特徴
・シンシナティの事例(原点)
3. モデル展開のための分析
・大学の重要な役割:データ分析、モデル汎用性の追求
・4つの柱
・実践者インタビューから
4. 日本への示唆
2
©YayoiTanaka 無断転用禁
1. 問題提起
3つの悩み
エビデンス・ベースの意思決定というが、
どのように実施・運営するのか?
個々の活動はあるが。。。効果をどうス
ケールアップさせたらよいのか?
大学の地域連携・貢献活動をどのように
進めていったらよいのか?
©YayoiTanaka 無断転用禁
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1. 問題提起
ひとつの解としてのコレクティブ・インパクト
• 2006年にオハイオ州、シンシナティで、地域の教育問題に、包括的に取り組
むためにはじめられたアプローチ(方法・過程)につけられた名称。
• 先の3つの“悩み”にひとつの解を提供している。
「ゆりかごから就職まで」トータルで教育課題に取り組む
• 多様なメンバーによる緩やかなネットワーク
• 共有されたビジョン
• 共有された行動指針
• 共有された指標
• 共有された実行プラン
• 可視化されたデータに基づくコミュニケーション
• 効果のスケールアップへ
©YayoiTanaka 無断転用禁
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2. Collective Impact(CI)とは何か
「めざましい効果」
• シンシナティおよびケンタッキー北部の91%の生
徒の学業指標が向上した。
• 75%の就学前児童の状態(就学に向けた準備状
況)が13ポイント向上した。
• シンシナティの4年生の76%の国語力が21ポイント
向上した。
出典:http://www.strivetogether.org/results
©YayoiTanaka 無断転用禁
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全米への広がり
10年後には、32州に広がり、9600団体が従事
出典:StriveTogether HPより http://www.strivetogether.org/
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2.コレクティブ・インパクトとは何か
原点:シンシナティの事例 「Strive Together」
深刻化する教育問題
・・シンシナティの公立学校の生徒たちの
約半数がドロップアウトしている(2010年)。
・就学前児童のReadinessのレベルが50
以下。
・公立学校の数学、国語のスコアが全米
平均以下。
・オハイオ州第3の都市のひとつ
・歴史ある都市
・人口30万人
・210万人(3州15群生活圏)
・P&Gなど大手企業7社
・大学、病院、文化施設、野球
チーム等
・カレッジの卒業率が全米平均以下。
・シンシナティの学生たちは、十分な準備
が整わないままに大学に入学し、就職し
ている。
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©YayoiTanaka 無断転用禁
緩やかなネットワーク
「Strive Together」
JPモルガンチェース
(金融機関)
ユナイテッド・ウェイ
シンシナティ
P&G
(製造業)
シンシナティ商工会議所
シンシナティ
公立学校連絡会
シンシナティ
小児科中央病院
シンシナティ
コヴィントン独立 シンシナティ シンシナティ
大学
公立学校
教職員連合 YMCA
ヘイリーUS
バンク財団
シンシナティ
州立大学
★データ管理
ソフトを開発 8
出典:田辺大「ハーバード社会起業大会スタディプログラム2016帰国後勉強会」資料より
シンシナティ「Strive Together]
各アクターの役割
「行動指針」
(Theory of
Action)
共有された指標と測定
(Shared Measurement)
共有された目的
(Vision Goal)
綜合マネジメント・分析・コ
ミュニケーション・調整部隊
(Backbone Organizations)
共有された問題
(Shared Agenda)
コンサルタント
専門スタッフ
企業・大学
相互関係を強化する活動
(Mutually Reinforcing
Activity)
持続的なコミュニケーション
(Continuous
Communication)
NPO,学校、自治体、
企業、大学等
NPO,学校、自治体、
企業等
出典:田辺大「ハーバード社会起業大会スタディプログラム2016帰国後勉強会」資料より 筆者作成
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3. モデル展開のための分析
・大学の重要な役割
~分析と汎用性の追求~
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3-2 コレクティブ(集合的)インパクト
汎用性の検証
• コレクティブ(集合的)インパクトが全米で注目され
た背景には、それが特定地域の、一過性の成功
ではなく、モデルとして汎用性をもたせるように、
当初から大学による調査がビルトインされていた
点にある。
• 大学地域連合が協働し、シンシナティ・シティの成
功モデルをポートランド、リッチモンド、シアトル、
ヒューストンで実施。
• モデルの汎用性を検証。
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3-2.
コレクティブ(集合的)インパクトの枠組み
柱1:コミュニティのビジョンを共有する
(Shared Community Vision)
ビジョンの共有
複数のセクター(教育、非営利、財団、ビジネス、自治体)がビジョン「ゆりかごから就職まで」を共有
し、責任を持つ。
幼児教育から就職まで教育をトータルで
「ゆりかごから就職まで」トータルで。
行動指針の共有(Theory of Action)
共通のビジョン「ゆりかごから就職まで」をもとに、それを達成するための行動を議論した上で、それ
を可視化し、共通のテンプレートに示し、共有し、プロジェクトに参加する者の行動指針としている。
多角的・戦略的コミュニケーション
コミュニティ全体でこのビジョンを共有するために、戦略的に多角的なコミュニケーションを展開(親
委員会、WGの多用な構成員)
出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆
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©YayoiTanaka 無断転用禁
柱2:エビデンスに基づく意思決定
Evidence –Based Decision Making
コミュニティ・レベルのアウトカム目標と指標
・多様な人々が集まりアウトカム目標と指標について議論(連続討議)して、リストアップ(100-150個)。
・この中から8-10個のアウトカム目標を選定(選定基準に基づき最も重要な目標を選定)
データ収集と共有
・現場データの収集;教員の負荷が軽減されるよう工夫(地域のソーシャルワーカーへの電話報告を
止めて、オンライン報告へ。データは電子化へ)
データ分析能力の確保
・データシステムの開発;個々の生徒のデータを収集し、そこから地区単位の効果を測定するためにシ
ステムを
・ばらばらに記述されたデータの入力負荷と工夫(P&G、マイクロソフト)
・分析結果を可視化し、互いに比較しやすくするためにダッシュボード(主体別にカスタマイズ)の共有
出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆
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©YayoiTanaka 無断転用禁
柱3:協働のためのアクション
Collaborative Action
アウトカム目標と指標達成のための実行プラン
• 柱2で選定されたアウトカムをより詳細で、達成可能な指標に分解し、戦略を策定
(ベースラインデータ、成功プログラム、関係者情報等から)
• 指標はコミュニティのニーズから選定(選定基準:緊急性、それを担える主体があ
るか、データがあるか、資金調達ができるか)
親委員会と実務家中心のWG
• ネットワークは実践者を中心に、具体的な目的のもとに構成(ビジネスや地元関係
者も参加)
• 親委員会、WGと目的別に複数委員会を形成
継続的な改善を可能にする仕組み
• 根拠データをもとにした継続的改善を実践(企業関係者が6シグマを提唱)
• アクションプランを作成し毎年進捗をチェックし共有。
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出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆
©YayoiTanaka 無断転用禁
柱4:投資と持続可能性の担保
Investment &
Sustainability
パートナーシップを持続させるための工夫とケア
• Strive Togetherを軌道にのせ、効果が見えるようになるまで、少なくとも
5年は必要。中長期のコミットをいかに獲得するか(企業等)
• 資金源を多様化し、資金提供者を応援団にする。非資金の資源が新
たな資金源の開拓につながることもある。
アンカー役:バックボーン・スタッフ
Strivie Togetherはネットワークであり、本社が存在し、上位下達で、メン
バーを管理するような形態ではない。バックボーンと呼ばれるスタッフが
複数雇用。その役割は多岐にわたる(例・関係団体との頻繁なコミュニ
ケーション、・プロジェクトマネジメント、・データ分析、・政策分析、資金調
達)
出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆
©YayoiTanaka 無断転用禁
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柱4:投資と持続可能性の担保
Investment & Sustainability
政策に反映する
・政府関係者が意思決定する際に、必要なデータを示す(政策決定者は確固た
るエビデンスが示されるまでなかなか動かなかったが、最終的に、市当局は5年
間で30万ドルをコミット)
大学の役割
・大学は地域の教育問題において鍵となる関係者であることを認識(教師の輩出、高校卒
業生の受け入れ)
・都市大学連合との協働
・メンバーの大学は教育改革、コミュニティ改革にコミットすべく、データ分析、事例分析とモ
デル普及などの役割を果たしている。
出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2014)Striving Together, SUNY,pp31-64 より筆者加筆
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3-3 実践者インタビューから
• アーカンソー州の教育プログラムのコーディネーター
(バックボーン)として従事。
•
多くの人々の参加とエネルギー
・親委員会(7回)
・WG(100時間以上)
・48のフォーカスグループ(550人)
・教育者調査(6000人以上が回答)
・地域関係者調査(2000人以上が回答)
丁寧なコミュニケーション
・毎週現地に赴いていた(月4日ほど滞在)
・可視化されたデータによる問題共有(驚きの反応)
・ビジョン、指標、データに基づく実行プラン作り
・全員参加、全員が納得ゆく合意形成
・追加メンバーの推薦があれば受け入れる
・議論プロセスの透明性
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4. 日本への示唆
共通点と適用可能性
共通する課題
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4. 日本への示唆
共通点と適用可能性
• モデルの可能性
• 安易に米国モデルを輸入してはいけないが
• もし教育・福祉問題を扱うのなら
• 調査を行い、より詳細の情報収集・分析の上、日本への適用性を議論する必
要あり
• 小事例からスタートする
・わかりやすく、多くの人々が必要と感じている課題を選択
・トータルな課題解決を念頭に入れながらも段階的に着手する(パイロット)
・日本の事情に応じたアクターを集める
・アクターは課題解決によって間接・直接のベネフィットを受ける
・大学(研究者によるデータ分析のみならず、学生ボランティア等も)
・情報開示とデータ提供・収集はオープンに
・バックボーン役は合意形成だけでなく利害のバランスもとる
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補足資料
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共有されたビジョン
~包括的教育アプローチとビジョン~
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共有された行動指針
(Theory of Action)
立ち上げ段階
(模索)
進捗段階
継続段階
システム変化
(インパクト)
出典:http://www.strivetogether.org/sites/default/files/StriveTogether_Theory_of_Action_v3_06.2016.pdf
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共有された指標とデータ
ゴール・指標の選定・測定と共有
• ゴール別にフォーカスグルー
プ(50団体ほど)
• 指標の選定
• 例:ゴール2(学校、地域、家
族で30指標)
• 行動指針に基づき5つの
ゴール
• 初年度はベースライン年
⇒毎年進捗を測定
•
• ゴール別、地域別に
経年変化を測定
• 可視化と比較
• 活動のマッピングと成
功事例
• 毎年3地域データを
• まとめて全体の進捗を可
視化
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共有された実行プラン
実行プラン・進捗と効果・向上のための継続的コ
ミュニケーション
効果共有・
改善・向上
へ議論
実行プラン策定
と共有
(グループ単位)
バック
ボーン
役
進捗確認(可視化
データ)と共有
(6σ手法)
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出典:Jeff Edmondson & Nancy L. Zimpher(2015)Strive Together, SUNYより筆者作成
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可視化されたデータに基づくコミュ
ニケーション
進捗レポート
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出典:StriveTogether HPより http://www.strivetogether.org/ ©YayoiTanaka 無断転用禁
(効果のスケールアップへ ~10年目の効果~
シンシナティの全公立学校
初等教育への準備
小学4年生の読解力
高校卒業
大学等入学
8年生[中学生]の
数学力
出典:田辺大「ハーバード社会起業大会スタディプログラム2016帰国後勉強会」資料より
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