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身近にある感染源(PDF)

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身近にある感染源(PDF)
身近にある感染源
医療法人茜会医局 酒井幸平
日本脳炎のブタでの抗体陽性率
国立感染症研究所HPより
2005-2009年は急性散在性脳脊髄炎(ADEM)のためワクチンの積極接種なし。2010年4
月より改良型ワクチンが出来たため再開。この間に定期接種期間のあった人は注意。
マラリアは100カ国余りで流行しており、世界保健機構(WHO)の推計によると、年間2億人以
上の罹患者と200万人の死亡者がある
http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2016/infectious-diseases-related-to-travel/malaria
アメリカCDCホームページより
日本でのマラリア
明治時代:北海道深川市の屯田兵とその家族にマラリアが流行。
1900年には人口約8,200名の内1,500名近くが感染。
大正時代:本州では琵琶湖を中心として福井、滋賀、石川、愛知、富山で患者数が多い。
福井県では毎年9,000 〜22,000人の患者が発生。
昭和初期:宮古島、八重山諸島(石垣、西表)で100 〜1,500名を超す患者が発生。
本州で5,000 から9,000人の患者数。
1946 年の28,200人をピークに1951年には500 名以下に減少。
1998年の輸血感染を最後に国内感染は無くなる。
現在は、外国で感染して日本に帰国してから発症する例が年間100 以下。
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
平成11
12
13
14
15
16
三日熱
17
四日熱
18
卵形
19
熱帯熱
20
不明
21
22
23
24
25
合計
参考文献:環境省 地球温暖化の感染症に係る影響に関する懇談会
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2009年中国東北部で最初の患者が見つかる。
N Engl J Med 364;16
nejm.org april 21, 2011
2011年De-Xin Li,教授らのグループがウイルスの分離に成功。新種
のブニヤウイルスであることが判明。ハンタウイルスもブニヤウイル
ス科の一種。他クリミアコンゴ出血熱ウイルスなどもブニヤウイルス
科に属する。
N Engl J Med 364;16 nejm.org april 21, 2011
SFTS症例の発生(感染)地域
(N=139, 2015年7月29日現在
国立感染症研究所
ウイルス第一部・感染症疫学センター
症例は西日本に集中している。
生存例 死亡例 合計
報
告
数
性
別
年
齢
虫除けをする夏はむしろ減る傾向。
5月に多い。
100
39
139
男
41
15
56
女
59
24
83
中央値 71歳
81歳
74歳
~20代 2
0
2
30代
2
0
2
40代
2
0
2
50代
8
2
10
60代
29
6
35
70代
28
10
38
80代
26
18
44
3
6
90代~ 3
(2015年7月29日現在)
厚生労働省HPより
マダニを介してうつるウイルス病「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が見
つかった13県のうち3県で、地域の飼い犬もウイルスに感染していることが山口大の
調査で分かった。犬の散歩道という身近な生活圏にも、ウイルスが潜んでいる証拠
だ。20日に岐阜市で始まった日本獣医学会で発表した。
2014年9月21日朝日新聞より
犬の毛が少ないところに寄生
することが多々あり、室外犬
の耳の裏(特に耳がたれてい
る犬種は気づきにくい)に要
注意。
Rev Soc Bras Med Trop. 2006 Jan-Feb;39(1):64-7.
Epub 2006 Feb 23.
疾患名
春夏脳炎
ヨーロッパダニ脳炎
出血熱
ツツガムシ病
日本紅斑熱
ロッキー山紅斑熱
Q熱
シベリアダニ熱
エーリキア症
野兎病
回帰熱
ライム病
バーベシア症(原虫)
ダニ麻痺症(唾液毒物
質)
媒介者
ウイルス性
I.persulcatus
(シュルツエマダニ)
I.ricinus
Haemaphysalis
(チマダニ属)
リケッチア性
ツツガムシ類
マダニ類
カクマダニ属
マダニ類
カクマダニ
キララマダニ属
マダニ属
細菌性、スピロヘータ
マダニ属
カズキダニ属
マダニ属
その他
マダニ属
流行地
マダニ類
世界各地
極東ロシア
中央ヨーロッパ
インド
日本、東南アジア
日本
北米
オーストラリア、日本
他にもマダニや
その類縁種は
様々な疾患を媒
介する。
極東ロシア
北米、日本
欧米、極東ロシア、日本
アフリカ、インド
欧米、日本、極東アジア
北米、ヨーロッパ
日本皮膚科学会
HPより
2014年にA型肝炎の感染が例年にない増加
日本のA型肝炎は9割が海産物(内4割が牡蠣)
であったが、感染源不明のA型肝炎が増加して
いる。水系感染であるため海産物が主流では
あるものの、汚染された農業用水に由来する
植物の感染源にも注意が必要。
厚生労働省検疫局HPより
2013年3月から8月にかけてアメリカの10州にA型肝炎感
染が拡大。165人の患者が発生し、69人が入院、2人が劇症
肝炎に発展し、1人は肝臓移植。
⇒感染源は、トルコ産の冷凍ザクロであり、ほぼ9割が同
一の製品を購入。
Collier MG et al. Outbreak of hepatitis A in the USA
associated with frozen pomegranate arils imported from
Turkey: anepidemiological case study. Lancet Infect Dis.
2014;14:976-81
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25195178
この他、海外の報告でイチゴやトマトが感染源
の事例がある。
渡航者のA型肝炎は1/4は
飲み水からの感染。
渡航者のA型肝炎には農作
物からの感染が1割強い
る。
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル~ 二枚貝におけるA 型肝炎ウイルス ~(改訂版)
食品安全委員会より
生食用としてチェック済み
ならば良いが、そうでなけ
れば国産の流通している
海産物からもA型肝炎ウイ
ルスが出ている。
食品健康影響評価のためのリスクプロファイル~ 二枚貝におけるA 型肝炎ウイルス ~(改訂版)
食品安全委員会より
狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)
対策が進んで今では
ほとんど発症する患
畜はいない状況。
日本での感染対策は世界トップレベル
政府広報オンライン
新たなBSE対策がスタート 牛肉の安全
はどう守られているの?
より
Cell Rep. 2015 May 26;11(8):1168-75. doi:0.1016/j.celrep.2015.04.036. Epub 2015 May 14.
Grass plants bind, retain, uptake, and transport infectious prions.
植物に付着したプリオンが最低でも7
週間感染能力を保持していた。また、
プリオンを含んだ水で植物を飼育する
と、葉や実から感染能力を保持したプ
リオンが検出された。
⇒杜撰な牛の管理をしていると植物を
通じてプリオン感染のリスクあり。
韓国産ヒラメから基準超の寄生虫検出…回収命令
2015年08月11日 12時04分
大分県は10日、同県豊後大野市の水産物輸入会社「清川商事」が輸入した韓国産の生食
用ヒラメから食中毒の原因となる寄生虫が検出され、同社に回収命令を出したと発表した。
発表によると、同社は5日、韓国の養殖業者からヒラメ2862匹(3100キロ)を輸入。福岡検
疫所のサンプル検査で10日、食品衛生法の基準値を超える寄生虫「クドア・セプテンプンク
タータ」がいたことが分かった。ヒラメは大分や福岡、長崎、大阪など9府県の業者に卸した
が、健康被害の報告はないという。
クドア・セプテンプンクタータはヒラメの筋肉に寄生し、刺し身などで食べると嘔吐や下痢を引
き起こす可能性があるという。
2015年08月11日 12時04分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
独立行政法人水産総合研究センター
【水産庁】
・
養殖場での成魚に対する検鏡検査法(暫定版)を通知し、出荷時の自主検査と感染が確認さ
れた場合の活魚及び生鮮品の出荷自粛を指導した。(水産庁, 2011)
・
2012年6月にヒラメ養殖場・種苗生産施設において実施すべき食中毒防止対策を都道府県に
対して通知した。
<主な内容>
・種苗の検査、養殖場へのクドア寄生のない種苗の導入
・飼育群の来歴ごとの飼育管理
・飼育環境の清浄化
・飼育群ごとの養殖日誌の作成
・飼育群ごとに「ヒラメに寄生したクドア・セプテンプンクタータの検査方法について」に従い、
殖魚の出荷前検査の実施
クドア・セプテンプンクタータ寄生魚の活魚、生鮮品での出荷自粛
(水産庁, 2012)
【厚生労働省】
・
食中毒が疑われる場合の検査法を都道府県等に通知し、検査の結果、ヒラメ筋肉1gあたりの
クドアの胞子数が1.0×106個を超えた場合は食品衛生法第6条違反として取り扱うことと
した。(厚生労働省, 2012a;厚生労働省, 2011a)
・
2011年度輸入食品等モニタリング計画に関し、韓国の特定の養殖業者の養殖ヒラメ等に対し
てモニタリング検査の頻度を30%に引き上げて実施するよう各検疫所に通知した。(厚生労働
省, 2011d)
・
韓国の特定の養殖業者の養殖ヒラメ等に関して、食品衛生法第26条第3項に基づく平成
24年度の検査命令の対象食品として、全輸入届出に対し検査の実施を命じるよう各検疫所に
通知した。(厚生労働省, 2012b)
・
「生食用生鮮食品による原因不明有症事例への対応について(Q&A)」により、関係事業者、消
費者等にクドア・セプテンプンクタータによる食中毒に関する情報を提供している。(厚生労働
省,
2011b)
平成23年、奈良県で弁当等を喫食した2組20名のうち14名が、10月1日14時を初発として嘔
気、嘔吐、発熱、下痢等の症状を呈した。また、原因施設に保管されていた ヒラメの切り身(患
者らに造り等として提供したヒラメと同一個体のもの。以下同じ)および喫食残品の生のヒラメ
からクドア胞子を検出し、患者4名の糞便か らクドアの18S rRNA遺伝子を検出した。
食品検体(ヒラメ、マグロ、カンパチ、サーモン)のうち、ヒ ラメについては大阪府立公衆衛生研
究所により顕微鏡検査と遺伝子検査を実施し、マグロ、カンパチ、サーモンについては国立医
薬品食品衛生研究所により顕微 鏡検査を実施した。
検査結果
原因施設に保管されていたヒラメの切り身および喫食残品の生のヒラメからクドア胞子、患者9
名のうち4名の糞便からクドアの18S rRNA遺伝子が検出された。
患者1名当たり少なくとも15~16g以上のヒラメの喫食が認められた。この喫食量からクドア胞
子の摂取量を概算すると、患者1名当たり摂取胞子数は1.7×108と発症に必要な7.2×107を
上回る。汚染経路の追及としてヒラメの販売系統の調査をした結果、患者らに提供のあったの
は輸入された養殖ヒラメであることを確認した。なお、養殖業者および養殖場については特定
できなかった。
国立感染症研究所HPより
平成25年9月9日三重県で企業研修会に出席した複数名が食中毒様症状を呈し、医療機関
に搬送。仕出し弁当を食べた358名中94名が発症。
仕出し弁当の保存食や研修会で提供された飲料、飲食店でのふきとり、飲食店従業員便や患
者便について、原因と考えられる食中毒細菌やウイルスは検出されなかった。
一方、K. seputempunctata については、当初保存食のヒラメの刺身を鏡検で検索したが検出で
きなかった。さら にリアルタイムPCR検査でDNAが検出されたものの、増幅曲線から算出した数
は定量限界以下であった。改めて鏡検したところ、6~7個の極嚢を有するク ドア属の粘液胞
子虫が確認されたため、国立医薬品食品衛生研究所へ問い合わせて陽性との判断をし、原因
食品および原因物質を確定した。
遡り調査他
原因となったヒラメは韓国済州島で養殖され、輸入業者を通して、冷蔵の鮮魚状態で市内の卸
業者から提供前日に飲食店が購入したものである。飲食店では3℃の冷蔵庫で保管した後、
提供前日に調理後冷蔵保管し、当日に盛り付けて提供している。
このため、K. seputempunctata には養殖段階で既に汚染されていた可能性が最も高いと考え
られる。
IASR Vol. 33 p. 150: 2012年6月号
犬の腸、フン、血液を検査
英国ケンブリッジ大学の研究グループが2015年4月1日に論文発表。
従来、ペットのイヌから人のノロウイルスが検出されたこともあった。危険性を調べるために、
イヌの腸、フン、血液について検査。ノロウイルスの痕跡を分析した。
イヌの血液に痕跡
結果、遺伝子型の異なる7つの人のノロウイルスについて、イヌの腸の組織に対する感染が
少なくとも理論的には可能であると分かった。
ノロウイルスに感染した人が身近にいたイヌについては、325匹分の血液のうち43匹分で人
のノロウイルスに対する抗体が見つかった。
研究グループは、イヌの血液検査の結果から、人での流行を反映していると見る。腸の細胞
に侵入して増殖していると確認できていないとはいえ、イヌの腸でウイルスが増殖する可能性
はあると指摘する。
Caddy SL et al. Evidence for human norovirus infection of dogs in the UK. J Clin Microbiol. 2015
Apr 1.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25832298
2000年 ヒトで1922症例
2012年 ヒトで10845症例
ノロウイルス
人間でノロウイルス感染が増えた年は
イヌのノロウイルス感染も増えている。
ペットと飼い主との間でウイ
ルスがやりとりされて、イヌ
が媒介動物となる可能性。
非定型抗酸菌(NTM)は罹患者・
死者ともに徐々に増加傾向
Kekkaku Vol. 88, No. 3 : 355_371, 2013
増加するMAC症の制御を目指して
より
モダンメディア 52 巻3 号2006[話題の感染症] 57
シャワーのノズルから
NTMのバイオフィルム
が検出された。
Opportunistic pathogens enriched in showerhead biofilms
Leah M. Feazel
PNAS September 22, 2009 vol. 106 no. 38 16393–16399
自然冷媒ヒートポンプ給湯器の貯湯タンクユニッ
ト使用中に発症したhot tub lung の1 例
日呼吸誌3(4),2014 525-529
日本国内でもシャワー以外に給湯器からの感染を示唆する報告がなされている。
患者の気管支洗浄液と患者宅の給水器から同じM. aviumが検出された。
まとめ
・日本には熱帯地域の感染症を媒介する昆虫(ベクター)がかなりの種類存在する。
実際に以前はそれらの感染症の流行があった。
⇒今後、再び定着するかもしれない。
・食中毒の原因病原体は通説通りに行かないものもある。
特に海外帰りは要注意。
・同様に海外からの輸入品は国産品と安全性検査の基準が緩いことがあり要注意。
・水回りは食中毒の原因菌以外にも呼吸器疾患の原因となるNTMもいるのでこまめに掃除を。
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