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膝伸展筋力トレーニング負荷量の簡便な設定法
膝伸展筋力トレーニング負荷量の 簡便な設定法 - Hand-held dynamometer と1 repetition maximumの関連性 ‐ PT00372番 近藤 隆 大学院医療系研究科:神谷健太郎 米澤隆介 指導教員:松永篤彦 増田 卓 背 景 筋力トレーニングにおける負荷量の設定には1 repetition maximum (1RM)の相対値が用いられている 1RMの測定は、患者の負担感が大きく、測定方法も煩雑なため 実際の臨床場面で行われないことも多い 簡便かつ客観的な筋力測定機器として、 hand-held dynamometer (HHD)の有用性が数多く報告され、近年わが国においても普及 しつつある 背景② 膝伸展筋力は、立ち上がり動作や歩行などの日常生活動作 だけでなく、運動耐容能にも強く影響を及ぼすことから、その 筋力トレーニングはリハビリテーションにおいて重要な要素で あり、心疾患患者においても推奨されている HHDによる測定値から、膝伸展筋力における1RMを予測出来 れば実際に1RMを測定することが困難な状況においても、筋 力トレーニングの負荷量を設定することが出来るため、有用で あると考えられる 目 的 測定が簡便なHHD値から1 RMを導き出し、膝伸展 筋力トレーニングの適切な負荷量の設定に役立てる 設定された負荷量の安全性を確認する 負荷量の設定 (HHD値と1RMの測定) 対 象 健常者(中枢神経疾患、整形外科的疾患を有する者を除く) 37名74脚 (20歳代男性・16名32脚、20歳代女性・16名32脚、 30歳以上男性・5名10脚) ※HHDの性能上、HHD値77㎏となった6名を除いた 方 法 HHD値の測定 測定機器 アニマ社製HHD(μTasMT-1) 測定肢位 膝関節90°屈曲位 写真 センサーパッドは下端が腓骨 外果より2横指上に設置 測定回数 左右各3回、各回5秒間測定 測定値 最大値を採用 1RMの測定 測定機器 酒井医療社製大腿四頭筋訓練器 (SPR-2400) 測定方法 下肢下垂位から完全伸展し、 最終 挙上位で、3秒間保持(最終挙上位 から2横指下までが許容範囲) 測定回数 施行回数は6回以内に配慮(重量 は1∼4㎏の範囲で増減) 測定値 完全伸展可能な最大値(重錘量に 重錘アームの重量4㎏を加算) 結 果 HHD値と1RMの関係 25 1RM (㎏ ) 20 15 y = 0.182 x + 3.926 r = 0.734 P < 0.01 10 5 0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 HHD値(㎏) 60.0 70.0 80.0 信頼区間(95%)下限 信頼区間(95%)上限 線形 (回帰直線) 1RMの予測値と重錘負荷量の目安 回帰式 y = 0.182x + 3.926 より ( 信頼率 0.95 ) 重錘の負荷量(60%1RMと設定) 信頼区間 下限 上限 信頼下限 予測値 信頼上限 7.57㎏ 2.87㎏ 12.27㎏ 1㎏ 7㎏ 4㎏ HHD値 1RM予測値 20㎏ 30㎏ 40kg 50kg 60㎏ 9.39㎏ 4.78㎏ 14.00㎏ 2㎏ 11.21㎏ 6.65㎏ 15.76㎏ 4㎏ 13.03㎏ 8.49㎏ 17.56㎏ 5㎏ 14.85㎏ 10.30㎏ 19.40㎏ 6㎏ 5㎏ 6㎏ 7㎏ 8㎏ 8㎏ 9㎏ 10㎏ 11㎏ 負荷量の安全性 対 象 (1) 健常者 8名(男性3名、女性5名:平均年齢26.3±7.9歳) (2) 北里大学病院心臓リハビリテーション室に通院する 心疾患患者 10名 (男性7名、女性3名:平均年齢59.4±16.5歳) 方 法 筋力トレーニング方法 下肢下垂位から伸展し 挙上位で 5秒間保持 左右20回×2セット 負荷量は予測値の60%1RM ※ 心疾患患者における一般的な 処方域は40∼60%1RM 測定項目 心電図変化(心筋虚血、運動誘発性不整脈の出現) トレーニング前後の心拍数、血圧、RPE トレーニング後の自覚症状(息切れ、疲労感、疼痛他) ※健常者は脈拍数、RPE、自覚症状のみ 結 果 (1)健常者 脈拍数の増加は最大6拍/分であった 実施後のRPEは9∼15と、個人差がみられた (2)心疾患患者 心電図変化はみられず、心拍数の増加は最大で10拍/分、 血圧の変化は最大で収縮期+10mmHg、拡張期−7mmHg であった 実施後のRPEは9∼12であった 測定した10名中1名(HHD値が左右とも10㎏代の者)が 他のトレーニング中、通常より強い疲労感を訴えた 考 察 HHD値と1RMとの関係において、r = 0.734とおおむね良好で あったことから、今回得られた回帰式を使って膝伸展筋力トレー ニングの負荷量を設定することが可能である 心疾患患者に対して、膝伸展筋力トレーニングを予測値の60% 1RMの負荷量で適用したところ、HHD値が20㎏以上の患者に おいては安全に施行出来た 本回帰式( y = 0.182 x + 3.926 )の作成にあたり、HHD値が 25kg以下の者が対象に含まれていなかったため、より筋力が低 値を示す症例に適用出来るかは明らかでない 結 語 HHDによる膝伸展筋力の測定は、1RMの推定並びに 筋力トレーニング負荷量の設定に有用である