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トレーニング理論 - 下井研究室

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トレーニング理論 - 下井研究室
トレーニング理論
国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科
下井俊典
トレーニング理論の
理学療法への応用
• 健康増進と理学療法
• 介護予防と理学療法
予防医学とリハビリテーション
1次予防 primary prevention
予防医学
疾病の原因・促進因子に対する予防 対策
予防接種、ガン・循環器疾患に対する 喫煙・食塩摂取の制限、介護予防
2次予防 secondary prevention
治療医学
疾病にかかっているものの早期発見・
適時治療による疾病の悪化の防止
健康診断
医学的リハビリテーション
(第3の医学、3次予防)
運動・スポーツの目的
本質的側面
遊戯性、興味性、技術性、社会性
手段的側面
健康の維持・増進
文化の発展に伴う行動体力・環境適応能、
疾病構造の低下
ライフサイクルと運動・スポーツ
本質的側面
出生
青年~
成人初期
手段的側面
成人中期
成人後期
(高齢者)
健康増進に対する
運動・スポーツの年代別目的
成人中期以降、運動・スポーツの
手段的目的が強くなる
疾病構造
成人中期 :心疾患、脳血管障害
高齢者 :衰弱、転倒骨折による
要介護状態
心疾患、脳血管障害の背景
心疾患
脳血管障害
(脳卒中)
(心筋梗塞、狭心症)
動脈硬化
乱れた食生活
脂肪(コレステロール)過多
カロリー過多
運動不足
肥満
メタボリック・シンドロームに対する
国際医療福祉大学と大田原市の
取り組み
大田原市国民保険ヘルスアップ事業
(「メタボ対策事業」、運動講座)
メタボリック・シンドロームとは?
•
•
内臓脂肪症候群
診断基準
–
ウェスト(腹囲)
•
–
≧85cm(男性)、≧90cm(女性)
高脂血症、高血圧、高血糖のうち2つ以上
•
•
•
中性脂肪値≧150mg/dl and/or HDLコレステロ
ール値<40mg/dl未満
血圧 収縮期血圧≧130mmHg and/or 拡張期
血圧≧85mmHg
血糖値 空腹時血糖値≧110mg/dl
アディポサイトカイン
肥大化した脂肪細胞より分泌されるアディポサイトカ
イン(TNFα,レプチンなど)が過剰状態になると耐糖
能異常・肥満となる
レプチンleptin
白色細胞WATから分泌され、強力な摂食抑制作用、
エネルギー消費作用、体脂肪率やBMIの増加と共に
上昇し、減量に伴い低下する
体脂肪量を維持する働きを有する、遺伝的欠乏症では
肥満、肥満治療に有効(susp)
TNF-α: tumor necrosis factor- α
インスリン抵抗性を誘発
人ではinsulin抵抗性改善薬の作用に関係(susp)
肥満対策
カロリー制限と運動療法の併用が必要
カロリー制限
カロリー制限が最も有効であるが、過度のカロリー
制限は危険
運動
エネルギー源として脂肪を使用させる
運動で消費できるカロリーは多くない
必要カロリーの推定
事業の概要
対象
健診にて「メタボ予備軍」(動機付け支援)、
「メタボ該当」(積極的支援)と判断された40歳
以上の国民健康保険加入者(対象者49名、
平均年齢55.7歳)
期間
平成19年11月~平成20年2月(3ヶ月)
事業内容
運動講座
2時間/回(昼間、夜間の2コース)
隔週(2回/月)
食生活相談
運動講座の内容
自己練習
運動講座で指導した運動(ウォーキング, 筋力
トレーニング)を日常生活で可能な限り実施し、
運動日誌に記入するよう指導した
集団練習
体力測定:1 回/月
集団体操など
頻度: 2 回/月
筋力トレーニング・集団エクササイズの指導・実践,
報告会での各対象者の体力測定結果および
自己練習状況の確認・報告
筋力トレーニングの指導
結果:体重
単位:kg
72
70.6
68.9
70
68
66
運動前
運動後
結果:運動能力
有酸素運動能力(m/6分間)
540
532.9
530
48.0
46
503.0
44
500
41.8
42
490
480
50
48
520
510
下肢筋力(回)
運動講座前
運動講座後
40
運動講座前
運動講座後
歩数(歩/日)
11000
10427.9
10373.2
10500
9916.0
10000
9500
講座前
1ヶ月後
2ヶ月後
メタボリック・シンドロームに対する
運動指導のポイント
目的
運動習慣の構築
内容
自主練習としてウォーキング(低負荷・
有酸素運動)
筋力強化練習の併用
練習結果の教示(フィードバック)、競技性の
導入
高齢者に対する運動の効果
高齢者に対する
高強度筋力トレーニングの効果(1)
(Fiatarone MA et al. 1994)
対象者
100名の高齢者
87.1±0.6歳(72~98歳)
女性63名、男性37名
トレーニング内容(トレーニング群50名)
膝関節と股関節(レッグプレス)の伸展運動
80%MVC×8回/セット×3セット(全体で45分)
3回/週×10週
残り50名は対照群としてレクリエーションを
実施
結果
トレーニング群
筋力
113±8%
対照群
3±9% p< .001
歩行速度
11.8 ±3.8%
-1.0 ±3.8
p< .05
階段昇降
28.4 ±6.6%
3.6 ±6.7
p< .01
大腿部横断面積
2.7 ±1.8% -1.8 ±2.0%
n.s.
高齢者に対する
高強度筋力トレーニングの効果(2)
(Hakkinen K et al. 1998)
対象者
中年成人:男性10名(42±2歳)、女性11名(39±3歳)
高齢者 :男性11名(72±3歳)、女性10名(67±3歳)
トレーニング内容
マシントレーニング
基本項目: レッグ・プレス、レッグ・エクステンション
追加項目: 上肢、体幹、下肢筋群
ベンチプレス、ラットプルダウン、シットアップ、背筋、
肘・膝屈筋運動
期間:6ヶ月
初期2ヶ月
50-70% 1RM×10-15回×3-4セット×2回/週
中間2ヶ月
高強度:60-70% 1RM×5- 6回
低強度:50-60% 1RM×8-12回
その他: 10-12回
×3-5セット
×2回/週
後期2ヶ月
高強度:70-80% 1RM×3- 6回
低強度:50-60% 1RM×8-12回
その他: 8-12回
×3-5セット
×2回/週
結果
大腿四頭筋の筋横断面積
P<.01
P<.01
P<.05
最大等尺性脚伸展筋力 [N]
36±3%向上
(p<.001)
rate of force development
(RFD) [N・102・S-1]
40±10%向上
(p<.05)
57±10%向上
28±10%向上
(p<.001)
(p<.05)
最大求心性脚伸展筋力 [N]
21±3%向上
(p<.001)
垂直とび [m]
24±8%向上
(p<.001)
18±6%向上
(p<.01)
30±3%向上
(p<.001)
高齢者に対する
高強度筋力トレーニングの効果(3)
(Frontera, et al. 1988)
男性高齢者12名(60-72歳)
膝伸展・屈曲
80% 1RM×8回×3セット/日×3日/週×12週
膝伸展筋力
膝屈曲筋力
平均
筋横断面積
大田原市の介護予防事業の取り組
みでの
高齢者に対する運動の効果
簡便な機器を使用した3ヶ月間の
継続的な運動療法による心身機能、
要介護度に対する効果
対象者
大田原市内在住の軽度要介護高齢者21名
運動プログラム
負荷: 自重、ゴム負荷
期間
3ヶ月間 (平成16年11月~平成17年1月)
介入8ヶ月後に追跡調査
頻度: 2回/週
効果判定
心身機能: 移動能力、静的・動的バランス、
柔軟性、筋力
QOL
要介護度
運動療法の内容
サーキットトレーニング方式による7種類の プログラム
機能プログラム:体幹、下肢の筋力トレーニング
6種類
立ち上がり運動(スクワット)
踏み出し運動
腹筋
お尻上げ運動
股関節外転
舟こぎ運動
歩行プログラム:応用歩行練習(継ぎ足歩き)
回数・強度の設定
自覚的運動強度(RPE)にて
「11:やや楽」レベルで継続 可能な運動強度(反復回数、 ゴム強度)を設定
RPE (Borg scale)
効果判定
心身機能
移動能力
筋力
動的バランス
静的バランス
柔軟性
Timed up and go, 10m 最大歩行
握力, 膝伸展筋力
開眼片足立ち, 閉眼片足立ち
ファンクショナル・リーチ
長座位体前屈
生活の質
健康観、心の健康、日常役割、社会生活機能、痛み
要介護度
認定調査員の聴取に基づいた1次判定
結果
筋力
握力
**:p<.01, *:p<.05
膝伸展筋力
[N]
**
[kg]
**
250
*
30
200
20
21.3
19.9
23.2
100
10
0
pre-ex
post-ex
Timed Up and Go
[秒]
40
pre-ex
8M post-ex
post-ex
10m最大歩行
**
**
8M post-ex
*
[秒]
**
40
30
20
131.8
124.2
50
0
移動能力
174.4
150
30
20
22.0
16.4
10
16.6
19.0
10
13.7
14.7
post-ex
8M post-ex
0
0
pre-ex
post-ex
8M post-ex
pre-ex
静的バランス
ファンクショナル・リーチ
長座位体前屈 (n=12)
[cm]
[cm]
*
50
40
34.7
30
29.2
27.5
30
10
0
0
pre-ex
動的バランス
30.3
34.1
20
10
post-ex
8M post-ex
開眼片足立ち (n=10)
20.9
pre-ex
post-ex
8M post-ex
閉眼片足立ち (n=10)
[秒]
[秒]
25
25
20
20
15
15
10
10
5
**
50
40
20
**
7.8
10.0
9.5
5
2.0
2.8
3.1
0
0
pre-ex
post-ex
8M post-ex
pre-ex
post-ex
8M post-ex
トレーニング後
生活の質
トレーニング前
身体機能
60
*
心の健康
40
日常役割(身体)
20
0
日常役割(精神)
*
社会生活機能
身体の痛み *
全体的健康感
活力 *
*: p<.05
要介護度(1次判定)
非該当 要支援 要介護1
プログラム実施前
1
13
7
プログラム実施後
10
6
5
プログラム実施により要介護度が有意に改善 (符号検定、p<.01)
※21名中1名(4.8%)について要介護度が1度重度化した
最終日の参加者の感想
身体機能面
体が軽くなった
足が軽くなった
関節の痛みも少しよくなった
動きがスムースになった
身体能力(活動)面
歩くのが楽になった
トレーニングするようになってから歩けるように
なった
社会参加面
外出できるようになった
調理することが増えた
買い物に行けそうな気がする
気持ちが外に向き、保健センターのリハビリにも
参加してみようと思っている
(自営いちご農家の)箱折りの仕事が多く、楽に
できるようになった (それまでは50個が100個
くらい)
精神面
気持ちが明るくなった
気分的にすっきりしている
ここに来るのが楽しい
楽しみができた
最初は年寄りだから抵抗を感じた
これらの研究結果からわかること
運動負荷の設定について
高齢者に対する高負荷トレーニングは可能
但し、
• 先行研究は健常高齢者を対象としている
• リスク管理が必須
• 十分な休養
筋力トレーニングで活用できる理学療法の知識
運動学
筋の種類と作用
単関節筋、二関節筋
体幹の動的な固定(ダイナミック・スラビライゼーション)
関節モーメント
「戦略(ストラテジー)」
解剖学
筋の起始停止
生理学
筋の粘弾性
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