Comments
Description
Transcript
2012年に輸入検疫で発見された主な重要病害虫(PDF:997KB)
植物防疫所病害虫情報 第 101 号(2013 年 11 月 15 日) 2012 年に輸入検疫で発見された主な重要病害虫 2012 年には、我が国に、貨物 70.0 万件、携帯品 23.8 万件、国際郵便物 10.6 万件、計 104.4 万件の 植物が輸入された。これらの植物から、我が国が特に侵入を警戒する重要な病害虫が数多く発見され た(下表参照) 。特に、病害虫は、旅行客が携帯して持ち込む輸入が禁止されている生果実から発見 されることが多く、こうした輸入禁止の生果実の持ち込み件数は年間約 2.6 万件あり、増加しつつあ る。植物防疫所では、これらの輸入禁止植物を持ち込まないよう旅行客に要請するとともに、植物検 疫の制度を周知するための広報などを行い、病害虫の侵入防止に努めている。 発見病害虫名 主な発見植物 輸入禁止対象病害虫 特定重要病害虫 サツマイモ トウガラシ生果実、トウガラシ属生果実 コンゴ民主共和国、トーゴ、ガーナ ビート種子 オーストラリア セロリー茎葉、コリアンダー茎葉、カラシナ茎葉、ハボタン茎葉、ホウレンソウ茎葉、 ラズベリー生果実 米国 Dendroctonus ponderosae アメリカマツノキクイムシ (1件 ) マツ属 米国 Anastrepha fraterculus ミナミアメリカミバエ (1件 ) Liriomyza langei マンゴー生果実 ペルー セロリー茎葉、ブロッコリー茎葉、チシャ茎葉、ロメインレタス茎葉、エンドウ生果 実、レタス茎葉、カボチャ属生果実、ホウレンソウ茎葉、その他茎葉 3 種 トウガラシ生果実、ナス生果実、ナス属生果実 米国、メキシコ Diabrotica undecimpunctata ジュウイチホシウリハムシ (133 件 ) (4 件 ) (3 件 ) (3 件 ) (1件 ) (9 件 ) (123 件 ) Bactrocera lati frons マンゴー生果実、グアバ生果実、バンレイシ生果実、トウガラシ生果実、レンブ生果 実、ランブータン生果実、リュウガン生果実、その他生果実 16 種 ニガウリ生果実、ウリ科生果実、モクベツ生果実 主な輸出国・地域 ベトナム、タイ、中国、フィリピン、インド ネシア、台湾、マレーシア、その他 7 スリランカ、ネパール、バングラデシュ、 ベトナム フィリピン、ベトナム、インドネシア Bactrocera dorsalis species ミカンコミバエ種群 Bactrocera cucurbitae ウリミバエ Cylas formicarius アリモドキゾウムシ Ceratitis capitata チチュウカイミバエ Heterodera schachtii テンサイシストセンチュウ ナスミバエ (110 件 ) 重要病害虫 タイ、ベトナム、バングラデシュ、フィリ ピン、 中国、香港、 インドネシア、 ネパール、 その他 2 ペルー、メキシコ Heliothis virescens アスパラガス、インゲンマメ生果実、ヒョウタン属生果実 ニセアメリカタバコガ (76 件 ) Pseudococcus calceolariae ガハニコナカイガラムシ (53 件 ) Uromyces betae レモン生果実、キウイフルーツ生果実、ウンシュウミカン生果実、レウコスペルムム属 切花、オレンジ生果実、グレープフルーツ生果実、ミネオラ生果実、シカイカン生果実 ビート種子、フダンソウ種子、フダンソウ属種子 南アフリカ、ニュージーランド、オーストラ リア、チリ アスパラガス、ウリ科生果実、ウンシュウミカン生果実、オランダイチゴ生果実、カボ チャ属生果実、キク属切花、サクランボ生果実、トウモロコシ属生果実、トマト生果 実、ピーマン生果実、ライム生果実、ラズベリー生果実、その他生果実 25 種 イタリア、インド、オランダ、コロンビア、 スリランカ、ネパール、パキスタン、フィリ ピン、ベトナム、その他 7 テンサイさび病菌 (25 件 ) (102 件 ) その他の重要病害虫 フランス、イタリア、米国、 ドイツ、ニュージー ランド、韓国、オランダ 計 (644 件 ) 海外のニュース 諸外国が侵入を警戒する Pepino mosaic virus Pepino mosaic virus(PepMV)は Potexvirus 属 に属するウイルスで、1980 年にペルーにおい てペピーノ(Solanam muricatum)で初めて発 生が確認された。その後、1999 年にはオラン ダの温室栽培トマトで発生が報告された後、急 速に分布を拡大し、現在では欧州、アジア、ア フリカ、アメリカで広く発生し、2010 年には ギリシャ及びメキシコでも発生が報告された。 本ウイルスは、主にトマト、ジャガイモ、ペ ピーノ等ナス科の植物に感染する。罹病したト マトは、生果実の着色不良、成熟の遅延等が見 られ、果実の商品価値が低下する(詳細は本誌 81 号で紹介)。本ウイルスは種子伝搬、接触(機 械的)伝搬等が報告されており、農作業等によ り容易に伝搬するため、いったん発生すると根 絶が困難である。 そのため、各国は侵入・まん延を警戒してい る。ニュージーランドでは、栽培用トマト種子 の輸入に対し、2013 年 7 月より、①種子周辺 の果肉の除去、② PepMV 無発生地域・生産地 で の 種 子 の 採 種、 ま た は、 公 的 試 験 の 結 果 PepMV が検出されないことを輸出国に要求し ている。また、オーストラリアは、栽培用トマ ト種子の輸入に対し、種子もしくは採種用母体 の精密検定の結果、PepMV が検出されないこ とを輸出国に要求している。この検定が行われ ていない種子は、輸入時に精密検定を行うとさ れている。 我が国では、本年度の輸入植物検疫制度の見 直しで、PepMV を新たに輸出国における栽培 地検査及び精密検定(血清学的診断または遺伝 子診断)の対象とし、侵入の防止に万全を期す ことを予定している。 (参考)Bulletin OEPP/EPPO Bulletin (2013)43(1)94-104 発 行 所 横浜植物防疫所 発 行 人 川口 嘉久 編集責任者 水野 明文 掲載 植物防疫所ホームページ http://www.maff.go.jp/pps/ -8-