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講義参考資料 No.14 講義参考資料 No.14 ※講義のねらい
講義参考資料 No.14 講義参考資料 No.14 ※講義のねらい 「流通経済の一翼を担う問屋営業をめぐる法律関係について理解し、取次という商行為と 他の類似の商行為との区別ができるようになる。二当事者間の売買契約などに比べ、複雑 な法律関係が生じるため、混乱しないように注意すること。」 四 問屋営業 Ⅰ 問屋の定義:問屋とは? 「 」をもって、「 」のために、 「 」または「 」をなす ことを業とする者 (商法551条) ・自己の名をもって=自己名義で=自らが本人として: 「自らが直接行為の当事者となり、その行為から生じる権利義務の帰属主体となること」 (商法552条1項) ※代理人として=他人の名において、と区別すること ・他人のために=他人の計算において: 「その行為の経済的効果すなわち損益が他人に帰属すること」 ・物品の販売または買入(購入)をなす: 「物品とは動産、有価証券をいい、不動産は含まない(通説)」 「取次」:自己の名をもって、他人のために法律行為をなすことを引き受ける行為 (502条11項:営業的商行為) 「取次商」:取次をなすことを営業の目的とする商人(=取次業者) 問屋:取次商の一類型で、物品の販売または購入の引き受けを目的とする商人 →自分が当事者となり、物品の販売または購入を行うが、他人(顧客である委託者)のた めに行うのであるから、その経済的効果すなわち物品販売の代金や物品購入により取得し た物の所有権は委託者である他人にすべて引き渡さなければならない。 問屋の利益は、委託された物品販売または購入の実行により委託者から支払われる手数 料である。(例: 、 ) 「準問屋」:物品の販売または購入以外の取次を業とする商人(商法558条) →( )運送の取次を業とする商人は、 「 →( )運送の取次を業とする商人は「 ※委託者は商人に限らず、非商人でもよい 1 」として規定(商法559条) 」 講義参考資料 No.14 ※問屋は取次商であるが、自己の名をもって、自己の計算で取引を行う自己商を兼ねる ことは可能(証券会社の自己売買) Ⅱ 問屋の法律関係 内部関係 売買契約 問屋契約 委託者 問屋 第三者︵問屋の 取引相手︶ 外部関係 直接の法律関係なし ⅰ 問屋契約の性質(内部関係) ・問屋と委託者との契約:「 」 →物品の販売または購入を問屋の名義で、委託者の計算(損得)においてなすという内容 の一種の「 」(民法643条)である。 ・商法552条2項の趣旨:「委任および代理に関する規定を準用す」 →民法の委任に関する規定を適用し:問屋契約は委任契約であるから当然 →民法の代理に関する規定を準用する: 問屋は法律上代理ではないが、自らが行った行為の経済的効果が他人に帰属する点で代 理と類似していることによる ※あくまでも問屋と委託者の間の法律関係についてである点に注意すること! (問屋の相手方と委託者との間には直接法律関係は生じない) ⅱ 問屋と第三者(取引相手方)との関係(外部関係): 「 」 ・問屋が委託された物品の販売または買入を実行する行為(問屋にとって「 」 となる) →問屋自身が第三者(問屋から見れば取引相手)に対して売主または買主として、権利を 取得し、義務を負う(商法552条1項) →内部関係では代理の規定が準用されるため、問屋と委託者との関係では、問屋が取得し た権利・義務は直接委託者に帰属することになる ⅲ 問屋が破産した場合の委託者の保護 「X(委託者)が問屋 Y に対して、物品の買入を委託し、Y は A から購入した。ところが、 Y がその物品を X に引き渡す前に破産してしまった。X は、自分が Y に預けたお金で Y が 取得した物品を取り戻すことができるか?」 2 講義参考資料 No.14 ・破産した場合、破産者の財産はすべて破産財団として破産管財人の管理下におかれ、債 権者が勝手に自分の債権だけを回収することができなくなる。債権者平等の原則により、 平等の割合で破産者に残された財産から配当を受けるしかないのが原則。 ・破産法87条:破産財団の中に破産者の所有に属さない財産・権利があった場合、その 真の権利者がこれを取り戻すことができる(取戻権) ・Y が委託された事務処理によって取得した物品の所有権や代金債権などの経済的実質的な 権利者は委託者 X である。しかし、法律的形式的には Y が X に移転するまでは問屋 Y に帰 属する。→「取戻権の対象にはならない」(従来の学説) ※ しかしながら、この結論が不当であると感じる人は多いであろう。 ・現在の判例・多数説は、理論構成はさまざまであるが、結論としては、委託者に取戻権 を認める。 ① 商法552条2項の「問屋」に問屋自身のほか問屋の債権者も含まれると解する説 ② 委託の実行としてなされた売買によって取得された権利につき実質的な利益を有する 者は委託者であり、問屋はその性質上自分の名義であるが、他人のために物品の販売 または買入をなすことを営業としているのであるから、問屋の債権者は名義上問屋の 権利になっていても、委託の実行として取得した権利が存在することは十分予測できる。 このような権利についてまで自己の債権の一般的担保として期待するべきではない。 (判例) ※ ただし、取戻権を行使するためには、その目的物が特定される必要がある。問屋が買入 委託の費用として預かった金銭や、販売委託の結果相手方から取り立てた代金などの金銭 については、金銭の所有権は通常占有と運命を共にするという理由から、取り戻し等を認 めないのが通説。 Ⅲ 問屋の権利義務 ⅰ 問屋の義務 ・一般的には、民法の委任に関する規定に従い、「 「 」(民644条)、 」(民646条)(売買によって取得した物品・金銭を委託者に 引き渡す義務)を負う。 ・商法は、問屋営業の特殊性を考慮して、以下のような特別な義務を問屋に対して課す a)通知義務(557条→47条) :代理商における通知義務と同じ趣旨 →証券会社や商品取引員については、証券取引法、商品取引所法で書面による通知義務 が規定されている。 b)「 」(商法554条): 「 」における特則 「委託者が問屋に売買を委託する際に、売買価格を問屋に任せる成行売買と、委託者が 指定する指値売買がある。」 3 講義参考資料 No.14 ・ 成行売買:善管注意義務のもとで委託者の利益になるよう努力する ・ 指値売買:指値(委託者が指定した売買価格)に従わなければならない →指値より高く買い入れたり、安く販売した場合は、その効果は委託者に及ばない →ただし、問屋が差額を負担する場合は委託者の利益は害されないので、委託者にも 効力が及ぶ ※ 問屋が指値より委託者に有利な価格で売買した場合、その利益はすべて「 」に帰属する。 c)「 」(商法553条): (「 」の保護のための特殊な責任) 「問屋が委託者のために売買をなしたが、相手方がその債務を履行しない場合、委託者は 直接相手方に債務の履行を請求することができないため、別段の特約や慣習のない限り、 委託者に対して問屋自らが履行をなす義務を負わせた。」 →法定の特別担保責任 ⅱ 問屋の権利 ・一般的な権利として、問屋は商人であるから、特約がなくても相当の報酬(手数料)を 請求でき(512条)、委託の実行に必要な諸費用(運送費、関税、倉庫保管料等)の前払 または償還を請求(民649条、650条1項、商法513条)できる。 a)留置権(557条→51条)(講義参考資料10補足 参照) ・問屋は取次商であり、委託者のために委託者の物品を預かることが多い点で代理商と 類似する。したがって、代理商の留置権と同様の留置権が認められる。 →報酬請求権や費用償還請求権等を担保するため、委託者のために占有する物品を留置 することができる。 b)「 」(556条→524条):商事売買における自助売却権と同旨 ・買入れの委託を受けた問屋が委託の実行として買入れた物品の受領を委託者が拒み ( 「 c)「 )、または受け取ることができない( )場合、問屋はこれを 」しまたは相当の期間を定めて催告した後、これを「 」することができる。 」(555条):支配人の競業避止義務違反の場合の営業主の介入権とは 異なる ・問屋が自ら委託者の取引相手方となることを無制限に認めると、問屋が委託者の利益を 犠牲にして、自らの利益を図るおそれがある。 →そのようなおそれのない取引所の相場がある物品の販売または買入の委託を受けた場合 に限り、問屋は自ら買主または売主となることができるとした。 ・売買価格は、問屋が介入権を行使した(自らが売買の相手方となることを委託者に通知 した)時点における取引所の相場によって決定する 4 講義参考資料 No.14 ・問屋は介入権を行使した場合でも委託手数料は請求できる(555条2項) 要点チェック 1:取次商(問屋)をめぐる法律関係を理解できましたか? 2:取次と代理の違いは? 3:問屋が破産した場合の委託者の取戻権とは? 5