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速炉サイクル技術開発 QUARTERLY DIGEST

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速炉サイクル技術開発 QUARTERLY DIGEST
編集・発⾏:⽇本原⼦⼒研究開発機構 次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
⾼速炉サイクル技術開発
QUARTERLY DIGEST
2012年7⽉ No.1
-Fast Reactor Cycle Technology -
第1号
原⼦⼒機構では、⻑期的エネルギー安全保障・地球環境問題に対応するため、
⾼速増殖炉サイクルの確⽴に向けた技術開発に取り組んでいます。
ここでは、「⾼速増殖炉サイクルの実⽤化研究開発」(通称:FaCTプロジェク
ト)等を巡る国際協⼒の状況を紹介します。
【国際協⼒】
<第四世代原⼦⼒システム国際フォーラム(GIF※1)>
⃝ 第6回GIF-INPRO連携会合(3/6-7 於 オーストリア)
GIFとINPRO※2は共に次世代炉の研究開発や検討を進めている多国間の
国際協⼒活動であり、この連携会合の場で、双⽅の活動状況を紹介すると
ともに協⼒可能な分野について話し合っています。
今回の会合では、福島事故後初の連携会合であり、安全分野の活動を中
⼼に議論を進めました。
※1 GIF:第4世代原⼦炉(Gen-IV炉)概念の開発のために設置された国際組織です。
(現在、⽇本が議⻑国を務めています)
※2 INPRO: IAEA(国際原⼦⼒機関)が創設した⾰新的原⼦炉及び燃料サイクルに関する
国際プロジェクト(International Project on innovative Nuclear reactors
and Fuel Cycles)
会合の模様
⃝ 福島事故の教訓を反映した第四世代原⼦⼒システムの安全設計クライテリ
ア(SDC)について、 我が国の働きかけに基づき「SDC検討タスクフォース」
が設置され、これまで3回の会合が開かれています。我が国はタスクフォースの
議⻑国として活動をリードし、我が国が提案したSDC案をベースに⾼速炉開
発主要国で共通認識となるSDCの検討が進められています。
⃝ 政策グループ会合(GIFの最⾼意思決定機関)及び専⾨家グループ会合
が開催(5/8-11 於 韓国)され、安全設計クライテリア案や今年11⽉
に開催予定のGIFシンポジウムの準備等について話し合われました。
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次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
2012年7⽉
2012年6⽉
No.1
【国際協⼒】(続き)
<⽇仏/⽇⽶/⽇⽶仏協⼒>
⃝ CEA/JAEA2機関協⼒:
原⼦⼒機構が所有する蒸気発⽣器安全性試験施設(SWAT-1R)
を活⽤したナトリウムー⽔反応に係る共同研究に基づき、蒸気発⽣器の
伝熱管を対象とした損耗試験を実施しました。
(詳細は、4ページを参照ください)
⃝ ⽇⽶仏三ヵ国協⼒:
ナトリウム冷却⾼速炉の協⼒に関する覚書(2010年10⽉4⽇締結)に
基づき、三ヵ国で合意した12の研究項⽬(分野)について協⼒が進めら
れています。そのうちの安全分野についての会合が6⽉14⽇に原⼦⼒機構
の東京事務所で開催され、作業計画等について協議しました。
⃝ シビアアクシデント対策関連試験:
安全性向上策のキーとなるシビアアクシデント(過酷事故)対策に関して、
原⼦⼒機構が所有する冷却系機器開発試験施設(AtheNa)を⽤い
たシビアアクシデント対策試験に⽶仏が参画の意向を⽰しており、⽇仏⽶
三ヵ国による国際共同研究の実施に向けて協議・調整を進めています。
本年1⽉の第⼀回会合に引き続き、6⽉15⽇に第⼆回の三ヵ国会合が
原⼦⼒機構の東京事務所で開催され、協⼒項⽬等について協議しました。
<その他>
⃝ 6⽉11-13⽇に福井県敦賀市に於いて「ナトリウム冷却⾼速炉(SFR)
のシビアアクシデント(SA)の発⽣防⽌と影響緩和に関する国際ワーク
ショップ」(原⼦⼒機構主催、IAEA協賛)を開催しました。国内外の研
究機関、規制機関、⼤学等から約100名(国外24名)の専⾨家が参
加し、SFRのSAの発⽣防⽌と影響緩和に関する安全確保の考え⽅と具
体的対応策について、「もんじゅ」等の利活⽤⽅策を含めた議論を⾏いまし
た。(詳細は、3ページを参照下さい)
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次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
2012年7⽉
2012年6⽉
No.1
 JAEA主催-IAEA協賛 国際ワークショップ(ナ
トリウム冷却⾼速炉のシビアアクシデントの発⽣防
⽌と影響緩和)開催
6⽉12〜13⽇に敦賀市で、国内外の研究機関、規制機関、産業界、⼤学
等から約100名の専⾨家(国外24名)の参画を得て、ナトリウム冷却⾼速炉
(SFR)の安全性に関する標記のワークショップが開催されました。本ワークショッ
プでは、理事⻑、副理事⻑よる歓迎の挨拶の後、ビチコフIAEA事務次⻑を始め
とする6件の基調講演と各国からSFRの研究開発状況が紹介されました。引き
続く技術セッションでは、SFRの基本特性に基づく安全確保の考え⽅、安全設計
クライテリアとシビアアクシデント(SA)対策、研究開発の必要性と研究開発課
題についての発表があり、SAの発⽣防⽌対策や影響緩和対策、アクシデントマ
ネジメント等関する議論が⾏われ、最後にパネル討論を⾏って締めくくりました。こ
のワークショップのまとめとして、SFRの安全性向上のために、国際的に共通の安
全設計クライテリアや「もんじゅ」を始めとする既存炉の有効活⽤が必要なこと等
を含むキーメッセージを採択いたしました。
参考HP
http://www.jaea.go.jp/04/fbr/pdf/24.06.14_ws_message.pdf
国際ワークショップ参加者の集合写真
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次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
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2012年7⽉
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No.1
 蒸気発⽣器(SG)伝熱管のウェステージ試験
–仏国CEAとの共同研究–
次世代部⾨と⼤洗研究開発センターの技術開発部(機器開発課)は、
仏国原⼦⼒・代替エネルギー庁(CEA)と協⼒して、⼤洗のNa-⽔反応試験
装置(SWAT-1R)を⽤いた、蒸気発⽣器(SG)伝熱管の損耗試験
(ウェステージ試験)を実施しています。
Na加熱型SGでは、安全性や財産保護の観点から、Na-⽔反応に伴う⾼
温腐⾷性の反応ジェットに対する伝熱管の損耗耐性を評価する必要がありま
す。⼤洗のSWAT-1Rでは、これまで種々の条件で試験を実施しており、世界
的にみても重要な役割を果たしています。CEAもこの試験装置の価値を⾼く評
価しており、2011年秋に本装置を⽤いた最初の試験を実施しています。
本研究では、CEAから⽀給された伝熱管試験体をSWAT-1Rに組み込み、
Na容器内で実機条件(350〜500℃、18MPa)の⽔・蒸気を伝熱管に噴
射し、損耗を計測しました。昨年は6体の試験体により試験を実施し、今後も
数年間にわたって継続の予定です。実験結果は伝熱管の損耗耐性評価のた
めのデータベース拡充に当てられ、両国のSG開発に反映されます。
伝熱管
試験体
保護シュラウド
⽔注⼊ノズル
伝熱管試験体(CEAから⽀
給)と⽔注⼊ノズル
Na容器に搬⼊される試験体
(試験体は保護シュラウドの内側にある。)
参考⽂献:
(1) A. Gerber, J.P. Pirus et al, "Safety Improvement Research to Design a Sodium Fast Reactor Steam Generator with regard to Sodium/water Reaction Risk", San Diego, USA, June 2010, ICAPP'10‐10067.
(2) S. Futagami, H. Hayafune et al, "A Study on LMFBR Steam Generator Design without Tube Failure Propagation in Water Leak Events", Tokyo, Japan, May 2009, ICAPP'09‐9169.
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次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨ 2012年7⽉ No.1
 ⾼解像度X線CTによる燃料ペレットの照射挙
動究明
原⼦⼒機構の⼤洗研究開発センター燃料材料試験部では、⾼速炉燃料等
の照射挙動を究明するため、燃料ペレットの組織変化等を⾮破壊で観察する
⾼解像度X線CT検査技術を開発しました。本技術開発によって、鮮明な照射
済燃料集合体の横断⾯CT画像が取得可能になり、燃料ペレット内の組織変
化等の状況が⾮破壊で観察できるようになりました。
本技術を照射済み燃料集合体に適⽤し、これまで破壊試験では数年を要し
ていた⾼精度の照射挙動データが、わずか数⽇で⼤量に得られることを実証しま
した。図1に⽰すように、こうして得られた照射条件等多様なパラメータを有する
⼤量かつ⾼精度のデータから、燃料ペレットの中⼼空孔形成に及ぼす製造条件
(製造ロットの違い)や照射条件(線出⼒)の影響を精度良く把握することが可能
となりました。
これらの結果は、⾼速炉燃料の最適化設計のための貴重な照射挙動データ
であり、今後も本技術を活⽤して⾼速炉燃料の開発に資するデータを取得する
予定です。⼀⽅で本技術は、軽⽔炉を含めた原⼦炉における使⽤済み燃料の
健全性を確認するオンサイト検査への適⽤も期待されます。
参考⽂献:「超⾼解像度⾼エネルギーX線CT検査装置の開発」検査技術(2011年11⽉号、⽇本⼯業出版)
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次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨
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2012年7⽉
2012年6⽉
No.1
 地震・津波発⽣時の「もんじゅ」の安全確保の
考え⽅と炉⼼冷却等に関する評価
東北地⽅太平洋沖地震に伴う東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故を踏
まえ、地震・津波発⽣時の「もんじゅ」における安全確保の考え⽅、炉⼼と炉外
燃料燃料貯蔵槽の⾃然循環冷却の成⽴性、及び燃料池の冷却の成⽴性に
ついて、原⼦炉施設の安全設計、シビアアクシデント対策、原⼦炉熱流動等に
関する学識経験を有する外部専⾨家から構成される東北地⽅太平洋沖地震
を踏まえたシビアアクシデント対応等検討委員会に報告し、評価を受けた結果
について、報告書(JAEA–Evaluation 2011-004) にまとめました。
2011 年5 ⽉から9 ⽉まで3 回開催した委員会では、⽇本原⼦⼒研究開
発機構から上記事項について説明を⾏い、質疑応答の後、委員⻑によるまとめ
が⾏われました。委員⻑まとめの主要な点は以下の通りでした。
○ 原⼦炉については、全交流電源喪失が起こっても、流路が確保されて
いる限り、⾃然循環は確保される。したがって、炉停⽌後、⾃然循環
がある限り、崩壊熱の除去がなされ、炉⼼溶融は起こらないと⾔える。
○ 炉外燃料貯蔵設備については、全交流電源喪失時にも⾃然循環冷
却による使⽤済燃料の冷却に期待でき、使⽤済燃料が⾼温になって
溶融することはないと考えられる。
○ 燃料池については、全交流電源喪失時でも、使⽤済燃料を⼊れた⽸
詰⽸の頂部が⽔の蒸発により露出するまでに2 ヶ⽉以上の時間猶予
があるので、給⽔等の⼗分な対策を取り得ると考えられる。
⼤気へ熱を放散
冷却材の流れ
(熱いナトリウム)
炉⼼と中間熱交換器、
中間熱交換器と空気冷
却器、それぞれの伝熱中
⼼⾼さの差を適切に取る
ことで、⻑期にわたる⾃然
循環除熱能⼒を有す。
「もんじゅ」では、⾃然循
環運転にて原⼦炉の崩
壊熱除去が可能。
空気冷却器
空気冷却器の中⼼
冷やす所
(空気冷却
器)
中間熱交換器
原⼦炉容器
約17m
空気
約7m
熱の出る所
(炉⼼) 原⼦炉の中⼼
中間熱交換器の中⼼
冷却材の流れ
(冷たいナトリウム)
 動的機器が少ないので、
信頼性が⾼い。
 冷却材が単相なので、
循環し易い。
⾃然循環除去能⼒を有した設計
参考⽂献:「地震・津波発⽣時の「もんじゅ」の安全確保の考え⽅と炉⼼冷却等に関する評価」JAEA–Evaluation
2011-004
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次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨ 2012年7⽉ No.1
 ⽂部科学⼤⾂表彰 2件の創意⼯夫功労者
賞受賞
–簡素化ペレット法原料粉末調整のための⾰新型造粒装置の考案–
–⾼ウラン濃度を達成するための効率的安定溶解技術の考案–
原⼦⼒機構の次世代原⼦⼒システム研究開発部⾨では、本年の⽂部科学
⼤⾂表彰として加藤良幸主査、⼤内晋⼀⽒の2名が受賞しました。
加藤主査の受賞内容は、MOX燃料製造技術開発の⼀環として進めてきた簡
素化ペレット法に関して、⾰新的な造粒装置を考案したものです。本考案では、
造粒装置本体に脱硝容器を直接取付けることにより、容器間の移し替えに伴う
粉末⾶散の抑制に成功しました。また、回転中の容器に各種形状のスクレー
パーを作⽤させることにより、構造がシンプルで容器への粉末付着が少ない造粒
を世界で初めて可能とし、国際特許として出願しました。
⼤内⽒の受賞内容は、⾼速増殖炉⽤燃料再処理技術の研究開発の⼀環と
して進めてきた先進湿式再処理法の溶解技術に関して、⾼ウラン濃度の溶解
液を安定かつ効率的に得るための溶解技術を考案したものです。先進湿式再
処理法では、溶解の次の晶析⼯程で温度操作のみによってUを析出回収する
ことから、⾼濃度のU溶液を⽤います。本考案では、燃料ピンをより短くせん断し
燃料を粉体化するなどして、⾼濃度のU溶液を⼯学規模で安定かつ効率的に
得るための溶解技術を開発するとともに、新規構築したシミュレーションコードの解
析により突沸等の異常反応を防⽌することも可能としました。
これらの成果は⾼く評価され、⽂部科学⼤⾂表彰創意⼯夫功労者賞を受賞
しました。
写真 ⽂部科学⼤⾂表彰授与式(2012年4⽉27⽇、⽂科省)にて賞状を授与された加藤良幸主査
(左)と⼤内晋⼀⽒(右)。
参考⽂献:
・簡素化ペレット法原料粉末調整のための⾰新型造粒装置の考案:「⾼速増殖炉サイクル実⽤化研究開発(FaCTプロ
ジェクト)-フェーズⅠ 報告書」 JAEA-Evaluation 2011-003
・ ⾼ ウ ラ ン 濃 度 を 達 成 す る た め の 効 率 的 安 定 溶 解 技 術 の 考 案 : 「 Development of short stroke shearing
technology for FBR fuel pins 」J. Power and Energy Systems, Vol.4, No.1, 244-251 (2010)
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