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世界の男女雇用平等法

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世界の男女雇用平等法
世界 の男女雇用 平等 法
25
︿論
説﹀
世 界 の男 女 雇 用 平 等 法
は しがき
一、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の社 会 的 意 義
二、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の成 立 の経 緯
三 、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の特 異 性
5
4
3
2
1
カ ナダ ー カ ナダ 人権 法
フラ ン スー 男 女 平 等 法
西 ド イ ツー 男 女 均 等 待 遇 法
イ タ リ アー 男 女 同 一待 遇 法
イ ギ リ スー 性 差 別 禁 止 法
ア メ リ カー 雇 用 機 会 平 等 法
四 、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の比較 検 討
6
4
3
2
1
実効 性 の確 保
救済措 置
救済機 関
差別 主体
差 別行為
五 、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の立 法 的 課 題
5
高
橋
保
26
は
が
お わり に
し
き
以上
本 稿 は 、 一九 八 三年 十 二月 十 五 日 に 行 わ れ た 創 価 大 学 法 学 部 学 術 講 演 会 ﹁男 女 雇 用 平 等 法 の今 日的 状 況 ﹂
世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 を ピ ッ ク ・ア ップ し 、 そ れ に加 筆 、 補 正 し 発 表 し た も の で あ る。
5
4
3
2
-
、
、
、
、
、
カ ナ ダ ー カ ナダ 人 権 法
フ ラ ン スー 男 女 平 等 法
西 ド イ ツー 男 女 均 等 待 遇 法
イ タ リ アー 男 女 同 一待 遇 法
イ ギ リ スー 性 差 別 禁 止 法
ア メ リ カ ⊥ 雇用 機 会 平 等 法
こ こ で と り あ げ た 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 は 、
6 、
で あ る。
のう ち 、
本 稿 は、 右 の世 界 各 国 の男 女 雇 用 平 等 法 を め ぐ って、 こ の法 律 の社 会 的 意 義 、 成 立 の経 緯 、 特 異 性 、 具 体 的 内 容 、
立 法 的 課 題 な ど を 比 較 法 的 に 考 察 し た も の で あ る。
と こ ろ で、 わ が 国 でも 近 く 国 会 で 男 女 雇 用 平 等 法 が 制 定 さ れ よ う と し て いる 。 こ の法 律 が い かな る内 容 のも の と し
て制 定 さ れ る か 、 ま こ と に 興 味 深 々 で あ る。 本 稿 は、 日 本 の男 女 雇 用 平 等 法 と 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 と を 比 較 検 討 す
る 場 合 、 便 宜 を 提 供 す る こと に な る で あ ろ う 。
世 界 の男 女雇用 平 等法
27
一、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の社 会 的 意 義
(
以 下雇 用平等法 と いう) を 制 定 し て いる 。 雇 用 平 等 法 と は 、 雇 用 分 野 に お い て募 集 ・採 用 ・労 働 関 係 の存 続 中 、
一九 八 〇 年 代 の国 際 社 会 に お い て、 世 界 の主 要 先 進 国 は 、 ﹁男 子 雇 用 平 等 法 ﹂ (
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解 雇 、 退 職 に い た る ま で の あ ら ゆ る 性 差 別 を 禁 止 し、 救 済 す る 法 律 で あ る。
こ のよ う な 雇 用 平 等 法 が 対 象 と し て い る具 体 的 な 差 別 行 為 に つい て は、 各 国 の国 内 事 情 に 応 じ て多 少 の差 異 が み ら
れ る が 、 一般 に は ﹁
募 集 ・採 用 、 賃 金 、 職 種 、 職 務 内 容 、 配 置 、 教 育 ・訓 練 、 昇 進 昇 格 、 職 業 紹 介 、 職 業 訓 練 、 解
雇 、 退 職 ﹂ 等 で あ る。
世 界 の雇 用 平 等 法 は 、 雇 用 分 野 に お け る ﹁性 ﹂ 差 別 を 禁 止 し 、 救 済 す る こと に お い て土ハ
通 し て い る。 し か し、 か な
ら ず しも 性 差 別 に 限 定 し て いな い。 た と え ば 、 ア メ リ カ の雇 用 機 会 平 等 法 や カ ナダ の人 権 法 の よ う に 、 ﹁人 種 、 皮 膚
の色 、 宗 教 、 出 身 地 ﹂ な ど に つ い て の差 別 を 対 象 と し て い る と こ ろも あ る。
し か し、 歴 史 的 に み て 、 世 界 の雇 用 平 等 法 は、 基 本 的 に は、 雇 用 に お け る 男 女 の性 差 別 を 撤 廃 し、 女 性 の就 業 の機
会 の均 等 を 確 保 し 、 そ れ に よ る実 質 的 男 女 平 等 を 実 現 す るも の と し て 発 展 し て き た 。 そ の こと は 、 世 界 の ほ と ん ど の
国 の雇 用 平 等 法 が 、 雇 用 に お け る性 差 別 を禁 止 し て い る こと で 理 解 さ れ る 。
世 界 の雇 用 平 等 法 の全 体 を と お し て 、 この 法 律 のも つ社 会 的 意 義 は な に か。
第 一に 、 世 界 の雇 用 平 等 法 は 、国 際 的 レベ ル で は 、 一九 四 八 年 の ﹁世 界 人権 宣 言 ﹂、 一九 六 六 年 の ﹁国 際 人 権 規 約 ﹂、
(1 )
な か で も A規 約 と い わ れ る ﹁
経 済 的 、 社 会 的 及 び 文 化 的 権 利 に 関 す る国 際 規 約 ﹂、 一九 七 五 年 の国 際 婦 人 年 世 界 会 議
の ﹁世 界 行 動 計 画 ﹂、 一九 七 九 年 の ﹁
婦 人差 別 撤 廃 条 約 ﹂
、 さ ら に 一九 四 四年 の I L O ﹁
国 際労 働 機 関 の目的 に関 す る
宣 言 ﹂、 いわ ゆ る ﹁フ ィ ラ デ ル フ ィ ァ宣 言 ﹂ な ど を 具 体 化 す る 立 法 で あ る。
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世 界 人権 宣 言 は 、 一九 四 八年 一月 一〇 目 、 国 連 第 三 回 総 回 に お い て、 過 去 の悲 惨 な 第 二次 世 界 大 戦 に対 す る反 省 に
た って 採 択 さ れ た も の で あ る。 そ れ は 、 二 つ の歴 史 的 な 宣 言 を し て いる 。 第 一は 、 戦 争 を 招 来 す る 根 本 的 な原 因 は 、
な に よ り も 基 本 的 人 権 の無 視 にあ る こ と 、 し た が って 、 戦争 を な く し、 民 主 主 義 と世 界 平 和 を 実 現 す る た め に は 基 本
的 人 権 の尊 重 こ そ が 大 切 であ る と を 確 認 し て いる こ と で あ る。 第 二は 、 ア メ リ カ 独 立 宣 言 、 フラ ン ス人 権 宣 言 、 日本
国 憲 法 な ど と 同 じ 考 え 方 に た って、 人 間 は 生 れ な が ら に し て自 由 ・平 等 で あ り 、 こ れ は 永 久 不 可 侵 の自 然 権 と し て国
家 に よ って守 ら な け れ ば な ら な い こ と を 確 認 し て い る こ と で あ る。 こ れ ら の歴 史 的 な 宣 言 は 、 世 界 人 権 宣 言 の前 文 の
冒 頭 に お い て 、 ﹁人 類 社 会 のす べ て の構 成 員 の固 有 の尊 厳 と 、 平 等 で譲 る こ と の で き な い権 利 と を 承 認 す る こ と は 、
世 界 に お け る自 由 正 義 及 び 平 和 の基 礎 であ る の で 自
⋮ -こ の宣 言 を 布 告 す る 。
﹂ と 表 明 さ れ て い る。 雇 用 平 等 法 は 、 根
本 的 に は こ の 世 界 人 権 宣 言 に 由 来 し 、 こ れ を 具 体 化 す る歴 史 的 使 命 を 担 って 登 場 し て き た も の で あ る 。 こ こ に 、 こ の
法 律 の重 要 な 社 会 的 意 義 を 見 出 す こと が で き る 。
国 際 人 権 規 約 の A 規 約 は、 右 の世 界 人権 宣 言 を 具 体 化 す る も の で 、 男 女 平 等 思 想 を 強 く 打 ち だ し て いる 。 雇 用 平 等
法 は 、 こ の人 権 規 約 に も 由 来 し て いる 。
つぎ に 、 一九 七 五 年 国 際 婦 人年 世 界 会 議 で 採 択 さ れ た 世 界 行 動 計 画 は 、 ﹁国 際 社 会 は 、性 別 に 基 づ く 差 別 を 、基 本 的
に 不 正 な も の、 人 間 の尊 厳 に 対 す る 罪 、及 び 人 権 の侵 害 で あ る こ と を 非 難 し て いる 。
﹂ と いう 現 状 認 識 に立 って 、婦 人
の経 済 的 、社 会 的 、政 治 的 地 位 の向 上 の た め の国 内 行 動 に 指 針 を 与 え た も の で あ る 。 そ れ に よ る と 、 ﹁政 府 は 、 男 女 平
等 を 促 進 す る た め 、 法 の 下 の男 女 平 等 、 教 育 と 訓 練 の機 会 均 等 を 目 的 と し た 設 備 の供 与 、 報 酬 及 び 適 切 な社 会 保 障 を
含 む 雇 用 条 件 の平 等 を 確 保 す べ き で あ る 。﹂ と し て い る 。 雇 用 平 等 法 の成 立 に は 、 こ の世 界 行 動 計 画 が 大 き く 寄 与 し
て き た こ と を 忘 れ て は な ら な い。
婦 人 差 別 撤 廃 条 約 は、 条 約 締 結 国 に 対 し て、 法 律 か ら 慣 行 に 至 る ま で のあ ら ゆ る 分 野 に お け る 差 別 を 撤 廃 す る 立 法
世界 の男女雇用 平 等法
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そ の他 の措 置 を と る こ と を 宣 言 し て い るぴ
ま た 、 I L O の ブ イ ラデ ル フ ィ ア宣 言 は 、 ﹁す べ て の人 間 は 、 人 格 、 人 種 、 信 条 ま た は 性 別 に か か わ り な く 、 人 間
と し て の自 由 及 び 尊 厳 に 基 づ い て経 済 的 条 件 と機 会 の均 等 が 保 障 さ れ 、 物 質 的 福 祉 と精 神 的 発 展 を 追 求 す る権 利 を 有
す る。
﹂ と う た って い る 。
第 二 に、 雇 用 平 等 法 は 、 国 内 的 レベ ルに お い て は、 憲 法 そ の他 の法 律 に お け る抽 象 的 な 男 女 平 等 原 則 を 具 体 化 す る
も の で あ る。 雇 用 平 等 法 が 成 立 し て く る国 際 的 経 緯 を み て も 、 こ の法 律 は、 各 国 の憲 法 そ の他 の法 律 に お け る抽 象 的
な 男 女 平 等 原 則 への批 判 的 反 省 と し て 発 展 し て き た 。 す な わ ち 、 現 在 、 世 界 各 国 は 憲 法 そ の他 の法 律 で男 女 平 等 原 則
を 規 定 し て い るが 、 そ の規 定 方 式 が 抽 象 的 で あ る た め 、 実 際 に は あ ら ゆ る分 野 の な か で お お く の女 性 差 別 が 行 わ れ て
き た 。 し か し、 男 女 平 等 原 則 は 、 これ ら の差 別 行 為 に 対 し て、 な ん ら 実 効 性 を 有 し な か った 。 こ の こ と は、 男 女 平 等
原 則 を も つ世 界 各 国 の 共 通 し た こ とが ら で あ った 。 こ こに 、 世 界 各 国 は そ れ ぞ れ の国 内 事 情 を 背 景 に し な が ら 、 男 女
平 等 原 則 を さ ら に 具 体 化 す るも の と し て 、 雇 用 平 等 法 が 強 く 要 請 さ れ て き た の で あ る。
第 三 は 、 雇 用 平 等 法 の本 質 的 意 義 に か か わ る。 雇 用 平 等 法 は 、 そ の対 象 と し て 性 差 別 を と り あ げ 、 さ ら に ア メ リ カ
や カ ナ ダ のよ う に 人 種 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 国 籍 に 対 す る 差 別 を も 対 象 と し て い る と こ ろ も あ る 。 こ れ ら の性 、 人 種 、
皮 膚 の色 、 宗 教 、 国 籍 等 は 、 ﹁人 間 の尊 厳 ﹂ に 深 く か か わ る問 題 で あ る。 雇 用 平 等 法 は 、 こ の ﹁人 間 の尊 厳 ﹂ に 直 接
迫 る 本 質 的 意 義 を 有 し 、 ま た こ れ を 基 点 に し た 重 要 な 歴 史 的 な 役 割 を 担 って い る。
二、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の成 立 の経 緯
世 界 の雇 用 平 等 法 が 成 立 し て く る経 緯 を み る こ と は 、 こ の法 律 の立 法 的 背 景 を知 る こ と に な る。 と こ ろ で、雇用平
等 法 が 、 国 際 的 な レ ベ ル に ま で高 め ら れ てく る経 緯 を み る と、 世 界 各 国 に 共 通 し た 二 つの要 因 が み ら れ る。
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第 一は 、 世 界 各 国 は 憲 法 そ の他 の法 律 のな か で男 女 平 等 原 則 を 規 定 し て い るが 、 そ の規 定 方 式 が き わ め て 抽 象 的
で、 実 際 の性 差 別 的 慣 行 に対 し て、 実 効 性 が な か った こと 、 こう し た な か で あ ら た め て性 差 別 の撤 廃 、 実 質 的 男 女 平
等 の実 現 の た め の運 動 が 展 開 さ れ てき た こ と で あ る。 た と え ば 、 フ ラ ン ス土ハ
和 国 憲 法 は 前 文 で ﹁法 律 は、 女 子 に 対
し 、 す べ て の分 野 に お い て 男 子 と 平 等 の権 利 を 保 障 す る 。
﹂ と し て いる 。 西 ド イ ッ で は 、 ド イ ッ連 邦 共 和 国 基 本 法 第
三条 で、 ﹁お よ そ 人 は、 法 律 の前 に 平 等 であ る。 男 女 は 同 権 で あ る 。 何 人 も 、 性 別 、 門 地 、 人 種 、 言 語 、 生 国 お よ び
素 姓 、 信 仰 、 宗 教 的 ま た は 政 治 的 意 見 のた め に 、 不 利 益 を 与 え ら ま た は優 遇 さ れ る こ と は 許 さ れ な い 。
﹂ と宣 言 し て
い る。 さ ら に 、 イ タ リ ァ共 和 国 憲 法 第 三条 も 、 ﹁す べ て の市 民 は 、 性 、 人 種 、 言 語 、 宗 教 、 政 治 的 の見 解 、 人 的 お よ
び 社 会 的 条 件 に よ って差 別 さ れ る こ とな し に 、 同 等 の社 会 的 尊 厳 を 有 し、 法 律 の前 に 平 等 であ る 。
﹂ と規 定 し て い る 。
し か し、 これ ら の崇 高 な 男 女 平 等 原 則 のも と で 、 実 際 に は 女 性 への差 別 や あ る いは差 別 的 慣 行 が お お く存 在 し、 そ
の た め 一般 に 女 性 の政 治 的 、 経 済 的 、 社 会 的 地 位 は 低 か った 。 し か も 、 こ こ で重 要 な こと は 、 こ れ ら の男 女 平 等 原 則
が 、 抽 象 的 宣 言 に 止 ま った が た め に、 実 際 に女 性 に 対 す る 差 別 を 是 正 す る こ と に つ い て実 効 性 が な か った こ と で あ
る 。 こ の こ と が 、 世 界 各 国 で 雇 用 平 等 法 を 生 み だ す 重 要 な 要 因 とな って い る。
第 二 は 、 一九 六 〇 年 代 に 入 って 、 世 界 各 国 は 一様 に 経 済 の高 度 成 長 に突 入 し、 そ の過 程 で女 子 労 働 者 の急 激 な 増 大
を も た ら し た こと で あ る 。 お お く の女 性 の職 場 への進 出 は 、 必 然 的 に 女 性 の職 業 意 識 や権 利 意 識 を 昂 揚 さ せ 、 実 際 の
差 別 的 行 為 を 強 く 認 識 さ せ、 やが て 実 質 的 男 女 平 等 の実 現 へと 向 か わ せ た と い え よ う 。 む し ろ 、 こ の実 践 的 運 動 こ
そ 、 雇 用 平 等 法 成 立 の主 体 的 動 因 を な す も の で あ った と いえ る。
以 上 の世 界 各 国 に 共 通 し た 二 つ の要 因 は 、 や が て 国 連 、 I L O ・E C な ど を 動 か し 、 国 際 的 レ ベ ル で の雇 用 平 等 法
国
連
が 生 成 し て く る の で あ る。 以 下 に お い て、 そ の国 際 的 経 緯 に つい て 概 観 し て み よ う 。
ω
世界 の男女雇用 平 等法
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国 連 に お いて 、 は っき り と雇 用 に お け る男 女 平 等 問 題 が と り あ げ ら れ る よ う に な る のは 、 第 二次 大 戦 後 に な って か
(2 )
ら で あ る。 そ れ 以 前 に お い て は、 女 子 労 働 者 の問 題 と いえ ば 、 そ の健 康 と 母 性 保 護 が 中 心 であ った 。 た と え ば 、 一九
〇 五 年 に スイ ス の ベ ル ン で開 催 さ れ た ベ ル ン会 議 は 、 ﹁工業 に お け る 婦 人 の夜 業 禁 止 ﹂ 条 約 (いわゆ るベ ル ン条約 )を
採 択 し て い るが 、 これ は 当 時 ヨー ロ ッパ 先 進 資 本 主 義 国 で 、 主 と し て⋮繊 維 産 業 を 中 心 に女 子 労 働 者 の夜 業 が 盛 ん に 行
わ れ て き た こと を 背 景 に 、 女 子 の健 康 と 母 性 を 保 護 し よ う と し た も の で あ る 。
これ に 対 し て 、 第 二次 大 戦 後 に な る と、 市 民 の人 権 意 識 が 昂 揚 し 、 加 え て交 際 的 交 流 の活 発 化 、 資 本 主 義 経 済 の高
度 成 長 、 女 子 の社 会 的 進 出 な ど が 顕 著 に な って き た 。 こう し た 状 況 のな か で、 雇 用 に に お け る男 女 平 等 問 題 が 一挙 に
開 花 し 、 国 連 に お い ても 従 来 の保 護 か ら 平 等 への新 路 線 が 鮮 明 に な って く る の で あ る。
ま ず 、 国 連 は 、 一九 四 八年 、 男 女 平 等 思 想 を も り こん だ ﹁
世 界 人 権 宣 言 ﹂ を 採 択 し た。 これ は、 基 本 的 人 権 の尊 重
こ そ が 民 主 主 義 と 世 界 平 和 の基 礎 で あ る と の認 識 に た って 、 ﹁す べ て の人 は 、 人 種 、 皮 膚 の色 、 性 、 言 語 、 宗 教 、 政
治 上 そ の他 の意 見 、 国 民 的 若 し く は 社 会 的 出 身 、 財 産 、 門 地 そ の他 の地 位 又 は こ れ に 類 す る い か な る事 由 に よ る差 別
を も 受 け る こ と な く 、 こ の宣 言 に 掲 げ るす べ て の権 利 と自 由 を 享 有 す る こ と が でき る 。
﹂とし (
第 二条)
、 さ ら に ﹁す
べ て の 入 は 、 法 の下 に お い て平 等 で あ り 、 ま た い か な る差 別 も な し に 法 の平 等 な 保 護 を 受 け る権 利 を 有 す る 。
﹂ と宣
言 して いる (
第 七条)。
続 い て 、 国 連 は、 一九 六 六 年 に な る と、 右 の世 界 人権 宣 言 の理 念 を 実 施 す る た め に 、 加 盟 国 を 法 的 に拘 束 す る ﹁
国
際 人 権 規 約 ﹂ を 採 択 し た 。 こ のう ち 、 A 規 約 と い わ れ る ﹁
経 済 的 、 社 会 的 及 び 文 化 的 権 利 に 関 す る国 際 規 約 ﹂ は 、
﹁こ の規 約 の締 結 国 は、 こ の規 約 に 掲 げ る す べ て の経 済 的 、 社 会 的 文 化 的 権 利 の享 受 に つい て 、 男 女 に 平 等 の権 利 を
確 保 す る ことを 約束 す る﹂ と規 定 し て いる (
第 三条 )
。 こ こ に 雇 用 に お け る男 女 平 等 の確 保 に つ い て の考 え 方 が 、 よ り
明 ら か に な って き た こと が 注 目 さ れ る。
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一九 六 七 年 に な る と 、 国 連 は 広 く 社 会 の男 女 差 別 を 撤 廃 す る た め に 、 ﹁
婦 人 に 対 す る差 別 撤 廃 宣 言 ﹂ を 採 択 し た 。
こ のな か で、 雇 用 に お け る男 女 平 等 と関 連 し て、 職 業 選 択 、 賃 金 、 教 育 訓 練 そ の他 職 業 上 の待 遇 、 休 暇 、 家 族 手 当 な
ど に つ いて 平 等 を 保 障 す る こ と を 規 定 す る 一方 、 母 性 の保 護 を 差 別 と み な さ な い と宣 言 し て い る。
し か し、 雇 用 に お け る男 女 平 等 問 題 を め ぐ って も つと も 脚 光 を 浴 び た の は 、 一九 七 五 年 メ キ シ コ シ テ ィに お い て開
催 さ れ た ﹁国 際 婦 人 年 世 界 会 議 ﹂ で あ ろ う 。 同 会 議 は、 ﹁人 間 と し て の男 女 の尊 厳 お よ び 価 値 の平 等 ﹂に つ い て の ﹁メ
キ シ コ宣 言 ﹂ を 採 択 し 、 さ ら に 、 女 子 に 対 す る 差 別 は ﹁人 間 の尊 厳 に 対 す る 罪 ﹂ であ る と の基 本 認 識 のも と に 、 ﹁世
界 行 動 計 画 ﹂ を も 採 択 し て い る。
と ころ で、 こ の世 界 行 動 計 画 は 、 コ雇 用 お よ び 関 連 の経 済 活 動 ﹂ のな か で、 ﹁
本 計 画 は 、 労 働 の権 利 、 同 一労 働 同 一
賃 金 、 労 働 条 件 及 び 昇 進 に お け る平 等 の権 利 を 認 め て い る既 に 承 認 さ れ て い る国 際 的 基 準 に 従 って、 婦 人 労 働 者 に 対
す る機 会 と待 遇 の平 等 及 び 労 働 力 への婦 人 の参 加 を 達 成 せ ん と す る も の であ る﹂ と 宣 言 し て い る 。 さ ら に こ の世 界 行
動 計 画 は 各 国 政 府 に 対 し て 、 ﹁政 府 は 、 婦 人 労 働 者 に 対 す る機 会 と 待 遇 の平 等 、 同 一労 働 同 一賃 金 の権 利 を 保 証 す る
こ と を 明 示的 な 目 標 と し た 政 策 及 び 行 動 計 画 を 策 定 す べ き で あ る。 こ の よ う な 政 策 及 び計 画 は 、 国 連 及 び 国 際 労 働 機
関 (I ﹂0)の作 成 し た 基 準 に あ った も の と す べ き で あ る﹂ と 宣 言 し て い る。 さ ら に 、 女 子 保 護 立 法 に 関 連 し て 、 ﹁婦
人 の みを 対 象 と す る保 護 立 法 は 、 科 学 的 、 技 術 的 な 見 地 か ら 再 検 討 を 加 え 、 必 要 に 応 じ改 訂 、 廃 棄 又 は全 て の労 働 者
に そ の適 用 を 拡 大 す べ き で あ る 。
﹂ と 宣 言 し て い る こ と が 注 目 さ れ る。 いず れ に せ よ、 各 国 政 府 は こ の世 界 行 動 計 画
に よ って 、 婦 人 労 働 者 に 対 す る雇 用 の機 会 と 待 遇 の平 等 を 確 保 す る た め の国 内 行 動 計 画 を 策 定 せ ざ る を え な く な った
わ け であ る。
さ ら に 一九 七 五 年 に な って、 国 連 は ﹁
婦 人 に 対 す る あ ら ゆ る形 態 の差 別 の撤 廃 に 関 す る条 約 ﹂
、 い わ ゆ る ﹁婦 人 差
別 撤 廃 条 約 ﹂ を 採 択 し た 。 こ の条 約 は、 条 約 締 結 国 に 対 し て、 雇 用 を含 む あ ら ゆ る 形 態 の婦 人 差 別 の法 律 お よ び 慣 行
世界 の男 女雇 用 平等法
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を 撤 廃 す る た め に ・ 立 法 そ の他 の措 置 を と る こと を 宣 言 し て 転罷 。
右 の婦 人 差 別 撤 廃 条 約 は 、 一九 八 〇 年 にデ ン マー ク の コペ ン ハー ゲ ン で開 催 さ れ た ﹁一九 入 ○ 年 国 連 婦 入 の 一〇 年
世 界 会 議 ﹂ に お い て 署 名 式 が 行 わ れ 、 わ が 国 でも 政 府 の首 席 代 表 と し て高 橋 展 子 デ ン マー ク大 使 が これ に 署 名 し た 。
ま た 、 こ の条 約 は 一九 八 一年 九 月 三 日 に 発 効 し 、 さ ら に 八 二年 四 月 に は、 こ の条 約 を 実 際 に 監 視 し て いく 委 員 会 も 発
足 し て い る。
わ が 国 は 、 こ の よ う な 国 際 的 状 況 のな か で 一九 八 五 年 ま で に 婦 人 差 別 撤 廃 条 約 を 批 准 す る こ と を 表 明 し、 そ れ に 向
I L O ・E C
け て 雇 用 平 等 法 の制 定 、 国 籍 法 改 正 な ど に と り く ん で い る のが 現 況 で あ る。
幻
雇 用 に お け る 男 女 平 等 の実 現 に つ い て は、 I L O は 比 較 的 は や い時 期 か ら 積 極 的 に と り く ん で き た 。
ま ず 、 I L O は、 す で に述 べ た よ う に 戦時 中 の 一九 四 四 年 に ﹁フ ィ ラデ ル フ ィ ァ宣 言 ﹂ を 採 択 し、 ■す べ て の 人 間
は 、 人 種 、 信 条 又 は 性 に か か わ りな く自 由 及 び 尊 厳 並 び に経 済 的 保 障 及 び 機 会 均 等 の条 件 に お い て、 物 質 的 福 祉 及 び
精 神 的 発 展 を 追 求 す る 権 利 を も つ﹂ と 宣 言 し て い る 。 こ の よ う な 宣 言 を も た ら し た 背 景 に は 、 非 人道 的 な ナ チ ス の強
(4 )
制 下 で、 生 命 が け で苦 闘 し て き た ヨ ー ロ ッパ の諸 国 民 の人 権 保 障 の緊 要 性 が あ った と いえ る 。
つぎ に 、 一九 五 二年 の ﹁同 一価 値 の労 働 に 対 す る 男 女 労 働 者 に 同 一報 酬 ﹂ に 関 す る 条 約 (
第 一〇 〇号)お よ び ﹁
勧
告﹂(
第 九〇号) が あ げ ら れ よ う 。 こ の条 約 は 、 第 二次 戦 時 体 制 下 で女 子 労 働 者 が 男 子 労 働 者 に 劣 ら ぬ労 働 を し た こと
が 社 会 的 に 評 価 さ れ 、 他 方 女 子 労 働 者 側 の主 体 的 な 働 き か け も あ って 誕 生 し た 。 し か し、 同 条 約 の いう ﹁
同 一価 値 の
労 働 ﹂ と は 何 か に つ い て、 き わ め て抽 象 的 で、 いま だ に 論 議 の的 と な って い る の で あ る。
他 方 、 I L O に お け る 男 女 同 一賃 金 の条 約 化 は 、 雇 用 に お け る男 女 平 等 の考 え 方 を 大 き く 助 長 す る こ と と な った 。
す な わ ち 、 I L O は 、 一九 五 八 年 に ﹁雇 用 及 び 職 業 に つ い て の差 別 待 遇 ﹂ に 関 す る条 約 (
第 一= 号)を 採 択 す る に 至
34
った 。 こ の条 約 で 注 目 す べ に こと は 、 ﹁差 別 待 遇 ﹂ に つ いて 定 義 を し て い る こと で あ る。 す な わ ち 、 こ の条 約 は 差 別
待 遇 と は ﹁人 種 、 皮 膚 の色 、 性 、 宗 教 、 政 治 的 見 解 、 国 民 的 出 身 又 は 社 会 的 出 身 に 基 い て行 わ れ る す べ て の差 別 、 除
外 又 は 優 先 で、 雇 用 又 は 職 業 に お け る機 会 又 は 待 遇 の均 等 を 破 り 又 は害 す る結 果 と な るも の﹂ で あ る と し て い る (
第
一条)。
続 い て 、 一九 六 五 年 に な る と、 I L O は ﹁
家 庭 責 任 を も つ婦 人 の雇 用 ﹂ に 関 す る勧 告 (第 一二一
二号)を 採 択 し た 。 六
五 年 代 は 、 各 国 と も 大 幅 な 技 術 革 新 を 推 進 し た 結 果 、 単 純 不 熟 練 労 働 者 と し て の女 子 労 働 者 の需 要 が 増 大 し た 。 こ こ
に 、 家 庭 の既 婚 女 子 を 含 む女 子 労 働 者 の積 極 的 な 活 用 が 考 え ら れ 、 そ の結 果 、 既 婚 女 子が ど ん ど ん 職 場 に 吸 収 さ れ て
い った 。 と こ ろが 、 既 婚 女 子 の場 合 、 家 庭 責 任 と 職 業 と の 二重 の負 担 を 負 わ な け れ ば な ら な い と いう 新 た な 問 題 が 惹
起 し て き た 。 そ こ で I L O は、 既 婚 女 子 の こ のよ う な 二重 の負 担 を 軽 減 す る こ と を 目 的 に 、 こ の第 一二 三 号 勧 告 を 採
択 す る こと に な った 。 そ の こと は 、 I L O が 雇 用 に お け る男 女 平 等 の実 質 的 な確 保 に向 け て 、 よ り 具 体 的 な 動 き を 示
し たも のと いえ る。
さ ら に 一九 七 五 年 に な る と 、 I L O は第 六 〇 回 総 会 に お い て ﹁婦 人 労 働 者 の機 会 及 び 待 遇 に 関 す る宣 言 ﹂ 及 び こ れ
を促 進 す るた め の ﹁
行 動 計 画 ﹂ を 採 択 し た 。 こ れ は 、 同 年 に開 催 さ れ た 国際 婦 人 年 世 界 会 議 と 併 行 し て、 女 子 労 働 者
が 男 子 労 働 者 と 平 等 に 経 済 的 、 社 会 的 活 動 が でき る よ う な 綜 合 的 な 施 策 を 策 定 す べ き こ と を 宣 言 し た も の で あ る。 な
お 、 こ こ で 注 目 す べ き こと は、 深 夜 、 労 働 時 間 、 危 険 有 害 業 務 な ど の女 子 保 護 立 法 に 関 連 し て、 最 近 の科 学 的 知 識 に
て ら し て 再 検 討 す べ き こと を提 言 し て い る こ と で あ る。 これ は 、 I L O と し て の、 正 式 な 提 言 で あ る。
さ ら に I L O は 、 一九 八 一年 に ﹁
男 女 労 働者 ・
: -家 庭 的 責 任 を 有 す る労 働 者 の機 会 均 等 及 び 平 等 待 遇 に関 す る﹂ 条
約 およ び勧 告 (
第 一六 五号)を 採 択 し て い る。 こ の条 約 お よ び勧 告 は 、 男 女 労 働 者 の機 会 及 び 待 遇 の実 際 的 な 平 等 を 実
施 す る さ い、 家 庭 的 責 任 を 有 す る者 が 差 別 さ れ る こ とが な い よ う 配 慮 す べ き こ と を 宣 言 し た も の で あ る。
9
世界 の男 女雇 用 平等法
35
最 後 に 、 国 連 ・I L O の動 き と併 行 し て、 E C (
欧州 共同体) の動 き も 積 極 的 に な ってき て い る、 す な わ ち 、 E C は
雇 用 に お け る男 女 平 等 の実 現 に 向 け て、 一九 七 五 年 に ﹁男 女 同 一賃 金 原 則 指 令 ﹂、 さ ら に 一九 七 六 年 に は ﹁
均等 待 遇
指 令 ﹂ を 発 令 し て い る。 と く に 後 者 の均 等 待 遇 指 令 は 、 男 女 平 等 を 確 保 す る た め の法 令 の施 行 を 一九 七 八 年 八 月 ま で
と し 、 女 子 に 対 す る特 別 措 置 の見 直 し を 一九 八 〇 年 二 月 ま で 行 う も の と し て お り 、 そ れ な り の成 果 を あ げ てき た 。
以 上 み て き た よ う に 、 世 界 の雇 用 平 等 法 は、 国連 、 I L O、 E C の積 極 的 な と り組 み に よ り 、 国 際 的 レベ ル に お い
て急 速 に 成 立 し て き た の で あ る 。
三、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の特 異 性
世 界 の雇 用 平 等 法 は 、 雇 用 分 野 に お け る性 差 別 の禁 止 お よ び 救 済 を 対 象 と し て い る こと に お い て 、 す べ て 土ハ
通 の立
場 に た って い る。 し か し、 世 界 の雇 用 平 等 法 を 全 体 的 に 眺 め て み る と 、 各 国 の国 内 事 情 に 対 応 し て 、 そ の法 律 の存 在
形 態 、 適 用 対 象 、 適 用 分 野 、 救 済 機 関 お よ び 救 済 措 置 あ る い は 法 律 の実 効 性 の確 保 の仕 方 等 に つ い て そ れ ぞ れ 特 異 性
が み ら れ る。
第 一に 雇 用 平 等 法 の存 在 形 態 に つ い て の特 異 性 で あ る が 、 法 律 の存 在 形 態 か ら み る と 、 雇 用 平 等 法 に つき 独 立 の立
法 と し て 制 定 し て い る と こ ろ と 、 そ う で な い国 と が あ る。 ア メ リ カ、 イ ギ リ スな ど は、 前 者 に 属 し て い る。 これ に 対
し て、 西 ド イ ッや フ ラ ン スな ど は 後 者 に 属 し て い る。 西 ド イ ッ の雇 用 平 等 法 は 、 民 法 典 の補 充 改 正 と いう 形 式 で制 定
さ れ て い る。 こ の よ う な 雇 用 平 等 法 は 、 基 本 的 に 私 法 的 規 制 のな か で運 用 さ れ 、 同時 に そ こ に ま た 限 界 を も って い る
わ け であ る。 フ ラ ン ス で は、 雇 用 平 等 法 を 制 定 し た も の の、 そ れ ぞ れ の内 容 に 応 じ て 労 働 法 典 と刑 法 典 の な か に 新
設 、 あ る いは 追 加 修 正 と し て規 定 し て い る。 雇 用 平 等 法 が 刑 罰 立 法 に 組 み 入 れ ら れ た こと は 、 差 別 行 為 を 犯 罪 と し て
と ら え る こ と で あ り 、 そ こ に 国 家 の き び し い態 度 を う かが う こと が で き る。
36
第 二 に 、 雇 用 平 等 法 の適 用 対 象 に つ い て の 特 異 性 で あ る 。 一般 に 雇 用 平 等 法 と い っ て も 、 雇 用 に お け る ﹁性 ﹂ 差 別
の み を 対 象 と し て い る 国 と 、 そ れ 以 外 の差 別 を も 対 象 と し て い る 国 と が あ る 。 後 者 で は 、 性 差 別 の ほ か に 、 た と え ば
﹁人 種 ﹂、 ﹁皮 膚 の色 ﹂、 ﹁
宗 教 ﹂、 ﹁出 身 国 ﹂ 等 に つ い て の 差 別 を 対 象 と し て い る 。 た だ し 、 両 者 と も 、 雇 用 分 野 に お け
る 差 別 を 禁 止 し て い る こ と に お い て 共 通 し て い る 。 世 界 各 国 の な か で、 雇 用 に お け る 差 別 の み を 対 象 と し て い る と こ
ろ が ほ と ん ど で 、 イ ギ リ ス、 イ タ リ ァ 、 西 ド イ ツ、 フ ラ ン ス な ど が こ れ に 属 す る 。 こ れ に 対 し て、 ア メ リ カ 、 カ ナ ダ
な ど は 後 者 に 属 し て い る 。 ア メ リ カ 、 ヵ ナ ダ の 雇 用 平 等 法 が 、 性 差 別 以 外 の 人 種 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 出 身 国 等 に つ い
て の差 別 を 対 象 と し て い る理 由 は 、 両 国 と も 多 様 的 な 人 種 構 成 を と って い る こ と の 必 然 的 な 結 果 で あ る と いえ よ う 。
し か し、 こ の よ う な包 括 的 な雇 用 平 等 法 を か か え て い る 揚 合 に は、 そ の法 律 自 体 も 多 様 的 な 性 格 と機 能 を も つ こ と に
な ろう 。
と こ ろ で 、 雇 用 に お け る 性 差 別 の み を 対 象 と し て い る 国 に つ い て 、 人 種 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 出 身 国 等 に 対 す る 差 別
に つ い て 、 い か な る 取 り 扱 い を し て い る か が 問 題 と な ろ う 。 こ こ で 、 は っき り 断 言 で き る こ と は 、 そ の よ う な 国 で
も 、 右 の よ う な 差 別 を 決 し て 許 容 し て い る も の で は な い と い う こと で あ る。 そ れ の み か、 右 の よ う な 差 別 に つ い て
は 、 す で に 憲 法 や そ の他 の法 律 で禁 止 し て お り、 そ のた め こ と さ ら 雇 用 平 等 法 のな か に 規 定 す る 必 要 が な い こ とが 、
そ の理 由 に な っ て い る 。 た と え ば 、 西 ド イ ッ や イ タ リ アが そ う で あ る (
イド
西
タイ
リツ
ア基
憲本
法法
第第
三三
条条)。 す で に 述 べ た よ う に 、 フ ラ
ン ス で も 一九 七 五 年 の 刑 法 典 の追 加 修 正 で 、 右 の よ う な 差 別 を 刑 犯 罪 と し て き び し く 規 定 す る こ と に な った 。
第 三 に 雇 用 平 等 法 の適 用 分 野 か ら み た 特 異 性 が あ る 。 雇 用 平 等 法 の適 用 を 、 雇 用 分 野 に 限 定 し て い る国 と、 雇 用 分
野 を そ れ 以 外 に も 適 用 さ せ て い る 国 と が あ る 。 前 者 は 、 ア メ リ ヵ 、 イ タ リ ァ 、 西 ド イ ッ、 フ ラ ン スな ど が こ れ に 属 す
る 。 後 者 は 、 イ ギ リ ス、 ヵ ナ ダ な ど で あ る 。 す な わ ち 、 イ ギ リ ス 、 カ ナ ダ に お い て は 、 差 別 の対 象 を 雇 用 分 野 に か ぎ
る こ と な く、 そ れ 以 外 の あ ら ゆ る社 会 生 活 全 般 に 求 め て、 これ を 禁 止 し て い る。
世界 の男女雇 用平 等法
37
第 四 に 、 雇 用 平 等 法 に お け る 救 済 機 関 お よ び 救 済 措 置 に つ い て の特 異 性 で あ る 。 ま ず 、 救 済 機 関 に つ い て は 、 大 別
し て 行 政 委 員 会 と い う 特 別 の機 関 を 設 置 し て い る 国 と 、 従 来 の 刑 事 な い し 民 事 裁 判 所 を そ の ま ま 活 用 し て い る 国 と に
わ か れ て い る 。 前 者 で は 、 ア メ リ ヵ の E E O C (雇 用 機 会 平 等 委 員 会 )、 イ ギ リ ス の E O C (機 会 均 等 委 員 会 )な ど が あ
る 。 後 者 で は 、 イ タ リ ァ 、 西 ド イ ツ 、 フ ラ ン スな ど が こ れ に 属 す る 。 こ れ に 対 し て 、 カ ナ ダ の 場 合 に は 、 ﹁カ ナ ダ 人
権 委 員 会 ﹂ (O弩 p。象き 出ニヨ9。コ 肉茜算 ω Oo日巨 ω玖8 ) が 設 置 さ れ 、 実 際 に は そ の 下 で の 人 権 審 判 所 な い し 控 訴 人 権 審 判
所 が そ の 役 割 を 担 って い る 。
つぎ に 救 済 措 置 に つ い て は 、 各 々 の 国 に よ って ま った く 同 一で な い と い え よ う 。 ま ず 、 行 政 委 員 会 を 設 置 し て い る
ア メ リ ヵ と イ ギ リ スに つ い て み る と 、 ア メ リ カ のE E O C は 、 自 ら 行 政 的 救 済 と し て の差 別 停 止 通 告 を 発 す る権 限 を
有 し な い。 こ こ で は 、 差 別 の申 立 に つ い て事 実 調 査 を し 、 話 合 、 調 停 、 説 得 と い う 非 公 式 な 方 法 で 違 法 差 別 を 是 正 し
て い く こ と が E E O C の 中 心 的 な 役 割 と な っ て い る 。 E E O C の差 別 是 正 の 最 終 的 な 手 段 は 、 連 邦 裁 判 所 に 提 訴 す る
(凶
且 巷 。け一
8 ) を 申 請 す る も の と な って い る (第 七 一条 )。
だ け で終 る。 これ に対 し て 、 イ ギ リ ス の EO C は、 自 ら 行 政 救 済 と し て の差 別 停 止 通 告 を 発 す る権 限 を 有 す る。 そ し
て、 こ の通 告 に 従 わ な い場 合 に は地 方 裁 判 所 に差 止 命 令
右 の ア メ リ カ と イギ リ スを 除 く と 、 ほ と ん ど の国 は 従 来 の裁 判 所 を 差 別 の救 済 機 関 と し て い る。 し た が って、 こ こ
で の 救 済 措 置 は 、 基 本 的 に は 刑 事 ・民 事 の司 法 的 救 済 が 中 心 で あ る 。 し か し 、 そ の場 合 で も 、 司 法 的 救 済 に 実 効 性 を
も た せ る た め に、 各 国 な り の強 化 策 が と ら れ て い る。
第 五 に 、 雇 用 平 等 法 の実 効 性 の確 保 に つ い て は 、 フ ラ ン ス を 除 く と 、 他 の諸 外 国 は き わ め て 不 十 分 で あ る と い う 結
論 に 達 す る。
﹁二 ヵ 月 以 上 一年 以 下 の 禁 鋼 と 二 〇 〇 〇 フ ラ ン 以 上 二 万 フ ラ ン以 下 の 罰 金 ﹂ が 科 せ ら れ る (L
フ ラ ン ス は 、 性 差 別 等 を 刑 法 典 に 補 充 修 正 す る こ と に よ り (第 四 一六 条 )、 犯 罪 と し て の評 価 を な さ し め 、 こ れ に つ
い て の違 反 に 対 し て は
38
一五 二ー 一条 )。 こ の ほ か 、 裁 判 所 は 右 の 刑 事 罰 と ひ き か え に 是 正 命 令 を 発 令 す る こ と も で き る (L 一五 二ー 一- 一条 )。
こ れ に よ り 、 雇 用 平 等 法 の実 効 性 は 、 法 制 上 ほ ぼ 確 実 に 確 保 さ れ た も の と し て 、 期 待 さ れ て い る の で あ る 。
な お 、 こ の ほ か 、 後 に 述 べ る よ う に 、 イ タ リ ァ 人 権 法 に お け る ﹁強 制 執 行 命 令 ﹂ の制 度 (第 四 三条 )も 、 特 異 性 と し
て あ げ て お く こと が 許 さ れ る で あ ろ う 。
四、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の比 較 検 討
1 、 ア メ リ ヵー 雇 用 機 会 平 等 法
(5 )
ア メ リ ヵ で は 、 一九 五 〇 年 代 後 半 か ら 婦 人 労 働 者 の職 場 進 出 が 著 し く な り、 一九 五 八 年 は、 女 子 総 労 働 力 中 に 占 め
る割 合 が 三 三 % と な り 、 こ のう ち と く に 既 婚 女 性 が 婦 人 労 働 力 全 体 の 五 四% に も 達 し た と い わ れ て い る。 し か し、 婦
人 労 働 者 の雇 用 分 野 に お け る地 位 は き わ め て 低 く 、 そ の ほ と ん ど は低 賃 金 職 種 に 吸 収 さ れ て い る。 ま た 職 場 で の差 別
的 慣 行 も お お く 存 在 し 、 た と え ば 既 婚 女 性 で あ る こ と、 あ る い は妊 産 婦 で あ る こと な ど を 理 由 に 、 採 用 を 拒 否 さ れ た
り 、 退 職 を 強 要 さ れ た り し た 。 こう し た 雇 用 に お け る女 子 の差 別 的 取 扱 い のな か か ら 、 次 第 に 雇 用 平 等 法 の必 要 性 が
痛 感 さ れ てき た 。
他 方 、 ア メ リ カ で は多 様 的 人 種 構 成 を と って い る が 、 そ の う ち とく に 黒 人 等 に 対 す る 人 種 的 差 別 が お お く 行 わ れ て
き た 。 こ う し た な か で 、 人 種 的 差 別 の撤 廃 の気 運 が 盛 り あ が り 、 そ れ は六 〇 年 代 に 入 って つ いに 公 民 権 運 動 に ま で 発
展 し てき た。
し か し 、 当 時 の ア メ リ ヵ で は 、 人 種 ・性 別 等 を 理 由 と す る雇 用 差 別 を 禁 止 す る連 邦 法 は存 在 し て いな か った 。 た し
かに、 連 邦 法 と し て の ﹁
全 国 労 働 関 係 法 ﹂(NL RA) や 、 あ る いは 一九 三 八 年 の ﹁公 正 労 働 基 準 法 ﹂ (
跨Φ 聞巴同 雷 げ霞
ω富巳 蝉乙 ωb9) な ど が 制 定 さ れ て は いた が 、 いず れ も 人 種 差 別 や 性 差 別 に 対 し て 十 分 な 実 効 性 を有 す る も の で は な か
ウた ひ さ ら に 一九 六 三年 に ﹁男 女 同 一賃 金 法 ﹂ (
昏Φ国ρ琶
み の部 分 的 差 別 禁 止 に 止 ま った 。
贈昌 >3 も 制 定 さ れ て は い た が 、 これ も 賃 金 に つ い て の
(6 )
以 上 の よ う な 背 景 のも と で、 ア メ リ ヵ で は 一九 六 四 年 に な る と、 は じ め て の連 邦 法 レベ ル の雇 用 平 等 法 、 す な わ ち
る成果 であ った と い舞
そ覆
この公民甕
七編 嫉
一九 七 二年 に 嘱 用
﹁公 民 権 法 第 七 編 ﹂ (↓一
什一
〇 〇h <一一 〇h 二PΦ 畠
0凶
く躍 一
ρ
一
αqげけ ︾O轡
) が 制 定 さ れ る に 至 った 。 そ れ は 制 定 時 に 若 干 の異 変 が あ った
動 の響
と 改 正 さ れ 、 さ ら に 七 八 年 の 改 正 を 経 て 今 日 に 至 って い る 。
要 に な って く る。 今 後 、 論 争 の原 因 に も な る と思 わ れ る。
第 三 に 、 差 別 の 主 体 に つ い て 、 同 法 は ﹁使 用 者 ﹂ の み な ら ず
器器8 菩 一
楓 口①8 ωω母 ざ B F OQ ) を な す 場 合 に
体 、 従 弟 制 度 、 訓 練 を 統 轄 す る ﹁合 同 労 使 委 員 会 ﹂ (﹂
9暮 一
菩 。学日碧 品 § 。昌け8 日日葺 ①①) を あ げ て い る (第 二〇 〇 〇 e
﹁職 業 紹 介 所 ﹂、 ﹁労 働 団 体 ﹂、 お よ び 使 用 者 、 労 働 団
は 例 外 と し て い る (第 二 〇 〇 〇 eL 一
条 )。 い か な る 場 合 に こ れ に 該 当 す る か は 、違 法 雇 用 慣 行 の 事 実 認 定 と の 関 連 で 重
要 と さ れ る 適 正 な 職 業 上 の 資 格 ﹂ (① び8 帥 ま ① 。8 6 註 § 9。一ρ島 ゆ$ け一
8
第 二 に 、 右 の 違 法 雇 用 慣 行 に 対 し て 、 例 外 的 に 許 さ れ る 差 別 に つ い て で あ る 。 こ れ に つ い て 同 法 は 、 ﹁A口理 的 に 必
止 し て い る こ と か ら 、 男 女 両 性 に 対 す る 雇 用 差 別 を 禁 止 し て い る と 解 さ れ る。
理 由 と し た す べ て の 雇 用 差 別 を 対 象 と し て い る こ と に な る 。 ま た 、 同 法 は 一般 的 に ﹁性 ﹂ を 理 由 と し た 差 別 待 遇 を 禁
条 )。 し た が っ て ・ ア メ リ カ の 雇 用 機 会 平 等 法 は 、 た ん に 性 差 別 に か ぎ ら ず 、 人 種 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 出 身 国 な ど を
り 、 こ れ ら の 差 別 待 遇 を ﹁違 法 雇 用 慣 行 ﹂ (
き 二巳鋤妻h三 〇旨覧畠 日①馨 弓旨 o首6①) と し て 禁 止 し て い る (第 二 〇 〇 〇 ei 二
由 と し た 、 採 用 、 解 雇 、 報 酬 、 期 間 、 条 件 ま た は特 典 、 職 業 紹 介 、 組 合 資 格 の排 除 、 除 名 、 徒 弟 制 度 、 訓 練 ﹂ 等 で あ
ま ず 第 一に ・ 同 法 に よ っ て 禁 止 さ れ る 差 別 行 為 に つ い て で あ る が 、 ﹁人 種 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 性 ま た は 出 身 国 を 理
そ こ で 、 以 下 に お い て こ の雇 用 機 会 平 等 法 に つい て概 観 し て み よ う 。
機 会 平 等 法 ﹂ (昏 ① 国ぬ葛 一国日宮畠 旨。暮 Ob9 門9 巳 な ︾3
も の の・ 六 ・ 年代 の公民 肇
世 界 の男女雇 用平 等法
39
ー 二条 )。
第 四 に 救 済 機 関 と し て 同 法 は 司 法 お よ び 行 政 機 関 を 予 定 し て い る 。 同 法 は 行 政 機 関 と し て ﹁雇 用 機 会 平 等 委 員 会 ﹂
(国ρ二臼。一国8昆O︽ヨ9 什 ObOOH窪巳 蔓 OOヨ日♂ωδP E E O C ) を 設 け て い る (第 二〇 〇 〇 eー 四条 )。 こ の E E O C の 主 な 権 限
は 、 ω 個 人 ま た は E E O C の委 員 の 申 立 に も と つ い て 、 そ の事 実 を 調 査 、 取 調 べ を し 、 申 立 に 相 当 の 理 由 が あ る と き
は 、 会 合 、 調 整 、 説 得 の非 公 式 の 方 法 に よ り 、 申 立 て ら れ た 違 法 慣 行 に つ い て の 是 正 措 置 を 講 ず る こ と 、 ま た こ の調
整 が 成 功 し な か った 場 合 に は 、 申 立 人 は 連 邦 地 裁 に 民 事 訴 訟 を 提 起 す る こ と が で き 、 そ の 場 合 E E O C は 法 廷 助 言 者
(①旨P一
6d[ω O口﹃ 9Φ) と し て 参 加 し う る (第 二〇 〇 〇 eー 五条 )。 ② E E O C へ の申 立 に も と づ き 、 調 査 、 取 調 べ の 結 果 、 迅
速 な 司 法 的 救 済 が 必 要 な 場 合 に は 、 ﹁暫 定 的 差 止 命 令 ﹂ な ど を 含 む 訴 訟 を 提 起 す る こ と が で き る (第 二〇 〇 〇 eI 五条 )。
第 五 に 雇 用 差 別 の救 済 措 置 に つ い て は ど う か。 同 法 に よ る と 、 E E O C が 違 法 雇 用 慣 行 が あ る と 認 め ら れ た 場 合 、
そ れ を 差 し 止 め る イ ン ジ ャ ン ク シ ョ ン、 原 職 復 帰 、 バ ッ ク ・ペ イ 、 弁 護 士 費 用 の支 払 い、 な ど の救 済 措 置 を 連 邦 裁 判
所 を 通 し て 行 う と し て い る (第 二〇 〇 〇 el 五条 )。 つま り 、 E E O C 自 ら 、 そ の よ う な 行 政 的 救 命 を 発 し え な い こ と に
な る。
第 六 に こ の 雇 用 機 会 平 等 法 の 実 効 性 の確 保 に つ い て は ど う か 。 ア メ リ カ の雇 用 機 会 平 等 法 は 、 雇 用 の差 別 実 態 の 是
正 と い う 面 か ら 、 そ の 措 置 を も っぱ ら E E O C や 裁 判 所 に 委 ね て い る 向 き が 強 い。 た と え ば 、 同 法 の 実 効 性 確 保 の た
め に 、 ﹁刑 罰 ﹂ 規 定 を 設 け る こ と に つ い て あ き ら か で な い 。 た だ 、 ポ ス ト ・ノ ー チ ス と 関 連 し て 、 こ れ に 違 反 し た 場
合 に は 罰 金 を 課 す る こ と の 規 定 が あ る だ け で あ る (第 二〇 〇 〇 eー 一〇条 )。
以 上 、 ア メ リ カ の 雇 用 機 会 平 等 法 に つ い て 概 観 し て き た が 、 こ こ で つぎ の点 に つ い て の み 指 摘 し て お き た い。 す な
わ ち 、 E E O C の 権 限 に つ い て で あ る が 、 こ れ に つ い て は 公 民 権 法 第 七 編 が 一九 七 二 年 に 改 正 さ れ る と き に 、 同 法 の
適 用 拡 大 と と も に 、 E E O C の 権 限 が 強 化 さ れ た 。 こ れ は 、 雇 用 差 別 の申 立 を め ぐ っ て 、 E E O C の調 停 が 成 功 し な
40
世界 の男 女雇用 平等 法
41
(9)
か った 場 合 に 、 差 別 是 正 のた め に E E O C自 ら申 立 者 のた め に 連 邦 裁 判 所 に 提 訴 し う る 権 限 を 認 め た も の で あ った 。
し か し、 そ の後 こ の E E O C の権 限 強 化 に つ い て の補 充 修 正 は み て いな い。 そ こで も し、 こ の ま ま 止 ま る と す る な
ら 、 E E O C は いま だ 直 接 差 別 停 止 通 告 等 、 行 政 的 差 止 命 令 を 発 す る権 限 が な い こと に な る。 雇 用 差 別 の是 正 のた め
に 、 E E O C と 裁 判 所 の併 用 的 活 用 も 理 解 で き な い こと は な いが 、 行 政 機 関 と し て の E E O C に も う 少 し権 限 を 拡 大
し て いく べ き で は な い か と 思 わ れ る。 こ れ に つ い て は、 イ ギ リ ス の E O C の権 限 と大 き な 違 いが あ る こ とも 指 摘 し て
お き た い。
さ ら に 、 雇 用 機 会 平 等 法 の実 効 性 の確 保 に つ い て も 今 後 の検 討 課 題 と な る で あ ろう 。
2 、 イ ギ リ スー 性 差 別 禁 止 法
一般 に イ ギ リ ス は 、 戦 前 か ら 王 制 ・貴 族 制 度 等 の身 分 的 差 別 や 入 種 差 別 が 強 い と こ ろ で あ った 。 こ う し た な か で 、
女 性 の 経 済 的 社 会 的 地 位 は 低 く 、 お お く の差 別 的 慣 行 が 存 在 し て い た 。
﹁性 別 に よ る 失 格 条 項 排 除 法 ﹂ と い う 法 律 が あ っ た 。 し か し 、 こ の 法 律 は 、 適 用 範 囲 が 限 定
戦 前 、 こ の よ う な 女 性 の 差 別 的 慣 行 に 対 し て 、 こ れ を 規 制 す る 制 定 が ま った く な か った わ け で は な い 。 た と え ば 、
一九 一九 年 に 制 定 さ れ た
さ れ 、 ま た 適 用 条 件 も 厳 格 で あ った た め 、 な ん ら 性 差 別 の 是 正 に 実 効 性 を 有 し な か った 。
こ の 他 、 性 差 別 に つ い て は 、 ﹁公 共 政 策 ﹂ (℃二σ一
一
〇 bO一
一
6唄) や ﹁取 引 の 制 限 ﹂ (器 ω9 凶
暮 。h#巴 ①) と い う コ モ ン 。 ロー
の 原 則 を 援 用 し て い く こ と も 可 能 で あ っ た が 、 コ モ ン ・ ロー 自 体 こ の問 題 に つ い て は 、 十 分 な 助 力 を 与 え よ う と し な
(10 )
か った 。
と こ ろ が 、 一九 六 〇 年 後 半 に 入 る と 、 イ ギ リ ス は 比 較 的 短 期 間 に お お く 女 子 の た め の 保 護 立 法 を 制 定 し た 。 た と え
ば 、 一九 六 七 年 の ﹁国 民 保 健 サ ー ビ ス法 ﹂ と ﹁人 工 中 絶 法 ﹂、 一九 六 九 年 の ﹁離 婚 改 正 ﹂、 一九 七 〇 年 の ﹁男 女 同 一賃 金
42
法 ﹂、 さ ら に 一九 七 五 年 の ﹁性 差 別 禁 止 法 ﹂ と
﹁人 種 関 係 法 ﹂ な ど で あ る 。な か で も 、イ ギ リ ス の 雇 用 平 等 法 た る ﹁性
差 別 禁 止 法 ﹂ (ω①× 一
)凶
ωO﹁帥
ヨ一
⇔9け
一
〇昌 ︾OけOh 一㊤刈切) は 、 典 型 的 な 性 差 別 撤 廃 法 と し て 世 界 の 注 目 を 浴 び て い る の で あ る 。
と こ ろ で、 イ ギ リ スに お い て性 差 別 禁 止 法 が 制 定 さ れ て く る 背 景 は ど う か 。 す で に 述 べ て き た よ う に 、 イ ギ リ ス で
ド 自動 毒
に お け る女 子 労 働 者 の スト 一
ブイ キ な ど に み ら れ る よ .
鞄
女子
も 一九 六 〇 年 か ら 経 済 の 高 度 成 長 に 突 入 し 、 そ の結 果 急 激 に 女 子 労 働 者 が 増 加 し て き た こ と 、 さ ら に そ れ に と も な っ
て女 子 労 働 者 の権 利 意 識 が 昂 揚 し 、 フ 苧
労 働 者 の権 利 闘 争 の盛 り あ が り な ど が 考 え ら れ る 。 他 方 、 一九 七 四 年 の 労 働 党 政 権 の 誕 生 、 七 五 年 の 国 際 婦 人 年 世 界
会 議 への 同 一歩 調 、 七 二 年 ア メ リ カ 公 民 権 法 第 七 編 改 正 の 影 響 、 イ ギ リ ス の 七 〇 年 の ﹁男 女 同 一賃 金 法 ﹂ (匪 ・ 国盤 巴
℃亀 ︾9 。h お ざ ) の 実 効 性 の確 保 、 等 さ ま ざ ま な 背 景 を あ げ る こ と が で き る 。
そ こ で、 以 下 に お い て イ ギ リ ス の性 差 別 禁 止 法 に つい て 概 観 し て み よ う 。
﹁差 別 ﹂ に つ
ま ず 第 一に 、 同 法 に お い て禁 止 さ れ る 差 別 行 為 で あ る が 、 イ ギ リ ス に お い て は ア メ リ カ と 異 な っ て 、 雇 用 分 野 に お
け る 差 別 の み で は な く 、 そ れ 以 外 の社 会 生 活 全 般 に わ た る 差 別 を も 禁 止 し て い る こ と 、 さ ら に そ の 場 合
い て は ﹁性 ﹂ 差 別 に か ぎ ら れ 、 人 種 、 皮 膚 の 色 、 宗 教 、 出 身 国 等 に つ い て は 除 外 さ れ て い る こ と が 注 目 さ れ る 。
雇 用 に お け る 差 別 に つ い て は 、 ﹁募 集 、 採 用 、 賃 金 、 昇 進 昇 格 、 配 転 、 職 業 訓 練 、 紹 介 、 解 雇 ﹂ に つ い て の 性 差 別
を 禁 止 し て い る (第 六 条 - 第 二 一条 )。 つぎ に 、 雇 用 分 野 以 外 の差 別 的 慣 行 に つき て は 、 ﹁教 育 、 物 品 、 施 設 (公 共 の食
堂 、飲 食 店 、 銀 行 等 )、 サ ー ビ ス の供 与 、 不 動 産 、 賃 貸 借 ま た は 管 理 等 ﹂ に つ い て の 性 差 別 を 禁 止 し て い る (第 二 二条 1
三 六条 )。 な お 、 こ の 差 別 に つ い て は 、 男 女 両 性 に 対 し て 禁 止 さ れ て い る こ と 、 ア メ リ カ と 同 じ で あ る 。
つぎ に 右 の 禁 止 さ れ る 差 別 行 為 と 関 連 し て 、 つぎ の 二 点 が 注 目 さ れ る 。 ω い わ ゆ る ﹁間 接 差 別 ﹂ を 禁 止 し て い る こ
と で あ る (第 一条 )。 ﹁間 接 差 別 ﹂ と は 、 男 女 両 性 に 適 用 さ れ る 条 件 で も 、 そ の条 件 が 適 用 さ れ た 結 果 、 女 子 が 男 子 よ
り も 著 し く 不 利 に な る 場 合 、 使 用 者 の 差 別 的 意 思 の有 無 に か か わ り な く 、 こ れ を ﹁性 差 別 行 為 ﹂ と す る こ と で あ る 。
世 界 の男 女雇用 平等 法
43
② 同 法 は 、 あ ら ゆ る分 野 に お け る ﹁
差 別 的 慣 行 ﹂ を も 違 法 な 差 別 行 為 と し て禁 止 し て い る (
第 三七条)
。
第 二 に 禁 止 さ れ る差 別 行 為 の例 外 に つ い て は 、 ω ﹁性 別 が 真 正 の職 業 上 の資 格 で あ る場 合 ﹂ (
第 七条)、 ② 死 亡 お よ
び 退 職 の場 合 (
第 六条)、 ㈹ 暫 定 的 な 優 遇 措 置 (
第 四七条) の 三 つを 規 定 し て い る 。 そ し て 、 前 者 のう ち 、 男 性 た る こ
と が 真 正 の職 業 上 の資 格 と 認 め ら れ る職 に つ い て、 具 体 的 に 規 定 し て い る (
同第 七条)。
第 三 に 差 別 の主 体 に つ い て は、 同 法 は ﹁使 用 者 ﹂ の ほ か に、 ﹁そ の他 の団 体 ﹂ を あ げ 、 同 業 組 合 (
津 ヨ)
、 労 働組 合 、
資 格 付 与 団 体 、 職 業 訓 練 機 関 、 職 業 紹 介 所 、 職 業 安 定 委員 会 な ど を 規 定 し て い る (
第 = 条-第 一六条)。
第 四 に 差 別 の救 済 機 関 に つ い て は 、同 法 は 行 政 機 関 と し て の ﹁
機 会 均 等 委員 会 ﹂(
昏。国ρ舞 一〇署 。量 ロ一
受 o。筥ヨ一
。・
ω
δp
E OC) と ﹁
労 働 審 判 所 ﹂ の 二 つを 設 け て い る (
第 五三条 以 下、第 六 一
二条 以下)
。 差 別 を 受 け た 個 人 は、 そ の いず れ に 対
し て も 不 服 申 立 を す る こと が で き る。 こ のう ち 、 個 人 が E O C に 申 立 て た 場 合 に は 、 これ に 対 し て E O C は 助 言 ま た
は 指 導 を す る ほ か 、 そ の職 権 ま た は 内 部 大 臣 の要 請 に 基 づ い て、 公 式 調 査 を し、 差 別 が 明 ら かな 場 合 に は行 政 的 救 済
と し て ﹁差 別 停 止 通 告 ﹂ を 発 す る (
第 五七条 、第 六 七条 )
。
他 方 、 個 人 が 労 働 審 判 所 に 対 し て 申 立 てを 行 な った 場 合 に は 、 審 判 所 に お い て 調 整 が 行 わ れ、 調 整 官 が 解 決 可 能 と
判 断 し た 場 合 に は ヒ ア リ ング な し に 調 整 が 行 わ れ る。 調 整 不 可 能 な 場 合 に は 、 ヒ ア リ ング が 開 始 さ れ る。 そ れ に 対 し
て さ ら に 不服 が あ る場合 に は、 控訴 手続が と ら れ る (
第六 一
二条 以下)。
第 五 に 差 別 の救 済 措 置 に つ い て は 、 す で に 述 べ た よ う に 、 E O Cが 違 法 な 差 別 行 為 を 認 め た 場 合 に は ﹁
差 別停 止 通
告 ﹂ を命 令 す る ことが でき る (
第 六 七条 )
。 ま た 、 こ の通 告 にも か か わ ら ず 違 法 差 別 行 為 が いぜ ん と し て 行 わ れ て いる
場 合 に は 、 イ ンジ ャ ン ク シ ョ ン等 を 裁 判 所 に 申 立 て る こと が で き る (
第 七 一条)。 E O Cが 自 ら 差 別 停 止 通 告 を 発 す る
権 限 を も って、
い る こ と は 、 ア メ リ カ の E E O C と大 き く 異 な って い る。 な お 、 広 告 等 に 差 別 的 慣 行 が 認 め ら れ た と き
は 、 E O C 自 ら 裁 判 所 に 救 済 の申 立 て を す る こ と が でき る よ う に な って い る (
第 七 二条)。
44
第 六 に 、 同 法 の実 効 性 確 保 に つ い て は 、 直 接 の罰 則 規 定 は な い。
以 上 、 イギ リ ス の性 差 別 禁 止 法 に つ い て概 観 し て き た 。 す で に 述 べ た よ う に 、 同 法 は 雇 用 分 野 に お け る 性 差 別 の み
な ら ず 、 そ れ 以 外 の全 般 的 社 会 生 活 の性 差 別 お よ び そ の差 別 的 慣 行 を 禁 止 し た 包 括 的 な 立 法 で あ る。 雇 用 に お け る 実
質 的 男 女 平 等 を 実 現 し て いく た め に は 、 雇 用 分 野 以 外 の性 差 別 や そ の差 別 的 慣 行 の撤 廃 が 必 要 不 可 欠 で あ り 、 そ の意
、
イ タ リ アー 男 女 同 一待 遇 法
味 で は 同 法 を 高 く 評 価 でき る で あ ろ う 。
3
伝 統 的 に、 家 事 と 育 児 は 婦 人 の大 き な 責 任 と さ れ て き た イ タ リ ア で は、 婦 人 の職 揚 への進 出 は 低 く 、 ま た 職 場 で の
婦 人 に 対 し て は 低 い格 付 け が な さ れ 劣 悪 な 労 働 条 件 を 強 い ら れ て き た 。
こ の よ う な イ タ リ ア の婦 人 労 働 者 の状 況 に 対 し て 、 戦 前 に お け る 婦 人 労 働 者 の保 護 法 と い え ば 、 一九 三 四 年 の ﹁婦
人 年 少 者 労 働 保 護 法 ﹂ (法第六 五 三号) ぐ ら い のも の で あ った 。 同 法 は 、 婦 人 労 働 者 の深 夜 業 の禁 止 、 危 険 有 害 業 務 の
就 業 制 限 な ど を 規 定 し て いた 。
一九 四 八 年 に な る と、 イ タ リ ァ共 和 国 憲 法 は男 女 同 一賃 金 原 則 を 宣 言 し た 。 す な わ ち 、 そ の第 三 七条 は ﹁婦 人 労 働
者 は男 女 労 働 者 と 同 一の権 限 を 有 し 、労 働 が 同 等 で あ る と き は 、男 子労 働 者 と同 一の賃 金 を う け る﹂ と規 定 し て い た 。
こ の男 女 同 一賃 金 原 則 は 、 そ の後 の男 女 平 等 実 現 への法 的 基 礎 を な す も の であ った 。 続 い て、 一九 五 〇 年 に な る と 、
こ の 原 則 を 具 体 化 す るも の と し て 、妊 娠 中 の婦 人 労 働 者 の解 雇 禁 止 を 含 む ﹁母 親 労 働 者 の身 体 的 経 済 的 保 護 法 ﹂ (
法第
入 六〇号) が 制 定 さ れ た 。 し か し 、 こ の よ う な 憲 法 の男 女 同 一賃 金 原 則 や 母 性 保 護 法 のも と で、 婦 人 労 働 者 は いぜ ん
と し て差 別 的 な 低 い労 働 条 件 を 強 いら れ て き た 。
一九 七 〇 年 代 に 入 る と 、 イ タ リ ア婦 人 労 働 者 の地 位 に 大 き な 変 化 が み ら れ る よ う に な った 。 こ の頃 に な る と、 イ タ
世 界 の男女雇用 平等 法
45
リ ア でも 急 速 に 男 女 平 等 の気 運 が 盛 り上 って き た 。 そ の背 景 に は " 七 五年 の国 連 の国 際 婦 人 年 のと り く み 、 七 五、 七
六年 の E C の指 令 、 七 五 年 のイ ギ リ ス の性 差 別 禁 止 法 の制 定 な ど が あ げ ら れ よ う 。
こう し た 状 況 のな か で、 国 内 的 に も 、 ω カ レ ッ ト ー 二議 員 法 案 (七六年 七月)
、 働 共産 党 案 (
七六年 = 月)
、 圖 ML
D (
婦 人解 放 運動 )国 民 発 案 (七七年 一月)
、 ㈲労 働大 臣 案 (
七七年 一月)
、 ㈲社 会 党 案 (
七 七年 一月)、 な ど 雇 用 分 野 に お
け る男 女 平 等 法 案 が 相 つ い で提 出 さ れ る よ う に な った。 そ し て、 これ ら の法 案 のう ち 、 国 会 で は労 働 大 臣 案 を中 心 に
(12 )
審 議 が 進 め ら れ、 や が て そ れ が 基 礎 と な って 、 イ タ リ ァ雇 用 平 等 法 で あ る 七 七 年 の ﹁
労 働 に 関 す る男 女 同 一待 遇 法 ﹂
(
法第 九〇 三号) が 成 立 し た 。 そ こ で、 以 下 に お いて こ の男 女 同 一待 遇 法 に つ いて 概 観 し て み よ う 。
第 一に 禁 止 さ れ る差 別 行 為 に つ い て 、 同 法 は ﹁
就 職 、 賃 金 、 昇 進 等 ﹂ に つい て の性 別 に よ る い っさ い の差 別 を 禁 止
し て いる (
第 一条 -第 三条 )
。 こ のう ち 、 第 一条 の就 職 等 の差 別 禁 止 の な か で、 同 法 は コ雇用 の形 態 に か か わ ら ず ⋮ ⋮
性 別 に よ る い っさ い の差 別 を禁 止 す る﹂ と 規 定 し て い る。 近 時 、 女 子 労 働 者 の パ ー ト ・タ イ マー と いう 雇 用 形 態 が す
っか り 定 着 し て い る な か で、 そ れ が 果 し て 性 差 別 に な る か 否 か に つ い て論 議 を 呼 ぶ こと に な ろ う 。
第 二 に 、 右 の禁 止 さ れ る差 別 行 為 の例 外 規 定 と し て、 特 定 の事 業 、 た と え ば フ ァ ッ シ ョ ン、 美 術 、 興 業 等 の事 業 を
例 外 と す る こと を 明 定 し、 そ れ 以 外 に つ い て は ﹁
労 働 協 約 に よ って と く に 重 要 であ る と 確 認 さ れ た 職 務 に つ い て の
み﹂ 例 外 と す る と規 定 し て いる (
第 ︼条 )
。
第 三 に 差 別 主 体 に つい て は、 同 法 で は と く に 明 示規 定 は な いが 、 使 用 者 は も ち ろ ん 、 職 業 紹 介 所 等 各 種 公 共 団 体 、
さ ら に 労 働 組 合 も あ げ う る で あ ろ う 。 労 働 組 合 が 差 別 主 体 と考 え ら れ る 理 由 は 、 イ タ リ ア で は労 働 関 係 の規 制 が ほ と
ん ど 労 働 協 約 に よ って 行 わ れ る か ら で あ る 。
第 四 に 差 別 の救 済 機 関 に つ い て は、 ﹁区 裁 判 所 ﹂ (11簡易 裁判所)が これ に あ た る。 救 済 手 続 は 、 一般 に は 通 常 の民 事
訴 訟 法 の 手 続 に よ る。 区 裁 判 所 への申 立 て は 、 差 別 を う け た 個 人 、 ま た は 労 働 組 合 組 織 を そ の代 理 人 と す る者 に よ っ
46
て行 わ れ る (
第 一五条)。
第 五 に差 別 の救 済 措 置 に つ い て は、 二 つの方 法 が 行 わ れ て い る。 す な わ ち、 一つは 通 常 の民 事 訴 訟 の 手 続 に よ っ
て、 区 裁 判 所 が 差 別 行 為 に つき 無 効 判 決 を 下 す 方 法 で あ る。 他 は 、 ﹁
緊 急 手続 ﹂ で あ る (
第 一五条 )
。 これ は 、 就 職 に
関 す る差 別 行 為 と 深 夜 業 禁 止 に 関 す る行 為 に つき 、 特 別 の緊 急 手 続 に よ って 裁 判 所 か ら ﹁即 時 執 行 命 令 ﹂ を 発 令 さ せ
る も の で あ る。 これ に よ り、 就 職 差 別 に つい て は、 イ ンジ ャ ン ク シ ョ ンが 発 令 さ れ る こ と も あ る 。 これ は、 同 法 第 一
三条 に よ って 一九 七 〇 年 五月 二 〇 日 の ﹁労 働 憲 章 法 ﹂ (
法 第 三〇〇号)第 二八 条 の ﹁反 組 合 的 行 為 ﹂ の 手続 を 性 差 別 に
拡 大 し た も の で あ る。
第 六 に 、 本 法 の実 効 性 確 保 に つ い て は 罰 則 (罰金)が 規 定 さ れ て い る (
第 一六条)。 こ の ほ か、 右 に述 べ た 即 時 執 行
命 令 違 反 に つ いて は 、 刑 法 第 六 五 〇条 の禁 鋼 刑 が 適 用 さ れ る場 合 が あ る (
第 一五条)
。
以 上 、 雇 用 に お け る男 女 平 等 の面 か ら 、 男 女 同 一待 遇 法 に つ い て概 観 し てき た 。 し か し 、 こ の男 女 同 一待 遇 法 は 、
雇 用 の性 差 別 を 禁 止 す る だ け で は な く 、 同 時 に 女 子 保 護 立 法 の男 子 への拡 大 お よ び女 子 保 護 立 法 の緩 和 に つい て も 規
定 し て お り、 そ の こ と が 同 法 の特 徴 にも な って い る。 す な わ ち、 同 法 は、 前 者 に つ い て た と え ば 、 育 児 休 業 を 母 親 労
働 者 だ け でな く 、 父 親 労 働 者 に 対 し ても 認 め て い る (
第 七条 )
。 ま た 後 者 に つ い て は 、 女 子 の深 夜 業 の禁 止 に つき 、 従
来 の午 後 一 一時 か ら午 前 五時 ま で の深 夜 業 の禁 止 を 、 二 四時 か ら 六 時 に改 正 し、 さ ら に 管 理 職 と 医 療 サ ー ビ ス従 事 者
への適 用 排 除 に つ い て規 定 し て いる (
第 五条)
。
こ のよ う に み て く る と 、 イ タ リ ア の男 女 同 一待 遇 法 は 、 女 子 保 護 立 法 の拡 大 、 緩 和 を 進 め な が ら 雇 用 の男 女 平 等 を
実 現 し て い こう と し て い る こ と が わ か る。
全 般 的 に み て、 イ タ リ ア の男 女 同 一待 遇 法 のな か でも つとも 重 要 な 部 分 は 、 す で に 述 べ て き た ﹁
緊 急 手続 制 度﹂
(
第 一五条) で あ る。 し か し、 こ れ に つ い て は、 ω 訴 え の主 体 が 個 別 労 働 者 で あ る こ と、 ② 公 共 部 門 で は 、 こ の制 度 の
世界 の男 女雇用 平等 法
47
(14 )
(13 )
適 用 が 排 除 さ れ て い る こと 、 ㈹ 就 職 の差 別 と 深 夜 業 に 限 定 さ れ て い る こ と 、 な ど の 欠 陥 が あ る 。 同法 の実効 性 の観点
か ら も 、 今 後 論 議 の 原 因 と な って い く で あ ろ う 。
4 、 西 ド イ ツー 男 女 均 等 待 遇 法
イ タリ アと同 じ よう に、 伝 統 的 に ﹁
男 女 の役 割 分 担 意 識 ﹂ が 強 い 西 ド イ ツ で は 、 戦 前 か ら女 性 の社 会 的 経 済 的 地 位
は 低 か った 。 そ の こ と は 、 雇 用 分 野 に お け る婦 人 の地 位 の拙 劣 さ で明 ら か で あ る。 西 ド イ ッ の婦 人 労 働 者 は、 ま ず そ
(15 )
の職 業 分 野 が わず か な も のに 限 定 さ れ て い る。 た と え ば 、 婦 人 労 働 者 の大 勢 は、 組 織 、 経 営 、 事 務 職 等 に集 中 し 、 し
か も そ れ ぞ れ の分 門 で は 低 い賃 金 で就 労 し て いる と い わ れ て い る 。
(16 )
し か し 、 こ う し た 状 況 のな か で 、 婦 人 労 働 者 保 護 の た め の改 善 が 行 な わ れ て こな か った わ け で は な い。 た と え ば 、
(17 )
西 ド イ ツ の労 働 保 護 法 で あ る 一九 三 八 年 の ﹁
労 働 時 間 令 ﹂ は 、 母 性 保 護 の面 か ら 危 険 有 害 業 務 の就 労 禁 止 、 深 夜 業 の
禁 止 な ど を 規 定 し て い る (第 一六条、第 一九条)。 ま た 、 一九 五 二年 の ﹁母 性 保 護 法 ﹂ も 、 妊 産 婦 の保 護 を 規 定 し て い る
(
第 三条 以下)。
他 方 、 男 女 平 等 原 則 に つ い て は、 一九 四 九 年 のド イ ッ連 邦 共 和 国 基 本 法 第 三条 が 、 つぎ の よ う に 宣 言 し て い る。 ω
何 人 も 法 の前 に 平 等 であ る (
第 一項 )
。 ②男女 は同権 であ る (
第 二項)
。 ㈹ 何 人 も 、 性 別 ・門 地 ・人 種 ・言 語 ・生 国 お よ
び 素 姓 ・信 仰 ・宗 教 的 ま た は 政 治 的 意 見 の た め に 、 不 利 益 を 与 え ら れ ま た は 優 遇 さ れ る こと は 許 さ れ な い (
第 三項)
。
し か し 、 こ の よ う な 男 女 平 等 原 則 も 、 そ の抽 象 的 形 式 的 規 定 方 式 も さ る こと な が ら 、 そ の第 三者 効 力 を め ぐ る連 邦 裁
判 所 の態 度 も あ って 、 実 際 的 な 性 差 別 行 為 に 対 し て あ ま り規 制 力 を も つも の で は な か った 。 す な わ ち、 右 基 本 法 第 三
条 は 、 政 府 と 市 民 間 の規 制 に 止 ま ら ず 、 私 人 間 に お い て も 規 制 し う る (
第 三者効 力)と す る連 邦 裁 判 所 のは や く か ら の
見 解 は あ った が 、 し か し 、 た と え ば 雇 入 れ に つ い て は 、 同 条 の男 女 平 等 原 則 を 認 ぬ た こ と は な か った 。 こ の よう な ご
48
と か ら 、 雇 用 に お け る性 差 別 は 至 る と こ ろ で み ら れ た 。
こ れ に対 し て 、 一九 七 二年 の ﹁
経 営 組 織 法 ﹂ 第 七 五条 一項 は 、 つぎ の よ う に 職 場 に お け る男 女 平 等 原 則 を 規 定 し
た。 ﹁
使 用 者 と経 営 協 議 会 は 当 該 事 業 揚 に お い て就 労 す る す べ て の者 が 、 法 と 公 平 の原 則 に 従 って 取 り 扱 わ れ 、 と り
わ け門 地、宗 教、 国 籍 、 家系 、 政治 的 活動 も しく は労 働組合 に対 す る立場 、 ま た は性 を理由 と した差 別 が行 わ れな い
よう 監 視 しな け れば な らな い。
﹂。 し か し 、 こ の法 律 のも と で差 別 行 為 が 行 わ れ た場 合 、 個 々 の労 働 者 が 直 接 労 働 裁 判
所 に 提 訴 す る こ とが で き な か った 。 労 働 裁 判 所 への提 訴 は 、 経 営 協 議 会 と 当 該 事 業 場 に 組 合 員 を 有 す る労 働 組 合 に よ
って の み行 わ れ るも の と され て い た (
第 二一
二条 三項 )
。 こ のよ う な 欠 陥 を 補 う も のと し て、 同 法 は 個 人 の、 当 該 事 業 の
担 当 部 局 や 経 営 協 議 会 への苦 情 提 出 権 を 規 定 し て いた が (
第 八四条 、第 八 五条)、 実 際 に は差 別 行 為 を 解 消 し え な か っ
た。
右 の よ う な 雇 用 差 別 を め ぐ る 西 ド イ ッ の国 内 事 情 と 相 ま って 、 一九 七 五 年 と 七 六 年 に E C に よ る ﹁
男 女 同 一賃 金 原
則﹂ お よび ﹁
均 等 待 遇 ﹂ 指 令 が だ さ れ て き た 。 そ の結 果 、 こ のE C 指 令 は 西 ド イ ッ の雇 用 平 等 法 の成 立 に 強 い影 響 を
与 え た と思 わ れ る。
一九 八 〇 年 に 、 西 ド イ ッ の雇 用 平 等 法 で あ る ﹁男 女 均 等 待 遇 法 ﹂ (
︾ひ。諺 器9 島魯 ① 国O︾ε 器ω
巷 αqω
αq①ω
。言 く。ヨ H
G。.
。。﹂ り。。o)が 制 定 さ れ た 。 同 法 は、 右 E C指 令 を 基 本 的 に う け 入 れ る か た ち で 、 民 法 典 (BG B)の補 充 改 正 と し て 規 定
さ れ た (第六 一 一条- 第 六 一二条 )
。 以 下 、 こ の男 女 均 等 待 遇 法 に つ い て、 概 観 し て み よう 。
第 一に禁 止 さ れ る差 別 行 為 で あ る が 、 こ れ に つ い て同 法 は 、 ﹁
使 用者 は、約 定 、 ま た は労 働関 係 設定、 昇 進、 指 揮
命 令 、 解 約 告 知 等 の取 り扱 いに お い て、 被 用 者 を 、 性 を 理 由 に差 別 し て は な ら な い 。
﹂ と規 定 す る (
第 六 = 条 のaー
一項 )
。 これ に よ り 、 採 用 か ら 労 働 関 係 の存 続 中 な ら び に解 雇 に 至 る ま で の差 別 が 禁 止 さ れ る こ と に な った 。
第 二 に 右 の例 外 に つ い ては 、 二 つの こ と を 規 定 し て い る (
第 六 = 条 の ai 一項)。 ω ﹁
約 定 ま た は 取 扱 いが 、 当 該 職
世界 の男女雇用 平 等法
49
務 の性 質 に 関 連 し、 か つ特 定 の性 が そ の職 務 に と って 放 棄 しえ な い前 提 条 件 で あ る場 合 ﹂、 ② ﹁
性 と は蘭 係 の な い 合
理 的 な 理 由 に よ って 、 男 女 を 区 別 し た 取 扱 いが 正 当 化 さ れ る場 合 。 ω の例 外 規 定 に つ い て は 、 他 の諸 外 国 で も み ら れ
るも の で、 問 題 は な い。 し か し 、 ② の例 外 に つ い て は 、 ﹁
合 理 的 な 理 由 ﹂ が 漠 然 と し て お り 、 そ の解 釈 い か ん に よ っ
て は 、 性 差 別 の効 果 的 な 是 正 が 期 待 でき な い で あ ろ う 。
第 三 に 差 別 主 体 に つい て は 、 同 法 は ﹁使 用 者 ﹂ の み を 規 定 す る だ け で あ る。 これ は 、 同 法 が 私 人 間 を 規 制 す る民 法
典 の補 充 改 正 'と し て規 定 さ れ た こ と の当 然 の結 果 で あ ろ う 。 し か し、 ア メ リ ヵ や イ ギ リ ス の雇 用 平 等 法 が 規 定 し て い
る 職 業 紹 介 所 や 労 働 組 合 と いう 第 三者 に つい て 、 西 ド イ ツ で は これ を 除 外 し て い る と いう 意 味 で は な い。 これ に つ い
て は 、 憲 法 の男 女 平 等 原 則 規 定 のな か で解 決 し て いく こと も で き よ う 。
第 四 に 差 別 の救 済 機 関 に つい て は、 西 ド イ ツに お い て は 一般 の労 働 問 題 と 同 様 、 労 働 裁 判 所 が これ に あ た る こと に
な る。 ア メ リ カ や イ ギ リ ス のよ う に 、 差 別 救 済 の た め の特 別 の行 政 機 関 を 設 置 し て いな い。
第 五 に 差 別 の 救 済 措 置 に つい て は、 と く に 同 法 の特 徴 と し て 二 つ の こと が あ げ ら れ る。 ω ま ず 立 証 責 任 で あ る。 同
法 は 、 差 別 を う け た 個 人 が 労 働 裁 判 所 に 訴 訟 を 起 し、 そ こ で性 差 別 を 推 定 さ せ る事 実 が 疎 明 し た場 合 、 使 用 者 は そ の
取 り 扱 いが 性 別 に よ るも の で は な い こ と を 立 証 す る責 任 を 負 う 、 と 規 定 さ れ て い る (
第 六 = 条 の al 一項 )
。 これ は 従
来 労 働 者 が 労 働 裁 判 所 に 差 別 の訴 え を 行 う 場 合 、 当 該 差 別 行 為 に つ い て 立 証 す る責 任 を 負 い、 そ のた め そ の立 証 の困
難 性 も あ って問 題 に な って き た 。 同 法 は 、 こ の 立 証 責 任 を 使 用 者 に 転 換 さ せ るも の で、 労 働 者 側 に と って は き わ め て
有 利 な 取 り扱 い と な った わ け で あ る。
② ﹁
信 頼 利 益 の賠 償 ﹂ に つ い て であ る。 同 法 は 、 雇 入 れ のさ い性 差 別 を 行 な った 使 用 者 に 対 し て、 ﹁
信 頼 利 益 の賠
償 ﹂責 任 を負 わ せ て いる (
第 六 一 一条 の a1 二項)。 ﹁
信 頼 利 益 の賠 償 ﹂ と は 、 募 集 と採 用 が 公 正 に 行 わ れ る で あ ろ う と
信 頼 し て応 募 し た こ と か ら 生 じ た 費 用 の賠 償 の こ と で あ る。 応 募 に 必 要 な 通信 費 、 交 通 費 な ど が これ に 含 ま れ る。 な
50
お 、 同 法 で は 、 昇 進 に つ い て 、 そ の 請 求 権 が な い場 合 に も 適 用 さ れ る も の と し て い る (同 条 )。
(18 )
第 六 に 、 西 ド イ ッ の 雇 用 平 等 法 の 実 効 性 の 確 保 に つ い て は 、 十 分 で な い 。 こ こ で は 、 そ の 実 効 性 の確 保 を 、民事裁
判 所 に 委 ね て い る の み で あ る。
5 、 フ ラ ン スー 男 女 平 等 法
先 進 国 のな か で も 、 フ ラ ン スは 比 較 的 は や く か ら 婦 人 労 働 者 の保 護 に 力 を 入 れ てき た と いえ る。 た と え ば 、 古 く は
一入 九 二年 一 一月 二 日 法 の深 夜 業 、 危 険 有 害 業 務 禁 止 、 一九 = 二年 の産 前 産 後 に 関 す る法 律 な ど が あ る 。 そ の後 、 一
九 四 六 年 に な る と 、 フ ラ ン ス憲 法 前 文 は ﹁法 律 は、 女 子 に 対 し、 す べ て の分 野 に お い て男 子 と平 等 の権 利 を 保 障 す
る。
﹂ と し て、 男 女 平 等 原 則 を 宣 言 し た 。 こ の原 則 は、 そ の後 一九 五 〇 年 の協 約 法 の な か で、 男 女 同 一賃 金 の原 則 が
規 定 さ れ る こと に よ って 具 体 的 化 さ れ て い る。 さ ら に 、 六 〇 年 代 に 入 る と 、 母 性 保 護 を 目的 と し た 六 六 年 = 一
月 三〇
日 法 が 制 定 さ れ 、 産 前 ・産 後 の休 暇 と と も に 、 妊 娠 ・出 産 中 の解 雇 禁 止 が 規 定 さ れ た。
七 〇 年 代 に 入 る と 、 フ ラ ン スは本 格 的 に 婦 人 労 働 法 制 を 制 定 す る よ う に な った 。 そ の背 景 に は、 女 子 の 社 会 的 進
出 、 七 五 ・七 六 年 の E C指 令 な ど が あ る 。
ま ず 、 七 二年 に ﹁男 女 同 一賃 金 法 ﹂ が 制 定 さ れ、 七 五年 に な る と 労 働 法 典 お よ び 刑 法 典 を 改 正 す る法 律 が 制 定 さ れ
た 。 前 者 に つ い て は 、 六 六 年 の妊 娠 ・出 産 中 の解 雇 禁 止 を 拡 充 す るも の で、 妊 娠 を 理 由 と す る採 用 拒 否 、 試 用 期 間 中
の解 雇 、 な ど が 禁 止 さ れ た 。 後 者 に つ いて は 、 ﹁民 族 、 国 籍 、 人 種 、 宗 教 を 理 由 と す る差 別 ﹂ の 罪 に (
刑 法典第 四 一六
条)、 ﹁
性 お よ び 家 族 状 況 ﹂ が 追 加 さ れ た 。 こ れ に よ り 、 性 差 別 が 刑 法 上 禁 止 さ れ る こ と に に な った 。
そ の後 、 七 七年 の育 児 休 業 の男 子 への拡 大 、 七 九 年 に 、 深 夜 業 禁 止 を め ぐ って、 管 理 監 督 者 お よ び 衛 生 ・福 祉 部 門
労 働 者 への 一部 解 除 が 定 め ら れ た 。
世 界 の男女雇用 平 等法
51
一九 八 一年 五 月 に な る と 、 ミ ヅ テ ラ ン政 権 が 誕 生 し た 。 こ の政 権 下 で は お お く の立 法 改 革 が 行 わ れ た 。 フ ラ ン ス の
雇 用 平 等 法 で あ る 一九 八 三 年 の ﹁男 女 の職 業 上 の平 等 に関 し て 労 働 法 典 お よ び 刑 法 典 を 修 正 す る 法 律 ﹂ は、 国 内 的 に
は こう し た ミ ッ テ ラ ン政 権 で行 わ れ た 積 極 的 な 立 法 改 革 の 一環 と し て、 他 方 国 外 的 に は 七 五、 七 六 年 のE C指 令 の外
圧を う け る か たち で制 定 さ れ た。
と こ ろ で、 こ の よ う な フ ラ ン ス の雇 用 平 等 法 は、 独 自 の 法 典 形 式 と し て制 定 さ れ た と い う よ り も 、 労 働 法 典 お よ び
刑 法 典 に ま た が る新 設 、 補 充 修 正 と し て 制 定 さ れ た と いえ る。 以 下 、 こ れ に つ い て概 観 し て み よ う 。
第 一に 、 禁 止 さ れ る差 別 行 為 に つ い て は、 労 働 法 典 中 に 規 定 さ れ て お り 、 そ こ で は ﹁募 集 、 採 用 、 報 酬 、 職 業 訓
練 、 資 格 、 格 付 け 、 昇 進 ・配 転 ・解 雇 ﹂ 等 を規 定 し て い る (L 一二三- 一条)。 こ の う ち 、募 集 ・採 用 に つ い て、 ﹁
性別
あ る いは 家 族 状 況 ﹂ を 条 件 と し た り、 広 告 のな か に そ の こ と を 記 載 し た り、 あ る いは 求 職 者 に 記 載 さ せ る こ と を 差 別
行 為 と し て いる。
第 二 に 、 例 外 と し て 許 さ れ る 差 別 行 為 に つ い て は 、 三 つ規 定 し て い る。 ω ﹁
本 法 典 に 特 別 の規 定 が あ る 揚 合 ﹂
、②
﹁い ず れ か の性 への所 属 が 、 雇 用 あ る い は職 業 活 動 の遂 行 の決 定 的 な 条 件 で な い 限 り﹂ (L 一二一
ニー 一条 本文)。 ㈲ ﹁暫
定 的 優 遇 措 置 ﹂ な ど で あ る (L 一一ご二⊥ 二条)。 ω に つ い て は、 労 働 法 典 中 の女 子 保 護 規 定 が 考 え ら れ る 。 ま た ② に つ
い て は 、 性 差 別 の取 り扱 いが 当 該 職 務 遂 行 に と って ﹁決 定 的 な 条 件 ﹂(
8 巳 三 8 叡什
。
毒 ぎき 什
①)で あ る か 否 か、 具 体 的
な 判 断 が 必 要 と さ れ る。 これ に つ い て は 、 施 行 規 則 のな か で具 体 的 な 職 業 を 定 め る こと に な って い る (同条 二項 )
。
第 三 に、 差 別 主体 に ついて は、 ﹁
何 人 も ﹂ と な って い る (L 一二 一
二ー 一条 本文)。 し た が って、 使 用 者 に かぎ ら ず 、 職
業 訓 練 所 職 業 紹 介 所 な ど が 考 え ら れ る。
第 四 に 、 救 済 機 関 に つ い て は 、 フ ラ ン スは イ ギ リ スや ア メ リ カ の よ う に 行 政 委 員 会 を 設 け て いな い。 し た が って、
基 本 的 に は 民 ・刑 事 の司 法 的 救 済 が 中 心 と な ろ う 。 こ の ほ か従 来 か ら の労 働 基 準 監 督 官 の活 用 が 考 え ら れ る。
52
第 五 に 性 差 別 の救 済 措 置 に つい て は 、 他 の先 進 国 に み ら れ な い か な り 注 目 す べ き 前 進 的 な 措 置 が と ら れ て い る。 ω
ま ず 、 差 別 禁 止 措 置 と し て、 後 に 述 べ る よ う に 、 か な り 重 い刑 罰 を 設 け て い る こ と で あ る 。 こ の こと は 、 雇 用 平 等 法
の実 効 性 確 保 の面 か ら か な り期 待 さ れ う る で あ ろ う 。 他 方 、 行 政 的 な 措 置 と し て 、 、 ② 労 働 者 の原 職 復 帰 が 保 障 さ れ
て い る こ と が あ げ ら れ る 。 す な わ ち、 雇 用 平 等 法 違 反 を 理 由 に 訴 訟 を 提 起 し た 労 働 者 への解 雇 を 無 効 と し、 そ の場 合
裁 判 所 は 原 職 復 帰 を 命 じ う る と さ れ て い る (L 一一
一一
二ー 四条 )
。 ㈲ 労 働 組 合 に よ る 訴 権 が 認 め ら れ て い る こと で あ る (L
一二三- 五条)
。 当 該 企 業 の代 表 的 な 労 働 組 合 は 、 差 別 問 題 に 関 し て 独 立 し て訴 訟 を 提 起 し う る。 これ は、 差 別 問 題 の
解 決 を 集 団 的 に 実 現 し て いく も の と し て 注 目 さ れ る 。 ω 全 国 的 な 政 策 レ ベ ル で差 別 の是 正 措 置 を 図 って いく も の と し
て 、 労 使 代 表 か ら な る ﹁男 女 平 等 高 等 評 議 会 ﹂ の設 置 (L三三〇1 二条 )
、 さ ら に企 業 レベ ルと し て、 使 用者 に 差 別 に
つ い て の実 情 を 改 善 す る報 告 を 義 務 づ け (L四三 二⊥ 二ー ︼条 )
、 そ の改 善 計 画 に 必 要 な 措 置 に 国 庫 補 助 と いう 財 産 的 誘
導 措 置 を 設 け た こ と 、 さ ら に企 業 内 に 設 け た ﹁
企 業 内 委 員会 ﹂ や ﹁
労 働 組 合 ﹂ に 、 差 別 是 正 のた め の監 視 そ の他 差 別
是 正 の促 進 の た め の役 割 を 負 わ し て い る こと も 注 目 さ れ る。 ⑤ 七 二年 の男 女 同 一賃 金 法 を さ ら に 具 体 化 す るも の と し
て、従 来 か ら問 題 のお お い ﹁
同 一価 値 労 働 ﹂ に つ いて の定 義 を し、 さ ら に そ の立 証 責 任 の存 在 を 明 ら か に し た こ とが
あ げ ら れ る 。 前 者 の定 義 に つい て は 、 ﹁
労 働 者 に 、 資 格 ・免 許 ・職 業 ・職 業 上 の実 務 に よ って 認 め ら れ る知 識 、 経 験
に よ る 能 力 、 責 任 、 お よ び 肉 体 的 精 神 的 負 担 に つ い て 同 等 な 能 力 の総 体 を 要 求 す る労 働 は 、 同 一価 値 を も つも のと み
な さ れ る ﹂ と し て い る (L 一四〇1 二条 )
。 後 者 の立 証 責 任 に つ いて は、 ﹁使 用 者 は 、 ⋮ 報 酬 の 不 平 等 に 関 し完 全 な 立 証
を 行 わ な け れ ば な ら な い﹂ と し て、 き び し く 使 用 者 責 任 を 明 ら か に し て い る (L 一四〇1 八条)
。
第 六 に実 効 性 確 保 に つ い ては 、 す で に 述 べ た よ う に 、 か な り の重 罰 を 設 け て い る こ と が 、 フ ラ ン ス雇 用 平 等 法 の大
き な 特 徴 で あ る。 刑 罰 の内 容 は 、 ﹁二 ヶ 月 以 上 一年 以 下 の禁 銅 と 二〇 〇 〇 フ ラ ン以 上 二 万 フ ラ ン以 下 の 罰 金 ﹂ で 、 両
者 は 選 択 的 に あ る い は 併 合 し て科 せ ら れ る (L 一五 ニー 一条)
。 こ の場 合 、 裁 判 所 は 右 の刑 事 罰 と ひき か え に ﹁是 正 命
世 界 の男 女雇用 平 等法
53
(19 )
令 ﹂ (ぎU
§ o菖8 ) を だ す こ と が で き る と し て い る (L 一五 二ー 一: 一条 )。 刑 罰 よ り も 、 ま ず 差 別 実 態 の 是 正 を 考 慮 し た
も のであ ろう。
6 、 カ ナダ ー 人 権 法
カ ナ ダ も 世 界 の波 に の って 、 一九 六 〇 年 代 後 半 か ら 、 既 婚 女 性 を 含 む 婦 人 労 働 者 が 急 激 に増 大 し た 。 し か し、 こ の
国 に お い ても 諸 外 国 と 同 様 婦 人 労 働 者 の職 種 は限 定 さ れ、 職 場 に お け る 賃 金 も 男 性 と 比 べ著 し い格 差 が あ った 。
一九 六 〇 年 に な る と 、 ﹁カ ナダ 人 権 憲 章 ﹂ は 男 女 平 等 原 則 を 宣 言 し、 さ ら に 六 七 年 に は ﹁婦 人 の地 位 王 室 員 会 ﹂ が
設 置 さ れ た 。 そ の後 、 こ の委 員 会 は 、 一九 七 〇 年 に、 国 内 法 に み ら れ る 女 性 の差 別 的 な 規 定 や差 別 的 慣 行 に つ い て 報
告 し 、 そ の是 正 のた め の勧 告 を だ し た 。 こ のう ち 雇 用 分 野 に つ い て は 、 ω 同 一事 業 場 に 雇 用 さ れ 、 同 一ま た は 類 似 の
労 働 を お こな う 男 女 労 働 者 の賃 金 は 同 じ でな け れ ば な ら な い、 と す る、 男 女 同 一賃 金 原 則 、 ② 職 業 紹 介 に あ た って 、
性 お よ び 婚 姻 上 の地 位 に よ る差 別 の禁 止 、 ㈲ 公 務 の採 用 に あ た って、 性 お よ び 婚 姻 上 の地 位 に よ る 差 別 の禁 止 、 が 含
(20 )
ま れ て い る。 こ のう ち 、 男 女 同 一賃 金 原 則 に つ い て は 一九 七 一年 に 労 働 法 典 を 改 正 し 、 そ のな か で規 定 さ れ る こと に
な った 。 他 の② お よ び ③ に つ い て は 、 そ れ ぞ れ 一九 七 一年 の失 業 保 険 法 、 七 五 年 の 公務 雇 用 法 の な か で規 定 さ れ た 。
や が て 、 一九 七 入 年 三 月 に な る と 、雇 用 平 等 法 と し て ﹁カ ナダ 人 権 法 ﹂ (
6弩 鋤
集き 自ニヨき 空αq三 ︾oけ
)が 施 行 さ れ る
に 至 った ρ 同 法 の背 景 と し て考 え ら れ る のは 、 一九 六 四 年 の ア メ リ ヵ公 民 権 法 第 七編 、 一九 七 五 年 のイ ギ リ ス性 差 別
(21 )
禁 止 法 等 か ら の影 響 が あ ろ う 。 他 方 国 内 的 な 背 景 と し て は、 六 〇 年 代 後 半 か ら の婦 人 労 働 者 の増 大 、 六 七 年 に 設 置 さ
れ た 婦 人 の地 位 王室 委 員 会 に よ る 男 女 平 等 の促 進 、 カ ナ ダ の 人 種 構 成 、 連 邦 政 府 の人 権 尊 重 路 線 等 が 指 摘 さ れ よ う 。
と こ ろ で、 カ ナダ 人 権 法 は 、 第二 章 か ら 第 三章 ま で、 差 別 の禁 止 、 政 治 機 関 、 差 別 の是 正 措 置 等 に つ いて 規 定 し て
いる。
54
第 一に 差 別 の禁 止 に つい ては 、 ﹁人 種 、 国 籍 、 出 身 国 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 年 齢 、 性 、 婚 姻 上 の地 位 ﹂ 等 を 理 由 と す
る差 別 を禁 止 し て いる (
第 三条 )
。 し た が って、 同 法 は 性 のみ の差 別 を 禁 止 し た も の で な い こ と に お い て、 イ ギ リ ス の
性 差 別 禁 止 法 と異 な り 、 ア メ リ カ の公 民 権 法 第 七 編 と 同 じ で あ る。
第 二 に 雇 用 の分 野 に お い ては 、 ﹁
採 用 、 賃 金 、 昇 進 、 求 人 広 告 への差 別 的 な 特 定 や 制 限 ﹂ 等 に つ い て の ﹁
差 別的 慣
行 を 禁 止 し て い る 。 こ こ で注 目 さ れ る の は、 ﹁
求 人 広 告 への差 別 的 特 定 や 制 限 ﹂ に つ い て で あ り 、 こ れ は具 体 的 に は 、
求 人 の申 込 者 や 広 告 のな か で男 女 の 別 を 特 定 す る こ と を 禁 止 し た も の で あ る 。 こ れ と 同 趣 旨 のも の は、 一九 入 三 年 の
フ ラ ン ス の雇 用 平 等 法 (L 一一一
三1 一条 ) のな か に も み ら れ る。
第 三 に差 別 の主 体 は 、 使 用 者 、 使 用 者 組 織 お よ び 使 用 者 団 体 等 と さ れ て い る (
第 四六条)
。
第 四 に 差 別 の救 済 機 関 と し て ﹁カ ナ ダ 人 権 委 員 会 ﹂ (oき 銭 冨口 =ニヨき 切茜匿ω o。ヨ巳 ω
ω
ごコ) を 設 置 し て い る (
第二一
条⊥ 二〇条)
。 これ に よ る と 、 差 別 を う け た 者 は カ ナ ダ 人 権 委 員 会 に 苦 情 の申 立 を す る こ と が で き 、 委 員 は こ れ に 基 づ
き ﹁苦 情 処 理 ﹂ を し な け れ ば な ら な い (
第 二六条)。 他 方 、 委 員 会 は 、 差 別的 慣 行 が 行 わ れ て い る と思 料 す るに 十 分 な
理 由 が あ る と き は自 ら 苦 情 処 理 を 開 始 す る こ と が でき る (
第 三 二条)。
委 員 会 は 苦 情 申 立 が な さ れ た 場 合 に は 、そ の苦 情 を 調 査 す る た め に ﹁
調 査 官 ﹂ を 任 命 す る こ とが で き る (
第 三五条 )。
ま た 委 員 会 は、 苦 情 申 立 に つき 、 和 解 を 成 立 さ せ る た め に 調 査 官 を任 命 す る こと が で き る (
第 三七条)。
さ ら に 委 員 会 は 、 苦 情 申 立 を 審 理 さ せ る た め に 、何 時 に ても ﹁人 権 審 判 所 ﹂ (
}
幽
⊆巳飴口 図一
〇qげけ]
り
R
一
げ仁口四
一
)を設置 す る こ
と が でき る (
第 三九条)。 人 権 審 判 所 は 、苦 情 を 調 査 し 、証 拠 に基 づ い て当 事 者 の ヒ ア リ ング を 行 な い、 命 令 を 発 す る 。
第 五 に 差 別 の救 済 措 置 に つい て は、 右 の 人 権 審 判 所 が 差 別 的 慣 行 に つき 認 定 し た 場 合 、 ㈲ 差 別 の停 止 命 令 、 ㈲ 原 職
復 帰 、 ㈹ バ ック ・ペ イ 等 の命 令 を 発 令 す る こ と に な って い る (
第 四 一条)
。 な お 、 申 立 者 等 が こ の命 令 に 不 服 が あ る場
合 に は、 ﹁
控 訴 審 判 所 ﹂(
菊。
<δ≦ ↓き 茸 & に 上 訴 す る道 が 開 か れ て い る (
第 四 二条 )
。
世界 の男女 雇用平 等法
55
第 六 に 、 同 法 の実 効 性 の確 保 に つ い て、 つぎ の 二 つ の こと が 規 定 さ れ て い る 。 ω 強 制 執 行 命 令 が 認 め ら れ て い る こ
と で あ る (第 四 三条 )
。 す な わ ち 、 人 権 審 判 所 お よ び 控 訴 審 判 所 の命 令 は 、 人 権 委 員 会 が 真 正 な る こ と の証 明 を 付 し 、
命 令 の写 を 上 級 裁 判 所 の登 記 所 に 提 出 す る こ と に よ り 、 そ れ を 上 級 裁 判 所 (
司①α同
餌一凸OO口円
叶
) の命 令 と す る こと が で き 、
上 級 裁 判 所 と 同 じ 方 法 で 強 制 執 行 す る こ とが で き る よ う に な って い る。 こ れ に よ り 、 人 権 審 判 所 あ る い は 控 訴 審 判 所
の命 令 を き わ め て 強 力 な も の に し て お り 、 同 法 の実 効 性 確 保 の上 か ら も 有 益 な も の と な って いる 。 ② 他 は、 刑 事 罰
(罰金 )の規 定 が あ る。 こ の規 定 に よ る と 、ω 苦 情 申 立 に つ いて 委 員 会 の和 解 条 項 に 違 反 し た 場 合 、 ㈲ 人 権 審 判 所 の機
能 を 妨 害 し た 場 合 、 回 使 用 者 が 男 女 賃 金 差 別 を 是 正 す る た め に 賃 金 を 減 額 し た と き 、 困 苦 情 申 立 に つ い て の調 査 官 の
(第 四 六 条 )。
調 査 を 妨 害 し た と き 、 囚 苦 情 申 立 者 等 に 対 し て脅 迫 ま た は 差 別 を 行 な った と き 、 等 に つ い て 罰 金 を 科 す るも の と し て
(22 )
いる
五、 世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 の立 法 的 課 題
これ ま で、 世 界 の 主 要 な 先 進 国 の男 女 雇 用 平 等 法 に つ い て検 討 し て き た。 こ こ で は 、 さ ら に全 体 的 な 視 野 に 立 っ
て 、 そ の立 法 的 な 課 題 を 明 ら か に し て み よ う 。
(23 )
こ こ で検 討 し よ う と し て い る問 題 は 、 1差 別 行 為 、 2差 別 の主 体 、 3 救 済 機 関 、 4救 済 措 置 、 5実 効 性 の確 保 、 等
に つ い て で あ る 。 いず れ も 、 雇 用 平 等 法 の主 要 な 柱 で あ る 。
1、 差 別 行 為
世 界 の雇 用 平 等 法 は 、 一般 に 、 ま ず 雇 用 分 野 に お い て禁 止 さ れ る差 別 行 為 を 具 体 的 に列 挙 す る こと に よ って、 い わ
ゆ る差 別 の概 念 を 明 ら か に し て い る。 こ の場 合 、 差 別 行 為 と関 連 し て 問 題 に な る のは 、 ω 禁 止 さ れ る差 別 の具 体 的 内
56
容 、 ② 差 別 的 慣 行 、 ㈹ い わ ゆ る間 接 差 別 、 四 差 別 の例 外 規 定 等 で あ る。
ま ず 、 禁 止 さ れ る差 別 行 為 の具 体 的 内 容 に つ い て は、 各 国 と も 募 集 、 採 用 、 賃 金 、 職 務 内 容 、 配 置 、 研 修 、 職 業 紹
介 と 訓 練 、 解 雇 、 退 職 等 を あげ て い る こ と で共 通 し て い る。 し か し、 こ のな か に、 ﹁
雇 用 形態 ﹂ が含 ま れ る のかに つ
い て は 、 各 国 と も 必 ず し も 明 ら か で は な い。 これ に 対 し て 、 イ タ リ ア の男 女 同 一待 遇 法 だ け は、 コ雇用 形 態 に か か わ
らず ﹂ とし て、 明 文規 定 を お いて いる (
第 一条 )
。 す で に 述 べ た よ う に 、 こ の雇 用 形 態 に 対 す る差 別 の禁 止 は 、 き わ め
て重 要 で あ る。 す な わ ち 、 一般 に 各 国 とも パ ー ト ・タ イ マー が 増 加 し て お り、 し かも こ の雇 用 形 態 に は 女 子 労 働 者 が
ほ と ん ど 集 中 し て い る 。 こ れ は 、 経 営 者 側 に、 女 子 を パ ー ト ・タ イ マー と し て戦 力 化 し て い る か ら に ほ か な ら な い。
こ の よ う に 、 女 子 労 働 者 を 男 子 労 働 者 と 異 な った雇 用 形 態 に 集 中 さ せ て いく 労 務 対 策 は、 や は り性 差 別 と し て禁 止 し
て いく べ き であ る。
つぎ に 、 ﹁差 別 的 慣 行 ﹂ に つい て は、 イ ギ リ ス の性 差 別 禁 止 法 が 、 違 法 な 差 別 行 為 と は 別 に 、 ﹁そ の他 の違 法 行 為 ﹂
と し て明 文 規 定 を お い て い る (
第 三七条)
。 そ こ で、 差 別 行 為 の ほ か に 、 さ ら に 差 別 的 慣 行 を あ げ る 必 要 が あ る か が 問
題 と な ろ う 。 一般 に 、 前 者 の差 別 行 為 は使 用 者 等 に よ って 直 接 的 意 識 的 に 行 わ れ る行 為 で あ る。 こ れ に 対 し て差 別 的
慣 行 の場 合 は 、 通 常 伝 統 的 無 意 識 的 で あ る場 合 が ほ と ん ど で あ る。 し た が って、 あ る行 為 が 差 別 と し て評 価 さ れ る場
合 、 使 用 者 等 は そ れ に 対 し て伝 統 的 無 意 識 的 で あ る こと を 理 由 に、 差 別 を 否 定 す る こ とが 考 え ら れ る。 し た が って・
こ の こと を 考 慮 す る と、 や は り差 別 的 慣 行 も 違 法 な 差 別 行 為 に な る こと を 明 文 化 し て お く 必 要 が あ ろ う 。 こ の こ と
は 、 使 用 者 等 に 積 極 的 に差 別 的 慣 行 を 排 除 さ せ る こ と に も な る。
つぎ に 、 い わ ゆ る間 接 差 別 で あ る が 、 イ ギ リ ス の性 差 別 禁 止 法 は これ に つ い て の明 文 規 定 を お い て い る (
第 一条 )
。
し た が って 、 こ こ でも 間 接 差 別 の是 非 の問 題 が 論 議 さ れ る こ と に な ろ う 。 私 見 に よ る と、 間 接 差 別 必 要 論 に 組 み し た
い。 確 か に、 結 果 的 に 差 別 さ れ て い る と いう 客 観 的 事 実 が あ る 以 上 、 使 用 者 の差 別 意 思 い か ん を 澗 わ ず 、 そ れ を も つ
世 界 の男女雇用 平等 法
57
て差 別 が あ った も の と評 価 し え る。 し た が って、 直 接 、 間 接 と いう 差 別 行 為 の区 別 は 必 要 な いと す る見 解 も 傾 聴 に 価
す る。 し か し、 直 接 差 別 の ほ か に、 間 接 差 別 の規 定 が な さ れ る こと に よ り 、 使 用 者 等 を し て積 極 的 に 差 別 排 除 に向 か
わ せ る こ と に な る。 性 差 別 は ﹁
人 間 の尊 厳 ﹂ の視 点 か ら 、 き び し く 排 除 せ ら れ る べ き で あ る。
つぎ に、 差 別 の例 外 規 定 に つ い て は 、 ま ず暫 定 的 優 遇 措 置 に つい て は 問 題 は な い。 ア メ リ カ の雇 用 機 会 平 等 法 に お
ける ﹁
合 理 的 に 必 要 と さ れ る適 正 な 職 業 上 の資 格 ﹂ (9冨 墨 ま 。。8后 豊 。き 一ρ9巴巳8 け
δ口 H
$ω
。霧 び一
団) (
第 二〇〇 el 二
条) と いう よ う な 規 定 が も っとも 問 題 と な ろ う 。 実 際 問 題 と し て、 ﹁
合 理 的 ﹂ で あ る か 否 か に つ い て の認 定 は き わ め
て 困 難 で あ る 。 し た が って 、 論 議 の原 因 に も な って いく 。 私 見 に よ る と、 差 別 の例 外 に つ い て は、 き び し い態 度 で、
必 要 最 小 限 度 のも のだ け を 予 め 明 文 化 し て お く 必 要 が あ る。 そ れ 以 外 の例 外 の認 定 に つい て は 、 労 働 組 合 の意 思 を 反
映 さ せ る こ と が 必 要 で あ ろ う 。 こ れ に つ い て、 イ タ リ ア の男 女 同 一待 遇 法 は 、 ﹁労 働 協 約 に よ って と く に重 要 で あ る
と 確 認 さ れ た 職 務 に つ い て の み ﹂ 例 外 と す る と規 定 し て い る (
第 一条)
。
2 、 差 別 の主 体
差 別 の 主 体 は 、 一般 に 使 用 者 で あ り、 これ に つ い て は 問 題 は な い。
こ の ほ か 、 雇 用 関 係 の当 事 者 以 外 の第 三者 を 差 別 の主 体 と し て あ げ る かが 問 題 と な る。 こ れ に つ い て、 世 界 各 国 の
雇 用 平 等 法 は 、 職 業 紹 介 所 、 職 業 訓 練 所 、 そ の他 の 公 共 団 体 を あ げ るも のが お お い。 そ の他 の公 共 団 体 と し て は 、 ア
メ リ カ で は ﹁合 同 労 使 委 員 会 ﹂、 イ ギ リ ス で は、 ﹁
職 業 安 定 委 員会 ﹂ な どを規 定 し て いる。
差 別 の主 体 と し て、 ﹁
労 働 組 合 ﹂ を あげ て い る と こ ろが 比 較 的 お お い。 ア メ リ カ、 イ ギ リ ス、 イ タ リ ア の雇 用 平 等
法 は、 こ れ に つ い て の明 文 規 定 を お いて い る。 イ タ リ ア の場 合 、 労 働 関 係 の規 制 の ほ と ん ど は 、 労 働 協 約 に よ って 行
わ れ て い る の で、 労 働 組 合 を 差 別 の主 体 と し て あげ て い る の は 理 解 さ れ る。 し か し 、 ア メ リ ヵ や イ ギ リ スは、 な ぜ 労
58
働 組 合 を 差 別 主 体 と あ げ て い る の か 、 そ の背 景 に つ いて 必 ず し も 明 ら か で は な い。
労 働 組 合 が 差 別 行 為 を す る の は 、 いか な る 場 合 か に つ い て は 具 体 的 に 検 討 さ れ な け れ ば な ら な い。 し か し 、労働組
合 を 差 別 主 体 と し て規 定 す る こと に よ り 、 労 働 組 合 の内 部 干 渉 に な る こ と は極 力 さ け な け れ ば な ら な い。
3、救 済機 関
差 別 を う け た 者 が 、 い か な る救 済 機 関 に 不 服 を 申 立 て る こと が で き る か は 、 差 別 撤 廃 と関 連 し てき わ め て重 要 な こ
と で あ る 。 これ に つ い て、 世 界 の雇 用 平 等 法 は 大 き く 二 つに わ か れ て い る。 一つは ア メ リ ヵ や イ ギ リ ス の よ う に 特 別
の行 政 委 員 会 (EEC、 EOC)を 設 け て い る と こ ろ で あ る。 ほ か は 、 裁 判 所 を こ れ に あ て る と こ ろ で、 イ タ リ ァ、 西
ド イ ツ、 フ ラ ン スが そ う で あ る。
一般 に いえ る こ と は 、 差 別 の救 済 に つ い て は 、 迅 速 か つ適 正 な 措 置 が 必 要 で あ る。 そ の意 味 で は、 お 金 と 時 日 が か
か る 裁 判 所 は こ れ に な じ ま な い。 や は り 、 特 別 の行 政 委 員 会 を 設 置 し て、 迅 速 か つ適 正 な 措 置 を し て いく こと が 得 策
で あ る。
し か し、 せ っか く 行 政 委 員会 を 設 置 し ても 日本 の労 働 委 員 会 の よ う に 司 法 化 し 、 問 題 解 決 に か な り の時 日 を 必 要 と
さ れ る よ う に な る こと だ け はさ け な け れ ば な ら な い。
つぎ に 、 差 別 の救 済 機 関 と し て 、 行 政 委 員 会 を 設 け た 場 合 、 そ こに い か な る権 限 を も た せ る かが 問 題 とな る。 こ れ
に つ い て、 ア メ リ カ の E E O C (
雇 用機会 平等 委員会) の よ う に 、 行 政 的 救 済 と し て の差 別 停 止 通 告 権 を 発 す る権 限 を
有 し な い の は 、 き わ め て問 題 が あ る。 差 別 行 為 に 対 し て、 迅 速 か つ適 正 な 措 置 を 行 う た め に は、 あ る程 度 こ の行 政 委
員 会 の権 限 を 強 化 し な け れ ばな ら な い。 も し、 こ の行 政 委 員 会 に 差 別 停 止 通 告 権 が な いと す る な ら 、 差 別 を う け た 者
が 同 委 員 会 に申 立 て る意 味 が な く な る。 こ の点 、 イ ギ リ ス の E O C (
機 会均等 委員会) は 、 こ の よ う な 権 限 が 認 め ら れ
世界 の男女 雇用平 等法
59
て お り、 高 く 評 価 し え る の で あ る。
企 業 内 に 、 第 一次 救 済 機 関 を 設 置 す る こ と に つ いて は、 世 界 の雇 用 平 等 法 は あ ま り積 極 的 で は な い。 た だ 、 フ ラ ン
ス の み企 業 内 に 設 置 さ れ た ﹁企 業 内 委 員 会 ﹂ や ﹁労 働 組 合 ﹂ に差 別 是 正 のた め の監 視 そ の他 差 別 是 正 の促 進 の た め の
役 割 を負 わ せ て い る 。 し か し、 企 業 内 に、 差 別 に つ い て の第 一次 救 済 機 関 を 設 置 す る こ と に は 慎 重 を 要 す る 。 な ぜ な
ら 、 そ れ に よ って差 別 問 題 が 企 業 内 に 封 じ 込 め ら れ る危 険 が あ る か ら で あ る。
つぎ に 、 差 別 の救 済 機 関 と し て、 ﹁
男 女 雇 用 平 等 監 督 官 ﹂ と いう よ う な 、 労 働 基 準 監 督 官 に 類 似 す る機 関 を 特 別 に
設 け る こ と に は、 世 界 の雇 用 平 等 法 は これ を 採 用 し て いな い。 た だ 、 フ ラ ン スで は、 従 来 か ら の労 働 基 準 監 督 官 の活
用 が 考 え ら れ て い る にす ぎ な い (L六 ニ ー 一条 二項 )
。 し か し 、企 業 内 の差 別 実 態 を 細 く点 検 し 、 調 査 し 、 摘 発 し て い
く た め に は、 こ の よ う な 救 済 機 関 は き わ め て有 効 で あ る。
な お、 差 別 の司 法 的 救 済 と 関 連 し て い え る こ と は 、 訴 訟 費 の立 替 制 度 が 必 要 と さ れ る こ と で あ る。
4、 救 済 措 置
差 別 行 為 に 対 す る救 済 措 置 と し て、 世 界 の雇 用 平 等 法 は、 差 別 の停 止 通 告 、 差 止 命 令 (イ ンジ ャ ンク シ ョン)
、 原職
復 帰 、 バ ック ペ イ 、 弁 護 士 費 用 の立 替 、 ポ スト ・ノ ー チ ス、 損 害 賠 償 の請 求 な ど を 規 定 し て い る。
差 別 の停 止 通 告 に つ い て は 、 す で に 述 べた よ う に 、 イ ギ リ ス の E O C は自 ら 直 接 これ を 発 す る権 限 を も って い る。
そ し て、 こ の命 令 に も か か わ ら ず 、 いぜ ん と し て差 別 行 為 を 続 け る者 に 対 し て は、 E O Cが 裁 判 所 に イ ンジ ャ ンク シ
ョ ン を 申 立 て る こと が で き る よ う に な って い る (
第七 一条 )
。 こ のよう に、 行政 委員 会 を 設置 し て いると ころで は、実
際 に は 第 一次 救 済 機 関 と し て 行 政 委 員 会 、 第 二次 救 済 機 関 と し て 裁 判 所 と いう のが 普 通 で あ る 。 こ の場 合 、 問 題 に な
る の は 、 行 政 委 員 会 か ら 裁 判 所 の判 決 命 令 が で る ま で の過 程 で あ る 。 そ の過 程 で は差 別 の申 立 者 は い ぜ ん と し て 差 別
60
を う け て い る わ け で あ る。 し た が って 、 裁 判 所 の確 定 判 決 が で る ま で、 一時 的 に差 別 を差 し止 め身 分 の保 全 措 置 を 図
る こ と が 必 要 と な ろ う 。 これ に つい て は、 す で に 述 べ た ア メ リ カ の ﹁暫 定 的 差 止 命 令 ﹂ の惜 置 が 注 目 さ れ る 。
つぎ に 、 ア メ リ カ の よ う に 、 行 政 委 員 会 が 差 別 停 止 通告 権 を も た ず 、 最 後 に 裁 判 所 を と お し て発 令 さ せ る と ころ で
は 、 迅 速 な 救 済 措 置 が 期 待 で き な い の で は な い か と いう 疑 問 が の こ る。 や は り、 第 一次 救 済 機 関 で あ る行 政 委 員 会 に
あ る程 度 の権 限 を も た せ 、 迅 速 か つ適 正 な 救 済 措 置 を 考 え る べ き であ ろ う 。
つぎ に救 済 措 置 と 関 連 し て 問 題 に な る のは 、 い わ ゆ る採 用 差 別 に つ い て で あ る 。 これ に つ い て は、 世 界 の雇 用 平 等
法 は か な ら ず し も 十 分 で あ る と は いえ な い。 そ れ に も か か わ ら ず 、 実 際 上 採 用 差 別 が な さ れ る揚 合 が お お い と い え よ
柄つ Q
西 ド イ ッ で は 、 採 用 差 別 の救 済 措 置 と し て 、 いわ ゆ る ﹁
信 頼 利 益 の賠 償 ﹂ 制 度 が 設 け ら れ て い る (
第 六 = 条 の al
二項 )
。 し か し、 こ の制 度 は、 結 局 の と ころ 使 用 者 の採 用 差 別 に対 し て、 損 害 賠 償 の請 求 を す るも の で 、そ れ に よ って
採 用 さ れ る と い う 実 質 的 な 是 正 措 置 が 行 わ れ る も の では な い。
右 の採 用 差 別 と関 連 し て、 イ タ リ ア で は、 就 職 に 関 す る 差 別 行 為 に つ い て、 特 別 の緊 急 手 紙 に よ って 裁 判 所 が ﹁
即
時 執 行 命 令 ﹂ を 発 令 す る こと が でき る よ う に な って いる (
第 一五条 )
。 し か し、 こ の な か に 採 用 命 令 が 含 ま れ る の か 否
か に つ い て は 、 明 ら か で は な い。
採 用 は 、 労 働 契 約 締 結 以 前 の使 用 者 の事 実 行 為 で あ る 。 これ に つ い て は 、 か り に 雇 用 平 等 法 で採 用 差 別 を 禁 止 し た
と し ても 、 そ れ に よ り 強 制 的 に 採 用 命 令 を 発 し う る か に つ い て は、 き わ め て疑 問 の お お い と ころ であ る。
最 後 に 、 救 済 措 置 と 関 連 し て、 西 ド イ ッが 使 用 者 に 差 別 に つい て の 立 証 責 任 を転 換 さ せ て い る こ と は (
第 六 一一の
aー 一項 )
、 高 く 評 価 し て よ い。
世 界 の男 女雇用 平 等法
6i
5 " 実 効 性 の確 保
雇 用 平 等 法 の実 効 性 の確 保 を め ぐ って、 世 界 各 国 は 大 別 し て 二 つの方 法 を 設 け て い る。 罰 則 規 定 と 裁 判 所 の是 正 命
令 であ る 。
罰 則 規 定 を 設 け て い る の は 、 イ タ リ ア、 フ ラ ン ス、 ヵ ナ ダ な ど で あ る。 こ のう ち 、 イ タ リ ア 、 カ ナ ダ に お い て は 、
罰 則 の内 容 と し て ﹁罰 金 ﹂ の み と し て い る。 た だ し、 イ タ リ ア に お い て は、 裁 判 所 に 即 時 執 行 命 令 権 が 認 め ら れ 、 こ
れ に 違 反 す る者 に 対 し て は 、 禁 鋼 刑 が 予定 さ れ て い る。
これ に 対 し て 、 フ ラ ン ス で は、 す で に述 べ た よ う に 、 罰 則 の内 容 と し て禁 鋼 刑 と罰 金 の併 科 と い う き び し いも の と
な って い る。 な お、 フ ラ ン ス で は 、 裁 判 所 が こ の刑 罰 と ひき か え に 是 正 命 令 を だ す こと も でき る 。
雇 用 平 等 法 の実 効 性 の確 保 に つ い て は、 フ ラ ン スが い ち ば ん 期 待 で き そ う で あ る。 し か し、 こ こ でも 問 題 が な い わ
け で は な い。 す な わ ち 、 裁 判 所 が 刑 罰 と ひき か え に 是 正 命 令 を だ す こと が で き る と いう シ ス テ ム は、 果 し て立 法 論 的
に 許 さ れ る の か 否 か と いう 問 題 が あ ろ う 。 立 法 論 的 に は 、 いや し く も 違 反者 が 刑 罰 に 該 当 し た と き は 、 これ を 執 行 す
べ き で あ る。 刑 罰 の執 行 は 、 性 格 的 に は 是 正 命 令 と 別 個 な も のと 考 え て い く べ き で は な い か。
裁 判 所 の是 正 命 令 に よ る 実 効 性 の確 保 に つい て は、 西 ド イ ッが これ を 採 用 し て い る。 ア メ リ カ も 基 本 的 に は 、 こ の
方 法 に 立 って い る。 し か し 、 いず れ も 裁 判 所 の是 正 命 令 に違 反 し た 者 に 対 す る対 抗 措 置 に つ い て は 明 ら か でな い。 雇
用 平 等 法 の実 効 性 の確 保 と し て、 裁 判 所 に よ る、 た と え ば イ ンジ ャ ンク シ ョ ンな ど の是 正 命 令 も け っし て 否 定 さ れ る
べ き で は な い。 し か し 、 さ ら に そ の是 正 命 令 に 違 反 し た者 に 対 す る対 抗 措 置 に つ い て具 体 的 に 規 定 し て お く 必 要 が あ
(24 )
ろ う 。 こ れ に つ い て は 、 カ ナダ の い わ ゆ る 裁 判 所 の ﹁
強 制 執 行 命 令 ﹂ (カナダ 人権法第 四 三条 )を 拡 大 適 用 す る こと も 考
え て よ い。
62
註
(1) ﹁婦 人 に 対 す る あ ら ゆ る形 態 の差 別 の撤 廃 に 関 す る 条 約 ﹂。 こ の条 約 は、 一九 六 七 年 の国 連 総 会 に お い て ﹁婦 人 に対 す る差
別 撤 廃 宣 言 ﹂ と し て採 択 さ れ た も の で、 そ の後 十 二年 を 経 た 一九 七 九 年 の第 三 四回 国連 総 会 に お い て提 出 さ れ、 日本 を 含 む
= 二〇 ケ国 が賛 成 、 反 対 ○ 、 棄 権 十 一ケ 国 の庄 倒 的 多 数 を も って採 択 さ れ た 。 さ ら に 、 こ の条 約 は 、 一九 八 〇年 七 月 のデ ン
マー ク の コペ ン ハーゲ ンで開 催 さ れ た ﹁一九 入○ 年 国 連 婦 人 の十 年 世 界 会 議 ﹂ に お い て署 名 式 が 行 わ れ 、 日本 政 府 首 席 代 表
高 橋 展 子 デ ン マー ク大 使 が これ に 署 名 し た 。
(2 ) ﹁ベ ル ン会 議 ﹂ は 、 一九 〇 〇 年 ヨー ロ ッパ 十 四産 業 国 の専 門 家 お よ び 政 治 家 に よ って設 立 さ れ た 国 際 労 働 立 法 協 会 に よ っ
て開 催 さ れ た 。
(3 ) 婦 人 差 別 撤 廃 条 約 に つ い て は 、﹃ジ ュリ スト﹄ 第 七 二五 号 お よ び 大 脇 雅 子 ﹁婦 人 差 別 撤 廃 条 約 の意 義 ﹂ 季 刊 労 働 法 第 一 一
入 号 、 十 七 頁 以 下参 照 。
(4) 沼 田稲 次 郎 コ雇用 に お け る男 女 平 等 の原 理 ﹂ 季 刊 労 働 法 = 八 号 、 七 頁 。
(一〇①ら) 同 法 に つ い て は 、 H①σq凶
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(5) q鼻 巴 ω§ Φω ∪。冨 同け
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(6 ) ↓三 〇 <昌 oh 芸 o Ω <一
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● ど O巳 措 血 ω鐙 8 ω 国ρ⊆巴 国ヨ 且畠 ヨ ①馨 O℃bo辞 § 凶
蔓 Ooヨ ヨ 一
ω。。一
〇口 を 参 照 。
(7 ) 浅 倉 む つ子 ﹁婦 人 労 働 を め ぐ る 社 会 通 念 の 変 化 ア メ リ カ ﹂ (旬 報 九 五 〇 号 、 二 七 頁 註 ㈲ ) に よ る と 、 ﹁↓θ二〇 <昌 に 性 差 別
禁 止 規 制 を 導 入 し た の は 本 法 案 全 体 を 無 効 に す る た め の 、 ヴ ァー ジ ニ ア州 議 員 ハ ワ ー ド ・ ス ミ ス の策 略 で あ った 。 第 八 八 議
会 に 雇 用 差 別 を 禁 止 す る 包 括 的 な 公 民 権 立 法 が 提 案 さ れ た 時 、 人 種 差 別 撤 廃 に 反 対 す る 南 部 議 員 と 若 干 の北 部 議 員 が 、 故 意
に 、 法 案 全 体 が 否 決 さ れ る こ と を ね ら って 性 差 別 禁 止 規 定 を 導 入 す る 修 正 案 を 提 出 し た の で あ る 。 し か し 、 彼 ら の策 略 に も
か か わ ら ず 、 本 法 案 は 一六 八 対 = 三 二で成 立 し て し ま った こ と は 皮 肉 と し か 言 い よ う が な い 。﹂ と 興 味 あ る 指 摘 が な さ れ て
アメ リ カ雇 用 ⋮
機 会 平 等 法 に つ い て は 、 日Φαq邑 鋤菖︿⑦ 国 δ8 曙 oh 昏 Φ 国ρロ巴 国ヨ 豆o団ヨ o暮 O℃娼○詳二三 蔓 >9 0鴎ドO鵡 ●<oド
いる。
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q8 5 (HΦ認 ) 参 照 。
(9 ) ∪磐 置 即 ↓ぎ ヨ 魯 ざ 冨 げ。村 い署
(10 ) 白 ・
切。ρ 。お 鐸 8 '乏 9 匹 ロαq 乏 oヨ 窪
﹁イ タ リ ア女 子 労 働 者 の 保 護 と 平
(11 ) 佐 藤 共 子 ﹁イ ギ リ スー 婦 人 の 政 治 的 、 経 済 的 、 社 会 的 状 況 ﹂、 ﹃現 代 の女 性 ー 状 況 と 展 望 ﹄ ジ ュリ ス ト 特 集 、 第 二 九 号 、 五
七頁 。
(12 ) 脇 田 滋 ﹁イ タ リ ア男 女 同 一待 遇 法 の 展 開 ﹂ 旬 報 第 一〇 七 七 号 、 三 一頁 以 下 、 伊 能 悟 郎
世 界 の男女雇用 平 等法
63
等 ﹂ 旬 報 第 九 五 〇 号 、 三 一頁 。
﹁前 掲 論 文 ﹂ 旬 報 第 一〇 七 七 号 、 四 二 頁 以 下 。
イ タ リ ア ﹁労 働 に 関 す る 男 女 同 一待 遇 法 ﹂ (資 料 ) に つ い て は 、 旬 報 一〇 七 七 号 、 四 五 頁 参 照 。
(13 ) 脇 田
(14 )
W ・ギ ッタ ー ・西 谷 敏 訳 ﹁西 ド イ ツに お け る 婦 人 労 働 者 の 法 的 地 位 ﹂ ジ ュリ ス ト 第 七 四 四 号 、 九 入 頁 以 下 。
竃 暮 8 N (言 9 什鶏 ω。ぎ 言 αq。ω。言 ) <。日 N♪ 冒 妻 母 日㊤窃N・
(15 )
(16 ) ︾菩 9 仲
ωN①一
8 乙 昌自ロα
q <o日 ℃お 諺や匹 6 ωρ
(17 ) ΩΦω。冒 § ヨ ω。ピ 言 ① 9 ω ①毫 Φ旨 ω莚 ユぴ
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﹁フ
﹁八 三 年 男 女 平 等 法 フ ラ ン ス﹂ (いず れ も 旬 報 第 一〇 七 入 号 、 二 四 頁 以 下 )
フ ラ ン ス の ﹁男 女 の 職 業 上 の 平 等 に 関 し て労 働 法 典 お よ び 刑 法 典 を 修 正 す る 法 律 ﹂ に つ い て は 、 田 端 博 邦 .茶 置 隆 雄
(18 ) 西 ド イ ッ の ﹁男 女 均 等 待 遇 法 ﹂ (資 料 ) に つ い て は 、 旬 報 第 一〇 七 七 号 、 五 七 頁 参 照 。
(19 )
ラ ン ス の男 女 雇 用 平 等 法 ﹂ 資 料 と し て茶 置 隆 雄
参 照 。 本 稿 の 執 筆 に あ た っ て 、 右 の 論 文 ・集 料 に 負 う と こ ろ が 大 で あ った 。
カ ナ ダ の 人 種 構 成 は 多 様 的 で 、 カ ナ ダ の総 人 口 の半 数 近 く は 英 国 系 住 民 で あ り 、 四 分 の 一強 が フ ラ ン ス 系 住 民 、 五 分 の 一
(20 ) 黒 川 俊 雄 他 ﹃男 女 平 等 と 母 性 保 保 護 ﹄ 講 座 ・現 代 の 婦 人 労 働 2 、 九 六 頁 。
(21 )
が ド イ ツ 、 ポ ー ラ ンド 、 ウ ク ラ イ ナ 、 ス カ ン ジ ナ ヴ ィ ア、 イ タ リ ァ等 か ら や って き た 人 た ち で 、さ ら に こ の 他 中 国 系 、日 系 、
西 印 度 諸 島 系 、 東 印 度 諸 島 の 住 民 た ち で 占 め ら れ て い る と い わ れ て い る 。 抜 山 映 子 ﹁カ ナ ダ 人 権 法 と 性 差 別 の禁 止 ﹂ ジ ュリ
カ ナ ダ 人 権 法 の 解 説 に つ い て は 、 抜 山 映 子 ﹁前 掲 論 文 ﹂ ジ ュリ ス ト 、 第 六 八 八 号 、 一〇 四 頁 以 を 参 照 。
ス ト 、 第 六 八 八 号 、 一〇 四 頁 以 下 。
(22 )
﹁男 女 平 等 と 女 子 保 護 立 法 ﹂ ω ② 偶 完 ﹃創 価 法 学 ﹄ 第
(23 ) 雇 用 平 等 法 の立 法 的 課 題 に つ き 、 他 の 重 要 な 問 題 は 、 い わ ゆ る ﹁女 子 保 護 立 法 ﹂ と の関 連 で あ る 。 こ れ に つ い て は 、 下 記
の別 稿 に お い てす で に検 討 し てあ る ので、 考 察 の対 象 外 と し た 。 拙 稿
十 巻 第 二 、 三 号 、 第 十 巻 第 四 号 、 第 十 一巻 第 一号 。
(24 ) 世 界 先 進 国 (イ ギ リ ス 、 西 ド イ ツ 、 フ ラ ン ス、 イ タ リ ァ ) の 雇 用 平 等 法 を め ぐ る 比 較 検 討 に つ い て は 、 ﹁先 進 国 に お け る
男 女 雇 用 平 等 法 の 展 開 と わ が 国 の 立 法 的 課 題 ﹂ (上 、 下 、 旬 報 一〇 七 七 ・ 一〇 七 八 ) で 、 き わ て 有 益 な 座 談 会 が な さ れ て い
る 。 本 稿 に お い て 、 大 い に 参 考 に さ せ て い た だ い た こと を お 断 り し て お く 。
64
お
わ
り
に
世 界 の男 女 雇 用 平 等 法 に は、 三 つの パ タ ー ンが あ る 。 第 一は 、 性 差 別 の ほ か に 人権
皮 膚 の色 、 宗 教 、 国 籍 を加 え
て雇 用 に お け る差 別 を 禁 止 す る ア メ リ ヵ お よ び カ ナ ダ 型 、 第 二に 、 性 差 別 の禁 止 に限 定 し な が ら 、 そ れ を 雇 用 の み な
ら ず あ ら ゆ る全 体 社 会 に 適 用 さ せ る イ ギ リ ス型 、 さ ら に 第 三 に 、 雇 用 に お け る性 差 別 の み を 禁 止 し て い る 西 ド イ ッ お
よ び イ タ リ ァ型 、 で あ る 。 こ れ ら のパ タ ー ンは、 いず れ も 各 国 の国 内 事 情 を 反 映 し た も の で あ る。
し か し 、 理 想 的 な 雇 用 平 等 法 と な る と、 包 括 的 立 法 と し て 制 定 し て い る イ ギ リ ス型 を 推 し た い。 そ れ は 性 差 別 の撤
廃 を 雇 用 分 野 に か ぎ ら ず 、 そ れ 以 外 の あ ら ゆ る分 野 に こ れ を 求 め て いる か ら に ほ かな ら な い。 性 差 別 の由 来 は 、 雇 用
分 野 に 限 ら れ るも の で は な い。 雇 用 分 野 に お け る 性 差 別 は、 む し ろ そ れ 以 外 の政 治 、 経 済 、 社 会 のな か で行 わ れ て い
る差 別 の必 然 的 な 反 映 と みな け れ ば な ら な い。 し た が って、 真 に雇 用 に お け る 性 差 別 を 撤 廃 し よ う と す る な ら 、 そ れ
と 平 行 し て他 のあ ら ゆ る 分 野 の性 差 別 を も 撤 廃 し て い か な け れ ば な ら な い。 こ の よ う に 、 性 差 別 の撤 廃 の対 象 は、 あ
ら ゆ る領 域 に わ た って い る の で あ る。 し た が って、 雇 用 に お け る 性 差 別 の撤 廃 立 法 で あ る雇 用 平 等 法 は、 イ ギ リ ス の
よ う に 包 括 的 な 立 法 で あ る こ と を 必 要 と さ れ る で あ ろう 。
つぎ に 、 雇 用 平 等 法 の内 容 が 、 いか に優 れ て いて も 、 十 分 に そ の実 効 性 が 確 保 さ れ て い る け れ な け れ ば 無 意 味 な 立
法 と な る。 これ に つ い て は、 イ ギ リ ス の雇 用 平 等 法 は行 政 委 員 会 と し て の E O C を 特 別 に 設 置 し 、 自 ら差 別 停 止 通 告
を 発 し う る強 力 な 権 限 を 与 え て い る。 これ は 、 徹 底 的 に 差 別 実 態 を 是 正 す る態 度 を 示 し た も の と し て有 益 であ る。
し か し 、 こ のよ う な 行 政 命 令 に 違 反 す る 者 に 対 す る対 抗 措 置 に つ い て、 これ を いか に と り 扱 う か、 い い か え れ ば 実
効 性 の確 保 の問 題 は 、 雇 用 平 等 法 の ﹁死 活 ﹂ 問 題 と し てき わ め て重 要 で あ る。 これ に つ い て、 フ ラ ン ス の雇 用 平 等 法
は、 禁 鋼 と 罰 金 を 併 科 す る 重 罰 を 規 定 し て い る。 性 差 別 に 対 し て、 国 家 が き び し い態 度 を 示 し て い る の で あ る。
世 界 の男 女平 等雇 用 法
65
性 差 別 は 人 種 、 皮 膚 の色 、 宗 教 、 国 籍 と と も に、 深 く ﹁人 間 の尊 厳 ﹂ に か か わ る本 質 的 な 問 題 で あ る 。 雇 用 平 等 法
を 、 こ の ﹁人 間 の尊 厳 ﹂ の視 点 に 立 って 位 置 づ け る か ぎ り、 き び し い重 罰 は む し ろ 当 然 で あ ろ う 。
と き に 、 本 稿 執 筆 中 の現 在 、 わ が 国 の婦 人 少 年 問 題 審 議 会 に お い て は 来 年 の 婦 人 差 別 撤 廃 条 約 の批 准 に む け て、 雇
用 平 等 法 の最 終 的 な 法 案 づ く り が 急 が れ て い る。 こ の過 程 で、 雇 用 平 等 法 の性 格 を め ぐ って、 罰 則 つき の強 行 規 定 を
求 め る労 働 者 側 に 使 用 者 は 罰 則 な し の努 力 目 標 を 主 張 し、 さ ら に 公 益 委員 は 罰 則 な し の強 行 規 定 に し、 平 等 確 保 の た
め の 救 済 方 法 を 考 え る こと の提 言 を し て いる 、 と いう ニ ュー スを 耳 に し て いる 。 これ は 、 雇 用 平 等 法 のも つと も 重 要
な 問 題 で あ り 、 そ れ だ け に 十 分 な 論 議 を つく し て い く べ き も のと 思 う 。
(一九 八 四年 一月 十 日 )
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