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基督教研究 第 66 巻 第1号 キリスト教とインカルチュレーション ――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰 とカトリック信仰―― Christianity and Inculturation: The Traditional Belief and Catholicism of the Chamorro, the Indigenous People in Guam 高 山 勝 Masaru Takayama キーワード 祖先崇拝、カトリック、チャモロ、薬草師、インカルチュレーション KEY WORDS Ancestor veneration, Catholic, Chamorro, Herb doctor, Inculturation 要 旨 グアムの先住民チャモロは太平洋島嶼において最も早くヨーロッパ人と接触し、キ リスト教を宣教された経験を持つ。初期の宣教は彼らを「統治」し「文明化」するた めに先住民の伝統文化を否定した。そして、カトリック教会はチャモロ文化に強い影 響を与えたのである。 今日、チャモロは完全に敬虔なカトリック信仰を持っていると見なされている。し かし、彼らが「不治の病い」などの危機的な状況に直面した時、彼ら独自の伝統的な 信仰を見ることができる。このような異文化とキリスト教における「インカルチュレ ーション(異なった文化が直接的かつ継続的に接触した結果、いずれか一方または両 方の文化に変化を起こした時に見られる現象) 」が本稿のキーワードである。多元的な 価値観が混在する今日においては異文化の相互理解は重要な課題であると言える。 10 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― SUMMARY The Chamorro, the indigenous people in Guam, were the first group of people with whom European colonists and missionaries came in contact in the Pacific. The first missionaries systematically suppressed their culture to “control and civilize” them. Since then Catholicism has exercised strong influence on Chamorro culture. Today, though it seems that the Chamorro have completely become faithful Catholics, we can still find the remnants of their own traditional belief when they face such a crisis as an “incurable” disease. Inculturation between the indigenous culture and Christianity is the key term of this paper. When the world is characterized by a diversity of distinct values and cultures, the importance of examining the relationships between different cultures cannot be overemphasized. 序 論 ──────────────────────────────────── 問題の所在と目的 太平洋の国々は、欧米の文化を鵜呑みにするのではなく、民族独自の伝統と固有の文 化を維持しながら地に足の着いた「近代化」を推進してきました。 (中略) 21 世紀の人類社会は、異なる人間集団との共存、異文化との対話、そして、人間の主 体的な「豊かさ」の創生が大きな課題となっております。このような状況下で、オセア ニアの人々は自らの土地で育んできた伝統と文化に支えられた生き方を、どのようなも のと考え、如何なる方法で維持・表現してゆこうとしているのでありましょうか。 これは 2003 年 3 月に神戸で開催された「日本オセアニア学会 25 周年記念国際シンポ ジウム」の開催にあたり同学会の須藤健一会長が冒頭の挨拶で述べた一節である。 ここに挙げられた課題を包括的に表現する語句が、本稿のテーマである「インカル チュレーション」である。この鍵語は「異なった文化(文化的要因、あるいは文化を 担う人々等)が直接的かつ継続的に接触した結果、いずれか一方または両方の文化に 変化を起こしたときにみられる現象」を言う( 『新カトッリク大辞典Ⅰ』 、533) 。本稿 では、太平洋島嶼の先住民の文化に対して歴史的に最も影響を与えた「キリスト教宣 教」に焦点を当て、被宣教者である先住民の文化との接触に伴う相互作用がもたらす それぞれの文化の変容をインカルチュレーションの事例として取り上げる。 キリスト教神学の分野において、宣教学者はこれらの現象について、 「土着化」 「同化」 「地方化」など様々な用語で表現してきたが、これらの用語は文化人類学者や民俗学者の 11 基督教研究 第 66 巻 第1号 間では、積極的に肯定的に用いられてきた。しかし、歴史的に見て、教会が宣教の対象 となった諸民族の文化を十分に尊重してきたとは言い難く、キリスト教的価値観を一方 的に強要したとさえ見なされる状況であった。このことは、キリスト教神学において福音 の変容が「世俗化」と見なされ、20 世紀に至るまで否定的に取り扱われてきた結果である。 しかし、近年、宣教の分野においても各民族の文化的価値を認め、受容しつつ福音 化を図る「インカルチュレーション」がクローズアップされてきた( 『新カトッリク大辞 典Ⅰ』 、533) 。したがって、この言葉と「土着化」 「同化」 「地方化」などの用語との決定 的な違いは、福音の変容と文化の変容をキリスト教会が肯定的に受け止めようとする 試みを表現する用語として用いられている点にある。 これまでにも、このような問題は人類学者や歴史学者によって「キリスト教の土着化と 異文化の変容」というテーマで事例研究がなされてきたが、これらの先行研究の多くが キリスト教と異文化の「初期の接触」に関する歴史的研究であり、 「キリスト教信仰の現 状」を記述したものは稀である(橋本、1996、9) 。そこで、本稿では太平洋諸島地域のう ちでも事例研究の比較的少ないミクロネシアのグアムを研究対象地域とし、歴史研究と は異なるフィールド・ワークを中心とした手法で、グアムの先住民チャモロの社会におけ る伝統的信仰とキリスト教、そして、近代医療と民間療法の関わりを明らかにすること によって彼らの宗教的世界観におけるインカルチュレーションを解き明かすものである。 信仰と医療の状況 ──────────────────────────────────── 伝統的信仰 古代チャモロの文化的特徴については J. Lawrence Cunningham が彼の著作 “ The Ancient Chamorros of Guam” の中で次のように記述している。チャモロの起源について は、現在からおよそ 4000 年前、つまり、紀元前 2000 年頃にはミクロネシアのほとんど の島々は無人島であったが、その後、東南アジアから熟練した航海術と農業知識を有 していた人々が海を渡って来て、そこに定住するようになった。彼らのうち、マリアナ 諸島に拡散してきた人々のことを「チャモロ」と呼んでいる(Cunningham, 1997, 11) 。 彼らの信仰は祖先崇拝であり、祖先の霊「アニティ(Aniti) 」を崇拝する信仰が存在し た。また、先祖の霊とコンタクトが取れる呪術師は「マカーナ(Makahna) 」 、女呪術師 は「カカーナ(Kakahna) 」と呼ばれ、先祖の霊に取り付かれた人を癒し、呪いを解くこ とができると信じられていた(Cunningham, 1997, 14, 15) 。 17 世紀のスペインによるカトリック宣教によって、これらの祖先崇拝や呪術師は禁じ られ、その後 300 年近くにも及ぶスペイン支配下において、グアムではカトリック信 12 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― 仰がチャモロ社会に深く浸透していった。19 世紀末の米西戦争の結果、アメリカに領 有権が移り、スペイン人宣教師が排除され、プロテスタント宣教が行われたにもかか わらず、現在も人口の 8 割以上がカトリック信者で占められている。このように敬虔 なカトリック信仰を持つチャモロの間にも実は、先祖崇拝の習慣が未だに根強く残っ ている。この中で最も顕著な例が、 「タオタオモナ(Taotaomo’na)信仰」である。タ オタオモナとはスペイン統治以降の概念であり、一般的に「先祖の霊」を指すが、時 として「昔の人々」のことをいう場合もある(Thompson, 1969, 174) 。 キリスト教 World Christian Encyclopedia(Oxford University Press, 2000)の統計資料によると 2000 年現在のグアムの人口は約 16 万 8 千人で、その内訳は、チャモロ人 44.2 %、フィ リピン人 17.8 %、外国人労働者 13.0 %、白人 12.6 %、韓国人 3.5 %である。全人口に 対するキリスト教会員の割合は、93.5 %で、カトリック 83.2 %、プロテスタント 10.4 %、 その他の教派である(World Christian Encyclopedia, 2000, 325) 。 カトリック教会は 1668 年、スペイン人のイエズス会士による宣教がきっかけとなり、 以降 300 年近くに及ぶスペイン統治によって島民の大多数をカトリックに改宗させた。現 在、グアムのハガッニャ司教区は、米国サンフランシスコ首都大司教区の付属司教区であ り、マリアナ諸島全域を包括している。一方、プロテスタント教会は 1911 年、ジェネラル・ バプテストがグアムでの伝道を始めたが、他の教派の来島は、第 2 次世界大戦以降のこと である。このうち、今日の最大教派は、セブンスディ・アドヴェンティストである。同派は、 教会による伝道活動のほか、島の中央部に、内科・外科・歯科などを併設する総合的なク リニックを設け、医療活動を通して住民生活への浸透を図っている。しかしながら、その 教会員数は 2 千人超(18 教会)に留まっている(World Christian Encyclopedia, 2000, 326) 。 近代医療 近代医療の現状に関連するインフラ整備や医療制度の現状について Ronald Stade の著 書 Pacific Passages: World Culture and Local Politics in Guam から以下に説明を加える。 グアムにおいて、北部地域は観光開発に伴い、近年、インフラ整備も進んでおり、医 療面について言えば、診療所(クリニック)や入院・手術の可能な総合病院(Guam Memorial Hospital)も島の北西部に集中しており、南東部の医療施設は北西部に比較し て誠に少数である。一方、衛生面においては、飲料水の水質を司る浄水場が南部・北部 に各一箇所ある。南部の浄水場は戦後アメリカ軍が中心となって開発したものであり、 十分な浄化機能を有しているが、北部の施設はグアム政府の財政基盤の脆弱さもあっ て、その浄化能力は未だに不十分なものである(Stade, 1998, 56) 。いずれにしても、グ アムの水道水は飲料水としては不適切であり、人々は浄水器を通して飲用するか、ミネ ラルウォーターを購入している。ただし、市販のミネラルウォーターも蒸留されたものは高 13 基督教研究 第 66 巻 第1号 額なため、低所得者層は簡易なフィルターで浄化された水を購入しているのが現状である。 グアムの健康保険制度は、アメリカ本土と同様、民間保険会社に依存しているため、一 旦、病気となっても保険会社が認めない治療行為については全額自己負担となる。しか も、保険加入は法人(社員)であれば容易であるが、個人で加入できる保険会社は限定さ れている。したがって、社会保険を企業に委ねることのできる者や、経済的に裕福な者以 外は、安易に高度な医療行為を受けることは困難な状況にある(Stade, 1998, 110) 。 民間療法 チャモロの民間療法師のうち女性を「スルハナ(Suruhana)」、男性を「スルハヌ (Suruhanu) 」と呼ぶ。一般的にスルハナは比較的軽い病いや子供や婦人の病いを扱い、 スルハヌは先祖の霊(タオタオモナ)によって引き起こされる特別な病い「タオタオモナ・ シック」も扱うことができると言われている。彼らはローカルな野草(ハーブ)から薬を つくり、ハーブ・ティーやマッサージによる伝統的な民間療法を受け継いでいる。元来、 「スルハナ」という名称は、スペイン語の「外科医」を意味する“Cirujano”が語源である と言われている(Workman, 1994, 5, 6, 9) 。民間療法師のうち、およそ 4 分の 3 の者が女 性のスルハナであり(Workman, 1994, 69) 、チャモロは一般的にスルハナとスルハヌの 総称として「スルハナ」という呼称を用いる。 先行研究 ──────────────────────────────────── チャモロの民間療法に関する先行研究では P. Ann Workman、C. Linda Ortiz、K. Debbie Quinata による調査・研究報告書 I Che’cho Suruhana Yan Suruhanu: The Use of Traditional Medicine & Healers on Guam を掲げることができる。この調査報告書は民間 療法師スルハナとスルハヌに対するインタビューとインフォーマントに対する調査の分 析によって構成されているが、ここでは次の 3 件の調査結果・分析について紹介する。 The Elderly Needs Survey これは 1978 年に島全域から 54 歳以上の年長者 488 人をランダムに抽出し、 「健康、住 居、経済に対するニーズ」に関してグアム大学が独自に実施した調査である(Workman, 1994, 75) 。この調査結果によると 20.9 %の者が民間療法師の治療を受けた経験を持ち、 その内訳としてはチャモロの場合 23.7 %、フィリピン人の場合 17.8 %であった。また、 男女の比率は女性が約 3 分の 2(61.9 %) 、男性が約 3 分の 1(38.1 %)を占めた。また、 民間療法師の治療を最初に受けた年令別の統計に関しては過半数(63 %)の者が 55 歳以 上になってから治療を受けた経験を持ち、20 歳から 49 歳の間に治療を受けた経験のあ る者はおおよそ 5 分の 1(18.5 %)に留まった(Workman, 1994, 76,77) 。 14 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― The Nothern Area Health Needs Assessment Survey これは 1980 年に島の北部地域から 453 世帯(18 歳以上の成人)をランダムに抽出し た病気治療に関する調査である(Workman, 1994, 75) 。この調査結果によると 33.1 %の 世帯が民間療法師の診察を受け、26.3 %が治療を受けた経験を持つ。そのうち男性は 24.7 %であった。診察を受けた者を年齢別に分類すると、34 歳以下の者が 41.4 %と一 番高く、次に 50 歳以上の者 28.5 %、35 歳から 49 歳の者が 25.0 %と続く。また、人 種・性別の統計では、チャモロの女性の半数以上(53.3 %)が民間療法師を利用し、 次に多いのはフィリピン人女性の 31.8 %と続く(Workman, 1994, 78 - 80) 。 The Island Health Needs Assessment Survey これは1984 年に島全域から400 世帯をランダムに抽出した病気治療に関する調査である (Workman, 1994) 。この調査結果からは過去 5 年間のうちに民間療法師にかかった割合は おおよそ 3 分の1 であった。そのうち、人種・年齢別の割合はチャモロの場合は 1)35−49 歳(43.1%)2)50 歳以上(40.0%)3)34 歳以下(35.0%) 、フィリピン人の場合は 1)34歳 以下 (36.4%)2)35−49歳 (32.4%)3)50歳以上 (26.7%) であった (Workman, 1994, 83) 。 現況調査 ──────────────────────────────────── 目 的 Workman らによると、1978 年から 1984 年にかけて実施された以上 3 件の調査結果を 総合すると、島の全域ならびに北部地域において 3 分の 1 の者が民間療法師にかかってお り、 年令層は主に中高年であるということが判明したと記されている (Workman, 1994, 83) 。 しかしながら、1978 年の調査の対象者は 54 歳以上の者、1980 年の調査でも 18 歳以 上の世帯主が対象であり、1984 年の調査における年齢別分類も 1)34 歳以下、2)35 − 49 歳、3)50 歳以上であって、若年層、特に 18 歳未満の者に対する調査資料が欠如し ていることは明らかである。 したがって、今回これらの年令層に対する民間療法との関わりについての調査を実 施し、先行研究では把握できていない部分を補足する。また、今回の調査対象とする 10 代の若年層の者は年長者と比較して一般的に伝統文化や宗教に対して「世俗的」と 思われるが、これらの者に関して、本稿のテーマであるチャモロの伝統的信仰とカト リック信仰に関わるインカルチュレーションを知る手掛かりとして、民間療法の他、 チャモロの伝統文化と宗教に関する彼らの認識を把握することを目的とする。 名称と調査項目 名称:「グアムにおける宗教と伝統文化」に関する現況調査 15 基督教研究 第 66 巻 第1号 調査項目: Appendix A: Survey of Religion and Traditional Culture on Guam 参照。 対 象 地域等:ジョン・ F ・ケネディ高校 (John F. Kennedy High School: 331 North Marine Drive, Tamuning, Guam 96911) グアムの高校はカトリック、プロテスタントなど私立のキリスト教主義学校が多い が、宗教的な偏重を避けるために、公立高校を選定した。また、同校は島の中心タム ニンに位置し、校区は島の北部から中心部に至るデデド、タムニン、首府ハガッニャ であり、 「近代化」の進行している地域である。宗教や伝統文化に対して、特に「世俗 的」と思われる地域と年齢層を対象とした。 年齢/性別:グアムの公立高校における 9 th ~12 th Grade(13 歳 − 18 歳)の高校生男女 人種/人数:チャモロ 45 名、フィリピン 90 名、その他の人種 45 名 計 180 名 先行研究における各年令層の対象人数が 150 人程度であったことを参考に人数を特 定した。フィリピン人の比率が高いのはデデドなどフィリピン人の多い住宅街が校区 となっているためである。 方 法 J.F.K. 校教諭タミエ・ジェイコブス(Tamie H.Jacobs)氏の協力を得、2000 年(8 − 9 月)、2002 年(11 − 12 月)の 2 ヶ年にわたって、同氏の担当クラスの生徒に対して、 現況調査票(Appendix A)を席上配布し、その場で記入・提出させた。 結果と考察 ──────────────────────────────────── 宗教に関する(第 1 −第 7)項目 これらの項目から分かるように、チャモロの場合、本人または家族の約 90 %の者が カトリックを信仰している(Appendix B: Table1) 。彼らのうち 3 分の 2 の者は、自身が 「宗教的」であり「教会では一体感を感じる」と認識している(Table2.#3・4) 。また、 彼らの 90 %近くは「宗教は自らの人生において重要(約半数の者は非常に重要) 」で あり(Table2.#5) 、 「聖書はまさに神の言葉」であると信じている(Table3) 。また、高 校生の半数以上の者が、ほぼ毎週教会のミサに出席している(Table4) 。 フィリピン人の場合も、以上の項目に関してはチャモロと大差はない結果を得た (Table2 - 4) 。ただし、 「聖書はまさに神の言葉」であると信じている者の割合は(チャ モロ約 90 %に対し)約 70 %に留まった(Table3) 。 他の人種の場合は、カトリック、プロテスタント共、約 20 %の者が信仰しているが (Table1)、 「宗教は自らの人生において重要」と考える者の割合は約 60 %に留まった 16 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― (Table2.#5) 。 このように、チャモロはアジア有数のカトリック教国であるフィリピン出身の者と同様 に、またはそれ以上に非常に敬虔な、保守的なカトリック信仰を有していることが窺える。 宗教と文化の関係性に関する(第 8)項目 この項目に関しては、興味深い結果を得ることができた。 「カトリックはチャモロ文化 の一部となっているか」という問いに関して、フィリピン人から見た場合は半数以下、他 の人種から見た場合は 3 分の 1 の者が、肯定的な認識を示したに過ぎなかったが、チャ モロ自身は 80 %近くの者が肯定的な(全体の 40 %以上の者が強く肯定する)認識を持 っていることが明らかとなった(Table5) 。このことからチャモロの独自文化がカトリック とのインカルチュレーションによって強力に結びついていることを窺い知ることができる。 イコンに関する(第 9 −第 11)項目 これらの項目は自宅におけるマリア像などのイコン(像)に関する問いである。チ ャモロの場合、80 %の家庭にこれらのイコンが飾られているが、イコンの前で祈りを 献げるのは主に祖父母、父母であり、それも全体の半数程度である(Table6) 。つまり、 半数のイコンは祈りを献げる者もなく、ただ飾られているだけなのである。高校生で は、イコンに対して祈るのは 4 人に 1 人しかなく(Table6.#11) 、しかも必要に迫られ た時に祈る(困った時の神頼み)程度である(Table6.#10) 。 高校生の半数は週に一度のミサには出席しているが、日常的な祈り・信仰という面 においては「世俗化」していることを表している。 カトリック教会行事に関する(第 12)項目 チャモロの場合、教会行事のうち「クリスマス」には 80 %近くの者が、 「イースタ ー」には約 60 %の者が参加する。フィリピン人の場合も、ほぼ同数である。しかし、 グアムのお盆に当たる「オールソウルズディ」 、各村の守護聖人を祝う「フィエスタ」 にはチャモロの場合、それぞれ 70 %、40 %近くの者が参加するが、フィリピン人は、 それぞれチャモロの半数程度の者しか参加しない(Table7) 。 また、当然のことながら、カトリック信仰の比率が 20 %程度である他の人種の場合、 カトリック教会の独自の行事に参加する者の割合はきわめて低いことが分かる(Table7) 。 オールソウルズディ、フィエスタなどはフィリピンでもカトリック教会の祝日とな っているが、グアムにおいてはこれらがチャモロの民族主義的な色彩が濃い行事であ ることをこの結果から窺い知ることができる。 伝統文化に関する(第 13 −第 16)項目 タオタオモナ信仰 第 13 項目「タオタオモナ(祖先の霊)の存在を信じるか」という問いに対して、チャ モロの場合、高校生の 3 分の 2 が「信じている」と答え、そのうち幾人かは「存在を信 17 基督教研究 第 66 巻 第1号 じる(believe in)か」という問いに対して、わざわざ「尊敬の念を抱いている(respect) 」 と書き直した上で、その存在を強く肯定していた。また、彼らの父母、祖父母もほぼ 同数で信じているとの認識を示し、 「家族の誰もが信じていない」と答えた者の割合は 20 %以下であった。つまり、家族の誰かがタオタオモナの存在を信じている家庭が 80 %以上あるという結果を得た。 一方、フィリピン人や他の人種の場合は、家族の誰もが祖先の霊の存在を信じていな い家庭が半数以上あるが、フィリピン人で 30 %、他の人種で 20 %程度の高校生が祖先 の霊の存在を信じているという回答を得た(Table8.#13) 。祖先の霊に対する信仰は、他 の人種に比して、特にチャモロには今なお根強く残っていることを窺い知ることができる。 第 15 項目「タオタオモナとの関係性」についての問いに対しては「タオタオモナに 対して畏敬の念を示せば彼らも友好的な態度を示すが、そうでなければ害を加えるこ ともある」というのが一般的な回答であった。 民間療法 第 14 項目「家族の中でスルハナ(民間療法師の総称)にかかっている者はいるか」 という問いに対しては、質問をした高校生全体のうち「自身(高校生)でスルハナに かかった経験を持つ」と答えた者の割合は 16.1 %で、人種別の割合は、チャモロ 20.0 %、フィリピン人 18.9 %、その他の人種 6.7 %であった(Table8.#14) 。この数値 は、1978 年に実施された“The Elderly Needs Survey”から得た 54 歳以上の年長者から のデータ;チャモロ 23.7 %、フィリピン人 17.8 %と大差のないものである。 また、今回の調査で行った「スルハナを利用している世代別の割合」については、 チャモロの場合、高校生 20.0 %、父母 22.2 %、祖父母 20.0 %であった。フィリピン人 の場合は、高校生 18.9 %、父母 20.0 %、祖父母 15.6 %であった(Table8.#14) 。これら の数値についても、1978 年に実施された“The Elderly Needs Survey”から得たデータ (チャモロ 23.7 %、フィリピン人 17.8 %)と同程度の結果であった。 また、世帯単位での状況については「家族の誰もスルハナにかかったことがない」 という回答の割合が 3 分の 2 であり、これは逆説的に 3 分の 1 の世帯で「家族の誰かが スルハナにかかった経験を持つ」ということを示唆している。人種別では、チャモロ の世帯 44.4 %、フィリピン人 40.0 %、その他の人種 15.6 %の割合でスルハナを利用し ているという結果を得た(Table8.#14) 。 これらの数値は、1980 年、1984 年にそれぞれ実施された “ The Northern Area Health Needs Assesment Survey ”、“ The Island Health Needs Assesment Survey” によって明らか にされた 3 分の 1 の世帯がスルハナの診察を受けた経験を持つこと、このうち、チャモロの 場合、40 %前後(年齢構成によって 35.0 %から 43.1 %) 、フィリピン人の場合、30 %前 後(年齢構成によって 26.7 %から 36.4 %)という数値を 5 ないし 6 ポイント上回る結果 18 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― であった。 Workman らが 1970 年代後半から 1980 年前半のデータから導き出した結論のうち 「島民の 3 分の 1 の者がスルハナを利用している」という点、ならびに人種別の世帯単 位の利用状況についても、2000 年に入った現在においても同様の調査結果を得ること ができた。しかし、一方、彼らが主張した「スルハナを利用している年令層は、主に 中高年である」という点については、今回の調査結果ならびに過去の 3 件のデータか らも否定せざるを得ない。つまり、チャモロやフィリピン人の間では年令層には無関 係に幅広くスルハナを利用していることが明らかとなった。 第 16 項目「どのようなときにスルハナにかかるか」という問いに対しては「病院に行 っても病気や怪我が治らない時」 、 「原因や治療の分からない病いにかかった時」 、 「タオ タオモナ・シックにかかった時」などであった。つまり、病院で納得できる診断結果 や治療を得られなかった場合、スルハナにかかるというのが一般的な回答であった。 インタビュー ──────────────────────────────────── 目的と方法 以上の統計資料の分析・考察によって、グアムの宗教や伝統文化に関する意識や傾 向を概ね把握することができたが、チャモロ社会における伝統的信仰とカトリック信 仰、近代医療と民間療法の関わりをより鮮明にするために行ったインタビュー(2001 年 2 月)のうち、代表的な事例について付記する。 事 例 (1)チャモロ;女性(35 才・既婚) 、元旅行代理店現地ガイド(高等学校卒業) カトリック信者、タロフォフォ村(島の南東部)在住。 家族構成:夫 33 才、子供 6 人(男子: 12 才、5 才、4 才、2 才、女子: 8 才、7 才) 私たちは子供が生まれたら生後 1 ヶ月以内に、必ずスルハナの所へ連れて行きます。 病気にかからないようにするためです。また、夜に赤ん坊を連れ出す時は、夜風に当た ってタオタオモナ・シックにかかってはいけないので、いつもブランケットにくるむよ うにしています。また、子供が熱のある時、食欲のない時、また、腹痛の時など、病気 にかかった時はいつも、子供を専門に診てくれるスルハナの所に連れて行きます。そこ で、ハーブやマッサージによる治療を 3 日間続けて受けます。 このスルハナは朝 6 時から 10 時頃までしか患者を診ないので、子供が夜間、急に発熱 した時などは、仕方なく島の中心部にある夜間診療を行うクリニックへ連れて行くこと があります。このような時以外は、医者にかかることはありません。医者が治せない病 19 基督教研究 第 66 巻 第1号 気でもスルハナは治してくれるからです。 *質疑 赤ん坊が生まれた時は誰もがハーブ・ティーを飲ませるためにスルハナの所へ連れ て行くのですか? 私たちの村ではそうしますが、都市部に住む人々は必ずしも、そうではありません。 スルハナの所へ連れて行って、ハーブ・ティーを飲ませるのは、タオタオモナから 守られるためですか? 赤ん坊の器官をきれいにするためです。このこととタオタオモナの関係は、私には よくわかりません。 (2)チャモロ;男性(50 才代・既婚) 、リクリエーション・パークの副主任 カトリック信者、ウマタック村(島の南部)在住。 妻はカトリック教会におけるテッツァ(プライヤー・リーダー)を務める。 普段、私の家族は誰も病気の際に、スルハナにはかかりません。しかし、赤ん坊が生 まれた時は、スルハナの所へ連れて行き、ハーブ・ティーを飲ませます。先週、孫と子 供たちはスルハナの所へ行ってきたところです。 私の家族は誰一人としてタオタオモナを崇拝していません。なぜなら、タオタオモナ は「悪霊」だからです。ただし、タオタオモナに関するこんな話があります。私の甥が ヤシガニを取りにジャングルに入った時に、尿意を催しました。その時、本来、彼は 「静まって下さい。静まって下さい。私はあなた様の土地で用を足してもよろしいでし ょうか。あなた様は私に求めることなく、私の土地で用を足されることができる方です」 とタオタオモナに許しを請うべきだったのに、そうすることを忘れてしまったのです。 用を足してジャングルから家に帰った後、彼の陰部は大きく腫れ上がり気分が悪くなり ました。彼は自分の身に何が起こったのかを悟って、「ウィッチ・ドクター(すなわち スルハヌ)」にアドバイスを求めに行きました。ウィッチ・ドクターは、タオタオモナ に対抗する力を持って彼を癒しました。私の甥はこの事件以降、ジャングルに入る時に は必ず、タオタオモナの許しを請うことにしています。 (3)チャモロ;女性(35 才・独身) 、保険会社勤務(高等学校卒業) カトリック信者、タムニン村(島の中心部)在住。 ある晩、私の母は夜遅くに屋外で洗濯をしていました。私は彼女のそのような行為が タオタオモナを「悩ませた(bother)」のではないかと思いました。実際、タオタオモナ は、母のひざを痛め、翌日、母は歩けなくなりました。医者に診てもらいましたが、医 20 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― 者はひざの痛みの原因が分かりませんでした。それで、母はスルハナの所へ行きました。 スルハナは「あなたの夫のTシャツを燃やすよう」にと母に言いました。なぜなら、父 は一家の中で最も強い者だからです。次の夜、私の母はスルハナの言う通りに父のTシ ャツを燃やしたところ、その翌日になって、母は元通り歩けるようになりました。 *彼女の説明によると、 「あなたの夫(つまり、家族の中の最も強い者)のTシャツ を燃やす」のは、こちらの力を打ち消して、タオタオモナにこちらの負けを示す(タ オタオモナに対する降伏を意味する)ことであり、タオタオモナの力を認め、尊敬の 念を表すためのものであるとのことであった。 (4)チャモロ;女性(49 才・既婚) 、大学図書館勤務(高等学校卒業) カトリック信者、マンギラオ村(島の東部)在住。 私たちは病気になった時に、いつもスルハナにかかっている訳ではありません。医者 に診てもらった後で、「この病気もスルハナなら治してくれそうだ」と思われる病気の 時だけにかかることにしています。具体的には次のような二つのケースがあります。 はじめに、私の息子のガールフレンドは右目が常に見えなかったので、介護者がいな いと左目を閉じることができませんでした。私はこのような病気を診ることのできるス ルハヌを個人的に知っていました。スルハヌは 3 日間、彼女の肩、頭、そして、顔の辺 りをフロリダ・ウォーターとアルコール、ココナッツ・オイルをミックスしたものを使 ってマッサージしました。また、彼は彼女に「直接照明でなく、間接照明を用いるよう」 にアドバイスをしました。また、彼女は髪が長く、まだ髪が濡れているうちに寝てしま うという癖があったので、彼はそれをやめるように説きました。そして、彼女の右目は スルハヌによって癒され、見えるようになりました。 *質疑 あなたは医者よりもスルハナに信頼を置いているのですか? そうではありません。最初に医師に診てもらってから、どうしようもないときにス ルハナの所に行くことにしています。 濡れた髪のまま寝るなどの悪癖がないか、スルハナは質問をすることがあるのですか? そうです。 彼女はどのくらいの期間、スルハヌにかかったのですか? 彼女は 3 ヵ月間続けてかかりました。 癒されるためには悪癖に対する「悔い改め」などが必要なのですか? いいえ。彼女の病いはタオタオモナからのものではないからです。彼女は単に濡れ 21 基督教研究 第 66 巻 第1号 た髪のまま寝るという悪い癖があっただけです。タオタオモナとは全く関係ありません。 では、どのような病気をタオタオモナは引き起こすのですか? 実際にどのような病いをもたらすのか私はよく知りませんが、いくつかの症状を挙 げることはできます。例えば、医師の治すことのできない「幻覚を伴う発熱」や、 「発 熱を伴う様々な腹痛」です。 もし、タオタオモナ・シックにかかった時、医師には行かないのですか? 病気になれば、誰もが最初は医師の所へ行きます。しかし、何度、医師に診てもら っても治らない時には、スルハナの所に行くのです。 二つ目の話は「タオタオモナ・シック」に関するものです。 私の主人が夜勤で留守だったのをよいことに、私は家の中の掃除を始めました。午後 6時 30 分に家の外に出て、庭の掃除をしました。その時、まだ、陽は落ちていなかった ので、私はしばらく歌を唄いながら外をはいていました。すべてを終えて、私は家の中 に戻ってシャワーをあび、子供たちの世話をして寝る準備をしました。 私は夜中になって、周期的に熱が出ては、寒気がしてきました。そして、左目の下の 方にあるリンパ腺が腫れてきたために、目がさめました。私は大変具合が悪くなってき たので、仕事中の夫に電話をしました。彼はすぐさま自宅に帰って来てくれました。 翌朝早く、夫の家族と私の家族は何が起こったのかと心配して、見舞いに来てくれま した。集まった家族は私がおたふくかぜにかかったのではないかと言うので、夫は私を 病院へ連れて行ってくれました。医者は手ぬぐいをお湯に浸し、患部に当てました。そ して、「3 日経っても腫れが引かない場合は、もう一度見せに来て下さい。そして、手術 (外科的処置)のために予約をするように」と言いました。 その後も腫れは引かなかったため、私は手術することが恐ろしくなってきました。私 の父は私にスルハヌに行くように勧めたので、私はそれを聞き入れました。しかし、ス ルハヌは午後 5 時以降は患者を診ないので、私に「翌朝、来るように」と言いました。 夫と私はスルハヌに遠方から来たことを説明しましたが、スルハヌは「あなたがたはも っと早く来るべきだった。診療時間ではないので、患者を診ることはできない」と言い ました。しかし、夫が私の腫れた顔をスルハヌに見せると、彼は自分の診断を確信する かのようにうなづきました。そして、彼は自分の手を腫れた患部に置き、おおよそ 15 秒 ほど優しく撫でました。そして、彼は親指につばを付けて患部に十字を切りました。私 は全身に冷たさと寒気を感じました。そして、彼は私に家に帰るように言いました。 帰る途中、私はまだ、全身に寒気を感じていましたが、何かが自分の身に起こってい ることを感じたので、主人に腫れたリンパ腺の箇所を見てくれるように頼みました。そ の時、驚いたことに腫れはなくなっていました。私は手術を受けずに済んだので大変喜 22 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― びました。信じられないことですが、これは本当の話です。 *質疑 あなたはお父さんからスルハヌの所へ行くように言われた時、スルハヌはあなたを 治してくれるという確信や信頼感はありましたか? その時、そのような気持ちを持っていたかどうかは覚えていません。でも、私は父 を信頼しているし、尊敬もしています。両親が言いつけることは、すべて子供自身の ためになることだとしつけられてきました。もし、私がタオタオモナ・シックにかか ったのであれば、私はスルハヌが適切に処置してくれると信頼しています。 あなたはスルハヌが腫れた患部に“十字”を切った時、それは「十字架」を意味し ていると思いましたか? もちろん。それは私たちの救い主イエス・キリストのシンボルである十字架だと確 信しています。 あなたはスルハヌに診てもらった帰り途、全身に寒気を感じましたが、その時、症 状がよくなると感じましたか? それとも、もっと悪くなるのではと思いましたか? 私は良くなると感じていました。なぜなら、悪寒はタオタオモナに憑かれている印 の一つだと言われていたからです。 それから、あなたは「自分の身に何かが起こっている」と感じたようですが、その 時の“感じ”を詳しく述べて下さい。 「冷たい」と感じました。私に実際、何が起きているのかは分からなかったけれど も、 「私は癒された」と認めなければなりませんでした。 あなたがスルハヌによって癒されたのはなぜだと思いますか? 私が診てもらったスルハヌは、私の祖父の兄弟でした。彼は私の親戚ではあるけれ ど、私を彼の所に来た一人の患者として取り扱いました。私が癒されたのは、彼が自 分には癒す力があると確信していたからだと思います。 あなたはその病いがタオタオモナからのものだと思いましたか? また、なぜそれ を引き起こしたのだと思いますか? このような経験を通して、絶対にそれはタオタオモナのせいだと確信していますし、 今でも、私の腫れ物はタオタオモナによるものだと信じています。それは私たちが住 んでいた所は、ジャングルに囲まれた地域だったし、私は野外で歌を唄いながら、掃 除をしていたからです。私が掃除を始めた時は、まだ暗くなかったけれど、掃除が終 わる頃には、すっかり暗くなっていました。私はなぜタオタオモナが私に病気をもた らしたのか、はっきりとは分かりません。でも、私が子供の頃、私の母はいつも暗く なる前に私たちを呼びに来ては、 「もう遅いから、家に入りなさい。タオタオモナが出 23 基督教研究 第 66 巻 第1号 てくるよ。 」と言うのが口癖でした。 *質疑;パトロン・セイント(守護聖人)に関して あなたは、どんな時にパトロン・セイントにお祈りをするのですか? 例えば、医 師やスルハナに行っても病気が治らない時などですか? 私たちは、事態が悪くなってから初めてお祈りをするということはありません。ど んな時にも、常にお祈りを欠かしませんが、もちろん、必要に応じて、例えば物事の 状況が悪くなった時などは、より熱心に祈ることはあります。 では、タオタオモナ・シックにかかった時にも、パトロン・セイントに対してお祈 りをするのですか? そのような時、スルハヌへ行くこととお祈りを捧げることでは、 あなたはどちらに重点をおきますか? スルハヌへ行き、タオタオモナ・シックだと分かったなら、癒しのために一生懸命、 心を込めて祈ります。 タオタオモナに関するカトリック教会の見解 グアムのカトリック司祭であり、グアムのキリスト教史の研究者でもある Fr. Eric Forbes に対してタオタオモナに関する見解を質したところ、次のような回答を得るこ とができた(2002 年 11 月) 。 カトリック教会では、タオタオモナに関する教えを説いたり、公式な見解を持っている訳 ではない。それで、私個人の見解を述べることとする。カトリックでは人間や獣の姿を借り た霊(pure spirits)である悪魔(demons)の存在や、肉体的な死から生き残った人間の霊魂 (human souls)や死後、天国や地獄に行く人間の霊魂の存在を信じている。タオタオモナと はこれらのうちの一つであるということができる。亡霊(ghosts)や霊(spirits)の存在に対 する最も厳格なカトリックの伝統的な教えによると、人間や亡霊の姿をして現れるものは 悪魔である。したがって、悪霊(malevolent spirits) (すなわち、タオタオモナ)の存在を信じ ていたとしても、その人はカトリックの教えに反するものではない。 分 析 ──────────────────────────────────── 誕生儀礼 一般的にチャモロの家庭では、子供の誕生と共に生後 1 ヶ月までの間に新生児をス ルハナの所へ連れて行き、ハーブ・ティーを与えることが慣習となっている(事例 1) 。 24 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― この目的は「器官を清める」ためと説明されている(事例 1 質疑)が、子供の健康を 祈願する「誕生儀礼」の一つではないかと推測される。その理由は、一般的なチャモ ロが畏敬の念を払う先祖の霊タオタオモナに対しても「悪霊」という認識を持ち、ま た、スルハナを「ウィッチ・ドクター(呪術医) 」とみなす敬虔なカトリック信仰を持 つ者でさえ、子供や孫の誕生に際しては、スルハナによってハーブ・ティーを与えら れることを容認しているからだ(事例 2) 。しかし、このような慣習も「近代化」の進 む、北部地域においては衰退しているようである(事例 2 質疑) 。 タオタオモナ・シック タオタオモナ・シックのうち子供に対する一般的な事例は、グアムにおいてよく流 行するインフルエンザの症状に似たひどい咳や高熱を伴う流行性感冒である。夜間は、 昼間の高温多湿の環境が一転して、温度が急激に降下し、これに伴って内陸部のジャ ングルから強い風が吹く。また、北部の一部地域を除き、住宅地の多くは、現在もジ ャングルに囲まれた郊外に位置するため、 「タオタオモナが棲む」ジャングルから吹き 付ける風は、乳幼児にとっては大敵だと考えられているのである(事例1) 。 成人男性については、夜間、ヤシガニなどの捕獲のためにジャングルに入った際な どに、古代チャモロの価値体系に反する行為(タブー)を犯した場合、タオタオモ ナ・シックにかかるというのが一般的な事例である(事例 2) 。 成人女性については、夜間、 (特にジャングルなどに近い)屋外で、通常行ってはな らない時間帯や方法で家事を行った場合などにタオタオモナ・シックに見舞われると いうのが一般的な事例だと言える(事例 3) 。 近代医療と民間療法の役割 特に医療施設が未整備な島の南東部地域において、子供の病いや軽い症状の病い・ 怪我の場合は、近隣の女性民間療法師スルハナの治療を受けるのが一般的であり、症 状の重い場合に限って島の中心部にある病院で医師の診察・治療を受ける(事例1) 。 一方、島の中心部や北西部などの「近代化」の進行している地域においては、病気 や怪我をした際には、最初に医師の診察を受けるのが一般的である。しかし、医師に よってその原因や適切な治療方法が見出せない場合は、民間療法師の治療を受ける。 治療の方法はハーブ・ティーやマッサージによるのが一般的であるが、必要に応じて インフォーマントに対する種々なアドバイスをすることがある(事例 4)。時として、 その内容は呪術的である(事例 3) 。 このような民間療法師の役割の中でも、最も重要と思われるものは「原因不明の不 治の病い」に対して、 「タオタオモナ・シック」という名称を与え、その原因と治療方 法を明らかにすることによってインフォーマントに精神的、肉体的な癒しを提供する ことである(事例 4) 。このような治療を行うことができるのは、男性の民間療法師ス 25 基督教研究 第 66 巻 第1号 ルハヌである。その癒しの過程で重要な役割を担うのが、治療者と被治療者が共有す る「カトリック信仰」である。特に「癒し」を確信させる過程の中で十字架などの象 徴的存在が、彼らの精神世界の中で機能している点である。 結 論 ──────────────────────────────────── World Christian Encyclopedia(Oxford University Press, 2000, 325)におけるグ アムのキリスト教に関する統計によれば、チャモロはアジア有数のカトリック教国で あるフィリピン以上に大多数の者が敬虔なカトリック信仰を有するという数値を示し ている。今回、実施した現況調査からもその状況を補強する結果を得た。特に「カト リックはチャモロ文化の一部となっているか」という問いに対しては約 4 分の 3 のチ ャモロが肯定的な回答を示している。その一方で、チャモロの伝統的信仰に関する現 況調査やインタビューは、チャモロの祖先の霊に対する信仰が、今なお彼らの世界観 の中に強く生き続けていることを示唆していた。 この伝統的信仰は年長者や祖先を敬うことから起因した「祖先崇拝」であるが、祖 先の霊は伝統的には「アニティ(Aniti) 」と呼ばれ、 「両義性」を有していた。しかし、 17 世紀以降のスペインによるカトリック宣教によって、祖先の霊は「タオタオモナ (Taotaomo’na) 」と呼称を変え、 「守護霊」としての性格は剥奪され、病いや災いをも たらす「悪霊」として位置付けられた。そして、村の守護を担う役割はカトリック教 会が各パリッシュ(村単位のカトリック教区)に配置したパトロン・セイント(守護 聖人)に置き換えられたのである。このように初期のカトリック宣教は祖先の霊をチ ャモロの宗教的世界観において「周縁」に追いやったのである。 現在もグアムにおいては衛生施設や近代医療の不備によって引き起こされる「原因 不明の病い」や「不治の病い」が存在する。これらはチャモロの間では「タオタオモ ナ・シック」と呼ばれ、祖先の霊によってもたらされると信じられている。しかし、 祖先の霊はカトリック教会が意図した単なる「悪霊」としての役割に留まらず、 「チャ モロの伝統的な価値観に基く罪やタブーの侵犯の結果、病いがもたらされる」という 伝統的な信仰を想起させる役割を果たしているのである。 このようなタオタオモナ・シックは、G・M・フォスターが彼の著書『医療人類学』の 中で提唱している「疾病論システム」 (フォスター、1987、61)として、チャモロ社会に おいて次の二つの機能を有していると指摘することができる。第一に「未知の病いに名 前をつけることによってインフォーマントの不安と恐れを排除し、病いを特定すること によって治療の可能性を提供するという役割」であり、第二に「社会的及び道徳的規範 26 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― の制裁と維持において役割を果たしている」という点である(フォスター、1987、188) 。 現在、このような疾病を引き起こす祖先の霊に対して「仲介者的役割」を担うのが、 チャモロの民間療法師であるスルハナ(女性の薬草師)・スルハヌ(男性の薬草師)で ある。本来、彼らは他の地域にみられるマッサージ師や薬草師と同様に、近親者から 技術を習得した身近な「家庭治療者」としての役割だけを担っていた。しかし、17 世紀 以降のカトリック宣教によってシャーマンや呪術医が禁じられたため、チャモロはス ルハナ・スルハヌにこれらの役割を課すことによってチャモロの伝統を継承したので ある。 このような伝統的な民間療法は一般的に、治療者や被治療者が共に高齢者で構成さ れていることなどを理由に衰退していく存在であると見なされている。グアムのスル ハナに関しても Laura Thompson は彼女の著書 Guam and its People の中で「若いスルハ ナは存在しない。昔は若い娘たちもスルハナの技能を母親や親戚の者から学んだもの だが、近頃ではそんなことに興味を示す者もなく、消え行くのみである」 (Thompson, 1969, 197)と記している。しかし、この指摘は妥当ではない。今回の現況調査の結果、 スルハナは現在も衰退することなく、チャモロではおおよそ 40 %の世帯で利用してい ることが明らかとなった。このことは Workman らの報告書においても指摘されていた が、今回の調査の結果、新たに「民間療法は若年層を含めた幅広い年令層に浸透して いること」が判明したからである。 カトリック信仰はチャモロ社会がそれを受容してから 300 年以上を経た現在、確かに 彼らの文化の中核に取り込まれてきた。しかし、彼らはカトリック信仰を宣教者の側が 意図したキリスト教ドグマに基づいた絶対的価値観として受け入れたのではない。カト リック宣教によって「周縁」に追いやられたはずの祖先の霊に対する信仰は、今なお彼 らが危機的な状況に直面した時、彼らの宗教的世界観の中に生き続けているのである。 衛生施設・近代医療の未整備という「近代化」の不備から生じる不安や恐れの思いを 「癒す」機能としてカトリック信仰と相互に、かつ、多元的に働き、結果的に彼らの伝 統的な価値体系を保つことによってチャモロ社会の秩序の維持に寄与しているのである。 一方、カトリック教会も祖先の霊に対する信仰に対して、初期の宣教時には完全に 払拭することを試みたが、現在ではキリスト教ドグマとの整合性を図りながら、チャ モロの伝統的信仰を受容してきたのである。つまり、過去には自己の絶対化を主張し てきたカトリック教会が、近年、特に第 2 ヴァチカン公会議以降、異文化の価値を認 め、対話の可能性を探るという試みによって相互のインカルチュレーションが図られ ているのである。 27 基督教研究 第 66 巻 第1号 Appendix A: 「現況調査票」Survey of Religion and Traditional Culture on Guam −Please put the suitable words into ( ), and circle one of the suitable words of [ ]. Date: month( ), date( ), year 2000 The Name of your School : ( ) Grade : ( ) th Your Age on April 1, 2000 : ( ) years old Your Village: ( ) Your Sex: [Male, Female] Place of Birth: [Guam, Other( )] Ethnic Origin or Race: [Chamorro, Filipino, White, Black, Other( )] 1. What religion are you currently practicing? [ Roman Catholic, Protestant, Other( ) ] 2. What is the religion of your family? [Roman Catholic, Protestant, Other( )] 3. How religious are you? [ Very, Somewhat, Not very, Not at all ] 4. How closely do you identify with being a member of your religious group? [Very, Somewhat, Not very, Not at all ] 5. How important is religion in your life? [ Very, Somewhat, Not very, Not at all ] 6. The Bible is the actual word of God and is to be taken literally, word for word. [Strongly agree, Somewhat agree, Neither agree nor disagree, Somewhat disagree, Strongly disagree] 7. How often do you usually attend religious or spiritual services? [More than once a week, About once a week, One to three times a month, Less than once a month] 8. You may say, according to Chamorro people, Catholicism is a part of their own culture? [Strongly agree, Somewhat agree, Neither agree nor disagree, Somewhat disagree, Strongly disagree] 9. Does your family have a religious statue of Catholicism such as Virgin Mary or Patron Saint in your home? [ Yes, No ] 10. How often does your family pray in front of their religious statue? [ Twice a day, Daily, Weekly, Monthly, Whenever necessary, Never ] −Please circle all of the suitable words of { }. 11. Which members of your family pray before the religious statue? {No one, You, Parent(s), Grandparent(s), Other( ) } 12. On which religious holidays do you attend the church? {Christmas, Easter, All Souls Day, Fiesta, Other( ) } 13. Does your family believe in Taotaomo’na (ancestor spirit)? {No one, You, Parent(s), Grandparent(s), Other( ) } 14. Who is medically treated by Suruhana (a herb doctor) in your family? {No one, You, Parent(s),Grandparent(s), Other( ) } −Please put a sentence into ( ). 15. What are your family’s beliefs concerning Taotaomo’na? ( ) 16. When do your family members feel that they need to go to the Suruhana? ( ) Thank you for cooperating. 28 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― Appendix B: Results of Survey Table 1. Christianity Roman Catholic Protestant Other No answer Total #1. What religion are you currently practicing? Chamorro 40(88.9%) 0 (0.0%) 4 (8.9%) 1(2.2%) Filipino 72(80.0%) 3 (3.3%) 11 (12.2%) 4(4.5%) Other 8 (17.8%) 9 (20.0%) 27 (60.0%) 1(2.2%) 45 90 45 #2. What is the religion of your family? Chamorro 40(88.9%) 1 (2.2%) 3 (6.6%) 1(2.2%) Filipino 80(89.0%) 2 (2.2%) 8 (8.9%) 0(0.0%) Other 8 (17.8%) 10 (22.2%) 27 (60.0%) 0(0.0%) 45 90 45 Table 2. Religiousness No Very Somewhat Not very Not at all answer Total #3. How religious are you? Chamorro 5 (11.1%) 24 (53.3%) 14 (31.1%) 2 (4.5%) Filipino 8 (8.9%) 52 (57.8%) 26 (28.9%) 4 (4.4%) Other 6 (13.3%) 21 (46.7%) 11 (24.4%) 7(15.6%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) 45 90 45 #4. How closely do you identify with being a member of your religious Chamorro 7 (15.5%) 21 (46.7%) 13 (28.9%) 3 (6.7%) 1 (2.2%) Filipino 15(16.7%) 37 (41.1%) 23 (25.6%) 4 (4.4%) 11(12.2%) Other 10(22.2%) 13 (28.9%) 11 (24.4%) 11(24.4%) 0 (0.0%) 45 90 45 #5. How important is religion in your life? Chamorro 21(46.7%) 18 (40.0%) 6 (13.3%) 0 (0.0%) Filipino 44(48.9%) 34 (37.8%) 8 (8.9%) 4 (4.4%) Other 15(33.3%) 13 (28.9%) 14 (31.1%) 3 (6.7%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) 45 90 45 Table 3. Bible Strongly Somewhat Neither agree nor Somewhat Strongly No agree agree disagree answer disagree disagree Total #6. The Bible is the actual word of God and is to be taken literally, word for word. Chamorro 20(44.5%) 19 (42.2%) 5 (11.1%) 1 (2.2%) Filipino 34(37.8%) 31 (34.5%) 16 (17.8%) 4 (4.4%) Other 19(42.2%) 6 (13.3%) 9 (20.0%) 4 (8.9%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) 45 4 (4.4%) 1 (1.1%) 90 7 (15.6%) 0 (0.0%) 45 29 基督教研究 第 66 巻 第1号 Table 4. Attendance at services More than About once a once a week week One to three times a month Less than once a month No answer Total #7. How often do you usually attend religoius or spiritual services? Chamorro 4 (8.9%) 20 (44.5%) 10 (22.2%) 11(24.4%) 0 (0.0%) Filipino 7 (7.8%) 38 (42.2%) 21 (23.3%) 23(25.6%) 1 (1.1%) Other 10(22.2%) 13 (28.9%) 1 (2.2%) 21(46.7%) 0 (0.0%) 45 90 45 Table 5. Chamorro Culture and Catholicism Strongly Neither Somewhat agree nor Somewhat Strongly No agree agree disagree answer disagree disagree Total #8. You may say, according to Chamorro people, Catholicism is a part of their own culture? Chamorro 18(40.0%) 15 (33.3%) 8 (17.8%) 1 (2.2%) 1 (2.2%) 2 (4.5%) 45 Filipino 18(20.0%) 31 (34.5%) 31 (34.5%) 5 (5.5%) 4 (4.4%) 1 (1.1%) 90 Other 6 (13.3%) 11 (24.4%) 14 (31.1%) 6 (13.3%) 8 (17.8%) 0 (0.0%) 45 Table 6. Religious Statues Yes No No answer Total #9. Does your family have a religious statue of Catholicism such as Virgin Mary or Patron Saint in your home? Chamorro 36 (80.0%) 9 (20.0%) 0 (0.0%) Filipino 66 (73.0%) 24 (26.7%) 0 (0.0%) Other 9 (20.0%) 35 (77.8%) 1 (2.2%) Twice a day 45 90 45 Whenever Daily No Weekly Monthly necessary Never answer Total #10. How often does your family pray in front of their religious statue? Chamorro 0(0.0%) 3(6.7%) 2(4.4%) 5(11.1%) 25(55.6%) 10(22.2%) 0(0.0%) Filipino 2(2.2%) 8(8.9%) 6(6.7%) 6 (6.7%) 41(45.6%) 26(28.9%) 1(1.1%) Other 0(0.0%) 4(8.9%) 3(6.6%) 0 (0.0%) 7 (15.6%) 31(68.9%) 0(0.0%) GrandNo one You Parent(s) parent(s) No Other #11. Which members of your family pray before the religious statue? Chamorro 9 (20.0%) 12(26.7%) 19(42.2%) 24(53.3%) 7(15.6%) Filipino 26(28.9%) 23(25.6%) 40(44.4%) 27(30.0%) 9(10.0%) Other 25(55.6%) 3 (6.7%) 12(26.7%) 9 (20.0%) 4 (8.9%) 30 45 90 45 answer Total 0 (0.0%) 45 0 (0.0%) 90 0 (0.0%) 45 キリスト教とインカルチュレーション――グアムにおける先住民チャモロの伝統的信仰とカトリック信仰―― Table 7. Events of Catholicism Christmas Easter All Souls Day Fiesta Other No answer Total #12. On which religious holidays do you attend the church? Chamorro 35(77.8%) 28(62.2%) 30(66.7%) 17(37.8%) 12(26.7%) 0 (0.0%) Filipino 70(77.8%) 46(51.1%) 35(38.9%) 16(17.8%) 22(24.4%) 0 (0.0%) Other 19(42.2%) 13(28.9%) 6 (13.3%) 16(35.6%) 22(48.9%) 0 (0.0%) 45 90 45 Table 8. Traditional Culture GrandNo one You Parent(s) parent(s) No Other answer Total #13. Does your family believe in Totaomo’na (ancestor spirit)? Chamorro 8 (17.8%) 30(66.7%) 29(64.4%) 26(57.8%) 16(35.6%) 0 (0.0%) Filipino 45(50.0%) 27(30.0%) 28(31.1%) 14(15.6%) 7 (7.8%) 0 (0.0%) Other 27(60.0%) 8 (17.8%) 3 (6.7%) 1 (2.2%) 5 (11.1%) 1 (2.2%) 45 90 45 #14. Who is medically treated by Suruhana (a herb doctor) in your family? Chamorro 25(55.6%) 9 (20.0%) 10(22.2%) 9 (20.0%) 9 (20.0%) 0 (0.0%) Filipino 54(60.0%) 17(18.9%) 18(20.0%) 14(15.6%) 10(11.1%) 0 (0.0%) Other 38(84.4%) 3 (6.7%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) 1 (2.2%) 3 (6.7%) 45 90 45 #15. What are your family’s beliefs concerning Taotaomo’na? #16. When do your family members feel that they need to go to the Suruhana? 31 基督教研究 第 66 巻 第1号 文 献 Carter, Lee D., Wuerch, William L. and Carter, Rosa Roberto (eds.) , 1997. Guam History: Perspectives, I, Micronesian Area Research Center, Guam. Cunningham, J. Lawrence, 1997. “The Ancient Chamorros of Guam,” in Lee D. Carter, William L. Wuerch and Rosa Roberto Carter (eds.) Guam History: Perspectives, I, Micronesian Area Research Center, Guam. フォスター、G ・ M /アンダーソン、B ・ G、中川米造訳、1987、 『医療人類学』 、リブロ ポート、東京. 橋本和也、1996、 『キリスト教と植民地経験−フィジーにおける多元的世界観−』 、人 文書院、京都. Hattori, Anne, 1994. “Before the Chamorro-Spanish Wars,” Hale-ta I : Ma Gubet-n Guam, The Political Status Education Coordinating Commission, Guam. Manny, Cristomo, Latte Magazine, July 1995. Guam. Mitchell, E. Roger, 1986. “Patron Saints and Pagan Ghosts: The Pairing of Oppositses,” Asian Folklore Studies 45 No1. Rogers, F. Robert, 1995. Destiny’s Landfall: A History of Guam, University of Hawaii Press, Honolulu. Sablan, Flores Joaquin, 1990. My Mental Odyssey, Stinson Press, Guam. 『新カトリック大辞典Ⅰ』 、1996、研究社、東京. Stade, Ronald, 1998. Pacific Passages: World Culture and Local Politics in Guam, Stockholm Studies in Social Anthropology, Stockholm. Thompson, Laura, 1969. Guam and its People, Westport Press. World Christian Encyclopedia, 2000. Oxford University Press, London. 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