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子どもの教育における 動物の役割
子どもの教育における 動物の役割 平成18年3月25日 ヒトと動物の関係学会第12回学術大会 国立教育政策研究所 鳩貝 太郎 話しの流れ • 学校における教育課程と目指すもの • 生命尊重の心を育む指導の必要性 • 学校飼育動物の現状と課題,その改善 • 動物飼育の事例と飼育の意義 1 わが国の学校と教育課程 教育基本法、学校教育法 ○学校教育法施行規則第24条 小学校の教 育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、 音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科、 道徳、特別活動並びに総合的な学習の時間 によって編成するものとする。 ○同第25条 小学校の文部科学大臣が別に 公示する小学校学習指導要領によるものと する。 小学校学習指導要領 教育課程編成の一般方針の概要 1.児童の人間として調和のとれた育成を目指 す 児童に生きる力をはぐくむことを目指し、自 ら学び自らから考える力を育成し、基礎的・基 本的な内容の確実な定着を図り、個性を生か す教育の充実に努めなければならない 2.道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて 行う 家庭や地域社会との連携を図りながら、豊 かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳 性の育成を図る 2 学力のとらえ方 • 学んだ力:知識・理解,技能 • 学ぶ力=学び方:問題解決力,思考力, 判断力,表現力 • 学ぼうとする力:関心・意欲・態度 「確かな学力」 +豊かな人間性+健康・体力 (豊かな心) (健やかな体) 生きる力 小学校学習指導要領「生活」 ○第1学年及び第2学年の目標 (2)自分と身近な動物や植物などの自然とのか かわりに関心をもち,自然を大切にしたり, 自分たちの遊びや生活を工夫したりすること ができるようにする。 ○内容 (7)動物を飼ったり植物を育てたりして,それらの 育つ場所,変化や成長の様子に関心をもち, また,それらは生命をもっていることや成長 していることに気付き,生き物への親しみを もち,大切にすることができるようにする。 3 4 小学校学習指導要領「理科」 小学校理科の目標 自然に親しみ、見通しを持って観察、実験な どを行い、・・・・ 3学年,4学年の目標 (1)・・生物を愛護する態度を育てるとともに,・・ 5学年,6学年の目標 (1)・・生命を尊重する態度を育てるとともに,・・ 5 低学年理科「自然の観察」 1年から理科を実施(昭和16年国民学校令施行規則) 「自然観察」設定の理由 1)児童は、自然の中で自然とともに遊び、自然に驚異 を感じ、自然から色々なことを学びながら、経験を積 み、生命を発展させている。このような指導は当然の ことである。 2)理科指導の目的を達成するには、自然に親しみ、自 然を愛好し、自然に驚異の目をみはる心が養われな くてはならない。知情意一体となってはたらきかける には、この時期の学習を疎かにしては、ほとんど不 可能といって良い。適切な指導をしなくてはならない 時期である。 6 小学校学習指導要領「道徳」の内容 3 自然や崇高なものとのかかわりに関すること ○第1学年及び第2学年 (1)身近な自然に親しみ,動植物に優しい心で接する。 (2)生きることを喜び,生命を大切にする心を持つ。 ○第3学年及び第4学年 (1)自然のすばらしさや不思議さに感動し,自然や動植 物を大切にする。 (2)生命の尊さを感じ取り,生命あるものを大切にする。 ○第5学年及び第6学年 (1)自然の偉大さを知り,自然環境を大切にする。 (2)生命がかけがいのないものであることを知り,自他の 生命を尊重する。 7 「生命尊重・自然愛護」の趣旨 • 低学年:自然に親しみ,生きているものに 優しく接する。 • 中学年:生命や自然の素晴らしさに感動し, 自他の生命を大切にする。 • 高学年:自然を愛護し,自他の生命を大切 にする。 *各学校は,各教科等のすべての教育活動で 活用できる具体的な評価規準を作成し,評価 記録を積み重ねることが必要。 8 指導要録の行動の記録「生命尊重・自然 愛護」の評価規準を作成しているか 6.2 作成している 作成していない 93.8 長崎県における児童生徒の「生と死」の イメージに関する意識調査 • 対象:公立小学校の4年,6年 公立中学校の2年 • 調査期間:平成16年11月~12月 • 回答者数:小学校4年=1,196名 小学校6年=1,241名 中学校2年=1,174名 9 身近な人の死の悲しみを感じたことあるか 0% 20% 40% 60% 80% 死んだ人は生き返ると思いますか はい いいえ 100% 0% 20% 40% 60% 全体 81.3 18.3 全体 15.4 84.6 小学4年 84.7 15.3 小学4年 14.7 85.3 86.9 小学6年 78.7 21.3 小学6年 13.1 中学2年 80.5 19.5 中学2年 動物が生まれるところを見たことがあるか 0% 全体 20% 40% 50.3 60% 80% 49.7 はい いいえ 100% 18.5 80% 81.5 死んだ動物が生き返ると思いますか 0% 20% 40% 60% 全体 12.7 87.3 小学4年 54.8 45.2 小学4年 12.7 87.3 小学6年 49 51 小学6年 10.6 89.4 中学2年 47.3 52.7 15 85 中学2年 はい いいえ 100% 80% はい いいえ 100% 命を大切にする教育の充実 文部科学省「児童生徒の問題行動対策重点 プログラム(最終まとめ)」(平成16年10月) 1.命を大切にする教育の充実 • 命を大切にする心を育む教育の充実 • 伝え合う力と望ましい人間関係の指導の推進 • 社会性を育む体験活動の充実 2.学校で安心して学習できる環境作りの推進 3.情報社会の中での情報モラルやマナーにつ いての指導の在り方の確立 10 命を大切にする心を育む教育の充実 ○生命を尊重する教育の推進 ・教育課程全体で自他の生命のかけがえの なさ,誕生の喜び,死の重さ,生きることの尊 さ,自信や夢をもって生きることの大切さなど を取り上げる場や機会を増やす ○家庭における命の教育に対する支援 ・命の大切さを実感させること,基本的な生活 習慣を身につけさせること→新家庭教育手帳 配布,子育て講座のための手引き配布 生命尊重の心を育む指導 *基盤は家庭教育で体験的に学び育まれるべき *学校教育で計画的・意図的に展開する必要有 「生き物から学ぶ」:体験的な学び 生き物とのかかわりを体験的に学ぶ 生き物への興味関心を高める,豊かな感受性を育む 「生き物について学ぶ」:科学的な学び 科学的・体系的な学び,観察力,科学的な見方・考え 方,判断力 *実物を通して学ぶことが重要 「生き物のために学ぶ」:地域の自然や地球環境 生命を尊重する活動を通して実践する態度 11 小学校における飼育動物の現状調査 本研究は平成13~15年度科研費「生命尊重の態度育成に関わる生物教材 の構成と評価に関する調査研究(課題番号13680219)」 (研究代表者:鳩貝 太郎)により実施したものの一部である。 • 調査時期:平成15年11月17日~12月1日 • 調査対象校:全国の小学校から866校を無作為 抽出し,飼育担当者宛に調査用紙を送付 • 回答方法:Webまたは郵送 • 有効回答数:579校(66.9%) • 回答者の性別:男性=50.6%,女性=49.4% • 回答者の年代:20代=8.1%,30代=18.7% 40代=50.1%,50代=23.1% 哺乳類・鳥類の飼育状況 飼育している 飼育していない 11.8 飼育の場所 2% 88.2 野外飼育舎 教室 廊下等 特別教室 2% 2% 94% 12 飼育動物の種類と飼育している学校の割合 ウサギ 78.7 ハムスター 3.6 2 モルモット 1.6 その他のほ乳類 ニワトリ 65.5 小鳥類 17 4.3 アヒル 7.7 その他の鳥類 0 20 40 60 80 100 飼育の課題(得点制) 720 長期休業中の世話大変 561 土日の世話大変 495 飼育舎清掃大変 344 死亡時の処理困難 240 餌の確保困難 122 112 104 68 49 32 18 17 29 飼育舎修理大変 病気・怪我処理困難 感染症・アレルギー 飼育方法不明 糞尿廃棄法不明 触れ合い指導不明 入手方法不明 悪臭・鳴き声 その他 0 100 200 300 400 500 600 700 800 13 屋外飼育と教室内飼育の利点欠点(得点制) 屋外飼育 教室内飼育 責任感他養う利点 思 いや り養 う 利 点 生命尊重の心養う利点 動物愛護精神養う利点 動 物 を深 く知 る 利 点 心 いや す 利 点 友達関係広がる利点 動物の死見せる欠点 飼 育 管 理 負 担 強 いる 欠 点 環 境 不 衛 生 にな る 欠 点 怪 我 病 気 にな る 欠 点 友達関係悪化す る欠点 動 物 虐 待 につな が る 欠 点 授 業 妨 害 にな る 欠 点 その 他 0 200 400 600 800 1000 14 動物飼育に関する現状と課題 • 小学校の飼育は、ウサギとニワトリが中心 • 屋外での飼育は、児童に生命尊重の心を養うなど良 い影響が期待できると考えている • 飼育舎で飼育担当者と飼育委員が飼育をしているが、 一部の教職員や児童に負担がかかっている • 教師は獣医師等に授業や指導助言を望んでいる • 教室内飼育に対しては、教室の環境不衛生や授業妨 害など「欠点」と考える割合が多い 実際に教室内飼育すると「欠点」が減少する • 飼育動物を教育活動に活用する実践進んでいない *学習プログラムの開発、実践事例の収集が必要 アレルギー等への対応 ○正確な認識と診断を 誰は、いつから、何が、どこに、どのような症 状がどの程度出るのか。その原因は何か。 ○医師や獣医師との相談体制作り ○動物との関わりが何ならばできるのか、何か らならできるのかを相談する。 ○症状が出たら速やかな対応と保護者への連 絡 ○日常的な児童、家族、担任等とのコミュニケー ション・人間関係作り 15 「家庭動物等の飼養及び保管に関する 基準」 環境省(平成14年5月) • 動物:ほ乳類,鳥類,は虫類 • 家庭動物等:愛玩動物,伴侶動物(コンパニ オンアニマル),情操及び生態観察のために 飼養及び保管されている動物 第7 学校,福祉施設等における飼養及び保管 1.管理者は,動物の飼養及び保管が,獣医師 等十分な知識と飼養経験を有する者の指導 の下に行われるよう努め,(以下略) 16 (総合的な学習の時間) ②生きものとなかよしグループ (飼育委員のウサギの世話を手伝いた い) ・うさぎについて調べる。 ・飼育委員がウサギの世話をしている 様子を見学する。 ・全校行事の「野川のつどい」で飼育 舎のウサギをビデオで紹介する。 ⑥(休み時間) 水曜日と木曜日、飼育委員の飼育活 動を手伝う ・飼育舎の掃除 ・ウサギを外に放して遊んだり、毛を ブラッシングしたりする。 (理科) ①チョウを育てよう ・たねをまこう (道徳) ③たかはしさんちの ペット紹介 (国語) ④「死」にふれる物語 ・ちいちゃんのかげおくり (教科書教材) ・かたあしだちょうのエルフ (読み聞かせ) (理科) ⑤こんちゅうをさがそう 17 筑波大学附属小学校森田学級(小4)での 室内飼育 モルモットを10人の班に1匹づつ飼育させる 18 高校で生命尊重の心情を育成するための指導 に当たり、経験しておいて欲しいこと (全国654名の高校生物教師の回答:平成17年11月) 高校入学までに体験必要-得点化した結果 11% 7% 4% 昆虫採集と標本作り 12% 植物採集と標本作り メダカなどの発生過程の継続観 察 魚類や両生類などの飼育 12% 34% ほ乳類や鳥類の飼育 野山などでの自然体験 20% 生命尊重に関する内容の道徳 の授業 19 動物飼育の意義 ○命の大切さを実感できる ○責任感を育成できる ○社会性、協調性を育成できる ○優しさ、思いやり、忍耐力を育成できる ○心のいやしや人間関係改善の場となる ○動物に対する観察力、探究心、科学的な見 方や考え方の基礎を育成できる *愛着を持って継続的に育てるペット飼育 20