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国立病院機構における医療安全対策への取組み

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国立病院機構における医療安全対策への取組み
国立病院機構における医療安全対策への取組み
[医療安全白書]
∼平成19年度版∼
〔はじめに〕
国立病院機構の理念は 、「患者の目線に立って懇切丁寧に医療を提供」することにあ
る。医療内容が高度化・複雑化するとともに、国民の権利意識が高まっている中で、患
者の目線に立った安心・安全な医療を提供し続けていくためには、充実した医療安全管
理体制を整えていくことが極めて重要であり、今後、一層の努力が求められているとこ
ろである。
国立病院機構としては、見直すべき点は見直し、新たに取組むべき点は取組み、良好
な医療安全管理体制が確立されるよう、様々な方策を検討・議論すべきと考えている。
このため、国立病院機構全体で取組むべき医療安全対策について、基本方針を決定す
る常設委員会として「独立行政法人国立病院機構中央医療安全委員会」を平成19年度
に設置し、様々なテーマを議論しているところである。
また、医療事故等が発生した際には、医療安全管理室が中心となり医療安全管理委員
会を開催することなどにより、発生した医療事故等の検証作業を行うとともに、検証結
果を踏まえた再発防止策の検討を行い再発防止策に取組んでいる。また、各病院のこの
様な取組みについては、発生した医療事故の概要とともに国立病院機構本部にも「医療
事故報告書」として報告が行われているところである。
国立病院機構は、様々な診療機能を有する146の病院グループであり、医療安全対
策の視点からも、病院ネットワークを積極的に活用した取組みを行っていくことが必要
である。年度内に発生した様々な医療事故を類型化し概観するとともに、個々の医療事
故の発生状況や背景・要因、それに対して取組まれた再発防止策等を、各病院から報告
された医療事故報告に基づき、特に警鐘的意義を有すると考えられる事例を中心に紹介
し国立病院機構全体で共有していくことは、機構全体の医療安全対策の一層の推進に資
するものと考えられる。
加えて、この1年間に国立病院機構として医療安全管理体制をより充実させるために
行った取組みなどを、積極的に公表していくことは、国立病院機構内のみならず我が国
全体の医療安全対策の推進にも一定の役割を果たしていくことのできる、病院ネットワ
ークを活用した国立病院機構独自の取組みであると考えている。
この様なことから、国立病院機構各病院で発生した医療事故の概要や講じた再発防止
策、医療安全対策充実を目的とした取組み内容等について、昨年より「国立病院機構に
おける医療安全対策への取組み」として紹介していくこととしており、今般、平成19
年度版について公表するものである。
《
目
次
》
Ⅰ
本報告の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅱ
本編
1.転倒・転落事故防止プロジェクトの策定・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2.平成19年度医療事故報告の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
(1)人工呼吸器管理について
(2)転倒・転落の発生パターンの類型化とその対応策について
(3)薬剤に関する医療事故・事故発生の類型化とその対応策について
(4)インフォームド・コンセントについて
(5)合併症について
(6)転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤について
(7)患者の自殺、自殺企図について
(8)人工呼吸器に関わる事故について
(9)危険薬について
Ⅲ
資料
1.医療安全対策に係る研修の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・161
2.独立行政法人国立病院機構における医療安全管理指針の運用・・・・・・166
Ⅰ
本報告の概要
1
【本編】
1.転倒・転落事故防止プロジェクトの策定:6頁
国立病院機構内で発生する医療事故の約30%が転倒・転落事故で占められている。転倒
・転落事故と他の医療事故との大きな違いは、その発生が必ずしも医療者側のエラーによる
ものではないという点にある。患者の遠慮がちな性格や認知機能障害等の要因による看護師
の目の届かないところでの自力歩行が、転倒・転落に繋がるケースが非常に多くある。この
様なタイプの転倒・転落事故を減少させていくためには、患者の身体状況の把握、患者への
働き掛け、環境整備などの対策を医療者側が着実に行っていく中で、患者のニーズを先取り
しながら看護サービスを提供していくことが必要となる。
そこで、転倒・転落事故を減少させていくための取組みとして、国立病院機構中央医療安
全管理委員会の下に「転倒・転落防止プロジェクト業務標準化等専門委員会」を設置した。
本プロジェクトの目的は、転倒・転落事故を減少させるとともに、患者・家族との良質な
コミュニケーションや観察により得た情報を医療チーム内で適切に共有しながら、患者ニー
ズを先取りしたケアを提供していく過程を通じて、医療・看護の質全体を高めていくことに
も繋がっていくものである。
そこで、転倒・転落事故臨床指標を定めるとともに、転倒・転落事故防止マニュアルを策
定し、目標として2年間で転倒・転落事故の半減を目指すものである。
【マニュアルの内容】
①
転倒・転落事故防止のためのフローや発生要因の整理、看護師等医療者側の基本的留
意事項等を明示
②
入院時意識調査票やアセスメントシート、事故防止計画表を全病院に同一形式で作成
すること
③
患者、家族への説明内容、転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト、事故事例集等を添
付
2.平成19年度医療事故報告の概要:59頁
医療事故が発生した際の機構本部への報告は 、「独立行政法人国立病院機構における医療
安全管理のための指針 」(以下 、「指針」という 。)に基づき行われている。平成18年度に
指針の見直しを行い報告を要する医療事故の範囲は 、「①当該行為によって患者に死を至ら
しめ、または死に至らしめる可能性があるとき、②当該行為によって患者に重大若しくは不
可逆的傷害を与え、または与える可能性があるとき」から 、「①誤った医療又は管理を行っ
たことが明らかであり、その行った医療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者
に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置そ
の他の治療を要した事例、②誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行った医
療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期し
なかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事例(行った医療
又は管理に起因すると疑われるものを含み 、当該事例の発生を予期しなかったものに限る )、
2
③前2号に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資す
る事例」に変更し、日本医療機能評価機構と同様にした。
平成19年度中に各病院から機構本部に報告された医療事故報告は、677件であった。
平成18年度の同報告件数が306件であったことからすれば、2倍以上の報告件数増とな
っているが、これは前述の報告範囲を変更し、より明確にしたことによることと、医療安全
対策の基本が「過去の事例から学ぶ」ことにある視点から、各病院からの積極的な報告が行
われるようになった結果であると考えている。
事故分類(事故内容)別では、前年同様 、「転倒・転落」が他の事例と比較して突出して多
く、全体の3割を超える件数となっている。次いで 、「介助中に発生した骨折や入浴中の事
故等」15% 、「穿刺・穿孔や臓器損傷等」11% 、「問題行動(自殺企図、離院等)」6%、
等である。
事故の対象となった患者の年齢構成では 、60歳以上の患者が65%を超えている 。また 、
発生件数の多い転倒・転落について見ると、60歳以上の患者が80%を超えている状況に
ある。
事故報告件数を病院グループ毎の病床数で除した「 100床当たりの事故発生件数 」では 、
急性期系、旧療養所系ともに1.24件である。しかしながら、事故分類別に見た場合は、
「転倒・転落」については、急性期系、旧療養所系ともに多くなっており 、「介助中の骨折
や入浴中の事故等」については旧療養所系が多く 、「穿刺・穿孔や臓器損傷等」については
急性期系が多くなっている。100床当たりで最も報告件数の多いのは、旧療養所の精神グ
ループであり100床当たり1.5件となっている。これは 、「転倒・転落 」「自殺企図等の
問題行動」について、旧療養所グループの中でも最も多いことによるものである。
医療事故が発生する時間帯では、全体的には様々な処置件数の多い日勤帯により多くの事
故が発生している状況が見られるが、発生件数の多い転倒・転落については、準夜・深夜帯
での発生が日勤帯よりも多くなっており、日勤・準夜・深夜のそれぞれの時間帯で概ね平均
的に発生していることが分かる。
以上が各病院から機構本部に報告された医療事故報告677件の概要である。この中から
特徴的な事例や重要と考えられる事例について、警鐘的事例として背景・要因や再発防止
策とともに更に詳細に紹介を行っている。警鐘的事例の項目は次のとおりである。
(1)人工呼吸器管理について
(2)転倒・転落の発生パターンの類型化とその対応策について
(3)薬剤に関する医療事故・事故発生の類型化とその対応策について
(4)インフォームド・コンセントについて
(5)合併症について
(6)転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤について
(7)患者の自殺、自殺企図について
(8)人工呼吸器に関わる事故について
(9)危険薬について
3
【資料】
1.医療安全対策に係る研修の実施:152頁
国立病院機構では、発足当初(16年度)から各病院の医療安全管理者等を対象とした研
修を、各ブロック毎に開催している。平成19年度においては、全ブロックで計998人の
職員が受講しており、研修で得た知見を各病院に持ち帰り、安全・安心な医療の提供のため
に活かしている。
2.独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針の運用:157頁
「指針」については、前述の医療安全対策に関する検討委員会報告書及び平成19年4月
施行の医療法改正とそれに伴う医療法施行規則の改正内容を踏まえ、次の見直しを行い、平
成19年度に運用を開始した。
(1)「国立病院機構における医療安全対策に関する検討委員会」の議論を踏まえた事項の追
加
①病院ネットワークを活用した医療安全管理体制の確立の視点を明確化
②全病院統一の患者影響レベルの指標を設定
③機構本部への医療事故報告の範囲を、日本医療機能評価機構が行う医療事故情報収集等
事業における報告範囲と同一にするとともに、報告様式についても整合性を図る
④警察への届出の際の院内手続きの明確化
⑤重大な医療事故が発生した際の対外的公表指針の設定
⑥拡大医療安全管理委員会の医療安全管理体制への位置付けを明確化
⑦中央医療安全管理委員会の設置
(2)医療法施行規則の一部改正を踏まえた事項の追加
①院内感染対策のための体制の確保
ア
院内感染対策のための指針の策定
イ
院内感染対策のための委員会の開催
ウ
従事者に対する院内感染対策のための研修の実施
②医薬品に係る安全管理のための体制の確保
ア
医薬品の安全使用のための責任者の設置
イ
従事者に対する医薬品の安全使用のための研修の実施
ウ
医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成及び当該手順書に基づく業務
の実施
③医療機器に係る安全確保のための体制の確保
ア
医療機器の安全使用のための責任者の設置
イ
従事者に対する医療機器の安全使用のための研修の実施
ウ
医療機器の保守点検に関する計画の策定及び保守点検の適切な実施
4
Ⅱ
本
5
編
平成20年3月26日
独立行政法人国立病院機構
転倒・転落事故防止プロジェクトの推進について
1.目的
(1)国立病院機構における医療事故の約30%を転倒・転落事故が占めている。転倒・
転落事故と他の医療事故との大きな違いは、その発生が必ずしも医療者側のエラーに
よるものではないという点にある。患者の遠慮がちな性格や認知機能障害等の要因に
よる看護師の目が届かないところでの自力歩行が、転倒・転落に繋がるケースが非常
に多くあり、また、その中の多くのケースでは、移動する際はコールするよう指導を
行っていたケースでもある。
(2)この様なタイプの転倒・転落事故を減少させていくためには、患者の身体状況の把
握、患者への働き掛け、環境整備などの対策を医療者側が着実に行っていく中で、患
者のニーズを先取りしながら看護サービスを提供していくことが必要である。また、
患者が自らのニーズについて躊躇することなく医療者側に伝えられるような、患者と
の良好な関係性を構築していくことも重要となるであろう。
(3)転倒・転落事故防止プロジェクトは、患者・家族との良好なコミュニケーションや
観察を通じて得た情報を医療チーム内で適切に共有しながら、患者ニーズを先取りし
たケアを提供していく過程である。この意味で、本プロジェクトは、国立病院機構内
おいて最大の発生件数を占めている転倒・転落事故を大幅に減少させることを直接的
な目的としつつ、一方で、医療・看護の提供に係る基礎的能力である観察力やコミュ
ニケーション能力を最大限活用し患者のニーズを的確に把握し対処していく過程とそ
の継続を通じて、国立病院機構における医療・看護の質全体を高めていくことにも繋
げていくものであると考えられる。
2.目標値の設定
転倒・転落事故防止プロジェクトは、平成20年4月から2ヶ月間の院内体制を整え
るための準備期間を経て、6月から本格実施していくこととし、2年間で影響レベル 3b
以上の「転倒・転落事故発生率」の半減(平成19年度の「転倒・転落事故発生率」の
△50%)を目指す。また、アセスメント実施率については初年度で95%以上の実施
率を目指すものとする。
6
3.定義
本プロジェクトにおいて、「転倒」「転落」「転倒・転落事故」を次のとおり定義する。
①「転倒」
自分の意思に反してバランスを崩してしまうことにより、足底以外の身体が地面や床
面についてしまった状態
②「転落」
高い場所から低い場所に転げ落ちること
③「転倒・転落事故」
転倒又は転落により、国立病院機構における統一的な患者影響レベルで 3b 以上の影響
が生じた事象
4.転倒・転落事故臨床指標
*全ての数値から、NICU、GCU の患者数は除く
転倒・転落事故防止プロジェクトの進捗状況を定量的に把握するため、次の「転倒・
転落事故臨床指標」を定める。
①アセスメント実施率=(入院時アセスメント実施患者数/新入院患者数)×100
②転倒・転落発生率=(転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
③重大事象発生率
◇影響レベル 3b 以上事象発生率=(3b 以上転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
◇影響レベル 3b 事象発生率=(3b 転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
◇影響レベル 4 事象発生率=(4 転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
◇影響レベル 5 事象発生率=(5 転倒・転落件数/入院延べ患者数)×100
④傷害の指標=(影響レベル 3b 以上事象発生件数/転倒・転落件数)×100
5.転倒・転落事故防止マニュアル
・転倒・転落事故防止に係る業務を標準化し、プロジェクトの効果的・効率的推進を図
るため、統一的な「転倒・転落事故防止マニュアル」(別添)を策定する。
・各病院は、本マニュアルを参考に、各病院の患者状況等に応じた修正を行った上で自
病院版「転倒・転落事故防止マニュアル」を完成させるものとする。
・ただし、
「転倒・転落アセスメントシート」については、全病院が同じアセスメントシ
ートを使用することでシートに係るデータの集計・分析を行うことにより、転倒・転
落に係る高リスク項目を特定する等の使用を考えていることから、「統一マニュアル」
で示すアセスメントシートを使用することを基本とする。
7
6.プロジェクト実施体制
(1)平成20年4月から2ヶ月間の準備期間中に、各病院はプロジェクト実施のための
院内体制を整える。また、各病院が問題認識を共有する中で円滑にプロジェクトが推
進されていくようにするため、この準備期間中の適当な時期に、各ブロック単位で医
療安全管理者等実務担当者による打ち合わせ会議を開催する。
(2)各病院の医療安全管理委員会による方針の決定等
・プロジェクト推進体制の確立
*別添「統一マニュアル」を活用した院内マニュアル策定、各部門の協力体制の確
立、病棟等毎のプロジェクトリーダーの指名、転倒・転落臨床指標の報告体制等
・事務部門を含む多職種で構成された
転倒・転落対策チーム
による定期的な院内ラ
ウンド等の実施
・進捗状況の把握及び評価(最低月1回)と部門間での情報共有
*年齢、発生時間、発生原因、発生場所、発生病棟、診療科等別に整理・分析
*病院全体、病棟毎の転倒・転落事故臨床指標の推移
・進捗状況や機構全病院の転倒・転落事故臨床指標を踏まえた防止対策の改善
(3)機構本部への報告とフィードバック
・転倒・転落事故臨床指標の各病院から機構本部への報告(月毎)
・機構本部から転倒・転落事故臨床指標の集計・分析結果のフィードバックする
*転倒・転落事故臨床指標の推移(全体・病院類型別等)
(4)「転倒・転落アセスメントシート」の集計・分析による高リスク要因の特定
・一定期間毎に「転倒・転落アセスメントシート」を各病院から機構本部に提出
・提出されたシートを病棟種別毎(一般、精神、障害者系、小児等)に集計、統計的処
理を行うことで、転倒・転落に関する高リスク項目を特定するとともに、その結果に
ついては、
「転倒・転落アセスメントシート」や防止対策の改善のために活用すること
で、本プロジェクトの一層効果的な進捗を図る
8
(別添)
転 倒 ・ 転 落 事 故 防 止 マ ニ ュ ア ル
1.転倒・転落事故防止のための基本フロー
(1)転倒・転落アセスメントシートによるリスクの評価
・入院時オリエンテーションの際、必要に応じて「転倒・転落に関する入院時意識調査
表(別紙1)」等を用いながら患者情報を把握する。
・
「入院時意識調査表」などによる患者情報等を踏まえ、入院から24時間以内に「転倒・
転落アセスメントシート(別紙2)」により転倒・転落リスクを評価する。「アセスメ
ントシート」については、看護記録の中に綴じることにより、スタッフ間で情報の共
有を図る。
(2)患者毎の転倒・転落防止計画の策定
・「転倒・転落事故防止計画表(別紙3)」の各項目のチェックや【記述欄】への必要な
情報の記述を行いながら、判定されたリスクに応じた防止計画を策定する。本計画表
についても、看護記録の中に綴じることにより、スタッフ間で情報の共有を図る。
(3)患者及び家族への説明
・「アセスメントシート」「計画表」及び「患者・家族への標準的な説明内容(別紙4)」
を示しながら、患者及び必要に応じて家族に対して、
a 転倒・転落のリスク、
b 事故防止のために実施することが必要な対策、
c 患者・家族の協力が必要な事項、
d 使用薬剤に伴うリスク(リスクが高くなる薬剤を使用している患者)、
等について説明を行い理解を得る。
・また、身体抑制が必要な場合は、
「抑制・拘束が必要な場合の説明内容・同意書(別紙
5)」を活用し、抑制の必要性等について十分説明を行うとともに、患者・家族の承諾
又は同意を得る。説明内容及び承諾書についても、看護記録の中に綴じることにより、
スタッフ間で情報の共有を図る。
(4)アセスメントシートによるリスクの再評価
・アセスメントシートによるリスクの評価は入院時(24時間以内)に行う他、1週間
後、手術後、転室時、転倒・転落時、病状の変化があった時、使用薬剤の変更があっ
た時等には再評価を行い、結果に応じた防止計画の見直しを行う。また、再評価及び
見直し後の防止対策の内容については、患者及び必要に応じて家族に対して説明を行
い理解を得るとともに、それらの内容についてスタッフ間で情報の共有を図る。
(5)リスクの高い薬剤リストの作成
・薬剤部門が中心となって、「転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト(別紙6)」を参考
に、自病院が使用している薬剤の内容に応じ転倒・転落リスクが高くなる薬剤リスト
を作成することにより、薬剤使用に係るリスク低減のために活用する。
(6)転倒・転落防止体操等
・添付している DVD を、転倒・転落防止体操の指導や患者用テレビに映像を流すなど各
9
病院の状況に応じた活用を行うことで患者の筋力の維持・向上を図る。
・「注意喚起のためのステッカー等事例集(別紙7)
」を活用し、転倒・転落事故防止の
ための注意喚起等環境の整備を図る。
2.転倒・転落の発生要因の整理
(1)患者側の要因(主なもの)
①環境等変化:手術実施後(3日以内)
、病状・ADL が急速に回復又は悪化している、入
院・転棟・転室後(7日以内)
、リハビリ開始時期・訓練中、ベッドでの
生活は初めて
②性
格:羞恥心が強い、よく遠慮する、依存できない、自分でしないと気がすま
ない、ナースコールを押さないで行動しがち
③身体的機能:麻痺、痺れ感、拘縮や変形、足腰や筋力の低下、ふらつき、立位不安定、
自力によるベッド昇降不能、自立端座位不可、ベッド上での体動著明
④感
覚:平衡感覚障害、視力障害、聴力障害
⑤認知機能 :記憶力・判断力低下、見当識障害、意識混濁・混乱、不穏行動
⑥活動状況 :車椅子・杖・歩行器・手すりの使用、移動・排泄に介助が必要、ベッド
サイドでの排泄、点滴・胃管・ドレーン・尿道カテーテル使用、衣服着
脱に介助が必要
⑦薬剤の使用:睡眠鎮静剤、抗精神病薬、抗パーキンソン薬、筋弛緩剤、麻薬、下剤、
降圧利尿剤、抗悪性腫瘍薬
⑧排
泄:尿・便失禁がある、便秘・下痢である、頻尿・夜間排尿が多い、尿意・
便意を訴えられない、排泄行為に時間を要する
(2)医療者側の要因(主なもの)
①リスクに対する意識が低い
②患者の危険度の把握が不十分
③監視体制(計画)が不十分
④患者・家族へのリスクに関する説明が不十分
⑤睡眠鎮静薬等与薬後の注意と観察が不十分
⑥適切な履物・衣服の選択、歩き方の指導が不十分
⑦補助具、ポータブルトイレ、点滴架台の選択や設置場所が不適切
⑧車椅子のストッパー、安全ベルトのし忘れ、介助運転不慣れ
⑨患者の状態に合わせた援助の変更が適切な時期にできていない
⑩患者の状況にあった看護計画が立案されていない
⑪排泄パターンの把握不足
⑫歩行中の患者に後から声を掛ける行為を行う
(3)環境(施設、設備)の要因(主なもの)
①環境整備 :廊下、ベッドサイド等の障害物
②ベッド
:高さ、柵の不適切な使用
③ナースコール、オーバーテーブル、床頭台:位置が不適切
④床の状況 :滑りやすい、つまずきやすい(清掃中、床の材質、敷物、段差等)
⑤構造、表示:そこに何があるか分りにくい、暗い(照明の不足)、危険な場所への立ち
入りの物理的排除の不備
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3.看護師等医療者側の基本的留意事項等
(1)基本的留意事項
①転倒・転落アセスメントの実施は、患者及び家族との十分なコミュニケーションの中
で実施する。
②アセスメント結果や防止計画等についての説明内容及び患者・家族の反応については、
出来る限り看護記録に記載する。
③また、説明済みの防止計画からの逸脱(防止計画を患者に説明することなく変更する
こと)は、患者を混乱させる結果に繋がることに留意が必要である。
④リスク判定 A・B の高リスクの患者の情報は、患者リストの作成やナースステーション
の患者ネームプレートへのマグネット貼付、勤務引継ぎ時の読上げ等により、医療者
間での情報を確実に共有することが重要である。
⑤介助を行う際は麻痺側に立って行い、患者の腰部を十分固定した上で行う。車椅子や
ベッド、トイレへの適切な移乗技術の習得に努める。
⑥使用薬剤毎の転倒・転落リスクについて知識(1回使用量、作用発現時間、作用時間、
半減期等)の習得に努める。
⑦歩行補助器の使用は、理学療法士等と一緒にアセスメントを行い決定する。また、歩
行補助器、車椅子の定期点検を行う(概ね1回/月)。
⑧転倒・転落防止を優先するあまり患者の生活そのものが味気ないものにならないよう、
さりげなく、しかも確実に転倒・転落事故防止対策を組み込む姿勢が重要である。
⑨患者が「したい行動」と「できる行動」の間には乖離が生じやすいことを理解する。
(2)ベッドの設定に係る留意事項
①ベッドのストッパーは必ず固定しておく。
②ベッドのキャスターは内側に向けた状態で固定する。
③ギャッジベッドのハンドルは、使用の都度必ず収納する。
(3)検査時、リハビリテーション時等病棟外での留意事項
①看護部門と他部門とのリスク情報の共有により、他部門の担当者も患者毎の転倒・転
落リスクを十分承知した上での対応を行う。
②撮影台への乗り降りは、台を最低の高さにした上で行い、撮影台の中央に患者の正中
線を置いた上で撮影する。また、立位での撮影時は、固定用具を使用するなど不安定
な状態のままでの撮影は行わない。
③乳児を撮影する際は、必ず2人で行う。
④絶食・延食での治療、検査や術前投薬の影響で、ふらつきや立ちくらみ等を起こしや
すいので留意する。
(4)環境面での留意事項
①病室、廊下、浴室の環境整備を行い、歩行等の障害になるものを置かない。
②段差や障害物へのマーキングを行う。
③病室、廊下の床の水漏れ(配茶、配膳、雨天時は注意)は、直ちに拭き取る。
④清掃後、床が濡れたままの状態にならないよう業者を指導する。
4.転倒・転落に関する入院時意識調査票 [別紙1]
・本調査票は、入院オリエンテーション時に、必要に応じて患者・家族に記入してもら
11
うことで、患者の身体状況や患者の性格等の情報を把握するために活用するものであ
り、そのための基本的事項について整理したものである。
・各病院が既に使用している問診票がある場合には、本調査票を参考に必要な修正等を
行ったうえで使用するものとする。
5.転倒・転落アセスメントシート [別紙2]
(1)目的
・転倒・転落アセスメントシートは、入院時の患者及び家族へのオリエンテーション時
等に患者・家族との適切なコミュニケーションの中で実施することで、転倒・転落に
係る患者毎のリスク判定を行うものである。
・アセスメントの結果については、患者・家族にも十分な説明を行い、患者・家族側と
医療者側の共通のリスク認識の中で、転倒・転落防止計画を円滑に実施していくため
の基礎となるものである。
(2)アセスメントの対象
・本シートによるアセスメントは、NICU、GCU 入院患児を除く全患者に対して行う。
(3)アセスメントの実施者
・基本的には患者の受け持ち看護師が責任を持って実施する。
(4)アセスメントの実施時点
・入院時には、24時間以内に必ず実施する。
・入院1週間後、手術後や転室時、転倒・転落時、病状の変化があった時、睡眠鎮静薬・
抗精神病薬等の使用開始及びそれら薬剤の変更時等には、必ず再評価を実施するとと
もに、次項の「転倒・転落事故防止計画表」による対策の見直しを行う。
(5)アセスメントによるリスク判定
・アセスメントに基づく「リスク判定」の考え方は次のとおり。
◇リスク A:リスク判定Bの患者で「薬剤の使用」の「単独高リスク項目」がチェッ
クされている患者(
「薬剤の使用」の「単独高リスク項目」のみにチェッ
クが付いている患者を含む)
◇リスク B:
「薬剤の使用」以外の「単独高リスク項目」にチェックが付いている患者
◇リスク C:「単独高リスク項目」にチェックが付いていない患者
・アセスメント実施後は、判定リスクに応じた対策を「転倒・転落事故防止計画表」に
基づき策定・実施する。
・リスク判定が A・B であった患者については、患者リストの作成やナースステーション
の患者ネームプレートへのマグネット貼付、勤務引継ぎ時の読上げ等により、医療者
間での情報を確実に共有することが重要である。
(6)アセスメントシートの看護記録への保管
・本シートは、アセスメント実施後、看護記録にはさみ込み、常に確認できるようにし
ておくことが、医療者間の情報共有の観点からも必要である。
12
6.転倒・転落事故防止計画表 [別紙3]
(1)目的
・
「転倒・転落事故防止計画表」は、転倒・転落アセスメントシートによる判定リスクに
応じて、患者毎の転倒・転落防止のための計画を策定するために活用する。
・本表は、患者の転倒・転落リスク毎の標準的な防止計画を整理したものであり、経験
年数等の異なる看護師等であっても同水準の防止計画を策定し実施することで、転
倒・転落事故の大幅な低減を目指すものである。
(2)判定リスクに応じた「対策」の考え方
・判定されたリスク毎の対策を整理すると、次のとおり。
◇リスク判定 C:「標準的対策」を実施
◇リスク判定 B:「標準的対策」に加え「高リスク患者への対策」を実施
◇リスク判定 A:
「標準的対策」及び「高リスク患者への対策」に加え「薬剤使用者へ
の対策」を実施
・防止対策の実施を意識付けるため、実施する対策については項目チェックを行うとと
もに、
【記述欄】には、患者の状態に合わせた具体的な対策や説明内容、患者の反応等
を適宜記入し、スタッフ間での情報の共有を図る。
(3)アセスメントシートによる再評価と対策の見直し
・アセスメントシートによる再評価を行った場合には、必ず本計画表に基づく転倒・転
落防止計画についても見直しを行う。
(4)活用に当たっての留意点
・本計画表は、患者毎のリスク判定に応じた標準的な転倒・転落防止対策を整理したも
のであるが、これを絶対視することなく弾力的に運用していくことが肝要である。
・例えば、
「単独高リスク項目」へのチェックが無い場合でも、それ以外のチェック項目
が多くリスクが高いと判断される場合には、
「高リスク患者への対策」を防止対策に加
えることが必要となる場合があることに留意する。
7.患者・家族への標準的な説明内容 [別紙4]
・患者が入院する際の転倒・転落リスクの標準的な説明内容について、整理を行ってい
る。説明者は、本標準的説明内容を参考に、患者の個別の事情を考慮しながら、十分
な説明を行い、そして理解を得ることが必要である。
8.抑制・拘束が必要な患者への説明内容・承諾書 [別紙5]
・患者の抑制・拘束には慎重になるべきであるが、一方で、患者の認知機能の低下と不
穏行動の多発化等により、一定の抑制・拘束が止むを得ない場合もある。
・その際には、患者及びその家族に対し必要性を十分に説明し、理解を得ることが極め
て重要であり、本説明資料は、この様な観点から、患者の抑制・拘束を行わざるを得
ない場合に、患者及びその家族に対して行うことが必要な説明内容及び承諾書につい
て、標準的な内容を整理したものである。
13
9.転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト [別紙6]
・患者の認知機能を低下させ、身体機能に大きな影響をもたらす要素として、睡眠鎮静
剤等転倒・転落リスクを増大させる薬剤の使用がある。
・睡眠鎮静剤等を処方する際は、患者の状態について十分に検討した上で行うことが重
要である。また、看護師等医療者が、各患者が使用している薬剤について正確に把握
しておくことは当然のこととして、その薬剤がどの様な副作用を発生させ転倒・転落
リスクを高めることになるのかを明確に知識として持った上で対策を講じていくこと
が、転倒・転落事故防止対策を進めていくための必須の要件である。
・本リストは、その使用により特に転倒・転落リスクが高くなると考えられる薬剤のリ
ストであり、本リストを参考に、薬剤部門が中心となり、各病院で実際に使用されて
いる薬剤に応じてリストを完成させるとともに、薬剤使用患者に対する説明を行って
いくことが必要である。
10.転倒・転落防止体操(DVD版)
・転倒・転落事故を減少させていくためには、患者自らがその予防をしていくことが必
要である。そのためには、ベッド上の生活が長くならざるを得ない患者の身体機能、
特に脚力を出来るだけ減退しないよう配慮していくことが重要なポイントとなる。
・この DVD はこの様な観点から作成しているものであり、看護師による指導や映像を常
に流し続ける等各病院の状況に応じて活用するものである。
11.注意喚起のためのステッカー等事例集 [別紙7]
・患者の自力行動を予防するため、患者への注意喚起のためのポスター・ステッカー等
を例示している。各病院は、これらのポスターやステッカー等を、病室、ベッドサイ
ド、トイレ等に貼付することで、転倒・転落リスクの高い患者が自力での移動を行わ
ず、看護師等による介助を依頼するように方向付けていくことが必要である。
12.転倒・転落事故事例集 [別紙8]
・国立病院機構において過去に発生した転倒・転落事故について、大まかな類型を行い
対策を整理したものであり、これらの事例集も参考としながら、転倒・転落防止対策
を推進していくことが必要である。
14
(別紙1)
転倒・転落に関する入院時意識調査票
入院という環境の変化により、日頃から歩行等に自信を持っておられる方でも思いがけ
ず転倒することがあり、特にトイレへの行き帰りに多く発生しています。この調査票は、
転倒・転落を予防するために、現在の患者さんの状況を把握するために作成したものです。
主旨をご理解いただき、以下の質問にお答下さい。
お名前
(記入者:
・
問1
ご本人
・
ご家族
ご年齢
歳
・その他[
])
現在のあなたの状況に当てはまるものに○をつけて下さい。
①
めまいやふらつきがある
(
はい
・
いいえ
)
②
足に痛みやしびれがある
(
はい
・
いいえ
)
③
目が見えにくい
(
はい
・
いいえ
)
④
何もないところでつまずくことがある
(
はい
・
いいえ
)
⑤
睡眠薬や安定剤を使用している
(
はい
・
いいえ
)
⑥
これまでにベッドから落ちたことがある
(
はい
・
いいえ
)
⑦
自宅でポータブルトイレを使用していた
(
はい
・
いいえ
)
⑧
夜間トイレに行くことが多い
(
はい
・
いいえ
)
⑨
動く時に不自由さを感じる
(
はい
・
いいえ
)
問2
※問1で「はい」が1つでもあった方におたずねします。
問1で「はい」が1つでもあった場合は転倒しやすいと言われています。このこと
を踏まえた上で、次の質問にお答下さい。トイレに行くことが必要になった場合のあ
なたのお気持ちは、次のどちらですか。該当する方に○を付けて下さい。
①
自分のことは自分でしたい
②
看護師等に手助けを希望する
(
)
(
15
)
問3
※問2で「①自分のことは自分でしたい」に○を付けられた方におたずねします。
その理由についておたずねします。ご自分のお気持ちに近いものに○を付けて下さ
い(複数の項目に○をつけていただいても結構です)。
①
自分でできるから
(
)
②
動かないと足・腰が弱るから
(
)
③
看護師が忙しそうでたのみにくいから
(
)
④
見られたくないから
(
)
⑤
その他
[
]
【問2で①に○を付けられた方へ】
◎
私たち看護師は、自分のことを自分でしたいという気持ちは十分に尊重させていた
だいた上で、転倒を予防するためには、患者さんのご協力をお願いする場合もありま
す。ご理解いただきますようお願いします。
問4
※問2で「②看護師等に手助けを希望する」に○を付けられた方におたずねします。
看護師等に手伝ってほしいことはどんなことですか。些細なことでも結構です。お
聞かせ下さい。
問5
その他、ご意見・ご希望がありましたらお聞かせ下さい。
ご協力ありがとうございました。
独立行政法人国立病院機構
16
○○病院
(別紙2)
転 倒 ・ 転 落 ア セ ス メ ン ト シ ー ト
患 者 氏 名 様 男・女 年齢 歳 患者ID 担当者名
※過去の転倒・転落の記録:
/
/
/
/
/
〔「手術後」や「転室時」、「転倒時」、「病状の変化があった際」などには、必ず再評価を実施〕
ア
A 年齢
B 既往歴
患
環境等の
者 C 変化
の
特
徴
D 性格
E 身体機能
F 感覚
セ
ス
メ
ン
ト
項
単独高リ
スク項目
目
/
/
/
70歳以上、または9歳以下である
○
□
□
□
□
□
過去、入院中に転倒・転落したことがある
○
□
□
□
□
□
① 手術実施直後(3日以内)である
○
□
□
□
□
□
② 病状・ADLが急速に回復、又は悪化している時期である
○
□
□
□
□
□
③ 入院・転棟・転室後(7日以内)である
□
□
□
□
□
④ リハビリ開始時期、訓練中である
□
□
□
□
□
⑤ ベッドでの生活は始めてである
□
□
□
□
□
① 羞恥心が強い、よく遠慮する
□
□
□
□
□
② 依存できない、自分でしないと気がすまない
□
□
□
□
□
③ ナースコールを押さないで行動しがちである
□
□
□
□
□
① 麻痺、又は痺れ感がある
○
□
□
□
□
□
② 拘縮や変形がある
○
□
□
□
□
□
③ 足腰や筋力が弱くなっている
○
□
□
□
□
□
④ 自立歩行できるが、ふらつきがある
○
□
□
□
□
□
⑤ 支えがなければ立位が不安定
○
□
□
□
□
□
⑥ 自力によるベッド昇降ができない
○
□
□
□
□
□
⑦ 自立端座位ができない
○
□
□
□
□
□
⑧ 寝たきりの状態だが、ベッド上で体動ができる
○
□
□
□
□
□
① 平衡感覚障害がある
□
□
□
□
□
② 視力障害がある
□
□
□
□
□
③ 聴力障害がある
① 記憶力・判断力低下がある
G 認知機能 ② 見当識障害、意識混濁、混乱がある
③ 不穏行動がある
① 車椅子・杖・歩行器・手すりを使用する
患
者
② 移動、排泄に介助が必要である
の
状 H 活動状況 ③ ポータブルトイレ使用などベッドサイドで排泄行為を行う
態
④ 点滴、胃管、ドレーン、尿道カテーテル等をしている
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
○
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
⑤ 衣服の着脱などに介助が必要である
① 睡眠鎮静薬を使用中
○
□
□
□
□
□
② 抗精神病薬を使用中
○
□
□
□
□
□
③ 抗パーキンソン薬や筋弛緩剤を使用中
○
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
⑥ 降圧利尿剤を使用中
□
□
□
□
□
⑦ 抗悪性腫瘍薬を使用中
□
□
□
□
□
① 尿・便失禁がある
□
□
□
□
□
② 便秘・下痢である
□
□
□
□
□
③ 頻尿、夜間排尿が多い
□
□
□
□
□
④ 尿意・便意を訴えられない
□
□
□
□
□
薬剤の使
I
④ 麻薬を使用中
用
⑤ 下剤を使用中
J 排泄
入院時 1週間後
/
/
□
□
□
□
□
チェック項目数(最大チェック数:40)
⑤ 排泄行為に時間がかかる
/40
/40
/40
/40
/40
単独高リスク項目チェック数 (最大チェック数:20)
/20
/20
/20
/20
/20
リスク判定( A ・ B ・ C )
*リスク判定A:リスク判定Bの患者で「薬剤の使用」の「単独高リスク項目」がチェックされている患者。又は、「薬剤の使用」
の「単独高リスク項目」のみがチェックされている患者。
*リスク判定B:「薬剤の使用」以外の「単独高リスク項目」がチェックされている患者
*リスク判定C:「単独高リスク項目」がチェックされていない患者
17
転 倒 ・ 転 落 事 故 防 止 計 画 表
患者氏名 様:受持看護師 (別紙3)
※ リスク判定別対策の目安:・リスク判定Cの患者→「標準的対策」を実施
・リスク判定Bの患者→「標準的対策」に加え「高リスク患者への対策」を実施
・リスク判定Aの患者→「標準的対策」及び「高リスク患者への対策」に加え「薬剤使用患者への対策」を実施
入院時
3日後
1週間後
区 分
リ ス ク 判 定 別 対 策
/
/
/
/
/
1.危険性の説明 ①転倒リスクについて説明し理解を得る
□
□
□
□
□
〈ポイント〉
【記述欄】
□具体的事例を用いながら説明する
□大きな文字と絵図を用いて説明する
□夜間のトイレ歩行時、眠前薬服用後等の危険度の高い状況
や時間を説明する
2.環境整備
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
〈ポイント〉
【記述欄】
□必需品が手の届く位置にあるよう床頭台を整理
□使用していないオーバーテーブルはベッドから離れたとこ
ろに置く
□杖は、ベッドから離れる際直ぐに使用できる位置に置く
□機械類のコードを束ねる等整理を行う
標
準
①ベッド周辺の整理整頓を行い障害物を除去する
3.ベッド調整
①ベッドの高さを端座位で足が床に着くよう調節する
②状態に応じたベッド柵を選択し使用する
的
( 点柵) ( 点柵) ( 点柵) ( 点柵) ( 点柵)
〈ポイント〉
【記述欄】
□処置等終了時にはベッド柵を元の状態に戻していることを
必ず確認する
対
策 4.自力移動防止 ①ナースコールの重要性について理解を得る
□
□
□
□
□
【記述欄】
〈ポイント〉
□ナースコールは、看護師と患者のコミュニケーションのた
めの重要な手段である点を説明し理解を得る
5.排泄関係
②使用方法の説明、設置位置の確認などにより患者がナース
コールを押せることを確認
□
□
□
□
□
③頻回の声掛け等患者との信頼関係を築くことにより、患者
のナースコールへの心理的負担を軽減する
□
□
□
□
□
④体調の悪いときは遠慮なく介助を求めるよう指導する
□
□
□
□
□
①入眠前の水分摂取(量)を指導する
□
□
□
□
□
②排泄パターンを把握する
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
【記述欄】
③排泄パターンを踏まえた定期的な排尿誘導を行う
( 時間毎) ( 時間毎) ( 時間毎) ( 時間毎) ( 時間毎)
6.移動時留意点 ①スリッパや靴下のままで移動しないよう指導する
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
④ストッパーの確認等車椅子の安全を確保する
□
□
□
□
□
⑤オーバーテーブル、床頭台等に掴まらないよう指導する
□
□
□
□
□
②衣類(ズボン)の裾丈が長い場合は、折り込む等の処置を
行う
③歩行補助器使用時は、患者の体格や姿勢に合わせた調整を
行う
(身長: ㎝)
【記述欄】
18
区 分
7.入浴時
標
準
的
対
策 8.その他
入院時
3日後
1週間後
/
/
/
①1人で入浴する際は、入浴前に必ず連絡するよう指導する
□
□
②定期的な見回りと声掛けを実施する
□
①できるだけ日中の離床を促し、昼夜のリズムをつけるよう
指導する
リ ス ク 判 定 別 対 策
/
/
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
②転倒・転落防止体操の実施
□
□
□
□
□
③筋力低下を招かないよう、患者本人が興味を持ち進んで参
加する活動(行事)を考案する
□
□
□
□
□
【記述欄】
①患者家族を含め、単独高リスク項目のチェック内容に応じ
□
□
□
□
□
1.危険性の説明 た危険性の説明を行い理解を得る
高
【記述欄】
リ
ス
ク
患
者 2.観察の強化
①頻回の訪室により観察を強化する
□
□
□
□
□
へ
*訪室の頻度〔○○分に1回訪室〕
( 分)
( 分)
( 分)
( 分)
( 分)
の
対
①離床センサーを使用する
□
□
□
□
□
策 3.防止用品
4.自力移動防止
5.排泄関係
②ヒッププロテクター・ヘッドギアを使用する
□
□
□
□
□
③ベッド周りへの衝撃吸収マットを使用する
□
□
□
□
□
①移動時には必ずナースコールを押し、介助を求めるよう指
導する
□
□
□
□
□
②ナースステーションに近い観察の目が届く部屋に転室する
□
□
□
□
□
①夜間の排泄時は、必ず移動介助、排泄介助を行う
□
□
□
□
□
②排泄中は原則として患者の側を離れない
□
□
□
□
□
③尿器、便器、ポータブルトイレなどの排泄用具を使用する
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
【記述欄】
〈ポイント〉
□ポータブルトイレは、ベッド脇には置かず必要な時にその
都度用意する
□使用時の設置位置は、一定の場所とする
6.入浴時
①入浴に係る移動及び入浴時の介助を行う
〈ポイント〉
□入浴介助を行う際は、複数人で実施する
①車椅子使用時には、ずり落ちないよう安全ベルトを使用す
7.移動時留意点 る
①睡眠鎮静薬、抗精神病薬等の使用により転倒・転落の危険
□
1.危険性の説明 性が高まることを説明し理解を得る
薬
〈ポイント〉
【記述欄】
剤
□使用している薬剤とその副作用について説明する
使
□特に使用直後における高い危険性を説明する
用
□睡眠時間帯の覚醒時に移動する際は、ふらつき等により危
患
険性が高くなる点を説明する
者
へ
の
①使用している薬剤に応じた観察を強化する
□
対 2.観察の強化
策
【記述欄】
〈ポイント〉
□使用薬剤毎の副作用、作用発現時間、作用時間、半減期等
に応じた観察を実施
②薬剤使用後の影響をアセスメント(睡眠持続時間、睡眠の
深さ、途中覚醒の状況等)する
□
□
□
□
□
①転倒・転落リスクの高い薬剤使用中にベッドから離れる際
3.自力移動防止 は必ずナースコールを押し、介助を求めるよう指導する
□
□
□
□
□
19
(別紙4−1成人用)
安全で快適な入院生活のために
転倒・転落防止対策
入院される患者様及びご家族の皆様へ
入院中は、運動する機会も少なくなりますので足腰の筋力が低下し、ご自分では、できる
と思われても身体が思うように動かないことも多々あります。
また、住み慣れたご家庭とは異なる病院の環境が、病院内での転倒・転落につながることも
あります。
入院生活をより安全に過ごして頂く為に、下記のことにご留意下さい。
1. 歩きやすい服装と歩き方
【服装について】
1)サイズの合う活動に適した服装を用意しましょう。
2)ズボンのすそ丈は踵の上(長い場合は、折り返しましょう)
3)履物は、ご自宅で使用しているものにしましょう
以下の3点が履物選びのポイントです。
・ゴム底などの滑りにくいもの
・はきやすく、ぬぎやすいもの
・底の形状にあっているもの
【歩き方】
1)ゆっくり、歩きましょう。
2)顎を軽く引いていつもより少し前方を見て
歩きましょう
5)肩の力を抜き、両腕は大きく前後に振りましょう。
6)背中をしっかりのばすように心がけましょう。
7)急に振り向くなどの方向転換はバランスを崩しやすいので気をつけましょう。
2.ベッド上で生活する時の留意点
1)ベッドの高さは、ベッドに腰掛けた時に足が床に着く高さが安全です。
高さの調節は看護師が確認いたします。
2)ベッドから身を乗り出して、棚や床に落ちたものを取らないようにしましょう
バランスを崩すとベッドから転落しやすく危険です。
3)ベッドの上で立ち上がるのは、不安定で危険です。
4)オーバーテーブルや床頭台はストッパーがないため危険です。
寄りかからないようにしましょう。
5)お1人で動くのが難しい時、不安な時は、遠慮なく看護師をお呼び下さい。
20
いつでも遠慮
せずお呼びく
ださい。
3.車いす、歩行器、杖使用時の留意点
【車いす】
1)車いすに乗ったまま落とした物を拾わないようにしましょう。
バランスを崩すと車椅子ごと転倒しやすく危険です。
2)乗り降りする時や止まっている時は必ずストッパーを掛けましょう。
3)足台を上げてから車いすへの乗り降りをしましょう。
足台に体重を掛けて乗り降りすると車いすが傾き危険です。
【歩行器】
歩行器につかまって、立ち上がるのはやめましょう。
歩行器にはストッパーがないため、歩行器に体重をかけすぎると危険です。
【杖歩行】
洗面台の周囲やトイレは床がぬれていることがあります。十分にご注意下さい。
床がぬれていると、杖先がすべって、転倒の原因になります。
4.夜間のトイレ
1)夜間にトイレに行くときは、
目が暗がりに慣れるまで動かないようにしましょう。
2)消灯前にトイレを済ませておきましょう。
3)トイレの使用中に、ご気分が悪くなったり、ふらつきのある時はいつでも
看護師がお手伝いします。ご遠慮なくお呼び下さい。
4)夜中はトイレに行くタイミングをみて、看護師が声をかけ誘導することもございます。
5)ポータブルトイレを使用する時は、次の点に御注意ください。
*ポータブルトイレは看護師がお部屋までお持ちいたしますので、
必ずナースコールでお呼びください。
*トイレが終了するまで、看護師が近くにおります。
*トイレから急に立ち上がらず、必ず看護師をお呼びください。
5.点滴を受けている場合について
1)点滴をしながら歩行する時は、廊下の段差や電源コードなどに、引っかからないよう御
注意下さい。
2)点滴スタンドは、足元にキャスターがあります。点滴の架台に足を乗せたり、寄りかか
るのはやめましょう。
21
6.睡眠鎮静薬、降圧利尿剤などを服用されている場合について
1)睡眠鎮静薬や降圧利尿剤の種類によっては、その効果が身体に残っていて、眠気やふら
つき、起き上がっても思うように歩けないこと等があります。
2)夜中に目覚めた時、朝方のトイレへの移動時は、めまいやふらつきの無いことを確認し
てから歩きましょう。
3)服用する薬の作用や注意点については、薬剤師、看護師等から説明をいたしますので、
充分ご理解ください。
7.転倒防止体操について
入院生活は、これまでの生活環境と異なり、体力の低下、運動する機会の減少による筋
力の低下などから、転びやすくなります。筋力アップと体力維持を目的とした歩行訓練や
転倒予防体操をお勧めしておりますので、看護師にご相談下さい。
私たちは、安心して療養していただけるよう
に看護させていただきますが、安全性を高め
るためにはご家族のご協力が欠かせませんの
で、どうぞよろしくお願いいたします。
転倒・転落の可能性のある方には安全のため
離床センサーや頭部の保護帽などの使用を
お願いする場合があります。ご理解の上ご協
力お願い致します。
また、遠慮せずいつでも看護師をお呼びくだ
さい。
独立行政法人国立病院機構○○病院平成20年2月作成
22
(別紙4−2小児用)
安心して入院生活がおくれるために
お子様の転倒・転落防止対策
保護者の皆様へ
お子様が入院して病院で生活するということは、これまでと違う環境の中での生活スタイ
ルになります。お子様にとっても大きな不安となりますし、ご家族の方もご心配のことと
思います。病院とご家庭で一番違う点は、ベッド下の床の状況です。ご家庭では、床が畳
みやフローリングになっていますが、病院では床がコンクリートになっています。そのた
め転倒や転落により、けがや、骨折をする場合もあります。
当院では、このような事故を起こさず安全な療養生活が送れますように、万全を期して
おりますが、未然に防ぐためにもご家族の協力をお願い致します。
☆お子様が転んだり、落ちたりしないように以下についてご注意下さい。
・着替えやオムツを替える時など、衣類やオムツ、必要物品を揃えてから、ベッド柵
を降ろしましょう。
・ お子様のそばを離れる時や目を離される時は、ベッド柵を一番上まで上げておきま
しょう。
・入院したときは元気がないと思っていても、回復するにつれて元気になり、思いも
かけない行動をとることがあり、ベッド柵を乗り越えたり、勢いよく飛びついてき
たりすることもありますのでご注意ください。
・歩けるお子様は、運動靴のようなゴム底ですべらない、足にあった靴を選び
ましょう。スリッパはぬげやすく、転倒の原因となり危険ですので避けましょう
ご不明な点はご遠慮なく看護師にご相談下さい
独立行政法人国立病院機構○○○病院
23
平成 20 年 2 月作成
(別紙5)
身体抑制に関する説明書
氏名
様
突然の入院による環境の変化、病気によるさまざまな身体的、精神的な障害、また高
齢化などにより、転倒やベッドからの転落、治療上必要なチューブ類を抜いてしまうな
どの危険な行動をとる患者さんがいらっしゃいます。必要な治療を受け、入院生活を安
全に過ごしていただくために、やむをえず患者さんの身体の一部を抑制せざるをえない
場合があります。ご理解とともにご協力をお願いいたします。
Ⅰ.やむをえず身体抑制を必要とする場合
下記の理由で身体抑制が必要と判断しましたのでご理解いただきご協力をお
願いします。
1. 患者本人又は他の患者などの生命又は身体の安全を確保する時
2. 身体抑制で行動制限を行う以外に代替する看護・介護方法がない時
3. 点滴などチューブを自己抜去してしまう時
4. 転倒・転落防止
5. 治療上必要な体位の保持
6. その他(
)
Ⅱ.身体抑制の具体的方法(該当する内容の□にレをする)
□ 体幹を安全帯等で抑制する。
□ 四肢を安全帯等で抑制する。
□ 手肢の機能を制限するミトンの手袋等を使用する。
□ 車椅子移動時は Y 字型安全帯や腰ベルトを使用する。
□ 抑制服(つなぎ服)を着用する。
□ サークルベッド、4 点ベッド柵、高いベッド柵を使用する。
□ その他
抑制は必要がなくなれば直ちに終了します。
また、患者さんの状態の変化によって、抑制方法、抑制時間を変更することがあ
りますので、あらかじめご了承ください。
24
Ⅲ.身体抑制による合併症を防ぐための観察
身体抑制施行中、抑制による合併症が発生していないかを確認し必要な対応を
行います。
1.
呼吸機能の障害
・臥床状態が持続することで肺炎などの呼吸機能障害が出現すること
があります。
・臥床により下肢静脈血栓が形成され、肺塞栓症が併発することがあ
ります。
2.
皮膚の障害
・同一体位が続くと骨が突出した部分に褥創ができる場合があります。
・体動などによる抑制帯の摩擦により皮膚を痛めることがあります。
3.
関節の拘縮
・同一体位により関節の動きが制限され関節が硬くなることがありま
す。
4.
筋力の低下
・動きが制限されるため筋力が低下する事があります。
以上の説明でご不明な点がございましたらいつでもお尋ね下さい。
説明日:平成
年
月
独立行政法人国立病院機構
日
○○病院・医療センター
説明者
担当医師
担当看護師
上記の説明を受け、身体抑制に関する内容を理解しましたので、身体抑制を行うことに
同意いたします。
平成
年
月
日
同意者名
(続柄)
平成 20 年
25
月
日作成
身体拘束(抑制)フローチャート
患者に以下のような状態・恐れがあるとき
① 治療に必要なチューブ類など医療器具を抜いたり損傷しようとする場合
② 治療に必要な体位の保持や安静が保てない場合
③ 精神運動興奮などによる多動、不穏がある場合
④ 自傷行為や異食行為などが激しい場合。
⑤ 転倒、転落などの危険がある場合。
⑥ 認知力の低下等で、他患に危険が及ぼされる場合。
看護アセスメント
上記の①∼⑥の問題行動を明確にする
上記項目①∼⑥に該当しない
上記項目①∼⑥に該当する
看護計画立案と実施
① 問題行動の原因に対処する
② 身体拘束(抑制)に代わる方法を検討し試行する
③ 医師と協議する
効果なし
効果あり
①
患者・家族に説明し同意を得る
②
医師は身体拘束(抑制)の指示録に記載する
身体拘束(抑制)の実施
観察と記録
身体拘束(抑制)なし
身体拘束(抑制)の早期解除の検討
医師・看護師合同カンファレンス
身体拘束(抑制)解除
独立行政法人国立病院機構
平成 20 年
26
月
○○病院
日
作成
(別紙6)
転倒・転落を起こしやすい薬剤リスト
1.転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤
転倒・転落の要因は、病態そのものの動作障害に加え、薬剤の副作用によるものが多い。転
倒・転落リスクを高める可能性のある薬剤について、副作用と薬効分類の対応関係の主なもの
を整理すると次表のとおりとなる。
【転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤のリスト】
薬
効
分
類
リスクをもたらす副作用
睡眠鎮静薬、筋弛緩薬等
脱力、筋緊張低下
抗精神病薬、睡眠鎮静薬、抗不安薬、
眠気、ふらつき、集中力・注意力低下
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬等
降圧利尿剤等
失神、低血圧、めまい
麻薬、ジキタリス製剤、H2ブロッカー、
せん妄状態
β遮断薬等
抗悪性腫瘍薬等
全身倦怠感
下剤等
下痢、腹痛
2.薬剤投与による転倒・転落リスク低減のためのポイント
①
薬剤以外のリスク要因を正しく評価する。
②
一般に薬物有害反応発現の可能性は、投与される薬剤数の増加に伴って急増するので安易
に増やさない。
③
患者の不眠の訴えに対して、転倒・転落リスクが高い睡眠鎮静剤を安易に投与しない。
④
転倒・転落リスクを増加させる可能性がある薬剤を投与されている患者では、薬剤血中濃
度レベルと作用持続時間に影響を与える肝機能と腎機能の状態をモニターし、過量投与とな
らないように監視する。
⑤
転倒・転落リスクが高い患者に対しては、薬剤によるリスク増加を防止するために全投与
薬剤のリスク度の評価について、薬剤師が中心となって整理を行う。
⑥
睡眠鎮静薬を服用している患者に対しては、適切な服用方法、注意事項(健忘、ふらつき
等)を説明する。
⑦
発生した転倒・転落と薬剤投与の間に関連性が疑われる時は、薬剤投与によるリスクを正
しく評価し、薬剤投与と転倒・転落リスクの関係についてのデータが蓄積されるように、医
師・看護師・薬剤師が協力してエラー報告書を作成することが重要である。
27
3.睡眠鎮静薬の使用について
《睡眠鎮静薬リスト》
眠気、ふらつき、注意力の低下など意識や平衡感覚の抑制作用を有する薬剤、中でもベンゾ
ジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静薬が、転倒・転落リスクを増大させる可能
性が極めて高い薬剤と言える。「参考1」は、転倒・転落を起こす可能性が高い睡眠鎮静薬に
ついて分類、商品名、1回当たりの通常用量、作用時間等について整理したものである。
これらの薬剤は、催眠作用や鎮静作用に加え、筋弛緩作用を有するものが多い。そのために
高齢者では、中枢抑制作用に加えて起立困難や歩行障害など運動能力も低下し、転倒・転落や
骨折と強い関連性があることが報告されている。よって、各病院では、本リストを参考にしな
がら、自病院で採用されている睡眠鎮静薬の一覧表を薬剤部門が中心となって作成するととも
に、商品名や規格、作用時間、筋弛緩作用の有無等を明確に意識した上で、対策を講じていく
ことが求められる。
《転倒・転落事故防止の観点からの睡眠鎮静薬使用時の留意点》
精神機能及び運動機能に影響を及ぼす薬剤、特に中枢抑制作用と筋弛緩作用を併せ持つ睡眠
鎮静薬の使用については、慎重な検討を行うことが重要である。また、睡眠鎮静薬を服用中の
患者に対しては、以下の確認と指導が必要である。
①
記憶障害(前向性健忘)の発現に注意し、睡眠鎮静薬は必要最低限の用量とする。また、服
用後は速やかに就寝することや、作用持続時間の異なる2種類の薬剤を併用している場合に
は、必ず同時に服用するように指導する。
②
不眠の訴えに対して、転倒・転落リスクの高い睡眠鎮静薬を安易に投与しない。入院によ
る環境の変化や手術、検査への不安等による不眠に対しては、筋弛緩作用の弱い抗不安薬を
睡眠鎮静薬として使用する。
③
生活パターンを考慮して睡眠鎮静薬の服用時間を決める。可能であれば日中に散歩やリハ
ビリなどを計画して昼夜のメリハリをつける。日中に太陽光線にあたる、昼寝は午後3時ま
でに30分程度とする、など睡眠鎮静薬に頼らずに自然に睡眠に入れるような生活改善を指
導することも重要である。
④
翌朝以降も作用が持続する「持ち越し効果」の有無を確認し、必要に応じて減量や作用時
間の短い薬剤へ変更する。「持ち越し効果」がある場合には、自覚していない潜在的な眠気
の可能性を説明し、歩行時、運転時等注意を呼び掛ける。
⑤
筋弛緩作用は作用時間の長い薬剤に比較的強く発現するため、必要に応じて減量する等の
変更について、常に検討を行う。排泄が自立している高齢者では、夜間覚醒時や早朝起床時
の動作について、排泄の際には必ずコールするよう指導するなど十分な指導を行う。また、
排泄を済ませた後に服用することや夜間覚醒時の照明、履物についても指導する。
⑥
睡眠鎮静薬を中止する場合、作用時間の短い薬剤では反跳性不眠や退薬症候を生じやすい
28
ため漸減法で徐々に減量する。作用時間の長い薬剤の場合には、隔日投与にするなど投与間
隔を徐々にあけて減量する。また、作用時間の短い薬剤をいったん長い薬剤に置き換えた後
に減量する置換法も用いられる。
4.睡眠鎮静薬以外の転倒・転落リスクを増大させる薬剤リスト
睡眠鎮静薬以外の薬剤で転倒・転落リスクを増大させる薬剤リストを整理したものが、参考
2∼6である。各病院は、これらリストを参考にして、自病院で採用されている転倒・転落リ
スクを増大させる薬剤リストを、薬剤部門が中心となって、五十音順に医薬品名を並べるなど
薬剤部門以外の者にも活用しやすい形で作成するとともに、常に当該リストを念頭に置きなが
ら対策を講じていくことが必要である。
・抗精神病薬一覧表
:参考2
・降圧利尿剤一覧表
:参考3
・麻 薬 一 覧 表
:参考4
・抗悪性腫瘍薬一覧表:参考5
・下 剤 一 覧 表
:参考6
【参考文献】
1)鈴木隆雄:転倒リスクを高める要因、調剤と情報、12:554−557、2006
2)古川裕之:リスクを高める薬剤、Nursing
Today、10:65−71、2007
3)内山
真:睡眠障害の対応と治療ガイドライン、じほう、2002
4)小原
淳:転倒の原因となりうる医薬品の薬剤管理指導のポイント、薬事、Vol.50、No1
5)特集睡眠障害、医薬ジャーナル
Vol.37.No8.2001
6)各製薬会社添付文書
7)治療薬マニュアル、2007
29
30
ハルシオン
商品名
ゾピクロン
ロルメタゼパム
塩酸リルマザホン
エバミール
リスミー
酒石酸ゾルピデム
トリアゾラム
一般名
アモバン
超短時間 マイスリー
作用型
作用分類
ベンゾジアゼピン系
ハロキサゾラム
*商品名・規格は標準的医薬品
ソメリン
フルラゼパム塩酸塩
クアゼパム
ニトラゼパム
ベンザリン
ドラ−ル
フルニトラゼパム
ロヒプノール
ベノジール
長時間作
ダルメート
用型
中間作用
型
ニメタゼパム
エスタゾラム
エリミン
ユーロジン
短時間作
用型
レンドルミン ブロチゾラム
チエノジアゼピン系
レンドルミンD
ベンゾジアゼピン系
シクロピロロン系
イミダゾピリジン系
ベンゾジアゼピン系
分類
20mg ※1 手術前夜:15∼30mg ※1
10∼30mg
0.125mg(最大0.5mg)
麻酔前投薬0.25mg
5∼10mg
1日10mgを超えない
7.5∼10mg
10mgを超えない
1∼2mg
1∼2mg
2mg
0.25mg
手術前夜:0.25mg
麻酔前:0.5mg
3∼5mg
1∼4mg
手術前夜:1∼2mg
麻酔前:2∼4mg
0.5∼2mg
高齢者には1回1mgまで
−
5∼10mg
1回の使用量(成人、通常用
量)
10mg/g細粒 5∼10mg
10mg/T
5mg/T
1%散
1mg/T 2mg/T 1mg/T
2mg/T
2mg/A
1%細粒
2mg/T
5mg/T
10mg/T
15mg/T
20mg/T
10mg/P
15mg/P
0.125mg/T
0.25mg/T
5mg/T
10mg/T
7.5mg/T
10mg/T
1mg/T
1mg/T
2mg/T
0.25mg/T
規格
睡 眠 鎮 静 薬
40-60分
15-30分
40-60分
20-50分
20-30分
15-30分
15-30分
15-30分
15-30分
15-30分
15-30分
7-27分
15-30分
25-41時間
24-48時間
7時間
24時間
24時間
7時間
10時間
10.5時間
3.9時間
2時間
2.9時間
半減期
42-123時間
【参考文献】
治療薬マニュアル2007
各社添付文書
6-9時間
+∼++
+
±
+∼++
+∼++
++
++∼+++
+
±∼+
++
±∼+
±∼+
++
筋弛緩作用
10-30時間 5.9時間
(2.3-12時間)
6-8時間
4-8時間
8時間
4-8時間
4-6時間
7時間
6-8時間
6-8時間
6-8時間
6-8時間
6-7時間
作用時間
作用発現時間 作用時間
(参考1)
(参考2)
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
分類
剤ク
ロ
ル
プ
ロ
マ
ジ
ン
製
医薬品名
一般名
規格
塩酸クロルプロマジン
10%散
ウインタミン錠 塩酸クロルプロマジン
12.5mg錠、25mg錠、50mg錠、100mg錠
コントミン散
塩酸クロルプロマジン
10%散
コントミン糖衣錠
塩酸クロルプロマジン
12.5mg錠、25mg錠、50mg錠、100mg錠
コントミン筋注 10mg 2mL
塩酸クロルプロマジン
0.5% 2mL、0.5%5ml、1%5ml、
ニューレプチル細粒 プロペリシアジン
10%散
ニューレプチル錠 プロペリシアジン
5mg錠、10mg錠、25mg錠
トリフロペラジン散 マレイン酸トリフロペラジン
1%散
トリフロペラジン糖衣錠 マレイン酸トリフロペラジン
2.5mg 錠
フルメジン散 マレイン酸フルフェナジン
0.2%散
フルメジン糖衣錠 マレイン酸フルフェナジン
0.25mg錠、0.5mg錠、1mg錠
フ
ノバミン錠 マレイン酸プロクロルペラジン
5mg錠
ノ
チ
ア
ジ
ン
系
製
剤
ピーゼットシー散 フェンジゾ酸ペルフェナジン
1%散
ピーゼットシー糖衣錠 2mg
マレイン酸ペルフェナジン
2mg錠、4mg錠
ヒルナミン散
マレイン酸レボメプロマジン
10%散、50%散
ヒルナミン錠 25mg
マレイン酸レボメプロマジン
5mg錠、25mg錠、50mg錠
ヒルナミン筋注
塩酸レボメプロマジン
25mg 1mL
レボトミン散 マレイン酸レボメプロマジン
10%散、50%散
レボトミン顆粒 マレイン酸レボメプロマジン
10%顆粒
レボトミン錠 25mg
マレイン酸レボメプロマジン
25mg錠、50mg錠
ェ
ウインタミン細粒 イ
ミ
プ
ラ
ミ
ン
系
製
剤
そ
の
他
レボトミン筋注 塩酸レボメプロマジン
2.5% 1mL
フルデカシンキット筋注 デカン酸フルフェナジン
25mg 1mLキット
フルデカシン筋注 デカン酸フルフェナジン
25mg 1mL
ノバミン筋注
プロクロルペラジン
5mg 1mL
イミドール糖衣錠 塩酸イミプラミン
10mg錠
トフラニール錠 塩酸イミプラミン
10mg錠、25mg錠
アナフラニール錠10mg
塩酸クロミプラミン
10mg錠、25mg錠
アナフラニール注射液 塩酸クロミプラミン
25mg 2mL
アンプリット錠 塩酸ロフェプラミン
10mg錠、25mg錠
アモキサン細粒
アモキサピン
10%散
アモキサン カプセル 25mg
アモキサピン
10mgCap、25mgCap、50mgCap
エビリファイ散
アリピプラゾール
1%散
エビリファイ錠
アリピプラゾール
3mg 錠、6mg錠
エチカーム錠 エチゾラム
0.5mg錠
エチゾラム錠 エチゾラム
0.5mg錠
セデコパン細粒 エチゾラム
10%散
セデコパン錠 エチゾラム
0.5mg錠、1mg錠
デゾラム錠 エチゾラム
0.5mg錠、1mg錠
デパス細粒 エチゾラム
1%散
デパス錠 エチゾラム
0.5mg錠、1mg錠
パルギン錠 エチゾラム
1mg錠
メディピース錠 エチゾラム
0.5mg錠
トリプタノール錠 塩酸アミトリプチリン
10mg錠、25mg錠
ノーマルン錠 塩酸アミトリプチリン
10mg錠
クロフェクトン顆粒 塩酸クロカプラミン
10%散
クロフェクトン錠 塩酸クロカプラミン
25mg錠、50mg錠
31
分類
そ
の
他
医薬品名
一般名
規格
スタドルフ細粒 塩酸スルトプリド
50%散
スタドルフ錠 塩酸スルトプリド
100mg錠、200mg錠
バチール錠 塩酸スルトプリド
200mg錠
バルネチール細粒 塩酸スルトプリド
50%散
バルネチール錠
塩酸スルトプリド
50mg錠、100mg錠、200mg錠
ジェイゾロフト錠
塩酸セルトラリン
25mg錠、50mg錠
プロチアデン錠
塩酸ドスレピン
25mg錠
アンデプレ錠 塩酸トラゾドン
25mg錠、50mg錠
デジレル錠
塩酸トラゾドン
25mg錠、50mg錠
レスリン錠
塩酸トラゾドン
25mg錠、50mg錠
ノリトレン錠 塩酸ノルトリプチリン
10mg錠、25mg錠
パキシル錠 塩酸パロキセチン水和物
10mg錠、20mg錠
アタラックスP注射液
塩酸ヒドロキシジン
25mg 1ml、50mg1ml
アタラックス錠 塩酸ヒドロキシジン
10mg錠、25mg錠
プロピタン散 塩酸フロロピパミド
10%散
プロピタン錠 塩酸フロロピパミド
50mg錠
ルーラン錠 塩酸ペロスピロン水和物
4mg 錠、8mg錠
クロンモリン錠 塩酸マプロチリン
10mg錠
ノイオミール錠 塩酸マプロチリン
10mg錠、25mg錠
ルジオミール錠 塩酸マプロチリン
10mg錠、25mg錠
テトラミド錠 塩酸ミアンセリン
10mg錠、30mg錠
トレドミン錠 15mg
塩酸ミルナシプラン
15mg錠、25mg錠
リタリン散「チバ」 塩酸メチルフェニデート
1% 散
リタリン錠「チバ」 塩酸メチルフェニデート
10mg錠
クレミン錠
塩酸モサプラミン
25mg錠
クレミン顆粒
塩酸モサプラミン
10% バラ散
ルバトレン錠 塩酸モペロン
5mg錠
ホーリット散
オキシペルチン
10%散
ホーリット錠
オキシペルチン
40mg錠
ジプレキサザイディス錠
オランザピン
5mg錠、10mg錠
ジプレキサ細粒 オランザピン
1% 散
ジプレキサ錠 オランザピン
2.5mg錠、5mg錠、10mg 錠
リーゼ錠 クロチアゼパム
5mg錠、10mg錠
リーゼ顆粒 クロチアゼパム
10%散
ベゲタミン錠−A
クロルプロマジン・プロメタジン配合剤
錠
ベゲタミン錠−B
クロルプロマジン・プロメタジン配合剤
錠
スピロピタン散
スピペロン
0.3%散
スピロピタン錠
スピペロン
1mg錠
アビリット錠
スルピリド
100mg錠、200mg錠
スルピリド錠
スルピリド
100mg錠、200mg錠
ドグマチール錠 スルピリド
100mg錠、200mg錠
ミラドール錠
スルピリド
100mg錠、200mg錠
セトウス細粒 ゾテピン
10% 散
セトウス錠
ゾテピン
50mg錠
メジャピン細粒
ゾテピン
10%散
メジャピン錠 ゾテピン
25mg錠、50mg錠
ロシゾピロン細粒
ゾテピン
10%散
ロシゾピロン錠 ゾテピン
25mg錠、50mg錠
32
分類
そ
の
他
医薬品名
一般名
規格
ロドピン細粒 ゾテピン
10%散、50%散
ロドピン錠 ゾテピン
25mg錠、50mg錠、100mg錠
リーマス錠 炭酸リチウム
100mg錠、200mg錠
炭酸リチウム錠 「ヨシトミ」
炭酸リチウム
100mg錠、200mg錠
セルマニル細粒
チミペロン
1%散
セルマニル錠 チミペロン
3mg錠
トロペロン細粒 チミペロン
1%散
トロペロン錠0.5mg
チミペロン
0.5mg錠、1mg錠、3mg錠
ネオペリドール注
デカン酸ハロペリドール
50A、100mgA
ハロマンス注
デカン酸ハロペリドール
50mgA、100mgA
エミレース細粒
ネモナプリド
2%散
エミレース錠
ネモナプリド
3mg錠、10mg錠
アタラックス−Pカプセル
パモ酸ヒドロキシジン
25mgCAP
アタラックス−Pシロップ
パモ酸ヒドロキシジン
0.5% 500mL
アタラックス−Pドライシロップ
パモ酸ヒドロキシジン
2.5%散
アタラックス−P散 パモ酸ヒドロキシジン
10%散
セレネース細粒
ハロペリドール
1%散
セレネース錠 ハロペリドール
0.75mg錠、1.5mg錠、1mg錠、3mg錠
セレネース注 ハロペリドール
0.5%
セレネース内服液 ハロペリドール
0.2%500mL
ハロステン細粒
ハロペリドール
1%散
ハロステン錠 ハロペリドール
1mg錠、2mg錠
リントン細粒 ハロペリドール
1% 500g
リントン錠 ハロペリドール
0.75mg錠、1.5mg錠、3mg錠
リントン注 ハロペリドール
0.5% 1ml
オーラップ細粒 ピモジド
1%散
オーラップ錠 ピモジド
1mg錠、3mg錠
セロクエル錠
フマル酸クエチアピン
25mg錠、100mg 錠
セロクエル細粒 フマル酸クエチアピン
50%散
インプロメン細粒
ブロムペリドール
1%散
インプロメン錠 ブロムペリドール
1mg錠、3mg錠、6mg錠
プリンドリル細粒 ブロムペリドール
10mg散
ルナプロン細粒
ブロムペリドール
1% 散
ルナプロン錠 ブロムペリドール
1mg錠、3mg錠、6mg錠
デフェクトン糖衣錠
マレイン酸カルピプラミン
25mg錠
テシプール錠 マレイン酸セチプチリン
1mg錠
デプロメール錠 マレイン酸フルボキサミン
25mg錠、50mg錠
ルボックス錠 マレイン酸フルボキサミン
25mg錠、50mg錠
リスパダール細粒 リスペリドン
1%散
リスパダール錠 リスペリドン
1mg錠、2mg錠、3mg錠
リスパダール内用液1mg/mL
リスペリドン
0.5ml包、1ml包、2ml包
リスパダール内用液1mg/mL
リスペリドン
30ml瓶、100ml瓶
1mL
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
33
(参考3)
降 圧 利 尿 剤 一 覧 表
薬品名
サ
イ
ア
ザ
イ
ド
系
及
び
類
似
利
尿
薬
ー
K
保
持
生
利
尿
剤
浸
利
透
尿
性
剤
炭
酸
脱
水阻
酵害
素剤
投与回数
(回/日)
投与量
作用発現
時間(hr)
作用持続
時
間
1∼2
6∼12
2
24
−
−
−
−
−
20∼24
−
−
−
−
−
24
25mg 1T
25∼100mg/回
1∼2回
フルイトラン
2mg 1T
2∼8mg/日
4mg 1T
1∼2T/回
1∼2回
2回
維:2∼3回/週
4mg 0.1mg 5mg
1∼2T/回 維:1∼
2T/日
ベハイドRA
トリクロルメチアジド
ベンチル
ヒドロクロロチアジド
ベンチル
ヒドロクロロチアジド
レセルピン
カルバゾクロム
バイカロン
メフルシド
25mg 1T
25∼50mg/日
1∼2回
1∼2回
1回→朝
2回→朝・昼
アレステン
メチクラン
150mg 1T
ハイグロトン
クロルタリドン
1∼2回
1回
連日or隔日
ナトリックス
インダパミド
50mg 1T
1mg 1T
2mg 1T
1T/回
50∼100mg/日 100
∼200mg/日
1T/回
1回
−
8
1T/回
1回
連日or隔日
1
6
フロセミド
15mg 1T
4% 細粒
20mg 1T
40mg 1T
1∼2回
1回→朝
2回→朝・昼
1P/回
1∼2回
2
−
アレリックス
ピレタニド
40mg 1P
3mg 1T
6mg 1T
3∼6mg/日
1∼2回
−
−
ルネトロン
ブメタニド
1∼2T/日
1∼2回
ダイアート
アゾセミド
1mg 1T
30mg 1T
60mg 1T
60mg/日
1回
ルプラック
トラセミド
4mg 1T
8mg 1T
4∼8mg/日
1回
スピロノラクトン
100mg/g 細粒
25mg 1T
50mg 1T
50∼100mg/日
分割
ソルダクトン注
カンレノ酸カリウム
100mg1管
200mg1管
100∼200mg/日
1∼2回
トリテレン
トリアムテレン
50mg 1P
2∼4P/日
2∼3回
ベハイド
ラシックス
プ
利
尿
剤
規格
ダイクロトライド ヒドロクロロチアジド
ノルモナール
ル
一 般 名
トリパミド
オイテンシン
アルダクトンA
40∼80mg/回
70%ml
イソバイド
ダイアモックス
イソソルビド
末
250mg 1T
アセタゾラミド
70∼140ml
2∼3回
疾患により
異なる
疾患により
異なる
500mg1瓶
ダイアモックス注
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
34
6∼8
1
9
0.5∼1
6
3∼8日
休薬後も
48∼72
10分
1∼1.5
2
8∼12
0.5∼1
4∼6
0.3∼1
6∼12
(参考4)
麻 薬 一 覧 表
分 類
アヘン製剤
商品名
アヘン
アヘンチンキ
一般名
アヘン
パンオピン
パンオピン注
塩酸アヘンアルカロイド
塩酸エチルモルヒネ
2% 1mL
末
末 錠10mg
オプソ内服液
5mg 10mg
パシーフカプセル
30mg 60mg 120mg
塩酸モルヒネ
10mg 50mg 200mg
プレペノン1%注シリンジ
50mg 100mg
アンペック注
10mg 50mg 200mg
アンペック坐剤
10mg
MSコンチン錠
ア
ヘ
ン
ア
ル
カ
ロ
イ
ド
系
10%
塩酸モルヒネ
塩酸モルヒネ注射液
モルヒネ系
製剤
末 散10%
末
オピアル注射液
塩酸エチルモルヒネ
規格
10mg 30mg 60mg
MSツワイスロン カプセル
カディアン カプセル
カディアン スティック 粒
20mg 30mg
硫酸モルヒネ
20mg 30mg 60mg
30mg 60mg 120mg
ピーガード錠
20mg 30mg 60mg 120mg
モルペス細粒
2% 6%
コデイン系
製剤
リン酸コデイン
リン酸コデイン
末 散10% 錠20mg
リン酸ジヒドロコデイン
リン酸ジヒドロコデイン
末 散10%
その他の
アヘン
アルカロイド
系
麻薬
オキシコンチン錠
オキノーム散
メテバニール錠
オピアト注射液
パンアト注
塩酸オキシコドン
オキシメテバノール
5mg 10mg 20mg 40mg
0.5%
2mg
アヘンアルカロイド・アトロピン 1mL
オピスコ注射液
ハンスコ注
配合剤
ロイド系アルカ
コカ
非
ア
ル
カ
ロ
イ
ド
系
弱ハンスコ注
弱オピスコ注射液
モヒアト注射液
モルヒネ・アトロピン
1mL
ドーフル散
アヘン・トコン散
散
パビナール注
複方オキシコドン
1mL
パビナール・アトロピン注
複方オキシコドン・アトロピン
1mL
コカイン系製剤 塩酸コカイン
塩酸コカイン
末
フェニル
ピヘリジン系
製剤
塩酸ペチジン
その他の
合成麻薬
配合剤
オピスタン
オピスタン注
末
35mg、50mg
フェンタニル注射液
クエン酸フェンタニル
0.1mg 0.25mg
デュロテップパッチ
フェンタニル
2.5mg 5mg 7.5mg 10mg
アルチバ静注用
塩酸レミフェンタニル
2mg 5mg
タラモナール
クエン酸フェンタニル ドロペリドール
2mL
ペチロルファン注射液
弱ペチロルファン注射液
全身麻酔剤
アヘンアルカロイド・スコポラミン 1mL
塩酸ペチジン・酒石酸レバロルファン 1mL
ケタラール注
塩酸ケタミン
静注200mg 筋注500mg
9
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
35
(参考5)
抗 悪 性 腫 瘍 薬 一 覧 表
分類
医薬品名
プラトシン注50 50mg 100mL
一般名
ダカルバジン
塩酸ニムスチン
ラニムスチン
メルファラン
メルファラン
シクロホスファミド
チオテパ
ブスルファン
イホスファミド
シクロホスファミド
塩酸ミトキサントロン
塩酸ミトキサントロン
塩酸プロカルバジン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸ノギテカン
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
ソブゾキサン
ネダプラチン
ネダプラチン
ネダプラチン
オキサリプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
ブリプラチン注
シスプラチン
動注用アイエーコール50mg
シスプラチン
ランダ注
シスプラチン
パラプラチン注射液
カルボプラチン
注射用パラプラチン150mg
カルボプラチン
カルボメルク注射液1%
カルボプラチン
クレスチン
かわらたけ多糖体製剤
かわらたけ多糖体製剤
シゾフィラン
レンサ球菌抽出物
レンサ球菌抽出物
ウベニメクス
レンチナン
レンチナン
タミバロテン
ゲフィチニブ
メシル酸イマチニブ
トラスツズマブ(遺伝子組換え)
ダカルバジン注用100
ニトロソウレア類他
ニドラン注射用 25mg
注射用サイメリン100mg
アルケラン錠 2mg
ア
ル
キ
ル
化
剤
アルケラン静注用 50mg
エンドキサンP錠 50mg
マスタード類
テスパミン注射液 5mg 0.5mL
マブリン散 10mg
注射用イホマイド1g
注射用エンドキサン 100mg
アントラキノン系
ニトロソウレア類他
ノバントロン注 10mg 5mL
ノバントロン注 20mg 10mL
塩酸プロカルバジンカプセル50mg
カンプト注 100mg 5mL
ト
ポ
イ
ソ
メ
ラ
トポイソメラーーゼ
Ⅰ阻害剤
ゼ
阻
害
剤
トポイソメラーーゼ
Ⅱ阻害剤
カンプト注 40mg 2mL
トポテシン注 100mg 5mL
トポテシン注 40mg 2mL
ハイカムチン注射用 1.1mg
ーー
ベプシドS 25mg
ベプシドS 50mg
ベプシド注100mg 5mL
ラステットSカプセル25mg
ラステットSカプセル50mg
ラステット注100mg/5mL
ラステット注100mg/5mL
ペラゾリン細粒 400mg
白
金
製
剤
アクプラ静注用 10mg
アクプラ静注用 50mg
アクプラ静注用 100mg
エルプラット注射用100mg
シスプラチン注 10mg 20mL
シスプラチン注 25mg 50mL
シスプラチン注 50mg100mL
シスプラメルク注射液10mg 20mL
シスプラメルク注射液50mg100mL
プラトシン注10 10mg 20mL
プラトシン注25 25mg 50mL
非
特免
異疫
的賦
活
剤
クレチール末
ソニフィラン 20mg 2mL
ピシバニール注射用1KE
ピシバニール注射用5KE
ベスタチン30 カプセル
レンチナン静注用1mg「アステラス」
レンチナン静注用1mg「味の素」
治分
療子
薬標
的
アムノレイク錠2mg
イレッサ錠 250mg
グリベック錠100mg
ハーセプチン注射用 150mg
36
規格
100mg
25mg,50mg
50mg,100mg
2mg
50mg
50mg
5mg/0.5mL
10mg
1g
100mg,500mg
10mg/5mL
20mg/10mL
50mg
100mg/5mL
40mg/2mL
100mg/5mL
40mg/2mL
1.1mg
25mg
50mg
100mg
25mg
50mg
100mg/5mL
100mg/5mL
400mg
10mg
50mg
100mg
100mg
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/100mL
10mg/20mL
50mg/100mL
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/100mL
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg,100mg
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/5mL
150mg/15mL
150mg
50m/5mL
150mg/15mL
1g
1g
20mg/2mL
1KE
5KE
30mg
1mg
1mg
2mg
250mg
100mg
150mg
分類
医薬品名
薬分
子
標
的
治
療
ハーセプチン注射用 60mg
ベサノイド カプセル 10mg
リツキサン注 100mg 10mL
リツキサン注 500mg 50mL
マイロターグ注射用 5mg
エストラジオール
エストラジオール
アロマターゼ
阻害薬
抗アンドロゲン剤
ホ
ル
モ
ン
類
似
薬
抗エストロゲン剤
LH-RHアゴニスト
そ
の
他
抗
腫
瘍
性
抗
生
物
質
製
剤
アントラキノン系
その他
一般名
トラスツズマブ(遺伝子組換え)
トレチノイン
リツキシマブ(遺伝子組換え)
リツキシマブ(遺伝子組換え)
ゲムツズマブオゾガマイシン
(遺伝子組換え)
リン酸エストラムスチン
ナトリウム
リン酸エストラムスチン
ビアセチル カプセル 156.7mg
ナトリウム
アフェマ錠 1mg
塩酸ファドロゾール水和物
フェマーラ錠2.5mg
レトロゾール
アリミデックス錠1mg
アナストロゾール
アロマシン錠 25mg
エキセメスタン
オダイン錠 125mg
フルタミド
カソデックス錠80mg
ビカルタミド
タスオミン錠10mg
クエン酸タモキシフェン
タスオミン錠20mg
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス錠10mg
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス錠20mg
クエン酸タモキシフェン
フェアストン錠 40mg
クエン酸トレミフェン
フェアストン錠 60mg
クエン酸トレミフェン
フェノルルン錠 10mg
クエン酸タモキシフェン
ゾラデックス3.6mgデポ(SS)
ゴセレリン
ゾラデックス 1.8mgデポ
ゴセレリン
ゾラデックスLA10.8mgデポSS
ゴセレリン
リュープリン注射用3.75ゼラチン除
リュープロレリン
リュープリン注射用1.88ゼラチン除
リュープロレリン
リュープリン注射用 1.88mg
リュープロレリン
リュープリン注射キット1.88ゼラ除
リュープロレリン
リュープリン注射キット3.75ゼラ除
リュープロレリン
リュープリンSR注射用キット
リュープロレリン
コホリン 7.5mg
ペントスタチン
トリセノックス注10mg 10mL
三酸化ヒ素
ペプレオ注 10mg
硫酸ペプロマイシン
ペプレオ注 5mg
硫酸ペプロマイシン
アクラシノン注射用 20mg
塩酸アクラルビシン
アドリアシン注用10
塩酸ドキソルビシン
イダマイシン注 5mg
塩酸イダルビシン
カルセド注射用20mg
塩酸アムルビシン
カルセド注射用50mg
塩酸アムルビシン
コスメゲン 0.5mg
アクチノマイシンD
ダウノマイシン 20mg
塩酸ダウノルビシン
テラルビシン注射用10mg
塩酸ピラルビシン
テラルビシン注射用20mg
塩酸ピラルビシン
ピノルビン注 10mg
塩酸ピラルビシン
ピノルビン注 20mg
塩酸ピラルビシン
ファルモルビシンRTU注50mg25mL 塩酸エピルビシン
ファルモルビシンRTU注射10mg5mL 塩酸エピルビシン
ファルモルビシン注射用10mg
塩酸エピルビシン
ファルモルビシン注射用50mg
塩酸エピルビシン
ブレオS軟膏 5mg
硫酸ブレオマイシン
ブレオ注射用15mg
塩酸ブレオマイシン
ブレオ注射用30mg
塩酸ブレオマイシン
ブレオ注射用5mg
塩酸ブレオマイシン
マイトマイシン注用 10mg
マイトマイシンC
マイトマイシン注用 2mg
マイトマイシンC
塩酸エピルビシン注10mg
塩酸エピルビシン
塩酸エピルビシン注50mg
塩酸エピルビシン
スマンクス肝動注用4mg
ジノスタチンスチマラマー
スマンクス肝動注用6mg
ジノスタチンスチマラマー
オンコビン注射用 1mg
硫酸ビンクリスチン
エクザール注射用 10mg
硫酸ビンブラスチン
規格
60mg
10mg
100mg/10mL
500mg/50mL
5mg
エストラサイト カプセル
37
156.7mg
1mg
2.5mg
1mg
25mg
125mg
80mg
10mg
20mg
10mg
20mg
40mg
60mg
10mg
3.6mg
1.8mg
10.8mg
3.75mg
1.88mg
1.88mg
1.88mg
3.75mg
11.25mg
75mg
10mg/10mL
10mg
5mg
20mg
10mg
5mg
20mg
50mg
0.5mg
20mg
10mg
20mg
10mg
20mg
50mg/25mL
10mg/5mL
10mg
50mg
5g
15mg
30mg
5mg
10mg
2mg
10mg
50mg
4mg
6mg
1mg
10mg
分類
微
小
管
阻
害
薬
ビンカアルカロイド
タキサン
代
謝
拮
抗
剤
医薬品名
一般名
酒石酸ビノレルビン
ナベルビン注 40mg 4mL
酒石酸ビノレルビン
注射用フィルデシン 1mg
硫酸ビンデシン
注射用フィルデシン 3mg
硫酸ビンデシン
タキソール注射液30mg 5mL
パクリタキセル
タキソール注射液100mg16.7mL
パクリタキセル
タキソテール注 20mg 0.5mL
ドセタキセル水和物
タキソテール注 80mg 2mL
ドセタキセル水和物
パクリタキセル注30mg/5mL「NK」 パクリタキセル
5−FU錠100
フルオロウラシル
5−FU錠50
フルオロウラシル
5−FU注250協和 250mg
フルオロウラシル
ナベルビン注 10mg 1mL
5−FU軟膏 5%
5−FU軟膏 5%
キロサイドN注400mg 20mL
キロサイド注100mg 5mL
キロサイド注200mg
キロサイド注20mg 1mL
キロサイド注40mg 2mL
キロサイド注60mg 3mL
サンフラールS 200mg
ジェムザール注射用 1g
ジェムザール注射用 200mg
スタラシドカプセル 100mg
ピリミジン系
スタラシドカプセル 50mg
ゼローダ錠 300mg
ティーエスワン カプセル 20mg
ティーエスワン カプセル 25mg
フルオロウラシル
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
テガフール
塩酸ゲムシタビン
塩酸ゲムシタビン
シタラビンオクホスファート
シタラビンオクホスファート
カペシタビン
テガフール・ギメラシル
・オテラシル配合剤
テガフール・ギメラシル
・オテラシル配合剤
ハイドレア カプセル 500mg
スミフェロンDS 300万国際単位
インターフェロンα
300万国際単位
スミフェロンDS 600万国際単位
インターフェロンα
600万国際単位
イントロンA注射用300
インターフェロンα-2b
300万国際単位
イントロンA注射用600
インターフェロンα-2b
600万国際単位
オーアイエフ500万IUヒト血清フリ
インターフェロンα
ヒト血清アルブミンフリ-
イムノマックス−γ注 50万単位
インターフェロンγ-1a
50万単位
イムネース注 35万国内標準単位
テセロイキン
35万国内標準単位
オーガンマ 100万国際単位
インターフェロンγ-n1
100万国際単位
フルツロン カプセル 100
フルツロン カプセル 200
ミフロール錠 100mg
ユーエフティE顆粒0.75gX105
ユーエフティE顆粒20%
ユーエフティカプセル100mg
注射用サンラビン 150mg
注射用サンラビン 200mg
注射用サンラビン 250mg
ロイスタチン注 8mg
フルダラ静注用50mg
ロイケリン散 100mg
ロイナーゼ注用5000
ロイナーゼ注用10000
メソトレキセート錠 2.5mg
葉酸系
メソトレキセート注射液 200mg
注射用メソトレキセート 50mg
注射用メソトレキセート 5mg
その他
サ
イ
ト
カ
イ
ン
インターフェロン
25mg
25mg
200mg
100mg
200mg
100mg
0.75g
0.5g,1g
100mg
150mg
200mg
250mg
8mg
40mg
100mg
5000KE
10000KE
25mg
200mg
50mg
5mg
500mg
テフシール・C 200mg
プリン系他
20mg
テガフール
ドキシフルリジン
ドキシフルリジン
カルモフール
テガフール・ウラシル
テガフール・ウラシル
テガフール・ウラシル
エノシタビン
エノシタビン
エノシタビン
クラドリビン
リン酸フルダラビン
メルカプトプリン
L−アスパラギナーゼ
L−アスパラギナーゼ
メトトレキサート
メトトレキサート
メトトレキサート
メトトレキサート
ヒドロキシカルバミド
ティーエスワン カプセル 25mg
プリン系
規格
10mg/1mL
40mg/4mL
1mg
3mg
30mg/5mL
100mg/16.7mL
20mg/0.5mL
80mg/2mL
30mg/5mL
10mg
50mg
250mg
5% 20g
5% 5g
400mg/20mL
100mg/5mL
200mg
20mg/1mL
40mg/2mL
60mg/3mL
200mg
1g
200mg
100mg
50mg
300mg
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
38
(参考6)
下 剤 一 覧 表
分 類
塩類下剤
膨張性下剤
浸潤性下剤
(軟化剤)
糖類下剤
商 品 名
一
般
名
規 格
硫酸マグネシウム
硫酸マグネシウム
末 99%以上
酸化マグネシウム
酸化マグネシウム
末 96%以上
バルコーゼ
カルメロース ナトリウム
顆粒 75%
ビーマスS
ジオクチルソジウム
スルホサクシネート
錠 30mg
D−ソルビトール
D−ソルビトール
液 65%,75% 末 100%
モニラック
ラクツロース
シロップ 65% 散 100%
センナ
センナ
末
アジャストA
センナエキス
錠 40mg (センナエキス)
アローゼン
センナ葉・センナ実
顆粒 0.5g,1g
プルゼニド
センノシド
錠 12mg ラキソベロン
錠,液
錠 2.5mg 液 75mg (1ml)
大腸刺激性下剤
小腸刺激性下剤
テレミンソフト坐薬1号 ビサコジル
2mg
テレミンソフト坐薬3号 ビサコジル
10mg
ヒマシ油 ,加香ヒマシ油 ヒマシ油
マグコロール
クエン酸マグネシウム
液 34g (250ml)
マグコロールP
クエン酸マグネシウム
散 34g (50g)
ニフレック
電解質配合
散剤1袋 (137.155g)
新レシカルボン
坐剤 炭酸水素ナトリウム
無水リン酸二水素ナトリウム
500mg
680mg
グリセリン
グリセリン
液
その他
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
39
(別紙7)
1.トイレに行くとき
トイレ歩行時は足元に注意しましょう
いつでも看護師がお手伝いさせて頂き
ます。ご遠慮なくナースコールを押して
下さい
4.手すりや杖を利用しましょう
大丈夫と思っていてもしばらく寝て
いると体力は落ちてしまいます。
歩く時には手すりや杖を利用しましょう
2.履物について
スリッパやサンダルはやめましょう
滑りにくい履物を履きましょう
5.立ち上がるとき
ストッパーがないオーバーテーブルや
歩行器を支えに立ち上がると危険です。
オーバーテーブルや歩行器を支えにし
て立ち上がらないようにしましょう
気分が悪い時やめまい、ふらつきが
あるときは無理をせず看護師をお呼び
下さい。
3.睡眠薬について
睡眠薬の服用により転倒の危険性は
高くなります。
服用される場合は睡眠薬を飲む前に
トイレを済ませておきましょう
ご心配なことがありましたら遠慮なく看護師にご相談下さい。
独立行政法人国立病院機構○○病院
独立行政法人国立病院機構○○病院
40
1
トイレに移動される時は
看護師を
お呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
トイレに移動されるときは
看護師にお知らせ下さい
私をナースコールで呼んで
お手伝いさせて下さい
国立病院機構○○病院看護部
41
2
段差に
注意!
独立行政法人国立病院機構○○病院
足元 に
注意!
独立行政法人国立病院機構○○病院
42
3
ベッドを離れるときは
看護師をお呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
トイレが終わりましたら
看護師をお呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
43
4
トイレに行くときは
看護師をお呼び下さい
独立行政法人国立病院機構○○病院
お休み前に
トイレに行きましょう!
独立行政法人国立病院機構○○病院
44
5
朝方のトイレ歩行は
ふらつきに注意
独立行政法人国立病院機構○○病院
危険です!
オーバーテーブル
には
寄りかからない
で下さい!
45
6
手をついて体重を
かけると危険です
寄りかかると危険!
オーバーテーブルに寄りかかりす
ぎると後ろに倒れて危険です
7
46
気をつけて
車椅子の足台に体重をかけると
転倒の危険があります
段差に注意!
点滴中の歩行
つまずかない
よう気をつけて
8
47
患者用
ぬれた床に注意!
で床
御が
注ぬ
意れ
下て
さい
いる
!と
転
び
や
す
い
の
トイレ・洗面
台・廊下
職員用
ぬれた床は
直ぐに拭きましょう!
9
48
リスク判定Aの患者(赤)
看護師が患者の状況を共有するために
ベッドネームなどに表示
リスク判定Bの患者(黄)
看護師が患者の状況を共有するために
ベッドネームなどに表示
49
リスク判定Cの患者(緑)
看護師が患者の状況を共有するために
ベッドネームなどに表示
50
(別紙8)
転 倒 ・ 転 落 事 故 事 例 集
◎ 《 》内の英数字は、
「転倒・転落アセスメントシート」の項目番号である。多くの事
例で複数の項目が付されているが、これらの組み合わせが、よりリスクが高くなる組合
せとなることに留意が必要である。
類型1:排泄に関連した転倒・転落
(1)何度も看護師を呼ぶことへの遠慮や同室者への気遣いから、援助を依頼することな
く自力でトイレに向かい転倒したケース
【事例1】《D①、E③④、H③》
下肢筋力低下により歩行障害のある患者。夜間排尿の際のポータブルトイレ使用時に
は、コールするよう看護師から説明を受けていたが、コールするのは申し訳ない思いと、
自力でも大丈夫との思いによりベッドを離れる。ポータブルトイレのふたを開けようと
したとき、ふらつきそのまま転倒
【事例2】《D①、H②、I①、J③》
睡眠鎮静薬を服用中の患者。病室内のトイレに行こうとベッドから立ち上がりかけた
が、左足に力が入らずふらつき、左側に転倒。病室内のトイレには段差があるため、排
泄時は看護師が付き添い車椅子用トイレを使用していたが、頻尿で何度も看護師を呼ぶ
ことへの遠慮から、自力でトイレに行こうとしたもの
【事例3】《D①、E③④、H③》
下肢筋力の低下による歩行障害のため、医師の指示によりポータブルトイレをベッド
脇に設置。個室ではなかったため他の患者への気遣いから、これを使用せず病室の外に
あるトイレに向かう途中、バランスを崩し転倒
〔再発防止策〕
①転倒・転落リスクの高い患者の排泄パターンを把握し、患者の状況に応じ時宜を得た
排泄誘導を行う。
②患者・家族に対して、アセスメントの結果や転倒・転落リスク、転倒の危険性等につ
いて説明するとともに、排泄のためトイレに移動する際は、必ず看護師が付きそうの
でコールするよう指導する。また、患者の目につくところに「トイレのときはナース
コールを押してください」と表示する。
③特に夜間については必ず看護師と一緒に動くよう指導するとともに、介助を行う際は、
必ず覚醒していることを確認する。
④就寝誘導時は必ず排尿誘導を行い、排尿のない場合でも定期的に訪室し体動があれば
尿意の確認をする。
⑤アセスメント結果による転倒・転落リスク、排泄パターン等についての情報をスタッ
フ間で確実に共有する。
51
(2)排泄終了時や看護師がその場を一時的に離れた際に転倒が発生したケース
【事例4】《D②、E③⑤、H②③》
ナースコールにより尿意の訴えがあり、看護師がポータブルトイレへの移動介助を行
う。看護師は、ポータブルトイレへの移動介助終了後、外で待機していた。排尿が終了
した気配があり、中を見ると患者が床に倒れていた。ズボンを履こうとしてふらつき転
倒したもの
【事例5】《D①②、E③⑤、H②》
トイレまでは看護師による支持歩行にて移動する。看護師は、患者を便座に座らせた
後、その場を離れ別の患者の排泄介助を行っていた。大きな音がしたため駆けつけると、
トイレから3m 離れた場所で仰向けに倒れている患者を発見。看護師を呼ぶのを遠慮し
て帰室しようとしていた際に転倒したもの
【事例6】《D③、E③⑤、H②》
離床マットのコールにより看護師が訪室。尿意の訴えがあり、室内トイレまで移動介
助を行う。
「終わったらナースコールを押す」との患者の言葉があったことから、終了後
はコールがあると思い看護師はその場を離れたが、ナースコールがないため訪室すると
ベッド前で転倒している患者を発見したもの
〔再発防止策〕
①患者の側を離れる際は必ず声かけをして、ナースコールを患者の膝に置いたり、持た
せるなどのセッティングを行うとともに、終了後も介助を行う旨を伝え必ずナースコ
ールをするよう指導する。
②排泄中はプライバシーには十分配慮しつつ側で待機する。特に、転倒・転落リスクの
高い患者の場合は、排泄が終了し帰室するまで患者の側を離れないことを原則とする。
③他の患者のコールへの対応等によりやむを得ずその場を離れなければならなくなった
場合は、離れる際に必ず介助に戻るまでは動かないよう声掛けを行う。
類型2:介助中患者から目を離した際の転倒・転落
【事例7】《E⑧、H①》
寝たきり状態の患者の入浴のため、看護師 1 人が患者をベッドから車椅子に移動乗車
させた。看護師が、安全ベルト 2 本のうちの余分な 1 本を隣のベッドに置くため患者か
ら目を離した際に、患者は自分のレッグウォーマーを取ろうとベッドに手を伸ばしてお
り、そのまま前方に転落したもの
〔再発防止策〕
①寝たきり患者の移動介助は、複数人(2 人)で行う原則を徹底する。
②車椅子に移動させた後は、身体を動かすことや自分自身で移動することは危険なので
行わないよう指導する。また、一時的に車椅子を離れたり、患者から目を離さなけれ
ばならならなくなった場合にも、必ず同様の声掛けを行った上で行う。
③車椅子に移乗させる際は、
「車椅子のストッパーの固定」
「ベッド柵を下げる」
「車椅子
52
への移乗(原則複数人で実施)
」
「安全ベルトの使用(必要に応じ)
」の手順で行う。ま
た、例えば、安全ストッパーについては必要な本数だけ事前に用意した上で介助を行
うなど、出来るだけリスクを軽減できるよう手順を考える。なお、車椅子の使用に際
しての一般的留意事項を整理すると、次のとおり。
・停車時には、必ずストッパーを固定する。
・停車時はフットレストを上げて足底を床に付けるようにする。足が届かない場合は
代用品を使用し、乗車時の安定を確保する。
・車椅子ごとの転倒を防ぐため、車椅子の背は壁につけるようにする。
・高リスク患者の車椅子乗車中は、観察が継続できるよう看護師の目の届く範囲に移
動する。
【事例8】
《E⑧、H②》
上半身を左右に動かせる程度の ADL の重心患者。おむつ交換時、排便があったため汚
染したおむつを2∼3m 離れたところにあるバケツに入れようと、ベッド柵を上げない
まま患者の側を離れた直後、患者がベッドから転落したもの。患者は仰臥位で寝ている
から動かないであろうとの思い込みがあった
〔再発防止策〕
①処置中・処置後に、ベッド柵を使用している患者の側を離れる場合には、短い時間で
あっても必ずベッド柵を上げてから離れることをルール化し徹底する。
②各スタッフの観察による情報を集約し患者の身体状況を正確に把握し、共有すること
で、思いこみを排した対策を実行していく。
類型3:認知機能障害の患者の転倒・転落
【事例9】《E③④、G②③》
夜間帯に頻繁に廊下に出る不穏行動が観察されており、また、歩行障害もあるため転
倒・転落リスクが高いと判断されていた患者。ナースセンター近くの病室に移動し、30
分毎に観察を行っていた。深夜の観察で睡眠中であることを確認した上で、看護師は別
患者の病室を訪問。その約 30 分後、病室前の廊下で転倒している患者を発見した。自力
でトイレに行こうとして転倒したとのこと
【事例10】《G①②、H②》
ADL は自立していたが、認知機能が低下していたことから、排便時には介助するので
ナースコールするよう説明をしていた。しかし、自力でトイレまで移動、排泄後、ズボ
ンを履こうとして足が絡まり転倒したもの
〔再発防止策〕
①患者の排泄パターンを把握し、患者の状況に応じ時宜を得た排泄誘導を行う。
②認知症や不穏行動の見られる患者については、ナースセンター近くの病室に移し観察
を行いやすくした上で、出来るだけ頻回の観察を行う。
③就寝誘導時は必ず排尿誘導を行い、排尿のない場合でも定期的に訪室し体動があれば
53
尿意の確認をする。
④離床センサーを使用することで、患者がベッドを離れても分かるようにする。また、
転倒しても影響を少なくするため、床マットレスやプロテクターの使用を考慮する。
類型4:薬剤使用に伴う転倒・転落
【事例11】《I①》
睡眠鎮静薬を使用中の患者。服用後間もない時間帯でトイレに行き、排泄しようとし
た際に強い眠気に襲われ転倒
〔再発防止策〕
①睡眠鎮静薬の効果の発現時間と持続時間を明確に理解した上で看護計画を作成する。
②睡眠鎮静薬使用前に排尿誘導を行う。また、患者の排泄パターンを把握し、入眠後に
おいても、患者の状況に応じ時宜を得た排泄誘導を行う。
③睡眠鎮静薬使用後のトイレ等への移動の際は、介助を行うことを徹底する。
④睡眠鎮静薬使用に伴う転倒・転落リスクの増大と危険性を患者・家族に説明し理解を
得るとともに、トイレ等必要な場合は必ずナースコールするよう指導する。
⑤睡眠鎮静薬の使用時間や処方内容、排尿誘導時間を主治医と検討する。
【事例12】《D①、E③④、I⑥》
下肢障害があり、利尿作用のあるグリセリン F 点滴の患者。面会に来ていた家族の知
らせで病室に行くと、トイレの前で倒れている患者を発見。頻回の尿意により、その都
度ナースコールすることへの遠慮から自力でトイレに移動し転倒したもの
〔再発防止策〕
①就寝前に排尿誘導を行う。
②利尿作用のある薬剤を使用している間は、できるだけ頻回に病室を訪問し尿意の確認
を行う。
③トイレ等への移動は、必ず看護師の観察の下で行うことを徹底するとともに、降圧利
尿剤を使用する際の転倒・転落リスクの増大と危険性を患者・家族に説明し理解を得
るとともに、トイレ等必要な場合は必ずナースコールするよう指導する。
類型5:薬剤使用と不適切な履物が重なり転倒・転落に繋がったケース
【事例13】《D⑥、I③、E③④》
パーキンソン病の内服コントロールと歩行訓練のため入院。室内歩行及び車椅子への
移動は自力で可能であり、性格は慎重で理解力も問題はなかった。患者は同室者にお菓
子を渡そうとして転倒した模様。通常は靴を履いて移動していたが、この時は、禁じら
れた菓子類をあわてて配っており靴下のままであったことが転倒につながったもの
【事例14】《E③④、H③、I④》
疼痛コントロールのため MS コンチン内服。ベッドサイドのポータブルトイレに靴下の
まま移動しようとして転倒
54
【事例15】《E③④、H③、I②》
転倒転落アセスメントシートにより転倒リスクが高いと判断し、入院当初より計画に
沿いベッド周辺の環境整備・尿器設置・靴使用の指導等を行っていた。最近、抗精神病
薬を変更しボーっとしがちであり、転倒時は靴下のままであった
〔再発防止策〕
①薬剤使用による転倒・転落リスクの増大については、患者・家族に十分説明を行い理
解を得る。その際、当該薬剤の作用発現時間や作用時間、半減期の時間等についても
説明を行う。
②靴下やずれやすいズボン、脱げやすいサンダル、手の隠れるガウンはリスクを高める
ことを繰り返し説明する。履き慣れた靴や裾丈を調整した衣類を使用してもらうよう
患者・家族に指導する。
③靴下、スリッパ等の使用を見かけた場合は、その旨を記録しスタッフ全員で情報を共
有した上で当該患者に対応していく。
④歩行状況、室内の生活状況についてアセスメントをし直し、必要であれば移動介助を
行うよう計画を変更する。
類型6:ADL 拡大途上、自力歩行への過剰な自信が転倒・転落に繋がったケース
【事例16】《C②、E③④、H①、I⑦》
化学療法及び放射線療法施行中の患者。治療経過は良好であったが、治療法による貧
血等を原因とする軽度のふらつきがあった。また、病棟内は歩行器を使用して歩行して
いることが多かった。看護師が訪室するとトイレの前で横たわっている患者を発見、排
尿後ふらつき転倒したとのこと。退院間近で患者の行動も自立してきていたこともあり、
アセスメントによる再評価が行われていなかった
【事例17】《C②、E③④》
同室者よりナースコールあり、訪室すると病室内中央部に倒れている患者を発見。病
室中央を歩行している際、崩れるように転んだ模様。患者は、タオルを干そうと窓際に
行き躓いて転んだとのこと。リハビリもゴールで退院許可が出ている患者であり、歩行
にも自信がついていたため、自らの転倒リスクについて認識が薄くなっていた
【事例18】《C②、E③④、H①》
リハビリ目的で入院中の患者であり、歩行は不安定であったが、数日前から自己トラ
ンスファーフリー(ベッドから車椅子への移動許可)になっていた。ナースコールがあり
トイレに行くということであったが、ベッドサイドに車椅子が用意されていたことから
1人でトイレにいくよう依頼し看護師は退室した。大きな音で駆けつけると、トイレの
前で転倒している患者を発見。車椅子はベッドサイドにあった。自力歩行でも大丈夫だ
と思い、車椅子を使用せずトイレに移動し転倒したもの
〔再発防止策〕
55
①治療の進捗や回復具合等の状況を踏まえ、適切に転倒・転落アセスメントによる再評
価を行うことで、患者の現在の身体状況、認知機能等を正確に把握し、再評価の結果
に応じた防止対策の見直しを行う。
②ADL 向上期はリスクが高くなる時期でもあることを十分に認識し、医師、看護師、理
学療法士等の間で十分な情報交換を行い対策を講じるとともに、その情報を患者とも
共有する。
③「動きたい。自分で動けるはず」という患者のはやる気持ちを十分に考慮しながら、
今後の治療計画等を丁寧に説明することで、自己判断による行動をしないよう理解を
得ていくことが必要である。
類型7:入浴中の転倒・転落
【事例19】《D①、E③④》
一人で入浴後、脱衣場で着替えようとした際に滑って転倒。脱衣場の床が滑りやすい
材質であったためマットを敷いていたが、濡れた足のままマット外の床に足をついてし
まい転倒したもの
【事例20】《D①、E③④》
浴室から物音と呼び声がしたため駆けつけると、浴槽の横に倒れている患者を発見。
浴室の床ですべり転倒したとのこと。ADL が自立していたため 1 人での入浴を許可して
いたため、入浴中の観察は行っていなかった
〔再発防止策〕
①転倒・転落アセスメントシートによる評価を行った上で、単独での入浴が可能か否か
を判断する。リスクが高いと判断された患者については、必ず介助を行う。
②入浴介助を行う際は、介助者の視野に必ず患者を入れることとし、介助者は同時に 2
つの行為を行わないようにする。
③単独での入浴を許可した場合でも、入浴の際は必ず連絡するよう指導する。また、ナ
ースコールの位置・使用方法について説明し理解を得るとともに、出来るだけ頻回の
中の様子の観察を行う。
④浴室や脱衣場の床材を滑りにくいものとする。
類型8:離床センサーを使用していたにも拘わらず転倒したケース
【事例21】《E③④、G③》
不穏行動、徘徊があり、度々転倒もあったため離床センサーを設置、床マットレス、
ヘッドギア等により転倒に対する予防策を行っていたが、トイレの前で倒れている患者
を発見。離床センサーによるコールは無かった
【事例22】《E③④、G①②》
認知機能障害のため離床センサーと床マットレスを使用。30分毎の訪室により観察
を行っていたが、患者の声に駆けつけたところ、病室前の廊下で転倒している患者を発
見。離床センサーのコールはなかった。離床センサーが、体重のかかり方等により反応
56
しなかった模様
〔再発防止策〕
①離床センサーを活用している場合でも、これを絶対視せず、継続的な観察を行ってい
くことが必要である。
②患者の身体的・精神的状況や性格等を勘案し、有効なセンサーを選択する。
③セッティングを行った際は、電源スイッチやコードの接続等正しく作動するか複数人
でダブルチェックを行うとともに、巡回等で観察を行った際にも同様のチェックを行
うことで、センサーが適正に作動するようにしておく。
※「離床センサー」の3タイプ
a ベッドサイドマットセンサー
・ベッド下にセンサーマットを置き、踏むとアラーム等で知らせる
b ベッド用センサー
・ベッドマットレスの上にセンサーを置き、離れる(重量が架からなくなる)とアラー
ム等で知らせる
c クリップセンサー
・衣類につけ、患者がベッドから起き上がろうとして引っ張られナースコールから外
れると鳴る
d 赤外線センサー
・ベッドに赤外線センサーを取り付け、感知範囲に入るとアラーム等で知らせる
e ビームセンサー
・ベッドから降りる側にビームを走らせ、それが遮断されるとアラーム等で知らせる
[留意点]
・
「aベッドサイドマットセンサー」は、患者がベッドから降りる際にわざわざ踏まない
ように降りる場合がある。その場合はコールされない。また、患者がベッドから降り
て初めてコールされるものであるから、迅速性に欠ける部分がある。
・
「bベッド用センサー」は、患者が動き始めると同時にコールされるので、迅速な対応
が可能となる。ただし、設置場所が適当でない(体重のかかり方等)場合はコールされ
ない場合もある点に留意が必要である。患者の睡眠時の体動の状況等を踏まえ、シミ
ュレーションを行うなどにより確実にセッティングすることが必要である。
・「cクリップセンサー」」については、bと同様動き始めた時にコールするタイプであ
り迅速性はあるが、患者が衣類につけたクリップ側が外れてしまう、又は患者自身が
外してしまうケースがある点に注意が必要である。
類型9:不十分な環境整備が転倒・転落に繋がったケース
【事例23】《E③④、H③》
ポータブルトイレの位置が近すぎたため、排尿のためベッドから立ち上がり前に進ん
だ際にトイレに躓き転倒
【事例24】《E③④、G③》
57
離床センサーが鳴り訪室すると転倒している患者を発見。入院前から転倒や徘徊があ
ったため、転倒した場合の衝撃緩和のための予防マットを設置していたが、ベッドから
降りた際、そのマットと床の段差により転倒したもの
【事例25】《E③④、H③》
歩行障害であったが、ポータブルトイレ使用により排尿は自力で行っていた。立位で
排尿しようとしたところふらつき、ベッド柵に掴まったが、柵が持ち上がり抜けてしま
いそのまま転倒
【事例26】《E③④》
同室患者よりコールがあり訪室すると、ベッドとオーバーテーブルの間に座り込んで
いる患者を発見。トイレに行こうとオーバーテーブルを支えに立ち上がろうとしたとこ
ろ、転倒したとのこと
【事例27】《D②③、E③④》
大腿骨骨折の手術目的で入院中の患者でリハビリを実施中。ベッド柵をはずし自力で
トイレに行こうとする等の行為があったため、注意していた。また、排泄時にはコール
するよう説明をしていた。巡回により看護師が訪室した際、ベッド柵を外し床に転倒し
ている患者を発見。自力でトイレに行こうとして柵を外し、降りようとした際にバラン
スを崩し転倒したとのこと
【事例28】《E③⑤》
水ふき清掃直後の十分に乾いていない廊下を歩行していた患者が、スリップし転倒
〔再発防止策〕
①ポータブルトイレは、ベッド脇には置かず必要な時にその都度用意する。
②ポータブルトイレや予防マット等設置は、患者の日頃からの動き方を踏まえ、患者と
も相談しながら位置を決定し、常に一定の場所に設置する。
③ベッド柵やオーバーテーブルについては、患者が外す、掴まる、寄りかかる等場合を
想定し、柵の固定やストッパーをかけることを確実に行う。
④立ち上がる際オーバーテーブルを支えにすることは非常に危険であることを説明する
とともに、その旨のステッカーをオーバーテーブルの患者の目に入りやすい場所に貼
り付ける等の工夫を行う。また、病室でのスペース的問題がない場合、オーバーテー
ブルはベッドから離れたところに移動させておく。
⑤ベッド柵を自分で外すなどの情報は確実に記録に残し、スタッフ間で情報を共有する。
⑥清掃後は、廊下が濡れたままの状態で終了しないことを徹底するとともに、清掃時間
を食事直後の安静時間帯内に行うことで、清掃直後に患者が廊下を歩くことが少なく
する等の調整を行うことでリスクを低減する。
58
平成19年度 医療事故報告の概要について
1.医療事故別の発生状況
〔事故分類別報告件数〕
分
19年度
類
件数
割合
1 転倒・転落
224
33.1%
2 介助中の骨折(疑いを含む)や入浴中の事故等
100
14.8%
3 経管栄養チューブ等の誤挿入
16
2.4%
4 異物遺残
15
2.2%
5 薬の過剰投与や誤用等薬剤に関わる事故
26
3.8%
6 手術等実施部位の間違い
5
0.7%
7 患者の間違い
3
0.4%
8 人工呼吸管理に関わる事故
27
4.0%
9 誤嚥
22
3.2%
10 問題行動(自殺企図、離院等)
39
5.8%
11 穿刺・穿孔や臓器損傷等
71
10.5%
129
19.1%
677
100.0%
12 その他
合 計
備 考
〔病院類型別報告件数〕
19年度
区 分
件数
500床以上
割合
125
18.5%
79
11.7%
97
14.3%
301
44.5%
一般病床中心
139
20.5%
障害者医療中心
127
18.8%
59
8.7%
11
1.6%
40
5.9%
376
55.5%
677
100.0%
旧 350∼499床
病
院 349床以下
計
旧
療 精神医療中心
養
結核医療中心
所
その他
計
合 計
備 考
※病院類型とは、平成16年4月独立行政法人移行前の旧国立病院及び旧国立療養所を、病床数別及び主な疾患種別に類型
化したものである。
59
2.病院類型別・事故分類別報告(発生)状況
(単位:件)
〔病院類型別・事故分類別報告(発生)状況〕
区 分
500以上
病院数
分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
17
45
3
17
25
6
22
33
7
56
103
障害者
30
精神
旧 350∼499
病
院 349以下
計
旧
結核
療
養
所 一般
その他
計
合
計
4
計
3
5
6
2
8
16
33
125
3
5
6
5
4
8
17
79
2
3
1
4
4
1
29
13
97
16
6
9
11
4
12
11
13
53
63
301
30
38
2
2
10
1
9
4
4
5
21
127
13
22
6
4
1
18
2
6
59
4
2
2
2
1
11
31
51
28
1
2
12
16
10
1
2
90
121
84
10
6
15
1
3
146
224
100
16
15
26
5
3
1
2
1
3
2
5
1
3
1
8
35
139
3
2
3
3
40
15
11
26
18
66
376
27
22
39
71
129
677
2−1.病院類型別・事故分類別報告(発生)状況
(単位:件)
〔病院類型別・事故分類別・100床当たり報告(発生)状況〕 ※「(報告[発生]件数÷運営病床数)×100床」
区 分
500以上
病床数
分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類 分類
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
10,441
0.43
0.03
7,100
0.35
0.08
6,726
0.49
0.10
24,267
0.42
障害者
9,475
精神
旧 350∼499
病
院 349以下
計
旧
結核
療
養
所 一般
その他
計
合
計
0.04
計
0.03
0.05
0.06
0.02
0.08
0.15
0.32
1.20
0.04
0.07
0.08
0.07
0.06
0.11
0.24
1.11
0.03
0.04
0.01
0.06
0.06
0.01
0.43
0.19
1.44
0.07
0.02
0.04
0.05
0.02
0.05
0.05
0.05
0.22
0.26
1.24
0.32
0.40
0.02
0.02
0.11
0.01
0.09
0.04
0.04
0.05
0.22
1.34
4,014
0.55
0.15
0.10
0.02
0.45
0.05
0.15
1.47
1,916
0.10
0.10
0.10
0.05
0.57
10,736
0.48
0.26
0.01
0.02
4,348
0.37
0.23
0.02
0.05
30,489
0.40
0.28
0.03
0.02
0.05
0.00
0.01
54,756
0.41
0.18
0.03
0.03
0.05
0.01
0.01
0.01
0.10
0.05
0.03
0.02
(注) 濃い網掛け は、事故分類毎に最も発生件数が多かった病院類型である
(注)病床数は、運営病床数である
60
0.05
0.05
0.03
0.01
0.07
0.33
1.29
0.07
0.05
0.07
0.07
0.92
0.05
0.04
0.09
0.06
0.22
1.23
0.05
0.04
0.07
0.13
0.24
1.24
3.患者年齢内訳
《 全 体 》
0∼9歳
10代 20代
30代
40代 50代
60代
70代
80代
90歳∼
計
26
28
24
29
53
76
104
149
151
37
677
3.8%
4.1%
3.5%
4.3%
7.8%
11.2%
15.4%
22.0%
22.3%
5.5%
100.0%
《(再掲)転倒・転落》
0∼9歳
10代 20代
30代
40代 50代
60代
70代
80代
90歳∼
計
1
1
4
3
13
12
33
61
74
22
224
0.4%
0.4%
1.8%
1.3%
5.8%
5.4%
14.7%
27.2%
33.0%
9.8%
100.0%
〔平成19年度:患者年齢内訳(転倒・転落/再掲)〕
〔平成19年度:患者年齢内訳〕
20歳未満
1%
20歳未満
8%
20∼49歳
9%
20∼49歳
16%
50∼69歳
20%
70歳以上
49%
70歳以上
70%
50∼69歳
27%
4.患者影響レベルによる整理
影響レベル
0
1
2
3a
3b
4
5
計
件 数
1
1
6
19
534
35
81
677
61
5.事故発生時間内訳
深夜帯
日勤帯
準夜帯
時 間 帯
発生時間帯内訳
0∼1
2∼3
4∼5
6∼7
8∼9
36
28
39
45
64
4.1%
5.8%
6.6%
19
24
26
割 合(%) 5.3%
転倒・転落(再掲)
20
割 合(%) 8.9%
8.5% 10.7% 11.6% 9.4%
計
10∼11 12∼13 14∼15 16∼17 18∼19 20∼21 22∼23
98
70
89
59
9.5% 14.5% 10.3% 13.1% 8.7%
21
不明
37
33
34
45
677
5.5%
4.9%
5.0%
6.6%
100.0%
21
18
11
12
15
12
19
6
224
9.4%
8.0%
4.9%
5.4%
6.7%
5.4%
8.5%
2.7%
100.0%
平成19年度
〔日勤・夜勤帯別発生状況(転倒・転落/再掲)〕
〔日勤・夜勤帯別発生状況(全体)〕
不明
3%
不明
7%
深夜帯
21%
深夜帯
22%
日勤帯
39%
日勤帯
56%
準夜帯
15%
準夜帯
37%
62
警鐘的事例の紹介
(1)人工呼吸器管理について
7月医療事故報告では、患者の人工呼吸管理に関連する事故が4件報告されて
いる。4件のうち2件が、医療ガス供給システム切換えや院内電源設備検査の際
に発生したものである。この様な施設管理に関連した事故は、最悪の場合、その
施 設 (病 棟 )に 入 院 中 の 全 患 者 に 影 響 を 及 ぼ す 虞 が あ る も の で あ り 、 病 院 側 実 施 責
任 者 、診 療 部 門 関 係 者 、業 者 の 3 者 が 、事 前 に 十 分 な 打 合 せ と 調 整 を 行 っ た 上 で 、
明 確 な 作 業 手 順 を 作 成 し 、そ の 手 順 に 基 づ き 確 実 に 実 施 さ れ る こ と が 必 要 で あ る 。
今回の2件の事故についても、診療部門関係者との事前打ち合わせや院内の事前
周知の不徹底、作業手順の不明確さ等の共通した原因をあげることができる。医
療ガス供給システムの修理・交換や院内電源のチェック等は、1病院単位では頻
繁にあるものではないかもしれないが、機構病院全体で見れば、相当程度行われ
ていると考えられることから、同様の事故が発生しないようにするための警鐘的
事例として紹介するものである。
また、他の2件については、人工呼吸器操作に関する知識の不足や緊急時にお
ける基本的操作手順が徹底されていなかったことなどを原因とするケースであ
る。人工呼吸器は患者の生命維持装置であり、人工呼吸管理に関わる事故は、患
者の生命に直結する事案であることから、併せて警鐘的事例として紹介する。
※なお、本事例は各病院からの報告を踏まえ作成したものであるが、紹介に当
たって分りやすくするため簡略しているところもあり、報告された事例の内
容と完全に一致するものではない。
(1)中央配管の医療ガス供給システムの切り換え時に、酸素供給ボンベに切
り換えないまま遮断したため患者が死亡した事例
〔事故の概要〕
① 肺 が ん 癌 性 胸 膜 炎 で 胸 水 貯 留 、 意 識 障 害 の 患 者 (76歳 )。 肺 が ん 終 末 期 の 重 篤
な 状 態 で 、 酸 素 は リ ザ ー バ ー マ ス ク で MAX投 与 中 で あ っ た 。 酸 素 飽 和 度 は 測
定できず、意識は朦朧とした状態であった。
②医療ガス業者が当該病棟を訪問。作業中は中央配管からの酸素供給を一時的
にストップしなければならないため、この間の酸素供給のための酸素ボンベ
を 持 参 。業 者 側 の 酸 素 が 必 要 な 患 者 の 確 認 に 対 し 、病 棟 責 任 者 (看 護 師 長 )は 、
業者と一緒に酸素吸入患者を部屋毎に確認したが、この際、酸素必要患者の
リストを提示する等ペーパーによるやり取りは行わず口頭で行っている。ま
た、病院側の監督責任者、実施責任者が不在であり、病棟責任者である病棟
看 護 師 長 に 対 し て 、作 業 ス ケ ジ ュ ー ル 全 体 に つ い て の 説 明 は 行 わ れ て い な い 。
③業者の指示により作業員は、酸素供給が必要な患者の部屋の前に酸素ボンベ
63
を置いていく。業者から「酸素の切換えはどうしますか」との質問に対し、
病棟責任者からは「そちらでお願いします」との回答があり、業者は、必要
な全ての部屋の前に酸素ボンベが置かれた段階で、作業員に順次切換えを行
っていくよう指示。作業員は、酸素が必要な患者の部屋の前の酸素ボンペを
部屋の中に入れ、切換えを行っていく。
④部屋の前のボンベが無くなったため、酸素ボンベが部屋の中に入れられ酸素
が必要な患者全員の酸素ボンベ切換えが終了したものと考え、業者は病棟看
護師に「酸素を止めさせていただきます」と言う。問いかけに対し病棟看護
師が返事をしたので、業者は了解したものと思い、バブルの前にいた作業員
にバルブを閉めるよう指示。この段階で、酸素が必要な患者への酸素供給が
酸素ボンベにきちんと切換えられているかの確認作業は行われていない。
⑤病棟看護師は、最後の点検のために病室の巡回を開始する。家族からナース
コ ー ル が あ り 、「 酸 素 の 音 が 1 分 前 く ら い か ら ポ コ ポ コ 言 わ な く な っ た 。 呼
吸がおかしくなった」との訴えあり。当該患者の部屋に来た時、中央配管の
酸 素 が 止 め ら れ て い る に も 拘 わ ら ず 、 ボ ン ベ が 部 屋 の 中 に も 廊 下 (部 屋 の 前 )
にも無く、酸素ボンベに切り替わっていないことに気付く。
⑥ 近 く の ボ ン ペ を 持 っ て き て 設 置 。リ ザ ー バ ー マ ス ク で 酸 素 MAXで 開 始 し た が 、
呼 吸 停 止 ・ HR50、 数 分 後 に HR0(ゼロ)と な り 、 死 亡 に 至 る 。
〔事故の背景・要因〕
①病院側監督責任者、実施責任者が不在で、全体の作業手順の説明もないまま作
業が開始された。病棟の医療者側責任者は、作業の全体像を理解していない状
態で対応することになり、両者の作業に関する理解度の違いがコミュニケーシ
ョンギャップを生み事故に発展していった可能性が否定できない。
②医療者側責任者と医療ガス業者の確認作業が不徹底であり、酸素ボンベへの切
換えが必要な患者全員の確認作業がなされないまま、中央配管のシャトルバブ
ルが閉鎖された。
・ 事 前 に 作 業 の 必 要 な 患 者 を 把 握 し て い な い (医 療 者 側 、 業 者 側 の 両 者 で 、 正
確に確認しあっていない)
・両者の間で事前の作業行程の確認がされていない。
・確認の方法を両者で決定していない。確認のツールがない。正確な言葉で確
認していない。両者が思い込みで行動している
・シャットバルブが閉められた正確な時間の記載が無い、両者共に時間の確認
をしていない
・作業手順が不明確である。この様な作業を行うに当たってのマニュアルがな
い
③医療ガス切り替え作業に対するリスクの認識が薄い
・作業時間帯の患者観察に対する密度が薄いことや、人工呼吸器装着患者や重
64
症患者の場合は不測の事態に備えて医師の待機がされていないなど、作業実
施時における重症患者に対する人員体制が希薄である
・医療ガスの切り替えを業者のみで行っている。設置は業者が行っても、切り
替えは医療行為である認識が希薄。切り替え後の患者観察が、十分に行われ
ていない。観察は、切り替え後少なくとの5分間は必要である。
・施設側監督責任者、実施責任者の立会いがなく、作業に対する事前の説明が
不足していた。
〔再発防止策〕
①「医療ガス設備修理作業実施マニュアル」を作成
・監督責任者の指名と診療部門責任者等を招集した作業手順等の説明会の実施
等事前の診療部門への周知徹底
・修理実施予定日の前日までに、医療ガス仮設供給が必要な患者の病室番号、
氏名、症状、酸素流量等を「修理実施表」に記入し、監督責任者に提出
・作業手順の明確化
②作業手順については、次の点をマニュアルに記載
・診療部門責任者と病院側実施責任者、業者作業責任者の3者の間で十分な事
前打ち合わせを実施
・ 医 療 ガ ス 仮 設 供 給 が 必 要 な 患 者 は 、「 修 理 実 施 表 」 に 基 づ き 確 実 に 実 施 。 ま
た、各患者毎に、診療部門責任者、実施責任者、業者作業責任者の3者によ
る確認を実施
・仮設供給のための酸素ボンベのベッドサイドへの搬入は業者が、ボンベへの
切 換 え 作 業 は 看 護 師 等 医 療 者 が 行 う 。ま た 、各 患 者 毎 に 必 要 な 酸 素 流 量 を「 修
理実施表」に基づきチェックするとともに、ボンベは必ず転倒防止の措置を
講ずる
・人工呼吸器装着患者については、主治医又は主治医を代行する医師が修理中
患者の監視に当たる。修理中は、ナースステーションに医師は必ず待機
・仮設供給が必要な患者へのボンペの装着が終了した後、診療部門責任者、実
施責任者、業者作業責任者の3者による装着状態等の再確認
・仮設供給が必要な患者の状況を再確認した後、上記3者は、シャフトバルブ
前 に 移 動 し 、「 修 理 実 施 表 」 に バ ル ブ を 閉 め る こ と に 同 意 す る サ イ ン を 行 う
・サイン終了後、実施責任者がバルブを閉めるが、残留医療ガスを放出した後
5分間は、緊急事態の発生に備えてバルブ前に待機。緊急事態が発生した場
合は、直ちにバルブを開放する。また、業者作業責任者は、バルブを閉じた
5分後に修理作業の開始を指示
・修理終業後は、実施責任者がバルブを開放し、中央配管に医療ガスを供給。
業者作業責任者は、中央配管内の救急ガスが適正配管圧力に達したことを確
認した上で、修理箇所の作動テストを実施
65
・業者作業責任者は、全ての作動テスト終了後に、医療ガス供給方式を中央配
管に切換える
・診療責任者、実施責任者、業者作業責任者の3者は、患者個人毎に酸素ボン
ベから中央配管に切換える作業に立会。切換えは看護師等医療者が行い、酸
素ボンベの病室からの搬出は業者が行う
・診療責任者等の3者は、切替作業終了後、アウトレットのある全ての箇所を
巡回し以上がないことを確認
・業者作業責任者は設置ボンベ数と回収ボンベ数を確認の上、診療部門責任者
と実施責任者に作業終了報告を行う
③医療ガスに対する理解の向上のための勉強会の開催
(2)新棟の完成前事前検査時の保安回路電源の遮断を原因とする停電による
内部バッテリーのない人工呼吸器の作動停止による呼吸困難等
〔事故の概要〕
①重心・筋ジス病棟入院中の患者であり、上肢障害、下肢障害、歩行障害、人
工呼吸器装着。患者の自発呼吸の状況等に応じて、内部バッテリーの有るタ
イプの人工呼吸器と、鼻マスク等専用の内部バッテリーの無い低侵襲性人工
呼吸器を使い分けていた。
②新棟の完成前事前検査の中で、新棟自家発電機の試験を行う。この際、試験
で あ る た め 新 棟 自 家 発 電 機 か ら 母 線 連 絡 盤 (保 安 回 路 )へ の 実 際 の 電 源 供 給 は
行われないよう遮断していた。試験により模擬的に運転信号を自家発電機に
出 す 際 、 試 験 実 施 者 で あ る 業 者 が 、 母 線 連 絡 盤 の 切 り 替 え ス イ ッ チ (電 力 会
社 か ら の 送 電 か ら 自 家 発 電 機 送 電 へ の 切 替 え ス イ ッ チ )を 手 動 に 切 替 え る べ
き と こ ろ 自 動 に し た ま ま 行 っ た た め 、 自 家 発 電 機 送 電 に 切 り 替 わ り 、 (新 棟
自家発電機から保安回路への電源供給は行われないよう遮断していたため)
停電が発生した。なお、検
査の立ち会いは、事務職員が行っていた。
③病棟の人工呼吸器装着患者の電源コンセントは、通常保安回路で使用してお
り 、 停 電 の た め 内 臓 バ ッ テ リ ー 機 能 の な い バ イ パ ッ プ (非 侵 襲 性 人 工 呼 吸 専
用 機 )の 電 源 が 切 れ 人 工 呼 吸 器 の 作 動 が 停 止 し た 。 こ の た め 、 こ の タ イ プ の
人 工 呼 吸 器 使 用 患 者 が 軽 度 呼 吸 困 難 や 不 安 を 訴 え た も の 。停 電 時 間 は 5 分 程 。
※事故当時、45人の患者が人工呼吸器を装着していたが、その内の内部バ
ッテリーの無いタイプの人工呼吸器を使用していた13人が、軽度呼吸困
難等を訴えた。他の患者については、内部バッテリーの有る人工呼吸器使
用 者 、又 は 行 事 の た め 既 に 外 部 バ ッ テ リ ー に 切 替 え て お り 影 響 が な か っ た 。
④ 胸 押 し や ア ン ビ ュ ー 使 用 等 に よ る 補 助 呼 吸 の 実 施 に よ り 、呼 吸 困 難 等 は 回 復 。
なお、内部バッテリーのある人工呼吸器使用患者については、停電発生後直
ちに内部バッテリーに切り替わったため影響は無かった。電気復旧後、バッ
テリーからの電源供給に切り替わった人工呼吸器についても、停電の原因が
66
明確になるのを待ち、医師と看護師で原因の説明等を行いながら、通常の保
安回路のコンセントに繋ぎ替えた。
⑤試験実施に当たって、なんらかの不便が生じたり対応が伴う場合には、関連
する部署へ内部報により周知を行っているが、今回の検査の際には、診療部
門等各部門への連絡を行っていなかった。
〔事故の背景・要因〕
①病院側と業者側による事前の打ち合わせが十分でなく、検査手順についても明
確化されないままで検査を行ってしまった。
②電源に関わる試験を行うことについて、院内各部門への周知が行われていなか
った。
③立会い者が事務職員であり、試験に関わる電気回路に関する知識を有する者で
はなかった。このため、業者のミスに対するチェック機能が働かなかった。
〔再発防止策〕
①考えられる緊急事態を想定し、検査実施体制・手順を確立していく。
・業者との十分な事前打合せによる検査実施手順と責任体制の明確化
・手順に沿った検査の実施と、知識を持った職員が立会いを行う等によるダブ
ルチェック体制の確立
・院内各部門への事前周知と、緊急事態が発生した場合の対応体制の確立
② 24時 間 使 用 中 の 患 者 の 内 部 バ ッ テ リ ー の な い 呼 吸 器 に 、 外 部 バ ッ テ リ ー U P S
を備え付け、停電時に自動的に切り替わるよう措置を講ずる。
③患者の自己換気能力を踏まえた低侵襲性人工呼吸器の使用。
④突然の停電などのリスクを出来るだけ軽減していくためにも、長期療養患者が
使 用 す る 人 工 呼 吸 器 の 標 準 化 (6 機 種 へ の 標 準 化 )を 進 め て い く 。
(3)Tピースを使用しインスピロンで酸素投与中の患者への超音波ネブライ
ザー吸入時の誤接続が死亡となっている可能性がある事例
〔事故の概要〕
① 無 気 肺 (喀 痰 排 出 困 難 )の 患 者 で 、 急 性 汎 発 性 腹 膜 炎 、 結 腸 術 後 結 腸 穿 孔 、 敗
血症性ショックを併発。気管切開による人工呼吸管理を行っていた。
② 気 管 切 開 チ ュ ー ブ に T ピ ー ス を 付 け 、 イ ン ス ピ ロ ン で 酸 素 吸 入 を 2L/分 で 施
行。酸素吸入の蛇管はTピースの一方に接続されていた。
③喀痰の粘稠度を低下するための超音波ネブライザー吸入。超音波ネブライザ
ー吸入用の蛇管は、Tピースの酸素吸入の蛇管が付いている側とは反対側に
接続されていた。
④ 超 音 波 ネ ブ ラ イ ザ ー 吸 入 開 始 10分 後 に 吸 引 施 行 し 、 さ ら に 20分 後 に 看 護 師 が
67
患者の呼吸状態の悪化に気付いた。アンビューによる人工呼吸開始、ボスミ
ン 1アンプル静 脈 注 射 、 心 臓 マ ッ サ ー ジ 、 人 工 呼 吸 器 装 着 ( 間 欠 的 陽 圧 呼 吸 ) を
実施するも死亡を確認。
〔事故の背景・要因〕
①通常、酸素吸入とネブライザーを併施する場合において、気管切開患者に装着
されているTピースの接続では、吸気側と呼気側に分かれており、Tピースの
片側である吸気側に酸素とネブライザーを混合させ、患者側の体内に吸引され
る。
②Tピースのもう一方が呼気排出側となっており、通常は、ここから炭酸ガスは
体外へ排出される。
③ 今 回 、 T ピ ー ス の 一 方 (吸 気 側 )に イ ン ス ピ ロ ン に よ る 酸 素 吸 入 用 の 蛇 管 、 も う
一 方 (呼 気 側 )に 喀 痰 粘 稠 度 を 低 下 さ せ る た め の 超 音 波 ネ ブ ラ イ ザ ー 吸 入 用 の 蛇
管を装着していた。このため、呼気の排出先がなく、これにより患者の体内に
二酸化炭素が貯留してしまった可能性が高く、患者の状態が悪化した経緯との
因果関係が否定できない。
〔再発防止策〕
①人工呼吸管理中の患者に対してTピースを使用した超音波ネブライザー吸入を
行う際の手順書を作成。特に、インスピロンによる酸素吸入用の蛇管と超音波
ネブライザー吸入用の蛇管の接続に当たっては、留意点として次の点を明記す
る。
・ネブライザー吸入用蛇管は、酸素吸入用蛇管の途中にあるTピースのウォー
タートラップが付いていた部分に接続
・ネブライザー吸入用の蛇管が、患者の挿管チューブや気管切開チューブに接
続されているTピースの酸素吸入用蛇管がつながっていない側に接続されて
いないかを確認(Tピースの酸素供給側の反対側は、余分な酸素や患者の呼
気とともに排出される二酸化炭素の出口であり、ここに接続すると窒息につ
ながることに留意)
【正しい接続】
[患者の挿管チューブ]
超音波ネブライザー
呼気の排出
Tピース
Tピース
68
インスピロン
【誤った接続】
[患者の挿管チューブ]
呼気排出が出来ない
超音波ネブライザー
Tピース
インスピロン
②インスピロン・ネブライザーのセット組みしたスタッフとは、別のスタッフに
よる確認を行う。
③モニタリング中の患者の観察を徹底する(吸入中は呼吸状態・モニター等を観
察 し 、 必 要 時 は 痰 の 吸 入 を 行 う )。
④人工呼吸器に関する研修や学習により、呼吸器に対する理解を深める。
(4)簡易呼吸器の酸素ボンベバルブ開栓忘れ
〔事故の概要〕
①胸痛により救急車を呼び、病院到着後ショック状態となり救命病棟へ入院。
救 急 外 来 搬 送 到 着 時 (0時 18分 )の 状 態 は 、 脈 拍 130台 、 SPO2は 48% 、 意 識 レ ベ
ル は Ⅱ -20∼ Ⅲ -100、 マ ス ク 換 気 、 CV確 保 を 行 う 。
② 約 1 時 間 後 、 自 発 呼 吸 は あ る も の の シ ョ ッ ク 状 態 と な り 、 緊 急 挿 管 。 SPO2は
70% 台 で あ っ た 。
③ 2時 5分 、ICUへ 入 室 し 人 工 呼 吸 器 装 着 。2時 35分 、心 カ テ 室( カ テ ー テ ル 目 的 )
へ移動のため、簡易呼吸器へ切り替える。自発呼吸あり。
④ 2時 43分 、 心 カ テ 室 に 到 着 。 チ ア ノ ー ゼ あ り 。 心 拍 は あ る が 、 簡 易 呼 吸 器 が
動いてない事が分かり、心カテ室のパイピングへ切り替え。呼吸器作動。
⑤ 2時 44分 、心 停 止 。心 マ ッ サ ー ジ 開 始 し 、強 心 剤 投 与 。2時 52分 、自 心 拍 再 開 。
⑥ 3時 5分 、 造 影 カ テ ー テ ル 挿 入 し 、 心 カ テ 開 始 。 3時 25分 、 カ テ ー テ ル 抜 去 。 3
時 30分 、 I A B P 挿 入 。 3時 50分 、 ス ワ ン ガ ン ツ カ テ ー テ ル 挿 入 。
⑦ 4時 40分 、ICUへ 再 入 室 。意 識 レ ベ ル は Ⅱ -30(救 急 外 来 到 着 時 の 意 識 レ ベ ル は 、
レ ベ ル Ⅱ -20∼ Ⅲ -100)で あ り 、 痛 み 刺 激 に は 反 応 は す る が 、 回 復 に つ い て は
不明。
〔事故の背景・要因〕
○ ICU か ら 、 心 カ テ 室 へ 早 く 移 動 さ せ る 事 に 意 識 が 集 中 し 、 患 者 の 観 察 と 簡 易 呼
吸器の作動確認が不足したことによる。
〔再発防止策〕
①患者搬送マニュアルを再徹底し、簡易呼吸器のマニュアルを整備する。
69
②患者の状態観察は、機械まかせではない確認を徹底する。
( 2 ) 転倒・転落の発生パターンの類型化と対応策について
(1 )転 倒 ・ 転 落 対 策 一 般
① 大 原 則 : 転 倒 ・ 転 落 事 故 は 入 院 直 後 よ り 発 生 す る 可 能 性 も あ る 。こ の た め 、
「転
倒・転落アセスメントシート」により、患者の転倒・転落リスクを的
確に把握した上で、早期に対策を立案し実施に移すことが必要
② 転 倒 ・ 転 落 防 止 対 策 の 4つ ス テ ッ プ
◇第1ステップ:リスクの高い患者の把握〔転倒・転落アセスメントシートに
よるリスク評価等〕
*リスクの高い患者が、繰り返し転倒・転落しているケースが
多いことに留意することが必要
◇第2ステップ:患者の転倒・転落に繋がる行動を未然に防止するための対策
〔看護計画、患者の行動・排泄パターンの把握、ベッド柵、計
画や転倒の危険性等についての患者・家族への説明等〕
◇第3ステップ:行動を起したとしても事故に繋がらないための対策〔ベッド
まわりの環境整備、転倒予防体操、離床センサー等〕
◇第4ステップ:発生しても影響を小さくするための対策〔床マットレス、プ
ロ テ ク タ ー 装 着 (頭 部 、 腰 部 )、 ベ ッ ド 高 の 調 整 等 〕
③事故要因毎の着眼点
《患者側の要因》
a
身 体 的 機 能 : 運 動 ・ 知 覚 障 害 、言 語 ・ 視 力 ・ 聴 覚 障 害 、骨 ・ 関 節 の 異 常 (骨
粗 し ょ う 症 、 骨 転 移 、 拘 縮 ・ 変 形 )、 筋 力 低 下
b
精神的機能:理解力・判断力低下、不眠・不穏、多動、徘徊等
c
活動状況
:車椅子、歩行器、杖使用、移動に要介助、点滴類、胃管、ド
レーン類、尿カテーテル
等
d
薬剤の服用:鎮痛剤・睡眠薬、降圧・利尿剤、筋弛緩剤、向精神薬
e
排
泄
等
:障害有り、要介助、頻尿、夜間尿、下痢、ポータブルトイレ
使用
f
当日の状況:発熱、貧血、脱水、腹水、食事摂取量、検査後、手術後、リ
ハビリ訓練中
g
生活状況
:過去に転倒、失神、めまい、痙攣発作
h
環 境 の 変 化 : 入 院 ・ 転 入 後 直 後 で あ る か 否 か (10日 以 内 等 )、 ベ ッ ド ・ ト イ
レ・浴室不慣れ
i
性
格
:自立心強い、遠慮深い、我慢強い
70
《医療者側の要因》
a
低いリスク認識
b
患者の危険度の把握が不十分
c
監視体制の不備:センサー類不十分
d
患者へのオリエンテーションが不十分
e
眠剤等与薬後の注意、観察不十分
f
適切な履物・衣服の選択、歩き方の指導が不十分
g
補助具、ポータブルトイレ、点滴架台の選択や設置場所が不適切
h
車椅子のストッパー、安全ベルトのし忘れ、介助運転不慣れ
《 環 境 (施 設 、 設 備 )の 要 因 》
a
環境整備
:廊下、ベッドサイド等に障害物、防火扉の不備、介助バーが
ない
b
ベッド
:高さ、大きさの不適、柵の不適切な使用
c
ナースコール、オーバーテーブル、床頭台:位置が不適切
d
床の状況
: 滑 り や す い 、 つ ま ず き や す い (清 掃 中 、 床 の 材 質 、 敷 物 、 段
差等)
e
構 造 、 表 示 : そ こ に 何 が あ る か 分 り に く い 、 暗 い (照 明 の 不 足 )、 危 険 な 場
所への立ち入りの物理的排除
(2 )類 型 毎 の 事 例 と 対 策 の 整 理
平 成 18年 度 と 平 成 19年 8月 ま で に 機 構 本 部 に 報 告 の あ っ た 転 倒 ・ 転 落 事 例 (161
件 )か ら 発 生 パ タ ー ン を 次 の 9つ に 整 理 類 型 化 し 、 類 型 毎 の 典 型 事 例 と 対 策 に つ い
て整理を行い紹介する。
類型1:排泄関連
【自力移動中の転倒】→何度も看護師を呼ぶことへの遠慮や同室者への気遣いか
ら、自力でトイレに向かい転倒したケース
例1:下肢筋力低下により歩行障害のある患者。夜間排尿の際のポータブルトイ
レ使用時には、コールするよう看護師から説明を受けていたが、コールす
る の は 申 し 訳 な い 思 い と 、自 力 で も 大 丈 夫 と の 思 い に よ り ベ ッ ド を 離 れ る 。
ポータブルトイレのふたを開けようとしたとき、ふらつきそのまま転倒
例2:睡眠導入薬を服用中の患者。病室内のトイレに行こうとベッドから立ち上
がりかけたが、左足に力が入らずふらつき、左側に転倒。病室内のトイレ
には段差があるため、排泄時は看護師が付き添い車椅子用トイレを使用し
ていたが、頻尿で何度も看護師を呼ぶことへの遠慮から、自力でトイレに
行こうとしたもの
例3:医師の指示によりポータブルトイレをベッド脇に設置。個室ではなかった
ため他の患者への気遣いから、これを使用せず病室の外にあるトイレに向
71
かう途中、バランスを崩し転倒
⇒ (対 策 )
①転倒・転落リスクの高い患者の排泄パターンを把握し、患者の状況に応じ
時宜を得た排泄誘導を行う。
②患者・家族に対して、アセスメントの結果や転倒・転落リスク、転倒の危
険性等について説明するとともに、排泄のためトイレに移動する際は、必
ず看護師が付きそうのでコールするよう指導する。また、患者の目につく
ところに「トイレのときはナースコールを押してください」と表示する。
③特に夜間については必ず看護師と一緒に動くよう指導するとともに、介助
を行う際は、必ず覚醒していることを確認する。
④就寝誘導時は必ず排尿誘導を行い、排尿のない場合でも定期的に訪室し体
動があれば尿意の確認をする。
⑤アセスメント結果による転倒・転落リスク、排泄パターン等についての情
報をスタッフ間で確実に共有する。
【トイレ介助時の転倒】→トイレ介助時に、トイレ内で、あるいは看護師がその
場を離れた際の自力移動により転倒が発生したケース
例1:コールにより尿意の訴えがあり、看護師がポータブルトイレへの移動介助
を行う。トイレへの移動終了後カーテンを引き、看護師は外で待機してい
た。排尿が終了した気配があり、中を見ると患者が床に倒れていた。ズボ
ンを履こうとしてふらつき転倒したもの
例2:トイレまで支持歩行にて誘導。患者を便座に座らせた後、看護師はその場
を離れ別の患者の排泄介助を行う。大きな音がしたため駆けつけると、ト
イレから3m離れた通路で仰向けに倒れている患者を発見
例3:離床マットのコールにより看護師が訪室。尿意の訴えがあり、室内トイレ
ま で 移 動 介 助 。「 終 わ っ た ら コ ー ル を 押 す 」 と 患 者 が 言 っ た た め 、 終 了 後
はコールがあると思い看護師はその場を離れる。コールがないため訪室す
るとベッド前で転倒している患者を発見
⇒ (対 策 )
①患者の側を離れる際は必ず声かけをして、ナースコールを患者の膝に置い
たり、持たせるなどのセッティングを行うとともに、終了後も介助を行う
旨を伝え、必ずコールするよう指導する。
②排泄中はプライバシーに配慮し、音の聞こえる場所で待機する。
③転倒・転落リスクの高い患者の場合は、排泄が終了し帰室するまで、患者
の側を離れないことを原則とする。
④他の患者のコールへの対応等によりやむを得ずその場を離れなければなら
なくなった場合は、離れる際に必ず介助に戻るまで動かないよう声かけを
行う。
72
類型2:介助中の患者から目を離した際の転倒→患者の予測のつかない行動や医
療者側の思いこみから転倒に至ったケース
例 1 : 寝 た き り の 患 者 の 入 浴 の た め 、 看 護 師 1人 が 患 者 を ベ ッ ド か ら 車 椅 子 に 移
動 乗 車 さ せ た 。 安 全 ベ ル ト 2 本 の う ち の 余 分 な 1本 を 隣 の ベ ッ ド に 置 く た
め患者から目を離した瞬間、患者は自分のレッグウォーマーを取ろうとベ
ッドに手を伸ばしており、そのまま前方に転落
⇒ (対 策 )
① 寝 た き り 患 者 の 移 動 介 助 は 、 複 数 人 (2人 )で 行 う 原 則 を 徹 底 す る 。
②車椅子に移動させた後は、危険なので体を動かしたり自分自身で移動しな
いよう指示を行う。また、看護師が、車椅子の場を離れたり患者から目を
離 さ な け れ ば な ら な ら な く な っ た 場 合 も 、同 様 の 声 か け を 行 っ て か ら 行 う 。
③「車椅子のストッパー」→「ベッド柵を下げる」→「車椅子への移動」→
「安全ベルトの使用」の手順を、患者の安全を優先した視点からの考える
(例 え ば 、 安 全 ス ト ッ パ ー に つ い て 、 不 必 要 な 本 数 は 出 来 る だ け 持 た な い
よ う に す る )。
④なお、車椅子での使用に際しては、次の様な点についても留意することが
必要である。
・停車時には、必ずストッパーをかける。
・停車時はフットレストを上げて足底を床に付ける。足が届かない場合は代
用品を使用する。
・車椅子ごとの転倒を防ぐため、車椅子の背を壁につける。
・車椅子乗車中は、看護師の目の届く範囲に移動し見守る。
例 2 : 上 半 身 を 左 右 に 動 か せ る 程 度 の ADLの 重 心 患 者 。 お む つ 交 換 時 、 排 便 が あ
っ た た め 汚 染 し た お む つ を 2∼ 3m離 れ た と こ ろ に あ る バ ケ ツ に 入 れ よ う と 、
ベッド柵を上げないまま患者の側を離れた直後、患者がベッドから転倒。
患者は仰臥位で寝ているから動かないであろうとの思い込みがあった
⇒ (対 策 )
①患者のベッドを離れる時は、必ずベッド柵を上げるか、介助者が付きそう
ことをルール化し徹底する。
② 患 者 の AD Lの 状 況 を 、 各 ス タ ッ フ の 観 察 を 通 じ た 情 報 を 集 約 し て い く こ と
で可能な限り正確に把握するとともに、全スタッフで共有することで、思
いこみを排した対策を講じていく。
類型3:認知症・不穏行動→認知症による理解力不足等のため、自力でトイレに
移動した結果、転倒に至ったケース
例1:夜間帯で頻回に廊下に出る行動が観察されており、歩行障害もあるため転
73
倒 リ ス ク が 高 い と 判 断 、 ナ ー ス セ ン タ ー 近 く の 病 室 に 移 動 し 、 30分 毎 に 観
察を行っていた。深夜の観察で睡眠中であることを確認した上で、看護師
は 別 患 者 の 病 室 を 訪 問 。 そ の 約 30分 後 、 病 室 前 の 廊 下 で 転 倒 し て い る 患 者
を発見。自力でトイレに行こうとして転倒したとのこと
例 2 : ADLは 自 立 し て い た が 、 排 便 時 に は 介 助 す る の で コ ー ル す る よ う 説 明 を し
ていた。しかし、自力でトイレまで移動、排泄後、ズボンを履こうとして
足が絡まり転倒
⇒ (対 策 )
①認知症や不穏行動の見られる患者については、ナースセンター近くの病室
に移し観察を行いやすくした上で、出来るだけ頻回の観察を行う。
②離床センサーを使用することで、患者がベッドを離れても分かるようにす
る。また、転倒しても影響を少なくするため、床マットレスやプロテクタ
ーの使用を考慮する。
③患者の排泄パターンを把握し、患者の状況に応じ時宜を得た排泄誘導を行
う。
④就寝誘導時は必ず排尿誘導を行い、排尿のない場合でも定期的に訪室し体
動があれば尿意の確認をする。
類型4:薬剤の使用→眠剤による強い眠気、頻尿の出現への遠慮からの自力行動
により転倒に至ったケース
例1:眠剤使用中の患者。服用後間もない状態でトイレに行き、排泄しようとし
た際に強い眠気に襲われ、ふらつき転倒
⇒ (対 策 )
①眠剤の効果発現までの時間と、効果の持続時間を明確に意識した看護計画
を作成する。
②眠剤使用前に排尿誘導を行う。
③患者の排尿パターンを把握し、入眠後も、患者の状況に応じ時宜を得た排
泄誘導を行う
④眠剤服用後のトイレ等への移動は、必ず看護師の観察の下で行うことを徹
底するとともに、眠剤使用に伴う転倒リスク増大と転倒の危険性を患者・
家族に説明しトイレ等必要な場合は必ずコールするよう指導する。
⑤眠剤の服用時間や処方内容、排尿誘導時間を主治医と検討する。
例 2 : 下 肢 障 害 が あ り 、 利 尿 作 用 の あ る グ リ セ リ ン F点 滴 の 患 者 。 面 会 に 来 て い
た家族の知らせで病室に行くと、トイレの前で倒れている患者を発見。頻
回の尿意により、その都度コールすることへの遠慮から自力でトイレに移
動し転倒
⇒ (対 策 )
①就寝前に排尿誘導を行う。
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②利尿作用のある薬剤を使用している間は、できるだけ頻回に病室を訪問し
尿意の確認を行う。
③トイレ等への移動は、必ず看護師の観察の下で行うことを徹底するととも
に、転倒の危険性を患者・家族に説明しトイレ等必要な場合は必ずコール
するよう指導する。
類 型 5 : ADL拡 大 途 上 、 自 力 歩 行 へ の 過 剰 な 自 信 → 退 院 直 前 、 ADL拡 大 期 で あ り 医
療者側、患者側の油断が転倒に繋がったケース
例1:化学療法及び放射線療法施行中の患者。治療経過は良好であったが、療法
による貧血等を原因とする軽度のふらつきがあった。また、病棟内は歩行
器を使用して歩行していることが多かった。看護師が訪室するとトイレの
前で横たわっている患者を発見、排尿後ふらつき転倒したとのこと。退院
間近であり患者の行動も自立してきていたことから、アセスメントの評価
(更 新 )が 行 わ れ て い な か っ た
例2:同室者よりナースコールあり、訪室すると病室内中央部に倒れている患者
を発見。病室中央を歩行している際、崩れるように転んだ模様。患者は、
タオルを干そうと窓際に行き躓いて転んだとのこと。リハビリもゴールで
退院許可が出ている患者であり、歩行にも自信がついていたため、自らの
転倒リスクについて認識が薄くなっていた
例3:リハビリ目的で入院中の患者であり、歩行は不安定であったが、数日前か
ら 自 己 ト ラ ン ス フ ァ ー フ リ ー (ベ ッ ド か ら 車 椅 子 へ の 移 動 許 可 )に な っ て い
た。コールがありトイレに行くということであったが、ベッドサイドに車
椅子が用意されていたため1人でトイレにいくよう依頼し看護師は退室。
大きな音で駆けつけると、トイレの前で転倒している患者を発見。車椅子
はベッドサイドにあり、車椅子を使用せずトイレに行ったもの
⇒ (対 策 )
①治療や患者の回復具合などの状況に応じ、転倒・転落アセスメントの更新
を適切に行い、患者の現在の自立度や理解力、性格と、それに対応したリ
スクの度合いを常に正確に把握するよう努める
② ADL向 上 期 は リ ス ク が 高 く な る 時 期 で も あ る こ と を 認 識 し 、医 師 、看 護 師 、
理学療法士等の間で十分な情報交換を行いアセスメントするとともに、そ
の情報を患者とも共有する。
③最新の情報を踏まえ、必要に応じ看護計画の追加修正を行う。
④「動きたい。自分で動けるはず」という患者のはやる気持ちを考慮し、今
後の計画・予定を丁寧に説明することで、自己判断による行動をしないよ
う理解を求める必要がある。
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類型6:単独での入浴→床が濡れ滑りやすくなっていることによる転倒
例1:一人で入浴後、脱衣場で着替えようとした際に滑って転倒。脱衣場の床が
滑りやすい材質であったためマットを敷いていたが、濡れた足のまま、マ
ット外の床に足をついてしまい転倒したもの
例2:浴室から物音と呼び声がしたため駆けつけると、浴槽の横に倒れている患
者 を 発 見 。 浴 室 の 床 で す べ り 転 倒 し た と の こ と 。 ADLが 自 立 し て い た た め 1
人での入浴を許可していたため、入浴中の観察はしてなかったもの
⇒ (対 策 )
①単独での入浴が可能か否かをアセスメントにより評価する。リスクが高い
患者の場合は、必ず付き添いを行う
②単独での入浴を許可した場合でも、ナースコールの位置・使用方法につい
て説明を行うとともに、必ず一度は中の様子を確認する。
③浴室や脱衣場の床材の滑りにくいものとする。
④なお、入浴介助を行う際は、介助者の視野に必ず患者を入れることとし、
介 助 者 は 同 時 に 2つ 行 為 を 行 わ な い 様 に す る 。
類型7:離床センサーの無反応→離床センサーは設置していたが、セッティング
の問題等により作動せず転倒に繋がったケース
例1:不穏行動、徘徊があり、度々転倒もあったため離床センサーを設置、床マ
ットレス、ヘッドギア等により転倒に対する予防策を行っていたが、トイ
レの前で倒れている患者を発見。離床センサーによるコールはなく、ヘッ
ドギアは自分で外してしまっていた
例 2 : 認 知 症 の た め 離 床 セ ン サ ー と 床 マ ッ ト レ ス を 使 用 。 30分 毎 の 訪 室 に よ り 観
察を行っていたが、患者の声に駆けつけたところ、病室前の廊下で転倒し
ている患者を発見。離床センサーのコールはなかった。離床センサーも体
重のかかり方等により反応しなかった模様
⇒ (対 策 )
①「離床センサー」には、大きく次の3つのタイプがある。
a
ベ ッ ド 脇 の 床 に 置 い て 、 ベ ッ ド か ら 患 者 が 降 り た ら (踏 ん だ ら )鳴 る タ イ
プ (マ ッ タ 君 )。
b
ベ ッ ド 上 に 置 い て あ り 、 患 者 の 背 中 が 離 れ る と 鳴 る タ イ プ (体 動 セ ン サ
ー)
c
衣類につけ、患者がベッドから起き上がろうとして引っ張られナースコ
ールから外れると鳴るタイプ
②aのタイプは、患者がベッドから降りる際にわざわざ踏まないように降り
る場合があり、その場合はコールされない。また、患者がベッドから降り
て 初 め て コ ー ル さ れ る も の で あ り 、例 え ば ベ ッ ド か ら 降 り よ う と す る と き 、
降りてから靴を履こうとする時に転倒が発生するケースが多いことを考え
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ると、迅速性に欠ける部分があると考えられる。
③bの「体動センサー」は、患者が動き始めた時にコールするものであり、
迅 速 な 対 応 と い う 点 で 有 効 と 考 え ら れ る が 、 設 置 場 所 が 適 当 で な い (体 重
の か か り 方 等 )場 合 は コ ー ル さ れ な い 場 合 も あ る こ と に 留 意 が 必 要 で あ る 。
患者の睡眠時の体動の状況等を踏まえ、シミュレーションを行うなどによ
り確実にセッティングすることが必要である。
④cについては、bと同様動き始めた時にコールするタイプであり迅速性と
い う 点 で は 有 効 と 考 え ら れ る が 、 患 者 が 衣 類 に つ け た セ ン サ ー コ ー ド (ナ
ー ス コ ー ル に 繋 が っ て い る )が 外 れ て し ま う 、 又 は 患 者 自 身 が 外 し て し ま
うケースがある点に注意が必要である。
⑤ 患 者 の 身 体 的 ・ 精 神 的 状 況 や 性 格 等 を 勘 案 し 、有 効 な セ ン サ ー を 選 択 す る 。
⑥セッティングを行った際は、電源スイッチやコードの接続等正しく作動す
るか複数人によるダブルチェックを行うとともに、巡回等で観察を行った
際にも同様のチェックを行い、常に安全確認を徹底する。
類型8:不十分な環境整備→床の障害物によるつまずきや、容易に抜けてしまう
ベッド柵等が転倒に繋がったケース
例1:ポータブルトイレの位置が近すぎたため、排尿のためベッドから立ち上が
り一歩前に進んだ際にトイレに躓き転倒
例2:離床センサーが鳴り訪室すると転倒している患者を発見。入院前から転倒
・徘徊があったため、転倒した場合の衝撃緩和のための予防マットを設置
していたが、ベッドから降りた際、そのマットと床の段差により転倒した
もの
例3:歩行障害であったが、ポータブルトイレ使用により排尿は自力で行ってい
た。立位で排尿しようとしたところふらつき、ベッド柵に掴まったが、柵
が持ち上がり抜けてしまいそのまま転倒
例4:同室患者よりコールがあり訪室すると、ベッドとオーバーテーブルの間に
座り込んでいる患者を発見。トイレに行こうとオーバーテーブルを支えに
立ち上がろうとしたところ、転倒したとのこと
例5:大腿骨骨折の手術目的で入院中の患者でリハビリを実施中。ベッド柵をは
ずし自力でトイレに行こうとする等の行為があったため、注意していた。
また、排泄時にはコールするよう説明をしていた。巡回により看護師が訪
室した際、ベッド柵を外し床に転倒している患者を発見。自力でトイレに
行こうとして柵を外し、降りようとした際にバランスを崩し転倒したとの
こと
例6:水ふき清掃直後の十分に乾いていない廊下を歩行していた患者が、スリッ
プし転倒
⇒ (対 策 )
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①ポータブルトイレや予防マット等設置は、患者の日頃からの動き方を踏ま
え、患者とも相談しながら位置を決定する。
②ベッド柵やオーバーテーブルについては、患者が外す、掴まる、寄りかか
る等場合を想定し、柵の固定やストッパーをかけることを確実に行う。
③立ち上がる際オーバーテーブルを支えにすることは非常に危険であること
を説明するとともに、その旨のステッカーをオーバーテーブルの患者の目
に入りやすい場所に貼り付ける等の工夫を行う。また、病室でのスペース
的問題がない場合は、夜間はベッドから離れたところに移動させておく。
④ベッド柵を自分で外すなどの情報は確実に記録に残し、スタッフ間で情報
を共有する。
⑤清掃に関しては、廊下が濡れたままの状態で終了しないことを徹底すると
ともに、清掃時間を食事直後の安静時間帯内に行うことで、清掃直後に患
者が廊下を歩くことが少なくなるようにする等の調整を行うことでリスク
を低減する。
類型9:不適切な履物→靴下のまま移動中、転倒に至ったケース
例1:パーキンソン病の内服コントロールと歩行訓練のため入院。室内歩行及び
車椅子への移動は自力で可能であり、性格は慎重で理解力も問題はなかっ
た。患者は同室者にお菓子を渡そうとして転倒した模様。通常は靴を履い
て移動していたが、この時は、禁じられた菓子類をあわてて配っており靴
下のままであったことが転倒につながったもの
例 2 : 疼 痛 コ ン ト ロ ー ル の た め MSコ ン チ ン 内 服 。 ベ ッ ド サ イ ド の ポ ー タ ブ ル ト イ
レに靴下のまま移動しようとして転倒
例3:転倒転落アセスメントシートにより転倒リスクが高いと判断し、入院当初
より計画に沿いベッド周辺の環境整備・尿器設置・靴使用の指導等を行っ
ていた。最近、内服薬を変更しボーっとしがちであり、転倒時は靴下のま
まであった
⇒ (対 策 )
①靴下やずれやすいズボン、脱げやすいサンダル、手の隠れるガウンはリス
クを高めることを繰り返し説明する。履き慣れた靴や裾丈を調整した衣類
を使用してもらうよう患者・家族に指導する。
②靴下、スリッパ等の使用を見かけた場合は、その旨を記録しスタッフ全員
で情報を共有した上で当該患者に対応していく。
③歩行状況、室内の生活状況についてアセスメントをし直し、必要であれば
移動介助を行うよう計画を変更する。
(3 )ま と め 〈 予 防 と 対 策 の ポ イ ン ト の 整 理 〉
以上、転倒・転落事例の類型化とその対応策の整理等を踏まえ、転倒・転落
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の予防と対策のポイントを抽出すると次のとおり。
①身体的・精神的状況の観察とケア
a入院時:・転倒・転落アセスメントシートの記入と計画の立案
1 ) 転 倒 の 既 往 、 意 識 状 態 、 理 解 力 、 注 意 力 、 ADL(麻 痺 な ど )、 内 服
薬の内容、家族の理解度
2)入院による環境の変化、体力の低下など転倒しやすくなる因子に
ついて患者・家族に説明
・転倒・転落防止のための看護計画の立案
b 入 院 中 : ・ 夜 間 の 観 察 (転 倒 の 多 い 時 間 帯 の 頻 回 な 観 察 )
・排泄パターン、日常の行動パターン、睡眠パターンの把握によ
る適切な移動介助
・ 睡 眠 薬 等 の 特 性 を 理 解 し た 観 察 (効 果 発 現 ま で の 時 間 、 効 果 の
持続時間等)
・転倒・転落アセスメントについては、患者の身体状況の変化等
を踏まえ適切に見直し。また、それに伴い看護計画についても
適切に見直し
②環境整備
a ベ ッ ド : ・ 高 さ の 調 整 (リ ス ク の 高 い 患 者 の 場 合 は 、 最 も 低 く す る )、 ベ ッ
ド柵の固定
( 3 ) 薬剤に関する医療事故・事故発生の類型化とその対応策について
(1 )事 故 要 因 等 の 着 眼 点
<医療者側の要因>
①各職種間の情報伝達の不足
②危険度の高い薬剤の認識不足
③規格単位の思いこみや換算間違い
④オーダリングシステムによる医薬品誤選択
口頭指示
医
師
処
方
処方せん記載方法
転記エラー
処方記載の問題
※ 単 位 と ml
※散剤における記載
※処方オーダリング
看護師
薬剤師
混
注
調
予
薬
情報共有不足
79
剤
※薬剤に関する事故は、処方、調剤、投与の各プロセスにおいて発生するが、
各プロセス間の情報伝達が正確に行われてないことから発生するケースが多
い 。「 口 頭 指 示 を 聞 き 間 違 え た 」、 あ る い は 「 処 方 せ ん や 指 示 書 の 文 字 を 読
み間違えた」など職種間、職種内の両方での情報伝達エラーが事故の重要な
要因となっている。
<医薬品を取り巻く環境的要因>
①医薬品の名前・容器・包装・規格
②医薬品に係る規格・投与方法の多様化
③同一会社の製品間で外観類似が発生
(代表的な例)
・2%静注用キシロカインと10%点滴用キシロカイン→知識不足、管理方
法(救急カート、病棟定数配置)
・高濃度カリウム製剤(KCL、アスパラK)のワンショット→普通薬、使
用頻度高い、
・抗悪性腫瘍剤の処方に関するエラー→/週を/日と勘違いして投与
・インスリン製剤→単位の省略によるコミュニケーションエラー
(2 )防 止 対 策 の 基 本
○薬剤に関する医療事故防止策のポイントは、常に次の5つの確認を行うこと
① 正しい患者かどうか
② 正しい医薬品かどうか
③ 正しい投与量、投与速度かどうか
④ 正しい投与時間か
⑤ 正しい投与経路かどうか
(3 )具 体 的 な 防 止 対 策
国立病院機構で使用される医薬品の標準化を図るために、本部内に「標準的医
薬品検討委員会」を立ち上げ、医療安全への寄与、効率的な医薬品の購入、管理
及び適正使用等を推進している中で、各施設が採用している医薬品数はその機能
等に応じて異なっている。このような中、薬剤に関連した医療事故を回避するた
めには、各施設が個別に「注意喚起が必要な医薬品」をリストアップし、さらに
は、危険度の高い薬剤の取扱いに係る周知徹底の研修を職員研修会の機会を活用
し、各職種間における薬剤情報の共有化を図る取組みが必要である。
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①注意喚起が必要な医薬品リスト作成の例
・医薬品名が類似している医薬品
・医薬品名が同じで語尾等が異なる医薬品
・医薬品名・剤形が同じで3種類以上の規格がある医薬品
・医薬品が同じで剤形が異なる医薬品
・取り違いやすい散剤・顆粒剤の例:薬効は反対だが同一診療科のため薬の配
置が近い医薬品
・複数の製薬会社からの併売品があり、シートの外観・記号等が異なる例
・主なインスリン製剤、抗癌剤使用に係る一覧表の作成
②危険度の高い薬剤の例
・危険度の高い薬剤とは、a 薬理作用が強い、生物活性が強く働く、正常生
理機能に強く働く薬剤、b 薬用量と毒性・副作用発現量が近接している薬
剤、等である。
→ (例 )抗 癌 剤 、 ジ キ タ リ ス 製 剤 、 糖 尿 病 薬 、 毒 薬 、 抗 て ん か ん 薬 、 免 疫 抑 制
薬、麻薬、テオフィリン製剤 等
(4 )類 型 毎 の 事 例 と 対 策 の 整 理
○平成18年度と平成19年9月までに機構本部に報告のあった薬剤に関する事
故 事 事 例 (21例 )か ら 発 生 パ タ ー ン を 整 理 す る と 、 次 の 6 つ に 類 型 化 で き る 。 類
型 毎 の 事 例 と 対 策 に つ い て 整 理 を 行 い 紹 介 す る 。な お 、医 薬 品 に 係 わ る 事 故 は 、
次に示した類型が単独ではなく混在し発生しているケースが多い。
類型1:医薬品名・外観類似による取り違い
類型2:薬効は異なるが同一診療科のため薬の配置から発生する取り間違い
類型3:危険度の高い医薬品情報の理解不足(危険の予知)
類型4:思いこみや換算間違い(確認不足)
類型5:処方記載に係る情報伝達エラー
類型6:医薬品の副作用
*事例無し
【類型3、5の混在(その1)】危険薬品への理解不足及び情報伝達エラーが重なった例
○インスリン製剤に係る処方・指示受けの統一化が図られてないことや理解・知識不足
から発生した事例
①指示受け間違いによりインスリンが過剰投与され、低血糖発作が起こったケース
・ヒューマリンR2単位」を「ヒューマリンR2ml」と誤って受け、実施
「
→2単位は0.02mlであるが、2ml投与されたことから100倍多いインスリンが過剰投
与された。
②インスリン処方間間違いにより低血糖発作が起こったケース
・
「ノボラピッド注300フレックスペン(超速効型製剤タイプ)
」の処方を実施。処方後、
81
患者の低血糖による意識消失が発生。確認により、当該患者は従来から「ノボラピッ
ド30ミックス注フレックスペン(混合型タイプ)」を使用しており、処方した「ノボラピ
ッド注300フレックスペン」とは、インシュリンの種類(作用時間等)が違うことが判明
<病院が実施した防止対策>
①重要薬のダブルチェックの徹底
②低血糖症状に気付くため研修等の実施により重要薬についての知識を再確
認する。インスリンに対する知識の向上。特に、当該病棟内での問題に留
めず、病院職員全体に周知
③患者の治療に関する正確な情報を共有した上で実施することの徹底
④注射指示から実施までにシステムの見直しを実施
<さらなる具体的な防止対策>
○インスリン製剤はml数でなく、単位数で統一するなど、院内統一がなされ
て い な い こ と か ら 発 生 し た 典 型 的 な 事 例 で あ る 。イ ン ス リ ン 製 剤 の み な ら ず 、
危険薬剤について、全職員に対して単位の取り扱い等に関する研修会を開催
し、ルールの徹底を図ることが必要。特に新人・中途採用者へ周知すること
が重要。
○インスリン製剤は名前、作用、容量が異なる製剤が多種類存在するので、薬
品名の確認、含量の確認、単位の確認を徹底するよう「インスリン製剤一覧
表:常に改定」を作成するなど目に見える形で具体的なる方策を立てること
が必要。
○インスリン製剤が多種類混在している場合は、インスリン製剤の整理を薬事
委員会にて検討。
インスリン製剤の取り間違いを防ぐため次の3点をしっかり確認する。
a 薬品名の確認(薬品名はRやN等種類が多いので注意する)
b 濃度の確認(○○単位)
c 容量の確認(1.5ml、3ml、10ml)の確認
【類型3、5の混在(その2)】処方量の記載ミスと薬剤への理解不足が重なった例
① オーダリング処方入力ミス(睡眠鎮静剤デパスの投与量ミス)のために発生した事例
・オーダリングによる処方入力時に、間違いに気付かず通常の20倍に相当する量で処方
してしまったために傾眠傾向・言語障害を引き起こしたケース
・インクレミンシロップ(鉄欠乏性貧血薬)の処方時に本来1.5mlとすべきところ、小
数点を入れ忘れにより15 mlと処方したために嘔吐、下痢症状を起こしたケース
② 薬剤師の調剤過誤事例
・デパスの錠剤から散剤に変更するための処方訂正の際、処方量を誤って指示量の10
倍を記入してしまい患者の状態が悪化したケース
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・看護師が処方箋と薬内容を確認中、他患者に比べセルシン散(抗不安薬)が過小投
与されており、薬剤科に確認したところ、20mg/日を2mg/日で秤量していたことから、
筋緊張が強くなり発熱を起こしたケース
<病院が実施した防止対策>
①システムへの入力の際、過量入力等不自然な処方が行われた場合の警告機能
の設定
②複数の薬剤師が各々確認しつつ秤量し、その後検薬者が再度確認するルー
ルの徹底
③薬剤の疑義照会を複数で行うことの徹底
④薬剤に対する知識の向上
<さらなる具体的防止対策>
○医薬品に複数の剤形があるために発生した事故事例である。薬剤師がデパス
の標準用量は1日1.5∼3mg3分服であることを認識しておくことであ
る。また、錠剤⇔散剤への換算をしっかり認識し、医師へ疑義照会をかけれ
ば未然に事故を防げたケースである。
○錠剤⇔散剤の換算する際に、エラーを誘引しやすい注意医薬品リストを作成
し、逆に標準量を超える適応がある医薬品については、注意すべき患者リス
トとして薬歴表を作成するなど、具体的なる防止対策が必要。
○また、処方オーダリングが普及している中、間違いはないという先入観から
発生した事例もあることから、今後の教訓事例として職員研修等を通じて周
知が必要。
【類型1、2、4の混在】医薬品名、外観類似に思い込みが加わることによる取り違いの例
○ ラシックス注射(利尿薬)を静注するところを誤ってホリゾン注射(抗不安薬)を取
り間違えたために尿流出が悪 くなったケース
・ラシックスは、茶色のアンプルだと思っていた看護師が、カートに入っていた同色ア
ンプルのホリゾンをラシックスと思い込み静注してしまったもの。薬局からラシックス
を受け取り、カートに戻そうとした際に間違いに気付く
<病院が実施した防止対策>
①どのような状況下でも、思い込みで行動することなく、目視・指さし呼称で
確認していく。
②体位変換等が集中している時間帯であり、次の業務を行うことに意識が行っ
てしまい、ルールにより決められていた確認、ダブルチェックが守られなか
った。何故このようなシステムがあるのかを再認識した上で行動していくよ
うにする。
83
<さらなる具体的防止対策>
○外観類似等から発生した典型的な取り間違いであり、先入観があるために、
確認を怠った典型的な事例である。院内で外観類似、薬品名が類似している
「注意医薬品リスト」を作成し、院内周知するなどの具体的な取組み策を講
じていくことが必要。
○また、薬効は反対だが同一診療科のため薬の配置が近いことによる間違いも
考えられる(例:ウテメリンとメテナリン等)ため、この場合は、配置位置
の工夫等が必要。
(4)インフォームド・コンセントについて
(1 )イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト の 意 義
・ イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト の 基 本 的 考 え 方 は 、「 実 施 し よ う と し て い る 処
置や治療についての基本的な情報を前もって患者に提供し、かつ患者がこれ
に同意してからでなければ、医師は患者に手を加えたり治療を開始してはな
らない」というものである。
・医師が行なう診療行為は、行なおうとする処置等に係る医師側の「説明」に
対する患者の「同意」に基づく診療契約に依拠するものであり、侵襲性を伴
う場合はもちろんのこと、侵襲性を伴わない診療行為であっても、患者の同
意なしに行われた診療行為は、原則として違法な医療となる。
・また、インフォームド・コンセントを患者の側からみれば、医師が行なう説
明をきちんと「理解」し、提示された幾つかの治療方針の中から自分の望む
ものを自らが「選択」することであり、患者が自己決定権を行使するもので
ある。
※ イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト → ① 医 療 者 側 の 視 点 :「 説 明 と 同 意 」
②患者側の視点
:「 理 解 と 選 択 」
・インフォームド・コンセントは、処置や治療に関する診療情報の提供を適切に
行う中で、医療における意思決定を患者と医師が共有するプロセスであると言
うことができる。この様なプロセスを通じ、患者と医師との良好なコミュニケ
ーションを形成していくことは、医療の質を向上させ、安全・安心な医療の提
供にも繋がるものである。
84
《インフォームド・コンセントのプロセスと医療の質の向上》
良 質 な コミュニケーション
医療者
情報共有
患
者
◎医療の質の向上
◎ 安 心 ・安 全 な 医 療 の 提 供
◆患者と医療者の信頼関係
説
明
理
解
◆医療への患者の参加
◆ICプロセスの標準化
同
意
選
択
◆病院運営上のリスクの低減
◎ 今日、特に求められているのは、単に患者に行おうとする診療内容につい
.....
て 説 明 し 、同 意 を 取 り 付 け る こ と で は な く 、患 者 の 自 己 決 定 権 拡 充 の 観 点 か ら 、
患者に診療上の選択肢を示して自己選択させること(インフォームド・チョイ
ス )で あ る 点 を 十 分 理 解 し 説 明 を 行 な っ て い く こ と が 重 要 で あ る 。
(2 )イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト の 一 般 的 対 象 事 項
・医師等は、次の各事項について患者に説明し、同意を得なければならない。
①病名と病態
②これに対し実施しようとしている診療方法の内容と期待される改善の程度
③ そ の 診 療 方 法 の 危 険 性 (合 併 症 の 具 体 的 内 容 と 具 体 的 頻 度 、 対 処 法 の 有 無 及
び有効性)
④ そ の 診 療 方 法 以 外 に 選 択 肢 と し て 可 能 な 治 療 方 法 と そ の 利 害 得 失 (有 効 性 及
び危険性)
⑤ 何 ら 治 療 を 行 わ な か っ た 場 合 に 考 え ら れ る 結 果 (患 者 が 受 け る 利 益 ・ 不 利 益 )
⑥ そ の 患 者 の 疾 病 に つ い て の 将 来 予 測 (予 後 )
・採用しようとしている診療方法とその代替的治療法の有効性と危険性につい
て は 、 奏 効 率 や 合 併 症 発 症 率 の 具 体 的 数 字 (何 % 程 度 な ど )を 挙 げ て 説 明 す る こ
とが重要である。
・ ま た 、 患 者 や 家 族 等 に 説 明 し た 内 容 は 、 必 ず そ の 日 時 、 説 明 内 容 、 対 象 者 (相
手 方 氏 名 )等 を 診 療 録 に 記 載 す る こ と が 必 要 で あ る 。
①日時、説明内容、相手方対象者氏名
②患者に説明し同意した旨の記載、または同意書の取得
③説明医師及び同席者の記載
85
(3 )説 明 範 囲
・医師は、上記「インフォームド・コンセントの一般的対象事項」の各々につ
いて、当該患者が重要視し、かつ、そのことを医師ならば通常一般的に認識で
きたであろう情報について、個々の患者の立場に即した工夫を行いながら説明
を行うことが必要である。
・患者の現症状とその原因、その治療方法を採用する理由、治療方法の内容、
それによる危険性の程度、それを行った場合の改善の見込み・程度、当該治療
を行わない場合の予後等についてできるだけ具体的に説明することが必要であ
る。
《参考》
「医師は患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に
基 づ き 、特 別 の 事 情 の な い 限 り 、患 者 に 対 し 、当 該 疾 患 の 診 断 (病 名 と 病 状 ) 、
実施予定の手術の内容、手術に不随する危険性、他に選択可能な治療方法が
あれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務があると解
さ れ る 。」 (最 高 裁 判 決 H13.11.27)
(4 )事 例 紹 介 《 16∼ 19年 度 の 訴 訟 事 案 の 中 で イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト が 争 点
の一つとなった事例を紹介》
・ 上 記 「 (1)∼ (3)」 で イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト に 関 し て 理 解 し て お く べ き
基本的事項について整理したが、国立病院機構各病院における訴訟事案で、イ
ンフォームド・コンセントが争点の一つとなっている事案は決して少なくはな
い。
・ 平 成 16年 度 か ら 平 成 19年 度 ま で の 間 で 賠 償 金 の 支 払 い を 行 な っ た 訴 訟 事 案 の
う ち の 8% 程 度 が 、 イ ン フ ォ ー ム ド ・ コ ン セ ン ト が 争 点 の 一 つ と な っ て い る 事
案である。以下、インフォームド・コンセントに関わる訴訟事案について紹介
する。今後、各病院において更なるインフォームド・コンセントの徹底を図っ
ていく際の参考にしていただきたい。
〔紹介事案一覧〕
例1:説明内容が診療録に未記載であったため説明を行ったことが証明できず
説明義務違反とされてあ事案
例2:患者本人への説明がインフォームド・コンセントの成立要件であり、家
族への説明のみでは不十分とされた事案
例 3 : ADLに 極 め て 大 き な 影 響 を 及 ぼ す 処 置 を 確 定 診 断 前 に 行 う 場 合 の イ ン フ
ォームド・コンセントの成立要件が問われた事案
例4:医師側が適応がないとした治療法についての説明とセカンドオピニオン
の成立要件が問われた事案
例5:悪性腫瘍の可能性が高い場合であっても、良性であった場合の説明も十
分に行わなければ説明義務違反になるとされた事案
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例6:合併症の発症可能性について、死亡原因となった合併症の説明が漏れて
いれば説明義務違反になるとされた事案
例7:早い時期に発症する可能性がある合併症については、発症可能性だけで
なく、時期についても説明が必要とされた事案
例8:治療方針の変更に当たって、変更前の治療法を継続した場合の説明が不
十分であったために説明義務違反とされた事案
例9:術中迅速標本の結果を説明せず手術を継続したことが説明義務違反とさ
れた事案
例10:患者が判断を行うための時間的余裕がない時点の説明では、説明責任
を果たしたとは言えないとされた事案
例1:説明内容が診療録に未記載であったため説明を行ったことが証明できず説
明義務違反となった事案
〔 1 -1 〕
①甲状腺腫瘍摘出術後、摘出された病理組織検査により良性腫瘍と確定診断され
た事案である。患者側の訴えは、
a術前検査として穿刺吸引細胞診を実施していれば良性腫瘍であると診断でき
たにもかかわらず、それを実施しなかった、
bそのような方法についての説明があれば、他院で同検査を受ける選択も可能
であったにもかかわらず、説明は行われていない、
ことから、必要のない甲状腺腫瘍摘出術が行われ、その結果、障害が発生した
というものであった。
② 医 療 者 側 か ら は 、「 本 件 の 腫 瘍 は 、 良 性 の 可 能 性 が 高 い も の の 、 一 部 に 悪 性 の
可能性も否定できない。良性であっても悪性であっても、経過観察という選択
肢はあるが、悪性であった場合は進行するので注意を要する」旨の説明を行っ
たとの主張を行ったが、診療録にはその説明内容に関する記載がなく、手術承
諾書における説明内容に関する記載は抽象的なものにすぎなかったため、詳細
な説明が行われたことを立証することが困難であった。
③穿刺吸引細胞診については、医学文献等の記載内容からすれば、当該手術当時
においては、最早必須の検査として位置づけられているものであり、その説明
がなかったこと、また、仮に悪性であったとしても進行の遅い甲状腺腫瘍であ
ったものであるから、経過観察という選択肢もあったことについての説明が為
されなかったことについて、説明義務違反に当たるとされたものである。
〔 1 -2 〕
①患者は、他院で抗てんかん薬を投与されていた妊婦であり、機構病院にて出産
したものであるが、新生児に授乳をしていたことついて、乳児への影響に関す
る説明義務を怠ったとされた事案である。
87
②抗てんかん薬による母乳への移行について、主治医側は説明したと主張する一
方、患者側は説明されていないと主張し対立していた。しかしながら、主治医
が説明したという内容が診療録に記載されていないため、説明をしたとする意
見を立証することは困難であり、結果、患者側の主張が認められ、説明義務違
反に当たるとされたものである。
③服用中のデパケンの副作用の可能性さえ聞いていれば、新生児に授乳しなかっ
たことは確実であって、その説明を聞いていなかったことに対する精神的苦痛
は相当であるとされた。
〔 1 -3 〕
① 患 者 は 、 蛋 白 尿 、 血 尿 の 精 査 の た め の 腎 生 検 目 的 で 入 院 し 、 腎 生 検 後 3日 目 に
前屈姿勢を取ったことが原因で腎出血を生じた。患者は、危険性を認識せずに
検 査 後 3日 目 に 前 屈 姿 勢 を と っ た も の で あ り 、 そ の 直 後 左 腰 部 痛 が 発 生 、 緊
急アンギオ及び腎動脈塞栓術を施行した事案である。
②主治医より、腎生検後は前屈姿勢が危険であることを生活上の注意とともに口
頭で事前説明していたが、患者は説明を聞いていないと主張していた。また、
このことについては、診療録に記載されていないため、説明したとする病院側
の意見を立証することは困難であり、事前説明が不足していたとして説明義務
違反に当たるとされたものである。
例2:患者本人への説明がインフォームド・コンセントの成立要件であり、家族
への説明のみでは不十分とされた事案
① 椎 間 板 ヘ ル ニ ア の 摘 出 術 を 3回 に わ た り 実 施 し た に も か か わ ら ず 、 術 前 の 状 況
よりも悪化して、歩行不能となったことについて、患者は、車椅子の生活とな
ったのは医師の手術ミスのためであり、また、手術に際しての説明も不十分で
説明義務違反があると主張。
②手術の必要性については、神経学的所見、検査結果からすれば、いずれの場合
も手術適応であったと判断された。しかしながら、説明義務に関する点につい
ては、患者の妻に対してはある程度の説明はしているものの、患者本人に対し
ては、理解が得られるまでの説明は行われていなかった。
③ こ の た め 、 説 明 義 務 の 判 断 基 準 の う ち 、 二 重 基 準 説 (具 体 的 患 者 が 重 用 視 し 、
かつ、そのことを合理的医師ならば認識できたであろう情報が説明されるべき
で あ る )と の 考 え 方 か ら 、医 師 側 の 説 明 義 務 違 反 に 当 た る と さ れ た も の で あ る 。
例 3 : ADLに 極 め て 大 き な 影 響 を 及 ぼ す 処 置 を 確 定 診 断 前 に 行 う 場 合 の イ ン フ ォ
ームド・コンセントの成立要件が問われた事案
①患者は、胃悪性リンパ腫の疑いで入院、確定診断のないまま、胃全摘・脾臓切
除等の手術が実施された。手術前の担当医からの「開腹手術でリンパ節生検の
88
みを行うか、それとも胃切除まで行うか」との問い合わせに、患者は「開腹生
検 と 胃 切 除 の 2回 も 手 術 を 受 け た く な い の で 、 1回 で 治 る 手 術 を し て ほ し い 」 旨
の回答があった。そこで、医師は、患者・家族に対して「胃全摘及び脾臓切除
・リンパ節郭清術」を行うこと、及び手術の合併症についての説明を行い、手
術等の同意書を得ていた。
②術後の病理組織検査の結果は「多発性潰瘍であり、リンパ腫は見あたらない」
という内容であった。これに対し患者側からは、胃全摘、脾臓切除までしたの
は無駄であったのではないか、との不満が表明される。医師側からは、結果と
して多発性潰瘍と診断されたが、手術を行ったことはその時点での治療として
は最良の方法であった、旨の説明を行う。
③臨床的には悪性リンパ腫の可能性を踏まえて診療に当たった点には、なんら問
題 は な い 。 し か し な が ら 、 本 事 案 で 施 行 さ れ た 胃 全 摘 術 は 、 患 者 の そ の 後 の AD
Lに 極 め て 大 き な 影 響 を 及 ぼ す も の で あ る こ と か ら 、 確 定 診 断 前 に こ れ を 行 う
ことが正当化されるためには、考え得る範囲での説明を十分に尽くしているこ
とが求められるところ、本事案においては、胃全摘術前の説明に欠けるところ
があったことは否めないとされた。
④「考え得る範囲での説明を十分に尽くしていること」についての裁判所側の考
え方は、次のとおりであった。
本件手術のように重要な臓器である胃等の全摘を行う手術については、原則
として、事前に、その全摘の必要性を認めるべき疾患の確定診断がされていな
ければならない。すなわち、本件でいえば、原則として、開腹生検を経ること
なく全摘術を実施することは許されない。ただし、事前に、
a開腹生検を先行させて悪性リンパ腫であるとの確定診断ができた後に全摘
するのが本来であること、
b 開 腹 生 検 を し て 、悪 性 リ ン パ 腫 で あ る と の 確 定 診 断 が つ か な い 場 合 が あ り 、
その際には、改めて治療法を検討することになること、
c開腹生検を経ずに全摘をした場合、その術後の病理組織検査の結果、悪性
リ ン パ 腫 で は な か っ た (全 摘 の 必 要 は な か っ た )と い う こ と が 判 明 す る 場 合
もあること、
などが説明され、その説明を理解した患者が開腹生検を経ずに全摘をするこ
とに同意したのであれば、開腹生検を経ることなく全摘術を実施することも適
法 な も の と し て 許 さ れ る 。 し か し な が ら 、 本 事 案 に つ い て は 、 事 前 に b及 び cの
点について必要な説明が十分にされていないから、開腹生検を経ず本件手術を
実施することは許されない。
89
例4:医師側が適応がないとした治療法についての説明とセカンドオピニオンの
成立要件が問われた事案
①マンモフラフィーで右乳房に微細石灰化陰影が認められ悪性が疑われた患者に
ついて、医師は、マンモグラフィーの再撮影及び超音波ガイド下の穿刺吸引細
胞診の施行を勧めた。マンモフラフィーの撮影結果は悪性を否定できないとの
所見であったが、超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診の結果は、悪性細胞は認め
られなかった。
②医師は、乳がんの疑いがあるので、厳重な経過観察、又は積極的に生検を行う
方 法 が あ る こ と を 説 明 し た 。 こ の 説 明 に 対 し て 2週 間 を 過 ぎ て も 患 者 か ら の 返
答がなかったため、医師側から切除生検を受けることを勧めたところ、患者は
承諾した。
③生検の結果は、広範な乳管内進展を伴う非浸潤性乳管がんであった。手術方法
として、乳房温存療法では、がん遺残が多く残ることから乳房切除術の適応と
判断した。
④医師は、患者に対して、生検の結果、手術の方法、セカンドオピニオンについ
て の 説 明 を 実 施 。 1週 間 後 、 患 者 か ら 医 師 に 対 し て 乳 房 切 除 術 を 受 け る 旨 の 連
絡があり、来院後、改めて医師から患者本人に対して、病態、手術の必要性、
その合併症について説明を行い、承諾書を得たうえで、手術を施行した。
⑤術後、患者より「乳房温存療法等の適応があったにもかかわらず、当該療法に
ついての説明がなかった」という医師らの説明義務違反とセカンドオピニオン
を受ける権利の侵害等の主張が行われた。
⑥これに対する高裁判決の要旨は、次のとおりであった。
・乳がん手術の特殊性等に鑑みると、患者に対し、医師らはどの基準を満たさ
ないために乳房温存療法の適応がないと判断したのか、という詳細な理由を
説明することはもちろん、再発の危険性についても説明した上で、医師から
見れば適応外の症例でも乳房温存療法を実施している医療機関の名称や所在
を教示すべき義務があったというべきである。
・医師らは、自らの適応基準からは適応外と思われる症例でも、乳房温存療法
を強く希望する患者に対しては、当該療法を実施した場合の危険度を説明し
た上で、これを実施している医療機関が、少数ながら存在していることを知
っていた。また、患者が乳房温存療法に強い関心を有していることも認識し
ていた。
・しかしながら、医師らは、乳房温存療法は適応外であり、乳房切除術による
べきであることを説明したにとどまっており、また他の医療機関を紹介した
ことも、乳房温存療法は適応外であり、乳房切除術によるべきこととした判
断についてセカンドオピニオンを受けることのできる具体的な医療機関を教
示したにとどまるから、この事実を持って、医師らが適応外の症例でも乳房
温存療法を実施している医療機関の名称や所在を教示したとは認められな
90
い。
・したがって、医師らが患者に対してした説明は、不十分であったといわざる
を得ず、説明義務違反であるというべきである。
例5:悪性腫瘍の可能性が高い場合であっても、良性であった場合の説明も十分
に行わなければ説明義務違反になるとされた事案
①患者は、右大腿部が張った感じに気づき、次第に疼痛と腫脹が強くなり歩きに
く く な っ た こ と を 主 訴 と し て 受 診 。精 査 の た め 入 院 し 、針 生 検 を 実 施 。結 果 は 、
増殖性筋炎が疑われるが、腫瘤径が大きいのが気になるとして断定的診断は行
われなかった。
② 2度 目 の 生 検 を 実 施 し た 結 果 、 悪 性 腫 瘍 の 疑 い が あ る と の 見 解 が 示 さ れ 、 患 者
・家族に対して、病状及び切除術の必要性と後遺障害の可能性について説明し
た。患者から手術同意書が提出され、手術を実施した。
③摘出した患部についての検査機関の報告は、増殖性筋炎であり、腫瘍性疾患で
はないとのことであった。これに対し、患者側から、
a良性であったにもかかわらず経過観察とせず、悪性腫瘍であると判断した上
で手術を実施した、
b身体への侵襲を必要最小限にとどめるべきであるにもかかわらず、必要以上
に大量の筋肉を切除した、
c悪性の可能性が低い右大腿部腫瘤について、悪性であるかのように説明して
手術を実施し、患者の自己決定権を侵害した、との主張が行われた。
④これに対し、医師側は、患者の右大腿部腫瘤が悪性である可能性が高く切除を
行うことを前提に、その方法や後遺障害等については縷々説明をしているが、
良性である場合を前提とした説明については、詳細には行っておらず、その結
果、患者・家族に、患者の右大腿部腫瘤が確定診断として悪性腫瘍であるとい
う思い込みを抱かせ、無用の不安感を煽ったことは否定できないとされたもの
である。
例6:合併症の発症可能性について、死亡原因となった合併症の説明が漏れてい
れば説明義務違反になるとされた事案
① 患 者 は 、 子 宮 体 が ん 手 術 を 受 け 、 術 後 経 過 も 良 好 で あ っ た 。 術 後 11日 目 か ら 左
下 肢 浮 腫 が 出 現 、 術 後 13日 目 か ら ハ ド マ ー (エ ア マ ッ サ ー ジ 器 )と 抗 生 剤 に よ る
治 療 を 開 始 し た が 、 術 後 17日 目 に 様 態 が 急 変 し 死 亡 し た 。 病 理 解 剖 の 結 果 、 肺
動脈起始部及び分岐部の塞栓症による肺塞栓と診断された。
①下肢浮腫の原因を骨盤のリンパ浮腫及び同部位の炎症とし治療を行ったこと、
及び下肢へハドマーを使用したことなど治療上の過誤はないとされた。また、
手術前の説明においても、子宮全摘術、両側附属器摘出術等を行うこと、及び
合併症として膀胱麻痺、腸閉塞、リンパ浮腫等が考えられるなどの説明を行っ
91
ている。
③しかしながら、合併症として今回の直接の死因となった下肢の深部静脈血栓症
による肺塞栓が起こり得ることについては説明しておらず、この点が、手術実
施当時の医療水準の点から説明義務違反に当たるとされたものである。
例7:早い時期に発症する可能性がある合併症については、発症可能性だけでな
く、時期についても説明が必要とされた事案
①患者は、左肺全摘術及び縦隔リンパ節郭清術施行後に、間接性肺炎の合併症を
併発し死亡。医療者側に診療上の明確な過誤は認められないが、入院から約2
ヶ月半後という早い時期に死亡するということを患者、家族ともまったく予期
していなかった。
② 医 師 か ら は 、 家 族 同 席 の も と 患 者 に 対 し 肺 癌 で あ る 旨 の 告 知 を 行 い 、「 手 術 療
法 」 と 「 化 学 療 法 + 放 射 線 療 法 」 の 2つ の 治 療 法 が あ る こ と 、 発 生 し 得 る 合 併
症 と し て は 、 麻 酔 ア レ ル ギ ー 、 出 血 、 感 染 (肺 炎 、 膿 胸 )、 気 管 支 断 端 ろ う 、 気
管断端ろうから気胸となれば再手術が必要となる可能性等について説明を行っ
ていた。
③術後合併症として気管支断端ろうの可能性等については説明していたが、最悪
の 場 合 に は 、 手 術 直 後 に 合 併 症 を 併 発 し 2ヶ 月 半 程 度 の 短 期 間 で も 死 亡 す る 可
能 性 も あ る 、と い っ た 具 体 的 内 容 に つ い て は 説 明 し て お ら ず 、こ の 点 に つ い て 、
患者家族側は説明が不十分と認識していた。また、患者家族側にとっては、患
者の死亡がもたらした結果の発生突然性、結果の重大性も重なっていた。
④合併症としての気管支断端ろうの発症可能性と生命に及ぼす危険性につき言及
したことをもって、病院側として十分かつ適切な説明を尽くしたとは言えず、
気管支断端ろうの併発の時期までは予測不可能であるとはいえ、この様な早い
時期での併発可能性もあるということを、患者側が理解できるよう十分かつ丁
寧に説明することが必要であったとされたものである。
《 参 考 : 類 似 例 ・ 地 裁 判 決 H15.2.14》
患 者 の 右 手 第 2指 の 負 傷 に つ い て 、 被 告 病 院 医 師 ら は 適 切 に 処 置 は 行 っ た も
のの、その後同指を切断するという結果となった事案に関し、その説明義務の
点において、最悪の場合は指を切断することになるかもしれないことなどの説
明が適切かつ十分にはなされていなかったために、その結果に直面するに際し
て、大きな精神的苦痛を受けたものと認められ、その慰謝料額については、結
果の発生突然性、結果の重大性、被告病院医師らの説明不足などを総合的に考
慮 し て 、 100万 円 が 容 認 さ れ て い る 。
92
例8:治療方針の変更に当たって、変更前の治療法を継続した場合の説明が不十
分であったために説明義務違反とされた事案
① 患 者 は 、急 性 大 動 脈 解 離 と 診 断 さ れ 、外 来 通 院 に て 内 科 的 治 療 を 継 続 し て い た 。
聴診にて大動脈弁の逆流音が聴取されたこともあり、検査目的のため入院とな
る。心臓カテーテル等の検査結果により、内科的治療から外科的治療に変更す
ることを決定、患者・家族に対して病態、手術の必要性、実施した場合の死亡
率及び麻痺の発生率についても説明を行い、手術の承諾書を得ていた。
②胸腹部大動脈置換術を実施。麻酔から覚醒したが、左右下肢は麻痺状態であっ
た。神経内科を受診し、脊髄梗塞と診断されるが、大動脈基部置換術の合併症
として発症した椎麻痺であり、手術における技術的な過誤はなかった。
③しかしながら、患者・家族からは、
a内科的治療の継続の選択があり得たのに、十分な説明がなされないまま手術
が行われたこと、
b当該手術は、麻痺の発生も高いのにその点についても患者に対し十分な説明
がなされなかったこと、
c十分な説明がなされていれば、患者は手術を選択しなかった、
との主張が行われた点について、患者側の主張する内科的治療を継続した場
合の生存可能性等の点について情報提供不足を追求された場合、医療者側に
説明責任として弱点があるとされたものである。
例9:術中迅速標本の結果を説明せず手術を継続したことが説明義務違反とされ
た事案
① 当 初 、原 発 性 卵 巣 癌 と 想 定 し 、子 宮 全 摘 出 術 ・ 両 側 附 属 器 摘 出 術 を 実 施 し た が 、
術 中 に 実 施 し た 病 理 検 査 (術 中 迅 速 標 本 )に よ っ て 、 術 前 診 断 と は 異 な る 大 腸 が
んからの転移性卵巣癌であったこと、さらには腹膜播種を併発していたことが
判明した。
②本来ならばその時点で、患者に対して、積極的に子宮全摘を行うというエビデ
ンスはないことを説明した上で、再度、選択しうる術式等の説明を行い、予定
通 り の 術 式 (子 宮 全 摘 出 術 )を 実 施 す る か 、 子 宮 を 温 存 す る の か の 選 択 を ゆ だ ね
るべきであったところ、本事案では手術を継続し、子宮全摘出を行なった。ま
た、子宮摘出時に子宮と尿管を結さくしてしまい、尿管に損傷を与え、右腎機
能の廃絶に至ったものである。
③本事案では、術中迅速標本により大腸がんからの移転性卵巣癌であることが判
明した時点で、子宮摘出をすべきか否かの選択の機会を患者に与えるべきとこ
ろ、それを行なうことなく手術を継続し、子宮を全摘出した点について説明義
務 違 反 に 当 た る 。 ま た 、 術 中 迅 速 標 本 の 結 果 を 説 明 し て い れ ば 、 患 者 (家 族 )も
子宮全摘出術を取り止めた可能性は高く、手術の回避によって右腎機能廃絶に
は至らなかったものと考えられ、この点についても説明義務違反に当たるとさ
93
れたものである。
例10:患者が判断を行うための時間的余裕がない時点の説明では、説明責任を
果たしたとは言えないとされた事案
① 患 者 は 、肺 が ん の た め 右 肺 全 摘 手 術 を 行 っ た が 、術 後 、循 環 不 全 等 の た め 死 亡 。
呼吸器内科医師と呼吸器外科医師との間の連携が不十分であったことが原因
で、手術の危険性などについての説明が十分に行われなかった事例である。
②両診療科の医師は、お互いに相手の医師が患者への説明を行っているものと認
識 し て い た た め 、手 術 に つ い て の 詳 し い 説 明 を 行 う 時 期 が 大 幅 に 遅 れ て し ま い 、
実際に説明行われたのは、手術日の前日であった。これでは患者らが手術を受
けるかどうかの判断を行うための時間的余裕がなさすぎ、患者の自己決定権を
侵害したとして説明責任を果たしていないとされたものである。
(5)合併症について
医療行為は侵襲を伴うものであり、またその不確実性から、いかに最善を尽く
したとしても、処置の過程において予測不可能、あるいは不可避な合併症から完
全に逃れることはできない。このため、適応基準の範囲内であれば、合併症が発
生したこと自体について責任が問われる可能性は低いと考えられるが、一方で、
合併症発症に対する観察や発症後の処置の問題、インフォームド・コンセントが
争点となることも少なくない。今回、代表的な合併症と考えられる中心静脈カテ
ーテル挿入時の気胸や血胸の発生、心臓カテーテルや内視鏡使用時の穿孔、術後
の肺塞栓発症、縫合不全、薬剤によるアナフィラキシーショックについて、医療
事故報告として報告された具体的事例と各病院で執られた対応策等について紹介
するとともに、それぞれについての参考判例等について整理を行った。
〔紹介事案一覧〕
(1 )中 心 静 脈 カ テ ー テ ル 挿 入 時 の 気 胸
(2 )心 臓 カ テ ー テ ル 検 査 時 の 動 脈 穿 孔
(3 )内 視 鏡 治 療 時 の 穿 孔
(4 )手 術 後 の 肺 塞 栓 症 発 症
(5 )縫 合 不 全 に 伴 う 重 症 合 併 症
(6 )造 影 剤 に よ る ア ナ フ ェ ラ キ シ ー シ ョ ッ ク
(1 )中 心 静 脈 カ テ ー テ ル 挿 入 時 の 気 胸
例1
右 鎖 骨 下 よ り 、 CVカ テ ー テ ル 挿 入 時 、 誤 っ て 肺 を 穿 刺 し 、 右 気 胸 と な る 。
手技自体は適切に計画され、実施されたものと考えているが、結果として医原
94
性 の 気 胸 が 発 生 し た も の 。 挿 入 後 の 胸 部 X -Pで 右 気 胸 を 確 認 後 、 直 ち に 患 者 側
に説明を行った上で、胸腔ドレーンを留置する。
例2
直腸がん低位前方切除術に伴う右内頚静脈カテーテル留置。上記の手術の
ため全身麻酔導入後、右内頚静脈穿刺時に右気胸を疑った。手術終了後の胸部
X-Pで は 気 胸 は 明 確 で は な く 患 者 の 呼 吸 苦 の 訴 え も な か っ た が 、 翌 日 の 胸 部 X-P
で明らかな気胸を認めた。右副甲状腺手術の既往があり、右内頚静脈穿刺が困
難であった。穿刺針が深く入りすぎて右肺尖部に刺入したものと思われる。
例3
機能性イレウスの増悪のため、胃瘻からの栄養が困難となり低栄養状態が
進 ん だ こ と か ら 、栄 養 手 段 の 確 保 の た め IVH目 的 で CVカ テ ー テ ル 挿 入 を 試 み た 。
右内頚静脈を試験穿刺後、カテーテルを挿入。カテーテルからも静脈血がスム
ー ズ に 大 量 に 引 け た た め 補 液 剤 を 接 続 。 胸 部 X-Pで も 確 認 を 行 っ て お り 誤 挿 入
と 認 識 し て い な か っ た 。 翌 朝 迄 に 若 干 SPO2の 低 下 あ り 胸 部 X-P再 検 に て 胸 水 貯
留を認め誤挿入を確認した。誤挿入したカテーテルよりシリンジで胸腔内の貯
留を抜去。
例4
重心、嚥下障害、機能性消化障害等の患者であり、胃瘻栄養が不備となっ
た 。 低 栄 養 が 進 行 し た た め 栄 養 状 態 を 改 善 す る た め 、 IVHを 実 施 。 大 腿 静 脈 に
ついては両下肢の拘縮、伸展不良のため困難であることなどから、右内頚静脈
よ り 、 22 G針 に て 試 験 穿 刺 し て 行 っ た 所 、 エ ア ー が 引 け た た め こ の 段 階 で は 断
念 し 、 カ テ ー テ ル を 挿 入 す る に 至 ら な か っ た も の 。 SPO2が 70% 台 と な り 酸 素 吸
入 を 開 始 、 胸 部 X-P上 右 気 胸 を 確 認 。 酸 素 投 与 で SPO2 90 % 台 に 回 復 し た た め
経過観察。
《対応策等》
①患者及び家族への中心静脈カテーテル留置のメリット・デメリットについての
説明。特に、鎖骨下ルートによるカテーテル挿入は、慎重に実施しても時とし
て気胸、血腫、血胸等の合併症が出現することがあるので、実施前にそのリス
クを十分に説明するとともに、その内容を診療録に明記した上で行うことが必
要
②患者の状況に応じて、原則とした手術室やレントゲン室で実施。また、エコー
使用による静脈の走行の確認などによりリスクを低減
③カテーテル挿入時、困難を感じた場合は、早めにアプローチを変えてみる
④トレーニング歴や経験豊富な医師、又はそのような医師の下で実施。できるだ
け精神的、肉体的に余裕のある時間帯での実施
⑤ カ テ ー テ ル 挿 入 後 は 必 ず 胸 部 X-Pに よ り 留 置 カ テ ー テ ル の 位 置 、 及 び 気 胸 ・ 血
胸発症の有無についての確認を行う。また、挿入後は合併症が生じていないか
患者の観察を十分に行っていくことが必要
⑥ 挿 入 に 失 敗 し た 場 合 は 、 確 実 な 止 血 を 行 う と と も に 、 あ る 程 度 の 期 間 胸 部 X-P
による経過観察が必要
⑦気胸の場合には、患側肺野の呼吸音が対側に比し減弱するため聴診により診断
95
がつく場合が多く、出血の場合には、患側部位の腫脹や皮膚の色調変化からの
診断が可能
⑧気胸の危険性が高い鎖骨下静脈へのカテーテル挿入ではなく、大腿静脈への実
施についても、患者の状況を踏まえて考慮
【 判 例 】〈 岐 阜 地 裁 判 決
平 成 7年 10月 12日 〉
平 成 2年 10月 、 両 手 圧 挫 創 の 入 院 患 者 が 敗 血 症 性 シ ョ ッ ク と な っ た た め 、 中 心 静 脈 確
保の目的で鎖骨下静脈穿刺を行ったが、穿刺中患者に突然の体動が起こったため血管
を損傷し、無気肺を生じて死亡した事例に対し、患者が意識を消失し不穏状態にある
場合は、患者の身体を拘束するなどの工夫をしたうえで穿刺を行うべき注意義務があ
るとし、医師の責任が認められている。
(2 )心 臓 カ テ ー テ ル 検 査 時 の 動 脈 穿 孔
例1
冠 動 脈 解 離 、 狭 心 症 の 疑 い 等 の 患 者 。 冠 動 脈 造 影 を 施 行 中 、 右 冠 動 脈 に 4F
のカテーテルを挿入し、カテ先の圧が正常に出ているのを確認。造影剤を少量
フラッシュし血管内にカテーテルが位置していることを確認後に造影したが、
冠動脈を損傷し解離が生じたもの。緊急に冠動脈ステント留置術を行い、解離
の発生部位を塞ぎ、冠動脈内腔、血流を確保した。右冠動脈入口部の動脈硬化
病変存在の可能性と、カテーテル、造影剤注入により血管壁を損傷したもの。
例2
閉塞性動脈閉塞症の患者。右総腸骨動脈完全閉塞病異へ経皮的血管形成術
を施行し、右大腿動脈から挿入したシースイントロデューサーを更に深く病変
部位に近づけようとして、ガイドワイヤーが病変手前で血管外へ逸脱した。ガ
イドワイヤーの走行から血管外逸脱に気付き、即時ガイドワイヤーを戻して造
影 し た と こ ろ 、 血 管 穿 孔 に よ る 血 液 の 血 管 外 漏 出 を 認 め た 。 血 圧 が 180代 → 140
代 に 低 下 し ヘ パ リ ン と プ ロ タ ミ ン を 点 滴 投 与 し 血 圧 は 改 善 。 CT撮 影 を 行 い 確 認
し た と こ ろ 、 腹 腔 内 に 中 等 量 の 血 腫 が 形 成 さ れ て い た 。 ICUに 収 容 、 血 液 管 理
・抗血液凝固剤の投与にて経過観察を行う。
《対応策等》
①心臓カテーテル検査には、心筋梗塞、不整脈、脳血栓症などの重大な合併症が
約 0 .1% あ り 、 結 果 が 重 大 と な る 場 合 も 少 な く な い 。 こ の た め 、 心 臓 カ テ ー テ
ル検査を行う際には、原則として全例について死亡を含めた危険性についての
説明を行い、承諾を得るとともに、その内容を診療録に明記しておくことが必
要である。
② 細 心 の 注 意 を 払 っ た 検 査 の 実 施 。 出 来 る だ け 複 数 (2人 )体 制 で 検 査 を 実 施 す る
こ と と し 、 1人 の 医 師 が 操 作 し て ス ム ー ズ に い か な い 場 合 は 、 無 理 を せ ず に 交
代することが重要
③脳内病変や抹消血管病変がある患者の場合、心臓カテーテル検査による重大な
96
合併症の危険性が高いことが知られている。発症直後や急性期の脳血管障害患
者には、心臓カテーテルは禁忌であることに留意が必要
④完全閉塞病変に対するカテーテル治療においては、より慎重なガイドワイヤー
の操作
⑤標切病変の形態・血管の走行等を術前に、更に詳細に検討して検査を実施
【 判 例 】〈 東 京 地 裁 判 決
平 成 5年 4月 27日 〉
一般に、急性期の脳梗塞、発症直後の重篤な脳卒中の患者には、冠状動脈造影は危
険であるから、心臓カテーテル検査を実施する医師は、検査中に、検査ストレスで説
明できない非常な高血圧になる場合等患者に何らかの脳血管障害発生の徴候が生じた
場 合 は 、た と え 障 害 の 具 体 的 特 定 が で き な く と も 、検 査 を 中 止 す べ き 注 意 義 務 を 負 う 。
* 本 事 案 は 、 左 心 カ テ ー テ ル を 挿 入 し 、 左 心 室 圧 等 の 測 定 後 、 最 高 血 圧 が 200を 超 え て
上昇し胸部不快の訴え等が認められたためニトログリセリンを舌下、血圧低下が見
ら れ た の で 検 査 再 開 。 そ の 後 、 血 圧 が 再 び 上 昇 し 最 高 血 圧 が 230以 上 と な っ た が 、 患
者からの訴えはなく、アダラートを舌下し再び血圧が低下したので、冠動脈造影を
開 始 し た と こ ろ 、 再 度 、 最 高 血 圧 が 230ま で 上 昇 。 検 査 終 了 後 、 患 者 の 傾 眠 傾 向 が 続
き 、筋 緊 張 ・ 痙 攣 が 出 現 、更 に 多 量 の 消 化 管 出 血 を 契 機 に DICを 発 症 し 死 亡 し た も の 。
(3 )内 視 鏡 治 療 時 の 穿 孔
例1
早期胃癌の患者。胃体上部小弯の早期胃がんに対し、内視鏡下粘膜下層剥
離術を施行。肛門側の切開は順調に行われたが、口側の切開が手技的に困難で
あったため切開を断念。キャップ吸引法による粘膜切除術に変更。粘膜を吸引
しスネアにて切開した際、筋層が入り、穿孔を来した。クリップによる修復を
試みたが、穿孔部が大きく内視鏡的修復は困難と判断し、緊急手術を行った。
例2
下 血 の 原 因 探 索 の た め 大 腸 内 視 鏡 検 査 を 実 施 。 直 腸 S字 状 結 腸 移 行 部 付 近
で 腸 管 の 屈 曲 が 強 く 腸 管 の 穿 孔 を 起 す 。 人 工 肛 門 造 設 術 施 行 。 直 腸 S字 状 結 腸
移行部付近で腸管の屈曲が強く、視野が不良であったが内視鏡を挿入しようと
したことが一因。また、基礎疾患等により組織に脆弱性を来たしていた点も影
響があったと考えられる。
例3
内 視 鏡 検 査 を 実 施 。直 腸 か ら S状 結 腸 に 下 り た 部 位 に 全 周 性 の 腫 瘍( 閉 塞 )
があり、ブラインドの操作となる。ガイドワイヤーが閉塞部を通過したので、
ダイレーターからイレウスチューブを経肛門的に腫瘍を越えて留置し、先端は
下行結腸にあると考えていた。この操作自体はスムーズに行われたが、チュー
ブから糞便・空気が十分吸引されないので造影を行ったところ、腸管外であり
穿 孔 し た こ と が 判 明 。 家 族 に 説 明 後 、 緊 急 手 術 (ハ ル ト マ ン 手 術 )を 実 施 す る 。
《対応策等》
①基礎疾患や全身状態(腸管の動きや視野)に十分注意しながら実施。特に、麻
酔時には、患者の自覚症状が判断できないため一層注意深く行うことが必要
97
②大腸内視鏡を行う際には、大腸は壁が薄く穿孔しやすい臓器であることを念頭
に、モニターで管腔を確認しながら無理な挿入を避け、疼痛が強い場合や、抵
抗感が強いときは、スコープを抜くなどしながら、慎重に操作することが必要
③キャップ吸引法については、客観的な吸引圧の評価・調整方法の検討が必要
④悪性疾患を対象とする内視鏡治療に関しては、治療ガイドラインの適応基準を
満 た し て い て も 、 患 者 の 状 況 等 に 応 じ て 他 の 治 療 法 (手 術 な ど )を 第 一 選 択 と す
ることも考慮
⑤ポリープの部位が操作の難しい位置にある場合は、より安全な体位をとるなど
の工夫が必要
⑥研修等を通じて検査等手技の技術を高める
【 判 例 】〈 福 岡 地 裁 飯 塚 支 部 判 決
平 成 10年 10月 12日 〉
体 重 減 少 の 精 査 目 的 で の 大 腸 内 視 鏡 検 査 で S字 状 結 腸 穿 孔 を 生 じ た 事 案 。 ス コ ー プ が
粘膜に過接近になると、モニター画面が赤一色となり、さらにそのままスコープが進
められるとピンク色から白一色に変わるが、これは、穿孔準備状態であり、急激に操
作すると、段階的変化に気づかないまま一瞬にして穿孔することがあり、赤一色を危
険信号とみて慎重に操作すべきであるとし、このような段階的変化を意識せずに操作
を 行 っ た 医 師 の 過 失 を 認 め た 。 ま た 、 S状 結 腸 の 屈 曲 が 強 い 場 合 は 、 被 験 者 に あ る 程 度
の苦痛やスコープのある程度の抵抗は避けられないが、よりいっそう被験者の苦痛や
状 態 に 注 意 を 払 う と と も に 、ひ ど い 痛 み が あ る 場 合 は 我 慢 せ ず 申 し 出 る よ う 説 明 す る 、
絶えず痛みの具合を問いかけるなどにより被験者の苦痛の程度を確認することが必要
とされた。
(4 )手 術 後 の 肺 塞 栓 発 症
例1
S状 結 腸 切 除 術 を 行 っ た 84歳 の 患 者 。 術 後 10日 目 よ り 歩 行 訓 練 を 開 始 す る
が 、 な か な か 歩 行 で き な か っ た 。 1週 間 程 度 、 座 位 姿 勢 保 持 や 車 イ ス へ の 移 動
訓 練 を 行 っ た 後 の 術 後 19日 目 に 歩 行 訓 練 を 開 始 し た 。 訓 練 中 急 に 顔 面 蒼 白 、 眼
球挙上、意識消失し心肺停止状態になる。蘇生処置により心拍が開始したため
人工呼吸器を装着したが、死亡に到る。術中、術後を通して肺塞栓防止のため
フットポンプや、ストッキングの装着は行っていたが、術後の状態では早期の
離 床 が 困 難 で あ り 、 手 術 後 10日 後 か ら 歩 行 訓 練 を 開 始 す る が 、 本 人 の 意 欲 が 低
く な か な か 歩 行 出 来 な く 、 手 術 後 19日 目 に 歩 行 訓 練 を 行 っ た こ と が 合 併 症 を 発
症させた原因の一つと考えられる。
例2
右大腿骨骨折観血的手術実施。術中に著名な異常は認められなかった。手
術直後、発作性の呼吸困難が出現、呼吸不全となる。術後肺塞栓が疑われたた
め 、 酸 素 吸 入 及 び ヘ パ リ ン 投 与 。 ICU入 室 、 人 工 呼 吸 器 管 理 と し た が 、 全 身 状
態悪化し心肺停止、死亡が確認された。
98
《対応策等》
①高齢患者や術後患者、ベッド上で長期間安静を強いられる患者に、静脈血栓塞
栓症が発生しやすく、それに続き肺塞栓症が発生し、死亡する場合があること
に対して十分留意が必要
② 一 般 的 な 静 脈 血 栓 塞 栓 症 の 予 防 は 、弾 性 ス ト ッ キ ン グ や 間 欠 的 空 気 圧 迫 法 (IPC)
な ど の 機 械 的 予 防 法 、 及 び 低 容 量 非 分 画 ヘ パ リ ン 療 法 (LDUH)、 低 分 子 ヘ パ リ ン
療 法 (LMWH)、 ワ ー フ ァ リ ン 、 ア ス ピ リ ン な ど の 薬 物 療 法 で あ り 、 行 っ た 手 術 の
侵襲度、手術の内容、患者の年齢や身体状況等に応じた処置を実施
③低侵襲手術や比較的若い患者の場合は、早期離床に向けた訓練のための治療計
画を立てる
④静脈血栓塞栓症や肺塞栓症についての研修会の開催やマニュアル作成を通じ、
予防策についての理解を深める
*
平 成 16年 1月 に 日 本 血 栓 止 血 学 会 、 日 本 産 婦 人 科 学 会 、 日 本 産 科 婦 人 科 新
生児血液学会、日本静脈学会、日本集中治療医学会、日本心臓病学会、日本
泌 尿 器 科 学 会 、 日 本 麻 酔 科 学 会 、 肺 塞 栓 症 研 究 会 の 9学 会 が 、「 肺 血 栓 塞 栓 症
/深 部 静 脈 血 栓 症 (静 脈 血 栓 塞 栓 症 )予 防 ガ イ ド ラ イ ン 」 を 発 行
【静脈血栓塞栓症の予防法の例】
「『 医 療 安 全 の エ ビ デ ン ス 患 者 を 守 る 実 践
方策』
監訳 今中雄一」より抜粋
予
防
法
機
序
説
明
コ
メ
ン
ト
弾性ストッキン 機械的 膝 上 ま で 下 肢 の 形 に 合 わ せ 下 肢 の 形 に 合 わ せ た ス
グ (ES)
たストッキングを装着
トッキングは合わせて
いないものより効果が
高い
間欠的下肢圧迫 機械的 器 具 を 下 肢 に 取 り 付 け 、 間
(IPC)
欠的に加圧減圧を繰り返す
アスピリン
薬 理 学 的 一 般 的 に 325mg/日
ワーファリン
薬 理 学 手 術 当 時 あ る い は 手 術 初 期 INR(プ ロ ト ロ ン ビ ン 比 )
的
量 5∼ 10㎎ で 開 始 。 INRが 2∼ の モ ニ タ ー が 必 要
3倍 に な る ま で 調 節
低 容 量 非 分 画 ヘ 薬 理 学 5000単 位 を 1日 2回 あ る い は 3 活 動 性 出 血 や 、 血 小 板
パ リ ン (LDUH)
的
回 皮 下 注 、 PTTを 正 常 上 限 に 減 少 の 既 往 歴 が あ れ ば
維持するよう調節している 禁忌。投与量を調節す
研究もある
るのでなければ凝固検
査の必要はない
99
(5 )縫 合 不 全 に 伴 う 重 症 合 併 症
縫合不全、多臓器障害に関しては治癒。四肢筋力低下に関しては回復過程。
四 肢 筋 力 低 下 に 関 し て は 今 後 も 改 善 の 見 込 み で あ る 。 早 期 胃 癌 患 者 。 2月 1日 、
腹腔鏡下幽門側胃切除術施行。当日夜、下腹部の張る感じを訴えられたが経過
観 察 と し た 。 2月 2日 の 血 液 デ ー タ に て CK 1024と 著 明 に 上 昇 し た が 、 全 身 状 態
は 良 好 の た め 経 過 観 察 。 2月 5日 に ガ ス ト ロ 透 視 施 行 し た と こ ろ 、 リ ー ク な し 、
通 過 も 良 好 で あ っ た た め 、 2月 6日 よ り 流 動 食 開 始 し た 。 し か し 、 ド レ ー ン 排 液
が 膿 汁 と な っ た た め 膵 液 瘻 も し く は minor leakと 判 断 し 、 再 度 絶 食 と し た 。 2
月 8日 夕 方 の ガ ー ゼ 交 換 時 、 ド レ ー ン か ら 多 量 に 胆 汁 流 出 。 ガ ス ト ロ 透 視 に て
吻 合 部 小 彎 側 よ り major leakを 認 め た 。 縫 合 不 全 に よ る ろ う 孔 は 限 局 化 し て い
る た め 、 ド レ ー ン を 18Fr二 重 管 に 入 れ 換 え 、 先 端 を leak部 の cavityに 留 置 。 胃
管 も 挿 入 し 、 inner drainageと し た 。 ま ず は 保 存 的 に 経 過 観 察 。 全 身 的 な 影 響
が 出 る よ う な ら 開 腹 へ 踏 み 切 る 方 針 と し た 。 2月 14日 の ガ ス ト ロ 造 影 に て 改 善
傾 向 を 認 め 、 洗 浄 を 開 始 。 以 後 自 他 覚 的 と も に 改 善 傾 向 で あ っ た が 、 2月 18日 2
1 時 50分 頃 よ り 突 然 新 鮮 血 吐 血 出 現 。 呼 吸 状 態 も 増 悪 し た た め 、 20時 20分 気 管
内 挿 管 し 、 緊 急 CT検 査 施 行 。 明 ら か な 出 血 源 確 認 で き ず 、 2月 19日 に は デ ー タ
上 も DIC、 呼 吸 不 全 、 腎 不 全 、 肝 不 全 、 重 症 感 染 症 に て 極 め て 重 篤 の 状 態 と な
っ た た め 緊 急 開 腹 手 術 施 行 ( 手 術 記 事 参 照 )。 術 後 は I C U に て レ ス ピ レ ー タ ー
管理とし、エンドトキシン吸着、血液透析、血漿交換を行い、多臓器不全の状
態 は 脱 す る こ と が で き 、 2月 24日 に は 血 液 透 析 離 脱 。 し か し 、 MRSA肺 炎 、 十 二
指腸断端リーク、食道空腸吻合部リーク、全創感染を認めた。その後はドレー
ン 管 理 に て 何 と か 十 二 指 腸 断 端 お よ び 食 道 空 腸 吻 合 部 は 閉 鎖 。 し か し 、 Y脚 の
吻合部が腹壁に露出し、腹壁創は全解放状態となった。全身状態は徐々に改善
傾向を認めたため、7月27日に腸ろう部の再縫合術、人工肛門も閉鎖し腸管
の再建を行った。その術後も剥離操作に伴う食道空腸吻合部の空腸断端部から
の リ ー ク を 認 め た が ド レ ナ ー ジ 処 置 に て 改 善 を 認 め た た め 9月 3日 よ り 経 口 摂 取
可能となった。以後は順調に経過し現在に至っている。
〈 2月 19日 手 術 記 事 〉
上腹部正中切開にて開腹。腹壁への癒着はほとんどなく、右側腹部からのド
レーン周囲、および肝下面∼肝十二指腸靱帯部、および左側横行結腸頭側には
限 局 性 の 強 い 癒 着 を 認 め た 。左 側 腹 に は 、E.coli臭 の す る 膿 汁 の 貯 留 を 認 め た 。
残胃は血流障害著明で、縫合不全部を中心に胆嚢、結腸肝彎曲が強固に癒着し
ていた。結腸を剥離すると、一部壁が穿通している様な所見を認め、炎症性の
瘢痕組織の中に結腸壁が埋もれている印象であったため、その部位の結腸は切
除 し た 。上 行 結 腸 断 端 は 人 工 肛 門 の 方 針 と し 、肛 門 側 断 端 は そ の ま ま 放 置 し た 。
縫合不全部を剥離すると膵頭部及び右胃大網動脈根部のクリップが露出し、そ
の ク リ ッ プ の 根 本 か ら 拍 動 性 の 出 血 を 認 め た た め Z縫 合 に て 止 血 。 残 胃 の 周 囲
を 剥 離 す る と 、 短 胃 動 脈 は わ ず か に し か 認 め ず 。 EGJ背 側 壁 と 横 隔 膜 脚 と 強 固
100
に癒着していたが剥離は可能で、食道壁は色調良好であった。一方十二指腸断
端の後壁側を可及的に剥離し、縫い代を確保しようとしたが膵臓との境界分か
り づ ら く 剥 離 困 難 だ っ た 。 や む を 得 ず 3-0Vicrylに て 断 端 を 1層 に て 連 続 縫 合 閉
鎖 し た 。 残 胃 全 摘 し 、 25mmの CDHに て 食 道 空 腸 自 動 吻 合 を 行 っ た 。 吻 合 部 は 3-0
ネ オ ブ レ ー ド に て 全 周 性 に 筋 層 縫 合 を 加 え 補 強 し た 。 Treitzよ り 約 20cmの 空 腸
よ り 十 二 指 腸 断 端 方 向 へ 18Frの 二 重 管 を inner drainageと し て 逆 行 性 に 留 置 し
た。また、左後腹膜にも悪臭のする壊死性の大網が一塊となっていたため切除
し た 。 腹 腔 内 を 温 生 食 約 5000mlに て 洗 浄 し 、 左 側 腹 壁 よ り 吻 合 部 左 側 へ デ ュ ー
プル、右側腹より十二指腸断端にデュープルおよび垂直に前腹壁よりペンロー
ズ ド レ ー ン を 留 置 。 18Frの 二 重 管 は Witzel式 に 左 中 腹 部 よ り 体 外 へ 誘 導 。 腹 壁
を 2層 に て 閉 創 し た 後 、 上 行 結 腸 断 端 に 人 工 肛 門 造 設 。 "
《対応策等》
①初回手術時の明らかな過失はなかったものと考えており、縫合不全の明らかな
原因については特定することは困難
②しかし、そのドレナージ管理中の動脈性の出血は予期せぬものであった。結果
的にその動脈性の出血により急激に病態が重篤化したものと考えられる
③術後合併症の可能性については、より厳しくインフォームド・コンセントを実
施し、患者側が十分理解した上で同意・承諾したかについても注意深く観察・
把握するとともに、診療録にもその旨を確実に記載
④縫合不全を発見する最も重要な所見は、ドレーン排液の性状。ただし、縫合不
全が起こっても、ドレーン排液に異常がないうえ、ガストログラフィン造影上
も異常が認められないこともあるため、通常の術後反応と軽視しないよう注意
し、慎重な観察が必要
⑤ 一 般 に 、 消 化 管 吻 合 術 を 施 行 後 、 2∼ 3日 の 発 熱 の 後 、 再 度 4、 5日 目 に 発 熱 を 認
め れ ば 縫 合 不 全 を 考 慮 に 入 れ る べ き 。 ま た 、 縫 合 不 全 に は 1分 間 90∼ 100程 度 の
頻脈が合併することが多く、縫合不全の初発症状としては、発熱・頻脈が重要
【 判 例 1 】〈 横 浜 地 裁 判 決
昭 和 60年 11月 27日 〉
昭 和 53年 7月 、 子 宮 癌 の S状 結 腸 再 発 に よ る 腸 閉 塞 に 対 し 外 科 緊 急 手 術 を 行 っ た と こ
ろ 、 術 後 結 腸 縫 合 不 全 が 生 じ 、 そ の 後 人 工 肛 門 増 設 な ど の 2度 の 手 術 を 要 し た 。 こ れ に
対し裁判所は、一定の縫合不全の可能性は不可避として、医師の過失を否定した。
◇「判例1」のとおり、判例は、縫合不全一般については、ある程度不可避の合併症
であることを認めているが、一方で、次の「判例2」のとおり個別の縫合手技自体
が適切でなかったとして、過失を認定した例がある。
【 判 例 2 】〈 東 京 高 裁 判 決
平 成 9年 1月 29日 〉
胃癌に対する遠位胃切除術において、十二指腸授動を行わずに手術を進め、胃をい
101
ったん切離したが断端の癌浸潤が陽性であったため再度追加切除を行い、マクソン糸
を用いたアルベルト・レンベルト吻合によりビルロードⅠ法で再建したところ、吻合
部に強い緊張がかかるため、吻合部の十二指腸授動を行ったが、術後、再度大量吐血
の合併症が発生した。この事案に対し裁判所は、術後吐血の原因を縫合不全であると
したうえで、アルベルト・レンベルト吻合は吻合部血流を悪化させること、胃切除範
囲が大きい場合には縫合部に緊張がかかりやすいので吻合前に十二指腸授動を行って
お く こ と が 望 ま し い こ と 、 マ ク ソ ン 糸 は (緩 み や す い た め )強 い 緊 張 が か か る 吻 合 に は
使用すべきではないことなどを指摘し、吻合における手技上の過失があったと認定し
た。
◇また、縫合不全発生に対する経過観察が不十分で発見が遅れたため、対処が後手に
回ったとして過失を認めた例がある。一般に縫合不全発生のみで医師が責任を負う
ことは少ないが、縫合不全への対処に関する注意義務は厳格に判断されており、留
意が必要である。
【 判 例 3 】〈 京 都 地 裁
平 成 4年 10月 30日 〉
噴 門 部 ボ ー ル マ ン 1型 進 行 胃 癌 患 者 に 対 す る 胃 全 摘 術 の 術 後 4日 目 に 1000mlの 膿 性 左
胸水貯留をドレナージしたため食道空腸吻合部のメジャーリークが明らかになったが、
それ以前にはドレーン廃液に異常は認められなかった。患者は胸腹膜炎の悪化により
術 後 20日 目 に 死 亡 。 こ の 事 案 に 対 し 裁 判 所 は 、 痛 み の 程 度 や 胸 部 X-P上 の 胸 水 の 存 在 が
胃 全 摘 術 後 通 常 は み ら れ な い 所 見 で あ っ た と し て 術 後 2日 目 に は 縫 合 不 全 を 疑 い 得 た と
判断、ドレーン廃液の観察のみに頼り過ぎ、縫合不全の発見が致命的に遅れた過失が
あるとした。
【 判 例 4 】〈 大 阪 高 裁 判 決
平 成 7年 9月 13日 〉
S状 結 腸 切 除 (ドレーンは 挿 入 さ れ ず )術 後 5日 目 に 頻 脈 ・ 悪 寒 ・ 高 熱 持 続 、 右 下 腹 部 か ら
側 腹 部 の 響 く よ う な 疼 痛 、 白 血 球 増 多 、 一 過 性 シ ョ ッ ク を 認 め 、 翌 日 の 検 査 で 血 清 アミラ
ーゼが 上 昇 し て い た こ と か ら 、 医 師 は 術 後 膵 炎 と 診 断 し 、 蛋 白 分 解 酵 素 阻 害 薬 を 投 与 し
たが、その後ショックとなり、再手術が行われたが、縫合不全による腹膜炎のため死
亡 し た 。 こ の 事 案 に 対 し 裁 判 所 は 、 担 当 医 は 、 術 後 5日 目 の 時 点 で 縫 合 不 全 を 診 断 し 、
速やかに再手術を行うべきであったとし、縫合不全の発見・再手術の施行が遅れた過
失があるとした。
(6 )造 影 剤 に よ る ア ナ フ ィ ラ キ シ ー シ ョ ッ ク
胃 が ん に 係 る 化 学 療 法 CPT-11、 6ク ー ル 終 了 効 果 判 定 の た め の 造 影 CT。 2日 13
時 20分 頃 、 腹 部 造 影 CT撮 影 ( オ イ パ ミ ロ ン 300・ 100m l ・ 1ml/秒 ) 実 施 。 撮 影
中 は 、監 視 カ メ ラ で 観 察 を し て い た が 、特 に 体 動 も な く 異 常 は 見 ら れ な か っ た 。
CT撮 影 終 了 し 、ベ ッ ド を 移 動 し な が ら 観 察 。顔 面 紅 潮 あ り 、状 態 を 尋 ね る と「 気
分 が 悪 い 、 吐 き そ う だ 、 ト イ レ に 行 き た い 」 と 訴 え た た め 、 血 圧 140mmHg∼ で
102
あ っ た が 、『 お か し い ! ! 』 と 思 い 、 放 射 線 技 師 に 医 師 を 呼 ぶ よ う に 伝 え た 。
放 射 線 技 師 は 、医 師 を 呼 ぶ と 同 時 に 、コ ー ド ブ ル ー の 放 送 依 頼 を し た 。こ の 間 、
患者はルート確保したまま、介助で座位になったが即、天井を仰ぎ意識消失発
作 を 起 こ し た 。 放 射 線 科 医 師 が か け つ け た 時 、 血 圧 40mmHg ∼ 造 影 剤 シ ョ ッ ク
と 判 断 し 補 液 500m l を 開 始 。 そ れ と 前 後 し て 、 コ ー ド ブ ル ー の 放 送 を 聞 い た
職 員 が 駆 け つ け た 。補 液 開 始 後 、一 時 意 識 回 復 し 会 話 を し た が 、意 識 混 濁
「気
分 が 悪 い 、吐 き そ う 」と 言 わ れ 、ガ ー グ ル ベ ー ス を 用 意 し て 声 を か け る と 応 答 。
その直後、起き上がろうとしたり、点滴ルートを抜去しようとしたり不穏状態
であった。末梢冷感・盗汗あり、顔面紅潮、痙攣様硬直有り、意識消失・呼吸
停 止 ・ 鼠 径 動 脈 触 知 困 難 と な る 。 13時 38分 、 コ ー ド ブ ル ー 放 送 後 、 各 部 署 よ り
ス タ ッ フ が 駆 け つ け る 。 ル ー ト 確 保 、 気 管 内 挿 管 行 い 、 ICUへ 搬 送 。 13時 55分 、
I CU搬 送 後 、 人 工 呼 吸 器 装 着 、 昇 圧 剤 、 強 心 剤 等 使 用 。 14時 35分 、 意 識 レ ベ ル
回 復 、 声 掛 け で 開 眼 し 離 握 手 可 能 と な る 。 16時 40分 、 呼 吸 状 態 、 一 般 状 態 安 定
し気管内挿管チューブを抜管する。
《対応策等》
①予測は困難であったが、検査前には「空腹感と口渇があった」と、意識回復後
の患者の弁から、軽度の脱水症状にあった可能性があり、偶発症の発生につな
がった可能性は否定できない
②検査実施前に、患者状態・アレルギーについて行っている再チェックを徹底す
る
③ 造 影 CTを 実 施 す る 患 者 ( 特 に 高 齢 者 ・ 消 耗 性 疾 患 患 者 な ど ) は 、 よ り 慎 重 に ア
レルギー歴や既往歴・一般状態の確認を行う
④血管確保・蘇生バック・吸引カテーテルをセット化し、アナフィラキシー発生
時に物品の持ち出しが即できるようにする
【 判 例 】〈 大 阪 地 裁 判 決
昭 和 61年 5月 8日 〉
交通事故による左大腿骨骨折の患者が、小児喘息の既往があり、入院後の腫脹緩和
薬 に よ り シ ョ ッ ク と な り 、 セ フ ァ メ ジ ン [セ フ ァ ゾ リ ン ナ ト リ ウ ム ]に 対 す る 過 敏 症 テ
ストも陽性であったが、骨折整復術のために腰痛麻酔を実施したところ、ペルカミンS
[塩 酸 ジ ブ カ イ ン ]に よ る ア ナ フ ィ ラ キ シ ー シ ョ ッ ク に よ り 死 亡 し た 。 こ の 事 案 に 対 し
裁判所は、患者がアレルギー体質であり、アナフィラキシーショック発症の危険性が
高かったのだから、より安全な全身麻酔を選択すべきであったとし、有責であるとし
た。
103
(6)転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤について
国立病院機構における医療事故報告の内の約30%を転倒・転落事故が占めて
いる。転倒・転落事故と他の医療事故との大きな違いは、その発生が必ずしも看
護師等医療者側のエラーのみによるものではないという点にある。患者の遠慮が
ちな性格や認知機能障害等の要因による看護師等の目が届かないところでの自力
歩行が、転倒・転落に繋がるケースが非常に多くあり、また、その中の多くは、
移動する際にはナースコールをするよう指導していたケースでもある。
転倒・転落防止対策を進めていくためには、日頃からの患者の観察等を通じ患
者の転倒・転落リスクを的確に把握するとともに、リスクに応じ、患者の行動を
先取りした対策を講じていくことにある。そしてこの際、患者の認知機能を低下
させ、身体機能に大きな影響をもたらす要素として、睡眠鎮静剤等転倒・転落リ
スクを増大させる薬剤の服用がある。看護師等医療者が、各患者が服用している
薬剤についてきちんと把握しておくことは当然のこととして、その薬剤がどの様
な副作用を発生させ転倒・転落リスクを高めることになるのかを明確に知識とし
て持った上で対策を講じていくことが、転倒・転落事故防止対策を進めていくた
めの必須の要件である。
(1)転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤
転倒・転落の要因は、病態そのものの動作障害に加え、薬剤の副作用による
ものが多い。転倒・転落リスクを高める可能性のある薬剤について、副作用と
薬効分類の対応関係の主なものを整理すると次表のとおりとなる。
【転倒・転落リスクを増大させる可能性のある薬剤のリスト】
薬
効
分
類
リスクをもたらす副作用
睡眠鎮静薬、筋弛緩薬等
脱力、筋緊張低下
抗精神病薬、睡眠鎮静薬、抗不安薬、抗ヒス
眠気、ふらつき、集中力
タミン薬、抗アレルギー薬等
・注意力低下
降圧利尿剤等
失神、低血圧、めまい
麻 薬 、 ジキタリス製 剤 、 H 2ブロッカー、 β 遮 断 薬 等
せん妄状態
抗悪性腫瘍薬等
全身倦怠感
下剤等
下痢、腹痛
104
(2)薬剤投与による転倒・転落リスク低減のためのポイント
①
薬剤以外のリスク要因を正しく評価する。
②
一般に薬物有害反応発現の可能性は、投与される薬剤数の増加に伴って急
増するので安易に増やさない。
③
患者の不眠の訴えに対して、転倒・転落リスクが高い睡眠鎮静剤を安易に
投与しない。
④
転倒・転落リスクを増加させる可能性がある薬剤を投与されている患者で
は、薬剤血中濃度レベルと作用持続時間に影響を与える肝機能と腎機能の状
態をモニターし、過量投与とならないように監視する。
⑤
転倒・転落リスクが高い患者に対しては、薬剤によるリスク増加を防止す
るために全投与薬剤のリスク度の評価について、薬剤師が中心となって整理
を行う。
⑥
睡 眠 鎮 静 薬 を 服 用 し て い る 患 者 に 対 し て は 、適 切 な 服 用 方 法 、注 意 事 項( 健
忘、ふらつき等)を説明する。
⑦
発生した転倒・転落と薬剤投与の間に関連性が疑われる時は、薬剤投与に
よるリスクを正しく評価し、薬剤投与と転倒・転落リスクの関係についての
データが蓄積されるように、医師・看護師・薬剤師が協力してエラー報告書
を作成することが重要である。
(3)睡眠鎮静薬の使用について
《睡眠鎮静薬リスト》
眠 気 、ふ ら つ き 、注 意 力 の 低 下 な ど 意 識 や 平 衡 感 覚 の 抑 制 作 用 を 有 す る 薬 剤 、
中でもベンゾジアゼピン系及び非ベンゾジアゼピン系の睡眠鎮静薬が、転倒・
転 落 リ ス ク を 増 大 さ せ る 可 能 性 が 極 め て 高 い 薬 剤 と 言 え る 。「 別 紙 1 」 は 、 転
倒・転落を起こす可能性が高い睡眠鎮静薬について分類、商品名、1回当たり
の通常用量、作用時間等について整理したものである。
これらの薬剤は、催眠作用や鎮静作用に加え、筋弛緩作用を有するものが多
い。そのために高齢者では、中枢抑制作用に加えて起立困難や歩行障害など運
動 能 力 も 低 下 し 、転 倒 ・ 転 落 や 骨 折 と 強 い 関 連 性 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 。
よって、各病院では、本リストを参考にしながら、自病院で採用されている睡
眠 鎮 静 薬 の 一 覧 表 を 薬 剤 部 門 が 中 心 と な っ て 作 成 す る と と も に 、商 品 名 や 規 格 、
作用時間、筋弛緩作用の有無等を明確に意識した上で、対策を講じていくこと
が求められる。
《転倒・転落事故防止の観点からの睡眠鎮静薬使用時の留意点》
精神機能及び運動機能に影響を及ぼす薬剤、特に中枢抑制作用と筋弛緩作用
を 併 せ 持 つ 睡 眠 鎮 静 薬 の 使 用 に つ い て は 、慎 重 な 検 討 を 行 う こ と が 重 要 で あ る 。
105
ま た 、睡 眠 鎮 静 薬 を 服 用 中 の 患 者 に 対 し て は 、以 下 の 確 認 と 指 導 が 必 要 で あ る 。
①
記 憶 障 害 (前 向 性 健 忘 )の 発 現 に 注 意 し 、 睡 眠 鎮 静 薬 は 必 要 最 低 限 の 用 量 と
する。また、服用後は速やかに就寝することや、作用持続時間の異なる2種
類の薬剤を併用している場合には、必ず同時に服用するように指導する。
②
不眠の訴えに対して、転倒・転落リスクの高い睡眠鎮静薬を安易に投与し
な い 。入 院 に よ る 環 境 の 変 化 や 手 術 、検 査 へ の 不 安 等 に よ る 不 眠 に 対 し て は 、
筋弛緩作用の弱い抗不安薬を睡眠鎮静薬として使用する。
③
生活パターンを考慮して睡眠鎮静薬の服用時間を決める。可能であれば日
中に散歩やリハビリなどを計画して昼夜のメリハリをつける。日中に太陽光
線にあたる、昼寝は午後3時までに30分程度とする、など睡眠鎮静薬に頼
らずに自然に睡眠に入れるような生活改善を指導することも重要である。
④
翌朝以降も作用が持続する「持ち越し効果」の有無を確認し、必要に応じ
て 減 量 や 作 用 時 間 の 短 い 薬 剤 へ 変 更 す る 。「 持 ち 越 し 効 果 」が あ る 場 合 に は 、
自覚していない潜在的な眠気の可能性を説明し、歩行時、運転時等注意を呼
び掛ける。
⑤
筋弛緩作用は作用時間の長い薬剤に比較的強く発現するため、必要に応じ
て減量する等の変更について、常に検討を行う。排泄が自立している高齢者
では、夜間覚醒時や早朝起床時の動作について、排泄の際には必ずコールす
るよう指導するなど十分な指導を行う。また、排泄を済ませた後に服用する
ことや夜間覚醒時の照明、履物についても指導する。
⑥
睡眠鎮静薬を中止する場合、作用時間の短い薬剤では反跳性不眠や退薬症
候を生じやすいため漸減法で徐々に減量する。作用時間の長い薬剤の場合に
は、隔日投与にするなど投与間隔を徐々にあけて減量する。また、作用時間
の短い薬剤をいったん長い薬剤に置き換えた後に減量する置換法も用いられ
る。
(4)睡眠鎮静薬以外の転倒・転落リスクを増大させる薬剤リスト
睡眠鎮静薬以外の薬剤で転倒・転落リスクを増大させる薬剤リストを整理し
たものが、別紙2∼6である。各病院は、これらリストを参考にして、自病院
で採用されている転倒・転落リスクを増大させる薬剤リストを、薬剤部門が中
心となって、五十音順に医薬品名を並べるなど薬剤部門以外の者にも活用しや
すい形で作成するとともに、常に当該リストを念頭に置きながら対策を講じて
いくことが必要である。
・抗 精 神 病 薬 一 覧 表:別紙2
・降 圧 利 尿 剤 一 覧 表:別紙3
・麻
薬
一
覧
表:別紙4
・抗悪性腫瘍薬一覧表:別紙5
・下
剤
一
覧
表:別紙6
106
【参考文献】
1)鈴木隆雄:転倒リスクを高める要因、調剤と情報、12:554−557、
2006
2)古川裕之:リスクを高める薬剤、Nursing
Today、10:65
−71、2007
3)内山
真:睡眠障害の対応と治療ガイドライン、じほう、2002
4)小原
淳:転倒の原因となりうる医薬品の薬剤管理指導のポイント、薬事、
Vol.50、No1
5)特集睡眠障害、医薬ジャーナル
Vol.37.No8.2001
6)各製薬会社添付文書
7)治療薬マニュアル、2007
107
108
ハルシオン
商品名
ゾピクロン
ロルメタゼパム
塩酸リルマザホン
エバミール
リスミー
酒石酸ゾルピデム
トリアゾラム
一般名
アモバン
超短時間 マイスリー
作用型
作用分類
ベンゾジアゼピン系
ハロキサゾラム
*商品名・規格は標準的医薬品
ソメリン
フルラゼパム塩酸塩
クアゼパム
ニトラゼパム
ベンザリン
ドラ−ル
フルニトラゼパム
ロヒプノール
ベノジール
長時間作
ダルメート
用型
中間作用
型
ニメタゼパム
エスタゾラム
エリミン
ユーロジン
短時間作
用型
レンドルミン ブロチゾラム
チエノジアゼピン系
レンドルミンD
ベンゾジアゼピン系
シクロピロロン系
イミダゾピリジン系
ベンゾジアゼピン系
分類
転倒・転落を起こす可能性が高い薬剤(睡眠鎮静薬)
20mg ※1 手術前夜:15∼30mg ※1
10∼30mg
40-60分
15-30分
40-60分
1回の服用量(成人、通常用
量)
作用発現時間
0.125mg(最大0.5mg)
15-30分
麻酔前投薬0.25mg
5∼10mg
7-27分
1日10mgを超えない
7.5∼10mg
15-30分
10mgを超えない
1∼2mg
15-30分
1∼2mg
15-30分
2mg
0.25mg
15-30分
手術前夜:0.25mg
麻酔前:0.5mg
3∼5mg
15-30分
1∼4mg
15-30分
手術前夜:1∼2mg
麻酔前:2∼4mg
0.5∼2mg
20-30分
高齢者には1回1mgまで
−
5∼10mg
20-50分
10mg/g細粒 5∼10mg
10mg/T
5mg/T
1%散
1mg/T 2mg/T 1mg/T
2mg/T
2mg/A
1%細粒
2mg/T
5mg/T
10mg/T
15mg/T
20mg/T
10mg/P
15mg/P
0.125mg/T
0.25mg/T
5mg/T
10mg/T
7.5mg/T
10mg/T
1mg/T
1mg/T
2mg/T
0.25mg/T
規格
25-41時間
24-48時間
7時間
24時間
24時間
7時間
10時間
10.5時間
3.9時間
2時間
42-123時間
+∼++
+
±
+∼++
+∼++
++
++∼+++
+
±∼+
++
±∼+
±∼+
++
筋弛緩作用
【参考文献】
治療薬マニュアル2007
各社添付文書
6-9時間
10-30時間 5.9時間
(2.3-12時間
6-8時間
4-8時間
8時間
4-8時間
4-6時間
7時間
6-8時間
6-8時間
6-8時間
6-8時間
作用時間
作用時間
半減期
6-7時間
2.9時間
(別紙1)
分類
ク
ロプ
ルロ
マ
ジ製
ン剤
109
イ
ミ
プ
ラ系
ミ製
ン剤
ノ
チ
ア
ジ
ン
系
製
剤
フ
ェ
医薬品名
ウインタミン細粒 ウインタミン錠 コントミン散
コントミン糖衣錠
コントミン筋注 10mg 2mL
ニューレプチル細粒 ニューレプチル錠 トリフロペラジン散 トリフロペラジン糖衣錠 フルメジン散 フルメジン糖衣錠 ノバミン錠 ピーゼットシー散 ピーゼットシー糖衣錠 2mg
ヒルナミン散
ヒルナミン錠 25mg
ヒルナミン筋注
レボトミン散 レボトミン顆粒 レボトミン錠 25mg
レボトミン筋注 フルデカシンキット筋注 フルデカシン筋注 ノバミン筋注
イミドール糖衣錠 トフラニール錠 アナフラニール錠10mg
アナフラニール注射液 アンプリット錠 アモキサン細粒
一般名
塩酸クロルプロマジン
塩酸クロルプロマジン
塩酸クロルプロマジン
塩酸クロルプロマジン
塩酸クロルプロマジン
プロペリシアジン
プロペリシアジン
マレイン酸トリフロペラジン
マレイン酸トリフロペラジン
マレイン酸フルフェナジン
マレイン酸フルフェナジン
マレイン酸プロクロルペラジン
フェンジゾ酸ペルフェナジン
マレイン酸ペルフェナジン
マレイン酸レボメプロマジン
マレイン酸レボメプロマジン
塩酸レボメプロマジン
マレイン酸レボメプロマジン
マレイン酸レボメプロマジン
マレイン酸レボメプロマジン
塩酸レボメプロマジン
デカン酸フルフェナジン
デカン酸フルフェナジン
プロクロルペラジン
塩酸イミプラミン
塩酸イミプラミン
塩酸クロミプラミン
塩酸クロミプラミン
塩酸ロフェプラミン
アモキサピン
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
10%散
12.5mg錠、25mg錠、50mg錠、100mg錠
10%散
12.5mg錠、25mg錠、50mg錠、100mg錠
0.5% 2mL、0.5%5ml、1%5ml、
10%散
5mg錠、10mg錠、25mg錠
1%散
2.5mg 錠
0.2%散
0.25mg錠、0.5mg錠、1mg錠
5mg錠
1%散
2mg錠、4mg錠
10%散、50%散
5mg錠、25mg錠、50mg錠
25mg 1mL
10%散、50%散
10%顆粒
25mg錠、50mg錠
2.5% 1mL
25mg 1mLキット
25mg 1mL
5mg 1mL
10mg錠
10mg錠、25mg錠
10mg錠、25mg錠
25mg 2mL
10mg錠、25mg錠
10%散
規格
(別紙2)
110
分類
そ
の
他
医薬品名
アモキサン カプセル 25mg
エビリファイ散
エビリファイ錠
エチカーム錠 エチゾラム錠 セデコパン細粒 セデコパン錠 デゾラム錠 デパス細粒 デパス錠 パルギン錠 メディピース錠 トリプタノール錠 ノーマルン錠 クロフェクトン顆粒 クロフェクトン錠 スタドルフ細粒 スタドルフ錠 バチール錠 バルネチール細粒 バルネチール錠
ジェイゾロフト錠
プロチアデン錠
アンデプレ錠 デジレル錠
レスリン錠
ノリトレン錠 パキシル錠 アタラックスP注射液
アタラックス錠 一般名
アモキサピン
アリピプラゾール
アリピプラゾール
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
エチゾラム
塩酸アミトリプチリン
塩酸アミトリプチリン
塩酸クロカプラミン
塩酸クロカプラミン
塩酸スルトプリド
塩酸スルトプリド
塩酸スルトプリド
塩酸スルトプリド
塩酸スルトプリド
塩酸セルトラリン
塩酸ドスレピン
塩酸トラゾドン
塩酸トラゾドン
塩酸トラゾドン
塩酸ノルトリプチリン
塩酸パロキセチン水和物
塩酸ヒドロキシジン
塩酸ヒドロキシジン
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
規格
10mgCap、25mgCap、50mgCap
1%散
3mg 錠、6mg錠
0.5mg錠
0.5mg錠
10%散
0.5mg錠、1mg錠
0.5mg錠、1mg錠
1%散
0.5mg錠、1mg錠
1mg錠
0.5mg錠
10mg錠、25mg錠
10mg錠
10%散
25mg錠、50mg錠
50%散
100mg錠、200mg錠
200mg錠
50%散
50mg錠、100mg錠、200mg錠
25mg錠、50mg錠
25mg錠
25mg錠、50mg錠
25mg錠、50mg錠
25mg錠、50mg錠
10mg錠、25mg錠
10mg錠、20mg錠
25mg 1ml、50mg1ml
10mg錠、25mg錠
(別紙2)
111
分類
そ
の
他
プロピタン散 プロピタン錠 ルーラン錠 クロンモリン錠 ノイオミール錠 ルジオミール錠 テトラミド錠 トレドミン錠 15mg
リタリン散「チバ」 リタリン錠「チバ」 クレミン錠
クレミン顆粒
ルバトレン錠 ホーリット散
ホーリット錠
ジプレキサザイディス錠
ジプレキサ細粒 ジプレキサ錠 リーゼ錠 リーゼ顆粒 ベゲタミン錠−A
ベゲタミン錠−B
スピロピタン散
スピロピタン錠
アビリット錠
スルピリド錠
ドグマチール錠 ミラドール錠
セトウス細粒 セトウス錠
医薬品名
一般名
塩酸フロロピパミド
塩酸フロロピパミド
塩酸ペロスピロン水和物
塩酸マプロチリン
塩酸マプロチリン
塩酸マプロチリン
塩酸ミアンセリン
塩酸ミルナシプラン
塩酸メチルフェニデート
塩酸メチルフェニデート
塩酸モサプラミン
塩酸モサプラミン
塩酸モペロン
オキシペルチン
オキシペルチン
オランザピン
オランザピン
オランザピン
クロチアゼパム
クロチアゼパム
クロルプロマジン・プロメタジン配合剤
クロルプロマジン・プロメタジン配合剤
スピペロン
スピペロン
スルピリド
スルピリド
スルピリド
スルピリド
ゾテピン
ゾテピン
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
10%散
50mg錠
4mg 錠、8mg錠
10mg錠
10mg錠、25mg錠
10mg錠、25mg錠
10mg錠、30mg錠
15mg錠、25mg錠
1% 散
10mg錠
25mg錠
10% バラ散
5mg錠
10%散
40mg錠
5mg錠、10mg錠
1% 散
2.5mg錠、5mg錠、10mg 錠
5mg錠、10mg錠
10%散
錠
錠
0.3%散
1mg錠
100mg錠、200mg錠
100mg錠、200mg錠
100mg錠、200mg錠
100mg錠、200mg錠
10% 散
50mg錠
規格
(別紙2)
112
分類
そ
の
他
メジャピン細粒
メジャピン錠 ロシゾピロン細粒
ロシゾピロン錠 ロドピン細粒 ロドピン錠 リーマス錠 炭酸リチウム錠 「ヨシトミ」
セルマニル細粒
セルマニル錠 トロペロン細粒 トロペロン錠0.5mg
ネオペリドール注
ハロマンス注
エミレース細粒
エミレース錠
アタラックス−Pカプセル
アタラックス−Pシロップ
アタラックス−Pドライシロップ
アタラックス−P散 セレネース細粒
セレネース錠 セレネース注 セレネース内服液 ハロステン細粒
ハロステン錠 リントン細粒 リントン錠 リントン注 オーラップ細粒 医薬品名
一般名
ゾテピン
ゾテピン
ゾテピン
ゾテピン
ゾテピン
ゾテピン
炭酸リチウム
炭酸リチウム
チミペロン
チミペロン
チミペロン
チミペロン
デカン酸ハロペリドール
デカン酸ハロペリドール
ネモナプリド
ネモナプリド
パモ酸ヒドロキシジン
パモ酸ヒドロキシジン
パモ酸ヒドロキシジン
パモ酸ヒドロキシジン
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ハロペリドール
ピモジド
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
10%散
25mg錠、50mg錠
10%散
25mg錠、50mg錠
10%散、50%散
25mg錠、50mg錠、100mg錠
100mg錠、200mg錠
100mg錠、200mg錠
1%散
3mg錠
1%散
0.5mg錠、1mg錠、3mg錠
50A、100mgA
50mgA、100mgA
2%散
3mg錠、10mg錠
25mgCAP
0.5% 500mL
2.5%散
10%散
1%散
0.75mg錠、1.5mg錠、1mg錠、3mg錠
0.5% 1mL
0.2%500mL
1%散
1mg錠、2mg錠
1% 500g
0.75mg錠、1.5mg錠、3mg錠
0.5% 1ml
1%散
規格
(別紙2)
113
オーラップ錠 セロクエル錠
セロクエル細粒 インプロメン細粒
インプロメン錠 プリンドリル細粒 ルナプロン細粒
ルナプロン錠 デフェクトン糖衣錠
テシプール錠 デプロメール錠 ルボックス錠 リスパダール細粒 リスパダール錠 リスパダール内用液1mg/mL
リスパダール内用液1mg/mL
医薬品名
ピモジド
フマル酸クエチアピン
フマル酸クエチアピン
ブロムペリドール
ブロムペリドール
ブロムペリドール
ブロムペリドール
ブロムペリドール
マレイン酸カルピプラミン
マレイン酸セチプチリン
マレイン酸フルボキサミン
マレイン酸フルボキサミン
リスペリドン
リスペリドン
リスペリドン
リスペリドン
一般名
規格
1mg錠、3mg錠
25mg錠、100mg 錠
50%散
1%散
1mg錠、3mg錠、6mg錠
10mg散
1% 散
1mg錠、3mg錠、6mg錠
25mg錠
1mg錠
25mg錠、50mg錠
25mg錠、50mg錠
1%散
1mg錠、2mg錠、3mg錠
0.5ml包、1ml包、2ml包
30ml瓶、100ml瓶
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
分類
抗 精 神 病 薬 一 覧 表
(別紙2)
(別紙3)
降 圧 利 尿 剤 一 覧 表
薬品名
サ
イ
ア
ザ
イ
ド
系
及
び
類
似
利
尿
薬
一 般 名
ー
K
保
持
生
利
尿
剤
浸
利
透
尿
性
剤
炭
酸
脱
水阻
酵害
素剤
投与回数
(回/日)
投与量
作用発現
時間(hr)
作用持続
時
間
ダイクロトライド ヒドロクロロチアジド
25mg 1T
25∼100mg/回
1∼2回
1∼2
6∼12
フルイトラン
2mg 1T
2∼8mg/日
1∼2回
2
24
4mg 1T
1∼2T/回
2回
維:2∼3回/週
−
−
4mg 0.1mg 5mg
1∼2T/回 維:1∼
1∼2回
2T/日
−
−
ベハイド
ベハイドRA
トリクロルメチアジド
ベンチル
ヒドロクロロチアジド
ベンチル
ヒドロクロロチアジド
レセルピン
カルバゾクロム
バイカロン
メフルシド
25mg 1T
25∼50mg/日
1∼2回
1回→朝
2回→朝・昼
−
20∼24
アレステン
メチクラン
150mg 1T
1T/回
1∼2回
−
−
ハイグロトン
クロルタリドン
50mg 1T
50∼100mg/日 100
∼200mg/日
1回
連日or隔日
−
−
ナトリックス
インダパミド
1mg 1T
2mg 1T
1T/回
1回
−
24
ノルモナール
トリパミド
15mg 1T
1T/回
1∼2回
1回→朝
2回→朝・昼
−
8
ラシックス
フロセミド
4% 細粒
20mg 1T
40mg 1T
40∼80mg/回
1回
連日or隔日
1
6
40mg 1P
1P/回
1∼2回
2
−
−
−
オイテンシン
ル
プ
利
尿
剤
規格
アレリックス
ピレタニド
3mg 1T
6mg 1T
3∼6mg/日
1∼2回
ルネトロン
ブメタニド
1mg 1T
1∼2T/日
1∼2回
ダイアート
アゾセミド
30mg 1T
60mg 1T
60mg/日
1回
1
9
ルプラック
トラセミド
4mg 1T
8mg 1T
4∼8mg/日
1回
0.5∼1
6
アルダクトンA
スピロノラクトン
100mg/g 細粒
25mg 1T
50mg 1T
50∼100mg/日
分割
3∼8日
休薬後も
48∼72
ソルダクトン注
カンレノ酸カリウム
100mg1管
200mg1管
100∼200mg/日
1∼2回
10分
1∼1.5
トリテレン
トリアムテレン
50mg 1P
2∼4P/日
2∼3回
2
8∼12
イソバイド
イソソルビド
70%ml
70∼140ml
2∼3回
0.5∼1
4∼6
疾患により
異なる
疾患により
異なる
0.3∼1
6∼12
末
250mg 1T
ダイアモックス
アセタゾラミド
ダイアモックス注
500mg1瓶
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
114
6∼8
(別紙4)
麻 薬 一 覧 表
分 類
アヘン製剤
商品名
アヘン
アヘンチンキ
一般名
アヘン
パンオピン
パンオピン注
塩酸アヘンアルカロイド
塩酸エチルモルヒネ
2% 1mL
末
末 錠10mg
オプソ内服液
5mg 10mg
パシーフカプセル
30mg 60mg 120mg
塩酸モルヒネ
10mg 50mg 200mg
プレペノン1%注シリンジ
50mg 100mg
アンペック注
10mg 50mg 200mg
アンペック坐剤
10mg
MSコンチン錠
ア
ヘ
ン
ア
ル
カ
ロ
イ
ド
系
10%
塩酸モルヒネ
塩酸モルヒネ注射液
モルヒネ系
製剤
末 散10%
末
オピアル注射液
塩酸エチルモルヒネ
規格
10mg 30mg 60mg
MSツワイスロン カプセル
カディアン カプセル
カディアン スティック 粒
20mg 30mg
硫酸モルヒネ
20mg 30mg 60mg
30mg 60mg 120mg
ピーガード錠
20mg 30mg 60mg 120mg
モルペス細粒
2% 6%
コデイン系
製剤
リン酸コデイン
リン酸コデイン
末 散10% 錠20mg
リン酸ジヒドロコデイン
リン酸ジヒドロコデイン
末 散10%
その他の
アヘン
アルカロイド
系
麻薬
オキシコンチン錠
オキノーム散
メテバニール錠
オピアト注射液
パンアト注
塩酸オキシコドン
オキシメテバノール
5mg 10mg 20mg 40mg
0.5%
2mg
アヘンアルカロイド・アトロピン 1mL
オピスコ注射液
ハンスコ注
配合剤
ロイド系アルカ
コカ
非
ア
ル
カ
ロ
イ
ド
系
弱ハンスコ注
弱オピスコ注射液
モヒアト注射液
モルヒネ・アトロピン
1mL
ドーフル散
アヘン・トコン散
散
パビナール注
複方オキシコドン
1mL
パビナール・アトロピン注
複方オキシコドン・アトロピン
1mL
コカイン系製剤 塩酸コカイン
塩酸コカイン
末
フェニル
ピヘリジン系
製剤
塩酸ペチジン
その他の
合成麻薬
配合剤
オピスタン
オピスタン注
末
35mg、50mg
フェンタニル注射液
クエン酸フェンタニル
0.1mg 0.25mg
デュロテップパッチ
フェンタニル
2.5mg 5mg 7.5mg 10mg
アルチバ静注用
塩酸レミフェンタニル
2mg 5mg
タラモナール
クエン酸フェンタニル ドロペリドール
2mL
ペチロルファン注射液
弱ペチロルファン注射液
全身麻酔剤
アヘンアルカロイド・スコポラミン 1mL
ケタラール注
塩酸ペチジン・酒石酸レバロルファン 1mL
塩酸ケタミン
静注200mg 筋注500mg
115
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
(別紙5)
抗 悪 性 腫 瘍 薬 一 覧 表
分類
医薬品名
プラトシン注50 50mg 100mL
ダカルバジン
塩酸ニムスチン
ラニムスチン
メルファラン
メルファラン
シクロホスファミド
チオテパ
ブスルファン
イホスファミド
シクロホスファミド
塩酸ミトキサントロン
塩酸ミトキサントロン
塩酸プロカルバジン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸イリノテカン
塩酸ノギテカン
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
エトポシド
ソブゾキサン
ネダプラチン
ネダプラチン
ネダプラチン
オキサリプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
シスプラチン
ブリプラチン注
シスプラチン
動注用アイエーコール50mg
シスプラチン
ランダ注
シスプラチン
パラプラチン注射液
カルボプラチン
注射用パラプラチン150mg
カルボプラチン
カルボメルク注射液1%
カルボプラチン
クレスチン
かわらたけ多糖体製剤
かわらたけ多糖体製剤
シゾフィラン
レンサ球菌抽出物
レンサ球菌抽出物
ウベニメクス
レンチナン
レンチナン
タミバロテン
ゲフィチニブ
メシル酸イマチニブ
トラスツズマブ(遺伝子組換え)
ダカルバジン注用100
ニトロソウレア類他
ニドラン注射用 25mg
注射用サイメリン100mg
アルケラン錠 2mg
ア
ル
キ
ル
化
剤
アルケラン静注用 50mg
エンドキサンP錠 50mg
マスタード類
テスパミン注射液 5mg 0.5mL
マブリン散 10mg
注射用イホマイド1g
注射用エンドキサン 100mg
アントラキノン系
ニトロソウレア類他
ノバントロン注 10mg 5mL
ノバントロン注 20mg 10mL
塩酸プロカルバジンカプセル50mg
カンプト注 100mg 5mL
ト
ポ
イ
ソ
メ
ラ
トポイソメラーーゼ
Ⅰ阻害剤
ゼ
阻
害
剤
トポイソメラーーゼ
Ⅱ阻害剤
カンプト注 40mg 2mL
トポテシン注 100mg 5mL
トポテシン注 40mg 2mL
ハイカムチン注射用 1.1mg
ーー
ベプシドS 25mg
ベプシドS 50mg
ベプシド注100mg 5mL
ラステットSカプセル25mg
ラステットSカプセル50mg
ラステット注100mg/5mL
ラステット注100mg/5mL
ペラゾリン細粒 400mg
アクプラ静注用 10mg
アクプラ静注用 50mg
アクプラ静注用 100mg
エルプラット注射用100mg
シスプラチン注 10mg 20mL
シスプラチン注 25mg 50mL
シスプラチン注 50mg100mL
白
金
製
剤
シスプラメルク注射液10mg 20mL
シスプラメルク注射液50mg100mL
プラトシン注10 10mg 20mL
プラトシン注25 25mg 50mL
クレチール末
非免
特疫
異賦
的活
剤
ソニフィラン 20mg 2mL
ピシバニール注射用1KE
ピシバニール注射用5KE
ベスタチン30 カプセル
レンチナン静注用1mg「アステラス」
レンチナン静注用1mg「味の素」
分
治
子
療
標
薬
的
一般名
アムノレイク錠2mg
イレッサ錠 250mg
グリベック錠100mg
ハーセプチン注射用 150mg
116
規格
100mg
25mg,50mg
50mg,100mg
2mg
50mg
50mg
5mg/0.5mL
10mg
1g
100mg,500mg
10mg/5mL
20mg/10mL
50mg
100mg/5mL
40mg/2mL
100mg/5mL
40mg/2mL
1.1mg
25mg
50mg
100mg
25mg
50mg
100mg/5mL
100mg/5mL
400mg
10mg
50mg
100mg
100mg
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/100mL
10mg/20mL
50mg/100mL
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/100mL
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg,100mg
10mg/20mL
25mg/50mL
50mg/5mL
150mg/15mL
150mg
50m/5mL
150mg/15mL
1g
1g
20mg/2mL
1KE
5KE
30mg
1mg
1mg
2mg
250mg
100mg
150mg
分類
医薬品名
ハーセプチン注射用 60mg
分
子
標
薬
的
治
療
ベサノイド カプセル 10mg
リツキサン注 100mg 10mL
リツキサン注 500mg 50mL
マイロターグ注射用 5mg
エストラジオール
エストラジオール
アロマターゼ
阻害薬
抗アンドロゲン剤
ホ
ル
モ
ン
類
似
薬
抗エストロゲン剤
LH-RHアゴニスト
そ
の
他
抗
腫
瘍
性
抗
生
物
質
製
剤
アントラキノン系
その他
一般名
トラスツズマブ(遺伝子組換え)
トレチノイン
リツキシマブ(遺伝子組換え)
リツキシマブ(遺伝子組換え)
ゲムツズマブオゾガマイシン
(遺伝子組換え)
リン酸エストラムスチン
ナトリウム
リン酸エストラムスチン
ビアセチル カプセル 156.7mg
ナトリウム
アフェマ錠 1mg
塩酸ファドロゾール水和物
フェマーラ錠2.5mg
レトロゾール
アリミデックス錠1mg
アナストロゾール
アロマシン錠 25mg
エキセメスタン
オダイン錠 125mg
フルタミド
カソデックス錠80mg
ビカルタミド
タスオミン錠10mg
クエン酸タモキシフェン
タスオミン錠20mg
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス錠10mg
クエン酸タモキシフェン
ノルバデックス錠20mg
クエン酸タモキシフェン
フェアストン錠 40mg
クエン酸トレミフェン
フェアストン錠 60mg
クエン酸トレミフェン
フェノルルン錠 10mg
クエン酸タモキシフェン
ゾラデックス3.6mgデポ(SS)
ゴセレリン
ゾラデックス 1.8mgデポ
ゴセレリン
ゾラデックスLA10.8mgデポSS
ゴセレリン
リュープリン注射用3.75ゼラチン除
リュープロレリン
リュープリン注射用1.88ゼラチン除
リュープロレリン
リュープリン注射用 1.88mg
リュープロレリン
リュープリン注射キット1.88ゼラ除
リュープロレリン
リュープリン注射キット3.75ゼラ除
リュープロレリン
リュープリンSR注射用キット
リュープロレリン
コホリン 7.5mg
ペントスタチン
トリセノックス注10mg 10mL
三酸化ヒ素
ペプレオ注 10mg
硫酸ペプロマイシン
ペプレオ注 5mg
硫酸ペプロマイシン
アクラシノン注射用 20mg
塩酸アクラルビシン
アドリアシン注用10
塩酸ドキソルビシン
イダマイシン注 5mg
塩酸イダルビシン
カルセド注射用20mg
塩酸アムルビシン
カルセド注射用50mg
塩酸アムルビシン
コスメゲン 0.5mg
アクチノマイシンD
ダウノマイシン 20mg
塩酸ダウノルビシン
テラルビシン注射用10mg
塩酸ピラルビシン
テラルビシン注射用20mg
塩酸ピラルビシン
ピノルビン注 10mg
塩酸ピラルビシン
ピノルビン注 20mg
塩酸ピラルビシン
ファルモルビシンRTU注50mg25mL 塩酸エピルビシン
ファルモルビシンRTU注射10mg5mL 塩酸エピルビシン
ファルモルビシン注射用10mg
塩酸エピルビシン
ファルモルビシン注射用50mg
塩酸エピルビシン
ブレオS軟膏 5mg
硫酸ブレオマイシン
ブレオ注射用15mg
塩酸ブレオマイシン
ブレオ注射用30mg
塩酸ブレオマイシン
ブレオ注射用5mg
塩酸ブレオマイシン
マイトマイシン注用 10mg
マイトマイシンC
マイトマイシン注用 2mg
マイトマイシンC
塩酸エピルビシン注10mg
塩酸エピルビシン
塩酸エピルビシン注50mg
塩酸エピルビシン
スマンクス肝動注用4mg
ジノスタチンスチマラマー
スマンクス肝動注用6mg
ジノスタチンスチマラマー
規格
60mg
10mg
100mg/10mL
500mg/50mL
5mg
エストラサイト カプセル
117
156.7mg
1mg
2.5mg
1mg
25mg
125mg
80mg
10mg
20mg
10mg
20mg
40mg
60mg
10mg
3.6mg
1.8mg
10.8mg
3.75mg
1.88mg
1.88mg
1.88mg
3.75mg
11.25mg
75mg
10mg/10mL
10mg
5mg
20mg
10mg
5mg
20mg
50mg
0.5mg
20mg
10mg
20mg
10mg
20mg
50mg/25mL
10mg/5mL
10mg
50mg
5g
15mg
30mg
5mg
10mg
2mg
10mg
50mg
4mg
6mg
分類
医薬品名
一般名
硫酸ビンクリスチン
硫酸ビンブラスチン
ナベルビン注 10mg 1mL
酒石酸ビノレルビン
ナベルビン注 40mg 4mL
酒石酸ビノレルビン
注射用フィルデシン 1mg
硫酸ビンデシン
注射用フィルデシン 3mg
硫酸ビンデシン
タキソール注射液30mg 5mL
パクリタキセル
タキソール注射液100mg16.7mL
パクリタキセル
タキソテール注 20mg 0.5mL
ドセタキセル水和物
タキソテール注 80mg 2mL
ドセタキセル水和物
パクリタキセル注30mg/5mL「NK」 パクリタキセル
5−FU錠100
フルオロウラシル
5−FU錠50
フルオロウラシル
5−FU注250協和 250mg
フルオロウラシル
オンコビン注射用 1mg
エクザール注射用 10mg
微
小
管
阻
害
薬
ビンカアルカロイド
タキサン
5−FU軟膏 5%
5−FU軟膏 5%
キロサイドN注400mg 20mL
キロサイド注100mg 5mL
キロサイド注200mg
キロサイド注20mg 1mL
キロサイド注40mg 2mL
キロサイド注60mg 3mL
サンフラールS 200mg
ジェムザール注射用 1g
ジェムザール注射用 200mg
スタラシドカプセル 100mg
代
謝
拮
抗
剤
ピリミジン系
スタラシドカプセル 50mg
ゼローダ錠 300mg
ティーエスワン カプセル 20mg
ティーエスワン カプセル 25mg
スミフェロンDS 300万国際単位
インターフェロンα
300万国際単位
スミフェロンDS 600万国際単位
インターフェロンα
600万国際単位
イントロンA注射用300
インターフェロンα-2b
300万国際単位
イントロンA注射用600
インターフェロンα-2b
600万国際単位
オーアイエフ500万IUヒト血清フリ
インターフェロンα
ヒト血清アルブミンフリ-
イムノマックス−γ注 50万単位
インターフェロンγ-1a
50万単位
イムネース注 35万国内標準単位
テセロイキン
35万国内標準単位
オーガンマ 100万国際単位
インターフェロンγ-n1
100万国際単位
フルツロン カプセル 200
ミフロール錠 100mg
ユーエフティE顆粒0.75gX105
ユーエフティカプセル100mg
注射用サンラビン 150mg
注射用サンラビン 200mg
注射用サンラビン 250mg
ロイスタチン注 8mg
フルダラ静注用50mg
ロイケリン散 100mg
ロイナーゼ注用5000
ロイナーゼ注用10000
メソトレキセート錠 2.5mg
葉酸系
メソトレキセート注射液 200mg
注射用メソトレキセート 50mg
注射用メソトレキセート 5mg
その他
インターフェロン
25mg
ハイドレア カプセル 500mg
フルツロン カプセル 100
プリン系他
20mg
25mg
200mg
100mg
200mg
100mg
0.75g
0.5g,1g
100mg
150mg
200mg
250mg
8mg
40mg
100mg
5000KE
10000KE
25mg
200mg
50mg
5mg
500mg
テフシール・C 200mg
プリン系
1mg
10mg
10mg/1mL
40mg/4mL
1mg
3mg
30mg/5mL
100mg/16.7mL
20mg/0.5mL
80mg/2mL
30mg/5mL
10mg
50mg
250mg
5% 20g
5% 5g
400mg/20mL
100mg/5mL
200mg
20mg/1mL
40mg/2mL
60mg/3mL
200mg
1g
200mg
100mg
50mg
300mg
テガフール
ドキシフルリジン
ドキシフルリジン
カルモフール
テガフール・ウラシル
テガフール・ウラシル
テガフール・ウラシル
エノシタビン
エノシタビン
エノシタビン
クラドリビン
リン酸フルダラビン
メルカプトプリン
L−アスパラギナーゼ
L−アスパラギナーゼ
メトトレキサート
メトトレキサート
メトトレキサート
メトトレキサート
ヒドロキシカルバミド
ティーエスワン カプセル 25mg
ユーエフティE顆粒20%
サ
イ
ト
カ
イ
ン
フルオロウラシル
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
シタラビン
テガフール
塩酸ゲムシタビン
塩酸ゲムシタビン
シタラビンオクホスファート
シタラビンオクホスファート
カペシタビン
テガフール・ギメラシル
・オテラシル配合剤
テガフール・ギメラシル
・オテラシル配合剤
規格
参考 : 今日の治療薬2007 , ポケット版 臨床医薬品集2007 , 国立病院機構標準的医薬品リスト
118
(別紙6)
下 剤 一 覧 表
分 類
商
品
名
一
般
名
規 格
硫酸マグネシウム
硫酸マグネシウム
末 99%以上
酸化マグネシウム
酸化マグネシウム
末 96%以上
膨張性下剤
バルコーゼ
カルメロース ナトリウム
顆粒 75%
浸潤性下剤
(軟化剤)
ビーマスS
ジオクチルソジウム
スルホサクシネート
錠 30mg
D−ソルビトール
D−ソルビトール
液 65%,75% 末 100%
モニラック
ラクツロース
シロップ 65% 散 100%
センナ
センナ
末
アジャストA
センナエキス
錠 40mg (センナエキス)
アローゼン
センナ葉・センナ実
顆粒 0.5g,1g
プルゼニド
センノシド
錠 12mg ラキソベロン
錠,液
錠 2.5mg 液 75mg (1ml)
塩類下剤
糖類下剤
大腸刺激性下剤
テレミンソフト坐薬1号 ビサコジル
2mg
テレミンソフト坐薬3号 ビサコジル
10mg
小腸刺激性下剤 ヒマシ油 ,加香ヒマシ油 ヒマシ油
その他
マグコロール
クエン酸マグネシウム
液 34g (250ml)
マグコロールP
クエン酸マグネシウム
散 34g (50g)
ニフレック
電解質配合
散剤1袋 (137.155g)
新レシカルボン
坐剤 炭酸水素ナトリウム
500mg
無水リン酸二水素ナトリウム 680mg
グリセリン
グリセリン
液
参考 :今日の治療薬2007,ポケット版 臨床医薬品集2007,国立病院機構標準的医薬品リスト
※別紙7及び別紙8:省略(「転倒・転落事故防止プロジェクト」に編綴)
119
(7)患者の自殺、自殺企図について
1)概要
本 年 度 1月 ま で の 医 療 事 故 報 告 で は 、 問 題 行 動 ( 自 殺 企 図 、 離 院 等 )「 分 類 1
0」が26件であり、全報告件数全体の5.1%を占めている。内訳は、自殺
9件、自殺企図8件、離院6件、その他3件であり、自殺及び自殺企図は3.
3 % を 占 め て い る 。ま た 、平 成 1 8 年 度 か ら の 累 計 で は 、問 題 行 動「 分 類 1 0 」
は50件が報告されており、全体の割合は6.1%、うち自殺及び自殺企図が
占める割合は30件、3.7%となっており、決して少なくない割合を占めて
いる。
報告されている自殺患者は、統合失調症・うつ病・精神障害などの精神疾患
に罹患しているものが殆どではあるが、がん患者や白血病患者などの事例もあ
り、病状経過や身体的苦痛、精神的苦痛によっては、健康問題を持っている患
者すべてに自殺を引き起こす可能性があると言っても決して過言ではない。
また、自殺を引き起こしてしまった患者を取り巻く家族やケアに関わった医
療従事者は、このサインに気づけなかったことを悔い、自責の念に駆られるこ
ともあるため、自殺発生後の患者を取り巻く家族やケアに関わった医療従事者
へのメンタルケアにも取り組んでいくことが必要であろう。
報告された自殺及び自殺企図の事例を振り返ってみると、患者の衝動的行動
の結果として発生する自殺もあるが、日々の入院生活の中で、患者の訴えや表
情、行動など何らかのサインを出してはいるものを見過ごしてしまっている事
例も少なくない。このサインに対して何らかの対策を講じていれば、自殺を未
然に防ぐこともできた事例もあると考えられる。
報告された事例について、病院が行った再発防止策を整理すると大きく「ア
セ ス メ ン ト に よ る リ ス ク 評 価 」「 観 察 の 強 化 」「 環 境 整 備 」「 連 絡 体 制 の 整 備 」
「 情 報 の 共 有 と 学 習 」「 そ の 他 」 に 大 別 で き る 。 詳 細 は 、 次 の と お り で あ る 。
2)再発防止対策
(1)アセスメントによるリスク評価
①アセスメントによるリスク評価を行い、その結果に応じた対応策を計画す
る。
〈 参 考 1〉 一 般 病 床 を 含 む 全 病 院 に お い て 参 考 と な る も の
・財団法人日本医療機能評価機構
認定病院患者安全推進協議会
「提言
病院内における自殺予防、自殺のリスク・アセスメントのためのチェ
ッ ク リ ス ト 」( 2007. 4.17)
120
〈 参 考 2〉 精 神 病 床 に お い て 参 考 と な る も の
・東尾張病院作成「単独外出/開放病棟
判断ガイドライン」及びその使
用 マ ニ ュ ア ル で あ る 「 外 出 ラ ン ク 適 正 化 の 検 討 の た め の LOCUS使 用 マ ニ
ュアル」
(2)観察の強化
①不安・焦燥感が強い場合、自殺企図の言動が見られる場合は、継続した観
察ができるようナースステーションに近い病室に移動する。
②付き添いが必要と判断された場合は、家族にも協力を依頼する。
③入院や転棟直後の患者は、不安などが強くなる傾向があるため、観察を強
化し患者の行動・表情に細かく注意する。
④がん患者については、告知、再発、新しい治療が始まった後などは精神的
に不安定になる場合が多いため、医療者から積極的に声掛けを行うなど早
期に介入していく。また、心療内科等の専門家と連携した診療体制を確立
する。
(3)環境整備
①自殺企図を繰り返している患者の周辺からは、危険と思われる物を排除す
る
②院内自殺防止のため、非常口や高層階の窓の開放を制限する。危険な場所
には柵を設置し入れないようにする。
③自殺企図の言動が見られる患者には、窓の開かない個室を用意する。
④病室等の窓が外れないようにする
⑤夜間巡視しにくい浴室に関しては、全病棟鍵を取り付け施錠する。
(4)連絡体制の整備
①休日や夜間に問題行動等が発生した場合は、すみやかに当直師長へ第一報
をするとともに、事務当直にも連絡しマンパワーの確保をするなどマニュ
アルを整備する。
(5)情報の共有と学習
①自殺企図の言動が見られるなど患者に変化があった場合は、勤務者間で情
報を共有し連携して観察を行う。
②患者の病状によっては、家族、患者から過去に自殺企図の言葉がなかった
かを詳しく聞き、その様な言葉があった場合には主治医と連携を取り対策
を立てる。
③過去のエピソードから最悪のケースを予測し、医師、看護師等間でどの様
な状況にも対応できるように情報を共有し対策をたてる。④患者の精神的
121
ケアについての学習を行い知識を深める。
(6)その他
①自殺等が発生した場合は、院内全体で当事者のメンタルサポートを行う。
3)具体的事例の紹介
病院内での自殺、自殺企図、外泊中の自殺企図の事例を紹介する。なお、本
事例は各病院からの報告を踏まえて作成したものであるが、紹介にあたり分か
りやすく簡略しているところもあり、報告された事例の内容と完全に一致する
ものではない。
(1)一般病床での事例(3事例)
①うつ病の既往歴、希死念慮に関する情報不足、自由に出入りできるベランダ
の構造などが要因と考えられる事例
〔事故の概要〕
腹痛のため消化器内科を受診。レントゲン写真、エコー、胃カメラの結果異
常なし。腹痛の検査を希望し、精査目的で消化器内科病棟に入院となる。当該
病院の精神科でうつ病を定期的に受診中。夜間に腹痛の訴えがあったため、せ
ん妄に対して精神科コンサルテーションを実施。精神科主治医往診。希死念慮
は な か っ た 。「 癒 し 薬 ち ょ う だ い 」 と 訴 え が あ り 、 腹 痛 時 指 示 の ア タ ラ ッ ク ス
P (25)1錠 を 渡 す 。 渡 し た ア タ ラ ッ ク ス Pは 服 用 せ ず に そ の ま ま 眠 っ た た め 、 ア
タ ラ ッ ク ス P を 引 き 上 げ る 。「 何 か 食 べ る も の は 無 い か 」 と 記 録 室 へ 来 て 尋 ね
るが、お茶しかないことを告げると自室へ戻る。
検温でラウンド中にナースコールがあり訪室すると、腹痛を訴える。指示の
ア タ ラ ッ ク ス P(25)1錠 を 与 薬 。 お 茶 で 内 服 後 、 片 手 を 上 げ て 「 あ り が と う 。」
と言う。
上 の 階 の 病 棟 患 者 か ら 「 何 か が 落 ち た み た い 」 と 5階 の 看 護 師 に 報 告 が あ り 、
下を確認すると地面に人が倒れていたため、当直師長に連絡。当直師長は事務
当直に現場確認指示を出すと共に内科当直医師に連絡する。事務当直と現場に
到着し患者がうつ伏せに倒れているところを発見。脈、胸郭の動き無し。リス
トバンドより病棟、患者氏名を確認。病棟看護師が、当該患者であることを確
認する。
〔事故の背景・要因〕
ア . 家 族 か ら の 情 報 不 足 (患 者 が 死 に た い と 言 っ て い る こ と が 入 院 時 家 族 か
ら 報 告 が 無 か っ た )。
イ.自由にベランダに出られる構造設備。どこからもベランダに出ることが
できる。貼り紙をしてあるが、抑止力にならなかった。
122
ウ.入院目的が腹痛精査であり、精神症状は入院日の、夜間せん妄であり、
そこから自殺に結びつけることは困難であった
〔再発防止策〕
ア.既往歴の確認
イ.患者の病状によっては、家族、患者から過去に自殺企図の言葉がなかっ
たかを詳しく聞き、その様な言葉があった場合には、主治医と連携を取り
対策を立てる。
ウ.ベランダに出にくくするため、ドアにカバーを取り付ける。
②癌終末期患者の精神的な変化の把握とケアが不十分なことが要因と考えられる
事例
〔事故の概要〕
子 宮 頚 癌 に よ る 血 尿 ( 膀 胱 浸 潤 )、 排 尿 困 難 、 貧 血 の た め 入 院 し 、 オ ピ オ イ
ド に よ る 疼 痛 緩 和 、 輸 血 を 実 施 し て い た 。 21時 の 巡 視 時 、 患 者 は 「 夕 食 は が ん
ばって食べたけど吐いた。おしっこが出ないからしんどい。今日は眠い」と話
し て い た 。 同 日 22時 5分 、 看 護 師 が 巡 視 時 、 浴 室 に 電 気 が つ い て い る た め 確 認
す る と 、患 者 が 左 側 臥 位 ・ 屈 曲 に な っ て い る の を 発 見 。右 肘 関 節 内 側 を 切 傷( 4
∼ 5㎝ ) し 自 殺 を は か る 。 い び き 様 の 呼 吸 で 呼 名 反 応 な し 。 浴 室 入 り 口 に 5× 10
㎝程度の血痕、浴室床と寝衣に痰血性の汚染があった。病室搬送し、モニター
装 着 。 SPO2:78∼ 85% 、 HR60台 、 血 圧 110/、 意 識 な し 。 頭 部 C T 、 頚 部 ・ 胸 腹
部 ・ 右 上 肢 の X ーP撮 影 実 施 。 ICUに 移 送 し 、 切 傷 縫 合 、 点 滴 開 始 。 意 識 レ ベ ル J
C S300 。 翌 日 夕 方 に は 意 識 が 回 復 し た が 意 思 疎 通 は 困 難 。 1 週 間 後 、 末 期 癌 の
ため死亡。
〔事故の背景・要因〕
ア.1年前に他院で手術を受け、自宅に近い当該病院に受診。この時点で医
師より本人・家族に治療の時期ではなくケアの時期であると説明。
イ.子宮頚癌終末期であり、当該病棟への入院が初回で8日目であるため、
患者の苦痛は推測できたが精神的な変化についてはとらえられていなかっ
た。
〔再発防止策〕
ア.夜間巡視しにくい浴室に関しては、全病棟に鍵を取り付け施錠する。
イ.がん患者が多数入院しており、緩和医療委員会を中心に精神的ケアにつ
いて学習する。
123
③家族や医療者へ不安などを言わない患者であり状況の察知が困難なことが要因
と考えられる事例
〔事故の概要〕
胃がんの腹膜再発で抗がん剤治療中。抗がん剤治療の効果がないことに対す
る 適 応 障 害 。 午 前 9時 、 注 射 の た め 看 護 師 が 訪 室 す る が 不 在 、 そ の 後 も 訪 室 す
る が 不 在 。 同 室 者 に 確 認 す る と 、 20分 程 い な い と の こ と だ っ た 。 患 者 は 殆 ど 臥
床がちであり、疑問に思ってトイレを確認。鍵が閉まっているが応答がないた
め 、 開 け て み た と こ ろ 、 CVル ー ト を 首 に 巻 き つ け 、 ハ サ ミ を 持 っ て 血 ま み れ で
倒れている患者を発見する。すぐに、他の看護師を呼び、記録室にいた主治医
に報告。意識清明。車椅子で処置室へ移送後「もう何もしないでくれ」と落ち
着 か な い 様 子 で あ り 、 主 治 医 指 示 に て ド ル ミ カ ム 0.5Aゆ っ く り 実 施 し 、 鎮 静 を
か け た 後 、 左 手 首 ( 6cm )、 右 手 首 ( 5cm )、 腹 部 ( 1.5cm) の 切 創 に 対 し て 縫 合
を実施。頚部、左大腿部の擦過傷は消毒処置。もともと不眠で受診をしていた
精神科担当医に往診を依頼する。希死念慮があり、一般病棟での入院治療は困
難であり、家族と話し合い閉鎖病棟に転棟する
〔事故の背景・要因〕
ア .治 療 効 果 が な い こ と 、眠 れ な い こ と 等 で 精 神 的 に 不 安 定 な 状 態 に あ っ た 。
イ.自分は、そんなに弱くないと口にするようなところがあり、家族、看護
師へ不安等言わなかった。そのため、あえて聞きだすこともなく、不安な
状況を察知することが困難だった。
〔再発防止策〕
ア.告知、再発等で心が揺れ動くことが多く、新しい治療が始まった後など
は、医療者から積極的に声かけをして早期に介入していく。
イ.不眠で精神科を受診している既往を確認し対策を立てる。
(2)精神病床での事例(4事例)
①多角的なアセスメントの不足が要因と考えられる事例
〔事故の概要〕
躁 う つ 病 で 入 院 中 。 事 故 当 日 の 13時 、 病 室 で 眠 っ て い る 患 者 を 確 認 。 16時 、
患 者 所 在 確 認 時 、院 内 不 在 に 気 付 く 。16時 15分 、患 者 の 実 家 へ 連 絡 。16時 30分 、
病 院 内 、 病 院 敷 地 内 に は 不 在 で あ る こ と を 確 認 。 16時 40分 、 対 策 本 部 設 置 。 16
時 58分 、 院 外 捜 索 開 始 準 備 。 17時 、 実 父 か ら 電 話 が あ り 患 者 は 自 宅 で 自 殺 し 死
亡したとの連絡が入る
124
〔事故の背景・要因〕
ア.職場の病気休暇を継続していたが、病気休暇が切れる期限が近づいてい
た。
イ.通常から希死念慮を訴えていた。特にこの時期に自殺企図のリスクが高
いとは予測しなかった。
ウ . 任 意 入 院 で 開 放 病 棟 に 入 院 中 で あ り 所 在 確 認 は 3時 間 毎 だ っ た 。
〔再発防止策〕
ア.精神障害及び病状のみでなく多角的なアセスメントを行い、全人的把握
に努め、マネージメントをさらに適正化する。
イ . 患 者 に 寄 り 添 う 看 護 に 努 め る 。( 個 別 の 看 護 計 画 を 充 実 す る )
ウ.患者の所在確認の方法については、個別に検討する。
②不安、焦燥感、リストカット行為などから要注意としていたが、自殺企図を防
止できなかった事例
〔事故の概要〕
うつ病にて入院。入院時より不安・焦燥感があり不眠の状況であった。同室
者に対する不満があり、主治医との面談の結果、環境を変えるため他病棟へ転
棟した。その後も落ち着きなく廊下をうろうろしていることが多かった。夫の
面会時に看護師から「眠前薬を追加し、様子を観察している」と説明した。看
護師が病棟巡視の際、患者本人が自室にてベルトを首に巻き、両手で絞首して
い る と こ ろ を 発 見 し た 。 顔 面 チアノーゼ・ う っ 血 が あ り 、 呼 名 に て 反 応 な し 。 呼 吸
が 浅 か っ た が 刺 激 で 深 呼 吸 あ り 。 当 直 医 ・ 当 直 看 護 師 長 に 報 告 す る 。 発 見 5分
後 、 個 室 へ 移 動 。 当 直 医 が 来 棟 。 モ ニ タ ー 装 着 HR100台 ・ SP02
91% 。 処 置 中 、
舌 を 歯 で 噛 も う と す る 様 子 が み ら れ 、 バイトブロックを 装 着 す る 。 上 肢 ・ 体 胴 を 拘
束。当直医より電話にて母親に状況説明。その後、夫が来棟し、当直医より状
況説明をした。
〔事故の背景要因〕
ア . 入 院 1週 間 前 に 3階 の 窓 に よ じ 登 っ た り 、 2日 前 に は 紐 を 首 に 巻 い た り 、
リストカットがあった。
イ.病状が定まらず不安焦燥感が強い、転棟による環境の変化などから、自
殺企図要注意であった。
ウ .入 院 直 後 か ら 医 師 に「 落 ち 着 き ま し た 」と 言 っ て い た 。内 服 変 更 後 に は 、
いい表情で「落ち着いた」と言っていたので安心してしまっていた。
エ.言動にまとまりが無く、調子が良くなったり、突然不安になる等、診断
が確定していないことも治療を遅らせていた
125
〔再発防止策〕
ア.不安・焦燥感が強い場合は、主治医と相談し観察がしやすい個室で対応
する。
イ.特に転棟してきた患者は、不安などが強くなる傾向があるため、患者
の行動・表情に注意する。
ウ.自殺企図を繰り返している患者の周辺からは、危険と思われる物を排除
する。
③精神状態の急激な悪化、病院周辺環境の安全確保の不備が要因と考えられる事
例
〔事故の概要〕
統 合 失 調 症 で 入 院 中 。11時 15分 、夫 か ら 病 棟 に「 こ れ か ら ○ ○ (院 内 の 場 所 )
で 死 に ま す 。」 と の メ ー ル が 届 い た と の 連 絡 が 入 る 。 看 護 師 2 名 が 院 内 の 捜 索
を 開 始 す る 。10分 後 、頭 を 下 に し て 崖 か ら 飛 び 降 り よ う と し て い た 患 者 を 発 見 。
P HSが 通 じ ず 、 看 護 師 Aが 患 者 を 押 さ え 、 看 護 師 Bが 他 病 棟 に 応 援 を 依 頼 し ス タ
ッ フ が 駆 け つ け た 。 看 護 師 Aと 患 者 は 崖 下 2メ ー ト ル の 道 路 に 転 落 し た 。 転 落 後
も 患 者 は 、「 死 な せ て 下 さ い 」 と 興 奮 状 態 に あ り 、 暴 れ る た め ス ト レ ッ チ ャ ー
で精神科外来処置室に搬送。全身状態と精神状態を観。患者は、腕と顔面の軽
度 の 擦 過 傷 の み で あ っ た 。 看 護 師 Aは 左 踝 骨 骨 折 ( 全 治 8週 間 ) し 、 手 術 を 施 行
された
〔事故の背景・要因〕
ア.入院1週間の行動範囲の把握不足
イ.精神状態の急激な悪化
〔再発防止策〕
ア.自殺企図のあった場所に柵を設置し、入れないようにした。
イ.休日や夜間に問題行動等が発生した場合は、すみやかに日当直看護師長
へ第一報をするとともに、事務当直にも連絡しマンパワーの確保をする。
そのためのマニュアル整備をする。
ウ . 山 間 部 で PH S の 電 波 障 害 に よ り 不 通 と な る こ と が あ っ た た め 、 携 帯 電 話
の携帯を必須とする。
④外泊時の精神症状アセスメントが不十分なまま外泊を許可し、外泊中に自殺企
図した事例
〔事故の概要〕
非定型精神病、精神障害の既往があり受診していたが、しばらく通院が途絶
126
えていた。それまで沈んでいたのが突然興奮気味となり、会話も次第に滅裂に
な り 、 両 親 に 暴 力 を 振 る う な ど し 、 家 人 が 救 急 車 を 呼 び S病 院 に 搬 送 さ れ た 。 S
病院より当該病院へ転院となる。転院後より軽躁状態、気分高揚・脱抑制性状
態で経過する。屯服薬は、ほぼ毎日最大限使用していた。イライラ・不眠・机
を破壊する行為があり一時隔離となる。その後、精神状態安定し『家人がよけ
れ ば 外 泊 可 』 の 指 示 が 出 さ れ 、 1 泊 か ら 3泊 の 外 泊 を 3回 繰 り 返 し 、 特 に 問 題 な
く 経 過 す る 。 主 治 医 と 患 者 ・ 両 親 の 面 談 が あ り 、『 外 泊 を 増 や し 、 少 し で も 退
院 後 引 き こ も り に な ら な い 目 途 の た っ た と こ ろ で 退 院 を し た ほ う が 良 い 。』 と
い う 結 果 と な っ た 。 準 夜 帯 に 患 者 よ り 8泊 の 外 泊 の 申 し 出 が あ り 、 当 直 医 に 確
認 し 外 泊 の 許 可 が 出 る 。 鬱 気 分 ・ 外 泊 に 対 し て も 不 安 が あ る が 、 18時 30分
両
親 の 迎 え が あ り 外 泊 す る 。 外 泊 時 、 患 者 希 望 で 屯 服 薬 CP25㎎ 9包 持 参 。 外 泊 5日
目 の 午 前 4 時 35分 、 自 殺 企 図 に て 橋 か ら 飛 び 降 り T 病 院 に 搬 送 さ れ た と 連 絡 が
あった。
〔事故の背景・要因〕
ア.外泊当日、患者は、鬱気分・外泊に対する不安の訴えがあったが、以前
の主治医との面談で、外泊を増やし退院と言う記事があったため、心配し
ながらも外泊をさせた。
イ.看護師の観察で患者の精神状態に切迫感は感じられなかった。結果とし
て患者が自殺企図したことから外泊時の患者の精神症状のアセスメントは
不十分だったと考えられる
〔再発防止策〕
ア.主治医の指示があったとしても、外泊や外出時は看護師が患者の精神症
状(今、どうなのか)をアセスメントし、必要があれば医師に診察を依頼
する。
イ . 外 泊 の 指 示 が 「 家 人 が よ け れ ば 」 と い う 曖 昧 な 指 示 の た め 、「 何 泊 ま で
可」など具体的な指示を出してもらう。
〈参考1〉
日本医療機能評価機構の「病院内における自殺予防、提言」
日本医療機能評価機構認定病院患者安全推進協議会「精神科領域における医
療安全管理検討会」が、平成17年に行った病院内自殺に関するアンケート調
査( 一 般 病 院 5 7 5 、精 神 科 病 院 ま た は 精 神 科 病 床 を 有 す る 病 院 1 0 6 が 回 答 )
によれば、過去3年以内に入院患者の自殺事例を有する病院の割合は、一般病
院 で 2 9 % ( 1 7 0 病 院 、 3 4 7 事 例 )、 精 神 科 病 院 及 び 精 神 科 病 床 を 有 す る
病院では66%(70病院、154事例)であった。この結果等を踏まえ、同
検 討 会 で は 、「 病 院 内 に お け る 自 殺 予 防 、 提 言 」 と し て 1 1 項 目 の 提 言 を 行 う
と と も に 、「 自 殺 の リ ス ク ・ ア セ ス メ ン ト の た め の チ ェ ッ ク ・ リ ス ト 」 を 提 示
127
している。以下にその内容を紹介する。
1.自殺が主要な医療事故であることを知る
2.疾病罹患ないしは健康問題は、自殺の主要動機であることを知る
一般病院での自殺事例は、35%が悪性腫瘍で最多であり、残り65%の
疾患内訳は多様で診療科も多岐にわたっていた。健康問題は自殺の主要動機
であることが知られているが、慢性の経過や進行性の疾患経過、疼痛、身体
機能の喪失、不意の病名告知などは患者にとっては大きな心理的負担である
ことを認識する必要がある。
3.ほとんどの自殺者は、その行為の時点で精神疾患に罹患していることを知
る
自殺者の死後の調査と多くの心理学的剖検研究により、自殺者の80%以
上が、最終的には精神疾患に罹患した状態で自殺していたことが明らかにな
っている。ただし、精神科を受療していた割合は高いとはいえないことに留
意が必要である。
4.身体疾患・精神疾患の罹患以外の危険因子を知る
自 殺 企 図 あ る い は 自 傷 行 為 、最 近 の 喪 失 体 験( 親 し い も の と の 別 離 ・ 死 別 、
失職、身体機能の喪失等)や心理的孤立あるいは絶望感、自殺の家族歴など
が自殺の危険因子として知られている。特に自傷行為は、その手段や身体損
傷の軽重を問わず重大な危険因子になることに注意を払う必要がある。
5.自殺の予兆に注意をはらう
自殺に至るまでには長い過程があり、予兆がある。一般病院では49%、
精 神 科 病 院 等 で は 6 7 % に お い て「 死 に た い 」等 の 意 思 表 示 の 他 、自 傷 行 為 、
抑うつ状態や不安の増強、無断離院など何らかの危険信号、あるいは予兆を
とれる行為が認められている。予兆が認められる患者には厳重な注意が必要
であり、また、スタッフ間での情報の共有が重要である。
6.患者の立場になってこころのケアに配慮する
疾病の治療過程や、告知、病状説明の直後に自殺を企図した事例が少なか
らず認められる。医療者は、疾病そのものだけではなく、患者の生活背景や
疾病・治療への理解、疾病や入院により生じた不利益、こころの状態などに
注意を向けることが必要である。医療者は、常に患者の置かれた状況を患者
の身になって考え、こころのケアに配慮することが望まれる。
7.精神・心身医療専門家への相談を行う
患者に抑うつ症状や不安・焦燥、不眠などの精神症状、行動上の変化など
が認められた場合は、精神科などの専門科へのコンサルテーションを、患者
に家族にその必要性を説明し理解を得た上で、行うことが必要である。
8.自殺を未然に防ぐための環境整備を行う
自 殺 の 手 段 は 、「 高 所 か ら の 飛 降 り 」 と 「 縊 首 」 が 大 半 を 占 め て い る 。 縊
128
首に使用される道具は、タオルや衣類、寝具、紐、電気コード類などの日常
品の他、ナース・コールや輸液ポンプのコード、カーテン、抑制帯などの病
院の備品類が利用された事例もある。これらのことから考えると、ベランダ
・屋上の柵の見直しや病室の窓の開閉幅の制限、備品や調度の取手の付け替
え ( 紐 の か か り に く い 形 状 物 に 変 更 )、 荷 重 が か か る と 脱 落 す る よ う カ ー テ
ンレールやフックの強度を調整することなどは検討に値する。また、ナース
・コール、輸液ポンプ等のコード類の位置・長さなどにも注意をする必要が
あるし、特に危険度が高い患者については、所持品に注意を向けることも重
要である。
9.自殺の続発に注意をはらう
自殺の続発を予防するためには、自殺者に近しい関係者や他の入院患者の
こころの状態に注意を払い、危険因子を評価し、もしハイリスク者が同定さ
れたら個別の関わりを行っていく必要がある。自殺事故の直後から再発予防
は始まる。
10.関係者のこころのケアを実施する
事 故 に 直 接 関 わ っ た 医 療 ス タ ッ フ へ の メ ン タ ル ・ ケ ア と し て 、「 上 司 、 医
師による面接等」の他、専門家の助言や当事者間でのミーティング、集団カ
ウンセリング、当事者個人へのカウンセリング、休養の指示、経験者の助言
などのサポート・システムを機能させることが望ましい。加えて、自殺者の
遺族のケアと支援体制として、ソーシャルワークを含む支援、自助グループ
の紹介、メンタル・ケアの紹介などを行うことが望ましい。
11.自殺予防について学習機会を設ける
自殺事故直後には、当事者間から安全管理委員会までさまざまなレベルで
の事例の検討や事故の再発防止のための話合いが必要である。また、自殺事
故予防のためには、自殺者や自殺行動について特化した学習の機会、安全管
理部門での自殺事故防止の取組みに関する話合い等を定期的に持つことが必
要である。
自 殺のリスク・アセスメントのためのチェック・リスト
項
【患者の訴え】
目
死や自殺願望・意思を口にしている
絶望感やあきらめを口にしている
身体機能の喪失、疼痛により強い苦悩・
苦痛を訴えている
【既往歴・家族歴】
精神疾患の既往歴がある
自傷・自殺企図の既往がある
自殺の家族歴がある
129
チェック欄
【 生 活 環 境 、 ラ イ フ ・ 最近、親しいものと離別・死別があった
イヴェント】
失業や経済的破綻を経験した
家族や介護者、相談者がおらず孤立して
いる
【症状。疾病】
精神症状を呈している、あるいは精神疾
患を合併している
抑うつ状態にある
強い不安状態ないしは焦燥状態にある
不眠や食思不振がつづいている
明らかな行動上の変化・異常を認めてい
る
慢性ないしは進行性の身体疾患に罹患し
ている
自身の身体や健康に無頓着である
【チェック・リスト活用にあたって】
○項目は、自殺に対する予測危険因子(精神疾患の存在、自殺未遂や自傷行為
の既往、希死念慮、がんなどの身体疾患の存在、離別・死別、喪失体験)と
それと関連する事項から成る
○自殺の危険性を過小評価することがないよう、自殺の起きる危険性への気づ
きを促進させる。
○ひとつでも該当する項目があれば、その他の項目についても注意深く対話や
観察を行い、継続して患者のこころの状態や行動をみていく。
○自殺の意思を口にするものは厳重注意が必要。
○患者のこころの状態や自殺の危険性の評価に関してはスタッフ間で情報を共
有する。
○チェック・リスト項目を活用し、患者個々にあわせたかかわりを実践してい
くことが重要。
○なお、チェック・リストは決して万能ではなく、これさえクリアすれば事故
が生じないということにはならないことに留意が必要。
130
(8)人工呼吸器に関わる事故について
平 成 18∼ 19年 度 の 医 療 事 故 報 告 の う ち 、 分 類 8「 人 工 呼 吸 管 理 に 関 わ る 事 故 」
は 、 33件 ( 3.7% ) 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 国 立 病 院 機 構 が 提 供 す る 医 療 の 特 徴
を 反 映 し て 、 こ の 内 の 約 半 数 の 15件 が 、 筋 ジ ス 、 重 心 ・ ALS等 神 経 難 病 患 者 に 人
工呼吸管理に関わる事故となっている。
報告のあった事例は大きく、
ア.呼吸回路の外れが原因となった事例、
イ.人工呼吸器再開時の確認が不足していた事例、
ウ.自己抜去の可能性がある事例、
エ .患 者 の 体 位 に よ り 回 路 チ ュ ー ブ へ の 張 力 が 加 わ り 外 れ た 可 能 性 が あ る 事 例 、
オ.蛇管の接続場所を誤った事例、
カ.体位変換後の回路接続の確認が十分ではなかった事例、
キ.職種間の情報伝達が十分ではなかった事例、
に分類することができる。今回の警鐘的事例の紹介では、まず人工呼吸器の取扱
いに関する留意点等について整理を行った後、上記分留に基づいた事例の紹介を
行う。
(1)人工呼吸器の操作
①設定条件の指示
設定条件の指示は、医師がカルテへの記載、指示票の作成等により行う。
指示内容は、患者毎に異なるので、指示カード等を作成し当該患者の人工呼
吸器の傍らに置いておくことで、常に設定条件どおり作動しているか確認で
きるようにしておくことが望ましい。
②準備
ア
必要物品をそろえる
・人工呼吸器本体
・呼吸器回路
・加温加湿器
・加温加湿器用チェン
・二重回転コネクター
・気道内圧フィルター
バー
・バクテリアフィルター
・滅菌精製水
イ
器機の設置場所
・器機周辺の清潔保持に努め、安定した台の上に本体の空気取り入れ口を塞が
ないよう設置する。
ウ
電源の確認
・電源コード、電源プラグ、アース線などに亀裂・破損がないか点検した後、
131
電源プラグを接続する。原則として呼吸器は非常用コンセントに接続する。
エ
人工呼吸器本体の点検
・人工呼吸器本体に亀裂・破損、付属品の紛失などがないか確認する。
オ
呼吸器回路の組み立て
・ 回 路 、付 属 品 に 亀 裂 ・ 破 損 、紛 失 が な い か 確 認 を し た 上 で 正 し く 組 み 立 て る 。
また、緩みやねじれがないよう接続するとともに、加温加湿器は確実に吸気
側に接続する。
カ
加温加湿器の点検
・加温加湿器本体及び付属品などに亀裂・破損がないか点検し、線まで滅菌精
製水を入れる。加温加湿器の温度を設定した後、サーモスタットの作動状況
及び温度を点検する。
キ
回路にテスト肺を取り付ける。
ク
人工呼吸器を作動させていない状態で気道内圧計がゼロを示している事を
確認する。
②操作手順
ア
電源スイッチをONにする。
イ
動作テストをする。テスト肺が脹らみ、気道内圧計の針が振れるか、回路
に リ ー ク が な い か 、回 路 の 接 続 に 間 違 い が な い か 、ね じ れ や 緩 み が な い か 、
加温加湿器の作動に異常がないか確認する。又、異常な作動音や異臭がな
いかを確認する。
ウ
各機能の設定を行う。初回の設定、設定変更時は医師が行う。その後は、
看護師が指示カード等を確認しながら点検を行う。
・ 換 気 モ ー ド の 選 択 、 一 回 換 気 量 、 呼 吸 回 数 、 I:E比 、 ト リ ガ ー 感 度 等 の 設 定
・気道内圧上限アラーム、気道内圧低下アラーム等アラームの設定
・アラーム作動確認
・加温加湿器の設定確認
エ
テスト肺を軽く握りしめ、素早く離すことで回路内に陰圧をつくり、この
陰圧が設定トリガー圧に達してトリガーされ、トリガーランプが点滅して
補助呼吸になることを確認する。
オ
患者に呼吸回路を接続する。
カ
酸 素 飽 和 度 (SpO2)、 患 者 の 状 態 (呼 吸 の 同 調 性 、 胸 郭 の 動 き 、 違 和 感 の 有
無 等 )を チ ェ ッ ク す る 。
(2)人工呼吸器の安全管理
①正常動作のためのチェックポイント
人工呼吸器は、機器本体と呼吸器回路からなるため、両者の正常動作を確認し
な け れ ば な ら な い 。メ ー カ ー に よ る 定 期 点 検 を 器 機 毎 に 定 め 確 実 に 実 施 す る ほ か 、
132
正常動作を維持するための日常的な点検として、
a
呼吸器回路内の水滴の除去、
b
加温加湿器チェンバーの滅菌精製水の補充、
c
呼 吸 器 回 路 の 定 期 交 換 ( 目 安 と し て 2 週 間 程 度 に 1 回 )、
d
器機を清潔に保つこと、
等が重要となる。人工呼吸器の安全チェックのポイントを部位毎に整理すると次
のとおり。
【人工呼吸器の安全チェックポイント】
気管内チューブ カフ漏れ、屈曲、分泌物の貯留、閉塞、位置異常、チュー
ブ抜去、固定部のゆるみ
呼吸器回路
各接続部の緩み・外れ・亀裂・破損、回路のリーク又は閉
塞、組立て間違い、吸気・呼気接続ミス、回路内、ウォー
タートラップ、チューブ内への水の貯留
*貯留している水は、貯留している水が患者の気管内に入
らないよう注意しながら、除去する。
呼吸器設定
指示どおりの設定となっているか、ダイヤルのズレはない
か、呼吸器条件、呼吸状態の観察
加温加湿器
水 位 、 設 定 温 度 、 加 湿 効 果 、 適 切 な ス イ ッ チ O N・ O FF 、 回
路内水分貯留
*加温加湿器を使用する場合は、誤って加温加湿器内の水
が回路内に逆流した場合に、気管内に水が流入するのを防
止するため、必ず患者の気管切開孔よりも低い位置に固定
して設置
モニターとアラ モニター設定の誤り、アラームの消音設定の有無
ーム
呼吸器本体
亀裂・破損、異常音、発熱、異常な臭い、安定した台の上
への設置、空気の取り込み口を塞いでいないか
駆動源
電 源 コ ー ド ・ コ ン セ ン ト の 亀 裂 ・ 破 損 、非 常 電 源 へ の 接 続 、
メインスイッチの確認、外部バッテリー・内部バッテリー
の確認(フル充電時の作動時間、充電状況)
②人工呼吸器点検表
各病院において「人工呼吸器点検表」を作成し、使用開始時、設定変更時、ケ
ア・処置の終了時、勤務開始・終了時等に点検を行う。点検表に盛り込む主な項
目には、次のもの考えられる。また、点検実施者は、点検後に点検時間とサイン
を行う。
133
〔器機の設定〕
・機種名
・電源コード・プラグ
・呼吸回路の貯留水
・加湿器チャンパの水量レベル
・気道内圧上限アラームレベル、気道内圧下限アラームレベル
・換気モード
・最高気道内圧レベル
・ PEEPレ ベ ル
・1回換気量、分時換気量、呼吸数
・トリガー感度レベル
・呼気弁ユニット動作
・フィルターの汚損
・装置本体からの異常音、発熱、異臭
等
〔患者の状態〕
・胸の上がり
・聴診
・呼吸数
・ 脈 拍 数 、 血 圧 、 SpO2
等
③患者の反応の確認
人工呼吸器を使用している長期療養患者にとっては、器機が正常に作動してい
るだけではなく、快適に作動しているかが重要な意味を持つ。このため、呼吸の
同調性、胸郭の動き、違和感の有無等患者にとって不快なく適切に作動している
か の ア セ ス メ ン ト を 行 う こ と も 必 要 で あ る 。ご く 僅 か な 変 化 な ど も 敏 感 に 察 知 し 、
頭痛、発熱、疲労感といった症状を呈する場合があることを念頭に置くことが必
要であり、特に人工呼吸器本体や回路交換後には、患者の反応を十分に確認する
ことが重要である。
④早期発見
①異常アラーム:各種の異常の状況を知り、迅速に対応する。
②生体情報モニター:生体モニター監視を原則とする。
③巡視:巡視は原則1時間1回として、呼吸状態や呼吸器の装着状態を観察す
る。
④動線:呼吸器のアラーム等の確認ができる病室配置に配慮する。
⑤迅速対応
呼吸器の異常に対しては、速やかに医師及び看護師長に報告を行い、必要に
より臨床工学技士にも報告を行い、対応を要請する。
⑥人工呼吸器のトラブル発生時の留意点
134
トラブルが発生した際には、適切かつ迅速な原因追及とその対処が必要で
あ る 。「 人 工 呼 吸 器 装 着 中 の 在 宅 A L S 患 者 の 療 養 支 援 訪 問 看 護 従 事 者 マ ニ ュ
ア ル 」( 平 成 1 6 年 3 月 日 本 看 護 協 会 ) で 示 さ れ て い る ト ラ ブ ル シ ュ ー テ ィ ン
グ の 例 を 紹 介 す る ( 別 添 )。 留 意 す べ き は 、 器 機 的 な ト ラ ブ ル へ の 対 処 に 気
持ちが奪われてしまって、患者の呼吸確保が後回しになってしまわないよう
にすることである。アラームとその対処だけに気を取られず、蘇生バックで
の換気等まず患者の呼吸確保を第一に考えることが重要である。
(3)人工呼吸器使用時の看護の留意点
①アセスメント項目
・バイタルサイン(圧、脈拍、呼吸状態、体温)
・呼吸状態
a
自発呼吸が残存している場合は、人工呼吸器との同調性を確認
b
発呼吸がほぼ消失している場合は、胸郭の動きが人工呼吸器の吸気に合わ
せ、左右対称に脹らんでいるかを確認
・呼吸音
・換気量(肺活量、最大強制吸気量、最大呼気流量、介助咳の呼気流量)
・人工呼吸器の作動状況
・ 酸 素 飽 和 度 ( SpO2値 )、 皮 膚 の 色 、 血 行 動 態 ( 末 梢 冷 感 、 浮 腫 の 有 無 、 頚 動
脈怒張の有無)
・低換気症状、過換気症状の有無
・喀痰の量、性状、加湿の状態
②気道クリアランス(排痰)
ア
肺のコンプライアンス(肺機能の健全性)を維持し、感染などの合併症を
発症させないようにするためには、気道クリアランス(排痰)を適切に行う
ことが必要である。痰の存在は、患者に訴えによって確認するほか、聴診に
よって存在部位と性状を見極め、必要な時に的確に吸引を実施することが重
要である。
【分泌物の存在を示す呼吸音】
音
の
特
徴
等
聴 取 時 間 解釈と対応
粗 い 断 続 性 ボコボコ 呼気
流動性のある分泌物の存在
ラ音
→排痰体位での移動が可能
ゴロゴロ
低 音 性 連 続 グーグー 呼気、 比 較 的 大 き な 粘 性 の 分 泌 物 が 気 道 の 内 腔 を 閉
性ラ音
吸気
塞するような形で附着
→移動には時間がかかる
呼吸音の低下、消失
粘ちょうな分泌物で気道を閉塞→排痰体位
無気肺(時間がたつと気管支呼吸音の伝達が
135
生じる
気管支呼吸音の伝達音
下側肺障害などの肺硬化
→分泌物の移動、排出は容易でなくかなり時
間を要する。
*「 人 工 呼 吸 器 装 着 中 の 在 宅 ALS患 者 の 療 養 支 援 訪 問 看 護 従 事 者 マ ニ ュ ア ル 」
( 平 成 16年 3月 日 本 看 護 協 会 ) よ り
イ
また、気管切開実施下では、繊毛運動が阻害されるため、加湿による分泌
物 の 粘 性 を コ ン ト ロ ー ル す る 必 要 が あ る 。 加 湿 状 態 の 目 安 は 、 a .痰 が 柔 ら
か い 、 b .吸 気 側 回 路 の 終 末 部 内 側 に 結 露 が つ い て い る 、 c .気 管 チ ュ ー ブ の
内側に結露、水滴がついている状態である。
ウ
排痰の方法は、一般的には吸引による場合が多いが、軌道内分泌物が特に
多い場合などを除いて、患者の咳嗽力を補助することで排痰を促す手技があ
る。以下の各手技を、患者の状況等を踏まえながら活用していくことも有効
である。
〔徒手的咳嗽介助〕
吸気時に、蘇生バックによる送気などの吸気補助により肺活量以上の吸気量
を得てから、吸気時にタイミングを合わせ徒手的に胸郭を圧迫する。これに
よ り 、 自 力 の 咳 嗽 の 2∼ 5倍 の 咳 の 最 大 呼 気 流 速 を 得 る こ と が で き る 。 タ イ ミ
ン グ が 合 わ な い と 痛 み や 不 快 、さ ら に は 肋 骨 骨 折 の 原 因 に な る た め 注 意 す る 。
〔 器 械 医 的 咳 嗽 介 助 (MAC: mechanical assisted coughing)〕
通 称「 カ フ マ シ ー ン 」と も 呼 ば れ る も の で 、マ ス ク や 挿 管 チ ュ ー ブ を 通 じ て 、
吸 気 時 に は 陽 圧 が ( こ れ に よ り 深 吸 気 と な る )、 呼 気 時 に は 陰 圧 と な る こ と
により、咳嗽の代償となる。
〔 体 位 排 痰 法 ( 体 位 ド レ ナ ー ジ )〕
重力を利用して、気道内分泌液の移動を促すもので、喀痰貯留部の肺区域を
気管支分岐部より上位となるような姿勢をとらせる。これにより、末梢の分
泌物の移動が可能となる。人工呼吸器の装着中、回路や気管切開挿入部への
負担を避けるため、修正体位を用いることが多い。その際、皮膚損傷や循環
器合併症、脳血流や頭蓋内圧の変化、食道胃逆流に注意する。
〔排痰手技〕
施 行 者 の 手 を 胸 壁 に 置 き そ の 手 を 細 か く 振 動 ( 12∼ 20回 /秒 ) さ せ 、 呼 気 に
振動を与える手技をいう。呼気のはじめに振動に伴った気流の細やかな動揺
がみられる。これを、器械的(チェストバイブレーションなど)に行うこと
がある。臥床中の患者では、装着が困難な場合もある。
136
エ
吸引
気管切開下では、自力での排痰が困難となるため、気道分泌物の吸引は必要
不可欠であるが、その実施に当たっては、次の点などに注意しながら行うこ
とが必要である。
〔吸引圧〕
吸引量は、吸引圧と分泌物の粘ちょう度に影響を受けるため、喀痰の性状を
見極め適切な吸引圧を調整することが必要である。吸引圧が低いと吸引に時
間がかかり、効果的に吸引できない。このために頻回に吸引を行うことにな
り、患者への苦痛・低酸素血症などの合併症の危険となる。反対に吸引圧が
高いと、空気を多量に吸引し、無呼吸状態が続き低酸素血症につながる。さ
らに気管壁に接触した場合は、高い吸引圧が一点に集中し、気管粘膜を損傷
させる危険があるので注意が必要である。
〔吸引時間〕
吸引時間が長いと肺内の酸素濃度の低下や肺胞の虚脱から低酸素血症に陥り
やすくなる。また、吸引時間が長いほど、動脈血酸素飽和度が吸引の前の値
まで回復するのに時間がかかる。多くの長期療養患者の場合は、高濃度酸素
が付加されるわけではないが、吸引中は呼吸ができないだけではなく、肺内
の酸素が低下するため、呼吸を止めるより苦しい状態になることを踏まえ、
短 時 間 ( 全 操 作 を 20秒 以 内 ) で す ま せ る よ う 心 が け る こ と が 重 要 で あ る 。
〔吸引チューブ挿入の深さ〕
吸引チューブ挿入による合併症は、気管支壁の刺激により、迷走神経反射か
らの叙脈・血圧低下・ファイティングなどがある。また吸引チューブを無理
に挿入すると気管粘膜を損傷し、出血することがある。このため、吸引チュ
ー ブ の 挿 入 の 深 さ は 、 気 管 内 チ ュ ー ブ の 先 端 か ら 3∼ 5cmま で の 気 管 分 枝 部 程
度に留め、決して奥まで挿入しない。前述の排痰を促進する各手技を利用し
て、この位置まで気管分泌物を集めることも有効である。
(4)具体的事例の紹介
ア.呼吸回路の外れが原因となった事例
【事例1】
ALSの 患 者 。 15時 10分 の 体 位 変 換 時 及 び 16時 00分 の 注 入 食 接 続 時 に は 患 者 に 異
常 は な か っ た 。 16時 45分 注 入 食 終 了 の た め 受 持 ち 看 護 師 が 訪 室 、 患 者 の 状 態 変 化
に 気 付 く 。 顔 色 チ ア ノ ー ゼ − 、 意 識 消 失 有 り 、 SPO2が 15% に 低 下 。 直 ち に ア ン ビ
ュ ー に て 送 気 し 、 人 工 呼 吸 器 (LP6)を 点 検 。 点 検 の 結 果 、 酸 素 接 続 部 分 の 「 ハ ズ
レ 」 を 発 見 し 、 酸 素 を 12lに し た 上 で 呼 吸 器 を 装 着 し た 。 約 10分 後 に SPO2が 96%
137
∼ 97% に 上 昇 し 意 識 が 回 復 し た 。 そ の 後 17時 よ り 1時 間 毎 に S PO2の 測 定 を 実 施 。
酸 素 量 を 10lか ら 徐 々 に 減 量 し 20時 に は 平 常 と 同 じ 4lと な り 状 態 が 安 定 し た 。
〔事故の背景・要因〕
①呼吸器のチエックは体位変換時に毎回チエック表に沿って行っている。回路
の点検は手で触って行うようになっていたが、問題の酸素接続部は器機の背
面にあり手で触ることによる確実なチェックはできていなかった。
②呼吸器の酸素の回路がはずれた場合アラーム音は鳴らない
③酸素接続部が両方共にプラスチック製のためハズレやすい状態であった。
④生態モニターを装着していなかった
⑤ 体 位 変 換 は 1 人 で 実 施 し て い た ( 2人 で 実 施 す る こ と が ル ー ル に な っ て い
る )。
〔再発防止策〕
①患者の状態等を考慮しながら、基本的には生態モニターの装着を行うことと
する。
②回路及び酸素接続部の確認方法の明記等呼吸器マニュアルの見直しを行うと
ともに、毎回のチェックを確実に行うことについて注意喚起を行う。
③ 院 内 人 工 呼 吸 器 の 機 種 統 一 化 が 図 ら れ る よ う 、 機 種 の 標 準 化 ( LTV: 選 定 機
種)を進めていく。
【事例2】
ALS の 患 者 。 10時 頃 気 管 カ ニ ュ ー レ の カ フ エ ア ー を 交 換 、 吸 引 ( 気 管 ・ 口 腔 ・
鼻 腔 )、 人 工 呼 吸 器 の 加 湿 チ ャ ン バ ー へ の 給 水 を 実 施 。 給 水 は チ ャ ン バ ー の 回 路
を 外 し 実 施 し た 。 10時 5分 頃 清 拭 の た め に 訪 室 、 準 備 を 始 め た が 医 師 よ り 隣 室 の
処置介助の要請があり中断。退出時に人工呼吸器のアラームが鳴っているのに気
付 い た 。 ア ラ ー ム 表 示 は 「 L0W」 を 確 認 、 消 音 ボ タ ン を 押 し 回 路 点 検 し た が 異 常
が な い と 判 断 し 退 室 し た 。 10時 10分 頃 、 隣 室 に 医 師 と 共 に 訪 室 し た が 、 当 該 患 者
の 人 工 呼 吸 器 ア ラ ー ム が 鳴 っ て い た た め 訪 室 、顔 面 チ ア ノ ー ゼ の 患 者 を 発 見 し た 。
隣室の医師を呼び、他看護師に応援を求めた。すぐに蘇生処置を開始したことで
蘇生。人工呼吸器を点検すると加湿チャンバーの注水口キャップがはずれ床に落
ちていた。キャップをすることで正常に作動する。
〔事故の背景・要因〕
①人工呼吸器のアラーム対応が不適切であった。アラーム解除後正常作動を確
認していない。
②レスパイト目的患者で、人工呼吸器がレンタル器であり使用機種に不慣れで
あった。
138
③加湿チャンバーの給水方法の統一がされていない。注水後の観察がされてい
ない。
〔再発防止策〕
①人工呼吸器取り扱い(機種毎)についての定期的研修会を実施する。
②加湿チャンバーを自動給水式に変更する。
③ディスポジャクソンリースを常時携帯するよう周知し、定期的に点検する。
イ.人工呼吸器再開時の確認が不足していた事例
【事例3】
膵臓癌にて膵頭十二指腸切除予定の患者。硬膜外カテーテルを留置し、気管内
挿 管 後 に 右 内 頚 静 脈 か ら 中 心 静 脈 カ テ ー テ ル 穿 刺 を 行 っ た 。穿 刺 体 位 を 取 る 際 に 、
換気設定を人工呼吸器より手動換気にしたが、穿刺を開始する段階に至っても人
工 呼 吸 器 を 再 開 す る こ と を 忘 れ て い た 。 約 5分 後 に SpO2が 89% に 低 下 し 、 徐 脈 、
血 圧 低 下 を 認 め る ( 上 心 拍 数 45/分 、 血 圧 35/14ま で 低 下 )。 輸 液 負 荷 、 昇 圧 剤 増
量、アトロピンの投与を行い、閉胸式心マッサージを実施したが、その際、人工
呼 吸 器 の 再 開 を 忘 れ た こ と に よ る 無 換 気 状 態 で あ る こ と に 気 づ き 、 100% 酸 素 で
換 気 を 再 開 す る こ と で 、 心 拍 数 105/分 、 血 圧 161/61に 回 復 す る 。
〔事故の背景・要因〕
①人工呼吸器の手動換気より器械換気への再開を忘れた。日常的に繰り返し
行っているため、再確認の重要性が希薄化していた。
②中心静脈カテーテルの穿刺中であったため、中心静脈圧測定の回路がクラ
ンプされており、高圧アラームが持続的に鳴っている状態であった。そのた
めアラームへの注意が散漫となり、無呼吸アラームが鳴っている状態でもア
ラームの内容を確認することを怠った。
③またモニター上心拍数、血圧にのみ注意が向き、呼気に酸化炭素分圧など
換気のモニターを確認することができなかった。
〔再発防止策〕
①器械換気のオンオフが日常的に頻回に行われているため、麻酔の工程の中で
なるべくオンオフの回数を減らすように、必要な工程と不要な工程の検討を
行う
②アラーム内容の確認を徹底すること。また不必要なアラームは鳴らないよう
にしておく。今回は中心静脈圧や観血的血圧測定のコネクターを麻酔の準備
の段階で接続していたため、アラームが入室時より鳴っていた。コネクター
をカテーテルに留置し圧測定開始の際に接続するようにしておけば、不必要
なアラームがなくなり、アラームに注意が散漫になることはなかったと考え
139
られる。
③中心静脈穿刺を手術中に行わず、手術前後に行うよう体制づくりを行う。
【事例4】
呼吸不全により人工呼吸管理を実施。人工呼吸器離脱訓練を午前・午後の1時
間 程 度 実 施 。 14時 に 人 工 呼 吸 器 離 脱 訓 練 開 始 。 30分 後 、 呼 吸 苦 の た め 患 者 本 人 が
ナースコール。人工呼吸器を再装着したが、この際、スイッチを入れていなかっ
た 。 25分 後 、 呼 吸 停 止 状 態 で 発 見 、 緊 急 コ ー ル を 行 う 。 ア ン ビ ュ ー 加 圧 開 始 。 5
分 後 に 医 師 が 到 着 し 、 心 臓 マ ッ サ ー ジ を 開 始 、 ボ ス ミ ン 2Aを 気 管 口 よ り 注 入 す る
等の処置を行うが死亡を確認。
〔事故の背景・要因〕
①人工呼吸器を再装着する際は、チェック表により確認作業をすることになっ
ているが実践していなかった。
②本人は、いつも人工呼吸器を患者から外すとスイッチを切らずにテストバッ
クをつけていたので、スイッチがオフであるという認識はなかった。
③患者の状態の観察が不足していた。
〔再発防止策〕
①人工呼吸器の取扱いについて、各看護師が様々な方法により行っていたこと
が原因。
②チェック表により点検を行う時期、取扱いマニュアルの見直しとその徹底を
行う。
③人工呼吸器について、継続的な研修を行うことで、人工呼吸器の仕組み、マ
ニュアルの理解を深める。
ウ.気管カニューレの外れの原因が明確でない事例(自己抜去の可能性)
【事例5】
重心患者で、精神障害、上肢障害、下肢障害、歩行障害があった。呼吸不全が
強 く 、気 管 切 開 術 施 行 後 、入 院 。気 管 カ ニ ュ ー レ は カ フ な し を 使 用 。寝 た き り で 、
腕 、 指 は 動 か せ る が 、 も の を つ か む こ と は で き な い 状 態 で あ っ た 。 4時 30分 、 オ
ム ツ 交 換 を 実 施 。 気 管 カ ニ ュ ー レ に 異 常 な い こ と を 確 認 す る 。 5時 、 経 管 栄 養 注
入のため訪室時、仰臥位で気管カニューレが抜けている状態で発見。呼吸停止、
顔面チアノーゼ軽度、呼名反応なし。すぐに気管カニューレ再挿入、アンビュー
による補助呼吸、心臓マッサージを実施。また、薬剤投入、心臓マッサージ等を
継続するも死亡を確認する。
〔事故の背景・要因〕
140
① 4時 30分 の オ ム ツ 交 換 時 に は 、 気 管 カ ニ ュ ー レ に 異 常 が な い こ と を 確 認 し て
いる。
②両手挙上、指の動きはあるが、ものを掴むことはできない。首に手を持って
行くことはあるが、自己抜去する可能性は低かった。
〔再発防止策〕
①気管切開に関する研修会を開催し、人工呼吸管理に関する理解を深める。
②気管カニューレ装着患者の管理を含めた再学習を行う。
エ.患者の体位により回路チューブへの張力が加わり外れた可能性がある事例
【事例6】
意識障害、心停止状態で救急搬送された患者。蘇生に成功し人工呼吸器管理し
て お り 、 救 命 部 門 よ り 一 般 病 棟 へ 転 床 し た 。 1 月 半 前 よ り 、 意 識 レ ベ ル 200/JCS
に て ,経 口 気 管 内 挿 管 ・ 人 工 呼 吸 器 装 着 中 で あ っ た 。 11時 に 受 け 持 ち 看 護 師 Aが 、
人工呼吸器の換気モード、アラームを確認。挿管テープは固定されていることな
ど を 状 況 確 認 し た 。 人 工 呼 吸 器 の 設 定 確 認 後 、 ベ ッ ド 40度 程 度 ま で 上 半 身 挙 上 、
下 半 身 軽 度 挙 上 し 、 聴 診 器 に て 肺 音 確 認 後 、 経 管 栄 養 滴 下 ( 1 滴 /秒 ) を 開 始 し
た 。 ま た 、 11時 30分 に は 、 看 護 師 Aが 経 管 栄 養 滴 下 状 況 、 挿 管 状 況 確 認 し た が チ
ュ ー ブ は ず れ て い な い こ と を 確 認 し た 。 12時 55分 に 看 護 師 Aが 経 管 栄 養 の 滴 下 状
況 を 確 認 す る た め に 訪 室 す る と 、 挿 管 チ ュ ー ブ が 、 15㎝ ほ ど 脱 落 し て い た 。 口 腔
よ り 軽 度 の 血 液 様 痰 が 流 れ 落 ち て い た 。 患 者 の 身 体 、 顔 面 も 右 70度 程 度 に 傾 い て
い た 。 Sao2 99% 、 心 肺 停 止 発 生 の 状 態 で ECGモ ニ タ ー も フ ラ ッ ト 、 呼 吸 も 停 止 し
ていた。人工呼吸器、心電図モニターのアラームなし。すぐに、看護師、医師を
呼 び 心 肺 蘇 生 法 を 開 始 す る 。 13時 に 再 挿 管 、 19㎝ に て 固 定 す る 。 13時 2分 に 心 拍
再開し、脈拍も触知可能となる。
〔事故の背景・要因〕
① ギ ャ ッ チ ア ッ プ さ れ た 状 態 で 右 に 約 70度 ほ ど 傾 い た 状 態 で 発 見 さ れ た 。 自 己
体動が不可能な状態で傾いたことにより、気管内挿管チューブに張力が加わ
り、抜去に至った可能性が考えられた。
②人工呼吸器・モニターのアラームが鳴動していなかった可能性があり(もし
く は 鳴 動 し て い た が 認 知 さ れ て い な か っ た 可 能 性 が あ る )、 そ れ が 患 者 の 状
態変化の発見を遅らせた可能性が考えられた。
③ チ ュ ー ブ の 不 安 定 性 (経 口 挿 管 ・ テ ー プ 固 定 )も 原 因 の 一 部 の な っ て い る と
思われた。
〔再発防止策〕
①もっと早期に気管切開を施行すべきだった可能性(気管内挿管チューブの安
141
定 性 改 善 の た め )。
②モニター・人工呼吸器の作動に異常があれば点検方法の改善。モニター・人
工呼吸器の作動に問題がなかったとすれば、アラーム鳴動時のスタッフの対
応を確実に行う。
③アラーム鳴動に関しては、本件に関わらず、少人数での夜間・休日勤務帯で
は 常 時 認 知 す る こ と は 困 難 で あ る た め 、 PHS連 動 ア ラ ー ム の 導 入 な ど を 早 急
に検討する。
オ.蛇管の接続場所を誤った事例
【事例7】
重 心 患 者 。 低 酸 素 状 態 の 改 善 の た め 人 工 呼 吸 管 理 を 行 っ て い た 。 20時 30分 、 看
護師が体位調整中、呼吸器の送気口から蛇管が外れたが、その際、外れた蛇管を
誤って呼気の排出口に接続してしまった。接続後もアラームは鳴り続け、患者を
見ると顔色が不良のため、患者に何かトラブルが発生したと判断、当直医に連絡
し 吸 引 を 試 み た 。 当 直 医 師 が 到 着 す る ま で 約 5分 間 、 徐 々 に SPO2が 40台 ま で 低 下
し 、 チ ア ノ ー ゼ が 出 現 す る 。 20時 35分 、 当 直 医 師 に よ り 、 ア ン ビ ュ ー バ ッ ク に よ
る 人 工 呼 吸 (O26l )を 継 続 し て 行 い 徐 々 に SPO2上 昇 し 約 10分 後 に は 98% ま で 上 昇 。
蛇管を正しく送気口に接続した上で、人工呼吸管理に戻る。
〔事故の背景・要因〕
①人工呼吸器に関する知識不足(送気口に接続するべきものを、呼気排出口に
接 続 し て し ま っ た )。
②回路の接続が不十分だった(体位調整を行った際、接続が緩んだ可能性があ
る )。
〔再発防止策〕
①回路の接続外れ防止
・蛇管交換及び各勤務での蛇管点検時にしっかり奥まで挿入されていることを
確認する。
・体位変換の際は二人で実施し、接続に異常がないことを確認する。
②人工呼吸器管理の理解を高める
・人工呼吸器を理解するための研修会を継続して実施する。
・トラブルシューティングの体験学習を積み重ねていく。
カ.体位変換後の回路接続の確認が十分ではなかった事例
【事例8】
重 心 患 者 。 6時 40分 頃 、 看 護 師 が 、 体 位 を 軽 度 の 右 側 臥 位 か ら 仰 臥 位 へ 変 換 、 S
PO2を 確 認 し た 上 で そ の 場 を 離 れ る 。 看 護 師 が 、 隣 の 部 屋 の 患 者 に 対 す る 処 置 を
142
行っている時に、呼吸器とネットサットのアラームが鳴る。別の看護師がアラー
ム に 気 付 き 、 部 屋 に 設 置 さ れ て い る ネ ッ ト サ ッ ト を 確 認 す る と SPO2、心 拍 と も に 0
で全身チアノーゼを呈していた。気管切開チューブから蛇管が外れていたもの。
直 ぐ ア ン ビ ュ ー で 呼 吸 確 保 、当 直 医 に 連 絡 。 心 拍 、 SPO2と も 直 ぐ 回 復 し HR150台 、
SPO2も 90% と な っ た 。 当 直 医 診 察 後 、 酸 素 吸 入 と 尿 量 注 意 し 経 過 観 察 す る よ う 指
示。
〔事故の背景・要因〕
①マニュアルでは、吸入や体位変換など処置後は回路の接続を確認することに
なっているが、実際触って確認しなかった。
②該当部屋の近くに居たのにアラームの音が聞こえなかった。アラーム音がい
つも鳴っている状態でありアラームに対しての意識が薄れていた。また、ア
ラームの意味について、十分な理解が不足していた可能性がある。
③固定チームであり、相手チームのことには関心が薄い雰囲気があった。
〔再発防止策〕
① 患 者 の 処 置 を 実 施 し た 後 は 回 路 の 接 続 を 必 ず 確 認 し て 、SPO2、気 道 内 圧 の 確 認
も 行 う (マ ニ ュ ア ル の 遵 守 )。
② ア ラ ー ム 設 定 の 見 直 し ( そ の 患 者 に 合 っ た ア ラ ー ム の 設 定 )。
③患者個々のアラームの意味を認識し、他チームであってもアラームには直ぐ
対応するよう院内で徹底を図る。
④ ア ラ ー ム に つ い て の 観 察 判 断 が で き る よ う 新 人 、療 養 介 助 員 も 含 め て 研 修 を
行う。
【事例9】
ALS患 者 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 瞬 き と 文 字 盤 を 使 用 ( た だ し 短 い 文 章 の み )。
人工呼吸器のアシストコントロールモードに同調しているが、自発呼吸はある。
人工呼吸器(コンパニオン)は患者本人と業者で契約しているものの持ち込みで
あ っ た 。 レ ス パ イ ト 入 院 2 日 目 。 10時 30分 、 体 位 変 換 実 施 。 そ の 際 人 工 呼 吸 器 の
回転コネクター部分と気管切開チューブとの接続部分を数秒間はずして再度接続
し た あ と 、 左 腰 に タ オ ル を は さ み 、 手 足 の 角 度 を 本 人 が 納 得 す る ま で 整 え た 。 10
時 45分 、 経 管 栄 養 準 備 の た め に 看 護 師 が 訪 室 。 顔 色 と 覚 醒 し て い る こ と を 確 認 す
る 。 20分 後 、 訪 室 す る と 顔 面 チ ア ノ ー ゼ あ り 、 人 工 呼 吸 器 の 回 路 ( 回 転 コ ネ ク タ
ー部分)が気管切開チューブからはずれ患者の左胸にあった。接続部は内側が患
者の身体に向いた状態にあった。また、呼吸器のアラームは鳴っていなかった。
呼 名 す る が 反 応 乏 し く は っ き り せ ず( 元 々 反 応 は 瞬 き の み で 、は っ き り し な い )。
直 ち に 呼 吸 器 接 続 し 、 痰 の 吸 引 施 行 。 モ ニ タ ー 装 着 直 後 HR120代 、 SpO2
徐 々 に SpO2値 あ が り 約 5分 後 SpO2
67% 、
88% 。当 直 医 指 示 に て 酸 素 10リ ッ ト ル で 開 始 。
143
SpO2
99∼ 100% と な る 。 そ の 後 酸 素 1 リ ッ ト ル で 経 過 観 察 と し た 。
〔事故の背景・要因〕
①接続部をはずした上で体位変換を実施しているが、回転コネクター接続をし
っかりしたか実施後の確認をしていない。
②ウォータートラップにたまった水で蛇管に重みがかかりはずれた可能性があ
る。
③痰量の増加や回路のねじれ等により、気道内圧が高くなりはずれた可能性が
ある。
④呼吸器のアラームがならなかった。
〔再発防止策〕
①ウォータートラップにたまった水で蛇管に重みがかかることや回路のねじれ
等により気道内圧が高くなることで、接続部がはずれる要因となるため、蛇
管のたるみを持たせた上で回路を固定することと、回路内の結露に充分留意
し、体位変換時にウォータートラップの水切りを充分行う。
② 接 続 部 を は ず し 、 再 接 続 し た 後 の 確 認 方 法 を 、 体 位 変 換 時 に は 2名 の 看 護 師
で声に出し、指さし確認をすることとする(しっかり接続されているか、接
続部のはずれ防止の策を講じているか、呼吸器の気道内圧が正常範囲内であ
る か )。
③ 人 工 呼 吸 器 装 着 中 は モ ニ タ ー 装 着 す る ( 呼 吸 器 装 着 患 者 に 対 し て SpO2や モ ニ
タ ー に よ る 継 続 的 な 観 察 を 徹 底 す る )。
④今回使用の同機種によるアラームがならない原因の検証
・今回使用していた同機種の人工呼吸器を同設定にて稼働し、回路接続部に
同日患者が着用していたパジャマの材質に似ている布をあてたところ、布
の裏に身体が密着していた場合、一定の圧がかかり、アラームは鳴らなか
った。
・同日、発見時回転コネクター部分は内側が身体に向いた状態であり、一定
の圧がかかり、低圧アラームが機能しなかったと推測される。
⑤安全管理上、今後原則として本人持ち込みの呼吸器は、当院の器械に替える
こととする。
⑥特に在宅からのレスパイト入院の場合、事前に患者情報をしっかり収集する
ことで、事前の具体的プランを立案し、対策を講じる。
キ.職種間の情報伝達が十分ではなかった事例
【事例10】
慢 性 関 節 リ ウ マ チ の た め 左 人 工 肩 関 節 置 換 術 目 的 で 入 院 し 、 8月 29日 手 術 を 施
行 し た 。 9月 下 旬 よ り 言 語 障 害 出 現 し 脳 梗 塞 と 診 断 さ れ 、 10月 上 旬 に 誤 嚥 性 肺 炎
144
を 発 症 す る 。 10月 4日 肺 炎 の 急 性 憎 悪 の た め 呼 吸 状 態 が 悪 化 し 、 BiPAPを 使 用 し て
呼 吸 管 理 を し た が 呼 吸 状 態 は 改 善 し な か っ た 。 10月 5日 9時 30分 頃 呼 吸 状 態 が 悪 化
し 主 治 医 が 経 口 挿 管 を 試 み た が 、 RAの た め 頸 部 拘 縮 と 気 管 切 開 し て い た 既 往 が あ
り 、 挿 管 で き な か っ た 。 こ の た め 、 麻 酔 科 医 師 が 気 管 支 鏡 を 使 用 し 、 6, 5Fr挿 管
チ ュ ー ブ で 経 鼻 挿 管 ( 長 さ 26c m 、 カ フ 3mlで 固 定 ) を し た 。 10月 6日 3時 頃 よ り 、
人工呼吸器の低圧・高圧アラームが頻回に鳴り、ファイティングと判断し、指示
さ れ て い た デ ィ プ リ パ ン を 使 用 し 、患 者 を 鎮 静 し た 。そ の 後 吸 引 な ど の 処 置 を し 、
一 時 的 な ア ラ ー ム は あ っ た が 直 ぐ に 消 失 し て い た 。 同 日 8時 過 ぎ か ら 頻 回 に ア ラ
ー ム が 鳴 り 、 回 路 の た る み を 認 め 、 挿 管 チ ュ ー ブ が 3cm抜 け て い る の を 発 見 し 、
当 直 医 が 口 腔 内 に カ フ を 認 め 抜 管 し た 。 9時 過 ぎ よ り 、 気 管 支 鏡 を 使 用 し て 再 挿
管 を 試 み た が 、 9時 35分 心 停 止 し CPR施 行 を し た 。 喉 頭 浮 腫 に よ る 気 道 の 完 全 閉 塞
を 起 こ し 、 気 管 支 鏡 が 声 門 を 通 過 で き ず 、 挿 管 不 能 と な り 10時 31分 死 亡 と 診 断 さ
れた。なお、気管切開の既往があり、再度切開できる状態ではなかった 。
〔事故の背景・要因〕
①経鼻挿管した麻酔科医と主治医が、看護師に「挿管が浅くチューブが抜けや
すい」との情報伝達が不十分で、看護師も患者の病態の理解不足があった。
② そ の た め 、 気 道 内 圧 の 上 昇 や 体 動 で 挿 管 チューブが 徐 々 に 抜 け て き て い る と 考
えず、呼吸器のアラームの対応が遅れた。
③夜勤時、高圧アラーム・低圧アラームが頻回に鳴っていたが、体動に対しデ
ィプリパンを使用して鎮静を試み、エアリークがあると考えカフにエアを注
入して対応した。
④「挿管が浅くチューブが抜けやすい」という情報が共有されていれば、直ち
に当直医などに連絡し対応できたと考える。
〔再発防止策〕
①医師・看護師の連携を十分に行い患者情報を共有し、夜間、患者の症状変化
や判断に困った時は、直ちに当直師長や医師へ具体的に相談・報告をする。
②呼吸器アラームの原因を十分理解しアラーム対応ができるようテスト問題を
作成し全看護師の知識を深めさせた。
②緊急用の気管支鏡の保管場所(タイプと台数)確認し、当直医及び当直師長
に分かるよう明示した
145
(9)危険薬について
国 立 病 院 機構本部に報告のあった薬剤に関する事故事例は、平成18年度は11例、平
成19年度は26例、計37例(別紙1)であった。そのうち危険薬を含んだ事例は16例
あり全体の4割を占めている。
マサチューセッツ総合病院など米国を代表する21の病院が、医療の質の向上を目指すた
めに、全米実証プロジェクト(NDP:National Demonstration Project)を立ち上げ、教
訓レポート(上原らが監訳1))を作成した。当該レポートによると危険薬とは、「誤った投
与の仕方をした場合に、患者の健康状態に対し死亡を含めた深刻な影響をもたらしうる薬剤
である」と定義されている。これら危険薬のリスクを医療従事者が正しく認識し、危険薬の
取扱いについて啓発並びに具体的な防止対策を講じることが必要である。
(1 )危 険 薬 に つ い て
①投与量等に注意が必要な薬剤(薬理作用が強く、薬用量と毒性・副作用発現量
が近接
している等)
ジキタリス製剤、抗てんかん剤、抗悪性腫瘍剤、テオフィリン製剤、抗不整脈用
剤等
②休薬期間を要する薬剤(骨髄抑制が強い等)
抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、抗真菌剤、副腎皮質ホルモン製剤等
③心停止に注意が必要な薬剤
KCL、アスパラカリウム、リン酸二カリウム、抗不整脈薬、ジゴキシン製剤、
キシロ
カイン、リドカイン等
④呼吸抑制に注意が必要な薬剤
サクシン、マスキュラックス等
⑤投与量が単位で設定されている薬剤
インスリン製剤、ヘパリン製剤等
※
分類にあたっては、厚生労働科学研究医薬品等の安全管理体制の確立に関する研究
報告書 2)が示す特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)を参考に分類を行った。
(2)危険薬リストの作成
薬剤部門は、次の①∼⑤の分類を参考にしながら、自院が採用している医薬品から危険
薬を抽出し、「危険薬リスト」を作成することが必要である。具体的な作成方法は次のと
おりである。
①投与量に注意が必要な薬剤
②休薬期間を要する薬剤
③心停止に注意が必要な薬剤
④呼吸抑制に注意が必要な薬剤、⑤投与量が単位で示されている薬剤
(具体的作成方法)
医 薬 品 添 付 文 書 が 集 約 さ れ て い る JAPIC(日本医薬情報センター)の医療用
医薬品集CD-ROMを活用する。
146
1.分類①は「用法用量」、「用法関連注意事項」、「投与量」、「注意」をキーワードとして
薬剤検索し、<投与量に注意が必要な薬剤>の抽出を行う。
2.分類②は 、「用法用量」、「用法関連注意事項 」、
「重要な基本的注意」、「休薬」をキー
ワードとして薬剤検索し、<休薬期間を要する薬剤>の抽出を行う。
3.分類③及び④については 、「重篤な基本的注意」、「重大な副作用」、「副作用」、「呼吸
困難」及び「心停止」をキーワードとして薬剤検索し、<心停止に注意が必要な薬
剤>、<呼吸抑制に注意が必要な薬剤>の抽出を行う。
4.分類⑤は、「組成・性状 」、「単位」をキーワードとして薬剤検索し、<投与量が単位
で示されている薬剤>の抽出を行う。
5.分類①∼⑤で抽出された薬剤を統合し危険薬リスト(エクセル表)を作成する。当該
危険薬リストと院内採用医薬品リストの照合作業(エクセル関数VLOOKUP関数を使用)
を行い、「院内危険薬リスト」を作成する。作業にあたっては「JANコード」、「厚
生省コード」をキーワードにして照合行う。
各病棟担当薬剤師は、危険薬リストを基に、各病棟のリスクマネージャーと連携診療科毎の
「危険薬リスト」を作成し薬剤情報の共有化を図ることが必要である。また、医薬品名が類
似していること等から発生するエラーを予測することも重要なことであるので、危険薬リス
ト作成時にあたっては、これら注意事項を盛り込むことも必要である4)。
(3)事例の紹介
1.抗悪性腫瘍剤であるパラプラチン注射液を過剰投与し、骨髄機能
抑制に伴う白血球減少、血小板減少等を引き起こした例
<事故発生の状況>
パラプラチンの使用は1日1回投与、その後は3∼4週間は休薬を要する薬剤であるが、
休薬せずに2日間連続投与し、鼻出血を引き起こしたことから、確認を行ったところ過剰
投与したことが判明した。前日に指示を出す際、主治医は化学療法の内容をわかりやすい
ように手書きで指示簿に転記した際に1日のところを3日間と投与期間を間違ったが、指
示を受けた看護師、調剤を行った薬剤師は気づかなかった。また、主治医は化学療法の経
験が浅く、小細胞肺癌は担当したことがないため、指導医と相談し、プロトコールを作成
した。肺がんの化学療法はまれにしか無いため、疑問に思わなかった事例であった。
<病院が実施した防止対策>
①化学療法を実施する場合は、必ず投与計画表(以下レジメンと略す)を薬剤科に提出し、
処方する際は、確認しやすいようにどの投与段階かを入力する。
②薬剤科での調剤時は、過去の薬歴とレジメンを確認しながら実施する。
③レジメンは、カルテの所定の場所に必ず綴じ込み、レジメンと薬剤を見て
必ず
確認してから実施する。
④ 病棟チーム全体で化学療法に関する研修会を開催し、知識と情報の強化を図る。
<さらなる具体的防止対策>
○転記することにより、書き間違いや読み間違いによるミスが発生しやすくなるので、転記
は行わないようにする。
147
○新しい危険薬が採用される場合もあるので、病棟チーム全体での研修会に薬剤部門も参加
して薬剤情報を共有し、連携強化を図ることが必要である。
○薬剤部門は、抗がん剤の調剤ミスが起きないよう調剤者、監査者のダブルチェックを徹底
する。
2.免疫抑制剤であるリウマトレックス錠を過剰投与し、肝機能障害を一時的に発症した例
<事故発生の状況>
転院当日、内服薬は前医からの継続投与となるが、リウマトレックス錠を週1回の指示を、
医師が間違って連日投与と処方せんに記載した。処方せんを受けた薬剤師は、連日投与で
きないことを見落とし病棟に払いだした。また、看護師も間違いに気がつかなかった。
<病院が実施した防止対策>
①医師は経験の少ない薬剤の場合、特に慎重に取り扱う。
②薬剤師は専門職として意識向上を図り、調剤者による処方確認と監査者による最終確認の
ダブルチェックを強化する。
③医師、看護師は、転院先からの紹介状に添付された薬剤情報等を共有する。
<さらなる具体的防止対策>
○調剤する薬剤師と監査する薬剤師のダブルチェック体制を徹底すると共に、処方せんを受
けた薬剤師は、「院内危険薬リスト」を確認し、該当する医薬品であれば、危険を知らせ
る注意点等を薬剤科・病棟控の処方せんに明記するなど、注意喚起を促すことが必要であ
る。
3.抗てんかん剤であるフェノバルビタール散を調剤するところを誤ってフェニトイン散を
調剤し、皮膚そう痒症を発現した例
<事故発生の状況>
フェノバール散(ピンク色)1.2g分3を含む処方せんを調剤した薬剤師が、フェニト
イン(白色)を調剤した。なお、両薬剤は遮光瓶に入っており、色の識別が不可能であっ
た。調剤監査を行った薬剤師も間違いに気がつかずに病棟に交付した。看護師は薬剤の色
について違和感を覚えたがそのまま与薬をおこなった。しかし、後になっても薬剤のこと
が気になり、同僚にそのことを話したところ、同僚もそう言えば以前はピンク色だったよ
うな気がすると言ったので、薬剤科に確認をとったところ散薬監査システムの記録にフェ
ニトインを調剤したことが判明した。
<病院が実施した防止対策>
①当該薬剤に対する注意喚起表示
②類似名称薬の秤量時に、薬剤ディスプレイに「要注意」と表示されるようにした。
③声だし、指さし確認の実践
④調剤監査システムと分包機印字データが連動したシステムの整備
<さらなる具体的な防止対策の実施>
○両薬剤は、同じ薬効分野である抗てんかん剤であり、フェノバール、フェニトインと名称
も類似しているため調剤ミスを引き起こした事例である。煩雑している調剤業務の中、調
148
剤者は頭文字の3文字で読み取りがちになりやすくなるので、調剤する際は最後まで医薬
品名をフルネームで確認を行う。また、調剤する段階で事前に色の認識ができるよう危険
薬リスト作成にあたっては、注意点を盛り込む等の対策が必要である。
○両薬剤共に、遮光瓶に保管する薬剤であるため、調剤時においては目視確認が出来なかっ
たことから、薬品ラベルに<注意:類似薬剤あり>等と注意喚起を促すことが必要である。
4.作用の異なるインスリン製剤を患者間で取り違えたことにより低血糖が起こった例
<事故の発生状況>
事例発生場所は、4人部屋でインスリン注射を受けている患者が2名おり、複数患者の薬
剤を1つのトレーに準備をしていた。ノボリンNフレックスペン5単位(中間型製剤タイ
プ:作用発現時間:約1.5時間)を注射する際、隣の患者がトイレをしたいと訴えたので、
一時投与の準備を中断しトイレの介助を行った。その後、指示簿の確認をして当該注射を
行ったが、違う患者の指示簿を見て、作用の異なるペンフィル30R10単位(混合型タイプ
:作用発現時間:約30分)を注射してしまい、患者は低血糖発作を引き起こした。
<病院が実施した防止対策>
○インスリンのバイアルは使用開始日を明記すると共に、同時に何本も使用しないことで、
使用量に問題ないかチェックする。
○患者氏名とベッドネームを指さし・声だし確認し、早朝の暗がりでも見やすいように患
者名を大きくした。
<さらなる具体的な防止対策の実施>
○一時注射の準備を中断したために発生した事故事例である。原則、作業を再開する際は、
最初から確認をやり直すよう周知徹底すべきである。
○1患者1トレーでインスリン製剤を準備し、使用する患者のインスリン製剤、処方せん、
指示簿と確認する行為が必要である。
【参考文献】
1)「危険薬の誤投与防止対策
NDP Best Practice」平成16年12月
厚生労働科学研究(医療技術評価総合研究事業)「医療安全のための教材と教育方法の開発に
関する研究」
主任研究者
上原
鳴夫
2)「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル」平成19年3月
平成18年度厚生労働科学研究「医薬品等の安全管理体制の確立に関する研究」
主任研究者
北澤
式文
3)日本医療機能評価機構 医療安全情報「2007年に提供された医療安全情報」
・インスリン含量の誤認(No 1)
・抗リウマチ剤(リウマトレックス)の過剰投与に伴う骨髄
抑制(No 2)
4)平成20年3月25日付厚生労働省医政局総務課、医薬食品局安全対策課 事務連絡
「医療用医薬品類似名称検索システムの公開について(情報提供)」
5)各製薬会社添付文書
6)治療薬マニュアル
2008
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No
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医療事故概要
誤注射(ラシックス注を誤ってホリゾン注を注射)
誤注射(ドルミカム注を誤ってペルカミンS注を注射)
作用時間の異なるインスリン製剤を誤注射
処方ミス(リウマトレックス錠の過剰投与)
指示受けの間違い(メプチンシロップの過剰投与)
誤調剤(アーチスト錠の過剰投与)
誤調剤(セルシン散の過少投与)
確認ミス(二種混合ワクチンの過剰投与)
処方入力のミス(デパス錠の過剰投与)
処方入力のミス(ヒルナミン散の過剰投与)
抗癌剤投与中の呼吸停止(パラプラチンによる副作用)
<参考>
アーチスト(高血圧・狭心症治療剤)
アミノレバン(肝不全用アミノ酸製剤)
FOY(蛋白分解酵素阻害剤)
カコージンD(急性循環不全改善剤)
シプロキサン注(抗菌剤)
デパス(精神安定剤)
ドルミカム(催眠鎮静剤)
パラプラチン(抗悪性腫瘍剤)
ピレチア(抗ヒスタミン剤)
ヒルナミン(統合失調症治療剤)
プレドニン・サクシゾン(ステロイド)
ペルカミンS(局所麻酔薬)
ボスミン(昇圧剤)
ホリゾン(抗不安剤)
メプチン(気管支拡張剤)
ラシックス(利尿降圧剤)
リウマトレックス(抗リウマチ剤)
レボトミン(精神神経安定剤)
ワーファリン(抗凝血剤)
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10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
医療事故概要
シリンジポンプの確認ミス(ドルミカム注射液の過剰投与)
誤調剤(デパスの過剰投与による患者の状態変化)
シリンジポンプの設定ミス(麻薬フェンタニールの過剰投与)
作業中断後の確認不足(インスリン製剤の過剰投与)
処方入力ミス(鉄欠乏性貧血治療薬剤の過剰投与)
単位間違いによる誤注射(インスリン製剤の過剰投与)
患者間違いによる誤点滴(アミノレバン注ーシプロキサン注)
誤注射(ボスミン注を誤ってホリゾン注を注射)
注射薬の払出しミス(ラシックス注のところをビソルボン注を払出しされ注射)
誤注射(三種混合ワクチンを誤って麻しん風疹ワクチンを注射)
誤注射(パラプラチン注の過剰投与)
高カロリー輸液急速投与により肺水腫・心不全を併発
誤投与(患者間違いによる麻薬の投与)
処方入力ミス(ワーファリン量の誤り)
単位間違いによる誤注射(インスリン製剤の過剰投与)
誤投与(レボトミン、ピレチア錠を誤って別な患者へ投与)
作用時間の異なるインスリン製剤を誤注射
誤調剤(フェノバール散を誤ってフェニトイン散を調剤)
輸液ポンプの確認ミス(カコージンD注の過剰投与)
誤注射(プレドニン注を誤ってサクシゾン注を注射)
FOY血管外漏出事故
抗癌剤の血管外漏出
経腸栄養チューブから注入すべき内服薬の末梢静脈内への誤注入
抗生剤の血管外漏出による皮膚損傷
誤注射(風しん・麻しんワクチンのところを誤って三種混合ワクチンを投与)
誤注射(ケイツー注射のところを誤ってケイツーシロップを注射)
<H19年度:26件>
平成18年度∼平成19年度 薬剤に関する医療事故(危険薬事例は番号に網掛け)
(参考)
Ⅲ
資
151
料
医療安全管理対策研修の実施状況
Ⅰ
医療安全に関する制度の理解、取り組み、評価及び対策に係る知識・技能
の習得することを目的に、各ブロック事務所において、医療安全対策に係る
研修を実施
Ⅱ
平成19年度研修実施状況(概要)
○関東信越ブロック事務所主催
日
程:平成19年10月17日∼19日・11月1日∼2日
場
所:国立病院機構本部講堂
参加人数:延べ114名
(医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、
栄養士、事務職員等)
主な研修内容
※携わる役割別にコースを設定
Aコース:病院で中心的役割を担う医療安全管理者の養成を目的と
して、責任者としての役割やその運営についての講義形
式の研修
Bコース:医療安全活動にかかる委員会や医療安全推進担当者を対
象に、組織的な役割や、事故発生時の対応についての講
義形式の研修
Cコース:A、Bコース参加者対象に、インシデントレポート分析
の手法の考え方などの講義及びグループワーク(事例分
析演習)
○東海北陸ブロック事務所主催
日
程:平成20年 1月21日∼25日
場
所:名古屋医療センター
参加人数:延べ52名
(医師、看護師長、薬剤科長、診療放射線技師長、臨床検
査技師長、事務課長クラス)
主な研修内容
※携わる役割別にコースを設定
Aコース:病院で中心的役割を担う医療安全管理者の養成を目的と
152
して、責任者としての役割やその運営についての講義形
式の研修
Bコース:医療安全活動にかかる委員会や医療安全推進担当者(各
部門の長を中心)を対象に、組織的な役割や、事故発生
時の対応、法的責任などの講義形式の研修
Cコース:A、Bコース参加者対象に、インシデントレポート分析
の手法の考え方などの講義及びグループワーク(事例分
析演習)や、ロールプレイによる研修
○近畿ブロック事務所主催
日
程:平成20年 1月10日
場
所:近畿ブロック事務所
参加人数:36名
(責任者である医療安全管理室長、医療安全管理担当看護
師長、医療安全管理担当の事務職員)
主な研修内容
講義:医療事故報告の留意点について
拡大医療安全管理委員会について
グループワーク
テーマ:事例分析と再発防止策の検討
○近畿ブロック事務所主催
日
程:平成20年 2月18日∼22日
場
所:近畿ブロック事務所
参加人数:29名
(医療安全推進担当者として経験のある、医師、コメディ
カル、看護師)
主な研修内容
講義:医療安全に関する制度
医療安全とコミュニケーション
医療安全のための組織的な取り組み
グループワーク、シュミレーショントレーニング
重大事故発生時の対応
事例検討
危険予知トレーニング(KYT)
根本原因分析(RCA)
153
○中国四国ブロック事務所主催
日
程:平成19年 6月11日∼15日
場
所:中国四国ブロック事務所
参加人数:53名
(医療安全推進担当者である医師、コメディカル、看護師
※今後担当する予定者)
主な研修内容
講義:医療安全管理者の役割
医療事故における法的責任
医療安全の実践に必要なスキル
グループワーク
テーマ:①気管カニューレ抜去、②感染、③異形輸血
テーマ:①後嚥による死亡、②転倒転落後の死亡、③誤薬
○中国四国ブロック事務所主催
日
程:平成19年12月13日∼14日
場
所:中国四国ブロック事務所
参加人数:25名(中心的役割を担う医療安全管理係長)
主な研修内容
グループワーク
テーマ:チューブトラブル防止の取り組み
事例分析:①急性期病院におけるチューブ管理
②慢性期病院におけるチューブ管理
③胃ろうチューブ管理
○九州ブロック事務所主催
医療事故対応研修会(Ⅰ∼Ⅲとして、3コースを設定)
日
場
程: Ⅰ
平成19年10月31日
Ⅱ
平成19年12月 6日∼ 7日
Ⅲ
平成20年 3月 6日∼ 7日
所:九州医療センター
参加人数:延べ206名
(中心的役割を担う医療安全管理係長、診療部門の部長・
医長、看護師長、看護師、コメディカル)
154
主な研修内容
Ⅰ
講義:医療事故当事者のサポートの必要性
医療事故の根本原因分析法RCA
ロールプレイ
事故発生直後の家族への対応
Ⅱ
講義:医療事故とヒューマンファクター
医療事故の根本原因分析法RCA
医療事故と法的責任
グループワーク
RCA事例分析
Ⅲ
講義:看護師が関わった医療事故
医療事故と看護管理
最近の医療事故の話題
ロールプレイ
医療事故後の家族への説明
○九州ブロック事務所主催
医療安全管理研修会(栄養チューブ誤挿入防止Ⅰ・Ⅱとして2コー
スを設定)
日
場
程: Ⅰ
平成19年 6月18日
Ⅱ
平成19年12月10日
所:熊本医療センター
参加人数:延べ168名
(中心的役割を担う医療安全管理係長又は医療安全に関わ
る看護師、医療安全に関わる医長・医師)
主な研修内容
Ⅰ
講義:栄養チューブ誤挿入事故について
栄養チューブ誤挿入防止対策について
グループワーク
誤挿入防止マニュアルの作成
Ⅱ
講義:経鼻栄養管誤挿入防止のための事前調査の結果
胃痩チューブ事故とその予防
○九州ブロック事務所
医療安全管理研修会(薬物事故防止Ⅰ・Ⅱとして2コースを設定)
155
日
場
程: Ⅰ
平成19年 7月18日
Ⅱ
平成20年 1月11日
所:九州医療センター
参加人数:延べ216名
(中心的役割を担う医療安全管理係長又は医療安全に関わ
る看護師、医療安全に関わる医長・医師、薬剤科長又は
薬物管理に関わる薬剤師)
主な研修内容
Ⅰ
講義:最近の薬物事故について
ヒヤリ・ハット事例にみる教訓
パネルディスカッション
薬物事故防止のための体制作り
Ⅱ
講義:薬物事故防止のための他職種の関わり
薬物事故防止の取り組み
パネルディスカッション
薬物事故防止のための体制作り
○九州ブロック事務所主催
医療安全管理研修会(NPPVⅡ)
非浸襲的陽圧換気療法(NPPV)実施方法を医学的、倫理的法的な面か
ら検討を目的として実施
日
程:平成19年10月 1日
場
所:福岡東医療センター
参加人数:99名
(中心的役割を担う医療安全管理係長、人工呼吸器管理の
責任的立場にある部長・医長、管理を行う頻度が高い看
護師、保守点検を行う臨床工学技士)
主な研修内容
講義:医療現場におけるコンプライアンス
医療事故発生時の注意点について
シンポジウム
・規則違反と医療事故
・当院におけるNPPV管理の体制
・NPPV適応外使用例に関する倫理委員会報告書
・NPPV適応外使用の通知と承諾書
156
(平 成 19 年 3 月 29 日 改 )
独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針
157
目
次
第1
趣旨 …………………………………………………………………
第2
医療安全管理のための基本的考え方
第3
用語の定義 …………………………………………………………
第4
医療安全管理体制の整備 …………………………………………
第5
各病院における医療安全管理のための具体的方策の推進 ……
第6
医療事故発生時の具体的な対応 …………………………………
第7
医療事故の評価と医療安全管理への反映 ………………………
…………………………
(別添1)患者影響レベルの指標
(別添2)患者影響レベル毎の具体的事例
(別添3)医療安全管理規程(例)
(別添4)医療事故防止ための要点と対策
(別添5)ヒヤリ・ハット体験報告
(別添6)ヒヤリ・ハット、医療事故情報分析表
(別添7)ヒヤリ・ハット事例集
(別添8)医療安全対策ネットワーク整備事業の実施について
(別添9)医療事故情報収集等事業の概要(「医療事故情報収集等事業の開始につ
いて」及び「医療事故情報収集等事業に係る報告様式及び記載要領等に
ついて」)
(別添10)「医薬品・医療用具等安全性情報報告制度」実施要領
(別添11)医療事故報告書(院内報告書)
(別添12)医療事故報告書(本部、ブロック事務所への報告書)
(別添13)警察への届出に当たっての手順
(別添14)国立病院機構医療事故公表指針
(別添15)拡大医療安全管理委員会運用規程
※ (別 添 4 )∼ (別 添 12)に つ い て は 本 編 添 付 省 略
158
4
医療過誤
医療過誤は、医療事故の発生の原因に、医療機関・医療従事者に過失があるもの
をいう。
5
ヒヤリ・ハット事例
患者に被害を及ぼすことはなかったが、日常診療の現場で、
し たり、
ハッ
ヒヤリ
と
とした経験を有する事例をいう。
具体的には、ある医療行為が、①患者には実施されなかったが、仮に実施された
とすれば、何らかの被害が予測される場合、②患者には実施されたが、結果として
患者に被害を及ぼすに至らなかった場合を指す。
6
患者影響レベル
発 生 し た 医 療 事 故 や ヒ ヤ リ・ハ ッ ト 事 例 が 患 者 に ど の 程 度 の 影 響 を 与 え た か
を 区 分 す る も の 。国 立 病 院 機 構 に お け る 統 一 的 な 患 者 影 響 レ ベ ル の 指 標 は 、別
添 1 の と お り と し 、そ の 具 体 的 事 例 を 別 添 2 に 整 理 す る 。レ ベ ル 0 か ら レ ベ ル
3 a ま で を ヒ ヤ リ・ハ ッ ト 事 例 、レ ベ ル 3 b か ら レ ベ ル 5 ま で を 医 療 事 故 と す
る 。ま た 、各 病 院 は 、本 指 標 に 基 づ き 、発 生 し た 医 療 事 故 等 が ど の 患 者 影 響 レ
ベルに該当するのかについて整理を行うこととする。
7
医療安全管理者
医療安全管理者は、院長の指名により選任され、医療安全推進担当者を指導し、
連携・協同の上、特定の部門ではなく病院全般にかかる医療安全対策の立案・実行
・評価を含め、医療安全管理のための組織横断的な活動を行う者をいう。
また、医療安全管理者は、独立行政法人国立病院機構組織規程(平成16年規程
第3号)第72条の規定に基づく看護部又は看護課に置く看護師長をもって充てる
ものとする。
8
医療安全推進担当者
医療安全推進担当者は、院長の指名により選任され、医療事故の原因、防止方法
に関する検討提言や医療安全管理委員会等との連絡調整を行う者をいう。
9
医薬品安全管理責任者
医薬品安全管理責任者は、院長の指名により選任され、医薬品の安全使用を確保
するための業務を行う責任者をいう。
10
医療機器保守管理責任者
医療機器保守管理責任者は、院長の指名により選任され、医療機器の安全使用を
確保するための業務を行う責任者をいう。
159
独立行政法人国立病院機構における医療安全管理のための指針
第1
趣旨
本指針は、独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」という。)におけ
る医療安全管理体制の確立、医療安全管理のための具体的方策及び医療事故発生時
の対応方法等について、指針を示すことにより、適切な医療安全管理を推進し、安
全な医療の提供に資することを目的とする。
第2
医療安全管理のための基本的考え方
医療安全は、医療の質に関わる重要な課題である。また、安全な医療の提供は医
療の基本となるものであり、各病院及び職員個人が、医療安全の必要性・重要性を
病院及び自分自身の課題と認識し、医療安全管理体制の確立を図り安全な医療の遂
行を徹底することがもっとも重要である。このため、各病院は、本指針を活用して、
病院ごとに医療安全管理委員会及び医療安全管理室を設置して医療安全管理体制
を確立するとともに、病院内の関係者の協議のもとに、独自の医療安全管理規程及
び医療安全管理のためのマニュアル等(以下「マニュアル等」という。)を作成す
る。また、ヒヤリ・ハット事例及び医療事故の評価分析によりマニュアル等の定期
的な見直し等を行い、医療安全管理の強化充実を図る必要がある。
さらに、各病院において行われている医療安全管理に係る有効な取り組みを国立
病院機構の全病院で共有することや、各病院で発生した医療事故等を一元的に収集
し整理・分析した上でフィードバックするなど国立病院機構の病院ネットワークを
活用した医療安全管理体制の確立を図っていくことも重要である。
第3
1
用語の定義
医療安全管理規程
国立病院機構の各病院における医療安全管理体制、医療安全管理のための職員研
修、医療事故対応等の医療安全管理のための基本方針を文書化したもので医療安全
管理委員会で策定及び改定するものをいう。
2
マニュアル
国立病院機構の各病院において、本指針の第5から第7に記載されている医療安
全管理のための具体的方策、医療事故発生時の具体的対応及び医療事故の評価と医
療安全管理への反映等をまとめたものをいう。マニュアルは、病院内の関係者の協
議のもとに医療安全管理室で作成、点検及び見直しの提言等を行い、医療安全管理
委員会で承認を受けるものとする。
3
医療事故
医療事故とは、医療に関わる場所で医療の全過程において発生する人身事故一切
を包含し、医療従事者が被害者である場合や廊下で転倒した場合なども含む。
160
第4
医療安全管理体制の整備
各病院においては、以下の事項を基本として、病院内における医療安全管理体制
の確立に努める。
1
医療安全管理規程について
(1)各病院は、病院内関係者の協議に基づき医療安全管理委員会で「医療安全
管理規程」を策定及び改定する。(参考例は別添3のとおり。)
(2)医療安全管理規程には、以下の事項を規定する。
ア
医療機関における医療安全管理に関する基本的考え方
イ
医療安全管理のための病院内体制の整備
ウ
医療安全管理委員会の設置及び所掌事務
エ
ヒヤリ・ハット事例の報告体制
オ
医療事故報告体制
カ
医療事故発生時の対応
キ
医療安全管理のための職員研修に関する基本方針
ク
患者等に対する医療安全管理規程の閲覧に関する基本方針
ケ
その他、医療安全管理に関する事項
(3)医療安全管理規程の患者等に対する閲覧について
医療安全管理規程については、患者及び家族等に対し、その閲覧に供することを
原則とし、待合室等に備え付けるなどして、各患者等が容易に閲覧できるように配
慮する。
2
医療安全管理委員会の設置
(1)各病院は医療安全管理委員会(以下、「委員会」という。)を設置する。
(2)委員会は、副院長、診療部長又は医長、薬剤部長又は薬剤科長、看護部長又は
総看護師長、事務部長又は事務長、医療安全管理者、医薬品安全管理責任者、医
療機器安全管理責任者等をもって構成することを原則とする。
(3)委員会の委員長は、原則として副院長とする。
(4)委員会の副委員長は、原則として医療安全管理者とする。
(5)委員長に事故があるときは、診療部長又は医長がその職務を代行する。
(6)委員会の所掌事務は、以下のとおりとする。
ア
医療安全管理の検討及び研究に関すること
イ
医療事故の分析及び再発防止策の検討並びに委員会によって立案された防止
対策及び改善策の実施状況の調査及び見直しに関すること
ウ
医療安全管理のために行う職員に対する指示に関すること
エ
医療安全管理のために行う院長等に対する提言に関すること
オ
医療安全管理のための啓発、教育、広報及び出版に関すること
カ
医療訴訟に関すること
キ
その他医療安全管理に関すること
161
(7)委員会は、所掌事務に係る調査、審議等の任務を行う。
(8)委員会の検討結果については、定期的に院長に報告するとともに、医療安全推
進担当者を通じて、各職場に周知する。
(9)委員会の開催は、概ね毎月1回とする。ただし、必要に応じ、臨時の委員会を
開催できるものとする。
(10)委員会の記録その他の庶務は、原則として医療安全管理室が行う。
(11)重大な問題が発生した場合には、委員会において速やかに発生の原因を分析
し、改善策の立案及び実施並びに職員への周知を図る。
3
院内感染対策のための指針の策定
( 1 )各 病 院 は 、次 に 掲 げ る 事 項 を 内 容 と す る「 院 内 感 染 対 策 の た め の 指 針 」を
策定する。
ア
院内感染対策に関する基本的考え方
イ
院内感染対策のための委員会(以下、「院内感染対策委員会」という)、
及びその他の院内感染対策に係る院内の組織に関する基本的事項
ウ
院内感染対策のために職員に対して行われる研修に関する基本方針
エ
感染症の発生状況の報告に関する基本方針
オ
院内感染発生時の対応に関する基本方針
カ
患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
キ
その他院内における院内感染対策の推進のために必要な基本方針
( 2 )院 内 感 染 対 策 の た め の 指 針 は 、院 内 感 染 対 策 委 員 会 の 議 を 経 て 策 定 及 び 変
更するものとする。
4
拡大医療安全管理委員会の開催
院内の委員会で、発生した医療事故の過失の有無、原因等について十分な結論づ
けができない場合等には、院長は、第三者的立場から過失の有無等について厳正に
審議を行うため、国立病院機構内における自施設以外の施設の専門医、看護師等(以
下、「専門委員」という。)を加えた委員会(以下、「拡大医療安全管理委員会」
という。)を開催する。
5
医療安全管理室の設置
(1)委員会で決定された方針に基づき、組織横断的に当該病院内の安全管理を担う
ため、病院内に医療安全管理室を設置する。
(2)医療安全管理室は、医療安全管理者、医療安全推進担当者及びその他必要な職
員で構成され、医療安全管理室長は原則として、副院長等の安全管理委員会にお
ける委員長とする。
(3)医療安全管理室の所掌事務は以下のとおりとする。
ア
委員会で用いられる資料及び議事録の作成及び保存並びにその他委員会の庶
務に関すること
162
イ
医療安全に関する日常活動に関すること
①
医療安全に関する現場の情報収集及び実態調査(定期的な現場の巡回・点検、
マニュアルの遵守状況の点検)
②
マニュアルの作成及び点検並びに見直しの提言等
③
ヒヤリ・ハット体験報告(ヒヤリ・ハット事例を体験した医療従事者が、その
概要を記載した文書をいう。以下同じ。)の収集、保管、分析、分析結果などの
現場へのフィードバックと集計結果の管理、具体的な改善策の提案・推進とその
評価
④
医療安全に関する最新情報の把握と職員への周知(他病院における事故事例の
把握など)
⑤
医療安全に関する職員への啓発、広報(月間行事の実施など)
⑥
医療安全に関する教育研修の企画・運営(具体的な内容については、第5
4
を参照)
⑦
医療安全対策ネットワーク整備事業に関する報告
⑧
医療機能評価機構への医療事故事例の報告に関すること
⑨
医薬品・医療用具等安全性情報報告制度に基づく報告の支援に関すること
⑩
医療安全管理に係る連絡調整
ウ
医療事故発生時の指示、指導等に関すること
①
診療録や看護記録等の記載、医療事故報告書の作成について、職場責任者に対
する必要な指示、指導
②
患者や家族への説明など事故発生時の対応状況についての確認と必要な指導
(患者及びその家族、警察等の行政機関並びに報道機関等への対応は、病院の院
長、副院長のほか、それぞれの部門の管理責任者が主として行う。)
③
院長又は副院長の指示を受け、医療事故の原因分析等のための臨時医療安全管
理委員会を招集
④
事故等の原因究明が適切に実施されていることの確認と必要な指導
⑤
医療事故報告書の保管
エ
その他、医療安全対策の推進に関すること
(4)医療安全管理室の中に作業部会を設置し、医療安全管理室の業務の一部を行う
ことができる。
6
医療安全管理者の配置
各病院は、医療安全管理の推進のため、医療安全管理室に医療安全管理者を置
く。
(1)医療安全管理者は、医療安全に関する十分な知識を有する者とする(医療安全
管理者の養成を目的とした研修で、通算して40時間以上または5日程度の研修
を終了した者)。
(2)医療安全管理者は、医療安全管理室長の指示を受け、各部門の医療安全推進担
当者と連携・協同の上、医療安全管理室の業務を行う。
163
(3)医療安全管理者は医療安全管理室の業務のうち、以下の業務について主要な役
割を担う。
ア
医療安全管理室の業務に関する企画立案及び評価に関すること。
イ
病院における職員の安全管理に関する意識の向上及び指導に関すること。
ウ
医療事故発生の報告又は連絡を受け、直ちに医療事故の状況把握に努めるこ
と。
7
医療安全推進担当者の配置
各病院は、各部門の医療安全管理の推進に資するため、医療安全推進担当者を置
く。
(1)医療安全推進担当者は、各診療科及び各看護単位にそれぞれ1名を、また、薬
剤科(薬剤部を含む。)、研究検査科、事務部等各部門にそれぞれ1名を置くも
のとし、各院長が指名する。
(2)医療安全推進担当者は、医療安全管理室の指示により以下の業務を行う。
ア
各職場における医療事故の原因及び防止方法並びに医療安全管理体制の改善
方法についての検討及び提言
イ
各職場における医療安全管理に関する意識の向上(各部門における事故防止確
認のための業務開始時のミーティングの実施などの励行等)
ウ
ヒヤリ・ハット体験報告の内容の分析及び報告書の作成
エ
委員会において決定した事故防止及び安全対策に関する事項の各職場への周
知徹底、その他委員会及び医療安全管理室との連絡調整
オ
職員に対するヒヤリ・ハット体験報告の積極的な提出の励行
カ
その他、医療安全管理に関する事項
8
医薬品安全管理責任者の配置
各 病 院 は 、医 薬 品 の 安 全 使 用 の た め に 必 要 と な る 情 報 の 収 集 そ の 他 医 薬 品 の
安 全 確 保 を 目 的 と し た 改 善 の た め の 方 策 を 実 施 さ せ る た め 、医 薬 品 安 全 管 理 責
任者を置く。
(1)医薬品安全管理責任者は、医薬品に関する十分な知識を有する者とする。
( 2 )医 薬 品 安 全 管 理 責 任 者 は 医 薬 品 の 安 全 使 用 に 係 る 業 務 の う ち 、以 下 の 業 務
について主要な役割を担う。
ア
医 薬 品 の 添 付 文 書 の 情 報 の ほ か 、医 薬 品 製 造 販 売 業 者 、行 政 機 関 、学 術 誌
等からの情報の収集・管理
イ
得られた情報で必要なものについての当該情報に係る医薬品を取り扱う
職員への周知
ウ
医薬品の業務手順書に基づき業務が行われているかについての定期的な
確認と記録
エ
その他、医薬品の安全使用に関する事項
164
9
医療機器保守管理責任者の配置
各 病 院 は 、医 療 機 器 の 保 守 点 検 、安 全 使 用 の 確 保 等 の 推 進 に 資 す る た め 、医
療機器保守管理責任者を置く。
( 1 )医 療 機 器 保 守 管 理 責 任 者 は 、医 療 機 器 に 関 す る 十 分 な 知 識 を 有 す る 者 と す
る。
( 2 )医 療 機 器 保 守 管 理 責 任 者 は 、医 療 機 器 の 安 全 使 用 に 係 る 業 務 の う ち 、以 下
の業務について主要な役割を担う。
ア
職員に対する医療機器の安全使用のための研修の実施
イ
医療機器の保守点検に関する計画の策定及び保守点検の実施
ウ
医療機器の添付文書及び取扱い説明書の管理、並びに医療機器の不具合情報や
安全情報等の一元的把握
エ
10
その他、医療機器の保守点検・安全使用に関する事項
患者相談窓口の設置
(1)患者等からの苦情、相談に応じられる体制を確保するために、病院内に患者相
談窓口を常設する。
(2)患者相談窓口の活動の趣旨、設置場所、担当者及びその責任者、対応時間等に
ついて、患者等に明示する。
(3)患者相談窓口の活動に関し、相談に対応する職員、相談後の取扱、相談情報の
秘密保護、管理者への報告等に関する規程を整備する。
(4)相談により、患者や家族等が不利益を受けないよう適切な配慮を行う。
(5)苦情や相談で医療安全に関わるものについては、医療安全管理室に報告し、当
該病院の安全対策の見直し等に活用する。
11
マニュアル等の作成について
各病院は、医療安全管理の推進に資するためマニュアル等を作成する。
(1)各病院は、医療安全管理のための具体的方策、医療事故発生時の具体的対応及
び医療事故の評価と医療安全管理への反映等をまとめたマニュアルを作成し、医
療安全管理上の具体的方策を実施する。なお、病院において医療安全管理規程等
をマニュアルに含めることも可能である。
(2)また、医薬品の採用・購入に関する事項や管理に関する事項、患者に対する与
薬や服薬指導に関する事項等を内容とする「医薬品の安全使用のための業務に関
する手順書」や、医療機器の保守点検に関する情報収集や購入時期、使用状況、
保守点検・修理の把握等を内容とする「医療機器の保守点検に関する計画」を策
定し、当該手順等に基づく業務を実施する。
165
第5
各病院における医療安全管理のための具体的方策の推進
各病院における医療安全管理のための具体的方策は以下のとおりとする。
1
医療事故防止のための要点と対策の作成
安全な医療を行うために、人工呼吸器、輸血、注射等についての具体的な注意事
項を定める医療事故防止の要点と対策について、各部門の医療安全推進担当者を中
心に医療安全管理室で作成し、委員会で承認を得る。また、医療事故防止の要点と
対策は、自病院又は他病院のヒヤリ・ハット事例の評価分析や医療事故報告、原因
分析等に基づいて、随時見直しを図ると共に関係職員に周知徹底を図り、委員会で
承認を得て改定を行うものとする。(参考例は別添4のとおり。)
2
ヒヤリ・ハット事例の報告及び評価分析
(1)報告
ア
院長は、医療安全管理に資するよう、ヒヤリ・ハット事例の報告を促進するた
めの体制を整備する。
イ
ヒヤリ・ハット事例については、当該事例を体験した医療従事者が、その概要
をヒヤリ・ハット体験報告(参考例は別添5のとおり。)に記載し、翌日までに、
医療安全推進担当者に報告する。
ウ
医療安全推進担当者は、ヒヤリ・ハット体験報告等から当該部門及び関係する
部門に潜むシステム自体のエラー発生要因を把握し、リスクの重大性、リスクの
予測の可否及びシステム改善の必要性等必要事項を記載して、医療安全管理室に
提出する。
エ
ヒヤリ・ハット体験報告を提出した者に対し、当該報告を提出したことを理由
に不利益処分を行ってはならない。
オ
ヒヤリ・ハット体験報告は、医療安全管理室において、分析・検討が終了する
まで保管する。
(2)ヒヤリ・ハット事例について効果的な分析を行い、医療安全管理に資すること
ができるよう、必要に応じて、当該事例の原因、種類及び内容等をコード化した
分析表(以下「ヒヤリ・ハット・医療事故情報分析表」という。 参考例は別添
6のとおり。)を活用し、評価分析を行う。
(3)ヒヤリ・ハット事例集の作成
各病院においては、ヒヤリ・ハット事例を評価分析し、医療安全管理に資する
ことができるよう、事例集を作成する。(参考例は別添7のとおり。)
なお、事例集については、ヒヤリ・ハット体験報告に基づき、定期的に事例の
追加記載を行い、関係職員への周知を図る。
3
医療安全対策ネットワーク整備事業への協力
医療現場におけるヒヤリ・ハット事例等を全国の医療機関から一元的に収集し、
この情報を基に、ガイドラインの策定、製品の基準化、関係団体への製品の改良要
166
請等を行う医療安全対策ネットワーク事業に対し、事例の報告を行う。(別添8)
4
医療事故情報収集等事業に係る報告
医療法施行規則第9条の23第1項第2号に示されている事故等事案に該当す
る事例については、日本医療機能評価機構に報告する。なお、報告にあたっては日
本医療機能評価機構で示す報告様式・記載要領等による。(別添9)
5
医薬品・医療用具等安全性情報報告制度に関する報告
医薬品又は医療用具の使用による副作用、感染症又は不具合が発生(医療用具の
場合は健康被害が発生するおそれのある場合を含む)した場合、保健衛生上の危害
の発生又は拡大を防止する観点から報告の必要があると判断した情報(症例)は、
別添の様式により報告する。(医薬品又は医療用具との因果関係が必ずしも明確で
ない場合であっても報告の対象となりうる)(別添10)
6
医療安全管理のための職員研修
(1)医療安全管理のための研修の実施
各病院は、個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための技能や
チームの一員としての意識の向上等を図るため、医療に係る安全管理の基本的考え
方及び具体的方策について、職員に対し以下のとおり研修を行う。
ア
医療機関全体に共通する安全管理に関する内容とする。
イ
医療に関わる場所において業務に従事する者を対象とする。
ウ
年2回程度定期的に開催、それ以外にも必要に応じて開催する。
エ
実施内容について記録を行う。
(2)院内感染対策のための研修の実施
各 職 員 の 院 内 感 染 に 対 す る 意 識 を 高 め 、業 務 を 遂 行 す る 上 で の 技 能 や チ ー ム
の一員としての意識の向上等を図るための研修を実施する。
ア
院内感染対策に関する基本的考え方及び具体的方策に関する内容とする。
イ
各病院の実情に則した内容で、職種横断的な参加の下行う。
ウ
年2回程度定期的に開催、それ以外にも必要に応じて開催する。
エ
実施内容について記録を行う。
(3)医薬品及び医療機器の安全使用のための研修の実施
他 の 医 療 安 全 に 係 る 研 修 と 併 せ て 行 う 等 の 方 法 に よ り 、医 薬 品 並 び に 医 療 機
器の安全使用に関する研修を行う。
167
第6
医療事故発生時の具体的な対応
各病院の医療事故発生時における医療事故の報告体制、患者・家族への対応及び
警察への届出の具体的な対応は、以下のとおりとする。
1
医療事故の報告
(1)病院内における報告の手順と対応
ア
医療事故が発生した場合は、次のとおり直ちに上司に報告する。
①
医師(歯科医師) → 医長→ 診療部長 → 副院長
②
薬剤師 → 主任薬剤師 → 薬剤部長又は薬剤科長 → 副院長
③
看護師 → 看護師長 → 看護部長又は総看護師長 → 副院長
④
医療技術職員(①∼③に掲げる者を除く) → 技師長 → 副院長
⑤
事務職員 → 係長 → 課長 → 事務部長又は事務長 → 副院長
イ
副院長は報告を受けた事項について、委員会に報告するとともに、事故の重大
性等を勘案して、速やかに院長に対して報告する必要があると認めた事案は、そ
の都度院長に報告し、それ以外の事案については適宜院長に報告する。
ウ
患者の生死に関わる医療事故等、特に緊急的な対応が必要な場合において、医
師、薬剤師、看護師等は、それぞれ、医長、主任薬剤師、看護師長等にただちに
連絡が出来ない場合は、直接、診療部長又は副院長、薬剤部長又は薬剤科長、看
護部長等に報告する。
(2)病院内における報告の方法
報告は、文書(「医療事故報告書」。参考例は別添11の1及び別添11の2。)
により行う。
ただし、緊急を要する場合は、直ちに口頭で報告し、その後文書による報告を
速やかに行う。
なお、医療事故報告書の記載は、①事故発生の直接の原因となった当事者が明
確な場合には、当該本人、②その他の者が事故を発見した場合には、発見者とそ
の職場の長が行う。
(3)国立病院機構本部及び所管のブロック事務所への報告
ア
各病院は、本項イに規定する医療事故が発生した場合、医療事故報告書(様式
は別添12のとおり。)を、本項「ウ」の報告時期等のルールに基づき、国立病
院機構本部及び所管のブロック事務所に報告する。
イ
報告を要する医療事故の範囲(第5−4による報告範囲と同一)
①
誤った医療又は管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は管理に
起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しな
かった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事例。
②
誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管理に起
因して、患者死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかっ
た、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事例(行った
医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該事例の発生を予期しなかっ
168
たものに限る)。
③
前2号に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の
防止に資する事例。
ウ
報告時期等のルール
①
委員会等での検証作業終了後の報告(概ね2週間以内に行う必須報告)
発生した医療事故に関し委員会等で原因分析、再発防止策検討等の検証作業を
行った上で、その内容を踏まえた医療事故報告書(上記(3)−ア)を作成し、
所管のブロック事務所を通じて国立病院機構本部に報告する。
②
危機管理の観点からの報告(院長の判断による報告)
危機管理の観点から国立病院機構本部・ブロック事務所と情報を共有している
ことが必要と判断される医療事故が発生した場合は、事故発生後速やかに、その
段階で把握できている事故内容、患者状況等の客観的事実や、必要に応じ対外的
対応方針等を、所管のブロック事務所を通じて報告する。また、委員会等での検
証作業終了後には、追加的に原因分析、再発防止策等の内容を含む医療事故報告
を行う。
*
③
当該報告を行うか否かは、事故の内容等を踏まえ各病院長が判断する。
「①」の報告を行った後、例えば拡大医療安全管理委員会が開催されるなど、
追加的に検証作業等が行われた場合は、追加的報告を行う。
(4)医療事故報告書の保管
医療事故報告書については、独立行政法人国立病院機構文書管理規程(平成1
6年規程第10号)第34条第1項第5号に該当する法人文書として、医療安全
管理室において保管する。
2
患者・家族への対応
(1)患者に対しては誠心誠意治療に専念するとともに、患者及び家族に対して
は、誠意をもって事故の説明等を行う。
(2)患者及び家族に対する事故の説明等は、原則として、病院の幹部職員が対
応することとし、その際、病状等の詳細な説明ができる担当医師が同席する。
なお、状況に応じ、医療安全管理者、部門の管理責任者等も同席して対応
する。
3
事実経過の記録
(1)医師、看護師等は、患者の状況、処置の方法、患者及び家族への説明内容等を、
診療録、看護記録等に詳細に記載する。
(2)記録に当たっては、具体的に以下の事項に留意する。
ア
初期対応が終了次第、速やかに記載すること。
イ
事故の種類、患者の状況に応じ、出来る限り経時的に記載を行うこと
ウ
事実を客観的かつ正確に記載すること(想像や憶測に基づく記載を行わない)。
169
4
警察への届出
(1)医療過誤によって死亡又は障害が発生したことが明白な場合には、国立病院機
構の各院長は、速やかに所轄警察署に届出(以下「届出」という。)を行う。
(2)死亡又は障害が発生し、医療過誤の疑いがある場合には、届出について本部と
の協議も考慮して対応する。
(3)届出は、別添13「警察への届出に当たっての手順」に基づき行う。
(4)各院長は、届出の判断が困難な場合には、ブロック事務所の指示を受ける。ブ
ロック事務所は、必要に応じ顧問弁護士や国立病院機構本部とも協議した上で、
院長に指示を行なう。
5
重大な医療事故が発生した場合の対外的公表
各病院は、重大な医療事故等が発生した場合には、別添14の「国立病院機構医
療事故公表指針」に基づき対応する。
第7
1
医療事故の評価と医療安全対策への反映
院内での医療事故の評価検討
(1)各病院は、医療事故が発生した場合、委員会において、事故の原因分析など、
以下の事項について評価検討を加え、その後の医療安全対策への反映を図るもの
とする。
ア
医療事故報告に基づく事例の原因分析
イ
発生した事故について、組織としての責任体制の検証
ウ
これまでに講じてきた医療安全対策の効果
エ
同様の医療事故事例を含めた検討
オ
医療機器メーカーへの機器改善要求
カ
その他、医療安全対策の推進に関する事項
(2)医療事故の効果的な分析を行い、事故の再発防止に資することができるよう、
必要に応じて、根本的原因分析など、より詳細な評価分析を行う。
(3)医療事故の原因分析等については、委員会で十分に検討した結果を医療事故報
告書に記載する。
(4)医療事故情報収集等事業により日本医療機能評価機構から分析・発信された医
療安全情報を活用し、医療安全対策への反映を図る。
2
拡大医療安全管理委員会の開催
(1)院内の安全管理委員会で、発生した医療事故の過失の有無、原因等について十
分な結論づけができない場合、院長は、拡大医療安全管理委員会を開催する。
(2)拡大医療安全管理委員会の委員構成や運用等は、別添15のとおりとする。
3
機構以外の有識者を交えた事故調査委員会
発生した医療事故に関して、国立病院機構内部の専門委員の状況などから拡大医
170
療安全管理委員会においても十分な審議が行えないと判断される場合等は、拡大医
療安全管理委員会に代えて、機構以外の有識者を交えた事故調査委員会の設置を考
慮する。
4
国立病院機構における医療事故報告書の作成
国立病院機構本部は、各病院から報告された医療事故報告を集計・分析し、
一 定 期 間 毎 に 国 立 病 院 機 構 に お け る 包 括 的 な 医 療 事 故 報 告 書 を 作 成 、各 病 院 に
フ ィ ー ド バ ッ ク す る と と も に 、ホ ー ム ペ ー ジ に 掲 載 す る な ど に よ り こ れ を 公 表
する。
第8
中央医療安全管理委員会の開催
( 1 )国 立 病 院 機 構 の 病 院 ネ ッ ト ワ ー ク を 活 用 し 、機 構 内 部 で の 医 療 事 故 発 生 の
全 体 状 況 等 を 踏 ま え な が ら 、国 立 病 院 機 構 に お け る 医 療 安 全 管 理 対 策 の 基 本
的 方 向 性 等 に つ い て の 審 議 を 行 う た め 、国 立 病 院 機 構 本 部 に 中 央 医 療 安 全 管
理委員会を設置する。
( 2 )中 央 医 療 安 全 管 理 委 員 会 は 、院 長 、看 護 部 長 、医 療 安 全 管 理 の 実 務 担 当 者
で あ る 副 院 長 、医 療 安 全 管 理 者 、薬 剤 師 や 事 務 部 門 担 当 者 等 の 多 職 種 で 構 成
されるものとする。
171
172
中・高度
〔一過性〕
高 度
〔永続的〕
行った医療又は管理により、本来必要でなかった治療や処置が必要
となった場合
行った医療又は管理により、生活に影響する重大な永続的障害が発
生した可能性がある場合
行った医療又は管理が死因となった場合
レベル3b
レベル4
レベル5
※影響レベル3aまでが「ヒヤリ・ハット事例(=インシデント事例)」、レベル3b以上が「医療事故事例」
死 亡
軽 度
〔一過性〕
行った医療又は管理により、本来必要でなかった簡単な治療や処置
(消毒、湿布、鎮痛剤投与等の軽微なもの)が必要となった場合
な し
行った医療又は管理により、患者に影響を与えた、又は何らかの影響
を与えた可能性がある場合
レベル2
レベル3a
な し
誤った行為を患者に実施したが、結果として患者に影響を及ぼすに至
らなかった場合
レベル1
障害の程度及び
〔継続性〕
な し
容
誤った行為が発生したが、患者には実施されなかった場合(仮に実施
されたとすれば、何らかの被害が予想された)
内
(別添1)
レベル0
影響レベル
《患者影響レベル指標》
173
行った医療又は管理により、本来必
要でなかった簡単な治療や処置(消
毒、湿布、鎮痛剤投与等軽微なも
の)が必要となった場合
・介助中の患者の痛みの訴えに明かな骨折はなかったが熱感・腫脹があり患部を冷やす等の処置を行っ
た事案
・医療機器の誤操作等による軽度の損傷・熱傷
・気管内吸引処置時の消毒薬の間違いによる患者の不快感
行った医療又は管理が死因となった ・人工呼吸器の装着ミス、チューブのゆるみ等による患者の死亡
場合
・体位交換時の気管内挿管カニューレ逸脱による死亡
・抗ガン剤の過剰投与による副作用を原因とする死亡
・ニフレック投与による腸閉塞発生など薬の副作用を原因とする死亡
・手術中の異常出血による多臓器不全等による死亡
・心臓カテーテル施行時の冠動脈破裂・心タンポナーデによる死亡
・手術後の肺塞栓による死亡
・リスクの低い妊産婦の死亡
・その他、手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期された合併症による死亡で、警鐘的意義を有する
と認める事例
・手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症による死亡
・手術後30日以内の死亡
レベル5
※ 本表は、それぞれのカテゴリーにおけるいくつかの例を示したものである。 行った医療又は管理により、生活に ・カテーテール穿刺による仮性動脈瘤形成を原因とする下肢切断
影響する重大な永続的障害が発生し ・手術の際の異物遺残により重大な永続的障害が発生した事例
・手術中の神経損傷を原因とする回復の見込めない筋力の低下
た可能性がある場合
・人工呼吸器の装着ミス、チューブのゆるみ等による低酸素症脳障害や意識障害
・左乳房切除術後の病理組織検査による良性腫瘍であることの判明
・重要な徴候等の見落としを原因とする下肢ガス壊疽による下肢切断
・骨盤内リンパ節郭清術中の左腎動脈損傷による左腎臓摘出
・心臓ペースメーカーのリード感染から両側眼球摘出に至った事例
・その他、手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期された合併症により、永続的障害が発生した可能
性がある事例で、警鐘的意義を有すると認める事例
・手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症により、永続的障害が発生した可
能性がある事例
レベル4
レベル3・b 行った医療又は管理により、本来必 ・重心患者等の介助中に発生した骨折(原因が明確でないものを含む)
(中・高度) 要でなかった治療や処置が必要と ・尿道バルーンカテーテル交換時、心臓カテーテル検査造影時、内視鏡使用時、胃ろうチューブ交換時等の穿孔
・胃ろうチューブの腹腔内留置による腹膜炎の発症
なった場合
・IVHカテーテルの誤挿入による気胸の発生
・手術の際のガーゼ異残等異物遺残(除去により永続的な障害は生じなかった事例)
・手術中における手術目的以外の臓器損傷
・尿管鏡生検時の尿管損傷
・点滴のテープ圧迫固定を原因とする皮ふ組織壊死
・薬剤に係る過剰投与、誤薬、調剤ミス等による副作用で重篤な事例
・経管栄養チューブの気管への誤挿管による呼吸状態悪化
・手術・麻酔等における、患者や部位の取り違え
・人工関節のインプラトの左右間違い
・異型輸血の実施
・手術実施時に使用した骨蝋の脊柱管内浸入による脊髄障害
・手術中の体位固定・圧迫による腓骨神経麻痺(足骨のしびれ等)
・入院中に発生した重度な(筋膜[Ⅲ度]、筋層[Ⅳ度]に届く)褥創
・人工妊娠中絶失敗による妊娠継続 ・脳室ドレーンの自己抜去による緊急手術
・胎盤弁出時の子宮内はんによる大量出血
・FOY、抗ガン剤の血管外漏出による皮膚壊死 ・精神科患者の食事中の窒息
・その他、手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期された合併症による重篤な事例で、警鐘的意義を
有すると認める事例
・手術・検査・処置・麻酔等にともなう予期されていなかった合併症で重篤な事例
レベル3・a
(軽度)
行った医療又は管理により、患者に ・輸液ポンプの点検ミスによる誤動作を原因とする高カロリー輸液の急速投与や薬の過剰投与により患 ・転倒・転落(出血はなく、検査でも顕著な所見はなく追加的処置等は必要なかった事例)
・廊下の段差でつまずいたことによる転倒(顕著な所見等はなかった事例)
影響を与えた、又は何らかの影響を 者への影響があり、又は影響を与えた可能性がある事例
・検査・処置・リハビリにおける患者や部位の取り違えにより患者への影響があり、又は影響を与えた ・患者の問題行動(自殺企図、暴力、離院等)
与えた可能性がある場合
・留置針による患者あるいは訪問者の針刺し事故
可能性がある事例
レベル2
・転倒・転落による頭蓋骨骨折や呼吸状態の悪化等による死亡
・入浴中の溺死
・誤嚥、又はその疑いによる窒息を原因とする死亡
・熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為を原因とする死亡
・入院中の自傷行為による死亡
・患者の自殺
・転倒・転落により永続的な人工呼吸器の装着が必要となった事例
・転倒・転落による骨折が原因で寝たきりとなった事例
・酸素吸入中の患者がベッドからの転落したことによる意識喪失・人工呼吸器装着
・バルーンカテーテル使用患者の転倒によるカテーテル閉塞を原因とする膀胱ろう造設
・麻酔管理ミスによる低酸素脳症を原因とする意識障害
・誤嚥、又はその疑いによる窒息を原因とした永続的な意識障害や植物状態
・プレールームでのマットによる窒息を原因とする永続的な人工呼吸器装着
・留置針による針刺し事故で肝炎等永続的な有害事象が発生した可能性がある事例
・帝王切開による新生児重症仮死状態での出生により障害が残る可能性がある事例
・熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為を原因とした有害事象で永続的障害が発生した可能
性がある事例
・自殺企図により患者が病棟等から飛び降りたことで重度の障害(永続的な意識レベルの低下等)が発
生した事例
・転倒・転落による骨折、急性硬膜下血腫の発生、呼吸状態悪化による一時的な人工呼吸器装着
・プレールームでのマットによる窒息(一時的な人工呼吸器の装着)
・熟練度の低い者が適切な指導なく行った医療行為を原因とした有害事象で重篤な事例
・絶縁被覆の剥がれた止血摂子の使用による熱傷
・食品由来のアレルギー予防のため禁止食品としてのオーダーが指示されていたが、誤配膳によりアナ
フィラキシーショックが発生した事例
・精神科患者の病棟等からの飛び降りによる骨折
・転倒・転落による軽度の外傷や挫傷
・介助中に発生した軽度の外傷等(配膳時トレーの顔面への接触等)
・説明不足などにより、患者が危険区域に浸入し軽度の外傷や挫傷を負った事例
・患者間の暴力による軽度の外傷
−
−
管 理 上 の 問 題 に 係 る 事 例
誤った行為を患者に実施したが、結 ・薬を過剰投与したが軽微な過剰で患者への影響が考えられない事例、あるいはそもそも患者への影響
果として患者に被害を及ぼすに至ら が考えられない種類の薬剤の過剰投与であった事例
・人工呼吸器加湿器への多酵素洗浄剤の未希釈での使用(患者への影響がなかった事例)
なかった場合
・インフルエンザワクチンの重複摂取
医 療 行 為 に 係 る 事 例
レベル1
内 容
誤った行為が発生したが、患者には ・誤った薬を手にしたが、患者に実施する前に気付き実施されなかった事例
実施されなかった場合(仮に実施さ ・手術・検査・処置・リハビリ・麻酔等時に患者や部位を取り違えそうになったが、実施前に気付き実
れたとすれば、何らかの被害が予想 施されなかった事例
された)
〔別添2〕
レベル0
影響レベル
患者影響レベルについて(事例毎整理) ※ 影響レベル3・aまでを「ヒヤリ・ハット事例」、レベル3・b以上を医療事故」とする。
(別添3)
医療安全管理規程(例)
(目的)
第1条
この規程は、(病院名)において必要な事項を定め、適切な医療安全管
理を推進し、安全な医療の提供に資することを目的とする。
(医療安全管理のための基本的考え方)
第2条
医療安全は、医療の質に関わる重要な課題である。また、安全な医療の
提供は医療の基本となるものであり、(病院名)及び職員個人が、医療安全の必
要性・重要性を病院及び自分自身の課題と認識し、医療安全管理体制の確立を図
り安全な医療の遂行を徹底することがもっとも重要である。このため、(病院名)
は、本指針を活用して、病院ごとに医療安全管理委員会及び医療安全管理室を設
置して医療安全管理体制を確立するとともに、院内の関係者の協議のもとに、独
自の医療安全管理規程及び医療安全管理のためのマニュアル等(以下「マニュア
ル等」という。)を作成する。また、ヒヤリ・ハット事例及び医療事故の評価分
析によりマニュアル等の定期的な見直し等を行い、医療安全管理の強化充実を図
る必要がある。
( 医療安全管理規程の患者等に対する閲覧について)
第3条
医療安全管理規程については、患者及び家族等に対して、その閲覧に供
することを原則とし、待合室等に備え付けるなどして、各患者等が容易に閲覧で
きるように配慮する。
(医療安全管理委員会の設置)
第4条
第1条の目的を達成するため、当院に医療安全管理委員会(以下「委員
会」という。)を設置する。
2
委員会は、副院長、診療部長又は医長、薬剤部長又は薬剤科長、看護部長又
は総看護師長、事務部長又は事務長、医療安全管理者等をもって構成する。
3
委員会の委員長は、副院長とする。
4
委員会の副委員長は、医療安全管理者とする。
5
委員長に事故があるときは、診療部長又は医長がその職務を代行する。
6
委員会の所掌事務は、以下のとおりとする。
一
医療安全管理の検討及び研究に関すること
二
医療事故の分析及び再発防止策の検討並びに委員会によって立案され
た防止対策及び改善策の実施状況の調査及び見直しに関すること
三
医療安全管理のために行う職員に対する指示に関すること
174
四
医療安全管理のために行う院長等に対する提言に関すること
五
医療安全管理のための啓発、教育、広報及び出版に関すること
六
医療訴訟に関すること
七
その他医療安全管理に関すること
7
委員会は、所掌事務に係る調査、審議等の任務を行う。
8
委員会の検討結果については、定期的に院長に報告するとともに、医療安全
推進担当者を通じて、各職場に周知する。
9
委員会の開催は、概ね毎月1回とする。ただし、必要に応じ、臨時の委員会
を開催できるものとする。
10
委員会の記録その他の庶務は、医療安全管理室が行う。
11
重大な問題が発生した場合には、委員会において速やかに発生の原因を分析
し、改善策の立案及び実施並びに職員への周知を図る。
(院内感染対策のための指針の策定)
第5条
次に掲げる事項を内容とする「院内感染対策のための指針」を策定
する。
一
院内感染対策に関する基本的考え方
二
院 内 感 染 対 策 の た め の 委 員 会( 以 下 、「 院 内 感 染 対 策 委 員 会 」と い う )、
及びその他の院内感染対策に係る院内の組織に関する基本的事項
三
院内感染対策のために職員に対して行われる研修に関する基本方針
四
感染症の発生状況の報告に関する基本方針
五
院内感染発生時の対応に関する基本方針
六
患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
七
その他院内における院内感染対策の推進のために必要な基本方針
2
院 内 感 染 対 策 の た め の 指 針 は 、院 内 感 染 対 策 委 員 会 の 議 を 経 て 策 定 及 び
変更するものとする。
(医療安全管理室の設置)
第6条
委員会で決定された方針に基づき、組織横断的に院内の安全管理を担う
ため、院内に医療安全管理室を設置する。
2
医療安全管理室は、医療安全管理者、医療安全推進担当者及びその他必要な
職員で構成され、医療安全管理室長は、副院長とする。
3
医療安全管理室の所掌事務は以下のとおりとする。
一
委員会で用いられる資料及び議事録の作成及び保存並びにその他委員会
の庶務に関すること
二
医療安全に関する日常活動に関すること
①
医療安全に関する現場の情報収集及び実態調査(定期的な現場の巡回
・点検、マニュアルの遵守状況の点検)
175
②
マニュアルの作成及び点検並びに見直しの提言等
③
ヒヤリ・ハット体験報告(ヒヤリ・ハット事例を体験した医療従事者
が、その概要を記載した文書をいう。以下同じ。)の収集、保管、分析、
分析結果などの現場へのフィードバックと集計結果の管理、具体的な改善
策の提案・推進とその評価
④
医療安全に関する最新情報の把握と職員への周知(他病院における事故
事例の把握など)
⑤
医療安全に関する職員への啓発、広報(月間行事の実施など)
⑥
医療安全に関する教育研修の企画・運営(具体的な内容については、第
19条を参照)
⑦
医療安全対策ネットワーク整備事業に関する報告
⑧
医療安全管理に係る連絡調整
三
医療事故発生時の指示、指導等に関すること
①
診療録や看護記録等の記載、医療事故報告書の作成等について、職場責
任者に対する必要な指示、指導
②
患者や家族への説明など事故発生時の対応状況についての確認と必要
な指導(患者及びその家族、警察等の行政機関並びに報道機関等への対応
は、院長、副院長のほかそれぞれの部門の管理責任者が主として行う。)
③
院長又は副院長の指示を受け、医療事故の原因分析等のための臨時医療
安全管理委員会を招集
④
事故等の原因究明が適切に実施されていることの確認と必要な指導
⑤
医療事故報告書の保管
四
その他医療安全対策の推進に関すること
五
医療安全管理室の中に作業部会を設置し、医療安全管理室の業務の一部を
行うことができる。
(医療安全管理者の配置)
第7条
医療安全管理の推進のため、医療安全管理室に医療安全管理者を置く。
1
医療安全管理者は、医療安全に関する十分な知識を有する者とする。
2
医療安全管理者は、医療安全管理室長の指示を受け、各部門の医療安全推進
担当者と連携・協同の上、医療安全管理室の業務を行う。
3
医療安全管理者は医療安全管理室の業務のうち、以下の業務について主要な
役割を担う。
一
医療安全管理室の業務に関する企画立案及び評価に関すること。
二
病院における職員の安全管理に関する意識の向上及び指導に関すること。
三
医療事故発生の報告又は連絡を受け、直ちに医療事故の状況把握に努める
こと。
176
(医療安全推進担当者の配置)
第8条
各部門の医療安全管理の推進に資するため、医療安全推進担当者を置
く。
1
医療安全推進担当者は、各診療科及び各看護単位にそれぞれ1名を、また、
薬剤科(薬剤部を含む。)、研究検査科、事務部等各部門にそれぞれ1名を置
くものとし、院長が指名する。
2
医療安全推進担当者は、医療安全管理室の指示により以下の業務を行う。
一
各職場における医療事故の原因及び防止方法並びに医療安全管理体制の
改善方法についての検討及び提言
二
各職場における医療安全管理に関する意識の向上(各部門における事故防
止確認のための業務開始時のミーティングの実施などの励行等)
三
ヒヤリ・ハット体験報告の内容の分析及び報告書の作成
四
委員会において決定した事故防止及び安全対策に関する事項の各職場へ
の周知徹底、その他委員会及び医療安全管理室との連絡調整
五
職員に対するヒヤリ・ハット体験報告の積極的な提出の励行
六
その他医療安全管理に関する必要事項
(医薬品安全管理責任者の配置)
第9条
医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集その他医薬品の
安 全 確 保 を 目 的 と し た 改 善 の た め の 方 策 を 実 施 さ せ る た め 、医 薬 品 安 全 管 理
責任者を置く。
(医療機器保守管理責任者の配置)
第10条
医療機器の保守点検、安全使用の確保等の推進に資するため、医
療機器保守管理責任者を置く。
(職員の責務)
第11条
職員は、業務の遂行に当たっては、常日頃から患者への医療、看護等
の実施、医療機器の取扱いなどに当たって安全な医療を行うよう細心の注意を払
わなければならない。
(患者相談窓口の設置)
第12条
患者等からの苦情、相談に応じられる体制を確保するために、院内に
患者相談窓口を常設する。
2
患者相談窓口の活動の趣旨、設置場所、担当者及びその責任者、対応時間等
について、患者等に明示する。
3
患者相談窓口の活動に関し、相談に対応する職員、相談後の取扱、相談情報
の秘密保護、管理者への報告等に関する規程を整備する。
177
4
相談により、患者や家族等が不利益を受けないよう適切な配慮を行う。
5
苦情や相談で医療安全に関わるものについては、医療安全管理室に報告し当
該病院の安全対策の見直し等に活用する。
(ヒヤリ・ハット事例の報告及び評価分析)
第13条
一
報告
院長は、医療安全管理に資するよう、ヒヤリ・ハット事例の報告を促進す
るための体制を整備する。
二
ヒヤリ・ハット事例については、当該事例を体験した医療従事者が、そ
の概要ヒヤリ・ハット体験報告(別添5)に記載し、翌日までに、医療安
全推進担当者に報告する。
三
医療安全推進担当者は、ヒヤリ・ハット体験報告等から当該部門及び関
係する部門に潜むシステム自体のエラー発生要因を把握し、リスクの重大
性、リスクの予測の可否及びシステム改善の必要性等必要事項を記載して、
医療安全管理室に提出する。
四
ヒヤリ・ハット体験報告を提出した者に対し、当該報告を提出したこと
を理由に不利益処分を行ってはならない。
五
ヒヤリ・ハット体験報告は、医療安全管理室において、分析・検討が終了
するまで保管する。
2
評価分析
ヒヤリ・ハット事例について効果的な分析を行い、医療安全管理に資する
ことができるよう、必要に応じて、当該事例の原因、種類及び内容等をコ
ード化した分析表(別添6。以下「ヒヤリハット・医療事故情報分析表」
という。)を活用し、評価分析を行う。
3
ヒヤリ・ハット事例集の作成
ヒヤリ・ハット事例を評価分析し、医療安全管理を資することができるよう、
事例集を作成する。
なお、事例集については、ヒヤリ・ハット体験報告に基づき、定期的に事例
の追加記載を行い、関係職員への周知を図る。
(医療事故の報告)
第14条
一
院内における報告の手順と対応
医療事故が発生した場合は、次のとおり直ちに上司に報告する。
①
医師(歯科医師) → 医長→ 診療部長 → 副院長
②
薬剤師 → 主任薬剤師 → 薬剤部長又は薬剤科長 → 副院長
③
看護師 → 看護師長 → 看護部長又は総看護師長 → 副院長
④
医療技術職員(①∼③に掲げる者を除く) → 技師長 → 副院長
⑤
事務職員 → 係長 → 課長 → 事務部長又は事務長 → 副院長
178
二
副院長は報告を受けた事項について、委員会に報告するとともに、事故
の重大性等を勘案して、速やかに院長に対して報告する必要があると認め
た事案は、その都度院長に報告し、それ以外の事案については適宜院長に
報告する。
三
患者の生死に関わる医療事故等、特に緊急的な対応が必要な場合におい
ては、医師、薬剤師、看護師等は、それぞれ、医長、主任薬剤師、看護師
長
等にただちに連絡が出来ない場合は、直接、診療部長又は副院長、薬剤
部
長又は薬剤科長、看護部長等に報告する。
2
院内における報告の方法
報告は、文書(「医療事故報告書」。別添11の1及び別添11の2。)に
より行う。
ただし、緊急を要する場合は、直ちに口頭で報告し、その後文書による報告
を速やかに行う。
なお、医療事故報告書の記載は、①事故発生の直接の原因となった当事者が
明確な場合には、当該本人、②その他の者が事故を発見した場合には、発見者
とその職場の長が行う。
3
国立病院機構本部及び所管のブロック事務所への報告
一
次項に規定する医療事故が発生した場合、医療事故報告書(様式は別添1
2のとおり。)を、「三」の報告時期等のルールに基づき、国立病院機構本
部及び所管のブロック事務所に報告する。
二
報告を要する医療事故の範囲
①
誤った医療又は管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は
管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例
又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治
療を要した事例。
②
誤った医療又は管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管
理に起因して、患者死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は
予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を
要した事例(行った医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該
事例の発生を予期しなかったものに限る)。
③
前2号に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び
再発の防止に資する事例。
三
報告時期等のルール
①
委員会等での検証作業終了後の報告(概ね2週間以内に行う必須報告)
発生した医療事故に関し委員会等で原因分析、再発防止策検討等の検証
作業を行った上で、その内容を踏まえた医療事故報告書(上記(3)-ア)を作
成し、所管のブロック事務所を通じて国立病院機構本部に報告する。
②
危機管理の観点からの報告(院長の判断による報告)
179
危機管理の観点から国立病院機構本部・ブロック事務所と情報を共有し
ていることが必要と判断される医療事故が発生した場合は、事故発生後速
やかに、その段階で把握できている事故内容、患者状況等の客観的事実や、
必要に応じ対外的対応方針等を、所管のブロック事務所を通じて報告す
る。また、委員会等での検証作業終了後には、追加的に原因分析、再発防
止策等の内容を含む医療事故報告を行う。
③
「①」の報告を行った後、例えば拡大医療安全管理委員会が開催される
など、追加的に検証作業等が行われた場合は、追加的報告を行う。
4
医療事故報告書の保管
医療事故報告書については、独立行政法人国立病院機構文書管理規定(平成
16年規程第10号)第34条第1項第5号に該当する法人文書として、医療
安全管理室において保管する。
(発生した事例等の患者影響レベルによる整理)
第15条
発生したヒヤリ・ハット事例や医療事故が患者にどの程度の影響
が有ったかを、別添1「患者影響レベルの指標」により整理する。
(患者・家族への対応)
第16条
患者に対しては誠心誠意治療に専念するとともに、患者及び家族に対
しては、誠意をもって事故の説明等を行う。
2
患者及び家族に対する事故の説明等は、幹部職員が対応することとし、そ
の際、病状等の詳細な説明ができる担当医師が同席する。なお、状況に応じ、
医療安全管理者、部門の管理責任者等も同席して対応する。
(事実経過の記録)
第17条
医師、看護師等は、患者の状況、処置の方法、患者及び家族への説 明
内容等を、診療録、看護記録等に詳細に記載する。
2
記録に当たっては、具体的に以下の事項に留意する。
一
初期対応が終了次第、速やかに記載すること。
二
事故の種類、患者の状況に応じ、出来る限り経時的に記載を行うこと
三
事実を客観的かつ正確に記載すること(想像や憶測に基づく記載を行わな
い)。
(医療安全管理のための職員研修)
第18条
個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための技能や
チームの一員としての意識の向上等を図るため医療に係る安全管理のための基
本的考え方及び具体的方策について、職員に対し以下のとおり研修を行う。
一
医療機関全体に共通する安全管理に関する内容とする。
180
二
医療に関わる場所において業務に従事するものとする。
三
年2回程度定期的に開催、それ以外にも必要に応じて開催する。
四
実施内容について記録を行う。
(医療安全対策ネットワーク整備事業への協力)
第19条
医療現場におけるヒヤリ・ハット事例等を全国の医療機関から一元的
に収集し、この情報を基に、ガイドラインの策定、製品の基準化、関係団体への
製品の改良要請等を行う医療安全対策ネットワーク事業に対し、事例の報告を行
う。(別添8)
(医療機能評価機構への医療事故事例の報告)
第20条
医療事故のうち、医療法施行規則に示されている、医療に係る事故の
範囲に該当する事例については、医療機能評価機構に報告する。本制度は医政局
において整備されている。(別添9)
(医薬品・医療用具等安全性情報報告制度に関する報告)
第21条
医薬品又は医療用具の使用による副作用、感染症又は不具合が発生
(医療用具の場合は健康被害が発生するおそれのある場合を含む)した場合、保
健衛生上の危害の発生又は拡大を防止する観点から報告の必要があると判断し
た情報(症例)は、別添の様式により報告する。(医薬品又は医療用具との因果
関係が必ずしも明確でない場合であっても報告の対象となりうる)(別添10)
( 警察への届出)
第22条
医療過誤によって死亡又は障害が発生したことが明白な場合には、速
やかに所轄警察署に届出(以下「届出」という。)を行う。ま た 、死亡又は障害
が発生し、医療過誤の疑いがある場合についても、届出について本部との協議も
考慮して対応する。
2
届出は、別添13「警察への届出に当たっての手順」に基づき行う。
(重大な医療事故が発生した場合の対外的公表)
第23条
重大な医療事故等が発生した場合には、別添14の「国立病院機構医
療事故公表指針」に基づき対応する。
(拡大医療安全管理委員会の開催)
第24条
院内の安全管理委員会で、発生した医療事故の過失の有無、原因等に
ついて十分な結論づけができない場合、院長は、拡大医療安全管理委員会を開催
する。
2
拡大医療安全管理委員会の委員構成や運用は、別添15のとおりとする。
181
別添13
警察への届出に当たっての手順
1.届出前に、緊急の医療安全管理委員会等を開催し、事故の事実関係等の調査・確
認を行う。
2.原則として届出前に、診療録、看護記録等の点検を行い、記載もれが明かな場合
は追加記載を行った上で、診療録等のコピーを行う。なお、追加記載が必要な場合
は、追記した日時を記載し、記載者の署名を必ず行う。
3.届出前に、病院長はブロック事務所に事故の概要報告を行なう。ブロック事務所
は、その内容を速やかに国立病院機構本部へ報告する。
4.届出前に、患者・家族に対し医師法21条及び本指針により、医療過誤又はその
疑いあるときは、警察への届出が必要であることについて説明を行う。
5.届出を行なった後、病院長は届出内容をブロック事務所に報告する。また、ブロ
ック事務所は、国立病院機構本部に報告する。
6.事故当事者への事情聴取が終了した後、病院長は当該者の理解を得ながら供述内
容について記録を行いブロック事務所に報告する。ブロック事務所は、その内容を
国立病院機構本部に報告する。
7.病院は事故当事者のカウンセリングを随時行うなど、精神的サポートに務める。
8.対外的公表について、病院は、ブロック事務所や顧問弁護士とも相談をしながら
準備を進める。取材申し込みが合った場合は、その段階で再度、ブロック事務所や
顧問弁護士に相談を行う。ブロック事務所は、必要に応じて国立病院機構本部に相
談を行う。
9.公表の際は、必ず患者・家族の意向を確認する。
10.原則として、出来るだけ速やかに拡大医療安全管理委員会を開催し、事実関係の
調査、原因の究明、再発防止策等について協議する。
11.警察への届出事例に係るブロック事務所・国立病院機構本部への報告は、「警察
への届出報告」として行う。
182
別添14
国立病院機構医療事故公表指針
この指針は、国立病院機構が、医療事故が発生した事実とその対応策等を公表して
いくことにより、病院運営の透明性を高め社会の信頼性を獲得するとともに、他の医
療機関における類似の医療事故発生防止対策にも資することを通じ、我が国全体の医
療安全対策の推進に貢献していくことを目的として定めるものである。
1.事故発生病院において個別的に公表する場合
(1)個別的公表の範囲
ア
明かな医療過誤であり、患者が死亡、若しくは重大な永続的障害が発生した場
合とする。
イ
その他、個別公表が医療安全対策の観点から社会的意義が大きいと考えられる
ものについても公表を行う。
(2)公表の時期
ア
事故発生後、可及的速やかに、院内の医療安全管理委員会等を開催し事故の事
実関係の確認などを行った上で公表する。
イ
拡大医療安全管理委員会を開催し検証作業を行った場合は、その報告書等につ
いても追加的に公表を行う。
ウ
また、発生した事故に係る機構内部の専門医等の状況などから、拡大医療安全
管理委員会に代えて、機構以外の有識者を交えた事故調査委員会を開催した場合
についても、追加的に公表を行う。
(3)公表内容
ア
事故の概要
イ
事故後の対応と経過
ウ
事故の発生原因
エ
今後の事故防止対策
オ
その他、必要と認める事項
(4)公表の方法
原則として報道機関に対し公表する。
2.国立病院機構全体で包括的に公表する場合
(1)「事故発生病院において個別的に公表する場合」以外の事例については、国立
病院機構本部において包括的に公表する。
(2)機構本部において一定期間毎に取りまとめた包括的な医療事故報告書により公
表を行う。
(3)公表の方法は、国立病院機構ホームページにおいて行う。
183
3.個人情報への配慮
(1)公表に際しては、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」
(平成15年5月30日法律第59号)に基づき、患者側のプライバシーに十分配
慮をし、その内容から患者が特定、識別されないよう個人情報を保護する。
(2)医療従事者については、病院としての事例検証を行う中で、公表内容から直ち
に関係職員が特定、識別されることのないよう配慮する。
4.個別的公表に際しての患者・家族等からの同意
(1)患者本人はもちろん、原則として家族等からも同意を得る。
(2)患者が死亡した場合は、原則として遺族から同意を得る。
(3)患者が意識不明の場合や判断能力がない場合は、原則として家族等から同意を
得る。また、患者の意識回復に併せて、速やかに本人への説明を行ない、本人の
同意を得るよう努める。
(4)同意を得るに当たっては、公表することだけでなく、その内容についても、公
表する内容を書面で示しながら十分説明を行う。
(5)同意の有無、説明の内容を記録し医療安全管理委員会の書類として保存する。
(6)公表するか否かの判断は、患者又は家族等の意向を最大限尊重して行う。
5.個別的公表の判断
公表するか否かの判断等については、病院内の委員会の意見や患者・家族の意向
等を踏まえ、病院長が決定する。また、必要に応じて国立病院機構本部、ブロック
事務所と協議する。
6.機構本部、ブロック事務所への連絡
個別公表することを決定した場合は、公表資料等を添えて速やかに国立病院機構
本部、ブロック事務所に連絡を行う。
184
別添15
拡大医療安全管理委員会運用規程
1 . 拡大医療安全管理委員会は、
①
医療事故が発生した当該病院の委員(院長を含む)、
②
専門委員、顧問弁護士(又は病院担当の弁護士)、
③
各委員から出される様々な意見等を中立的立場から調停し、円滑に委員会を進
行していく役割の委員(以下、「調停委員」という。)、
④
ブロック事務所担当者、
等で構成することとし、当該病院又はブロック事務所において、当該病院の院長が
開催する。
2.ブロック事務所は、必要に応じ専門委員及び調停委員の名簿を整理する。
3.開催に際しては、院長は開催日時の調整、専門委員及び調停委員の選出、顧問弁
護士への連絡などをブロック事務所に依頼する。
4.拡大医療安全管理委員会を開催する病院の院長は、当該委員会に出席する専門委
員及び調停委員が所属する病院の院長に派遣を依頼する。
5.拡大医療安全管理委員会の議事進行は、調停委員が行い、専門委員は、第三者的
立場から医学的意見や助言を述べ、顧問弁護士(又は病院担当の弁護士)は、法的
な立場から医療過誤の有無等について意見を述べる。
6.当該病院は、拡大医療安全管理委員会の審議内容を取りまとめ、ブロック事務所
に報告書を提出する。
7.拡大医療安全管理委員会は、専門委員及び調停委員参加のもと当該病院又はブロ
ック事務所において開催することを基本とするが、審議する医療事故の内容等に応
じ、簡便な方法であっても同様の効果を得られると考えられる場合は、その方法で
開催しても差し支えないものとする。
185
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