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銀・証ファイアーウォール規制
銀・証ファイアーウォール規制 Q:銀・証ファイアーウォール規制 とは何ですか ンプライアンスの障害となってい 会社の取引に伴って顧客の利益が る、③わが国金融機関の競争力の 不当に害されることのないよう、適 A:銀行と証券会社の間の自由な人 観点から見て、欧米の金融グループ 正な情報の管理と適切な内部管理 事交流や情報交換を制限する隔壁 との競争条件を不利なものとして 体制を整備することが義務付けら のことです。 いる、といった指摘もありました。 れました。 もともとわが国では、米国を参考 こうした指 摘を踏まえて銀・証 すなわち、銀行や証券会社は、銀 に銀行業務と証券業務を分離する ファイアーウォール規制が見直され 行・証券会社間の取引にとどまら 政策が採られ、1993 年にようやく ることとなり、所要の法改 正を経 ず、グループ内における利益相反の 銀行と証券会社がそれぞれ子会社 て、今年の6月1日から実施されるこ 恐れのある取引を特定したうえで、 を設立して相手の業務に参入でき とになったのです。 例えば、部門間での情報遮断や、取 るようになりましたが、その際に、預 引の条件・方法の変更あるいは一方 Q:具体的には何が変わったの ですか の取引の中止、利益相反の恐れが る弊害が生じたり、銀行が優越的 地位を濫用したりすることのないよ A:銀行と証券会社の間における役 により、対象取引を管理することが う導入されたのが、銀・証ファイアー 職 員の 兼 職 規 制が撤 廃されたほ 求められるようになりました。 ウォール規制です。 か、法人顧客に関する非公開情報 また、既に、銀行が取引上の優越 を授受する際の取り扱いが、顧客の 的地位を不当に利用してグループ Q:最近、見直しが行われたと聞 きましたが、何か問題があっ たのですか 事前同意を必要とするオプトイン 会社に取引を行わせることは禁止 方式から、顧客が不同意の場合に されていましたが、今回、これに加 のみ共有を制限するオプトアウト方 え、証券会社がグループ銀行の取 A:わが国がモデルとしてきた米国 式へ変更されました。また、内部管 引上の優越的な地位を不当に利用 では、9 0 年代後半に銀・証ファイ 理目的で顧客情報を共有する場合 して取引を行うことも禁止されまし アーウォール規制が見直され、緩和 は、以前より顧客の同意が不要で た。 が大きく進みました。 したが、これまで必要とされていた わが国においても、銀行と証券 当局の事前承認が不要になりまし 会社の店舗の共用や、それぞれの た。 Q:見直しによりどのような影響 があるのですか 役職員の顧客への共同訪問が認め 一方、内部管理目的でない個人 A:銀行と証券会社の連携が進ん られるなど、見直しが徐々に進みま 顧客に関する非公開情報の授受に で、 これまで以上に総合的かつ高度 したが、依然として、過大な規制で ついては、従来通り、オプトイン方 な金融サービスが提供され、利用 あると指摘されていました。 式が維持されています。 者の調達・運用手段の多様化・効率 金者と投資者の間で利益相反によ ある旨の顧客への開示などの方法 化が進むことが期待されます。わが また、グローバルに金融のグルー 合的なサービスの提供の障害とな Q:利益相反による弊害の発生 や銀行の優越的地位の濫用 といった心配はないのですか り、利用者の利便性がかえって損な A:今回、銀・証ファイアーウォール みずほ総合研究所 金融調査部 われている、②金融グループとして 規制が見直されたのと同時に、銀行 主任研究員 山本 均 要求される統合的リスク管理やコ や証券会社に対し、自社やグループ [email protected] プ化が進展しているなか、これらの 規制が、①金融グループとしての総 国金融・資本市場の競争力強化に も役立つと言えるでしょう。 みずほリサーチ June 2009 13