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Vol.1 城下町の宿泊者数比較
HIF マンスリーレポート Vol.1「城下町の宿泊者数比較」 ひろさき未来戦略研究センター 情報分析担当 政策研究員 榮田 育子 データソース: 国土交通省 観光庁 宿泊旅行統計調査(*1) 調査時期:平成 22 年 4 月以降 四半期単位(平成 27 年からは月次) 調査対象:統計法第 27 条に規定する事業所母集団データベース(総務省)を基に、標本理論に基 づき抽出されたホテル、旅館、簡易宿所、会社・団体の宿泊所など。 調査対象施設については、従業者数に応じて以下のように対象を決定。 ● 従業者数 10 人以上の事業所 : 全数調査 ● 従業者数 5 人~9 人の事業所 : 1/3 を無作為に抽出してサンプル調査 ● 従業者数 0 人~4 人の事業所 : 1/9 を無作為に抽出してサンプル調査 本レポートにおいては比較対象を一致させるため、全数調査されている「従業者数 10 人以上」 の事業所のみの統計結果を使用。実データも従業者数 9 名以下の事業所に関する回答率は芳しくな く、比較した自治体の中でデータが存在しているのは長野県松本市のみであるため、現時点で使用 するデータとして従業者数 9 名以下の事業所を母集団から落とすことは問題ないと考える。 (*1) http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html 比較した自治体(人口データはいずれも平成 27 年 3 月 1 日現在) : 長野県松本市(人口:24.2 万人) 富山県富山市(人口:42 万人) 島根県松江市(人口:20.6 万人) 愛媛県松山市(人口:48.5 万人) 高知県高知市(人口:33.7 万人) <調査対象事業所数の推移(四半期ごと)> 弘前市は調査対象施設が少ない。人口の規模が弘前市と近い松江市でも弘前市の 2 倍以上の施設が ある。 <調査回答事業所数の推移(四半期ごと)> <延べ宿泊者数の推移(月次)> ・宿泊施設数と比較して、延べ宿泊者数が相対的に多く推移しているのは愛媛県松山市。一方、長 野県松本市は夏以外の延べ宿泊者数が決して多くはない。 ・そうはいっても、弘前市の延べ宿泊者数は少なく、宿泊施設の少なさが理由の一つになっている 可能性を否定できない。 ・昨年夏ぐらいからわずかではあるが、弘前市の延べ宿泊者数に増加傾向が見える(点線の円)。 <1 人あたりの滞在日数(延べ宿泊者数/実宿泊者数)> 青森県弘前市 長野県松本市 平均 中央値 1.205 1.199 1.204 1.206 富山県富山市 1.207 1.202 島根県松江市 愛媛県松山市 1.150 1.142 1.304 1.163 高知県高知市 1.175 1.176 ・宿泊者総数では他市と比較して低い水準にあるが、一人あたりの宿泊日数は決して見劣りしてい ない。 <「アベノミクス」と延べ宿泊者数の関係> 俗にいう「資産効果」が個人や企業の財布のひもをゆるくし、旅行・出張需要を産むのだとする と、アベノミクスと言われる異次元金融緩和等による円安・株高後から宿泊者数が増加していると 想像される。 そこで延べ宿泊者数の推移について平成 24 年 12 月以降(第一次安倍内閣成立)のデータを対象 とし、株価指数の推移を加えてみた。 弘前市に関して考察すると、季節変動こそあるものの、延べ宿泊者数は上昇傾向にあり、緩やか ではあるが「資産効果」めいたものが弘前市でも見受けられるといえそうである(点線矢印)。 今後の宿泊者数の推移については決して楽観できない。3 月の北陸新幹線開業により北陸方面を 訪ねたい人が増えるであろうことと、今年は長野市善光寺の 7 年に 1 度の御開帳、姫路城の修復終 了等、東北より西の方向に人々がひきつけられそうなイベントが多いためである。 宿泊者数を増やすには、長期的には宿泊施設を増やすことが一つのソリューションとなろうが、 すぐできることとして8月後半以降の避暑地として観光需要を喚起するなど、繁忙期以外のニーズ の掘り起こしも一つのアイディアになり得ないかと考える。 <参考:2014年8月の弘前と東京の気温(データソース:気象庁ウェブサイト)>