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Title Author(s) Citation Issue Date Type 技術変化と競争優位 : 既存研究の論理と日本企業への適 用 青島, 矢一 研究技術計画, 18(3/4): 107-126 2004-08-25 Journal Article Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/16401 Right Hitotsubashi University Repository vo 11 8, No.3/ 4, 2003 研究 技術 計画 技術変化 と競争優位 一既存研究の論理 と日本企業への適用一 青 島失ている 1. 様 々な産業領域で技術 本論文の 目的 の [ 6 ],[ 7 ] ,[ 1 1 ]。それ らの 究で展開されている論理 を紹介するのが第2研 中,技術変化が企業の競争優進歩が加速化す る を理解することが,企業経営位性 に与える影響 目的である。 第3の目的は,既存研究の なって きている。それに伴 っ上 ます ます重要 に コンテクス トの もとで再検討論理 を日本企業の の 既存研究は米国企業 を対象 とす ることである。 業間の相対的な競争優位の変化 かにすること て, との関係 技術変化 を明ら と企 既存企業の凋落 を説明する論 した ものが多いO 蓄積 されて きた 目的 とした研究が, 近年,数多 く [ 1 ],[ 2 ],[ 3 ],[ 4 ],[ 5 ],[ 6 ] , 的な論理 として提示 されてい理はそれぞれ一般 [ 7 ] ,[ 8 ] ,[ 9 ],[ 1 0]。特に 業の実態 には必ず しもそ ぐわるものの,日本企 きな技術変化 を経験す るたびに 米国では,産業が大 研究が扱 って きた産業におい ない。米国の既存 レーヤーが入れ替わるとい う現象産業の主要 プ くが,既存理論の予測 に反 して,日本企業の多 く観察 されることか ら, 「 人, が相対的に多 営資源 を豊富 にもつ既存の大モノ,金などの経 化 にもかかわらず市場 持 して における支配的地位 て,大 きな技術変 を維 に対応で きず凋落するのはなぜ 企業が,技術変化 いて既 いる。この現象は,い くつかの研究にお 2 ] , [ 1 2] , [ 1 3 に指摘 されている [ を中心 とした研究が多 く発表 さか」とい う問い この点を,あらためて確認 し 第1の目的は,これ ら ] , [ 1 4 ]。 れた。本論文の の行動が理論的な予測に合致 た上で,日本企業 術変化 と企業の競争 の既存研究 を整理 して, 技 を説明する仮説的な論理 を探しないという現象 数の論理 を明 らかに優位 との関係 を説明する複 意図は日本企業の特殊性 を強 索する。そこでの く しか しなが ら,大 きな技術 することであるD 調することではな 企業の凋落 をもた らすわけで変化が常 に既存大 し,既存理論が適用 される境界条件 を明 らかに を乗 りこえて市場支配力 を維 はない。技術変化 開て,より一般性の高い論理に向けた試論 を展 少なか らず存在する。企業 次節ではまず既存研究の整 することにある。 持 している企業 も 唆を与えるという意味では, に対する実践的な示 そ こでの目的は,既存研究が提 理か ら始める。そ 析する方が有益 である。 この よ うした企業 を分 明 らかにすることであって,示する説明論理 を ら,近年 , レビューを行 う うな考 え方か される脅威 「 既存企業は技術変化 をいかに超 によって もたら い克で を明示的 きるか」といった間 に扱 った研 究 必ず しも網羅的な に関する後半の議論のために, ことではない。日本企業の行動 い くつかの研究 が報告 され ション研究セ ンター を重点的に紹介することになる。 助教授 I ns t i t ut eofl nn o Ya 一橋大学 i chiA イノベー OSHI MA A s s oc i a t ePr of e s s or , 1996年マサチューセ ッツ工科大学 スロー ン経営 va t i onRe s e a r c h , y 〒1868603東京都 国立市 中21 1 0425808424大学院 ( 勤務 Ph. D. ( 経営学) aoshi ma@i i r . hi t U. ac. 先) j p - 1 0 7- Hi t ot s uba s hiUni ve r s l t 2. 2 3 ]。企業組織が生存 を目的 として行動 ている [ 既 存 企 業凋 落 の説 明論理 技術変化 とともに既存企業が凋落するとい う す るのであれば,それ ら外部 のステー クホル 現象 を説明す るために,既存研究はそれぞれ異 ダーの意見 に対応せ ざるをえない。この ような なる論理 を提示 して きた。それ らの説明論理の 資源依存の理論 に依拠 しつつ既存企業の凋落を 違いの根幹 には,企業行動 に対する仮定の違い 説明 したのが,chri s t ens enをは じめ とす る一連 がある ( 表 1参照)。 1 8] ,[ 1 9]。これ らの研究は,ス の研究である [ 一方の極 にあるのが,利潤最大化 を目的 とす テークホルダーの中で も特 に 「 顧客」に注 目し る合理的意思決定主体 とい う企業像 に基づ く新 て,顧客の意見 に耳 を傾 けて,それに対応 して 古典派経済学 の枠組 みに沿 った説 明論理 であ 技術 開発 を行 うとい う営利企業 としての合理的 る。そこでは,既存企業が技術変化 に対応で き な行動が,既存 の顧客 に便益 を与えない ような ないのは,新 しい技術への投資 インセ ンティブ 新技術への過少投資 をもた らし,結果 として技 が相対的に弱いか らであると説明される。大 き 術変化の もた らす機会の喪失 につながるという な技術変化 に直面 した ときに,新技術 の登場 に 論理 を展 開する。 よって代替 される事業 をもつ既存企業 は,失 う 組織論の枠組み に沿った説明論理は,さらに もののない新規参入企業 と比べ る と,新技術へ 企業行動の合理性の仮定 をゆるめて,技術変化 の投資か ら得 られる期待利益が小 さくなる。そ への対応の失敗 を説明する。企業 は,過去の経 れゆえ,営利企業 としての合理的な行動の帰結 験 を完全 に切 り離 して,現時点での合理的な行 として, 技術変化への対応 に遅れることになる。 動 を選択で きるわけではない [ 2 4]。企業行動 しか しなが ら企業組織 は,自ら独立 して利潤 は,これ まで蓄積 した資源や能力,過去の体験, 最大化行動 をとることがで きるわけではない。 制度化 された組織の影響 を受けるとい う意味で 企業組織の行動 は,企業 に資源 を共有す る様 々 経路依存的である。 な外部主体,つ ま りステークホルダーに依存 し こうした観点か ら,過去の企業組織 を独 自の 表 1. 技術 変化 と既 存企 業 の凋落 :既 存研 究 の説明論理 対する仮定 企業行動 に 利潤最大化 芸二 三志芸 経路依存性 .組織慣性 .組織ルーチ ンによる限定的合理性 既存能力 理論的背景 新古典派 既存企業凋落の 直接的理由 資源依存の理論 成長の経済学 投資 インセン テイブの 投資 インセ ン テ イブの低 さ 既存能力への 拘泥による適応 相対的な低 さ 応 方法のバイアス ダーへの過剰適 ステークホル による事業化 経済学 組織論 能力の l l ][ [ ) ,l 1l 8 ] , 代表的研究 r G R i l e t x A n i r mw g l a [ n 1 u d 6 m N ] [ e 1 5 w [ ] 1 t 7 ℃ ] r y Ch is r t e ns en Tus h m an a n d 欠如 固定化 認知 された 支配の認知 グループ 組織内の 政治的枠組み 組 ( 情報処理 行動理論, モデル) 織論 分業が生み出す 技術変化 に対 す ( 行動理論) 組織論 戦略論 組織論 過去の成功 ポ( リテ モデル) パ ワー ィカル . 制度化 された 体験への拘泥 技術の解釈 政治的関係 組織内の と r s o na n dC l a d ( Tr ips a sa n dGa v e t d d e H e n や誤認 る認識バ イアス 事業化方法に関 する固定観念 no ma sl 2 2 ] 9 ] 1 ) ch r i s t e ns e A Le n o d n ea r [ r s 2 o d 0 n[ B ]a r 1 l o 0 n ] [ 5 ] [ 21 ] セスの n[ 源配分 プロセスにおける正当化 1 ]で提示 される論理 は,後述するように,資源依存 の理論 にのみ依拠 した ものではないO組織内の資 プロ には 特質 と既存 の ビジネスモデルか らくる特有の認知バ イアス も彼の論理の中 研究 技術 計画 vol .1 8,No.3 / 4, 2003 経営資源の束 として とらえる立場 は,独 自資源 が技術変化への対応行動 に一定のバイアスを与 に対する拘泥が,技術変化への対応 を遅 らせ る 21 ],[ 2 6] 。 える [ 要因 となることを指摘す る [ 1 0],[ 2 0]。独 自の さらに,企業組織 は新技術 に対する異 なる認 経営資源は企業の中核能力 を形成するものであ 識 をもつ複数の利害集団か ら構成 されるとい う るか ら, 自社独 自の経営資源 を無力化 して しま 点で,社会的かつ政治的側面 をもつ。したがっ うような新 しい技術変化への対応が遅れること て,それ らの利害集団が どの ように技術 を認識 は,営利企業の合理的な意思決定の結果 として す るのか,また利害対立が どの ような構 図で起 も起 きうる。さらに,これまで蓄積 して きた独 自 きているのか といったことが,技術変化への対 2 5 ], の経営資源や能力は,組織慣性 を生み出 し [ 22],[ 27]。例 えば 応行動 に影響 を与 える [ 合理的な意思決定 を妨げるという側面 もある。 Thoma sは,コンピュータ企業 における FMS採 組織慣性 によって行動バ イアスが生 じるとい 用,アル ミニウム企業 における生産 ロボ ッ ト採 う大 きな枠組みの中で,既存の実証研究 は,級 用,自動車企業 における NC工作機械の採用 プ 織慣性の具体的なメカニズムを提示 しつつ,既 ロセスを分析 して,それ らがいかに組織内の社 存企業の凋落 を説明 している。 会的かつ政治的関係 によって影響 を受けたのか その 1つが,高度 な分業構造が もた らす認知 を示 している [ 2 2]。こうした研究 は,必ず しも 構造の固定化 によって既存企業の凋落 を説明す 既存企業の凋落 を説明することを目的 としてい る論理である。分業 によって,個 々の組織 メン るわけではないが,組織の社会的かつ政治的関 バーは,自らの業務 に注意 を焦点化することに 係が技術変化への対応 を遅 らせ る可能性がある な り,反復 による経験効果 も加 わって効率的な とい う意味では,1つの理論 的な視座 を提供 し 業務遂行が可能 になる。 しか し分業 は一方で, ている と考 えられる。 注意の焦点化 による認知の固定化 を生み出す。 以下では,企業組織 に対する異 なる仮定 に端 分業 された各業務 を担 当す る部門はそれぞれ, を発するこれ らの異 なる説明論理 を,代表的な 固有の認知枠組みで物事 を観察 ・ 解釈す るよう 研究 に焦点 を当てなが ら,紹介 してい くことと になる。組織内の分業 は,部 門間コミュニケー しよう2)。 ションよりも部門内コミュニケーシ ョンを重視 することによって効率性 を実現 しているため, 2. 1 投資インセンティブの相対 的な低 さ :利益 最大化主体としての企業組織 逆 に,部 門間の関係性 に変化 をもた らす ような 現象 を適切 に捉 える能力 を削 ぐ方向に働 く。そ 経済学の標準的なモデルは,技術変化 に対す れゆえ,新技術が従来の部 門間分業の枠組み に る既存企業 と新規参入企業の対応の違いを,新 変化 をもたらす ような場合,既存企業 はそれを 技術への投資 インセ ンティブの違いによって説 適切 に認知で きず,技術変化の もた らす機会 を 4] ,[ 1 5] ,[ 1 6] ,[ 1 7],[ 2 8]。 明す る [ 逸す ることになる。He nde r s onとcl a r kがア-キ まず技術変化が ドラスチ ックな場合,新技術 テクチュラル ・イノベーシ ョンと呼んだのはこ によって既存事業が脅か される分 だけ,既存市 5]。 のような技術変化の ことである [ 場 を支配する企業の相対的な投資 インセ ンティ 組織の もつ特有の認知バ イアスは,過去の成 ブが低 くなる [ 1 5]。ドラスチ ックイノベーシ ョ 功体験 によって も醸成 される。特 に トップマネ ンとは,それによって既存技術 を利用 した製品 ジメン トグループなどの支配的グループが企業 が完全 に市場 か ら駆逐 され る ようなイノベ ー 戦略 に強い影響力 を持つ場合,彼 らの認知構造 シ ョンを指す 3)。プロセスイノベーシ ョンに限 2) ただ し,組織内のパ ワー関係 に注 目する研究は既存企業の凋落 を説明することを直接の 目的 としていないため,以下 の レビューには含めていない。 3 ) 厳密 な意味での ドラスチ ックイノベーシ ョンを観察するのは難 しいが,アナログの レコー ドシステムが コンパ ク ト デ ィスク ( CD)システムに代替 されたケースが これに近いO-部のマニアックなユーザーを除けば,cD システムは レコー ドシステムに対 して,音質,耐久性,保存性などあ らゆる性能次元 において勝 っている。それゆえ,アナログ の レコー ドシステムはほぼ全面的に CD システムに代替 されることとなった。 - 109- 定するな ら,イノベーシ ョン後の独 占価格が イ 規参入企業 と同等の投資 インセ ンテ ィブをもつ ノベ ーシ ョン以前 の競争価格 を下 回るような ことになる。 ただ し,現実 には,既存企業が積極的に新技 ケース として定義 される。この場合,イノベー シ ョン以前 に市場 を支配 していた独 占企業は, 術への投資 を行 うことによって,旧技術 の代替 新技術への移行 によって,既存製品か らの利益 を早 める とい う効果があ る。銀塩 の カメラや 機会 を全 て失 うことになる。それゆえ,既存事 フイルムのメーカーが積極的にデジタルカメラ 業 との共喰い を避 けるために,新技術への投資 の技術 に投資 をす ることによって,銀塩 システ を控 えざるをえないO-方,新規参入企業 は,イ ムか らデジタルシステム-の代替 を早めるよう ノベ ー シ ョンによって失 う既存事業 をもたな なケースを想定すれば よい。自らの投資行動が い。 その分 だけ投資 イ ンセ ンテ ィブが高 くな 代替 を加速化するとなると,既存企業は投資 を る。したが って,イノベーシ ョンが ドラスチ ッ 控 えざるを得 ない。したが って,イノベーショ クな場合 には,利益最大化 を追求する合理的な ンが ドラスチ ックである場合 には,やは り,既 意思決定の結果 として,既存市場 を支配する企 存企業の投資インセンテ ィブは新規参入企業に 業は新規参入企業 に対 して劣位 とならざるをえ 比べて小 さ くなる。一方,イノベーシ ョンがイ ない。 ンクリメンタルな場合で も,代替 を早める効果 しか しなが ら,既存事業がいずれにせ よ代替 が十分 に大 きい場合 には,合理的な意思決定 と されて しまうのであれば,む しろ既存事業 を捨 して,既存企業 は技術変化-の対応 を遅 らせる ててで も積極的に新技術 を先取 りしようとする 4]。 可能性が高 くなる [ 1 6 ]。こうし インセ ンテ ィブ も働 くはずである [ 2. 2 外部ステークホルダーへの過剰適応 : 外部 資源に依存 した企菓組織 たインセ ンティブは,イノベーシ ョンが インク リメンタルな場合 に特 に顕著 に現れるOインク 投資 インセ ンテ ィブの相対的な低 さか ら,既 クリメンタルイノベーシ ョンとは,それによっ 存企業は ドラスチ ックイノベーシ ョンへ過少投 て,既存技術が市場か ら駆逐 されないイノベー 資す る傾向がある,とい うのが標準的な経済モ シ ョンを指す。つ ま り,イノベーシ ョン後 は,旧 デルの帰結である。しか し現実 には,イノベー 技術 と新技術が市場で共存することになる。プ シ ョンに対 して技術的に対応で きないため既存 ロセスイノベーシ ョンのケースに限れば,イノ 企業が凋落するというケースは決 して多 くない ベーシ ョン後の独 占価格がイノベーシ ョン以前 [ 2 9]。む しろ,新技術の開発投資 には既存企業 の競争価格 を下回 らないケース として定義 され の方が積極 的であ り,難 しい技術 的課題 は,既 る。この場合,既存市場 を支配 している企業 は, 存 の優 良企業の内部で克服 されることが多い。 自らの独 占力 を拡大するために積極的に新技術 それにも関わ らず既存企業が技術変化への対応 への投資 を行 うことになる。既存市場 を支配 し に失敗す るのは,技術能力の欠如ではな く,新 ている企業はたとえ既存事業 との共食いを余儀 技術 を利用 した適切 な事業モデルを構築するこ な くされた として も,新技術 を独 占す ることに とがで きないか らである。既存企業 には新技術 よって,従来の独 占状態 を継続す ることが可能 の適切な事業化 を妨げるメカニズムが働いてい である。しか しなが ら,新規参入企業はた とえ る。 新技術 を独 占で きた としても既存企業が供給す こうしたメカニズムの 1つ を明 らかに したの る旧技術 との競争 に晒 され ざるを得 ない。新技 が chr i s t e ns e nを中心 とした一連の研 究である 術の独 占に成功 して も市場では複 占状態 となる 1 8 ] ,[ 1 9 ],[ 3 0],[ 31 ] 。Chi r i s t e ns e nは, [ 1 ],[ 新規参入企業 よ りも,独 占利益 を期待 で きる既 ハー ドディスク ドライブ産業 における技術変化 存企業の投資 インセ ンテ ィブの方が高 くなる。 を,コンポーネ ン トレベルのイノベーシ ョンと この議論か らすれば,た とえイノベーシ ョンが 製品アーキテクチ ャレベルのイノベーシ ョンに ドラスチ ックであった として も,既存企業 は新 分 けて,技術変化 と既存企業 と盛衰 との関係 を - 110- 研究 技術 計画 分析 している [ 1 8 ],[ 1 9]。彼の分析 によれば, る。 フェライ トヘ ッ ドか ら薄膜ヘ ッ ド,MRヘ ッ ド への転換 に見 られる革新的なコンポーネン ト技 vol .1 8, No.3 / 4, 2003 i s t e ns e nは,技術進歩のス ピー ドよ さらにChr りも顧客の求める平均 的な性能水準 の向上ス 術の変化は,既存のリーダー企業によって先導 ピー ドが遅い という仮定 をもとにして,主要性 され,技術変化の前後で既存企業の支配的なポ 能において劣位 にある破壊的技術であって も既 ジションに大 きな変化 はない という。一方,ド 存顧客を十分満足 させる時期が早晩訪れること ライブの小型化 を伴 うア-キテクチュラル ・イ を指摘する。現時点で液晶テ レビの画質に不満 ノベーシ ョンの場合 には,それがたとえ技術的 を述べる顧客がほとんどいないことを想定すれ には単純で既存技術の組み合わせであったとし ばこれは理解で きるであろう。この時点で,佃 ても,新規参入企業にリーダーの地位 を奪われ の性能次元 において優位性 をもつ破壊 的技術 るとい う現象が観察 される。これは製品アーキ が,既存技術 を全面的に塗 り替えるとい う現象 テクチ ャレベルのイノベーシ ョンが, しば し がお きる。そ してそれに対応で きない既存企業 ば,製品機能の再定義 による新市場の創造 をも の凋落が観察 されることになる。 たらすか らである。既存企業は技術力の欠如 に ここで描かれている企業像は,顧客 というス よって失敗するのではな く,新市場への対応力 テークホルダーに縛 られ,確実な利益 を志向す の欠如 によって失敗する。さらに,その背後 に る内部の資源配分メカニズムを抱えた企業であ あるメカニズムを 「 破壊的技術」という概念 を る。企業組織は,外部のステークホルダーか ら 用いて整理 したのが chr i s t e ns e nである [ 1 ]。 の資源提供 に依存 している。したがって企業行 破壊的技術 とは,既存顧客が求める主要な性 動は,影響力 をもつステークホルダーの意向を 能次元に沿って,旧来製品 よりも性能が劣位 に 分析することによって説明可能である。これが あるような製品 もしくは技術 を指す。しか し一 資源依存モデルの基本的な考え方である。顧客 方で破壊的技術 は,従来重視 されてこなかった は企業に影響 を与える重要なステークホルダー 新 しい性能次元 において優位性 をもつ。例 え である。既存事業が依存 している主要な顧客の ば,画質が重視 されていたテ レビ市場 におい 意向は企業行動 に大 きな影響 を与 える。持続的 て,画質はブラウン管テ レビより劣 るが,薄型 技術 は既存顧客 を喜ばせるが,破壊的技術 は既 という価値 を新たに提供 した液晶テ レビは,当 存顧客 に歓迎 されない。したがって自然 と持続 初,破壊的技術 としての性質 をもっていたと考 的技術への傾斜が起 きる。さらに,企業内部の えられる。 資源配分プロセスがこれに拍車をかけることに 破壊的技術 と対 をなす概念が 「 持続的技術」 なる。持続的技術 に関 しては市場がみえるが, である。持続的技術 とは,性能の向上 をもたら 破壊的技術の市場は極めて不確実である。企業 すような技術 もしくは製品として定義されてい 内部の資源配分プロセスにおいて,説得力 とい る。多 くのイノベーシ ョンはこの範噂 に含 まれ う点では,明 らかに前者が有利 となる。 した る。通常,既存市場 を支配する企業は性能向上 がって,持続的技術の開発が加速化 されるとい をもた らす持続 的技術 の開発 には積極 的 とな う一 般 的 な傾 向 が 生 じ る こ と に な る 。 る。既存の主要顧客は性能向上 を歓迎するはず chr i s t e ns e nの議論 は,外部資源依存モデルと内 であ り,それゆえ一定の確実な市場が見込める 部の資源配分モデルの組み合わせ として理解で からである。他方,破壊的技術 は,旧来技術 に きる。 比べて性能が劣 るか ら,既存の主要顧客 によっ 2. 3 組織慣性と認知バイアス:合理性が限定さ て歓迎 されるものではない。将来市場は不確実 れる企業組織 であ り,その事業化投資は内部プロセスにおい これまでの議論 は,営利 を目的 とする企業の て正当化 されに くい。それゆえ既存企業は破壊 合理的な投資意思決定が 自然 と凋落 を招 く,と 的技術 に対する対応 に遅れるという現象がお き いう論理 を展開 していた。しか しなが ら企業が - 11 1- 常 に合理的な行動 をとることがで きるとは限 ら らだけではない。既存能力 は,企業組織の認知 ない。企業 は,様 々な組織的な要因ゆえに,逮 構造 にも影響 を与 える。それゆえ,技術変化の 応すべ き環境 を適切 に把握で きなかった り,揺 もた らす機会や脅威 を適切 に把捉で きない とい 用すべ き戦略の選択肢 を自ら狭めた りする。 う問題が生 じる。こうした問題の 1つの源泉は, 技術変化への適応 を阻む要因 としてこれまで 多 くの研究が注 目して きたのが,既存企業の も 分業 によって助長 される認知の固定化である。 分業は組織内のコミュニケーシ ョンを制御する つ技 術 的 能 力 や 固有 の歴 史 の影 響 で あ る。 ことによって効率性 を生み出 している。しか し Tus hma na ndAnde r s onが明 らか に した ように 一方でその情報 コン トロールが組織内に特定の [ 1 0],既存能力 を破壊す るような技術変化の前 認知構造 を生 じさせ る。そこに認知のバ イアス 後で,市場のプ レーヤーが大 きく入れ替 わるこ が生 まれる。特 に分割 された組織ユニ ッ トの枠 とが しば しば観察 される。企業の技術 開発 の方 を越 えた変化 に対 して組織 は鈍感 になる。この 向性 は,既存 能力 に沿 った形で規定 されやす 分業 と技術変化への対応の問題 を直接的に扱っ い。それゆえ,技術変化への適応が既存の能力 たのが ,He nde r s ona ndCl a r kである [ 5] 。彼女 とは大 きくかけ離れた新 しい能力の開発 を必要 965年か ら 1 987年 にいたるまでの半導 らは,1 とする場合 に,企業は 「 能力の民」( compe t e nc e 体 露光装置産業 の事例 を検討す るこ とによっ Tr a p) に陥る。その とき,競争優位 の源泉 とし て,世代 の変化 とともに,リーダー企業が入れ ての中核能力 は,変化への適応 を妨 げる硬直性 替わるのはなぜ なのか とい う問いをたてた。 半 導体 の露 光 装 置 は, コ ンタク トア ライ cor eRi gi di t y) となる [ 20] 。 の源泉 ( 企業 は,その成長過程 で,独特 の活動 ルーチ ナー,プロキシ ミテ ィアライナー,プロジェク ンを形成す る。企業の独 自能力の 1つはこの活 シ ョンスキャナー,ステ ップアン ドリピー ト方 動ルーチ ンにある。標準手」 l l 頁書 などルールや手 式へ進化 して きた4 ) 。これ らは全 て光露光装置 引書 と して形式化 されたルーチ ンもある し,仕 であ り,世代交代 は,回路パ ター ンを形成する 事のや り方 として暗黙の内に共有 されているも 技術の原理の革命的な変化 を意味 しているわけ の もある。これ らのルーチ ンは企業活動の効率 ではない5 ) 。 また,新 しい世代 の装置 は,必ず 性 を維持す る上で重要なものであ り,通常 は積 しも,前世代 の装置 を全て置 き換 えて しまうも 極的に意識 されることな く活用 されている。同 ので もない。現在で も,LCD製造や集積度の低 時 に,その無意識性 ゆえに,ルーチ ン継続の慣 いデバイス用 にプロジェクシ ョンスキャナーは 性が働 く。よほ ど大 きなシ ョックを経験 しない 利用 されている。したが ってこれ らの技術変化 限 り,ルーチ ンは維持 されやすい。この慣性 ゆ は,ラデ ィカルな変化 とはいえないCにもかか えに,企業活動 の効率性 を向上 させ るルーチ ン わ らず,人やモノ,金 といった経営資源 を豊富 の発展 は,一方で大 きな技術変化への適応能力 にもつ既存の優良企業が,これ らの技術変化 に 32]。 を低下 させ ることになる [ うま く対応で きなかったのはなぜ なのか。 2. 3. 1 分業による認知構造の固定化 :諦知メカ nde r s ona ndCl a r k この問いに答 えるためにHe が用意 したのが 「ア-キテクチ ュラル ・イノ ニズムとしての企菓組織 企業の能力が変化への適応力 を削 ぐのは,舵 5] 。ア-キテ ベーシ ョン」 とい う概念である [ 力 を破壊 されることによる埋没費用 を恐れるか クチュラル ・イノベーシ ョンとは,製品や技術 4) 現在はさらにレンズスキャニ ング方式が主流 となっている [ 33]D後述するように,1 990年代 に入 ってか ら,半導体 露光装置は大 きく2つの技術変化 を経験 しているolつはエキシマ レーザーへの光源の変化である。これによって光 学系か ら感光材料 にいたるまでシステム全体での再統合 ・最適化が必要 となった。もう1つは レンズスキャニング方 式の導入である。レンズスキャニ ング方式では,レテ ィクルステ-ジとウェハステージの双方 を同期化 させ るという 新たな課題が生 じたO両者 ともHe n d e r s o na n dCl a r k[ 5 ]が定義 したア-キテクチュラルイノベーシ ョンとしての性 格 をもつ変化であったといえる。 5) 光露光装置以外 にも,電子 ビーム露光装置やX線露光装置などがあるが,マスク作成 において電子 ビーム露光装置が 使われている以外,現在 ほとんど全ての LSIは光露光装置 によって生産 されている。 - 11 2- 研究 技術 計画 vo l . 1 8 ,No . 3 / 4 ,2 0 0 3 の中核原理 に変化 はないが,製品を構成す る部 極投資の背後 には,常 に技術 的な先進性 を追求 品や要素技術 間の 「 関係」に変化が見 られるよ す るとい うマネジメン トの信念があった。とこ うなイノベーシ ョンのことである。例 えば,マ ろが,ポラロイ ドのデジタルカメラ事業は結局 スクとウェハ を密着 させて一括で転写 していた 失敗 に終 わる。1 9 9 6年か ら 1 9 9 7年 に 9 8 . 5万画 コンタク トアライナーに対 して,マス クとウェ 素のデジタルカメラを市場導入 し,それが失敗 0 F L m程度の隙間をあけて露光 を行 う ハの間に 1 す ると,事実上市場か ら撤退することになる。 プロキシミテ ィ方式 は,アーキテクチ ャラル ・ Tr i ps a sa ndGa ve t t i は,デジタルイメージング イノベーシ ョンとして特徴付 けられる。マスク 技術の登場 を飽 くまで も技術 の変化 ととらえ, とウェハの間に隙間をあけることによって,重 市場の変化 を把握することがで きなかったマネ ねあわせ精度 を高めるために,マス クとウェハ ジメ ン トの認知上の問題 を指摘 している。ポラ ステージの間の微妙 な位置調整が必要 となるか ロイ ドは,デジタルカメラを飽 くまで も銀塩写 らである。そこでは従来の分業の境界 を越 える 真 の代替物 として とらえた。したが って,銀塩 ような新 たな共同が必要 となる。しか しそ うし 写真の画質 レベルに最後 まで こだわった。さら た活動の重要性 は,既存の分業の枠組みゆえに に,既存のイ ンス タン ト写真事業の ビジネスモ 妨げ られて しまう。これが必ず しも大 きくない デルに強い こだわ りをもっていた。それは,カ 技術変化 に対 してさえ既存企業が うまく対応で メラ本体 ではな く材料 ( フイルム)で利益 を得 きない論理 として提示 されている。 るとい う,いわゆる 「 髭剃 りモデル ( Ra z ora nd 2. 3. 2 成功体験による事業化バイアス:支配的 l ) 」である。 この ような,高画質へ Bl a deMode のこだわ りと材料で利益 を得 るビジネスモデル グループの戦略ルーチン 企業組織 は,組織の 目標 を体現 して企業の将 来像 に強い影響 をもつ支配的な集団が存在 して ゆえに,デジタルカメラを低 コス トで生産す る 能力 には注意 を払 ってこなかった。 いる [ 3 4]。 この支配的な集団の もつ成功体験 高画質 とプリン トへの こだわ り,そ してコス は,特有の認知構造 を発達 させ,それが技術変 トカの軽視 によって,ポラロイ ドのデジタルカ 化への対応行動 に大 きな影響 を与 える。Tr i ps a s メラは,プロフェッシ ョナル向けのカメラとし a n dGa ve t t iは,このことを,デジタルイメージ て発売 されることになった。1 9 9 2年 には既 にプ ング技術 に対す るポラロイ ドの対応 を詳細 に検 ロ トタイプがで きていたの も関わ らず,実際 に 21]。 討することによって明 らかに している [ 9 9 6年 となった。しか しそ 市場導入 されたのは1 9 9 0年初頭,デジタルイ 彼女 らによれば,1 の ときには既 に,日本 を中心 に低画素のデジタ メージング技術 とい う点でポラロイ ドは極めて ルカメラ市場 は立 ち上が ってお り,メガピクセ 先進的な企業であった。その時点で既 に自社製 ル市場の立 ち上げ も目の前 にきていた。ソニー のセ ンサーを用 いたメガピクセル ・デジタルカ をは じめ とするエ レク トロニクスメーカーを含 メラのプロ トタイプの開発 を終 えていた 6)。こ む競合企業 と互角 に戦 える力 はなかった。 うしたポラロイ ドの技術力 は 1 9 8 0年代 を通 じ この ように,ラデ ィカルな技術への投資配分 て行われたデジタルイメージング技術への大幅 辛,事業化の方法 は,組織 内の支配的なグルー な投資の傾斜配分 による ところが大 きい 7)。ポ プの もつ信念 に強 く依存 している。そ してその ラロイ ドは積極的にデジタルイメージング技術 信念が技術変化への適切 な対応 を阻害するとい への投資 を行 っていた。ラデ ィカルな技術変化 うのが,Tr i ps a sa ndGa ve t t iの説明 となってい への投資 を怠 っていたわけでは決 してない。積 るO 6 ) 民生用のメガピクセルのデジタルカメラ市場が実質的に立 ち上が ったのは,オ リンパス光学工業のキヤメデ ィア cl 4 0 0 Lが 日本市場で ヒッ トした 1 9 9 7年であると判断で きる [ 3 5 ]。そのことか らして も 1 9 9 0年代初頭,ポラロイ ド は技術的に先導的な立場 にあった といえる。 7 )1 9 8 6年か ら 1 9 9 0年の間,ポラロイ ドの研究開発費の 2 8%がエ レク トロニクスに向け られたという。 - 1 1 3- 3. 既 存 企 業 が技 術 変 化 を乗 り越 える条 件 技術変化 に直面 した既存企業が凋落 を示す理 術への投資インセ ンティブの低 さか ら技術的な 対応では遅れをとるか もしれないが,補完資産 由が明 らかにされる一方で,現実 には,大 きな で優位 に立つ限 りにおいては,市場地位 を維持 技術変化 に直面 しなが らも,その脅威 を克服 し す ることがで きることになる。言い換 えるな て市場 に君臨す る企業が少 なか らず存在す る。 ら,技術変化が,技術 的には能力破壊 的であっ マネジメン ト研究の立場か らすれば ,「既存企 て も,生産能力や流通チ ャネルなどの補完的資 業 はなぜ,技術変化 を克服で きたのか」とい う 産の点では能力強化型である場合 には,既存企 問いに答 えて,その条件 を明 らかにす ることの 業の優位性 は変化 しない B)。 この ような理論 に関連 して, Mi t chel lは,医 方が, よ り実践的な含意 を導 くことがで きる。 この ような関心 に対応 して,近年,技術変化 を 療用の画像診断産業 において,技術 的には能力 克服する様 々な条件 を明 らかに しようとする研 破壊的なイノベーシ ョンであって も,それが顧 6],[ 7],[ 11 ]。 究がい くつか発表 されている [ 客や市場 との関係 に対 して破壊的な影響 を与え 3. 1 補完的資産の役割 ない場合 には,既存企業が優位性 を維持するこ 既存企業が技術変化 を超克するための条件 と 3 7]。特 に医療用製品の場合, とを示 している [ して,これ まで多 くの研究が注 目して,実証的 病院へ アクセスす る販売 ・サー ビス網が参入障 にも明 らかにされた要因が補完的資産の存在で 壁 となる。技術 的に遅れをとった として も,こ ある。補完的資産 とは,新技術 を事業化 して市 の参入障壁がバ ッファー となって,既存企業に 場 に提供 し,市場での競争力 を確保するために 技術的なキャッチア ップの時間を与えることに 必要 とされる様 々な資産 を示す。生産設備や流 なる。 通網,ブラン ドな どがそれにあたる。一般 に,こ s pasは,1 88 6年か ら 1 99 0年 にわた 同様 に Tri れ ら補完的資産へのアクセス とい う点では,既 る印刷用 タイプセ ッター産業 における技術革新 存の大企業が新規参入企業 に対 して優位 に立つ の歴史 を詳細 に検討することによって,補完資 ことが多い。しか し,前節で議論 した ように,新 産の存在が既存企業の優位性 にとって重要な役 技術への投資 インセ ンティブとい う点では新規 割 を果 た して きた こ とを明 らか に してい る 企業が優位 にな りやす い。単純化 してい うな [ 8]。この間,タイプセ ッター産業は3つの大 き ら,これ らの間のバ ランスによって,既存企業 な技術変化 を経験 した。それ ら3つの技術変化 と新規参入企業の間の相対的な優位性が決 まる とも,技術 的には能力破壊 的であ り [ 1 0],製品 ことになる。つ ま り,補完資産の重要性が高い 5 ]を含 む もので アーキテクチ ャの大幅 な変化 [ 状況では,既存企業が新規参入 に対 して優位 に あった。 にもかかわ らず,3つの技術変化 の中 立 ち,技術変化が既存の競争状況 を破壊す る可 で,既存 の リーダー企業が駆逐 されたのは一度 能性が低 くなる。 だけであった。その理由 として,Tri s pasは,既 補完的資産の役割 と企業の競争優位の関係 に 存企業が市場での優位性 を維持することができ 関 しては,Teeceが 1つの統一的な枠組み を提示 た 2つの技術変化の例では,生産能力,サービ している [ 9]。彼 の枠組み によれば,特許 など スネ ッ トワーク,フォン トライブラリー といっ を通 じた新技術 の占有可能性が高い場合 には, た補完的な資産の価値が技術変化 によって破壊 技術 で先行 したイノベー ターが優位 に立つが, されなかったことをあげている。 占有可能性が低 い場合 には,補完的資産の点で 3. 2 企業の組織 能力と戦略的選択 優位 に立つ技術的フォロワーがイノベーターを 既存の補完資産が技術変化後 も重要な役割 を 駆逐することが可能 となる。既存企業 は,新技 果たす ことがで きるか否かは,技術変化の内容 8) こうした技術変化の中で も,特 に市場 との関係が維持 されるものは,Ab e r na t h ya n dCl a r kが革命的イノベーシ ョン ( Re v o l u t i o ma r yl n no v a t i o n) と呼んだ ものである [ 3 6]。 またそれは,市場での競争次元が変わ らない とい う点では, ch r i s t e ns e nが持続的イノベーションと呼んだ もの [ l ] とも一致することが多い0 - 1 1 4- 研究 技術 計画 vol .1 8,No . 3 / 4,2 0 0 3 に依存する。したがって, 補完資産の議論 は, 必 を捉 える柔軟性 を阻害するか らである。ここに ず しもマ ネジメン トに実践 的な示唆 を与 えな は基本的な トレー ドオフがある。将来の技術機 い。企業 に対 して実践的な示唆 を与えるために 会 をとらえようと柔軟性 を追求すれば,既存事 は,マネジメン トにとってコン トロール可能な 業 における成果 を犠牲 に しなければならない。 要因に注 目す る必要がある。 こうした観点か しか し既存事業の成果が低下すれば,将来技術 ら,Hi l la ndRot ha e r me lは,技術変化 を乗 り越 への投資 もままならな くなる。したがって,こ えるために必要な様々な条件 を仮説的に提示 し の トレー ドオフ関係の中で適切な選択 をするこ ている [ 6]9)0 1つは,基礎研究 を重視すると とがマネジメン トに求め られる。この点 を実証 同時に基礎研究 と応用研究 との緩やかなつなが しているのが,Ahu j aa ndLa mpe r tである [ 1 1 ] 。 りを維持することであるとい う。新 しい技術機 Ahu j aa ndLa mpe r t は,馴染みのある技術 を指 会を適切 にとらえるために,基礎研究 に投資 を 向する民 ( Fa mi l i a r i t yTr a p),成熟 した技術 を指 Abs or pt i veCa pa c i t y)[ 38] を高 して吸収能力 ( 向する民 ( Ma t ur i t yTr a p),既存の解決法 に近い める必要があるが,応用研究 とのつなが りに欠 けると事業化の機会 を逸することになるという ものを指向する昆 ( pr opi nqui t yTr a p)の 3つを, 既存企業のブレークスルー的な技術革新 を阻む のが理由である。また,リアルオプシ ョン的な もの として指摘 した上で,これ らの民 を克服す 考え方による投資行動の必要性 も指摘 されてい るために,新 しい技術の探索がいかに重要な役 る。特定の技術 にだけ投資するのではな く,檀 割 を果たすのかを,化学産業のデータを使 って 数の技術 に並行 して投資 を行 うことによって, 実証 している。この研究 によれば,引用件数の 将来に対する柔軟性 を維持することが必要だと 多 きで トップ 1% に入る特許の数 によって測定 いう理由である。その他 には,自由な行動 を容 された発明の成果は,新 しい技術領域での探索 認する企業文化や新技術 を事業化するための独 活動の量 と逆 U字の関係 にある。過度な探索活 立 した事業ユニ ッ トの創出があげられている。 動はむ しろ,ブレークスルーを阻害するとい う また,技術的発明 と事業化 までの期 間が長い のがそこでの発見である。資源の分散が もたら 場合には,新興企業 との戦略的アライアンスが す不経済がその原因であると説明されている。 有効であることも指摘 されている。この点に関 しては,Rot ha e r me lが,医薬品産業 を例 に実証 4. 技術 変化 と日本企 業 の行動 している [ 7] 。彼の研究は,バイオテクノロジー 大 きな技術変化が既存企業の市場地位 を脅か 企業 との間のアライアンスを活用 している既存 す様 々な論理が存在する。それを克服すること の医薬品企業ほど,多 くの新 しい医薬品を市場 は不可能ではないが,既存の補完資産が利用で に導入 してお り,その結果財務的な成果 も優れ きない限 り,企業は効率性 と柔軟性 を両立 させ ていることを示 している。また,基礎研究など る独 自の能力や巧妙 な戦略 を身につけなければ の探索段階でのアライアンス よりは,臨床段階 ならない。これが既存研究の大 まかな結論であ や商品化の段階におけるアライアンスの方が成 る。 果に与える影響が大 きいことも示 されている。 しか し,既存企業の凋落 を説明する既存の論 ただし,行 き過 ぎたアライアンスは,成果にマイ 理はどこまで一般的であ りえるのか。既存企業 ナスの影響 を与えることも示 されてお り,適切 の凋落を説明するために既存研究が扱 ってきた な戦略的選択が重要であることを示唆 している。 産業 について 日本企業の状況 をみると,理論的 既に説明 して きたように,既存企業が技術変 予測 とはかな り異なった現象がみ られることが 化に対応で きない 1つの大 きな理由は,既存事 わかる。例 えば斉藤は,Tus hma na ndAnde r s on 業の効率性 を重視することが,新 しい技術機会 が扱 ったセメン ト産業の調査 [ 1 0 ]を日本企業 9) 以下で紹介する以外 にも,補完的資産の重要性,余剰資源 ( 財務的なゆとり)の存在,技術的発見 と事業化 との間の 時間の長 さが,既存企業の存続可能性 を高める要因 として指摘 されている。 - 11 5- に関 して行 い,能力破壊的な技術変化が既存企 2],[ 39] ,[ 4 0 ]。Ches br o u g h を探索 している [ 業の凋落 をもたらしていなかったことを示 して の [ 2] に示 されるように,1 4インチ ドライブ 1 3] 。 また新宅 は,腕時計産業 における いる [ か ら8,5. 25,3. 5,2. 5とい う技術世代 の転換 と クオーツ化 とい う技術変化 をセイコーが乗 り越 ともに,米国の リーダー企業 は次 々 と入れ替わ 1 4]。 えて市場 を支配 したケース を示 している [ り,かつての リーダー企業の多 くは市場か ら姿 さらに,以下で検討するように,He nde r s ona nd を消す ことになった。それに対 して 日本企業の cl ar kが調査 した半導体露光装置 にお いて も 4か ら3, 5まで,常 に富士通,日立, 場合 には,1 [ 5], 日本のキヤノンとニ コンは複数の技術世 NEC, 東芝が市場 をリー ドして きた。事実, 2 0 0 3 代 にまたがって主要プレーヤー として存在 して 年現在で も,ノー トブ ックな どのモバ イル用で i s t e ns e nが取 り上げたハ ー ドデ ィス ク きた。chr は富士通,日立,東芝の 3社が世界市場の大半 ドライブ産業で も日本の リーダー企業の入れ替 を占めてお り,デスク トップ用 を含 む HDD全 わ りは観察 されない [ 1 ]。近年急速 に成長 した 体で も,これ ら3社 は,依然主要なプ レーヤー デジタルカメラ産業 において も,既存のフィル として存在 している。 ムメーカーやカメラメーカーはいまだに市場 に Che s br oughはこうした 日米の違いを3つの制 度的要因か ら説明 している。 1つは技術者の流 おける重要な地位 を占めている [ 35]。 これ らの 日本企業がそれぞれ,技術変化 を乗 動性 の違いである。技術者の流動性 の高い米国 り越 える独 自の能力や巧みな戦略 をもっている では,優秀 な技術者が比較的たやす く他社 に流 とい う説明 もあ りえる。しか し,もし米国企業 出す る。ス ター トア ップ企業で さえこうした技 と日本企業 との間に比較的一般 に観察 される違 術者 を獲得す ることが可能である。高い流動性 いが存在 しているとなる と,必ず しも個別企業 ゆえ,既存企業 は,技術者 に対す る教育投資の 特有の要因に帰着で きない構造的な要因が背後 効果 を十分 に内部化す ることがで きない。つま にある可能性が高い。であれば,従来の説明論 り,教育投資 を行 うインセ ンテ ィブが乏 しい。 理 は,特定の条件下で成 り立つ理論であるのか こうした状況下では,優秀 な技術者はます ます もしれない。その条件 を明確 に した上で,よ り 既存企業か ら流出する。ス ター トア ップ企業の 一般的な論理 を提示す る必要が出て くる。 方が金銭的な便益 を含めて高いインセ ンティブ 理論的予測に反する日本企業の行動 に注 目し を与えることが可能だか らである。 た研究はこれ までにも存在す る。以下では,そ 一方,流動性 の低い 日本の状況下では,技術 れ らの研究 に言及 しなが ら,技術変化の超克 と 者の流出を心配す ることな く,既存企業 は十分 い う現象が 日本企業 について観察 される理由を な教育投資 を行 うことがで きる。それゆえ既存 探索的に議論 してみたい。特 に,HDD産業,辛 企業の技術力 は向上す るO一方,新規参入企業 導体露光装置産業,デジタルカメラ産業 を対象 は優秀 な技術者 を獲得 で きないために,技術的 に議論 を進めることとする。 に既 存 企 業 に対 抗 す る こ とが で き な い 。 4. 1 HDD産業における日本企業の行動 : Che s br oughはこの点 に関 して,米国の新規参入 企業 に比べ て,日本の新規参入企業の方が,参 Chesbr oughの研 究 既 に紹介 した ように,HDD産業の調査 をも 入時点での技術力 において劣 っていた という事 i s t e ns e nは,技術世代 の転換 とともにか とにChr 実 を示 している [ 2]。1 98 4年か ら 1 9 92年 まで っての リーダー企業が市場か ら駆逐 されるとい に市場参入 した 日本の新規企業 1 7社の中で,参 う現象 を説明するために,破壊的技術 とい う概 入時点で HDDの記録密度の業界平均 を超 えて 1 ]。しか しなが ら,既存企業の 念 を提示 した [ いた企業 はわずかに4社であった。それに対 し 凋落 とい う現象 自体が,日本企業 に関 しては観 6社 の内 11社 て,同 じ時期の米国の新規企業 1 察 されない。 が,業界の平均記録密度 をこえた技術 をもって Che s br oughはこの違いに注 目して,その理由 市場参入 を果た している。日本の場合,多 くの -116- 研究 技術 計画 vo l .1 8 ,No.3 / 4,2 0 03 新規参入企業は,他業種か らの多角化であった が,それで も内部 もしくはグループ内需要に一 が,これ らの企業が十分 な技術 を開発で きてい 部依存す ることが可能であった。こうした関係 なかったことを示 しているO は,特 に新 しい技術 を事業化する時間的余裕 と またChe s br oughは,流動性 と関連 して技術者 い う点で有利 に働 く。新技術 の導入でた とえ他 の専門性 の違い も指摘 している。特定の技術や 社 に遅れ をとったとして も,また,市場の拡大 コンポーネン トに特化 して狭い専 門性 を維持す に合わせて十分な性能がでるまで待 ってか ら製 る米国の技術者 は,企業 間 を移動す ることに 品 を導入 した として も,緊密 な関係 にある買い よって多 くの便益 を得 る。一方,相対的に広い 手がそれまで購入を待 って くれる可能性が高い 経験 をもつ 日本の技術者 は,む しろ企業内にと か らである。他方,この ような緊密 な関係 のな どまることによって得 るものが多い。その結果 い米国企業の場合 には,新技術 の登場 とともに として,日本企業 は,異 なる技術領域 をまたが 常 に顧客 を失 う危険性 に晒 されて きた。ある時 るようなア-キテクチュラルな変化 に対する柔 点で性能が高い ものがあれば買い手は蹟緒な く 軟性 を確保す ることがで きる。 そち らに切 り替 える。実際 に,主要顧客であっ Ches br oughが指摘す る 2つ 告の制度的要因 は,ベ ンチ ャー フ ァン ドの違 いである。ベ ン BM が調達先 を変更 したため に凋落 した企 たI 業が米国では多い。 チャーキャピタルなどスター トア ップ企業 を支 以上の議論 は次の ようにまとめることがで き 援す る外部資金が相対 的 に豊富 な米 国の場合 る。HDD産業で 日本 の既存企業が技術変化 を は,優秀 な技術者が企業 を離れて起業す る機会 乗 り越 えることがで きたのは,( 1 )ベ ンチ ャー に恵 まれている。ベ ンチ ャーキャピタルは既存 資金の欠如のために脅威 となるス ター トアップ 企業で働 く優秀 な技術者 をターゲ ッ トに して, 2)技術者の流動性の低 さ 企業が存在 しない,( 既存企業 には対抗で きない ような報酬パ ッケー ゆえに,資金 を もつ他 産業 か らの新規参入者 ジを提供す る。その結果,既存企業で培 われた 3)供 ち,十分 な技術力 を獲得で きなかった,( 技術的ノウハ ウは,新規企業で事業化 されるこ 給者 と買い手の緊密 な関係 ゆえに,事業化の遅 とになる。米国の リーダー企業は確 かに世代 と れが既存企業 にとって致命的にな らなか った。 ともに変わっているが,多 くの場合 は既存企業 この議論が示唆す るように,制度的なコンテク からス ピンアウ トした技術者が起業 して,その ス トが異 なる場合 には,理論の予測 とは異 なっ 企業が次の世代 を担 っているQ企業 は変わるが た現象が観察 される可能性がある。 人は変わっていないのである。 しか し,ここでの議論は,必ず しも従来の説 外部の リスクマネーに乏 しい 日本の場合,既 明論理 自体 を否定す る ものではない。やは り, 存企業 は人材流出の問題 に直面す ることな く, 既存事業 を代替するような新技術への投資 イン 技術への継続的な投資 を行 うことがで きる。日 セ ンティブは低 く,既存の組織ルーチ ンが新技 本のスター トア ップが米国のベ ンチャーファン 術 の もた らす脅威 と機会の適切 な把糧 を妨 げ, ドに頗 るとい う手 も考 えられるが,人的つ なが 顧客への過度 な対応が破壊的な技術への投資 を りもな (情幸酎こ乏 しい 日本のスター トア ップに 阻害 しているか もしれない。しか し,たとえそ 米国のベ ンチ ャーキャピタルが投資をする可能 うであって も,既存企業 に対す る対抗勢力が制 性は相対 的に低い。 度上の制約ゆえに登場 してこない。だか ら既存 ches br oughが指摘 する 3つ 目の制度的要因 企業が存続で きる。既存企業が技術変化への対 は,供給者 と買 い手 との関係 である。 日本 の 応 に消極 的 になる論理が た とえあ った として HDD メーカーの多 くは当初,社 内 もしくはグ ち,それが実際の凋落 とい う現象 につ なが らな ループ企業 に対す る需要 に依存 していた。供給 s br oughの議論 い ような制度的要因がある。che 者 と買い手 との間には極めて緊密 な関係があっ はこの ようにまとめることがで きる。 た。その後,他社 に対す る販売 を広 げてはい く - 117- 4. 2 半 導 体 帝 光 装 置 産 業 にお けるキヤノンとニ コン 981 えて存 続 して い る こ とが わ か る。ニ コ ンは 1 年 に最 初 のス テ ッパ ー を導 入 した後 ,9 0年 まで 技 術 変化 が 製 品 を構 成 す る部 品 間 の新 た な組 00 2 に は世 界 シ ェ アで トップ に な り,そ の後 も2 み合 わせ を必 要 とす る と き,高 度 に分 業 した既 年 にい た る まで そ の地位 を維 持 して きた。キヤ 存企 業 はその技 術 変化 の もた らす機 会 と脅 威 を 983年 に最 初 の ス テ ッパ ー を導 入 し,ま ノ ン も1 適 切 に認 識 す る こ とが で きず ,新 規 参 入企 業 に 995年 にい た る まで, もな くGCAを凌 駕 した 。1 よって市 場 地位 を置 き換 え られ て しま う。これ これ ら 2社 で 世 界 市 場 の 70 75% を占 め る時代 nde r s on が , 半 導体 装 置 産 業 の分析 を通 じて He 33]l l ) 。 が続 いた [ 5]。 a ndCl a r kが発 見 した こ とで あ った [ He nde r s onは, キヤ ノ ンが 1 986年 まで の 3つ Hender s onandCl a r kが 分 析 を行 っ た の は , の技 術 世代 に渡 って存 続 して きた とい う例外 事 1 965年 か ら 1 986年 まで の製 品 で あ る。そ の 間 , 象 を取 り上 げ て ,理 論 的予 測 に反 して なぜ キヤ 確 か に,技 術 の世代 交 代 と と もに リー ダー企 業 ノ ンだ けが技術 的 断絶 を超 克 で きたの か を分析 が 入 れ替 わ って きた。彼 女 らの分 析 に よれ ば , して い る [ 1 2] 。彼 女 は ,2つ の可 能性 を議 論 し 露 光 装 置 の タイ プ別 の 累積 販 売 台 数 シ ェ ア は, てい る 。1つ は キ ヤ ノ ンの製 品 開発 力 が例 外 的 コ ンタク トア ラ イナ ーで Co bi l t が 44%,プ ロキ に他 社 よ りも優 れ て い た とい う説 明 で , もう 1 7%, ス シ ミテ ィア ラ イ ナ ー で は キヤ ノ ンが 6 つ は,キ ヤ ノ ンが ア - キ テ クチ ュ ラル知 識 に戦 キ ャニ ン グ ・プ ロ ジ ェ ク シ ョ ンで は per ki n_ 略 的 な投 資 を行 って きた とい う説 明 で あ る。 El me rが 78%,第 一 世代 の ス テ ッパ ーで は GCA He nde r s ona ndCl a r kが提 示 した論 理 [ 5]の背 が5 5%,第二 世代 の ス テ ッパ ーで は ニ コ ンが 70 後 にあ るの は,短 期 的 な効 率 性 と長期 的 な適応 % を占め て そ れ ぞ れ市 場 を支 配 して い た ([ 5] 能 力 の トレー ドオ フの 問題 で あ る。既 存 製 品 の p. 24)。 開発 や改 良 を効 率 よ く推 し進 め るた め に,製 品 この 間,各技 術 世代 で リー ダー で あ った企 業 の アー キ テ クチ ャに適 合 した形 で の分 業 が必 要 の ほ とん どは,技 術 の世代 交代 を乗 り越 え る こ 42]。 しか し他 方 で ,分 業 は,技 術 変化 とな る [ とが で きず ,市 場 か ら姿 を消 す こ と とな った。 へ の長 期 的 な適 応 力 を削 ぐ危 険性 を もつ [ 4 3 ] 。 しか しキ ヤ ノ ンだ け が例 外 だ っ た。 キ ヤ ノ ン も しキヤ ノ ンが こ う した トレー ドオ フに も関 わ は,プ ロキ シ ミテ ィア ラ イナ ー,ス キ ャニ ング ・ らず ,長 期 的 な技術 適 応 を可 能 に して きた とす プ ロ ジ ェ ク シ ョン,ス テ ッパ ー の 3つ の世代 を れ ば,そ れ は,短 期 的効 率 性 を犠 牲 にせ ず に長 通 じて主 要 な プ レー ヤ ー で あ り続 け た 10)0 期 的 な対 応力 を維持 で きる特 異 な能力 を もって さ らに 1 986年 以 降 の この 産 業 の動 向 をみ る い るか ,も し くは,短 期 的 な効 率 を犠 牲 に して と,キヤ ノ ンだ けで な くニ コ ン も技術 世代 を超 まで も長期 的 な適応 力 を維持 す る とい う選択 を 1 0)キヤノンは,現在でも,ASML,ニコンについて第 3位のメーカーである。 I l )この間,ア-キテクチュラルな知識の変更を要求するような技術変化がなかったわけではない。ア-キテクチュラル な変化をともなう技術革新は少なくとも2つあった。1つはレンズスキャニングステッパーの登場であり,それは1 98 9 年に米国のSVGLによって最初に導入されたものであるo現在,市場では,このレンズスキャニングステッパーが主 流となっている。なおsvGLは2001年5月にASMLによって買収されているQレンズスキャニングステッパーでは, レンズの中心部分をスリット状に制限して使用 して,ウェハステージとともにレチクルステージも同時に動か しなが ら,走査する形で露光を行う [ 41 ] 。ステッパーにスキャン動作を加えたものである。これによって,一度の露光で きる範囲を拡大することが可能となり,生産性が向上する。それと同時に,レンズ収差の少ない中心部分だけを利用 することによって,解像度も向上できるようになる。ただし,レチクルステ-ジとウエハステージの双方の動きを同 期化させる必要があるため,より高度な制御技術が要請される。またレチクルステージの動きも加わるため,振動を 吸収するためのボディー構造を含めた装置全体の新たな統合が必要になる。その意味で,まさに, He n d e r s o na n dCl a r k [ 5]がアーキテクチュラルイノベーションと呼んだものに該当するOもうl つのイノベーションは,光源としてのKr F ( フッ化クリプ トン)エキシマレーザーの登場である。1 990年前後から登場 し,1 995年前後から主流になり始めた。 コンタクトアライナーの時代から長く, 露光装置の光源には水銀ランプが使われてきた。 それまでの光源の進歩では, 水銀ランプから一定の波長を取 り出すためのフィルターを工夫することで対応できたが,レーザー光源の登場に対応 して,投影レンズや照明系の装置ユニットやレジス トなどの材料にいたるまで改良が必要となった。その意味で,光 源という1つのコンポーネント( ユニット)の変更を起点としているが,これは,装置システム全体の新たな組み合 わせを必要としたイノベーションと考えられる0 -118- 研究 技術 計画 行 っていたかのいずれか となる。 Vol 。1 8, No 3 / 4, 2003 いたことな どを指摘 してい る。つ ま りキヤ ノン 前者の可能性 に関 しては,8 0年代後半以降, は,特定世代 における技術 的 ・財務的パ フォー 自動車産業 を中心 として,多 くの研 究が 日本企 マ ンス を犠牲 にす る意思決定 によって,効率性 業の製品開発力の高 さを示 して きた [ 4 4] 。そ こ を追求 した分業の毘か ら逃れていた とい うこと では,強力 なプロジェク トリー ダーによる統合 になる。 刀,機能横 断チームの柔軟性,それ らを支 える 特定技術世代 での技術 的 ・ 財務 的な最適化 を 社内ローテーシ ョンや結果 としての広 い専 門性 犠牲 に して長期的 な技術投資 を行 えるのが,餐 などが指摘 された。また近年では,これ らの研 本市場 か らの圧力が相対 的 に弱 かった ことや, 究 を受 けて, 日本企業の一般 的な傾 向 として, 多角化企業であるがゆえに特定事業 だけを切 り 異なる技術領域や異 なるコンポーネン ト間の統 離 して最適化す る必要性 に乏 しかったことな ど 合 にかかわる 「 す り合 わせ能力」の高 さを指摘 と関係 してい るとすれば,こうした戦略的投資 する研 究 もある [ 45] 。こうした能力 は確 か に, も日本企業 について観察 されやすい ものであっ 既存製品の改良に関わる効率性 と部品間の新 し たことは理解可能である。キヤ ノ ン同様 にニ コ い統合のあ り方へ の適切 な対応 を両立 させ る仕 ンが世代 を超 えて市場 を支配 して きたこともこ 組み としてみ ることが可能である。 この点 は, の点 か ら説 明す る こ とは部分 的 には可能 で あ HDD産業 の分析 を行 った Ches br oughも同様 に る。 指摘 している。彼 は,こうした柔軟性 の背後 に 4. 3 分業とアーキテクチュラル知敵の関係 :読 明論理 の修 正 は,日本 の制度 的要因が絡 んでいる と考 えてい る。既 に紹介 した ように,技術者の流動性が低 ただ し,1 9 9 5年以降の半導体露光装置産業 の ければ,技術者 は特定 の狭 い領域 における専 門 現象 を観察す る と,それ まで市場 を支配 して き 性 を磨 くよ りも,組織 内部 での様 々な領域 に適 たニ コンや キヤノンの シェアが低下 し,オラン 用で きる能力 を身につけようとす る動機が高 く MLが急速 に台東 して きた こ とが わか ダの AS なる。自らのキ ャリアを考 えれば,組織 として 9 9 0年 には 1 0%に も満たなか ったAS MLの る。1 のアウ トプ ッ トにつ ながるような 自己投資 を積 シェアは,1 9 9 5年 には 1 4%とな り,2 0 0 0年 に 極的 に行 うのが 自然であ る。日本企業で は組織 0%を超 え,2 0 0 2年 には 4 4%にまで増大 し は3 内部での異動が頻繁 に行 われる とい う事実 もこ 9 9 5年 に 4 5%であったニ コン てい る 12)。一方 1 うした議論 と符合す る [ 4 6 ] 。 のシェアは,2 0 0 0年 には 3 6%,2 0 0 2年 には 31 He nde r s onは,キヤ ノンに関 して も, こうし た優れた製品開発能力 をもっていた とい う解釈 %へ と減少 している。この間,キヤ ノンについ て も同様 の減少傾 向がみ られる。 を否定で きない としなが らも,む しろ,キヤ ノ 1 9 9 5年 とい うと,確 か に レンズスキ ャニ ング ンが ア-キテクチュラル知識への戦略的な投資 Fレーザー光源が主流 にな り始 ステ ッパ ーやKr を行 って きたことが重要な要因だ と指摘 してい めた時期 と一致 してい るため ( 脚注 1 2)参月 別, る。ここで 「 戦略的」 とい うのは,何 か を犠牲 He nde r s ona ndCl a r kのい うア-キテクチ ュラル に して選択 している とい う意味で,この場合 に 5]を示す現 イノベーシ ョンによる凋落 の論理 [ 犠牲 になっているのは,先進的な技術 の採用や 象 の ように も見 える。しか しなが ら中馬 ・青 島 特定世代 での製品の最適化 ,特定世代 か らの財 が分析 している ように [ 3 3 ] ,開発 ・生産の分業 務 的 な収 益 を指 して い る。 この 点 に関 して MLの方が,ニ コン と言 う観点か らす れば,AS He nde r s o nは,技術世代 を特定す る とキヤ ノン やキヤノ ンよ りはるか に発達 している。 ニ コンの場合 は,投影 レンズの開発設計 か ら は常 に技術 的 フォロワーであ った こと,先端技 術 をつか った製品ではシェアが低 か った こと, 組立,レンズ加工,レンズ材料 ( 硝材),ステー コス トをかけて複数世代 の製品 を並行 開発 して ジの開発設計 ・組立,レテ クル ・ 搬送系 の開発, 1 2)台数 シェア。中馬 ・青島 [ 3 3 ] と各社 アニュアル レポー トか ら算出。 - 1 1 9- ボデ ィの開発 にいたるまで,ほぼ全 てを内部 に キテクチ ャの変化 ( つ ま り,コンポーネン ト間 抱 えて,機能横断的なチーム編成で製品開発 を の関係の変化)と,既知の製品システムの範囲 進めている。キヤノンに関 して も,レンズ材料 が拡大するとい う意味でのアーキテクチ ャの変 を除いて,ニ コンとほぼ同 じように内部化 して 化である [ 42]。 He nde r s ona ndCl a r kが調査 を した 1 986年 まで いる。それに対 して,ASMLは,投影 レンズ と 照明系 をほぼ全 てカール ・ツ ァイスに依存 し, の露光装置 における技術変化 は飽 くまで も露光 ステージはフィリップス,その他,レンズ材料, 装 置 内部 の アー キ テ クチ ャの変化 で あ った ボデ ィ,測定 ・調整装置 など鍵 となるユニ ッ ト [ 5]。ゆえに,分業や専 門化が技術変化への対応 をほぼ全て外部か ら調達 している。ASMLはシ を遅 らせ,逆 に組織内の機能横 断的な柔軟性が ステム設計 と最終組立 に焦点 を当てた形 になっ 技術変化への対応 を可能に して きたという論理 てい る。ユ ニ ッ トのモ ジュラー化が進 んでお も納得で きる。しか しなが ら,近年のこの産業 り,高度 な分業体制の もとで開発 ・生産が行 わ における技術変化の影響 は,従来の露光装置の れている。 範噂 を超 えることが多い。こうなる と顧客であ ASMLは 1 987年 にステ ッパーで この産業 に るデバイスメーカーを含む他企業 との広範囲な F 参入 して以来,スキャニ ング・ ステ ッパーやKr や りと りが必要 となって くる。こうしたや りと やAr F( フツ化 アルゴン)とい う新たな レーザー りは,他企業 か ら人材が移動 して くることに 光涯の登場 を乗 り越 え,む しろそれ らを利用 し よってより効果的に行われるとい う側面 も否定 て急速 に台頭 して きた。高度 な分業の中でなぜ で きない。実際 にASMLでは,主要な技術 的人 それが可能 になっているのか。 材が,デバ イスメーカーか ら移動 して きている 中馬 ・青島が提示 した 1つの回答 は,広範囲 3 3]。日本企業 2社 の場合 には 例 も少 な くない [ 33] 。特 に なコラボ レーシ ョンへの参加である [ 顧客であるデバ イスメーカーか らの人材獲得は ベ ル ギ ー にあ る半 官 半民 の研 究機 関 で あ る ほぼ皆無であった。人材の流動性の低 さは既存 I MECにおける, レジス トメーカー, フォ トマ 企業が技術変化 を超克する上での足かせ にな り ス クメー カー, レジス ト塗布 ・現像装置 メー かねない。 カー,デバイスメーカーなどとの「出会いの場」 をた くみ に利用 している ことがあげ られてい 現在の露光装置産業では,分業や専 門を基盤 として技術者の流動性が高い中で,広範囲な共 る。半導体 に求め られる性能が物理的限界 に近 同体制 を構築で きている既存企業の生存確率が づ くにつれて,露光装置の開発 において,半導 高 まっている可能性が高い。ニ コンやキヤノン 体生産プロセスの中で露光装置だけを切 り離 し が 90年代後半以降徐 々に低迷 して きたことの て考 えることが難 しくなって きている。材料や 背後 には,こうした,従来 とは異 なったアーキ 前後工程の装置,デバ イスメーカーのプロセス テ クチ ャの変化があ る可能性 が高い。 とすれ との関係 も含めて最適化することが必要 となっ ば,ア-キテクチュラルイノベーシ ョンと分業 ている。要求性能の向上 とともに,最適化の範 の問題 との関係 について も,アーキテクチ ャの 囲が広がって きたのである。その結果,露光装 2つの タイプの変化 を考慮する形で考 え直す必 置企業内での柔軟 な開発だけでは対応で きな く 要があることになる。 なって きた。分業 に基づ く広範囲なコラボ レー さらに,要求性能の向上 と装置 システムの急 シ ョンな くしては,技術変化への対応が困難 に 速 な複雑化が,分業 を余儀 な くしているという なって きた。 側面 もある。次世代 の露光装置は 1台 50億 円 も この ように考 える と,He nde r s ona ndCl a r kが するような巨大 なシステム となっている。シス 規定 したア-キテクチュラルイノベーシ ョンと テムが複雑 になると,システム全体 を半独立的 い う概念 [ 5]を2つの方向で考 える必要がでて なモジュールに切 り分けて,全体の機能保証 を くる。1つは既知の製品システム内部でのア- 42], 行 うとい うことの必然性が高 まって くる [ - 1 : 0- 研究 技術 計画 vol .1 8, No.3 / 4,2003 [ 4 7] ,[ 48] 。分業 な しではとて も開発で きない ニ ングステ ッパーへの転換 において全てをゼロ ような複雑性 を製品が内包 している。 か らや り直す必要があったために,極めて困難 既存企業内で分業が確立 されるプロセスとし な問題解決活動 に取 り組 まなければならなかっ てHe nd e r s ona ndCl a r kが前提 としていたのは次 た。両者の違いは,製品アーキテクチ ャ全体 に 5 ]。まず市場 におい のようなプロセスである [ 関す る理解の違いであると推測 される。 このようにシステムの複雑性が高ま り分業の て ドミナ ン トデザイ ン [ 49]が確立 されると, 製品アーキテクチ ャが安定 して,そのアーキテ 必然性が高い場合 には,む しろ分業 を積極的に クチ ャに関する知識が業界で共有化 される。続 進めること自体がア-キテクチュラルな知識の いて,開発 の焦点はコンポーネ ン ト レベルに 蓄積 につなが る可能性がある。こうしたことは 移動 し,既存 アーキテクチ ャの下での新製品開 アーキテクチ ャの変化が頻繁な場合 には特 にあ 発や改良が進め られる。コンポーネ ン ト・レベ てはまるか もしれない。 Ga uda r ndKuma r a s wa my ルに焦点 を当てた新製品開発 を効率 よく行 うた はこの点 に関連 して,技術が システ ミックな性 めに組織 は高度 な分業体制 を確立す る。 質 をもち,しか も技術変化が激 しい状況の もと ところが,製品システムが急速 に複雑化す る では,モジュラー化 に もとづ く広範囲な分業 と と,その複雑性 を処理するために,既存のアー 協業 の仕組 みが重要 になることを示 している キテクチ ャに関する知識 レベルに関わ らず,分 [ 5 0] 。 業の必要性が増大する。そ して,その分業 を遂 以上の議論 は,高度 に分業 を発達 させ た既存 行するために,アーキテクチ ャに関す る知識 を 企業はア-キテクチュラルイノベーションに対 獲得す る必要性が生 じる。全体像がわかってい して脆弱であるとい う論理 を適用す る上では, なければタスクを適切 に切 り分けることがで き システムの複雑性 ,モ ジュラー化 と企業間の ないか らである。そ してこのア-キテクチュラ ネ ッ トワークの必要性 ,アーキテクチ ャ変化 の ル知識の違い,もしくはシステムに関す る全体 頻度 といった条件 を考 える必要があることを示 的な理解 の差が,技術変化への対応力 を決定付 唆 している。 けることになる。 4. 4 デジタルスチルカメラ産業における日本企業 ここでは,分業 とア-キテクチュラル知識の Tr i ps a sa ndGa ve t t i は,カメラのデジタル化 に 蓄積の順序が逆 になっている。既存企業 におけ 対する対応 におけるポラロイ ドの失敗 を描いた る分業の発達 は,ア-キテクチュテルな技術変 が,日本 のカメラメーカーや フィルムメーカー 化への対応力 を削 ぐどころか,む しろそれを促 の多 くは,デジタル化の波 を乗 り越 えて市場地 進す ることになるo 位 を維持 している。2003年度 における世界のデ lつの例 として,ASMLが, レンズスキャニ ジタルカメラ市場 におけるブラン ド別のシェア ングステ ッパーへ移行す る以前 に,ステ ッパー は,ソニー,キヤノン,オリンパス光学工業,富 において既 にレンズの縮小倍率 を従来の 5倍 か 士写真 フイルム,ニ コンの順 となってお り】3), ら4倍 に変更 していたことがあげ られる [ 33] 。 ソニーを除けば全て銀塩写真の時代か らの主要 レンズスキ ャニ ング方式では,現在,レンズの なプ レーヤーである。海外企業では,ポラロイ 縮小倍率 は 4倍 となっている。ASMLは レンズ ドやアグフアゲバル トは事実上撤退 してお り, スキ ャニ ング方式へ の転換 を先取 りして,ス コダックは子会社化 したチノンか らの供給 を受 テッパーにおいて投影 レンズユニ ッ トを転換 し けて市場で存続 しているが ,2003年のシェアは ていた と考 え られる。こうしたことが可能 とな 7%前後で 6位 にとどまっている。 るのは,レンズユニ ッ ト部分 をモジュール とし デジタルカメラ市場立 ち上 げの きっかけ を て きちん と切 り離 して設計 されているか らであ 作 ったのは1 995年 3月に導入 されたカシオ計算 ろう。一方,キヤノンやニコンは レンズスキヤ 1 0であるが [ 51 ],その後の急速 な成 機 の QV- 1 3) 日経 マ ーケ ッ トア クセスデー タに よる - 1 21- 功 を牽引 して きたのは,日本のカメラメーカー これ もデジタルカメラ市場が,画質 を売 り物 に 35]。また,それ や フィルムメーカーであった [ する旧来のカメラ市場 と同様の発展 をするよう らの既存企業 は,1 98 0年代 を通 じて,アナログ になったか らであ り,結果論 ともいえる。では の電子 スチルカメラの市場導入 に も積極 的で なぜ ,既存 の カメラメー カーや フィルムメー 1 0 あった 14)。例 えば,富士写真 フイルムはQV- カーは,デジタルカメラの技術 に積極的に投資 が導入 される以前 に既 に,1 0機種の電子スチル を して,積極 的に商品化 を進めて,市場での地 カメラを市場 に導入 していた1 5 ) 。また,世の中 位 を碓持で きたのか。以下では既存の議論 に依 に始めて発表 されたデジタルスチルカメラは, 拠 しなが ら,その説明を仮説的に検討する。 1 988年のフォ トキナで富士写真 フイルムが出展 4. 4. 1 技術者の流用可能性 した Ds-1Pである。 Ches br oghがHDD産業の分析 を通 じて明 らか カメラのデジタル化 (もしくは電子化)とい に した ように,技術者の流動性の欠如が,既存 うイノベー シ ョンは,銀塩 システムの カメラ 企業 に優位 に働 いた可能性 はある。この産業で メーカーやフィルムメーカーにとって技術的に 有力 なベ ンチ ャー企業が 出て こなか った こと は明 らかに能力破壊的である。光学系の技術 は は,1つのあ らわれ と考 え られる。 しか し,技 継承可能であるが,電子技術 はほ とん どゼロか 術者の流動性 の低 さゆえに,家電やエ レク トロ らの開発 となる。また,市場の起爆剤 となった ニクス産業の多角化企業が,優秀 な技術者 を獲 QV1 0の画質が QVGA ( VGAの 1 / 4)で印刷 に 得 で きなか った, とい う議論 は当てはま らな 耐 えうるものではなかったことと,当初の利用 い。電子スチルカメラは技術構造上,ビデオカ がインターネ ッ ト上のサムネイルやメモ代 わ り メラと類似 してお り,技術 的に優位 にたてる可 に使 われていたことか らすれば,このイノベー 能性が高かったのは,む しろ家電やエ レク トロ シ ョンはいわゆるChri s t ens enのい う 「 破壊的技 ニ クス メーカーであ った 18)。 しか し家電 メー 術 」[ 1 ]の範噂 に入る ものである。またデジタ カーによって この市場が席巻 され るこ とはな ルカメラによる銀塩 カメラの代替が急速 に進ん かった。 家電 メーカー とカメラ ・フィルムメーカーと でいる現状か らして,デジタルカメラは経済学 モデルでい う ドラスチ ックイノベーシ ョンとな の違いは,技術者の流用可能性 の違いにある。 りつつある 16)。それにも関わ らず,既存のカメ ビデオカメラ市場が成長す る中では,市場の見 ラ ・フィルムメーカーが市場での地位 を維持 し えないデジタルカメラに従事す る技術者 は,ど て きたのはなぜか。 デオカメラ開発 に転用 される可能性がある。事 補完的資産の議論 も部分的に しか適用で きな 莱,家電 メーカーの多 くでは,ビデオカメラ開 い。家電やエ レク トロニクスメーカー と比較 し 発 と電子スチルカメラ開発が同 じ組織ユニ ッ ト て生産設備 的な優位性 は期待で きない し,流通 内で行 われていたため,転用 は容易であったこ c関係で過半 を占めている現 網 も家電量販 とp とが推察で きる。一方,銀塩 システムのカメラ 状 17)か らしてカメラ・フィルムメーカーは優位 メーカーやフィルムメーカーの場合 には,デジ な立場 にはないO確かにカメラメーカー として タルカメラ開発 に従事す るエ レク トロニ クス ・ のブラン ドは大 きな効力 をもっている。しか し エ ンジニアを転用す る場所がない。外部労働市 1 4)カメラの電子化で先行 していたのはソニーである。ソニーは 1 9 72年か らCCDの開発 に着手 している。しか し,カメ ラメーカーやフィルムメーカー も7 0年代後半か ら 8 0年代前半 には開発 に着手 している。 1 5)その他の企業で 5機種以上導入 していたのはソニー ( 7機種) とキヤノン ( 6機種)であったc 1 6 )2 0 0 3年,銀塩 カメラの出荷台数は前年比 3 0%以上減少 して 1 , 6 0 0万台強 となった。対 してデジタルカメラは 7 7%増 で4 , 3 0 0万台以上が出荷 された (カメラ映像機器工業会データ)0 1 7)筆者によるインタビューか ら。 1 8 )8 0年代 に発売 された電子スチルカメラは,ソニーが 1 9 81年 に発表 したMAVI CA ( Ma gne t l CVi d e oCa me r a )の規格 に 沿 った もので,それが当時の ビデオ規格 に類似 した ものである。この規格り は, は,ソニー -,キヤノン,松下電器,日立 を 主体 とした 「 電子スチルカメラ懇談会」によって設定 された規格である このことか らもわかるように,技術的に家 電 メーカーが遅れをとっていたことはないo I 1 2 2- 研究 技術 場の流動性が低 いため, これ らのエ ンジニ ア 計画 vo l .1 8 .No . 3 / 4 ,2 0 0 3 日々激 しい技術 変化 に直面 してい る実務家 に は,他社 に移動 して力 を発揮 す るこ とも難 し とって も極めて重要 なことである。この間題 を い。製品化 を加速化 して,市場の可能性 を証明 扱 うために本論文では,特 に 「 大 きな技術変化 しない限 り,社 内での存在意義 を訴 えるすべが とともに既存企業が凋落す るのはなぜか」とい ない。 う問いを中心 に行 われて きた既存研究 を整理す 家電 メーカーの場合 には,ビデオカメラとデ ることか ら始めた。そこでは,標準的な経済学 ジタルカメラとの間の資源配分の問題 に直面す のモデルか ら組織論 を基盤 に した様 々な論理 ま る可能性が高い。特 にビデオカメラ事業が成長 で,企業行動 に対す る仮定の違い に注 目 して, しているときに,デジタルカメラ開発 に優秀 な 既存研究の全体像 を概観 した。続いて,逆 に,既 技術者 をあてることを社内的に正当化すること 存企業が優位 に立つ ような条件 を明 らかに した は困難である。彼 らは ビデオカメラ開発 で も力 研究 を紹介 した。それ らの研究の多 くは補完的 を発揮で きるか らである。実際に,オ リンパス 資産の役割 に注 目 していた。 やニコン,ペ ンタックスな どに OEM 供給す る 続いて,日本企業の行動が,それ らの理論 の ことによって生産 シェアでは世界で第 1 位 にあ 予測 と必ず しも合致 しない とい う事実 を明 らか る三洋の場合 には,ビデオカメラ事業か らの撤 に しなが ら,この問題 を扱 った既存研究 を含め 退が大量の 「 社 内失業者」を生み出 し,それが て議論 を行い,既存の理論 に対す る修正や境界 デジタルカメラ開発 の原動力 となっていた 1 9 ) 。 条件 を検討 して きた。多 くは推測の城 をでてい 労働市場の流動性が低 い中,行 き場のな くなっ ないが,今後の研究課題 とな りうる以下の よう た人々の力が,この新 しい事業の立 ち上げを可 な仮説が議論 されたO ・ 技術変化が既存企業 に与える影響 は制度的 能に した と推察 される。 要因に左右 される。特 に,低い労働流動性 この ように,外部労働市場の流動性が低 く, 逆に内部労働市場の流動性が高い場合 には,技 やベ ンチ ャーファン ドの欠如 などス ター ト 術的に類似 な領域へ の進 出はむ しろイノベ ー ア ップ企業 に不利 な制度の下では,技術変 ションへの過少投資 をもた らし,逆 に,技術的 化の もた らす既存企業の競争力への負の影 響 は緩和 される。 に既存事業 と遠 く離れた領域への進出が技術者 の開発意欲 を高めるとい う現象がお きうる。つ ・ 技術世代 を超 えて存続す る企業 は,高い製 まり,能力破壊的なイノベーシ ョンにおいて既 品開発能力 をもつか,短期的な技術 の完成 存企業が優位 な立場 に立つ とい う逆説的な論理 度や財務的な収益 を犠牲 に して長期的な対 が成 り立つ可能性がある。 応力への投資 を しているかのいずれかであ る。 HDD産業や半導体露光装置産業での技術変 ・ 製品アーキテクチャの変化 を伴 う技術変化 化の場合 には,飽 くまで も同 じ技術 の系の中で の変化であった。それに対 してカメラの電子化 には,製品 システム内部の変化 と,製品シ という技術変化 は,異 なる技術 の系への転換で ステムの範囲 を拡大す るような変化の 2種 ある。両者では技術者の流用可能性が異 なる。 類がある。前者-の対応では,暖味な分業 上記の論理が成 り立つ とすれば,技術変化が既 や専 門性 などか らくる組織内部の柔軟性が 存企業の競争力 に もた らす影響 を考察す る上 重要 となる。しか し,後者への対応では,分 で, これ ら 2つの違いを考慮す る必要がある。 業 に もとづ く企業 間共同が重要 となる。そ の場合 には,企業間での技術者の移動やそ 5. おわりに れに伴 う専 門性の高 さが必要 となる。 ・ 分業 と技術変化への対応力 との関係 は一様 企業の競争力 に対する技術変化の影響 を的確 ではない。一方で,既存の製品ア-キテク に把握す ることは,学術 的な興味 のみな らず, 1 9)大阪読売新聞,2 0 0 0年 6月 1 0日,11面 ;日経 ビジネス,2 0 0 2年 1 0月 1 4日号 ,p. 3 30 - 1 2 3- チャに適合 した分業体制は技術変化への対 a sRe s pons e st oRa di c a lI nnova t i on:Evi de nc ef r omt h e 応力 を削 ぐ。 しか し他方で,分業 を促進 し Ph ot ol i t ho g r a phi cAl i g n me nt Eq ui pme n tI nd us t r y,RAND ようとすること自体が,製品システム全体 Jour nalofEconomi cs,24( 2),Summe r ,248269 に関する理解 を促進する。その結果,分業 ( 1 993) . を進める企業は,相対的に技術変化への対 [ 5] Hende r s on,Re be c c aa ndKi n B.Cl a r k,Ar c hi t e c t ur a l 応力 を高めることになる。 I n n ov a t i o n: Th eRe c o nf i gu r a t i o nofExi s t i ngPr od u c t Te c h - ・ 技術者の流動性が低い環境下では,既存企 nol ogl e Sa ndt h eFa i l ur eoFEs t a b】 i s h e dFi r ms , Admi ni s・ 業が能力破壊型の技術 に対応で きる一方で t r at i veSci enceQuar t er l y, 35, 93 0( 1 990). 能力強化型の技術 において遅れをとるとい La ndF. T. Ro ha t e me r l , ThePe r f o r ma nc e [ 6] Hi l l , Ch e r l e sW, う現象が起 きうる。既存企業にとって能力 oHnc umbe ntFi r msi nt heFa c eofRa di c a lI nnova t i o n, 強化型の新製品や新技術の開発では,既存 AcademyofManagementRevi ew, 28( 2).25 72 7 4 製品 ( 技術)開発へ と技術者が流用 される ( 2003) . 危険性があるか らである。逆 に,能力破壊 [ 7] Ro t ha e r r ne l ,Fr nkT,I a nc umbe nt ' sAdva nt a geThr o ug h 型技術の場合 には,新技術の開発 に従事す Expl o i t i ngCompl e me nt a r yA ss e t sv ial nt e r f i f mCoo pe r a - る技術者 を転用する場が社内にないため, t i on,St r at egi cManagementJour nal ,22,68 769 9 存在意義 を示すために技術者が開発や商品 ( 2 001 ) . 化 を加速 しようと試みる。 [ 8] Tr i ps as ,Ma r y,Unr a ve l i ngt hePr oces sofCr e a t i ve 本論文では,既存理論の予測 に反 して,日本 De s t r uc t i o n:Compl e me nt a r yAs s e t sa ndI nc u mbe ntSu ト 企業が技術変化 による脅威 を克服で きた理由の v i va l i nt h eTy pe s e t t e rI n du s t r y, St r at egi cManagement い くつかを議論 して きた。しか し,それは今後 Joumal , 18,1 1 91 42( 1 997). も技術変化に対 して強靭であ りえることを示唆 [ 9] Te e c e, Da vi dJ . , Pr o f l t i ngf r o mTe c h nol o iC g lI a nno va t i o n: しているとはいえない。なぜ なら,技術者の流 en s l n ga n d I mpl i c a t i onsf o rI nt e gr a t i on, Col l a bo r a t i o n, Lic 動性の増大,ビジネスユニ ッ トなどの明確 な事 publ i cpo l i c y,Resear chPol i cy,15,28 53 05( 1 98 6) . 業の分割,組織の境界 を越 える技術変化の増大 1 0]Tus hman,Mi c ha e lL.a ndP.Ande r s on,Te c hnol ogi c a l [ など,近年見 られる現象の多 くは,日本企業の Di s c o nt l nui t l e Sa ndOr ga ni z a t i o na l En vi r o n me nt s , Admi n- これまでの適応力を変化 させる可能性があるか i st r at i veSci enceQuar t er l y,31, 439465( 1 986) . らである。この領域の研究者にとって も,また [ 11 ]Ahu j a ,Ga ut a ma n dC.M.La mpe r t ,Ent r e pr e ne u r s hi pi n 実務家にとって も重要なことは,技術変化への t heLa r geCo r po r a t i on:ALon gi t u di na lSt udyo fHowEs - 対応力 に関する論理 をその前提条件 にさかの t a bl i s he dFi r msCr e a t eBr e a kt h r o ug hI nve nt i o ns , St r at e・ ぼって理解することである。 gi cManagementJour nal , 22,521 5 43( 2001 ) . [ 1 2]He nd e r s o n, Re b e c c a , Ma i n t a i ni ngLe a d e r s hi pa c r o s sPr o d - 参考文献 uc tGe ne r a t i ons : Th eCa s eofCa noni nPho t o l i t ho g r a ph i c [ ] ] chr i s t e ns e n,Cl a yt onM"Thel nnovat or ' sDi l emma, hi hi r oNi s hi g uc hi ,( e d. ) , Man・ Al i gnme ntEqu i p ment,Tos Bos t o n: Ha r va r dUni ve r s i t yPr e s s( 1 99 7). agi ngPr oductDevel opment , Ox f o r dUni v e r s i t yPr e s s ( 1 996) . [ 2] Che s br o ug h, He nr y, TheDi s pl a c e me ntofUSI nc umbe nt Fi m sa n dt h ePe r s i s t e nc eo fJ a pa n e s eI nc umbe ntFl m Si n [ 1 3]斉藤靖,技術変換 と企業の競争カー技術革新 プロセ t heHa r dDi s kDr i veI ndus t r y,Har var d Busi ness スと既存企集の適応可能性, 一橋大学大学院修士論文 SchooI Wor ki ngPaper , 981 1 02( L 998) . ( 2 002)0 [ 3] coo pe r , A. a ndD. She nd e l , St r a t e g i cRe s p ons e st oTe c h- [ 1 4]新宅純二郎, 日本企業の競争戟略,有斐 閣 ( 1 9 9 4) 。 nol og iC a lThr e a t s ,Busi nessHor i zons,19( 1 ) ,6l 69 [ 1 5]Ar r ow, K. 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