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8.減勢工のガイドウォール

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8.減勢工のガイドウォール
8.減勢工のガイドウォール
8.1 平成 17 年度実験結果
平成 17 年度の実験により、原設計から変更された箇所は以下の項目である。
○もたれ壁→直壁
○副ダム位置:67m→35m
○副ダム高:6.5m→7.5m
○下段水切り高:1.74m→1.0m
○中央ガイドウォール:高さ EL97.0m
この変更により、最大放流量 460m3/s までは安定した減勢が可能であり、かつ、ダム設計洪
水流量 1420m3/s まで安全に導流が可能であった。しかし、460m3/s において減勢工始端から 10m
付近の左右対称の平面渦が発生することがわかっており、本年度実験では、その対策工を含め、
最終案を決定する。
図 8.1.1 平成 17 年度最終案
108
8.2 実験の概要
実験は、予備実験として減勢工内のガイドウォール設置範囲の検討を行い、概略的な形状を
決定する。その後、前述した土砂挙動実験(安定堆砂形状実験、河道整正工実験、計画洪水波形
実験)並びに低水放流設備形状実験を実施した後、本実験を行い、低水放流設備の関係構造物を
含めて、減勢工底面の平面渦を防ぎ、かつ、減勢効果を損なわない適正形状を決定する。
なお、本検討では、ガイドウォール、低水放流設備構造物(隔壁)を含めて、構造が複雑にな
らず、かつ、低水放流設備からの流出土砂量をさらに低減する構造を詳細検討により求め、適
正形状の最終形状を決定している。
予備実験
設置範囲の概略検討
(減勢工底面の流速分布)
・土砂挙動実験(貯水池)
・低水放流設備形状実験
本実験
・低水放流設備呑口の隔壁を含めた検討
・減勢効果を含めたガイドウォール適正形状
(流況・減勢工底面の流速分布)
詳細実験
低水放流設備(隔壁)との構造調整、
流出土砂量の抑制効果
(流況、低水放流設備からの流出土砂量)
ガイドウォール最終形状の決定
・減勢工流況確認
・側壁水位確認
・下流導流壁流況確認
・減勢工の土砂フラッシュ状況
・下段常用洪水吐き管内状況
・低水放流設備
図 8.2.1 減勢工ガイドウォール形状の検討の流れ
109
8.3 予備実験
予備実験では、H17 年度最終案(以降、原案という)で課題となった左右の平面渦の対策とし
てガイドウォールの設置を検討する。
8.3.1 実験ケース
実験は、減勢工の左右に 17.5m もしくは 20.0m のガイドウォールを設置し、減勢工底面の
流速分布を測定し、減勢工内の水の流れを確認する。
実験のケースは、ガイドウォールなし(原案)、ガイドウォール 17.5m(比較案 1)、ガイドウ
ォール(比較案 2)の 3 ケースで、計画最大放流量 460m3/s と 270m3/s の 2 流量について測定し
た。
(a) 原案
(b)比較案1(17.5m)
図 8.3.1 予備実験の実験ケース
表 8.3.1 予備実験の実験ケース
原案
比較案1
比較案2
ガイドウォールなし
ガイドウォール17.5m
ガイドウォール20.0m
流量条件:460m3/s、270m3/s
110
(c)比較案 2(20.0m)
8.3.2 実験結果
(1) 流量 270m3/s
図 8.3.2 に流量 270m3/s 時の減勢工内の流速分布を示す(流向・流速値は資料Ⅲp 資Ⅲ-47
~49)
。
原案は、中央部の流れがほとんどなく、左右に分かれて側壁へ向かう流れが顕著である。
また、左右 0~15m 付近に逆流が見られ、平面渦が確認できる。
比較案 1(ガイドウォール 17.5m)では、ガイドウォールがない場合には左右に分かれていた
流れが、中央部に集まった。ガイドウォールの先端に逆流部が見られる。
比較案 2(ガイドウォール 20.0m)では、ほかのケースに比べて底面の流速は全体的に小さか
った。また、逆流となっているのは、ガイドウォール上であり、底面での逆流はほとんど見
られなかった。
(2) 流量 460m3/s
図 8.3.3 に流量 460m3/s 時の減勢工内の流速分布を示す(流向・流速値は資料Ⅲp 資Ⅲ-47
~49)
。
原案では、270m3/s のときと同様に、15m より下流は左右へ向かう流速が大きかったが、全体
的に下流へ向かう流れとなっていた。0~10m 付近の左右には逆流域が見られ、平面渦が認め
られた。
比較案 1(ガイドウォール 17.5m)は、流れが中央からやや左岸寄りに広がって流れていた。
そのため、右岸側壁沿いに比べると左岸側壁沿いに大きな逆流域が見られた。
比較案 2(ガイドウォール 20.0m)では、逆流域はガイドウォール上であり、減勢工底面では
下流に向かって流れている。なお、側壁沿いの流速が中央部より若干大きかった。
ガイドウォール 20.0m(比較案 2)では、逆流域はほぼガイドウォール上で、減勢工底面では
下流に向かって流れていることが確認されたことから、ガイドウォールは減勢工始端から長
さ 20.0m が必要である。
ただし、ガイドウォールによって下段常用洪水吐きからの水脈を中央寄りに導流すると、
460m3/s 放流時には、減勢が不十分になる状況が生じている。この点の改善については、この
後に本実験にて行っている。
111
左右水叩き始端で平面渦がある
(a) 原案(ガイドウォールなし)
ガイドウォール沿いの水叩きで逆流が残る
(b) 比較案1(ガイドウォール 17.5m)
ガイドウォール沿いは下流へ、
平面渦下にはガイドウォールがある
(c) 比較案2(ガイドウォール 20.0m)
(1) 流量 270m3/s
左右水叩き始端で平面渦がある
(a) 原案(ガイドウォールなし)
ガイドウォール沿いの水叩きで逆流が残る
(b) 比較案1(ガイドウォール 17.5m)
(2) 流量 460m3/s
図 8.3.2 減勢工底面の流速分布(減勢工ガイドウォール予備実験)
112
ガイドウォール沿いは下流へ、
平面渦下にはガイドウォールがある
(c) 比較案2(ガイドウォール 20.0m)
8.4 本実験
低水放流設備の形状検討の結果、低水放流設備からの土砂量を軽減するため、減勢工内に隔
壁を設けることになった(以下、比較案 3 と記す)(図 8.4.1)。
本実験では、隔壁の設置された状態で、計画最大放流量 460m3/s まで安全に減勢でき、ダム
設計洪水流量 1420m3/s まで安全に導流できるガイドウォール形状を検討する。
図 8.4.1 比較案 3(低水放流設備最終形状(第 7 章にて検討))
113
8.4.1 実験の概要
実験は、まず下段常用洪水吐きの配置を検討した。平成 17 年度実験により下段常用洪水吐
き開口が幅 3.5m×高さ 3.5m→幅 2.9m×高さ 2.9m に縮小され、その配置は図 8.4.2 のように
内側へ寄せる配置とした。しかし、この配置で減勢工内にガイドウォールを設置すると下段
常用洪水吐きからの流れが減勢工中央付近に拘束されるため、460m3/s の放流において、減勢
が不十分になることが確認された。そこで、比較案 4 として下段常用洪水吐きを外側へ離す
配置を検討した。つづいて、減勢工内に平面渦が生じずに速やかに下流方向へ排砂がなされ
る減勢工内ガイドウォール、中央ガイドウォール、フーチング高さの詳細を検討した(比較案
5~7)。
表 8.4.1 本実験の実験ケース
概略諸元
ケース
対象構造物
目的
原案位置
比較案3
460m3/sの
下段常用洪水吐きの配置
減勢
左右とも中心から0.6mずつ外側へ移動
比較案4
減勢工ガイドウォール 中央ガイドウォール
フーチング
平面渦の解消
比較案5 減勢工ガイドウォール
EL95.0m
EL97.0m
EL97.0m
比較案6 中央ガイドウォール
EL96.5m
EL96.5m
EL96.5m 平面渦の解消と
施工性
比較案7 フーチング
EL96.5m
なし
EL98.0m
※比較案3:低水放流設備最終案検討後の減勢工形状
図 8.4.2 下段常用洪水吐きの配置検討
図 8.4.3 減勢工付近の構造物の呼称
114
8.4.2 下段常用洪水吐きの配置の検討(比較案 3、比較案 4)
低水放流設備の最終形状(比較案 3)にて、流量 460m3/s 時の流況を確認した結果、下段常
用洪水吐き 2 門からの流れが減勢工の中央を走り、十分な減勢効果が得られなかった。そこ
で、
下段常用洪水吐きの配置を中心から 0.6m ずつ外側へ移動する形状を検討した(比較案 4)。
その結果、460m3/s では下段常用洪水吐きから流下した流れは減勢工全体に広がり十分な減
勢効果が見られた。
よって、下段常用洪水吐きの配置は、中心から 0.6m ずつ外側へ移動した形状(比較案 4)を
採用する。
なお、比較案 4 にて、460m3/s に至る流量(150m3/s、270m3/s)の流況を確認したところ、下
段常用洪水吐きからの流れは、右岸寄りに流れ、左岸側に反時計回りの大きな平面渦が確認
された(写真 8.4.1)。流量が小さいときの流況を安定させるため、減勢工入り口付近の構造
物の詳細を検討する。
EL95.0m
EL95.0m
(a) 比較案 3(H17 年最終配置)
(b) 比較案 4(H18 年最終配置)
図 8.4.4 下段常用洪水吐きの配置検討(比較案 3、比較案 4)
115
(a) 460m3/s
(b) 270m3/s
(c) 150m3/s
写真 8.4.1 比較案 4 の流況
116
8.4.3 平面渦解消のためのガイドウォールの配置検討(比較案5~7)
比較案 4 にて、460m3/s に至る流量(150m3/s、270m3/s)の流況を確認したところ、平面渦が
発生し、流況が不安定になることが確認された。そこで、平面渦を解消するためのガイドウ
ォールの配置を検討する。
(1) 比較案 5(フーチング高さ EL97.0m)
流況が不安定になる原因として、下段常用洪水吐きの吐き口から減勢工に至る左右のフー
チング部にスペースがあり、ここで平面渦が生じて、大きな渦になると考えられた。そこで、
この部分を EL97.0m まで一様に高くしたケース(比較案 5)を検討した。
○270m3/s
下段常用洪水吐きからの放流水は、直線的に流下し、減勢工内で全体的に広がり減勢さ
れる。0~15m 付近の左右に平面渦が見られるが、ガイドウォール上なので、問題ない。
○150m3/s
下段常用洪水吐きからの放流水は、やや右岸寄りに流下し、減勢工内で全体に広がる。
主流がやや右岸寄りにあるため、0~15m 付近の平面渦は右側の方が左側に比べてやや小さ
い渦となっていた。比較案 4 では、この右側の平面渦が時間とともに小さくなり消滅し、
左側の平面渦が大きくなり不安定な流況に移行していく過程を経ていたが、比較案 5 では、
左右の平面渦の大きさは異なるが、この流況で安定していたため、特に問題ない。
以上のことから、フーチングの高さを EL97.0m とする案(比較案 5)は良好である。
この部分の
平面渦を解消
図 8.4.5 ガイドウォールの配置(比較案 5)
117
(a) 270m3/s
(b) 150m3/s
写真 8.4.2 比較案 5 の流況
118
(2) 比較案 6(フーチング、中央ガイドウォール、減勢工内ガイドウォール EL96.5m)
フーチング高さを EL97.0m とする案(比較案 5)が良好であることが確認された。ここで、
施工性を踏まえて、1.5m ピッチで構造物の高さを決めることにした。そこで、フーチング、
中央ガイドウォール、減勢工内ガイドウォールをすべて EL96.5m に統一した形状を検討する
(比較案 6)。
460m3/s、270m3/s ともに、下段常用洪水吐きからの放流水が右側に寄り、左側に大きな平
面渦が生じ、不安定な流況となった。
このことから、比較案 5 のように下段常用洪水吐き出口からの減勢工始端までの左右のフ
ーチングと減勢工内のガイドウォールに段差を設けることが渦流の発生を防ぐ効果をもつこ
とを確認した。図 8.4.7 に概念図を示す。
図 8.4.6 ガイドウォールの配置(比較案 6)
右岸の逆流は、
低水放流設備への流入や隔壁によって止まるが、
左岸の逆流は、
下段常用洪水吐き出口まで逆流して発達し、
大きな平面渦になる。
左岸の逆流は段差で止まり、
左右のバランスが保たれる。
段差がある
一様の高さ
(a) 一様の高さ(比較案 6)
(b)段差がある(比較案 5)
図 8.4.7 段差の効果
119
(a) 460m3/s
(b) 270m3/s
写真 8.4.3 比較案 6 の流況
120
(3) 比較案 7(フーチング EL98.0m、中央ガイドウォールなし)
洪水吐き出口のフーチングを減勢工内ガイドウォールより高さを高くすることにより、0
~15m 付近の逆流を押さえる働きをしていたことが明らかになった。そこで、中央ガイドウ
ォール高は低水放流設備敷高と同一の EL96.5m で、左右のフーチングは堤趾部のフーチング
高と一様に EL98.0m とした、できるだけ近傍の構造と段差を設けない形状として比較案 7 を
検討した。
なお、中央ガイドウォール(EL96.5m)を設置した形状で流況観察したところ、下段常用洪水
吐きからの放流水が減勢工内を走り、十分な減勢効果が得られなかった。そこで、中央ガイ
ドウォールを除いた形状で、検討を行った。
○460m3/s
下段常用洪水吐きからの放流水は、減勢工内で広がり、15m より下流では左右側壁沿い
に流れが分散していた。側壁沿いに直接ぶつかるような流れではないので、問題ない。ま
た、0~15m 付近の左右に平面渦が認められるが、ガイドウォール上なので、問題ない。
○270m3/s
下段常用洪水吐きからの放流水は、減勢工内で広がり安定した流れとなっていた。
また、0~15m 付近の左右に平面渦が認められるが、ガイドウォール上なので、問題ない。
以上のことから、比較案 7 は、計画最大放流量 460m3/s までの流量について、安定した流
況で減勢できることが確認できた。比較案 7 をガイドウォールの適正形状とする。
図 8.4.8 ガイドウォールの配置(比較案 7)
121
(a) 460m3/s
(b) 270m3/s
写真 8.4.4 比較案 7 の流況
122
8.4.4 ガイドウォールの適正形状
(1) ガイドウォールの適正形状
本実験により得たガイドウォールの適正形状を示すと以下の通りである。
(H17 年度減勢工最終案との比較)
○下段常用洪水吐き位置:左右洪水吐きともに 0.6m ずつ外側へ移動する
○中央ガイドウォール:除く
○フーチング:EL98.0m
○減勢工ガイドウォール:EL96.5m、長さ 20m
図 8.4.9 ガイドウォールの適正形状
123
(2) 減勢工底面流速分布
ガイドウォール適正形状において、底面の流速分布を測定した。結果を図 8.4.9 に示す(流
向・流速値の詳細は資料Ⅲp 資Ⅲ-50 に示す)。
○270m3/s
左右岸側壁沿いに逆流域が見られるが、流速が比較的大きい部分は、ガイドウォール上
であった。中央部については、全体的に下流へ向かって流下していた。
○460m3/s
左右岸側壁沿いの流れに違いが見られた。右岸側壁沿いは、隔壁の影響により、ガイド
ウォール上の流速は左岸沿いに比べると小さかった。左岸側壁沿いのガイドウォール上は
逆流域で比較的大きい流速であった。
減勢工底面では、右岸寄りの流れとなっており、20~30m 付近では顕著であった。なお、
減勢工下流には現況河道への導流のための湾曲部があり、右岸寄りの流れが特に問題とな
ることはない。
124
・小規模の平面渦は、
ガイドウォール上で問題ない
・ガイドウォール沿いは
下流向きに流れている
(a) 270m3/s
・小規模の平面渦は、
ガイドウォール上で問題ない
・ガイドウォール沿いは
下流向きに流れている
(b) 460m3/s
図 8.4.10 減勢工底面の流速分布(ガイドウォール適正形状)
125
8.5 ガイドウォールの詳細検討
8.5.1 実験概要
(1) 実験目的
前述の固定床実験により、減勢工底面の平面渦範囲にあって、洪水吐きからの水脈を下流
方向に導流し、かつ、計画最大放流量 460m3/s まで減勢効果を損なわず、ダム設計洪水流量
1420m3/s まで安全に導流できる形状ガイドウォールの適正形状を得た。
ここでは、再度、移動床実験により、低水放流設備への土砂流出をできるだけ軽減する形
状として、下段常用洪水吐き吐き口~減勢工~低水放流設備取水口の詳細形状を検討する。
(2) 実験の流れ
実験は、原案(前述での適正形状)に対し、隔壁と上流ガイドウォールを一体にした比較案
1を検討する。原案は右岸フーチング(EL98.0m)、上流ガイドウォール(EL96.5m)、隔壁
(EL98.0m)と形状が複雑な形状である。そこで、比較案1として右岸フーチングから隔壁まで
同標高とする形状を検討した。
また、比較案1を基本とし、土砂流出の軽減を図るために、① ガイドウォール内側に帯状
の高い部分を設けたケース(比較案 2~4)、② ガイドウォール上に導流壁を設けたケース(比
較案 5~8)、③ ガイドウォール上に水制を設けたケース(比較案 9~10)の全 9 ケースを検証
した。
(3) 実験方法
実験は、低水放流設備形状の実験(「第7章低水放流設備」)と同様の方法で行った。以下
に実験方法を示す。
①減勢工内:満砂
②流量:一番土砂挙動の大きい流量 25m3/s 一定
③土砂補給:あり
計測項目は、流出土砂量の測定、ガイドウォール付近の堆砂高の測定、流況観察である。
なお、流出土砂量は、低水放流設備から流出した土砂をすべて採取し以下の式で求めた。
流出土砂量(m3/s)=流出土砂総量(m3)/実験時間(s)
126
原案
右岸フーチング
減勢工始端
低水放流設備
隔壁
ガイドウォール
減勢工床版
隔壁と上流ガイドウォール一体
(比較案1)
右岸フーチング
減勢工始端
低水放流設備
ガイドウォール
減勢工床版
帯状の高い部分の設置
(比較案2,3,4)
右岸フーチング
導流壁の設置
(比較案5,6,7,8)
右岸フーチング
右岸フーチング
減勢工始端
低水放流設備
帯状の高い部分
減勢工始端
減勢工始端
低水放流設備 導流壁
低水放流設備
減勢工床版
ガイドウォール
減勢工床版
水制の設置
(比較案9,10)
ガイドウォール
図 8.5.1 ガイドウォール詳細形状の実験の流れ
127
水制
ガイドウォール
減勢工床版
表 8.5.1 ガイドウォール詳細形状の実験ケース
128
8.5.2 実験結果
(1) 原案と比較案1
原案は右岸フーチングが EL98.0m、上流ガイドウォールが EL96.5m、隔壁が EL98.0m となっ
ており、形状が複雑である。
そこで、比較案1として右岸フーチングから隔壁まで同標高とする形状を検討した。
実験の結果を、表 8.5.3 に示す。
①流況
原案では、下段常用洪水吐きから低水放流設備へ向かう流れは、隔壁の角部に向かい角
部から土砂が引き込まれる流れと、逆流により取水口に向かう流れとがある。
比較案1(隔壁と上流ガイドウォールを一体にした形状)でも、その流れは大きく変わら
ず、ガイドウォール上流部から引き込まれる流れと、逆流により取水口に向かう流れとが
ある。ガイドウォール沿いの流砂はガイドウォール上に薄く乗り上がる。
②低水放流設備からの流出土砂量
低水放流設備からの流出土砂量は、原案が 0.028m3/s、比較案1が 0.030m3/s であり、や
や比較案1が多かった。
③ガイドウォール沿いの堆砂高
図 8.5.2 にガイドウォール沿いの堆砂高を示す。測定の結果、堆砂高は吐き口と隔壁先
端において異なる変化をしているものの、中間ではほぼ同程度の堆砂高であった。
流出土砂量がやや多くなるものの、ガイドウォール沿いの堆砂高や流況に大きな違いが見
られなかったことから、ガイドウォールと隔壁を一体にした形状を基本形状とし、以降の形
状を検討していく。
129
99.0
①
98.0
右岸フーチング
②
97.5
③
97.0
低水放流設備
2 000
96.5
原案
⑤隔壁先端
④③~⑤の中間
②①~③の中間
③減勢工始端
96.0
①吐き口
標高(EL.m)
98.5
比較案1
図 8.5.2 ガイドウォール沿い堆砂高(原案と比較案1)
表 5.3.2 ガイドウォール沿い堆砂高(原案と比較案1)
原案
比較案1
98.00
98.37
98.40
98.44
98.65
98.64
98.55
98.49
98.10
97.41
⑤隔壁先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
①吐き口
130
④
⑤
ガイドウォール
減勢工床版
減勢工始端
表 8.5.3 ガイドウォール詳細実験の結果(原案、比較案1)
比較案1
隔壁と上流ガイドウォールを一体にした形状
右岸フーチング EL98.00
5700
右岸フーチング EL98.00
EL95.00
EL95.00
減勢工始端
減勢工始端
EL96.50
1500 1783
低水放流設備
低水放流設備
2 0 00
隔壁
20000
EL98.00
1 500 1 000 78 3
EL96.50
ガイドウォール
20000
2 0 00
平面図
2 22 0
取水口前面に高さ1.5mの隔壁を入れたもの
2 22 0
形状
原案
5700
ケース
ガイドウォール
減勢工床版
EL93.00
減勢工床版
EL93.00
流況
洪水吐きから広がる流れは、隔壁の角部に向か 洪水吐きから広がる流れは、隔壁の角部に向か
い、角部から土砂が引き込まれるとともに、逆流 う。ガイドウォール沿いの流砂はウォール上に薄
く乗り上がる。原案とあまり変わらない。
により底部の土砂が取水口に向かう。
逆流
写真
漸拡する流線
流出土砂量
0.028m3/s
漸拡する流線
0.030m3/s
131
(2) 帯状部分の設置
比較案1での右岸側下段常用洪水吐きから低水放流設備へ向かう流れは大きく2つに分か
れ、図 8.5.3 に示すように、1つは、洪水吐き吐き口からガイドウォール上に乗り上げ取水
口に向かって流れる順流、もう1つは下流から取水口へ向かう逆流である。
順流による土砂を抑制する方法として、EL98.0m より高い帯状部分を設置する方法を検討
する。また、逆流による土砂を抑制する方法として、取水口前のガイドウォール標高を低く
する方法を検討する。
比較案2は上流ガイドウォールに一段高い帯状部分を設置する形状で、比較案3は上流ガ
イドウォールを比較案2と同様にし、下流ガイドウォール標高を EL95.0m とする形状である。
また、比較案4は、上流ガイドウォールを湾曲とし(R=25m の単円弧)、吐き口からの流れ
を取水口から遠ざけるように導流する形状で検討した。
ここで、帯状部分の標高は、ガイドウォール沿いの堆砂高が EL98m~98.5m であるので上流
EL98.00
5 70 0
右岸フーチング
2220
ガイドウォールより 0.5m 高くし、EL98.5m とした。
EL95.00
減勢工始端
順流
20 0 0
低水放流設備
逆流
2 00 0 0
EL96.50
ガイドウォール
減勢工床版
EL93.00
図 8.5.3 比較案1の流れの概要
132
実験の結果を、表 8.5.5 に示す。
①流況
比較案2では、ガイドウォール近傍の流れはガイドウォールに沿って流れながら一段高
い帯状部分を越えて分散し取水口へ向かう。逆流の流況は比較案1と変わらない。
比較案3は、比較案2と流況は大きく変わらず、取水口への流入は上下流から分散して
行われる。
比較案4では、洪水吐きから広がる流れは、帯状部分に乗り上げ取水口へ向かう。帯状
部分への乗り上げは、比較案2や比較案3より顕著であった。
②低水放流設備からの流出土砂量
低水放流設備からの流出土砂量は、比較案1が 0.030m3/s であったのに対し、比較案2
が 0.020m3/s、比較案3が 0.030m3/s、比較案4が 0.030m3/s となった。
③ガイドウォール沿いの堆砂高
図 8.5.4 にガイドウォール沿いの堆砂高を示す。(a)が比較案1、比較案2、比較案4
の比較図、(b)が比較案2と比較案3の比較図である。
(a)について、比較案4は比較案1とほぼ同程度の堆砂高だったが、比較案2は全体的に
標高が低下し、標高の一番高い減勢工始端で 10cm の低下であった。この結果、ガイドウォ
ールは曲線形より直線形の方がガイドウォール沿いの堆砂高の低下に有効であると考えら
れる。
(b)について、③~④にかけてやや比較案2の方が低下していたが①~⑤まではほぼ同程
度であった。⑥において比較案3の方が 0.5m 低下していたが、比較案3は底面標高が
EL95.0m であるので、ガイドウォールに 1m 堆砂した。
比較案2と比較案4の検討の結果、ガイドウォールの平面形状は曲線形より直線形の方が、
ガイドウォール沿いの堆砂面が低下し、帯状部分上に乗り上げる土砂を軽減する効果があっ
た。
また、比較案2と比較案3の検討の結果、比較案2の方が低水放流設備からの流出土砂量
が少なかった。これは、取水口前面では、取水口への流入に際して渦流により洗堀が生じる
ためで、この洗堀が生じた時に低板が露出し土砂の錯乱が生じない比較案2の方が流出土砂
量が少なかった。よって、取水口前面の敷高は、取水口高と同じ EL96.5m が良い。
133
99.0
標高(EL .m)
98.5
①
右岸フーチング
98.0
②
97.5
③
97.0
④
低水放流設備
2 000
96.5
⑤
⑤ウォール 先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
①吐き口
②①~③の中間
96.0
比較案2
比較案4
減勢工始端
ガイドウォール
減勢工床版
比較案1
(a) ガイドウォール平面形状(比較案2と比較案4)
99.0
98.5
②
97.5
③
97.0
減勢工始端
帯状部分
④
低水放流設備
2 000
96.5
⑥
比較案2(再計測)
⑥取水口
⑤ウォール先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
96.0
①吐き口
標高(EL.m)
①
右岸フーチング
98.0
⑤
ガイドウォール
減勢工床版
比較案3
(b) 取水口前面の底面標高(比較案2と比較案3)
図 8.5.4 ガイドウォール沿いの堆砂高(比較案2、比較案3、比較案4)
表 8.5.4 ガイドウォール沿いの堆砂高(比較案2、比較案3、比較案4)
⑤ウォール先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
①吐き口
比較案2 比較案4
98.10
98.42
98.32
98.50
98.55
98.65
98.12
98.52
97.20
97.50
⑥取水口
⑤ウォール先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
①吐き口
134
比較案2
比較案3
(再計測)
96.50
96.08
98.55
98.43
98.32
98.50
98.12
98.31
98.10
98.05
97.20
97.42
表 8.5.5 ガイドウォール詳細実験の結果(比較案2、比較案3、比較案4)
比較案3
比較案4
EL95.00
低水放流設備
ガイドウォール
2000
EL95.00
ガイドウォール
2 2 20
R=25m(θ=20.27°)
EL96.50
ガイドウォール
減勢工床版
EL93.00
減勢工床版
EL93.00
ガイドウォール近傍の流れは、ウォールに沿って
取水口への流入は比較案2と同様に上下流か
流れながら一段高い帯状の部分を越えて分散
ら分散して行われる。
し、取水口に向かう。
比較案2と同様の分散した流れ
取水口周辺から
分散して流入する。
帯状部分
EL98.50
低水放流設備
20000
20000
EL96.50
流況
15 00 17 83
帯状部分
EL98.50
2000
帯状部分
EL98.50
2000
平面図
減勢工始端
15 00 1783
15 00 1 783
低水放流設備
EL95.00
減勢工始端
減勢工始端
5 7 00
右岸フーチング EL98.00
5 7 00
EL95.00
右岸フーチング EL98.00
5 7 00
右岸フーチング EL98.00
ガイドウォールの内側を0.5m高くし、平面形に円
弧(R=25)を入れた形状
2 2 20
ガイドウォールの内側を0.5m高くし、平面形は原 取水口から下流の底部のガイドウール高を
案同様直線にしたもの形状
EL95.0mにしたもの
2 2 20
形状
比較案2
20000
ケース
減勢工床版
EL93.00
洪水吐きから広がる流れは、一段高い帯状の部
分に流砂とともに乗り上がり、隔壁の角部に向か
う。土砂の引き込みは比較案1と変わらない。
右岸に拡散する
流れは乗り上がる。
写真
一段高い部分EL98.5m
流出土砂量
0.020m3/s
一段高い部分EL98.5m
0.030m3/s
135
0.030m3/s
(3) 導流壁の設置
25m3/s における減勢工内の内水位は EL99.3m 程度である。そこで、上流からの流れ(順流)
を完全に下流に導流する高さ EL99.5m の導流壁を取水口の上流側に設けるケースを検討した。
表 8.5.6 にケースを示す。実験は、上流ガイドウォール並びに下流ガイドウォールの標高
を変えたケースで行った。なお、比較案8として、上下ガイドウォールを EL95.0m として下
段常用洪水吐きからの放流水を導流する曲線型の導流壁を設けた案も合わせて検討した。
表 8.5.6 導流壁の実験ケース
比較案5
比較案6
比較案7
導流壁
99.50
99.50
99.50
上流ガイドウォール 下流ガイドウォール
98.00
95.00
96.50
96.50
95.00
96.50
※単位(EL.m)
実験の結果を、表 8.5.8 に示す。
①流況
比較案5~比較案7について、流況はほとんど変わらなかった。下段常用洪水吐きから
広がる流れは導流壁先端付近に向かい、下流方向に導流され、導流壁の下流で渦流となっ
て取水口に流れ込む。この渦流は強い巻き込み渦であり、多くの土砂を引き込み低水放流
設備へ流れる。
比較案8は、導流壁の標高が EL98.5m であるため、導流壁の上に乗り取水口へ向かう流
れが生じる。また、導流壁の下流から逆流して取水口に向かう流れもある。
②低水放流設備からの流出土砂量
低水放流設備からの流出土砂量は、比較案1が 0.030m3/s であったのに対し、比較案5
が 0.036m3/s、比較案6が 0.044m3/s、比較案7が 0.038m3/s、比較案8が 0.038m3/s となり、
上流部に導流壁を設けるケースは低水放流設備からの流出土砂量が増大する結果となった。
136
③ガイドウォール沿いの堆砂高
図 8.5.5 にガイドウォール沿いの堆砂高を示す。
下流ガイドウォールの高さを EL95.0m まで下げた場合(比較案6、比較案8)、導流壁先
端付近の河床は EL97.5m 付近まで深くなるが、その上流は 98m 前後で大きく洗堀するもの
ではない。また、取水口前面の河床は EL96.2~96.4m で、取水口敷高程度である。
なお、比較案5並びに比較案7は取水口前の底版高が EL96.5m であり、渦流が発生した
際この底版が露出する。
99.0
①
98.0
右岸フーチング
②
97.5
③
97.0
2 000
比較案6
比較案7
⑥取水口
⑤隔壁先端
④③~⑤の中間
②①~③の中間
③減勢工始端
96.0
⑥
⑤
減勢工床版
ガイドウォール
比較案8
図 8.5.5 ガイドウォール沿いの堆砂高(比較案6、比較案7、比較案8)
表 8.5.7 ガイドウォール沿いの堆砂高(比較案6、比較案7、比較案8)
⑥取水口
⑤隔壁先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
①吐き口
比較案6 比較案7 比較案8
96.43
96.50
96.22
97.43
97.20
97.60
98.50
98.74
98.60
98.25
98.67
98.60
97.90
98.15
98.00
97.52
97.56
97.55
137
減勢工始端
④
低水放流設備
96.5
①吐き口
標高(EL.m)
98.5
水面高より高い導流壁を設け、上流から取水口へ向かう順流を押さえた結果、低水放流設
備に流れる込む全流量は、下流側から逆流によって流入し、その際、強い巻き込み渦を生じ
て、この渦が多くの土砂を引き込み、低水放流設備への流入土砂量は多くなる結果となった。
また、下段常用洪水吐き吐口から導流壁先端にかけて底面ガイドウォール高を EL95.0m ま
で下げることによる導流壁沿いの洗堀を図ったが、効果は見られなかった(比較案6、7)。
取水口前面の底敷高は取水口の敷高と同じ EL96.5m として、取水口前面が深掘れた時に底
版が露出してその場で土砂の攪乱が生じないほうが流入土砂を軽減できると考えられる。
138
表 8.5.8 ガイドウォール詳細実験の結果(比較案5、比較案6、比較案7、比較案8)
減勢工始端
EL96.50
20000
20000
減勢工床版
EL93.00
7920
2 22 0
5700
低水放流設備
導流壁
EL99.50
2 0 00
導流壁
EL99.50
ガイドウォール
EL95.00
θ=53.3°
1 50 0 1 78 3
EL95.00
導流壁
EL98.50
減勢工始端
低水放流設備
2 0 00
2 0 00
EL95.00
15 00 1 783
ガイドウォール
EL98.00
減勢工始端
低水放流設備
導流壁
EL99.50
右岸フーチング
EL96.50
R=7.45m
2 00 0
15 00 1 783
平面図
右岸フーチング
EL98.00
減勢工始端
低水放流設備
底部の高さをEL95.0mとして、この上にEL98.5m
の導流壁を乗せたもの
底部のガイドウール高をEL96.5mにしたもの
EL95.00
EL95.00
比較案8
20 00
EL96.50
20000
EL95.00
右岸フーチング
EL98.00
5700
右岸フーチング EL98.00
底部のガイドウール高をEL95.0mにしたもの
2 22 0
取水口前面の隔壁を水面より高くして、上流か
らの流れを導流する形状
比較案7
ガイドウォール
EL95.00
ガイドウォール
減勢工床版
EL93.00
減勢工床版
EL93.00
20000
比較案6
2 22 0
形状
比較案5
5700
ケース
減勢工床版
EL93.00
流況
前面の隔壁に当たった流れは、下流方向に導
流され隔壁の下流で渦流となって取水口に流
れ込む。このとき多くの土砂が引き込まれる。
洪水吐きから広がる流れは、隔壁の先端付近に
向かい下流に跳ねられた後、渦流となって取水
口に流れ込む、この渦により多くの土砂が引き
込まれる。
洪水吐きから広がる流れは、隔壁の先端付近に
向かい下流に跳ねられた後、渦流となって取水
口に流れ込む、この渦により多くの土砂が引き
込まれる。
洪水吐きからの流れは、一部がEL98.5mの導流
壁上に乗りる。さらに導流壁の下流から逆流して
取水口に流れ込む、このとき先端部に生じる渦
は、土砂を巻き込む。
巻き込み渦
巻き込み渦
巻き込み渦
逆流
写真
乗り上げ流れ
水面より高い隔壁
EL99.5m
流出土砂量
0.036m3/s
0.044m3/s
0.038m3/s
139
0.038m3/s
(4) 水制の設置
取水口前面の深掘れ効果を増大させるため取水口入り口に水制を設置する案を検討した。
ガイドウォール標高は EL95.0m とし、水制の標高を EL98.50m とした。水制の厚さは 1.5m
とした。実験では、水制長さを 2.5m(比較案9)、3.8m(比較案 10)を検討した。
実験の結果を、表 8.5.10 に示す。
①流況
比較案9では、取水口へ向かう流れの主流は水制先端を下流に流れ、大きく回り込んで
取水口に流入する。取水口前面に原案のようなカギ型の隔壁が無いため、正面および下流
から取水口へと流れ込む。
比較案 10 では、比較案9と同様に主流は下流から大きく回り込んで取水口に向かう。水
制の先端部では巻き込み渦を生じ、多くの土砂が引き込まれる。
②低水放流設備からの流出土砂量
低水放流設備からの流出土砂量は、比較案1が 0.030m3/s であったのに対し、比較案9
が 0.034m3/s、比較案 10 が 0.044m3/s となり、上流部に水制を設けるケースは低水放流設
備からの流出土砂量が増大する結果となった。特に水制の長さの大きい比較案 10 は渦流が
生じるため、流出土砂量が増大した。
③ガイドウォール沿いの堆砂高
図 8.5.6 にガイドウォール沿いの堆砂高を示す。
水制より上流の河床は 98.5m 程度である。水制先端の深掘れは、短い水制はあまり大き
くなく、長い水制は比較案6~8と同様に 97.5m 程度まで掘れる。取水口前の河床は 96.0m
まで掘れる。
水制形式による検討を行った結果、取水口付近に効果的な深掘れを生じさせることはでき
なかった。また長い水制のように、拡散する流線を跳ねるような構造物を取水口付近に配置
すると背後の巻き込み渦が発生し河床を攪乱し、流入土砂量が大きくなる傾向にある。
140
99.0
98.0
①
97.5
右岸フーチング
②
97.0
96.5
③
96.0
水制
2 000
比較案9
⑥取水口
⑤水制先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
95.0
⑥
図 8.5.6 ガイドウォール沿いの堆砂高(比較案9、比較案 10)
表 8.5.9 ガイドウォール沿いの堆砂高(比較案9、比較案 10)
比較案9 比較案10
96.12
95.87
98.22
97.66
98.65
98.46
98.67
98.60
98.46
98.32
97.76
97.66
141
⑤
ガイドウォール
比較案10
⑥取水口
⑤水制先端
④③~⑤の中間
③減勢工始端
②①~③の中間
①吐き口
減勢工始端
④
低水放流設備
95.5
①吐き口
標高(EL.m)
98.5
減勢工床版
表 8.5.10 ガイドウォール詳細実験の結果(比較案9、比較案 10)
ケース
比較案10
高さEL98.5m、長さ2.5mの水制を取水口上流に 高さEL98.5m、長さ3.8mの水制を
出したもの。
取水口上流に出したもの。
右岸フーチング
EL98.00
79 2 0
79 2 0
右岸フーチング
EL98.00
EL95.00
EL95.00
水制
EL98.50
減勢工始端
低水放流設備
2000
1 5 00
2000
平面図
低水放流設備
2 50 0
380 0
EL95.0
20000
EL95.0
ガイドウォール
ガイドウォール
減勢工床版
EL93.00
減勢工床版
EL93.00
流況
主流は水制先端を下流に流れ、大きく回り込ん
やはり主流は下流から大きく回り込んで取水口
で取水口に流入する。取水口前面のカギ型の
に向かう。水制の先端部では巻き込み渦を生
隔壁が無いため正面および下流から流れ込
じ、多くの土砂が引き込まれる。
む。
取水口下流から回り込む
下流から回り込む
先端で巻き込む
写真
流出土砂量
減勢工始端
1 50 0
水制
EL98.50
20000
形状
比較案9
0.034m3/s
0.044m3/s
142
8.5.3 ガイドウォール詳細検討のまとめ
①原案での低水放流設備取水口への流れは隔壁を乗り上げて取水口へ向かう順流と下流方向
から取水口へ向かう逆流とに2分される。
②隔壁と上流ガイドウォールの一体の形状(比較案1)は、流況や流出土砂量は原案と大きく
変わらなかった。そこで、隔壁と上流ガイドウォール一体とした形状を基本形状とした。
③順流対策として、ガイドウォールの内側を帯状に 0.5m 高くする帯状部分を検討した。その
結果、平面形を原型のまま直線とした形状(比較案2)と円弧を入れて湾曲させたもの(比
較案4)とを比較した結果、直線形の比較案3のほうが土砂流入を防ぐ効果があり、流入
土砂量は 0.028(原案)→0.020(比較案2)に減少した。これは、ガイドウォール沿いの
堆砂面が低下し、この区間の流砂量が減少したことによると考えられる。
④順流対策として、ガイドウォール高 EL99.5m として完全に流れを下流に導流する形状を検
討した。この場合、低水放流設備に流れる込む全流量は、下流側から逆流によって流入す
ることになり、強い巻き込み渦を生じて、この渦が多くの土砂を引き込み低水放流設備へ
の流入土砂量は多くなることが明らかになった。
また、下段洪水吐きの吐き口から導流壁先端にかけて底面ガイドウォール高を EL95.0m
まで下げることによる導流壁沿いの洗堀の進行は見られなかった。
⑤取水口付近の深掘れ効果を期待し、水制の設置を検討した。その結果、取水口付近に効果
的な深ぼれを生じさせることはできなかった。
⑥導流壁や長い水制など拡散する流線を下流へ跳ねるような構造物を取水口付近に配置する
と背後の巻き込み渦が生じ、河床を攪乱し流入土砂量が大きくなる傾向にある。
⑦取水口前面の底敷高は、取水口の敷高と同じ EL96.5m として、取水口前面が深掘れた時に
底版が露出してその場で土砂の攪乱が生じないほうが流入土砂を軽減できる。
以上の結果から、取水口への流入は上下流から分散して行われる流入形態が良く、その中
で隔壁を乗り越えて流入する土砂量を抑制することが流入土砂量を減らす効果があることが
分かった。よって、比較案2を最終案とする。
143
○ガイドウォール最終形状(比較案 2)の流況のまとめ
・ガイドウォールの平面形は、下段洪水吐きの放流水脈に沿い、洪水時の水脈を円滑に下流
に導流できる。
・取水口への流水および土砂の流下においても、著しく水跳ねする事無く、隔壁先端での巻
き込み渦が生じない。
・取水口前面の底敷き高を EL.96.5 として、土砂流入時には底版が露出して底面土砂の攪乱
が少ない。
・取水状況は、取水口の上下流から分散して流れを取り込み、流出土砂量が比較検討の中で
一番少ない(図 8.5.7)。
0.05
0.044
0.03
0.038 0.038
0.036
0.028
0.030
0.034
0.030 0.030
0.020
0.02
0.01
図 8.5.7 25m3/s 流下時の低水放流設備からの流出土砂量
144
比較案10
比較案9
比較案8
比較案7
比較案6
比較案5
比較案4
比較案3
比較案2
比較案1
0.00
原案
土砂量(m 3 /s)
0.04
0.044
8.5.4 ガイドウォールの最終形状
図 8.5.8 にガイドウォールの最終形状を示す。
図 8.5.8 ガイドウォールの最終形状(比較案 2)
145
8.6 減勢工内の砂の挙動
8.6.1 実験概要
(1) 目的
ガイドウォール最終形状において、減勢工満砂状態からダム放流量増加に伴う土砂のフラ
ッシュ状況を把握する。
(2) 実験
流量:25、50、100、200、270m3/s の5流量
測定項目:減勢工側壁沿いの堆砂位・水位、減勢工内流況
146
8.6.2 減勢工内の流況および排砂状況
表 8.6.1~表 8.6.5 は、減勢工内の排砂に伴う側壁沿いの堆砂位の変化を示したものであ
り、堆砂位は 25m3/s 以下の放流量において満砂状態にあり、EL.98.0m程度となる。堆砂は
放流量の増加に伴いフラッシュされるが、放流量 270m3/s 程度でほぼフラッシュされ、300
m3/s において完全に減勢工内から排砂される状況である。
この際、洪水吐き出口から左右で生じる平面渦下にはガイドウォールがあり、土砂が渦内
に長く止まるものではないので、平面渦による水叩き摩耗の問題はない。
また、減勢工からの排砂は副ダムスリットから円滑に行われており、スリットの形状・配
置の問題はない。
つづいて、側壁面の摩耗を考えた場合、フラッシュの過程において、減勢工始端付近の土
砂が下段常用洪水吐きの水流によって下流に押し流され、100m3/s および 200m3/s におい
ては、減勢工始端から下流 15m~25m付近で堆砂位が EL.99.4m程度に上昇する状況である。
堆砂面における流砂は堆砂面を掃流するものであり、水面近くまで土砂が巻き上げられる状
況ではない。
よって、減勢工内の堆砂および排砂に伴う土砂移動に対して、EL.99.5m以上の範囲まで側
壁の摩耗対策が必要であると考えられる。
147
表 8.6.1 側壁沿いの堆砂位(25m3/s)
(1) 堆砂位と水位
○堆砂位
縦断距離
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
○水位
左岸堆砂位
右岸堆砂位
97.80
97.65
97.55
97.65
98.10
98.00
97.51
97.86
98.10
96.98
95.48
94.01
97.80
97.65
97.55
97.48
98.50
96.50
96.50
96.65
97.61
97.89
95.49
93.36
縦断距離
水位
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
35.00
100.40
100.35
99.80
99.50
99.50
99.50
左岸沿い
標高(EL.m)
110
左岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
10
20
30
40
50
右岸沿い
標高(EL.m)
110
右岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
(2) 減勢工内の状況
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
30m
25m
20m
15m
10m
5m
0m
-13.5m
148
10
20
30
40
50
表 8.6.2 側壁沿いの堆砂位(50m3/s)
(1) 堆砂位と水位
○堆砂位
縦断距離
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
○水位
左岸堆砂位
右岸堆砂位
97.00
96.50
97.82
97.93
97.65
98.03
98.28
97.93
95.62
94.25
97.00
96.50
97.75
97.00
96.50
96.55
97.15
97.79
97.26
94.07
縦断距離
水位
-39.88
-32.38
-13.50
0.00
35.00
100.25
100.55
101.40
101.08
101.08
左岸沿い
標高(EL.m)
110
左岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
10
20
30
40
50
右岸沿い
標高(EL.m)
110
右岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
(2) 減勢工内の状況
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
30m
25m
20m
15m
10m
5m
0m
-13.5m
149
10
20
30
40
50
表 8.6.3 側壁沿いの堆砂位(100m3/s)
(1) 堆砂位と水位
○堆砂位
縦断距離
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
○水位
左岸堆砂位
98.00
98.17
98.98
99.33
99.26
98.98
95.30
94.08
右岸堆砂位
縦断距離
水位
-40.38
-37.98
-30.38
-20.38
-13.50
0.00
35.00
99.90
98.84
98.42
99.87
100.89
101.75
101.95
96.55
96.97
97.50
95.42
92.83
左岸沿い
標高(EL.m)
110
左岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
10
20
30
40
50
右岸沿い
標高(EL.m)
110
右岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
(2) 減勢工内の状況
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
30m
25m
20m
15m
10m
5m
0m
フラッシュ
-13.5m
150
10
20
30
40
50
表 8.6.4 側壁沿いの堆砂位(200m3/s)
(1) 堆砂位と水位
○堆砂位
縦断距離
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
○水位
左岸堆砂位
96.53
96.60
99.05
99.40
97.30
95.13
右岸堆砂位
縦断距離
水位
-40.38
-37.98
-30.38
-22.25
-13.50
0.00
35.00
99.90
99.08
98.76
99.06
101.82
102.58
102.58
96.55
96.76
97.65
95.38
94.07
左岸沿い
標高(EL.m)
110
左岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
10
20
30
40
50
右岸沿い
標高(EL.m)
110
右岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
(2) 減勢工内の状況
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
30m
25m
20m
15m
10m
5m
0m
フラッシュ
-13.5m
151
10
20
30
40
50
表 8.6.5 側壁沿いの堆砂位(270m3/s)
(1) 堆砂位と水位
○堆砂位
縦断距離
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
○水位
左岸堆砂位
右岸堆砂位
縦断距離
水位
-40.38
-37.98
-30.38
-18.05
-13.50
0.00
35.00
93.03
94.01
93.31
94.60
93.13
99.90
99.08
98.76
98.07
101.40
102.48
102.93
93.08
93.08
93.08
93.61
93.08
左岸沿い
標高(EL.m)
110
左岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
10
20
30
40
50
右岸沿い
標高(EL.m)
110
右岸堆砂位
水位
100
90
-50
-40
(2) 減勢工内の状況
-30
-20
-10
0
縦断距離(m)
30m
25m
20m
15m
10m
5m
フラッシュ
0m
-13.5m
152
10
20
30
40
50
8.6.3 下段常用洪水吐きの管内の土砂移動状況
(1) 開水路流における管内の水面形および堆砂位
放流量 25m3/s(1 門当り 12.5 m3/s)および 50 m3/s における管内の水面形・堆砂位は、図
8.6.1 の通り、放流量 25 m3/s では EL.97.6m 程度で一様に堆砂して、放流水はこの上を水深
2m 程度で流れる(流速 2.2m/s)
。放流量 50 m3/s では、洪水吐き上流からの供給土砂が無く
なり管内の堆砂面はさらに低下する。管内の土砂は放流量の増加に伴い徐々にフラッシュさ
れて、100 m3/s (1 門当り 50.0 m3/s)にて完全にフラッシュされる状況である。
また、放流量 25 m3/s 以下の流量においては、図 8.6.2 に示す通り、管内の堆砂面は一様
に EL.98.0m 以下(左岸洪水吐きが若干高いのでこれを示す)にある。
108
25m3/s 砂面
25m3/s 水面
50m3/s 砂面
50m3/s 水面
100m3/s水面
106
水位( EL.m)
104
102
100
98
96
94
-10
0
10
20
縦断距離(m)
30
40
50
図 8.6.1 管内の水面形および堆砂位(開水路流)
106
50m3/s 砂面
25m3/s 砂面
10m3/s 砂面
104
5m3/s 砂面
1m3/s 砂面
水位(EL.m)
102
100
98
96
94
-10
0
10
20
縦断距離(m)
30
図 8.6.2 管内の堆砂位(小流量時)
153
40
50
なお、放流量 100m3/s では、管内で跳水を生じる流況となるが、堆積土砂はあくまで底面
を走る水脈により河床面を掃流し、瞬時にフラッシュするもので、跳水にともなって激しく
水面まで巻き上げられるような流況は生じていない。
洪水吐き出口
跳水
2.1m
土砂は底面を掃流
写真 8.6.1 管内の水面形(100m3/s)
表 8.6.6 管内の水面形および堆砂位(小流量並びに開水路流時)
1m3/s 砂面
距離
堆砂位
(m)
(EL.m)
1m3/s 水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
5m3/s 砂面
距離
堆砂位
(m)
(EL.m)
5m3/s 水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
10m3/s水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
10m3/s 水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
-10
-5
0
26.87
40.37
-10
-5
0
26.87
40.37
-10
-5
0
26.87
40.37
-10
-5
0
26.87
40.37
-10
-5
0
26.87
40.37
-10
-5
0
26.87
40.37
98.35
98.15
97.86
97.82
97.82
98.45
98.43
98.36
98.16
98.00
97.92
97.86
97.75
97.80
97.87
98.55
98.45
98.32
98.32
98.26
97.96
97.68
97.76
97.70
97.80
25m3/s 砂面
距離
堆砂位
(m)
(EL.m)
25m3/s 水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
50m3/s 砂面
距離
堆砂位
(m)
(EL.m)
50m3/s 水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
100m3/s水面
距離
貯水位
(m)
(EL.m)
-10
-5
0
26.87
40.37
-10 100.42
-5 100.35
0 99.80
26.87 99.50
40.37 99.48
0
26.87
40.37
0.5
8
26.87
40.37
0 99.90
0.3 99.43
0.6 99.15
1.2 98.91
1.8 98.88
2.4 98.84
10 98.42
20 99.87
26.87 100.89
40.37 101.75
97.85
97.65
97.55
97.65
98.10
97.00
96.50
97.82
154
100.25
100.55
101.40
101.87
99.50
98.86
98.76
98.62
98.53
(2) 管路流における管内の水面形
図 8.6.3 に、管路流における管内の水面形を示す。
管内の水位は図 8.6.3 に示す通りであり、射流となって高速流で流れる水深は、貯水位に
よって大きな違いは無く、水深 2.1~2.3m 程度で一様に流れる(設計洪水位における流速
23m/s)
。洪水吐き出口で減勢工による背水位があるので、放流量 100m3/s ではナイフエッジ
下流 10m 付近で、サーチャージ水位では出口付近にて、設計洪水位では管路中央付近で跳水
を生じる流況である。
ただし、先に記したとおり土砂フラッシュ時には、土砂は射流水脈の高速流により瞬時に
底面を掃流し排砂される状況にある。
以上のことから、管内の摩耗対策を考える場合には、常時、土砂移動が行われる開水路流
における堆砂位(EL.98.0m)ならびに、管路流における高速流の水深以上を目安に計画するこ
とが望ましい。
108
100m3/s水面
EL120 水面
サーチャーッジ水面
設計洪水位 水面
106
水位(EL.m)
104
102
100
98
96
94
-10
0
10
20
30
縦断距離(m)
図 8.6.3 管内の水面形(管路流)
155
40
50
表 8.6.7 管内の水面形(管路流)
上段常用洪水吐き敷高
(EL120.0m)
距離
(m)
0
0.3
0.6
1.2
1.8
2.4
22.67
26.87
40.04
貯水位
(EL.m)
99.90
99.55
99.42
99.18
99.12
99.05
97.92
100.47
100.85
サーチャージ水位
(EL132.0m)
距離
(m)
0
0.3
0.6
1.2
1.8
2.4
21.62
26.87
40.04
設計洪水位
(EL135.5m)
貯水位
(EL.m)
距離
(m)
99.90
99.58
99.45
99.21
99.15
99.08
98.00
100.62
101.98
156
0
0.3
0.6
1.2
1.8
2.4
15
20
26.87
40.04
貯水位
(EL.m)
99.90
99.52
99.39
99.24
99.18
99.14
98.44
100.65
101.76
104.86
100m3/s
放流
距離
(m)
0
0.3
0.6
1.2
1.8
2.4
10
20
26.87
40.04
貯水位
(EL.m)
99.90
99.43
99.15
98.91
98.88
98.84
98.42
99.87
100.89
101.75
8.7 減勢工
8.7.1 減勢工側壁の壁高
図 8.7.1 にダム設計洪水流量 1420m3/s 時の水面形を示す。
右岸側壁沿いの水面形と左岸側壁沿いの水面形について、特に大きな違いはなかった。0
∼20m までは水位は上昇傾向にあり、以降(20m∼35m)はほぼ一定の水位であった(右岸
EL107.8m、左岸 EL107.7m)。
最高水位は、右岸側 EL109.47m、左岸側 EL109.86m であり、減勢工の計画壁高 EL110.0m に
対して十分に満足している。また、EL110m の壁高から副ダム下流の導流壁までは、水位の高
い方の右岸側の水面形に沿った壁高としてこれをつなぐものとする。
次の章(8.8 章)で示すが副ダム下流の導流壁(一段低い水平部分)については、ダム設計洪
水流量において溢水を許す構造とし、先に述べた接続区間は、背後の旧河道部河岸に高い位
置から落水が及ばないようにダム設計洪水流量において溢水が生じない高さに設定するもの
である。
115
max:EL109.47m
110
105
100
95
90
0
10
20
30
40
50
60
70
80
(A) 右岸側壁
115
max:EL109.86m
110
105
100
95
90
0
10
20
30
40
50
60
(B) 左岸側壁
図 8.7.1 減勢工側壁沿いの水面形(流量 1420m3/s)(ガイドウォール最終形状)
横軸:距離(m)、縦軸:水位(EL.m)
●:平均水位 ○:最高水位
157
表 8.7.1 減勢工側壁沿いの水面形(流量 1420m3/s)(ガイドウォール最終形状)
(A)右岸側壁
距離(m)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
末端
max
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
77.681
(B)左岸側壁
平均水位 最高水位
(EL.m)
(EL.m)
106.87
107.53
107.65
107.62
107.93
107.81
107.67
107.74
106.59
104.05
101.80
101.44
101.85
102.38
102.55
102.03
101.57
107.93
107.99
108.70
108.63
109.23
109.47
109.37
108.86
108.83
107.43
105.22
103.09
102.49
103.46
103.67
103.43
103.11
102.03
109.47
158
距離(m)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
末端
max
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
57.364
平均水位 最高水位
(EL.m)
(EL.m)
106.69
107.32
107.51
107.67
107.97
107.97
107.69
107.15
103.75
97.24
95.30
95.53
94.97
107.97
107.50
108.60
108.91
109.39
109.86
109.18
108.62
107.92
104.71
99.17
96.33
96.40
95.67
109.86
8.7.2 減勢工内の流況
(1) 計画最大放流量 460m3/s までの流量
270m3/s 並びに 460m3/s について、下段常用洪水吐きからの放流水が減勢工内で広がり減勢
工全体で減勢されていた。460m3/s については、側壁沿いの流れが中央部に比べてやや大きい。
0∼15m 付近の左右に平面渦が見られるが、ガイドウォール上であるので、問題ない。
(2) ダム設計洪水流量 1420m3/s までの流量
計画最大放流量 460m3/s で見られた左右の平面渦は見られず、減勢工全体で安全に導流で
きている。
以上のことから、この減勢工最終形状において、計画最大放流量 460m3/s まで安定した減
勢工かが得られ、ダム設計洪水流量 1420m3/s まで安全に導流できる。
159
(a) 270m3/s
(b) 計画最大放流量 460m3/s
(c) 800m3/s
(d) 1100m3/s
写真 8.7.1 減勢工内の流況(ガイドウォール最終形状)
160
(e) ダム設計洪水流量 1420m3/s
8.8 下流導流壁
8.8.1 導流壁の壁高
H17 年度の実験において、減勢工の流れを下流河道の流心に導流できるように、副ダム下
流の導流壁を検討した結果、導流壁の壁高 EL101.5m と長さ 12m となった。なお、導流壁の対
象流量は、洪水調節時の最大放流量(計画最大放流量:460m3/s)である。
前述のとおり、減勢工の形状を変更したことから、導流壁の壁高を確認する。
水面形の計測の結果、
計画最大放流量 460m3/s での最高水位は EL100.56m であることから、
導流壁の計画壁高 EL101.5m で問題ない。
115
110
105
max:EL100.56m
100
95
90
0
10
20
30
40
50
60
70
80
図 8.8.1 導流壁沿いの水面形(右岸側壁沿い、流量 460m3/s)(ガイドウォール最終形状)
横軸:距離(m)、縦軸:水位(EL.m)
●:平均水位 ○:最高水位
表 8.8.1 導流壁沿いの水面形(右岸側壁沿い、流量 460m3/s)(ガイドウォール最終形状)
距離(m)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
末端
平均水位 最高水位
(EL.m)
(EL.m)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
77.681
102.33
103.15
103.41
103.76
104.29
104.29
104.36
104.32
102.38
98.67
96.13
98.15
99.06
99.46
99.44
98.55
97.45
161
104.15
105.09
104.94
105.22
105.01
104.95
104.82
104.94
103.29
99.55
97.34
100.04
100.28
100.56
100.37
99.51
98.18
8.8.2
導流壁沿いの流況
導流壁の壁高は、計画最大放流量 460m3/s が安全に導流できる壁高で設計している。その
ため、計画最大放流量 460m3/s 以上の流量が流下する場合、導流壁を溢水する。この溢水が
現況河道に与える影響を確認する必要がある。
①1100m3/s 以上で、導流堤背後に溢水し、落水位置は 1100m3/s では導流堤から 5m 付近、
1420m3/s では 8m 付近であった。
②導流壁から右岸の現況河岸までの距離は約 30m あり、この落水による衝撃は河岸まで達す
るものではなく問題ない。
③1100m3/s、1420m3/s 流下時の背後の水深は、ともに 5m あって、落水の影響が河床に達する
ことはない。
表 8.8.2 導流壁沿いの水位(EL.m)
流量(m3/s)
460
800
1100
1420
区間内
99.85
101.50
102.05
102.85
※区間内:導流壁内
背水位:導流壁外
162
背水位
96.80
97.65
98.50
98.60
導流壁からの溢水なし
(a) 800m3/s
5m
背水の影響により水深5m
(b) 1100m3/s
8m
背水の影響により水深5m
(c) ダム設計洪水流量 1420m3/s
写真 8.8.1 導流壁沿いの流況
163
8.8.3 副ダム下流の水面形
図 8.8.2 に流量 270m3/s 時の副ダム下流側壁沿いの水面形を示す。流量 270m3/s 時は、前
述のように堆砂土砂がフラッシュされ、減勢工内からおおむね排砂される状況である。流量
270m3/s 時の最高水位は図 8.8.2 より、副ダム下流側壁沿いにおいて、EL98m 程度である。
以上のことから、副ダム下流側壁沿いのライニング範囲は、おおむね排砂される流量
270m3/s 時の水面形を考慮し、EL98.0m 以上とする。
表 8.8.3 副ダム下流側壁沿いの水面形(流量 270m3/s)(ガイドウォール最終形状)
右岸側壁沿い
距離(m)
左岸側壁沿い
水位(E.L.m)
35.0
40.0
45.0
50.0
55.0
60.0
65.0
70.0
75.0
77.7
82.7
87.7
103.1
101.8
97.1
95.4
97.1
98.0
98.1
97.6
97.0
96.5
96.2
96.2
距離(m)
水位(E.L.m)
35.0
40.0
45.0
50.0
55.0
57.4
62.4
67.4
103.0
99.2
95.5
95.8
95.7
95.7
96.3
96.1
115
110
105
100
95
90
20
30
40
50
60
70
80
90
(A) 右岸側壁
115
110
105
100
95
90
20
30
40
50
60
70
(B) 左岸側壁
図 8.8.2 副ダム下流側壁沿いの水面形(流量 270m3/s)(ガイドウォール最終形状)
横軸:距離(m)、縦軸:水位(EL.m)
●:平均水位 ○:最高水位
164
8.9 低水放流設備下流
8.9.1 低水放流設備下流の流況
写真 8.9.1 に辰巳用水付近の堆砂状況を示す。(a)は低水放流設備が原設計で、低水放流
設備より下流が現況河道である場合で、(b)は低水放流設備が最終案で、低水放流設備より下
流が現況河道に沿って護岸を設置した場合である。
(a)では、低水放流設備からの放流水が分散し、辰巳用水取水口前面が堆砂している。それ
に対し、(b)では、低水放流設備からの放流水が分散することなく、辰巳用水取水口前面を通
過する水みちが形成されることが確認できた。
そこで、低水放流設備から辰巳用水に至る河道に護岸を設置することが望ましい。
(a) 低水放流設備(原設計)、河道(現況)
(b) 低水放流設備(最終形状)、河道(護岸設置)
写真 8.9.1 低水放流設備下流の流況
165
1m3/s
5m3/s
10m3/s
25m3/s
50m3/s
100m3/s
200m3/s
270m3/s
460m3/s
800m3/s
1100m3/s
写真 8.9.2 低水放流設備下流の流況(護岸設置)
166
1420m3/s
8.9.2 護岸沿いの水理量
護岸を設置した場合の護岸沿いの水位と流速を測定した。
図 8.9.1 に測定ポイントを、図 8.9.2∼8.9.3 に測定結果を示す。
図 8.9.1 測定ポイント
106
104
10
25
50
100
200
270
460
800
1100
1420
標高(EL.m)
102
100
98
96
94
92
90
呑み口
③
④
⑤
(a) 水位
6
10
25
50
100
200
270
460
800
1100
1420
5
流速(m/s)
4
3
2
1
0
放流設備末端
③
④
(b) 流速
図 8.9.1 護岸沿いの水理量
167
⑤
表 8.9.1 護岸沿いの水理量
ダム
放流量
3
m /s
10
25
50
100
200
270
460
800
1100
1420
低水放流施設
低水放
②水路終端
流施設 ①呑み口
放流量
水位
水深
流速
3
EL.m
m
m/s
m /s
2.5
7.7
8.0
8.8
9.0
9.0
8.6
8.6
8.8
8.8
98.53
99.48
101.05
101.95
102.56
101.62
101.99
102.80
105.01
105.18
0.45
0.84
0.84
0.84
0.87
0.90
0.87
0.84
2.83
1.05
2.32
4.83
5.31
5.03
5.24
5.21
5.48
5.58
1.52
5.44
水深
m
1.23
1.68
1.33
1.05
1.16
1.16
2.03
2.73
3.89
3.05
③
水位
EL.m
96.70
97.15
96.80
96.52
96.63
96.63
97.50
98.20
99.36
98.52
168
流速
m/s
1.84
3.43
5.06
4.77
5.30
4.65
3.99
2.48
0.66
1.98
水深
m
1.33
1.65
1.33
1.23
1.33
1.30
1.75
2.80
4.13
2.66
護岸沿い
④
水位
EL.m
96.28
96.60
96.28
96.18
96.28
96.25
96.70
97.75
99.08
97.61
流速
m/s
1.31
3.13
4.22
5.16
4.54
4.42
4.03
2.28
0.92
1.77
水深
m
1.51
1.75
2.03
1.75
1.68
1.65
1.93
2.98
4.34
2.59
⑤
水位
EL.m
96.16
96.40
96.68
96.40
96.33
96.30
96.58
97.63
98.99
97.24
流速
m/s
1.43
2.34
3.29
2.06
3.61
3.32
3.15
2.06
0.98
1.50
8.9.3 低水放流設備下流の河床高
(1) 実験内容
低水放流設備からの土砂流出は、減勢工満砂時においてダム放流量が 25m3/s 程度より小さ
い場合に生じている。ダム放流量が大きい場合には低水放流設備呑み口前面の土砂がフラッ
シュされるとともに、下段洪水吐きからの土砂流出が無くなり、低水放流設備からは清水の
みが流出している。
また、低水放流設備の下流水路から辰巳用水の東岩取水口までは護岸整備を行う計画であ
り、流況観察の結果、低水放流設備からの流れはこの護岸沿いを流れ、東岩取水口前を経て
下流の堰を越流している。この際、先に示したように、ダム放流量が 25m3/s 程度より小さい
洪水の場合には、土砂流出を伴っているので流路の河床高が高くなれば東岩取水口における
取水に影響がある。そこで、ダム放流量が 25m3/s より小さい場合の低水放流設備下流の護岸
沿い∼東岩取水口前∼下流堰までの河床高を測定し、影響の有無を調査した。
なお、河床高の測定は各流量において長時間(現地量 36 時間)の通水をし、河床高が安定
した時点で行った。
169
(2) 実験結果
図 8.9.2 は、各流量における河床高の縦断形を示したものであるが、いずれの流量におい
ても流路は護岸から取水口前面にかけての外岸側に形成され、東岩取水口付近が水衝部とな
るため深掘れが生じて河床高が低くなる。東岩取水口の敷き高は EL95.14m であるが、いずれ
の流量でも取水口前の河床高はこれより低い位置にあるので、取水に対する影響は生じない
ものと考えられる。
97.0
25m3/s
96.5
10m3/s
5m3/s
水位(EL.m)
96.0
1m3/s
95.5
95.0
東岩取水口 EL95.14m
94.5
94.0
93.5
護岸②
護岸③
護岸④
取水口
下流堰
図 8.9.2 護岸沿い∼東岩取水口前の河床縦断
表 8.9.2 護岸沿い∼東岩取水口前の河床縦断
25m3/s
護岸②
護岸③
護岸④
取水口
下流堰
96.05
95.73
95.17
94.86
95.80
10m3/s
96.47
95.84
95.70
94.96
95.80
170
5m3/s
96.36
96.08
95.91
95.03
95.84
1m3/s
96.64
96.19
95.91
95.07
95.84
9.流木対策実験
9.1 実験方針
9.1.1 基本方針
常用洪水吐きのスクリーンの検討は、既往の水理模型実験で用いている貯水池を含む全体
模型と下段常用洪水吐きに着目した抽出模型を用いて行った。
想定する流木の規模や流木量は、辰巳ダム流域の植生、上流の犀川ダムの実績、近隣の洪
水時の流木発生実績等を元に以下のとおり想定した。
流木の規模:3m、6m、9m、12m、15m の5種 径 30cm
流木の量 :300 本(5 種×60 本)、600 本(5 種×120 本)
9.1.2 流域の植生と流木の発生実績
(1)流域の主な植生
既往の周辺環境調査資料(平成 12 年度 犀川総合開発事業(辰巳ダム建設)設計業務委託
(環境調査その3)報告書
平成 13 年 3 月)によれば、流域の主な植生は、ケヤキ等の落葉
広葉樹と杉の植林となり、これららの樹木の大きさは最大で以下に示すとおりである。
最大長さ:15m 程度、平均径:30cm 程度
(2)犀川ダム貯水池の流木の発生実績
上流の犀川ダムの流木処理において回収された流木の実績は、以下に示すとおりである。
枝
部: 径 10cm 程度 長さ 2m 前後
幹
部: 径 30cm 程度 長さ 5m 程度
また、その発生量については、流木材積(面積×厚み)の平均で 92m3/年となる。さらに、辰
巳ダム(流域面積 A=21km2)の流木量を犀川ダムとの流域面積比で算出すれば、92×(21/56.1)
=34m3/年となる。
171
表 9.1.1 犀川ダムの流木処理量(実績)
年度
平成18年度
平成17年度
平成16年度
平成15年度
平成14年度
平成13年度
平均値
処理量
計算式
流木材積
(t)
(面積×厚み×単位重量)
(面積×厚み)
56.4t
54.6t
55.8t
55.8t
45.5t
44.5t
52.3t
940m2×0.1m×0.6t/m3
910m2×0.1m×0.6t/m3
930m2×0.1m×0.6t/m3
2
3
930m ×0.1m×0.6t/m
910m2×0.1m×0.5t/m3
890m2×0.1m×0.5t/m3
94m3
91m3
93m3
3
93m
91m3
89m3
92m3
処理実績
(台数:4t積み
ダンプトラッ
ク)
40台
23台
23台
27台
23台
43台
犀川ダム流木処理の委託量
(3)近年の洪水による流木量の発生
平成 16 年 7 月に発生した福井豪雨における足羽川流域の流木発生実績を参考とした場合、
既往報告書(山間集落豪雨災害対策検討委員会報告書)では、その流域の河畔林および渓畔林
の被害発生面積から当該箇所の立木が流木となって流出したと見なし、その材積を推定して
おり、流域のほとんどが森林であろう渓流部について、抽出した結果は以下のとおりである。
①流域森林面積
②被害面積
③推定流木材積
2,785(ha)
1.92(ha)
475 m3
④流木材積・流域森林面積比 17m3/km2
国土交通省砂防部より平成 12 年に示された流木対策指針(案)では、近傍の流木発生事例
における流木材積・流域面積比(V/A)をもとに当該流域の発生流木量を推定できるとされてい
る。実態調査結果(1/10 勾配程度の渓流)は、図 9.1.1 と示されており、これによれば実績
の多くは V/A=100 以下にあり、足羽川の結果(V/A=17)はこの範囲にあり妥当であると考
えられる。
172
図 9.1.1 流域面積と発生流木材積
このため、足羽川の実績を用いて想定する辰巳ダムの流木量発生量は、辰巳ダムの流域全
体を森林面積とし、足羽川の流木材積と流域森林面積比を用いると 358m3 となる。
(17m3/km2)×21.0km=358m3
なお、実験で投入した流木量 600 本は、流木材積にすると 380 m3 となり、上記の福井豪雨
に実績から推定した流木量 358m3 にほぼ相当する量である。また、犀川ダムで過去6年間に
捕捉された流木量から推定した辰巳ダム流域の推定流木量(34m3/年)の 10 年分に相当する
量である。
173
9.2 実験で用いる流木模型
9.2.1 実験で用いる流木の規模
実験に用いる流木の規模は、実際の流域で発生した流木規模を参考に決定することとした。
なお、枝部の流木は、長さが洪水吐き開口(下段常用洪水吐き 2.9m、上段常用洪水吐き 4.5m)
より短く、径も細いのでこれは開口を通過するものと考え、幹部分の流木を対象とした。
前述の「流域の主な植生」で示した平均径として 30cm を想定し、長さは最大長まで取って
最大 15m として、3m、6m、9m、12m、15m の5種の長さの流木を混ぜて実験を行うこととした。
枝の有無については、平成 17 年度において枝有りの流木模型を用いて実験を行ったが、枝
が有る場合にはピア間に流入しにくく、枝がない棒状のものがナイフエッジ開口部まで到達
しやすいことから、今回の実験では棒状の模型を用いて実験を行うものとした。
ただし、流木は、湿潤状況等により水面に横たわるものや水中で縦や斜めになるもの等が
考えられることから比重を変えたものを用意することとした。
写真 9.2.1 流木模型の状況(横や縦になって流れる)
174
9.2.2 流木量
投入する流木量は、先に示した通り、300 本、600 本の流木量については、発生した流木が
洪水吐き上流の接近流速の小さい範囲まで十分流木で満たされる量となっている。これは、
接近流速が小さい範囲にある流木では、流木滞留による水位上昇は生じない、また洪水吐き
の放流能力に影響しないと考えられることから、この範囲まで流木を満たせば洪水吐きへの
影響を十分把握できるものと判断した。
接近流速の小さい範囲については、洪水吐きの圧力測定の結果からピアの直上流から水路
内の水頭差が無いことから接近流速が十分小さいことが分かり、洪水吐きピアの上流に十分
流木が滞留する量を投入すれば良い。
前述において想定した 3m、6m、9m、12m、15m の5種類の長さの流木を各 60 本づつ(合計
300 本)を投入すると、すべて横向きに水面を満たした場合は、図 9.2.1 に示す通りピア上流
9m まで流木で満たされる。また、半分を縦向きにした場合、上流 3m までが流木で満たされ
る量となる。
これは、実際には流木は、洪水吐きを中心に滞留するので洪水吐きピア上流が十分に流木
で満たされる条件である。
半分が縦向きに有る場合
すべて横向きに水面に有る場合
洪水吐き
60 m
6 0m
流木範囲
流木範囲
4m
洪水吐き
4m
9m
半分が縦向きで洪水吐きを中心に有る場合
60m
流木範囲
洪水吐き
4m
1 2m
図 9.2.1 流木の滞留範囲
175
3m
なお、投入本数による影響を確認するため、下段常用洪水吐きの抽出実験により、流木本
数 600 本(材積 380m3)の場合と 300 本(材積 190m3)の場合について、閉塞時の流下能力の低
下状況を確認した。
流下量の計測の結果、図 9.2.2 のとおり 300 本、600 本の場合でも流下能力の低下量は 25%
程度で、流木の投入本数の差による影響がないことを確認した。これは、洪水吐き前面に流
木が張り付いた後は、その上流の流木は流速の遅い範囲に滞留してしまうからである。この
ため、以下の実験は、投入本数は 600 本としてスクリーンの検討を行うこととした。
実験で投入した流木量 600 本は、流木材積にすると、380 m3 となり、福井豪雨に実績に即
して算出した辰巳ダム流域からの推定流木量 358m3 に相当する量である。また、犀川ダムで
過去6年間に捕捉された流木量から推定した辰巳ダム流域の推定流木量(34m3/年)の 10 年
分に相当する。
このため、実験で投入した流木量は、上流の犀川ダムの流木発生実績よりもかなり多く、
中小洪水時に流出する流木がダム地点に集中して流れでたものと想定できる実験条件と判断
した。
140
スクリーン無し・流木無し
スクリーン無し・流木300本
135
スクリーン無し・流木600本
130
設計値
貯水位(EL.m)
125
120
115
110
105
管路流
100
開水路流
95
0
50
100
150
3
放流量(m /s)
図 9.2.2 貯水位と流量の関係(下段常用洪水吐き 1 門、流木量の影響確認)
176
表 9.2.1 貯水位と流量の関係(下段常用洪水吐き 1 門、流木量の影響確認)測定結果
流木無し
貯水位
(EL.m)
99.73
100.09
101.32
103.45
105.85
108.82
112.39
116.74
121.06
127.03
133.06
139.63
146.17
99.40
99.73
100.39
100.72
101.71
100.96
102.85
105.52
108.43
112.18
116.14
117.61
122.77
128.47
134.32
141.91
流量
(m3/s)
21.10
25.96
38.68
51.02
62.48
75.34
88.46
102.63
115.25
130.23
143.88
158.45
170.84
17.61
21.19
30.03
34.23
41.51
37.50
47.78
61.48
74.01
87.89
100.85
104.57
119.64
133.51
146.79
162.00
流木300本
流量
(m3/s)
貯水位
(EL.m)
115.18
128.23
135.34
123.40
112.45
107.77
102.79
101.08
99.91
99.01
177
74.41
102.48
115.10
92.28
68.03
54.32
34.23
22.88
12.86
5.16
流木600本
貯水位
(EL.m)
98.35
99.37
101.17
106.03
107.14
112.03
113.38
122.29
123.82
132.46
139.69
流量
(m3/s)
3.31
11.92
26.35
48.36
52.54
67.14
72.70
91.00
94.15
110.32
122.01
9.3 下段常用洪水吐き
9.3.1 平成 17 年度の実験結果
平成 17 年度の実験では、流木の模型として、枝の無いもの、枝の有るものと2種について
閉塞状況や水位と流量の関係を検証した。なお、流木は十分水を吸わせた状態で、比重は一
様であった。
枝のないものは、流木は水平方向に浮遊しながら洪水吐きに接近し、開水路流では洪水吐
き内に流入してもナイフエッジ部に詰まることなく通過し、管路流では水面に浮き洪水吐き
に流入するものはなかった。
枝のあるものは、流木は水平方向に浮遊しながら洪水吐きに接近し、開水路流ではピアに
枝が引っかかり洪水吐きを流下する流木はなく、ナイフエッジ部に詰まることはなかった。
また、管路流では引っかかった流木も水面に浮き洪水吐きに流入するものはなかった。
以上のことから、平成 17 年度の実験では、スクリーンの必要性は認められなかった。
本年度の実験では、比重の違う流木を混在させた条件で実験を行うことにした。
178
9.3.2 実験方法
実験は、昨年度の流木実験と同様に、1/30 の抽出模型を用いて行った。
(1) 流木模型
径は 30cm、長さは 3m、6m、9m、12m、15m の5種の長さの流木を混ぜて実験を行うことに
した。本数は各 120 本づつとして、合計 600 本である。
また、長さ方向に比重の違う流木を混在させる。
(2) 実験ケース
実験は、まず、スクリーンを設置せずに行った(スクリーンなし)。
その結果、スクリーンを設置しない場合、流木が詰まる状況が確認されたため、次にスク
リーンを付けてスクリーンの設置効果を検証した(スクリーン(原案))。
ここで、スクリーンを設置しない場合において流速分布を測定した結果、スクリーン規模
を縮小することが可能であると判断できたため、縮小したスクリーンについても実験を行っ
た(スクリーン(比較案))。
表 9.3.1
実験ケース(下段常用洪水吐き流木対策実験)
スクリーンなし
スクリーン(原案)
スクリーン(比較案)
放流能力
○
○
○
※スクリーン規模を検討するため測定した
(9.3.5章スクリーン(比較案)を参照)
179
流況
○
○
○
流速分布
○
※
9.3.3 スクリーンなし
(1) 放流能力
流木を投入した場合、洪水吐きは流木により閉塞状況となる。この際の放流能力を調査し
た。なお、流木投入規模は、300 本と 600 本で行った。
図 9.3.1 に水位と流量の関係を示す。
流木が有る場合、流木が無い場合に比べて約 24%放流能力が低下することが明らかになっ
た。なお、流木 600 本の場合、流木 300 本と同程度の放流能力の低下率であった。これは、
洪水吐き前面に流木が集まった後は、その上流の流木は流速の遅い範囲に滞留するためであ
る。
140
135
130
貯水位(EL.m)
125
120
115
110
管路流
105
100
開水路流
95
0
50
100
150
放流量(m3 /s)
図 9.3.1
流木無し
流木300本
流木600本
設計値
放流能力(スクリーン無し) (下段常用洪水吐き)
180
表 9.3.2
水位
H(EL.m)
100
105
110
115
120
125
130
132
135.5
放流能力(スクリーン無し)(下段常用洪水吐き)
水深
h(m)
流木なし
流量
3
Q(m /s)
3
8
13
18
23
28
33
35
38.5
スクリーンなし
流木あり(300本)
流木あり(600本)
流量
放流率
流量
放流率
3
3
(%)
(%)
Q(m /s)
Q(m /s)
30.7
59.3
80.2
97.5
112.6
126.2
138.6
143.3
151.3
21.2
43.2
59.6
73.3
85.3
96.2
106.1
109.9
116.2
31
27
26
25
24
24
23
23
23
23.4
45.3
61.4
74.7
86.3
96.7
106.3
109.9
116.0
24
24
23
23
23
23
23
23
23
※放流率(%):スクリーンなし、流木なしの流量に対する損失割合
表 9.3.3
放流能力(スクリーン無し)測定結果 (下段常用洪水吐き)
流木無し
貯水位
(EL.m)
99.73
100.09
101.32
103.45
105.85
108.82
112.39
116.74
121.06
127.03
133.06
139.63
146.17
99.40
99.73
100.39
100.72
101.71
100.96
102.85
105.52
108.43
112.18
116.14
117.61
122.77
128.47
134.32
141.91
流量
3
(m /s)
21.10
25.96
38.68
51.02
62.48
75.34
88.46
102.63
115.25
130.23
143.88
158.45
170.84
17.61
21.19
30.03
34.23
41.51
37.50
47.78
61.48
74.01
87.89
100.85
104.57
119.64
133.51
146.79
162.00
流木300本
流量
3
(m /s)
貯水位
(EL.m)
115.18
128.23
135.34
123.40
112.45
107.77
102.79
101.08
99.91
99.01
181
74.41
102.48
115.10
92.28
68.03
54.32
34.23
22.88
12.86
5.16
流木600本
貯水位
(EL.m)
98.35
99.37
101.17
106.03
107.14
112.03
113.38
122.29
123.82
132.46
139.69
流量
3
(m /s)
3.31
11.92
26.35
48.36
52.54
67.14
72.70
91.00
94.15
110.32
122.01
(2) 流況
開水路流時は、流木は、浮遊しながら洪水吐きに接近し、洪水吐き付近に集まり、ピア間
に流入した流木は、比重の違いに関わらず洪水吐きを通過し、開口部に詰まる状況は見られ
なかった。遷移流時に、流木は比重の違いにより水平や斜め、垂直に浮遊しながら洪水吐き
付近に集まり、洪水吐きに引き込まれ、開口部内で絡み合い詰まる。管路流では、浮遊して
いる流木が新たに洪水吐きに引き込まれる状況はないが、すでに開口部に詰まった流木は開
口部内は詰まった状況のままであった。洪水後においても、詰まりが解消されることはなか
った。
(a) 下段常用洪水吐き吐口
(b) 下段常用洪水吐き側面から
写真 9.3.1 流木による閉塞状況(下段常用洪水吐き)
182
写真 9.3.2 流木の状況(スクリーン無し)(下段常用洪水吐き)
183
(3) スクリーンの必要性
放流能力の調査から、洪水吐きの開口部に流木が詰まり閉塞した場合、放流能力は約 24%
低下することが明らかになった。
このことは、洪水発生時に仮に流木等により下段常用洪水吐きが閉塞した場合にはダムの
洪水調節が十分に発揮できないということであり、洪水時に常に使用する下段常用洪水吐き
では重大な問題である。
そこで、スクリーンを設置した場合を検証することにした。
184
9.3.4 スクリーン(原案)
(1) スクリーン(原案)の概要
流況観察により、縦方向の比重が異なり斜めや鉛直方向に浮遊して洪水吐きのピア間に流
入した流木が、開水路流から管路流に遷移流から管路流の初期にかけて、ナイフエッジ部に
上方から引き込まれ、折重なって閉塞に至ることが明らかになった。
この対策して、他ダム(益田川ダム)の事例を参考に、ナイフエッジ開口の前面はオープン
として、その上方にスクリーンを設置する形状を検討する。
スクリーンの形状は、洪水吐き開口(2.9×2.9m)前面をオープンとし、前面上部および側面
にスクリーンを配置したものである。スクリーンピッチは 0.2m で、Φ45mm 丸棒を配した。
(a) 正面
(b) 側面
写真 9.3.3
スクリーン(原案)(下段常用洪水吐き)
185
(a) 上流面図
(b) 断面図
図 9.3.2 スクリーン(原案)(下段常用洪水吐き)
186
(2) 放流能力
スクリーン(原案)を設置した場合の放流能力を調査した。
スクリーン(原案)を設置した場合、設置しない場合に比べて放流能力の低下は 1%程度小
さくなった。また、流木滞留時は若干低下の傾向(3%程度)にあるが、大きく放流能力を損ね
るものではなかった。
140
135
130
貯水位(EL.m)
125
120
115
110
管路流
105
100
開水路流
95
0
50
100
150
放流量(m3 /s)
スクリーン原案・流木無し
スクリーン原案・流木600本
設計値
図 9.3.3 放流能力(スクリーン(原案))(下段常用洪水吐き)
187
表 9.3.4 放流能力(スクリーン(原案))(下段常用洪水吐き)
スクリーン原案
流木なし
流木あり(600本)
水位
水深
流量
H(EL.m)
h(m)
Q(m /s)
放流率
(%)
Q(m /s)
29.9
58.3
79.1
96.3
111.4
125.0
137.4
142.1
150.0
3
2
1
1
1
1
1
1
1
28.9
57.0
77.7
94.9
109.9
123.5
135.9
140.6
148.5
100
105
110
115
120
125
130
132
135.5
3
3
8
13
18
23
28
33
35
38.5
流量
3
放流率
(%)
6
4
3
3
2
2
2
2
2
※放流率(%):スクリーンなし、流木なしの流量に対する損失割合
表 9.3.5 放流能力(スクリーン(原案))測定結果 (下段常用洪水吐き)
流木無し
貯水位
(EL.m)
98.47
98.95
99.07
99.49
99.70
100.03
100.27
100.54
101.02
102.34
103.48
104.80
106.15
107.71
109.18
110.71
113.23
115.48
117.82
120.37
123.01
125.59
128.68
131.77
134.92
138.52
140.77
144.19
流木600本
流量
(m3/s)
貯水位
(EL.m)
7.38
12.18
13.63
18.15
20.82
24.80
28.12
31.75
38.46
45.06
51.49
57.80
64.23
69.71
76.27
82.35
90.72
97.62
104.87
111.70
118.53
125.37
133.01
139.83
146.96
154.58
159.69
166.67
188
98.53
99.22
99.91
100.51
101.38
102.91
104.11
109.39
113.50
118.51
125.44
133.03
流量
(m3/s)
7.14
14.16
21.94
29.42
36.33
47.33
55.03
77.07
91.28
105.92
124.57
142.02
(3) 流況
スクリーン(原案)を設置した場合の流況観察を行った。
開水路流時は、スクリーンの設置がない場合と同様に、スクリーン開口部を通過した流木
はそのまま洪水吐きを通過し、その他はスクリーン前面に滞留し、洪水吐き開口部が詰まる
ことは無かった。
遷移流時において、上方から引き込まれる流木を防止することができ、スクリーンのない
場合のような状況(流木は比重の違いにより水平や斜め、垂直に浮遊しながら洪水吐き付近に
集まり、洪水吐きに引き込まれ、開口部内で絡み合い詰まる状況)にはならず、開口部の閉塞
は見られなかった。
また、管路流時は、スクリーン開口部を通過する流木はほとんどなく、スクリーン前面、
側面および上部に滞留し、やはり洪水吐き開口部が詰まることはなかった。
洪水後は、洪水吐き開口部を閉塞するような流木はなく、スクリーン前面に残留していた。
(a) 遷移流時(EL105.0m)
(b) 洪水後
写真 9.3.4 スクリーン(原案)設置時の流況(下段常用洪水吐き)
189
写真 9.3.5
流木の状況(スクリーン(原案))(下段常用洪水吐き)
190
(4) スクリーンの効果
開口部の前面をオープンとし、その上方にスクリーンを設置することにより、閉塞の原因
となっていた開口部上方からの流木の引き込みを防止でき、閉塞を防ぐことができた。
また、スクリーンを設置することによる放流能力の低下も見られず、ほぼ設計値通りの放
流能力を確保できることが明らかになった。
ここで、下段常用洪水吐きのスクリーンは、平常時は水面上にあり、堤体上流面フィレッ
ト形状の中にスクリーンを収めることができれば、景観上も良好であることから、堤体上流
面フレット形状内に納めた形状について次に検証した。
191
9.3.5 スクリーン(比較案)
(1) スクリーン(比較案)の概要
スクリーン(原案)を設置することにより、流木による閉塞を防止できることが確認できた。
下段常用洪水吐きは平常時は水面上にあり、堤体上流面フィレット形状の中にスクリーン
を収めることができれば、景観上も良好であることから、スクリーン規模を縮小し、堤体上
流面フレット形状内に納めた形状を検討した。
図 9.3.4 堤体上流面の概要図
(a) 正面
(b) 側面
写真 9.3.6 スクリーン(比較案)(下段常用洪水吐き)
192
(a) 原案
(b) 比較案
図 9.3.5 スクリーン(原案と比較案) (下段常用洪水吐き)
(スクリーン原案:赤線、スクリーン比較案:青線)
193
スクリーンによるエネルギー損失は、流速水頭(v2/(2g))に比例するので、流速が 1m/s 以上となると流
図 9.3.8 並びに図 9.3.9 に設計洪水位(EL135.5m)時の中央部と右岸部の等流速線図を示す。
原案のスクリーンの設置位置について、原案の上面は 1m/s 以下(中央部)、正面は 1∼2.5m/s(中央部)、
側面は 1∼2m/s(ピア開口から 1.5m 離れていることから推定)の流速値位置に取り付いている。
速値の 2 乗に比例して増大する。このことを考慮し、比較案の設置位置は、上面はやはり 1m/s 以下の位
原
案
原
案
置とし、正面及び側面は原案と同様の配置とし、階段フレット内に収めたものである。
ピア先端からの距離(m)
ピア先端からの距離(m)
EL110.0m
0.17
-1.0
0.19
0.19
0.0
0.19 0.19
1.0
0.19
2.0
0.19
エッジ
EL110.0m
0.16
位置
ット
レ
ィ
0.19フ
状の
段
階
0.21
0.25
0.24
0.25 0.25
0.24
0.25
EL108.0m
0.28
0.29
0.33
0.34 0.35
0.36
0.36
0.30
EL107.0m
0.36
0.40
0.44
0.46 0.46
0.52
0.51
0.40
EL106.0m
0.49
0.54
0.60
0.67 0.69
0.81
0.84
0.63
0.18
0.21
0.0
0.21 0.18
1.0
0.18
2.0
0.19
0.59
0.67
0.77
0.86 0.95
1.19
1.29
EL104.0m
0.81
0.98
1.18
1.42 1.56
EL103.0m
1.09
1.21
1.52
1.87 2.03
EL102.0m
1.30
2.04
1.91
2.55 2.76
EL101.0m
1.60
0.20
位置
ット
レ
ィ
0.27フ
状の
段
階
0.24
0.23
0.25
0.30 0.25
0.25
0.26
EL108.0m
0.27
0.32
0.31
0.39 0.33
0.35
0.35
0.32
EL107.0m
0.35
0.40
0.44
0.48 0.45
0.53
0.54
0.46
EL106.0m
0.45
0.50
0.64
0.64 0.70
0.90
0.96
0.85
0.55
0.63
0.79
0.82 0.97
1.48
1.62
1.44
EL104.0m
0.76
0.91
1.07
1.30 1.63
EL103.0m
0.96
1.18
1.39
1.72 2.15
EL102.0m
1.22
1.51
1.82
2.27 2.81
EL101.0m
1.47
1.84
2.29
3.02 3.66
1.0m/s
0.94
EL105.0m
1.0m/s
EL105.0m
エッジ
EL109.0m
比
較
案
EL109.0m
0.17
-1.0
比
較
案
-2.0
-2.0
2.0m/s
2.0m/s
3.0m/s
1.99
2.49
3.55 3.64
4.0m/s
4.0m/s
EL100.0m
1.84
2.46
3.04
EL100.0m
4.58 4.58
1.69
2.19
2.79
4.07 4.64
5.0m/s
5.0m/s
EL99.0m
2.07
2.81
3.85
5.62 5.51
EL98.0m
2.03
2.95
4.28
6.13 6.16
EL97.0m
1.80
2.53
3.64
5.84 5.68
図 9.3.8
3.0m/s
6.0m/s
下段常用洪水吐き近傍の流速分布(設計洪水位、洪水吐き中央部)
EL99.0m
1.81
2.41
3.20
4.87 5.54
EL98.0m
1.78
2.45
3.25
5.52 5.99
EL97.0m
1.49
1.98
2.69
4.29 5.47
図 9.3.9
196
下段常用洪水吐き付近の流速分布(設計洪水位、洪水吐き右岸部)
(3) 放流能力
スクリーン(比較案)を設置した場合の放流能力を調査した。
スクリーン(比較案)を設置した場合、設置しない場合に比べて放流能力の低下は見られな
かった。また、流木滞留時にも放流能力の低下は見られなかった。
140
135
130
貯水位(EL.m)
125
120
115
110
管路流
105
100
開水路流
95
0
50
100
150
放流量(m3 /s)
スクリーン比較案・流木無し
スクリーン比較案・流木600本
設計値
図 9.3.12 下段洪水吐きの放流能力(スクリーン比較案)
197
(4) 流況
スクリーン(比較案)を設置した場合の流況観察を行った。
スクリーン(比較案)がある場合、スクリーン(原案)と同様な流況であった。
開水路流時は、スクリーン開口部を通過した流木はそのまま洪水吐きを通過し、その他は
スクリーン前面に滞留し、洪水吐き開口部が詰まることは無かった。遷移流時において、上
方から引き込まれる流木を防止することができ、開口部が詰まる状況は見られなかった。ま
た、管路流時は、スクリーン開口部を通過する流木はほとんどなく、スクリーン前面、側面
および上部に滞留し、やはり洪水吐き開口部が詰まることはなかった。洪水後は、洪水吐き
開口部を閉塞するような流木はなく、スクリーン前面に残留していた。
198
写真 9.3.7
流木の状況(スクリーン(比較案))(下段常用洪水吐き)
199
9.3.6 下段常用洪水吐きスクリーンの最終形状
スクリーンを設置しない場合、洪水吐きの開口部に流木が詰まり閉塞し、放流能力は約 24%
低下することが明らかになった。開口部の前面をオープンとし、その上方にスクリーンを設
置することにより、閉塞の原因となっていた開口部上方からの流木の引き込みを防止でき、
閉塞を防ぐことができることが確認された。
景観に配慮した形状(階段フレット内に納める形状)として比較案を検討した結果、流木に
よる閉塞を防止でき、ほぼ設計値通りの放流能力を確保できることが確認できた。
そこで、比較案を下段洪水吐きスクリーンの最終形状とする。なお、流量とスクリーン面
積との関係を見ると、他ダム(益田川ダム)の事例と同程度となっている。
図 9.3.13 スクリーン最終形状(比較案)(下段常用洪水吐き)
200
(資料)流量とスクリーン面積との関係
辰巳(原案)
サーチャージ水位
3
流量Q(m /s)
2
スクリーン面積S(m )
Q/S
設計洪水位
辰巳(最終案)
サーチャージ水位
設計洪水位
益田川
サーチャージ水位
立野
設計洪水位
サーチャージ水位
設計洪水位
141.33
148.73
141.33
148.73
320.00
334.08
821.66
850.94
122.73
122.73
102.25
102.25
218.57
218.57
253.17
253.17
1.15
1.21
1.38
1.45
1.46
1.53
3.25
3.36
※益田川ダム
設計洪水位時の流量はサーチャージ水位時の流量から流量係数を求め、計算したもの。(流量係数0.7886)
201
(資料) スクリーン設置時のスクリーン内外の圧力差
スクリーンの設計外力として流木が張り付いて目詰まりしたときの内外の水位がある。実験で
は、スクリーン全体に流木を密に取り付けた状態においてスクリーン内外の水頭高を測定し、水
位差の調査を行った。
測定位置は図 9.3.14 の通りである。
図 9.3.14 水位差測定ポイント
測定結果は、表 9.3.11 のとおりで、設計洪水位における水位差として中央部において 2.46m を
生じている。これを下段洪水吐きスクリーンの設計における最大水位差の基礎資料とする。
表 9.3.12 設計洪水位における水位差(m)
①
スクリーン外
スクリーン内
水位差
②
135.41
133.22
2.19
③
135.38
133.07
2.31
202
④
135.38
132.92
2.46
⑤
135.26
132.86
2.40
135.20
132.86
2.34
9.4 上段常用洪水吐き
上段常用洪水吐きについても、流木による閉塞の有無を調査した。
9.4.1 実験方法
実験は、1/35 の全体模型を用いて行った。
(1) 流木模型
流木模型は、下段常用洪水吐きと同様にした。
径は 30cm、長さは 3m、6m、9m、12m、15m の5種の長さの流木を混ぜて実験を行った。本
数は各 120 本づつとして、合計 600 本である。
また、長さ方向に比重の違う流木を混在させる。
(2) 実験項目
①流況
②放流能力
④流向・流速分布
203
9.4.2
流木による閉塞状況
(1) 流況
上段洪水吐きの流木による閉塞の有無は、開水路流から管路流にかけて流木 600 本を連続
的に投入して調査した。
実験の結果、下段常用洪水吐きと同様に、遷移流付近において、斜めや縦方向に浮いた流
木が洪水吐き上方から引き込まれ、これが絡み合って写真 9.4.1(b)のように閉塞を生じるも
のであった。
(a) 貯水位 EL130m(上流から望む)
(b) 貯水位 EL130m(下流から望む)
写真 9.4.1 流木の閉塞状況(上段常用洪水吐き)
204
開水路流
下段常用洪水吐きと同様に、遷移流付近に
おいて、斜めや縦方向に浮いた流木が洪水吐
き上方から引き込まれ、これが絡み合って閉塞
を生じる。
遷移流
管路流
写真 9.4.2 流木の状況(スクリーン無し)(上段常用洪水吐き)
205
(2) 放流能力
先の流況で示したような流木(投入 600 本)の閉塞した状態で、上段常用洪水吐きの放流能
力の低下を調査した結果、サーチャージ水位において、流木無しの場合の 171.9m3/s に対し、
流木による閉塞がある場合に 129m3/s となり、その低下の割合は 25%程度であった。
140
138
136
貯水位(EL.m)
134
132
130
128
126
124
122
120
0
50
100
150
200
250
3
放流量(m /s)
設計値
流木無し
流木閉塞
図 9.4.1 上段洪水吐きの放流能力(スクリーン無し)
表 9.4.1 上段洪水吐き放流能力(スクリーン無し)の測定結果
流木無し
貯水位
流量
(EL.m)
(m3/s)
122.26
124.34
125.12
126.43
128.32
130.12
131.05
132.23
134.03
135.46
136.26
138.26
流木閉塞
貯水位
流量
(EL.m)
(m3/s)
22.5
61.1
78.2
111.0
128.3
151.0
161.7
173.9
191.9
205.1
211.1
228.2
206
122.13
124.16
125.12
126.52
128.32
129.92
131.25
132.23
133.68
134.85
135.86
137.06
14.7
40.7
56.3
81.5
94.8
110.1
121.3
130.7
141.4
151.4
158.1
165.7
9.4.3
流木による影響と対策の検討
(1)流木閉塞による影響
上段洪水吐きの流木による閉塞は、実験において確認され、25%の放流能力低下を生じるこ
とが分かった。この場合の問題点については以下の項目が挙げられる。
表 9.4.1 上段洪水吐き閉塞の影響と検証
項目
検証内容
問題点
当ダムの洪水調節は下段洪水吐きからの放
流によりピークカットを行うもので上段洪
水吐き機能の低下による影響は少ない。
①
放流量減少による洪水調節機能の低下。
②
設計洪水流量時の非常用洪水吐きからの放 越流水深の上昇量は小さく、天端橋梁への
流量増加による天端橋梁への影響。
影響は少ない。
③
洪水吐きに詰まった流木が一気に流出した 放流量増加による段波は減勢工内で収束
場合のダム下流における段波の発生。
し、影響は少ない。
以上の問題点について、水理計算や実験による流況確認を行ったところ、表 9.4.1 の通り、
影響は少ないことを確認した(詳細は資料Ⅱ)。ただし、実験では上段洪水吐きにおいても、
流木による閉塞防止に対するスクリーン設置の効果とその規模を検討している。
207
(2)スクリーンの形式
上段常用洪水吐きにおける流木の詰まり方の過程は、下段と同様であり、上方や斜めから
流木が引き込まれ閉塞することが明らかになった。
よって、スクリーンの形式は、下段常用洪水吐きを参考に、上面および側面、正面はナイ
フエッジ開口高をオープンとした形のスクリーンとした。
(a) 上流から
(b) 側面から
写真 9.4.3 スクリーン(上段常用洪水吐き)
208
図 9.4.2 スクリーン(上段常用洪水吐き)(赤線)
(3)流速分布と配置
スクリーンを設置しない状態で、流速分布を測定した。上段常用洪水吐き呑口近傍の設計
洪水位における流速分布は、図 9.4.3∼4 に示す通りである(流向・流速値の詳細は資料Ⅲ
p 資Ⅲ−51∼52 に示す)
。
図 9.4.4 にスクリーンの設置位置を赤線で示すが、
設置位置の流速は、
上面は 0.5∼1.5m/s、
正面は 1∼1.5m/s、側面は 1.5∼2m/s であった。
209
(a) 中央
(b)右岸
図 9.4.3 上段常用洪水吐き近傍の流向(設計洪水位 135.5m)
210
ピア先端からの距離(m)
0
2
エッジからの
距離(m)
1
ピア先端からの距離(m)
0
5
4
3
2
1
EL132m
0.83
0.91
1.04
0.99
1.06
1.10
1.02
1.10
0.56
EL131m
0.74
0.90
1.05
0.96
0.98
1.01
0.97
1.0m/s
0.90
0.41
0
2
エッジからの
距離(m)
1
5
4
3
2
1
EL132m
0.85
0.82
0.92
0.96
1.07
1.20
1.28
1.51
EL131m
0.78
0.83
0.88
0.92
1.04
1.04
1.14
1.24
0
2.04
1.54
1.0m/s
EL130m
0.89
0.88
0.94
0.92
0.90
0.86
0.79
0.71
0.39
EL130m
0.69
0.86
0.82
0.84
0.91
0.87
0.98
1.06
0.91
EL129m
0.84
0.87
0.95
0.87
0.81
0.80
0.80
0.64
0.40
EL129m
0.76
0.69
0.78
0.74
0.80
0.75
0.68
0.60
0.81
EL128m
0.79
0.90
0.92
0.95
0.96
1.06
1.07
0.96
0.64
EL128m
0.77
0.75
0.83
0.86
0.91
0.97
0.99
1.28
EL127m
0.77
0.88
1.01
1.12
1.26
1.59
EL126m
0.93
0.99
1.14
1.33
1.67
2.22
EL125m
1.02
1.09
1.30
1.64
2.17
3.08
EL124m
1.00
1.11
1.47
1.94
2.66
3.95
EL123m
0.95
1.24
1.59
2.19
3.01
4.69
1.0m/s
0.93
1.0m/s
EL127m
0.73
0.76
0.88
0.96
1.18
1.42
EL126m
0.76
0.82
0.97
1.20
1.55
1.94
EL125m
0.87
0.93
1.17
1.43
1.98
2.63
2.0m/s
3.0m/s
2.0m/s
3.0m/s
4.0m/s
EL124m
0.84
1.01
1.28
1.71
2.39
3.37
EL123m
0.90
1.09
1.41
1.83
2.78
4.04
4.0m/s
5.0m/s
EL122m
1.09
1.19
1.62
2.32
3.35
5.27
EL122m
0.86
1.04
1.36
1.97
2.86
4.50
EL121m
0.99
1.16
1.65
2.33
3.51
5.18
EL121m
0.86
1.01
1.36
1.96
2.81
4.80
EL120m
0.87
1.09
1.58
2.09
3.18
5.57
EL120m
0.82
0.86
1.29
1.76
2.70
4.44
EL119m
1.03
1.09
1.35
1.71
2.53
4.48
EL119m
0.75
0.87
1.09
1.46
2.23
3.88
(a) 中央
(b)右岸
図 9.4.4 上段常用洪水吐き近傍の流速分布(設計洪水位 135.5m)
211
(4) スクリーン設置による流木防止効果
スクリーンを設置し、開水路流から遷移流、管路流、非常用洪水吐きからの越流と、水位
を上昇させ、流木 600 本を連続的に投入し、流木の挙動を調査した。
・開水路流では洪水吐きに入った流木は通過する。
・遷移流、管路流では、スクリーンによって洪水吐き内への流入は防止され、ナイフエッジ
開口が詰まることはない。
・非常用洪水吐きが越流すると、水面にある流木も越流し、ダム下流に流下する。
・水位低下時では、水位上昇時の流況と大きな違いはなく、スクリーンによって洪水吐き内
への流入は防止され、ナイフエッジ開口が詰まることはない。また、上方が1:1の勾配が
付いているため、スクリーン上に流木が残留することはない。
・上段常用洪水吐きからの越流が終わった後、洪水吐きの開口部に流木が残ることはなかっ
た。
よって、下段常用洪水吐きと同形式のスクリーンにて、流木による洪水吐き閉塞を防止す
ることができる。
(a)遷移流時
(b)非常用洪水吐きからの越流時
(c) 上段常用洪水吐きからの越流終了時
写真 9.4.4 スクリーン設置による効果
212
水位上昇時
開水路流(EL122.5m)
遷移流(EL126.75m)
管路流(EL129.0m)
・開水路流では洪水吐きに入った流
木は通過する。
・遷移流、管路流では、スクリーンに
よって洪水吐き内への流入は防止さ
れ、ナイフエッジ開口が詰まることは
ない。
・非常用洪水吐きが越流すると、水面
にある流木も越流し、ダム下流に流下
する。
・水位低下時では、水位上昇時の流
況と大きな違いはなく、スクリーンに
よって洪水吐き内への流入は防止さ
れ、ナイフエッジ開口が詰まることは
ない。また、上方が1:1の勾配が付い
ているため、スクリーン上に流木が残
留することはない。
越流時(EL133m)
・上段常用洪水吐きからの越流終了
後でも洪水吐き開口部に流木が残る
ことはなかった。
水位低下時
管路流時(EL129m)
遷移流時(EL126.75m)
開水路流(EL122.5m)
写真 9.4.5 流木の状況(スクリーン設置)(上段常用洪水吐き)
213
上段常用洪水吐きからの越流終了時
(5) 放流能力
流木がスクリーン前面に滞留した状態で放流量を測定した結果、サーチャージ水位
(EL120.0m) に お いて 458m3/s( 計 画 最 大 放 流 量 460m3/s) 、 設 計 洪 水 位 (135.5m) に お い て
1431m3/s(1420m3/s)が放流可能であり、設計通りで問題ないものであった。
(6) スクリーン設置
上段常用洪水吐きにスクリーンを設置することにより、流木による閉塞防止と放流能力の
保持を満足する。
214
9.4.4
上段常用洪水吐きスクリーンの最終形状
スクリーンを設置しない場合、洪水吐きの開口部が閉塞し、放流能力が約 25%低下するこ
とが明らかになった。下段常用洪水吐きのスクリーンを参考に開口部の前面をオープンにし
たスクリーンを設置したところ、流木による閉塞の防止と放流能力の保持を満足する結果を
得た。図 9.4.5 にスクリーンの最終形状を示す。
図 9.4.5 スクリーン最終形状(上段常用洪水吐き)
215
(資料) スクリーン設置時のスクリーン内外の圧力差
下段洪水吐きと同様に、スクリーンに流木が張り付いて目詰まりしたときの内外の水位差の調
査を行った。
測定位置は図 9.4.5 の通りである。
図 9.4.5 水位差測定ポイント
測定結果は、表 9.4.8 のとおりで、設計洪水位における水位差として中央部において 2.07m を
生じている。これを設計における最大水位差の基礎資料とする。
表 9.4.3 設計洪水位における水位差(m)
①
スクリーン外
スクリーン内
水位差
②
135.45
133.46
2.00
③
135.45
133.42
2.03
216
④
135.42
133.35
2.07
⑤
135.38
133.39
2.00
135.38
133.42
1.96
10.暫定運用
ここでは、暫定運用時における下段洪水吐き吐き1門による放流状況を把握し、左右どちらの
洪水吐きによる放流が適しているかを検討する。(暫定運用実験)
10.1 実験概要
(1) 減勢工の堆砂実験
流量条件は、土砂挙動の大きい流量として、ダム放流量 25m3/s を放流し、ダムからの流出土
砂の減勢工内での挙動、低水放流設備への流入状況を減勢工内の堆砂が固定化するまで確認し
た。
(2) フラッシュ実験
流量条件は、25、50、100、146m3/s の 4 流量において、減勢工内堆砂の排砂状況を把握した。
(3) ダム上流における澪筋の形成状況把握
流量条件は、25、50、100m3/s のダム上流河道の土砂移動が生じる流量において、片門放流時
の澪筋の形成状況を確認した。
(4) ダム設計洪水流量までの流況把握
非常用洪水吐き越流からダム設計洪水流量流下時の堤趾導流部および減勢工における流況を
確認した。
217
10.2 実験結果
10.2.1 減勢工の堆砂実験
(1) 右岸洪水吐きからの放流
放流水脈は、右岸ガイドウォール沿いを流れ、さらに減勢工右岸側壁沿いに流れて、副ダ
ム直上で左方向に回り込んで、反時計回りの平面渦になる。
堆砂は、右岸側から進み、反時計回りの渦流に伴って左岸側にも拡散し、満砂(48 時間)と
なる。この間、低水放流設備にも常時土砂流入し、低水放流設備から放流される土砂量は、
0.018m3/s で一定であった。
(2) 左岸洪水吐きからの放流
放流初期は、放流水脈は左岸側ガイドウォールから減勢工左岸側壁沿いを流れ、時計回り
の平面渦となった。堆砂は、左岸側半分で進んでいき、低水放流設備への土砂流入はなかっ
た。
しかし、堆砂が徐々に右岸側へ拡散するとそれに伴って、放流水脈は右岸方向に向き、放
流開始 20 時間後には低水放流設備に向かう流れとなった。このときの低水放流設備からの流
出土砂量は 0.03m3/s となった。この状況はこの後も続いた。
(3) 考察
満砂してからの低水放流設備への流出土砂量は右岸洪水吐きからの放流の方が少なくなる
ので、この点では、右岸放流が良案である。
218
10.2.2 フラッシュ実験
(1) 右岸洪水吐きからの放流
右岸洪水吐きからの放流では、常時、減勢工内に反時計回りの平面渦ができる。
放流量 100m3/s 程度において、右岸ガイドウォール沿いから低水放流設備呑口付近の土砂
がフラッシュされ、低水放流設備への土砂流入はなくなる。
放流量 146m3/s でサーチャージ水位に達し、減勢工内の土砂は、中央付近(渦の中央)に土
砂を残してフラッシュされる。減勢工内は、平面渦を生じて減勢効果は若干乱れを生じるが、
副ダム下流で常流になり減勢していて問題ないものである。
(2) 左岸洪水吐きからの放流
放流水脈は、25m3/s および 50m3/s の放流では、低水放流設備に向かい、減勢工内は反時計
回りの平面渦になる。100m3/s の放流では、左岸沿いの流れに変わり、時計回りの平面渦とな
り、146m3/s の放流でも時計回りである。
減勢工内の土砂は、放流量 146m3/s において、減勢工中央に土砂が残りフラッシュされた。
ただし、放流初期の低水放流設備へ向かう流れ、その後の時計回りの平面渦で、常時、低水
放流設備への土砂流入があった。
(3) 考察
放流水脈について、右岸放流においても、左岸放流においても、サーチャージ水位までは
減勢工内に平面渦が生じ、減勢効果が乱れる。ただし、副ダム下流で跳水を生じて減勢する。
低水放流設備への土砂流入について、右岸放流の場合、放流量 100m3/s 程度で見られなく
なるが、左岸放流の場合、フラッシュ後半まで続く。この点では、右岸放流が良案である。
よって、小洪水時および土砂フラッシュ時の低水放流設備への土砂流入が少ないことを考慮
して右岸洪水吐きからの放流が望ましい。
220
(4) フラッシュ時の減勢工内の堆砂面の変化
右岸片門放流における排砂にともなう減勢工内の土砂移動状況を示すと、図 10.2.1∼
10.2.4 の通りであり、放流量 25m3/s で減勢工全体に堆砂していた土砂は、放流量 50m3/s に
て洪水吐き出口の土砂が下流にフラッシュされ、徐々に排砂され、放流量 146m3/s にて殆ど
無くなる。この過程の中で砂面高が高くなるのは、放流量 50m3/s おいて洪水吐き出口の土砂
が下流に押し出されて減勢工始端下流 20m 付近に貯まったときで、この高さは EL98.3m であ
った。減勢工側面の摩耗対策については、2門放流のフラッシュ実験にて EL99.5m まで上昇
する砂面高を対象にしており、1門放流による砂面高は、これより低くなるので問題ない。
また、放流量 25m3/s から徐々に放流量を減らし、下段洪水吐き管内の堆砂位を確認したも
のが図 10.2.5 であるが、開水路流にて管内に堆砂が生じている小流量時の堆砂位は、EL98m
以下にあって、これも2門放流の場合と同様であるので、管内の摩耗対策についても2門放
流における計画で問題ないものである。
222
側壁沿い河床高
縦断距離
左岸堆砂位
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
側壁沿い水位
縦断距離
右岸堆砂位
95.50
96.80
97.20
97.30
97.20
97.60
97.10
94.80
93.50
98.00
97.30
97.00
96.30
97.20
96.80
96.20
96.15
96.03
96.12
95.35
94.07
-39.88
-32.38
-13.50
0.00
35.00
左岸水位
右岸水位
100.60
100.00
99.50
100.30
100.50
100.60
100.00
99.50
:両岸で一番高い河床高
左岸沿い
左岸堆砂位
左岸水位
標高(EL.m)
110
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
右岸沿い
50
右岸堆砂位
右岸水位
110
標高(EL.m)
40
100
90
-50
-40
図 10.2.1
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
40
片門放流における減勢工内の堆砂面(放流量 25m3/s)
223
50
側壁沿い河床高
縦断距離
左岸堆砂位
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
側壁沿い水位
縦断距離
右岸堆砂位
95.50
95.50
96.80
96.70
97.00
97.30
97.02
95.08
93.32
-40.38
-37.98
-30.38
-20.38
-13.50
0.00
35.00
94.96
95.21
96.21
97.32
98.23
96.32
94.35
94.26
左岸水位
右岸水位
101.10
101.35
101.26
99.85
98.78
98.36
99.68
100.96
101.65
101.32
:両岸で一番高い河床高
左岸沿い
左岸堆砂位
左岸水位
標高(EL.m)
110
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
右岸沿い
40
50
標高(EL.m)
右岸堆砂位
右岸水位
90
-50
-40
図 10.2.2
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
40
片門放流における減勢工内の堆砂面(放流量 50m3/s)
224
50
側壁沿い河床高
縦断距離
左岸堆砂位
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
側壁沿い水位
縦断距離
右岸堆砂位
95.26
95.32
96.50
96.52
96.58
96.68
96.32
95.76
93.82
-40.38
-37.98
-30.38
-20.38
-13.50
0.00
35.00
93.20
95.60
95.85
96.28
95.83
94.78
左岸水位
右岸水位
101.32
101.85
101.76
99.90
99.08
98.76
99.06
100.78
101.92
102.02
:両岸で一番高い河床高
左岸沿い
左岸堆砂位
左岸水位
標高(EL.m)
110
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
右岸沿い
50
右岸堆砂位
右岸水位
110
標高(EL.m)
40
100
90
-50
-40
図 10.2.3
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
40
片門放流における減勢工内の堆砂面(放流量 100m3/s)
225
50
側壁沿い河床高
縦断距離
左岸堆砂位
-50.00
-45.38
-40.38
-13.50
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
側壁沿い水位
縦断距離
右岸堆砂位
-40.38
-37.98
-30.38
-22.25
-13.50
0.00
35.00
93.00
93.26
93.48
93.32
93.00
左岸水位
右岸水位
101.72
102.32
103.58
99.90
99.08
98.76
99.06
101.63
103.26
102.16
:両岸で一番高い河床高
左岸沿い
左岸堆砂位
左岸水位
標高(EL.m)
110
100
90
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
右岸沿い
50
右岸堆砂位
右岸水位
110
標高(EL.m)
40
100
90
-50
-40
図 10.2.4
-30
-20
-10
0
10
縦断距離(m)
20
30
40
片門放流における減勢工内の堆砂面(放流量 146m3/s)
226
50
呑み口から
の距離(m) 25m3/s
-10
-5
0
26.87
40.37
96.80
96.50
97.00
96.30
97.20
放流量毎の河床高(EL.m)
10m3/s
5m3/s
1m3/s
97.83
97.92
98.63
97.55
97.66
98.18
97.45
97.65
97.72
97.62
97.62
97.68
97.68
97.82
97.36
25m3/s 砂面
10m3/s 砂面
5m3/s 砂面
1m3/s 砂面
下段洪水吐き 管内の砂面高(右岸洪水吐き)
106.0
水位(EL.m)
104.0
102.0
100.0
98.0
96.0
94.0
-10
0
10
20
縦断距離(m)
30
40
図 10.2.5 右岸片門放流時の洪水吐き管内の堆砂位
227
50
10.2.3 ダム上流における澪筋形成の状況
実験は、放流量 100m3/s∼50m3/s∼25m3/s の減水時の条件を与えて、ダム上流の土砂移動を
継続させ、それぞれ現地時間で6時間づつ(合計36時間)を通水し、右岸の片門放流を行
うことで、通常の2門放流によって形成されるダム上流の河床形態および澪筋に変化を生じ
るかどうかを確認したものである。
各流量における流況は、写真 10.2.2 の通りであり、ダム上流 100m∼200m では湾曲の外岸
にあたる右岸側に主流があって、左岸側には砂礫堆が伸びる。これより下流のダムまでの間
は、主流は徐々に下段洪水吐き2門の中央に向かう流れとなり、これはいずれの流量も同じ
である。また、この流況は2門放流時と殆ど変わらない。よって、暫定放流によってダム上
流の流路形成が大きく変わることは無いと考えられる。
228
50m
100m
150m
砂礫堆
放流量 100m3/s
主流線
50m
100m
150m
砂礫堆
放流量 50m3/s
主流線
50m
100m
150m
砂礫堆
主流線
写真 10.2.2 右岸片門放流時のダム上流の流況
229
放流量 25m3/s
10.2.4 ダム設計洪水流量までの流況
右岸片門放流におけるダム設計洪水流量までの流況を確認した。
460m3/s、800m3/s、1420m3/s の放流状況を写真 10.2.3 に示す。
サーチャージ水位を越えて、非常用洪水吐きから越流が生じると、減勢工内の平面渦は解
消し、1420m3/s に至るまで安全に放流できる。
(a) 460m3/s
(b) 800m3/s
(c) 1420m3/s
写真 10.2.3 片門放流(右岸放流)時の流況
230
1420m3/s では、非常用洪水吐きから越流量(越流水深 4.13m)が多いので、堤趾導流部の水
深が大きくなる。ただし、デフレクタによって押さえ込まれ、大きく越流することなく、間
欠的に飛沫の越波が生じる程度であり、問題ない。
(a) 非常用洪水吐きの越流状況
(b) 右岸堤趾導流部の状況
(c) 左岸堤趾導流部の状況
写真 10.2.4 片門放流(右岸放流)時の流況(ダム設計洪水流量 1420m3/s)
231
11.平成 18 年度業務の総括
平成 18 年度業務の総括を表 11.1∼2 に示す。
表 11.1 平成 18 年度業務総括(1/2)
検討項目
内容
安定堆砂形状
貯水池堆砂
減勢工流況
ページ
・ダム上流の堆砂形状は、1∼3回の通水により砂礫堆が発達
し、4∼5回の通水により固定化した。
・ダム直上∼河道整正工始端までに1波長の単列砂礫堆があ
り、洪水後の水みちはその前縁線に沿うものであった。
・河道整正工の上に土砂が堆砂することはなかった。
p44
p49
・河道整正工(原案)に対し、直線部分の挿入、河道整正工と現
況河道のすりつけ、曲率半径の縮小などの修正を行った形状
河道整正工形状 を最終形状とすることにより、ダム上流100m付近の湾曲におい
て流れが左右に分散され、下段常用洪水吐きの呑み口前面
に水みちが確保される。
p63
・計画洪水波形のピーク水位時の堆砂形状は、安定堆砂形状
と比較して特に大きな変化は見られなかった。ダム上流100付
計画洪水ピーク 近において、1山目の洪水で運ばれる土砂の影響により1m程
度堆砂高が高くなるものの、治水容量に影響を及ぼすような堆
砂ではなかった。
p85
p88
取水口形状
・取水口形状は、低水放流設備対象流量1.1m3/sが確保でき、
堆砂が進んだ場合では閉塞しない形状として、開口幅2.0m×
開口高1.0mに幅0.5m×高さ1.5mの切り込みを設ける構造とし
た。
p107
土砂流出防止
・減勢工内に隔壁(隔壁標高:EL98.0m、ステージ広さ:
2.0×1.5m)を設けることにより、上流から直接流れ込む土砂を
抑制でき、また、隔壁沿い∼下流への水みちが形成できること
から、低水放流設備からの流出土砂量が減少した。
p107
放流量
・25m3/s以上の洪水では8m3/s程度
p100
低水放流設備
減勢工ガイド
ウォール
最終結果
・ガイドウォール設置時の流況安定のため、下段常用洪水吐き
下段常用洪水吐
位置を、左右洪水吐きともにH17年度最終形状より0.6mずつ
き
外側へ移動する。
p115
・中央ガイドウォール(除く)、フーチング(EL98.0m)、減勢工ガイ
ドウォール(EL96.5m、長さ20m)とすることにより、土砂を速やか
ガイドウォール形 に排除でき、計画最大放流量460m3/sまでの流量を安定した
状
流況で減勢できる。
・また、右岸ガイドウォール上に0.5m高い帯状部分を設置する
ことにより、低水放流設備への流出土砂量を低減できた。
p123
p145
減勢工側壁
・ダム設計洪水流量1420m3/sにおいて、最高水位は、右岸側
EL109.47m、左岸側EL109.86mであり、減勢工の計画壁高
EL110.0mに対して十分に満足している。
p157
副ダムスリット
・原設計の規模、配置において、減勢工内土砂を円滑に排除
できる。
p147
下流導流壁
・計画最大放流量460m3/sでの最高水位はEL100.56mである
ことから、導流壁の計画壁高EL101.5mで問題ない。
・これ以上の流量において溢水するが、導流壁背後には十分
な水深があり、問題ない。
p161
p162
232
表 11.2 平成 18 年度業務総括(2/2)
検討項目
内容
最終結果
ページ
・流木対策としてスクリーンの必要性が確認され、開口部オー
下段常用洪水吐 プン、上面、側面にスクリーンを設置することにより、流木による
きスクリーン
閉塞を防止でき、設計通りの放流能力を確保できる。最終形
状は、階段フィレット内に納める形状。
p200
・上段洪水吐きの流木閉塞による問題点を整理し、洪水調節
上段常用洪水吐 や流況変化への影響は少ないことを検証した。その上で、スク
きスクリーン
リーンの実験を行い、下段洪水吐きと同様の形式のスクリーン
設置が有効であることを確認した。
p207
p215
流木対策
小洪水∼
サーチャージ
水位
暫定放流
・放流水脈について、右岸放流においても、左岸放流におい
ても、サーチャージ水位までは減勢工内に平面渦が生じ、減
勢効果が乱れる。ただし、副ダム下流で常流になり減勢する。
・小洪水時および土砂フラッシュ時の低水放流設備への土砂
流入が少ないことを考慮して右岸洪水吐きからの放流が望まし
い。
p218
p220
・右岸の一門放流における洪水吐き及び減勢工内の土砂移
洪水吐き及び減
動状況を確認した結果、通常の2門放流時の流況確認から決
勢工側面の摩耗
定した洪水吐き管内および減勢工側面の摩耗対策範囲で問
対策
題ない。
p222
・右岸一門放流にてダム上流の土砂移動及び流路形成の状
ダム上流の流路
況を確認した結果、2門放流時と違いはなく、暫定放流による
形成
ダム上流河道の流路形成への影響がないことを確認した。
p228
・非常用洪水吐きからの越流後は減勢工内の平面渦は解消
し、1420m3/sに至るまで安全に放流できる。
サーチャージ水
3
位∼ダム設計洪 ・1420m /sでは、非常用洪水吐きから越流量(越流水深4.13m)
が多いので、堤趾導流部の水深が大きくなる。ただし、デフレ
水流量
クタによって押さえ込まれ、大きく越流することなく、間欠的に
飛沫の越波が生じる程度であり、問題ない。
p230
p231
233
Fly UP