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Ⅱ.心膜展開の要点

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Ⅱ.心膜展開の要点
若⼿医師のための心臓手術の基本とその根拠
Ⅱ.心膜展開の要点
.開胸器は胸骨の中央部に掛け、はじめは少しだけ開く
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【その根拠】①大きく開けると心膜が張って⼼膜切開しにくい②胸骨骨折の防⽌
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. 心膜中央部をピンセットでつまんで電気メスで切開
【その根拠】ピンセットでつまめなくてもそのまま電メスで少しだけ切開。心臓が動い
ているのを心膜越しに透⾒できれば癒着していない。
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. ⼼膜上の脂肪組織は⼼膜といっしょに切離
【その根拠】分ける必要ない。
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. ⼼膜切開線越しに指を入れ、心臓をプロテクトしながら尾側へ切開延⻑
【その根拠】入れた2本の指を開いてその間を切る。指の上を電メスでなぞると、痛い
火傷をすることがある。
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. 心膜を逆 T 字切開
【その根拠】尾側は横隔膜面まで。そこから右側へは心膜胸膜境界部の 1〜2cm 心膜
寄りで。横隔膜筋層は露出させない。癒着の原因になる。左側へは横隔膜⾯に平⾏に。
左右⼼膜切開線を通る ITA 分枝からの出血に十分注意!
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. まず胸腺被膜を無名静脈(左腕頭静脈)まで電メスで切開
【その根拠】無名静脈の位置は被膜を切開しながら同定。
.胸腺を電メスで左右に剝離
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【その根拠】胸腺組織は基本的には左右に分葉しているため、実質に切り込むことなく、
腺葉を分離することは可能。
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. 胸腺の結紮分離は、①胸腺の容積が大きい時②若年者の場合
【その根拠】どちらの場合も胸腺内の血管が豊富で、結紮した方が止血が確実。
☝南先生のワンポイント・アドバイス
若年者では胸腺組織の切除を可能な限り避ける。なぜなら胸腺は若年まで細胞性免疫の
発現に不可⽋な免疫器官として機能しているから。成⼈になると退縮して脂肪組織に置
き換わる。もしも視野展開が不良の時には、⼼膜に左右 2 本吊り上げの糸を掛ける。
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. 無名静脈に入る細い枝は逆 Y 字に分岐していることが多い
【その根拠】面倒がらずに結紮もしくはヘモクリップで切離。
10. Aorta の⾛⾏を心のう内から覗きながら心膜をメッツェンで心膜翻転部まで切開
【その根拠】Aorta の真上で心膜切開。Aorta が拡張していたり、癒着していると電メ
スで損傷することがある。
11. 右側心膜は無名静脈をよけながら Aorta に沿って約 2cm 切り下げる
【その根拠】左側は切り下げない。切ると Aorta が沈み込む。
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12. 心膜は通常吊り上げない
【その根拠】吊り上げなくても心内操作に支障を来さないので吊り上げの手間を省く。
むしろ吊り上げることで弊害。右側心膜の吊り上げで①PVベント挿入しにくい②CABG
で左室脱転しにくくなる。左側心膜を吊り上げると僧帽弁が overhang して弁手術やり
にくくなる。
13. ただし心膜を吊り上げた方がいい場合もある
【その根拠】右側吊り上げの適応は①SVC 直接カニュレーション②上⾏⼤動脈の右側
偏移③右開胸で肺が邪魔になる時④上⾏⼤動脈置換など。左側吊り上げの適応は①
OPCAB②LITA-LAD 吻合部を⾒る時など。
心膜採取
心膜採取(ASD のパッチなど)の採取部位は肺動脈前面(南先生)かもしくは右室前
⾯(⼩柳)
【その根拠】肺動脈前面の心膜を取れば閉胸時に心臓前面の心膜を閉鎖できる。一方、
右室前面の心膜の方が厚手でしっかりしている。
☝南先生のワンポイント・アドバイス
特に若年者の場合、将来の再⼿術を考え、右室が⼼膜で閉鎖されていることが望ましい。
右室の損傷は右室機能不全の原因となるので注意!
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