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物質の構造と状態
第 1章 物質の構造と状態 物理は分子からできており、分子 は原子からできています。また物 質は温度、圧力が変化すると、固体、 液体、気体などに変化します。こ の章では、これらについて見てい きます。 1- 1 原子の構造 化学は物質の性質や挙動を明らかにする学問です。そして全ての 物質は原子からできています。したがって物質を知るためには原 子を知ることが大切になります。 1 原子と分子 水を分けていくと小さな水滴になり、更に分けると霧の一粒のような微小な水滴 になります。どこまでも分けていくと、最後にこれ以上分けることができないとい う微小な粒子になります。これを水の分子といいます。分子はその物質の性質を持 った極小の粒子なのです。 ところが、この分子も更に分けることができます。水の分子は 1 個の酸素原子と 2 個の水素原子という合計 3 個の粒子からできています。しかし、この水の分子を 分解してできた 2 種類の粒子は、もはや水の性質は何も持っていません。このよう に、原子は分子を作る粒子ですが、分子の性質は持っていません(図 1 ) 。 2 原子を作るもの 原子は雲でできた球のようなものです。雲のように見えるのは電子雲であり、電 子という粒子からできています。電子雲の中心には原子核という小さいが密度の大 きい粒子があります。 原子核の直系は原子の直系の約 1 万分の 1 です。これは東京ドームを 2 個貼りあ わせた巨大どら焼きを原子とすると、原子核はピッチャーマウンドに転がるビー玉 の大きさになります(図 2 ) 。そのくせ、原子全体の質量の99.9% 以上は原子核に あるのです。 3 電子と電子殻 電子は原子核の周りに適当に集まっているわけではありません。電子にはキッチ リとした居場所があります。これを電子殻といいます。 電子殻は原子核の周りに球殻状になって存在します。各電子殻には名前が付いて おり、それは原子核から近い順に K 殻、L 殻、M 殻…と K から始まるアルファベ ットになっています。 各電子殻に入ることのできる電子の個数は定まっており、それは K 殻( 2 個、 =1)、L 殻( 8 個、 =2) 、M 殻(18個、 =3)と、 を整数とすると2 2個となっ ています。この 002 を量子数といいます。 第 1 章 物質の構造と状態 図1 水の分子と原子 水素原子 水 図2 水滴 霧の一粒 酸素原子 水の分子 電子雲と原子核 電子雲 原子核 ビー玉 図3 電子殻と電子の個数 電子殻 量子数は原子や分子な どの微粒子の性質を決 定する重要な数です。 N殻 ( 32 個) M殻 ( 18 個) L殻 ( 8 個) K殻 ( 2 個) ( )内は電子の個数 ◉分子は物質の性質を残した粒子であるが、原子には物質の性質はない。 ◉原子は原子核とそれを取り巻く電子雲からできている。 ◉電子は電子殻に入る。 003 1- 2 原子量とモル 原子は物質です。物質は有限の体積と質量を持ったもののことを いいます。原子の相対的な重さを表す尺度に原子量があります。 また、鉛筆の 1 ダースと同じように、原子の個数の単位として モルがあります。 1 原子核を作るもの 原子核は 2 種類の粒子からできています。それは陽子(記号 p)と中性子(記号 n)です(図 1 )。両者の重さはほぼ同じであり、その相対的重さを質量数= 1 と して表します。前節で見た電子(記号 e)は質量数= 0 となります。 陽子と中性子の大きな違いは電荷です。陽子はプラスの電荷を持っており、その 相対的な量を+ 1 として表します。それに対して中性子は電荷を持っていません。 ところが電子は、質量はほとんど 0 なのに電荷だけは− 1 を持っています(表 1 ) 。 そして原子は原子番号と同じ個数の電子を持っています。そのため、原子は全体と して電気的に中性です。 原子核を作る陽子の個数を原子番号といい、記号 中性子の個数の和を質量数といい、記号 で表します。また、陽子と で表します。 と はそれぞれ元素記 号の左下、左上に添え字として付けます(図 2 ) 。 2 同位体 原子番号が同じでありながら、質量数の異なる原子があります。このような原子 を互いに同位体といいます。例えば、地球上の水素には1H、2H、3H の 3 種の同位 体があります。しかし、各同位体の存在量は大きく異なり、水素の場合にはほとん 。 どが1H となっています(表 2 ) 3 原子量とモル 簡単にいうと、同位体の質量数の荷重平均を原子量といいます。原子量は各原子 の総体的な重さを表す数値です。 原子 1 個の重さはあまりに小さいので、測定することは困難です。しかし、たく さん集まれば重くなります。そしてある個数だけ集まればその重さは質量数(に g を付けたもの)に等しくなります。このときの原子の個数をアボガドロ定数(6× 1023)といい、その集団を 1 モルといいます。 難しく考えることはありません。鉛筆(原子)12本(アボガドロ定数)を 1 ダー ス( 1 モル)というのと同じことです。 004 第 1 章 物質の構造と状態 図1 原子核 電子 e(マイナス) 陽子 p(プラス) 中性子 n 原子核 表1 陽子と中性子の電荷 原子核 原子 図2 名称 記号 相対電荷 質量数 電子 e −1 0 陽子 p +1 1 中性子 n 0 1 元素記号 元素記号がわかれば 原子番号もわかるの で、原子番号は省略 されることが 多いです。 元素記号 質量数(陽子数+中性子数) 原子番号(陽子数) 全体も元素記号という 表2 同位体 元素名 記号 水素 炭素 1 2 3 H H H (H) (D) (T) 12 C 酸素 13 C 16 O 塩素 18 O 35 Cl 臭素 37 Cl 79 Br ウラン 81 Br 235 U 238 U 陽子数 1 1 1 6 6 8 8 17 17 35 35 92 92 中性子数 0 1 2 6 7 8 10 18 20 44 46 143 146 存在度 (%)99.98 0.015 ∼0 98.89 1.11 99.76 0.20 75.53 24.47 50.52 49.48 0.72 99.28 ◉陽子の個数を原子番号 Z、陽子と中性子の個数の和を質量数 A という。 ◉陽子の個数と電子の個数は同じなので原子は電気的に中性である。 ◉アボガドロ数の原子集団を 1 モルという。その質量は原子量に等しい。 005