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巻頭言 「がん治療の均てん化」と「がん治療の個別化」について 三上 幹男

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巻頭言 「がん治療の均てん化」と「がん治療の個別化」について 三上 幹男
平成19年1月(2007)
1 (59)
巻頭言
「がん治療の均てん化」と「がん治療の個別化」について
東海大学医学部専門診療学系産婦人科 教授
三上 幹男
昭和38年に日本における癌死亡数がはじめて10万人を超え、平成13年以降には30万人を超えるヒトが癌で死亡して
いる。さらに厚生労働省科学研究費による研究では平成27年には癌死亡率、罹患率ともに倍増することが予想されてお
り、
「癌の診断・治療の発展」は国家的な急務となっている。さらに5年生存率の違いから各地域、各施設でのがん治療
のレベルに差がみられることが判明している。このような背景から「癌の治療を専門とする医師及び施設の均てん化」
が国民の要望となり癌治療を専門とする医師の認定、育成が必要とされるようになってきた。つまり、
「均てん化」とは
がん医療を行う側の診断・治療レベルの底上げ、さらには施設間、地域間格差の解消が目的である。
産婦人科領域でも「がん治療の均てん化」ということから、日本婦人科腫瘍学会を中心に、婦人科腫瘍専門医の認定
と育成、そして婦人科悪性腫瘍へのがん治療ガイドラインの作成という2つの取り組みが開始され、徐々にその成果が
現れつつある。
婦人科腫瘍専門医制度による専門医の資格取得に際し、認定修練施設において3から5年間に経験すべき手術執刀数、
助手経験数、癌患者の症例数などの細かい必要条件が決められている。その適格条件の特徴は、論文数などの学術的業
績ではなく、手術経験などの実際の臨床業績に重きがおかれている点である。さらにその上で試験にパスしないといけ
ない。薬物療法と比較して、外科的治療では、個々の技量の問題に加えEBMのないことから施設間格差があっても「均
てん化」が進みにくい。婦人科手術の中でもっとも難易度の高い「広汎子宮全摘出術」の執刀経験数が専門医の必要条
件に含まれている。そうした点から考えると婦人科腫瘍専門医制度の根幹は「婦人科腫瘍に対しての外科治療の均てん
化」を目指しているものではないかと思われる。平成18年12月に第1回の専門医試験が実施される。今後、十分な外科
的な技量を持ち、かつ腫瘍内科的な知識を備えた質の高い婦人科腫瘍専門医が養成され、婦人科がんの治癒率、生存率
が伸びていくことを期待したい。
がん治療ガイドラインの作成も「がん治療の均てん化」にとっては必要不可欠な取り組みである。平成14年日本婦人
科腫瘍学会の中に「ガイドライン検討委員会」が設置され、ガイドライン作成に向けての活動が本格的に開始した。そ
の成果が実り平成16年秋には卵巣がん治療ガイドラインが発刊され、子宮体癌治療ガイドラインも近日中に発刊される
予定で、子宮頸癌に関しても作成途中である。ガイドラインの趣旨は「現時点でコンセンサスが得られ適正と考えられ
る治療法を示すこと」と序文で述べられており、エビデンスの質によってその推奨基準が決められている。今後も定期
的に改定されることになっており、現時点での標準的治療として十分に活用できるものである。医師そして患者にとっ
て有用な情報が身近にあり、互いに十分に活用することで治療レベルの底上げにつながることが期待される。
こうした「がん治療の均てん化」という取り組みと一見相反するように、画一的ながん治療の限界も明らかになって
きている。がん治療成績のさらなる向上のためには個々の症例をきめ細かく把握し最適の治療法を実践すること、つま
り「がん治療の個別化」も必要とされて来ている。個別化できる婦人科癌の治療は現在のところほとんどないといって
もよいが、その実現を目指しての臨床研究・基礎研究は産声を上げつつある。この実現のためには臨床において必要と
されていることを理解できる基礎研究者、基礎研究における新しい概念を理解した臨床医を育成していくことが大切で
ある。
現時点での最善な標準的医療を実践していること、それがどこでも享受できること、医療の発展を常に目指している
こと、この 3 点ががん治療にとっては大切なことである。これを実践するためにはいずれにしても若い人材を育成し、
ハード・ソフト面を整えていくことが最重要であろう。
がん治療の一端を担うものとしてこの頃良く考えていることを述べさせていただき、今回の巻頭言とします。
2
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日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
「特別講演」
−女性と喫煙−
神奈川県内科医学会 会長
中山 脩郎
1942年、コロンブスのアメリカ大陸発見を契機にヨーロッパにタバコ(煙草)がもたらされ、喫煙習慣が瞬く間に全
世界に広まった。日本には1595年、ポルトガル人によって種子島に鉄砲と共に上陸し、瞬く間に日本全土に広がった。
タバコは「延命長寿、万病治癒の霊薬」の触れ込みで伝えられ、国内で生産されるが、当時でも吸い過ぎて、もがき苦
しんだり頓死する者も出現したり、火災の原因になる事や、タバコ生産のために大事な米・麦の耕地面積に影響が出る
ようになり、豊臣・徳川時代に繰り返しタバコ禁止令を出すが効なく、やがて半ば公認の形で社会に定着した 1) 2)。明治
9年にはタバコ税制が、明治31(1898)年には葉タバコ専売法が、明治37(1904)年にはタバコ製造専売法が公布され
て専売体制が確立され(専売公社)
、昭和60(1985)年からは民営化により日本タバコ産業株式会社となって現在に至っ
1)
2)
。その間、明治年代から第2次世界大戦終結までは徴兵制により男子は全て兵役に服し、日清戦争以降、戦争
ている
に赴く軍人にはタバコが支給される事により喫煙習慣に拍車がかけられ、そのような歴史的背景故に我が国の喫煙率が
先進国中極めて高く維持されたのであろう。
2004年喫煙率は男性48.1%、女性13.6%である(日本タバコ産業調査)
。女性だけを見ると一見低く見えるが、未成年
者から若年者の喫煙率は高く、20代では23.8%と4人に一人が喫煙している。当然、妊婦の喫煙も増加し1990年の調査
。この様に未成年
では5.6%であった喫煙率が2000年には10%と2倍近く増えている 3)(厚労省 乳幼児身体発育調査)
者や若い女性の喫煙が増加している原因として、女性の社会進出と共にタバコ会社の女性をターゲットとした商品開発
(所謂「軽いタバコ」
)・巧妙な宣伝戦略などが多くの識者から挙げられている。
本稿ではタバコが如何に、特に女性の生涯に亙る健康被害についてを今一度検証してみたい。
タバコは毒物のカンヅメ
タバコの煙の中には、約4,000種以上もの化学物質が含
まれ、うち200種以上が人体にとって有害物質であり(表
1)
、主流煙に比し副流煙の方が有害物質濃度は遙かに高い。
これに代表される3大悪物質は、一酸化炭素(CO)
、ニコ
チン(Nicotin)
、タール(Tar)である。
る。ニコチンは脳に対してヘロイン・アンフェタミン・
コカイン等と同様のドパミン受容システムに作用すると
共に、精神作動性薬物の中でヘロイン・コカイン・アル
コール・カフェイン・マリファナ以上に依存性を持つ。
血管収縮は長期的に生活習慣病の発病リスク因子として
大きな影響を持っている。
1)CO
CO は O2 の240倍の強さで赤血球の Hb と結合するため
喫煙者では常に10%の O2 運搬能力を失い慢性 O2 欠乏状
態を呈する 4) 。自動車の排気ガス中の CO 濃度は平均
40,000 P.P.M. とされ、タバコの煙はそれと同等であり、
喫煙時の肺内濃度は400 P.P.M. である 4)。因みに大気汚染
の環境基準値では10 P.P.M. 以上は汚染とされていること
からもその毒力は理解されるはずである。
3)タール(Tar)
タール中に含まれる化学物質のうち、40∼60種類に発
がん性が確認されている。タバコ煙中の発がん物質は呼
吸器や消化器で吸収され全身を巡り各臓器等のがんを発
生させる。さらには喫煙との関連が指摘されている化学
物質もあり、最終的にはすべてのがんは喫煙関連がんで
あることが証明される可能性がある 6)。
2)ニコチン(Nicotin)
1998 年、米国公衆衛生総監報告 5)によると紙巻きタバ
コ及びその他のタバコ使用は依存性を持つと結論を下し
た。喫煙、葉タバコその他タバコの摂取を続ければ、ど
れも意思に関りなく規則的、強制的に摂取を促され、中
止すれば離脱症状を伴う。タバコ依存症を規定する薬理
学的・行動学的作用はヘロイン・コカイン等と同じであ
タバコからは、喫煙者が吸引する高温燃焼時(最高
900℃)に主流煙が、ゆらゆら空気中に立ち昇る自然燃焼
時(最高 600 ℃)に副流煙が発生する。主流煙は一旦喫
煙者に吸引された後、吐き出されて呼出煙となり副流煙
と共に環境煙となって受動喫煙のもととなる 6) 9)。タバコ
の煙は気体相、粒子相に分類されるが、殊に気体相のそ
れは拡散力が高く喫煙者と同じ部屋にいるだけで、喫煙
受動喫煙の恐ろしさ
平成19年1月(2007)
受動喫煙によって起こる病気
(加濃正人:タバコ病辞典 2006年度 第4版)
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者と殆ど変わらない量の煙を吸い込む。表 1 に示すよう
に副流煙の有害物質は主流煙の数倍から数百倍の高さで
あるが故に完全分煙が進められるのである。
受動喫煙による胎児の影響として、中村 7)は以下の如
く述べている。
1)胎児発育の遅延、低体重児の発生との関連について
は多くのエビデンスが存在する。
2)流産・週産期死との関連についてのエビデンスはあ
るが、より詳細で大規模な調査が必要である。
3)胎児奇形発生についてはまだ明確になってない。口
唇裂・口蓋裂や神経管欠損については恐らく関連あ
るものと思われる。
4)その他に、器官形成・発育・免疫機能・発がん感受
性など多くの胎児への影響を調べた研究が発表され
ている。
5)胎児発育遅延と将来の成人病の発症との関連が近年
話題になっており、このことと妊婦の喫煙・受動喫
煙との関係については、今後明らかにされていくで
あろう。
喫煙による女性の健康障害
A)思春期
中学・高校生の喫煙経験率は、高校 3 年男子で半数以
上、女子では 4 割である。未成年からの喫煙は常習喫煙
者になり易く、殊に女性ではニコチン依存に進行し易く
ヘビースモーカーになり易い。
14 歳以下で喫煙を始めると、がん死亡確率は 4 倍以上
になるとされる。女性では男性よりも肺の成長が阻害さ
れ易く、肺がんになる確率は3倍も高いとされている 8)。
表1 タバコの有害成分
タバコの煙には4000種類の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質
4
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日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
B)成熟期以降
・スモーカーズフェイス
2004年6月∼2005年5月にかけて某化粧品会社によって
実施された調査において、女性30万人の皮膚の角質層を
採取し、喫煙者と非喫煙者のメラニン量を比較したとこ
ろ、喫煙者ではそれが 1 ∼ 2 割多く、肌の老化は 5 年以上
進んでいると報告されている。長年の喫煙習慣は、ニコ
チンの血管収縮作用→末梢血管拡張障害→皮膚温低下と
いう悪循環をもたらし続けるとされている。1日に必要な
ビタミンC(45∼75 mg)は1本のタバコで25%が破壊さ
れる 4)。また、ビタミンCには酸化ストレス抑制作用もあ
るが 9)、これらの効果は喫煙によって失われ、肌はくす
み細かい皺が増え、口唇周囲の縦皺、目尻の皺が目立つ
ようになる。また、タバコ煙の直接作用で声帯は肥厚し、
所謂しゃがれ声となる。更には歯周病の原因となる。
・ピルと喫煙
ピルのエストロゲンは喫煙者ではより早く代謝され活
性エストロゲン値は低い。そのため、一般的にピルによ
る避妊失敗が非喫煙者より多いことを示唆する報告があ
る 10)。ピルと喫煙の併用により、冠動脈疾患のリスクが
高まることが知られている。米国の報告 11)では、喫煙す
るピル服用者の心血管系死亡者は 15 ∼ 34 歳で 3.3 人/ 10
万人であるが、35∼44歳では29.4人/10万人と急増して
いた 11)。35歳以上のヘビースモーカーの女性のピル使用
は禁忌とされている。
・喫煙とがん
津金 16)は全国14万人の地域住民を対象とした生活習慣
とがんなどの関連を明らかにするために大規模コホート
研究(平成14∼15年度)を行い、喫煙者群のがん死亡は
非喫煙者群に比べて男性 1.6 倍、女性 1.9 倍と高くなって
いると報告している。
(1)肺がん
1950 年、日本女性の肺がん死亡は 330 人、1970 年は
2,987人、2000年には14,671人と顕著な増加を示している。
2001年全がん中の肺がん死は男性22%でトップ、女性は
胃がん(14.8%)、大腸がん(14%)に次いで第3 位であ
るが、若い女性の未成年からの喫煙率の高さから、近い
将来がん死のトップになることが確実視されている。ま
た夫の喫煙による妻の受動喫煙発病リスク増加について
の報告には2.08倍 17)、2.11倍 18)、2.4倍 19)、3.3倍 20)になる
との報告がギリシャ、スウェーデン、米国からなされて
いる。
(2)子宮頚がん
女性ホルモンの影響を受けにくい子宮頚がんは、ヒト
パピローマウィルス(HPV)感染が最大の要因であるが、
英国がん研究所での HPV 感染早期子宮頚がん患者199人
と同じく感染未発症の対照調査において、1 日 20 本以上
の喫煙によって早期頚がんリスクが 2.57 倍となる 12)。ま
た早期子宮頚がん治療後の再発率が喫煙によって 3 倍と
喫煙による女性の健康障害
平成19年1月(2007)
5 (63)
なる報告 13) や、子宮頚部の前がん病変が禁煙によって縮
小されたとの報告 14) もあり、現在では喫煙は HPV とは
独立した危険因子であると認知されている。
受動喫煙による子宮頚がん発症について多くの報告が
なされているが、米国ユタ大学における子宮頚がん 266
例の対照調査で、1日3時間以上の受動喫煙による非喫煙
者の発病リスクは3.43倍と報告 21) している。また、田島
らは本症例56名の対照調査から受動喫煙によるリスク増
大が2.29倍と報告している 15)。
(3)卵巣がん
卵巣がんのおよそ 16 %を占める粘液性上皮性がんは、
喫煙によってリスクが 2.9 倍になるとの報告 22) があり、
今後組織型別での喫煙との関連の有無が明らかになるで
あろう。
(4)乳がん
喫煙との関連についてのこれまでの疫学研究では関連
がないとする報告が多い一方、乳がんを閉経前、閉経後
に分けて評価している研究では、その多くが喫煙は閉経
前乳がんを明らかに増加されるが、閉経後乳がんへの影
響は明らかではないとしている。カナダ厚生省の研究で
注目されるのは受動喫煙との関連で、非喫煙者の閉経前
の乳がんリスクは受動喫煙によって2.3倍になる 25)。
これについて加濃 23) は、能動喫煙ではニコチンの抗女
性ホルモン作用によって発がん作用が弱められるが、受
動喫煙では相対的に発がん作用だけが大きくなる。腺が
んである乳がんを発生させ易い気体物質であるニトロソ
アミンは粒子物質であるニコチンと違って、喫煙者と受
動喫煙者で個人差がないためと説明している。
受動喫煙の影響について、11 歳以下の幼少時における
受動喫煙暴露が、成人してからの乳がん発症リスクを4.5
倍にするとの報告があり、発がんメカニズムの 2 段階の
内の第 1 段階であるイニシエーションへの関与を示唆す
る報告もある。今後、受動喫煙を中心に喫煙との関連の
解明が待たれる。
・喫煙の月経への影響
喫煙女性においては月経困難症、月経痛、平均月経期
間の短縮・不順が挙げられている。また、早期閉経のリ
スクが高く、米国の 66,000 人の看護師を対象とした大規
模研究で 40 ∼ 44 歳の喫煙女性では非喫煙女性より 2.1 倍
高いと報告されている。多くの報告 25) から喫煙女性は非
喫煙女性より閉経が平均1∼2年早くなる。
能動喫煙によって起こる病気
(加濃正人:タバコ病辞典 2006年度 第4版)
6
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日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
・喫煙の不妊への影響
喫煙女性では非喫煙女性に比べて原発性及び続発性不
妊が約 2 倍多い、特に卵管性不妊が多い。不妊の機序と
して卵管因子以外のタバコ煙中の芳香族炭化水素の卵胞
毒性や黄体形成への影響、月経周期の短縮と無性卵の増
加等があげられている 26)。
26)
・喫煙による妊娠合併症(子宮外妊娠等)
喫煙女性では子宮外妊娠リスクが 1.5 ∼ 2.5 倍高まる。
喫煙により卵管の輸送機能が傷害されることや、喫煙が
骨盤内感染を伴いやすいことが一因と考えられている。
また、喫煙は流産のリスクを高めることが知られている。
タバコ煙中のコチニン・ニコチン・鉛・カドミウム・シ
アン化合物・CO・芳香族炭化水素等が胎児の発育障害を
起こす可能性が有り胎児の染色体異常を通じてというよ
りむしろ直接毒性による可能性が示唆されている。
・喫煙による母乳への影響 27)
ニコチンは脂質に親和性があるため、母乳中に非常に
早く分泌され、血中濃度が約 3 倍まで上昇する。授乳中
の喫煙により、新生児に下痢・嘔吐・頻脈傾向などのニ
コチン中毒症状を来たす事が知られている。喫煙により
母乳の分泌量が減少し、分泌期間が短くなることも報告
されている。喫煙により血中のプロラクチンレベルが低
下するとの報告もある。
結 び
平成18年3月4日、神奈川地方部会において「女性と喫
煙」についてお話させていただいた内容を中心にまとめ
させていただいた。平成 17 年 10 月 1 日の高齢化率は既に
20%、5人に1人は高齢者であり、それだけに社会的活動
的平均余命の伸延の必要性が求められている中で、生活
習慣病のリスク排除に基づく日常生活が個人にとっても
社会にとっても今以上に重要課題となっている。本稿で
は触れなかったが、加齢と共に増加する骨粗鬆症、慢性
閉塞性肺疾患を含め、受動喫煙と共に能動喫煙は閉経後
の虚血性心疾患発症リスクの第 1 に挙げられているし、
脳卒中リスクは男性よりも高いとの報告もある。出産・
育児の役割を担う女性では男性と共に、むしろそれ以上
に喫煙リスクを断ち切ることが求められている。本年 4
月から医療保険にニコチン依存症管理指導が組み入れら
れた。思春期から高齢に至るまでの女性を対象とする産
婦人科医はスキンシップの中で積極的に禁煙指導に介入
し、身近な禁煙サポートを推進していただく事を願う次
第である。稿を終えるに臨み講演の機会を与えて頂いた
八十島唯一会長、座長の労を取って頂いた東條龍太郎副
会長に感謝いたします。
文 献
1) 大島明:知っていますか?たばこの害(斗夢書房):
p10−12 , 1985
2) 厚生省編:喫煙と健康第2版(保険同人社):p5−7,
1993
3) 厚生労働省雇用均等児童家庭局編:平成 12 年乳幼児
身体発育報告書:平成13年10月
4) 白石尚:タバコの教科書(日本禁煙協会):p8−12 ,
昭和60年
5) Leave the pack behind 1999年世界禁煙デー(世界保健
機関):たばこ依存への理解:p19 , 平成11年
6) 神奈川県内科医学会編:禁煙医療のための基礎知識:
p20−21 , 2006
7) 中村靖:治療 87(6):p1877−1881 , 2005
8) 対馬ルリ子:Bio Clinica 17(3):p34−38 , 2002
9) 加濃正人:治療 87(6):p1871−1875 , 2005
10) 小西明美:性差と医療 2(3):p279−285 , 2005
11) Smoking and reproductive life:The impact of smoking on
sexual, and reproductive and child health, British Medical
Association Board of Science and Education & Tobacco
Control Resource Center:p8−9
12) Deacon JM et al:Br J Cancer 83(11):1565−1572 ,
2000
13) Acladious NN et al:Int J Cancer 98(3):1435−1439 ,
2002
14) Szarewski A et al : Lancet 347(9006): 941 − 943 ,
1996
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16) 津金昌一郎:治療 87(6):p1915−1932 , 2005
17) Trichopoulos D et al : Lancet 2(8351): 677 − 678 ,
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21) Slattery ML et al : JAMA 261(11): 1593 − 1598 ,
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23) 加濃正人:タバコ病辞典(実践社): p133 − 136 ,
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27) 小西明美:性差と医療 1(3):p23−29 , 2005
平成19年1月(2007)
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妊娠前の子宮鏡による確認が重要であった子宮筋腫合併妊娠の2例
Two cases of pregnancy with uterine fibroids which were evaluated
with hysteroscopy before conception
東海大学医学部 専門診療学系 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai University
School of Medicine Isehara
松林 秀彦 Hidehiko MATSUBAYASHI
鈴木 隆弘 Takahiro SUZUKI
呉屋 憲一 Ken-ichi GOYA
中村 絵里 Eri NAKAMURA
佐藤 茂 Shigeru SATO
和泉俊一郎 Shun-ichiro IZUMI
三上 幹男 Mikio MIKAMI
要 旨
子宮筋腫合併妊娠は胎盤付着部近傍に子宮筋腫が存在し
た場合に出血や常位胎盤早期剥離などハイリスクである。
我々は、妊娠前に子宮鏡で子宮筋腫の位置を確認した後に
妊娠が成立し、その後の胎盤と子宮筋腫の位置関係を確認
しつつ満期の出産を行った2例を経験した。症例1は31歳。
多発子宮筋腫に対し子宮筋腫核出術を行ったが、術後1年
で後壁粘膜下に子宮筋腫を再発した。TCR 手術を勧めたが、
患者は手術をしない選択をした。1年後に自然妊娠が成立
したが、子宮筋腫近傍の着床であり流産した。2年後に自
然妊娠が成立し、前壁への着床を確認した。妊娠経過は良
好で選択帝王切開により、37週で出産した。症例2は29歳。
多発子宮筋腫に対し子宮筋腫核出術を行ったが、ダグラス
窩の癒着が高度で子宮頚部後壁の子宮筋腫の摘出を断念し
た。術後子宮筋腫は増大したが、子宮鏡で子宮内腔には筋
腫による変形もないことから手術せずに妊娠を目指すこと
とした。術後2年で自然妊娠が成立し、後壁への着床を確
認した。頚部の子宮筋腫は超音波上、胎盤の裏に位置する
ように見えたが、妊娠の進行に伴い明らかに筋腫と胎盤は
離れていった。選択帝王切開により、38週で出産した。子
宮筋腫合併妊娠のなかでもハイリスクと考えられる本2症
例は、妊娠前の子宮鏡による評価と妊娠初期の着床部位の
評価が適切に行われたことが、良好な結果を生んだものと
考えられた。
Key word:子宮筋腫合併妊娠、子宮鏡、子宮鏡手術、体外
受精、不妊症
緒 言
子宮筋腫は生殖年齢女性の20∼40%に認められる、非
常にポピュラーな疾患である 1)。子宮筋腫は不妊原因と
して、5∼10%の患者にその関連性が指摘されているが、
子宮筋腫以外に原因が考えられない不妊症患者は 1 ∼
2.4 %と非常に少ない 2) 3)。なぜ不妊になるかについては
想像の域を出ないが、ASRM 2004 practice committee report 1)
によると
1 子宮内膜の輪郭が変形し着床を妨害する
2 子宮内腔の拡大や変形により精子の輸送を障害す
る
3 子宮頚部の変形により子宮頚管への精子の侵入を
妨害する
4 子宮収縮により精子の運動能を変化させる
5 子宮内腔の血液や凝血塊が着床を妨害する
6 卵管の変形や閉塞を生じる
という 6 説を提唱し、着床障害、精子の輸送障害、卵管
因子を想定している。IVF-ET の場合には後2者は除外さ
れるため、着床障害が唯一のものになる。しかしながら、
どの程度の大きさ・位置であれば手術すべきかについて
は、議論が分かれるところである。一方で、子宮内膜ポ
リープや粘膜下子宮筋腫などの子宮内腔病変が不妊原因
であることは経験的によく知られており、子宮内膜への
血流低下など、着床にふさわしいスペースが減少するこ
とにより妊娠の確率が低下すると推測される。しかしな
がら、どの程度のスペースがあれば十分であるかは明ら
かになっていない。
子宮筋腫合併妊娠は全妊娠の 1.4 ∼ 8.6 %であり、1 st
trimester に増大するが、その後は変化ないか、かえって
縮小する 1) 2)。切迫流早産が 15 ∼ 20 %、IUGR が 10 %、
胎位異常が20%に認められるが、変性に伴う症状(疼痛
など)はむしろ少ない。血栓症も頻度は少ないが、ひと
つのリスクファクターであることには疑いがない。さら
に、胎盤付着部近傍に子宮筋腫が存在した場合には、出
血、常位胎盤早期剥離、PROM のリスクが高くなる。妊
娠中の子宮筋腫核出術は一般的に適応ではないが、まれ
に行われる。すなわち、子宮筋腫合併妊娠は可能だが、
ハイリスク妊娠である 1)。
我々は、妊娠前に子宮鏡で子宮筋腫の位置を確認した
後に妊娠が成立し、その後の胎盤と子宮筋腫の位置関係
を確認しつつ満期の出産を行った 2 例を経験したので、
その症例を提示し子宮筋腫合併妊娠について考察した。
8
(66)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
症例1
29 歳 初診。子宮筋腫、過多月経、貧血のため紹介受
診。生来健康であったが、子宮筋腫による過多月経と貧
血に 1 年間悩まされていた。家族歴は祖母に悪性腫瘍
(詳細不明)
。妊娠歴はなく、月経周期は34日型、整。
30歳 結婚
31 歳 多発子宮筋腫に対し開腹子宮筋腫核出術施行、
子宮筋腫最大径 7 cm、全 3 個摘出、前壁より子宮内腔に
達す。内腔に残りの筋腫なし、子宮内膜症なし。
32 歳 後壁粘膜下全体と右側壁粘膜下に子宮筋腫を再
発した(図 1、2)。TCR 手術を勧めたが、患者は手術を
しない選択をした。GnRHa 使用により、この子宮筋腫は
一時的に縮小したが、子宮鏡で筋腫の存在が確認できな
くなるまでには至らなかった(図3、4)
。十分なインフォ
ームドコンセントのうえ、手術せずに妊娠を目指すこと
とした。
33歳 自然妊娠が成立したが妊娠10週で流産に至った
(妊娠7週相当)
。hCG 最大値 92254 IU/L、CRL 8.7 mm、
胎児心拍(+)→(-)
。着床部位は右側壁粘膜下子宮筋腫
の近傍の可能性が示唆された(図5)
。D&C を行った。
流産後3ヵ月(図6、7)
、1年(図8)と子宮鏡を観察し
たところ、当初(図 1、2)と比べ子宮筋腫に変化は認め
られなかった。子宮筋腫の位置関係を超音波断層写真と
共に図示すると、図9のようなイメージである。
34 歳 自然妊娠が成立し、前壁への着床を確認した
(図 10、11)。妊娠経過中も常に粘膜下筋腫は存在し、16
週頃には超音波上、胎盤の一部が右側壁粘膜下筋腫に接
して見えた(図12)
。同部位は次第に胎盤と筋腫が離れて
いった。子宮筋緊張高く、子宮収縮抑制剤内服したが、
頚管長短縮や出血等なく経過した。子宮血流の確保のた
め、低用量アスピリン、ビタミンEを使用した。
妊娠37週で選択帝王切開により出産した。頭位、体重
3162 g 、APGAR 9点。
術後経過も良好で退院し、外来で子宮筋腫の経過観察
を行っている。
症例2
27 歳 結婚、生来健康で特記すべき既往歴はなく、家
族歴は祖母に乳癌。妊娠歴もなく、月経周期は 30 日型、
整。
28 歳 初診。挙児希望あり、子宮筋腫合併の不妊症と
して紹介受診。不妊症一般検査の異常所見は、子宮筋腫、
潜在性高プロラクチン血症、黄体機能不全、クラミジア
抗体 IgG 陽性。
29 歳 多発子宮筋腫に対し、GnRHa 4 ヵ月使用後、開
腹子宮筋腫核出術施行、子宮筋腫最大径 8 cm、全 9 個摘
出。ダグラス窩の癒着が高度で子宮頚部後壁の子宮筋腫
(径 1 cm)の摘出を断念した。右卵巣チョコレート嚢腫
(5 mm)凝固、右付属器癒着(軽度)剥離、左付属器挙
上するも癒着無し、ダグラス窩には内膜症なし。
30 歳 子宮筋腫増大を他院で指摘され来院。超音波上
の子宮筋腫および癒着部位の位置関係を図13に示す。子
宮鏡で観察したところ、子宮内腔には筋腫による変形や
圧排もないことから(図14、15)
、十分なインフォームド
コンセントのうえ、手術せずに妊娠を目指すこととした。
1 年後も子宮筋腫の大きさと位置は変化がなかった(図
16)
。
31 歳 自然妊娠が成立し、後壁への着床を確認した
(図17∼19)
。頚部の子宮筋腫は超音波上、胎盤の裏に位
置するように見えたが、妊娠の進行に伴い明らかに筋腫
と胎盤は離れていった(図 20 ∼ 22)。子宮筋緊張高く、
子宮収縮抑制剤内服したが、頚管長短縮や出血等なく経
過した。子宮血流の確保のため、低用量アスピリン、ビ
タミンEを使用した。
妊娠38週で選択帝王切開により出産した。頭位、体重
2706 g、APGAR 9点。
術後経過も良好で退院し、外来で子宮筋腫の経過観察
を行っている。
考 察
子宮筋腫核出術後の子宮筋腫再発率は10年間で27%で
あり、多数の筋腫摘出を行った場合に生じやすい。しか
し、初回手術から3∼4年は追加手術が不要であるという
のが一般的である。子宮筋腫核出後の満期産の率は 4050 %というが、種々の報告はフォローアップ期間が異な
るため、一概に比較ができない 1)。本2症例は、手術後の
再発あるいは摘出不能な筋腫を、どのように管理すれば
安心できるかという方向で臨んだ。もし、子宮鏡による
評価がなく、妊娠中期に子宮筋腫合併妊娠という形で来
院されていたら、必要以上に警戒し、不安感を持ちなが
ら妊娠経過を診ていたであろう。本2症例は、1名の医師
が子宮鏡の段階から妊娠・分娩まで診察にあたったが、
毎回超音波で診る上で重要な事は、子宮鏡で得られた子
宮筋腫の位置関係を立体的に思い浮かべながら診察する
ことで、確信を持てたことである。
ASRM 2004 practice committee report 1)によると、子宮筋
腫が不妊をもたらすメカニズムについてのエビデンスは
存在しない。そこで、以下に種々の論文を列記し、子宮
内腔病変とそうでないものについて分けて考えてみたい。
子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫などの子宮内腔
病変の場合には、大きなもの程、無治療での妊娠が難
しい 4) ∼ 7)。子宮内膜ポリープと粘膜下子宮筋腫を手術の
有無により比較検討したところ、妊娠率および妊娠まで
の期間は手術の有無にかかわらず有意差を認めなかった
が、手術しない場合には子宮内腔病変の大小により妊娠
率(12 mm 以下で 7 / 11 = 64 %、12 mm 以上で 1 / 4 =
25% の妊娠率)に差が認められた 4)。子宮内膜ポリープ
(妊娠率のオッズ比 3.89 )や粘膜下子宮筋腫( 2 cm 以上、
妊娠率のオッズ比 2.64 )のTCR手術による摘出は、子宮
筋腫のない群と比べ妊娠率がよい 5)。粘膜下子宮筋腫(5
cm 以上、 57.1% vs 23.0%)や他に不妊原因がない場合
(41.6% vs 17.1%)
、35歳未満の場合(35.3% vs 23.8%)
、
TCR 手術により、妊娠率が有意に改善した 6)。2 cm 以上
の粘膜下筋腫を TCR で摘出後、68.6%に妊娠が成立した
平成19年1月(2007)
9 (67)
10
(68)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
子宮鏡の写真は全て、子宮の前壁を12時、左壁を3時、後壁を6時、右壁を9時の方向で示す。
経膣超音波断層写真は全て、矢状断は患者の尾側を3時、冠状断あるいは水平断は患者の左側を3時の方向で示す。
矢印(→)は黄色がdecidua basalis、赤色がmyoma、青色がadhesionである。
が、2 cm 未満では16.7%であった 7)。
次の論文は大きさに関する記載がないものの、子宮内
腔病変を TCR 手術により摘出すると妊娠率が改善すると
いう報告である 8)、その一方で否定的な意見もある 9)。子
宮内膜ポリープを TCR で摘出後、75.0%に妊娠が成立し
た 8)。粘膜下筋腫を TCR で摘出することにより、不正出
血は著名に改善したが妊孕性改善については術後 1 年で
プラトーに達し40∼50%であった 9)。また、2001年のメ
タアナリシスによると、粘膜下筋腫を持つ不妊症女性は
不妊症コントロールに比べ妊娠率のオッズ比は 0.3 であ
り、子宮筋腫摘出術によりオッズ比は 1.72 になる。しか
し、生産率に有意差はない 10)。
IVF-ET を行えば受精までの影響は否定されるため、着
床環境へ与える影響が妊娠率に反映される。子宮筋腫は
子宮内腔病変 2) 11) 12)のみならずそうでないもの 12) ∼ 16)ま
で妊娠に影響するという報告がある。一方で、否定的な
報告も存在する 17)。IVF-ET 患者で粘膜下筋腫あるいは子
宮内腔を変形させている筋層内筋腫を持つ場合のメタア
ナリシスによると、妊娠率(0.32)、着床率(0.28)であ
り、
子宮筋腫のない IVF 患者に比べオッズ比が低下した 2)。
IVF-ET の妊娠率は、粘膜下筋腫を TCR で摘出、子宮内
腔を変形させている筋層内筋腫を開腹筋腫核出で摘出す
ると、筋腫のない群と同等になる 11)。IVF-ET の妊娠率は、
粘膜下筋腫 10.0 %、筋層内筋腫 16.4 %、奨膜下筋腫
34.1%、筋腫なし30.1%であった 12)。IVF-ET 患者で子宮
筋腫合併の場合、筋層内筋腫や奨膜下筋腫が 4 cm 未満の
場合の妊娠率(52.5%)は筋腫のない群(45.0%)と同じ
であるが、4 cm 以上の場合には妊娠率の低下(29.3 %)
が認められた 13)。5 cm 以下の筋層内筋腫を持つ不妊症患
者においても、妊娠率(23.3 % vs 34.1 %)、着床率
(11.9% vs 20.2%)
、生産率(15.1% vs 28.3%)は、子宮
筋腫のない IVF 患者に比べ有意に低い 14)。IVF-ET 患者で
子宮内腔を変形させていない筋層内筋腫を持つ場合のメ
タアナリシスによると、妊娠率(0.66)、着床率(0.62)、
生産率(0.69)共に子宮筋腫のないIVF患者に比べオッズ
比が低下した 15)。IVF-ET の妊娠率は、5 cm 以上の卵管閉
塞をきたす(粘膜下でない)子宮筋腫を摘出(33.3 %)
すると、摘出しない場合に比べ(15.5 %)改善する 16)。
子宮内腔を変形させない筋層内筋腫で 7 cm 未満までは、
IVF-ET の妊娠率(45.0% vs 42.0%)や流産率(20.0% vs
15.5%)に影響しない 17)。
以上のように、子宮内腔病変があるから、あるいは子
宮筋腫があるから、必ず手術をしなければならないわけ
ではない。しかし、妊娠中に生じるかもしれない種々の
合併症には特に注意しなければならない。これらのメリ
ットとデメリットを十分説明した上で患者夫婦にとって
納得のいく治療を行うことが肝要である。超音波検査や
MRI 検査も重要であるが、子宮内腔を拡大させて直視で
きる子宮鏡検査は、イメージを作りやすいため有効な方
法と考えられる。
結 語
子宮筋腫合併妊娠のなかでもハイリスクと考えられる
本 2 症例は、妊娠前の子宮鏡による評価と妊娠初期の着
床部位の評価が適切に行われたことにより、安心して妊
娠経過を診ることができ、良好な結果を生んだものと考
えられた。すなわち、子宮筋腫合併妊娠に備えた妊娠前
の子宮鏡評価が重要である。
(本論文の要旨は、第374回日本産科婦人科学会神奈川地
方部会にて発表した)
平成19年1月(2007)
11 (69)
文 献
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reproduction. Hum Reprod. 1998 ; 13:198−202
(H18. 7. 26受付)
12
(70)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
妊娠初期に合併した菊池病の1例
Kikuchi disease in early pregnancy
平塚市民病院産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Hiratsuka City Hospital
東條龍一郎 Ryuichiro TOJO
古谷 正敬 Masataka FURUYA
本田 能久 Nobuhisa HONDA
藤本 喜展 Yoshinobu FUJIMOTO
笠井 健児 Kenji KASAI
齋藤 優 Suguru SAITO
持丸 文雄 Fumio MOCHIMARU
秦野赤十字病院内科
Department of Hematology, Hadano Red Cross Hospital
大林 由明 Yoshiaki OBAYASHI
要 旨
菊池病は20∼30歳代の女性に好発し、前駆症状として
扁桃腫大を伴う上気道炎症状で発現、さらに頸部リンパ節
腫大、白血球減少を来す疾患である。若年女性に好発する
ものの妊娠に合併した症例の報告は稀であり、今回、我々
は妊娠初期に菊池病を発症した症例を経験したので報告す
る。
患者は26歳、0経妊0経産。妊娠7週、発熱と悪阻症状を
主訴に来院。当初感冒による発熱と考え経過観察していた
が白血球減少の進行と頸部リンパ節腫大を認めるようにな
った。各種ウイルス感染、自己免疫疾患、悪性リンパ腫も
鑑別にあがったが、臨床的に菊池病と診断した。診断後、
アセトアミノフェン及びプレドニゾロンによる対症療法で
経過観察したが、白血球減少の進行に加え LDH、GOT、
GPT の漸増を来したため血球貪食症候群も疑われた。血液
内科に転院後の骨髄穿刺ではマクロファージによる血小板
の貪食像が散見された。しかし、その後アセトアミノフェ
ンの投与のみで解熱傾向となり、血液検査所見も正常化、
第20病日に退院となった。
菊池病は予後良好な疾患ではあるが重篤な全身性疾患と
の鑑別が必要である。若年女性に好発することから産婦人
科領域においても本疾患に対する認識をもつ必要がある。
Key word:菊池病、不明熱、壊死性リンパ節炎、妊娠、血
球貪食症候群
緒 言
菊池病は上気道炎症状に伴い頸部リンパ節腫大、白血
球減少を来す原因不明の壊死性リンパ節炎である。1972
年に福岡大学病理学教室の菊池昌弘教授によって報告さ
れた、比較的新しい疾患である 1)。概ね若年女性に好発
するにもかかわらず妊娠中における報告は極めて少ない
ため、産婦人科領域における本疾患に対する認識は低い。
我々は妊娠初期に発症した菊池病の一例を経験したの
で報告する。
症 例
患者:26歳女性 0経妊0経産。
最終月経:平成17年10月8日、自然妊娠。
既往歴、家族歴共に特記事項なし。
現病歴:平成 17 年 11 月 27 日、(妊娠 7 週 1 日)7 日間続
く37℃台の発熱、軽度の咽頭痛および悪阻を主訴に当院
を受診。
初診時現症:体温 38.3 ℃、血圧 105 / 64 mmHg、脈拍
90 /分。呼吸音は両肺とも清で扁桃腫大なし。頚部に小
豆大、有痛性の頸部リンパ節を複数触知。内診所見には
異常なし。
初診時検査所見:WBC 3700/μl、CRP 2.83 mg/dl、尿
ケトン 3+、鼻咽頭インフルエンザ抗原は A、B ともに陰
性。
経膣超音波断層検査にて胎児頭臀長 7.7 mm、胎児心拍
を確認。左卵巣に4 cm 大の嚢腫を認めたが妊娠黄体嚢胞
と思われた。
発熱に関しては感冒によるものと考え、悪阻の管理目
的にて入院とした。
入院後経過:入院翌日の血液検査で白血球の減少がみ
られた(表 1)。当初はウイルス感染によるものと考え、
二次感染予防のためセフォチアム 2 g/dayの投与を開始
した。しかしながら、同時に末梢血中に好塩基性の大型
異型リンパ球が見られた。そのため EB ウイルス感染を
はじめとする幾つかの特異的なウイルス感染や自己免疫
疾患の関与を疑って検査を実施したが、いずれも陰性で
あった(表 2)。悪性リンパ腫も鑑別にあがったが、画像
上および血液検査、リンパ節の性状から悪性リンパ腫の
平成19年1月(2007)
13 (71)
表1 血液検査結果
病日 1 WBC(/μl)
Hb(g/dl)
4
Plt(x10 /μl)
LDH(IU/L)
CRP(mg/dl)
2 6 10 11 13 16 19
3700 2900 3000 1600
13.1 11.7 11.4 10.8
24.2 21.0 12.1 13.0
179 158
---- 673
2.83 2.68 3.23 3.49
1700
10.3
10.3
615
2.23
3200
10.7
14.4
505
1.06
4100
10.8
24.2
313
0.25
4200
10.3
26.6
198
0.2>
表2 ウイルス、免疫検査結果
ウイルス感染検査 自己免疫疾患検査
抗CMV IgM(−) リウマチ因子 (−)
抗 EBV IgM(−) 抗核抗体 (−)
抗 HSV IgM(−) ループスアンチコアグラント(−)
抗パルボB19 IgM(−) 抗DNA抗体 (−)
アセトアミノフェン 1200mg/day アセトアミノフェン 600mg/day プレドニゾロン 15mg/day 図2 骨髄像
血小板を貪食するマクロファージ
40.0
考 察
39.0
体
温
38.0
(℃)
37.0
骨髄生検
↓
36.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
病日
図1 経過
可能性は低いと考えた。その後、当院血液内科に依頼、
臨床的に菊池病と診断された。菊池病の確定診断ではリ
ンパ節の生検が必要となるが、本症例では、リンパ節腫
大がこの時点ですでに縮小傾向にあり生検が困難と判断、
施行しなかった。
発熱に対して第 4 病日よりアセトアミノフェンを 600
mg /day の投与を開始した。一時的に白血球数が上昇し
たが、発熱は改善しなかった(図 1、表 1)。そのためよ
り強い抗炎症効果を期待して、第 9 病日よりプレドニゾ
ロンの15 mg/dayの投与を開始した。しかし、その後も
発熱は改善せず、白血球数も減少、血清 LDH、GOT 値も
上昇した(図 1、表 1)。血球貪食症候群の発症も疑われ
たため、第12病日、血液内科の体制が整っている秦野赤
十字病院に転院となった。
転院後行われた骨髄穿刺では、マクロファージによる
血小板の貪食像が散見された(図 2)。ただしその時点で
は血球貪食症候群の診断基準は満たしていないことから
経過観察とし、アセトアミノフェンの1200 mg/dayの投
与を行っていたところ発熱は改善した。白血球、血小板
数が回復すると共に、LDH、CRP も減少し、結局第20病
日で退院となった。
菊池病は1972年に福岡大学の菊池教授によって報告さ
れた、比較的新しい疾患概念である 1)。特に 30 歳未満の
若年女性に好発し、前駆症状として扁桃腫大を伴う上気
道症状が発現し、頸部皮下リンパ節の腫大と白血球減少
をきたすが、1から2ヵ月以内に自然軽快する予後良好の
疾患である。男女比は1:1.6で女性に多く、85%が30歳
までに発病している。若年女性に多く発症すると考えら
れる本疾患であるが、これまで妊娠中の報告は 6 例のみ
であり、本邦での報告はない 2) 3) 4) 5) 6) 7)。家族性の症例も
複数報告されているが、本症例において家族歴はなかっ
た 8) 9)。本疾患の予後は良好で菊池教授が行った症例の2
年から 10 年に及ぶ予後調査ではいずれも健康であった。
確認される妊娠中の菊池病に関してもすべて予後は良好
で、症状軽快後は正常に分娩に至っている 2) 3) 4) 5)。胎児
への影響もなく、妊娠中絶の理由にはならないと報告さ
れている 2) 3)。本疾患は約4%に再発が見られる。そのた
め既往歴に本疾患が認められた場合は注意するべきと考
える。菊池病が妊娠中に再発をした報告もあり、既往歴
が診断の助けとなる 5) 6)。
本疾患の原因は不明である。臨床症状とウイルス感染
初期に上昇する2’
5’
- oligoadenylate synthetase が血清中で
上昇することから最近ではヒトヘルペスウイルス6型や8
型の関与が有力視されている 10) 11) 12)。また化粧品に対す
るアレルギー、ピアスの装着を契機に発症するという報
告もある 13)。ミノサイクリンの投与により急速に症状が
改善した報告もあり 14)、一部にミノサイクリンが有効な
微生物の関与が指摘されているが、本症例ではこの事に
関する微生物学的検査、ミノサイクリン投与は行ってお
らず不明である。
確定診断はリンパ節生検による。本症例ではリンパ節
腫大が縮小していたことから生検を行わなかったが、若
14
(72)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
年女性に発症しやすいという特徴から傷跡の残る生検は
躊躇されることが少なくない。リンパ節の所見は特徴的
で、多くの大型化したリンパ球、貪食細胞、組織球の出
現をみるが、好中球、好酸球、形質細胞を認めない。浸
潤するリンパ球は T 細胞であり、CD8 陽性細胞が CD4 陽
性細胞よりも多く、この CD8 陽性細胞が増殖と死滅を繰
り返す。そのため発症から 3 から 6 週頃までは血液中で
CD8 陽性細胞が CD4 陽性細胞より優位に立ち、CD4 /
CD8 比が減少する 9) 。但し本症例で第 7 病日における
CD4/CD8 比は 2.12 と減少はみられなかった。
治療は通常1から2ヵ月で自然寛解するため対症療法に
よる経過観察のみで良いとされる。発熱およびリンパ節
疼痛に対してアセトアミノフェン、NSAID、ステロイド
などの抗炎症剤が用いられる。妊娠初期の患者に対して
は催奇形性を考慮するとアセトアミノフェンが選択され
るであろう。本症例では規定容量である 600 mg/dayでは
発熱のコントロールが不良であったが転院先で 1200
mg/dayの投与を行うことで発熱を抑えることができた。
一方、妊娠中の患者に対してプレドニゾン 1mg/kg/day
を投与し、重度の全身症状をコントロールできたという
報告がある 4)。この投与量に比較すると我々が行ったプ
レドニン 15 mg /day は低容量である。そのために十分な
解熱効果が得られなかったものと考えられるが、妊娠初
期であったため催奇形性を考慮し低容量から開始した。
ステロイドの使用については妊娠初期の場合、催奇形性
のリスクを説明する必要があるが、16 週以降の症例に対
しては有効な方法であろう。
菊池病と血球貪食症候群の関連については未だ議論の
余地のあるところだが、菊池病の再発症例に血球貪食症
候群を合併した例や菊池病に血球貪食症候群が続発した
という報告がある 15) 16)。菊池病と血球貪食症候群は同じ
組織球増殖疾患に分類されており、この 2 つの病気が同
一延長線上にあるのか、そうでないのかについて完全な
結論は出ていない。本症例では白血球数、血小板数の減
少、LDH の上昇が出現し、血球貪食症候群を鑑別するた
めに骨髄穿刺を行った。その結果、血小板を貪食するマ
クロファージが散見された。但し、血球貪食症候群の発
症を疑うのは血清 LDH が2000 U/l 以上、フェリチンが
10000 ng /ml 以上の場合が多く、本症例では LDH 673
U / l、フェリチン 1200 ng /ml と上昇が軽度であったこ
とや経過観察のみで軽快したことから血球貪食症候群で
はなかったと考えられる。仮に妊娠中に血球貪食症候群
を発症した場合、特に妊娠中期以降であると汎血球減少
による血小板減少、肝系逸脱酵素の上昇など HELLP 症候
群と類似した検査所見を示す。発熱や腎機能正常など鑑
別点はあるが、この鑑別に苦渋し帝王切開後に母体死亡
に至った報告がある 17)。妊娠中の菊池病を管理するにあ
たり血球貪食症候群の発症を HELLP 症候群と混同しない
よう注意を払う必要がある。
結 論
菊池病は一般に予後良好な疾患であるため、特別な治
療は必要ない。しかしながら、本疾患は悪性リンパ腫、
自己免疫疾患、血球貪食症候群など重篤な全身疾患と類
似した症状を呈するので、鑑別が重要である。そのため、
妊婦を含めた若年女性で発熱やリンパ節腫大を認めた場
合、菊池病の可能性を念頭に鑑別診断を進めるべきであ
ろう。また血球貪食症候群の鑑別についても注意を払う
必要があると考える。
文 献
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(H18. 7. 26受付)
16
(74)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
交通事故で妊娠38週に IUFD を来たした1例
A case of intrauterine fetal death after a traffic accident
横浜労災病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Yokohama Rousai
Hospital, Yokohama
大井 由佳 Yuka OI
佐藤 綾 Aya SATO
村瀬真理子 Mariko MURASE
菊地紫津子 Shizuko KIKUCHI
沢井かおり Kaori SAWAI
池田万里郎 Mario IKEDA
中山 昌樹 Masaki NAKAYAMA
要 旨
症 例
交通事故において子宮内胎児死亡(以下 IUFD と略す)
となった例ではシートベルト非装着例が多くみられる。今
回我々は、交通事故が原因と推測されるIUFDの一例を経
験したので報告する。
症例は 26 歳の初産婦。妊婦健診中の経過に異常なし。
妊娠38週0日、自動車を自分で運転中、前方に停車中の車
に追突してエアーバッグが作動した。この時シートベルト
は装着していなかった。事故より1時間後の診察時に、胎
児心拍を認めなかった。事故の2日前の健診では異常を指
摘されず、前日の夜に胎動を自覚している。母体の合併症
は下顎部の擦過傷のみであり、その他の異常所見は認めな
かった。翌日オキシトシンにて分娩誘発を開始し、事故よ
り27時間後に児を娩出した。児は女児、2555 g、Ap 0/0、
羊水混濁なし、臍帯卷絡頚部1回。児の外傷なし、胎盤や
臍帯に異常なし。今回 IUFD となった直接の原因は不明で
あるが、シートベルトを着用していれば防げた可能性もあ
る。
妊娠中は、シートベルトを着用しなくなる人が増えるこ
とが分かっている。日本では、法律で妊婦にはシートベル
ト着用の義務を免除しているが、この措置に医学的な根拠
はない。シートベルトは、子宮にかからないように両乳房
の間を通し、腰ベルトは上前腸骨棘の上を通すのが正しい
装着法である。妊娠中のシートベルトの着用の安全性及び
正しい装着法を、医療者が認識し啓蒙することが必要であ
ると考えられる。
症例:26歳、1経妊0回経産
既往歴:気管支喘息
現病歴:近医にて妊婦健診中、経過に異常なし。妊娠
37週5日の健診においても、異常を認めなかった。37週6
日の夜、明らかな胎動の自覚があった。
妊娠38週0日、軽自動車を自分で運転していたところ、
発進時前方に停車していた車に追突した。この際、エア
ーバッグが作動し、胸部に当たった。シートベルトは装
着していなかった。救急車にて当院救急外来受診し、妊
娠中のためまず産婦人科受診となった。事故より 1 時間
後、意識清明、バイタルサインに異常無し。下顎部にエ
アーバッグによると思われる擦過傷あり。胸腹部に外傷
なし。性器出血なし、子宮口は 1 指開大。エコーにて胎
児心拍を認めなかった。児の推定体重は2630 g と週数相
当、AFI は11.8 cm と保たれており破水は否定的であった。
胎盤や子宮壁に異常所見なく、母体の腹腔内出血も認め
ず、常位胎盤早期剥離や子宮破裂は否定的であった。
子宮内胎児死亡の診断で当科に入院となり、入院後、
整形外科にコンサルトし、骨折を否定した。また、母体
評価のため CT を施行し母体の合併症や子宮破裂を否定
した。WBC 10,200、CRP 1.09、Hb 11.5 と感染所見や貧血
を認めず、凝固異常も認めなかった。以上より、分娩誘
発の方針として同日ラミナリア桿を挿入し、翌日オキシ
トシンにて分娩誘発を開始した。分娩は順調に進行し、
38週1日、第1前方後頭位にて児を娩出した。分娩時間は
3時間37分、出血量180 ml であった。
児は女児、2555 g、アプガースコアは0点、羊水混濁な
し、臍帯が頚部にきつく 1 回巻絡していた。事故より 27
時間経過していたが、外傷・体表奇形・心奇形なく、大
泉門は平坦、エコーにて頭蓋内出血はなく、腹部は平坦
でであった。臍帯血採取は不可能であった。
胎盤には、肉眼的に異常は認めなかった。病理では母
体面側に好中球浸潤を伴う微小な出血巣を認めたが、胎
児死亡との因果関係は不明であった。臍帯血管系に異常
は認めず、間質に嚢胞状の変性を認めた。
(図①)
Key word:IUFD、子宮内胎児死亡、交通事故、シートベ
ルト、エアーバッグ
はじめに
交通事故において子宮内胎児死亡(以下 IUFD と略す)
となった報告では、シートベルト非装着例が多くみられ
る 1) 4)。今回我々は、母体の合併症、子宮破裂や常位胎盤
早期剥離などの産科的異常を認めなかったにもかかわら
ず IUFD を来たした一例を経験したので報告する。
平成19年1月(2007)
17 (75)
家族の同意が得られなかったため、児の解剖や侵襲的
な検査は行わなかった。胎児母体間輸血症候群の可能性
もあるが、胎児貧血や母体血中の HbF の有無を検査でき
ていないため確認はできない。今回 IUFD となった直接
の原因は不明のままである 5)が、健診歴や胎動の自覚も
考慮すると、交通事故による衝撃が影響していると推測
される。シートベルトを着用していれば衝撃が軽減でき
た可能性もあり、シートベルト着用の徹底が望まれる。
考 察
今回の症例から、我々が妊婦に指導する際に参考にな
る事柄を考察した。
エアーバッグが関与する IUFD の報告はいくつかある
が 6)、それらの多くがシートベルト非装着例である。ア
メリカで行われたダミー人形を使用した実験では、シー
トベルトを使用していなかった場合、使用していたとき
と比較してエアーバッグが腹部に与える衝撃が大きいと
いう結果が報告された 7) 8)。シートベルトが装着されてい
た場合、衝突の衝撃の多くは、シートベルトが体と接し
ている腸骨前部や胸部にかかり、腹部への衝突が軽減さ
れると思われる 9) 10)。妊娠中は、シートベルトは、肩ベ
ルトを子宮にかからないように両乳房の間を通し、腰ベ
ルトは上前腸骨棘の上を通すのが正しい装着法である 11) -14)。
妊娠中は、増大したお腹が窮屈、胎児に悪影響を及ぼ
すのが心配などの理由から、通常はシートベルトを着用
する人でもシートベルトを着用しなくなる人が増えるこ
とが分かっている 15)。日本では、法律で妊婦のシートベ
ルト着用の義務を免除している 16)。先進国においてこの
図①
ような措置がとられているのはわが国だけであり、この
措置に医学的な根拠はない。マタニティシートベルトや、
ストッパーといった商品も海外では作られており、イン
ターネットで購入可能である。ただし、これらの商品の
安全性に関しては未知数である。
まとめ
母体は軽症にもかかわらず交通外傷にて IUFD となっ
た 1 例を経験した。妊娠中、自動車に乗る際には、シー
トベルトの着用が母体及び胎児の安全性の確保のために
有用である。妊娠中のシートベルトの着用の安全性及び
正しい装着法を、医療者が認識し啓蒙することが必要で
あると考えられた。
文 献
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日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
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(H18. 8. 14受付)
平成19年1月(2007)
19 (77)
当院における腹腔鏡下子宮筋腫核出術の検討
A retrospective study of laparoscopic myomectomy in our hospital
済生会神奈川県病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Saiseikai Kanagawaken
Hospital
小西 康博 Yasuhiro KONISHI
宮崎 薫 Kaoru MIYAZAKI
中林 章 Akira NAKABAYASHI
小関みづほ Mizuho KOSEKI
秋葉 靖雄 Yasuo AKIBA
渡邉 豊治 Toyoharu WATANABE
要 旨
腹腔鏡下子宮筋腫核出術(laparoscopic myomectomy:以
下、LM)は体内結紮法などの手技を必要とする比較的難
易度の高い手術である。当院において1998年より LM を行
ってきたが、全筋腫核出術中の LM 施行率は43.4%であっ
た。そのうち1999年から2005年までの7年間で併発症のな
い LM 70症例と開腹子宮筋腫核出術(以下、開腹手術)45
症例を比較検討した。LM は開腹手術に比べて平均筋腫総
重量、最大径、個数が有意に少なかった。また LM では開
腹手術に比べて平均手術時間が有意に長くなっていたが、
平均入院日数と術中出血量は有意に少なかった。特に筋腫
最大径9 cm、総重量400 g 未満のLMは開腹手術に比べて平
均手術時間は有意に長かったが、平均術中出血量は有意に
少なかった。筋腫最大径9 cm 以上、総重量400 g 以上の
LM では出血量が有意に増え、開腹手術との間に有意差は
無かった。当院において現時点では筋腫最大径9 cm 未満、
総重量400 g 未満であれば安全にLMが行えると考えられ
た。現在までに LM から開腹手術へ移行した症例もなく、
安全に手術を行うという観点において当院の LM 適応選択
は妥当であると考えられた。今後さらに LM を安全且つよ
り効率的に発展させていくためには、当院としての手術手
技や適応選択の標準化を図ることが重要であると思われ
た。
よって手術の難易度が左右される LM を安全且つ効率的
に施行するためには十分な適応の検討が必要であると考
えられる。当院では1998年から LM を行ってきたが、そ
の安全性や適応選択に検討を加え、今後の発展性に対し
ても考察を加えた。
方 法
LM は術前に GnRH アナログを3∼4ヵ月使用した後、
MRI を施行し、不妊症などの既往も考慮してミーティン
グで適応を検討した。手術は 4 パンクチャーテクニック
で行い(図 1)、子宮筋層切開部位からの出血を抑制する
ために希釈バソプレシン(ピトレシン20単位を生理食塩
水100 ml で希釈)を筋腫核直上に局注した。次いでハー
モニックスカルペル(エチコン)にて切開を加え筋腫を
核出した。核出創は 0 または 2-0 モノクリル(エチコン)
を使用して1∼3層に縫合した。核出した筋腫は電動式モ
ルセレーター(エチコン)にて細切し体外へ搬出した。
当院では1998年より2005年までに95例の LM を行って
きた。2000 年には全子宮筋腫核出術中の LM 施行率は
69.0 %になった。その後、平均して 43.4 %の LM 施行率
を維持している。その内、1999 年から 2005 年までの 7 年
間で併発症のない LM 70 症例と開腹手術 45 症例につい
て、入院日数、年齢、筋腫総重量、筋腫最大径、筋腫個
数、術中出血量、手術時間を比較検討した。統計検討は
Key word:腹腔鏡下子宮筋腫核出術、適応選択
緒 言
子宮筋腫は生殖年齢女性の30%位に存在すると言われ
ている 1)。それが妊娠障害に関わる症例も多く見受けら
れ、子宮筋腫のみを核出して妊孕性を温存する必要性が
増加してきている 2)。この状況で腹腔鏡下子宮筋腫核出
術(laparoscopic myomectomy:以下、LM)は、開腹子宮
筋腫核出術(以下、開腹手術)に比べて低侵襲で早期社会復
帰も出来るため積極的に行われるようになってきた。し
かし LM は体内結紮法などの手技を必要とする比較的難
易度の高い手術である。筋腫核の大きさや個数、位置に
図1 LM のトロカー挿入部
20
(78)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
Mann-Whitney 検定と Kruskal-Wallis 検定を用いた。データ
は mean ± S.E. で表示し、P < 0.05 を推計学的に有意差有
りとした。
表3 LM 筋腫最大径と平均術中出血量
筋腫最大径
術中出血量(ml)
5cm 以下
(n=16)
113±62
結 果
6cm
(n=12)
124±65
LM は開腹手術に比べて平均入院日数が有意に短く、
平均年齢は有意差がなかった。平均筋腫総重量、最大径、
個数は LM が有意に少なかった。手術時間は LM が有意
に長かったが、術中出血量は LM が有意に少なかった。
(表1)
LM 症例を年次別に比較してみると入院日数、年齢、
筋腫個数には有意差はなかった。筋腫総重量と最大径は
1999年に比べて2000年の LM で有意に増加した。2000年
の術中出血量は他年次に比べて有意に増加した。2001 年
以降の術中出血量は有意に減少した。手術時間も2000年
に比べて2001年以降は有意に減少した。
(表2)
LM 筋腫最大径および筋腫総重量と平均術中出血量を
比較してみると筋腫最大径、総重量の各群間で明らかな
出血量の有意差はなかったが、最大径 8 ∼ 9 cm、総重量
400 g を境界として出血量が増加する傾向が認められた。
(表3、4)LM 症例において最大径9 cm、総重量400 g 未
満群に比べて9 cm、400 g 以上群では術中出血量が有意に
多かった。手術時間は2群間で有意差はなかった。
(表5、
6)このことから LM では筋腫最大径9 cm、総重量400 g
を超えると術中出血量が増えて手術のリスクが高まると
考えられた。さらに筋腫最大径9 cm、総重量400 g 未満の
LM では開腹手術に比べて手術時間は有意に長かったが、
7cm
(n=14)
112±52
8cm
(n=9)
43±29
9cm
(n=7)
230±196
10cm 以上
(n=12)
481±299
表1 LM と開腹筋腫核出術の比較
表4 LM 筋腫総重量と平均術中出血量
筋腫総重量
開腹筋腫核出術
入院日数(日)*
7.2±0.1
10.8±0.1
年齢(歳)
35.1±0.5
36.8±0.6
筋腫総重量(g)*
209±19
450±52
筋腫最大径(cm)*
7.1±0.3
9.8±0.5
筋腫個数(個)*
3.1±0.2
8.3±1.6
術中出血量(ml)*
184±59
461±108
手術時間(分)*
195±8
109±7
100g 未満
(n=23)
113±62
100∼200g 未満
(n=14)
124±65
200∼300g 未満
(n=16)
112±52
300∼400g 未満
(n=4)
43±29
400∼500g 未満
(n=7)
230±196
500g 以上
(n=6)
481±299
(mean±S.E.)
表5 LM 筋腫最大径と平均術中出血量・手術時間の比較
筋腫最大径
(n=51)
109±31
193±10
9cm 以上
(n=19)
388±200
201±15
表6 LM 筋腫総重量と平均術中出血量・手術時間の比較
筋腫総重量
1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
(n=8)
(n=5)
(n=13)
入院日数
(日)*
6.6±0.4 7.2±0.5 7.1±0.3 7.2±0.4 7.4±0.4 7.3±0.4 7.2±0.5
年齢
(歳)
37.3±1.0 36.8±1.1 34.1±1.1 33.4±1.6 33.6±0.8 38.5±1.4 35.2±1.0
筋腫総重量
(g)*
139±69 233±48 174±48 283±44 277±43 248±92 166±30
筋腫最大径
(cm)*
5.4±0.8 6.8±0.6 6.3±0.5 8.5±0.4 7.7±0.5 7.3±1.3 7.2±0.5
筋腫個数
(個)*
4.3±0.9 3.5±0.5 3.2±0.5 3.4±0.6 2.0±0.5 3.0±0.7 3.2±0.7
術中出血量
(ml)*
手術時間
(分)*
35±8
733±311 96±43 229±136
19±6
129±79
71±24
226±16 243±19 172±13 160±12 177±22 181±40 204±21
*有意差有り(P<0.05)
術中出血量(ml)*
手術時間(分)
400g 未満
(n=57)
100±27
192±9
400g 以上
(n=13)
554±284
205±22
(mean±S.E.)
(mean±S.E.)
表7 筋腫最大径9 cm 未満症例の平均術中
出血量・手術時間の比較
症 例
(n=11)
(mean±S.E.)
*有意差有り(P<0.05)
表2 LM 症例年次別比較
(n=14)
手術時間(分)
9cm 未満
(mean±S.E.)
(n=11)
術中出血量(ml)*
(n=45)
*有意差有り(P<0.05)
(n=8)
術中出血量(ml)
*有意差有り(P<0.05)
LM
(n=70)
(mean±S.E.)
術中出血量(ml)*
手術時間(分)*
LM
(n=51)
109±31
193±10
開腹手術
(n=20)
337±94
104±11
*有意差有り(P<0.05)
(mean±S.E.)
表8 筋腫総重量400 g 未満症例の平均術中
出血量・手術時間の比較
症 例
術中出血量(ml)*
手術時間(分)*
LM
(n=57)
100±27
192±9
開腹手術
(n=23)
247±46
92±6
*有意差有り(P<0.05)
(mean±S.E.)
平成19年1月(2007)
21 (79)
術中出血量は有意に少なかった。
(表7、8)しかし筋腫最
大径9 cm、総重量400 g 以上群では LM の出血量は増加し、
開腹手術と比べて術中出血量の有意差は無かった。
(表9、
10)
考 察
当院の LM は1999年に比べて2000年で筋腫総重量と最
大径が増加しており、その適応範囲が拡大したと考えら
れた。
2001年より LM の術中出血量と手術時間が減少し、こ
の時期より技術レベルも安定してきたと考えられた。こ
れに伴い LM 開始当初から準備していた自己血輸血の必
要性が2001年以降にはほとんど無くなった。
LM は開腹手術に比べて、筋腫の平均総重量、最大径
や個数は有意に少なく、手術時間も有意に長いことから
手術適応の制限が大きく、手技的に難易度が高いことが
再確認された。それに対して LM の入院日数が有意に短
く術中出血量も有意に少ないことは、LM の低侵襲性を
反映していると考えられた。LM ではGnRHアナログを確
実に使用し、さらにバソプレシンを術中に十分使用して
いることが出血量を効果的に抑制する一因と考えられた
が、さらに筋腫が大きく個数も多い重症例では開腹手術
を選択することで LM における出血量増加を回避してき
たと考えられた。
手術侵襲は短期的には、手術時間、術中出血量、術後
の炎症反応や痛みのスケールなどで評価されるので、手
術時間に関しては LM が低侵襲とは言い難いが、長期的
評価で見れば LM は早期社会復帰や術後癒着が少ないと
いう点で有利であるという報告もされている 3)。
LM の適応選択は術前に MRI を施行し、ミーティング
で決定してきた。筋腫発生部位によっても LM の難易度
は変わってくるが、発生部位の評価は数値的には行い難
く、MRI 画像読影などの経験的評価で行われている。そ
れに対して筋腫の最大径や総重量は数値的評価が可能で
適応選択において比較的分かり易い指標になると考えら
れる。また筋腫個数の増加に伴い一般的に手術時間や術
表9 筋腫最大径9 cm 以上症例の平均術中
出血量・手術時間の比較
症 例
術中出血量(ml)
手術時間(分)*
LM
(n=19)
388±200
201±15
開腹手術
(n=25)
560±180
113±9
*有意差有り(P<0.05)
(mean±S.E.)
表10 筋腫総重量400 g 以上症例の平均術中
出血量・手術時間の比較
症 例
術中出血量(ml)
手術時間(分)*
LM
(n=13)
554±284
205±22
開腹手術
(n=22)
685±209
126±12
*有意差有り(P<0.05)
(mean±S.E.)
中出血量が増加する傾向があると考えられるが、当院の
LM 症例ではその傾向が認められなかった。
術中出血量は手術における安全性評価のひとつと考え
られるが、筋腫最大径9 cm、総重量400 g 未満の LM では
開腹手術に比べて平均術中出血量が有意に少ないことか
ら、安全に手術を行うことが出来ていたと考えられる。
しかし筋腫最大径9 cm、総重量400 g 以上の LM になると
平均術中出血量は有意に増加し、開腹手術と同程度の出
血量となっていたために LM の手術視野から考えると手
術進行に支障が出る可能性もあり、注意が必要と思われ
た。当院のような研修施設において筋腫最大径9 cm、総
重量400 g 未満の症例では LM が術式の第一選択肢に十分
なりうることが示唆され、安全に手術を行うという観点
から今までの LM 適応選択は妥当であったと考えられた。
LM の限界は筋腫核の大きさが8 cm、筋腫個数が2個ま
でとしている報告 4)があり、当院での選択傾向と一致し
ている。また、筋腫核の大きさが 12 cm までを限界とし
ている報告 5)もあるが、これは熟練した同一術者の報告
であり、当院において LM の平均的な目標値をそこまで
上げるのは容易ではない。しかし当院における筋腫最大
径9 cm、総重量400 g 以上の LM は開腹手術に比べて術中
出血量は同等であり、手術時間も最大径9 cm、総重量400
g 未満の LM に比べて有意差が無いことから、開腹手術
に比べて安全性の面で必ずしも不利になるとは言えず、
LM の適応選択の範囲を拡大出来る余地があると考えら
れた。当院において筋腫最大径11 cm、総重量600 g 程度
の LM も行っており、熟練した者同士が行う LM ではそ
の適応限界もさらに高められると考えられた。
まとめ
LM 症例を比較検討したことにより、安全性という観
点から今までの LM 適応選択の妥当性が確認されたと考
えられる。今後、当院のような研修施設で産婦人科医師
スタッフ全員が腹腔鏡下子宮筋腫核出術を安全且つより
効率的に発展させていくためには、手術手技の向上を目
指すのは当然であるが、手術技量に見合った適応選択の
標準化を図ることが重要であると考えられた。
文 献
1) Berkeley AS, De Chmey AH,Polan ML : Abdominal
myomectomy and fertility.Surg Gynecol Obstet. 1983 ;
156:319−322
2) 西井修、堤治:腹腔鏡下子宮筋腫核出術、産婦人科治
療、東京、永井書店、2000;81(5):535−540
3) 廣田穰、門脇恵、大原聡、石川くにみ、安江朗、安江
由紀、加藤利奈、大橋由政、多田伸、宇田川康博:腹
腔鏡下手術症例における術後の社会復帰に関する検
討、日産婦内視鏡学会誌、2000 ; 16(2):48−50
4) Dubuisson JB, Fauconnier A, Chapron C, Kreiker G,
Norgaard C : Reproductive outocome after laparoscopic
myomectomy in infertile women.J Reprod Med. 2000 ; 45
(1):23−30
22
(80)
5) 竹内裕之、島貫洋人、菊地盤、北出真理、木下勝之:
腹腔鏡下筋腫核出術の適応とその限界、日産婦内視鏡
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
学会誌、2003 ; 19(2):113−117
(H18. 8. 16受付)
平成19年1月(2007)
23 (81)
腹腔鏡下卵管端々吻合術後, 子宮外妊娠症例における卵管の病理学的検討
The pathologic examination of the resected tube due to ectopic pregnancy
after laparoscopic end-to-end anastomosis
済生会神奈川県病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Saiseikai Kanagawaken
Hospital
中林 章 Akira NAKABAYASHI
宮崎 薫 Kaoru MIYAZAKI
秋葉 靖雄 Yasuo AKIBA
小関みづほ Mizuho KOSEKI
渡邊 豊治 Toyoharu WATANABE
小西 康博 Yasuhiro KONISHI
要 旨
卵管形成術は開腹術による顕微鏡下に施行されるように
なり成績が向上したが、熟練を要する手術手技や手術侵襲
の大きさに加え、生殖補助医療の著しい発展のため普及し
なかった。その一方、近年、腹腔鏡に関連する手術機器が
進歩し、癒着剥離術、卵管采形成術、卵管開口術が低侵襲
手術である腹腔鏡下に行われるようになった。今回、卵管
端々吻合術を腹腔鏡下に施行し妊娠に至った症例を経験し
た。
症例は 33 歳、2 経妊 1 経産で卵管形成術希望にて来院。
25歳時に子宮外妊娠、28歳時に体外受精にて妊娠し分娩。
初診時、子宮・卵巣は正常大であった。子宮卵管造影検査
では、右卵管の膨大部・采部での閉塞が予想された(左卵
管は子宮外妊娠時に切除)
。腹腔鏡にて腹腔内を観察、右
卵管采は正常で、卵管采から 2 cm 近位の膨大部に約 5 mm
の閉塞を認め、卵管端々吻合術を施行した。手術後、約1
ヵ月で排卵し、その周期に妊娠に至ったが、卵管形成術を
施行した側の卵管妊娠であったため、腹腔鏡下に患側の卵
管摘出及び対側の残存卵管切除を施行した。病理組織学的
検査では、縫合糸の周囲に軽微な異物反応があるのみで、
縫合糸周囲の卵管上皮に異常所見を認めなかった。
卵管性不妊に対する治療として生殖補助医療が固定化さ
れる傾向があるが、腹腔鏡下卵管形成術は腹腔鏡診断に引
き続き行える点で、臨床的意義が大きいと考えられる。今
後、本症例のような卵管膨大部閉塞に対する術式・手技等
の更なる検討が望まれる。
Key word:卵管端々吻合術、腹腔鏡、膨大部閉塞、子宮外
妊娠
緒 言
卵管性不妊に対する治療として、卵管形成術と生殖補
助医療(ART)があり、ART が広く普及しているが、自
然妊娠を期待している夫婦も少なくない。近年の腹腔鏡
に関連する手術機器の進歩に伴い、癒着剥離術、卵管采
形成術、卵管開口術が腹腔鏡下に行われ、低侵襲な手術
後に妊娠が期待できるようになった。
今回、片側卵管切除後の対側の卵管通過障害に対し、
腹腔鏡下卵管端々吻合術を施行し妊娠に至った 1 例を経
験したので考察を加えて報告する。
症 例
33歳、2経妊1経産
主訴:卵管形成術希望。
既往歴: 25 歳時に子宮外妊娠のため左卵管を切除。
28 歳時に、体外受精にて妊娠し、常位胎盤早期剥離のた
め帝王切開術を施行し生児を得た。
内診所見:子宮・両側付属器に異常なし。
経腟超音波所見:正常大の子宮及び正常大の両側卵巣。
検査所見:クラミジア IgA 0.97、クラミジア IgG 5.16、
クラミジア抗原(−)
。
子宮卵管造影検査:左卵管が子宮外妊娠時に切除され
ていたため峡部までしか描出されず、右卵管は膨大部ま
で描出されたが造影剤の拡散が不良であり、膨大部・采
部の閉塞が予想された(図1-A、1-B)
。
腹腔鏡所見:右卵管采は正常で(図2-A)
、子宮からの
色素通水にて、卵管采から 2 cm 近位の膨大部に閉塞を認
めた。卵管采から卵管内にアトムチューブ(5 Fr)を挿入
し、閉塞部位を確認した後、その遠位側にて切開をした
(図2-B)
。閉塞部の近位側も切開をし、アトムチューブを
挿入した(図2-C)
。
閉塞部分の長さは約 5 mm であった。閉塞部の両端の
断端を 4-0 バイクリルにて 4 カ所端々吻合した(図 2-D)。
最後に卵管采からの色素流出を認め疎通性を確認した
(図2-E)
。
術後経過:良好で第4病日で退院。手術後、約1ヵ月で
排卵し、その周期に妊娠に至った。
しかし、妊娠 5 週 2 日で性器出血が出現し、妊娠 5 週 3
日で腹痛が出現、その翌日に性器出血増量及び Hb 低下
(11.5 g/dl∼9.6 g/dl)を認めたため、試験的に子宮内容
除去術を施行した。
妊娠5週5日、HCG 値の上昇(前1837 mIU/ml、後3920
24
(82)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
図1-A 子宮卵管造影充填像
図1-B 子宮卵管造影拡散像
図2-A
図2-B
図2-D
図2-E
卵管形成術手術所見
図3-A 卵管HE染色(HEx40)
図2-C
図3-B 卵管HE染色(HEx40)
平成19年1月(2007)
25 (83)
mIU/ml)を認めたため、腹腔鏡下に腹腔内を観察したと
ころ、腹腔内に約1100 g の出血があり、卵管形成術を施
行した右卵管の腫大(膨大部に卵管留血腫)を認めた。
卵管妊娠と診断し、患側の卵管摘出及び対側の残存して
いる卵管切除を施行した。
病理組織診断:摘出した卵管の上皮近傍の縫合糸の周
囲には軽微な異物反応があるのみで、炎症・膿瘍形成を
認めなかった(図3-A、図3-B)
。
考 察
卵管形成術は、卵管性不妊に対して行う卵管の再建術
で、以前は開腹術により行われていたが、この数10年で
その手法は大きく変化している。1976 年に顕微鏡下に行
うマイクロサージェリーによる卵管形成術が行われ、以
後開腹術に比較しその成績が向上した 1)。しかし、手術
手技に熟練を要することや手術侵襲が大きいことに加え、
1978 年に体外受精が成功し、以後生殖補助医療として急
速に普及したため、この術式は普及しなかった。一方、
近年の腹腔鏡に関連する手術機器の進歩に伴い、卵管性
不妊手術の大部分が腹腔鏡下卵管形成術によって行われ
るようになった 2)。卵管形成術のうち、癒着剥離術、卵
管采形成術、卵管開口術が低侵襲手術である腹腔鏡下に
行われているが、卵管端々吻合術、卵管角吻合術、子宮
卵管吻合術は、腹腔鏡下手術が困難とされている。また、
低侵襲手術として腹腔鏡下手術とは別に、卵管鏡下卵管
形成術が 1996 年に開発され 2)、経腟的なアプローチにて
卵管内閉塞や卵管内癒着に対する疎通術として主に近位
部閉塞に対して施行されている。
卵管形成術に関して現時点では、遠位部病変に対して
は腹腔鏡下手術、近位部病変に対しては卵管鏡下卵管形
成術が一般的であると考えられるが、どちらにも対応で
きず、開腹術によるマイクロサージェリーを第一選択に
せざるを得ない症例もあり得る。しかし、開腹術による
マイクロサージェリーは侵襲が大きいため、生殖補助医
療が普及した今日、この術式を希望する患者は多くはな
い。本症例でも、卵管鏡下卵管形成を希望して来院した
ものの腹腔鏡下手術までは許容できても、開腹術は希望
しなかった。そこで、患者に充分な説明をした上で、従
来は卵管端々吻合術が顕微鏡を用いない開腹術で行われ
ていたことを応用し、今回腹腔鏡下に端々吻合術を行っ
た。
技術的に工夫した点は、カテーテルを卵管内に挿入し
つつ縫合したことである。これは開腹術でも行うことだ
が、縫合する面がずれないために行う工夫で、マイクロ
サージェリーでは不要とされる。そのため卵管内上皮保
護の観点から、縫合後すぐにカテーテルは抜去した。問
題点は、糸の太さである。使用する糸は細ければ細い程
よいとされ、マイクロサージェリーでは、専用の持針器
を用いて7-0以上の細い糸が使用されている 1)。腹腔鏡下
に視野を拡大することにより、細い糸を使用することが
理論的に可能であったが、当院の持針器の制限から今回
は4-0バイクリルを使用した。術後の速やかな妊孕性の回
復からも、術後の卵管疎通性という点では、改善された
と判断する。卵管妊娠となったため切除した卵管を病理
学的に検査したが、摘出した卵管の上皮近傍の縫合糸の
周囲には軽微な異物反応があるのみで、炎症・膿瘍形成
を認めなかった。今後はより細い糸を使用することで、
卵管形成術後の妊娠成績の向上を期待している。一般的
に開腹術に比べ、腹腔鏡下手術は術後の癒着が少ないと
いわれているが、そのことは卵管形成術後の卵管機能に
も有利と考えられるので、腹腔鏡下卵管端々吻合術の技
術的な確立は今後の課題であるといえる。
術中に疎通性を認めても術後しばらくして再閉塞する
可能性、及び術後の子宮外妊娠の可能性に関して、術前
に充分説明しておくことは必要と考える。末岡らによる
と卵管鏡下卵管形成術の術中疎通率は約97.5%と高いが、
約 10 %が再閉塞するとのことで 3)、端々吻合術について
も同様再閉塞の可能性はあり得る。また、長田らの報告
によると、開腹による卵管端々吻合術の有効率は 89.8 %
で妊娠率が 62.7 %と良好だが、高い子宮外妊娠の確率を
示している 2)。
閉塞部位とそれに対するアプローチについてだが、近
位部に対しては卵管鏡下卵管形成術、采部や腹腔内癒着
に対しては腹腔鏡下卵管形成術とする報告は数多く見受
けられる 4)。卵管鏡下卵管形成術は最も低侵襲であるも
のの、子宮から 10 cm 程の距離であれば治療可能である
が、本症例のような 10 cm より遠位での閉塞に関しては
経腟操作で対応できない。そのような症例に対する、経
腹的な経卵管采卵管鏡下卵管形成術も報告されている 5)。
しかし、卵管鏡下卵管形成術は細かい縫合を必要としな
い一方、新たな技術的熟練を要する手法である。今後は
卵管端々吻合術と平行して検討していきたい。
結 語
卵管通過障害のため腹腔鏡下に観察し、膨大部の閉塞
を認めたため、腹腔鏡下に卵管端々吻合術を施行し、妊
娠した症例を経験した。
卵管性不妊に対する治療として ART が固定化される傾
向があるなか、腹腔鏡下卵管形成術は腹腔鏡診断に引き
続き行える点で、臨床的意義が大きいと考えられる。し
かし、卵管端々吻合術を含め、本症例のような卵管膨大
部閉塞に対する術式・手技等に関し、更なる検討が必要
と感じられた。
文 献
1) 飯塚理八、川上征治:不妊手術、東京:金原出版株式
会社 1988:35−46
2) 長田尚夫:卵管形成術、産婦人科の実際 2001 ; 50
(11):1599−1605
3) 末岡浩:卵管通過障害−形成手術が ART か−、医学
のあゆみ 2003 ; 204(13):997−1002
4) 浅井光興、野口昌良:卵管疾患、−卵管性不妊症に対
するアプローチの選択−、産婦人科の実際 2004 ; 53
26
(84)
(11):1649−1654
5) 末岡浩、小澤伸晃、土屋慎一、松田紀子、田中宏明、
久慈直昭、吉村泰典:経卵管采卵管鏡下卵管形成
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
(TFFT)の有効性、日本受精着床学会雑誌 1999 ;
16:200−203
(H18. 8. 21受付)
平成19年1月(2007)
27 (85)
平成17年度 神奈川県産科婦人科医会 婦人科悪性腫瘍登録集計報告
A report of malignant tumors of gynecology in Kanagawa Prefecture(2005)
神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍対策部
Committee of malignant tumor of Kanagawa Medical Association
of Obstetrics and Gynecology
小野瀬 亮 Ryo ONOSE
雨宮 清 Kiyoshi AMEMIYA
和泉 滋 Shigeru IZUMI
今井 一夫 Kazuo IMAI
入江 宏 Hiroshi IRIE
木村 昭裕 Akihiro KIMURA
久布白兼行 Kaneyuki KUBUSHIRO
小西 英喜 Hideki KONISHI
小林 陽一 Yoichi KOBAYASHI
佐治 晴哉 Haruya SAJI
角田 新平 Shinpei TSUNODA
宮城 悦子 Etsuko MIYAGI
村松 俊成 Toshinari MURAMATU
横山 和彦 Kazuhiko YOKOYAMA
後藤 忠雄 Tadao GOTO
中山 裕樹 Hiroki NAKAYAMA
八十島唯一 Tadaichi YASOSHIMA
要 旨
はじめに
平成17年度の神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍
登録の集計結果を報告する。回答率は総施設数425に対し
て255施設(60.0%)であった。施設別では、病院60.4%、
診療所59.9%であった。県下で治療された婦人科悪性腫瘍
総数は2063例で子宮頸癌832例(扁平上皮癌728例、腺癌
系104例)
(40.3%)
、子宮体癌582例(28.2%)
、卵巣癌573
例(27.8%)
、その他の悪性腫瘍76例(3.7%)であった。
治療数の10年間の年次推移では平成17年度症例数は平成8
年度症例数に比べ子宮頸癌で 1.03 倍、子宮体癌で 1.6 倍、
卵巣癌で1.3倍に増加していた。平成16年度症例数と比べ
ると症例数は223例減少しその大部分は子宮頸癌0・Ⅰa 期、
子宮体癌Ⅰ期症例数の減少によるものであった。0期を除
く子宮頸癌・体癌比率の年次推移を検討すると平成8年度
では1.37:1であったが、平成17年度では0.84:1で、平
成 16 年度に続いて子宮体癌数が子宮頸癌数を上回った。
日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の平成15年度の子
宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の全国集計と神奈川県の平成15
年度の集計結果と比較検討すると、神奈川県では子宮頸癌
の比率が少なく、卵巣癌の比率が多いことが示唆された。
神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍対策部では、
会員各位の協力を得て、平成 4 年度より婦人科悪性腫瘍
登録を行っている。この程、平成 17 年度(1 月∼ 12 月を
年度とする)の集計結果がまとまったので報告する。
Key word:婦人科悪性腫瘍登録 神奈川県産科婦人科医会
日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告
1. 回答率(表1)
平成 17 年度の回答率は総施設数 425 に対して 255 施設、
60.0%であった。12年度 1)、13年度 2)、14年度 3)、15年度 4)、
16 年度 5)の回答率は 53.3 %、55.5 %、56.7 %、55.2 %、
58.4 %であり例年通りの回答率であると思われた。施設
方 法
悪性腫瘍の登録の方法は、登録用紙を平成 18 年 1 月に
県内各医療施設の産婦人科代表者に郵送し、回答を依頼
した。平成 18 年 6 月末日までに回答された各施設の結果
を集計し以下の項目につき検討した。
1. 回答率
2. 治療症例数
3. 子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の 10 年間の治療症例数
年次推移
4. 子宮頸癌と子宮体癌の症例数の比率とその年次推移、
全国集計との比較
5. 平成15年度登録症例の全国集計との比較
6. 施設別の治療例数
結果および考察
28
(86)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
別の回答率は、病院が60.4%、診療所が59.9%であった。
病院では医育機関、国公立病院、公的病院、その他の病
院の回答率がそれぞれ91.7%、68.4%、70.0%、44.0%で
あり会員の協力に感謝すると共にさらなる回答率の向上
に期待したい。平成 8 ∼ 17 年度の施設別の報告書回答率
の年次推移を示す。
(図1)
2. 治療症例数
平成17年度に県下で治療された婦人科悪性腫瘍の総数
は 2063 例であった。その内訳は子宮頸癌 832 例(扁平上
皮癌 728 例、腺癌系 104 例)(40.3 %)、子宮体癌 582 例
(28.2 %)、卵巣癌 573 例(27.8 %)、その他の悪性腫瘍 76
例(3.7%)であった。
各疾患の臨床進行期分類別の頻度を検討した。子宮頸
癌、子宮体癌、卵巣癌の臨床進行期別症例数を表 2 に示
す。
進行癌症例が決して少なくないことも特徴であった。
3)卵巣癌
卵 巣 癌 で は 境 界 悪 性 9 4 例 ( 1 6 . 4 % )、 Ⅰ 期 1 9 2 例
(33.5 %)、Ⅱ期 43 例(7.5 %)、Ⅲ期 176 例(30.7 %)、Ⅳ
期 60 例(10.5 %)でありⅠ期症例が最も多く、ついでⅢ
期症例が多かった。
4)その他の悪性腫瘍
その他の悪性腫瘍は76例報告があり主な内訳は外陰癌
20例、子宮肉腫17例、転移性腫瘍14例、腟癌10例、卵管
癌 6 例であった。図 2 に平成 13 ∼ 17 年度のその他の悪性
腫瘍の疾患別年次推移を示す。
2)子宮体癌
子宮体癌はⅠ期が338例、58.1%と過半数を超えている
ものの、Ⅲ期とⅣ期症例を合わせると164例(28.2%)と
3. 子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の 10 年間の治療例数年次
推移
子宮頸癌症例数の平成8∼17年度の年次推移を図3に示
す。平成 8 年度と比べると子宮頸癌症例数は 802 例から
832例と1.03倍になっていた。平成13∼16年度の4年間は
連続して900例を超えていたが、平成16年度の988例より
平成 17 年度は 832 例と 156 例減少した。これは 0 期とⅠa
期の症例減少 152 例(平成 16 年度: 626 例、平成 17 年
度:474例)が主体であると思われた。
子宮体癌症例数の年次推移を図 4 に示す。子宮体癌は
全般に増加傾向であり、平成8年度と比べると371例から
582 例と 1.6 倍になっていた。平成 16 年度の 625 例からは
43例減少し、Ⅰ期症例数減少34例(平成16年度:372例、
平成17年度:338例)が主体であると思われた。
表1 報告書回答率(平成17年度)
表2 悪性腫瘍臨床進行期分類(平成17年度)
図1 報告書回答率(平成8年∼17年度)
図2 その他の悪性腫瘍の内訳(平成13年∼17年度)
1)子宮頸癌
子宮頸癌全体では 0 期 394 例(47.3 %)、Ⅰa 期 80 例
(9.6 %)であり初期癌で過半数をこえていた。組織型別
に見ると扁平上皮癌では0 期が372例と51.1%を占めるの
に対し、腺癌系では 0 期は 22 例と 21.2 %にとどまり子宮
頸部腺癌を初期癌の内に発見することの困難さを表して
いると思われた。
平成19年1月(2007)
卵巣癌症例数の年次推移を図 5 に示す。平成 8 年度は
430例であり、その後年度によりややばらつきがあるもの
の、平成9年度より増加傾向を示し平成17年度では573例
と平成 8 年度の約 1.3 倍の症例数となっており、この 5 年
間は連続して500例を超えていた。
4. 子宮頸癌と子宮体癌の症例数の比較とその年次推移、
全国集計との比較
子宮頸癌・体癌比率(頸癌と体癌のいずれも 0 期を除
く)の年次推移を図6に示す。頸癌:体癌は平成8年では
1.37 : 1 であったが、経年的にこの比は近づき、平成 16
年では 0 期症例を除けば本調査開始後初めて子宮体癌数
が子宮頸癌数を上回った 5)。平成 17 年もこの傾向は続き
頸癌:体癌は0.84:1であった。この比率を経年的に日本
産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告の1999年度(平成
図3 子宮頸癌治療数年次推移(平成8年∼17年度)
29 (87)
8)、
11年)6) 7)、2000年度(平成12年)
、2001年度(平成13年)
9)
10)
2002年度(平成14年) 、2003年度(平成15年) と比較
してみた。
(図7)平成15年症例では、頸癌:体癌は神奈
川県登録では1.03:1、日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委
員会報告では、1.21:1となっており若干ではあるがいず
れの年度も子宮癌に対する子宮体癌の割合は全国比率よ
り高いことがうかがえた。
5. 平成15年度登録症例の全国集計との比較
日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告の最新の
2003年(平成15年度)の子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の
全国 247 登録機関の集計 10)と神奈川県産婦人科医会悪性
腫瘍対策部の2003年(平成15年度)当時の集計結果 4)を
比較検討してみた。以下、神奈川:全国集計の順に記載
する。子宮頸癌 944 例: 8395 例、子宮体癌 537 例: 4046
例、卵巣癌581例:3393例であり、この3腫瘍を合計する
と2062例:15834例となった。各腫瘍のこの3腫瘍におけ
る比率を見ると子宮頸癌 45.8 %: 53.0 %、子宮体癌
26.0%:25.6%、卵巣癌28.2%:21.4%であり全国集計と
比較すると神奈川県では子宮頸癌の比率がやや少なく、
卵巣癌の比率がやや多い傾向が示唆された。
(図8)
6. 施設別の治療例数
治療例数の多い施設上位 11 病院を表 3 に示す。医育機
関 6 施設(北里大学附属病院、聖マリアンナ医大附属病
院、横浜市大附属病院、東海大学附属病院、昭和大学附
属藤が丘病院、東海大学附属大磯病院)
、国公立病院3施
図6 子宮頸癌・体癌比率年次推移(平成8年∼17年度)
図4 子宮体癌治療数年次推移(平成8年∼17年度)
図5 卵巣癌治療数年次推移(平成8年∼17年度)
図7 神奈川県と全国集計
(日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告)との比較
−頸癌:体癌(平成11年∼15年度)
(0期症例除く)
30
(88)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
今回の登録に協力いただいた会員各位の方々に深く感
謝いたします。なお本論文の主旨は第 374 回日本産科婦
人科学会神奈川地方部会で報告した。
文 献
図8 平成15年度
(2003年)
における神奈川県と全国集計
(日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告)との比較
表3 治療数の多い施設 平成17年度
設(県立がんセンター、川崎市立川崎病院、横浜市立市
民病院)
、公的病院2施設(けいゆう病院、横浜労災病院)
であった。この 11 施設の治療例数は 1271 例と全体の
61.6%を占めていた。
おわりに
報告書回答率は 60.0 %であり、これはここ数年、50 ∼
60%とほぼ横ばいである。医育機関は12施設であるが回
答率は 91.7 %であった。今年度は国公立病院、公的病院
の回答率がそれぞれ 68.4 %、70.0 %であった。会員の協
力に感謝すると共にさらなる回答率の向上に期待したい。
症例数は10年間の推移をみると増加傾向であり、平成
8年度症例数と比べると、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌は
各々1.03倍、1.6倍、1.3倍の症例数であった。しかし、平
成16年度症例数 5)と比べると全体の症例数では2286例か
ら2063例と223例減少し、その大部分は子宮頸癌 0 期・Ⅰa
期、子宮体癌Ⅰ期症例数の減少であった。子宮がん検診
数の関連を含め今後引き続き調査の必要があると思われ
る。
このアンケートは神奈川県下の悪性腫瘍の動態を把握
する唯一の機会であるため悪性腫瘍対策部としては、今
後も引き続き継続していきたいと考えている。このデー
タが会員の方々にとって神奈川県の婦人科腫瘍の動態を
把握されることに役立てば幸いである。
1) 加藤久盛、雨宮清、新井正秀、今井一夫、加藤良樹、
木村昭裕、小西英喜、木挽貢慈、斉藤馨、清水篤、田
島敏久、仲沢経夫、中山裕樹、秦宏樹、藤川浩、村上
優、柳沢和孝、長田久文、高橋亨正、住吉好雄:平成
12 年度神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍登録
集計報告、日産婦神奈川会誌、2002 ; 38:132−0136
2) 加藤久盛、雨宮清、新井正秀、今井一夫、小野瀬亮、
木村昭裕、小西英喜、木挽貢慈、斉藤馨、田島敏久、
仲沢経夫、藤川浩、村上優、柳沢和孝、高橋亨正、住
吉好雄:平成 13 年度神奈川県産科婦人科医会婦人科
悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会誌、2003 ;
39:117−121
3) 小野瀬亮、雨宮清、新井正秀、今井一夫、木村昭裕、
小西英喜、木挽貢慈、斉藤馨、田島敏久、中山裕樹、
村上優、柳澤和孝、横山和彦、後藤忠雄、高橋亨正、
八十島唯一:平成 14 年度神奈川県産科婦人科医会婦
人科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会誌、2004
; 41:37−41
4) 小野瀬亮、雨宮清、新井正秀、今井一夫、木村昭裕、
小西英喜、木挽貢慈、斉藤馨、田島敏久、中山裕樹、
宮城悦子、村上優、柳澤和孝、横山和彦、高橋亨正、
八十島唯一:平成 15 年度神奈川県産科婦人科医会婦
人科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会誌、2005
; 42:6−10
5) 小野瀬亮、雨宮清、新井正秀、和泉滋、今井一夫、入
江宏、木村昭裕、草場徳雄、小西英喜、小林陽一、木
挽貢慈、斉藤馨、田島敏久、角田新平、宮城悦子、村
松俊成、柳澤和孝、横山和彦、後藤忠雄、高橋亨正、
中山裕樹、八十島唯一:平成 16 年度神奈川県産科婦
人科医会婦人科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川
会誌、2006 ; 42:148−151
6) 関谷宗英:婦人科腫瘍委員会報告〔1999 年度患者年
報〕
、日産婦誌、2002 ; 54:697−793
7) 関谷宗英:婦人科腫瘍委員会報告〔1999 年度患者年
報修正版〕
、日産婦誌、2002 ; 54:1527−1572
8) 金澤浩二:婦人科腫瘍委員会報告〔2000 年度患者年
報〕
〔2001年度患者年報〕
、日産婦誌、2004 ; 56:1−
115
9) 金澤浩二:婦人科腫瘍委員会報告〔2002 年度患者年
報〕
、日産婦誌、2005 ; 57:990−1046
10) 稲葉憲之:婦人科腫瘍委員会報告〔2003 年度患者年
報〕
、日産婦誌、2005 ; 57:1711−1767
(H18. 8. 21受付)
平成19年1月(2007)
31 (89)
分娩直後に呼吸苦を認め、縦隔気腫と診断された1例
A case report of mediastinal emphysema with dyspnea following delivery
済生会神奈川県病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Saiseikai Kanagawaken
Hospital
宮崎 薫 Kaoru MIYAZAKI
中林 章 Akira NAKABAYASHI
秋葉 靖雄 Yasuo AKIBA
小関みづほ Mizuho KOSEKI
渡辺 豊治 Toyoharu WATANABE
小西 康博 Yasuhiro KONISHI
要 旨
縦隔気腫は、縦隔内に空気が貯留した状態で、予後は一
般的に良好とされる。妊娠中、分娩中及び分娩後に発生す
るケースはまれとされている。臨床症状は胸痛、呼吸苦等
である。分娩後の呼吸苦・胸痛は肺塞栓症、羊水塞栓症等
重篤な疾患でも見られる症状であり、鑑別をふまえ早期の
診断・治療が重要である。今回、分娩後に稀とされる縦隔
気腫を経験したので報告し、その診断、管理につき考察す
る。
患者は26歳、1経妊0経産。38週3日に破水、翌日陣発
し経腟分娩となった。児娩出約3時間後に呼吸苦を自覚し、
前胸部触診にて握雪感を認めた。SpO2 は96%で明らかな
低下なく、胸部 Xp にて大動脈左縁に線状透亮像を認めた
ことで縦隔気腫の疑いを強めた。更に、胸部 CT 検査にて
縦隔上部∼下部、前胸部皮下に air を認めたため、縦隔気
腫、皮下気腫と診断した。気管支鏡検査にて明らかな気道
損傷を認めなかったため、呼吸器外科医の指導のもと、抗
生剤の予防的投与を行った。分娩後2日目には症状軽快し、
胸部 Xp 所見も改善した。
本症例では触診・聴診、SpO2、胸部 Xp にて縦隔気腫を
疑い、胸部 CT にて確定診断に至った。触診・聴診、SpO2、
胸部 Xp は簡便かつ有用な検査であると思われた。
Key word:縦隔気腫、分娩後呼吸苦、皮下気腫
緒 言
分娩後の呼吸苦・胸痛は、肺塞栓症、羊水塞栓症等重
篤な疾患で見られる症状であり、鑑別をふまえ早期の診
断・治療が重要である。今回、分娩直後に呼吸苦を認め
た縦隔気腫の 1 例を経験したので報告し、その診断、管
理につき文献的考察を加え報告する。
症 例
患者は26歳、1経妊0経産。既往歴、家族歴、喫煙歴に
特記事項はなし。妊娠経過は順調であった。38 週 3 日 22
時 30 分に破水、翌日 0 時 30 分に陣発し 4 時 45 分に子宮口
全開大、6 時 10 分経腟分娩となった。児は 2820 g の男児
で Apgar score は1分後9点で5分後9点であった。分娩所
要時間5時間47分(Ⅰ期4時間15分、Ⅱ期1時間25分、Ⅲ
期7分、努責を開始してから1時間25分で分娩)で分娩経
過に異常を認めなかった。児娩出約 3 時間後に呼吸苦を
自覚したため、直ちに診察したところ、呼吸音は正常で
肺雑音を認めなかったが、前胸部触診にて握雪感を認め
た。尚、SpO2 は96%であった。胸部 Xp にて大動脈左縁
に線状透亮像を認め、縦隔気腫が疑われた(図 1)。そこ
で緊急胸部 CT 検査を施行したところ、縦隔上部∼下部、
前胸部皮下に air を認めたため(図2)
、縦隔気腫、皮下気
腫と診断した。呼吸器外科により当日に気管支鏡検査を
施行、明らかな気道損傷を認めなかった。血液検査では
WBC 11130、CRP 6.3 の他は、特記すべき異常値を認めな
かった。抗生剤(CEZ 2 g /day)の予防的投与を行うこ
とで、分娩後2日目には症状軽快し、胸部 Xp 所見も改善
した(図3)
。
考 察
縦隔気腫とは、縦隔内に空気が貯留した状態のことを
指し、特発性、症候性、外傷性、その他に分類される 1) ∼ 4)。
本症例は基礎疾患のないものに生じる特発性縦隔気腫で
ある。特発性縦隔気腫は原因不明だが、肺胞内圧上昇や
肺胞の破裂により肺間質に空気が漏れ、肺胸膜下に沿っ
て肺門、縦隔、皮下へと空気が漏出する事により発症す
る 2)。外傷性縦隔気腫は事故による肋骨骨折や、医療行
為による気管支損傷が原因とされる。又、症候性縦隔気
腫は肺炎など呼吸器感染症の合併症として発症するとさ
れている。若年者に多く、妊娠中は約2000人∼100000人
に 1 人の割合で発症するとされている 5) ∼ 8)。臨床症状は
胸痛、呼吸苦、頚部圧迫感等であり、予後は通常良好で、
安静にしていれば快方に向かうことが多い。又、抗生剤
の予防的投与も行われる。気管に損傷がある場合には手
術が必要となる。
鑑別診断は、肺塞栓症、羊水塞栓症のほか、肺水腫、
気胸、無気肺等がある。その中で、迅速かつ的確な鑑別
が必要なのは特に肺塞栓症と羊水塞栓症である。縦隔気
32
(90)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
図1 分娩当日、呼吸苦を認めた時点での胸部レントゲン
大動脈左縁に透亮像あり。
図3 分娩2日目の胸部レントゲン写真
大動脈左縁の透亮像は改善している。
表1 縦隔気腫、肺塞栓症、羊水塞栓症の鑑別点
縦隔気腫
肺塞栓症
羊水塞栓症
症 状
胸痛、呼吸困難、
頚部圧迫感、嚥下困難
突発性呼吸困難、
突発性胸痛、咳嗽
突発性呼吸困難、
突発性胸痛、DIC
胸部Xp
大動脈左縁の air 像、
横隔膜の明瞭化
肺動脈影の拡張、
閉塞血管領域で肺野
血管影の減少
肺動脈内造影欠損、
中枢側の肺動脈拡大、
肺動脈の急激な狭小化
胸部CT 縦隔内の air 像
SpO2
>=95% ※
肺血栓塞栓症と同様
肺血栓塞栓症と同様
<95%
<95%
※軽症例の場合。重症例では低下するとされる。
図2 胸部CT
縦隔上部∼心臓周囲∼縦隔下部、及び前胸部皮下に air 像を認める。
腫、肺塞栓症、羊水塞栓症の鑑別点を表 1 に示した。レ
ントゲン、CT の画像所見は縦隔気腫と肺塞栓症とでは大
きく異なる。縦隔気腫では胸部レントゲンで大動脈左縁に
空気による透亮像を認め、CT で縦隔内の気腫像を認める
ことが特徴である。それに対し、肺塞栓症では胸部レント
ゲンで肺動脈影の拡張、閉塞血管領域で肺野血管影の減少
を認め、CT で肺動脈内造影欠損、中枢側の肺動脈拡大、
肺動脈の急激な狭小化を認めることが特徴である 9) 10)。ま
た、特発性縦隔気腫では SpO2 が 95 %以下に低下するこ
とは稀だが、肺塞栓症では低酸素血症が著明で、一般的
に SpO2 は95%以下となる。
本症例では、呼吸困難を認めたものの、明らかな SpO2
低下や肺雑音を認めず、触診にて握雪感、胸部レントゲ
ンで大動脈左縁に透亮像を認めたため、まず縦隔気腫を
疑い、CT で縦隔内の気腫像を認めたため、確定診断に至
った。気管支鏡にて明らかな気道損傷は同定できなかっ
たが、同部からの細菌感染により縦隔洞炎を合併した場
合には致死的となりうるので、抗生剤の予防的投与を行
った。原因は不明であるが、本疾患は再発例も報告され
ており 11)、第 2 子出産にあたっては十分なインフォーム
ドコンセントを行い、努責をかける時間を最低限にする
必要があると考えられる。
結 語
分娩直後に発生した縦隔気腫を経験した。縦隔気腫で
は呼吸苦、胸痛を訴えることが多いが、類似の症状を呈
する疾患として、肺塞栓症や羊水塞栓症等があり、的確
な確定診断が必要である。本症例では触診・聴診、SpO2、
胸部 Xp にて縦隔気腫を疑い、胸部 CT にて診断に至った。
触診・聴診、SpO2、胸部 Xp は簡便かつ有用な検査であ
り、呼吸苦を訴える患者に対しまず施行するべきである
と思われた。
平成19年1月(2007)
33 (91)
文 献
1) Hamman L : Spontaneous mediastinal emphysema. Bull
John Hopkins Hosp 1939 ; 64:1−21
2) Hamman L:Mediastinal emphysema. JAMA 1945 ; 128:
1−6
3) 笹橋望、安藤史隆、岡本文雄、山中一朗、花田正治、
廣瀬圭一、森島学、坂崎尚徳、鈴木嗣敏、槇野征一郎、
谷和光、米津精文:妊娠中気管支喘息発作を誘因に発
症した縦隔気腫の1例、日胸 2000 ; 59:811−813
4) 斉藤正博、伊東宗毅、高木栄美子、水野暁子、村山敬
彦、馬場一憲、竹田省、内田淳子、照井克生:分娩時
に発症した特発性縦隔気腫の1例、産科と婦人科 2004
; 71:961−965
5) Sparacino ML, Mackay PE:Subcutaneous emphysema and
pneumomediastinum complicating labor in a twin pregnancy.
Journal of AOA 89:185−187
6) Kosmak GW:Subcutaneous emphysema following labor,
letter. Surg Gynecol Obstet 1925 ; 40:434
7) Kobak AJ, Abrams RH : Pregnancy complicated by
massive subcutaneous emphysema of mediastinal origin
(Hamman's syndrome). Am J Obstet Gynecol 1949 ; 47:
789−792
8) Karson EM, Saltzman D, Davis MR:Pneumomediastinum
in pregnancy : Two case reports and a review of the
literature, pathophysiology, and management. Obstet
Gynecol 1984 ; 64:39S−43S
9) 岡田修:急性肺血栓塞栓症、臨床医 2001 ; 27 :
2498−2503
10) 八重樫弘信、小泉知展:肺循環障害(肺水腫、肺高血
圧症、肺血栓・塞栓症)、診断と治療 2004 ; 92 :
661−666
11) Hirose T, Shikama Y, Sano H, Horichi N, Mochizuki T,
Fukaura A, Sugihara S, Ohmori T, Nakajima H, Adachi M:
Three patients with spontaneous pneumomediastinum,
including one in whom pneumomediastinum recurred. Nihon
Kyobu Shikkan Gakkai Zasshi 1995 ; 33:1293−1296
(H18. 8. 22受付)
34
(92)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
常位胎盤早期剥離による産科的 DIC から脳出血を起こした1例
A case of post-gestational cerebral hemorrhage as a result of disseminated intravascular coagulation
(DIC)complicated with abruptio placentae.
国際親善総合病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, Kokusai Shinzen
Hospital
王 恒伊 Tsunei OH
衛藤 志保 Shiho ETO
的野 博 Hiroshi MATONO
飯田 信 Makoto IIDA
多和田哲雄 Tetsuo TAWADA
概 要
症 例
常位胎盤早期剥離は、母児共に対して重篤な障害をもた
らす危険が高い代表的産科救急疾患である。26歳、初産婦、
切迫早産管理入院中に常位胎盤早期剥離を発症し、比較的
早期に緊急腹式帝王切開術を施行し、治療を開始できたに
もかかわらず重症な DIC を併発した。術後腹直筋筋膜下に
血腫が形成され、大量出血により血液中の凝固因子が枯渇
し、これが更なる出血を招くという悪循環へ陥った。最終
的に血管塞栓術及び開腹止血術により止血できたが、原疾
患による血管内皮細胞の障害の存在に加え、DIC 治療中の
大量輸血、さらに血圧変動が荷担し、脳血管の破綻から脳
出血を引き起こし、発症より10病日目に死亡した。
常位胎盤早期剥離に妊娠高血圧症候群を合併する率は30
∼ 40 %であるが、その発症を予知することはできない。
本症例は妊娠中毒症の範疇に含まれていた浮腫のみを認
め、高血圧、蛋白尿は認めず妊娠高血圧症候群の診断基準
には当てはまらない。しかし、低蛋白血症や血管透過性亢
進という病態は存在しており、それに常位胎盤早期剥離や
DIC を発症したため輸液過多が加わった。心負荷の増大か
ら心不全や肺毛細血管透過性亢進による肺水腫の発症に注
意すると共に、脳出血のリスクも上昇することを常に念頭
に入れ管理を行うことが大切だと思われた。
【患者】 26歳 0回経妊0回経産
【家族歴】 特記事項無し
【既往歴】 神経性食思不振症(思春期)
【月経癧】 周期30日型 順
【現病歴】 自然妊娠、妊娠初期から近医で妊婦検診
施行していたが、妊娠16∼19週に重症妊娠悪阻のため当
院へ入退院を繰り返していた。妊娠 28 週 2 日、左腰痛主
訴に救急車搬送。来院時苦悶様で、明らかな原因不明だ
が周期的な子宮収縮を認めたため、塩酸リトドリンを投
与し疼痛軽減、切迫早産の診断で管理入院となる。
【現症】 身長150 cm 体重36 kg(非妊時 38 kg)BMI
16 体温 36.8 ℃ 血圧 100 / 66 mmHg 脈拍 90 回/分
EFBW 882 g 骨盤位 NST:reactive pattern 周期的な子宮
収縮あり
【検査所見】 WBC 6830×102 /μl Hb 10.8 g/dl Ht
33.1% Plt 39.4×104 /μl TP 5.6 g/dl Alb 2.6 g/dl AST
19 IU/l ALT 29 IU / l Glu 63 mg /dl Na 137 mEq / l
K 4.3 mEq//l Cl 103 mEq/l CRP 0.2 mg/dl 尿比重
1.019 尿蛋白(-) 尿糖(-) 尿ケトン(-)
【入院後経過】 妊娠31週5日入院後3週間で3 kg の体
重増加及び下腿浮腫を認めた。急激な体重増加及び浮腫
の増悪に関して、preeclampsia を念頭に定期的な検査を行
った。児の成長は正常範囲内であり Non stress test では
reactive pattern を示した。妊娠 31 週 5 日の児推定体重は
1457 g、胎児血流モニタリング上も異常所見はなかった。
血液生化学検査上は持続した低アルブミン血症及び急激
な尿酸値の上昇(8.9 mg/dl)を認めたが、肝機能、腎機
能、凝固能の異常はなく、尿中蛋白陰性だった。経腹超
音波上腹水の存在は明らかではなく、胸部単純撮影上も
胸水の存在は認めなかった。発症前日に下肢静脈血栓超
音波スクリーニングを行ったが異常所見は認められなか
った。
妊娠32週3日早朝、突然の約150 g の性器出血及び周期
的な子宮収縮出現。Non stress test 上 non-reactive pattern、
腹部軟、自発痛無し、経腹超音波上明らかな異常所見認
めないが、胎盤に一致した部位に圧痛あり、常位胎盤早
Key word:常位胎盤早期剥離、DIC、脳出血
はじめに
常位胎盤早期剥離は、母児共に対して重篤な障害をも
たらす危険が高い代表的産科救急疾患で、発症頻度は0.3
∼ 0.9 % 1)といわれている。発症機序は未だ解明されず、
発症を予知、予防することは不可能である。そのうち約5
割 1)が産科 DIC を併発し、重症例での母体死亡率は 6 ∼
10% 1)ともいわれている。
今回我々は切迫早産管理入院中に常位胎盤早期剥離を
発症し、比較的早期に治療を開始できたにもかかわらず、
難治性の産科 DIC に陥り、最終的に脳出血を引き起こし
母体死亡に至った症例を経験したので報告する。
平成19年1月(2007)
35 (93)
期剥離を念頭に塩酸リトドリン投与を中止し、緊急手術
準備開始した。経時的な観察では胎盤後壁に僅かである
が血腫像が認められ始めたため常位胎盤早期剥離の診断
で発症より 1 時間 40 分後全身麻酔下に緊急腹式帝王切開
術施行。
【発症時検査所見】 WBC 7130×102 /μl Hb 10.1 g/dl
Ht 30.8% Plt 28.4×104 /μl TP 4.5 g/dl AST 15 IU/l
ALT 12 IU/l Glu 70 mg/dl BUN 15 mg/dl Cre 0.73
mg/dl Na 137 mEq/l K 4.3 mEq/l Cl 110 mEq/l
CRP 0.5 mg/dl PT 101% APTT 30.6 sec/26.5 sec
【術中所見】 開腹と同時に大量の腹水約 3000 ml 流
出。型のごとく腹式帝王切開術施行、1574 g 女児娩出
(Apgar score:6点/8点、臍帯動脈 pH:7.29 )し、胎盤
後壁約 1/3に血腫付着あり、子宮には Couvelaire Sign を
認めた。閉腹し抜管すると急に腹満著明となり呼吸困難
が出現、また、子宮口からの出血を認めたため、子宮縫
合部からの出血を疑い再開腹した。しかし、腹水貯留の
みで腹腔内出血なく、子宮収縮は良好、出血点は無く、
Douglas 窩にドレーン 1 本留置し閉腹、ICU へ入室した。
総手術時間:2時間3分、総出血量(羊水・腹水含む):
1508 g
●手術当日(ICU入室10:50∼)
【術後検査所見】 血圧 110 / 80 mmHg 心拍数 105
回/分 中心静脈圧 7 cmH2O 下顎呼吸(努力性呼吸)
動脈血液ガス(マスク O2 5 リットル):pH 7.29 pCO2 49
mmHg pO2 107 mmHg BE -3.0 mmol / l SaO2 93 %
WBC 18560 × 10 2 /μl Hb 7.4 g /dl Ht 22.7 % Plt
15.4×104 /μl TP 3.4 g/dl AST 17 IU/l ALT 6 IU/l
Glu 170 mg/dl BUN 14 mg/dl Cre 0.70 mg/dl Na 133
mEq/l K 6.0 mEq/l Cl 107 mEq/l CRP 0.4 mg/dl
PT 36 % APTT 67.9 sec/26.5 sec Fib < 50 mg/dl FDP
873 μg/ml D.D-dimer 111.3 μg/ml ATⅢ 27%
産科的 DIC スコア:17点
胸部単純写真所見:心胸郭比 50 % 肺野透過性亢進
肺門部陰影増強 胸水なし
ICU 入室後呼吸状態不良なため再挿管し、DIC 治療と
して赤血球濃厚液(MAP)の投与及びメシル酸ナファモ
スタット2 mg/kg/hr 持続点滴を開始してまもなく血圧
70/40 mmHg へ急激に低下しショック状態となった。右
内頚静脈より中心静脈カテーテル留置、アンチトロンビ
ンⅢ(AT-Ⅲ)製剤3000単位、ウリナスタチン15万単位、
コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム 500 mg 静注、
新鮮凍結血漿(FFP)
、濃厚血小板(PC)を投与。子宮収
縮は良好、セフメタゾンナトリウム 2 g /日投与を開始。
16:30 血圧140/100 mmHg 心拍数105回/分 中心
静脈圧6 cmH2O WBC 16500×102 /μl Hb 6.2 g/dl Ht
18.2% Plt 14.7×104/μl TP 2.8 g/dl 子宮収縮は良好
で性器出血はないが、輸血の効果がないため経腹超音波
施行したところ、創部右側腹直筋筋膜下に血腫を認めた。
経時的に確認し増大傾向があったが、DIC 状態での再開
腹はリスクが大きいため DIC 治療を最優先とした。(図
1:ICU 入室から術後1日目までの輸血投与量と Hb 値と
Plt 値の推移)
● 術後1日目
9 : 00 血圧 145 / 107 mmHg 心拍数 131 回/分 中
心静脈圧 9 cmH2O SaO2 100 % WBC 16700 × 102 /μl
Hb 11.3 g/dl Ht 32.2% Plt 16.9×104 /μl TP 4.4 g/dl
AST 17 IU/l ALT 11 IU/l BUN 18 mg/dl Cre 1.15
Hb (g/dl)
Plt (×10000/μl)
20
18
16
血
管
塞
栓
術
14
12
10
8
性器出血多量 824g
6
4
2
MAP4U
MAP18U
FFP10U
PC10U
FFP25U
PC20U
MAP4U
FFP10U
PC20U
新鮮血4U
PC10U
0
11:30
15:00
16:30
18:30
22:00
1:00
4:00
6:00
9:00
12:00
14:30
16:30
19:30
図1 ICU 入室から術後1日目までの輸血投与量とHb値と Plt 値の推移
23:45
6:00
36
(94)
図2 骨盤動脈造影
① 右腸腰動脈領域血管外漏出像 ② 左子宮動脈領域の血
管外漏出像 ③ 両側外側仙骨動脈領域の血管外漏出像
mg /dl Na 129 mEq / l K 5.3 mEq / l Cl 97 mEq / l
PT 88% APTT 36.6 sec/26.5 sec FDP 13μg/ml
発症から24時間後、凝固系の改善認め、出血源の同定
及び止血目的で血管塞栓術を施行。骨盤動脈造影では両
側子宮動脈の近位部は血管攣縮により著明に狭小化して
いた。また左子宮動脈、右腸腰動脈、両側仙骨動脈の領
域に造影剤の血管外漏出を認め、ゼラチンスポンジ細片
を用いて両側内腸骨動脈を塞栓した。
(図2:骨盤動脈造
影 ① 右腸腰動脈領域血管外漏出像 ② 左子宮動脈領域
の血管外漏出像 ③ 両側外側仙骨動脈領域の血管外漏出
像)
19:30 血圧 121/80 mmHg 心拍数 150回/分 中
心静脈圧 8 cmH2O SaO2 99 % WBC 17700 × 102 /μl
Hb 9.1 g/dl Ht 24.7% Plt 7.8×104 /μl TP 4.0 g/dl
塞栓術により出血部位は止血されたと考えられていた
が、23:00より弛緩出血による性器出血が始まった。血
圧 120 / 80 mmHg 心拍数 120 回/分 中心静脈圧 10
cmH2O SaO2 100% WBC 14000×102 /μl Hb 5.0 g/dl
Ht 14.0% Plt 6.4×104 /μl と著明なヘモグロビン値低下
のため、新鮮血及びオキシトシン 5 単位投与を開始した
が性器出血は持続し、明朝まで約 8 時間で計 1222 g とな
った(図1)
。
●術後2日目
6:00 血圧 131/96 mmHg 心拍数 135回/分 中心
静脈圧 10 cmH2O SaO2 100% WBC 13300×102 /μl Hb
5.9 g/dl Ht 16.6% Plt 6.4×104 /μl FDP 10μg/ml
性器出血が持続するため、塞栓されていた血管がショ
ックから離脱することにより拡張、再開通した可能性を
考慮し、再度動脈塞栓術を施行。血管造影上、両側外側
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
図3 骨盤動脈造影
①両側子宮動脈 ②両側外側仙骨動脈領域の血管外漏出像
図4 頭部CT像
仙骨動脈の再開通と血管外漏出像および両側子宮動脈の
再開通を認め、ゼラチンスポンジ細片を用いて両側内腸
骨動脈を塞栓した。
(図3 骨盤動脈造影 ① 両側子宮動脈
② 両側外側仙骨動脈領域の血管外漏出像)。その後、開
腹血腫除去術及び単純子宮全摘出術施行を施行した。
【術中所見】 腹直筋筋膜下∼恥骨後隙(Retzius 腔)
に血腫形成され、腹腔内出血約4000 ml 認めた。子宮は超
手拳大で収縮良好。子宮切開創部からの出血はなし。子
宮を摘出し、血腫の圧迫により拡張した右尿管を確認し
尿管ステント留置。後腹膜腔にも大量の血腫貯留あり
平成19年1月(2007)
37 (95)
oozing 続くも明らかな出血源は同定できず、5連ガーゼで
後腹膜腔を充填し、腹腔ドレーン 1 本、Retzius 腔及び腹
直筋筋膜下に各々ドレーン1本留置し閉腹。
【手術時間】 6時間23分【出血量】 8352 ml 【尿量】
4150 ml
【輸液・輸血】 MAP 20 U、FFP 34 U、PC 40 U、新鮮
血1210 g、PPF 500 ml、ハプトグロビン(HP)200 ml 輸
液 4060 ml
帰室後 18:00 血圧 140/90 mmHg、心拍数 75回/
分、中心静脈圧 18 cmH2O(Peep 8)SaO2 98%と状態は安
定したが、20 : 00 血圧 180 / 100 mmHg、心拍数 67
回/分、中心静脈圧 18 cmH2O と血圧上昇傾向にあるた
め輸液量を減らし、血圧 160 / 90 mmHg 台で安定した。
しかし、22 : 45 瞳孔不同、右対光反射消失。CT 上右
後頭頭頂葉に4 cm 大の血腫を認め、脳室へ穿破していた
(図4)
。開頭術のリスクは高く、0:06 穿頭血腫ドレナ
ージ術を施行し、抗脳浮腫薬の投与を継続したが効果は
無く、翌日の CT 上も改善認められず 16:00 両側瞳孔
散大を確認。臨床的脳死状態となった。なお術後より腹
部に挿入した各ドレーンからの出血、性器出血はほとん
ど認めず、再度腹腔内に血腫が形成されることはなかっ
た。血液データ上凝固系も改善され、すでに DIC からは
離脱していた。早剥の発症より10日目心停止となった。
考 察
常位胎盤早期剥離に妊娠高血圧症候群を合併する率は
30 ∼ 40 % 2)であるが、その発症を予知することはできな
い。本症例は妊娠中毒症の範疇に含まれていた浮腫のみ
を認め、高血圧、蛋白尿は認めず妊娠高血圧症候群の診
断基準には当てはまらない。日本妊娠高血圧学会による
と、浮腫は約30%の妊婦においてみられ、浮腫のみを発
症した妊婦の母児予後は正常妊婦と同等で、低出生体重
児の頻度、周産期死亡率もわずかであるが低いと言われ
ている。高血圧、蛋白尿を発症した妊婦では、発症して
いない妊婦に比し浮腫発生の頻度は高いが、浮腫の有無
は母児の予後には影響しないとしている。しかし、浮腫
は血管より漏出し間質に貯留した血漿であり、背景には
血管内皮細胞機能不全による血管透過性亢進の存在が疑
われる。
やせ(BMI 18以下)を伴う妊婦では、早産、児発育障
害のリスクが高いが、妊娠高血圧症候群の合併リスクを
低い 3)とする報告や、逆に80 kg 以上の女性と同等に発症
頻度が高くなる 4) 5)との報告もある。本症例は BMI 16 と
やせを伴い、妊娠経過中の体重増加も不良なため外来管
理中も定期的に肝機能及び血清総蛋白及びアルブミン値
を測定しており、常に血清総蛋白は 5.0 g /dl 前後、アル
ブミン値は2.6∼3.0 g/dlと低値を示していた。入院後の
急激な体重増加に関して、腎機能障害や胸水・腹水の存
在を疑ったが、検査上明らかではなく、持続した低アル
ブミン血症のため、血管内皮細胞障害による蛋白漏出の
開始を予測できなかった。浮腫及び大量の腹水の成因は、
低アルブミン血症による血漿浸透圧の低下や血管透過性
の亢進などが考えられる。
妊娠高血圧症候群における高尿酸血症の原因としては、
尿酸クリアランスの低下、胎盤などの組織破壊による尿
酸産生の増加であり、重症度と相関すると言われている。
しかし、母児の予後を予知するものではないため、高尿
酸値をターミネーションの指標としては使用できない 6) 7)
ことも指摘されている。本症例も、最終的に尿酸値の高
値(8.9 mg/dl)を認め、厳重な注意を要したが、検査上
明らかな腎機能異常はなく、胎児の発育や Non Stress Test
からもターミネーションの決断には至らなかった。
常位胎盤早期剥離は予後不良な産科救急疾患であり、
発症から4∼5時間以内の治療開始が予後改善のゴールデ
ンタイム 2)といわれている。本症例は入院管理中に発症
したため、比較的早急な対応ができたと思われる。しか
し、結果として重症な DIC を併発し、まず早急に各種輸
血により全身状態、出血傾向の改善をはからなければな
らず対応に苦慮した。大量出血により血液中の凝固因子
が枯渇し、これが更なる出血を招くという悪循環へ陥っ
た。DIC は常位胎盤早期剥離の 10 ∼ 50 % 2) 8)に発症し、
母体の予後を大きく左右する。DIC の発症は予知できる
のだろうか。明らかなのは剥離面積が大きく、胎盤後血
腫が大きいほど発症頻度が高いと言われている。しかし、
この評価は超音波検査に頼ることになり、発症初期や剥
離面が小さい場合には明瞭に描出できないことも少なく
ない。超音波検査で大きな胎盤後血腫を確認される場合
にはすでに病状は進行しているか、急激に進行している
と考えられる。
帝王切開術直後の急性呼吸障害に関して羊水塞栓の可
能性を検討した。解剖は同意を得られず、母体肺内への
胎児性分の流入の有無については検討できなかった。発
症直後、及び発症後 6 時間後の血清中の亜鉛コプロポル
フィリン(Zn-CPI)とシアリル TN 抗原(STN)について
検索したところ、発症直後の血清 Zn-CPI 値のみが 61.8
pmol/dl(正常値 1.6 pmol/dl以下 9) 10))と高値を示した。
しかし、これらは決して羊水塞栓症例においても必ずし
も相関するとはいえず、また、血管透過性を亢進する病
態においては Zn-CPI が高値を示す可能性が示唆されてい
るため、臨床症状を含めて判断した場合、本症例は羊水
塞栓症の診断には至らなかった。
最終的に予期せず脳出血を引き起こした。出血源とな
るような脳動静脈奇形や脳動脈瘤、腫瘍、もやもや病な
どの器質性病変の存在は否定できないが、原疾患による
血管内皮細胞の障害の存在に加え、DIC 治療中の大量輸
血、さらに血圧変動が荷担し、結果として脳血管の破綻
が生じたものと推測された。
まとめ
低蛋白血症や血管透過性亢進という病態に常位胎盤早
期剥離や DIC などを発症し輸液過多が加わることによ
り、心負荷の増大から心不全や肺毛細血管透過性亢進に
よる肺水腫が発症することは知られている。しかし、同
様に脳出血のリスクも共に上昇することを常に念頭に入
38
(96)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
れ管理を行うことが大切だと思われた。
謝 辞
患者さまのご冥福を心よりお祈りするとともに、症例
発表にご理解頂いたご家族の方々に深甚の感謝を致しま
す。
文 献
1) 石塚文平、井槌慎一郎:産科疾患の診断・治療・管
理;異常妊娠・常位胎盤早期剥離、日本産科婦人科学
会誌、2002 ; 54:N39−43
2) 吉松淳、宮川勇生:異常妊娠・合併症妊娠の管理、常
位胎盤早期剥離、産婦人科の実際、2003 ; 52:1857−
1863
3) 兵藤慎治、舛本明生、野田清史、森巍:やせをともな
う妊婦の周産期の問題点について、産婦人科の実際、
2002 ; 51:2277−2282
4) 山崎峰夫:妊娠高血圧症候群と肥満、やせ、産婦人科
の実際、2006 ; 55:1049−1057
5) 石井康夫、杉本充弘:肥満、やせ−妊娠中の合併症と
異常分娩、産婦人科の実際、2006 ; 55:1067−1072
6) 平野秀人、小川正樹、佐藤朗、田中俊誠:妊娠中毒症
例に臨床上必要な肝・腎機能検査の実際、周産期医学、
2003 ; 10:1251−1253
7) 三宅良明、山本樹生:二次性「続発性」高尿酸血症−
原因病態別考察−妊娠中毒症、日本臨床、2003 ; 61:
323−327
8) 佐藤昌司、湯本康夫:重篤な病態とその管理4)常位
胎盤早期剥離、産科と婦人科、2004 ; 4:463−468
9) 小林隆夫:羊水塞栓症、周産期医学、2001 ; 31 :
251−253
10) 小林隆夫:重篤な病態とその管理1)羊水塞栓症、産
科と婦人科、2004 ; 4:443−448
(H18. 8. 24受付)
平成19年1月(2007)
39 (97)
神奈川県内の産科医療機関における分娩取り扱い数調査結果と
将来の取り扱い可能数の推測 その1
A report on an investigation of the number of newborn babies delivered in
Kanagawa Prefecture:presen and future 1.
神奈川県産科婦人科医会医療対策部
Health Care Measures Department of Kanagawa Medical
Association of Obstetrics and Gynecology
小関 聡 Satoshi KOSEKI
塗山 百寛 Momohiro TOYAMA
福田 俊子 Toshiko FUKUDA
佐々木正則 Masanori SASAKI
小澤 陽 You OZAWA
小平 博 Hiroshi KODAIRA
入江 宏 Hiroshi IRIE
朝倉 啓文 Hirobumi ASAKURA
持丸 文雄 Fumio MOCHIMARU
平原 史樹 Fumiki HIRAHARA
東條龍太郎 Ryutaro TOUJYOU
八十島唯一 Tadaichi YASOSHIMA
要 旨
神奈川県内でも分娩取り扱いを中止する医療機関が相次
いでいる。県内で今後どれくらいの妊婦が産科医療機関で
分娩できなくなる可能性があるのか、具体的な数値を求め
て将来の分娩取り扱い状況を推測した。
対象は、平成14年1月∼17年7月に分娩を取扱った神奈
川県内の産科施設である。平成14年∼16年の3年間に各施
設が取り扱った分娩数を調査し、地区別、病院・診療所別
に各年毎に集計した。同時に今後の取り扱い方針を「5年
以内に中止」
、
「5∼10年以内に中止」
、
「10年以上継続予定」
の3通りのいずれかを尋ねた。それをもとに中止予定施設
の平成16年の実績分を差し引き、平成17年、22年、27年
における理論上の分娩取り扱い可能数を推定した。
分娩を取り扱う施設の99%に当たる183施設から回答が
得られた。これらが取り扱った分娩数は、平成14年70262
件、15年69835件、6年69862件であった。今後の取り扱い
計画をもとに算出した推定取り扱い可能数は、平成22年
では65468人(対H14年比93.2%、4794人減)
、27年では
59475人(対H14年比84.6%、10787人減)となった。これ
を補うには年間千人規模の分娩施設を平成27年までに11
施設整備する必要がある。またこの調査では約8000人の妊
婦が帰省などで県外で分娩していることも判明した。地方
の分娩事情がさらに深刻化すれば、今後県外への里帰りも
困難になる。事態打開のために、早急な具体策が必要であ
る。
目 的
全国的に産科医の数と分娩を取り扱う施設が減少して
いる。数年前に東北地方の中小都市の公立病院で始まっ
た産科病棟の閉鎖は全国に広がり、ついには都市部に押
し寄せて来た。医学部が 4 校ある神奈川県も例外ではな
く、入局者の減少による勤務医不足と高齢化による診療
所医師の引退による分娩取り扱い施設の閉鎖は、もはや
止めようもなく進行している。しかし、今後どれくらい
のペースで減少し、どのような状況になり、どのくらい
の人が困るのか具体的な数値は今までに報告されていな
い。そこで、神奈川県産科婦人科医会ではそのような状
況をより正確に把握するために、県内の分娩取り扱い施
設に対して、アンケート調査により年間分娩数の実態を
調査し、同時に将来の分娩取り扱い計画(今後も継続す
るか、中止を予定しているか)を尋ね、将来の分娩取り
扱い状況を推測した。
調査方法
1 調査時期 平成17年7月
2 対象 平成14年1月から平成17年7月までの間に分
娩を取り扱った施設184施設(この間に分娩取り扱い
中止した施設、この間新規に開業した施設を含む)
3 方法 郵送によるアンケート調査。分娩取り扱い
の有無に関しては、県内各地区医会を通じて別途調
査した。
4 調査内容 1)平成14年、15年、16年の3年間に、各施設が取り
扱った分娩数を質問し、年毎、地区毎、および病
院・診療所別に集計した。
2)今後の分娩取り扱い予定に関して、次の3つのい
ずれであるかを質問した。
イ)5年以内に中止(既に決まっていれば平成何年か)
40
(98)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
ロ)5∼10年以内に中止
ハ)現時点では10年以上継続の予定
3)1)と 2)をもとに、中止予定施設の平成 16 年実
績分を平成 16 年の各地域の合計から差し引き、
平成 17 年、22 年、27 年におけるその地区の理論
上の分娩取り扱い可能数を推定した(以下推定取
扱可能数と表す)
。
4)平成 14 年を 100 とした平成 17 年、22 年、27 年の
分娩取り扱い可能数の割合を求めた(対H14受入
増減割合と表す)
。
5)平成 14 年を基準にして平成 17 年、22 年、27 年に
理論上産科施設で産めなくなる数を示した(対H
14受入増減数)
。
なお、推測に当たっては以下の3つの条件で行った。
1)出生数は全国的には減少傾向にあり、届出数でみた
場合、神奈川県でも昭和48年の年間約13.4万人をピ
ークに以後減少に転じている。しかし、平成 2 年以
降は全国的な傾向とは異なり、微減に留まり年間 8
万人前後で推移している。今回の経産では今後も同
様の傾向が続くと仮定した。
2)平成 16 年以降の新規開設の場合で実績が不明の場
合は、取り扱い可能数に関する設問の回答をもとに
計算した。
3)予測値は、現時点での今後の分娩取り扱い予定を考
慮して計算したものであり、今後取り扱い中止を決
めたり、産科医、助産師不足で中止を余儀なくされ
たりするケースは想定していない。
表1 神奈川県総計
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
43206
43763
43593
42313
42358
42358
診療所計
27056
26072
26269
25557
23110
17117
合計
70262
69835
69862
67870
65468
59475
対 H14 受入増減割合
100%
99.4%
99.4%
96.6%
93.2%
84.6%
0
-427
-400
-2392
-4794
-10787
対 H14 受入増減数
(対H14受入増減割合は平成14年を基準とした受け入れ増減の割合を、対H14受入増減数は平成14年を基準として、理論上何
人の妊婦が産科施設の閉鎖により締め出されるかを推定したもの。単位は対 H14 受入増減割合を除き人。ゴチック体は報告に
基づく実際の数、斜体字は推定値である。以下の表も同様。
)
表2 県内病院合計
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
横浜
17947
18472
18297
18117
17852
17852
川崎
6721
6535
6452
6452
6452
6452
横須賀三浦
2393
2464
2541
1441
1801
1801
鎌倉
841
901
850
850
850
850
平塚
823
879
938
小田原、足柄
2374
2182
2126
938
2126
938
1476
938
1476
茅ヶ崎
1152
1311
1438
1438
1438
1438
座間、綾瀬、海老名
958
910
950
950
1550
1550
藤沢
435
437
422
422
422
422
1953
1740
1603
1603
1603
1603
528
619
619
619
619
619
0
0
0
0
0
0
相模原
4449
4659
4488
4488
4488
4488
大和
2632
2654
2834
2834
2834
2834
津久井
0
0
35
35
35
35
病院計
43206
43763
43593
42313
42358
42358
対 H14 受入増減割合
100%
101.3%
100.9%
97.9%
98.0%
98.0%
0
557
387
-893
-848
-848
秦野、中郡、伊勢原
厚木
逗子、葉山
対 H14 受入増減数
平成19年1月(2007)
41 (99)
結 果
平成 17 年 8 月末現在、調査対象期間中に分娩を取り扱
った 184 施設中 183 施設から回答が得られた。回答率は
99.4%であった。
1)神奈川県全体の取り扱い実績と推測
神奈川県内の 99.4 %の医療機関が取り扱った分娩数は
平成 14 年 70262 件、平成 15 年 69835 件(対 H14 年比較
99.4%、427人減)
、平成16年69862件(同99.4%、400人
減)であった。また平成17年、平成22年、平成27年にお
ける取り扱い可能推測値はそれぞれ67870件(対H14年比
較96.6%、2392人減)
、65468件(同93.2%、4794人減)
、
59475件(84.6%10787人減)であった(表1)
。
これを病院と診療所別にみると、病院での取り扱い実
績および推測値は平成 14 年 43206 件、平成 15 年 43763 件
(対 H14 年比較 101.3 %、557 人増)、平成 16 年 43593 件
(同 100.9 %、387 人増)であった。また平成 17 年、平成
22年、平成27年における取り扱い可能推測値はそれぞれ
42313件(対H14年比較97.9%、893人減)
、42358件(同
98.0 %、848 人減)、42358 件(同 98.0 %、848 人減)であ
った(表2)
。
一方、診療所では平成 14 年 27056 件、平成 15 年 26072
件(対 H14 年比較 96.4 %、984 人減)、平成 16 年 26269 件
(同97.1%、787人減)であった。また平成17年、平成22
年、平成 27 年における取り扱い可能推測値はそれぞれ
25557件(対H14年比較94.5%、1499人減)
、23110件(同
85.4 %、3946 人減)、17117 件(同 63.3 %、9939 人減)で
あった(表3)
。
図 1 に病院、診療所および両者合計の平成 14 年から 16
年の実績と平成17年、22年、27年の推測値の変化を示す。
2)県内各地域の取り扱い実績と推測
表4から表18までに各地域の統計を掲載する。
図1 神奈川県における分娩取り扱い数と将来予測
表3 県内診療所合計
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
横浜
9798
9185
9336
8793
7935
6972
川崎
3736
3742
3583
3484
3464
1799
横須賀三浦
1535
1488
1366
1366
1366
744
鎌倉
100
112
127
127
0
0
平塚
1560
1525
1438
小田原、足柄
675
620
660
1431
660
1184
295
717
54
茅ヶ崎
686
806
831
831
652
410
座間、綾瀬、海老名
1084
1125
1050
1050
1050
318
藤沢
2780
2999
2947
2614
2001
1721
905
1236
1360
1360
1322
1322
1813
1551
1556
1556
1556
1556
643
643
649
649
649
203
1565
875
1089
1359
1359
1024
176
165
210
210
210
210
津久井
0
0
67
67
67
67
病院計
27056
26072
26269
25557
23110
17117
対 H14 受入増減割合
100%
96.4%
97.1%
94.5%
85.4%
63.3%
0
-984
-787
-1499
-3946
-9939
秦野、中郡、伊勢原
厚木
逗子、葉山
相模原
大和
対 H14 受入増減数
42 (100)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
表4 横浜市合計
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
17947
18472
18297
18117
17852
17852
9798
9185
9336
8793
7935
6972
合計
27745
27657
27633
26910
25787
24824
対 H14 受入増減割合
100%
99.7%
99.6%
97.0%
92.9%
89.5%
0
-88
-112
-835
-1958
-2921
診療所計
対 H14 受入増減数
横浜市は広域に渡るため、さらに横浜市が設定した3つの医療圏ごとの集計も再掲載する。
表4-1 北部医療圏(鶴見区、神奈川区、港北区、緑区、青葉区、都筑区)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
4894
4995
4975
4975
4975
4975
診療所計
5642
5300
5463
5406
4940
4027
合計
10536
10295
10438
10381
9915
9002
対 H14 受入増減割合
100%
97.7%
99.1%
98.5%
94.1%
85.4%
0
-241
-98
-155
-621
-1534
対 H14 受入増減数
表4-2 西部医療圏(西区、保土ヶ谷区、旭区、戸塚区、泉区、瀬谷区)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
8066
8195
7949
8114
8114
8114
診療所計
1854
1850
1777
1429
1357
1357
合計
9920
10045
9726
9543
9471
9471
100%
101.3%
98.0%
96.2%
95.5%
95.5%
0
125
-194
-377
-449
-449
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表4-3 南部医療圏(中区、南区、港南区、磯子区、金沢区、栄区)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
4987
5282
5373
5028
4763
4763
診療所計
2302
2035
2096
1958
1638
1588
合計
7289
7317
7469
6986
6401
6351
100%
100.4%
102.5%
95.8%
87.8%
87.1%
0
28
180
-303
-888
-938
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
中区内の私立病院は平成17年一時予約制限をしたが、その後解除したため、前年の実績で推定した。
表5 川崎市
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
6721
6535
6452
6452
6452
6452
診療所計
3736
3742
3583
3484
3464
1799
10457
10277
10035
9936
9916
8251
100.0%
98.3%
96.0%
95.0%
94.8%
78.9%
0
-180
-422
-521
-541
-2206
合計
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
中原区内の聖マリアンナ医大東横病院は、平成17年7月を以って閉鎖したが、隣接する多摩区内に川崎市立多摩病院が
同規模で開始するものと仮定し、不足分として計上していない。
平成19年1月(2007)
43 (101)
表6 横須賀、三浦(横須賀市、三浦市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
2393
2464
2541
1441
1801
1801
診療所計
1535
1488
1366
1366
1366
744
合計
3928
3952
3907
2807
3167
2545
100%
100.6%
99.5%
71.5%
80.6%
64.8%
0
24
-21
-1121
-761
-1383
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
平成17年秋より横須賀市内の私立病院は月20件、三浦市立病院は月10件で取り扱いを再開した。
両者は平成17年の推定値には計上していない。平成22年で増加しているのはそのためである。
表7 鎌倉(鎌倉市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
841
901
850
850
850
850
診療所計
100
112
127
127
0
0
合計
941
1013
977
977
850
850
100%
107.7%
103.8%
103.8%
90.3%
90.3%
0
72
36
36
-91
-91
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表8 平塚(平塚市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
823
879
938
938
938
938
診療所計
1560
1525
1438
1431
1184
717
合計
2383
2404
2376
2369
2122
1655
100%
100.9%
99.7%
99.4%
89.0%
69.5%
0
21
-7
-14
-261
-728
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表9 小田原、足柄(小田原市、南足柄市、足柄上郡、足柄下郡)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
診療所計
合計
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
2374
2182
2126
2126
1476
1476
675
620
660
660
295
54
3049
2802
2786
2786
1771
1530
100%
91.9%
91.4%
91.3%
58.1%
50.1%
0
-247
-263
-263
-1278
-1519
表10 茅ヶ崎(茅ヶ崎市、寒川町)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
診療所計
合計
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
1152
1311
1438
1438
1438
1438
686
806
831
831
652
410
1838
2117
2269
2269
2090
1848
100%
115.2%
123.4%
123.4%
113.7%
100.5%
0
279
431
431
252
10
44 (102)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
2 分娩数と届出数の差は
今回の調査は分娩取り扱い数を求めたものであり、以
下の要因により、分娩数=出生数とはならない。
考 察
1 減少が目立つ地域は
分娩取り扱い可能数の減少は、絶対数では人口の多い
横浜市と川崎市が、減少率では小田原足柄地区と横須賀
三浦地区が特に目立っている。しかし、その他の地域が
良好とは言えない。
表11 座間、綾瀬、海老名(座間市、綾瀬市、海老名市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
958
910
950
950
1550
1550
診療所計
1084
1125
1050
1050
1050
318
合計
2042
2035
2000
2000
2600
1868
100%
99.7%
97.9%
97.9%
127.3%
91.5%
0
-7
-42
-42
558
-174
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表12 藤沢(藤沢市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
435
437
422
422
422
422
診療所計
2780
2999
2947
2614
2001
1721
合計
3215
3436
3369
3036
2423
2143
100%
106.9%
104.8%
94.4%
75.4%
66.7%
0
221
154
-179
-792
-1072
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表13 秦野、伊勢原、中(秦野市、伊勢原市、中郡)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
診療所計
合計
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
1953
1740
1603
1603
1603
1603
905
1236
1360
1360
1322
1322
2858
2976
2963
2963
2925
2925
100%
104.1%
103.7%
103.7%
102.3%
102.3%
0
118
105
105
67
67
表14 厚木(厚木市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
528
619
619
619
619
619
診療所計
1813
1551
1556
1556
1556
1556
合計
2341
2170
2175
2175
2175
2175
100%
92.7%
92.9%
92.9%
92.9%
92.9%
0
-171
-166
-166
-166
-166
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表15 逗子、葉山(逗子市、葉山町)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
0
0
0
649
649
649
203
643
649
649
649
203
100%
100.0%
100.9%
100.9%
100.9%
31.6%
0
0
6
6
6
-440
0
0
0
診療所計
643
643
合計
643
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
平成19年1月(2007)
45 (103)
a 助産所、自宅分娩
神奈川県内の99%の医療機関が取り扱った分娩数は
平成14年70262件、平成15年69835件、平成16年69862
件であった。これに対し平成 16 年の出生届け数は
79441人 1)で、今回調査の分娩取り扱い数との差が分娩
数=人数としても9579ある。一方、同年県内で助産所
および自宅分娩数はそれぞれ1490件と262*件の計1752
件 2)であったことより、今回調査からそれを引くとそ
の差は7854となる。
* 助産師が立ち会わなかったものも含む
b 多胎分娩、死産などの要因
各医療機関が回答した「分娩取り扱い数」であるが、
分娩台帳をベースに出されたものである。その中には
多胎分娩や死産、さらには多胎で 1 児が死産などのケ
ースも含まれる。ちなみに平成16年の神奈川県の多胎
分娩は880件 3)で双胎865件、品胎15件、また平成16年
の死産は2117件 4)でうち妊娠22週以降は312件である。
c 里帰り分娩、越境分娩
今回調査の分娩取り扱い施設での分娩数には、神奈
川県内の実家に里帰りで戻ってくる妊婦が含まれ、県
外の実家に帰った妊婦の数は含まれない。国や県の調
査は県内に居住している妊婦らから出される出生届け
をもとに集計されるので、その差が現れていることに
なる。その点について次のように推論した。
1)里帰り分娩
分娩数と届け出数をさらに細かく分析すると、平成 16
年の統計 4)では横浜市が分娩数27633件に対し出生届けで
32543人、川崎市で10035件に対し13331人と2つの市で分
娩数と届けの差が8206人(件)にのぼり、県全体の7854
人(件)を 352 人(件)超える。両市はともに政令指定
都市であり、人口もあわせて 490 万人と神奈川県全体の
56 %を占め、四国 4 県の総人口を優に上回る巨大都市で
ある。全国さまざまな地域から人が集まっており、分娩
時に里帰りする妊婦もかなりの数になると推定される。
実際には両市に里帰りしてくる妊婦もいるので、それ以
上の妊婦が県外に里帰りしていると考えられる。なお、
横浜、川崎以外の県内市町村の中に分娩数が出生数を上
回る地域があり、県全体でみれば両市の分娩数と出生数
の差が県のそれを上回ることには矛盾はない。
表16 相模原(相模原市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
4449
4659
4488
4488
4488
4488
診療所計
1565
875
1089
1359
1359
1024
合計
6014
5534
5577
5847
5847
5512
100%
92.0%
92.7%
97.2%
97.2%
91.7%
0
-480
-437
-167
-167
-502
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
表17 大和(大和市)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
診療所計
合計
対 H14 受入増減割合
2632
2654
2834
2834
2834
2834
176
165
210
210
210
210
2808
2819
3044
3044
3044
3044
100%
100.4%
108.4%
108.4%
108.4%
108.4%
0
11
236
236
236
236
対 H14 受入増減数
表18 津久井(津久井郡)
H14 分娩数 H15 分娩数 H16 分娩数 H17 推定取扱可能数 H22 推定取扱可能数 H27 推定取扱可能数
病院計
0
0
35
35
35
35
診療所計
0
0
67
67
67
67
合計
0
0
102
102
102
102
0
0
102
102
102
102
対 H14 受入増減割合
対 H14 受入増減数
H14が0のため対H14は算出せず
46 (104)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
2)分娩を取り扱わない施設から里帰り
県内には分娩を取り扱わない施設が約 240 施設あり、
その大半は妊婦健診を行っている。これらの施設からは、
妊娠末期に県内の分娩取り扱い施設へ転院する妊婦が多
いが、県外へ里帰りする妊婦も相当数いると考えられる。
実家が地方である場合、現地での分娩事情はさらに深刻
化していることより、今後里帰り分娩が出来なくなるケ
ースが増えると考えられる。それらを想定した対応を講
じておく必要がある。
3)隣接都県への越境
川崎市や相模原市は東京都と隣接している。都区内、
都下に越境して分娩をするケースが考えられる。本県は
静岡県、山梨県とも接しているが、いずれも箱根、丹沢
の山岳地帯であり、越境はごく少数と推定される。
以上を勘案しても、差し引き約8000人の妊婦が県外で
分娩していると考えられる。今回の調査から分かった意
外な結果である。
今回の調査で、産科医師不足と分娩取り扱い施設の減
少は地方の問題に留まらず、神奈川県にも押し寄せてき
たことが、分娩取り扱い数の調査とそれに基づく将来の
推定で明らかになった。今後の推移を見極めるために、
定期的な分娩取り扱い数の調査が望ましい。できれば全
国的規模で実施されることが望まれる。
問題の解決には医師(病院勤務医と診療所医師)
、助産
師、看護師らの相互の努力、協力が必要であることは当
然であるが、政府や自治体がこの実態を真摯に受けとめ、
早急な具体策の策定が望まれる。この様な産婦人科医療
の危機的な状況の到来は、今にして思えば当然の帰結で
ある。ここまで事態が急速に減退してしまうと対策は非
常に困難である。当面産科医療を担っている当事者の犠
牲的努力で持ちこたえ乍ら、国家な行政の対策が発動さ
れることが望まれる。
結 語
3 減少分を補う施設はどれくらい必要か。
県下総計で、平成 14 年には病院、診療所合わせて
70262人の分娩を取り扱うことができたが、相次ぐ施設の
閉鎖で平成 17 年では 67870 人(2392 人減、対 H14 年
96.6 %)、平成 22 年では 65468 人(4794 人減、対H 14 年
93.2 %)、平成 27 年になると 59475 人(10787 人減、対H
14年84.6%)しか産めなくなる計算である。
これに対応するには、年間1000人規模の施設ならば、平
成22年までに5施設、平成27年には11施設造らなければ
ならない。
4 事態はさらに深刻化する可能性が大きい。地方での
分娩事情が悪化すれば、里帰りできなくなる。
これらの数字は、アンケート調査の時点での今後の分
娩取り扱い予定を考慮して計算したものであり、今後取
り扱い中止を決めたり、産科医、助産師不足で中止を余
儀なくされたりするケースは想定していない。今回の条
件は最も良い(これ以上中止を表明する施設はない)仮
定での予測と考える。
また冒頭の部分や考察 2-Cで述べたように里帰りする
文 献
1) 都道府県別にみた年次別出生数第 4-3 表:人口動態統
計、厚生労働省大臣官房統計情報部編 2004 1B上巻 ;
94-95
2) 都道府県別出生の場所別にみた出生数第 4-9 表:人口
動態統計、厚生労働省大臣官房統計情報部編 2004
1B上巻 ; 104
3) 都道府県別にみた単産・複産別分娩件数第4-37表:人
口動態統計、厚生労働省大臣官房統計情報部編 2004
1B上巻 ; 34
4) 神奈川県衛生統計年報(CD-ROM版)2004年第55号
(H18. 8. 25受付)
平成19年1月(2007)
47 (105)
診断に苦慮した間質部妊娠の1例
A case report of interstitial pregnancy
帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology
University Hospital, Mizonokuchi, Teikyo University School of
Medicin
中林 稔 Minoru NAKABAYASHI
松見 泰宇 Hirotaka MATSUMI
堀谷まどか Madoka HORIYA
大貫 裕子 Hiroko OHNUKI
村田 照夫 Teruo MURATA
西井 修 Osamu NISHII
概 要
診断に苦慮した間質部妊娠の1例を経験したので報告す
る。症例は39歳未経妊、他院にて体外受精・胚移植によ
り妊娠成立したが、妊娠6週2日に子宮内に胎嚢が認めら
れないため子宮外妊娠の疑いで当科紹介受診となった。来
院時、血中 hCG 値 1760 mIU/ml であったが子宮内及び腹
腔内に胎嚢を確認できなかった。経過観察としたところ
hCG 値 が3270 mIU/mlと上昇したため子宮内容除去術を
施行したが、子宮内容物に絨毛組織は認められなかった。
術後 hCG 値の下降が認められないため腹腔鏡検査にて腹
腔内を観察したが、着床部位は同定できなかった。骨盤
MRI 検査により左卵管間質部付近に T2 強調画像で high
intensity な腫瘤を認め、左間質部妊娠を疑いメソトレキセ
ート(以下 MTX と略す)療法を施行した。治療終了後の
経腟超音波断層法にて子宮内に径 8 mm の胎嚢を疑わせる
像を認めた。子宮鏡検査では子宮の内腔は表面平滑、異常
所見を認めなかった。再度施行した MRI により左卵管間
質部の high intensity な像が増大したため MTX 療法を追加
した。不正出血と共に内膜様の子宮内容物の排出を認めた
(病理診断:chorionic villi)
。その後 hCG 値は順調に下降し、
治療終了2週間後には感度以下となった。
子宮内容除去術を施行した。内容物の病理検査にて絨毛
成分は認められず、妊娠6週2日に当科紹介受診となった。
来院時、下腹痛部痛及び性器出血などの症状は認められ
なかった。
[当院での経過] 妊娠 6 週 2 日、血中 hCG 値 1760
mIU /ml。経腟超音波断層法にて子宮内及び腹腔内に胎
嚢を確認できなかった。外来経過観察としたところ、妊
娠6週5日、血中 hCG 値 3270 mIU/mlと上昇したため入
院となった。
[入院後の経過] 再度施行した子宮内容除去術によって
も絨毛成分は確認できなかった。妊娠7週2日、血中 hCG
値 3590 mIU/ml と下降傾向が認められなかったため腹腔
鏡検査を施行した。
[腹腔内所見] 少量の血液貯留を認めた。両側の卵巣・
卵管に明らかな異常を認めず。間質部の腫大も認められ
ず。その他、膀胱子宮窩やダグラス窩に異常所見は認め
られなかった。
[手術後の経過] 妊娠7週5日、血中 hCG 5500 mIU/ml
とさらに上昇したため骨盤 MRI 検査(図1)を施行した
ところ、T2 強調画像にて左間質部に直径 10 mm の high
intensity な像を認めた。これより左間質部妊娠を強く疑い
Key word :卵管間質部妊娠、MRI、メソトレキセート
(MTX)療法、腹腔鏡、子宮鏡
症 例
39歳未経妊
[月経歴] 初経12歳、周期28日型、持続5日間
[既往歴] 特記すべきことなし
[家族歴] 特記すべきことなし。
[現病歴] 前医で体外受精胚移植にて妊娠成立した。胚
移植(3 個)を施行。妊娠 4 週 1 日、血中 hCG 値 5.7
mIU/ml。妊娠5週2日、血中 hCG 値 136 mIU/ml。妊娠
6週1日、血中 hCG 値 651 mIU/mlであった。経腟超音波
にて子宮内に胎嚢が認められないため子宮外妊娠を疑い
図 1 MRI : T2 強調画像にて左間質部に直径 10 mm の
high intensity な像を認めた
48 (106)
MTX 療法(20 mg/day×5 days 筋注)を施行した。
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
妊娠8週2日、血中 hCG 値 9200 mIU/ml まで上昇した
が、妊娠9週1日には 6500 mIU/ml と下降傾向を示した。
治療後に経腟超音波断層法を施行したところ、子宮底付
近に直径 8 mm の胎嚢様の超音波像(図2)を認めたため
精査目的で子宮鏡を施行した(図 3)。子宮内腔は表面平
滑で特に異常所見を認めなかった。
妊娠9週5日、骨盤 MRI 検査(図4)を再度施行したと
ころ、T2 強調画像で左卵管間質部の high intensity な像の
増大を認めたため再度 MTX 療法
(20 mg/day×5 days 筋
注)を施行した。
図2 経腟超音波断層法
子宮底付近に直径 8 mm の胎嚢様の超音波像を認めた
治療終了後、不正性器出血と共に内膜様の自然排泄物
が認められたため、病理検査に提出したところ、診断は
chorionic villi であった。
その後は順調に血中 hCG 値下降し、その2週間後には、
血中 βhCG 値は感度以下となった。
考 察
図3 子宮鏡
子宮内腔は表面平滑で特に異常所見を認めなかった
図4 MRI
T2 強調画像で左卵管間質部の high intensity な像の増大を
認めた
子宮外妊娠は産婦人科領域における急性疾患の 1 つで
あり、診断を誤ると出血性ショックにより致死的となり
得るため、迅速な診断及び治療を要する。自然妊娠後の
子宮外妊娠の頻度は全妊娠の約0.5 %∼1 %であるが、体
外受精・胚移植後では 2.4 ∼ 7.0 %と高率であることが知
られている 1)。妊卵の着床部位により子宮外妊娠は卵管
(采部・膨大部・狭部・間質部)、卵巣、頚管、腹膜に分
類される。全体の98%が卵管に生じ、70∼80%は卵管膨
大部、10∼20%は卵管狭部、2∼5%は卵管間質部、1%
は卵巣、0.5%は腹膜に生じると報告されている 2)。従来
では子宮外妊娠の症状として腹痛・性器出血などみられ
ることが多かったが、最近では早期からの hCG 値測定に
伴い、妊卵の発育が未熟な妊娠初期にはこれらの症状は
認められないことも多くなってきた。子宮外妊娠の診断
には最初に経腟超音波断層法が用いられる。経腟超音波
断層法の利点は外来で非侵襲的に施行することが可能な
点である。妊娠 5 週以降で子宮内に胎嚢を認めない場合
は子宮外妊娠を疑う。さらに腹腔内貯留液を認めた場合
は強く疑い、子宮外に胎嚢・胎芽を認めた場合には診断
は確定するが、経腟超音波断層法により子宮外妊娠の部
位を特定できる症例は全体の70∼80%程度、さらに胎児
心拍を認めるのはわずか4%程度と言われている 3)。子宮
外妊娠を診断するにあたり、血中または尿中 hCG 値の推
移を測定し、経腟超音波断層法と組み合わせると診断の
精度が向上する。正常妊娠の場合通常 hCG 値が 1000 ∼
2000 mIU/ml であれば経腟超音波断層法で子宮内に胎嚢
を抽出することが可能であり、4000 mIU/ml 以上であれ
ば卵黄嚢もみられ、胎児心拍が認められる場合、hCG 値
は10000 mIU/ml 以上であることが多い 5)。経腟超音波断
層法と hCG 値の組み合わせを用いても子宮外妊娠の確定
診断に至らない場合、子宮内容除去術により子宮内の絨
毛組織の有無を病理学的に調べることが重要である。そ
平成19年1月(2007)
れでもなお診断に至らない場合は腹腔鏡検査を施行する。
しかしながら日常の臨床現場では、以上の検査を全て用
いても妊娠部位の確定診断に苦慮する症例に遭遇するこ
とも少なくない。今回の症例でも、血中 hCG 値が 3590
mIU/ml と高値を示しているのにも関わらず経腟超音波
断層法と腹腔鏡検査で着床部位の確定はできず、子宮内
容除去術によっても内容物に絨毛組織はみられなかった。
子宮外妊娠で妊娠部位の同定が困難な場合、MRI 検査が
診断に有用となることがある 6)。一般的に胎嚢は T1 強調
画像で低信号、T2 強調画像で高信号を示す。さらに胎嚢
に出血巣があると T2 強調画像で強い高信号を示すことが
多い。今回の症例でも、2度目の MRI 検査では MTX 療法
により胎嚢に出血が生じたために初回のものより高信号
領域の増大が認められたと考えられる。子宮外妊娠の治
療には、開腹及び腹腔鏡による外科的治療と、MTX など
を用いた薬物療法に加え、待機的管理がある。hCG 値が
1000 mIU/ml 以下であれば待機による保存的治療も可能
であるが、hCG 値が高値である場合は外科的治療または
薬物治療を選択する必要がある。外科的治療には卵管切
除術・卵管線上切開術・ミルキング・卵管区域切除及び
吻合術などがあり、薬物治療には MTX の全身投与また
は局注療法がある。腹腔鏡下手術と MTX 全身投与療法
を比較した場合、文献的にはそれぞれの成功率は93%で
ほぼ同率である 5)。MTX 療法を施行した場合、今回の症
例のように出血巣を形成することにより確定診断の補助
にもなり得る。また、MTX 療法後は胎嚢が移動する場合
もあるため、間質部妊娠のように妊娠部位を同定するこ
とが困難な症例にも有効となることがあると考えられる。
49 (107)
子宮鏡検査に関しては、経腟超音波断層法にて診断が確
定しない場合や間質部妊娠の場合には有効となり得ると
考えられるが、今回の症例では有効な所見は得られなか
った。今回の症例は、経膣超音波断層法・子宮内容除去
術・腹腔鏡検査・子宮鏡検査を施行したのにも関わらず
確定診断に至らず、最終的には MRI 検査を駆使しながら
MTX 療法で保存的に治療し得た症例であった。
(本論文の要旨は第374回日本産科婦人科学会神奈川地方
部会で報告した)
文 献
1) 是澤光彦:卵管間質部妊娠、臨床産科婦人科 2001 ;
55: p996−998
2) Kucera E, Helbich T, Klem I : Systemic methotrexate
treatment of interstitial pregnancy, magnetic resonance
imaging as a valuable tool for monitoring treatment. ; Wiener
klnische Wochenschrift ; 112(17):p772−5
3) Borgatta L, Burn M : Single dose methotrexate therapy,
application to interstitial ectopic pregnancy.;International
journal of gynecology ; 60(3):p279−82
4) Pisarska MD, Carson SA, Buster JE.:Ectopic pregnancy.
Lancet ; 351:115−120
5) Alsuleiman SA, Grimes EM.:Ectopic pregnancy:a review
of 147 cases.;J Reprod Med 1982 ; 27:101−106
6) Tulandi T, Vilos G, Gomel V.:Laparoscopic treatment of
interstitial pregnancy.;Obstet Gynecol 1995 ; 85:p465−
467
(H18. 9. 6受付)
50 (108)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
巨大後腹膜膿瘍の1例
A case of giant retroperitoneal abscess
帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology , University Hospital,
Mizonokuchi, Teikyo University School of Medicine
堀谷まどか Madoka HORIYA
松見 泰宇 Hirotaka MATSUMI
大貫 裕子 Hiroko OONUKI
中林 稔 Minoru NAKABAYASHI
村田 照夫 Teruo MURATA
西井 修 Osamu NISHII
帝京大学医学部附属溝口病院 外科
Department of Surgery, University Hospital, Mizonokuchi, Teikyo
University School of Medicine
山川 達郎 Tatsurou YAMAKAWA
要 旨
症 例
我々は下腹痛などの自覚症状に乏しく卵巣腫瘍が疑われ
た巨大後腹膜膿瘍の一例を経験したので報告する。症例は
53歳。下腹痛などの自覚症状はなく、発熱を主訴に近医受
診。炎症所見を認め、受診時に指摘された腹腔をほぼ占拠
する巨大腫瘤の精査目的に、2月25日に当科紹介受診。超
音波断層法にて長径24 cm の境界明瞭で内部がほぼ均一な
多房性の腫瘤を認めた。内部は MRI では T1 強調画像で
low intensity、T2 強調画像で high intensity なため漿液性と考
えられた。良性または境界悪性の卵巣腫瘍の診断で、摘出
術施行目的に入院となった。3月28日腫瘍摘出術施行。腫
瘍は径20 cm、腫瘍の前面には全周性に腸間膜及び炎症性
に肥厚した後腹膜が強固に癒着していた。腫瘍は摘出する
際に破裂し、約6 Lの黄色膿状の内容液の流出を認め、B
群連鎖球菌(GBS)が検出された。肉眼上、子宮及び付属
器に異常を認めず、卵巣腫瘍と考えられた巨大腫瘤は後腹
膜膿瘍と診断された。膿瘍壁に上皮成分、異型細胞浸潤は
認めず、病理学的には inflammatory psudocystic tumor of
retroperitoneum と診断された。疼痛、発熱を伴う腹部腫瘤
を認めた場合、婦人科的には卵巣腫瘍との鑑別を求められ
るが、後腹膜膿瘍の可能性も念頭の置いて、注意深い画像
診断を行う必要があると考えられた。
患者:53歳、女性
主訴:発熱
既往歴・家族歴:特記すべきことなし
現病歴:平成 18 年 2 月初旬に持続する 38 ℃台の発熱を
主訴に近医受診。腹部に巨大腫瘤を触知したため 2 月 25
日当科に紹介。この際、下腹痛等の自覚はなし。血液検
査にて白血球 9900/ul、CRP 20.0 mg/dlと炎症反応の亢
進を認めた。
超音波断層法にて腹腔内全域を占拠する多房性巨大腫
瘤を認め、良性から境界悪性の卵巣腫瘍が疑われたため、
精査加療目的にて入院となった。
入院時現症:身長 158.5 cm、体重 48.9 kg、体温 37 ℃
後半∼38℃、脈拍 100回/min、血圧 102/56、腹部は膨
隆し圧痛は認めなかった。
検査所見:〈血液一般検査〉WBC 12680/μl,RBC 326
×104 /μl、Hb 9.4 mg/dl、Ht 28.7 %、Plt 60.2 ×104 /μl
〈血液生化学検査〉CRP 15.6 mg/dl〈腫瘍マーカー〉CEA
2.3 ng /ml、CA19-9 9.4 U /ml、CA15-3 17.8 U /ml、
CA125 40.5 U/ml。
炎症反応と軽度の貧血、CA 125 の軽度上昇を認めた。
画像所見:超音波断層法(Fig.1)では腹部に長径24 cm、
境界明瞭な多房性腫瘤を認めた。腫瘤の内部はほぼ無エ
コーで、腫瘤壁は均一(2 mm)で血流はなかった。日本
超音波学会による卵巣腫瘤の分類はⅠ型であった。
Key word:後腹膜膿瘍、巨大腫瘤
緒 言
今回、我々は下腹痛などの自覚症状に乏しく卵巣腫瘍
が疑われた巨大後腹膜膿瘍の一例を経験したので文献的
考察を加え報告する。
MRI(Fig.2)では、T1 強調画像で low intensity T2 強調
画像で high intensity の漿液成分が主体と考えられる腫瘤
を認めた。境界は明瞭で、充実性部分は認めず、また、
腹水貯留もなかった。良性から境界悪性の卵巣腫瘍と考
えられた。
平成19年1月(2007)
51 (109)
CRP [mg/dl]
WBC [/μl]
18
20000
CFPM 2g
16
MINO 200mg
14
12
10
CTM 2g
CRP [mg/dl]
WBC [/μl]
8
6
10000
4
2
4000
0
術前
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
Fig.3 WBC、CRP の経過
術後、全身状態は良好。ドレーンからの排出も減少し、
炎症所見も鎮静化した。
Fig.1 外来受診時経腹超音波断層法
長径24cm、境界明瞭な多房性の腫瘍。
腫瘍壁は均一(2 mm)で、血流は認めず。
診断:卵巣腫瘍 (良性から境界悪性)
日本超音波学会による卵巣腫瘍分類:Ⅰ型
Fig.4 腫瘍壁の病理標本
Fig.2 腹部 MRI
径 24 cm で多房性。内容物は T1 low intensity、T2 high
intensity で漿液性成分中心と考えられた。充実部分は認めず。
腹水貯留なし。
診断:卵巣腫瘍(良性から境界悪性)
入院後経過: 2006 年 3 月 28 日、卵巣腫瘍の診断で手術
施行した。開腹所見では、腫瘍は径 20 cm。腫瘍の前面
に腸間膜及び炎症性に肥厚した後腹膜が癒着していた。
腫瘍摘出術を施行。腫瘍は摘出する際に破裂し、黄色膿
状の内容物が認められた。子宮、付属器に特に異常は認
めなかった。内容物の培養から B 群連鎖球菌(GBS)が
検出された。
これらの所見より術前に卵巣腫瘍と考えられた腫瘍は
後腹膜膿瘍と診断された。
ドレーンを留置して閉腹し、抗菌剤の静脈内投与を継
続したところ、WBC、CRP ともに低下した。ドレーンは
流出減少したため、術後 4 日目に抜去した。術後経過良
好のため術後10日目退院した。
(Fig.3)
病理所見(Fig.4):膿瘍壁には上皮成分や異型細胞浸
潤増生は認めず、内腔側にはフィブリン塊、壊死物質の
付着やリンパ球など炎症細胞の浸潤、壁側には比較的厚
い繊維性結合組織層が認められた。これらの所見より慢
性的な炎症が示唆されたが、起因菌を同定できるような
特徴的な所見は認めなかった。病理診断は inflammatory
左が壁側、右が内腔側。
膿瘍壁には上皮組織を存在せず。その他、異型細胞浸潤増生
などは認めず。
内腔側に炎症細胞が多いが、壁側は繊維化が目立つ。
慢性的な炎症を疑わせるが、特定の起炎菌を示唆するような
特徴的な所見を認めず。
psudocystic tumor of retoroperitoneum であった。
考 察
後腹膜膿瘍の臨床症状の特徴として、熱感、疼痛など
の自覚症状、発熱、頻脈などの他覚症状が挙げられるが、
その進行は緩徐なことが多く、約10%は自覚症状のない
まま進行する。更に特異的な症状に乏しく、膿瘍形成部
位に応じて疼痛部位が異なるため時に確定診断に至るこ
とが困難な場合がある。特に治療を行わなかった進行例
では Pollack の3徴と呼ばれる腹部膨隆、衰弱、疼痛とい
った症状が出現する 2)。本症例でも患者は発熱以外特に
自覚症状はなく、腹部膨隆などの症状が発現するまで膿
瘍が増大した。
鑑別診断としては ① 後腹膜血腫、② 神経鞘腫、後腹
膜繊維症、腎嚢胞、腎腫瘍、膵嚢胞などの後腹膜腫瘍、
③ 間質性腫瘍(GIST)
、④ 卵巣腫瘍などがあげられる。
これらの鑑別には超音波断層法、CT、MRI などの画像
診断が有用である。腹部超音波断層法の特徴的所見とし
ては内部低エコー域、後方のエコーの増強といった病変
内部の炎症性産物を反映する像を伴った嚢胞像がある 1)。
CT では、低吸収域を示す軟部組織腫瘤や ring sign と呼ば
52 (110)
れる腫瘤周囲の造影剤による増強効果、腫瘤周囲への圧
迫所見、腫瘤内ガス像などが特徴的所見として挙げられ
る。また、MRI でも CT と同様に ring sign と呼ばれる特
徴的所見が認められ、脂肪組織内に膿瘍が存在する場合
などはその位置の確認に有用である 6)。その他にも胸腹
部単純レントゲン写真では、大腿筋陰影や腎輪郭の不鮮
明化、椎体の破壊像、ガスや液体の貯留した鏡面画像が
認められることもあり、炎症を示す Ga シンチグラフィー
なども診断に有用となる 1)。これらに加えて、注腸造影
で腹腔内臓器の存在部位の異常が認められて膿瘍の形成
部位の確認が行えることがある。
本症例では腫瘤が巨大であったため、周囲臓器との関
係が明瞭でなく、画像による鑑別は非常に困難であった。
Retrospective に画像を検討してみると、膵臓、腎臓が腫瘤
に接するように存在していると思われる部位も認められ
た。また、腫瘍壁も嚢胞にしては厚く、均一であり、炎
症を伴うもの、膿瘍などを疑わせるものであった。この
ような巨大な腫瘤を認めた場合、腫瘍の存在部位は他の
臓器との相対的な位置関係などから推測していくことが
重要と考えられる。
特異的な腫瘍マーカーなど特徴的な検査所見は特にな
い。本例でも炎症反応は認められたが、その他に特記す
べき所見はほとんどなかった。
後腹膜膿瘍は基礎疾患として、糖尿病、悪性腫瘍、ス
テロイド内服など免疫力の低下を起こすもの、クローン
病などがあるが、本例ではこのような既往歴は認めなか
った。原因疾患として代表的なものは ① 虫垂炎を代表と
する消化管の炎症や穿孔、開腹術による後腹膜腔の汚染
② 膵炎や腎盂腎炎および腎外傷などの後腹膜臓器の炎症
および損傷、③ 椎体、腰筋の炎症、④ 子宮付属器の炎症
や損傷などがある。本症例では起炎菌が B 群連鎖球菌
(GBS)であったことから子宮や付属器の炎症が原因疾患
である可能性が推測されたが、腹腔内にはこれらを示唆
する所見はなかった。その他の原因として先に述べた虫
垂炎、膵炎などの感染源と考えられる臓器の存在も認め
られず、尿路感染や、尿路結石なども否定的であったた
め、本症の発症機序はわからなかった。今回のように原
因不明の原発性後腹膜膿瘍は稀で報告例は少ない。
起炎菌としてはグラム陰性桿菌、特に E.coli, Proteus が
多い。これは消化管の炎症から感染が波及したものが多
いためと考えられる。この他に結核菌、嫌気性菌などに
よる報告例もある。本例のように B 群連鎖球菌(GBS)
が原因となった報告例は少ない。
治療は早期の排膿および抗生物質の投与である。抗生
剤の投与のみでは奏効率が低く、また再発率が高い。切
開排膿に抗生剤を併用することで死亡率は9分の1程度ま
で低下し、再発も少なくなる 2)。腫瘍への到達経路とし
ては経後腹膜ドレナージが有用とされる。経腹腔ドレナ
ージは再発が多く、成功率も低い。理想的にはエコーガ
イド下に穿刺排膿を行ったのち持続的にドレナージし、
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
起炎菌が特定できるまでは、広域スペクトルを持つ抗生
剤の投与を、特定され次第、起炎菌に合わせた薬剤投与
を行う 2)。
今回は全摘術を行ったが、術前に診断がついていた場
合、穿刺排膿、持続ドレナージによる治療も可能であっ
たと考えられる。婦人科領域では腹腔内に腫瘍を認めた
場合、卵巣腫瘍との鑑別が必要であるが、発熱、疼痛な
どの炎症反応の亢進を認めた場合には後腹膜膿瘍の可能
性も考慮に入れて、適切な治療法を選択する必要がある
と考えられた。
本論文の要旨は、第 374 回日本産婦人科学会神奈川地
方部会において報告した。
文 献
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93.
(H18. 9. 6受付)
平成19年1月(2007)
53 (111)
子宮外妊娠におけるリスク因子の検討
Risk factors for ectopic pregnancy.
帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科
Department of Obstetrics & Gynecology,
Mizonokuchi Hospital,Teikyo University School of Medicine
大貫 裕子 Hiroko OHNUKI
松見 泰宇 Hirotaka MATSUMI
堀谷まどか Madoka HORIYA
中林 稔 Minoru NAKABAYASHI
村田 照夫 Teruo MURATA
西井 修 Osamu NISHII
概 要
Ⅰ.対象・方法
当科で過去2年間に子宮外妊娠と診断され治療を受けた
26症例に対し、患者背景、着床部位、治療について後方視
的に検討した。特に体外受精胚移植(IVF-ET)の子宮外妊
娠への関与を検討するため、卵管障害やクラミジア感染の
有無との相関について考察した。26例中 IVF-ET 後の妊娠
によるものは6例で、そのうち1例のみ明らかな卵管閉塞
を認め、クラミジア抗体が陽性であった。抗体が陰性であ
った5例は、全例が男性不妊による適応であり、子宮卵管
造影検査でも明らかな卵管障害を認めなかった。一方自然
妊娠およびクロミフェン療法、人工授精による妊娠症例で
はクラミジア感染の有無が判明した11例中5例でクラミジ
ア抗体が陽性であった。以上より、症例数は少ないが、
IVF-ET 妊娠においてはクラミジアなどによる卵管障害で
はなく、排卵誘発による内分泌動態の相違や胚移植など
IVF-ET という医療行為そのものが子宮外妊娠を引き起こ
している可能性が示唆された。
2004 年 1 月から 2005 年 12 月までの 2 年間に当科外来を
受診し、子宮外妊娠と診断され治療を受けた26例を対象
として、それぞれ患者背景および着床部位について後方
視的に検討した。手術療法は、卵管破裂による全身状態
不良のため開腹手術を施行した 1 例を含め、25 例に施行
した。腹腔鏡を選択した24例中22例は手術により着床部
位を含め子宮外妊娠と確定診断されたが、2例は腹腔鏡と
子宮内容除去術を施行しても着床部位を同定できなかっ
た。この2例中1例については IVF-ET による妊娠症例で、
術後の MRI にて間質部妊娠を診断した。最終的に着床部
位が不明であった残りの 1 例は人工授精による妊娠であ
り、術後は経過観察のみで血清 hCG 値の正常化を認めた。
また、手術を施行しなかった 1 例は、超音波断層法で卵
管妊娠を診断したうえで待機療法を選択した。
Key word:子宮外妊娠、リスク因子、IVF-ET、卵管障害、
クラミジア感染
はじめに
子宮外妊娠の一般的な発症頻度は地域や施設によって
異なるが、自然妊娠で1.0%前後、生殖補助医療特に IVFET による妊娠では 2.2 ∼ 11.0 %(2 ∼ 4.5 %との報告が多
い)といわれ 1) 2) 3) 4) 5)、近年の IVF-ET の普及により子宮
外妊娠は増加傾向にある。IVF-ET が子宮外妊娠を惹起す
る機序として過剰な排卵誘発や既存の卵管障害が考えら
れているが、IVF-ET の中でも ICSI や ZIFT など手法別に
子宮外妊娠の発症頻度が異なることが示されており 1)、
IVF-ET の手技・手法そのものが子宮外妊娠を惹起してい
る可能性が示唆されている。今回我々は当科で過去 2 年
間に経験した子宮外妊娠の全症例について、患者背景、
着床部位などを検討し、リスク因子である IVF-ET と他の
因子との相関に着目して考察した。
Ⅱ.結果
1.妊娠方法
26例のうち、自然妊娠は12例であった。不妊治療によ
る妊娠 14 例の治療法別の内訳はクロミフェン(and /or
AIH)療法が 8 例、IVF-ET が 6 例(顕微授精: ICSI 3 例)
であった。
2.着床部位(表1)
26例の内訳は、卵管妊娠が21例(子宮内外同時妊娠を
1例含む)
、間質部妊娠が2例、腹膜妊娠が2例、着床部位
不明が1例であった。IVF-ET による症例では、卵管膨大
部以外に着床した症例が目立っていた。
表1 着床部位の内訳
着床部位
卵管
(内外同時妊娠)
間質部
腹膜
不明
合計
全 体 IVF-ET
21例
3例
1例)
2例
1例
2例
2例
1例
26例
6例
54 (112)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
3.治療(表2)
治療は、26 例中卵管破裂による全身状態不良のため開
腹手術を施行した1例と、待機療法を選択した1例を除き、
ほぼ全例の24例に腹腔鏡下手術を施行した。腹腔鏡下卵
管線状切開術後に血清 hCG 値が低下しなかった 1 例と、
腹腔鏡下に着床部位の同定が困難であり、術後 MRI によ
り間質部妊娠を診断した 1 例は、術後にメソトレキセー
ト(MTX)療法を追加した(腹腔鏡下手術により着床部
位が同定できなかった症例1例と待機療法を選択した1例
は経過観察のみで血清 hCG 値の正常化をみた)
。
4.患者背景(リスク因子を中心として)
(表3)
26 例の代表的なリスク因子の内訳は、子宮外妊娠の既
往が2例(治療:卵管線状切開術)
、クラミジア感染の既
往が 6 例、手術の既往が 4 例(卵管線状切開術 2 例、付属
器切除術 1 例、帝王切開術 1 例)、不妊治療による妊娠が
14例( IVF-ET 6例:適応は男性不妊5例、卵管障害1例)
であった。
5.クラミジア抗体の陽性率(表4)
クラミジア抗体(IgG)は、自然妊娠において12例中5
例が陽性であり、陽性率は少なくとも40%以上であった
(感染不明例 4 例を含む)。これは一般的に知られている
子宮外妊娠患者のクラミジア抗体陽性率とほぼ同じであ
る 6)。一方、不妊治療による妊娠のなかでも特に IVF-ET
による妊娠(IVF-ET 群)に着目すると、6 例中子宮卵管
造影検査にて明らかな両側卵管水腫を認めた1例(16.7 %)
のみ、クラミジア抗体が陽性であった。今回検討した症
例数は少ないものの、IVF-ET 群が natural cycle 群に比し
てクラミジア抗体陽性率が低いという傾向が示された。
なお、IVF-ET 群6例中、クラミジア抗体が陰性であった5
例の適応は全例が男性不妊であり、子宮卵管造影検査で
も卵管障害は認めず、その他の子宮外妊娠リスク因子も
認めなかった。以上の結果より、IVF-ET 群における子宮
外妊娠の原因として最も知られているのはクラミジア感
染による卵管性不妊であるが、このほか排卵誘発による
内分泌動態の相違や胚移植の手技なども子宮外妊娠を引
き起こしている可能性が示唆された。
考 察
今回我々は当科で過去 2 年間に経験した子宮外妊娠の
全症例について、患者背景、着床部位などを検討し、リ
スク因子である IVF-ET、クラミジア感染、卵管障害の相
関に着目して考察した。
IVF-ET の適応は一般的に卵管性不妊が 20 ∼ 30 %、男
性不妊が30∼40% 1)であるが、近年、晩婚化に代表され
る社会的背景の変化に伴いその適応が拡大している。患
者は不妊期間や不妊原因にとらわれず比較的自由に治療
法を選択できるようになったため、IVF-ET を受ける人口
は各国で増加の一途を辿っており、この現象がそのまま
子宮外妊娠の増加に繋がっている。
一方、クラミジア感染が引き起こす卵管性不妊も子宮
表2 当科における子宮外妊娠の治療法の内訳
治療法
①手術療法
26例
25例
開腹手術 (卵管切除術)
1例
腹腔鏡下手術
24例
卵管切除術
15例
卵管線状切開術
4例
*1例は追加治療(薬物療法)を施行
間質部切除術
1例
腹膜妊卵除去術
2例
診断的腹腔鏡
2例
*1例は追加治療(薬物療法)を施行
2例*
手術療法+薬物療法(MTX全身投与)
②待機療法
1例
表3 当科における子宮外妊娠ハイリスク因子の内訳
(*リスク因子に重複例あり)
子宮外妊娠の代表的なリスク因子 子宮外妊娠の既往
2例
クラミジア感染の既往
6例
手術の既往
4例
卵管線状切開術
2例
付属器切除術
1例
帝王切開術
1例
不妊
14例
クロミフェン(and /or)AIH療法
8例
IVF-ET
6例
(男性不妊 5例、
卵管障害1例)(ICSIは3例)
表4 クラミジア抗体の陽性率について
Natural cycle
IVF-ET
CC+AIH
クラミジア抗体
陽性
5/12 例
(41.7%)
1/6 例
(16.7%)
0/8 例
(0%)
クラミジア抗体 クラミジア感染
陰性
不明
3/12 例
4/12 例
(25.0%) (33.3%)
5/6 例
0/6 例
(83.3%)
(0%)
3/8 例
5/8例
(37.5%) (62.5%)
外妊娠の原因として最も重要である 7)。卵管閉塞の8割以
上の原因はクラミジアの上行性感染であることや、子宮
外妊娠の4割以上にクラミジア感染が関与しており、クラ
ミジア感染とそれに伴った骨盤内感染の積極的な予防や
治療が子宮外妊娠の発症数を有意に減少させることなど
から、クラミジア感染が卵管性不妊の要因となり、子宮
外妊娠の発症リスクを高めていることは明らかである 8)。
クラミジア感染による卵管障害の発症に関しては、い
まだ不明な点が多い。その理由として、感染しても大部
分が無症候である上、検査の感度特異度が向上しつつあ
るが確実な検査法がないため感染時期の同定が不可能な
こと、発症機序が解明されていないこと、必ずしも感染
と卵管障害が一致しないことなどがあげられる。
検査法に関しては、クラミジア感染の一般的な検査法
平成19年1月(2007)
として PCR 法や In Situ Hybridization 法によるクラミジア
抗原の検出と血清学的検査による抗体価の測定があり、
卵管性不妊症例においては抗原の陽性率、抗体価はとも
に高い 9)。しかし、クラミジア抗原に関しては、それが
子宮頚管から検出されただけでは卵管障害が存在すると
はいえず、逆にクラミジア感染の65%は上部生殖器のみ
に存在するとも報告されている 10)。血清学的検査に関し
ても、抗体価と病勢は必ずしも一致していない。
クラミジアによる卵管障害の発症機序に関しては、現
在、クラミジアによる直接的な卵管上皮の障害 11)よりも
持続感染や反復感染による慢性的な炎症の結果生じる自
己免疫疾患的な機序による説が優勢となっている 12)。そ
の自己免疫抗原としては heat shock protein 60(HSP 60)が
有力視されている 13)。
またクラミジアに感染しても、卵管性不妊の原因とな
る卵管障害を発症しない患者も存在し、卵管障害の発症
の有無は感染時期、治療開始までの期間、個々の患者の
遺伝的な免疫応答の相違などによっても異なると考えら
れる 14)。
今回解析した26症例のうちクラミジア抗体が陰性であ
った11症例においての卵管や腹腔内の詳細な検討は行っ
ておらず、クラミジア感染の既往は完全に否定できてい
ない。今後はクラミジア感染による卵管障害を証明する
ために、卵管の組織学的検討とともに HSP 60 抗体価など
新たな血清学的検査についても検討していく必要がある
と考える。
今回検討した IVF-ET による子宮外妊娠症例において
は、クラミジア感染の既往と、明らかな器質的卵管障害
をともに認めなかった症例が目立っていた。このような
一見、原因不明と考えられる子宮外妊娠症例の発症機序
について考察を試みた。特に IVF-ET の適応となるような
不妊症例には、子宮卵管造影・卵管鏡等により確認され
る卵管障害以外に、臨床的に視認できない微小な卵管障
害が存在する可能性がある一方、IVF-ET の手技そのもの
が子宮外妊娠を引き起こしている可能性もあると考えら
れた。
微小な卵管障害の有無に関しては、近年クラミジア感
染と摘出した卵管の微小な障害を組織学的に検索してい
る論文が散見されるが 2)、今後当科でも詳細に検討して
いく予定である。
子宮外妊娠の発症頻度は conventional IVF-ET、ZIFT、
ICSI、assisted hatching 15)など IVF-ET の手法別に異なるこ
とが知られている 1)。移植胚に関しては、その数が多く、
質が悪い方が子宮外妊娠の発症率が高くなる 1)。また、
IVF-ETの胚移植の手技自体により移植胚の卵管内への逆
行性輸送が起こり、子宮外妊娠が発症するリスクは高ま
る 16) 17) 18) 19) 20) 21)。移植の手技に関しては、移植に際して
子宮内に挿入するカテーテルの位置、培養液の量や粘調
度、子宮内膜の損傷の有無などが子宮外妊娠の発症リス
クを左右する。近年、排卵誘発・黄体補充などによる内
分泌環境の変化により生じる卵管の運動性の低下や母体
年齢などもリスク因子として注目されている 19)。
55 (113)
今回我々は、他院での IVF-ET 症例を扱ったため、IVFET の詳細な方法について検討することができていない。
今後諸説に対する確固たるエビデンスが得られることが
期待される。
おわりに
今日、晩婚化、性感染症の増加、その結果として生殖
補助医療をうける不妊症患者の増加により、子宮外妊娠
はますます増加することが予想される。このような状況
において、クラミジア感染に代表される骨盤内感染症の
予防・治療をはじめ、生殖補助医療の手技の向上、そし
て次回の妊娠予後を向上するためにも適切な子宮外妊娠
の診断・治療法の選択が望まれる。
文 献
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(H18. 9. 6受付)
平成19年1月(2007)
57 (115)
正常大卵巣癌症候群の1例
A case of normal-sized ovary carcinoma syndrome
海老名総合病院産婦人科 マタニティ・センター
Maternity Center, Department of Obstetrics and Gynecology
Ebina General Hospital
砂原 昭一 Shoichi SUNAHARA
佐々木 茂 Shigeru SASAKI
清水 篤 Atsushi SHIMIZU
國重 浩二 Koji KUNISHIGE
黒田 俊孝 Toshitaka KURODA
要 旨
大量の癌性腹水を認めるものの術前には原発巣は不明、
術後の病理組織診により、正常大であった卵巣が原発巣と
判明した normal-sized ovary carcinoma syndrome の症例を経験
した。文献的には本症候群は、びまん性悪性中皮腫、性腺
外ミュラー管腫瘍、転移性腫瘍、卵巣腫瘍の4種の疾患を
含む予後不良の症候群であり、詳細に腫瘍の由来を検討し
た上での症例の蓄積が求められている。症例は57歳の主
婦で、急速に進行する下腹部の膨満を主訴に来院した。画
像診断では大量の腹水と複数の子宮筋腫を認めたが、他に
異常所見は認めなかった。腫瘍マーカーが高値、腹水細胞
診が class V であったため開腹したところ、腹腔内は癌性
腹膜炎の状態で、単純子宮全摘術、両側付属器切除術、大
網部分切除術、骨盤リンパ節郭清術を施行した。病理組織
診の結果は、卵巣原発の漿液性表在性乳頭状腺癌であった。
この診断に際し、形態的に類似した腹膜悪性中皮腫との鑑
別は、Calretinin、CK5/6の免疫組織染色により行った。
乳頭状腺癌の原発巣が腹膜ではなく、卵巣であるとの診断
は、卵巣病変の分布と大きさに基づいて行った。術後パク
リタキセルとカルボプラチンの少量毎週併用化学療法を施
行したところ、腹水は消失し腫瘍マーカーも正常化した。
この後外来にて経過観察中に再発し、現在再発後の化学療
法を行っているが、初回手術後1年を越えて生存している。
既往歴:特記すべきことなし。
月経歴:初経14歳、閉経51歳。
妊娠分娩歴:37歳 正常分娩 女児 3046g。
現病歴: 4 月上旬より急速に進行する下腹部の膨満を
自覚したため、同月当院内科を受診。CT 及び経腹超音波
検査により多量の腹水と子宮の腫大を認めたため、当科
紹介受診となった。
初診時診察所見:腟分泌物は淡血性少量、子宮および
両側の付属器は、多量に腹水があるため所見をとること
ができなかった。経腟超音波では、子宮に5×3 cm の筋
腫核を認めるものの、両側卵巣は描写されなかった。多
量の腹水を伴う子宮筋腫であったが、悪性疾患を否定で
きず、精査目的で当科入院となった。
検査所見:血液検査では貧血は認めず、LDH は 451
IU/l、CRP は 5.45 mg/dlと高値を呈した。腫瘍マーカ
ーは、CA 125 5660 U/ml、CA 72-4 28 U/ml、CA 19-9
42.9 U/ml、CEA 0.2 ng/ml と、CA 125とCA 72-4 の高
値を認めた。細胞診では、子宮腟部、子宮頚部は class IV、
子宮体部は class V、adenocarcinoma、腹壁穿刺により採取
した腹水の細胞診では class V、adenocarcinoma との結果
を得た。画像診断では、骨盤 MRI において大量の腹水と
複数の子宮筋腫を認めた(図1)
。両側卵巣は同定できず、
Key word:正常大卵巣、卵巣癌、癌性腹膜炎、漿液性表在
性乳頭状腺癌
はじめに
今回我々は、大量の腹水を伴う癌性腹膜炎を呈しなが
ら、腹腔内には原発巣と考えられるような腫瘤を認めず、
正常大であった卵巣が原発巣であった、normal-sized ovary
carcinoma syndrome の症例を経験したので報告する。
症 例
患者:57歳主婦。1回経産。
主訴:下腹部膨満。
家族歴:特記すべきことなし。
図1 骨盤 MRI(T2 強調画像)
。
矢印は、子宮筋腫を示している。
58 (116)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
他に腹水の原因と考えられるような腫瘤影は認めなかっ
た。また、胸部、腹部 CT や消化管内視鏡検査でも悪性
腫瘍原発巣と考えられるような病変は認められなかった。
以上の所見より、組織学的診断による原発巣の同定およ
び腫瘍量を減少させることを目的に、初回開腹術を施行
した。
手術所見:開腹したところ、腹腔内は癌性腹膜炎の状
態で、粟粒大の播種性病変を腸管漿膜に認めたが、2 cm
を超える腫瘤は認めなかった。子宮には多発性の筋腫を
認めた(図 2)。両側卵巣は正常大で、表面に細顆粒状の
腫瘤を認めた(図2)
。2700 ml の淡黄色の腹水が吸引され
た。単純子宮全摘術、両側付属器切除術、大網部分切除
術、骨盤リンパ節郭清術を施行し、最後に腹腔内にシス
プラチン(CDDP)を50 mg 投与し閉腹した。手術時間は
2時間、出血量は腹水の一部を含めて860 ml であった。
病理所見:組織学的には漿液性表在性乳頭状腺癌で、
卵巣表層より異型細胞が石灰化小片を伴って、外方性に
乳頭状に増殖しているのが認められた(図 3)。腹膜に認
められる病変も、組織形態学的には同様であった(図5)
。
卵巣病変は表層のみではなく、実質病変を伴っており、
卵巣原発との病理医の診断を得た(図 4)。なお免疫組織
染色で、本症例では Calretinin、CK 5/6が陰性であるこ
とから、形態的に類似した腹膜悪性中皮腫は否定的との
見解であった(図 5)。左外腸骨リンパ節に転移を認め、
図2 摘出標本。
図3 卵巣組織像(x40)
。
術後の進行期分類は pT3b、N1、M0(FIGOⅢc)と決定さ
れた。
手術後経過:術後 1 ヵ月目より、パクリタキセルとカ
ルボプラチンの少量毎週併用化学療法(weekly TJ 療法)
を計24回施行したところ、腹水は消失し、洗浄腹水細胞
診も class Ⅱ と陰性化し、腫瘍マーカーも正常化した。し
かし、術後 1 年弱で、再び腹水の出現と腫瘍マーカーの
再上昇を伴って再発し、現在再発後の化学療法を行って
図4 卵巣組織像(x200)
。
図5 免疫組織染色による検討。
(+)は染色陽性、
(−)は陰性を表す。組織像において、
両抗体により、正常腹膜組織は染色されているが、腫瘍
部分は染色されていないことに注意。
図6 術後経過。
平成19年1月(2007)
59 (117)
いる(図6)
。
考 察
開腹時の所見で、腹腔内に無数の播種性悪性病変が広
がっているものの、卵巣は正常の大きさで、術中あるい
は術前の探索で明らかな原発巣を同定できないような臨
床的状況を、1989 年に Feuer らは Normal-sized ovary
carcinoma syndrome と命名した 1)。発症後1年以内に死亡
することもめずらしくない、予後不良の症候群である。
Feuer らの目的は、このような臨床症状を呈する疾患が、
十分な検討なしに進行した卵巣癌と診断されている傾向
に警鐘を鳴らし、詳細に腫瘍の由来を検討した上での症
例の蓄積を提唱することにあった。
同論文で、Feuer らは Normal-sized ovary carcinoma
syndrome の11症例を解析し、本症候群にはびまん性悪性
中皮腫(4症例)
、性腺外ミュラー管腫瘍(2症例)
、転移
性腫瘍(4症例)
、卵巣腫瘍(1症例)の4種の疾患が含ま
れていたと報告している 1)。本邦では山崎らが 14 症例の
解析を行い、その内訳は、びまん性悪性中皮腫(4症例)
、
性腺外ミュラー管腫瘍(7 症例)、転移性腫瘍(1 症例)、
卵巣腫瘍(2症例)であったと報告している 2)。注目すべ
き点は、両報告ともに卵巣腫瘍の頻度は低いという点で
ある。卵巣外腹膜原発癌の症例をまとめた報告としては、
小宮山らのものが注目される 3)。
今回報告した症例は、組織形態学的に卵巣原発の漿液
性表在性乳頭状腺癌(serous surface papillary carcinoma of
the ovary)4)と診断された。漿液性表在性乳頭状腺癌の診
断に際してまず問題となるのは、組織学的に類似したび
まん性悪性中皮腫との鑑別である。両者の鑑別には免疫
組織化学が有効であることが報告されている 5)。本症例
では、悪性中皮腫の陽性マーカーである calretinin、keratin
5/6 がともに陰性であることから、悪性中皮腫は否定的
と考えられた。
漿液性乳頭状腺癌と診断した場合、次に問題となるの
は、その組織発生が卵巣原発か、腹膜原発かということ
である。両者を免疫組織化学によって鑑別する手法は確
立されておらず、その鑑別は非常に困難である。このた
め組織像で卵巣病変の分布と大きさを主要な判断材料と
して、診断がなされることとなる。卵巣外腹膜原発漿液
性乳頭状腺癌(extraovarian peritoneal serous papillary
carcinoma)に関して Gynecologic Oncology Group は、
(1)
卵巣は正常大か良性の腫大、(2)卵巣外病変が卵巣表層
病変より大きい、(3)卵巣には組織学的に癌がないか、
あっても表層に限局あるいは間質、組織内病巣 5×5 mm
以下、(4)病理組織が卵巣漿液性乳頭状腺癌と同様、と
の診断基準を提唱している 6)。本症例の場合、卵巣病変
は卵巣表層が主体ではあるが、わずかに卵巣間質への浸
潤像を認め、なおかつ明らかに 5 mm 大以上の腫瘍性病
変が認められる。従って、本症例は腹膜原発の漿液性乳
頭状腺癌の卵巣浸潤というより、卵巣原発の漿液性表在
性乳頭状腺癌の腹膜播種であると診断するのが妥当であ
ると考えられた。
多量の癌性腹水を伴う本症例のようなケースは、積極
的な治療が行われない場合も多いと考えるが、我々は生
存期間の延長を期待し、あえて骨盤リンパ節の郭清を含
む積極的な卵巣癌の手術療法を施行し、術後は卵巣癌の
標準治療となっているパクリタキセルとカルボプラチン
の併用化学療法(TJ 療法)を施行した。現在、再発後の
化学療法中であるが、発症後 1 年以内に死亡との報告も
多い中、1年を越えて生存しており、今後も本症例に対す
る治療に努力していきたいと考えている。
文 献
1) Feuer GA, Shevchuk M, Calanog A.:Normal-sized ovary
carcinoma syndrome. Obstet Gynecol. 1989 ; 73:786−
792
2) 山崎輝行、波多野久昭、鈴木章彦、菅生元康、中村正
雄、関谷雅博、上田典胤、羽場啓子、塚原嘉治、藤井
信吾:Normal-sized ovary carcinoma syndrome、14例の
病理組織学的解析、日産婦誌、1995 ; 47:27−34
3) 小宮山慎一:卵巣外原発性腹膜癌、primary serous
carcinoma of the peritoneum(PSCP)に関する臨床病理
学的検討、Oncol Chemother; 2000 ; 16:21−26
4) Gooneratne S, Sassone M, Blaustein A, Talerman A.:
Serous surface papillary carcinoma of the ovary: a
clinicopathologic study of 16 cases. Int J Gynecol Pathol.
1982 ; 1:258−269
5) Ordonez NG.: Role of immunohistochemistry in
distinguishing epithelial peritoneal mesotheliomas from
peritoneal and ovarian serous carcinomas. Am J Surg Pathol.
1998 ; 22:1203−1214
6) Bloss JD, Liao SY, Buller RE, Manetta A, Berman ML,
McMeekin S, Bloss LP, DiSaia PJ.:Extraovarian peritoneal
serous papillary carcinoma: a case-control retrospective
comparison to papillary adenocarcinoma of the ovary.
Gynecol Oncol. 1993 ; 50:347−351
(H18. 9. 10受付)
60 (118)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
「話題提供」
先天性風疹症候群発生予防のためのアンケート調査報告
Questionnaire investigation for prevention of congenital rubella syndrome
神奈川県産科婦人科医会異常分娩・先天異常対策部
Committee of Congenital Defect, Kanagawa Association of
Obstetricians and Gynecologists
奥田 美加 Mika OKUDA
安藤 紀子 Noriko ANDO
石川 浩史 Hiroshi ISHIKAWA
井槌慎一郎 Shinichiro IZUCHI
内田 能安 Noa UCHIDA
小川 公一 Koichi OGAWA
齋藤 圭介 Keisuke SAITO
松島 隆 Takashi MATSUSHIMA
丸山 浩之 Hiroyuki MARUYAMA
望月 純子 Junko MOCHIZUKI
関 賢一 Kenichi SEKI
朝倉 啓文 Hirofumi ASAKURA
東條龍太郎 Ryutaro TOJO
平原 史樹 Fumiki HIRAHARA
八十島唯一 Tadaichi YASOSHIMA
要 旨
はじめに
【目的】先天性風疹症候群(CRS)はワクチン対策によ
って根絶しうるが、2004年に年間10例の CRS が発生した
事態を受け、厚生労働省は「風疹流行および先天性風疹症
候群の発生抑制に関する緊急提言」を発表した。これを周
知徹底する目的で、アンケート調査をおこなった。
【方法】神奈川県産科婦人科医会会員を対象に、ファッ
クスネットで「妊婦の風疹に関するアンケート」を送付、
回収した。アンケート結果の詳細および解説は冊子にまと
め会員に配布した。
【成績】返答数 177 名、回答率は 20 %と低率であっ
た。<妊婦の風疹抗体検査>93%が施行しているが、検
査の際に問診を必ず確認している会員は27%にとどまっ
た。風疹 IgM には長期陽性例が存在し必ずしも最近の感染
とは限らないことを、23%の会員が知らないと回答した。
抗体価が低い者に対する産褥期間中の風疹ワクチン接種を
実施している会員は12%にとどまった。<ワクチン接種
の実際>自施設で風疹ワクチン接種を行っている会員は
58%、値段は5000円前後が多かった。ワクチン接種前後
の避妊指導について問診票で書面により確認しているのは
8%のみであった。<「提言」について>実行しているの
は16%と低かった。二次相談窓口の存在を66%の会員が
知らなかった。
【結論】CRS 根絶のためのワクチン対策や、妊婦の風疹
抗体値の適切な対応と解釈は、まだまだ周知が不十分であ
ると言わざるを得ない。今後も啓発が必要と考えられた。
妊婦に対してスクリーニングとして風疹抗体価を調べ
ることは極一般的に行われている。胎児先天性風疹症候
群(CRS)の発生を避けるためであり、抗体陰性および
低抗体価の者に対しては風疹罹患予防の生活指導および
妊娠終了後の風疹ワクチン接種勧奨を、高抗体価の場合
は CRS リスクを正しく評価することを目的とする 1)。
風疹はワクチン接種を徹底することによって撲滅しう
るはずであるが、現在でも、日本では毎年1∼2例の CRS
が発生しており、2003年末∼2004年にかけての風疹の小
流行の結果、2004年には年間10例と多くの罹患児が発生
した。そこで、2004 年の 9 月に厚生労働省は「風疹流行
および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」
(http://idsc.nih.go.jp/disease/rubella/rec200408.pdf)を発表し、
風疹感染に関する知識を再度まとめなおし、医師に対し
て啓発を行った 2)。
風疹抗体検査は、産婦人科に携わる全医師が正しい知
識を持ち、正しい診断そして診療が行われるべき検査で
ある。そこで、神奈川県産科婦人科医会異常分娩・先天
異常対策部では、ファックスネットを用いて、神奈川県
産科婦人科医会会員(以下「会員」
)に対しアンケート調
査をおこない、厚生労働省が発表した情報を十分に理解
しているか否かを調査した。その集計結果を報告し、厚
生労働省の提言について解説する。
なお、調査結果および解説は小冊子としてまとめ、会
員にむけてすでに配布済みである。ほぼ同内容であるが、
平成19年1月(2007)
61 (119)
と低率であった。年代構成、勤務先構成は表1、表2のと
おりであった。
周知徹底するため、再度、ここに報告する。
調査方法
2004 年 9 月に厚生労働省が作成した「風疹流行および
先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」の内容
は、診療にあたる会員全てが知っておくべきであり、広
く周知徹底する目的で、全会員を対象に「妊婦の風疹に
関するアンケート」を行った(図 1)。アンケートはファ
ックスネットを用いて全会員を対象に行った。
結 果
ファックスネットにより全会員に対してアンケートを
施行した。返答数 177(うち無回答 5 例)、回答率は 20 %
表1 回答者の年代構成
年
代
人
数
%
30 歳 代
14
8
40 歳 代
40
23
50 歳 代
48
28
60 歳 代
59
34
70 歳 代
1
1
不
10
6
明
表2 回答者の勤務先構成
人数
%
産婦人科開業(分娩取り扱いあり)
勤務先
47
27
産婦人科開業(分娩なし)
71
42
他科開業
1
1
総合病院の勤務
30
17
大学病院勤務
10
6
不明
13
6
1.概要
① 半分程度の回答者は「提言」のことを知っていたが、
全てを読み実行している会員はわずか 16 %のみであっ
た。
② 妊婦健診時の風疹抗体(HI法)が256倍以上を高値
と考える会員が 30 %、512 倍以上を高いとする会員が
30 %であった。そして、高値と考えた場合には、風疹
IgM 抗体を80%の方が検査していた。しかし、IgM 抗体
には時に持続的に弱陽性が続くことを、23 %の会員は知
らないと回答していた。
③ 「提言」では、256倍以上では風疹 HI 抗体と IgM 抗
体の再検を勧めており、32 倍∼ 128 倍では、風疹患者と
の接触や、発疹が出たような罹患が疑われる既往歴があ
る場合に同様の再検査を推奨している。本来、抗体価の
高低のみでなく、詳細な問診が風疹罹患の診断には必要
である。アンケート調査では83%が風疹抗体採血時に問
診を重視していた。なお、32 倍以上でも再感染による
CRS がまれに起こりうるため問診は不可欠である。
④ 不妊症治療開始時に、風疹抗体を調べて欲しいが、
実際に検査している会員は15%に過ぎなかった。
⑤ 風疹(HI)抗体低値(16倍以下)の妊婦は、感染す
る可能性があり、夫、子供、同居家族への風疹予防接種
が勧奨される。そして、産褥早期に再接種が望ましいと
されている。しかし、産褥早期の予防接種はわずか28%
の会員でしか実施されていなかった。
⑥ 判断に迷った場合には、二次施設(関東近辺では横
浜市立大学他)に連絡すると、正しい対処法を教えてくれ
る。しかし、二次施設の存在を66%の会員が知らないと
答え、利用した経験のある会員はわずか3%のみであった。
図1 先天性風疹症候群の発生抑止に関するアンケート
62 (120)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
2.各設問の詳細
Ⅰ)妊婦に対する風疹抗体価検査
○ 妊娠初期に風疹抗体価を検査していますか?
していない
4%
無回答
3%
CRS のリスクは問診によってかなり確実に推測でき、
血清学的診断は補助的なものである。抗体価の正しい評
価のために、問診(発疹、風疹患者との接触、周囲での
風疹流行)の聴取は必須である 1)。しかし、「必ず確認」
している会員は約1/4とやや少なかった。
○ 妊娠初期検査で風疹抗体価が高い場合いくつ以上
を高値としますか?
(%)
40
している
93%
36.4%
35
34.3%
30
25
20
15.7%
図2
15
10
ほとんどの施設(93%)が検査をおこなっていた。
風疹抗体陰性の妊婦へ生活上の注意を促す点から、初診
時の検査が望ましい。もし流産に至っても、ワクチン勧
奨につながる。また、抗体価の低下や再感染による CRS
の報告もあるため、抗体測定歴のある経産婦に対しても
検査すべきである。
○ 風疹抗体価測定方法は?
特になし
100%
LA法
80%
5
0
8倍
16倍
32倍
64倍 128倍 256倍 512倍 1024倍 2048倍
図5
結果では HI 抗体価128倍から512倍以上を高いと診断
していた。
提言では、初感染による HI の上昇を見逃さないため
HI 法で256倍以上の場合に HI の再検や IgM の測定など更
なる検索をすることになっている。
ただし、HI はどんなに高くとも単独では CRS ハイリス
クとはいえない。
HI法
60%
○ 妊娠初期検査で風疹 HI 抗体価が高かった場合どう
しますか?
40%
その他
5%
20%
0%
問診で何も無ければ
特に検索しない 15%
図3
低抗体価の判定や感染後の動向がよく検討されたHI法
が勧められている。
風疹 IgM 抗体価
を検査する 80%
○ 初期検査の時問診をしていますか?
確認していない
14%
図6
無回答
4%
必ず確認
している
27%
状況に応じ
55%
図4
提言では、HI 法で256倍以上の場合に HI の再検や IgM
の測定など更なる検索をすることになっている。しかし、
確実に問診が行われるなら本来は省略できる 1)。HI の値
が高値でも注意深い問診で何も聴取されなければ CRS の
可能性はまずない(少なくとも先天異常児の自然発生率
を超えることはない)
。
平成19年1月(2007)
63 (121)
○ 風疹 IgM 抗体が陽性や±であっても、長期陽性例な
どがあり、必ずしも最近の感染とは限らないことに
ついて知っていましたか?
Ⅱ)不妊症と風疹抗体検査
○ 不妊症治療前に風疹抗体を調べていますか?
している
18%
38
知らなかった
していない
82%
126
知っていた
0
20
40
60
80
100 120 140
図9
図7
比較的多くの会員が知っていたが、約1/4は知らない
と答えていた。
風疹特異的 IgM( EIA 法)は、初感染から4日以内に
全例で陽性となり、3∼4カ月で陰性化するよう cut off 値
が設定されている。しかし、最近の感染でなくても陽性
または±を示す例が 1 %程度存在し、数年以上にわたっ
て陽性を示す例もある 3)。こうしたケースでは CRS のリ
スクはない。
対応に苦慮する症例に遭遇した場合は、二次相談施設
(後述)がある。
○ 不妊症患者が風疹抗体価低値あるいは陰性の場合、
ワクチンを勧めますか?
勧めていない
25%
勧めている
75%
図10
○ 妊娠初期検査で風疹抗体が陰性または低値であっ
た場合の対処法は?(複数回答)
今回の産褥期間中に風疹ワクチン接種を
施行する
22
分娩後、次の妊娠までに風疹ワクチン接種
を受けるように勧める
104
5
同居家族への風疹ワクチン接種を実施する
18
同居家族への風疹ワクチン接種を勧める
子どもの多い場所を避けるなどの
生活指導をする
109
15
妊娠中期に抗体価を再検する
38
特に何もしない
0
20
40
60
80
100
120
図8
風疹抗体価が陰性または低抗体価と判明したら、新た
な風疹の罹患を防止するため風疹患者との接触を避ける
よう注意を促す必要がある。
人混みを避ける注意と、同居家族へのワクチン接種が
望ましい。
また、今回の妊娠終了後に風疹ワクチン接種を受ける
機会を提供すべきである。
できれば、産褥期の産科入院中が好機であるが 4)、実
際に接種を実行している施設はまだまだ少ないことが調
査結果から分かる。
なお、HI 16倍以下がその対象であることは理解してお
くべき知識である。
不妊治療前に風疹抗体価をチェックしていると答えた
会員は2割に満たなかった。しかし、抗体価が低い場合、
多くは風疹ワクチン接種を勧めている。
不妊治療で妊娠が成立した直後に風疹に初感染し、胎
児感染が証明され人工妊娠中絶をした例が実際に存在す
る。こうした事態を避けるためにも、治療開始前の抗体
検査の実施と風疹(HI)抗体価16倍以下の女性への風疹
ワクチン接種がすすめられる。
また、抗体測定歴があれば、妊娠成立後の抗体価を解
釈する際に参考となる。
Ⅲ)ワクチン接種
○ あなたの施設で風疹ワクチンの接種は行っていま
すか?
行っている
58%
一切行って
いない
29%
現在は行っていな
いが、今後の施行
を検討している 13%
図11
ワクチン接種をおこなっていないとの回答が 3 割弱あ
った。
64 (122)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
風疹ワクチンは副反応の少ない比較的安全なワクチン
である。自施設での接種が可能であれば、接種を希望す
る者へ迅速に対応しやすい。
接種をしたら、ロット番号を貼付した接種証明書の発
行や、産後であれば母子健康手帳の母体経過の欄に記載
をする 4)。
○ 風疹ワクチンの値段
円
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
1
5
9 13 17 21 25 29 33 37 41 45 49 53 57 61 65 69 73 77 81 85 89 (のべ人数)
防接種の勧奨
2. 定期予防接種勧奨の強化※
3. 定期接種対象者以外で風疹ワクチン接種が勧奨さ
れる者への接種強化
1)10 代後半から 40 代の女性、このうちことに妊
娠の希望あるいはその可能性の高い女性
2)産褥早期の女性(接種対象となる風疹 HI は、
抗体陰性または HI 16倍以下とされている。
)
※ 定期予防接種については、2006 年 4 月 1 日及び 6 月 2
日に予防接種に関する政省令が改訂され MR ワクチンが
導入された。接種対象者は生後12∼24カ月未満(第一期)
、
および就学前 1 年間(第二期)の男女である。麻疹単抗
原ワクチン、風疹単抗原ワクチンも定期接種の対象ワク
チンだが、予防接種率の向上などの理由から、特別な場
合を除いて MR ワクチンを接種勧奨することが適当であ
るとされている。なお下記のホームページに、ワクチン
に関する情報が随時更新されている。
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/vaccine-j.html
図12
今回の調査では5000円程度が多いようである。
○ 妊娠可能な女性にワクチン接種する場合、避妊の
指示を行っていますか?
問診票に明
記している
8%
その他
2%
避妊について
の説明をして
いない 10%
Ⅳ)厚生労働省から発表された「風疹流行および先天性
風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」について
○ 昨年、厚生労働省から「風疹流行および先天性風
疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」が発せら
れましたが、これについて
すべて読み、実行して
いる。または実行予定
である
26(16%)
知らな
かった
30(18%)
口頭で情報を
与えている 80%
目を通したが参
考程度である 82(51%)
図14
図13
風疹ワクチンの添付文書では、妊婦は接種不適当者で
あり、あらかじめ約1ヵ月間避妊した後に接種すること、
及びワクチン接種後約 2 ヵ月間は妊娠しないように注意
させること、と記載されている。しかし、これまで風疹
ワクチンによる CRS 発生の報告はなく、接種後の妊娠判
明や避妊失敗例に対して人工妊娠中絶をすすめる必要は
ない。
今回の調査では殆どの会員がワクチン接種後の避妊を
口頭で伝えているが、可能な限り書面による確認が望ま
しい。国立感染症研究所の作成した問診票
(http://idsc.nih.go.jp/disease/rubella/041119/041119m.pdf)に
はその旨が明記されている。
風疹ワクチン接種は次の方々に勧奨されている(提言
より)
。
1. 妊婦の夫、子供及びその他の同居家族への風疹予
知っていたが
読んでいない
25(15%)
多くの会員は提言の存在は知っているようだが、すべ
てを読み実行している会員は16%にすぎず、内容まで把
握している会員は少ない結果であった。
○ 妊娠中の風疹感染疑い例の対応に関する相談窓口
(二次施設)が地区ごとに設定されています。この
ことを知っていますか?
利用したことがある
5(3%)
52(31%)
知っていた
112(66%)
知らなかった
0
20
40
60
図15
80
100
120
平成19年1月(2007)
65 (123)
66 %の会員が 2 次施設を知らない。実際に利用したこ
とのある会員は 3 %のみである。提言の存在は知られて
いるが、内容に関しては十分浸透しているとは言えない。
提言は下記URLからダウンロード可能である。
http://idsc.nih.go.jp/disease/rubella/rec200408.pdf
とくに二次相談施設の存在は周知し、対応に困ってい
る症例など相談すべきである。関東では横浜市立大学
(福浦、センター病院いずれでも対応可能)、東京大学、
国立成育医療センター、帝京平成短期大学に設置されて
いる。
まとめ
今回のアンケート調査では、回答率が低いためあくま
で参考にとどまるが、産婦人科診療における風疹抗体検
査や風疹ワクチン接種の実態についての概要が示された。
今回、アンケート調査をおこなった最大の目的は、
「提
言」の周知徹底である。これを機会に再度提言に目を通
していただき、風疹抗体検査結果の解釈、風疹罹患疑い
妊婦の取り扱い、風疹ワクチン接種の勧奨について今一
度確認をして頂ければ幸甚である。重要ポイントを以下
に示す。
・ 妊娠初期には風疹(HI)抗体価測定が望ましい。
・ 前回妊娠時、抗体価が高くともまれに再感染が生じ
ることがある。
・ 風疹(HI)抗体価16倍以下は風疹罹患のリスクが高
い。
・ 風疹罹患のリスクがある妊婦は風疹患者との接触を
避けるよう注意を促す。
人混みを避ける注意、同居家族へのワクチン接種
が望ましい。
また、今回の妊娠終了後に風疹ワクチン接種を受
ける機会を提供すべき。
・ 風疹(HI)抗体価 256 倍以上の場合は、問診を再確
認し、ペア血清や IgM 抗体測定などの検査を行う。
・ 風疹 IgM 抗体弱陽性の持続例が1%に認められる。
・ 風疹感染は注意深い問診により診断しうる。
・ 不妊治療前には風疹抗体価の測定が望ましく、陰性
のものには風疹ワクチン接種を勧める。
・ 風疹ワクチンは妊婦に接種すべきでないが、今まで
に、風疹ワクチンによる CRS 発症の報告はない。
・ 対応に苦慮する症例があれば二次相談施設へ連絡を。
関東では横浜市立大学(福浦、センター病院いず
れでも対応可能)
、東京大学、国立成育医療セン
ター、帝京平成短期大学。
・ 全国の風疹二次相談施設は、
http://idsc.nih.go.jp/disease/rubella/rec200408.pdf
に掲載されている。
文 献
1) 種村光代:風疹 ―妊娠中の風疹罹患への対応、周産
期医学、2002 ; 32:849−852
2) 平原史樹、奥田美加:風疹ウイルス、産婦の実際、
2006 ; 55:381−393
3) 加藤茂孝、干場勉:風疹 IgM 抗体はいつまで検出さ
れるか、臨床とウイルス、1995 ; 23:36−43
4) 奥田美加、石川浩史、春木篤、高橋恒男、遠藤方哉、
平原史樹:当センターにおける産褥風疹ワクチンの実
施状況、日産婦神奈川会誌、2006 ; 42:152−155
(H18. 8. 16受付)
66 (124)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
「研修講演」
妊娠中後期の胎児超音波診断
Ultrasound diagnosis of fetal abnormalities in mid and late gestation
国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科
Division of Fetal Medicine, National Center for Child Health and
Development
左合 治彦 Haruhiko SAGO
要 旨
胎児超音波検査は、出生前や出生直後の管理・治療を必
要とする胎児疾患を見出すことを目的とし、一般の産科医
が、比較的短時間に、日常臨床の場で行える方法であるこ
とが望まれる。検査時期は妊娠中後期の妊娠20週と30週
の2回で、標準検査手順は胎児計測、羊水量、胎児形態観
察、胎盤の順で行っている。胎児形態の見方は、頭部(脳
室横断面、小脳横断面で大脳、側脳室、小脳)から胸部
(四腔断面、三血管断面、心室流出路で心臓、肺)、腹部
(胃、腎、膀胱)と胎児横断面で観察し、最後に胎児矢状
断面で脊椎を観察する。
Key word:胎児超音波検査、胎児疾患、出生前診断
はじめに
出生した児の約2∼3%になんらかの先天奇形がみられ
るが、胎児超音波検査により出生前に診断される場合も
少なくない 1)。胎児超音波検査はいまや日常産科臨床に
おいて必要不可欠な検査であるが、一般産婦人科医にと
って、胎児超音波検査をどのような手順で行い、どこを
観察し、どの程度までみたらいいか判然とせず、臨床の
場で苦慮することも多い 2)。ここでは妊娠中後期の胎児
超音波検査について、標準検査の考え方と実際について
わかりやすく解説するとともに、代表的な胎児疾患につ
いて概説する。
胎児超音波検査について
超音波検査の目的は、胎児異常や胎盤・臍帯異常を的
確に診断することにより適切な出生前の管理・治療(胎
児治療)や出生後の管理・治療を提供するため、すなわ
ち周産期管理向上のためである 3) 4)。超音波検査において
標準検査と精密検査を明確に区別する必要がある 2)。精
密検査とは異常の疑いのある妊婦を対象として、胎児や
胎盤・臍帯の異常を的確に診断するとともに合併奇形の
有無や重症度を判定することである。高度医療機関にお
いて専門医によって行なわれる。一方、標準検査は胎児
超音波スクリーニング検査とほぼ同義で、一般妊婦とい
う多くの母集団の中から精査すべき対象(異常を有する
とおもわれる胎児)を効率よくひろいあげる検査である。
現在、観察項目範囲について一定の見解や合意はないが、
一般の産科医が一定のトレーニングにより、一般の超音
波検査機器を用いて、比較的短時間(10∼15分)に日常
臨床の場において実際に行える方法が求められている。
当センターで行っている標準検査を概説する。
胎児超音波標準検査手順
検査時期は妊娠中後期の妊娠 20 週と 30 週としている。
この時期は胎児の各臓器が観察しやすく、また胎児異常
が見出された場合にも分娩前に対処できる。
具体的な検査手順を表1に示す。まず胎児計測を行う。
次に羊水量を計測し、その後胎児形態について観察し、
最後に胎盤・臍帯をみる 3) 4)。標準検査の目的が出生前の
管理・治療や出生後の管理・治療を必要とする疾患を見
出すためであり、精密検査ではないので、胎児形態観察
部位は頭部、胸部、腹部、脊椎とし、手指や顔面は通常
除いている。多指症など手指の異常や口唇口蓋裂などは、
単独であれば出生前に診断がついていなくても周産期管
理に支障がないためである。
胎児計測と羊水量
胎児計測法には東大式、阪大式などもあるが、日本超
音波医学会の超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値
2003年5)を用いることを推奨する。BPD(児頭大横径)
、
AC(腹部周囲長)、FL(大腿骨長)を計測して推定体重
を求める。胎児体重推定式は EFW = 1.07 BPD3 + 3.00 X
10-1AC2 XFL である。BPD は透明中隔が描出される断面
で頭蓋骨外側から対側頭蓋骨内側までを計測する。
(図1. 1)
表1 胎児超音波スクリーニング検査手順
1.胎児計測
BPD, AC, FL
2.羊 水 量
最大羊水深度 2 cm 未満:過少、8 cm 以上:過多
3.形態観察
1)頭部 大脳
側脳室 10 mm 以上:拡大
小脳
後頭蓋窩 10 mm 以上:拡大
2)胸部 肺
四腔断面、心横径(週数 mm ) 心臓
三血管断面、大動脈・肺動脈交叉
3)腹部 腹壁
胃、腸管
腎臓 腎盂前後径 10 mm 以上:拡大
膀胱
4)脊椎
4.胎 盤
平成19年1月(2007)
67 (125)
1. BPD
2. AC
5. 側脳室
3. FL
4. 羊水量
6. 後頭蓋窩
図1 胎児超音波標準検査(胎児計測・羊水量)
AC は腹部大動脈に直交する腹部断面で、胃胞と前方1/3
∼ 1 /4 に肝内臍静脈が描出される断面において、エリプ
ス法にて腹部断面の近似楕円外周を計測する。(図 1. 2)
FL は大腿骨最長軸で、大腿骨化骨部分の両端間を計測す
る。(図 1. 3)標準体重の目安は 27 週: 1000 g、30 週:
1500 g、33 週: 2000 g、36 週: 2500 g である。一般に
は±1.5∼2 SD、±2∼3週、±20%以上標準よりかけ離
れた場合異常と判定する。
羊水量の計測は、羊水量が一番多いところの垂直深度
を計測する最大羊水深度を用いている(図1. 4)
。最大羊
水深度が2 cm 未満は羊水過少、8 cm 以上は羊水過多と診
6)。胎児に異常がみられる場合
断する(2 cm 8 cmルール)
は発育異常や羊水量の異常を伴うことが多く、胎児計測、
羊水量ともに正常範囲であれば胎児に異常がみられる可
能性は低くなる。
胎児形態観察
胎児形態の見方は、頭部から胸部(肺、心臓)、腹部
(消化器、泌尿器)と胎児横断面で観察し、最後に胎児矢
状断面で脊椎を観察する 3) 4)。各断面の正常像を理解し、
正常像と異なる像が観察された場合は異常を疑う。異常
と判定する計測値(側脳室径、後頭蓋窩径、腎盂前後径
は 10 mm 以上を拡大)は簡便なものを用いている(10
3) 4)。
mm ルール)
頭部の観察は、脳室横断面が基本で頭蓋骨の形、大脳、
側脳室を観察する(図2. 5)
。次にプローブを小脳の方に
少し傾けた小脳横断面で小脳を観察する(図2. 6)
。側脳
室径が 10mm 以上で脳室拡大を疑う(10 mm ルール)6)。
後頭蓋窩径は10 mm 以上で拡大と判定する(10 mm ルー
ル)6)。水頭症では脳室が拡大する。小脳萎縮では後頭蓋
窩が拡大する。
図2 胎児超音波標準検査(頭部)
胸部の観察の基本は心臓の四腔が描出される四腔断面
である(図 3. 7)。心臓は左前に位置し、軸は約 45 度で、
両心室がほぼ同じ大きさである。心臓の周囲には左右の
肺が見られる。心臓の位置の異常、軸の異常、心室の左
右差があれば胸部疾患や心疾患が疑われる。正常肺がみ
られなければ胸部疾患を疑う。心臓の大きさは横径で計
測し、大体週数 mm が標準である(妊娠30週であれば30
mm 前後)
。心拡大があれば心疾患や心負荷が疑われる。
次に大血管系を観察するために三血管断面を描出する
(図3. 8)
。これは四腔断面の位置よりプローブをそのまま
児の頭側に平行に移動すると、左前方から右後方へ肺動
脈、大動脈、上大静脈の断面が一直線上に見られる。血
管径の大きさも肺動脈>大動脈>上大静脈の順である。
次に心室流出路を観察する。四腔断面よりプローブをそ
のまま児の頭側に傾けると、左室から大動脈(図 3. 9)、
その次に右室から肺動脈が描出される(図3. 10)
。このよ
うに両大血管を描出し、交叉を確認する。これらに異常
がみられれば大血管系の異常を疑う。
腹部の観察は四腔断面がみられる位置よりプローブを
そのまま児の尾側へ移動する。まず胃が左側にみえ(図
4. 11)
、次に両側腎臓が背側に見える(図4. 12)
。胃以外
に大きな腸管がみられたら腸管拡張を疑う。水腎症では
腎盂の拡大がみられる。腎盂の前後径を計測し、10 mm
以上を腎盂拡大とする 6)。次に膀胱から会陰を観察する
(図4. 13)
。
最後に矢状断面を描出し、脊椎を観察する(図4. 14)
。
脊髄髄膜瘤や仙尾部奇形腫は腰椎から仙骨部に見られる。
このように頭部から尾部まで系統的に観察する。
また胎盤についても位置(前置胎盤の有無)や臍帯付
着部について観察する。
68 (126)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
7. 四腔断面
8. 三血管断面
1
1. 胃
1
2. 腎臓
9. 左室流出路
1
0. 右室流出路
1
3. 膀胱
1
4. 脊髄
図3 胎児超音波標準検査(胸部)
表2 胎児超音波スクリーニング検査と胎児異常
1.胎児計測
IUGR、巨大児
2.羊水量
羊水過少、羊水過多
3.形態観察
1)頭部・脊椎
2)胸部
肺
心臓
3)腹部
腹壁
胃、腸管
腎臓
膀胱
水頭症、脊髄髄膜瘤
横隔膜ヘルニア、CCAM、胸水
内臓錯位、 Ebstein 奇形、左心低形成
腹壁破裂、臍帯ヘルニア
十二指腸閉鎖、空腸閉鎖
水腎症、巨大尿管
巨大膀胱
代表的胎児疾患
胎児超音波標準検査を行うには、正常像の理解に加え
て、各種胎児疾患に対する知識が必要である。検査項目
と主な胎児異常を表 2 に示す。頻度が高く、重要な胎児
疾患について診断の要点について概説する。
中枢神経系の異常では、脳室拡大・水頭症、脊髄髄膜
瘤が多い。脊髄髄膜瘤では脳室拡大を伴うことが多いの
で、脳室拡大をみた場合は脊椎を注意して観察する。
胸部の異常では、先天性横隔膜ヘルニア、CCAM(肺
嚢胞性腺腫様奇形)
、胸水症が多い。先天性横隔膜ヘルニ
アは横隔膜の一部が欠損しているために腹部臓器が胸腔
内に脱出して肺低形成をきたす重篤な疾患である。四腔
断面で胸腔内に胃と腸管が見られ、心が右方偏移してい
る(図5 a)
。CCAM は肺の良性嚢胞性疾患で、大小の嚢
胞を有する胸部占拠性病変である(図 5 b)。自然軽快す
る例もある一方、胎児水腫をきたした場合は致死的であ
る。胸水は、原発性で大量に貯留し胎児水腫をきたした
場合は治療対象となる(図 5 c)。心・大血管の異常はさ
まざまな疾患があり、正確な診断を出生前につけること
は難しいことも多いが、異常を疑うことが重要である。
腹壁異常では、腹壁破裂、臍帯ヘルニアが多い。腹壁
破裂は腹腔外に腸管の脱出を認めるが、周囲に嚢は認め
図4 胎児超音波標準検査(腹部)
a. 先天性横隔膜ヘルニア
b. CCAM
c. 胸水
図5 胎児胸部疾患の超音波画像(四腔断面像)
a) 先天性横隔膜ヘルニア:左胸腔に腸管を認め、心臓は右方に偏
移している。胃が心臓の後方にみられ、左肺ははっきりせず、
右肺は小さい。
b) CCAM :左胸腔に充実性(小さい嚢胞)の占拠性病変を認め、
心臓は右方に偏移。
c) 胎児胸水
a. 腹壁破裂
b. 十二指腸閉鎖
c. 空腸閉鎖
図6 胎児腹部疾患の超音波画像
a) 腹壁破裂:腹腔外への腸管の脱出を認める。
b) 十二指腸閉鎖:ダブルバブルサインを認める。
c) 空腸閉鎖:拡張した空腸ループを認める。
ない(図 6 a)。合併奇形は少なく、生後の適切な手術治
療で完治が期待できる。消化器異常には十二指腸閉鎖、
空腸閉鎖があり、生直後に開腹手術が必要となる。十二
指腸閉鎖ではダブルバブルサインを認め(図 6 b)、空腸
閉鎖では腹腔内に著明に拡張した腸管を認める(図6 c)
。
泌尿・生殖器異常では水腎症が多い。膀胱尿管移行部
狭窄では尿管の拡張も認める。片側水腎症で羊水量が正
常であれば妊娠中に問題となることはなく、生後に精査
となる。
平成19年1月(2007)
69 (127)
おわりに
出生前や出生直後の管理・治療を必要とする胎児疾患
を見出すことを目的とした胎児超音波標準検査の実際に
ついて概説した。胎児超音波標準検査が正しく普及する
ことにより、疾患を持つ胎児に胎児治療や生後治療など
適切な医療が提供されることが可能になる。また出生直
後の新生児の予期せぬ急変を回避する手段となり、産科
医療従事者の負担軽減となることを期待する。
文 献
1) 和田誠司、左合治彦:妊娠中期胎児超音波スクリーニ
ング検査による胎児異常検出率、日本周産期・新生児
学会雑誌 2004 ; 40:24−27
2) 左合治彦:周産期医療での超音波診断、新医療 2006 ;
33:81−84
3) 左合治彦:胎児超音波スクリーニング検査の実際、卒
後研修プログラム5、日産婦誌 2004 ; 56:N638−644
4) 左合治彦、湊川靖之、林聡、新家秀、北川道弘、名取
道也:胎児超音波スクリーニング検査の実際、産婦人
科治療 2004 ; 89:523−530
5) 日本超音波医学会:超音波胎児計測の標準化と日本人
の基準値2003年、J Med Ultrasonocs 2003 ; 30:J415−
440
6) Diagnostic imaging of fetal abnormalities. Nyberg DA eds.
Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2003.
(H18. 11. 29受付)
70 (128)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
第373回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
日 時:平成18年3月4日(土)午後2時
場 所:横浜情報文化センター 6階 情文ホール
塚田ひとみ 平澤 猛 和泉俊一郎
Ⅰ. 教育講演
三上 幹男
東海大 栄養科
『女性と喫煙』
安齋ゆかり 花本美奈子 鈴木 孝
神奈川県内科学会会長 中山医院院長
中山 脩郎
6.
Ⅱ. 研修講演
子 宮 体 癌 の 診 断 で 紹 介 さ れ た atypical
polypoid adenomyoma の1例
国立病院機構横浜医療センター
吉田佐知子 平岩芙美子 外村 光康
『妊娠初期の超音波検査』
永田 順子 中村 秋彦
日本医科大学附属第二病院 講師
松島 隆
7.
妊娠初期に合併した菊池病の1例
平塚市民病院
Ⅲ. 一般演題
東條龍一郎 齋藤 優 持丸 文雄
1.
当院における腹腔鏡下筋腫核出術(LM)
症例の検討
8.
対応に苦慮した侵入胎盤の1例
北里大 総合周産期母子医療センター
大和徳州会病院
沼田 彩 今村 庸子 腰塚加奈子
石川 哲也 小出 馨子 野口 有生
谷 昭博 天野 完 海野 信也
2.
卵管切除後の残存間質部妊娠に対する腹腔
鏡下手術の1例
済生会神奈川県病院
小西 康博 西尾 浩 中林 章
9.
妊娠 28 週に小腸穿通、腸間膜腫瘍をきた
したクローン病合併妊娠の1例
横浜市大 母子医療センター
八木 瑞穂 武井 美城 葉山 智工
小関みづほ 秋葉 靖雄
片山 佳代 八巻 絢子 梅津 信子
3.
横田 奈朋 奥田 美加 石川 浩史
子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)は
PID(骨盤内感染症)を誘発するのか
高橋 恒男 横浜市大
けいゆう病院
遠藤 方哉 平原 史樹
吉井 毅 西川 明花 山本百合恵
小林 久美 入江 琢也 甘 彰華
4.
避妊リングの長期挿入により子宮穿孔、直
腸狭窄をきたした1例
聖医大
吉岡 範人 鈴木 直 和田 康菜
10. 常位胎盤早期剥離による産科的 DIC から
脳出血を起こした1例
国際親善総合病院
王 恒伊 衛藤 志保 的野 博
飯田 信 多和田哲雄
渡辺 敦子 平野喜美恵 井埜まり絵
大原 樹 津田 千春 佐藤聡二郎
水原 浩 岩田 正範 小林 陽一
木口 一成 石塚 文平
11. 神奈川県内の産科医療機関における分娩取
り扱い数調査と将来予測
神奈川県産科婦人科医会 医療対策部
小関 聡 塗山 百寛 福田 俊子
5.
クリニカルパスによる計画的な monthly
chemotherapy のための化学療法食について
佐々木正則 小澤 陽 小平 博
東海大 専門診療学系産婦人科
平原 史樹 東條龍太郎 八十島唯一
三塚加奈子 村松 俊成 東郷 敦子
入江 宏 朝倉 啓文 持丸 文雄
平成19年1月(2007)
71 (129)
第374回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
日 時:平成18年7月8日(土)午後2時
場 所:川崎市中小企業婦人会館 5階 大ホール
7.
臍帯仮性嚢胞の1例
片側卵管切除後の両側卵管通過障害に対
し、腹腔鏡下卵管端々吻合術を施行し妊娠
に至った1例
日医大 武蔵小杉病院女性診療科・産科
済生会神奈川県病院
Ⅰ. 一般演題1
1.
柿栖 睦実 松島 隆 佐藤 杏月
中林 章 宮崎 薫 秋葉 靖雄
松村 好克 深見 武彦 小西 英喜
小関みづほ 渡邊 豊治 小西 康博
可世木久幸 朝倉 啓文
8.
2.
線維性骨異形成合併妊娠の1例
横浜市大
反復子宮外妊娠とその妊娠予後
聖医大
井埜まり絵 田村みどり 五十嵐 豪
水島 大一 野中 愛子 三原 卓志
奥津 由記 谷内 麻子 井槌慎一郎
倉澤健太郎 佐治 晴哉 遠藤 方哉
斉藤寿一郎 石塚 文平
沢井かおり 平原 史樹
横浜市大 母子医療センター
奥田 美加 高橋 恒男
9.
当院における腹腔鏡下子宮筋腫核出術の検
討
済生会神奈川県病院
3.
先天性風疹症候群発生予防のためのアンケ
ート調査報告
小西 康博 宮崎 薫 中林 章
小関みづほ 秋葉 靖雄 渡邊 豊治
神奈川県産科婦人科医会異常分娩・先天異常対策部
奥田 美加 安藤 紀子 石川 浩史
Ⅲ. 一般演題3
井槌慎一郎 内田 能安 小川 公一
斎藤 圭介 松島 隆 丸山 浩之
望月 純子 関 賢一 朝倉 啓文
東條龍太郎 平原 史樹 八十島唯一
10. 腹腔鏡下子宮全摘術におけるリガシュアー
アトラスの使用経験
大和徳洲会病院
石川 哲也 小出 馨子 野口 有生
4.
妊娠前の子宮鏡による確認が重要であった
子宮筋腫合併妊娠の2例
東海大 専門診療学系産婦人科
松林 秀彦 鈴木 隆弘 呉屋 憲一
海老名総合病院
中村 絵里 佐藤 茂 和泉俊一郎
砂原 昭一 佐々木 茂 清水 篤
三上 幹男
國重 浩二
12. 平成 17 年度神奈川県産科婦人科医会悪性
腫瘍登録集計報告
Ⅱ. 一般演題2
5.
11. 当 院 で 経 験 し た normal sized ovary
carcinoma syndrome 1症例
当科における子宮外妊娠症例の検討
帝京大 溝口病院
神奈川県産科婦人科医会悪性腫瘍対策部
小野瀬 亮 雨宮 清 和泉 滋
大貫 裕子 松見 泰宇 堀谷まどか
今井 一夫 入江 宏 木村 昭裕
中林 稔 村田 照夫 西井 修
久布白兼行 小西 英喜 小林 陽一
佐治 晴哉 角田 新平 宮城 悦子
6.
診断に苦慮した間質部妊娠の1例
村松 俊成 横山 和彦 後藤 忠雄
帝京大 溝口病院
中山 裕樹 八十島唯一 中林 稔 松見 泰宇 堀谷まどか
大貫 裕子 村田 照夫 西井 修
13. 膿瘍を呈した成熟奇形腫悪性転化の1例
昭和大 北部病院
苅部 瑞穂 小川 公一 御子柴尚郎
栗城亜具里 近藤 哲郎 安藤 直子
鈴木 紀雄 高橋 諄
72 (130)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
14. 巨大後腹膜膿瘍の1例
帝京大 溝口病院
堀谷まどか 松見 泰宇 大貫 裕子
17. 交通事故で妊娠39週に IUFD を来たした1
例
横浜労災病院
中林 稔 村田 照夫 山川 達郎
大井 由佳 佐藤 綾 村瀬真理子
西井 修
沢井かおり 菊地紫津子 池田万里郎
中山 昌樹
Ⅳ. 一般演題4
18. 無事出生児を得た ATⅢ 欠損症の1例
15. 帝切時に発症した肺動脈血栓塞栓症による
母体死亡例
北里大 母子医療センター
西村 真純 菊地 信三 家内 雄二
腰塚加奈子 天野 完 海野 信也
16. 分娩直後に呼吸苦を認め、縦隔気腫と診断
された1例
済生会神奈川県病院 宮崎 薫 中林 章 秋葉 靖雄
小関みづほ 渡邊 豊治 小西 康博
平塚市民病院
東條龍一郎 本田 能久 古谷 正敬
藤本 喜展 笠井 健児 齋藤 優
持丸 文雄
平成19年1月(2007)
73 (131)
抄録
第373回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
管周囲癒着に対して、32歳時に腹腔鏡下卵管周囲癒着剥離術を
施行した。34歳時に右卵管膨大部妊娠を発症し、腹腔鏡下右卵
当院における腹腔鏡下筋腫核出術(laparoscopic
myomectomy ; LM)症例の検討
管切除術を行った。35歳時に体外受精胚移植を行ったが初回新
鮮胚移植では妊娠に至らず、その 6 ヵ月後に凍結保存胚を融解
移植した。
大和徳州会病院
石 川 哲 也 小 出 馨 子 野 口 有 生
【経過】無月経5週1日に妊娠が認められたが血中 hCG は94 IU
と比較的低値であった。その後、血中 hCG 値は上昇し経腟超音
波にて子宮底側面に偏位した胎嚢様の像を認めたが、増大傾向
【目的】腹腔鏡下筋腫核出術(laparoscopic myomectomy ; LM)
無いため、妊娠7週5日に子宮内容除去術を行った。内容物は脱
は比較的難易度の高い手術手技を要するため術者の技術や筋腫の
落膜様で明らかな絨毛膜は認められなかったが、翌日の血中
大きさにより適応限界がある。そこで今回我々はLM症例の手術
hCG は術前より低下した。しかし同日、新たな腹腔内出血によ
成績に影響を及ぼす因子を検討してみた。
【対象と手術方法】平
る腹膜刺激症状が認められたため、緊急腹腔鏡下手術を施行し
成17年1月より平成18年1月までの13ヵ月間に LM で3 cm 以上の
た。右卵管間質部周辺より流血が認められ、右子宮卵管角楔状
筋腫核出を施行した31症例とした。当院での LM の基本術式は、
切除術を行った。
臍底部に5 mm のスコープ用、臍左部に5 mm、右下腹部に10 mm、
【まとめ】今回我々は比較的稀な疾患である卵管間質部妊娠を
左下腹部に12 mm それぞれ手術操作用トロッカーを挿入してい
経験致した。既往の卵管膨大部妊娠と同側であり、血中 hCG の
る。子宮壁切開予定部位に Vasopression を局注し、ハーモニッ
推移から診断に苦慮する場面もあったが、腹腔鏡下子宮卵管角
ク・スカルペルを用いて筋腫核出を行う。子宮壁切開創は37 mm
楔状切除術を行い無事治療することが出来た。当院では卵管妊
強湾の湾曲針を用いて1∼2層で縫合を行い、モルセレータを用
娠に対して腹腔鏡下卵管切除術を行う際には、卵管峡部をバイ
いて体外に筋腫を排出し、最後にインターシードを用いて手術終
ポーラ鉗子で焼灼しているが、その後の卵管間質部妊娠の可能
了としている。
【結果】全て筋層内筋腫の症例であった。LM 症
性についても注意が必要であると考えられた。
例の平均摘出物重量は 150.7 ± 126.5 g、平均手術時間は 171.1 ±
66.3分、平均術中出血量は221.6±288.7 ml、核出した最大筋腫の
平均径は6.1±2.36 cm 、平均筋腫出個数は3.7±3.3個であった。
術後合併症や同種血輸血を行った症例は無く、開腹術へと変更と
避妊リングの長期挿入により子宮穿孔、直腸狭搾を
きたした1例
なった症例も無かった。手術時間と摘出物重量の関係では相関関
係を認めた。出血量と筋腫最大径の関係では相関関係を認めた。
聖医大
筋腫数と出血量の関係では相関関係は認めなかった。筋腫数と筋
吉 岡 範 人 鈴 木 直 和 田 康 菜
腫最大径の関係でも相関関係は認めなかった。手術時間と筋腫数
渡 邉 敦 子 平 野 喜美恵 井 埜 まり絵
の関係では相関関係を認めた。
【結語】LM の術中出血量は筋腫
大 原 樹 津 田 千 春 佐 藤 聡二郎
数よりも子宮壁切開創部の大きさで決まると考えられる。多数の
水 原 浩 岩 田 正 範 小 林 陽 一
筋腫を核出する場合は長時間の手術による体への侵襲が問題とな
木 口 一 成 石 塚 文 平
り、手術時間の短縮化が個数の制限を緩和していくと考えられ
同 病理学教室
高 野 俊 史 小 泉 宏 隆
た。
子宮内避妊具は古くから使われてきた避妊法ではあるが、本
卵管切除後の残存間質部妊娠に対する腹腔鏡下手術の
1例
法による問題点は穿孔をはじめ、一時的な月経血の増加、疼痛、
感染など様々である。今回我々は避妊リングの長期挿入後直腸
狭搾をきたした症例を経験したので報告する。
済生会神奈川県病院
【症例】60 歳、3 経妊 2 経産、既往歴、家族歴、個人歴特記事
小 西 康 博 西 尾 浩 中 林 章
項無し。20年前に IUD を挿入され、その後以来でのフォローア
小 関 みづほ 秋 葉 靖 雄
ップや交換はされていなかった。3ヵ月前より排便障害を認め、
近医外科受診し、直腸癌を疑われ当院外科へ紹介となった。注
【緒言】卵管間質部妊娠は子宮外妊娠の約2.5%に認められる
腸造影、大腸内視鏡を施行したが、直腸癌は否定的であったた
比較的稀な疾患である。今回、我々は卵管膨大部妊娠の腹腔鏡
め、婦人科受診となった。婦人科的に精査を行い、婦人科悪性
下卵管切除術後、同側残存卵管間質部妊娠に対して、腹腔鏡下
腫瘍、炎症性疾患を考慮し開腹手術施行となった。IUD 挿入部
子宮卵管角楔状切除術を行い治療可能であった症例を経験した
分周囲に高度の炎症性変化を認め、右卵管、卵巣は一塊となっ
ので報告する。
て子宮後面へ強固に癒着しており、さらに大腸にも癒着、圧排
【症例】症例は 35 歳、2 経任 0 経産。クラミジア腹膜炎後の卵
の所見を呈していた。
74 (132)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
【まとめ】IUD 挿入後の定期的な検診の必要性ならびに定期的
Atypical polypoid adenomyoma(APAM)は30歳∼40歳代の女
な交換の必要性を再認識した。さらに、本症例を含め実際に患
性に見られる子宮内膜のポリープ様の病変で、扁平上皮化生と
者本人が交換や検診を自己中断してしまう場合が多く、患者へ
構造異型のある内膜腺と平滑筋線維を含んだ間質からなる腫瘍
の正確な情報説明の必要性についても再認識させられる症例で
である。良性の経過をたどるとされており、掻爬や TCR の後、
あった。
経過観察とすることがほとんどである。しかし最近 APAM に類
内膜腺癌を合併する例や両者に連続性がみられたとの報告が散
見される。これは APAM の中に悪性化するものがあるというこ
ク リ ニ カ ル パ ス に よ る 計 画 的 な monthly
chemotherapy のための化学療法食について
とである。今回我々は31歳の女性で、不正出血と過多月経を主
訴に前医を受診し、内膜掻爬で子宮体癌と診断され、紹介とな
った症例を経験した。
東海大 専門診療学系産婦人科
経腟超音波所見では子宮内膜に高輝度のポリープ様の腫瘤が
三 塚 加奈子 村 松 俊 成 東 郷 敦 子
あり、子宮鏡では子宮内膜前壁に表在性不整血管を持つ隆起性
塚 田 ひとみ 平 澤 猛 和 泉 俊一郎
病変を認めた。病理学的には、構造異型のある内膜腺と線維性
三 上 幹 男
間質からなる腫瘍で、腺には扁平上皮化生が目立ち、免疫染色
同 栄養科
安 齋 ゆかり 花 本 美奈子 鈴 木 孝
では SMA が間質に陽性であった。以上より APAM と診断した
が、内膜腺には構造異型だけでなく、細胞異型の強い部分もあ
り、この部位では異型子宮内膜増殖症や類内膜腺癌との鑑別が
婦人科癌患者における化学療法は、再発や予後の改善に重要
困難であった。インフォームドコンセントの上、MPA 600 mg/
な治療のひとつである。しかし、化学療法に伴う嘔気、嘔吐、
日を内服したところ、4ヵ月で腺の異型は消失した。現在はデュ
食欲不振などの消化器症状は、十分な食事摂取が出来ないこと
ファストンの内服を周期的に行い、経過をみている。
によって、結果的に患者の QOL を低下させ栄養不良や持続点滴
APAM の中でも異型の強いものは、子宮内膜掻爬による検体
投与の長期化を招き、計画的な入院化学療法を阻害していると
では類内膜腺癌との鑑別が困難な場合もあり、臨床的取り扱い
思われる。今回は2003年に入院化学療法をおこなった婦人科患
には慎重を要する。さらに APAM から類内膜腺癌に移行する可
者20名を対象に行った食事のアンケート調査をもとに、新たに
能性もあることから、今後の症例の集積と検討が必要である。
入院化学療法中の食事メニュー(化療食)を考案し、食事摂取
の状況や入院治療期間に与える影響について検討した。
対象は2005年11月、婦人科化学療法目的に入院した14名(卵
妊娠初期に合併した菊池病の1例
巣癌; 5 名 子宮体癌; 8 名 子宮頚癌; 1 名)で、主な治療は
TAX+CBDCA、CPT-11+CDGP、CDDP+THP であった。食事は1
平塚市民病院
日1300 kcal(基礎代謝エネルギー量相当)
、蛋白質40 g(成人の
東 條 龍一郎 古 谷 正 敬 本 田 能 久
推定平均必要量)
。
藤 本 喜 展 笠 井 健 児 齋 藤 優
主なメニューはパン類、麺類、酢飯、サラダ、果物。間食は
ビスケットと乳酸飲料(約200 kcal)などで、患者アンケートに
て食べたいとされたものを中心に献立が立案された。また、今
持 丸 文 雄
秦野赤十字病院 内科
大 林 由 明
回食事摂取に対する新たなアンケート表も考案し摂取量を点数
化した。
菊池病はまたの名を組織球性壊死性リンパ節炎といい、20 ∼
化療食により持ち込み食が著明に減少し、化学療法 5 日間の
30 代の女性に好発し、頚部リンパ節腫大、白血球減少、異型リ
摂取率の平均は普通食が42%、化療食が81%の結果で、安定し
ンパ球の出現とそれに伴う上気道症状や発熱などの臨床症状を
たエネルギー摂取が可能となった。また、化療食によって平均
呈する。若年女性に好発するものの、妊娠に合併した例は稀で
在院日数(13.7日から7.3日)の短縮が認められた。
ある。今回われわれは妊娠初期に菊池病を合併した症例を経験
化療食の考案により早期に食欲の回復が認められ早期退院が可
したため、報告する。
能になった。これらの結果から 7 日間のクリニカルパスによる
計画的な入院化学療法が可能であると考えられた。
患者は 3 日間続く 38 度台の発熱を主訴に当院受診。初診時妊
娠 7 週 1 日。受診時発熱、嘔気が認められた他、尿ケトン陽性。
食事不可能であり、感冒の合併した妊娠悪阻と診断し、入院、
点滴治療を行った。入院後39度台の発熱が続く。それに伴い頚
子宮体癌の診断で紹介された atypical polypoid
adenomyoma の1例
部リンパ節の腫大、白血球の減少、異型リンパ球の出現が認め
られたため、血液内科と併診体制に入る。血液内科での診察の
結果、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)の可能性が浮上。
国立病院機構横浜医療センター
ステロイド投与を行い、発熱に対しては NSAID を用いたが軽快
吉 田 佐知子 平 岩 芙美子 紅 露 有 子
せず。当院では血液内科による入院治療体制が十分でないため、
外 村 光 康 永 田 順 子 中 村 秋 彦
秦野赤十字病院に転院。転院後骨髄穿刺を行い、マクロファー
ジによる血小板の貪食像が認められた。頚部リンパ節は自然に
平成19年1月(2007)
縮小しており、生検せず。NSAID 投与による経過観察で症状軽
快。当院入院より2週間で退院となった。
結論:妊娠中の不明熱の原因として本疾患に対する認識を持
75 (133)
高 橋 恒 男
横浜市大
遠 藤 方 哉 平 原 史 樹
ち、本疾患が疑われた場合には血液内科との協力により必要に
応じてリンパ節生検や骨髄穿刺を行いながら注意深く管理を行
うことが重要である。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及び Crohn 病)は20歳代に発症
のピークがあり、妊娠合併症としては珍しい疾患ではないが、
妊娠中に外科的処置を必要とする症例は稀である。今回我々は
妊娠中に腹痛で発症し、小腸穿通、腸間膜膿瘍をきたし、開腹
対応に苦慮した侵入胎盤の1例
手術を必要とした Crohn 病合併妊娠の1例を経験した。
症例は31歳、0回経妊0回経産、24歳時に Crohn 病の診断を受
北里大 総合周産期母子医療センター
け、その後寛解増悪を繰り返していた。妊娠直前は炎症を伴わ
沼 田 彩 今 村 庸 子 腰 塚 加奈子
ない腹痛が続いていた。妊娠12週頃から症状悪化、18週当院初
谷 昭 博 天 野 完 海 野 信 也
診時7 kg の体重減少を認めた。19週から23週まで Crohn 病再燃
のため入院し、絶食、中心静脈栄養管理で軽快したが、24 週頃
前回の帝王切開創に胎盤が付着した場合は、癒着胎盤の可能
から再び腹痛が出現、27週には発熱、CRP の上昇を伴ったため
性が高く侵入胎盤も念頭においた対応が必要になる。今回対応
再入院となった。入院時上腹部痛を認め、超音波では回腸の浮
に苦慮した侵入胎盤の一例を経験したので報告する。症例は 37
腫とともに腸間膜膿瘍を疑う low dencity area を認めた。28週突
歳4経妊3経産。
(1児目は分娩停止で帝切施行。2児目、3児目に
然右上腹部の激痛が出現。抗菌薬を投与するも改善せず、汎発
反復帝切)
。
性腹膜炎が強く疑われたため、翌日開腹手術を施行した。腸間
妊娠 32 週 3 日前置胎盤の疑いで母体搬送となった。超音波検
膜の一部に小孔があり、腸液の流出を認めたため回腸穿通腸間
査上胎盤は前壁付着、内子宮口から胎盤辺縁まで14 mm で絨毛
膜内膿瘍穿破と診断され回腸部分切除術を施行した。術後経過
膜下血腫を認めた。子宮筋層は菲薄化し、胎盤と膀胱壁の間に
は良好で、常食摂取可能となった。術後一時的に子宮収縮増強
豊富な血流を認めた。不規則な子宮収縮と出血が持続し侵入胎
を認めたが、塩酸リトドリン投与で抑制可能であった。現在妊
盤を疑い緊急帝切施行。3 回の開腹術既往のため癒着が強度で、
娠34週であるが産科的異常なく経過している。
腹腔内に達するまで極めて困難であった。子宮体部上方右側を
炎症性腸疾患合併妊娠では約30%が妊娠中、産褥中に増悪す
縦切開し児娩出、臍帯結紮切断後胎盤を残存し、縫合閉腹した。
るという報告もあり、特に活動期妊娠でその危険性が高い、妊
術中の出血量は1180 gで、6単位の輸血を行った。手術直後に両
娠中の治療は栄養療法と薬物療法が一般的であるが、腸閉塞や
側子宮動脈塞栓術を施行。術後 5 日目膀胱鏡にて膀胱内への胎
消化管穿孔などのためやむを得ず外科的処置が必要となる場合
盤浸潤がないことを確認し、子宮胎盤全摘出術を考えた。膀胱
もある。妊娠中の外科的処置により妊娠終了を余儀なくされる
は著しく挙上し癒着強度で、子宮体部と胎盤の一部のみ摘出し
症例もあるが、本症例のように妊娠期間の延長が可能となる症
閉腹した。術後 9 日目超音波検査上依然として胎盤の血流が豊
例もあるので、その適応の検討にあたっては慎重かつ手術時期
富なため、MTX(メトトレキセート)筋肉注射2クール施行後、
を逸しないようにするべきであると考えられた。
経腟的胎盤除去を試みるも頚管拡張時に多量出血したため、膀
胱枝を含めて再度動脈塞栓術を行った。その後子宮内感染を考
慮し再度開腹にて可能な限りの胎盤を除去した。また皮下膿瘍
を形成したため切開排膿術を行い、術後70日目に血中 hCG は 2
常位胎盤早期剥離による産科的 DIC から脳出血を起
こした1例
mlU/ml 以下まで低下し、全身状態改善し退院となった。外来
にて経過観察中胎盤は融解壊死し、術後 145 日目には遺残胎盤
国際親善総合病院
はほぼ消失した。侵入胎盤の治療法は子宮全摘出術だが、挙児
王 恒 伊 衛 藤 志 保 的 野 博
希望がある場合は、動脈塞栓術・化学療法等の方法も選択され
飯 田 信 多和田 哲 雄
る。しかし感染や出血から DIC に陥る可能性があり、その危険
性を念頭に置いた治療法の選択が必要である。初回分娩時に容
易に帝切を選択しないことが重要である。
26歳、初産婦。妊娠28週、左腰通主訴に救急車搬送。切迫早
産兆候有り、管理入院となる。子宮収縮抑制剤投与し安定して
いたが、入院後3週間で3Kgの体重増加及び下腿浮腫認め、蛋白
尿陰性、血圧正常のため経過観察とした。妊娠 32 週 3 日突然の
妊娠 28 週に小腸穿通、腸間膜腫瘍をきたしたクロ
ーン病合併妊娠の1例
大量性器出血及び子宮収縮を認め、常位胎盤早期剥離の診断で
全身麻酔下に緊急腹式帝王切開術施行。大量の腹水貯留あり、
1574 g 女児娩出し閉腹。抜管と同時に腹満著明、呼吸困難出現、
横浜市大 母子医療センター
子宮口より出血多量に認めたため、再出血を疑い再開腹。大量
八 木 瑞 穂 武 井 美 城 葉 山 智 工
の腹水貯留を認めるのみで、出血点無く閉腹。ICU 入室時 BP
片 山 佳 代 八 巻 絢 子 梅 津 信 子
110/80 HR 105 CVP 7、また血液生化学上 Hb 7.4、凝固系の延長
横 田 奈 朋 奥 田 美 加 石 川 浩 史
及び Fib の低値、FDP の異常高値(873 μl/dl)を認め、産科
76 (134)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
DIC スコア17点として抗 DIC 療法を開始。輸血するも貧血軽快
第374回 日本産科婦人科学会神奈川地方部会
せず、経腹超音波上創部右側腹直筋筋膜下に血腫を認めた。経
時的に確認し増大傾向があったが、DIC 状態での再開腹はリス
線維性骨異形成合併症妊娠の1例
クが大きいため DIC 治療を最優先とした。発症から24時間後、
凝固系の改善認め、出血源の同定及び止血目的で血管塞栓術を
横浜市大
施行。両側内腸骨動脈を塞栓し、止血されたと一時的に考えら
水 島 大 一 沢 井 かおり 野 中 愛 子
れたが、9時間後突然大量の性器出血が始まった。子宮収縮剤の
三 原 卓 志 倉 澤 健太郎 佐 治 晴 哉
投与及び新鮮血投与を開始し、塞栓された血管の再疎通の可能
性あり、再度 TAE 施行し開腹血腫除去術及び単純子宮全的術施
遠 藤 方 哉 平 原 史 樹
横浜市大 母子医療センター
行。腹直筋筋膜下∼レチウス窩に血腫形成され、腹腔内出血
奥 田 美 加 高 橋 恒 男
4000 ml 認めた。子宮に異常はなく切開部にも出血なし。後腹膜
下に大量の血腫貯留あるも明らかな出血源は同定できず、5連ガ
【症例】25歳、0回経妊0回経産、12歳で病的骨折し、多骨性
ーゼで圧迫し閉腹。帰室後、状態は安定を示したが、5 時間後、
線維性骨異形成症と診断。以後骨折を繰り返し、左右大腿骨及
瞳孔不同、右対光反射消失。CT 上右後頭頭頂葉に 4 cm 大の血
び右上腕骨に髄内釘が挿入されている。現在荷重動作(走る・
腫を認め、脳室へ穿破。穿頭血腫ドレナージ施行し抗脳浮腫薬
跳ぶ)制限あり。
の投与を継続したが効果無く、早剥の発症より10日目死亡した。
【現病歴】妊娠4週目3日階段から転落して右上腕骨を骨折し、
妊娠 5 週 2 日右上腕骨髄内釘抜去及び観血的整復術を施行した。
以降の妊娠経過中に骨折や骨病変の悪化は無く、経過順調であ
神奈川県内の産科医療機関における分娩取扱い実績
と将来予測
った。
分娩方式として、開排制限等なく経腟分娩は可能であった。
一方で ① 恥骨を含め多発性の骨病変が存在し、② 既住に多発
神奈川県産科婦人科医会 医療
骨折のエピソードがあり、荷重運動制限中であることを考慮す
小 関 聡 塗 山 百 寛 福 田 俊 子
ると、未知数ではあるが分娩怒責時の恥骨骨折や四肢骨折の可
佐々木 正 則 小 澤 陽 小 平 博
能性があった。また、恥骨骨折した場合、骨癒合が悪く、長期
入 江 宏 朝 倉 啓 文 持 丸 文 雄
の安静を強いられる可能性が高いことから、本人は帝王切開分
平 原 史 樹 東 條 龍太郎 八十島 唯 一
娩を選択した。
【分娩経過】妊娠38週2日選択的帝王切開術施行。女児2848 g
目的
神奈川県で今後どれくらいの妊婦が産科医療機関で分
娩できなくなる可能性があるのか、具体的な数値を求めて将来
の分娩取り扱い状況を推測した。
対象と調査方法
対象は、平成 14 年 1 月∼ 17 年 7 月に分娩を
(AFD)母児共に問題なく退院した。
【考察】線維性骨異形成症合併妊娠は文献的に計10例報告が
あり、骨盤の病変や症状がある 2 報告は共に経腟分娩している
が、病変の詳細は述べられていない。骨盤病変と骨折のリスク
取扱った神奈川県内の 184 施設(この間に中止または新規開業
について一定の見解はなく、分娩方式の決定に苦慮した。また、
を含む)である。平成 14 年∼ 16 年の 3 年間に各施設が取り扱っ
妊娠中及び分娩後の管理として内服薬の有効性には諸説あり、
た分娩数を質問し、地区別、病院・診療所別に各年毎に集計し
実際に骨折の予防策は少ない。そのため、骨折した場合に対応
た。同時に今後の取扱方針を「5年以内に中止」
、
「5∼10年以内
できる施設での管理が重要と考えられる。また、分娩後の授乳
に中止」、「10 年以上継続予定」の 3 通りのいずれかを尋ねた。
禁止やビスフォスフォネート製剤投与、育児期の際の荷重制限
それをもとに中止予定施設の平成16年の実績分を差し引き、平
等についても今後の検討課題となり得るであろう。
成 22 年、27 年における理論上の分娩取扱い可能数を推定した。
出生数は、神奈川県では平成 2 年以降は横ばいとなっているた
め、今後も同様の傾向が続くと仮定した。
結果
分娩を取扱う施設の 99 %に当たる 183 施設から回答が
先天性風疹症候群発生予防のためのアンケート調査
報告
得られた。これらが取扱った分娩数は、平成 14 年 70262 件、15
年69835件、16年69862件であった。今後の取扱い計画をもとに
神奈川県産科婦人科医会異常分娩・先天異常対策部
算出した推定取扱い可能数は、平成22年では65468人(対 H 14
奥 田 美 加 安 藤 紀 子 石 川 浩 史
年比93.2%、4794人減)
、27年では59475人(対H 14年比84.6%、
井 槌 慎一郎 内 田 能 安 小 川 公 一
10787人減)となった。単純計算では平成27年には約1万人が産
齋 藤 圭 介 松 島 隆 丸 山 浩 之
科医療機関から締め出される形になる。これを補うには年間千
望 月 純 子 関 賢 一 朝 倉 啓 文
人規模の分娩施設を平成 27 年までに 11 施設整備する必要があ
東 條 龍太郎 平 原 史 樹 八十島 唯 一
る。またこの調査では約9500人の妊婦が帰省などで県外で分娩
していることも判明した。地方の分娩事情がさらに深刻化すれ
【目的】先天性風疹症候群(CRS)は、適切なワクチン対策
ば、今後県外への里帰りも困難になる。事態打開のために、国
によって根絶しうるが、日本では時に風疹の小流行が起こり、
や自治体に対し早急な具体策を迫らなければならない。
2004年には年間10例の CRS が発生した。この事態を受け、厚生
平成19年1月(2007)
77 (135)
労働省は「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関す
は29歳。多発子宮筋腫に対し子宮筋腫核出術を行ったが、ダグ
る緊急提言」を発表した(2004年9月)
。この内容を周知徹底す
ラス窩の癒着が高度で子宮頚部後壁の子宮筋腫の摘出を断念し
る目的で、アンケート調査をおこなった。
【方法】神奈川県産科
た。術後子宮筋腫は増大したが、子宮鏡で子宮内腔には筋腫に
婦人科医会会員を対象に、ファックスネットを用いて「妊婦の
よる変形もないことから十分なインフォームドコンセントのう
風疹に関するアンケート」を送付、ファックスで回収した。ア
え、手術せずに妊娠を目指すこととした。術後 2 年で自然妊娠
ンケート結果の詳細及び解説は冊子にまとめ会員に配布した。
が成立し、後壁への着床を確認した。頚部の子宮筋腫は超音波
【成績】返答数177名(うち無回答5名)
、回答率は約20%と低率
上、胎盤の裏に位置するように見えたが、妊娠の進行に伴い明
であった。<妊婦の風疹抗体検査>93%が施行していると回答
らかに筋腫と胎盤は離れていった。選択帝王切開により、38 週
した。検査の際に問診を必ず確認している会員は27%にとどま
で出産した。子宮筋腫合併妊娠のなかでもハイリスクと考えら
った。風疹 IgM には長期陽性例が存在し必ずしも最近の感染と
れる本 2 症例は、妊娠前の子宮鏡による評価と妊娠初期の着床
は限らないことを、23 %の会員が知らないと回答した。抗体価
部位の評価が適切に行われたことが、良好な結果を生んだもの
が低い( HI 法で 16 倍以下)者に対する産褥期間中の風疹ワク
と考えられた。
チン接種を実施している会員は12%にとどまった。<不妊症と
風疹抗体検査>不妊治療前に風疹抗体検査をおこなっている会
員は18%と少なかった。<ワクチン接種の実際>自施設で風疹
当科における過去2年間の子宮外妊娠症例の検討
ワクチン接種を行っている会員は58%、値段は5000円前後が多
かった。ワクチン接種前後の避妊指導について問診票で書面に
帝京大 溝口病院
より確認しているのは 8 %のみであった。ただし風疹ワクチン
大 貫 裕 子 松 見 泰 宇 堀 谷 まどか
による CRS の報告はなく、接種後妊娠判明例や避妊失敗例に人
中 林 稔 村 田 照 夫 西 井 修
工妊娠中絶をすすめる必要はない。<厚労省の「提言」につい
て>82%の会員が知っていたが、実行しているのは16%と低か
今回、平成 16 年 1 月から 17 年 12 月までの 2 年間に当科で経験
った。二次相談窓口の存在は66%が知らなかった。
【結論】CRS
した子宮外妊娠 26 例の患者背景及び着床部位について検討し
根絶のためのワクチン対策や、妊婦の風疹抗体値の適切な対応
た。26 例の内訳は、卵管妊娠 21 例(子宮内外同時妊娠を 1 例含
と解釈は、まだまだ周知が不十分であると言わざるを得ない。
む)
、間質部妊娠2例、腹膜妊娠2例、着床部位不明が1例であっ
今後も啓発が必要と考えられた。
た。自然妊娠は12例、不妊治療後の妊娠は14例(IVF-ET 6例を
含む)で、IVF-ET 6 例中 3 例は膨大部以外に着床していた。26
例のハイリスク因子の内訳は、子宮外妊娠の既往 2 例、クラミ
妊娠前の子宮鏡による確認が重要であった子宮筋腫
合併妊娠の2例
ジア感染の既往 5 例、手術の既往 4 例(卵感形成術 2 例、付属器
切除術 1 例、帝王切開術 1 例)、不妊治療による妊娠 14 例(適応
は男性不妊 5 例、卵管障害 1 例)であった。クラミジア抗体は、
東海大 専門診療学系産婦人科
自然妊娠12例中5例(41.7%)が陽性であったが、IVF-ET では6
松 林 秀 彦 鈴 木 隆 弘 呉 屋 憲 一
例中1例(16.7%)のみ陽性であった。また IVF-ET で抗体が陰
中 村 絵 里 佐 藤 茂 和 泉 俊一郎
性であった 5 例は、全例男性不妊での適応で、HSG 上も明らか
三 上 幹 男
な卵管障害を認めなかった。これらのことより、IVF-ET の手技
そのものが子宮外妊娠を起こす原因となる可能性が示唆された。
子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫などの子宮内腔病変が不
治療は、卵管破裂のため開腹手術を施行した 1 例と、待機療法
妊原因であることは経験的によく知られている。なぜ不妊にな
を選択した 1 例を除き、ほぼ全例に腹腔鏡下手術を施行した。
るかについては想像の域を出ないが、着床にふさわしいスペー
腹腔鏡下卵管線状切開術後に CG が低下しなかった1例と腹腔鏡
スが減少することにより妊娠の確率が低下すると推測される。
下に着床部位の同定が困難であり、術後 MRI により間質部妊娠
しかしながら、どの程度のスペースがあれば十分であるかは明
を診断した1例は、術後に MTX 療法を施行した。
らかになっていない。さらに子宮筋腫合併妊娠の場合には胎盤
付着部近傍に子宮筋腫が存在した場合に出血や常位胎盤早期剥
離などのリスクがうたわれている。我々は、妊娠前に子宮鏡で
診断に苦慮した間質部妊娠の1例
子宮筋腫の位置を確認した後に妊娠が成立し、その後の胎盤と
子宮筋腫の位置関係を確認しつつ満期の出産を行った 2 例を経
帝京大 溝口病院
験した。症例 1 は 31 歳。多発子宮筋腫に対し子宮筋腫核出術を
中 林 稔 松 見 泰 宇 堀 谷 まどか
行ったが、術後1年で後壁粘膜下に子宮筋腫を再発した TCR 手
大 貫 裕 子 村 田 照 夫 西 井 修
術を勧めたが、患者は手術をしない選択をした。十分なインフ
ォームドコンセントのうえ、このまま妊娠を目指すこととした。
概要 39歳未経妊。他院にて体外受精により妊娠成立したが、
1年後に自然妊娠が成立したが、子宮筋腫近傍の着床であり流産
妊娠6週2日に経腟超音波断層法にて子宮内に胎嚢が認められな
した。2年後に自然妊娠が成立し、前壁への着床を確認した。妊
いため子宮外妊娠の疑いで当科紹介受診となった。来院時、子
娠経過は良好で選択帝王切開により、37 週で出産した。症例 2
宮内及び腹腔内に胎嚢を疑わせる所見認められず、血中 hCG 値
78 (136)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
は1760 mIU/ml であった。経過観察したところ、血中 hCG 値が
する治療として ART が固定化される傾向があるが、腹腔鏡下卵
3270 mIU/ml と上昇したため子宮内容除去術を施行したが、絨
管形成術は腹腔鏡診断に引き続き行える点で、臨床的意義が大
毛組織は認められなかった。その後血中 hCG 値下降しないため
きいと考えられるが、卵管端々吻合術に関しては更なる検討が
腹腔鏡検査を施行した。腹腔内に少量の血液貯留を認めたが両
必要と考えられた。
側卵巣及び卵管は正常、間質部の膨大も認められず、妊娠部位
の同定は困難であった。術後骨盤 MRI 検査を施行したところ左
卵管間質部付近に T2 強調画像で high intensity な腫瘤を認めた。
反復子宮外妊娠とその妊娠予後
また、血中 hCG 値5500 mIU/ml とさらに上昇したため左間質部
妊娠を疑い MTX 療法を施行した。治療終了時の経腟超音波断
聖医大
層法にて子宮内に経8 mm の echo free space を認めたため精査目
井 埜 まり絵 田 村 みどり 五十嵐 豪
的に子宮鏡を施行したが内腔は表面平滑で特に異常所見は認め
奥 津 由 記 谷 内 麻 子 井 槌 慎一郎
られなかった。MRI を再度施行したところ左卵管間質部にT2強
斉 藤 寿一郎 石 塚 文 平
調画像で high intensity な像の増大を認め、MTX 療法を追加した。
治療後、不正出血と共に内膜様の子宮内容物の排出を認めた。
病理診断はchorionicvilliであった。その後血中 hCG 値は順調に
下降し、治療終了2週間後には感度以下となった。
当院における子宮外妊娠の症例数は過去 5 年間(2001-2005)
で 95 例であった。子宮外妊娠の発生部位は卵管膨大部が 61 例
(64.2%)と一番多かった。次に多いのは峡部18例(18.9%)で
あった。手術症例は 90 例、保存治療例は 5 例で、手術方法は腹
腔鏡下手術が 77 例(81 %)、開腹手術が 13 例(17.9 %)であっ
片側卵管切除後の両側卵管通過障害に対し、腹腔鏡
下卵管端々吻合術を施行し妊娠に至った1例
た。術式では卵管切除が 75 例(83.3 %)と多く、線状切開は 6
例(7.6 %)と少ない結果であった。次に過去 5 年間の反復子宮
外妊娠症例13例と妊娠予後について提示する。卵管妊娠にて温
済生会神奈川県病院
存術後に対側卵管に妊娠した症例が3例、そのうち1例は自然妊
中 林 章 宮 崎 薫 秋 葉 靖 雄
娠し、健児を出生した。卵管温存術後に同側に妊娠し、卵管切
小 関 みづほ 渡 邊 豊 治 小 西 康 博
除を施行した症例を2例認めた。両側卵管切除後に IVF-ET で妊
娠成立した症例は 3 例あった。左卵管峡部妊娠にて卵管切除後
卵管性不妊に対する治療として、卵管形成術と ART があり、
に同側卵管間質部に妊娠したため ATH を施行した例もあった。
ART が広く普及している、卵管形成術は開腹術により顕微鏡下
また手術所見では反復子宮外妊娠症例はそうでない症例に比
に施行されるようになり成績が向上したが、手術手技に熟練を
要することや手術侵襲の大きさより普及しなかった。近年の腹
して腹腔内癒着が高度である傾向にあった。
子宮外妊娠症例でクラミジア抗体価陽性例は 32 例(42.6 %)
腔鏡下手術機器の進歩に伴い、癒着剥離術、卵管采形成術、卵
であった。それに比して反復子宮外妊娠症例では 11 例中 7 例
管開口術が低侵襲手術である腹腔鏡下に行われている。一方、
(63.6%)であり多い傾向にあった。また、反復子宮外妊娠症例
卵管端々吻合術や卵管角吻合術、子宮卵管吻合術は、腹腔鏡下
のクラミジア抗体価未測定の 2 症例では肝周囲癒着を認め、ク
手術が困難とされ、近位部閉塞に対して卵管鏡下卵管形成術が
ラミジア感染が考えられ、反復子宮外妊娠症例のクラミジア感
行われている。
染率はさらに高い可能性が示唆された。
症例は33歳、2経妊1経産で卵管形成術希望。25歳時に子宮外
妊娠のため左卵管を切除しており、28 歳時に、体外受精にて妊
娠し、胎盤早期剥離のため帝王切開術を施行し生児を得ている。
当院における腹腔鏡下子宮筋腫核出術の検討
内診及び経腟超音波検査にて、子宮・卵巣の腫大を認めず、ク
ラミジア IgA 0.97 、クラミジア IgG 5.16、クラミジア抗原(−)
済生会神奈川県病院
であった。子宮卵管造影検査では、左卵管が子宮外妊娠時に切
小 西 康 博 宮 崎 薫 中 林 章
除されていたため途中までしか描出されず、右卵管は膨大部ま
小 関 みづほ 秋 葉 靖 雄 渡 邊 豊 治
で描出されたが造影剤の拡散が不良であり、膨大部・采部での
閉塞が予想された、右卵管采は正常で、卵管采から2 cm 近位の
【緒言】腹腔鏡下子宮筋腫核出術(以下 LM)は体内結紮法
膨大部に約5 mm の閉塞を認め、卵管端々吻合術を施行した。手
などの手技を必要とする比較的難易度の高い手術手技である。
術後、約 1 ヶ月で排卵し、その周期に妊娠に至ったが、卵管形
当院では1998年より LM を開始したが、開腹筋腫核出術(以下
成術を施行した側の卵管妊娠であり、患側の卵管摘出及び対側
開腹手術)と比較しつつ、その効率性や適応基準に検討を加え
の卵管切除を施行した。病理検査では、縫合糸の周囲に軽微な
た。
異物反応があるのみで、縫合糸周囲の卵管上皮に異常所見を認
めなかった。
文献では、開腹による卵管端々吻合術施行後の妊娠率は良好
とされるが、今症例のように子宮外妊娠になる可能性も高く、
施行にあたり充分な説明が必要と考えられる。卵管性不妊に対
【方法】LM 症例(95例)のうち、1999年から2005年までの7
年間で併発症のない LM 70症例と開腹手術45症例を比較検討し
ました。LM を選択する際には必ず MRI を施行した上で、不妊
症などの既往も考慮に入れ術式を検討した。
【結果】LM の年間平均施行率は 43 %であった。平均年齢は
平成19年1月(2007)
79 (137)
LM と開腹手術で有意差はなかった。入院日数、筋腫重量、最
た。本器具は腹腔鏡下手術において自動縫合器に代わる有用な
大径、個数は開腹手術に比べて LM が有意に少なかった。手術
手術器具であると思われた。
時間は LM が有意に長くなっていたが、術中出血量は LM が有
意に少なかった。2001年より手術手技の向上とともに LM の適
応が広がり、出血量、手術時間も減少してきた。また、筋腫最
大径9 cm 未満、筋腫総重量400 g 未満の LM では開腹手術に比
当院で経験した normal-sized ovary carcinoma
syndrome 1例
べて手術時間は有意に長いが、出血量は有意に少なかった。9
cm 以上、400 g 以上では出血量に有意差はなかった。
【まとめ】LM は開腹手術に比べて、筋腫の最大径・総重
量・個数・手術時間では不利であるが、入院日数と出血量が少
海老名総合病院 マタニティー・センター
砂 原 昭 一 佐々木 茂 清 水 篤
國 重 浩 二 黒 田 俊 孝
なく低侵襲という点で有利であった。平均的には筋腫最大径 9
cm 未満、筋腫総重量400 g 未満程度が現時点で当院の LM 適応
今回我々は、大量の腹水を伴う癌性腹膜炎を呈しながら、腹
基準と思われた。その中で LM から開腹手術へ移行した症例は
腔内には原発巣と考えられるような腫瘤を認めず、正常大であ
なく、LM の術中出血量も開腹手術に比べて有意に少なかった
った卵巣が原発巣であった、normal-sized ovary carcinoma
ことから、安全に手術を施行するという観点において、当院の
syndrome の症例を経験した。
LM 適応選択は妥当であると考えられた。LM をより効率よく安
症例は57歳の主婦で、急速に進行する下腹部の膨満感を認め
全に行うためには、当院としての手術手技や適応基準の標準化
たため、精査目的で当科入院となった。血液検査では、LDH、
を図ることが重要であると思われた。
CA125、CA72-4の高値を認めた。超音波、MRI では大量の腹水
と複数の子宮筋腫を認めたが、両側卵巣は同定できず、胸部、
上腹部にも異常所見は認めなかった。腹水の細胞診は class Vで
腹腔鏡下子宮全摘術における LigaSure Atlas TM
の使用経験
adenocarcinoma との結果を得た。
開腹したところ、腹腔内は癌性腹膜炎の状態で、粟粒大の播
種性病変を腸管漿膜に認めた。子宮には多発性の筋腫を認め、
大和徳洲会病院 両側卵巣は正常大であった。単純子宮全摘術、両側附属器切除
石 川 哲 也 小 出 馨 子 野 口 有 生
術、大網部分切除術、骨盤リンパ節郭清術を施行した。
病理組織診により、本症例は漿液性表在性乳頭状腺癌と診断
【目的】外科手術において血管の結紮・止血操作は必須の手
された。免疫組織染色で、本症例では Calretinin、CK 5/6が陰性
技であり腹腔鏡手術においても例外ではない。腹腔鏡手術では
であることから、形態的に類似した腹膜悪性中皮腫は否定的と
縫合糸を用いた結紮は術者の熟練を要し、高度な血管の剥離操
考えられた。卵巣病変は表層のみではなく、実質病変を伴って
作も必要とする。一方、クリップなどの器具を利用する方法で
おり、原発巣は腹膜ではなく、卵巣であると診断された。術後
は患者の体内に異物を残してしまう欠点がある。最近 Vessel
の進行期分類はT3b、N1、M0であった。
sealing system である LigaSure
AtlasTM が腹腔鏡手術領域で用いら
術後は1ヵ月目より weekly TJ を施行したところ、腹水は消失
れてきている。我々は2004年12月から自動縫合器 Endo-GIA に
し、洗浄腹水細胞診も陰性化し、腫瘍マーカーも正常化した。
代わり LigaSure Atlas を用いて手術を行っているので両者を比較
しかし、外来にて経過観察中に再発し、現在再発後の化学療法
し LigaSure Atlas の有用性を検討した。
【対象】2002年1月から
を行っている。
2004 年 11 月までに Endo-GIA を用いて LAVH を行った 117 症例
本症候群を呈する疾患としては、びまん性悪性中皮腫、性腺
と、2004年12月から2006年5月まで LigaSure Atlas を用いて腹腔
外ミュラー管腫瘍、転移性腫瘍、卵巣腫瘍が挙げられるが、本
鏡下子宮摘出手術(LAVH、LH、TLH)を行った 63 症例より
症候群は予後不良であり、各疾患ごとに、より適切な治療法が
LAVH を行った41症例を抽出し検討した。手術方法はトロッカ
選択できるよう、症例の蓄積が求められている。今回我々は、
ーを挿入後、ハーモニック・スカルペルを用いて円靱帯の処理、
初回手術後 1 年を越えて生存している本症例を経験したので、
Endo-GIA もしくは LigaSure Atlas を用いて卵管及び卵巣固有靱
報告した。
帯の処理を行う、その後、膀胱子宮窩腹膜及び、ダグラス窩の
開放。腟式操作で子宮動脈の処理、子宮の回収、腟断端を閉鎖、
腹腔鏡下で止血を確認し手術終了としている。
【結果】平均手術
時間は LigaSure Atlas の場合は130.8±38.0分、Endo-GIA の場合
平成 17 年度神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫
瘍登録集計報告
は 132 ± 40.5 分で優位差は見られなかった( p > 0.05)。平均出
血量は LigaSure Atlas の場合は228.8±193.6 ml、Endo-GIA の場
神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍対策部
合は380.0±345.0 mlで LigaSure Atlas を用いた場合のほうが少な
小野瀬 亮 雨 宮 清 和 泉 滋
かった( p<0.01)
。平均摘出子宮重量は LigaSure Atlas を用いた
今 井 一 夫 入 江 宏 木 村 昭 裕
場合は326.0±164.8 g、Endo-GIA を用いた場合は345.0±207.0 g
久布白 兼 行 小 西 英 喜 小 林 陽 一
で優位差は見られなかった( p > 0.05)。【結語】LigaSure Atlas
佐 治 晴 哉 角 田 新 平 宮 城 悦 子
を用いて LAVH を行うことで大幅な出血量の軽減が認められ
村 松 俊 成 横 山 和 彦 後 藤 忠 雄
中 山 裕 樹 八十島 唯 一
80 (138)
平成17年度の神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍登録の
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
巨大後腹膜膿瘍の1例
集計結果を報告する。登録用紙を平成18年1月に発送し6月まで
回収した。回答率は総施設数425に対して255施設(60.0%)で
帝京大 溝口病院
昨年度(58.3%)より若干上昇した。施設別では、病院60.4%、
堀 谷 まどか 松 見 泰 宇 大 貫 裕 子
診療所 59.9 %であった。県下で治療された婦人科悪性腫瘍総数
は 2063 例で子宮頚癌 832 例(扁平上皮癌 728 例、腺癌系 104 例)
中 林 稔 村 田 照 夫 西 井 修
同 外科
(40.3 %)、子宮体癌 582 例(28.2 %)、卵巣癌 573 例(27.8 %)、
山 川 達 郎 その他の悪性腫瘍 76 例(3.7 %)だった。治療数の 10 年間の年
次推移では平成 17 年度症例数は平成 8 年度症例数に比べ子宮頚
概要
今回、我々は下腹痛などの自覚症状に乏しく卵巣腫瘍
癌で1.03倍、子宮体癌で1.6倍、卵巣癌で1.3倍に増加していた。
が疑われた巨大後腹膜膿瘍の一例を経験したので文献的考察を
平成 16 年度症例数と比べる症例数は 233 例減少しその大部分は
加え報告する。症例は53歳。3経妊3経産。既往歴に特記すべき
子宮頚癌 0・Ia期、子宮体癌I期症例数の減少によるものであっ
ことなし。平成 18 年 2 月に発熱を主訴に近医受診。下腹痛、腹
た。0期を除く子宮頚癌・体癌比率の年次推移を検討すると平成
部膨満などの自覚症状はなかった。WBC 9900/ul、CRP 20.0
8 年度では 1.37 : 1 であったが、平成 17 年度では 0.84 : 1 で、平
mg /dl と炎症所見を認め、受診時に指摘された腹腔をほぼ占拠
成16年度に続いて子宮体癌数が子宮頚癌数を上回った。日本産
する巨大腫瘤の精査目的に、当科紹介受診となった。超音波断
科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の平成15年度の子宮頚癌、子宮
層法にて長径 24 cm の境界明瞭で内部がほぼ均一な多房性の腫
体癌、卵巣癌の全国集計と神奈川県の平成15年度の集計結果と
瘤を認めた。明らかな充実部分は存在せず血流を認めなかった。
比較検討すると、神奈川県では頚癌の比率がやや少なく、卵巣
内容物は MRI では T1 強調画像で low intensity、T2 強調画像で
癌の比率がやや多い傾向が示唆された。また平成11年から15年
high intensity なため漿液性成分と考えられた。腫瘍マーカーは
度の 0 期症例を除く子宮頚癌と子宮体癌の比率を神奈川県集計
CA 125 のみ 40.5 U/mlと軽度上昇を認めた。良性∼境界悪性の
と全国集計とでくらべると両集計で子宮体癌の比率が漸増して
卵巣腫瘍の診断で、摘出術施行目的に入院となった。3 月 28 日
いるが、いずれの年度も体癌の症例比率が神奈川県集計で若干
腫瘍摘出術施行。腫瘍は径20 cm、腫瘍の前面に腸間膜及び炎症
高く平成15年度では子宮頚癌・体癌化率が神奈川県で1.03:1、
性に肥厚した後腹膜が癒着していた。腫瘍は摘出する際に破裂
全国集計では1.21:1となっていた。
し、約6 L の黄色膿状の内容液の流出を認め、GBS が検出され
た。肉眼上、子宮及び付属器に異常を認めず、卵巣腫瘍と考え
られた巨大腫瘤は後腹膜膿瘍であった。膿瘍壁に上皮成分、異
膿瘍を呈した成熟奇形腫悪性転化の1例
型細胞浸潤は認めず、病理診断は inflammatory psudocystic tumor
of retroperitoneum であった。術後経過は良好で10病日退院した。
昭和大 北部病院
腹腔内に巨大な腫瘍を認めた場合には、下腹痛などの所見を
苅 部 瑞 穂 小 川 公 一 御子柴 尚 郎
伴わない場合でも、発熱、CRP 上昇などの炎症反応の亢進あれ
栗 城 亜具里 近 藤 哲 郎 安 藤 直 子
ば後腹膜膿瘍の可能性も十分考慮に入れて、注意深く鑑別診断
鈴 木 紀 雄 高 橋 諄
する必要があると考えられた。
類皮嚢胞腫は若年女性に好発する良性の腫瘍である。その悪
性転化は全類皮嚢胞腫の1∼2%と稀なものである。今回我々は
骨盤内膿瘍を形成し発見に至った症例を経験した。症例;65歳
分娩直後に呼吸苦を認め、縦隔気腫と診断された1
例
2経妊2経産 下腹部痛・発熱を認め他院受診、骨盤腹膜炎疑わ
れ当院紹介となる。CT上骨盤内に10 cm 大の腫瘍認め、下腹部
済生会神奈川県病院
全体に圧痛・反跳痛を認めた。体温 39.0 度、WBC 9360/μl ・
宮 崎 薫 中 林 章 秋 葉 靖 雄
CRP 28.17 mg/dl と著明な炎症所見を認め骨盤内膿瘍を疑い抗生
小 関 みづほ 渡 邊 豊 治 小 西 康 博
剤にて保存的治療を開始した。しかし炎症改善乏しいため排膿
手術を施行、ダグラス窩に 10 cm 大の表面平滑な腫瘍認め、腫
【背景】縦隔気腫は、肺胞内圧上昇や肺胞の破裂により肺間
瘍内容は悪臭伴う膿性分泌物であった。膿瘍は周囲臓器と炎症
室に空気が漏れ、肺胸膜下に沿って肺門、縦隔、皮下へと空気
性癒着認め、特に直腸との癒着は著しく完全摘出は困難であっ
が漏出する事により発症する。若年者に多く、妊娠中は約 2000
た。左卵巣膿瘍と診断、右卵巣・子宮には肉眼上異常は認めな
人∼ 100000 人に 1 人の割合で発症するとされている。臨床症状
かった。腫瘍マーカーは CA19-9 48.6 U/ml、CA125 33.7 U/ml、
は胸痛、呼吸苦、頚部圧迫感等であるが、予後は通常良好で、
SCC 2.7 ng/mlであった。病理結果は Squamous cell carcinoma で
治療は抗生剤の予防的投与とされているが、万一、縦隔洞炎や
あり、成熟奇形腫悪性転化が最も疑われた。PET-CT では骨盤内
緊張性気胸を合併する場合には手術が必要となる。今回、我々
限局していたためまずは chemoradiation を開始、現在治療継続中
は分娩時に発症した縦隔気腫を経験したので報告する。
である。成熟奇形腫の悪性転化に関して、若干の文献的考察を
加えて報告する。
【症例】患者は26歳、1経妊0経産。既往歴、家族歴、喫煙歴
には特記事項はなし。38 週 3 日に破水、翌日陣発し経腟分娩と
なった。児は2820 gの男児でApegar 9/9。分娩所用時間5時間47
平成19年1月(2007)
81 (139)
分であった。児娩出約 3 時間後に呼吸苦を自覚したため、直ち
は日本だけであり、この措置に医学的な根拠はない。シートベ
に診察したところ、呼吸音は正常であり肺雑音は認めなかった
ルトは、子宮にかからないように両乳房の間を通し、腰ベルト
が、前胸部触診にて握雪感を認めた。SpO2 96%、胸部 Xp にて
は上前腸骨棘の上を通すのが正しい装着法である。妊娠中のシ
大動脈左縁に線状透亮像を認め、縦隔気腫が疑われた。そこで
ートベルトの着用の安全性及び正しい装着法を、医療者が認識
緊急胸部 CT 検査を行い縦隔上部∼下部、前胸部皮下に air を認
し啓蒙することが必要であると考えられる。
めたため、縦隔気腫、皮下気腫と診断した。呼吸器外科依頼を
し、気管支鏡検査にて明らかな気道損傷を認めないため、抗生
剤投与による保存的治療を指示された。分娩後 2 日目には症状
無事出生児を得た ATⅢ 欠損症の1例
改善し、胸部 Xp 所見も改善した。
【結論】分娩時に稀な縦隔気腫を経験した。類似の症状を呈
平塚市民病院
する疾患として、肺塞栓症や羊水塞栓症等があり、的確な診断
東 條 龍一郎 本 田 能 久 古 谷 正 敬
が必要である。今症例では触診・聴診、胸部 Xp にて縦隔気腫
藤 本 喜 展 笠 井 健 児 齋 藤 優
を疑い、胸部 CT にて診断に至った。触診・聴診、SpO2、胸部
持 丸 文 雄
Xp は簡便かつ有用な検査であると思われた。
症例:患者は18歳、1 G 0 P 既往歴なし。家族歴:母、叔母に
DVTの既往。
交通事故で妊娠38週に IUFD を来たした1例
現病歴:妊娠 17 週 3 日、左下肢の疼痛、腫脹を主訴に当院を
受診。左鼠頚部に圧痛、左下肢に発赤と腫脹、左腓腹筋に把握
横浜労災病院
大 井 由 佳 佐 藤 綾 村 瀬 真理子
沢 井 かおり 菊 地 紫津子 池 田 万里郎
中 山 昌 樹
痛がみられた。左下肢深部静脈血栓症と診断され、入院。
検査所見: ATⅢ の低下、FDP の上昇、TAT(トロンビン−
AT 複合体)
、D ダイマーの上昇、CRP の上昇が見られた。
入院後経過。① 入院後、ATⅢ 低下の持続や血栓症の家族歴
があることから ATⅢ 欠損症と診断、ヘパリンの持続点滴投与
交通事故において IUFD となった報告ではシートベルト非装
にATⅢ製剤の補充を追加。その後症状軽快したため妊娠24週1
着例が多くみられる。今回我々は、子宮破裂や常位胎盤早期剥
日にて退院、外来にてヘパリン、ATⅢ製剤投与を継続。② 妊娠
離を認めないにもかかわらず、IUFD を来たした一例を経験した
37週4日、誘導分娩目的にて再度入院。妊娠38週0日、誘導分娩
ので報告する。
にて3140 g の女児を娩出(Apgar 9/9)
。分娩後は ATⅢ 製剤と
症例は26歳、1回経妊0回経産。既往歴:喘息。近医にて妊婦
健診中、経過に異常なし。妊娠38 w 0 d、軽自動車を自分で運転
ヘパリンを投与し、退院前にワーファリンへ変更し産褥12日目
にて退院となった。
中、前方に停車中の車に追突し、エアーバッグが作動した。シ
先天性 ATⅢ 欠損症とは
ートベルトは装着していなかった。事故より 1 時間後、意識清
遺伝形式は常染色体性優性遺伝。頻度は人口2000人から5000
明、バイタルサインに異常無し。下顎部の擦過傷の他に外傷な
人に対して 1 人。血栓発症部位は下肢の腸骨静脈領域の DVT、
く、性器出血なし、子宮口 1 指開大。胎児心拍なし。胎盤や子
が全体の80%。血栓症発症リスクとしては妊娠・出産・産褥・
宮壁に異常所見なく、母体の腹腔内出血なし。母体の合併症、
外傷・外科手術・経口避妊薬等。発症年齢としては50歳までに
感染所見、凝固異常なく、翌日アトニンにて分娩誘発を開始し
約70%が血栓症に罹患する。
た。分娩は順調に進行し、事故より 27 時間後に児を娩出した。
児は女児、2555 g、Ap 0/0、羊水混濁なし、臍帯巻絡頚部1回、
外傷・体表奇形・心奇形なく、頭蓋内出血や腹腔内出血なし。
診断:① ATⅢ 活性が60%以下。② 家系内に血栓性疾患の集
積が認められる。
治療:抗凝固療法としてヘパリンを用いる。ヘパリンの抗凝
臍帯血採取は不可能であった。胎盤や臍帯に異常なし。家族の
固作用は血中の ATⅢ レベルに依存するため、ATⅢ 補充療法な
同意が得られず児の解剖や侵襲的な検査は行わなかったため、
どが必要となる。
今回 IUFD となった直接の原因は不明である。
まとめ:① 本症は妊娠・分娩・産褥において約70%が血栓症
今回の症例から、我々が妊婦に指導する際に参考になる事柄
を発症するといわれており、家族歴にもとづき的確な診断を行
を考察した。妊娠中は、通常シートベルトを着用する人でもシ
うことが重要。② ヘパリン、ATⅢ 製剤の血中濃度の半減期は
ートベルトを着用しなくなる人が増えることが分かっている。
短く、頻回の検査・頻回の投与が必要であるため、患者の負担
日本では、法律的には妊婦にはシートベルト着用の義務を免除
は小さくない。
している。先進国において、このような措置がとられているの
82 (140)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
編集後記
毎年この時期になると人事異動の噂が囁かれるようになります。今年も無論例外ではありません。ここ数年の人事に
関する話題はなんといっても産婦人科医師不足問題です。我々の医局もその例外ではなく、人員不足の中で各病院のポ
ストをどのように埋めていくのか首脳陣は四苦八苦しております。現役産婦人科医師が辞めないように、新入局員が一
人でも増えるようにとさまざまな方策を施行中です。しかし現状は厳しい現実ばかりで我々産婦人科医師に求められる
日々の業務は膨大な量です。昼夜お構いなしに分娩を取り上げるのは当たり前、婦人科癌の診療をこなし、不妊治療や
腹腔鏡手術など高度な技術も要求され、さらに更年期や思春期の女性健康管理なども求められます。さらに加えて看護
師内診問題の影響により助産婦の足りない産院での夜間当直医師は頻回の内診により疲労疲弊は深刻な状況です。
研修医に産婦人科を選択してもらうことが最優先ですが、退局者を極力減らす努力も また必須です。しかし現場の努
力のみによる対応では限界があり、行政レベルでの根本的な対策が必要な状況なのではないか、などと思う今日この頃
です。
昨今の産婦人科問題(あるいは勤務医問題なのかもしれませんが)を考えると憂鬱になってきます。明るい結論で締
めくくるつもりが、奈良県の分娩時脳出血のニュースでまた暗くなってしまいました。産科救急の受け入れ先がなかな
か見つからない状況などはとても他人事とは思えません。妊婦と新生児を守るのは産婦人科医師と小児科医師のみでは
困難であり、内科や脳外科、神経内科その他全科をあげての対応が必要であるという認識が医療者全体に必要なのでは、
なんて考えてしまいました。
勿論、産婦人科業務内容には特有の喜びがあります。より安全な方法を選択しての産科管理成功時や不妊治療による
妊娠成立、腹腔鏡手術や悪性腫瘍手術などで完遂した時など、さまざまの達成感を感じる事が出来ます。すべての産婦
人科医師が不運なトラブルに遭わず診療を続けられるように願っております。
杉浦 賢
平成19年1月(2007)
83 (141)
神奈川県産科婦人科医会会則
日本産科婦人科学会神奈川地方部会会則
第1章 総 則
第1条 本会は社団法人日本産科婦人科学会定款第3条に規定され
第4章 会 議
第15 条 本会は総会と理事会の会議を開く。
た地方部会で、名称を神奈川地方部会と称し、事務所を神奈
第16条 本会の総会は代議員制により行う。代議員制による議員の
川県横浜市中区富士見町3丁目1番地 神奈川県内総合医療
名称は地区代議員とし、総会は地区代議員をもって構成され
会館4階に置く。
る。地区代議員以外の会員は総会に出席し議長の了解を得て
第2条 本会は、社団法人日本産科婦人科学会定款第6条に規定さ
れた神奈川県内の会員をもって当てる。
第3条 本会は、産科学および婦人科学の進歩発展に貢献し、併せ
て会員相互の親睦を図ることを目的とする。
第4条 本会は、前条の目的を達するために次の事業を行う。
学術集会の開催、機関紙および図書などの刊行、社団法人
意見を述べることができる。ただし表決に参加することはで
きない。
第17条 通常総会は年1回会長が招集し、事業計画の決定、予算の
審議、決算および監査の事項の承認、その他重要事項の協議
決定を行う。
2.臨時総会は、理事会が特に必要と認めた場合、または会員
日本産科婦人科学会が行う事業への協力、その他本会の目的
現在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を示して、
を達成するために必要な事業。
総会の招集を請求されたときは、その請求のあった日から30
日以内に招集しなければならない。
第2章 入会・退会・除名
3.総会の議長及び副議長は、出席地区代議員の互選で定める。
総会の開催は地区代議員定員数の過半数以上の者の出席を必
第5条
本会に入会を希望する者は、別に定めるところによりその
旨を申し出て会長の承認を得なければならない。
第6条
会員は別に定める入会金及び会費を納入しなければならな
い。なお会費は別に定めるところにより免除することができ
る。また、既納の入会金及び会費はいかなる事由があっても
返還しない。
第7条 会員は次の事由によりその資格を喪失する。
退会したとき、死亡したとき、除名されたとき、会長が認
めたとき。
要とする。
4.地区代議員が出席できない場合は予備地区代議員を充てる
ことができる。総会の議事は、出席者の過半数をもって決し、
可否同数のときは議長の決するところによる。
第18条 理事会は、会長が招集し、会長及び理事をもって構成する。
会議は原則、毎月1回開催される。ただし、会長が認めたと
き又は理事の2分の1以上から理事会開催の請求があったと
きは臨時理事会を30日以内に招集しなければならない。理事
会は、その過半数が出席しなければ会議を開くことはできな
い。
第3章 役員および地区代議員
第19条 監事、議長、副議長、日本産科婦人科学会役員並びに代議
員、および会長が必要と認め理事会で承認されたものは理事
第8条
本会に、次の役員を置く。
a 地方部会長(1名)
、理 事(約11名)
、
s
会に出席して意見を述べることができる。但し、表決に加わ
ることはできない。
監 事(2名)
第5章 会 計
第9条 地方部会長、理事及び監事は、別に定めるところにより総
会で選任する。
第10条 途方部会長は本会の職務を総理し、本会を代表する。理事
第20条 本会の会員は所定の会費を負担しなければならない。ただ
は、会長を補佐し、理事会の議決に基づき、日常の会務に従
し別に定める会員は、会費を免除される。本会の会計は会員
事し、総会の議決した事項を処理する。
の会費等をもって当てる。総会において会計報告をしなけれ
第11条 理事は、理事会を組織して、この会則に定めるもののほか、
本会の総会の権限に属せしめられた事項以外の事項を議決
ばならない。本会の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月
31日に終わる。
し、執行する。
第6章 会則の変更
第12条 監事は、本会の業務及び財産を監査し、その結果を総会に
おいて報告するものとする。
第13条 本会の役員の任期は2年とする。重任を妨げない。
会則の変更
第14条 本会は、会則の定める職務を遂行するために、別に定める
第21条 本会の会則の変更は、理事会及び総会において、おのおの
ところにより、会員中より選任された地区代議員を置く。地
区代議員は、この会則に定める事項を審議し、又は本会の目
的について会長に意見を述べることができる。
その構成員の3分の2以上の議決を経なければならない。
84 (142)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
第7章 補 則
細 則
付 則
この会則は、平成14 年4月1日より実施する。
第22条 この会則の施行についての細則は、理事会および総会の議
決を経て、別に定める。
日本産科婦人科学会神奈川地方部会における
社団法人日本産科婦人科学会役員及び代議員選出に関する細則
第1章 総 則
第9条 選挙管理委員長は、役員及び代議員候補一覧表を作成し、
地区代議員に速やかに通知しなければならない。
第1条 本細則は、社団法人日本産科婦人科学会定款(以下定款)
、
第6章 選挙管理業務
および社団法人日本産科婦人科学会役員および代議員選任規
定(以下選任規定)に基づき、本会における社団法人日本産
科婦人科学会役員及び代議員候補者を選出するための方法を
第10条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票する。
定めたものである。
第11条 役員及び代議員の選挙は、有効投票の最多数の投票数を得
2.役員とは神奈川地方部会長、理事、監事とする。
た者、又は得票数の多い順に以って当選人とする。同数の場
第2条 本会は、社団法人日本産科婦人科学会の求めた数の役員及
合は当該候補者による決選投票とする。再度同数のときは抽
び代議員候補者を、神奈川地方部会所属の地区代議員によっ
選とする。日本産科婦人科学会代議員の選挙については、次
て選出するものとする。
点、次次点を補欠とする。但し、その有効期限は前任者の残
任期間とする。
第2章 役員及び代議員の任期
第12条 投票表紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。
2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は、連記とす
第3条 本細則で選出された役員及び代議員の任期は、2年とする。
る。
3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候
第3章 選挙権・被選挙権
第4条 役員及び代議員候補者は、会員中より選出される。
補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、
超えた票は無効とする。
第13条 候補者の数が定数を超えないときは、出席地区代議員の議
第4章 選挙管理
第5条 役員及び代議員選挙を行うために、選挙管理委員会を設け
決により、投票を行わないで候補者を当選とすることができ
る。
る。
2.社団法人日本産科婦人科学会から役員及び代議員選出の依頼
第14条 議長は、地区代議員の中から選挙立会人3名を指名し、投
を受けた場合、速やかに選挙管理委員会を組織し、選出作業を
票および開票に立ち会わあせなければならない。また選挙管
開始しなければならない。
理委員長は、選挙立会人立ち会いの上、開票し、結果をただ
3.選挙管理委員は、候補者および推薦者以外の会員若干名を
当て、選挙に関する一切の業務を管理する。
4.選挙管理委員長は、委員の互選による。委員会は選挙終了
ちに議長に報告しなければならない。
第15条 役員及び代議員が選出されたとき、議長は速やかに当選人
の氏名および得票数を神奈川県産科婦人医科会会長に報告し
なければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の旨を
後解散する。
通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければならな
第5章 選挙の方法
第6条 地方部会長は代議員選挙の期日の20日前までに会員に公示
い。
付 則
しなければならない。
第7条 役員及び代議員候補者、またはこれを推薦するものは選挙の
期日10日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に文書
で届けなければならない。
第8条 届出文書には、立候補者の役職名、氏名、住所、生年月日
を記載しなければならない。推薦届出文書には、前記記載の
ほか、推薦届出書者2名の氏名、年令を記載しなければなら
ない。
本規定は平成14年4月1日より施行する。
平成19年1月(2007)
85 (143)
日本産婦人科医会神奈川県支部会則
第1章 総 則
第15条 本会の総会は地区代議員制により行う。代議員制による議
員の名称は地区代議員とし、総会は地区代議員をもって構成
第1条 本会は社団法人日本産婦人科医会定款第3条に規定された
される。地区代議員以外の会員は、総会に出席し議長の了解
支部で、名称を神奈川県支部と称し、事務所を神奈川県横浜
を得て意見を述べることができる。ただし表決に参加するこ
市中区富士見町3丁目1番地 神奈川県総合医療会館4階に
とはできない。
第16条 総会は年1回支部長が招集し、事業計画の決定予算の審議、
置く。
第2条 本会は、社団法人日本産婦人科医会定款第3条に規定され
た神奈川県内の会員をもって当たる。
第3条 本会は社団法人日本産婦人科医会で規定された事業を行う
ことを目的とする。
決算および監査事項の承認、その他重要事項の協議決定を行
う。
2.臨時総会は、支部長が特に必要と認めた場合、または、会
員現在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を示し
て、総会の招集を請求されたときは、その請求のあった日か
第2章 入会・退会・除名
ら30日以内に招集しなければならない。
3.総会の開催は地区代議員定数の過半数以上の者の出席を必
第4条 本会に入会を希望する者は、別に定めるところによりその
旨を申し出て支部長の承認を得なければならない。
第5条 会員は別に定める入会金及び会費を納入しなければならな
い。なお会費は別に定めるところにより免除することができ
る。また、既納の入会金及び会費はいかなる事由があっても
要とする。
4.地区代議員が出席できない場合予備地区代議員を充てるこ
とができる。総会の議事は、出席者の過半数をもって決し、
可否同数のときは議長の決するところによる。
第17条 理事会は、支部長が招集し、原則毎月1回開催される。た
だし、支部長が認めたとき又は理事の2分の1以上から理事
返還しない。
第6条 会員は次の事由によりその資格を喪失する。
会開催の請求があったときは臨時理事会を30日以内に招集し
退会したとき、死亡したとき、除名されたとき、支部長が認
なければならない。理事会は支部長、及び理事をもって構成
めたとき。
し、理事の過半数が出席しなければ会議を開くことはできな
い。
第3章 役員および地区代議員
第18条 監事、議長、副議長、日本産婦人科医会役員並びに代議員、
第7条 本会に、次の役員を置く。
および支部長が必要と認め、理事会で承認されたものは理事
(1) 支部長(1名)
、理事(約11名)
会に出席して意見を述べることができる。但し、表決に加わ
(2) 監事(2名)
ることはできない。
第8条 支部長、理事及び監事は、別に定めるところにより総会で
第5章 会 計
選任する。
第9条 支部長は本会の職務を総理し、本会を代表する。理事は、
支部長を補佐し、理事会の議決に基づき、日常の会務に従事
し、総会の議決した事項を処理する。
第10条 理事は、理事会を組織して、この会則に定めるもののほか、
第19条 本会の会員は所定の会費を負担しなければならない。ただ
し別に定める会員は、会費を免除される。本会の会計は会員
の会費等をもって当てる。総会において会計報告をしなけれ
本会の総会の権限に属せしめられた事項以外の事項を議決
ばならない。本会の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月
し、執行する。
31日に終わる。
第11条 監事は、本会の業務及び財産を監査し、その結果を総会に
第6章 会則の変更
おいて報告するものとする。
第12条 本会の役員の任期は1年とする。ただし重任を妨げない。
第13条 本会は、会則の定める職務を遂行するために、別に定める
第20条 本会の会則は、理事会及び総会において、おのおのその構
成員の3分の2以上の議決を経なければならない。
ところにより、会員中より選任された地区代議員を置く。地
区代議員は、この会則に定める事項を審議し、又は本会の目
第7章 補 則
的について支部長に意見を述べることができる。地区代議員
は支部正会員の中から選出し、その任期は 1 年とする。ただ
し重任を妨げない。
第4章 会 議
第14条 本会は総会と理事会の会議を開く。
第21条 この会則の施行についての細則は、理事会および総会の議
決を経て、別に定める。
付 則
この会則は平成14年4月1日より実施する。
86 (144)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
日本産婦人科医会神奈川県支部における
社団法人日本産婦人科医会役員及び代議員選出に関する細則
第1章 総 則
第8条 届出文書には、立候補の役職名、氏名、住所、生年月日を
記載しなければならない。推薦届出文書には、前記記載のほ
第1条
本細則は、社団法人日本産婦人科医会定款(以下定款)、
および社団法人日本産婦人科医会役員および代議員選任規定
(以下選任規定)に基づき、本会における社団法人日本産婦
か、推薦届出者2名の氏名、年令を記載しなければならない。
第9条 選挙管理委員長は、役員及び代議員候補一覧表を作成し、
地区代議員に速やかに通知しなければならない。
人科医会役員及び代議員候補者を選出するための方法を定め
第6章 選挙管理業務
たものである。
2.役員とは神奈川県支部長、理事、監事とる。
第2条 本会は、社団法人日本産婦人科医会の求めた数の役員及び
代議員候補者を、神奈川県支部所属の地区代議員によって選
出するものとする。
第10条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票とす
る。
第11条 有効投票数の最多数の投票数を得た者又は得票数の多い順
を以って当選人とする。同数の場合は該当候補者による決選
第2章 役員及び代議員の任期
投票とする。但し、再度同数のときは抽選とする。
日本産婦人科医会代議員の選挙については順位をつけ定数
第3条 本細則で選出された代議員の任期は、1年とする。但し、
重任を妨げない。
外を補欠とする。補欠にも順位をつけ、その有効期間は前任
者の残任期間とする。
第12条 投票用紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。
第3章 選挙権・被選挙権
2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は、連記とす
る。
第4条 代議員候補者は、会員中より選出される。
3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候
補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、
第4章 選挙管理
超えた票は無効とする。
第13条 候補者の数が定数を超えないときは出席代議員の議決によ
第5条 役員及び代議員選挙を行うために、選挙管理委員会を設け
り、投票をおこなわないで候補者を当選とすることができる。
第14条 議長は、地区代議員の中から選挙立会人3名を指名し、投
る。
2.社団法人日本産婦人科医会から役員及び代議員選出の依頼
票および開票に立ち会わせなければならない。また選挙管理
を受けた場合、速やかに選挙管理委員会を組織し、選出作業
委員長は、選挙立会人立ち会いの上、開票し、結果をただち
を開始しなければならない。
に議長に報告しなければならない。
3.選挙管理委員長は、候補者および推薦者以外の会員若干名
を当て、選挙に関する一切の業務を管理する。
4.選挙管理委員長は、委員の互選による。委員会は選挙終了
第15条 役員及び代議員が選出されたとき、議長は速やかに当選人
の氏名および得票数を神奈川県産科婦人科医会会長に報告し
なければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の旨を
通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければならな
後解散する。
い。
第5章 選挙の方法
付 則
第6条 支部長は代議員選挙の期日の20日前までに会員に公示しな
ければならない。
第7条 役員及び代議員候補者は、またはこれを推薦するものは選
挙の期日10日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に
文書で届けなければならない。
本規定は平成14年4月1日より施行する。
平成19年1月(2007)
87 (145)
神奈川県産科婦人科医会会則
(前 文)
第4章 会 員
本会は、産婦人科領域で車の両輪とも称される日本産科婦人科
学会神奈川地方部会と日本産婦人科医会神奈川県支部とが合体し
た医会形式をとることによって、両者の運営が円滑に行われ、か
つ会員が産婦人科医として必須の医学・医療の進歩、変遷の実態
(会員の資格)
第7条
会員は、原則として社団法人日本産科婦人科学会並びに
を把握するに便であるという理由により、昭和 51 年以降、医会形
式をとって現在に至っている。
社団法人日本産婦人科医会の会員でなければならない。
(入 会)
第8条
第1章 名称及び事務所
本会に入会しようとする者は、別に定める様式による入
会申込書に必要事項を記入の上、会員1名以上の推薦を得
て本会に提出し、理事会の承認を得なければならない。
(名 称)
第1条
2.届出事項に変更を生じたときも同様とする。
本会は、神奈川県産科婦人科医会(KANAGAWA
MEDICAL
ASSOCIATION
OF
OBSTETRICS
AND
GYNECOLOGY)と称する。
(事務所)
(退 会)
第9条
本会を退会しようとする者は、別に定める様式による退
会届出書を本会に提出しなければならない。
(会費及び負担金)
第2条 本会は、事務所を神奈川県横浜市中区富士見町3丁目1
番地 神奈川県総合医療会館4階に置く。
第 10 条 会員は、会費及び負担金を納めなければならない。
2.会費及び負担金の決定並びに徴収方法は、総会でこれを
定める。
第2章 組 織
3.退会し、又は除名された会員が既に納入した会費及び負
担金は返還しない。
(組 織)
第3条
(会員の義務)
本会は、神奈川県内に在住又は勤務する産科婦人科医師
を以て組織する。
第 11 条
会員は、本会の会則を守り、その秩序を維持するように
努めなければならない。
2.前項以外の者であって、本会に特に入会を希望する者は、
理事会の承認を経て準会員となることができる。
(会員の権利)
第 12 条 会員は、役員に立候補することができる。
第3章 目的及び事業
2.会員は、本会の会務に関し、本会に意見を述べることが
できる。
(目 的)
第4条
(会員の除名)
本会は、会員の学術向上並びに医道の高揚を図り、併せ
て会員相互の親睦を期することを目的とする。
第 13 条
本会会員にして、本会の名誉を損なう言動をなす者、又
は故なくして会員の義務を怠る者は、総会の議を経て、会
長がこれを除名することができる。
(事 業)
第5条
(名誉会員)
本会は、前条の目的を達成するため次の事業を行う。
(1) 学術集会、講演会並びに研修会に関する事項
(2) 研究、調査に関する事項
第 14 条
会長は、総会の議を経て、本会に功労のあった者に、名
誉会員の称号を与えることができる。
2.名誉会員の称号は終身とする。
(3) 社団法人日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医
第5章 役員及び顧問
に関する事項
(4) 医療保険に関する事項
(5) 母子保健に関する事項
(6) 会員福祉に関する事項
(7) 会誌、広報に関する事項
(8) その他必要な事項
(事業部)
第6条 本会の事業を遂行するため、次の各部を置く。
(1) 総務部 (7) 医療対策部
(2) 経理部 (8) 広報部
(3) 学術部 (9) 異常分娩先天異常対策部
(4) 編集部 (10) 悪性腫瘍対策部
(5) 医療保険部 (11) 周産期医療対策部
(6) 母子保健部 (12) その他
(役 員)
第 15 条 本会に次の役員を置く。
会 長 1名 副会長 2名
理 事 11 名 監 事 2名
2.役員の任期は2年とし、原則として同一役種の連続再任
は3期を限度とする。但し、理事はこの限りでない。
3.副会長は、1名は日本産科婦人科学会地方部会長、1名
は日本産婦人科医会神奈川県支部長とする。
(役員の職務)
第 16 条 会長は、本会を代表し、会務を総理する。
2.副会長は会長を補佐し、会長事故あるときはその職務を
代行する。その順位はあらかじめ理事会の議を経てこれを
88 (146)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
4.地区代議員会及び予備地区代議員は本会の役員を兼ねる
決める。
3.理事は、会長の旨をうけて会務を分掌する。
4.監事は会務を監査する。
ことはできない。
5.地区予備代議員は、地区代議員に事故あるとき、その職
務を代行する。
(役員の選挙)
役員等の選挙は、日本産科婦人科学会神奈川地方部会及
6.地区代議員及び地区予備代議員の任期は2年とする。欠
び代議員の選出に関する細則、日本産婦人科医会神奈川県
員により就任した地区代議員会及び予備地区代議員の任期
支部役員及び代議員選出に関する細則により、総会におい
は、その前任者残任期間とする。
第17条
て選出する。神奈川県産科婦人科医会会長の選出について
も適応することとする。
第 25 条 地区代議員は、会則その他の規定に定める事項を審議し、
又は本会の目的について会長に意見を述べることができる。
(役員の補欠選挙)
第18条
(地区代議員の職務)
役員に欠員が生じたときは、原則として1年以内に補欠
第8章 総 会
選挙を行う。
2.補欠として選任された役員の任期は、前任者の残任期間
(定時総会および臨時総会)
とする。
第 26 条
(顧 問)
第19 条 本会に顧問を置くことができる。
2.顧問は、総会の議を経て会長がこれを委嘱する。その任
総会は、代議員制とする。地区代議員以外の会員は総会
に出席し、議長の許可のもと発言することはできるが、議
決権はない。
期は委嘱した会長の任期終了までとする。
3.顧問は、会長の諮問に応え、本会の各種の会議に出席し
2.定時総会は年1回とし、原則として3月会長が招集する。
て意見を述べることができる。但し裁決に加わることはで
3.臨時総会は、理事会の議を経て、会長が招集する。又は
3分の1以上の会員の要請があった場合には、会長は速や
きない。
かに総会を開かなければならない。
第6章 理事会
(総会の招集)
第 27 条
(理事会)
第20条 理事会は、会長、副会長、及び理事を以て構成する。
総会の招集は、10 日以前にその会議において審議すべき
事項、日時及び会場を通知しなければならない。但し、緊
急を要する場合は、その期間を短縮することができる。
2.理事会は、会長が招集してその議長となる。
3.理事会は、その過半数が出席しなければ会議を開くこと
ができない。
(理事会の任務)
第21条
次の事項は理事会において討議、議決を経なければなら
ない。
(総会の任務)
第 28 条 次の事項は、総会の議決又は承認を経なければならない。
1.会則、付帯細則並びに諸規則の変更
2.事業報告
3.収支決算
(1) 総会の招集及びこれに提出する事項
4.事業計画並びに予算
(2) 会務運営に関する事項
5.会費の賦課並びに負担金
2.議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のとき
は議長の決するところによる。
(理事会への出席、発言)
第22条
監事、議長、副議長、日本産科婦人科学会及び日本産科
婦人科医会の役員並びに代議員、及び会長が必要と認め、
理事会で承認された者は理事会に出席して意見を述べるこ
とができる。但し、表決に加わることはできない。
(委員会)
第23条
会長は、必要と認めたときは、理事会の議を経て、委員
会を置くことができる。
6.地区代議員並びに地区予備代議員の変更
7.その他の事項
(総会の議長及び副議長の選挙並びに職務)
第 29 条 総会に議長及び副議長各 1 名を置く。
2.総会の議長及び副議長は、地区代議員の中から総会で選
出する。
3.議長及び副議長の任期は、各々の地区代表議員の任期終
了までとする。
4.総会の議長は、総会の秩序を保持し、議事を整理し、総
会を代表する。
5.副議長は、議長に事故あるときはその職務を代行する。
第7章 地区代議員および地区予備代議員
(総会の議決)
第 30 条
(地区代議員の定数及び予備地区代議員の定数)
第24 条 本会に地区代議員および予備地区代議員を置く。
2.地区代議員および予備地区代議員の選出は会員の互選に
よる。
3.その定数は別に定める規定により選出する。
総会の議決は、出席者の過半数を以てし、可否同数の時
は議長がこれを決める。
(総会への役員の出席発言)
第 31 条
本会の役員は総会に出席し、意見を述べることができる
が、表決に加わることはできない。
平成19年1月(2007)
89 (147)
第9章 会 計
付 則
(会 計)
第32条
1.本会則は昭和 51 年4月1日より施行する。
本会の会計は、会費、負担金、寄付金及びその他の収入
を充てる。
1.本会則は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本会則は平成元年4月1日より施行する。
2.必要のある場合は、臨時会費を徴収することができる。
1.本会則は平成8年4月1日より施行する。
3.既納の会費又は負担金は理由の如何を問わずこれを返還
1.本会則は平成9年4月1日より施行する。
しない。
1.本会則は平成10年4月1日より施行する。
(会計年度)
第 33条
1.本会則は平成12 年8月1日より施行する。
本会の会計年度は毎年4月1日に始まり、翌年3月 31 日
に終わる。
1.本会則は平成13 年6月1日より施行する。
1.本会則は平成14 年4月1日より施行する。
第 10 章 雑 則
(第 34 条 本会の会則の変更は、総会の出席者の3分の2以上の同
意を要する。
(細則及び規定)
第35 条 本会則に必要な細則及び規定は別に定める。
神奈川県産科婦人科医会施行細則
(規程の制定)
第1条 この細則は、会則第 35 条によりこれを設ける。
(会員種別、所属等の異動)
第2条
会員の種別、又は住所あるいは就業所に変更があるとき
は、別に定めるものとする。
(会費未納者の退会)
第3条
督促にも拘らず、2年以上会費を納めない会員は、これ
を退会者とする。
2.会員死亡のときは自然退会とする。
(地区代議員の定数)
第4条
会則第 24 条による地区代議員は、理事会で承認した地区
(会員種別)
第 7 条 本会の会員種別は、次の通りとする。
(1) A会員 病院、診療所等の医療施設の産科 婦人科責任
者、又はこれに準ずる者
(2) B会員 日本産科婦人科学会専門医又は母体保護法指定
医で A会員以外の者
(3) C会員 日本産科婦人科学会専門医及び母体保護法指定
医のいずれでもない者
(4) 準会員 会則第3条第2項による者
(本会の会費)
第 8 条 本会の会費は次の通りとする。
毎に会員 20 につき1名、その端数 10 名を超えるときは1名
(1) A会員 年額 33,000 円
を加える。会員 20 名未満のときは1名とする。
(2) B会員 年額 22,000 円
2.横浜市、川崎市及びその他の県域との間に定数格差が生
(3) C会員 年額 14,000 円
じたときは、代議員会改選の年に比例配分による調整を行
(4) 準会員 年額 7,000 円
うものとする。
2.本会の入会金は 3,000 円とする。
3.前項の代議員定数の基準となる会員数は、改選直前の 12
月末日における会費完納の A,B 及び C 会員数とする。
4.地区代議員は予備地区代議員1名を指名する。
(役員等の選挙)
第 5条 本会役員、日本産科婦人科学会代議員、日本産婦人科医会
3.名誉会員並びに高齢会員(77 才以上で本会に 20 年以上在
籍)は、本会会費を免除することができる。
(上部組織の会費)
第 9 条 本会会員は、上記会費の他に次の上部組織の会費を併せて、
本会に一括納入するものとする。
代議員は、別に定める選挙規定により総会において選出す
(1) 日本産科婦人科学会費
る。但し、本会理事のうち2名は会長指名とする。
(2) 日本産科婦人科学会関東連合地方部会費
(事業部)
第 6条 会則第6条による事業部の構成は、概ね次の通りとする。
(1) 部長1名
(2) 部員若干名(原則として 10 名以内)
2.部長は、理事がこれにあたる。部員は会長が委嘱する。
(3) 日本産婦人科医会費
(4) 日本産婦人科医会関東ブロック会費
(職員規程)
第10条 本会職員に関する諸規程は別にこれを定める。
90 (148)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
付 則
1.本細則は昭和55 年4月1日より施行する。
1.本細則は平成元年4月1日より施行する。
1.本細則は平成6年4月1日より施行する。
1.本細則は平成8年4月1日より施行する。
1.本細則は平成9年4月1日より施行する。
1.本細則は平成12 年8月1日より施行する。
1.本細則は平成14 年4月1日より施行する。
1.本細則は平成15 年4月1日より施行する。
神奈川県産婦人科医会役員選挙規定
(役員等の選挙)
第1条
会則第 17 条及び施行細則第6条に基づく役員の選挙は、
本規程の定めるところによる。
(選挙に関する公示)
第2条
会長は、役員に立候補又は候補者を推薦しようとすると
きは、選挙の期日の 20 日前までに全会員に公示するととも
に、選挙管理委員会を委嘱しなければならない。
2.選挙管理委員は、候補者及び推薦者以外の会員より若干
名を以てこれに充てる。
3.選挙管理委員会は、選挙に関する一切の業務を管理し、
選挙終了後解散する。
4.選挙管理委員長は、委員の互選によりこれを定める。
(役員の任期)
第3条 医会会長、理事、監事の任期は2年とする。
(立候補の届出)
第4条 役員に立候補又は立候補を推薦しようとするときは、選挙
の期日 10 日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に
文書で届出なければならない。但し、郵送による届出は認
めない。
(届出の様式)
第5条 前条の届出文書には、立候補の役職名、氏名、住所、生
年月日を記載しなければならない。
2.推薦届出文書には、前項記載のほかに推薦届出書者2名
(選挙立会人)
第9条 議長は、地区代議員の中から選挙立会人3名を指名し、
投票及び開票に立ち会わせなければならない。
(開 票)
第 10 条
選挙管理委員長は、選挙立会人の立合いの上投票箱を開
き、投票を正確に点検し、その点検が終わり次第、その結
果を直ちに議長に報告しなければならない。
(無効投票)
第 11 条
投票者の数が定数を超えないときは、出席地区代議員の
議決により、投票を行なわないで候補者を当選することが
できる。
(当選人の決定)
第 12 条
役員の選挙は、有効投票の最多数の投票数を得た者を以
って当選人とする。
2.投票同数の場合は決選投票とする。但し、再度同数の場
合は抽選とする。
(当選決定の報告)
第 13 条
当選人が決定したときは、議長は、速やかに当選人の氏
名及び得票数を、医会会長に報告しなければならない。
(当選人への当選決定の通知)
第 14 条
医会会長は、前条の規定による当選人決定の報告を受け
たときは、速やかに当選人に当選の旨を通知し、且つ、当
選人の氏名を告知しなければならない。
以上の氏名、住所を記載しなければならない。
3.以上に伴う書式はこれを定める。
付 則
(候補者の公示)
第6条 選挙管理委員長は、候補者一覧表を作成し、地区代議員
に速やかに通知しなければならない。
第7条 投票用紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。
2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は連記とす
る。
(無効投票)
第8条 次の投票は無効とする。
(1) 正規の用紙を用いないもの
(2) 候補者でない者の氏名を記載したもの
(3) 候補者の氏名を確認できないもの
(4) 役職に規定された定数を記載しないもの
1.本規程は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本規程は平成元年4月1日より施行する。
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
1.本規程は平成 12 年8月1日より施行する。
1.本規程は平成 14 年4月1日より施行する。
平成19年1月(2007)
91 (149)
神奈川産婦人科医会総会会議規定
第1章 総 則
(会 議)
第3章 発 言
(発言の許可)
第1条 会則第26条の総会の会議は本規定による。
(参 集)
第 10 条 地区代議員が発言しようとする時は、挙手して「議長」
と呼び、自己の議席番号を告げ、議長の許可を得なければ
第2条 総会は、開会定刻前に参集しなければならない。
2.議長は、開会前に着席地区代議員を、総務部員により報
告させる。
ならない。
(議長の議席での発言)
第 11 条 議長が、地区代議員として発言しようとする時は、副議
(会議中の出席及び退席)
第3条 地区代議員は、会議中に出席したときは自らその旨を議
長に報告し、また、退席しようとするときは議長の許可を
得なければならない。
(議席の決定及び議長選挙前の議長代行)
長を議長席につかせ、議席において発言しなければならな
い。副議長についても同じとする。
(発言内容の制限)
第 12 条
発言はすべて簡明を旨とし、当該議題の範囲を超えては
ならない。
第4条 総会の議席は、横浜市、川崎市及び県域の3ブロックの
2.議長は、その発言が前項の規定に反すると認めるときは
順送りとし、地区代議員個人は各ブロックの報告名簿順に
注意をし、なお、これに従わないときは発言を禁止するこ
従って決める。
とができる。
2.議長及び副議長が選挙されるまでは、出席地区代議員の
互選により仮議長を定める。
3.一般会員は総会に出席することはできるが、採決には参
(発言時間の制限)
第 13 条
議長は、必要があると認めたときは、あらかじめ発言時
間を制限することができる。
加することはできない。発言のある時は、議長の許可を必
第4章 表 決
要とすることはできるが、採決には参加することはできな
い。発言のある時は、議長の許可を必要とする。着席場所
は地区代議員と別にする。
一般会員の入退室は総務部員より議長に報告しなければ
(表決の宣言)
第 14 条
議長は、表決をとろうとするとき、表決に付する議案又
は動議の内容を明示しなければならない。
ならない。
2.宣告の際、議場にいない地区代議員は表決に加わること
(総会の開閉)
第5条 総会の開会及び閉会は、議長が宣言する。
(会議中の定足数の欠如)
第6条 議長は、会議中に定数を欠くと認めた時は、休憩又は延
会を宣言することができる。
2.議長は、会長と協議の上、改めて総会の招集を求めるこ
とができる。
はできない。
(表決の方法)
第 15 条
議長が表決をとろうとするときは、議題を可とする者を
起立又は挙手させ、その多数を認定して可否の結果を宣告
する。
2.議長が起立又は挙手者の多数を認定しがたいとき、又は
出席代議員の5分の1以上の者から異議の申立があったと
第2章 議 事
きは、議長は、投票で表決をとらなければならない。
3.前項の投票は、記名投票又は無記名投票とする。
(議題の宣告)
第7条
議長は、会議に付する案件を議題とするときは、その旨
(表決後の宣告)
第 16 条 表決の終ったときは、議長は、その結果を宣告する。
を宣告する。
第5章 動 議
(一括議題)
第8条
議題は、必要に応じて2件以上の議案を一括して議題と
することができる。
(案件の説明、質問及び表決)
第9条
会議に付する案件は、会議において提出者の説明を聞き、
質問、討論の後、表決する。
2.発言が尽きない時は、地区代議員から質疑又は討論集結
の動議を提出することができる。
3.前項の動議が採択されたときは、議長は討論を経ないで、
会議にはかってこれを決する。
(動議成立の条件)
第 17 条
地区代議員が提出する動議は、発議者のほかに2名以上
の賛成者がなければ、議題とすることができない。但し、
議事進行に関する動議はこの限りではない。
92 (150)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
第6章 議事録並びに書記
(議事録署名人)
第 21 条
議事録に署名すべき代議員の数は2名とし、議長がこれ
を指名する。
(議事録並びに書記)
第18 条 総会に書記を若干名置く。
付 則
2.書記は、議長がこれを選任する。
3.書記は、議長の命を受けて総会の事務を掌理し、議事録を
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
作成する。
1.本規程は平成 12 年8月1日より施行する。
(議事録の作成)
第19条
議長は、総会の会期ごとに、議事録を確認しなければな
1.本規程は平成 14 年4月1日より施行する。
1.本規程は平成 15 年4月1日より施行する。
らない。
(議事録の公表)
第20条
議事録の要旨は、神奈川県産科婦人科医会会報に掲載し
て、会員に公表する。
神奈川県産科婦人科医会傷病見舞金並びに弔慰金給付規程
第1条
この規程は会則第 42 条によりこれを定める。
付 則
(目 的)
第2条
本規程は、本会会員の長期傷病による休業又は死亡の際、
傷病見舞金又は弔慰金を給付することを目的とする。
(傷病見舞金)
第3条
1.本規程は昭和 55 年4月1日より施行する。
1.本規程は平成元年4月1日より施行する。
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
本会会員が傷病のため1ヵ月以上休業する場合は、傷病
1.本規程は平成 15 年4月1日より施行する。
見舞金 30,000円を給付する。
(弔慰金)
第4条
本会会員が死亡の際は、弔慰金 50,000 円を給付し、更に、
生花又は花輪1基を贈る。
神奈川県産科婦人科医会旅費規程
(趣 旨)
第1条
この規程は会則第 43 条によりこれを定める。
(2) 交通費(運賃)は実費を支給する。
(3) 県外出張宿泊費 15,000 円
(目 的)
第2条 本会役員、会員及び職員が会務のため出張したときは日
付 則
当、旅費その他を支給する。
(1) 出張地域により次の日当を支給する。
1.本規程は昭和 55 年4月1日より施行する。
イ.居住地と同一の郡市医師会 3,500 円
1.本規程は平成元年4月1日より施行する。
ロ.隣接する郡市医師会 4,000 円
1.本規程は平成8年4月1日より施行する。
ハ.その他の郡市医師会 4,500 円
ニ.県 外 5,000 円
平成19年1月(2007)
93 (151)
神奈川県産科婦人科医会役員
会 長
八十島 唯 一
副 会 長
平 原 史 樹
監 事
砂 田 裕 和
和 泉 元 志
東 條 龍太郎
理 事
高 橋 恒 男
中 野 眞佐男
石 塚 文 平
和 泉 俊一郎
坂 田 寿 衛
後 藤 忠 雄
持 丸 文 雄
関 賢 一
朝 倉 啓 文
中 山 裕 樹
海 野 信 也
日本産科婦人科学会代議員
朝 倉 啓 文
天 野 完
和 泉 俊一郎
岩 崎 克 彦
海 野 信 也
可世木 久 幸
甘 彰 華
木 口 一 成
斎 藤 馨
坂 田 寿 衛
茂 田 博 行
白 須 和 裕
高 橋 諄
高 橋 恒 男
多和田 哲 雄
東 條 龍太郎
中 野 眞佐男
中 山 裕 樹
中 山 昌 樹
平 原 史 樹
宮 本 尚 彦
持 丸 文 雄
八十島 唯 一
山 中 美智子
日本産婦人科医会代議員
黒 沢 恒 平
近 藤 俊 朗
内 出 洋 道
桃 井 俊 美
神奈川県産科婦人科医会名誉会員
安 達 健 二
雨 宮 章
安 西 節 重
岩 田 嘉 行
岩 本 直
植 村 次 雄
内 田 勝 次
梅 内 正 利
遠 藤 哲 広
太 田 徹
片 桐 信 之
川 内 香 苗
菊 池 三 郎
岸 野 貢
倉 品 治 平
小 坂 順 治
小 松 英 夫
斎 藤 真
佐 賀 正 彦
佐 藤 和 雄
佐 藤 啓 治
島 田 信 宏
代 田 治 彦
菅 原 章 一
鈴 木 健 治
住 吉 好 雄
関 口 允 夫
平 健 一
b
崎 光 正
田 中 洋
多和田 金 雄
出 口 奎 示
戸賀崎 義 洽
西 岡 延一郎
根 岸 達 郎
林 茂
原 田 輝 武
堀 健 一
前 原 大 作
矢内原 巧
八 木 伸 一
渡 辺 英 夫
日本産科婦人科学会名誉会員
雨 宮 章
佐 藤 和 雄
牧 野 恒 久
矢内原 巧
94 (152)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
日本産科婦人科学会功労会員
安 達 健 二
安 西 節 重
石 原 楷 輔
岩 田 嘉 行
植 村 次 雄
内 田 勝 次
太 田 徹
長 田 久 文
片 桐 信 之
菊 池 三 郎
岸 野 貢
蔵 本 博 行
斉 藤 真
佐 賀 正 彦
佐 藤 啓 治
篠 塚 孝 男
島 田 信 宏
代 田 治 彦
鈴 木 健 治
住 吉 好 雄
関 口 允 夫
田 中 洋
出 口 奎 示
戸賀崎 義 洽
根 岸 達 郎
野 嶽 幸 正
林 茂
原 田 輝 武
前 原 大 作
桃 井 俊 美
八 木 伸 一
神奈川県産科婦人科医会事業部
総 務 部
高 橋 恒 男
持 丸 文 雄
飯 田 智 博
内 出 洋 道
岡 井 良 至
川 内 博 人
甘 彰 華
斉 藤 優
佐 藤 善 之
杉 俊 隆
鈴 木 真
中 山 昌 樹
茂 田 博 行
濱 野 聡
宮 城 悦 子
経 理 部 中 野 眞佐男
高 橋 恒 夫
清 河 薫
黒 沢 恒 平
小清水 勉
増 田 良 平
吉 田 丈 児
渡 部 秀 哉
学 術 部
石 塚 文 平
海 野 信 也
明 石 敏 男
加 藤 久 盛
小 西 英 喜
小 山 秀 樹
斉 藤 寿一郎
斉 藤 裕
榊 原 秀 也
佐 藤 芳 昭
庄 田 隆
白 須 和 裕
西 井 修
松 林 秀 彦
宮 本 尚 彦
和 泉 俊一郎
石 塚 文 平
石 川 雅 彦
可世木 久 幸
佐々木 茂
佐 藤 美紀子
上 坊 敏 子
菅 野 光
杉 浦 賢
鈴 木 隆 弘
高 橋 諄
高 安 義 弘
田 村 みどり
林 保 良
吉 田 浩
植 村 次 雄(顧問)
編 集 部
医療保険部
坂 田 寿 衛
和 泉 俊一郎
遠 藤 哲 広
太 田 巌
國 立 實 夫
小 杉 茂
佐 藤 善 之
田 島 敏 久
土 田 正 祐
中 原 優 人
片 桐 信 之(顧問)
桃 井 俊 美(顧問)
母子保健部
後 藤 忠 雄
坂 田 寿 衛
飛鳥井 邦 雄
池 川 明
内 田 伸 弘
蛯 原 照 男
小 川 幸
可世木 久 幸
窪 田 与 志
黒 沢 恒 平
近 藤 雅 子
斉 藤 寿一郎
鈴 木 真
堀 敬 明
増 田 恵 一
持 丸 文 雄
朝 倉 啓 文
小 澤 陽
小 関 聡
小 平 博
塗 山 百 寛
関 賢 一
中 山 裕 樹
和 泉 玲 子
草 場 徳 雄
高 橋 尚 彦
徳 山 真 弓
中 村 秋 彦
秦 和 子
星 野 眞也子
宮 本 尚 彦
朝 倉 啓 文
関 賢 一
安 藤 紀 子
石 川 浩 史
井 槌 慎一郎
内 田 能 安
小 川 公 一
斉 藤 圭 介
松 島 隆
丸 山 浩 之
望 月 純 子
医療対策部
入 江 宏
福 田 俊 子
広 報 部
異常分娩先天異常対策部
平成19年1月(2007)
悪性腫瘍対策部
95 (153)
中 山 裕 樹
後 藤 忠 雄
雨 宮 清
和 泉 滋
今 井 一 夫
入 江 宏
小野瀬 亮
木 村 昭 裕
久布白 兼 行
小 林 陽 一
佐 治 晴 哉
角 田 新 平
土 居 大 祐
宮 城 悦 子
村 松 俊 成
横 山 和 彦
周産期救急対策部
海 野 信 也
中 野 眞佐男
天 野 完
井 槌 慎一郎
井 上 裕 美
小 川 博 康
奥 田 美 加
加 藤 良 樹
小 松 英 夫
澤 田 真 紀
多和田 哲 雄
堀 裕 雅
毛 利 順
森 晃
山 中 美智子
神奈川県産科婦人科医会委員会
勤務医委員会
萩 庭 一 元
大 野 勉
近 藤 朱 音
高 安 義 弘
松 島 隆
IT 委員会
和 泉 俊一郎
医事紛争対策委員会
今 井 一 夫
親睦委員会
小 澤 陽
医療事故安全対策委員会
平 原 史 樹
斉 藤 優
池 川 明
小 関 聡
漢 那 顕
窪 田 与 志
佐 藤 美紀子
吉 田 浩
高 橋 恒 男
関 賢 一
谷 昭 博
関 本 英 也
金 子 清
田 中 信 孝
八十島 唯 一
東 條 龍太郎
高 橋 恒 男
持 丸 文 雄
茂 田 博 行
96 (154)
日産婦神奈川会誌 第43巻 第2号
神奈川県産科婦人科医会代議員及び予備代議員
平成17年4月∼19年3月
議 長 伊 東 亨 副議長 吉 邨 泰 弘
番号
地区
代議員
予備代議員
28
〃
近藤 俊朗
渡部 秀哉
1
横須賀
加藤 良樹
増田 良平
29
〃
宮本 尚彦
林 保良
2
〃
後藤 誠
内出 洋道
30
〃
中原 優人
光永 忍
3
鎌 倉
高山 正義
遠藤 哲広
31
〃
鈴木 真
諏訪 八大
4
平 塚
小清水 勉
平園 賢一
32
青 葉
脇田 幸一
林 茂隆
5
小田原
桑田 鈴木 秀行
33
〃
服部 一志
辻井 孝
6
茅ヶ崎
下田 隆夫
木島 武俊
34
旭
小松 英夫
7
座間・綾瀬
金子 清
代田 琢彦
35
泉
中澤 龍一
多和田哲雄
8
海老名
増田 恵一
武岡 豊文
36
磯 子
中田 裕信
香西 洋介
9
藤 沢
吉田 洋一
新井 克巳
37
神奈川
和泉 玲子
大石 和彦
10
〃
塗山 百寛
中村 宣夫
38
金 沢
関本 英也
岩本 直
11
秦伊中
杉 俊隆
松林 秀彦
39
市 大
榊原 秀也
沼崎 令子
12
〃
山内 格
平井 規之
40
〃
石川 雅彦
茶木 修
13
足柄上
野澤 昭
柴田 光夫
41
〃
宮城 悦子
奥田 美加
42
〃
杉浦 賢
佐藤美紀子
14
厚 木
並木 俊始
田中 信孝
43
港 南
市川 敏明
大吉 繁男
15
逗 葉
土田 正祐
丸山 浩之
44
港 北
石田 寛
小林 勇
16
相模原
田島 敏久
飯田 盛祐
45
栄
柳澤 和孝
蛯名 勝忠
17
〃
吉村喜久緒
田所 義晃
18
〃
岡井 良至
近藤 正樹
46
瀬 谷
堀 裕雅
安達 敬一
19
〃
上坊 敏子
天野 完
47
都 筑
林 方也
塚原 睦亮
20
大 和
田宮 親
向井 治文
48
鶴 見
明石 敏男
星野眞也子
21
津久井
西迫 潤
49
戸 塚
伊東 亨
田林 正夫
22
三 浦
塩崎 一正
吉田 道子
50
中
戸賀崎義洽
太田 徹
23
川 崎
吉邨 泰弘
柿沼 三郎
51
西
木村 知夫
安西 重義
24
〃
入江 宏
泰 和子
52
保土ケ谷
吉田 正
茂田 博行
25
〃
宮坂 昌人
熊澤 哲哉
53
緑
田口 資朗
戸田 裕也
26
〃
可世木久幸
小西 英喜
54
南
吉田 隆美
飯田 啓
27
〃
木口 一成
斉藤寿一郎
平成19年1月(2007)
97 (155)
日産婦神奈川地方部会誌投稿規定
a 本会誌掲載の論文は原則として会員のものに限る。
s 地方部会における一般講演は原著論文とし、またシンポジウム、特別講演は原則として依頼原稿として掲載
する。また、講演当日800字以内の抄録を提出し、これを掲載する。
d 論文の長さは表題、所属、著者名、要旨、本文、文献、図表、写真などを含めて8,000字以内とする
(図表、写真は一点400字に相当とする)。原稿にはページ番号を記載する。この範囲を越えたもの及
び特に費用を要する図表並びに写真に対しては実費を著者負担とする。
(文、タイトルの大文字・小文字に注意)
f 表 題、所属、著者名には英文も併記し、下記の様に記述する。
表 題: Autoradiographic study on the distribution of gonadotropin - releasing hormone in the rat ovary
所 属:1)Department of Obstetrics and Gynecology , Yokohama City University School of Medicine ,
Yokohama
2)Department of Obstetrics and Gynecology , Yokohama Minami Kyosai Hospital , Yokohama
姓 名:Taro YAMAKAWA
g 要旨は和文600字以内とし、下に和文5語以内のKey word を付記する。
h 図表、写真は順番をつけ、本文中に挿入部位を明示すること。図表中の文字は、縮小された場合にも明
瞭であるように留意すること。
j 文献は引用順とし、著者名全員と論文の表題を入れ、次のように記載する。
1)新井太郎、谷村二郎:月経異常の臨床研究、日産婦誌、1976;28:86−90
2)岡本三郎:子宮頸癌の手術、塚本治・山下清臣編、現代産婦人科学Ⅱ、東京:神田書店、1976;1
62−168
3) Brown H, Smith CE . Induction of labor with oxytocin . Am J Obstet Gynecol.
1976;124:882−890
4)Harris G. Physiology of pregnancy. In : Green P , eds. Textbook of Obstetrics , 2nd. New York &
London : McLeod Co.,1976;45−55
尚、本邦の雑誌名は日本医学雑誌略名表(日本医学図書館協会編)に、欧文誌は Index Medicus による。
本文中での引用部位の右肩には文献番号1)2)を付ける。
k 投稿の際、別頁の投稿規定チェックシートをチェックし添付する。
l 論文の採否は査読者の意見を参考にして編集会議で決定する。また、原稿は編集方針に従って加筆、削
除、修正などを求める場合がある。
¡0 掲載原稿の著作権は日産婦神奈川地方部会に帰属する。
¡1 論文投稿の際は原稿と共にコピー1部を添付する。
¡2 別冊を必要とする場合には原稿に必要部数を朱書すること。但し、別冊30部は無料とする。
¡3 印刷の初校は著者校正とする。
¡4 プライバシー保護のため症例報告の場合、個人が特定されないように患者氏名はもちろんのこと、初診
日、入退院日、手術日等の記述に十分注意すること。
¡5 投稿はフロッピーディスク、CD − ROM、MO などの電子媒体を用いること。
その際、必ずプリントアウトしたものを添付すること。ウィンドウズ、マッキントッシュどちらでも良
く、ドキュメント形式、またはテキスト形式で保存したものとし、ファイル名、使用ソフト名を明記する。
¡6 投稿先:
〒232−0024横浜市南区浦舟町4−57 横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科内
神奈川地方部会誌編集部宛
Tel 045(261)5656, Fax 045(242)2275
改訂1990.9.19 1992.3. 3 2001.2.15
2003.9.11
2004.9. 9
2005.
12. 1
2007.1.25
投稿規程チェックシート
□ 論文の長さは 8,000字以内になっているか
(図表、写真は一点につき 400字相当とする)
□ 表題、所属、著者名には英文も併記してあるか
□ 和文 600字以内の要旨はついているか
□ 和文5語以内の Key word は付記されているか
□ 文献の記載方法は正しいか
著者名全員が記載されているか
︵
□ 症例報告の場合、個人が特定されないような記述になっているか
キ
リ
ト
リ
︶
著者サイン *投稿の際、本シートをチェックし原稿に添付し送付してください
編集担当理事
和泉俊一郎、石塚文平(副担当)
編集部員
池田万里郎、石川雅彦、可世木久幸、佐々木茂、佐藤美紀子、上坊敏子、
杉浦 賢、鈴木隆弘、高橋 諄、茶木 修、三井真理、三室卓久、林 保良、
植村次雄(顧問)
「日本産科婦人科学会地方部会会誌」
第43巻2号(年2回発行)
平成19年1月20日印刷・平成19年1月25日発行
発 行 所
〒231-0037 横浜市中区富士見町3−1(神奈川県総合医療会館内)
日本産科婦人科学会神奈川地方部会
電 話 045(242)4867 http://www.kaog.jp/
編集兼発行人
日本産科婦人科学会神奈川地方部会
印 刷 所 〒220-0042 横浜市西区戸部町1─13 電話 045(231)2434
株式会社 佐 藤 印 刷 所
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