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復興公営住宅におけるコミュニティ形成について

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復興公営住宅におけるコミュニティ形成について
復興公営住宅におけるコミュニティ形成について
(提
言)
平成 27 年 1 月22日
地域包括ケア推進アドバイザー
東京大学高齢社会総合研究機構
後
東北大学大学院工学研究科
佃
藤
純
悠
復興住宅コミュニティ形成プロジェクト
(No.Ⅱ-2-①-①-⑦)
Ⅰ)はじめに
当プロジェクトは釜石市地域包括ケア推進本部の活動における「Ⅱコーディネート事業」
>「2 地域内連携構築の推進・支援事業」>「①支援(サービス)の提供体制の構築」>「①
見守り体制の構築」>「⑦地域コミュニティの形成」における最優先課題として位置付けら
れたプロジェクトである。
地域包括ケアシステムとは、住民一人一人が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮ら
しが続けられるように、地域に存在する様々な支援やサービスが包括的・一体的に提供され
るケア体制のことである。これは、「地域」が個人にとってはそれら支援やサービスが提供
される『場』であると同時に、総体としては支援やサービスの主体でもあることを謳ったも
のである。その意味においても地域包括ケアシステムにおいて地域コミュニティが果たす役
割の重要性は強調してもしすぎることはない。
地域は産業構造の変化、少子高齢化により緩徐にその包容力を減じ、震災により一瞬にし
て『つながり』は不安定なものとなった。その地の地域包括ケアシステム構築における最優
先事項が復興を内包した形での地域コミュニティ形成(再生)であることは当然の流れであ
る。中長期的な視点をもって設計された地域コミュニティ形成のプロセスは、その包容力を
取り戻し、『つながりの場』を再生させるプロセスであり、最終的な目標は地域コミュニテ
ィが健康を支える場として機能することである。
復興を内包した地域コミュニティの形成(再生)はその具体として復興住宅のコミュニテ
ィ形成に代表される。時間的制約も含め多くの課題が山積しているが、この地域の中長期的
な地域コミュニティ形成の試金石として重要な位置付けを有している。
Ⅱ)復興公営住宅におけるコミュニティ形成
1. 概論:「コミュニティ(地域社会空間)」について
コミュニティというと、人と人とのつながりのみを想起させる論考が多い。確かに平時に
おいては、コミュニティのさまざまな条件を捨象して、人と人とのつながりに着目すること
は合理的な議論である。しかし津波被害によって土地や家が破壊され、働く場所も失い、保
育所や学校なども変更された状況においては、人と人とのつながりの再生のみではコミュニ
ティ形成は難しい。その理由は、人と人とのつながりの空間的土台には風土があり、その風
土のなかに家がある。その家で暮らす一人ひとりには、職業の有無やその種類、本人の生き
がいや趣味の有無やその種類、何に自尊心や自己実現を感じるかによって社会的な違いが生
まれる。その社会的な違いの上で、人は安心・安全といった心理的満足感をそれぞれが感じ
て暮らしている。コミュニティ(地域社会空間)は、これら全てのもの総体として成立して
おり、そのため同じ行政区域内でも市街地、漁村、農村ではコミュニティが異なるのである。
このような総体としてのコミュニティ(地域社会空間)を取り戻し、またこれを取り戻す過
程で人と人とのつながりを新しく形成していくことが復興段階で求められている。
2. 理念・考え方
(1) 高齢者の自立的生活のために包摂力あるコミュニティをつくる
高齢者、特に一人暮らしの高齢者は、たとえば、安全・利便でバリアフリーな新しい高齢
者向け住宅団地に住んでいても、周囲に友人や知り合いもなく、孤立化して家の中に引きこ
もってしまうと、心身が弱って、自立的な生活ができなくなったり、自殺することもある。
つまり、高齢者がいきいきと暮らせる社会をつくるためには、単に安全でバリアフリーな外
出しやすい「ハードな都市空間」を作るだけでは足らず、外に出ると様々な楽しいことが期
待できる、快適で、人との豊かな触れ合いが可能な、包摂力のある、つまり外出したくなる
ような「コミュニティ(地域社会空間)」を作る必要がある。
その具体的な内容については、「提言書」に詳しいため割愛するが、これらを実現する戦
略を統合化したもの、コミュニティ生活環境(基盤)の3領域として模式的に示す(図1)。
(2) コミュニティの規模
コミュニティの規模としては、一般的には日常生活圏域(都市部では中学校区・人口2万
人)といわれるが、その背景には高齢者や子どもが歩いて暮らせるという理念があり、距離
として半径800Mを想定するとよい。災害公営住宅におけるコミュニティも規模の大小は
あれ、団地単独で上述の全ての機能を充足させることは難しい。たとえば、災害公営住宅が
建ち、公園が整備され、集会場が建設されたとしても、医療・介護等のサービスの充実、コ
ミュニティ・サービスの充実、住民の活動等が活発な展開されるかどうかはさらに空間的・
社会的広がりが必要である。この点では、歩いて暮らせる距離において、災害公営住宅なら
びに宅地の上に建てられる住宅とともに、周辺の集会場、公園、福祉施設、商店や事業所等
の営業施設等が、空間的にどのように位置づけられ、さらに公共交通によってどのようにつ
なぐか、長期的な視点からの評価と課題整理も重要となる(→居住環境点検)。
コミュニティ生活環境(基盤)の3領域
施策のポイント
高齢者に優しい生活環境としてとらえると…
コミュニ
ティ活動
の領域
①トータルな社会的空間的生活環境をつくること
社会参加
しょく
居場所問題
社会的包摂
一次予防・健康づくり
医療・看護・介護
(公助型地域包括ケア)
食・職
【社会的生活環境】
生業・就労・通勤・買物・食事・
家事・育児・団らん、語らい、交歓♪♥
い
医
②具体的には:
・地域包括ケアの体制づくり
・コミュニティの交流の場づくり
・一次予防・健康づくり活動の展開
・みまもり/アウトリーチ(交流勧誘)
・コミュニティ活動のプロモーション
・生きがい就業/コミュニティビジネス
【ケア・サポート環境】
医療・看護・介護・保育・教育・福祉
住
じゅう
居住環境
【物的空間的生活環境】
[安全・健康・利便・快適]
居住環境・歩行環境・街並景観
交通環境・商業施設・コミュニティ施設・オープンスペース・交流の場
③施設整備の観点からは:
・多目的集会所(コミュニ
ティ・サポートセンター)と
・地域の中心広場的空間
の整備
④復興地域における早期の自治組織(町会等)の立ち上げ
図1
⑤コミュニティ活動支援体制の構築:みまもり、LSA、支援員、NPO、支援制度、コミュニティ・サポートセンター
(3) コミュニティ内での役割分担:自助・互助・共助・公助
図2で示すとおり、コミュニティにおける人と人とのつながりをコミュニティ機能の担い
手という観点で整理すると、自助・互助・共助・公助の役割分担論として整理できる。たと
えば仮設住宅では、コミュニティの空間的環境基盤が破壊されてしまい、また災害公営住宅
への入居方式や当事者の生活状況の変化等により、コミュニティの社会生活基盤が取り戻せ
ていない場合が散見される。そのため経済的・社会的・心理的な理由から自助努力が可能な
世帯(主として自主再建を希望)はよいが、そうではない(たとえば女性単身後期高齢)世
帯との格差などが目立ち始める。以前であれば、コミュニティの包摂力により支えられてい
た世帯であるが、コミュニティが取り戻せていないために、特に住民による互助や共助の部
分が弱くなっており、結果として自助への負担が増え、負担に耐え切れない住民による公助
への依存度が増していく。復興公営住宅におけるコミュニティ形成においてが、特に互助・
共助の育成支援、自助が可能な空間環境基盤整備が重要となる。
3. 災害公営住宅におけるコミュニティ再生と住民自治組織の立ち上げ
今回立ち上げようとする住民自治組織とは、
「コミュニティ(地域社会空間)」再生を担う
中心的な組織である。被災地においては、復興事業の進捗に伴い、平成 25 年度から災害公
営住宅への入居や、防災集団移転促進事業及び都市再生区画整理事業による宅地供給も始ま
るなど、仮設住宅から復興市街地へのコミュニティの移行期にさしかかっている。住民自治
組織の設立が急がれるわけだが、しかし制度的・形式的な自治組織を設置してもコミュニテ
ィの再生にはつながらない。制度的・形式的な自治組織は、設立の目的と果たすべき役割が
明確ではなく住民同士で共有しにくいため、一部の住民によるコミュニティ融和活動のみに
なりやすい。これでは若い世代や自助力のあるものにとっては、融和活動の効用よりも、
(コ
ミュニティから離れた)自由な暮らしの方が魅力的に思えてしまうからである。新しい自治
組織の立ち上げは、共助や互助の力を取り戻せるように共同生活のルールや地域の課題を明
確にし、会費を負担する若しくは労力を提供する合理性の確保が重要となる。
□公共交通、バリアフリー等の外出しやすさ
□住宅、商店等
■自分のことを自分でする
■自らの健康管理(セルフケア)
■市場サービスの購入
□集会場、談話室
□公園、交流の場、子どもの遊び場
■当事者団体による取り組み
■高齢者によるボランティア・生きが
い就労
自助
互助
■住民組織による声かけ活動
■ボランティア活動
■ボランティア・住民組織の活動へ
の公的支援
■保健師等専門家による見守り
共助
■介護保険に代表される
社会保険制度およびサー
ビス
□小規模多機能等の介護事業所
□グループホーム等のすまい
□病院、施設等
公助
■一般財源による高齢者福祉事
業等
■生活保護
■人権擁護・虐待対策
□生活応援センター
□災害公営住宅
図2.出典:地域包括ケアシステム構築における今後の検討のための論点
(2013年3月三菱UFJR&C作成)資料に、空間に関する部分を著者加筆
Ⅲ)住民自治組織の立ち上げ
1. 概論
住民自治組織の立ち上げにあたっては、まず住民同士のコミュニティ・マネジメント支援
体制を構築する。そして住民同士の共同生活のルールや地域の課題など整理し、役割分担を
明確にしたうえで、各種会合、イベント、共同作業等の企画・運営を通じて解決を図る。こ
れを通じてコミュニティの人間関係(能動的な互酬関係と信頼関係)の再構築を実質的に育
成しながら、しかるべき期間の後に、リーダー的役割を担える住民に、コミュニティのマネ
ジメント役を委ねていくことが核となるプロセスである。
すなわち形式的な住民自治組織の設立総会を開くことが目的ではない。設立総会までに、
住民同士が抱える課題や地域課題を整理し、住民一人ひとりがその能力に応じて自発的にす
べきこと(自助)、住民同士の共同生活のルールをつくり解決に導くべきこと(互助)、制度
等を介して行政と住民が協働して解決すべきこと(共助)、行政の責任として取り組むべき
こと(公助)について、対話をとおして役割分担を検討することが目的である。この対話の
プロセスを通して、組織の中心となるリーダー・幹事役を発見し、これからのコミュニティ
のマネジメントを委ねていくことが重要である。
2. 立ち上げ実施プロセス
(1) 入居前のプロセス


釜石市では、地域・コミュニティを再生することを目的として、被災前集落・コ
ミュニティを重視し、防集や区画整理と組み合わせて災害公営住宅の計画・建設
を行ってきており、入居募集においても地域を尊重して行うこととしている。
 地域の自主性を尊重し、抽選だけではなく話合いでの住戸決めも可能である。
 抽選を行う場合であってもグループ申込みを活用することで、支え合いを促
すことを目的として親子や友人からなる複数世帯での入居希望を募る。
 世帯と子世帯や、仮設住宅で仲が良くなった世帯など、2世帯からグループ
申込みが可能である。
入居開始前からコミュニティ・ケアの体制を整えるべく、入居者の決定後入居ま
での期間を活用し入居予定者による話し合いを促していく。
 このために必要とされる支援を各種支援団体(大学や NPO など)と行政が
協力して実施する。仮の自治会、社協、医師会、福祉事業者、NPO 等の支援
団体などとも連携し、見守り活動を入居当初から実施する体制を用意する。
 小規模集落等で比較的戸数が少ない場合は、既存自治会との連携により、既
存の集落・コミュニティの結束を活かし、入居前の段階からコミュニティ再
生のための自治組織構築をめざす。
 市街地部や大規模団地では、新たなコミュニティが形成される場合がほとん
どのため、入居前の段階では、住民同士がお互いを知り合うことを重視し、
丁寧な支援をおこなっていく。
(2) 入居前プロセスの阻害要因について
入居前から入居後へのシームレスな自治組織立ち上げが望ましいが、これまでの災害公営
住宅の入居状況をみると、抽選の場合は入居者の生活水準、価値観の幅が大きく同質性があ
まり高くないこと、住民がそろって同じ日に入居しないこと、大半の引越しが済むまで数ヶ
月かかること、入居してある程度落ち着いたところではじめて自分の生活の外に目を向けて
いくこと(入居前には自治組織に関心を示さない)といった入居前プロセスの阻害要因が挙
げられる。そのため入居前の立ち上げに一喜一憂することなく、難しい場合は入居後プロセ
スへとシフトしていくなど、状況に合わせた対応をするとよい。
(3) 入居後のプロセス
 大半の住民が入居してきたところで、下記のプロセス図のとおり、住民自治組織
を立ち上げる。
 リーダー・幹事役には必要な資質を備えた人が選出されるよう配慮する(抽選や
押し付け合いなどで決めると先々大きな失敗につながる)。リーダーにあわせて
副会長など補佐役も複数選出し、会長・副会長チームには女性を含むようにする。
⑨地域課題の政策的解決(公助)
すぐに解決
できること
②
周
知
活
動
悉皆
住
環
境
点
検
―
⑤
交
流
会
―
③
交
流
会
④
周
知
活
動
悉皆
報
告
会
⑥
周
知
活
動
⑦
幹
事
会
・
班
集
会
の
開
催
随時
趣
意
書
事
前
配
布
出
欠
確
認
⑧
自
治
組
織
の
設
立
総
会
⑨
課
題
解
決
活
動
の
実
施
⑩
ア
フ
タ
ー
ケ
ア
①プロジェクトチームの設置と立ち上げ戦略検討会議
3. プロセスごとのポイント
(1)プロジェクトチームの設置と実施戦略会議(①)
 自治組織の立ち上げは50戸~80戸程度をひとつの組織体とする。
 20戸前後の場合、住宅の管理組合は設けるが、自治組織としては、近隣の自治
会に編入することを考えると良い。(編入にも工夫が必要)
 実施戦略会議での検討内容
 自治組織を設立する公営住宅に関する事前情報を関係者間で共有する。
 規約案の作成、幹事・班長の任期、取り組みやすい共助活動案などの想定
 集会場の鍵の管理、駐車場等の使い方、広報・回覧、ゴミ捨て場の管理な
ど
(2)周知活動:入居者交流会についての案内(②)
 開催チラシを全戸配布し(なるべく訪問で声をかけ)、交流会への参加を促してい
く。若干の手間はかかるが、この段階で出欠を確認していく。
 チラシの内容は、自治組織の設立を前面に押し出すのではなく、入居しての課題
や不安について共有する会の開催であることを伝える。
(3)入居者交流会(③):居住環境点検によるコミュニティの課題整理と共有
 小グループごとに地域の地図(住宅団地・周辺地域)を広げ、課題や良いところ、
生活の工夫などを書き込む「居住住環境点検」を行い、住民の不安や問題意識等
を共有する。(1班あたり7~8人、各テーブルにファシリテーターを着ける)
 全体発表を通じた情報共有と自治組織のメリットの説明
 上記課題について、互助による取り組みが重要なこと、自治組織として取り
組むことは吝かではないが一部行政の支援が必要な共助に関すること、住民
として団結し行政主導で解決してもらうべき課題について、若干整理しなが
ら、行政も含めて意見交換をする。

 ここでは答えを出さずに、意見交換に徹することで、自治組織を形成する意
味について、理解してもらう。
この話題を「つまみ」にしてその後の住民交流会を行い、第2回目の日取りを決
める。
(4)周知活動(④):入居者交流会1の実施報告書の作成、第2回の案内
 実施戦略会議
 第1回目で出された意見について自助、互助、共助、公助を意識しながら、
立ち上げる自治組織の主たる取り組みになりそうなものについて、実施戦略

会議にて目星をつけていく。
上記戦略会議のまとめをもって、交流会の実施報告書を読みやすいもの(A3裏
表1枚程度)に取りまとめる。これに第2回の案内チラシをつけて、全戸配布し
第2回目への参加を促す。
(5)入居者交流会(⑤):上記課題解決に向けた役割分担の整理と幹事・班長の選出
 前回のグループワークのまとめの報告と振り返り
 公助、共助に関する役所からの対応コメント
 経験上では、室内の釘(神棚据付等)など軽微な工作について、冬場は階段
周りの融雪剤の散布等、それほど厳しい意見はでない。



 重要なことは、行政からの対応コメントとして、前回のようの意見を取りま
とめて行政に伝えることで、しっかりと回答が返ってくることを強く意識し
てもらう。家賃を払うもの同士は結束して、家主と交渉することで課題解決
につながることを意識してもらう。
住民自身が行う共助と互助に関するアイデア出しのためのグループワークの実
施
全体発表を通じた情報共有と自治組織のメリットの説明
住民自治組織の立ち上げについて
 規約案の例示
 班長さん(持ち回り)の選出と業務内容(広報配布、ゴミ捨て場の清掃など)
 自治組織の幹事候補者の互選(自主的に手が上がらない場合は指名でお願い
する)
表1地域課題と解決にむけた役割分担表
自助
互助
共助
公助
課題・取り組み
支援・仕組み
自立を支援
自治組織で対
応
政策的支援策+ 社会福祉として
自治組織の対応 対応
(6)周知活動(⑥):入居者交流会2の実施報告書の作成と全戸配布
 実施戦略会議
 第2回目で出された意見および、規約、班長さん、幹事について決まったこ
とを整理し、足りないものについて、対応策を考える。
 出された意見に対しては、行政、大学、専門家等が積極的に回答するなど、
きめ細かく対応して住民の不安の解消に努めることが、最終的にほぼ全ての
世帯の自治会加入につながる。


上記をまとめて、入居者交流会2の実施報告書として取りまとめる。
今回からは、この実施報告書を幹事さん、班長さんを通じて、全戸配布し、総会・
班集会への参加を促す。
(7)幹事会/班集会の実施(⑦)
 実施戦略会議から幹事さんに対して、設立総会までのプロセスを提示する
 選出された幹事単独では自治組織の設立まで進めるのは困難であり、幹事会への
参加や資料・情報の提供など継続的な支援(自治組織立ち上げの意義、組織づく
り、事業計画策定、会計処理等を含めた設立プロセス全体のマネジメント)が必
要となる。

総会に向けて、自治組織として取り組むべき事項(特に互助の取り組みや行政と

の共助の取り組み)を整理(ニーズの把握、優先度の検討)する。
自治活動の必要性の啓発と担い手の発掘について検討する。
(8)自治組織設立総会:幹事・班長の呼びかけにより開催/定款の承認(⑧)
 この時点で、自治組織として取り組む主たる課題、規約、自治組織の役員、持ち
回りの班長システムとその業務内容は緩やかに決まっている状態である。
 またこの大筋での内容については、第1回・第2回の交流会がベースとなっ
ていること、各回の報告書をもって、各世帯に幹事・班長がファイストゥフ
ェイスで趣旨説明するなど、互助の取り組みが発生する。
 お花見等のイベントにあわせて実施し、セレモニーとしての自治組織設立を行う。

事前に設立趣意書の配布と、出欠に関する確認(委任状の提出)が必要となる。
 自治組織立ち上げの定足数問題があるので、初回交流会から出席を取ると、
自治組織に関心はないが設立に反対はしないグループの委任状が確実に見込
める。
 公式な設立総会の運営には幹事役は不慣れなため担当レベルの支援が必要と
なる。
(9)課題解決にむけた活動の実施(⑨)
 自治組織として行政に対して、政策的に解決してほしいことを政策提言する。


住民と行政が協働して解決する必要がある課題について、行政と協議を開始する。
住民の互助として取り組むべきことについて、年間計画を立てできるところから
開始する。
(10)アフターケア(⑩)
 設立直後は自治組織の役員に様々な負担がかかるので、精神的なメンテナンスが
欠かせない。
 支援プロセスの整理、必要書類等のテンプレートの提供を行う。
 市内各地の自治組織の基礎情報、活用可能な助成制度の紹介を行う。

見守りなどは、自治組織の互助だけでは完結しないため、専門家との連携などを
積極的に働きかけることが重要となる。(地域ケア会議との連携)
Ⅳプロジェクトの円滑な推進のために
1. プロジェクトチームの体制と役割分担
(1)方針
 プロジェクトチームは以下の理由から3層構造として立ち上げるとよい。
 まず直接現場にて自治組織立ち上げを実施する①事務局が必要である。次に、庁
内横断メンバーで構成する②実施戦略会議を設置する。自治組織立ち上げのマネ
ジメント組織であり、情報を共有し、地域課題を統合的に解決する政策チームで
ある。さらに自治組織立ち上げを超えて、復興後のコミュニティ形成および育成
のために、従前のとおり③地域包括ケア推進本部(ケア本部)会議がこれらを統

括していく。
これら①~③のいずれにも、必要に応じて各種専門家チーム・外部支援団体との
連携を行う。
(2)プロジェクト体制
① 事務局体制
各自治組織の立ち上げ窓口として、まず自治組織立ち上げ担当を置く。災害公営住宅
に関する意見等が当面は多く出されることから、災害公営住宅担当者を兼務のような形
で置くとよい。当面は、自治組織立ち上げ担当と災害公営住宅担当の2名がチームとな
って動く。(立上げがピーク時には、更なる増員が必要となる)
② 実施戦略会議の体制
各自治組織の立上げ方針の決定、各種情報共有と地域課題解決のためのアイデア検討、
政策形成などを行う。庁内から政策判断が可能なメンバーを集めて構成する。(当面は
週1回程度定期的に実施するが、2~3自治組織を立ち上げるとおおよそのパタンが見
えるので、回数等はそこで調整。)
③ ケア本部会議(割愛)
実施戦略会議から上がるコミュニティ形成の課題や意見を地域包括ケアの観点から
統合して、復興につなげていく。
④ 外部支援団体の活用
名簿づくり・出欠確認、交流会等の運営にはそれなりの人員が、都度、応援的に必要
となる。内部で抱えるよりも、外部支援団体への事業委託のようなカタチで契約してい
くとよい。
契約を勧めるのは、ボランティアとしてお願いすると、ボランティア団体による「援
助」と、政策として住民に期待する自治組織の「自立」が衝突することがある。ある程
度熟達した外部支援団体であればよいが、そのようなノウハウをもつ団体も少ないため、
当面は、行政からの委託事業として対応し、徐々に自治組織立上げの担い手として育成
していくのが合理的と考える。
2. 実施戦略会議の円滑な運営
実施戦略会議の主たる設置目的は、事務局による自治組織立上げが円滑に進むよう、情報
共有と課題解決にむけた政策的検討を行うことである。権能は既存政策範囲であるが、横の
連携によって相乗効果を目指す。この円滑な運営には、まず事務局が現場の課題を丁寧に広
い、情報としてまとめて、実施戦略会議にあげていくことである。具体の課題なくしては、
質の高い検討は難しい。また実施戦略会議として、各担当者の権能を超える問題(たとえば
復興事業に関わる問題等)については、ケア本部に速やかに報告し判断を委ねる。このよう
に下からの課題を統合的に整理し、場合によっては上に大きな政策判断にゆだねるという体
制構築が重要である。
3. アドバイザーの位置づけ
アドバイザーは、復興公営住宅の入居者が、安心して生活できる包摂力あるコミュニティ
づくりの支援を行うケア本部や実施戦略会議・事務局等に対し、事業が円滑に遂行できるよ
う、事業の方向性や具体的な実施方法などについて、専門的な知見により、助言・指導・提
言を行う。
上中島第Ⅱ期コミュニティ形成支援:入居前
入
居
住
民
組
織
の
立
ち
上
げ
(
次
ペ
ー
ジ
)
上中島第Ⅱ期コミュニティ形成支援:入居後
入
居
上中島第Ⅱ期コミュニティ形成支援:組織体制
地域包括ケア
地域包括ケア
実施戦略会議
の構築
推進本部会議
(政策形成)
地域会議
(地域課題の
情報共有)
実施前会議
(支援方法の
具体化)
説明会・
交流会
Fly UP