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神戸地域の魅力と課題

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神戸地域の魅力と課題
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神戸地域の魅力と課題
私たち一人ひとりが抱く神戸の魅力「神戸らしい神戸の魅力」には、どのようなもの
があるのでしょうか。
地域の魅力
● 兵庫港開港以来の国際貿易港都である神戸は、多様な民族・文化との交流窓口と
して、洗練された進取の気質を培い、居留地や異人館街・外国人学校等、異国情緒
あふれる豊富な文化的蓄積を育んできました。
そして、これらの蓄積のもと、日本を代表する先進地域として、県下各地の歴史
や文化・経済を牽引してきました。
地勢的にも、神戸は、瀬戸内海と六甲山麓、そして、その後背地に広がる田園地
帯からなる多彩な自然が融合した希有の大都市地域として、温泉と陽光と緑があふ
れる天賦の恵みを得てきました。
このように神戸は、素晴らしい国際的・文化的な蓄積、六甲山麓と瀬戸内海を擁
した自然的地勢に恵まれるなど、自然・文化・歴史・人情等、地域の至るところに
豊かな魅力があります。
● また、阪神・淡路大震災の経験は、多様化する地域のニーズに対応するうえで、
地域の人々による協働が大きな役割を発揮することを示しましたが、震災前から神
戸では、地域の人々によって生協活動や消費者活動・まちづくり活動等が行われ、
これらを通じ、日本を先導してきたという実績がありました。
さらに、最近では、ボランティア活動はもとより、まちづくりの担い手等を地域
の人々自らが育てていく活動、地域の内外や世界との交流を担っていく活動も展開
されています。産業面でも、起業家や農業ベンチャーとも呼ぶべき新たな経営体が
誕生しています。
● 海と山の豊かな自然に恵まれ、異国情緒あふれた都会的センスに満ちたまち・神戸。
下町の温かい人情に人々が集い賑わい、心安らぐまち・神戸。
人として生きる権利が尊重され、個人の多様性が受け入れられるまち・神戸。
人とものと情報が活発に交流し、県内各地を牽引していく活力あるまち・神戸。
これらの魅力に、地域の人々による先導的な活動や、阪神・淡路大震災による教
訓等をもとに、より神戸らしい魅力を高め、発信していくことで、もっと住みやす
く、活力あるまちにすることができると考えます。
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それでは、神戸の魅力を高め、もっと住みよいまちにするための課題としては、主に
どのようなものがあるのでしょうか。
地域の課題
● 少子高齢化が進展するなかで、神戸でも、人口の自然減(死亡数が出生数を上回る状
態)に伴って、今後、市域全体の人口は、減少することが見込まれています。
県内の郡部地域と比較すれば、人口減少の程度は低いものの、各区ごとには、人口が
増加する区、減少する区ができるなど、人口の偏在化が進むほか、高齢化がいっそう進
むなど、地域の人口構造も大きく変化することが見込まれています。
こうした地域の状況等をふまえながら、高齢化社会に対応した安心・安全な地域づ
くりを進めるとともに、子育てしやすい環境を整備するなど、長期的な視点でもって、
地域力の強化にいっそう取り組んでいくことが必要です。
● 多くの犠牲者を出した未曾有のあの阪神・淡路大震災から、人々はいのちと暮らしを
守る大切さ、混乱のなかでの公的機関の限界、日頃からの人と人とのつながりの大切
さを学びました。今後も、阪神・淡路大震災で得た教訓を活かし、また、今回発生し
た東日本大震災の復旧・復興に向けた対応等をふまえながら、より積極的に地域コミュ
ニティを支える仕組みづくりに取り組むなど、地域力を高めていくことが必要です。
特に、高度成長期の逼迫した住宅需要に対応するために開発された市内のニュータ
ウンでは、そこに住む人々の高齢化、住宅・施設の老朽化等に伴い、地域コミュニティ
が衰退するなど、地域力の低下が懸念されています。居住者ニーズやライフスタイルの
変化等をふまえ、ニュータウン全体の再生・活性化に早急に取り組む必要があります。
● また、近年、地球規模で二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量が増加し、温暖化が進
むことにより、急激な気候変動が生じています。絶滅危惧種が増加するなど、生物の多
様性も危機に瀕しています。
神戸でも、年間平均気温が上昇傾向にあるほか、ゲリラ豪雨による急激な河川の増水・
浸水等に伴い被害が生じるなど、人々の身近な生活のなかにも、その影響が及んでいま
す。
環境問題に対する人々の意識は、神戸で行われた「G8環境大臣会合」の開催(平成
20 年)等を通じて高まりを見せています。環境にやさしい循環型の地域構造・ライフ
スタイルづくりに向け、いっそうの意識高揚を図り、実践へとつないでいくことが必要
です。
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● こうしたなか神戸では、阪神・淡路大震災による被害や、その後の社会・経済のグロー
バル化の進展等により、これまでの港湾機能の優位性を軸とした地域の経済活動が停滞
するなど、地域間競争力が低下しつつあります。また、神戸にあった外国領事館の多く
が地域外に移転するなど、国際都市としての優位性が揺らいでいます。
しかしながら、国際コンテナ戦略港湾として、阪神港(大阪港・神戸港)が指定(平
成 22 年)され、今後、東アジアの国際主要港をめざして整備が進められることを通じ、
国際的な地位が高まっていくことが期待されています。
このような動きも捉えながら、日本に誇る県下の牽引役として、先導的に文化や情報
の交流発信ができ、次世代産業も育める 21 世紀のハイカラ都市として、新しい地域
の魅力づくりに取り組むことが必要です。
● 地域的にも、臨海部では、兵庫運河や異人館等の歴史・文化資源を活かした地域の活
性化や、ウォーターフロントへの都市機能の導入を進めるなど、“みなとまち神戸”の
魅力を高める新たな賑わいづくりの重要性が高まっています。
一方で、神戸の自然の宝庫である田園地帯や、六甲山麓地帯では、地域の特性を活か
した都市農業の推進、豊かな自然環境の保全と活用を図っていくことが求められるほ
か、市街地空間と田園・山麓空間との一体性を活かすなど、自然と共生したまちづくり
の必要性も高まっています。
● さらに神戸地域では、デザインの視点から新たな魅力を創り出し、暮らしの豊かさを
創造する「デザイン都市・神戸」が推進(ユネスコ・創造都市ネットワークへの加盟(平
成 20 年))されています。今後は、国内外の都市との交流・連携を進めることにより、
地域の魅力をよりいっそう高め・発信していくことが大切です。
特に、神戸空港の開港や次世代スーパーコンピュータ(京速コンピュータ「京」)の
立地等のインフラ整備が進むなか、地域の活性化をめざし、その取組が進む「神戸医療
産業都市構想」では、多くの企業や研究機関・大学等の集積が図られようとしています。
こうした拠点を中心に、人・もの・情報の交流・融合をいっそう進めるなど、地域の魅
力を高めていくことが必要です。
神戸地域の魅力を高め、もっと住みよいまちにするには、市民が主体となって、望ま
しい地域の将来像を描くとともに、これを共有しながら、市民一人ひとりが、また、コ
ミュニティにより、様々な取組を進めていくことが必要です。
そのため、こうした神戸地域の魅力と課題をふまえながら、めざすべき地域の将来像
や都市像を具体に提案していきます。
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このビジョンでは、「市民」「コミュニティ」を次のとおり表します。
「市民」とは
神戸地域の住民で、地域社会を構成する一員としての自覚と責任を持つ者、自分のできるとこ
ろから社会に参加しようとする者を表しています。なお、このビジョンでは、
「自律※した市民」
とも表記しています。
※自律:
「自らに関わる様々な事柄を自分で判断し、選択・決定すること」として、このビジョ
ンでは表します。
「コミュニティ」とは
「地域社会」の意味で使われることが多いのですが、一般的には、居住する場所が違っていて
も共通する背景や興味を有する人々が自由な意志によって集まり、何かを行う集団を意味しま
す。このビジョンでも同様の意味として表しています。ボランティア活動やサークル活動等のグ
ループも「コミュニティ」です。なお、このビジョンでは、
「地域社会」を意味する場合には、
「地
域コミュニティ」と表記しています。
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