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ワーク・ライフ・バランス推進のヒント(PDF形式:477KB)
(3)ワーク・ライフ・バランス推進のヒント ワーク・ライフ・バランス推進の取組事例の現状を踏まえて、地域企業がワーク・ライフ・ バランスを推進するためのヒントを以下にまとめた。 ① ワーク・ライフ・バランス導入効果のアピール 不況下の今だからこそ、残業が減って働き方を変える好機になるという考え方ができる。ど れだけ効率的な働き方をして労働生産性や高い成果を上げていくかということが、ワーク・ラ イフ・バランス実現の一番のメリットとなるべきである。 「仕事の効率化に繋がるような改善ができたかどうかということを人事評価につなげてい る企業(アリオン) 」もある。 実際の支援制度利用者もヒアリング調査の対象として、制度の運用実態を聞き取った。いず れの企業でも、 従業員の満足度には大いに貢献していることがわかる (経営支援、 みつばなど。 詳細は事例集参照) 。 企業は、こうした導入効果を発見し、積極的にアピールすることが必要である。ワーク・ラ イフ・バランスの効果として期待される労働生産性や作業効率性は、仕事への集中度(人・時 間コスト)に対して、どれだけ高い価値を生み出したかを測定することで評価できる。 ただし、価値創造を目的とする部門の評価は難しい。IT業界でのソフトウェア作成、デザ イン業務、 アイデアやひらめきが関与する創造性の高い仕事の成果は必ずしも時間に比例しな いからである。 「裁量労働制度の導入により、こうした課題に挑戦している事例(ヘキサード) 」 は、一つの解決策を提示していると考えられる。 なお、中小企業のワーク・ライフ・バランスが進まないことの背景に、 「労働生産性との連 携がなされておらず、成果を公平に反映していない人事評価に問題があるのではないか(曙ブ レーキ工業) 」という指摘もあり、留意すべきである。 曙ブレーキ工業の家族参観日 17 コラム:ワーク・ライフ・バランス施策の導入が生産性へ与える影響分析 今回の事例調査では、ワーク・ライフ・バランス施策の導入が、労働生産性や効率性を高めるのに寄与してい ることを定量的(時間・コストの削減)に示す指標データを得ることはできなかった。しかし、 「ワーク・ライ フ・バランスと生産性に関する調査(平成 21 月5月)内閣府」によれば、従業員 300 人以上の大企業を対象に ワーク・ライフ・バランス施策と生産性の関係について、アンケート調査に基づく分析が行われた。 この分析結果によれば、両立支援策(両立支援策とは、法定を上回る休業期間の育児休業制度、育児のための 短時間勤務制度と勤務時間短縮制度、法定を上回る休業期間の介護休業制度、介護のための短時間勤務制度と勤 務時間短縮制度)を導入している企業は、1人あたり経常利益変化率が 10 ポイント以上向上している比率が 52% と両立支援策を導入していない企業の 48%に対しやや高くなっている。 また、長時間労働抑制のための時短策を導入している企業は、1人あたり経常利益変化率が 10 ポイント以上 向上している比率が 51%と、両立支援策を導入していない企業の 47%に対し同様に高くなっているとの指摘が ある。両立支援策と時短施策の両方を実施することが、生産性へもプラスの影響を与えていることが見てとれる。 出典:内閣府経済社会総合研究所「ワーク・ライフ・バランスと生産性に関する調査(平成 21 月5月) 」 18 ② 経営戦略への組込 ワーク・ライフ・バランス推進は、社会の大きな流れであり、地域企業にも徐々に浸透しつ つある。ワーク・ライフ・バランス施策を経営戦略の柱に取り込み、 「ワーク・ライフ・バラ ンス推進を前提として労働生産性や作業効率性を見直している企業 (マーケティングインフォ メーションコミュニティ) 」もあれば、人材や働き方の「多様性」を推進し、グローバル経営 戦略に活かす企業もある。 「人材の多様化(シニア・外国人・女性・非正規雇用やパートタイ マー)或いは働き方の多様化(就労の目的や目標、報酬・ポストやキャリア志向、労働時間と 場所の選択肢)をうまく制度化し、浸透させることは、ワーク・ライフ・バランス推進の一助 (曙ブレーキ工業) 」にもなりうる。 そのためには、地域企業ならではの柔軟性を活かした行動計画をまずは策定し、準備期間を 設けて身の丈に合った支援制度を試験導入することである。その際に、先進企業事例や自治体 などの公的な助成制度をあらかじめ調査することも重要である。 企業規模や環境条件により、 導入したワーク・ライフ・バランス施策の最適化も可能であり、 見直しを迅速に行えることも地域企業の強みである。 ③ 社内の意識改革 ワーク・ライフ・バランスを継続させるポイントは、 トップを含めた職場の意識改革である。 そのために、関連セミナーへの参加、社内勉強会の開催、制度の周知徹底などが必要なプロセ スと考えられる。 また、子育て支援制度が企業で普及するきっかけは、 「制度を活用する最初の一人が手を挙 げる(みつば) 」ことである。制度活用者を一人でも増やすことが、 「呼び水」としての波及効 果を生むことも確かである。 「制度充実の必要性を感じたマネージャーの推進と粘り強い労使 間交渉が制度改革を後押し(杏樹会) 」する例もあった。 ④ 地域社会やNPOとの連携 ワーク・ライフ・バランスを実践している企業を取り巻く社会環境は激変している。 こうした環境変化の中で、 「地域社会やNPOなどとの連携は、従業員の子育て支援を補完 したい企業にとっては、重要なサポートとなっている。地域の小中学校との交流を図り職場体 験学習に協力したり、新座子育てネットワークから講師派遣を受けて、お父さん応援プロジェ クトを開催した(協和界面科学) 」ことで、様々な情報交換や協力体制の基礎を築くことが可 能となった。 また、 「子育て支援分野のコンサルティングという事業内容であるために、NPO関係でつ ながりがある地域の有識者を紹介し、展開する事業内容に応じて、交渉する行政の窓口や交渉 方法などを紹介している(アミーゴプリュス) 」事例などから、外部の子育て支援組織を活用 する動向が垣間見える。 アミーゴプリュスのホームページから 19 すなわち、ワーク・ライフ・バランス推進・運用・定着の各段階で発生する問題を一企業だ け解決することの負担を軽減し、 特に従業員が質の高い生活支援や子育て支援サービスを享受 することができるように、 地域社会やNPOとの情報交換や人的交流を促進することが必要で ある。さらに、地域で支えあう子育て環境の形成に、企業や従業員が地域社会やNPOと共に 参加することで一体感を共有することも期待できる。 ○ワーク・ライフ・バランス推進のヒント ・ ワーク・ライフ・バランス導入により生じた効果(従業員の満足度や生産性の向上等) を確認し内外にアピールすること、作業効率性の向上を公平な人事評価に反映すること ・ 人材や働き方の多様性を認め、ワーク・ライフ・バランスを前提にした経営戦略を策定 すること ・ 柔軟性を活かした行動計画をまずは策定し、準備期間を設けて身の丈に合った支援制度 を試験導入すること ・ トップを含めた職場の意識を改革すること、コミュニケーションが醸成しやすい企業風土 を育てること ・ 行政や地域社会、NPOとの情報交換や人的交流を促進すること、特に、子育て支援を必要 とする従業員家族へ質の高いサービスを実現するために連携協力関係を形成すること 「子育て支援32のヒント」より 20