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ビデオカメラとパソコンを使った簡易動画 分析手法の視聴覚教材化とその

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ビデオカメラとパソコンを使った簡易動画 分析手法の視聴覚教材化とその
実践研究助成
中学校
研究課題
ビデオカメラとパソコンを使った簡易動画
分析手法の視聴覚教材化とその普及
副題
学校名
コンピュータ教育メディア研究会
桐生部会
所在地
〒376-0011
群馬県桐生市相生町5-247
桐生市立相生中学校内
職員数/会員数
32名
研究代表者
丹羽 孝良
画をパソコンに取り込んで編集することが簡単にできるように
1.はじめに
なり、今まで見られなかった現象を、生徒に見せることができ
るようになってきた。それによって生徒の興味・関心を高めた
コンピュータ教育メディア研究会(CEMIの会)は、
1994年に、群馬県内の先生方32名で組織され、およそ2年を
り、理解を深めたり、自作の教材による創意・工夫ある授業展
開が期待できる。
かけ、静止画を中心に20テーマ以上、1000枚近くのデータを
そこで、
「簡易動画分析手法」を利用して、視聴覚教材を作
集めて、マルチメディア素材の教材CDを作成し、県内各地の
成する原理と方法を、桐生市内だけでなく、群馬県内、外で発
教育研究所に教材CDを寄贈し、普及のための研修会を県内数
表し、簡易動画分析手法が理科の実験観察の教具として利用し
ヶ所で開催した(~1998年)
。昨年度は、松下教育研究財団の
てもらえるように普及をはかること。また、Webを利用して、
実践研究助成を受け、
「家庭用ビデオカメラ・デジタルカメラ
簡易動画分析手法による映像・画像・教材データベースを構築
とパソコンを使った簡易動画分析手法の開発と中学校理科の視
し、情報の交換の場を提供すること。つまり、簡易動画分析手
聴覚教材の作成」というテーマで研究を進め、ビデオカメラと
法による教材化とその普及を、この研究の目的とした。
パソコンを使った簡易動画分析手法を開発することができた。
この手法によって、家庭用のビデオカメラでは、通常は1/30
秒ごとにしか見ることのできなかった現象を、1/60秒ごとに
観察することができるようになった。中学校理科の視聴覚教材
3.研究の方法
(1) 簡易動画分析手法とは
化においても、水風船の割れる瞬間を観察した授業実践がエプ
家庭用のビデオカメラを使って、1/4000秒のシャッター
ソンの「ファミリースナップアワード2003」の「学校支援
スピードで豆の莢(さや)がはじける瞬間を撮影した動画
賞」に選ばれたり、
「まめがはじける」という提示用の教材も
をパソコンに取り込んで、1/30秒の1コマを静止画として
作成した。
取り出したものが、下の写真である。シャッタースピード
が速いにもかかわらず、豆の莢がだぶって見えるのは、1コ
2.研究の目的
身近だけれども簡単には目にすることのできない瞬間の自
然現象(たとえば、豆が莢(さや)から弾け出る瞬間)を撮影
し、スローモーションで再生するには、従来、高価な機器と専
門的な技術が必要であった。それが最近ではビデオカメラの普
及や、パソコンの高性能・低価格化にともなって、動画や静止
86―――第30回 実践研究助成
1/30秒の静止画
1/60秒の静止画
マ(フレーム)の中に、1/60秒の奇数コマ(奇数フィール
しかし、DV形式のAVIで記録するDVテープ式のビデオ
ド)と、1/60秒の偶数コマ(偶数フィールド)が、重なっ
カメラに対して、DVD方式のビデオカメラではMPEG
て映っているからである。この1コマから、1/60秒の静止
形式で記録するため、最高画質で記録しないと、動きの速
画をパソコンソフト(Let’sEDIT)で取り出したものが
い瞬間の現象の記録では、MPEG特有のブロックノイズ
右の写真である。このように、家庭用のビデオカメラでは、
が出やすく、また、最高画質に記録モードを設定した場合
1/30秒ごとにしかコマ送り再生ができない瞬間の自然現象
には、DVD片面で10分も持たないこと、バッテリーの持
を、パソコンを組み合わせることによって、1/60秒ごとに
続時間がDVテープ式にくらべて短いということで、生徒
静止画にして観察する方法を「簡易動画分析手法」と定義
の実験の記録用には実用的でないことが、この実践からわ
した。
かった。
(2) 簡易動画分析手法の普及
(3) 教材の試作、作品化(9月~)
・教育実践の発表会等での発表
今まで記録した瞬間の映像を分析し、静止画にしたもの
・自作教材コンクールへの出品
を「ストップモーションで観察しよう
・Web上での簡易動画分析手法による映像・画像・教材
パソコンを使った瞬間の自然現象の観察-」という形で、
データベースの構築、情報交換の場の提供
-ビデオカメラと
CDR化した。このCDRを以下の発表に利用した。
(4) 講習会・発表会での発表
4.研究の経過と内容
この教材作成において、HDD内蔵DVDレコーダを利
・コズミックカレッジ(つくばエキスポセンター)7月
・桐生市理科部会(桐生)8月
・松下教育研究財団成果発表会(東京)8月
・兵庫上越教育研究会(前橋)8月
・理科教材教具発表会(県総合教育センター 伊勢崎)10月
中学校の部で最優秀賞を受賞
用した。5種類のマメ科の植物の莢が弾けて中の豆が飛び
・エジュケーションエキスポ イン 東北(仙台)11月
出す瞬間の動画、およそ50シーンをハードディスクに録画
・エジュケーションエキスポ イン 群馬(高崎)11月
し、ジョグシャトル付きのリモコンを使って操作性の良さ
・太田市中学校理科主任会(太田)2月
(動画のスロー再生、静止、コマ送り、コマ戻しがリモコ
・ICT利用教育実践コンテスト(尼崎)3月
ンで簡単にできること)を実感しながら編集した。そして、
50本の瞬間映像と、50本のスローモーション映像を快適に
作成することができた。
(5) 教材の検討と作品の各種コンテストへの応募
・群馬県視聴覚ライブラリー主催の自作教材コンクールへ
テープでの編集とちがって、頭出しが速い、巻き戻しと
の出品(1月)
再生を何度繰り返しても画像劣化がないといった点で、動
・シティサクセスファンド2004への応募(1月)
画編集にDVDレコーダは非常に有効であることが実践を
・ICT利用教育実践コンテストへの応募(2月)
通してわかった。もうテープ編集には戻れないと実感した。
・県内各地の視聴覚教育フィルムライブラリーへのCDR
(2) 教材作成用のビデオ撮影(~9月)
・ガラスビンの割れる瞬間
・氷の割れる瞬間
・卵の割れる瞬間
・空気中を落下する水滴の形
・水中でロウが燃え広がる瞬間
・水滴が落下してガラス面にぶつかった瞬間の形
・水風船が水面に落ちる瞬間
の配布
・教育情報誌等への情報の提供
・学情研自作教材コンクールへの出品予定(5月)
(6) 簡易動画分析の画像データベースとなるWeb公開
を目指す(12月)
Webでの情報の公開と交流による簡易動画分析画像デ
・水素やアルコールが爆発する瞬間
ータベースの構築を目指して、レンタルサーバーの申請
・ペットボトルロケットが発射する瞬間 等
(サクラインターネット)と、ドメイン登録(ダイナミッ
この撮影の一部に、DVDビデオカメラを利用した。従
来のDVテープ式のビデオカメラでは、簡易動画分析時に、
クドウJP)を行った。しかし、メンバーの病気等により、
実際のWeb開設には至っていない。
何度もコマ送りやコマ戻し再生を繰り返すため、いちばん
それらと平行して、(株)カノープスのWebの教育事例
大切な瞬間を記録した部分のテープ映像の画質が劣化して
のページに簡易動画分析に関する実践を紹介してもらった。
しまい、ブロックノイズに悩まされることがあった。その
簡易動画分析に関する問い合わせが何件か寄せられ、仙台
ため、画質の劣化しないDVD方式での映像の画質、記録
の中学校の理科の先生が、会員の学校を訪ねてくることも
性能に期待していた。
あった。
第30回 実践研究助成―――87
中学校
(1) 簡易動画分析手法による画像データベース教材「ま
めがはじけるかい」作成と(財)学習ソフトウェア
情報研究センター(学情研)の自作教材コンクール
への出品(5月)
5.実践の事例
(1) ビデオカメラで撮影しパソコンで画像を取り込む生徒
(2) ペットボトルロケットの発射する瞬間
(3) アルコールフィルムケースの発射の瞬間
(4) 発表会の様子
課題としては、Web上での画
像データベース(映像バンク)の
構築とその充実のほか、画像デー
(仙台)
(伊勢崎)
(尼崎)
タベースをCDまたはDVD化し、
(5) Web(http://www.canopus.co.jp/school/case_kiryu.htm)での紹介
自作教材コンクールへ出品したり、
県内各地の視聴覚教育フィルムラ
イブラリーへ配布することによっ
て、教材としての利用をはかるこ
と。また簡易動画分析手法そのも
のも発展(一方向からの映像から
多方向の映像化へ)させ、より瞬
間の現象の観察方法としての価値
6.研究の成果と今後の課題
を高めていきたい。
(1) 簡易動画分析手法を「ストップモーションで観察しよう」という教
材にまとめ、CDRを作成した。
(2) 講習会・発表会を通して、簡易動画分析手法の広報に努め
た(延べ200人に説明、CDR配布)
。
(3) Webでの公開。問い合わせ等による交流によって普及を
はかっている。
(4) 教育研究所や学校等への教材CDRの配布を通して、教材
としての利用をはかっていく。
88―――第30回 実践研究助成
参考文献
「寺田寅彦随筆集
第四巻」小宮豊隆編(1948年
岩波書
店)
「豆と豆莢に関する形態学的研究」丹羽孝良(1995年 上越
教育大学大学院修士論文)
「瞬間をとらえる」ガリレオ工房(2004年 大月書店)
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