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[成果情報名]アジサイの八重咲き性および手まり咲き性に連鎖する DNA
[成果情報名]アジサイの八重咲き性および手まり咲き性に連鎖する DNA マーカーの作出 [要約]栃木県が育成したアジサイ品種「きらきら星」(八重咲き・手まり咲き)と「フラウヨシ ミ」 (一重咲き・手まり咲き)の F2 集団を用いて連鎖地図を作成し、有用形質である八重咲き性、 手まり咲き性に連鎖する DNA マーカーを作出した。 [キーワード]アジサイ、連鎖地図、八重咲き性、手まり咲き性、DNA マーカー [担当] 栃木県農業試験場 研究開発部 生物工学研究室 花き研究室 [代表連絡先]電話 028-665-7070 [共同研究]宇都宮大学、農研機構花き研究所、農研機構果樹研究所 [背景・ねらい] 栃木県が育成したアジサイ品種「きらきら星」は、大型で八重咲き性の花を有する特徴から市 場性が高く、県内産地の活性化が図られている。八重咲き性は劣性遺伝と推測されていることか ら、 「きらきら星」に続く八重咲き性品種を迅速かつ効率的に育成するためには、DNA マーカー の作出が不可欠である。そこで、 「きらきら星」 (八重咲き・がく咲き)に「フラウヨシミ」 (一重 咲き・手まり咲き)を交配した F2 集団を用いて連鎖地図を作成し、八重咲き性およびその他の有 用形質に連鎖する DNA マーカーを作出する。 [成果の内容・特徴] 1.次世代シーケンサーMiSeq を用いて「きらきら星」と「フラウヨシミ」のゲノムシーケンスを 行い、それぞれ 50M リード 13.1Gb と 5.3M リード 1.6Gb の塩基配列情報を得た。 2.得られたシーケンスデータから SSR 配列を検出し、両品種間で多型が得られると推定される SSR を増幅する 743 プライマーペアを設計した。 3.設計したプライマーと既存の SSR プライマー25 ペアの計 768 ペアを供試し、解析集団の両親 「きらきら星」と「フラウヨシミ」 、F1 個体でマーカーを選抜後、F2 集団のうち 93 個体を用いて タイピングを行った結果、147 マーカーで多型情報が得られた。 4.得られた多型情報を用いて連鎖解析ソフト Join Map 4.0 で連鎖解析を行った結果、19 連鎖群に 144 マーカーが座乗した全長 976.8 cM の連鎖地図が作成できた(図) 。 5.連鎖地図作成に用いた F2 93 個体のうち、開花した 82 個体の八重咲き性および手まり咲き性の 表現形質データを加えて再度連鎖解析を行った結果、両因子とも第 4 連鎖群に座乗した(図) 。 6.開花した全個体の表現形質データ(表)と、八重咲き性および手まり咲き性因子近傍のマーカ ーの多型情報を供試して連鎖解析を行った。その結果、八重咲き性因子はマーカーSTAB045 から HS224 側 1.1 cM(適合率 98.7%)に、手まり咲き性因子は HS071 から 5.8 cM(適合率 96.1%) 、 HS527 から 14.2 cM(適合率 92.7%)の位置に座乗した。 [成果の活用面・留意点] 1.作出した DNA マーカーは、八重咲き性が「きらきら星」 、手まり咲き性が「フラウヨシミ」由 来であり、他の遺伝資源についての適応性は確認していない。 2.作出した DNA マーカーの検出には、DNA シーケンサーまたは大型の変性ポリアクリルアミド ゲル等の解像度が高い装置が必要である。 [具体的データ] 0.0 5.4 7.6 1 9.8 10.4 11.5 12.2 13.1 30.1 34.7 36.3 38.0 46.4 54.1 HS135 HS477 HS427 HS469 HS206 HS213 HS503 HS422 HS625 HS285* HS452 HS501 HS558 HS404 71.2 74.6 75.2 81.0 HS492 HS075 HS203 HS317 88.1 HS201 2 3 0.0 1.7 0.0 1.7 13.0 14.1 HS459 HS454 HS325 HS035 HS476 HS327 16.5 41.2 HS233 43.1 47.2 56.2 HS131 64.1 HS738 97.1 100.5 92.6 HS409 HS756 102.7 109.1 115.0 HS055 HS390 116.1 HS082 125.9 129.8 130.9 HS456 HS482 HS572 51.2 HS141 46.9 0.0 1.1 1.6 2.7 7.5 HS360+ HS514 STAB321 HS165 HS041 HS518* HS552** HS436* 32.1 HS350* HS423-2 34.3 STAB045** 39.7 60.3 HS224* 48.3 59.2 60.9 HS379 HS627 HS498 0.0 HS754 10.6 12.8 HS768 HS234 23.4 HS297 51.2 HS106 67.0 HS138 HS464 HS032 13.2 20.4 HS223 HS137 44.4 73.4 75.1 HS351 HS355 HS484 21.1 HS386 23.9 24.4 25.1 HS602+27.7 36.6 HS406 43.5 46.9 HS660 STAB239 HS678 HS423-1 HS311 HS089 HS640-1 HS054 HS150 59.8 59.9 HS361 HS129 HS550 HS255 座乗マーカー数 144 総遺伝距離 976.8cM 13 12 HS269 HS633 0.0 5.2 11.7 STAB423 18.3 18.4 16 HS265 HS474 20.1 28.0 HS468 0.0 2.7 HS512 0.0 HS145 HS381 0.0 56.3 74.0 77.9 89.7 0.0 3.4 8 30.6 HS071** 11 HS640-2 44.8 7 HS064 HS450 HS755 HS527** 手まり咲き 性因子 HS030* HS302 6 0.0 6.1 11.3 16.2 21 1 22.1 25.6 27.7 29.4 31.2 41.2 HS475 HS250 73.4 HS371** HS418 HS415** HS105 93.7 HS110 HS373 33.8 5 HS225 HS189 HS299 HS248 HS711 10 HS261 0.0 13.7 HS537 HS513 111.4 9 0.0 HS211 八重咲き 性因子 74.0 79.1 HS175 81.3 87.5 90.0 90.9 HS402 97.7 HS497 79.7 4 0.0 3.9 6.8 14 HS031 HS401 HS242 HS300 0.0 4.2 18 HS033 HS504 HS480 HS408 HS127 HS542 HS692 0.0 2.6 5.1 7.5 HS354 11.5 HS323 HS554 HS177 HS510 13.7 15.9 17 HS190+ HS412* HS272+ HS281+ 15 0.0 0.6 4.6 0.0 2.3 2.4 4.1 19 HS114 0.0 HS126 HS266 STAB429 図 「きらきら星」×「フラウヨシミ」F2 集団の連鎖地図 注)染色体をバーで表し、左側に遺伝距離(cM) 、右側にマーカー番号を示す。マーカー番号右肩の+は 10 %水準、* は 5 %水準、** は 1 %水準で、それぞれχ2 検定により有意な差が認められたことを示す。 表 F2 集団における八重咲き性および手まり咲き性の分離状況 表現形質 八重咲き性 手まり咲き性 検定個体数 分離形質 388 一重:八重 385 がく:手まり 実測値 期待値(3:1) χ2検定 p-値 266 : 122 291 : 97 <0.01 349 : 36 289 : 96 <0.01 注)実測値が期待値と大きく異なるが、近傍マーカーの分離比も歪んでいる(図参照) 。 [その他] 発表論文等:和氣ら(2015)園芸学会春季大会、和氣ら(2015)園芸学会秋季大会 HS237+ HS072*