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ご参考資料
2016年
8月12日
Vol. 13
“欧州クレジット市場の最前線”
欧州クレジット・レター
欧州銀行セクターのストレステスト、2016年版の特色
欧州銀行監督機構(EBA)は欧州主要51行の健全性を点検する資産査定(ストレステスト)の結果を発表、大半の
銀行は健全とされたものの、欧州銀行セクターの一部に懸念が残りました。
EBA欧州銀行ストレステスト:結果発表、前
回に比べ欧州銀行の健全性に改善も
欧州中央欧州連合(EU)の銀行監督機関、欧州銀行監督
機構(EBA)は2016年7月29日に、欧州主要51行の健全
性を点検する資産査定(ストレステスト)の結果を発表し
ました(図表1参照)。検査対象となった51行全体のコア
(中核的)自己資本比率(健全性を示す目安)は2015年末
の13.2%からリスクシナリオのもとでは18年末に9.4%に低
下すると推定しています。なお、今後導入が予定される新
たな規制(自己資本比率規制の強化など)が実施されたと
いう想定を加味したもとでの推定によると同比率は9.2%へ
低下が想定されています。
EBAは公表文の中で欧州の銀行の健全性について、改
善が進展していることを指摘しています。例えば、CET1比
率を前回のストレステスト(2014年、図表2参照)と比べると
今回のストレステスト当初の加重平均CET1比率は13.2%
であるのに対し前回ストレステスト開始時のCET1比率は
2013年末の11.1%で、すでに2%以上も改善していることが
示されています。EBAは検査対象銀行がコア自己資本を
積み増した結果であると述べており、健全性の改善を指
摘しています。
ただし、ストレステスト公表後の市場、特に欧州銀行株式
に変動が見られ、市場の不安を一掃したとは言いがたい
状況となっています。
EBA欧州銀行ストレステスト:
主な内容と注目点
◎今回のストレステストの対象は51の銀行(EUの銀行資
産の約7割をカバー)で、総資産300億ユーロ以上を選定
基準としています。前回(2014年)は130の銀行が欧州中央
銀行(ECB)の資産査定の対象であったことに比べると対
象銀行の数は「少ない」印象です。
◎今回のストレステストでは、前回のテストで使用された、
例えばCET1比率5.5%などの合否基準を定めていない点
が特色です。
◎ストレステストのリスクシナリオは次の4点に対し、銀行
がどこまで対応できるかを審査する内容です。
①流動性は低く、債券利回り急上昇、②景気低迷で銀行
の収益性が悪化、③公的、民間債務への懸念高まる、
図表1:2016年欧州銀行ストレステストによるCET1比率
(期間:2015年~2018年、基本シナリオ(左)とリスクシナリオ(右))
15
基本シナリオ
%
13.2 13.2
12
13.4
リスクシナリオ
13.9
13.8
10.6
9.9
9.4
2017年
2018年
9
6
3
2015年
2016年
図表2:2014年欧州銀行ストレステストによるCET1比率
(期間:2013年~2016年、基本シナリオ(左)とリスクシナリオ(右))
15.0
12.0
基本シナリオ
%
11.1 11.1
リスクシナリオ
11.7
11.5
11.2
9.8
9.0
8.5
2015年
2016年
9.0
6.0
3.0
2013年
2014年
出所:EBAの資料を使用しピクテ投信投資顧問作成
(続き)欧州銀行ストレステスト:
主な内容と注目点
④シャドーバンキングセクター急拡大へのストレス、となって
います。例えば、②の景気悪化シナリオではユーロ圏GDP
(国内総生産)成長率が景気悪化の初年度で-1.2%、2年目
が-1.3%、3年目は+0.7%と前回より厳しいシナリオを想定し
ています。
ピクテ投信投資顧問株式会社 4ページ目の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
1
3
ご参考資料
“欧州クレジット市場の最前線”
欧州クレジット・レター
欧州銀行ストレステスト:テストに対する批
判を検証して問題点を明確化
今回のストレステストに対する主な課題を検証します。
Q1: 今回のストレステストでは、対象が51銀行と少ない
のでは?小規模な銀行に問題は無いのだろうか?
A1:130銀行を対象とした 2014年のストレステストに比べ
数が少ないのは確かです。ただし、前回の検査は欧州債
務危機の後の金融市場の信頼回復を意図して行われた
ものであること、またECBが単一監督制度による一元化
を示す場でもあったことから、ギリシャ、ポルトガルを含ん
だ幅広い欧州の銀行が対象となりました。しかし今回は
通常の監督活動の範囲での検査という前提である点で
単純に比較しがたい面もあります。
次に、小規模な銀行について、欧州金融当局が検査を全
く行わないわけではなく、検査当局などが独自の検査を
小規模の銀行に、必要に応じて行います。例えば、 ECB
は2015年にギリシャの4大銀行に対し包括的な審査を
行っています。また、ECBは今回EBAのストレステストの
対象となっていない他の56の銀行(SSM対象銀行)へのテ
ストも実施していますが、結果は公表されない模様です。
Q2:今回のストレステストでは合否基準を設けなかったこ
と、リスクシナリオ(例えばEUの実質GDP成長率)は適切
と見ているか?市場ではEBAがマイナス金利をリスクシ
ナリオに入れなかったことに懸念もあるようだが?
A2:平常時に行われている今回のストレステストは、合否
判定を明確にした前回(2014年)と違い、検査当局と銀行
が今後の改善点を検討するためのたたき台とすることが
目的であると考えるならば、合否基準を定めないことや、
リスクシナリオの前提は概ね適切とも考えられます。
そもそも、欧州におけるストレステストや資産査定の意義
は国ごとにバラバラの基準であった検査に共通の基準を
導入したことに大きな役割があったと理解しています。
次に、マイナス金利の影響がストレステストに反映されて
いないシナリオは適切ではないという批判は確かに一理
あると思われます。何故なら、足元の決算を見ても、欧州
の銀行の「収益」に影響を与えている要因の一つと見ら
れるからです。
では、何故マイナス金利をリスクシナリオに入れなかった
のか?当局の説明は見当たりませんが、恐らく測定の問
題が考えられます。ストレステストは共通基準で欧州の銀
行を一律に比較することに意味があると述べましたが、マ
クロ経済変数は共通の測定基準が導入しやすい一方、マ
イナス金利の悪影響を測定するのは困難という問題があ
(続き)欧州銀行ストレステスト:テストに対す
る批判を検証して問題点を明確化
ります。理由はマイナス金利の影響を減らす工夫が個別の
銀行、国により異なるからです。金利分を手数料にして徴
収するなど様々な方法が見られ、マイナス金利の収益へ
の影響を共通して測定するのは簡単ではないと思います。
むしろ問題点は、従来の検査の基準が自己資本比率など
バランスシートのリスクであるのに対し、最近の市場の懸
念は銀行の収益性へとシフトしているという点にも注意が
必要と見ています。
Q3:2016年のストレステストは合否基準を示さないとしてい
ますが、仮に合否基準があるとするならばどこに注目すべ
きか?
A3:2014年同様CET1比率の5.5%が一つの目安です。ただ
し、最近はグローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)
には資本バッファを上乗せすることが求められており、銀
行の特性を鑑みて合格基準を判断すべきと見ています。
ちなみに、2014年のストレステストでは25の銀行が不合格
となリましたが、CET1比率で見てはっきり不合格なのはイ
タリアのモンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)銀
行で、他にはアライド・アイリッシュ・バンクスもリスクシナリ
オ(新たな規制の実施を想定した基準)でCET1比率を下
回っています。
なお、銀行にはCET1以外にもレバレッジ基準などが求めら
れます。この観点で見るとレバレッジ基準で数行、基準ぎり
ぎりの銀行がありますが、数ベーシス引っかかる程度で、
十分、改善に向けた対応は可能と見ています。
このように、ストレステストについて市場の不満、批判はあ
るものの、検査の目的など、前回との違いにも注意が必要
です。一方で、市場の懸念が銀行のバランスシートの比率
への関心だけでなく、収益性低下への懸念も高めている点
には注意が必要です。
記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企
業の売買を推奨するものではありません。
ピクテ投信投資顧問株式会社 4ページ目の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
2
3
ご参考資料
“欧州クレジット市場の最前線”
欧州クレジット・レター
イタリアの銀行の不良債権:
解決には紆余曲折も
ストレステストが公表された後も、欧州の銀行セクターの市
場の変動性は高いままとなっています。特に、不良債権が
高水準(図表3参照)なことや、個別銀行に問題が見られた
イタリアの銀行が懸念されています。
図表3:イタリアの銀行の不良債権額と不良債権比率
(時点:2015年12月、不良債権比率は総貸出に対する不良債権額)
4,000
3,000
不良債権額(左軸)
不良債権比率(右軸)
億ユーロ
25%
3,600
20%
2,250
15%
2,000
イタリアの銀行の2つの問題を検討します。
1点目はモンテ・パスキの救済案についてです。モンテ・パ
スキがストレステストの結果公表にあわせ発表した救済案
は不良債権の証券化(92億ユーロ)と自己資本増強(50億
ユーロ)を柱としています。
ただし救済案はまだ詳細が不明で、市場の信頼を得るに
は具体的な提案が必要と見ています。
例えば、不良債権の証券化では証券化された各クラスの
(シニア、メザニン、ジュニアなど)のリスクに応じて格付けが
求められすが、今の所、方針も定まっていないように思わ
れます。
資本増強については、銀行と投資家の出資による救済基
金(アトランテ)による支援が含まれる模様で、最初のアトラ
ンテ(50億ユーロ)は使い切る見込みで、第2のアトランテも
準備されるなど、早急な確保が必要です。
また、救済案が実施されたとしても不良債権比率は高いま
まではとの見方もくすぶっています。
2点目はイタリアの銀行全体の不良債権の問題です。モン
テ・パスキのような個別行は対応できたとしても、GDP(国
内総生産)の2割程度に達するイタリアの不良債権処理が
控えています。問題は不良債権を公的資金で処理しようと
すると、EUのルール(BRRD)では個人投資家の保有する銀
行劣後債も減免の対象となる恐れがあります。銀行債を保
有する個人投資家に不良債権の損失負担を負わせること
は政治的に難しい状況です。アイデアとしては、個人投資
家と他の投資家を区別して個人投資家の損失を回避す
る、もしくは事後的に損失を補償するなどが考えられます
が、いずれも具体案は示されておらず、投資家の不安だけ
が高まっている状況です。
公的資金の前に株式や劣後債保有者に損失負担を求め
る(ベイルイン)ルールは導入されたばかりであり、EUが当
初から例外を認める可能性は低いと見ています。したがっ
て、イタリア政府に決断が求められると見ています。
10%
760
1,000
250
340
小規模
零細
5%
0
0%
5大銀行
中規模
全体
※5大銀行はモンテ・パスキ銀、ウニクレディト銀などを含んだ5銀行、中規模
小規模、零細は総資産額の大きさで3段階に分類
出所:イタリア中央銀行(金融安定化報告)を使用しピクテ投信投資顧問作成
欧州債券市場:
今後のポイント
今回のストレステストでは欧州銀行セクターの一部に弱さが
露呈しました。しかし、全体としてみると自己資本など厚みが
増しており、安全性に改善も見られます。ただし、検査の対象
となっていない銀行や、結果が悪かった銀行への警戒感から
欧州銀行セクターへの懸念は続く可能性も考えられます。
したがって、安全性が高いと見られる銀行への投資を基本に
すえると共に、(市場が懸念している)収益性についても注意
を払う必要があると見ています。
※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合
があります。
記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企
業の売買を推奨するものではありません。
当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的
としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰
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