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ご参考資料
2015年
10月8日
Vol. 8
“欧州クレジット市場の最前線”
欧州クレジット・レター
VW(フォルクスワーゲン)の動向を占う上でのポイント
VWの排ガス不正問題は全容の解明には相当時間がかかるものと思われますが、今後の動向を占うと、短期的に
リコール費用などへは対応可能と思われます。しかし、中長期的に訴訟費用などの負担が追加され、消費者から
の信用を回復できない場合、リスクが相当に高まる可能性を視野に入れる必要があると見ています。
フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問
題:信用力低下でスプレッドは急拡大
ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が米国で
ディーゼルエンジン車の排ガス規制を不正に逃れていた
ことを認めました。VWの株価は米国環境保護局(EPA)が
9月18日付の書簡で、不正を指摘して以降、3割以上下落
しています。債券市場ではVWの信用力が急激に悪化、
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドは一時
300bp程度まで上昇(信用力は悪化)しています(図表1参
照)。VWは創業以来で最大級の危機に陥っています。
VWディーゼルエンジン不正問題に関連す
るこれまでのポイント
VWの排ガス不正問題は全容の解明には相当時間がか
かるものと思われますが、現段階で知りうる情報を元に
今後の動向を占うと、短期的には今後想定されるリコー
ル費用等へは対応可能と思われます。しかし、中長期的
に訴訟費用などの負担が追加され、消費者からの信用を
回復できない場合、リスクが相当に高まる可能性を視野
に入れる必要があると見ています。
VWの最近の出来事から、次の点に注目しています。
①不正の対象と引当金
VWは排ガス規制を逃れる「無効化装置」と呼ばれるソフト
ウェアを搭載したディーゼル車の台数は全世界で1,100万
台と公表しています。また、(想定される)リコール費用等
への対応として2015年7-9月期の損益計算書に65億ユー
ロの引当金を計上することも表明しています。
②格付け会社の反応
スタンダード&プアーズ(S&P)は9月24日にVWとその主要
子会社の格付けAにネガティブウォッチ(格下げ方向で見
直し)を付与しました。またムーディーズ・インベスターズ・
サービスは9月24日に格付けをA2(Aに相当)で確認すると
共に見通しを弱含み(ネガティブ)に引き下げています。
フィッチ・レーティングスは9月23日に格付けAにネガティブ
ウォッチ(格下げ方向で見直し)を付与しました。
S&Pの声明文を参照すると、S&PはVWの(営業活動によ
る資金)/(修正後有利子負債)が45%以下、有利子負債
EBITDA倍率が2.0倍以上になると見込んだ場合1段階格
下げすると述べており、同指標に注視が必要です。
図表1:フォルクスワーゲンのCDSスプレッドの推移
(日次、期間:2014年9月30日~2015年9月30日)
350 bp
300
※1bp=0.01%
250
200
VWのCDSスプレッド
150
100
50
0
14年9月
14年12月
15年3月
15年6月
15年9月
※CDS(クレジット・デフォルト・スワップ):信用リスクを対象としたデリバティ
ブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安
※ユーロ建て5年物VWシニア債を参照するCDS
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:フォルクスワーゲンに関連する主な出来事
日付
V Wデ ィ ー ゼ ルエ ンジ ン不正の主な出来事
9月18日 米環境保護局(EPA)がVWを排ガス試験不正と公表
9月20日 ヴィンターコーン社長(当時)名で謝罪を表明
9月22日
不正に関連するエンジン(EA189)と対象となる台数
(1,100万台)、引当金65億ユーロを用意すると表明
9月23日 ヴィンターコーン社長、辞任を表明
9月23,24 格付け会社VWを格下げ方向へ
9月24日 ドイツ運輸相、VWの欧州での不正を指摘
9月26日頃 欧州連合(EU)がVWに数年前に警告と報道
9月25日 ミュラー新社長就任
9月25日頃 投資家、米自治体がVWを集団訴訟または提訴
10月1日 米国VW9月の売上高公表、前年同月比0.56%増
10月1日 VW公表資料、真相究明に今後数ヶ月必要の見込み
出所:VW会社発表資料、報道を参考にピクテ投信投資顧問作成
ピクテ投信投資顧問株式会社 2ページ目の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
1
2
ご参考資料
“欧州クレジット市場の最前線”
欧州クレジット・レター
続き)VWディーゼルエンジン不正問題に関
連するこれまでのポイント
③制裁金と訴訟費用
9月後半にはVWの米預託証券(ADR)投資家の集団訴訟
の表明や、米国の自治体の一部によるVWの提訴が報じ
られるなど、世界中で訴訟が広がる勢いです。
また米国当局はVWの違反に対し(報道では180億ドル(約
2兆円)規模とも見込まれる)制裁金を課す模様です。
2015年7-9月期に計上が見込まれる①の引当金65億
ユーロはVWの財務状況(自動車部門で215億ユーロの手
元流動性資金純額「2015年6月末時点」や手厚い株主資
本など)からすれば吸収可能とおもわれます(図表3参
照)。ただし、7-9月期に計上することで、S&Pが注目する
財務比率(有利子負債EBITDA倍率等)の低下には注意
が必要です。
より問題なのは、中長期の展開で、法令違反に対する制
裁金(罰金)や損害賠償費用はどの程度膨らむか予断を
ゆるさない状況です。特に損害賠償は想定額さえ不確か
で、対応には時間もかかりそうです。
④ディーゼル車戦略
引当金が主にリコール費用のカバーに充当されるとして
も、巨額に上ることが見込まれる制裁金や訴訟費用は今
後の収益でカバーされる必要があると見られます。した
がって、VWのビジネスモデル(戦略)が、信用力を判断す
る上で厳しく問われていくことになると思われます。
欧州はディーゼルエンジンの割合が高いのが特徴です
(図表4参照)。 VWは欧州を代表する自動車メーカーとし
てディーゼルエンジンの普及をリードしてきました。欧州
当局がディーゼルエンジン重視の方針を短期的に変更す
るリスクは低いと思われます。しかしながら、ディーゼルエ
ンジンのイメージ回復が長期化、消費者のディーゼル離
れが進むようであれば、戦略の見直しを迫られる可能性
もあり、資金調達コストが高い中で新たな投資を余儀なく
される懸念もあります。先々、財政状況が急激に悪化す
る可能性には注意が必要と見ています。
図表3:フォルクスワーゲングループ(要約)財務諸表
連結貸借対照表(2015年6月末、単位:百万ユーロ)
流動資産
143,575
固定資産
230,444
総資産374,019
流動負債
140,024
固定負債
137,833
株主資本
96,162
負債資本計374,019
連結損益計算書(2013年~14年、単位:百万ユーロ)
2013年(1-12月)
売上高
197,007
売上粗利益 35,600
営業利益
11,671
金融収支
757
税引前損益 12,428
税引後損益 9,145
2014年(1-12月)
売上高
202,458
売上粗利益 36,524
営業利益
12,697
金融収支
2,097
税引前損益 14,794
税引後損益 11,068
出所:VW発表資料(annual report)等を参考にピクテ投信投資顧問作成
図表4:地域別、自動車燃料タイプの割合
欧州
米国
その
デ ィ 他,
ー ゼ 3 .5
ル,
2 .8
ガソ
リン ,
9 3 .7
その
他,
2.7
ディ
ーゼ
ル,
53.0
ガソ
リン,
44.3
グローバル
VWの投資戦略のポイント
市場も判断に迷う
VWは不正発覚前から、中国市場への依存が高いことを
理由にアンダーウェイトとする動きが見られました。しか
し、今回の不正は全くの想定外で、市場でもスプレッドの
水準を図りかねている様子です。VWの財政状況は短期
的に健全なこと、ドイツ政府が2009年オペルを救済したよ
うに、万一の場合でもドイツ政府の支援に期待して投機
的な戦略を押す声も市場の一部では聞かれます。
しかしながら、訴訟費用や制裁金が不確定なこと、将来
のビジネスモデルに不安があることを鑑み、VWには当
面、慎重な姿勢の維持を基本にすべきと思われます。
ディ
ーゼ
ル,
19.8
その
他,
10.5
ガソ
リン,
69.7
※欧州でディーゼル車が普
及した理由のひとつに、ガソ
リン車より二酸化炭素排出
量が少なく地球温暖化の抑
制を掲げるEUが(減税など)
ディーゼル優遇政策を進め
てきたこと、欧州のユーザー
がディーゼルの燃費のよさ
を評価したことなどが指摘さ
れています。
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘
柄・企業の売買を推奨するものではありません。
当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的
としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰
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