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笛吹市八代地区における地域資源を活用した 都市と農村の共生・対流の

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笛吹市八代地区における地域資源を活用した 都市と農村の共生・対流の
笛吹市八代地区における地域資源を活用した
都市と農村の共生・対流の促進に関する調査研究報告書
平成 26 年 3 月
公益財団法人
山梨総合研究所
■INDEX
序章 本調査の目的と手法....................................................... 1
第1章 都市と農村の共生・対流................................................. 1
1-1:都市農村交流とグリーン・ツーリズム ..................................................................... 2
1-2:都市と農山漁村の共生・対流に関する意識 .............................................................. 4
1-3:想定されるターゲット ............................................................................................... 5
第 2 章 子ども農山漁村交流用メニュー開発に向けた調査研究 ............................ 6
2-1:子ども農山漁村交流プロジェクト ............................................................................. 6
2-2:全国の活動事例の分析 .............................................................................................. 11
2-3:八代地区における子ども農山漁村交流 ................................................................... 14
第3章 地域資源の活用等よるグリーン・ツーリムズメニュー開発向けた調査研究 .... 23
3-1:グリーン・ツーリズムとは...................................................................................... 23
3-2:全国の活動事例の分析 ............................................................................................. 25
3-3:八代地区におけるグリーン・ツーリズム ................................................................ 28
第4章 自然・景観を活かした美しい村づくりのための調査研究 ........................ 33
4-1:自然・景観を活かした美しい村づくり ................................................................... 33
4-2:八代地区における都市住民と提携した景観保護の可能性 ...................................... 36
第5章 フルーツ大使の研修.................................................... 39
5-1:フルーツ大使の位置付けと期待 .............................................................................. 39
5-2:フルーツ大使の研修実績 ......................................................................................... 39
5-3:アンケート結果と今後の活動 .................................................................................. 44
第 6 章 組織体制 ............................................................. 47
第 7 章 参考資料 ............................................................. 48
序章 本調査の目的と手法
本調査は、公益財団法人山梨総合研究所が八代地区都市農村交流推進協議会から委託を
受けて、都市と農村が共生し、対流により農村における所得や雇用を増大させ、地域活性
化と地域コミュニティの再生を図っていくために必要な事項について情報を収集し、調査
分析したものである。
農山漁村においては、人口の減少・高齢化や社会インフラの老朽化等に伴い、地域コミ
ュニティの活力が低下し、地域経済が低迷する一方、消費者・都市住民においては、観光、
教育、健康づくり等に対するニーズが増大するとともに、東日本大震災を契機に、地域の
絆を重視する傾向が生じている。
山梨県内の農業者の平均年齢は平成 22 年度 65.8 才と高齢化が進み、年間の新規就農者
数は一時期よりも増えて年間 200 名を超えるようになってきたものの、農業者全体からす
れば新規就農者はまったく足りていない状況である。
このままでは、先人達が築いてきたブドウやモモの産地やそれに伴う本県に特徴的な農
村風景も消えてしまうことが懸念される。そうならないためには新規就農者を確保し、農
村の担い手確保に努めることが必要であるが、新規就農者を確保していくためには、農業
生産性の向上に加えて、農村の未活用の資源を活用して、ビジネスを興していくことが必
要であろう。
本調査においては、農村の資源をリストアップ後カテゴライズし、農村に内在する資源
の再評価を行い、それが都市農村交流を進める上でどのように再構築できるかについて考
察を行った。都市農村交流自体は、非常に広範囲であるため、都市農村交流活動を分類し、
考え方を整理した上で、以下のテーマについて研究を行った。今回研究対象としたのは以
下の3テーマである。
1つ目は、「子ども農山漁村交流」
2つ目は、「地域資源の活用等よるグリーン・ツーリズム」
3つ目は、「自然・景観を活かした美しい村づくり」
また、「農山漁村における大学・企業等の研修等」の一環として山梨大学院大学の学生
が農村をテーマに行う研修の支援を行い、大学と農村との交流事業の発展について考察し
た。
都市農村交流を個別の農家で行っていくことは、受入容量や受入調整の面からも困難で
あり、かつ地域への波及効果も小さい。そのため、多くの場合は地域全体で連携し、知恵
を出し合いながら進めていくことが必要である。本調査・研究では、地元組織の役割分担
についても考察を行った。
今回の調査・研究により笛吹市八代地区の都市農村交流が活発化し、農村地域にビジネ
スが発生して農業後継者や地域の担い手が増えること、そしてコミュニティが維持され農
村の多面的機能が維持されていくことが期待される。
1
第1章
都市と農村の共生・対流
1-1:都市農村交流とグリーン・ツーリズム
「都市の農村の共生・対流」は、都市と農山漁村を行き交う新たなライフスタイルを広
め、都市と農山漁村それぞれに住む人々がお互いの地域の魅力を分かち合い、「人、もの、
情報」の行き来を活発にする取り組みである。
その形態としては、グリーン・ツーリズム(農山漁村における滞在型の余暇活動)を中
心とした一時滞在型のものから、二地域居住型、定住型まで、多様なものがある。
このような都市と農村の交流は、都市住民に「ゆとり」や「やすらぎ」のある生活をも
たらすほか、郷土食・伝統文化、棚田や里山等を通じた農村地域の魅力の再発見とその活
用・利用により、農村地域の活性化にも重要な役割を果たしている。
類似する言葉として「都市農村交流」があるが、都市農村交流は農業体験や農家民泊な
ど一時的な滞在を行う交流を指していたことが多い。近年では取り組みに加えて週末の田
舎暮らしや長期の田舎暮らしを行う二地域居住や U ターン、I ターン等の定住も含めて、
「都
市農村交流」とされ意味がやや異なってくることから、都市農村交流は「都市と農村の共
生・対流」と呼ばれることも多い。
図1 都市農村交流の分類
(平成 24 年度 食料・農業・農村白書より引用)
2
こうした、都市農村交流において、中心的な位置付けとなるのが、グリーン・ツーリズ
ムと呼ばれる活動である。グリーン・ツーリズムは、農山漁村地域で自然、文化、人々と
の交流を楽しむ滞在型の余暇活動を意味し、ヨーロッパで広く導入されている。日本では
平成4年に農林水産省が、
「グリーン・ツーリズム」という言葉を提唱した。平成6年に「農
山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」(略称「農山漁村余暇法」)
が制定され、都市住民を受け入れるための条件整備が行われた。農山漁村余暇法は、農林
漁業体験民宿業者の登録制度の一層の活用を図ることなどを目的として、平成 17 年に改正
され、いわゆる「農家民宿」が推進される体制が整いつつある。
グリーン・ツーリズムに含まれる活動は幅が広く、農家民宿による宿泊や市民農園におけ
る郷土料理作りまで含まれる。グリーン・ツーリズムに含まれる活動について、表1のと
おり整理・分類した。
表1
グリーン・ツーリズムに含まれる活動
滞在の方法
活用される施設・場所
農家民宿
田(棚田)、畑、果樹園
一時滞在
あぜ道、川、里山、雑木林
観光農園、市民農園、体験農園
農産物直売所、農産物加工所、
農家レストラン、縁側カフェ
二地域居住
実施する活動
農作業体験、自然体験
子ども交流体験、体験型修学旅行
レクリエーション
援農ボランティア
郷土料理、食育、郷土芸能体験
滞在型市民農園
週末の田舎暮らし
(クラインガルテン)
週末の農業研修
空き家、セカンドハウス
(就農に向けた)
3
1-2:都市と農山漁村の共生・対流に関する意識
岐阜県や茨城県等「都市農村交流への関心の高まり」について指摘する行政が増え、行
政施策の一つとして導入される事例が増えている。
実際に都市と農山漁村の共生・対流に対してどのぐらいの人が関心を示すのか明らかに
した上で、今後の議論を進めていく必要がある。
内閣府が平成 17 年 11 月に実施した「都市と農山漁村の共生・対流に関する意識調査」
においては、図2に示すように「都市と農山漁村の共生・対流に関心がある」とした者が、
全体の 52.4%であり、年代別でみると、20 歳代、50 歳代、60 歳代で関心を持つとした者
の割合が高かった。
図2
(内閣府
共生・対流に関する意識
平成 17 年「都市と農山漁村の共生・対流に関する意識調査」より)
また、居住する地域が、
「農山漁村地域」
「どちらかというと農山漁村地域」の者に、「都
市住民の滞在をどう思うか」を聞いたところ、良いことだと思う(どちらかというと良い
ことだと思うを含む)と答えた者は、全体で 69.6%と非常に高かった。特に 20 歳代におい
4
ては 84.3%と全世代の中で最も高く、年代を経るごとにこの割合は減ったことから、若い世
代ほどこうした交流に好感を持っていることが分かった。
1-3:想定されるターゲット
こうした都市農村交流において、都市側のターゲットをどのように設定するかを考えて
いく必要がある。全国のすべての都市部をターゲットとすることは、現実的ではない。山
梨県は、大きな人口を有する首都圏の一部であり、アクセスもしやすい。まずは、首都圏
を都市側をターゲットとして想定する。
なお、日本における首都圏とは、首都圏整備法に基づき整備・建設された関東地方 1 都 6
県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県)と山梨県を含む地域
である。日本における首都圏の範囲は、本法において定義されている。
平成 22 年の首都圏の人口は、約 3,500 万人であり、全国人口の 27.8%となっている。
(内
閣府ウェブサイトより)
5
第 2 章 子ども農山漁村交流用メニュー開発に向けた調査研究
2-1:子ども農山漁村交流プロジェクト
2-1-1 子ども農山漁村交流プロジェクトの内容
「子ども農山漁村プロジェクト」は、平成 20 年度から始まった活動で、図3に示すよう
に農林水産省、文部科学省、総務省が連携して、子どもたちの学ぶ意欲や自立心、思いや
りの心、規範意識などを育み、力強い成長を支える教育活動として、小学校における農山
漁村での長期宿泊体験活動を推進するものである。
図3 子ども農山漁村交流プロジェクト (総務省ウェブサイト)
こうした取り組みに対して、関連省庁がそれぞれの計画等で位置付けを行い、予算処置
をして事業を推進している。関連省庁の関わり方について表2のとおり整理した。
6
表2 関連省庁の子ども農山漁村交流プロジェクトの位置付け
関連省庁
位置付け
農林水産省
文部科学省
総務省
食糧・ 農業・ 農村基本
小学校学習指導要領
地域力の創造・地方の再生の中
計画
第二期教育基本計画
で子ども農山漁村交流プロジェク
ト
活動目的
子どもを農山漁村に宿
集団宿泊活動やボラン
農山漁村での宿泊体験や自然体
泊・滞在させ、交流を深
ティア活動、自然体験
験を通じて、学ぶ意欲や自立心、
める こと で、農村の経
活動などの豊かな体験
思いやりの心、規範意識などを育
済効果および子どもの
を通して、道徳性の育
み、力強い子どもの成長を支える
生きる力を育む等の、
成が図られるよう配慮
ことを目的とする。地域の活性化
教育的な効果を得る。
する。
や交流による地域間の相互理解
の深化にも寄与することを目的と
する。
実施目標
全国の小学校(1学年
いじめの未然防止を図
地域の活力を創造する観点等か
単位)の受入が可能な
るため、様々な体験活
ら、宿泊体験活動の促進に向け
地域づくりの全国的な
動を通じて、児童生徒
た取り組みに対して支援
拡大
の豊かな人間性や社
会性を育む取り組みの
推進
主な支援
の内容
事業
受入地域と小学校の情
宿泊体験活動を実践
受入地域のコミュニティ、市町
報の共有化、連携活動
する小学校等に対する
村、都道府県等に対する支援
等の強化
支援
都市農村共生・対流総
健全育成のための体
都市・農村漁村の教育交流によ
合対策交付金
験活動推進事業(いじ
る地域活性化推進等事業
1,950 百万円
め対策総合推進事業)
3百万円
4,764 百万円
国では、子ども農山漁村交流プロジェクトを推進するため、有識者を交えた「子ども農
山漁村交流プロジェクト研究会」
(事務局:一般社団法人全国農協観光協会)が設置され、
子どもの受入を行う地域がより質の高い体験活動を小学校に提供できるように、有識者に
よる部門別会議を設け、調査研究を行うとともに、各関係者を通じて普及を行っている。
また、この研究会では、子どもを受け入れるにあたり必要な実践的かつ専門的な技術を
習得し安全管理マニュアルの作成方法等について研修を実施している。
今後、子ども農山漁村交流プロジェクトの導入を検討している農山漁村地域では、ぜひ
受けるべき研修である。
7
2-1-2 子ども農山漁村交流プロジェクトの実績と効果
平成 20 年から始まった農山漁村プロジェクトでは、平成 24 年度までの5年間で受入モ
デル地域数は 141 地域、のべ受入小学校数 2,038 校、受入児童数 12 万4千人と大きな実績
が出ている。
また、活動による効果として以下の表3のようにまとめられている。受入農村側も、参
加小学校側にも参加によるメリットがある。
表3 子ども農山漁村交流プロジェクトの効果
効果の対象
項目
内容
農家民宿、農家民泊ともに、7割以上の者が経済効果
があると回答した。
経済効果
(受入金額は、1地域の平均約 590 万円)
農家民宿では 25%が貴重な収入源であると回答した。
「地域間交流が増えた」、「受入を契機に地域内での寄
受入地域の効果
り合いの回数が増えた」と回答する地域が約 4 割であっ
地域コミュニティの
活性化効果
た。
また、「受入を契機に地域行事への参加が増加した」、
「関係農家が講師となった講習会が増えた」とする回答
の他、「高齢者の生きがい対策として大きな効果があ
る」等との回答があった。
宿泊数による教育
効果の違い
宿泊数が多くなるほど教育効果が高く、特に3泊するこ
とで、「挨拶ができるようになる」「命の大切さへの関心
が高まる」といった効果が飛躍的に向上する。
(民泊)「命の大切さへの関心が高まる」「任意活動に積
参加小学校の効果
宿泊人数による効
果の違い
極的に参加するようになる」といった効果を中心に、宿
泊人数4~5人程度で教育効果が高い。
(民宿)「命の大切さへの関心が高まる」効果は、宿泊
人数 10 人以下の場合に飛躍的に高まる。
(農林水産省 HP、子ども農山漁村交流プロジェクト)
2-1-3 マッチングシステム
子ども農山漁村交流プロジェクトを進めていくためには、①まず受入側の体制を整え、
参加側も参加の意思決定を持つことが必要である。その後、②両者を効率よくマッチング
していかなくてはならない。マッチングについては修学旅行等のノウハウを持つ旅行会社
のエージェントがそうしたマッチングをする場合もあるが、制度としてのマッチングシス
8
テムが一般財団法人 都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)に設置されてい
る。それが全国各地受入地域協議会の受入体制を確認する“子ども農山漁村交流プロジェ
クトコーディネートシステム”である。
同機構では、2段階の登録制度を設けてある。これから受入体制を整備する地域向けの
「サポート制度」と既に受入体制を整備済みの地域向けの「コーディネートシステム」で
ある。サポート制度は、農村地域が受入体制を整えるのを支援する仕組みである。新しく
外部の客を農村で受入を行う場合、受入に向けて体制を整えておかなくてはいけない。サ
ポート制度ではどのような体制を整えればよいか支援を行う。
体制整備後、実際に学校とのマッチングをサポートする「コーディネートシステム」が
ある。
表4にまとめた基準を満たした農村をこのシステムの中に掲載し、学校関係者が閲覧で
きるようになっている。
農山漁村で子ども農山漁村交流プロジェクトに参画する場合、こうした支援制度を活用
することが望ましい。
表4 子ども農山漁村交流プロジェクトコーディネートシステムへの登録基準
項目
内容
(1)地域一体による受
受入地域協議会として、農林漁家をはじめ、地域の市町村、農林漁業関係
入活動が行える“受入
団体、NPO法人等によって構成された“受入地域協議会”を設立し、地域に
地域協議会”を設立し
ある多くの機関や人材が一体となって児童生徒等を受入れることが可能であ
ていること
ること
○ 確認事項:受入地域協議会の設立(見込)・組織構成等
(2)“1学年規模での
受入地域協議会として、“1学年規模(小学校の学年平均人数(30人程度)
ふるさと生活体験活
が目安)の児童生徒等が少人数(5人程度)”で滞在できる農林漁家(農林漁
動”を受けられる体制
家民宿等)の軒数を確保できること
にあること
○ 確認事項:分宿可能な農林漁家(農林漁家民宿等)を確保できること(最
低基準:農林漁家(農林漁家民宿等)が最低10軒)
○ 確認事項:2泊3日程度のモデルプランの作成状況等(長期に限定しな
い)
(3)学校等との連絡・
受入地域協議会として、学校等との連絡調整が可能な“総合窓口”(事務局、
調整が行える“総合窓
地域コーディネーター等)を設置し、かつ、学校等からの連絡・調整が適切に
口”を設置しているこ
行える体制があること
と
○ 確認事項:総合窓口の設置と連絡対応等が確認できること
(4)“児童生徒等に対
受入地域協議会として、主立った体験プログラムを指導するインストラクター
応できる体験指導者”
等の人数を確保できること
を有していること
○ 確認事項:学校1学年規模の児童生徒等に対応できる体験指導者を確
9
保できること
(5)“児童生徒等に対
受入地域協議会として、ふるさと生活体験活動を受入れる際に、受入当事者
応できる十分な安全・
が十分な安全・衛生に関する管理(防災対策を含む)が講じられること
衛生管理”が行えるこ
○ 確認事項1:地域一体による安全・衛生管理体制が構築されていること
と
(例)
・受入前・受入期間にかけて、受入当事者との連絡・調整が行える体制にあ
る
・受入当事者向けの安全・衛生管理マニュアルを作成している
・荒天時を想定した活動中止の判断基準を作成している
・地域一体の緊急連絡体制を整備している(緊急連絡体制図の作成)
・活動場所ごとの防災対策を行っている(避難場所・避難方法・ルートの決
定、避難マップの作成、避難物資の用意、避難先での物資等の用意等)等
○ 確認事項2:受入当事者に対して安全・衛生面の指導・研修が行われて
いること
(例)
・受入当事者に対して安全・衛生管理マニュアルの内容を周知している
・受入当事者は安全・衛生管理に係る専門的な研修を受講している
【主な専門的研修の分野】
・安全管理:事故の予防、事故発生時の初動、緊急連絡、事後対応等
・防災対策:初期災害による事故の予防、避難方法の検討等
・応急手当(推奨:消防庁「上級救命講習」等の受講)
・衛生管理(保健所等による「食中毒予防研修」等)
○ 確認事項3:児童生徒等の持つアレルギー・傷病・障害等の配慮が行え
ること
(例)
・受入前に各児童生徒等が持つアレルギー・傷病・障害等を確認する
・受入当事者に対して各児童生徒等のアレルギー・傷病・障害等の状況を
紹介する
(6)ふるさと生活体験
受入地域協議会として、ふるさと生活体験活動の受入れに応じた各種損害
活動を想定した“損害
賠償責任保険に加入することで、万が一の事故が起きた場合に損害賠償が
賠償保険”に加入して
行えるようにしておくこと
いること
○ 確認事項1:受入当事者が必要な損害賠償責任保険に加入していること
【対象例】
・施設:農林漁家泊を行う農林漁家、体験・交流・飲食・宿泊等の提供施
設等
10
・人材:体験指導者
・自動車:地域内移動を行う車両等
○ 確認事項2:受入地域協議会では、各受入当事者の損害賠償責任保険
の加入状況を把握していること
(7)受入体制の整備
受入地域協議会として、(1)~(6)に示した受入体制の整備条件を適えてい
状況が 確認で きる 書
るかを確認するために、全国登録機関である(一財)都市農山漁村交流活性
類等を提出すること
化機構に必要な書類等を提出し、書類審査等を受けること
○ 確認事項:以下の書類等を提出すること
①登録シート
②受入地域協議会の規約
③受入地域としての安全管理基準(ガイドライン、マニュアル等)
④受入地域協議会のパンフレット(学校関係者等提供用)
⑤受入地域協議会の体制の概略図
⑥受入地域としての緊急連絡体制の概略図
⑦受入地域としての防災対策の概要(主な対策事項、避難マップ等)
⑧受入活動を紹介する画像(3枚程度。子どもを受け入れているシーン、受
入地域の風景の画像など。公開に当たり肖像権・著作権に問題がないこ
と)
(8)都道府県をはじめ
登録予定の受入地域協議会に関する情報を当該システムで公開すること
とする関係機関から
について、その受入地域協議会を管轄する関係機関の承諾を得られること
承諾を得ていること
○ 確認事項:(一財)都市農山漁村交流活性化機構は(7)による書類審査
等の結果を都道府県担当課(都道府県協議会)または地方農政局に報
告し、このシステムで情報公開を行うことについて、いずれかの承諾を得
られること
※関係機関の範囲:都道府県担当課(都道府県協議会)、地方農政局
2-2:全国の活動事例の分析
子ども農山漁村交流プロジェクトにおいて、平成 26 年 3 月現在、(一財)都市農山漁村
交流活性化機構のマッチングシステム(http://www.kouryu.or.jp/kodomo/index.html)に
登録された地域数は 181 地域である(表5)
。
それら地域で活動できる内容として、最も多いのは「農業体験」、次いで「食の体験」
「自
然・環境体験」であった。受入地域が普段から行っている内容を提供する体験として位置
付けている事例が多い。
最も提供数が少ない「動物・昆虫」体験については、農山村地域には、こうした生物資
11
源を多数有しているが、ある程度の専門知識を有した者がいないと体験として提供できな
いため、全国で 29 地域と少なくなっている。
「動物・昆虫体験」の内容を見ると、昆虫の採取といった活動が多く、福島県では「ク
ワガタの灯火採取」という積極的に昆虫を集める手法を使った体験を提供している。こう
した他地域での実施事例が少ない体験を、地域独自の体験として提供することができれば、
その地域の差別化につながる。地域資源の見直しをする際には、この点からも資源の見直
しをすべきである。
なお、昆虫に関するイベントを組み込んだ宿泊プランを、全国各地のペンションなどで
も提供されており、子どもから好評を得ている。また、
(財)奄美文化財団では、昆虫類を
含め地域の生き物全体をリスト化し生物多様性を学ぶ場としてフィールドを提供している
(図4)
。子どもたちが生物多様性を学べるフィールドとして、奄美地域は人気が高い。
表5 マッチングシステムの登録地域と提供する内容
都市農山漁村交流活性化機構の
181 地域
マッチングシステムに登録された地
域数
提供できる体験の内訳(複数回答)
農業
林業
漁業
自然
食
環境
177
95
90
170
171
クラ
ふる
レジャ
動物
その
フト
さと
ー
昆虫
他
155
116
111
29
51
12
図4 (財)奄美文化財団の PR 資料
13
2-3:八代地区における子ども農山漁村交流
2-3-1 山梨県内における既存の活動
県内おける子どもの農山漁村交流に関連する内容を表6にまとめた。
道志村においては「子ども農山漁村交流プログラム」
、早川町においては「南アルプス邑
早川町山村留学」
、北杜市・中央市においては「教育ファーム」の事業が行われている。
道志村の農山漁村交流プロジェクトは、村が道志村子ども農山漁村地域協議会をつくり、
農林水産省から子ども農山漁村交流プロジェクト受入モデル地域に指定されている。提供
されている体験メニューを表7に示した。内容は農林業体験から文化歴史体験まで幅広く、
全部で 20 メニュー用意されている。
表6 山梨県内の子どもの農山漁村交流に関する取り組み
市町村名
道志村
プロジェクト名
内容
事業名
子ども農山漁村
交流プログラム
子どもを農山漁村に宿泊・滞在させ、交流を深めることで、農村
の経済効果および子どもの生きる力を育む等の、教育的な効果
を得る。
早川町の美しい自然環境の中で子どもたちに、早川町の特性・
伝統などを生かした自然体験学習や、地域に伝わる民話を題材
早川町
南アルプス邑早
とした民話劇の上演、吹奏楽の演奏をはじめ、3世代交流のイ
川町山村留学
ベントなど、各学校それぞれ特色ある教育を推進しており、都会
では味わえない経験や学習を通して行き届いた学校づくりを進
める。
教育ファームは、生産者(農林漁業者)の指導を受けながら、子
どもたちが作物を育てるところから食べるところまで、一貫した
北杜市
中央市
教育ファーム
「本物体験」の機会を提供する取り組み。
体験を通じて自然の力やそれを生かす生産者の知恵と工夫を
学び、生産者の苦労を学び、生産者の苦労や喜び、食べものの
大切さを実感をもって知ることが目的である。
14
表7 道志村における子ども農山漁村交流メニュー向け内容一覧
メニュー
時間
内容
最大人数
種別
農林業体験
林業体験
90 分~180 分
直径 20 センチ程度の立木の間伐や枝打ち作業 100 名
団体向け
田植え体験
2~3 時間
裸足で田に入り、昔ながらの手植えを体験
50 名/1 箇所
季節限定
農作業収穫体験
1~2 時間
各季節の野菜の収穫・栽培の手伝い
30 名
季節限定
暮らしの知恵・技術体験
竹細工体験
2 時間
体験中使う自分のお箸や皆で遊べる玩具作り
20 名/1 箇所
通年
木工体験
2 時間
間伐材など利用してオリジナル作品作り
20 名/1 箇所
通年
コースター等製作 2 時間
間伐材を利用した竹コップ等作成
20 名/1 箇所
通年
ストーンペイント 2 時間
近くの川原から石を採取しペイント
20 名/1 箇所
通年
縄ない体験
稲の穂を取ったワラで縄作り
20 名/1 箇所
季節限定
2 時間
食文化体験
そば打ち体験
2 時間 30 分
宿舎のお父さん・お母さんが指導
20 名/1 箇所
通年
ほうとうづくり
2 時間 30 分
宿舎のお父さん・お母さんが指導
20 名/1 箇所
通年
まんじゅう
3 時間
宿舎のお父さん・お母さんが指導
20 名/1 箇所
通年
団子づくり
2 時間
宿舎のお父さん・お母さんが指導
20 名/1 箇所
通年
餅つき体験
3 時間
宿舎のお父さん・お母さんが指導
20 名
通年
出張餅つき体験
3 時間
田植え体験をした「もち米」で餅つき
200 名
団体向け
地元ガイドの方と一緒に探検
50 名
通年
地元の語り部たちが宿舎でお話をします
30 名
通年
文化・歴史体験
源頼朝伝説探索
1~2 時間
文化・民話の語り 1 時間
自然環境体験
魚つかみ体験
1~2 時間
豊かな自然の中で魚をつかみ、炭火で塩焼き
30 名/1 箇所
通年
魚釣り体験
1~2 時間
豊かな自然の中で魚釣り、炭火で塩焼き
30 名/1 箇所
通年
登山
3~5 時間
道志村の自然を感じながら登山
200 名
団体向け
飯ごう炊飯
3~4 時間
飯ごうの使い方を学ぶ
100 名
団体向
15
2-3-2 八代地区における地域資源を活用した子ども農山漁村交流メニュー
子ども農山漁村交流メニューを組み立てる際には、当然農村の資源を活用するが、活用
にあたっては資源の種類を分類・整理していくことからはじめなくてはならない。資源の
分類に当たっては、都市農村交流の先駆者である山梨県北杜市の特定非営利活動法人えが
おつなげての曽根原久司氏の手法に倣い、「ヒト資源」・
「モノ資源」・
「情報資源」に分類し
た。
さらに、そこから得られる体験の区分を都市農山漁村交流活性化機構のマッチングシス
テムにおける区分に基づいて表8のとおり整理した。
こうしたメニューを組み合わせて、参加者のニーズにあったプログラムを構築すること
が可能である。
表8 八代地区の資源と交流メニューの分類
活用する資源の種類と体験の内容
体験の区
分
農業
林業
ヒト資源
モノ資源
情報資源
【プロ農家】
【ブドウ】
【早生モモ品種】
プロ 農家 が教える ぶどう
巨峰、ピオーネ、シャインマス
モモの早生品種「はなよ
作り(10 作業程度/年)
カット、ロザリオビアンコの
め」育種地
プロ農家が教えるモモ作り
栽培体験
【水田跡の遺跡】
(10 作業程度/年)
【耕作放棄地】
身洗沢遺跡は県内では
耕作放棄地解消体験
じめて水田跡
【森林】
-
-
間伐体験
漁業
-
-
-
自然・環境
-
【近隣の川】
-
川遊び、生き物調査、釣り
【雑木林】
散策、昆虫採集
食の体験
【料理が得意な人】
【観光ブドウ園】
【伝統料理作り】
地元料理名人の料理
観光でのブドウ狩り
ホウトウ・ソバ等伝統料
理づくり。ブドウ・モモジ
ャムづくり
クラフト
ふるさと
【ブドウのツル】
【案山子祭り】
ツルを使った、クリスマスリ
案山子祭り向けの案山
ースづくり
子づくり
【語り部】
【農家民宿】
【モモ・ブドウ歴史】
語り部から地域の昔話を
農家民宿での宿泊体験
モモ・ぶどう歴史を学ぶ
聞く
体験、「 はなよめ」 発祥
の地(城の平)へのフット
16
パス
【案山子祭り】
祭りへの参加
レジャー
-
【宿泊施設】
-
近隣宿泊施設での温泉や
宿泊
動物・昆虫
【虫の先生】
【果樹地帯の生物】
【生物多様性】
虫の先生ガイドによる「昆
ぶどう園での「昆虫採取」
採取した昆虫の RDB・農
虫採集」
業への有効性に基づく
【雑木林の生物】
分類作業
昆虫採集
その他
【温泉施設】
【スマート IC】
周辺温泉施設での入浴
平成 27 年度に八代地区
にスマート IC 設置
※表中の【】は活用する資源
2-3-3 子ども農山漁村交流プログラムの構築と特徴づけ
前項でピックアップしたメニューは素材であり、これらを組み合わせて提供するプログ
ラムを構築する必要がある。
プログラムの構築に当たっては、まずは「モモ・ぶどうの栽培体験」、
「伝統料理づくり」
、
「農家民泊」
「語り部から地域の昔話を聞く」などの農村の魅力を体験できるオーソドック
スなメニューを組み合わせて構築すべきである。
その後、他地域との差別化を図るため、他の地域にない要素を組み込んだプログラムを
提供していくべきであろう。
他の地域にない要素として、ここでは全国的に提供事例が少ない「動物・昆虫」に区分
される体験を組み込むことを提案する。全国の登録地域 181 から提供されるメニューのう
ち「農業体験」は 177 と最も多いのに対して、「動物・昆虫」は 29 と最も少ない。
農山村には、豊かな自然が残されそこに生息する動植物の種類・数も多い。しかし、そ
れらを分類し、解説し、魅力を伝えることができる人材が農村には少ないことが、この原
因である。
各地域の農村には、それぞれの地域固有の「動物・昆虫」がおり、そうしたものを調査
し、提供できるようになることは、他の地域との差別化を図る上で重要である。
ここでは、当該地域において昆虫資源を中心とした生物資源の調査を行い交流メニュー
として作成した。
通常、昆虫の採取に当たっては昆虫を用いた自然学習に実績を持つ(株)会津高原ネイ
チャースクールを参考にすると表9に示すとおり、15 種類の方法があり、誰でも簡単に実
施できるものから、専門家でないと実施不可能なものまである。実際にいくつかの手法で
17
地域の昆虫を採取したものを表 10 に取りまとめた。通常の里山にいる昆虫に加え、果樹地
域独特の種が見られ他の地域との差別化が測られ、非常に魅力的な体験となりえると推測
できる。
表9 昆虫の採取方法
ステッ
プ
1
方法
ルッキング
外灯採集
ビーティング
2
どぶさらい
吸水トラップ
ピットホールトラップ
樹液採集
スウィーピング
3
虫の採集以外の目的でともされたライト(高速道路やコンビニなど)で
採集する方法
たたいた枝の下に網を添えておき、落ちる虫を採集する方法
水中に専用の網やタモを突っ込んで、水中の泥ごと、虫をすくい取る
方法
擬似的にチョウの吸水場を用意し寄ってきたチョウを採集する方法
地面に特定の虫のエサ入りの、落ちたら出られない罠をしかけ、入っ
た虫を採集する方法
木が傷ついて出た汁が発酵したものを「樹液」といい、それを食べに集
まってくる昆虫を採集する方法
虫あみを使ったテクニックの一つで、木の葉や草むらをあみで薙ぎ、
みづらい昆虫を捕獲する方法
土の中に住む虫を掘り起こして採集する方法
果実トラップ
人工的に腐果を用意して、そこに集まってきた虫を採取する方法
バタフライトラップ
材割り採集
5
どこでも見ながら虫を探し歩く方法
地中虫採集
水中トラップ
4
内容
水中の腐肉食の昆虫がエサに釣られて入ったら出られないトラップを
作って水中に沈め、かかった虫を採取する方法
樹液や腐果に集まるチョウを擬似的なエサで罠の中に誘引する方法
クワガタの幼虫がエサとする腐った木(朽木)を砕いて、中の幼虫を採
集する方法
高所スウィープ
木の高いところにいる虫を採取するための方法
灯火採取
これは、灯火採集の進化版で、虫取り目的でライトを設置する採集法
18
表 10 採取した昆虫と分類
採取方法
ルッキング
外灯採集
外灯採集
外灯採集
昆虫の
種類
画像
備考
クサギカ
農作物の害虫、非常
メムシ
に臭い
アキアカ
一般的な赤とんぼで秋
ネ
に赤く成熟
ミカドミン
山梨県の要注目地域
ミン
個体群指定
ヒゲナガ
川底に住む。幼虫は
カワトビ
長野県でザザムシとし
ゲラ
て食される
ウスキツ
幼虫はブナ等を食す。
バメエダ
近くに雑木林がある証
シャク
拠
ノメイガの
ノメイガの仲間で RDB
仲間
指定※あり
採集地
協議会事務局近く
協議会事務局近く
協議会事務局近く
協議会交流圃場近く
協議会交流圃場近く
協議会交流圃場近く
(※レッドデータブック)
ピットホール
ゴミムシ
セアカヒラタゴミムシ始
類
めゴミムシ類多数採取
協議会の交流圃場
ムカデ類
灯火採取
ヤママユ
幼虫はクリ、クヌギ等
協議会の交流圃場
を食べる。近くに雑木
林がある証拠
灯火採取
ヒメヤマ
大阪府で準絶滅危惧
マユ
種指定、ブドウ圃場採
協議会の交流圃場
集
19
2-3-4 組織体制と広報活動
こうした取り組みは、単独の事業者や個人が実施できるものではなく、地域全体での取
り組みが必要である。
八代地域では、都市農村交流を進めていくため、地域の農業法人や特定非営利活動法人、
若手農業者団体などが集まり平成 25 年5月に協議会組織「八代地区都市農村交流推進協議
会」が設立された。この組織には、笛吹市行政に加え地域の幅広い担い手が参画しており、
交流活動を地域活動として展開していくことが可能である。この協議会の事業実施を図5
に示した。協議会の中に意思決定機関として役員会が設けられており、迅速な意思決定が
可能である。そこから子ども農山漁村交流における役割分担を表 11 に示した。
事業実施体制
役員会(意思決定機関)
八代地区都市農村交流推進協議会
農事組合法人
アグリONE
NPO:
Hope笛吹
山梨屋
産地を守る会
果樹やつしろ
ふえふき新人
農業の会
笛吹市
農林振興課
選出
○代表者等不在時の対応
会長
(リーダ)
事務局長
副会長
理事
監事
プロジェクトマネージャー
【会長、リーダ不在の場合】
副会長が代理となる
【プロジェクトマネージャー不在の場合】
役員会が代理となる
情報発信・イベント担当
山梨屋
集落魅力再発見担当
山梨総合研究所
体験・研修定住担当
産地を守る会果
樹やつしろ
アグリONE
Hope笛吹
Hope笛吹
Hope笛吹
ヤッチャバ
山梨屋
産地を守る会果
樹やつしろ
笛吹市
笛吹市
笛吹市
山梨学院大学
山梨総合研究所
県担い手対策室
山梨屋
アグリONE
ふえふき新人農
業の会
助言
山梨総合研究所
山梨総合研究所
石和温泉
旅館組合
ふえふき新人農
業の会
図5 事業実施体制
20
表 11 子ども農山漁村交流における各団体の役割分担
団体
役割
山梨屋
プロジェクトリーダー、全体のマネージメント
NPO 法人 Hope 笛吹
体験の提供、広報活動
(農)アグリ ONE
体験の提供、広報活動
産地を守る会果樹やつしろ
体験の提供、広報活動
ふえふき新人農業の会
体験の提供、広報活動
笛吹市農林振興課
広報活動
ここで、広報活動について整理を行う。子ども農山漁村交流を実施するに当たっては、
都市農山漁村交流活性化機構のマッチングシステムへの登録他、都市部のイベントで直接
参加者に PR、地域と姉妹協定を締結している市町村の小中学校への PR、旅行会社のエージ
ェントへの働きかけなど様々ある。協議会の構成員がそれぞれ有する手法を用いて PR をし
続けていくことが必要である(表 12)。
表 12 子ども農山漁村交流における営業ターゲットと方法
営業ターゲット
営業ツールおよび方法
都市農山漁村交流活性化機構のマッ
準備
チングシステムへの登録準備(前出の
段階
表4)、トライアル的な子どもの受入と
だれが行うか
協議会
課題抽出
第1
段階
第2
段階
子ども農山漁村交流に興味
都市農山漁村交流活性化機構のマッ
協議会
を持つ学校関係者
チングシステムへの登録
都市部のイベントの参加者
会場での体験(農業体験、食の体験)
山梨屋
姉妹協定を結んだ 市町村
直接訪問、ホームページにて広報
協議会、笛吹市
都市部小学校全般
作成したホームページにて広報
協議会
旅行会社エージェント
直接訪問、ホームページにて広報、観
協議会、笛吹市
の小中学校
光商談会への参加
最後に、子どもたちを受け入れるに当たっての注意点を表 13 に取りまとめた。内閣府の
調査によれば、農業体験に参加する子どもたちに関して保護者が心配する点はやはり怪我
である。怪我が出にくい状況を体験受入の前提として整え、その上で怪我やトラブルが起
こったときの対処方法についてしっかり検討しておくことが必要である。
21
表 13 受け入れる際の注意事項
注意点
内容
受入地域協議会として、ふるさと生活体験活動を受入れる際に、受入当事者が十
分な安全・衛生に関する管理(防災対策を含む)が講じられること
○ 確認事項1:地域一体による安全・衛生管理体制が構築されていること
・受入前・受入期間にかけて、受入当事者との連絡・調整が行える体制にある
・受入当事者向けの安全・衛生管理マニュアルを作成している
・荒天時を想定した活動中止の判断基準を作成している
・地域一体の緊急連絡体制を整備している(緊急連絡体制図の作成)
・活動場所ごとの防災対策を行っている(避難場所・避難方法・ルートの決定、避難
“児童生徒等
マップの作成、避難物資の用意、避難先での物資等の用意等)等
に対応できる
十分な安全・衛
○ 確認事項2:受入当事者に対して安全・衛生面の指導・研修が行われていること
生管理”が行え
・受入当事者に対して安全・衛生管理マニュアルの内容を周知している
ること
・受入当事者は安全・衛生管理に係る専門的な研修を受講している
【主な専門的研修の分野】
・安全管理:事故の予防、事故発生時の初動、緊急連絡、事後対応等
・防災対策:初期災害による事故の予防、避難方法の検討等
・応急手当(推奨:消防庁「上級救命講習」等の受講)
・衛生管理(保健所等による「食中毒予防研修」等)
○ 確認事項3:児童生徒等の持つアレルギー・傷病・障害等の配慮が行えること
・受入前に各児童生徒等が持つアレルギー・傷病・障害等を確認する
・受入当事者に対して各児童生徒等のアレルギー・傷病・障害等の状況を紹介する
受入地域協議会として、ふるさと生活体験活動の受入れに応じた各種損害賠償責
任保険に加入することで、万が一の事故が起きた場合に損害賠償が行えるようにし
ふるさと生活体
ておくこと
験活動を想定
○ 確認事項1:受入当事者が必要な損害賠償責任保険に加入していること
した“損害賠償
・施設:農林漁家泊を行う農林漁家、体験・交流・飲食・宿泊等の提供施設等
保険”に加入し
・人材:体験指導者
ていること
・自動車:地域内移動を行う車両等
○ 確認事項2:受入地域協議会では、各受入当事者の損害賠償責任保険の加入
状況を把握していること
22
第3章
地域資源の活用等よるグリーン・ツーリムズメニュ
ー開発向けた調査研究
3-1:グリーン・ツーリズムとは
グリーン・ツーリズムとは、農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽し
む滞在型の余暇活動と定義され、都市農村交流の中核的な活動に位置づけられている。
第2章の子ども農山漁村交流プロジェクトも、大きな意味ではグリーン・ツーリズムの
枠に入る。
欧州では、農村に滞在しバカンスを過ごすという余暇の過ごし方が普及してイギリ
スではルーラル・ツーリズム、グリーン・ツーリズム、フランスではツーリズム・ベー
ル(緑の旅行)と呼ばれている。
図6 都市農村交流の分類(既出) (平成 24 年度 食料・農業・農村白書より引用)
23
前述したように、グリーン・ツーリズムにおいては様々な農村の施設や場所において、
様々な活動が実施されており、まさに地域資源を活用した交流ビジネスである。グリーン・
ツーリズムは一時的な滞在から二地域居住までを含むが、長期的な田舎暮らしや定住にま
でつながる可能性を秘めており、農村の活性化に取り組む際に非常に重要な要素である。
グリーン・ツーリズムでは様々な体験が実施されているが、中でも重要となってくるの
は、宿泊である。いわゆる農家民宿の導入により、活動の拠点を作ることができる。拠点
を作ることで参加者の滞在時間が長くなり、短時間では得られなかった農村の魅力を提供
することが可能となる。また、宿泊を伴うことで経済的な効果も高くなる。
表 14 グリーン・ツーリズムに含まれる活都市農村交流
活動の
種類
滞在の方法
一時滞在
グリーン・
ツーリズム
二地域居住
活用される施設・場所
実施する活動
農家民宿
農作業体験、自然体験
田(棚田)、畑、果樹園
子ども交流体験、体験型修学旅
あぜ道、川、里山、雑木林
行
観光農園、市民農園、体験農園
レクリエーション
農産物直売所、農産物加工所、
援農ボランティア
農家レストラン、縁側カフェ
郷土料理、食育、郷土芸能体験
滞在型市民農園
(クラインガルテン)
週末の田舎暮らし
週末の農業研修
(就農に向けた)
二地域居住
空き家、セカンドハウス
長期田舎ぐらし
定住
空き家、耕作放棄地
U・Iターン
グリーン・
ツーリズム
以外
24
3-2:全国の活動事例の分析
3-2-1 農林漁業体験民宿
こうしたグリーン・ツーリズムを推進する上で、平成 17 年に「農村漁村余暇法」が改正
され農業者が民宿の許可を得やすくなっており、全国各地に農家民宿ができている。こう
した農家民宿により多くの利用者を導こうと、一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構
の中に農林漁業体験民宿(いわゆる農家民宿)の登録制度ができ、地域やフリーキーワー
ドなどで簡易に検索が可能になっている。登録内容には農業者の想いやこだわりが記載さ
れており、農家の想いを検索者に伝えることができるようになっている。この登録制度の
ロゴマークは、図7のように指定され、統一のイメージを持たせるように工夫されている。
図7 登録農林漁業体験民宿のロゴ―マーク
このサイトには以下のように記載され、グリーン・ツーリズムの楽しさを伝えている。
農林漁業体験民宿《田舎体験の宿》って何?
アットホームな「民家の宿」として使われてきた民宿という名前が定着してから
数十年が経ちました。安い・親切・気軽のイメージで親しまれている民宿が、近年
グリーン・ツーリズム(農山漁村滞在型余暇活動)の浸透とともに大きく変わろうと
しています。
農林漁業体験民宿《田舎体験の宿》は、「緑ゆたかな農山漁村で地域の自然・文
化・人々との交流を楽しむ」グリーン・ツーリズムの拠点として、訪れる皆様に様々
な《田舎体験》を提供します。
農山漁村の生活を存分に満喫できる地域案内、環境問題や「地産地消」に対する
意識の高まりからも注目されている自然体験活動、自家製・地場産の素材をたっぷ
り味わえる食事、地元の昔話を聞きながら宿の人と語らう団欒のひととき・・・。
都市と農山漁村の架け橋となる《田舎体験の宿》に泊まって、あなたも“ニッポ
ンのふるさと”を堪能してみませんか!
25
なお、登録に当たっては以下の表 15 のとおり条件が必要であり、特に怪我などに対する
対策などが必要である。
表 15 登録等に必要な要件
項目
内容
備考
イ.農作業、森林施業・林産物生産採取、漁撈・水産
動植物養殖の体験指導
① 農山漁村余暇法施行規
ロ.農林水産物の加工または調理の体験指導
則 2 条に基づく「農山漁
ハ.地域の農林漁業または農山漁村の生活・文化に関
村滞在型余暇活動に必要
する知識の付与
な役務」を提供すること
ニ.用地・森林・漁場その他の農林漁業資源の案内
ホ.農林漁業体験施設等を利用させる役務
ヘ.前各号に掲げる役務の提供の斡旋
② 農山漁村余暇法施行規
則 14 条に従って営業を行
うこと
「利用者の生命や身体について損害が生じた場合の
損害を填補する保険か共済」への加入
平成 17 年
以降義務
付け
農林業センサスで確認すると全国に農家民宿は 2006 件とされているが、このシステムへ
の登録は 402 件で全体の約 20%程度となっている。新たに農家民宿に取り組む場合、広報
活動の一環として本システムへの登録を目指すべきであろう。なお、山梨県内の登録件数
は、(有)ぶどうばたけの1件のみとなっている(図8)。同システムおよび農林業セン
サスの掲載されている全国の農家民宿件数を表 16 に示す。
表 16 全国の農家民宿件数
農林業
一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構
センサス
農林漁業体験民宿(いわゆる農家民宿)の登録件数
全国
全国
北海道
東北
関東
中部
近畿
中国
四国
九州・沖縄
2006
402
11
71
24
210
32
10
8
36
図8 山梨県内の登録件数
26
3-2-2 農家民宿に関する関係法令の整理
いわゆる農家民宿を進めるに当たって、規制緩和はあったものの関係する法令が多くあ
り、それらをクリアーしていくことが必要である。関係する法令を表 17 に取りまとめた。
表 17 関係法令の整理
法律名
旅館業法
食品衛生法
建築基準法
浄化槽法
水質汚濁防止法
下水道法
消防法
農地法
旅行業法
旅客業法
農振法
都市計画法
法律の概要
規制緩和通知
民宿を営業する場合は許可が必要
「旅館業法施行規則の一部を改正する省令」
平成 15 年 3 月 25 日健発第 0325005 号
「無償で宿泊させる場合の旅館業法の適用」
平成 23 年 2 月 24 日健衛発第 0224 第 1 号
宿泊客に食事を提供する場合には許可が必要
農林業体験時の臭覚野菜等の料理における食
品衛生法の規制緩和について
平成 22 年 11 月 15 日食安監発 1115 第 1 号
建物が適切に設計されているか検討が必要
農家民宿等に係る建築基準法上の取り扱いに
ついて(技術的助言)
平成 17 年 1 月 17 日国住指第 2496 号
浄化槽を新設・規模変更する場合は届出が必
要
厨房などについて届出が必要
公共下水道に接続する場合には届出が必要
民宿の規模により消防設備等の設置が必要
民宿等にける消防用設備等に係る消防法令の
技術上の基準の特例の適用について(平成 19
年 1 月 19 日消防予第 17 号)
農地に新築する場合は転用許可が必要
宿泊や食事を提供するプログラムを実施する
旅行業法の許可が必要
農家民宿が自ら宿泊者に対して行う農業体験
サービスに関する旅行業法上の解釈の明確化
について(平成 15 年 3 月 20 日国総観旅第 526
号
有料で運送サービスを提供する場合同法の許
可が必要
民宿施設が、その宿泊者を対象に行う送迎の
ための輸送について
(平成 15 年 3 月 28 日 国
自旅第 250 号)
農用地区域内に新築する場合は除外が必要
農家民宿の営業ができる場所かの確認
担当機関
保健所
地方事務所
地方事務所(市町村)
市町村
消防署
市町村農業委員会
県
市町村役場
市町村役場
(長野県農家民宿開業の手引き(H19.4)および山梨県観光部資料より作成)
27
3-3:八代地区におけるグリーン・ツーリズム
3-3-1 山梨県内における取り組み
山梨県内におけるグリーン・ツーリズムの取り組みを表 18 のとおり取りまとめた。長野
県に比べて取り組み数が少なく、東京に近いという立地条件の良さ十分に活かしきれてい
ない。
表 18 山梨県内におけるグリーン・ツーリズムの取り組み
実施主体
(有)ぶどうば
たけ
内容
日々農業に興味を持っている方々に体験できる農作業体験を提供で、
地域
甲州市
秋にはぶどうジャム・ジュース作り、枯露柿づくりが可能。
小学校のプレセカンドスクール・地元勝沼中学校の農業体験学習・食育
体験・大学の研修・など教育関係も受け入れており、個人でも、グループ
でも参加することが可能。(ぶどうばたけ HP より)
(特非)えが
おつなげて
直営農場「えがおファーム」で種まきから収穫、加工まで、年間を通して
北杜市
農作業を体験できる。野菜がどのように大きくなっていくのか、その過程や
農業と食との関連を知ることができる。
2010 年のプログラムは、5 月 1 日から 6 月 3 日を募集期間とし、6 月に
青大豆の種まき、7 月に草取り、7~8 月に 1 泊 2 日の「こどもキャンプ」、
10 月に収穫体験、11 月に収穫した豆を使った味噌仕込みとなっている。こ
どもキャンプでは、野菜の収穫や野外調理、川遊びなどを行う。仕込んだ
味噌はおみやげとして持ち帰りができる。
(えがおつなげて HP より)
(株)ヴィンテ
ージファーム
ヴィンテージリゾートの子会社で、企業として農業に参入している。1 万
北杜市
本の葡萄樹が拡がる風景を眼下に農場のオーナー気分で時には収穫作
業にも加わり育てたワインを受け取ることができる。
ヴィンテージオリジナルワインは、山葡萄との交配種で醸造し、ポリフェ
ノールが通常の 8 倍、鉄分 3 倍の濃厚なワインである。2014 年度は新た
に樽ごと確保していただく『樽オーナー』プランも新設。
(ヴィンテージファーム HP より)
山梨市水口
地区グリーン
ツーリズム協
議会
地域の森林整備ボランティア活動と農作業体験を組み合わせたプログ
山梨市
ラムを提供。
また、棚田のオーナー制度を導入し、オーナーには年数回の農作業体
験と収穫した白米をプレゼントしている。
(山梨市に聞き取り)
やまなし農村
農業体験可能な個所を 28 か所の取りまとめている。
休暇村
「富士の国やまなし農村休暇邑」とは、木と風と土と語らい安らぎ憩える
県全域
すばらしい邑をコンセプトに、グリーン・ツーリズムや田舎暮らし、農村体験
28
教育など新しい生活様式を求める都市住民の方々を第二のふるさととし
てお迎えするもの。
都市・農村交流を通じ、本物の“やまなし”を楽しんでいただくため、様々
な体験プログラムをご用意している。
(山梨農村休暇村 HP、パンフレットより)
(特非)南ア
アルプスの麓にひろがる果樹園地帯は、いろいろな果物が実る、自然
ルプスファー
の恵みいっぱいのフィールドであり、ここで果樹園を営む若者たちが、ファ
ムフィールドト
ームフィールドトリップを立ち上げた。
リップ
南アル
プス市
ただ訪れるだけでなく、体験し、学び、共感するグリーン・ツーリズムを参
加者とともに作り上げていく。(同 NPO の HP より)
また、山梨県の農家民宿を推進するため、山梨県立大学が中心となり平成 25 年度に「農
家民泊やまなし研究会」が立ち上がり、2月には「農家民泊やまなしフォーラム」が開催
され多くの農業者が集まり、農家民泊について研修を受けた。
(有)ぶどうばたけ
手作りこんにゃく
(有)ぶどうばたけ加工品
会場の様子
図9 「農家民泊やまなしフォーラム」会場
3-3-2
地域資源のピックアップとグリーン・ツーリズム
グリーン・ツーリズムプログラムを組み立てる際には、子ども農山漁村交流プロジェク
トと同様に農村の資源を活用していく。前章と同じ区分方法で資源をおよびメニューを分
類し、表 19 に示した。
29
表 19 農村資源の分類とグリーン・ツーリズムメニュー
体験の区分
活用する資源の種類と体験の内容
ヒト資源
農業
モノ資源
情報資源
【プロ農家】
【ブドウ】
【早生モモ品種】
プロ農家が教えるぶ
巨峰、ピオーネ、シャイン
モモの早生品種「はなよめ」育種
どう作り(10 作業程
マスカット、ロザリオビアン
地でつくるモモ作り
度/年)
コの栽培体験
【水田跡の遺跡】
プロ農家が教えるモ
【モモ】
県内ではじめて水田跡がある八代
モ作り(10 作業程度
モモ(特にはなよめ)の栽
でおコメ作り
/年)
培体験
【耕作放棄地】
耕作放棄地解消体験
林業
-
【森林】
-
間伐体験
漁業
-
-
-
自然・環境
-
【近隣の川】
-
川遊び、生き物調査、釣り
【雑木林】
散策、昆虫採集
食の体験
【料理が得意な人】
【観光ブドウ園】
【伝統料理作り】
地元料理名人の料
観光でのブドウ狩り
ホウトウ・ソバ等伝統料理づくり。
理
クラフト
ブドウ・モモジャムづくり
【ブドウのツル】
【長崎かかし祭り】
ツルを使った、クリスマス
かかし祭り向けの案山子づくり
リースづくり
ふるさと
【語り部】
【農家民宿】
【モモ・ブドウ歴史】
語り部から地域の昔
農家民宿での宿泊体験
モモ・ぶどう歴史を学ぶ体験、「は
話を聞く
なよめ」発祥の地(城の平)へのフ
ットパス
【祭り】
長崎かかり祭りへの参加、モモの
花祭りへの参加
【古い家並み】
八代町高家地区の街並みを歩くフ
ットパス
レジャー
【イケメン農家】
【宿泊施設】
JA 青年部といく地域
近隣宿泊施設での温泉や
観光
宿泊(笛吹市石和温泉
30
【音楽家】
郷)
当地域にゆかりのあ
【八代射撃場】
る レミ オロ メン と い く
射撃場での射撃体験
観光
動物・昆虫
【虫の先生】
【果樹地帯の生物】
【生物多様性】
虫の先生がガイドす
ブドウ園・モモ園での「昆
採取した昆虫の RDB・農業への有
る「昆虫採集」
虫採取」
効性に基づく分類作業
【雑木林の生物】
稲山ケヤキの森での昆虫
採集
その他
【温泉施設】
周辺温泉施設での入浴
3-3-3 組織体制と営業活動
グリーン・ツーリズムを実施するに当たっては、地域の農業法人や特定非営利活動法人、
地元住民団体、地域行政等地域にいる多様に団体が役割分担を行い、各団体が有する能力
を提供していくことが必要である。笛吹市八代地区におけるグリーン・ツーリズム事業を
実施する際に想定される役割分担を表 20 に分類した。
表 20 グリーン・ツーリズム事業における各団体の役割分担
団体
役割
山梨屋
プロジェクトリーダー、全体のマネージメント
NPO 法人 Hope 笛吹
体験の提供、広報活動
(農)アグリ ONE
体験の提供、広報活動
産地を守る会果樹やつしろ
体験の提供、広報活動
ふえふき新人農業の会
体験の提供、広報活動
笛吹市農林振興課
広報活動
次に、活動のステップアップおよび広報活動について表 21 のとおり取りまとめた。グリ
ーン・ツーリズム事業は、地域の合意から始まり、プログラム開発、広報活動、プログラ
ムの実施を繰り返しながら、事業を大きくしていくことが一般的で、最初から旅行エージ
ェントや今まで縁のない都市住民を呼び込むことは難しい。まずは既存のネットワークを
使った働きかけを行い、その後町内のイベントとの連携を経て、外部との連携を模索して
いくことで、事業の円滑な拡大が期待できる。
31
表 21 グリーン・ツーリズム事業おける広報活動
段階
ターゲット
第 1 段階
子ども交流で来る子ども・
既存のネットワー
保護者
クを使った働きか
既存の観光客
営業ツールおよび方法
だれが行うか
直接呼び掛け、HP
協議会
直接呼び掛け、HP
あぐり ONE、ふえふ
け
き新人農業の会
関係を持つ都市部のマル
直接呼び掛け、HP
山梨屋、協議会
モモの花まつり
直接呼び掛け、HP
協議会、笛吹市
長崎かかし祭り
直接呼び掛け、HP
産地を守る会果樹
シェ関係者
第 2 段階
八代のイベント
からの働きかけ
やつしろ
都市部のイベントの参加者
会場での体験
山梨屋
(農業体験、食の体験)
第 3 段階
姉妹協定を結んだ市町村
直接訪問、ホームページにて
外部との連携
の小中学校
広報
都市部小学校全般
作成したホームページにて 広
協議会、笛吹市
協議会
報
旅行会社エージェント
直接訪問、ホームページにて
協議会、笛吹市
広報、観光商談会への参加
32
第4章 自然・景観を活かした美しい村づくりのための調査研究
4-1:自然・景観を活かした美しい村づくり
棚田や田園空間などの農山漁村の自然や景観を生かした都市住民等と連携していく取り
組みで、表 22 のように4段階で活動が発展していく。
まず第1段階は、地域住民自ら耕作放棄地を解消や竹藪の伐採等を行い、地域ぐるみで
農村の景観・環境を維持していくことである。
第2段階は、棚田のオーナー制度や農業体験導入して、都市住民とともに農村景観を保
全することである。都市住民の参加を得るため、フォトコンテストや出張販売等の事例が
みられる。
第3段階は、都市住民と連携した農産物の活用で、農産物の加工体験や活動に参加する
都市住民とつながりのある都市部の店舗・レストランでの取引等が期待できる。
第4段階は、活動を通じて2地域居住や U・I ターンを希望する都市住民を受け入れ、共
に農村地域を形成していく仲間を広げていくことである。
都市住民の農村定住への願望は、約 20%の者で見られる(図 10)。特に 20 代、50 代で
は、そうした傾向が強い。定住に向けて誘導していくためには、図 11 のようないくつかの
課題があげられるが、就農の情報は地域住民が提供可能である。また空き家情報や医療機
関の情報は地域行政の協力を得ることで、提供可能である。
表 22 自然・景観を活かした美しい村づくりおよび都市住民との連携
段階
第 1 段階
活動の項目
内容例
棚田・果樹園等とそ
休耕田への花の植栽、破損したブドウ棚の撤去、竹藪整
れを取り巻く景観・環
備、川の清掃、環境美化看板の設置等、住民誰もが参加
境整備
できる活動を企画し、地域ぐるみで景観・環境を維持。
都市住民との交流を
第 2 段階
通じた自然・景観の
保全
第 3 段階
第 4 段階
都市住民と連携した
農産物の活用
U・I ターンの受入
棚田オーナーの活用や、農業体験を導入して都市住民を
応援団に迎え入れる。そのため、棚田マップやHPを作成、
また、棚田フォトコンテストの開催や、特産品の出張販売を
通じ、地域の魅力を積極的に発信
地域農産物の加工体験を取り入れた都市住民との交流を
実践や、都市住民とつながりのある都市部の店舗等で販
売
交流を通じて、U・I ターンの希望者の抽出と受入。および
受入後のサポート。
33
図 10 農山漁村地域への定住の願望の有無
(内閣府
平成 17 年「都市と農山漁村の共生・対流に関する意識調査」より)
34
図 11 願望を実現するために必要なこと
(内閣府
平成 17 年「都市と農山漁村の共生・対流に関する意識調査」より)
35
4-2:八代地区における都市住民と提携した景観保護の可能性
4-2-1 八代地区におけるブドウ栽培とモモ栽培
当該地域のある八代地区は、山梨県中部に位置し、過去東八代郡に属した町である。平
成 16 年に、近隣5町村と合併し、笛吹市となった。
御坂山系からの扇状地があり、そこには縄文時代からの遺跡が濃密に分布している。ま
た、弥生時代後期の集落遺跡である身洗沢遺跡は県内ではじめて水田跡が検出された集落
遺跡として知られる。
明治には県の基幹産業として奨励された養蚕が広まるが、明治 40 年の大水害の被害や養
蚕不況の影響を受け小作人が増加する。戦後には養蚕から果樹への転換が進み、近年は農
家の人口は減少するものの、農業立村を掲げ果樹を中心に、野菜(ナス)や花卉(キク・
バラ)の栽培などが盛んになっている。
果樹は、モモとブドウが中心で、モモについては、早生種の「はなよめ」発祥の地であ
る。また、ブドウについては、巨峰・ピオーネ以外に、ロザリオビアンコが全国有数の産
地となっている。近年では、シャインマスカットの生産も増えてきている(表 23)。
そうしたことから、都市住民と連携し、美しい村づくりを行うにあたり、「モモ」「ブド
ウ」および「水稲」をテーマとすることが想定される。
表 23 八代地区の特産物と歴史
作目
ブドウ
モモ
水稲
野菜
内容
巨峰・ピオーネ以外に、ロザリオビアンコが全国有数の産地
近年では、シャインマスカットの生産も増加
白鳳や浅間白桃が品種構成の中心だが、労力分散および高単価が期待できる早生
系のはなよめの生産が増加
現在は水稲生産は、ほとんど見られないが、地域にある身洗沢遺跡は県内ではじめ
て水田跡が検出
スイートコーン、ナス等が栽培されているが、特にナスの生産が盛ん
ナスやスイートコーンは、果樹と組み合わせて生産
4-2-2 都市住民と提携した景観保護の可能性
当該地域において、ブドウをテーマとして都市住民と連携した農村景観の保護を行った
場合、想定される活動のステップを表 24 に取りまとめた。平成 26 年2月に大雪で倒壊し
たブドウ・モモハウスや棚の撤去作業も盛り込んだ。受け付け作業を含んだブドウ栽培や
モモ栽培が活動として想定される。また加工品の可能性の一つとして、平成 25 年度山梨学
院大学と連携した中で試作したモモのドレッシング等の商品化が期待できる。
36
表 24 八代地区における景観保護活動
段階
第 1 段階
第 2 段階
活動の項目
棚田等とそれを取り
巻く景観・環境整備
内容例
耕作放棄地の解消、ブドウ棚・ぶどう畑の再生、
雪害被害のブドウ・モモの温室ハウス・棚の撤去および再
生
都市住民との交流を
上記作業
通じた自然・景観の
ブドウ・モモの栽培(オーナー制度)
保全
水田の復活
CSA※の導入
第 3 段階
都市住民と連携した
農産物の活用
※Community Supported Agriculture の頭文字をとったも
ので、「地域のコミュニティに支持された農業
加工品の開発・・・山梨学院大学と連携したモモのドレッシ
ング等
就農相談会、トレーニング圃場の設置、空き家探し
第 4 段階
U・I ターンの受入
青年農業給付金の研修期間
山梨県アグリマスター制度
農業協力隊支援制度
4-2-3 組織体制と営業活動
都市住民と連携した美しい村づくりを実施するに当たっては、地域の農業法人や特定非
営利活動法人、地元住民団体、地域行政等地域にいる多様に団体が役割分担を行い、各団
体が有する能力を提供していくことが必要である。笛吹市八代地区における同活動を実施
する際に想定される役割分担を表 25 に分類した。
表 25 都市住民と連携した美しい村づくりにおける各団体の役割分担
団体
役割
山梨屋
プロジェクトリーダー、全体のマネージメント
NPO 法人 Hope 笛吹
体験の提供、広報活動
(農)アグリ ONE
体験の提供、広報活動
産地を守る会果樹やつしろ
体験の提供、広報活動
ふえふき新人農業の会
体験の提供、広報活動
笛吹市農林振興課
広報活動
37
次に、活動のステップアップおよび広報活動について表 26 のとおり取りまとめた。美し
い村づくりに関する活動は、他の農村での活動と同様に、地域の合意から始まり、プログ
ラム開発、広報活動、プログラムの実施を繰り返しながら、事業を大きくしていくことが
一般的で、最初から旅行エージェントや今まで縁のない都市住民を呼び込むことは難しい。
まずは既存のネットワークを使った働きかけを行い、その後町内のイベントとの連携を経
て、外部との連携を模索していくことで、事業の円滑な拡大が期待できる。
表 26 美しい村づくりおける誘客方法
営業ターゲット
子ども交流で来る子ども・
保護者
第1段階
既存のネットワーク
既存の観光客
営業ツールおよび方法
直接呼び掛け、HP
直接呼び掛け、HP
を使った働きかけ
直接呼び掛け、HP
シェ関係者
モモの花まつり
第2段階
の働きかけ
第3段階
外部との連携
協議会
あぐり ONE、
ふえふき新人
農業の会
関係を持つ都市部のマル
八代のイベントから
だれが行うか
長崎かかし祭り
山梨屋、協議
会
直接呼び掛け、HP
協議会、笛吹
市
直接呼び掛け、HP
産地を守る会
果樹やつしろ
都市部のイベントの参加
会場での体験(農業体験、食の
者
体験)
姉妹協定を結んだ市町村
直接訪問、ホームページにて広
協議会、笛吹
の小中学校
報
市
都市部小学校全般
旅行会社エージェント
作成したホームページにて広報
報
山梨屋
協議会
直接訪問、ホームページにて広
協議会、笛吹
報、観光商談会への参加
市
38
第5章
フルーツ大使の研修
5-1:フルーツ大使の位置付けと期待
笛吹市八代地区のフルーツを中心とした地域の情報について、若者に発信してもらう
目的で、八代地区都市農村交流推進協議会は、管理栄養士を目指す山梨学院大学健康栄
養学部の学生 80 名を 11 月にフルーツ大使として委嘱した。フルーツ大使には、1 人 1
人フルーツのミドルネーム入りの委嘱状と名刺を渡しフルーツ大使としての活動がス
タートした。
その後、山梨県の果樹生産に関する座学 1 回、都市農村交流プログラム開発 2 回、都
市部でのマーケット調査 1 回、モモの剪定作業を行うフィールド研修と地域農産物を用
いた加工品試作を 1 回、研究成果発表会 1 回を行った。こうした活動の中で、5 つの交
流プログラムの骨子を作成することができた。今後はマーケット調査等の結果をプログ
ラム作成に反映させ、魅力的な交流プログラムを構築していく予定である。
果樹産地の活性化に向けては、「フルーツの需要拡大」「都市農村交流の促進」「6
次産業化の推進」等により地域にビジネスを生み出し雇用を確保していく必要がある。
フルーツ大使の活動は、大学の知や若者の発想、管理栄養士の卵としての知識をこう
した農村の取り組みと合致させる取り組みであり、フルーツ王国山梨を担う農村と県内
の大学のコラボレーションの好事例となることが期待される。
5-2:フルーツ大使の研修実績
フルーツ大使の研修は、八代地区都市農村交流推進協議会と当財団が協力して実施した。
研修は 6 回、イベントは 2 回行い、それぞれの概要は以下の表 27 のとおりである。
表 27 フルーツ大使の活動一覧表
区分
内容
実施日
参加したフルー
ツ大使人数
研修1
山梨と八代のフルーツ栽培について
11/28
50
研修2
都市農村交流プログラムづくり①
12/12
40
研修3
都市部のマルシェでの販売、調査実習
12/21
4
研修4
都市農村交流プログラムづくり②
1/16
38
研修5
フィールド研修~モモ剪定作業~
2/12
20
研修6
フルーツ加工品づくり
2/12
20
イベント1
フルーツ大使として委嘱。ミドルネーム入り委嘱状
11/28
50
3/13
14
と名刺
イベント2
成果報告会
39
これらの研修のうち、研修2と4により都市農村交流プログラムを5プログラム作成し
た(表 28)
。
また、研修6では、地域の農産加工グループとともに八代の黄金桃のシロップ漬けを活
用した加工品5点の試作を行った。加工品試作時に参加者で試食を行った結果、ジュレが
最も人気を集めた。ジュレを抜いた場合は、白みそのドレッシングが人気を集めた(表 29)
。
表 28 研修で作成した都市農村交流プログラム
プログラムタイトル
ターゲット
彼女はぶどうを愛しすぎている
都市部在住の、プロポーズを考えているカップル
~そして妻になる~
イケメンという、頑張る女性の美食ツアー
都市部在住の、40~50 代女性
お・も・TE・TE・TE・な・し
富士山観光に来た外国人
~you の夏休み by Yatsushiro~
プロポーズは八代で
都市部在住の、プロポーズを考えているカップル
~八代の中心で愛を叫ぶ~
ゴリゴリ満点!ゴリゴリ食べて、動き回って、
Let’s ゴリゴリ!
都市部在住の、プロポーズを考えているカップル
表 29 試作した加工品およびおいしさ投票結果
No
1
2
3
4
5
作成した加工品
内容
黄金桃のさわやかドレ
黄金桃とタマネギを合わせたドレッシ
ッシング
ング
黄金桃の中華ゴマトレ
黄金桃と練りゴマを合わせたまろやか
ッシング
ドレッシング
黄金桃の白みそドレッ
黄金桃とレモンと白みその甘めのドレ
シング
ッシング
黄金桃の和風ドレッシ
黄金桃とつけつゆとショウガのドレッシ
ング
ング
黄金桃ジュレ
モモの香りを活かしたジュレで、パセリ
との相性がよい
おいしさ
おいしさ
投票 1(票)
投票 2(票)
1
4
4
10
6
20
3
8
15
-
40
以下、研修およびイベント時の写真である。
フルーツ大使委嘱式
フルーツ大使委嘱式
研修1
研修 1
研修2
研修2
研修3
研修3
41
研修4
研修5
研修4
研修5
研修6
研修6
イベント2
イベント2
42
このうち研修3では、都市部のマルシェにおいて、マルシェ利用者に都市農村交流の意
向調査を行った。結果は以下のとおりで、マルシェ参加者の年齢は 40~60 歳代が 50%以
上であった(図 12)
。また、都市農村交流の実践については、「実践していないが、興味が
ある」とした者は 50%以上であった(図 13)
。
また、希望する都市農村交流の内容については、フルーツの収穫を希望する者が最も多
かった。
図 12 ヒアリング対象者の年齢
図 13
都市農村交流の実践
図 14 希望する都市農村交流内容
43
5-3:アンケート結果と今後の活動
平成 26 年 3 月 13 日成果発表会終了後、参加したフルーツ大使の学生にフルーツ大使の
活動についてのアンケートを行った。結果(有効回答数 12)は以下の通りである。
1.これまで自主的に実施した内容(図 15)
フルーツ大使が、自主的に実施した活動は、「家族・友人にフルーツ大使の話をした」が
100%、
「フルーツ大使の名刺を配った」が 83%であった。また「県産フルーツを買った・
食べた」が 50%で、
「SNS でフルーツ大使の話題をしたり、いいねを押したりシェアをした」
は 40%以上であった。
「都市農村交流プログラムを考えた、実践した」は 30%程度であっ
た。
これまで自主的に実施した活動(MA)
0%
50%
100%
家族・友人にフルーツ(大使)の話をした
100.0%
83.3%
フルーツ大使の名刺を配った
県産フルーツを買った、食べた
50.0%
SNSでフルーツ大使の話題をしたり、
いいね!を押したりシェア をした
41.7%
農村の直売所へ行ってみた
33.3%
都市農村交流プログラム を考え た、
実践した
33.3%
普段食べないフルーツを買った、食べた
0.0%
加工品づくりを考えた、自分で試作した
0.0%
就農しようと思った、農家の嫁になりた
いと思った、就農相談会に行った
0.0%
その他
0.0%
図 15 これまで自主的に実施した活動
2.自主的な活動の詳細(図 16)
フルーツ大使の名刺を配った枚数を聞いたところ、配ったと回答した者のうち、50%が
10 枚以上配ったことがわかった。また、SNS でのフルーツ情報発信については、5~10 回
程度が最も多かったが、10 回以上行っていた者がいることがわかった。
44
フルーツ大使の名刺を配った枚数
SNSでフルーツ大使の話題をしたり、いいね!を押したり
シェアをした回数(NA)
5枚未満
30.0%
5回未満
20.0%
10回以上
20.0%
10枚以上
50.0%
10枚未満
20.0%
n=10
n=5
10回未満
60.0%
図 16 フルーツ大使の自主的な活動の詳細
3.活動を経ての感想(図 17)
80%以上の者が「家族・友人にフルーツ大使の話をしていきたい」、
「SNS で情報発信し
たい」、
「県産する―つを買いたい、食べたい」とした。また、50%以上が「都市農村交流
を考えたい、実践したい」
、
「加工品作りをしたい」と回答した。また少数だが、「就農した
い、就農相談会へ行ってみたい」と直接就農に興味を示した者もいた。
活動を経ての感想(MA)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
家族・友人にフルーツ(大使)の話をしていきたい
100.0%
SNSでフルーツ大使の話題をしたり、いいね!を
押したり、シェアをしたい
91.7%
県産フルーツを買いたい、食べたい
83.3%
普段食べないフルーツを買いたい、食べたい
75.0%
フルーツ大使の名刺を配りたい
66.7%
都市農村交流プロジェクトを考えたい、実践したい
66.7%
加工品づくりを考えたい、試作したい
50.0%
農村の直売所へ行ってみたい
就農したい、農家の嫁になりたい、就農相談会へ
行ってみたい
41.7%
8.3%
図 17 活動を経ての感想
45
4.フルーツ大使の活動に関する自由回答(表 30)
フルーツ大使の活動についての感想を聞いたところ、活動に好意的な回答が多かった。
また参加したい、もっと学生を参加させるべきだ等の回答が見られた。
表 30 フルーツ大使の活動に関する自由回答
No
フルーツ大使の活動に関する自由回答
1
フルーツ大使活動を通して、地元のフルーツを使った加工品を作ったり、みんなで意見を出し合って都市農村交流プログラムを考え出したりして、地
元のフルーツについての知識が増えるだけでなく、地元のフルーツをどう使って農村を活性化して行くか考えることができて良かった。
2
この活動を通して、山梨県産の果物を県内・県外に関わらず多くの人に知ってもらうためには、どうしたらよいのか考える、とても充実した機会となっ
た。多くの人に知ってもらうためには、多くの知識がないと広める方法が浮かんでこないと、改めて実感した。桃の剪定や加工品作りを体験した。剪
定は思っていたより枝を落とす場所を見つけるのが難しいこと、切るのにとても力がいることが分かった。加工品作りでは、桃の風味を活かしたドレッ
シングを作ることの難しさや、想像していたよりも他の食材と桃が合うことが分かり、とても面白かった。他の果物でも加工品を考え、新しいレシピを
考えていきたい。
3
フルーツ大使の活動を通して、モモ剪定作業を体験することができたり、実際に農作物を売ることができて楽しかったです。剪定は普段体験できない
ことなので、とても印象に残りました。雪害があり、農家の方々も大変だと思いますが、山梨の果物をどんどんアピールして、地域の活性化につなげ
ていきたいです。
4
私の家族や親戚が山梨県出身でないことから、フルーツ農家とは関わりもなく、農業についてもあまり知識がなかったが、モモの剪定をしたことで農
業に触れることができ、貴重な体験ができた。また、ドレッシングを作ったことでモモを使った加工品にも関わることができ、充実した活動だったと感じ
た。ミドルネームも持ち、名刺もあることから、名刺を多くの人に配りながら、フルーツについてたくさんの人に広めていけるようにしたい。
5
フルーツ大使に参加し、様々な体験をすることができました。機会があれば、また活動に参加したいです。
6
フルーツ大使になって様々な活動に参加してみて、以前より県内産のフルーツに興味が持てるようになった。今後ももっとフルーツを食べていきた
い。
7
ミドルネームを選ぶ際に、今まで知らなかった品種などを知ることができ、1つの果物でも多くの品種があることがわかった。フルーツ大使の名刺の
裏にも、自分のミドルネームにしようしている品種の説明が書かれていて、交換することによって他の人にも知ってもらえると感じた。
8
管理栄養士を目指す私達にとって、フルーツ大使での経験は、フルーツについての現状を知ることができ、将来、管理栄養士となった際には、多くの
人々にフルーツの機能性など様々な知識を広め、フルーツの積極的な摂取を勧めていきたいです。
9
交流プログラム等を行う中で、自分の意見を具体的に発表する大切さを学べました。私のミドルネームによって、夢しずくという種類があることを、自
分でも知れたことや、家族友人に知ってもらえたということは大きかったと思います。
もっと活動をしっかりしたほうが良いと思った。計画・内容はとてもいいと思ったが、フルーツ大使としての活動の学生の参加率が全体的に低かったと
10 思う。私たちの意識をもっと上げて行く必要があると思った。そのためには、もっと早く次回の集合を連絡するほど、予定が立てやすく集合率が良い
のではないかと思った。
マルシェに参加してみて、アピールする難しさを知った。今後チャンスがあれば、もっとうまくアピールできるようにしていきたい。あと、もっとほかの地
11 方の方(関西など)にまで行ってアピールできれば、山梨のフルーツのことを広めていけるのではないかと思う。
自分もミドルネームをもらって、フルーツ大使の活動を始めてから、お店などでフルーツを見るようになったりして、フルーツに対する意識が少し変わっ
12 た。まだ、自分が広めようという気持ちで活動をしっかりできていないので、これからいろんなことをしてみたいと思った。
5.今後の活動について
学生には、継続的に情報発信をしてもらいながら、地元協議会とともに事業化を目指し
た「都市農村交流プログラム」や「加工品」の開発を行い、実践していくことが望ましい。
また、本年度1回のみ実施したフィールドでの研修をもっと追加し、フルーツの栽培を
より詳細に理解させることに努めた方がよい。
その際、大人数だとコントロールしにくく、農業者の説明が伝わりにくいため、こうし
たフィールドでの研修は少人数での実施が望ましい。
46
第6章
組織体制
こうした取り組みは、単独の事業者や個人が実施できるものではなく、地域全体での取
り組みが必要である。
八代地域では、都市農村交流を進めていくため、地域の農業法人や特定非営利活動法人、
若手農業者団体などが集まり平成 25 年5月に協議会組織「八代地区都市農村交流推進協議
会」が設立された。この組織には、笛吹市行政に加え地域の幅広い担い手が参画しており、
交流活動を地域活動として展開していくことが可能である。この協議会の事業実施を図 18
に示した。協議会の中に意思決定機関として役員会が設けられており、迅速な意思決定が
可能である。また、
「情報発信・イベント」担当、
「集落魅力再発見」担当、
「体験・研修定
住担当」の3担当をおいて、必要な事項を協議するようにしている。
図 18 事業実施体制(前出)
事業実施体制
役員会(意思決定機関)
八代地区都市農村交流推進協議会
農事組合法人
アグリONE
NPO:
Hope笛吹
山梨屋
産地を守る会
果樹やつしろ
ふえふき新人
農業の会
笛吹市
農林振興課
選出
○代表者等不在時の対応
会長
(リーダ)
事務局長
副会長
理事
監事
プロジェクトマネージャー
【会長、リーダ不在の場合】
副会長が代理となる
【プロジェクトマネージャー不在の場合】
役員会が代理となる
情報発信・イベント担当
山梨屋
集落魅力再発見担当
山梨総合研究所
体験・研修定住担当
産地を守る会果
樹やつしろ
アグリONE
Hope笛吹
Hope笛吹
Hope笛吹
ヤッチャバ
山梨屋
産地を守る会果
樹やつしろ
笛吹市
笛吹市
笛吹市
山梨学院大学
山梨総合研究所
県担い手対策室
山梨屋
アグリONE
ふえふき新人農
業の会
助言
山梨総合研究所
山梨総合研究所
石和温泉
旅館組合
ふえふき新人農
業の会
47
第7章
参考資料
参考資料 高度も農山漁村交流プロジェクトによる効果
(農林水産省 HP より)
48
49
Fly UP