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資料4 ディーゼル乗用車の経済分析、ガソリン車・ハイブリッド車との比較
資料4 ディーゼル乗用車の経済分析、ガソリン車・ハイブリッド車との比較 株式会社三菱総合研究所 1.はじめに クリーンディーゼル乗用車とガソリン乗用車(ガソリンハイブリッド乗用車を含む)につい て、そのイニシャルコストおよびランニングコストについて試算した。試算結果は、乗用車の 平均使用年数である 10 年間の累積費用として提示した。 なお、排気ガス特性や燃費等に優れた最新のディーゼル乗用車は、現時点で日本では市販さ れていないため、比較対象とするディーゼル乗用車は、英国における市販車のデータ(車両価 格、燃料消費率など)と日本における市販車のデータ(同)より仮想的な車を設定した。 その車両が日本において販売されると仮定し、車両取得時や車両保有時にかかる税金は、日 本の税制や優遇措置を採用した。点検・整備費用については、考慮していない。 また、地方別の年間走行距離の分布を推計し、今回の試算による経済性でみた場合に、どの 程度のユーザーにとってディーゼル乗用車導入が有利であるのかについて考察を行った。 2.試算の前提条件(仮想のディーゼル乗用車(AT)) 試算においては、表1に示した前提条件をおいて実施した。自動車税・重量税については、10 年間の累積費用として示している。 今回の試算では、トヨタのハイブリッド車プリウスを基準として、その比較対象車を選定した。 プリウス購入時の補助金算出の基準(プリウスと同等のクルマであるとの認識)となったのは日 本では上市されているアリオンやプレミオであり、これを比較対象車とすることが最良であると 考えられる。しかしながら、英国市場ではアリオン等が投入されておらず、改めて別の候補車を 選定する必要があった。同じトヨタ車で英国市場に上市されている Avensis は 1.8 ㍑クラスガソ リンエンジンならびに 2.0 ㍑クラスディーゼルエンジン搭載車がともにラインナップされている。 ただし、ディーゼル車はマニュアルトランスミッション(MT)車しか存在しない。 そこで、プリウスと同等のクルマであるアリオンの 2.0 ㍑クラスのディーゼル車(AT)を仮想 的に作り上げた。その手順は、以下による。 まず、英国市場で上市されている Avensis の 2.0 ㍑クラスディーゼルと 1.8 ㍑クラスガソリン (いずれも MT 車)の価格差(£12,478.30−£11,831.49=£646.81)をアリオンの 2.0 ㍑クラス ディーゼルと 1.8 ㍑クラスガソリン(いずれも AT 車)の価格差とする。アリオンの 1.8 ㍑クラス ガソリン車(AT)の価格は日本価格(1,760,000 円)が既知であるため、これに上記の差額を円 貨換算したものを加算して、アリオン 2.0 ㍑クラスディーゼル車(AT)価格とした1。 一方、燃費については、同様に Avensis の 2.0 ㍑クラスディーゼルと 1.8 ㍑クラスガソリン(い ずれも MT 車)の燃料消費効率の比(5.8 ㍑/100km:7.2 ㍑/100km)がアリオンの 2.0 ㍑クラスデ ィーゼルと 1.8 ㍑クラスガソリン(いずれも AT 車)の燃料消費効率の比とする。アリオンの 1.8 1 ディーゼル乗用車の AT はガソリン乗用車の AT よりコスト高との指摘があるが、ここでは分析 していない。追加的データがあれば修正可能である。 1 ㍑クラスガソリン車(AT)の燃費は 10・15 モード(16.0km/㍑ = 6.25 ㍑/100km)が既知である ため、これに上記の比率を乗じて、アリオン 2.0 ㍑クラスディーゼル車(AT)燃費とした。 表1 試算に用いた車両情報 仮想的車 アリオン 2.0D ディーゼル車 B (AT) 2.0 ㍑ プリウス S ガソリンハイブリ ッド車 C(AT) 1.5 ㍑+モータ 1,760,000 1,889,362 2,150,000 79,200 85,021 96,750 アリオン A18 ガソリン車 A(AT) 1.8 ㍑ 車両価格(税抜き、円) 取得税 取得税率軽減 -42,570 消費税5%(取得時) 自動車税 88,000 94,468 107,500 395,000 395,000 345,000 自動車税の軽減 -17,250 重量税 189,000 189,000 補助金 189,000 -210,000 2,618,430 合計 2,511,200 2,652,851 [2,828,430] 燃料消費率(km/㍑) 16.0 19.9 35.5 ・ガソリン車Aとガソリンハイブリッド車Cについての車両価格や燃料消費率(10・15 モード) は日本市販車ネットカタログ値を採用 ・ディーゼル車Bの車両価格や燃料消費率は、英国市販車 Avensis と日本市販車アリオンのネ ットカタログ値より推計値を採用 ・1ポンド 200 円で換算 ・ガソリンハイブリッド車の補助金は、年間走行距離 6,000km 以上が支給対象。[ ]は補助金 支給がない場合の合計 ・プリウスの取得税、2.2%の優遇を含む。 ・アリオン A18 はグリーン税の対象外(排ガス☆☆☆で、平成 22 年度燃費基準達成のみ) ・自動車税、重量税は新車購入から 10 年間の累積費用 2.試算結果 年間平均走行距離に対して、10 年間の累積費用を図1に示した。 ガソリン車A(アリオン A18)に対し、年間平均走行距離が約 5,200km 以上である場合、ディー ゼル車B(仮想的車アリオン 2.0D)が 10 年間の累積費用で有利となる。 また、ディーゼル車Bに対し、年間平均走行距離が約 6,000km 以上である場合、補助金の効果 がここで発揮されるため、ガソリンハイブリッド車C(プリウス S)が 10 年間の累積費用で有利 となる。 2 3,900,000 ガソリン車A(AT) デ ィーゼル車B(AT) ガソリンハイブリッド車C(AT) 10年間の累積経費[円] 3,700,000 3,500,000 3,300,000 3,100,000 2,900,000 2,700,000 2,500,000 - 5,000 10,000 15,000 20,000 年間走行距離[km] 図1 年間走行距離別の10年間の累積費用試算結果 燃料価格は、石油情報センター「給油所石油製品市況調査」2004 年 10 月による (ガソリン 119 円/㍑、軽油 94 円/㍑) 3.試算結果に対する考察 (1)地方別の年間走行距離の分布を推計し、今回の試算による経済性でみた場合に、どの程度 のユーザーにとってディーゼル乗用車導入が有利であるのか 地方別の年間平均走行距離とその分布を、CarSensor.net(http://www.carsensor.net/)掲載 の中古車リストより推計した。推計は、以下の前提条件をおいて行った。結果は、表2のとおり である。また、全国及び各地方の年間平均走行距離の分布を図2以降にヒストグラムとして示し た。 【推計の前提条件】 ・当該地域の中古車は当該地域で使われていたものとした。 ・中古車の使用年数は、初度登録年から想定した。 ・使用年数想定値の誤差(年未満の誤差)が大きいと考えられる新しい中古車(平成 15 年初度登 録以降)については、推計の対象から除外した。また、初度登録が昭和の中古車も推計の対象 から除外した。 【推計方法】 ・近年の最量販車(派生車を含む)の総走行距離を使用年数で除して年間平均走行距離とした。 3 表2 地域別の年間平均走行距離(推計値) 年間平均走行距離 [km] 年間平均走行距離が 1.5 右記のうち年間走行距離 万 km 以上の比率[%] が 2.0 万 km 以上の比率 [%] 北海道 11,530 19.5 7.3 東北 11,584 21.3 12.0 関東 8,336 10.1 2.4 10,514 15.8 4.4 東海 9,710 14.4 4.8 関西 9,756 16.8 7.1 中国 9,866 19.2 4.5 四国 9,866 15.9 8.0 九州 10,722 18.0 5.2 9,807 15.2 5.1 北陸・甲信越 全国平均 350 300 200 150 100 50 10 10 00 00 超 ∼ 30 30 00 00 超 ∼ 50 50 00 00 超 ∼ 70 70 00 00 超 ∼ 90 90 00 00 超 ∼ 11 11 00 00 0超 0 ∼ 13 13 00 00 0超 0 ∼ 15 15 00 00 0超 0 ∼ 20 00 0 20 00 0超 0 ∼ 頻度 250 年間平均走行距離[km] 図2 年間平均走行距離(推計値)の分布(全国) 4 5 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 0 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 頻度 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 0 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 頻度 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 年間平均走行距離[km] 図3 年間平均走行距離(推計値)の分布(北海道) 30 25 20 15 10 5 0 年間平均走行距離[km] 図4 年間平均走行距離(推計値)の分布(東北) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 年間平均走行距離[km] 図5 年間平均走行距離(推計値)の分布(関東) 6 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 0 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 15 13 11 00 00 0超 0超 20 0 0 0 0超 00 00 00 00 ∼ 20 ∼ 15 ∼ 13 0 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ 超 ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 30 25 20 15 10 5 0 年間平均走行距離[km] 図6 年間平均走行距離(推計値)の分布(北陸・甲信越) 60 50 40 30 20 10 0 年間平均走行距離[km] 図7 年間平均走行距離(推計値)の分布(東海) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 年間平均走行距離[km] 図8 年間平均走行距離(推計値)の分布(関西) 7 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 0 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 0 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 15 13 11 00 00 超 0超 0超 0 0 0 0 0超 00 00 00 00 20 15 13 20 ∼ ∼ ∼ 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 11 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 超 超 超 超 0超 00 00 00 00 00 00 90 70 50 30 10 ∼ 頻度 35 30 25 20 15 10 5 0 年間平均走行距離[km] 図9 年間平均走行距離(推計値)の分布(中国) 25 20 15 10 5 0 年間平均走行距離[km] 図 10 年間平均走行距離(推計値)の分布(四国) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 年間平均走行距離[km] 図 11 年間平均走行距離(推計値)の分布(九州) 今回の試算では、年間平均走行距離が約 5,200km 以上である場合、ディーゼル車がガソリン車 に対して経済性で優れるとの結果となったが、この条件を満たすユーザーの比率を、上記年間平 均走行距離分布推計より導くと、表3のとおりとなる。 表3 今回の試算及び年間平均走行距離分布推計に基づく地域別のディーゼル車優位比率 年間平均走行距離 [km] 年間平均走行距離が 5,200km 以上で、ディーゼル車が ガソリン車比で経済的に優位となるユーザーの比率[%] 北海道 11,530 87.8 東北 11,584 93.5 関東 8,336 71.5 10,514 87.7 東海 9,710 83.8 関西 9,756 83.2 中国 9,866 85.3 四国 9,866 88.6 九州 10,722 91.9 9,807 82.5 北陸・甲信越 全国平均 全国平均では上記比率は 82.5%であった。また、最も上記比率の高い地方は、年間平均走行距 離が最も長い東北(93.5%)であり、次いで、九州(91.9%)、四国(88.6%) 、北海道(87.8%)、 北陸・甲信越(87.7%)の順となっている。逆に、関東における同値は 71.5%で最低であった。 (2)その他 今回の試算では、様々な前提条件をおいており、また、実走行燃費やメンテナンスコストを考 慮していないなど厳密な試算ではない。さらに、ディーゼル乗用車については、今後の排気ガス 規制の強化に対応するための排気ガス浄化対策等により、車両価格が大きく変動する可能性もあ るなど、必ずしも今回の試算結果のとおりディーゼル乗用車がガソリン乗用車に対して経済的に 有利になるとは限らないことに注意を要する。 8 なお、今回の試算条件で比較すると、ガソリン車、ディーゼル車、ガソリンハイブリッド車の 1km 走行時の燃料費は表4のとおりとなる。わが国においては、ガソリンと軽油の価格差が過去 と比較すれば縮小してきたとはいえ、軽油の価格を1とすればガソリンのそれは 1.27 であり、ガ ソリンが3割弱割高となっている。このため、燃料消費効率の差に燃料の価格差が加わり、ガソ リン車の1km 走行時の燃料費はディーゼル車の6割弱割高になる。 反対に、ガソリンハイブリッド車の優れた燃料消費効率は、燃料単価の差により希釈され、デ ィーゼル車の1km 走行時の燃料費は4割強割高にとどまっている。 また、ガソリン1㍑を消費すると 2,382gの CO2 が排出され、軽油1㍑では 2,643g排出される が、 これをもとに今回の試算条件での1km 走行時の CO2 排出量を比較すると表5のとおりとなる。 表4 今回の試算条件での1km 走行時の燃料費比較 ガソリン車 ディーゼル車 ガソリンハイブリッド車 7.44 円/km 4.72 円/km 3.35 円/km 2.22 1.41 1 単位の無い値はガソリン車、ディーゼル車、ガソリンハイブリッド車間の比率を示す 表5 今回の試算条件での1km 走行時の CO2 排出量比較 ガソリン車 ディーゼル車 ガソリンハイブリッド車 149g(CO2)/km 133g(CO2)/km 67g(CO2)/km 2.22 1.98 1 単位の無い値はガソリン車、ディーゼル車、ガソリンハイブリッド車間の比率を示す CO2 排出原単位 ガソリン:2,382g(CO2)/㍑、軽油:2,643g(CO2)/㍑ 9