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「これからの患者̶医療者関係とインフォームド・コンセント」
❖ 医療安全セミナー ❖ ❖ 特別講演 ❖ 「組織における意思決定−日中比較政治の視点から−」 「これからの患者̶医療者関係とインフォームド・コンセント」 新潟大学法学部教授 真水 康樹 先生 東京医療センター教育研修部臨床研修科医長 尾藤 誠司 先生 「政策決定」は、私の専門である政治学の重要なテーマのひとつです。政策決定は、政府や県庁・市役所だけのものでは この20年で、我が国の患者̶医療者関係は大きな変化がありました。それは、一言でいえば、医療者側の独善的な価値観 なく、企業、大学、組合、あるいは親睦団体まで、おおよそ複数の人間が集まる組織にすべて存在する問題です。そして、 に基づいて医療の方針が決められ、行われていた関係から、患者側の自律性が尊重される関係への変化です。この変化は、 政策決定と政策決定メカニズムの良し悪しは、その組織の発展や存亡と大きくかかわることになります。その意味では、政 基本的にはより望ましい変化であるといえます。しかしながら、詳細な情報を提供した上で患者さん自身に診療方針の選択 策決定とは、あらゆる組織に共通する重要な関心事と言えるでしょう。別の言い方をすれば、良きリーダーシップとは、組 権を委ねるという診療のスタイルは、一方では、医療者の専門職としての役割意識や責任感に好ましくない影響を与えてい 織に必要な大事な政策を決定する力であり、それを実行する能力であると言えます。政策決定は、リーダーシップの要でも るかもしれません。本講演では、医療者が陥る独善的な思考に対して、自分たちがどれほど謙虚になることができるのかと あります。日本では首相の意思さえ実現が保障されないばかりか、毎年交代するその地位の軽さは絶望的な様相です。他 いうこととともに、その上で医療者が自らの職責をどのように考え、患者さんと向き合うかについて皆さんとともに考える 方、中国政治のリーダーシップは一見とても強力にみえます。日中の違いの実像も交えながら、政策決定の意義についてご 機会としたいと思います。後半では、診療現場における具体的な場面として、現代の患者̶医療者関係の中で、インフォー 紹介させて頂ければと考えています。 ムド・コンセントがどのようになされるべきかについて、そして、新しいインフォームド・コンセントのコンセプトとその 実践について議論を行いたいと思います。 [略歴] 真水 康樹(ますい・やすき) [略歴] 新潟大学法学部教授 北京大学国際関係学院客員教授 1959 年生まれ。 尾藤 誠司 (びとう・せいじ) 中央大学法学部卒業。北京大学歴史学部大学院博士課程修了、歴史学博士。 東京医療センター臨床研修科医長。 新潟大学教養部助教授をへて、1997 年より現職。 1990 年、岐阜大学医学部卒。国立長崎中央病院、国立佐渡療養所などを経て、95∼97 年、米 UCLA 公衆衛生大学院・一 専攻は中国政治、中国史。 般内科に学び、97 年から東京医療センター総合内科に勤務。04∼07 年に国立病院機構本部の臨床研究推進室長を務めた。 単著に『明清地方行政制度研究』(北京燕山出版社)、『中国周縁の国際環境』(新潟日報社)、 2008 年より現職。著書に『医師アタマ 医師と患者はなぜすれ違うのか?』(医学書院)、『「医師アタマ」との付き 『外交から読み解く中国政治』(新潟日報社)、 合い方̶患者と医者はわかりあえるか』 (中公新書ラクレ) など。 共著に『政治と行政のポイエーシス』(未来社)、『中国的発展与 21 世紀的国際格局』(中国社会科学出版社)、 訳書に牛軍『冷戦期中国外交の政策決定』(千倉書房)、共訳に、A.コーン『競争社会をこえて』(法政大学出版局)、 趙全勝『中国外交政策の研究』(法政大学出版局)がある。