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テイラー展開の応用 1 – 近似値の計算
テイラー展開の応用 1 – 近似値の計算 – 「微積分学入門 −例題を通して学ぶ解析学−」(培風館) 補充教材 No.1 本文 1.8 節では, テイラー展開の 2 次の項までを使って, 近似値の計算を行った. こ こでは, テイラー展開を使った近似値の計算法について, もう少し詳しくみてみよう. テイラー級数を用いて様々な関数の近似値を計算する際, 問題となるのが収束半径 である. 例えば, log(1 + x) を例にとろう. log(1 + x) のテイラー級数は本文 29 ペー ジで求めたように 1 1 1 1 log(1 + x) = x − x2 + x3 − x4 + x5 − · · · 2 3 4 5 となる. しかし, この式で x = 2 や x = 3 を代入することは出来ない. なぜなら, 上記 右辺の級数の収束半径は 1 であり, この等式は |x| < 1 においてのみ成立する. x = 2 や x = 3 は収束半径を超えたところにあり, 従って右辺の級数は発散する. では, テ イラー級数を用いて log 3 を計算する方法はないだろうか? 例題 log 1+x = log(1 + x) − log(1 − x) を用いて, 次の等式を示せ. 1−x 1 2 ³ 1 ´3 2 ³ 1 ´5 2 ³ 1 ´7 log 3 = 2 × + × + × + × + ··· . 2 3 2 5 2 7 2 さらにこの等式により log 3 の近似値を計算せよ. 解答例 log log (1 + x) の x = 0 におけるテイラー展開の式を使って 1+x = log(1 + x) − log(1 − x) 1−x 1 1 1 1 1 1 = x − x2 + x3 − x4 + x5 − x6 + x7 − · · · 3 4 5 6 7 ½2 ¾ 1 2 1 3 1 4 1 5 1 6 1 7 − −x − x − x − x − x − x − x + · · · 2 3 4 5 6 7 2 2 2 = 2x + x3 + x5 + x7 + · · · . 3 5 7 上記の式において x = log 3 = log 1+ 1− 1 2 1 2 1 2 を代入すると, =2× 1 2 ³ 1 ´3 2 ³ 1 ´5 2 ³ 1 ´7 + × + × + × + ··· 2 3 2 5 2 7 2 1 を得る. 右辺の第四項までの和を計算して, 1 2 ³ 1 ´3 2 ³ 1 ´5 2 ³ 1 ´7 + × + × + × 2 3 2 5 2 7 2 7379 = ; 1.098. 6720 log 3 ; 2 × 補足 log 3 の真の値は log 3 = 1.09861228866 · · · なので, 例題の結果は比較的良い 近似を与えていることが分かるだろう. 問題 1 次の等式を示せ. log 5 = 2 × 2 2 ³ 2 ´3 2 ³ 2 ´5 2 ³ 2 ´7 + × + × + × + ··· . 3 3 3 5 3 7 3 さらにこの等式を使って log 5 の近似値を計算せよ. 問題 2 (1) 次の関係式を示せ. π 1 1 = 4 arctan − arctan 4 5 239 (2) 円周率 π に関する次の等式を示せ. ¾ ½ 1 1 ³ 1 ´3 1 ³ 1 ´5 (−1)n−1 ³ 1 ´2n−1 π + · + ··· + + ··· = 4 − · · 4 5 3 5 5 5 2n − 1 5 ½ ¾ 1 1 ³ 1 ´3 1 ³ 1 ´5 (−1)n−1 ³ 1 ´2n−1 − − · + · + ··· + · + ··· . 239 3 239 5 239 2n − 1 239 さらにこの等式を使って π の近似値を計算せよ. (ヒント:arctan x のテイラー級数を用いる.) 2