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MICEデスティネーション 香港の実力 - Travel Journal Gateway
香港特集 多彩な選択肢でオーガナイザーの期待に対応 MICEデスティネーション 香港の実力 日本から約4時間の気軽なフライト、日本各地からの直行便の多さ、 ホテルや会議施設の充実度、アトラクションの豊富さなど、MICE開催 地としてみた香港は理想的な条件を備えている。今年は新型インフル エンザの流行で団体旅行全般が影響を受けたが、香港では5、6月の 大型展示会や国際会議が予定どおり実施されており、海外からの参 加者もいつもと変わらない動きをみせている。また、今年は「2009日 本香港観光交流年」。送客へのモチベーション効果も期待できそうだ。 文：狩野直美 デザイン：宏和デザイン 写真提供：香港政府観光局 不況下でも根強い人気の香港 るし、観光局とも手を携えて、 これまでとは違う切り口で見せる知恵を出 08年に香港を訪れた日本人渡航者数は132万4797人と、 わずかで し合っていきたい」 （JTB法人東京コミュニケーション事業部の市川恒 はあるが前年を上回っており、景気の悪化といった逆風下でも04年以 グローバルアカウント＆コンサルティングチーム・チームマネージャー） と 降堅調な伸びを維持している。香港へのMICE需要を、香港政府観 の意見も聞かれた。 光局（HKTB）が実施している香港バリュープラス・キャンペーンの申し 込み件数でみると、05年までは毎年平均400∼450グループ（2万∼2 提案力の強化でオーガナイザーの心をつかむ 万5000人）で推移していたが、06年は629グループ（3万2527人）、 一方、近畿日本ツーリスト （KNT）は、社内の団体販売の営業担当 07年には589グループ（3万5780人）、 そして08年は652グループ 者向けに独自の教育制度を導入、08年から香港政府観光局の協力で （3万3604人）に達しており、 なかには1000人を超える大型インセンティ スペシャリスト養成に乗り出している。これは「デスティネーション・セー ブグループによる利用も少なくない。 ルス・マネージャー（DSM）」と呼ばれる制度で、若手が多い営業担当 「不況の影響がないとはいえないが、香港はMICEでも堅調な実績 者にデスティネーションの知識をつけさせ、提案力をアップさせるのが目 が期待できるデスティネーション。3年ほど前に大手企業のインセンティ 的。 「DSMの第1弾として香港を選んだのは、香港はエリアが限定され ブがかなり伸びた時期があったが、 その後も着実な伸びを続けている」 ていてわかりやすいし、成果を出しやすいデスティネーションでもある。当 とJTBの久家実旅行マーケティング戦略部営業戦略担当マネージャー 社でも香港をMICE渡航先として重要視している」と稲田正彦ECC事 は語る。同社は香港でのMICEについて、08年度はインセンティブ部 業本部カンパニー販売部販売部長は語る。 門が横ばいとはいえ、全体では前年比25％増となるなど、ベスト10から 同社では香港でのMICEは80人程度のインセンティブツアーが中心 こぼれることのないデスティネーションと位置づけている。 というが、今年は大型グループも入ったことから人数ベースでは前年比 09年度上期は不況に加え、新型インフルエンザの影響は否めないが、 10％増を見込んでいるという。 「香港はMICEの受け入れに慣れている 団体マーケット全体で需要を元に戻すとともにプラスαの底上げへの ので手配もスムーズだし、 オーガナイザーからのクレームも少ないデスティ 期待感はある。 「これからは人数をいかに増やすかというより、消費をど ネーション」 （稲田部長） と、 その魅力について説明する。MICEというと う促すかを考えるのもポイント。香港にはそれができる素材が豊富にあ インセンティブや職場旅行が中心となっているのが現状だが、企業視 香港への日本人旅行者の推移。 バリュープラス・キャンペーンによる団体旅行者数と グループ数の推移 旅行者数 130万 100万 121万848人 131万1111人 132万4336人 132万4797人 察を兼ねた国際見本市や展示会などへの 2009年以降の大型企業団体旅行（確定分） 2009年2月 女性用下着・化粧品 2009年2月 建築 700人 2009年4∼10月 結婚式場・葬祭業 0 2005年 2006年 2007年 2008年 グループ数 3万 2万 1万 0 3万5780人 3万2527人 （589グループ） 3万3604人 （652グループ） （629グループ） 2万∼2万5000人 （400∼450グループ） 2005年 2006年 2007年 2008年 1800人 1800人 参加者誘致などにも、前向きに取り組んでい く考えだ。 不況下とはいえ、成績優秀者への報奨旅 行など、 モチベーションアップのためのインセ 2009年7月 製薬 520人 ンティブツアーは、販売の現場ではもはや欠 2009年7月 結婚式場・葬祭業 430人 かせない存在でもある。企業団体旅行であ 2009年8月 化粧品／健康食品 1900人 るだけに重要視される確実な手配や安心感、 2010年1∼2月 化粧品 1800人 そしてリピーターにも飽きられない素材の提 2010年2月 化粧品 600人 案など、 オーガナイザーの期待に着実に応え 2010年9月 製造業 2500人 られるデスティネーションとして、香港に注が 資料：香港政府観光局 れる視線は熱い。 TRAVEL JOURNAL 2009.8.10 43 夜 景 ショッピング グルメ 「三種の神器」 で 香港MICEを華麗に演出 香港観光のハイライトといえば、夜景、ショッピング、 グルメのいわば「三種の神器」は外せない。それだけに多彩な素 材が開発されているのも確かで、ほかにはない香港らしさを演出するうえでも重要なポイントとなってくる。グループサイ ズに合わせた素材の選択から団体旅行ならではのオリジナリティーあふれるアレンジまで、 「三種の神器」をフル活用し たい。 香港を代表する景観といえば「百万ドルの夜景」。 展望レストランからオープントップバス、 クルーズ船まで、 さまざまなアングルから見る夜景を効果的に取り入れたい。 美しいハーバーの夜景は香港ならでは 街中をオープントップバスで疾走するのはスリル満点 パーティー、夜景、 クルーズとインセンティブツアーの 要素がすべてそろうディナークルーズ 夜景レストラン オープントップバス ディナークルーズ グルメと夜景の2つの要素をカバーでき るのが、 夜景の見える中国料理レストラン。 ビクトリアピークからの夜景が見られる ピークタワー内のレストランをはじめ、香港 コンベンション＆エキシビション・センター、 ワールド・ トレード・センター、ペキンロード・ ワン、 オーシャン・ターミナル内にも、夜景 と中国料理が楽しめるレストランがある。 このほかアバディーンの水上レストランな ら1000人規模の大型グループでも対応 できる。 比較的小規模のグループなら、香港なら ではの乗り物といえるオープントップバス やアンティークトラムを貸し切りにしての 夜景観光がお勧め。派手な電飾に彩ら れたネオンを間近で眺めたり、座席にい ながらにして街の喧騒を肌で感じるなど、 アトラクション気分も同時に楽しめて、大 いに盛り上がる。ケータリングやミニカラ オケセットの持ち込みも可で、 アンティー クトラムなら25人、 オープントップバスなら 43人まで利用できる。 香港島、九龍半島の両サイドの夜景を 思う存分味わえるのが、 ビクトリア湾での ディナークルーズ。600人まで乗船できる 大型のクルーズボートから、昔ながらの ジャンク船を復元した小規模なものまで 各タイプの船が用意されているので、 グ ループサイズに合わせた使い分けが可 能だ。毎夜8時から13分間にわたって開 催されるライトアップショー、 シンフォニー・ オブ・ライツを船上から観賞するのも、 思い出に残るひとときとなるに違いない。 夜 景 の 見 えるラウンジ や バ ー で 2 次 会 を 眺望が自慢のレストランや宴会場は人気が高く、時期やグループサイズ によっては予約が取りづらいことも少なくない。また、 レストランでも店内 のすべての席から夜景が見えるわけではないので、注意が必要になる。 そこでディナータイムは夜景にこだわらず、 アフターディナーに高層タワー の上層フロアにあるラウンジやバー、 ホテルのスイートなどで2次会を企画、 グラスを傾けながらゆっくりと夜景を楽しむのも一興だ。 高層階からの夜景＆食事は格別 44 TRAVEL JOURNAL 2009.8.10 高級ブランドから庶民的な雑貨まで、 豊富なバラエティーが香港でのショッピングの魅力。 MICE参加者のフリータイムの過ごし方でも、 ショッピングは人気の高い選択肢のひとつだ。 年2回のバーゲンを狙ってツアーを組むのも喜ばれる パーティーの後に、ナイトマーケットに立ち寄るのも お勧め 日本では出会えない物と出会えるかも バーゲンセール ナイトマーケット ストリート巡り 香港でのショッピングの魅力が倍増する のが、年に2回行われるバーゲンの時期。 毎年7月上旬から9月上旬にかけて開催 されるサマーセール、12月上旬から旧正 月前まで実施されるウインターセールでは、 人気ブランドの商品も値下げの対象と なるだけに、 ブランドファンにとっては見 逃せない。この時期にMICEを計画する 場合には、 お得なショッピング体験もアト ラクションのひとつとして大いにアピール できるだろう。 数え切れないほどの露店が軒を連ねる ナイトマーケットは、活気あふれるショッピ ングスポットのひとつ。なかでも有名なの がテンプルストリートで、男性用品を売る 店が多いため別名「男人街」とも呼ばれ る。一方「女人街」と呼ばれるトンチョイ ストリートは衣類やアクセサリーなど女性 向けの製品が中心で、正午ごろから露店 が並び始める。いずれも庶民の暮らしに 触れられるスポットとして、香港ビギナー の多いグループ向けの素材にもよい。 香港には専門店街や問屋街など、同業 の店舗が集まる個性的なストリートやマ ーケットも少なくない。ヒスイを売る店が 集まるジェードマーケット、切り花や観葉 植物の店が並ぶフラワーマーケット、印 鑑や名刺店が多いハンコ横丁、仏具や 金物屋などが集まるシャンハイストリート、 金魚店が並ぶ金魚街、食材を売る露店 が並ぶリクラメーションストリートなど、街 歩きが好きな女性客が多いグループ向 けの素材としても活用できる。 広東料理をはじめ各地の中国料理や世界各国の料理など、 多彩な味覚の宝庫である香港は、 まさにグルメ天国。 MICEでも食事に関しては、期待以上の反応を得られると 定評があるほどだ。 ミシュラン受賞レストラン 08年末に初めて発刊された『ミシュランガイ ド香港・マカオ2009』で、 香港の「龍景軒」 （フ ォーシーズンズホテル香港内） が3つ星レスト ランに選ばれたほか、 「香宮」 （カオルーン・シ ャングリ・ラ香港内）、 「夏宮」 （アイランド・シ ャングリ・ラ香港内） など7店が2つ星、 そして 14店が1つ星にランクされている。ハイレベ ルなレストランが多い香港だが、 “ミシュラン の星獲得レストラン”での食事をアピールす るのもポイントとなるだろう。 中 国 料 理 にワイン で 乾 杯！ 香港では08年2月に、 それまでワインの輸入にかかっていた 40％の関税を撤廃、以来、世界各国からのワインが安価で味 わえるようになった。それを受けて、中国本土をはじめ香港でも、 中国料理と合わせてワインを楽しむのがブームとなりつつある。 「紹興酒で乾杯！はちょっと……」といった女性層にも、中国 料理とマッチングさせたワインなら、 すんなり受け入れられるだ けに、 パーティーのお洒落な演出にもワインが一役買いそうだ。 料理クラス 食の本場で「食べる」だけでなく、 「作 る」を体験できる料理クラスもある。 ホテルやレストランの厨房で、 グルー プに分かれて餃子や春巻きなどの点 心を作るチームビルディング・プログラ ムで、完成した料理をシェフが採点し 食品関連のツアーでなくても人気が高い たり、試食も楽しめる。タウンガス・クッ キングセンターやジャンボ・キングダムなども会場として利用できる。比較的 少人数向けのプログラムとなるが、参加者の親睦を目的とした社員旅行な どにはお勧めだ。 社運アップを目指し、開運スポット巡りも 香港には風水や占いのスポットなど、開運のための素材も少なくない。 社運アップや業績アップなど、社内の運気アップを狙って開運をテーマ にした素材を日程に組み込むのも企業団体旅行ならでは。話題のスピリ チュアルスポットであるハート・スートラ （心経の道）や100人もの占い師 が集まる黄大仙廟、 レパルズベイにある天 后廟、 シャティンの車公廟などの開運スポッ トを観光のルートに合わせて採り入れたり、 宴会やパーティー会場に風水師や占い師 を呼んで占ってもらうなどのアレンジも可能だ。 開運という切り口は香港ならでは TRAVEL JOURNAL 2009.8.10 45 テーマパークから大型会議施設まで バリエーションで勝負 MICEといえば欠かせないのが会議や表彰式、パーティーなどの会場手配。施設の充実した香港ではホテルの宴会場 以外にも、テーマパークや会員制クラブなどでの開催も可能だ。 テーマパーク 会員制クラブ ランタオ島にある香港ディズニーランドは、閉園後にパーク内の全体あるい は一部を貸し切ることもできる。全園貸し切りは5000人以上の大規模グ ループ向けだが、各テーマランドの貸し切りは800∼2500人、パーク内レス トランなら100∼800人で貸し切りが可能で、人気キャラクターも手配できる。 また、香港島南部にある、 オーシャンパークではジャイアントパンダとの朝食 （36∼40人）やアシカとのブランチ（60∼100人）、サンゴ礁での海底ディ ナー （40∼60人） など、団体向けにユニークな貸し切り食事プランを用意し ている。 優雅な雰囲気を演出したいVIP向けパーティー会場として最適なのが、香 港にある会員制クラブ。便利な立地にある「アメリカン・クラブ‐タウンクラブ・ セントラル」は着席（コース）なら6人から、 カクテルなら120人まで対応可。 海沿いの開放的な立地の「アバディーン・マリーナ・クラブ」は着席（コース） で20人から、 カクテルなら500人まで収容できる。また1916年設立の歴史 あるクラブ「ヘレナ・メイ」では、海外からの10∼120人のグループ向けに英 国式アフタヌーンティーを実施しているので、午後のひとときをティータイム で演出することもできる。 ©Disney 香港ディズニーランドは 閉園後の貸し切りも可能 優雅な雰囲気の 貸し切りパーティー コンベンション・展示会施設 オーバーナイト・クルージング 香港最大級の展示・会議用スペースを誇るのが香港島ワンチャイにある「香 港コンベンション＆エキシビション・センター（HKCEC）」だ。09年6月に拡 張工事が完了し、新たなファンクションルームやレストランも加わった。香 港国際空港から至近距離にあるのが「アジアワールド・エキスポ」で、1万 3500席という香港最大の多目的屋内アリーナを備えている。九龍半島で 最大規模の会議施設となるのが「国際トレード＆エキシビション・センター」。 シアター形式で3600人収容できる会議・宴会施設などがあり、 チムサアチ ョイから車で約10分の立地も魅力だ。 香港では各種ディナークルーズや遊覧クルーズ以外にも、夜に出港し、船 上で1泊するクルーズも運航されている。船内にはレストランやバーをはじめ、 スパやプールなどがあるほか、 カジノ、 ショーなどのエンターテイメントも用意 されており、盛りだくさんに楽しむことができる。なかでもアジアクルーズ社 のアジアスターや、 スタークルーズの大型客船は施設も充実しているので、 ホテルでの1泊を船上泊に変えるだけでちょっと豪華な気分が演出できる。 リピーターが多いグループやワンランク上のインセンティブツアーにもお勧 めだ。 施設が充実しているため、 ミーティングやエキシビションも 柔軟に対応できる （HKCEC） すべてを兼ね備えたクルーズは インセンティブに最適 MEHK発足記念キャンペーン実施中 香港政府観光局は、MICE専門部署「ミーティング＆エキシビション香港（MEHK）」の発足を記念し、100人以上で香港に2泊以上する企業団体旅行、 または 200人以上が参加予定のコンベンションを対象に、 キャンペーン参加ホテルや航空会社、 コンベンション施設、 アトラクション施設などから割引やアップグレード など、 さまざまな特典が受けられるキャンペーンを行っている。利用条件は09年12月31日までに、香港での上記対象ツアーやコンベンションの開催を決定すること。 詳細は次のサイトまで…http://www.discoverhongkong.com/jpn/attractions/valueplus/mehk.html 香港バリュープラス・キャンペーン 香港政府観光局では、香港に1泊以上する20人以上の社員旅行や企業ミーティングなど企業団 体での旅行を対象にした「香港バリュープラス」キャンペーンを実施している。対象となるグループ には、 ツアー参加者全員に公式ガイドブックや香港シティマップ、 ディスカウント・クーポンなどをプレ ゼントするほか、参加人数に合わせたアトラクション特典（下記） を無料で手配する。 ★アトラクション特典 46 50∼149人 150∼299人 二胡演奏、 カンフーショー、 龍髭飴作り実演、太極拳 体験クラス、香港国際空港 での歓迎メッセージのうち、 いずれか1つ ライオンダンス、中国弦楽 四重奏、 カンフー＆アクロバッ トショー、 フュージョン二重奏、 香港国際空港での歓迎メッ セージのうち、 いずれか1つ TRAVEL JOURNAL 2009.8.10 300∼69人 700人以上 左記のうち、 いずれか2つ 歓迎バナー付きジャンク船、 ドラゴンダンス、マーチング バンドのいずれか1つ 「香港MICEガイド2009−2010」 配布中 香港政府観光局は、香港でのMICE 開催に役立つ情報を満載した「香 港MICEガイド2009−2010」を先ご ろ発刊、希望者に配布している。同 ガイドはA4判・全32ページで、香港 MICEのセールスポイントから、 インセ ンティブツアープログラム、モデルプ ラン、 ホテルリストなどを網羅している。