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患者調査から考える子どもの事故・けがの実態

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患者調査から考える子どもの事故・けがの実態
保護
トピックス
患者調査から考える子どもの事故・けがの実態
に入ります。
内山有子・日本女子体育大学スポーツ健康学科 専任講師
人口動態統計を用いて事故やけが
を調べるときは、おもにICD‐10 の
はじめに
現在、日本で子どもの事故やけが
ていますが、ある程度の数の症例を
「XX章 傷病および死亡の外因」か
把握してからでなければ行動に移し
らその死亡数や死亡率、死亡順位な
にくいという現状があります。
どをみますが、患者調査では生存者
についての資料を得ようと試みる
これらの統計はもちろん、それぞ
を対 象 にしていますので「X X 章
と、厚生労働省が毎年発表している
れとても有意義であり、それぞれの
傷病および死亡の外因」という調査
「人口動態統計」や、独立行政法人
統計の意図をくみ取りながら利用す
項目がありません。よって「XIX 章
日本スポーツ振興センターの災害給
ることにより子どもの事故やけがを
損傷、中毒およびその他の外因の影
付金制度に基づく「学校管理下の災
考える一助になることは広く認識さ
響」から調べるのが妥当かと思われ
害統計」「死亡障害事例集」
、総務省
れていますが、今回はこれらの資料
ます。
消防庁による「救急・救助の現状」
以外で子どもの事故やけがの現状を
傷病分類別にみた推計患者数
「消防白書」、国民生活センターの
知る資料として、厚生労働省が 3 年
「消費生活相談情報」などがみつか
ごとに発表している「患者調査」と
2005(平成 17)年の患者調査に
いう統計をもとに考えてみたいと思
よると、調査日当日に病院一般診療
います。
所、歯科診療所を訪れ受診した患者
ると思います。
しかし、人口動態統計では事故や
けがによる子どもの死亡数や死亡率
などを把握することはできますが、
について、傷病分類別に入院と外来
患者調査とは
を合わせた推計患者数(千人単位)、
死亡にまでは至らなくとも事故やけ
患者調査とは、病気やけがなどで
受療率(推計患者数を人口で割って
がで入院や通院したケースを把握す
病院や診療所を利用する患者の傷病
人口10 万対であらわした数)、構成
ることはむずかしく、また「学校管
状況等の実態を明らかにし、医療行
割合(傷病分類の総推計患者数にお
理下の災害統計」や「死亡障害事例
政の基礎資料を得ることを目的とし
ける割合)をみてみると、全年齢階
集」では就学未満の子どもたち(保
1955(昭和 30)年より 3 年ごとに
級 の 総 数 で 8 , 5 5 5 . 2 千 人( 受 療 率
育園児・幼稚園児もこの制度の加入
実施されている調査です。調査年の
6,696 人)が病院を受診し、その理
対象なのですが、すべての子どもが
10月に医療施設ごとに 1 日の患者の
由は「消化器系の疾患」が最も多く
保育園や幼稚園に就園しているわけ
性別、住所、入院・外来の種別、受
なっています。0 歳では77.6千人(受
ではないので)の事故やけがの資料
療状況などについて調査します。ま
療率 7,315 人)、1 ∼ 4 歳では303.0
を得ることがむずかしいとされてい
た、退院患者については、調査年の
千人(受療率6,678 人)、5 ∼ 9 歳で
ます。「救急・救助の現状」や「消
9 月 1 ∼30 日までの 1 カ月間に退院
は246.5 千人(受療率4,143 人)、10
防白書」では119 番通報して救急車
した患者について調べます。
∼ 14 歳では 150.9 千人(受療率
を利用し、病院へ搬送されたケース
傷病の分類は世界保健機関
2,500 人)が病院を受診し、その理
に関しての資料を得ることはできま
(WHO)の「国際疾病、傷害および
由はいずれの年齢階級も「呼吸器系
すが、自家用車やタクシーなどを利
死因統計分類(ICD)」に基づき分
の疾患」が最も多く、15 ∼ 19 歳で
用して病院に行ったケースを把握す
類され、1996(平成 8 )年以降の調
は134.6千人(受療率2,042人)が受
ることができません。「消費生活相
査ではICD‐10 を用いて調査してい
診し、その理由は「消化器系の疾
談情報」では国民生活センターに実
ます。そのなかで事故やけがに関す
患」が最も多くなっています。
際に寄せられた情報をもとに、安全
る統計は「XIX 章 損傷、中毒およ
そのなかで損傷や中毒などの事故
性の検討や危険性の啓発などを行っ
びその他の外因の影響」という分類
やけがで受診した人は総数で426.4
28
13 アレルギー
Allergy symptoms
60
%
1992年度
1993年度
1994年度
1996年度
2000年度
2002年度
2004年度
2006年度
1998年度
[男 子]
保
護
50
47.0
47.1
47.5
40
27.3
26.6
27.4
26.8
30.7
29.2
28.4
29.6
25.0
28.1
27.0
26.1
19.8
17.6
10
44.2
28.5
41.0
28.5
39.1
29.2
28.8
29.9
32.1
30
20
46.1
45.9
40.2
29.8
22.6
21.0
21.7
18.3
16.8
23.2
19.5
0
小学1・2年生
60
小学3・4年生
小学5・6年生
34.9
35.6
32.1
29.0
32.9
34.0
31.1
32.4
29.9
31.9
39.0
32.0
37.3
32.4
32.0
20.4
17.5
14.5
17.6
12.9
10.3
18.9
15.4
13.6
12.8
12.9
10.8
中学生
30.3
32.2
30.7
41.3
30.0
38.5
31.4
43.2
32.6
23.3
18.9
17.4
17.9
14.9
12.5
高校生
以
前
︵
1
年
以
上
︶
現
在
︵
1
年
以
内
︶
全体
%
[女 子]
50
40
20.7
24.0
41.2
41.3
39.0
30
25.6
28.7
24.4
24.1
31.0
30.2
40.4
26.1
40.2
29.9
32.9
28.0
27.3
25.6
25.8
31.6
28.6
38.1
29.2
35.9
30.5
32.6
30.4
25.2
39.8
40.9
35.9
29.9
30.4
33.4
28.4
31.7
30.7
27.7
29.0
29.8
28.0
31.1
28.9
39.5
39.3
34.8
以
前
︵
1
年
以
上
︶
20
19.6
23.1
20.5
18.8
13.5
14.8
10
22.0
22.6
16.4
19.3
15.6
13.3
20.3
20.8
0
小学1・2年生
小学3・4年生
小学5・6年生
16.5
15.0
14.
13.7
11.3
11.1
中学生
21.5
18.7
19.2
16.3
15.9
16.0
高校生
19.9
18.6
17.5
16.4
14.5
14.3
現
在
︵
1
年
以
内
︶
全体
▲13-1:アレルギーの経年変化――現在(1年以内)
、以前(1年以上前)
、
医師からアレルギーと言われた者の割合(男女別)
(日本学校保健会『児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告』より)
2 年に 1 度出される「児童・生徒の健康状態サーベイランス事業」で学校区分によりアレルギーの全体的様相をみていま
す。今年度からアレルギーの内容も東京都のデータをもとにみることにしました。
107
2.6
11歳・女子
14歳・女子
17歳・女子
11歳・男子
14歳・男子
17歳・男子
2.5
神奈川・T中学校、3年生、男子
n=11、2004年10月
*
2.4
発
達
*
岡山・T高校、3年生、男子
岡山・T高校、3年生、男子
n=139、2005年
n=125、2007年
2.3
*
神奈川・T中学校、3年生、男子
n=13、2003年10月
2.2
*岡山・T高校、3年生、男子
n=131、2006年
*
2.1
神奈川・T中学校、3年生、男子
n=23、2005年10月
*
*
2.0
東京・K小学校、6年生、男子
n=12
1.9
東京・T高校、3年生、男子
n=58、2007年
*高知・A高校、3年生、男子
*
n=63、2008年
*
東京・T高校、3年生、男子
n=73、2009年5月
*
神奈川・K中学校、3年生、男子 東京・T中学校、3年生、男子
n=21、2004年10月
n=67、2007年
*
* *岡山・T高校、3年生、男子
n=35、2003年
**
*
*
東京・T中学校、3年生、男子
東京・M小学校、6年生、男子
n=16、2000年11月
背
筋
力 1.8
指
数
1.7
神奈川・H中学校、3年生、男子
n=41、2007年10月
東京・A小学校、6年生、男子
n=12、2005年1月
岡山・T高校、3年生、女子
n=7、2003年
1.6
岡山・T高校、3年生、女子
n=119、2007年
*
東京・A小学校、6年生、男子
n=13、2005年10月
1.5
*
*
1.4
東京・M小学校、6年生、女子
n=14、2000年11月
*
*
*
*
埼玉・M小学校、6年生、男子
n=51、2009年9月
高知・A高校、3年生、女子
n=79、2008年
埼玉・M小学校、6年生、女子
n=50、2009年9月
*
東京・A小学校、6年生、女子
n=23、2005年1月
東京・K小学校、6年生、女子
n=10
1.3
1.1
神奈川・T中学校、3年生、女子
n=7、2003年10月
1965
1970
1975
1980
1985
*
**
*
東京・T中学校、3年生、女子
n=41、2009年5月
東京・T中学校、3年生、女子
n=44、2007年
神奈川・K中学校、3年生、女子
n=9、2004年10月
*
※回帰直線は、1964年から1997年までの期間の数値で算出したもの。
1960
東京・T高校、3年生、女子
n=32、2009年5月
*
*
*
神奈川・T中学校、3年生、女子
n=3、2004年10月
*
*
神奈川・T中学校、3年生、女子
n=4、2005年10月
東京・T高校、3年生、女子
n=54、2007年
東京・A小学校、6年生、女子
n=16、2005年10月
1.2
1.0
*
岡山・T高校、3年生、女子
n=118、2005年
岡山・T高校、3年生、女子
n=143、2006年
n=107、2009年5月
1990
1995
2000
2005
年
2006
2007
2008
2009
いずれの年齢の男女とも、調査開始当初より一貫して低下傾向を示しています。われわれは、高校卒業
時の到達目標として男子 2.0、女子 1.5 を提案しています。ところが、「新体力テスト」の測定項目では
“背筋力”が削除されてしまいました。したがって、各地での測定結果をこの『白書』に集約し、せめて
その低下傾向に歯止めがかかるまでは“背筋力指数”の推移を観察したいと考えています。
▲2-6:スポーツテストにおける11・14・17歳の背筋力指数(背筋力/体重)の年次推移
(文部省('97年当時)『体力・運動能力調査報告書』より)
138
100
%
2004年 Benesse教育研究開発センター(n=13,931)
2006年 モバイル社会研究所(n=1,582)
2008年 Benesse教育研究開発センター(n=10,208)
92.5 94.0 91.3
93.0 91.0 93.7
80
60.9
60
54.0
46.6
42.1
39.7 40.4
40
31.2
29.0
20
17.0
20.7
17.9
27.8
55.2
49.0
生
活
35.0
31.6
22.0
20.4
0
小学4年生
小学5年生
小学6年生
中学1年生
中学2年生
中学3年生
高校2年生
高校2年生
▲ 2-5:携帯電話所持率
(Benesse 教育研究開発センター『第 1 回子ども生活実態基本調査』、『子どもの IC 利用実態調査報告書』、
モバイル社会研究所『モバイル社会白書 2007』より)
携帯電話の所持率は、学年が上がるにつれて、次第に高くなり、小学生で25%前後、中学生では40∼60%、高校生になる
と90%以上となっています。
50
%
小学3∼4年(n=73)
小学5∼6年(n=97)
中学生(n=288)
高校生(n=564)
40
43.6
36.1
35.1
34.2
30
27.4
24.7
21.9
21.6
20
17.7
14.9
12.2
10
11.0
5.5
0
2.1
0.2
3.1
5.9
0.3
就学前
0.5 0.7
0.2 0
2.8
0.9
4.2
1.4
15.6
14.2
8.2
5.2
16.0
10.1
2.7
小学1年生 小学2年生 小学3年生 小学4年生 小学5年生 小学6年生 中学1年生 中学2年生 中学3年生 高校生以降
▲ 2-6:携帯電話を持ちはじめた時期
(モバイル社会研究所『モバイル社会白書 2007』より)
全体的に、携帯を持ちはじめる時期が低年齢化している様子を観察することができます。小学校 3 ・4 年生では、すでに
就学前に5.5%の子どもが携帯電話を所持しています。また、小・中・高校への入学時に所持率が増加する傾向にあることも
わかります。
155
『子どもの
“からだ”
と“心”の接点を探ろう!』
小泉英明
日立製作所 役員・日立フェロー
「からだ」だけを研究する、あるいは、「心」だけ
「積極的な教育」というのは、チンパンジではまだ
を研究するということであれば、従来からそれぞれ
発見されておらず、いまのところ人間特有のものと
の分野で進められていますが、この二つを結ぶ「接
言えそうです。また、「慈愛(コンパション)・憎
点」についての研究は非常にむずかしいものです。
悪」といった高次な感情を持っていることも人間の
そういう意味では、一番最先端であり、考え方を新
特徴ですが、これについてはほとんど研究されてい
しくしなければ「接点」を理解することはできませ
ません。
ん。本日は、このからだと心とをつなぐ「接点」と
中国で「人間」を表す場合、「間」という字が抜
いうことについて話をしてみたいと思います。
けて、「人」になります。私は、中国の方に「人間
という中国語はないのですか?」と質問してみまし
人間の先祖
た。「人間」という言葉はあるそうですが、中国語
最初に「人間とは何か」ということについてお話
では「社会」という意味を表すそうです。「人間」
します。スライド1には、人間とチンパンジーの相
は、人と人との関わりや社会のなかで生きていく。
違点を示しました。まず人間は、階層的な文法によ
つまり、私たち人間は生まれたときから、他の人と
る言語を活用し、道具を使用します。時には道具を
の関わりや社会のなかで生きているのです。人間と
作るための道具も作ります。それから人間が行う
はいいものだなと思います。
スライド 1
スライド 2
164
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