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小論文の原点ではないか、と私は思うのだ。

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小論文の原点ではないか、と私は思うのだ。
いち
ご
いち
平成22年12月24日
え
一期一会
釧路東高校
生徒指導部通信
第
12
号
クリスマスの難問
「おねがいです。ほんとうのことをおしえてください。サンタクロースはいるのですか?」
これは今から100年前、ニューヨークに住むバージニア・オハンロンという8才の少女が新聞社
に出した手紙です。「サンタなんていないんだよ」という友だちのことばに、彼女はどうしても納得
できなかったのです。
もし、あなたがこのように8才の少女から聞かれたら、はたして何と答えるでしょうか?
彼女が教えてほしいのは「ほんとうのこと」なのです。
小さな頃から、私たちはクリスマスイブの夜には、赤い服を着て白いひげを生やしたサンタクロー
スがトナカイのひくソリに乗って、世界中の子供たちのもとへやってきて、枕もとのくつ下の中にプ
レゼントを届けてくれるというお話を聞かされて育ちます。
そして、時がたち成長してゆく中で、プレゼントを枕もとに届けているのは、実はサンタクロース
ではないのだということを、さまざまなかたちで知る日が来ます。
そういうことを知っている“今”、「ほんとうのこと」を知りたいという少女にどのように答えれ
ば良いのかというのは、とても難しい問題のように思えます。
ところで、いったい「サンタクロース」とは何なのでしょうか?
知っている人もいるかもしれませんが、私たちのよく知っている赤い服に白いひげのサンタクロー
スが世に広まったのは20世紀になってからです。あの有名な赤と白のデザインのシュワっとした茶
色の飲み物の広告に用いられたのがはじめだという説もありますが、定かではありません。
サンタクロースそのものは4世紀に実在したと言われる聖ニコラウスという人が起源となり、その
後千年以上の時を経て、さまざまな形に変わりながら現在の姿になりました。緑の服を着ていたこと
も、色とりどりの服を着た子供たちだったときもあります。
ということは、赤い服を着た白ひげのサンタクロースがそりに乗ってやって来たのを、自分の目で
見たことがなかったとしても、そのことがサンタクロースがいないという証明にはならないのです。
サン・テグジュペリの「星の王子さま」のなかで、キツネが王子さまに言います。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく 見えないってことさ。
大切なことは、目には見えないんだよ」
目ではなく心で見たとき、「ほんとうのこと」は違う姿をあらわし始めるのです。
バージニアからの質問を受け、新聞社の記者フランシス・チャーチは、優しく丁寧で愛情あふれる
言葉で、目には見えないものの確かな存在とそれを信じる心の素晴らしさを伝えます。
その堂々とした、そして心配りに満ちた返事は、全米で大きな反響を呼び、その後、クリスマスが
くるたびに新聞に掲載され続けました。そして100年以上たった今でも、クリスマスが近づくと世
界中で愛され語り継がれているのです。しかも、東高校で3年生が使っている英語の教科書にも取り
上げられていたりもするのです。
大人になったバージニアは教師になり、多くの子供たちを育てること、体が不自由な人や恵まれな
い子供たちのための活動に生涯を捧げました。そんな彼女のもとには、8才の時の自分と同じ疑問を
抱えた子供たちからの手紙がよく届いたそうです。そんな時、彼女は自分の質問に答えてくれた新聞
の記事をきれいな紙に印刷して、ひとりひとりに送ったそうです。
娘夫婦と7人の孫に囲まれながら静かに81才で亡くなった時、全米の新聞が彼女の生涯を讃えそ
の死を悼んだといいます。
「サンタクロースって本当にいるの?」
小さな子どものこの問いかけに、あなたならどう答えるのでしょうか?
よい冬休みを。
◎冬休みを迎えるにあたって
○身だしなみついて
頭髪を絶対にいじらないこと。当然ですが休み明けに身だしなみ検査があります。
休みだからと言って軽い気持ちで頭髪をいじると元の状態に直すのにとてつもない時間が
かかります。髪を傷めないようにしてください。
○やってはいけないことは決してしないこと
やってはいけないことをすれば、それなりの指導を行います。冬休みだからといって全く
関係ありません。「周りもやっているから」とか「ちょっとぐらいだったら」という甘い気
持ちは厳禁です。ダメなものはダメです!!
飲酒、喫煙、立ち入り禁止場所への立ち入り、人に迷惑をかける行為 etc.許されない行為
は決してすることのないように!!
あと、帰宅時間は午後9時までです。夜遅くまであちこちをウロウロしないように!
○自分を大切に
交通事故に十分に気をつけてください。冬は、路面がツルツルに凍結しており、また、暗
くなるのも早く、非常に危険な季節です。痛い思いや辛い思いをしないように、十分に気を
つけてください。なお、今年度の自転車通学は今後禁止となります。
また、健康を害さないためにも、規則正しい生活をしてください。しっかり睡眠時間をと
り、栄養をバランス良く摂取することがインフルエンザの予防にもつながります。
椿本昌夫さんの場合
表面で紹介したバージニアの手紙について、椿本昌夫さんという予備校の国語講師が書いた、
とても印象深い文章があるので、ここにその一部を紹介したいと思います。
小論文で苦労している3年生も参考にしてみて下さい。
毎年冬になると、彼女の手紙そのものを、私は課題文にする。そして、〈新聞社に代わって、君が
彼女の質問に答えてほしい〉という設問をつける。
一生懸命に手紙を書くオハンロンと、一所懸命に返事を書いた人が私は好きなのだ。大人と子ども、
社会と子ども、あるいは信じ続ける力、夢見ること醒めること
etc.というよりも、この二人には
〈疑い、悩むこと〉、〈疑いや悩みを、自分で考えて解こうとすること〉という強い力があるからであ
る。そして、これこそ小論文の原点ではないか、と私は思うのだ。
生徒たちの論文は、まことにバラエティにとんでいる。〈サンタはパパなのだという現実を直視せ
よ〉というアドバイス、〈私には空飛ぶサンタのソリが今でも見えます〉と書く人。そんな中で、忘
れられない論文を紹介しよう。書いたのは権さんという韓国の女生徒である。〈どうして生まれてき
たのか?〉〈なんのために生きるのか?〉
人はいつも解けない疑問を抱いて生きているのだ、
と彼女は語り始める。そして、大切な疑問だからこそ〈貴方の疑問は、私のような他人に答えを決め
つけられてはいけないのです〉というのだ。いろいろな〈えらい人たち〉の答えを参考にするのはい
いけれども、答えは自分で出さなければいけないし、そのために人間は生きていくのだから、貴方も、
そういう大人になっていってほしい、だから、一所懸命に勉強してください
権さんは、この返
事を自分の方が一所懸命に書いている。〈この人は夢みるオハンロンが好きなのだ〉と私は思う。そ
して、なんだか涙までこぼれてくるのだ。
〈私は貴方のような素朴な疑問を持つ子供を大切にしたいと思っています。だから、貴方が自立す
るまでは、いい夢が見られるよう、サンタクロースにお願いしておくことにします〉
これが権
さんの結論である。彼女はオハンロンへの厳しい忠告どおりに生きてきたのだろう。そして、ここに
は、小論文はテクニックなどというこざかしいもので書くのではないという見事な実例がある。疑問
符をたくさん抱いて生きること。疑問符を一つ一つ消していこうとすること
小論文を書くとい
うことの原点は、ここにしかないのだと私は頑固に思いこんでいる。
(代々木ゼミナール「小論文ノート2010」より)
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